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[202507_まてりあ_新進気鋭_岡田.pdf](https://mdr.nims.go.jp/filesets/bf622576-f91b-4a20-9d88-829cf1bd668d/download)

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[岡田 和歩](https://orcid.org/0000-0003-0183-4528)

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[高強度マルテンサイト鋼の水素脆性粒界破壊の理解と抑制](https://mdr.nims.go.jp/datasets/72e907ee-c05f-4193-9d27-f3ac6f53bba6)

## Fulltext

物質・材料研究機構 構造材料研究センター 鉄鋼材料グループ主任研究員(〒3050047 つくば市千現 121)Understanding and Suppressing Hydrogeninduced Intergranular Fracture in Highstrength Martensitic Steels; Kazuho Okada(ResearchCenter for Structural Materials, National Institute for Materials Science (NIMS), Tsukuba)Keywords: hydrogen embrittlement, martensitic steel, intergranular fracture, grain boundary segregation, fracture mechanics, local crackarrestability2025年 1 月14日受理[doi:10.2320/materia.64.478]図 1 (a) ラスマルテンサイト組織の模式図．(b)，(c) 粒界破面と擬へき開破面の SEM 像(5)． 　　　　　　新 進 気 鋭高強度マルテンサイト鋼の水素脆性粒界破壊の理解と抑制岡 田 和 歩. は じ め に可能な限り高強度な鉄鋼材料を幅広く社会実装するための材料設計指針を確立することは，鉄鋼研究者の立場から持続可能な社会の構築に向けてできる最大の貢献の一つであろう．しかし，材料中に水素が侵入することで材料が脆くなる水素脆化が，材料強度の上昇とともに顕著となり，特に引張強度 1.2 GPa を超えると自然大気環境下においても水素脆化の発生が危惧されるため，高強度鉄鋼材料の社会実装は大きく阻まれている(1)．製造過程および使用中に材料中へ一定量の水素が侵入することは避け難く，高強度と高耐水素脆化特性を両立するための材料設計指針が求められている．最近では，水素によってオーステナイト系ステンレス鋼(Fe24Cr19Ni(wt))の強度と延性が同時に向上することが報告されている(2)．この現象は耐水素材料の開発に新たな視点を与えてくれるものであるが，コストの観点から，上記のような高合金鋼を輸送機器や建築物の主要構造部材として幅広く社会実装することは現状困難である．高コストでも唯一無二の特性を発揮する材料開発と並行して，低コスト材料の特性を可能な限り向上させるための材料設計指針が強く求められる．本稿では，代表的な低合金高強度鋼であるマルテンサイト鋼の水素脆化に着目して行った著者の最近の研究について概説する．破壊メカニズムの理解や材料組織の設計をより単純化するため，本稿では，主に焼入れままのマルテンサイト鋼を取り扱っていることを注記しておく．. マルテンサイト鋼の水素脆化低・中炭素高強度鋼の基地組織であるラスマルテンサイトは，ラス，ブロック，パケット，旧オーステナイト粒(旧 g粒)といった種々の微視組織で構成されている(図(a))．ラス境界は小角粒界であり，ブロック境界，パケット境界，旧g 粒界は主に大角粒界である．旧g粒界は母相オーステナイ図 2 (a)，(c) 3 次元炭素マップと(b)，(d) 旧 g 粒界近傍のマンガンと炭素の濃度プロファイル((a)，(b) Nonseg，(c)，(d)Seg)．(e) Nonseg(黒)と Seg(赤)の公称応力―公称ひずみ曲線(5)．(オンラインカラー)ま て り あMateria Japan第64巻 第 7 号(2025)トの粒界に対応するが，一つの母相オーステナイト粒界はマルテンサイト変態によって多数の旧 g 粒界セグメントへと分割される(3)(4)．マルテンサイト鋼は水素脆化感受性が高く，主に粒界破壊(図 1(b))と擬へき開破壊(図 1(c))という 2 つのモードで水素脆性破壊を生じる(5)．粒界破壊は主に旧 g 粒界に沿って生じる(6)．これは，変形中に旧 g 粒界へ集積する水素が，旧 g 粒界の凝集エネルギー(GPAGB)を低下させることに起因する(7)(9)．擬へき開破壊は，体心立方構造のすべり面である{011}面とおおよそ平行に生じる粒内破壊であり，{001}面に沿って生じるへき開破壊とは異なる(10)(13)．一般に，材料中の水素濃度が増加するにつれて粒界破壊が支配的となり，より深刻な脆化を引き起こす(14)．したがって，水素脆化を克服するためには，第一に粒界破壊を抑制する必要がある．. 旧 g 粒界への炭素偏析による粒界破壊の抑制第一原理計算によれば，水素誘起粒界凝集エネルギー低下が炭素のフェライト粒界偏析によって抑制される(15)．そこで著者らは，旧 g 粒界における偏析炭素濃度(XPAGB)を増加させることによる耐水素脆化特性の向上を試みた(5)．3Mn0.2C(wt)鋼を用い，1100°C，30 min のオーステナイト化処理後に焼き入れ・サブゼロ処理を行うことでマルテンサイト組織(以下，Nonseg)を得た．また，同条件でのオーステナイト化処理後，旧 g 粒界への炭素偏析を目的として，790°C(A3 点直上)，30 min の等温保持後に焼き入れ・サブゼロ処理を行い，マルテンサイト組織(以下，Seg)を得た．McLean の式(16)によれば，790°Cにおける等温保持中にXPAGB が増加することが期待される．XGB1－XGB＝Xm1－Xmexp(－DGRT ) ( 1 )XGB と Xm は，それぞれ母相オーステナイト粒界と粒内の炭素の原子分率，DG は偏析エネルギー，R は気体定数，T は温度である．実際に，3 次元アトムプローブにより評価した旧 g 粒界近傍の炭素濃度は，Nonseg(ピーク濃度3.62at)よりも Seg(ピーク濃度5.84 at)のほうが高かった(図(a)(d))．一方で，これらの組織の旧 g 粒径，パケット径，ブロック幅，ラス幅，および転位密度はほぼ同じであった(Nonseg: dPAG＝183 mm, dPacket＝68.6 mm, wBlock＝4.4mm, wLath＝0.48 mm, rnonseg＝7.9×1015 m－2, Seg : dPAG＝187mm, dPacket＝81.3 mm, wBlock＝3.6 mm, wLath＝0.47 mm, rseg＝7.6×1015 m－2)．これらの組織に対し，3NaCl＋3 g L－1NH4SCN 水溶液を用いた陰極電解水素チャージ(電流密度0.005～2.0 A m－2)によって水素を導入した後，力学特性評価を行った．上述の 2 種類の組織には，同一電流密度での水素チャージによりほぼ同量の拡散性水素が導入されることを確認しているが，簡単のため，以降の結果は主に電流密度で整理して示す．図 2(e)に，低ひずみ速度引張試験(初期ひずみ速度8.3×10－6 s－1)により得られた公称応力公称ひずみ曲線を示す．未チャージ材では Nonseg と Seg の強度・延性はほぼ同等であった．一方で電流密度 0.5 A m－2 にて水素チャージした試料では，ほぼ同一量の拡散性水素(～0.5 wt ppm)が導入されたにもかかわらず，Nonseg と比較して Seg の最大応力と破断伸びが大きくなっており，XPAGB の増加により耐水素脆化特性が向上することが明らかとなった．水素チャージ材の粒界破面率が，Nonseg(55.5)と比較して Seg では11.3 と大きく減少していたことから，旧 g 粒界への炭素偏析により粒界破壊が抑制されたことがわかる．Yamaguchi らの第一原理計算(15)によれば，フェライト粒界における炭素偏析は 2 つの影響を及ぼす．まず，粒界に偏析した炭素原子により，粒界凝集エネルギーが増加する．さらに，偏析炭素原子との site competition によって粒界における水素原子の占有率が低下する．これら 2 つの効果の結果として，水素環境下における粒界凝集エネルギーの低下が抑制される．本研究のマルテンサイト鋼(Seg)の場合も，図 3 (a) Nonseg と Seg の JDa 曲線．(b) 破壊靭性( JIC)と電流密度の関係．(c) 旧 g 粒界凝集エネルギーと破壊靭性値の非線形関係．(d) (c)から得られる破壊靭性値と水素濃度の関係．(e)，(f) 粒界き裂先端領域の反射電子像(Seg, 0.005 Am－2)(17)(19)．(オンラインカラー) 　　　　　　新 進 気 鋭GPAGB が増加したことに加え，応力負荷中の旧 g 粒界への水素集積が抑制されたことで粒界破壊が抑制されたと考えられる．き裂進展挙動に及ぼす水素の影響を調べるため，CompactTension(CT)試験片を用いた単一試験片法による除荷コンプライアンス試験を行い，き裂進展抵抗曲線( JDa 曲線，図(a))を得た(17)．Nonseg と Seg のいずれにおいても，電流密度の増加に伴って，JDa 曲線の傾きが減少していたが，最大電流密度でも JDa 曲線は正の傾きを維持していた．これは，水素脆性破壊が完全な不安定破壊ではなく，クラックの安定成長段階が存在しているということを示唆している(18)．図 3(b)に，JDa 曲線から得られた破壊靭性( JIC)を示す．低電流密度(0.1 A m－2，0.005 A m－2)においては，Nonseg よりも XPAGB が高い Seg の JIC が大きく，Seg の方が高い耐水素脆性特性を示した．しかし，より高い電流密度(0.5 A m－2 以上)では，Nonseg と Seg の特性に有意な差はなかった．チャージ電流密度によらず，いずれの水素チャージ材においてもき裂は主に粒界破壊によって進展しており，Nonseg と Seg の粒界破面率(～90)はほとんど同じであった．したがって，0.1 A m－2 以下において Seg の JIC が向上したのは，破壊モードの変化ではなく，単位面積の粒界き裂進展に必要なエネルギーが本質的に向上したためであると考えられる．一方で，0.5 A m－2(～0.5 wt ppm)以上で炭素偏析による特性の向上が確認されないという結果は，非常に高い水素濃度(～1.8×103 wt ppm)においても炭素偏析により GGB の低下が抑制されるという第一原理計算の結果(15)と一見矛盾するように見える．しかし，GGB と粒界き裂進展を主とする場合の破壊靭性値が非線形関係にあること(19)(20)を考慮すれば，上記の結果は矛盾したものではない．図 3(c)では，Yamaguchi ら(19)が報告している非線形関係(青線)上に，本研究の Nonseg と Seg の GPAGB の相対値を示している．第一原理計算(15)に基づき，3 次元アトムプローブの結果(図 2(a)(d))から計算すると，任意の水素濃度におけるNonseg と Seg の相対的な GPAGB の値が得られる．同一水素濃度における Nonseg に対する Seg の GPAGB の相対的向上は 0.125 J m－2 と見積もられる．ここで，GPAGB の相対値は決定されているが，絶対値は暫定的なものであり，以降の議論は半定量的であることに注意されたい．粒界き裂先端領域における水素濃度の絶対値を測定することは困難であるが，き裂先端の局所水素濃度がバルク平均の水素濃度に比例すると仮定して計算している．格子間にトラップされる水素濃度がバルク平均で 2×10－4 wt ppm 以上かつ XPAGB が 25at以下の場合，XPAGB が 10 at上昇するごとに，GPAGB は0.20～0.28 J m－2 の比率で線形的に上昇する．GPAGB の上昇率は粒界剥離の瞬間の水素原子の易動度によって変化するが，この易動度については未解明であるため，本研究では暫定的に中間値である 0.24 J m－2 を用いている．図 3(d)に，(c)より得られた破壊靭性値と電流密度(水素濃度)の相関を示す．低水素濃度(0.2 wt ppm 以下)では，GPAGB の増加が破壊靭性値の著しい向上につながるが，高水素濃度(0.5 wtppm 以上)では，破壊靭性値の GPAGB に対する感受性が低く，破壊靭性値がほとんど向上しないことがわかる．したがって，実験的に測定された破壊靭性は，第一原理計算により得られる GPAGB と半定量的に一致するものであることが実証された．このように，旧 g 粒界への炭素偏析が破壊靭性に及ぼす影響には水素濃度依存性があり，顕著な特性向上は低水素濃度(0.2 wt ppm 以下)のみで確認された．しかし，大気腐食環境において高強度鋼中に侵入する水素はほとんどの場図 4 (a)，(b) 8Mi0.1C 鋼の水素脆性き裂先端の SEM 像とEBSD 結晶方位マップ(Z＝0)．(c)，(d) 3 次元き裂形態と 3 次元 EBSD 結晶方位マップ．(e)，(f) (c)に示した旧 g 粒界セグメントの方位差プロファイル(22)．(オンラインカラー)ま て り あMateria Japan第64巻 第 7 号(2025)合 0.2 wt ppm 以下であるため，水素脆化を克服した高強度鋼を社会実装する上で，炭素偏析は非常に有効な材料設計指針であると言える．図 3(e)，(f)は，Seg の除荷コンプライアンス試験(0.005Am－2)を途中止めし，CT 試験片の板厚中心部のき裂先端近傍を観察した反射電子像である．数百 nm～数 mm の微小な非破壊リガメントが観察され，粒界き裂の進展が不連続であることがわかる(図 3(e))．これらの非破壊リガメントは，最終的に局所的な延性破壊を伴って破断する(21)(22)．また，停留した粒界き裂が旧 g 粒界から逸れて，ラス内部に転位セル組織とナノボイドを形成している様子も観察される(図 3(f))．したがって，粒界破壊の支配的メカニズムが脆性的な粒界剥離であっても，き裂進展に大きな塑性仕事を必要とする部分が存在する．これらのき裂安定成長段階に起因して，JDa 曲線が正の傾きを示すと考えられる．GPAGB と破壊靭性値の非線形関係も，その大部分を粒界破壊に伴った塑性仕事に帰する(19)(20)．したがって，非破壊リガメントの局所延性破壊や，転位セル・ナノボイドの形成などに伴う塑性仕事を可能な限り大きくするための組織制御も，耐水素材料の開発において重要な指針となる．. 局所き裂停留能力の制御に向けて非破壊リガメントや転位セル・ナノボイドは，主にき裂が停留することで生じる．すなわち，粒界き裂進展に伴う塑性仕事を増加させる組織制御を行うためには，粒界き裂がどこで停留しているのかを明らかにする必要がある．そこで，8Ni0.1C(wt)マルテンサイト鋼を用い，水素チャージ後に途中止め除荷コンプライアンス試験を行い，き裂先端領域を詳細に解析した(22)．図に，CT 試験片の板厚中心部のき裂先端近傍を，板厚方向(Z 軸方向)から観察した(a) SEM像と(b)同一視野の EBSD 結晶方位マップを示す．き裂は主に旧 g 粒界(白破線)に沿って進展しているが，多数の微小な非破壊リガメント(白矢印)が形成されていた．そこで，FIBSEM/EBSD によるシリアルセクショニングを用い，上記のき裂の 3 次元形態を再構築した．図 4(c)，(d)はそれぞれ，反射電子像を用いて再構築したき裂の 3 次元形態と同一領域の 3 次元 EBSD 結晶方位マップである．巨視的な荷重軸は図中の X 軸と平行であり，図 4(a)，(b)は，Z＝0の XY 面に対応する．図 4(c)では，粒界き裂が旧 g 粒界から頻繁に逸れている様子が確認できる(青粒界き裂，赤擬へき開き裂)．図 4(e)，(f)は，(c)に示した旧 g 粒界セグメントの方位差プロファイルである．それぞれの旧 g 粒界セグメントを YZ 面に投影した座標に加えて，棒の高さで方位差をあらわしている．赤い棒が非破壊リガメント，すなわち，粒界き裂が局所的に停留した旧 g 粒界セグメントである．ほとんどの非破壊リガメントが，方位差の小さい旧 g 粒界セグメント(小角セグメント)と対応していることがわかる．一部の非破壊リガメントでは方位差が大きくなってるが，これらは整合性の高い S 3 粒界セグメントと対応していた．したがって，水素脆性粒界破壊において，(数百 nm 程度の非常に小さいものであっても)小角セグメントがき裂進展を停留し得ることが明らかとなった．停留した粒界き裂は，非破壊リガメントを形成しながら不連続に進展して最終的に局所延性破壊を伴うか，あるいは擬へき開破壊によってラス内部を進展する．擬へき開破壊は，塑性変形が非常に大きな役割を担う破壊モードであるため(10)(13)，大きな塑性仕事を必要とする．結果として，小角セグメントにおける局所き裂停留は，水素脆性き裂進展抵抗を著しく向上させる．小角セグメントにおけるき裂停留は，水素集積挙動と密接に関係していると考えられる．マルテンサイト鋼では，応力負荷中に旧 g 粒界へ集積する水素によって粒界破壊が生じることが，水素マイクロプリント法により示されている(7)(8)．また一般に，不純物元素の粒界偏析は，方位差の減少に伴って減少する(23)．個々の旧 g 粒界セグメントの局所水素濃度を応力負荷中に定量評価することは困難だが，小角セグメントでは集積水素濃度が低く，水素による GPAGB の減少が抑制されるものと考えられる．実際に，Density functional theo-ry を用いた計算結果によれば，エネルギーが高い(方位差が大きい)フェライト粒界ほど，水素濃度が高くなり，水素による GGB の減少が大きくなることが報告されている(24)．すなわち，水素によって小角/大角セグメントの粒界凝集エネルギーの差が拡大する．結果として，き裂が大角セグメント 　　　　　　新 進 気 鋭を優先的に進展する一方で，小角セグメントは局所的に高いき裂進展抵抗を示し，不連続なき裂進展を生じる．8Ni0.1C(wt)鋼では，未チャージ材においても主な破壊形態は粒界破壊であるが，未チャージ材の場合は，小角セグメントでのき裂停留は確認されず，き裂は連続的に進展する．もし，不連続なき裂進展が硫黄のような粒界凝集エネルギーを低下させる不純物元素に起因するならば，未チャージ材でも不連続なき裂進展が生じるはずである．また，第 3 章で着目した炭素は，粒界凝集エネルギーを向上するが，小角セグメントへの偏析濃度は大角セグメントよりも少ないため(23)，小角セグメントにおけるき裂停留の要因とは考えにくい．したがって，不連続き裂進展は，主に水素集積挙動とそれに伴う GPAGB の低下によって生じたと考えるのが妥当であろう．小角セグメントを増加させる組織制御を行うことができれば，耐水素脆化特性の向上に大きく資すると考えられる．. お わ り に本稿は，マルテンサイト鋼の水素脆性粒界破壊を対象として，著者らがこれまでに行ってきた研究を紹介した．一般に，粒界破壊は，粒界に剥離が生じるための臨界条件以上の負荷が働くことで生じる．本稿で扱った炭素偏析と小角セグメントは，いずれも主に粒界剥離の臨界条件にアプローチする組織設計である．粒界に働く局所負荷(粒界剥離の駆動力)に着目したメカニズム解明や組織設計はまだまだ未開拓であり，耐水素脆化特性向上の大きな可能性が詰まっている．水素脆化に関する未解決問題は，マルテンサイト鋼の粒界破壊に限ってもまだまだ山積しているが，これこそが研究者にとってワクワクの源である．今後も，マルテンサイト鋼などを主体とした低コスト材料の耐破壊特性を可能な限り向上させるための研究を継続しつつ，高コストでも唯一無二の特性を発揮する材料開発も並行して展開していくことで，金属材料のフロンティアを切り拓く研究者になりたい．本稿の成果の一部は，著者が京都大学の博士課程在籍時に，伸泰教授の熱心なご指導のもと得られた．物質・材料研究機構に着任後は，柴田曉伸氏に多大なるご助力を賜り，研究を遂行することができた．図 4 は Mines ParisTech のJacques Besson 教授，Yazid Madi 博士との共同研究である．また，3 次元アトムプローブを用いた偏析炭素濃度の測定では，物質・材料研究機構の宝野和博氏，佐々木泰祐氏に，FIBSEM/EBSD によるシリアルセクショニングでは同機構の原徹氏，諸永拓氏，Ivan GutierrezUrrutia 氏，中村晶子氏にご助力いただいた．この場をお借りして，皆様のご協力に心より感謝申し上げる．文 献( 1 ) 松山晋作遅れ破壊，日刊工業新聞社，(1989)．( 2 ) Y. Ogawa, H. Hosoi, K. Tsuzaki, T. Redarce, O. Takakuwaand H. Matsunaga: Acta Mater., 199(2020), 181192.( 3 ) S. Morito, H. Tanaka, R. Konishi, T. Furuhara and T. Maki:Acta Mater., 51(2003), 17891799.( 4 ) A. Shibata, G. Miyamoto, S. Morito, A. Nakamura, T.Moronaga, H. Kitano, I.G. Urrutia, T. Hara and K. Tsuzaki:Acta Mater., 246(2023), e118675.( 5 ) K. Okada, A. Shibata, T. Sasaki, H. Matsumiya, K. Hono andN. Tsuji: Scr. Mater., 224(2023), e115043.( 6 ) A. Shibata, Y. Madi, K. Okada, N. Tsuji and J. Besson: Int. JHydrogen Energ, 44(2019), 2903429046.( 7 ) Y. Momotani, A. Shibata, D. Terada and N. Tsuji: Int. JHydrogen Energ, 42(2017), 33713379.( 8 ) Y. Momotani, A. Shibata, T. Yonemura, Y. Bai and N. Tsuji:Scr. Mater., 178 (2020), 318323.( 9 ) M. Yamaguchi, J. Kameda and K. Ebihara: Philos. Mag., 92(2012), 13491368, Corrigendum 92(2012), 31213124.(10) K. Okada, A. Shibata, Y. Takeda and N. Tsuji: Int. J HydrogenEnerg, 43(2089), 1129811306.(11) K. Okada, A. Shibata, W. Gong and N. Tsuji: Acta Mater., 225(2022), e117549.(12) K. Okada, A. Shibata, H. Matsumiya and N. Tsuji: ISIJ Int., 62(2022), 20812088.(13) K. Okada, A. Shibata and N. Tsuji: Scr. Mater., 234(2022),e115568.(14) Y. Hagihara, T. Shobu, N. Hisamori, H. Suzuki, K. Takai andK. Hirai: ISIJ Int., 52(2012), 298306.(15) M. Yamaguchi and J. Kameda: International Hydrogen Confer-ence (HIC 2012): HydrogenMaterials Interactions, ASMEPress, (2014), 747755.(16) D. McLean and A. Maradudin: Grain boundaries in metals,Phys. Today, 11(1958), 35.(17) K. Okada, A. Shibata, Y. Kimura, M. Yamaguchi, K. Ebiharaand N. Tsuji: Acta Mater., 280(2024), e120288.(18) K. S. Chan: Acta Metall., 37(1989), 12171226.(19) M. Yamaguchi and J. Kameda: Philos. Mag., 94(2014), 21312149.(20) M. Yamaguchi, K. Ebihara and M. Itakura: Corros. Rev., 33(2015), 547557.(21) A. Shibata, I. G. Urrutia, A. Nakamura, K. Okada, G.Miyamoto, Y. Madi, J. Besson, T. Hara and K. Tsuzaki: Int. JHydrogen Energ, 48(2023), 3456534574.(22) A. Shibata, I. G. Urrutia, A. Nakamura, T. Moronaga, K.Okada, Y. Madi, J. Besson and T. Har: Corros. Sci., 233(2024), e112092.(23) G. Miyamoto, A. Goto, N. Takayama and T. Furuhara: ScriptaMater., 154(2018), 168171.(24) R. Matsumoto, M. Riku, S. Taketomi and N. Miyazaki: Prog.Nucl. Sci. Technol., 2(2011), 915.岡田和歩★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★2019年 日本学術振興会 特別研究員 DC12022年 京都大学大学院 工学研究科 材料工学専攻博士課程修了2022年 4 月2025年 3 月 物質・材料研究機構 構造材料研究センター 研究員2025年 4 月現職専門分野材料工学，破壊力学◎水素脆化，疲労破壊などを中心に鉄鋼材料の破壊現象に関する研究に従事．高強度と高破壊耐性を両立する材料設計指針の確立を目指し，破壊メカニズムの解明や微視組織制御に取り組んでいる．★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★