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[NIMS_5.txt](https://mdr.nims.go.jp/filesets/a89e978d-21bf-40a4-9f9d-8a7efea7fc2f/download)

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物質・材料研究機構

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[NIMS 5年の歩み](https://mdr.nims.go.jp/datasets/fcbc6602-3250-415c-8e26-7c6c852c7ea1)

## Fulltext

NIMS5年の歩み独立行政法人物質・材料研究機構NIMS5年の歩みNIMS 5TE ORD.岸 輝雄理事長 1～2上原 哲理事 3～4鯉沼秀臣理事5野田哲二理事 6～7広瀬研吉元理事8渡辺 遵元理事9加茂睦和元理事 10齋藤鐵哉元理事 11～1201物質研究所物質研究所の5年 15 ～22ホウ化物グループ 23 ～26超高圧グループ 27 ～28非酸化物焼結体グループ 29 ～30電子セラミックスグループ 31～34機能性ガラスグループ 35 ～38ソフト化学グループ 39 ～40スーパーダイヤグループ 41～44プラズマプロセスグループ 45 ～48光学単結晶グループ 49 ～52先端結晶解析グループ 53 ～54超微細構造解析グループ 55 ～56高分子性酸化物グループ 57 ～58機能モジュールグループ 59 ～60超分子グループ 61～62独立研究グループ 63 ～6402ナノマテリアル研究所ナノマテリアル研究所の5年をふりかえって 67 ～70ナノ物性グループ 71～76ナノファンクショングループ 77 ～80ナノ電気計測グループ 81～84ナノデバイスグループ 85 ～88ナマファブリケーショングループ 89 ～90ナノキャラクタリゼーショングループ 91～92ナノシンセシスグループ 93 ～94ナノ電子光学材料グループ 95 ～96ナノマテリアル立体配置グループ 97 ～98ナノアーキテクチャーグループ 99 ～102ナノ量子輸送グループ 103～104原子エレクトロニクスグループ 105～106ナノ量子エレクトロニクスグループ 107～110バイオナノマテリアルグループ 111～112極限場ナノ機能グループ 113～11603材料研究所材料研究所の5年 119～126高比強度材料グループ 127～130高融点微結晶材料グループ 131～132超耐熱材料グループ 133～134溶射工学グループ 135～136耐照射材料グループ 137～142基礎物性グループ 143～144機能融合材料グループ 145～152圧電体単結晶グループ 153～160ナノ組成解析グループ 161～166反応・励起のダイナミックスグループ 167～168腐食解析グループ 169～172高輝度光解析グループ 173～176微粒子プロセスグループ 177～182微小造型グループ 183～188複合材料グループ 189～190設計試作グループ 191～19204生体材料研究センター生体材料研究センターの5年 195～204組織再生材料グループ 205～206機能再建材料グループ 207～208人工臓器材料グループ 209～210細胞基盤技術グループ 211～212バイオエレクトロニクスグループ 213～214医療応用技術グループ 215～21605超伝導材料研究センター超伝導材料研究センターの5年 219～226新物質探索グループ 227～228酸化物線材グループ 229～230金属線材グループ 231～232薄膜・単結晶グループ 233～234SQUIDグループ 235～23606計算材料科学研究センター計算材料科学研究センターの5年 239～240第一原理物性グループ 241～246第一原理反応グループ 247～252強相関モデリンググループ 253～256粒子・統計熱力学グループ 257～26407超鉄鋼研究センター超鉄鋼研究センターの4年間 267～282冶金グループ 283～294金相グループ 295～302耐熱グループ 303～316耐食グループ 317～320溶接グループ 321～32808エコマテリアル研究センターエコマテリアル研究センターの5年 331～338環境循環材料グループ 339～342エコデバイスグループ 343～350環境エネルギー材料グループ 351～354環境浄化材料グループ 355～358軽量環境材料グループ 359～36009強磁場研究センター強磁場研究センターに関する5年 363～364磁場発生技術グループ 365～366低温発生技術グループ 367～368磁場科学グループ 369～372材料・プロセスグループ 373～37410材料基盤情報ステーション材料基盤情報ステーションの活動 377～386クリープ研究グループ 387～392疲労研究グループ 393～394腐食研究グループ 395～398極低温材料グループ 399～400高温材料グループ 401～402材料データベースグループ 403～41211分析ステーション分析ステーションの4年 415～420分析基盤グループ 421～422金属系分析グループ 423～424セラミックス系分析グループ 425～42612超高圧電子顕徴鏡ステーション超高圧電子顕微鏡ステーションの1.9年 429～430高分子機能解析グループ 431～432その場解析グループ 433～43413ナノテクノロジー総合支援プロジェクトセンターナノテクノ ロジー総合支援プロジェクトセンター 437～43914若手国際研究拠点科学技術振興調整費・戦略的研究拠点育成プロクラム「若手国際研究拠点」441～44715物質材料工学専攻物質材料工学専攻の活動を振り返って 449～45216データ集 455～46117イベント集 463～467NIMSの5年を振り返って独立行政法人物質・材料研究機構理事長岸 輝雄独立行政法人物質・材料研究機構(National Institute for Materials Science : NIMS)は、旧無機材質研究所と旧金 属材料技術研究所が統合し、平成13年4月1日に発足しました。平成18年3月31日までの5年間が独立行政法人とし ての第1期中期計画期間となります。NIMSは、物質・材料に関する基礎・基盤研究を行う研究機関ですが、この第1期においては、「ナノ物質・材料」、 「環境・エネルギー材料」、「安全材料」、「研究基盤・知的基盤」を重点領域として研究を推進してきました。この5年 間の研究内容等の詳細は後節をご覧頂きたいと思いますが、構造用金属材料、超伝導材料、磁性材料、半導体材料、 生体材料、環境用材料、光学材料、複合材料、分析・評価技術、シミュレーション技術、データベース・データシー ト、 国際標準など物質・材料に関わる幅広い分野において多くの成果が得られたものと考えています。また、第1期中期計画期間において、NIMSは多くの改革を進めるとともに、新しい取り組みも積極的に推進してい ます。組織面では、旧2研究所の融合を図りつつ、またミッションを明確にして効率的に研究を推進できるよう、3研究 所、6センター、3ステーションの体制としました。すなわち、研究者のホームグラウンド的な研究所、分野を定め て研究を推進するセンター、設備の共用、知的基盤を推進するステーションです。また、機構の運営に関わる制度・施策を企画する部門として運営5室を設置しました。これに加えて、新しい取り組みとしてナノテクノロジー総合支援プロジェクトセンター、若手国際研究拠点、及び 筑波大学大学院の独立連係専攻博士後期課程の運営も開始しています。ナノテクノロジー総合支援プロジェクトセンターは、文部科学省から運営を受託したもので、施設の共用、研究情 報の循環を通してナノテクノロジー研究者のネットワーク構築を支援する組織です。若手国際研究拠点では、多くの国籍、多くの分野の若手研究者を世界から広く集め、異分野・異文化のぶつかり合 い、国際的環境という刺激の中で新分野の独創的研究を行っています。また、筑波大学数理物質科学研究科内に独立連係専攻として設置した「物質・材料工学専攻」は、物質・材料工学 分野における高度な研究型専門職業人を養成することを目指した新しい方式の連携大学院です。これらの取り組みは、国際的に開かれた研究所への脱皮、優秀な人材の確保、国内外の研究ネットワークの構築な どNIMSの運営構想に密接に結びついた取り組みであり、今後も積極的に推進していきたいと考えています。制度面では、研究者個人業績評価制度の導入、エンジニア職の設置、内部競争的資金の設置等を行いました。研究職の個人業績評価制度は、論文、特許、ものつくり等を定量的に評価し、処遇に反映させる業績主義の制度で す。優れた業績をあげた研究者に報いることができる透明かつ公平な体制を作ることができたと考えています。エンジニア職は、高度な技術を必要とする研究支援的業務を行う職種です。研究支援を行う職員を適切に位置付け、 正しく評価・処遇を行うことができるようこの職種を新設しました。内部競争的資金は、研究者の斬新な発想を生かし、次期のプロジェクトの芽を育てるための研究資金です。個人研 究、チーム型研究などいろいろな形で萌芽研究をできるようにし、アクティビティの高い研究環境の形成につなげる ことができればと考えています。これらの改革を進めることによってNIMS全体の業績は量、質ともに大きく向上しました。独法化前と比較して論文 数は1.9倍になっています。またISIのMaterials Science分野における論文引用回数は3.4倍(論文1報当たりでは1.8倍) となり、その世界ランキングは独法化前30位から独法化後4位へと飛躍的に上昇しています。特許については出願件数、登録件数ともに2倍程度に増加しました。これに伴って民間企業等への技術移転も進ん でいます。NIMS発の技術によるベンチャーはこれまでに6社が立ち上がりました。この他、運営の面でも活性化が進んでいます。国際関係では、これまでに73の機関と国際共同研究覚書を、8の機 関と国際姉妹機関協定をそれぞれ締結し、7の大学と国際連携大学院を行っています。来客数は広報室を介したもの だけで年間2,000人以上となっています。産学独連携も活発に行い、民間企業、大学等と300件程度の共同研究を推進し ています。以上に述べた取り組みに加えて、物質・材料研究に関する中核的機関としての活動も開始しました。国際的取り組 み・情報発信の強化、知的基盤の強化、産独・学独の連携強化の3つが大きな項目です。より具体的には、世界材料 研究所フォーラム(世界の物質・材料研究をリードする代表的な機関が一堂に会し、研究動向に関する情報交換およ び連携を行う会議)の開催、物質・材料研究アウトルック(物質・材料研究の動向をまとめた白書)および国際学術 誌(Science and Technology of Advanced Materials)の発行、材料研究プラットフォーム(産業界を中心とした産学 独の研究者が集まり、情報循環、共同研究を行う場)の構築、国際標準化、学独連携研究の推進などがその施策です。 これらの施策については、平成16年度に基本方針をまとめ、平成17年度から活動を開始していますが、H18年度からの 第2期中期計画においても強力に推進していく予定です。第2期以降、NIMSが進むべき研究の方向は、ナノテクノロジーを活用した持続社会形成のための物質・材料科学 “Nanotechnology Driven Materials Science for Sustainability”と考えています。このコンセプトに基づき、第2期中 期計画においては、「ナノテクノロジーを活用した新物質・新材料の創成」および「社会ニーズに対応した材料の高度 化」を重点領域として、20のプロジェクト研究に取り組む予定です。じっくり基礎・基盤研究を推進すること、すなわち長期安定性(Long Term Stabilization)ということがNIMSをは じめとする公的機関の使命ですが、新しいことに積極的にチャレンジし、進化を続ける研究機関でありたいと考えて います。第2期からの新生NIMSにもご期待下さい。新たな5年間に向けて独立行政法人物質・材料研究機構理事上原 哲国立研究機関であった金属材料技術研究所と無機材質研究所が2001年4月1日に統合し、独立行政法人物質・材料 研究機構が発足して以来、5年が経過し、この3月末に最初の中期計画期間が終了しようとしている。この5年間の歩みは、国立研究機関から独立行政法人への組織上の大きな変革期にあったと同時に、同じ材料の研 究機関でありながら、文化や伝統の異なる両機関の融合・発展の期間であったと言うことができる。幸いにして、機構に対する評価は役職員を含めた機構関係者の努力により、年を重ねる毎に着実に向上しつつある と承知しており、さらに、研究者個人の業績に対しても、各種の学会からの受賞をはじめ、2005年における「つくば 賞」の各賞受賞など高い評価を得ることができたことは喜ばしいことである。もちろん、喜んでいるばかりいても仕方がないのであり、機構にとって残された課題も多いことも事実である。まず、機構の役職員の身分を非公務員化することである。この3月末に中期計画期間が終了する独立行政法人は、機構を含む56法人あり、一昨年及び昨年の見直しにより、 56法人が42法人となるとともに、44法人について役職員の身分が公務員でなくなるという方針が決定されたことであ る。非公務員化に伴う主な変更点は労働3権の付与をはじめ、労働基準法の完全適用や雇用保険及び労災保険への加 入などがある。機構においては、これらに対応するため、人事企画特別委員会を設け検討が進められており、例えば、職員構成を 従来の常勤と非常勤の職員から、新たに定年まで勤務する定年制職員と現在の非常勤に代わる有期雇用の任期制職員 に変更したり、勤務のあり方も研究職に対して裁量労働制を導入したりする方向で議論が進められ、実行に移されよ うとしている。さらに、定年退職後、希望する職員が一定の年齢まで勤務が可能となるよう、新たにフレッシュキャ リア制度を設け、職員の支援を行うこととしている。今後、非公務員化に向けた法律改正が行われ、これが現実のものになるのもそれほど遅くないと考えられるので、 後れをとらぬよう十分準備を行っていきたい。次に、機構の業務運営のより一層の効率化である。機構の新たな5年間に向けて考えなければならないものとして、同期間中に達成すべき業務運営の目標をできる限 り定量的・具体的に定めるものとされており、特に、業務運営の効率化については厳格かつ具体的な目標を定め、よ り一層の効率的な業務運営を目指すものとされている。機構においては、従来から業務のアウトソーシングなどに努めてきたところであるが、新たに業務効率化推進委員 会を設け、今後5年間を見通しつつ、アウトソーシングを含む業務運営の効率化のより一層の推進に向けて検討を進 めてきている。この検討に当たっては、業務コストの削減はもとより、業務の迅速化、責任体制の明確化、透明性の向上など業務 品質の向上の観点から、検討結果の得られたものから着実に実行に移すこととなっている。特に、ITによる業務運営 の効率化は有力な手段であり、これについても配慮がなされることとなっている。これを進めるためには、現実の業務を進めながら行うわけであるので、機構の役職員を含む関係者の努力が不可欠 であり、機構が一体となって進める必要があることはもちろんである。この他にも、機構を取り巻く課題は山積しており、これらを解決しつつ、新たな5年間を歩むこととなる。最後に、最近の新聞記事に今年成人式を迎える大学生約1000人に「15年後の日本の姿」を聞いたところと題する記 事が掲載されている。これによると、15年後の日本の将来に対する楽観と悲観の見通しがほぼ拮抗しており、今より良くなる理由では、「景気の回復」、「ITや科学の進化」、「医療の発展」が上位を占めたとのことである。機構においても、15年後の物質・材料研究や機構のあるべき姿の検討が進められている。若者が今より良くなる理 由として取り上げた「景気の回復」、「ITや科学の進歩」、「医療の発展」という3点を考えると、機構が今後進めるべ き研究分野にいて、極めて示唆に富んだものと思えてならないし、それらに機構として答えていく15年間で必要があ ると考えているところである。H17.12.1今後の組織のあり方について(試案)―旧国研体質から脱し、近代経営へ―1.現状及び問題点①経営機能と執行機能の渾然一体化・執行の適正化のみ、改革・改善の努力に消極的・硬直な執行から柔軟な執行(現場で出来るものは現場で)②規模の拡大中小企業から中堅企業への脱皮→個別対応から組織対応へ (500人体制→1,500人体制)③公務員型→非公務員型本格的な一般企業並みの経営へ2.PDCAサイクルの確立3.本社機能と執行機能の分離 4.財務状況―減量経営への脱皮―5.事務部門の改革①問題点と改革の方向性総務 文書・法令の改革経理・調達 発注改革人事 ライフサイクルを考慮した人事改革 (採用・研修)厚生・福利 外注の検討施設 維持管理・コストの低減・安全 (図書館業務の外注他)業務推進 外部資金への対応強化広報 戦略広報への転換(ブランド価値の向上)情報システム コスト削減・インテグレーション独法化先導プログラムComet-NIMSと独学連携独立行政法人物質・材料研究機構理事鯉沼秀臣独立行政法人となった国立研究所と国立大学は、互いの資源を有効活用する独学連携を深めることによって、科学 技術の進歩とその応用分野の開拓により大きく貢献することが期待される。NIMSは独法化以来、筑波大学との連係大 学院はじめ、東北大多元研、東大工学系大学院マテリアル工学専攻との研究者交換、大学院博士課程学生を対象とす るジュニアリサーチアソシエート等の新たな制度を導入し成果を上げている。私が2005年3月まで在職していた東工 大とも、理工学研究科(大岡山)と総合理工学研究科(すずかけ台)や研究所にNIMSの研究者が連携または客員教授 のポストを得て講義や共同研究を進める一方、東工大(に限らないが)教員をNIMS客員研究員として学独連携による 研究の活性化が行われている。特に応用セラミックス研究所(旧工業材料研究所)は、NIMS前身の無機材質研究所と 古くから深いつながりがある。独法化に関連する応セラ研と無機材研との連携は1998年に始まっている。当時の科技庁石井利和材料室長に、その 2年前にスタートしたJSTの戦略基礎研究「コンビナトリアル分子層エピタキシー」の話をする機会があった。固体材 料研究を画期的に高速化する新技術は、国として取り上げるべき重要な開発課題であることを賢察した材料室は、2 年後の独法化を先導するプログラムとして、大学連携の新たなプロジェクト「コンビナトリアル材料科学技術の創製 と先端産業への展開(略称Comet)」を立ち上げた(もう1件は金材研ベースのプロジェクト「超耐熱材料(リーダー 原田広史)」)。Cometプロジェクトは、東工大の3グループ(鯉沼(リーダー)、川崎雅司、長谷川哲也)に無機材研 3グループ(渡辺遵、井上悟、羽田肇)と金材研1グループ(知京豊裕)で1999年にスタートし、2004年にはリーダ ーを知京に引き継いでさらに延長されている。多くの学術論文および日米ワークショップやMRSシンポジウム等の主 催を通して発信したComet-NIMSは、固体材料研究のフロンティア開拓者として世界に認知され、国内でも関心が高ま ってきている。4月に理事に就任してこれまでの8ヶ月間、平成18年度からの第2期中期計画の立案、職員採用等の共通業務のほ か、特命事項として若手国際研究拠点(ICYS)の中間評価への準備、世界材料研究所フォーラム(ロシア、インドへ の参加要請など)、知財(専門家の補充、国際特許の申請など)、強磁場センター(設備の改修と予算、共同利用研究 など)、ポータルサイトおよび標準化(システム等未解決)、独学連携(理科大、東大、テキサス大学等との新規計画 検討開始)、Spring-8ビームライン(有効活用、現地職員、コストパフォーマンス)等の問題を担当してきた。短期に は解決できない課題も多く、戦略室をはじめとする職員、研究者と情報を共有し、機構外の協力も得て、独法化NIMS の存在価値を高めるためのさらなる検討が必要である。また、機構は周囲の環境に恵まれていながら、研究ばかりで 文化の香りがあまり感じられない。ピアノの設置と演奏会、図書室の一部サロン化による有効利用、等も今後の検討 課題として提案したい。特命担当に指名された2020年(NIMSのあり方)委員会において、男女共同参画等の2020年ま で待てない問題に含めて、若手を中心とする委員会メンバーとともに考えていきたい。理事担当業務について独立行政法人物質・材料研究機構理事野田哲二平成17年4月に着任し、業務として運営5室のうち評価室、国際室を、また研究所、センターならびにステーショ ン、委員会については、国際化推進委員会、図書委員会、研究スペース委員会、研究施設・設備委員会、ペタフロッ プス委員会、物質・材料研究アウトルック検討委員会、特命事項として研究スペースの配分、研究職、エンジニア職 の評価を担当した。主にかかわった活動について以下に記載する。1.評価関係について17年度における最も大きな事項は、第1期中期計画(平成13年～17年)の最後の年となるため、総合科学技術会議 の第3期基本計画の策定作業を見つつ、次期中期計画重点領域の設定と評価であった。また、毎年実施されている独 法評価対応である。いずれも相互に関連するものであるため、戦略室、評価室が一体となって資料準備にあたった。すでに次期計画作業は平成16年度から開始されており、平成17年3月までには、ほぼ提案課題が固まりつつあり、 平成17年4月から直ちに事前評価作業が始まった。5月に入り、約1ヶ月間にわたる学識者による事前ヒアリングと 評価とりまとめ、6月末には企業からの意見徴集によるNIMS懇話会、7月末にはNIMSアドバイザリーボードによる 評価を受けた。さらに重点領域テーマの内容がブラッシュアップされた後、総合科学技術会議へ提案された。次期計 画の重点領域テーマはナノテク活用による新物質創製と社会ニーズに応える材料高度化の2分野、6領域、20課題か らなる。テーマの取りまとめは総合戦略室、学識者による評価は、評価室、NIMS懇話会は知財室、アドバイザリーボ ードは戦略室と国際室、総合科学技術対応は戦略室と、ほぼ運営5室全部がかかわる作業であった。一方、独法評価委員会による評価は平成15年度のフォローアップを含めた平成16年度の実績評価である。この評価 対応作業も4月より開始し、8月までに3回の評価を受けた。評価結果は独法評価委員会総会へ報告された。この結 果もまた総合科学技術会議による評価の参考とされている。評価作業等の具体的内容については、各室の活動報告にゆだねるが、理事長以下各理事、担当課室のみならず、職 員全員が一丸となってあたった作業であった。10月に入り、ほぼ次期計画が見えつつあるようになったのも、各室の スムーズな連携のたまものであると考えられる。一方、機構内の職員の評価に関して平成17年2月～3月に行われた平成16年度の試行評価を受けて、4月より平成 17年度の評価が実施されている。個人業績評価方法については、毎年試行がなされているが、エンジニア職、事務職 に関しても定量的な評価が難しいものの、それぞれ一定の共通的な客観的な指標が求められるであろう。2.各ユニット、各委員会の活動について各ユニットにおける運営はそれぞれにまかされており、研究活動等は、ほぼ順調に行われた。国際化推進委員会、 アウトルック検討委員会は、いずれも平成17年10月に立ち上がったばかりであるが、それぞれ、推進方策の具体化、 アウトルック第2号の発刊内容方針が決まりつつある。ペタフロップス委員会では、平成18年から開発開始予定のペ タプロップス計算機に関して、他機関との連携のもと、当機構としての積極的な利用、寄与について検討を行ってい る。3.研究スペース関係公平かつ効率的な研究スペース利用のための機構全体にわたる共通的なガイドライン設定とともに、その実行は長年の課題である。特に競争的資金の拡大、民間との共同研究を進めるプラットフォームの充実のためにはさらに一層 の効率的な研究スペース利用が求められている。このため、平成17年度にはいり、まず課金制度導入を含めた研究ス ペースガイドラインを作成し、職員説明会、幹部会を通じてほぼその骨子が固まった。これをもとに平成17年10月に はスペース委員会が発足した。一方、研究スペースデータに関して、職員すべてが見ることができるように、イント ラネット上で検索、修正できるシステムを試作し、6月より公開している。研究スペースガイドラインの実行にあた っては、居室並びに大型、特殊、共用、一般等の実験スペースの使用者ならびに利用形態に応じた課金制度の詳細を つめていく必要があるが、平成18年度当初より、新研究スペース利用制度を実施する予定である。すでにウェブ上で公開している設備管理データベースについても、研究スペースと深く連動しているため、キーワ ード検索ができるように改良を進めている。なるべく早急に、スペースと設備管理を一体化したデータベースシステ ムにしていく必要がある。4.その他独法評価委員会で、業務の一層の効率化が指摘されているが、勤務時間管理、個人業績評価システム、経理システ ム、研究設備、研究スペース等は相互に関係しており、研究者それぞれがイントラネット上で最新の状況を知ること ができるような統一的な管理システム構築が望まれる。中核機関としての機能強化について独立行政法人物質・材料研究機構元理事広瀬研吉私は、物質・材料研究機構の事業の基本方針として、最も重要な意義のあるものの一つは、岸理事長が平成16年9 月に示された「物質・材料研究機構の中核機関としての機能強化について」であると思います。機構の第1期は、金属材料技術研究所と無機材質研究所とを一緒にすることと独立行政法人としてスタートするこ とを同時に行うという大事業を進めることでありました。このことは、岸理事長のリーダーシップの下に役職員が一 丸となって成し遂げてきました。そして、平成16年の後半の次第に第2期が視野に入ってきつつある頃、一つの組織 としての「物質・材料研究機構」の明確なあり方が岸理事長から示されたことは、機構が第1期の事業の総仕上げを 進めていくという意味においても、また、第1期から第2期に事業を連続的に発展させていくという意味からも重要 なものであったと言うことができます。この基本方針の趣旨は、文中に、「物質・材料研究機構は、物質・材料研究を専門にする我が国唯一の独立行政法人 であることから、自らの研究活動の推進と相まって我が国の物質・材料研究活動の全体を底支えし、また、ひいては 国際的な物質・材料研究活動をも支える中核機関としての役割を果たさなければならない。」と的確に示されています。 この基本方針の趣旨に沿って、国際的取組み・情報発信の強化、知的基盤の強化、産独、学独の連携強化の各分野に おける具体的な行動計画が示されています。私は、機構がこの基本方針において、国内外の物質・材料研究活動の推進と発展に寄与する、すなわち、社会によ り積極的に貢献する強い意志を示したことは、広く今後の独立行政法人のあり方の範になるものと信じています。セットアップ独立行政法人物質・材料研究機構元理事渡辺 遵前任者の辞職に伴い、平成17年1月1日より同年3月31日までの3ヶ月間、セットアッパーとして理事に着任した。 その間の主たる活動は①エンジニア職に関すること、②研究スペースの有効利用に関すること、③知財に関すること である。実施業務の概要を以下に記す。なお、それらは特命活動であり、その他に担当ユニットに関すること及び1 ～3月期に定例的に実施される当機構職員の各種評価などの経常的業務も含まれる。1.エンジニア職制度に関する活動当機構は研究の更なる高度な展開に向け、研究とは別の視点で技術支援業務を適正に評価し、その評価結果を担当 職員の処遇に適正に反映させることにより、技術支援の安定した確保と支援技術の持続的発展を促すことを期待して、 機構発足以来新たな職種としてエンジニア職の設置を構想してきた。当該職種は独法制度の浸透とともに平成16年4 月に日の目を見たが、職員の処遇に関わるため慎重を期し当該年度内に制度の修正、改定を行いつつ完全実施への移 行を図った。小職は丁度制度調整の時期に担当することになり、主要な業務として次年度へ向けたエンジニア職職員 の「評価実施要領」や「昇格基準及び暫定の昇格基準」等の修正や改定を行った。この他、エンジニア職の評価、異 議申し立て、職種切り替え等に関する定例業務を行った。2.研究スペースの有効利用に向けた活動研究スペースが十分に有効利用されていない状況は、機構の設立以前からの課題であるが、機構に固有の課題とい う訳でもない。ただ、機構における有効利用の促進に向けた活動が機構設立後これまで実質的に機能しなかった原因 は、機構の母体となった両機関の研究体制の違いに発する研究スペース管理方針の極端な違いにあることが統合当初  から指摘されてきた。この相違点は一朝一夕に調整し難いが、3年間近くの模索の後辿��り着いた結論は、有効利用の 障害の元凶、即ち異常に膨れ上がった利用スペースの実態にメスを入れることであった。その有力な解決策として、 研究者への配分スペースの基準とスペース課金制度の導入が期待された。小職は担当後筑波3地区の研究スペースの 実態を隈なく調査し、地区ごとの問題点の洗い出し、その調査をもとに機構本部によるスペースの一括管理に基づき、 基準配分スペースと課金制度を基本とした新たなスペース運用方針の原案を作成し、後任者に引き継いだ。また、担 当理事による一括管理のもと、スペースのモザイク状利用の改善や新施策材料研究プラットフォーム用居室スペース の確保などの定例業務を行った。3.知的財産室に関する活動この活動は最も広範に及び、中核機能強化の視点から、産独共同に資する材料研究プラットフォームに関する方針、 知的財産ポリシーと利益相反マネージメントポリシー、及び国際標準化に関する方針等の策定に関わる活動を行い、 材料研究プラットフォームに関する方針については成案の成就に資し、知的財産ポリシー、利益相反マネージメント ポリシー、及び国際標準化に関する方針については原案の作成に資し、後任者に引き継いだ。その他、特許審議、技 術展開など知的財産室の経常業務に関わる活動を行った。機構での3年9ヶ月独立行政法人物質・材料研究機構元理事加茂睦和早いもので物質・材料研究機構が発足して5年が経とうとしている。2001年4月1日機構の発足は、それぞれ35年 と45年の歴史、文化そして伝統をもつ二つの研究所、無機材質研究所と金属材料技術研究所の統合でもあった。当初 は何かにつけ軋轢が感じられたが、できるだけ是々非々の立場であたるように努めていた。比較的早いところで把握 しなければならなかったことは、昇任昇格の基礎となる研究業績と研究スペースであった。研究業績は2研究所で集 計の仕方が異なっていたが、その後評価室で一元化され基準の統一が進められた。また研究スペースに関しては、確 かはじめの2001年に40名程度の研究者が採用されたと記憶しているが、ところが新採用者用の研究スペースが十分に 確保できないおそれが出てきたため、研究スペースの調査を行うとともに、緊急避難的手段として、中期計画期間内 の定年退職者の装置を原則廃棄とし実験室を確保した。その後新しい建物も建ち研究スペース不足は解消していると 聞いている。研究スペースは長く在籍している人ほど、また早くできた組織ほど大きく、概して新規採用者には不利 となりがちである。どうしたら限られたスペースを有効に使えるか、頭の痛い課題であった。約4年の任期中で最も気を使ったことは評価の対応であった。いい評価を得るためには研究者の協力は不可欠であ るが、評価が増えれば研究者の負担が多くなりがちで、できるだけ負担をかけないよう、評価委員の先生方の協力得 て努力したつもりである。しかしまた評価かという声を聞くたび身が縮む思いをしていた。機構評価の結果は年を追 うごとに着実に高くなっていると聞き、役職員を含め機構関係者の努力が報われているものと喜ばしい限りである。NIMSフォーラムは、いわば機構の成果報告会である。また機構で開発された成果を企業に宣伝し、技術移転を促進 する場でもある。出来るだけ多くの人に足を運んでもらえるように、実行委員会、事務局共々努力をしたつもりであ る。技術移転は年を追うごとに増え、また収入も増加していることは、もちろん知的財産室の努力の賜物であるが、 NIMSフォーラムもその一助となっているのではないだろうか。このフォーラムの会場は、聴衆の都合を考慮すれば山 の手線の内側が望ましいと会場探しに努めたが、2002年第1回の芝パークホテルを除いて、第2、3回は東京ビッグ サイトで開催せざるを得なかった。第4回はその夢叶って有楽町の東京国際フォーラムで開催と聞き、今までにない 盛り上がりを期待している。機構での3年9ヶ月は、過ぎてみればまたたく間であったが、新しい組織の立ち上げをお手伝いできたことは、私 なりに苦労はあったが、忘れられない思い出である。伝統を守ろうとすると統合組織では軋轢を生じる。「伝統は作る もの」を心に銘じて努力をしたつもりである。これから機構としてすばらしい伝統と歴史が積み上げられていくこと を望んでやまない。NIMSの揺籃期を思い出しながら独立行政法人物質・材料研究機構元理事齋藤鐵哉平成13年3月12日付けで独立行政法人通則法にある(独)物質・材料研究機構設立委員会委員の任命を受け、数回 の「プレ理事会」が開催されて新しい研究機構の助走が始まった。同年4月1日の正式な(独)物質・材料研究機構 の誕生とともに私の担当した課題は、将来計画の策定であった。新しい研究機構としてスタートは切ったが、ある意 味で見切り発車。進むべき方向は必ずしも明白とはいえない状況であった。「将来計画」は、何から手をつけたら良い のか戸惑うほどに大きな課題であった。検討委員会を発足させいただき、全委員の頑張りで少しずつ仕事をこなして いった。以下に、その中のいくつかについて振り返って記してみた。1.研究組織当研究機構は、研究組織としては物質研究所、ナノマテリアル研究所及び材料研究所の3研究所体制で発足した。 しかし、研究業務の効率的な推進のために、研究組織のフラット化を目指して研究組織再編の検討が行なわれること となった。そして、平成13年10月に3研究センターと1ステーションが発足した。さらに、平成14年4月には3研究 センターと1ステーションがそれに加わった。当機構に必要な人材があれば、国内各地から招聘することも併せて検 討したように記憶している。その後、平成16年5月には超高圧電子顕微鏡ステーションが発足して、最終的に研究組 織が整って現在に至っている。2.情報の流れ当研究機構は、2つの国立研究機関が合併して発足したため、東京都目黒区、名古屋市志段味地区及び西播磨の放 射光施設を含め全部で6箇所の研究サイトを擁しており、各種の情報がともすればうまく流れないという問題を抱え ていた。そのために情報の流れの道筋を検討、整理することを試みた。この件に関しては、その後も研究組織が増え るにつれて、その都度検討、改善が試みられてきた。3.研究者評価システム研究者評価に関する検討が開始されたのは、比較的早い段階であった。研究結果が客観的に評価できるような手法 を導入しようということで、新しい試みとしてインパクトファクターを用いた数値化の提案が行われた。研究者の評 価手法は、その研究機関の性格をも左右すると言われるほど重要な問題であり、将来計画委員会の提案は、将来計画 委員会の手を離れてからもさまざまな検討が加えられて、最終決定をみるまでには、試行を含めて長い時間を要する こととなった。4 .研究施設等の外部開放(独)物質・材料研究機構法の第14条に当機構の行うべき業務が述べられており、その1つに「機構の施設及び設 備の共用に供すること」が掲げられている。国立研究所時代には特定の民間企業の研究に施設や設備を開放し便宜を 図ることに対しては躊躇せざるを得ない状況があった。研究者の意識の変革が必要であり、施設や設備の外部開放に 関する基本的な考え方を議論、整理した。平成13年の秋頃には機構内の組織も概ね整い、将来計画の企画、推進に関しても次第に総合戦略室に移行した。そ れにつれて私の担当する業務は「産学独連携」の方に比重を移すこととなった。「産学独連携室」についても、委員会を発足させてもらって、さまざまな検討を行った。5.大学との連携従来の大学との連携交流の枠を越えて、人事交流を行うとの意図で話し合いを行い、東京大学及び東北大学と教授 あるいは助教授クラスの人材を期限付きで交換することが決まった。私立大学を含め他にもいくつかの大学から提案 をいただいたと記憶しているが、大学との人事交流は初めての例であり、まずは上記二大学との間で人事交流を開始 した。またこれと並行して、国立研究所時代から懸案となっていた筑波大学との緊密な協力関係の構築を目指して、 大学院後期課程物質材料工学専攻の機構内新設の提案があり、検討が開始された。6.民間企業との意見交換(独)物質・材料研究機構法の第14条にある「当機構の成果の普及とその活用の促進」を目的として、国内民間企 業の方々との情報交換を行うために、NIMS懇話会の開催を企画した。そして、平成14年12月初旬に第1回と第2回を 相次いで東京と大阪で開催し、それぞれの地区の企業人との意見交換を行った。また、外部との連携が拡大し深まる につれて、利益相反マネージメントに関して考え方をまとめておく必要を感じ、さまざまな議論を行ってきた。しか し、この件に関しては結論を得るには至らずに、後任の方に引き継ぐことになった。独立行政法人物質・材料研究機構が設立されて既に第1期中期計画、5年が過ぎようとしている。この原稿を書き ながら設立当初のことを思い浮かべている。組織が変わり、運営形態が変わり、発足当初はいろいろと混乱はあった が、同時に熱気に満ちていたように思う。5年が過ぎて、混乱は去ったように見受けられる。しかし、当時の熱気は 何時までも残っていてほしいと思っている。1物質研究所$e i EBA i物質研究所の5年室町英治1.はじめに平成13年度、国立研究所から独立行政法人への移 行にともなって旧金属材料技術研究所と旧無機材質 研究所の統合が断行された。物質研究所は物質・材 料研究機構の発足と同時に、平成13年4月5年間の 歩みを始めることとなった。物質研究所のミッションは、平成13年度年報の渡 辺前所長の巻頭言から抜き出すと、「物質探索、機 能探索など新たな材料の創出に不可欠な物質に関わ る基礎・基盤的研究を先導的視点で押し進め、物 質・材料科学の発展に寄与するとともに、実用性の 高いものについては機能化、材料化を民間等と連携 して物質から材料への展開を加速し、産業界の発展 に貢献すること」とされている。さらに、この巻頭 言から、物質研究所の特徴を表す、「次世代のシー ズを育てる為の基礎研究」、 「個人の発想の尊重」、 「新材料・新機能、新プロセス、新手法」などのキ ーワードを見つけることができる。物質研究所がどこよりも旧無機材質研究所から多 くを継承したことは否定しようがない。その中には 独法化の大きな流れの中で消えていったものもある  し、今現在も研究所の支柱として働き続けているも のもある。後者にあたるものとして理念上重要なこ とをあえて二つあげるとすれば、「基礎研究の重視」 と「研究者個人の発想の尊重」であろう。この2点 において、物質研究所は無機材質研究所の正当な嫡 子であった。本稿が今後の機構の発展に何らかの参考になるこ とを願いつつ、この間の物質研究所の歩みを、組織 や研究テーマの変遷、研究成果などを中心として振 り返ってみたい。2.組織、研究テーマの変遷物質研究所はグループ制というフラットな研究制 度を無機材質研究所から引き継ぎ、柔軟で競争的な 研究体制のもとで研究を実施して来た。グループ研 究課題(萌芽的研究課題)は審査委員会の審議を経 て決定され、各グループは5年間継続して目標の達 成を目指し、その後解散、再編成を行うというのが グループ制のアイデアである。他方、このようにし て形成されたグループはプロジェクト研究の実施主 体ともなる。独法化後の機構全体の大きな組織改革 や、中期計画5カ年間の制約等から、グループ制を 文字通りには実施できないこともあったが、基本的 な理念は生き続けて来た。平成13年度から17年度までのグループ名と実施課 題を表1に記載する。また、平成17年11月現在の組 織の概要を図1に示す。平成13年度の体制はほぼ旧無機材質研究所のそれ を引き継ぐとともに、数種類の独立研究テーマ(グ ループ研究とは異なり、個人の研究者が期間を定め て行う研究課題)発足させた。13年度及び14年度における3研究所からの6セン ターと2ステーションの独立を受けて、14年度の組 織からは超伝導、生体、環境、計算のグループが姿 を消している。他方、14年度には、前年度に解散し た硫化物や構造材料グループに代わり、非酸化物焼 結体グループ、先端結晶解析グループを立ち上げ、 また、6課題の独立研究を発足させている。さらに、 新領域への挑戦として高分子材料の分野に着目し、 外部の専門家をグループ統括責任者として招聘し て、当所の既存研究資源との相乗効果による斬新な 展開を期待して、無機材料と高分子材料の境界領域 の研究を行う、高分子性酸化物グループを発足させ た。14年度に光学単結晶、電子セラミックス、スーパ ーダイヤモンド、ホウ化物、酸化物焼結体、酸化物 環境材料、及びソフト化学の7グループの解散を決 め、新課題の提案を募った。その結果、15年度には 内部から6つの新たな課題を立ち上げ、さらに、新 領域の充実のため前年度に引き続き外部の専門家を グループ統括責任者に招聘して超分子研究に関する 新グループを組織した。平成16年度にはマックス・プランク研究所からリ ーダーを招聘して、3番目の有機・高分子関連グル ープである機能モジュールグループを立ち上げた。平成17年度は機構第Ⅰ期中期計画の最終年である ことを考慮して、16年度の組織をそのまま維持して いる。こうして見ると、無機材質研究所に端を発す るグループ研究制度は物質研究所においてかなり忠 実に継承されたことがわかる。また、そのことが研 究の活性化にかなりの貢献を果たしたと考えてい る。図1 平成17年11月現在における物質研究所の組織概要 表1.平成13～17年度における研究グループと研究課題 平成13年度・硫化物グループ銅族複合カルコゲナイトに関する研究・ケイ酸塩グループ多孔質ケイ酸塩に関する研究・ホウ化物グループホウケイ化イットリウムの研究・焼結体グループ蛍石型酸化物セラミックス・環境材料グループルテニウム・チタン基化合物・ガラスグループシリケートガラス表面パターン形成・超伝導体グループ高圧安定超伝導体に関する研究・構造材料グループサイアロン:Si-M-Al-O-N・電子材料グループ酸化亜鉛基化合物・ソフト化学グループ スズ・チタン酸塩・生体材料グループ生体組織再生材料に関する研究・単結晶グループ定比ヒオブリチウム・タンタル酸リチウム結晶・スーパーダイヤグループダイヤモンド、窒化ホウ素および関連物質・超高圧ステーション超高圧発生システムの開発と利用に関する研究・超微細構造解析ステーション・計算科学ステーション・独立研究、特別主幹研究平成14年度・ホウ化物グループホウケイ化イットリウム(YB41Si1.0)・超高圧グループ超高圧力発生システムの開発と利用・非酸化物焼結体グループ高機能構造用セラミックス・電子セラミックスグループ酸化亜鉛基化合物・機能性ガラスグループシリケートガラス表面パターン形成・ソフト化学グループ スズ・チタン酸塩・スーパーダイヤグループダイヤモンド、窒化ホウ素および関連物質・酸化物環境材料グループ(ルテニウム・チタン)基化合物・光学単結晶グループ定比ニオブリチウム・タンタル酸リチウム・酸化物焼結体グループ蛍石型酸化物セラミックスの材料開発・先端結晶解析グループ非周期結晶解析と粉末法、電子顕微鏡法の高度化・超微細構造解析グループ超微細構造解析技術の開発と利用・高分子性酸化物グループ高分子性酸化物・独立研究グループ平成15年度・ホウ化物グループ高融点ホウ化物・超高圧グループ超高圧力発生システムの開発と利用・非酸化物焼結体グループ高機能構造用セラミックス・電子セラミックスグループヘテロウルツァイト化合物・機能性ガラスグループシリケートガラス表面パターン形成・ソフト化学グループ酸化物ナノシート・スーパーダイヤグループダイヤモンド、窒化ホウ素および関連物質・プラズマプロセスグループプラズマプロセス酸化物微粒子合成・光学単結晶グループ強誘電体ニオブ酸結晶・先端結晶解析グループ非周期結晶解析と粉末法、電子顕微鏡法の高度化・超微細構造解析グループ超微細構造解析技術の開発と利用・高分子性酸化物グループ高分子性酸化物・超分子グループ二次元分子パターンの作成と機能・独立研究グループ平成16、17年度・ホウ化物グループ高融点ホウ化物・超高圧グループ超高圧力発生システムの開発と利用・非酸化物焼結体グループ高機能構造用セラミックス・電子セラミックスグループヘテロウルツァイト化合物・機能性ガラスグループガラスの機能発現・ソフト化学グループ酸化物ナノシート・スーパーダイヤグループダイヤモンド、窒化ホウ素および関連物質・プラズマプロセスグループプラズマプロセス酸化物微粒子合成・光学単結晶グループ強誘電体ニオブ酸結晶・先端結晶解析グループ非周期結晶解析と粉末法、電子顕微鏡法の高度化・超微細構造解析グループ超微細構造解析技術の開発と利用・高分子性酸化物グループ高分子性酸化物・超分子グループ二次元分子パターンの作成と機能・機能モジュールグループ機能性モジュールに関する研究・独立研究グループ3.プロジェクト研究第Ⅰ期中期計画期間中に物質研究所が中心となっ て遂行したプロジェクト研究の概要は以下のとおり である。(1)欠陥制御ダイナミックスによる光機能化に関す る研究ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムは、電気 光学効果、非線形光学効果等に優れていることから、 超高密度、超高速伝送技術あるいは超大容量記憶メ ディア等の光機能素子材料としてとしての応用が期 待されているが、結晶中の多量の欠陥が実効的な光 機能特性の発現を制限している。本研究では、ニオ ブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の単結晶育成 および後処理における欠陥導入のダイナミクスを研 究し、より高度に機能化された単結晶を作成すると ともに、光機能特性評価の標準化を通して、優れた 実用レベルの光機能材料の開発を目指した。する評価の標準化を達成した。(2)超常環境を利用した新半導性物質の創製・材料 化に関する研究このプロジェクトでは、「超高圧」、「超高温」、 「超微細」の超常環境を連携して利用し、半導体ダ イヤモンドのような新半導性物質、新高密度物質な どの探索・創製および解析を行う。これにより、世 界最高水準の超常環境利用技術の開発を達成すると ともに、pn接合により紫外発光する高品質半導体ダ イヤモンド薄膜ダイオードの創製技術を確立するこ とを目的とした。代表的な成果の一つとして、先のプロジェクトで 作製に成功したリンをドープしたn型ダイヤモンド を用いてpn接合素子を作製し、それが紫外線 (235nm)発光特性を示すことを発見した。また、 230nm以下の紫外線のみを検出する機能を持つこと も明らかにした。図3にダイヤモンドpn接合からの 紫外線発光を示す。図3半導体ダイヤモンドpn接合からの紫外線発光図2 クラック、双晶、インクルージョンがない4イ ンチMg添加定比タンタル酸リチウム結晶この結果、種々の先導的な成果が得られた。例え ば、図2に示すように、二重るつぼ法により、実用 レベルである4インチ径タンタル酸リチウム単結晶 のほぼ無欠陥化を達成した。また、複屈折率ゼロの 中間組成単結晶の育成にも成功した。さらに、実際 に波長変換デバイス、光変調器を試作し、その評価 を行うことでデバイスにおける問題点を材料開発に フィードバックし、実用レベルの単結晶育成技術の 開発につなげるとともに、光機能の欠陥依存性に関 図4 高純度hBN単結晶とそのカソードルミネッセン ス(CL)発光スペクトル一方、超高圧合成法を用いて極めて純度の高い六 方晶窒化ホウ素(hBN)単結晶の育成に成功した。 このhBN結晶は非常に強い紫外線発光(215nm)を 示す直接遷移型半導体であり(図4)、さらにレー ザー発振することを明らかにした。(3)光機能粒子性結晶の創製に関する研究このプロジェクトでは、高効率のレーザー素子や超小型の波長選択素子等の光情報通信技術のための 新しい光素子の開発素材の研究の一環として、微粒 子を構成単位とした結晶である「粒子性結晶」の創 製に関する研究を行ない、一軸方向が1cmに達す るような単結晶の作製技術を開発することを目的と して研究を行った。その結果、コロイド結晶状態をとるコロイド溶液 を、一定以上の強度で流動させ、大きなせん断流動 場を形成することで、平方センチメートルにわたる 大面積で単結晶化させることに成功した。手法は圧 縮空気駆動でコロイド溶液を平板状キャピラリー空 間で流動させるというもので、秒オーダーの短時間 で単結晶配向した組織が得られる。この手法は、工 業的な自動化にも適しており、大量生産技術へと展 開しうるものである。(4)ナノスケール環境エネルギー物質に関する研究 の推進本研究では環境の浄化や太陽エネルギーの効率的 な活用に適応した新材料を実現するため、酸化物や 非酸化物など無機系物質においてナノチューブ、ナ ノワイヤー、ナノ剥離シート、ナノ複合粒子など斬 新かつ多様な形態を持つナノスケール物質を創製す ることを目的とした。さらにそれらをナノレベルで 組織化させ、各々の素材の持つ機能の集積や混成効 果を利用した新素材を開発することを目指した。本研究により多種多彩な新規ナノ物質・材料が開 発されたが、その一つがカーボンナノチューブを利 用したナノ温度計(図5)であり、世界最小の温度 計としてギネスブックにも認定されている。また、 BN、MgO、In2O3、 Si、GaN、AlN、Ga2O3等様々なカ ーボン以外のナノチューブの作成に成功した。ナノ シートの研究としてはソフト化学的手法を確立し て、マンガン酸化物系、チタン酸化物系など種々の 酸化物ナノシートを創製した。これらは厚さ約1 nmの2次元結晶であり(図6)、バルクでは得られ ない種々の特異な物性を示すばかりでなく、薄片状 酸化チタンなどの機能性材料への出発物質として極 めて有用であることを実証した。(5)有害化学物質除去触媒の探索・創製このプロジェクトでは、微量で有害なダイオキシ ン等を浄化する光触媒を開発し、飛来時の濃度の10 分の1以下にする浄化技術の開発及び応用を達成す るとともに、多様な有害物質に対応するため、従来 より100倍以上迅速に触媒探索ができる触媒合成・ 評価法を開発することを目的とした。成果の一つとして、ホーランダイト化合物につい て光触媒機能を確認するとともに、ゾルーゲル法を 改良することでナノ球状粒子の合成に成功した。ま た、ナノ球状粒子化と表面の清浄化による活性の向 上を確認するとともに、ダイオキシン類似化合物の 光分解を実証した。他方、ガラス表面へのアルミナナノ細孔配列多孔図5 カーボンナノチューブ温度計図6 酸化物ナノシートのAFMイメージ図7 二酸化チタンナノ多孔質薄膜のアセトアルデヒド分解における光触媒効果体作製法、および、ゾル・ゲル法による二酸化チタ ンの導入・固定法を開発した。さらに、ゾルディッ ピング・熱処理によりTiO2 (アナターゼ型)の細孔 壁上コーティングに成功し、図7に示すように、市 販チタニア微粒子触媒P25を13倍凌ぐアルデヒド分 解触媒能を達成した。(6)放射光を用いた研究及び施設整備の総合的推進 高機能材料の創製にあたっては、解析・評価技術 をより精密かつ微細な方向へと発展させ、材料創出 の指針となりうる高度に良質な解析情報を取得・蓄 積することが肝要である。本研究では、第三世代光 源であるSPring-8に建設された共用ビームラインお よび専用ビームラインを用いて、新しい高度材料解 析技術の確立を目指した。共用ビームラインを用いた研究は材料研究所を中 心に行われ、高輝度光源と独自のアイデアをもとに 開発した分光器技術を効果的に結びつけることによ り、微量分析の技術として知られていた全反射蛍光 X線分析法の能力を著しく向上させた。検出限界は pptレベルおよび10-16gオーダーに達し、それ以前の 世界記録を1桁近く更新することに成功した。機構専用ビームラインに関する研究・開発は物質 研究所を中心に行われ、リボルバー型のアンジュレ ーターを採用した広波長帯域可変・高輝度・平行X 線の特性を有するビームラインの開発に成功した。 これにより、広いエネルギー領域(1～60kV)で 1019photons/sec/mrad2/mm2 at 0.1% bandwidth を 発生 する現時点で世界最高の能力を達成するとともに、 X線回折実験(図8)、光電子スペクトル実験等、 種々の材料研究への適用を進めた。板は金属的な電気伝導を示すため電極としての機能 も持ち、図9に示すように素子構造が非常に簡単に なる。これらの利点を考慮して、ZrB2単結晶のGaN 用基板結晶としての用途開発を行った。図9 ZrB2基板を用いた場合とサファイヤ基板の場合 のGaN半導体素子構造の比較(2)酸窒化物サイアロン蛍光体の開発酸窒化物サイアロンをホスト結晶として、種々の 発光中心イオンの導入と配位環境の制御により新規 蛍光体の物質探索を行い、様々な色の蛍光体を開発 した(図10)。これらのサイアロン蛍光体等を青色 LEDと組み合わせることにより自然光に近い光源と なる白色発光ダイオードを開発するなど応用研究で も大きな進展があった。本材料は今後照明器具や各 種ディスプレー等、広範な応用が期待される。図10様々な発光特性を持つサイアロン蛍光体図8 NIMS専用ビームラインに付設されている高精度 XRD装置4.萌芽的研究(グループ研究)萌芽的研究(グループ研究)として、極めて多彩 な研究が実施された。またそれらは、上記のプロジ ェクト研究と密接な関連を持って行われることも多 かった。以下では、紙面の制約もあり、膨大な研究 成果の中から代表的なもののみを記載する。詳細は 各年度の物質研究所年報などを参照していただきた い。(1)高融点ホウ化物単結晶の育成と用途開発ホウ素の骨格構造をもつ高融点ホウ化物を研究対 象として、3000℃付近における良質な単結晶の育成 技術を開発した。この技術によりZrB2等の大型単結 晶の育成に成功した。ZrB2はGaNに格子定数や熱膨 張がほぼ一致するため、良質なGaN単結晶膜を成長 させるための基板として適している。さらにZrB2基(3)プラズマ反応による酸化亜鉛の紫外発光高効率 化パルス変調高周波誘導プラズマを用いた半導体材 料への新しい水素ドーピング法を酸化亜鉛に応用 し、酸化亜鉛に極めて高い紫外発光効率を付与する ことに成功した。酸化亜鉛のような材料中への水素 の溶解には、温度上昇を抑えながら、高化学反応性 の水素ラジカルを高濃度に照射する必要がある。オ リジナルなプラズマ発生技術を用いたパルス変調高 周波誘導プラズマを照射することにより、従来技術 ではできなかった材料中への水素の高濃度ドーピン グが可能になった。(4)二酸化チタン光触媒薄膜の無加熱作製デュアルマグネトロンスパッタリング法と呼ばれ るパルス波形の電力で駆動されるスパッタリング装 置を用いて、大面積ガラス表面等へ光触媒によるセ ルフクリーニング機能を付与する技術を開発した。これによりガラス等を加熱せず、また成膜後の熱処 理やプラズマ処理も一切必要とせず、極めて光触媒 活性が高い結晶構造を持つ二酸化チタン薄膜を形成 することに成功した。この技術は無加熱であるため、 プラスチック等の材料に対しても光触媒作用を付与 することが可能になる(図11)。図11PET樹脂フィルム上に作製した光触媒二酸化チ タン薄膜(5)可視光応答型光触媒の合成有害物質除去に有効な光触媒を目指したプロセス 開発の一環として、従来材料より活性が高く、かつ 煩雑なプロセスを必要としない可視光応答型光触媒 合成法を開発した。酸化チタンは高い光触媒活性を 有するものの、可視光による触媒反応はほとんど起 こらないという難点があった。本研究では噴霧熱分 解法を適用することで、窒素添加プロセスの簡略化 に成功するとともに、酸点の形成に有効なフッ素添 加も同時に達成した。本法で作成した粉体は、従来 の標準的なチタニア粉体に比して遙かに大きな活性 を有することが判明した(図12)。図12噴霧熱分解法により作成した窒素、フッ素同時 添加チタニア触媒のSEM像と開発した光触媒の可視光 応答性(青色LED照射、分解CO2を検出)(6)水和コバルト酸化物超伝導体の発見α -NaFeO2型層状コバルト酸化物Na0.74CoO2にBr2/CH3CNを作用させた後、水洗することにより新 相であるNa0.35CoO2 ・1.3H2Oを合成し、これが約5K で超伝導を発現することを見いだした。このソフト 化学処理により層間のNaイオンの約半分が抽出さ れるとともに水分子が2分子層挿入され層間距離が 0.56 nmから0.98 nmに大きく増大することがリート ベルト解析の結果明らかになり、2次元性の高まり が超伝導性発現に寄与していることを強く示唆して いる(図13)。図13酸化コバルト水和物の結晶構造(7)無機ナノストランドの開発希薄な硝酸カドミウムの水溶液のpHを調整する ことで、水酸化カドミウムの極めて細長いナノスト ランドが自発的に形成されることを見出した。この ナノストランドは、直径がDNAと同程度の1.9 nmで あるにも関わらず、その長さは数マイクロメートル に達する(図14)。高分解能の電子顕微鏡観から、 このナノストランドの構造を原子レベルで解明する ことに成功した。図14水酸化カドミウムナノストランドの構造とDNA とのサイズの比較(8)フラーレンのナノ超分子集合構造の作製フラーレンに適当な官能基を導入し、自己集合過程を誘発することによって、様々な低次元性のナノ 構造体を作製することに成功した。例えば図15はパ ラレルワイア型の集合体であるが、これ以外にも球 形、ファイバー型、チューブ型、ディスク型、ホー ン型、フラワー型のナノ構造が自在に作り出せる。 これらは、電子的な配線やキャパシタなどナノデバ イスの部品としての応用が期待される。図15 フラーレンからなるパラレルナノワイア(9)エレクトロクロミック材料の開発ターピリジル基を両末端に有するビス(ターピリ ジル)ベンゼンと酢酸鉄(Ⅱ)を混合することで、 濃青色の高分子錯体を得た(図16)。この高分子錯 体は、サイクリックボルタンメトリーにおいて、鉄 イオンのレドックスに基づく可逆な酸化還元波を示 した。さらに、この高分子錯体をITO基板上にスピ ンキャストし、有機溶媒中で電位を印可すると鉄イ オンの価数の変化に応じて膜の色が濃青色から無色 へと変化する、高速かつ可逆なエレクトロクロミッ ク変化が観測された(図16)。図16ビス(ターピリジル)ベンゼン―酢酸鉄(Ⅱ) 高分子錯体と酸化還元に伴う色の変化(10)準結晶の構造解析理論の開発準結晶の構造は5、あるいは6次元の周期構造の3次元空間の断面として与えられるが、 電子顕微 鏡像の解釈や、表面構造の考察には、3次元空間の 構造をさらに1次元あるいは2次元投影したものが必要である。これまで、このような構造を計算する には、3次元構造を計算しさらに投影構造を計算し ていたが、本研究により、5、6次元の周期構造か ら直接2、1次元空間への投影構造を計算する理論 が開発された。これによって、正20面体対称i-Al-Pd- Mn準結晶には同一な組成・構造を持つ原子面は1 つも存在しないことが明らかになった。図17に構造 から計算された5回軸に垂直な1つの面の構造を示 す。図17 正20面体対称準結晶(i-Al-Pd-Mn)の構造(青 : Al,灰色:Pd、紫:Mn)(11)水の液体―液体臨界点仮説の実験的検証に関 する研究高圧下で液体を急冷できるデバイスを開発して、 数ミクロンの水の微粒を油の中で数千気圧に加圧し た後、0.1秒以内に温度を200度下げてガラス化させ、 77K、1気圧に回収した。これにより氷結晶を圧力 で非晶質化させたもの(HAD)と構造が似ている高 密度ガラス(HDG)の創製に初めて成功した。これ はMayerらが1気圧の水の急冷で作った低密度ガラ ス(LDA)とは異なる。図18でC'は予想される水の 液体―液体臨界点、Fは予想される二つの水の間の 一次相転移境界線、TMは氷の融点である。THとTX の間の灰色の領域では水とガラスは結晶化しやすい 特徴を有する。図18水の温度―圧力相図5.国際協力、技術移転物質研究所は種々の海外の研究機関と国際共同研 究協定を締結するなど、国際協力を推進してきた。 以下は協定締結機関である。・ Anna University, Faculty of Science and Humanities (インド)・ National Environmental Engineering ResearchInstitute (インド)・ Alfred University, School of Ceramics Engineering and Materials Science (アメリカ)・ University of Connecticut, Institute of Materials Science (アメリカ)・ The University of Queensland, Centre of Microscopy and Microanalysis (オーストラリア)・ Instituto de Ciencia de Materiales de Barcelona (ICMAB) (スペイン)・ Inha University, College of Engineering (韓国)・ Max Planck Institute of Colloids and Interfaces (ド イツ)物質研究所は産業界への技術移転を積極的に推し 進めてきた。以下の3件の物質研究所発のベンチャ ー企業はその現れである。・有限会社SWING (「NIMSベンチャー企業支援制度」の適用認定第1号)・株式会社オキサイド(認定第2号)・ NIMS Wave株式会社(認定題4号)6.終わりに独立行政法人物質・材料研究機構のもと物質研究 所が発足してすでに5年である。月並みながら時の 流れの早いことに驚く。物質・材料研究機構の研究 上のミッションは「物質・材料科学技術に関する基 礎研究及び基盤的研究開発」である。基礎・基盤と 一言で言い表される分野にも、川上から川下に向か ってかなりの幅があるが、物質研究所は大雑把に言 えば、最も川上にあたる分野を担当してきた。もち ろん物質研究所においても応用を念頭においた研究 が行われてきた。それは上で述べたように、物質研 究所発のベンチャー企業が3社を数えることからも 明らかである。しかし、たとえ応用研究であっても、 材料基礎研究にそのベースをおいている、という点 が物質研究所の特徴であったと考えている。物質研究所の基礎重視の戦略はおおむねうまく機 能したのではないだろうか。長く続く経済的沈滞の 時代にあって、基礎研究への風当たりは決して弱く なかった。「3年後5年後に社会に還元できるよう な研究」が求められた時代であった。しかし、冷静 に考えれば、材料研究が3～5年後のことだけを念 頭において行われてよいはずがない。むしろ、20年 後のことを第一に考えるべきである。経済が明るい 兆しを見せ始めた今、再び基礎研究に光が当たりつ つあるように見える。このような情勢の下で、物質 研究所が培ってきた、「基礎研究の重視」と「研究 者個人の発想の尊重」という研究戦略の2本柱は今後も十分に機能し続けるものと確信している。平成 18年度以降の機構においても、それが継承されてい くことを希求する。ホウ化物グループ(高融点化合物)の3年相澤俊、大谷茂樹、田中高穂(平成17年3月、定年退職)、速水渉、森孝雄、森泰道1.研究の概要本研究では、ホウ素―ホウ素の共有結合よりなる 骨格構造をもつ高融点ホウ化物(ホウ素/金属≧2) を研究対象として、高融点結晶の融液からの成長機 構を解明し、良質な大型結晶の育成技術を開発する。 さらに、良質な試料を用いる利点を活かしたホウ化 物の特性評価を行い、新しい特性や現象の発見およ び材料開発(Ⅲ族窒化物形成用基板など)を行う。2.研究活動の経過2千数百℃以上の融点をもつ大型結晶の育成は、 ここ20年近く、我々のグループのみが行っている。 最近、GaNに代表されるⅢ族窒化物半導体の形成用 基板としてZrB2単結晶の有望性を見出した。この基 板上には、転位密度が106/cm2オーダーの良質な窒化 物が成長する。現在広く用いられるサファイヤ基板 に比べ2桁以上少なく、大きな注目を集めている。結晶育成では、3200℃における激しい熱輻射によ る急峻な温度勾配(150℃/mm)のもとZrB2単結晶 の良質化につとめ、発光素子の作製が可能なまでに なった。今後、結晶の大型化が基板の実用化に必要 である。表面物性に関する研究では、ホウ化物表面の構造、 組成、特性などの解析をおこない、最近では窒化物 膜の作製が可能となり、窒化物成長の初期過程の解 析を行っている。バルク特性に関する研究では、多ホウ化物の磁性 の解明を行い、二次元的なスピングラス的な挙動を 見出した。計算科学においては、ホウ素やホウ化物の原子構 造、電子構造の理論的な解明に取り組み、実験結果 との合理的な解釈が可能になった。また、多原子を 含む構造の解析をより正確に行う新しい計算方法を 開発した。今後、より多くの原子を含む系への適用 が期待される。3.研究成果(結晶育成)格子定数、熱膨張がほぼ一致するZrB2基板では、 基板の結晶性に対応しGaN膜が成長するため、ZrB2 単結晶の可能な限りの良質化や大型化が必要であ る。高周波加熱FZ法(浮遊帯域溶融法)は一連の 大型高融点単結晶の育成できる唯一の方法であるこ とから、この手法におけるZrB2結晶の高純度化、良 質化および大型化について検討した。(高純度化)ZrB2結晶を真空中で加熱すると、表 面に炭素が析出することがある。これは、原料とし て用いた市販粉末が0.1wt%以上の炭素を含有する ためである。この炭素を除去する方法として、酸化 物とホウ素を添加し、真空中で加熱処理する方法を 見出した。反応式は、ZrB2(C)+ x (ZrO2 + 4B) → ZrB2 + BO↑ +(CO↑)である。その結果、10モル%以下の 酸化物とホウ素の添加(x<0.1)により、炭素が 100 ppm以下に減少する。この原料から育成した結 晶では、炭素が20 ppm以下に減少し、炭素の析出 問題は解決した。この手法は、NbB2, CrB2, LaB6, YB4 結晶においても同様に炭素が除去され、汎用性の広 いことを実証した。(良質化)現在得られる結晶の品質は、転位密度 が5x106/cm2、ロッキングカーブにおける半値幅が 160 arcsecである。さらに良質化させるため、結晶 性を決める要因について調べた。その結果、六方晶 の二ホウ化物結晶の場合、高温での機械的強度(例 えば、ビッカース硬度)の他に、熱膨張の異方性が 結晶の品質(亜粒界やクラックの発生)に大きく影 響した。高温強度が高く、熱膨張の小さな異方性を もつZrB2が良質な結晶育成に有利な特性を有するこ とが判明した。転位密度は、4族5族6族二ホウ化 物単結晶(TiB2,ZrB2,HfB2,VB2,NbB2,TaB2,CrB2)の 相互比較から、育成温度200℃の低下により半減す るものと予測された。今後、育成温度を下げる融剤 の探索が重要なことを見出した。(大型化)熱輻射が温度分布を決める3000℃以上 の育成温度域では、加熱電力は結晶径の1.6乗に比 例する。直径を2倍にすると電力が3倍になる。こ れより効率的な加熱法を探索した結果、融帯への原 料供給速度を大きくし大型結晶を育成することで、 加熱効率が30%以上増加した。直径2倍の結晶育成 を2倍の加熱電力で可能とした。今後、さらに加熱 法を効率化させ、結晶の大型化を試みる予定であ る。図1.As-grown ZrB2単結晶(表面物性)近年、格子定数や熱膨張係数の近さからGaN, AlN などのⅢ族窒化物半導体薄膜成長用基板として注目 されている遷移金属二ホウ化物の表面の基礎的な性 質について調べた。高分解能電子エネルギー損失分光法(HR-EELS) を用い、NbB2 (0001)およびZrB2 (0001)の表面フ ォノン分散を測定した。これらのホウ化物ではホウ 素の格子がグラファイトの格子と同型なので、グラ ファイトのときと同様に力定数模型を用いて解析し た。その結果、NbB2 (0001)は確かにホウ素層が表 面第1層目に出ており、ZrB2 (0001)ではZr面が表面第1層目であることが確かめられた。ホウ素―金 属間の力定数はホウ素―ホウ素間の力定数に匹敵 し、かなり共有性が強いことが示唆された。X線光電子分光法(XPS)を用いてNbB2 (0001) およびZrB2 (0001)表面の電子状態を調べた。その 結果、表面第1層目がホウ素であるNbB2 (0001)で 表面内殻準位シフトが観察された。この内殻準位シ フトは単純に電荷が移動すると考えたときの内殻準 位シフトの方向とは逆になり、第一原理計算により このような軌道混成の強い系においては原子内の電 荷再配分が大きく寄与していることが示され、XPS における内殻準位シフトが荷電状態の変化を直接は 示していないことを明らかにした。ZrB2 (0001)表面は金属層で終端しており、反応 性が高いため触媒作用なども期待でき、格子定数が GaNと0.6%しか違わないことからGaN成長用基板と して特に有望視されている。この表面が酸素や水素 などの気体とどのように反応するかをHR-EELSを用 いて調べた。その結果、O2、H2、COなどは解離し て3回対称のホロウサイトに原子状吸着することが わかった。この表面は第一原理計算によってもフェ ルミ準位を横切る表面準位が存在し金属的性質が強 いことが示唆されるが、 実験的にも活性な金属と同 様の化学反応性を示すことが明らかになった。窒化物膜の成長には、ZrB2をはじめとするホウ化 物単結晶上でGaNのプラズマMBE法によるエピタキ シャル成長実験を行った。その結果、金属層で終端 されているZrB2の(0001)面上ではGaNがエピタキ シャル成長したが、ホウ素層で終端されたNbB2, CrB2の(0001)面上には成長しないことがわかった。 後者にみられるRHEEDパターンはBNによるもので あることから、表面第1層目がホウ素終端の結晶で は成長中にBNが形成されてGaNの成長が阻害されて しまうことが明らかとなった。(バルク特性)B12正二十面体化合物REB50において以前発見した 多ホウ化物における初めての磁気転移について更に 調べを進めた。こうした化合物における初めてのス ピングラス的な挙動をREB22C2Nにおいて発見し、ま た、一連の関連層状物質についても、類似の性質を 確認し、磁性がその2次元面内で制御されているこ とと示唆される結果を得たことを報告した。この現 象について更に解明し、動的性質を解析した結果 (図2に求められた緩和時間の分布、また、図3に 平均緩和時間の温度依存性を示す)、このスピング ラス的な挙動が類似な現象に起因するのでなく、真 のスピングラスに起因するものであり、更に、2次 元的なスピングラスであると考えられることを明ら かにした。一方で、TbB50系化合物の磁性において、ドーピ ング実験を施行することで、その磁気転移が実はダ イマー的な転移であることが明らかになった。関連 する多ホウ化物においては、以前発見した2次元スピングラス的な振る舞いや、3次元的な長距離秩序 性の転移と合わせて、実に多彩な磁性が発現するこ とを明らかにしたことになる。図2 HoB22C2Nの緩和関数分布図3平均緩和時間の温度依存性(計算科学)ホウ素及びホウ化物の原子構造、電子構造の理論 的解明に取り組んでいる。二ホウ化ハフニウム表面 の電子構造の解析により、実験結果の合理的な解釈 が可能となった。また、タイトバインディング分子 動力学法の新しい計算方法により、多原子を含む構 造の解析がより正確にできるものと期待できる。1.二ホウ化ハフニウム(HfB2) (0001)-X (X=Li～Ne)表面の電子構造の研究二ホウ化ハフニウムHfB2単結晶の(0001)表面に、 周期表第一列の原子(Li～Ne)が吸着した場合の電 子状態について密度半関数法により理論的に解析し た。実験的に(0001)表面は、Hfの原子面で終端さ れた1×1の構造が安定であることがわかってい る。この表面に各種原子を吸着させて全エネルギー を計算したところ、Neを除いて、すべて3回対称サ イト(threefold site)がもっとも安定であることが 判明した。(図4)このことは我々の以前の酸素吸 着実験の結果とよく一致している。吸着エネルギー については酸素がもっとも高い値を取ること、振動 エネルギーについては、窒素がもっとも高い値をとるが、酸素、炭素との差が小さいことなどがわかっ た。振動エネルギーは以前のHREELS (high- resolution electron-energy-loss spectroscopy) の結果 を よく説明している。(図4)図4 Li-Ne原子の吸着エネルギー。threefold siteが最 もエネルギーが低い(安定)2.タイトバインディング分子動力学法のハミルト ニアンのサイト内行列要素の計算法タイトバインディング分子動力学法(tight-binding molecular dynamic, TBMD)のハミルトニアンの新し い計算法を開発した。TBMDではハミルトニアンの 計算に各原子軌道を基底に用い、行列要素の計算は Slater-Koster法によって近似する方法を採用してい る。Slater-Koster法では異なる原子間の行列要素は 計算できたが、同一原子内の行列要素はうまく計算 できず、単独原子の値、もしくは近似した電子密度 のみの関数に置き換えていた。我々の方法では、周 囲の原子の影響をSlater-Koster法を改良した方法で 取り入れて、同一原子内の行列要素をかなり正確に 計算できるようになった。テスト計算として、シリ コンの行列要素をテスト計算したところ、広い範囲 で第一原理計算によく一致する結果を得た。(図5)図5 4配位のSi原子におけるハミルトニアンの行列要 素。我々の方法(pr.)と第一原理計算(exact)の値は 原子間距離にかかわらずよく 一致している1.千現地区正門photograph : National Institute for Materials Science超高圧グループの5年赤石實、菅家康、小林敬道、関根利守、竹村謙一、谷口尚、中野智志、遊佐斉、吉本次一郎(2005.3退職)1.超高圧装置開発の目的無機材質研究所に超高圧力ステーションが20数年 に設置された。以来、新高密度物質等新物質の探索 と新高硬度材料の合成を研究するため、これらの目 的に適した超高圧力システムを開発してきた。また、 システムの一層の改良をはかるため、関連グループ と共同して、材料合成、解析研究を行っている。2.合成装置開発と合成研究大きな試料空間に超高圧を発生することが可能な ベルト型超高圧合成装置を合成装置として選択し、 同装置の発生圧力の拡大に取り組み、15GPa以上の 超高圧を発生可能にした。超高圧発生に加えて、超 高圧条件下での高温発生技術開発が、超高圧合成に は必要不可欠である。9GPaの超高圧条件下では、 ヒーター材料に用いていた黒鉛がダイヤモンドに直 接変換してしまうため、新たなヒーター材料を開発 しなければならなかった。TiC-ダイヤモンド複合体 ヒーターを開発し、10GPa領域での2000℃以上の高 温合成実験を可能とした。これらの装置開発の結果、 超高圧高温合成研究領域が13GPa領域に拡大され、 この領域での新物質探索研究へ新たな実験手段とし て期待される。これらの装置開発と同時進行の形で、開発装置を 用いて、新規高硬度材料や新機能性材料の開発に取 り組んだ。ダイヤモンドの成因解明、ダイヤモンド 焼結体の製造法の開発、高純度立方晶窒化ホウ素単 結晶の育成、高純度六方晶窒化ホウ素の合成等興味 ある研究結果が得られた。励起子発光の観測される 高純度立方晶窒化ホウ素単結晶の合成に、Ba-BN系 溶媒を用いて成功した(図1)。この合成研究過程 で、準安定相として合成された六方晶窒化ホウ素単 結晶が、紫外領域で非常に強い発光を示すことが明 らかとなり、成果は、Nature-Materials誌に掲載され た。新たな発光材料となる可能性を秘めている研究 結果である。一方、ベルト型装置よりも高い圧力領域における 物質合成に衝撃圧縮装置を用い、新規高硬度物質と して期待されるペロブスカイト型Si3N4の大量衝撃合 成に成功し、γSi3N4の化学的・物理的性質を明らか にした。3.その場観察装置開発と物性研究その場観察用装置として、ダイヤモンドアンビル セル(以下DACと略称)及び衝撃圧縮装置を開発し てきた。DACでは、発生圧力の拡大に尽力するとと もに、静水圧条件下での超高圧物性測定を目的に、 高圧ガス充填装置を整備し、圧力誘起の相転移に及 ぼす圧力の静水圧性について研究を進めた。He圧力 媒体採用による準静水圧的圧力場の発生によるヨウ 素の非整合変調構造相を発見した。ヨウ素の研究成 果は、Nature誌に掲載された。その場観察可能な超高圧合成装置として、レー ザー加熱DACを整備し、多層型カーボンナノチュー ブから透光性ナノダイヤモンド焼結体の合成に成功 する等興味ある研究成果が得られた。また、衝撃圧 縮装置開発では、レーザー衝撃圧縮装置を導入・整 備し、利用技術開発を行った。4.終わりにベルト型超高圧合成装置、DAC、レーザー加熱 DAC、一段式火薬銃、二段式軽ガス銃及びレーザー 衝撃銃と合成装置からその場観察可能な装置迄��各種 超高圧装置を開発し、利用技術開発を行ってきた。 これらの装置を有効に活用するためにも、機構内外 の研究者との共同研究を一層推進することが必要で ある。この5年間の間に、以前開発した耐熱性ダイ ヤモンド焼結体の製造技術が、三菱マテリアルに技 術移転された。高価であるため切削工具分野への展 開は難しいようではあるが、オイルビット等への展 開を期待している。図1高純度立方晶窒化ホウ素単結晶2.千現地区 研究本館photograph : National Institute for Materials Science非酸化物焼結体グループの5年田中英彦、廣崎尚登、小松正二郎、西村聡之、解栄軍、三友護、山本吉信、末廣隆之、Xu Xin、石原知、平井伸治、白谷正治、 尾方成信、上田恭太、小笠原一禎、Cenk Kocer、風見大介、田中洋測、中島一子、村上千代子、矢口千恵子、根本かおり、中川 真与、足達美恵子、岡室葉子1.研究概要セラミックス材料関連産業のニーズが低コスト・ 省エネルギー製造法と材料の高機能化であったこと をふまえ、ナノ ・ミクロンスケールの組織制御手法 を開発して、高強度で高靱性なSiCとSi3N4系構造用 セラミックスを開発し、機械的特性評価の研究を行 うことを課題とし、研究開発を開始した。その後、産業ニーズが半導体関連機器やオプトエ レクトロニクスに推移した。対応して精密機器用キ ーマテリアルと機能性セラミックス材料の創製に研 究の重点を置くようになった。その結果、SiC粉末 の易焼結方法の開発、有機原料から高純度・微粉末 SiC粉末の合成、Si3N4の急速加熱焼結、ナノ組織 Si3N4焼結体の合成に成功した。さらに、サイアロン蛍光体と高電子放射新型BN 材料の発見があり、白色LEDやプラズマディスプレ ー用材料の開発など産業にインパクトの大きい成果 が得られた。2.工業化に向けたSiC粉末の易焼結方法SiCと高温でも共存するAlB2、Al4C3、B4Cなどの相 関係を詳細に検討した。その結果、図1の相関係が 得られた。図1SiC-Al4C3-B4Cの1800℃における相関係Al8B4C7は新化合物で、1800℃でSiCと液相を発生 させた。そこでαおよびβ-SiC粉末をAl-B-C系化合 物の助剤で焼結すると、従来の焼結方法の温度 2150℃より低い1950―2000℃前後で焼結でき、焼結 温度の低温化に成功した。これから、SiC粉末にAlB2とCを添加する低温焼結 技術を完成し、工業化した。また、この方法と高温 静水圧焼結(HIP)を組み合わせると、1850℃で気 孔のない材料が得られた。気孔のない緻密なSiC焼 結体は化学薬品やプラズマ雰囲気に耐性が強く、半 導体製造装置に応用されることが期待される。3.有機原料から高純度SiC微粉末の合成図2 AlB2とCを助剤として焼結したSiC粉末の密度、 赤字はα―、青字はβ―SiC粉末半導体製造炉等の先端産業機器には高純度で微粉 の非酸化物セラミックス材料が必要とされている。 従来の鉱物原料から出発したのでは高純度化や微粉 化には限界がある。そこで、高純度化が容易な有機 液状原料を用いて、ゾル-ゲル反応を経て、プレカ ーサーを合成し、焼成してセラミックス粉末を製造 する方法を開発した(図3)。図3有機原料を用いたプレカーサー粉末合成法具体的には、原料にテトラエトキシシランとフェ ノールホルムアルデヒド重合体を用いる。溶媒下で 縮重合してゲル状プレカーサーを得て、高温で処理 をするとSiC粉末が得られる。粉末は微粉で未反応 物質(SiO2やC)を含まないので、不純物を取り込 む粉砕や精製処理が必要ない。得られた粉末はSiウ ェハーを処理する反応炉の材料として利用すること ができる。4. Si3N4の急速加熱焼結窒化ケイ素の急速加熱による焼結について検討した。β型のサブミクロン粉末の粒成長速度は粒度分 布がほぼ同じα型の粉末よりも速いことがわかっ た。Si3N4ナノ粉末の急速加熱焼結を行った。ナノ粉 末では高密度化が狭い温度範囲で急速に進み、一般 に利用されているサブミクロン粉末より高密度の焼 結体が得られた(図4)。図4サブミクロンとナノ Si3N4粉末の急速加熱焼結5. Si3N4ナノセラミックスの作製Si3N4のサブミクロン粉末と焼結助剤粉末を高エネルギー粉砕することにより得られたナノ混合粉末 を、放電プラズマ焼結法により焼成した。短時間焼 結により、粒成長を抑制しながら高密度化すること で、粒径が数十ナノメートルの窒化ケイ素ナノセラ ミックスを作製することができた(図5)。図5 高エネルギー粉砕と粒成長を抑制しながら高密 度化したSi3N4ナノセラミックス高エネルギー粉砕の際に、粉砕助剤として金属ア ルミニウムを用いたが、粉砕助剤添加の場合、無添 加の場合よりも穏やかな条件であっても窒化ケイ素 粒子のナノ微粉化が起こることを発見した。6.酸窒化物サイアロン蛍光体の開発酸窒化物サイアロンをホスト結晶として、種々の 発光中心イオンの導入によって蛍光体が得られるこ とを発見した。新規蛍光体の物質探索を行い、配位 環境を制御することにより様々な色の蛍光体を見い だした。その中では青色(Ce3+)、緑色(Yb2+)およ び黄色(Eu2+)サイアロン蛍光体が白色発光ダイオ ードへ応用が可能である。一方、サイアロンホスト の最適組成と合成プロセスを検討することにより、サイアロン蛍光体の発光波長又は発光効率を制御す ることができた(図6)。図6 多彩な発光をするサイアロン蛍光体7.電界電子放出BNプラズマCVDに193nm紫外光を併用したプロセス を開発した。これにより、電界電子放出特性を最適 化させるエミッター形状を自己組織的に形成した sp3-結合5H-BN薄膜の合成に成功し、高い電子放射 性能を持つことがわかった(図7)。コーン状のBNマイクロエミッターの分布がフラ クタル的になる条件が見出され、フラクタル次元が 高い精度で求められた。チューリング型の支配方程 式を直接解いた結果、これは、強制振動的光化学反 応により、チューリング構造におけるスケール不変 性をもつ自己相似性がノーダル・パターン形成され ることにより、フラクタルパターンが構成されたこ とが分かり、新しいタイプのフラクタル構造の起源 を見出すことが出来た。図7電界電子放出特性を持つコーン状BN膜電子セラミックスグループの5年安達裕、大橋直樹、斉藤紀子、坂口勲、羽田肇、中村真佐樹、菱田俊一、三橋武文、和田芳樹、李迪、王玉光、NITINK. LABHASETWAR、 Venkatraj Selvaraj1.はじめに本グループは、物質・材料研究機構が発足する以 前、平成10年度より継続しているグループである。 電子セラミックスは、導体・半導体だけではなく強 誘電体、磁性体や光学材料をも含む広い分野である が、本グループは、主に格子欠陥とこれらの物性と の関係に着目して研究してきた。無機材研時代を含む平成10年から平成14年度は、 「酸化亜鉛」に着目した研究を推進した。この時期 は、酸化亜鉛リバイバルとも言える現在の酸化亜鉛 研究状況と重なるが、これはバリスタに代表される 半導体としての酸化亜鉛の応用から、光学材料とし ての応用展開が計られた時期と一致している。その ため、我々も、主に光学的な性質と欠陥構造との関 係に着目し、研究を行った。平成15年度からは、「酸化亜鉛」研究をベースに、 同じウルツァイト構造を持つ材料との複合化によ る、新現象・新物質の探索等の基盤研究を目指した 「ヘテロウルツァイト化合物研究」を推進した。当 初、5カ年の予定であったが、3年で研究を打ち切 り、新たな展開を目指す計画となっている。先に述べたように、主にウルツァイト構造を有す る物質を主たる対象物質としてる点に特徴がある。 材料の形態としては粉体から薄膜、単結晶と多岐に わたっており、これらの結晶構造―欠陥構造―微構 造と階層化した構造の検討を基礎に、光学的性質か ら電気的性質に至る総合的な研究を展開した。この間、基盤的な研究の他、原子力クロスオーバ ー研究、科学技術振興調整費「セラミックスインテ グレーション技術による新機能材料創製に関する研 究」等の外部競争的資金による応用を目指した研究 も展開した。また、ミレニアムプロジェクトの一環 である機構内プロジェクト「有害化学物質除去の探 索・創製」にも参画し、「複合機能触媒の開発」を 課題とした研究も行ってきた。以上の予算的な裏付けを基に、発光現象に対する 水素の劇的な効果、水溶液からの酸化亜鉛直接パタ ーニングの実現、あるいは最高水準の可視光応答型 光触媒の開発等多くの成果を挙げることができた。 本稿では、紙面の都合上、これらのうち主要な研究 トピックスを紹介するとともに、論文、特許あるい は研究会等の成果発信についても触れたい。2.グループの研究成果(1)酸化亜鉛単結晶を用いた単粒界バリスタの形成酸化亜鉛バリスタは、日本発のデバイスとしてつ とに有名であり、今日ではパソコンあるいは携帯電 話のサージ吸収素子として欠く事のできないものと なっている。一方、近年のアクティブデバイスの低 動作電圧化の傾向から、さらに低電圧で動作するバ リスタが求められている。通常の酸化亜鉛バリスタ は、多結晶粒界の機能を利用しており、一粒界当た りの降伏電圧は約3.5Vとなっている。従って、低圧 で動作させるためには作用する粒界数を減らす必要 があるが、多結晶体を使用している限りは十数ボル トが限界となっていた。そこで我々は、酸化亜鉛の バイクリスタルを利用し実用レベルの非線形性を有 する単粒界形成の開発を目指した。バリスタ特性を得るためには粒界にビスマスある いはプラセオジムイオンを偏析させることが不可欠 である。バイクリスタルに単純な塗布法等によりこ の構造を実現しようとすると、界面が多結晶化し、 機械的に非常に弱いばかりでなく、所望の低電圧動 作のバリスタ特性が得られない。本研究では、粒界 相に上記のイオンを含むガラス層を形成し、バイク リスタル化することで、機械的な強度が十分な材料 を得ることが可能となった。バイクリスタルの接着 強度は、粒界相の有無、および、粒界相の材質に依 存し、最も強度が高かったのは粒界相として酸化ビ スマス系のガラス相を用いた場合であり、酸化ビス マス系の結晶相を粒界相とした場合、接着後のハン ドリングによって剥離することがあった。形成された単粒界を含んだI-V特性を図1に示し た。単純なバイクリスタルの場合、I-V特性は線形 である。一方、ビスマスを含んだガラス層を介在さ せると、非線形性が現れ、ガラス層は非線形性を得 るためには有効であることが判明した。しかしなが ら単純なガラス層のみでは、非線形指数、αは4と 非常に小さい。一方、さらに単結晶にCoイオンを添 加した単結晶を用いたバイクリスタルではα=28と なり、実用材料に匹敵する値のものが得られた。図1バイクリスタルのI-V特性(2)酸化亜鉛およびウルツァイト構造窒化物薄膜の 成膜酸化亜鉛は特に、透明であること、導電性を制御 しうることから、透明な薄膜電子デバイスへの応用 が期待されている。我々のグループでは、1)高い 結晶性を有するZnO薄膜を合成すること、2)高い 結晶性を損なわずに必要な機能を付与できるだけの ドーピングを施すこと、という2つの課題を解決す るための研究・開発を進めてきた。ここでは、高品 質でかつ高濃度ドープ酸化亜鉛基薄膜(ここではIn 添加)の作製法の開発と、この手法をさらに進化さ せウルツァイト構造窒化物薄膜に適用した例を述べ る。ZnOを透明電子素子として利用する上では、高い 伝導度と透明性が必須要件である。また、工業的な 量産を考慮した場合、設備コストや大型基板への対 応という観点から、PLD法やMBE法に比べて、CVD 法やスパッタ法が有利と考えられる。そこで、本課 題では、高レベルのドーピングによって高い導電性 を付与したZnO薄膜をスパッタ法で合成することを 試みた。本研究では、容易に入手可能なサファイヤ単結晶 基板を用いた高品質ZnO薄膜の合成を目指した。 ZnOの(0001)面とサファイヤの(0001)面で接合 した場合には、13%の格子不整合が生じる。そのた め、自己バッファー層(SBL)技術によって、格子 不整合基板への良質ZnO結晶の析出、という課題の 解決を目指した。SBLとは、成膜しようとする薄膜 と同組成の薄膜を基板上にSBLとして堆積した後 に、さらに、目的の薄膜を堆積させることで、高品 質の膜を得ようとする手法である。以下に、その概 要を示す。図2酸化亜鉛基化合物薄膜の極点図SBLの効果について検討するため、成膜課程を2 段階に分け、初期のSBL形成過程と、後期の薄膜形 成過程として行った。すなわち、前期課程は、基板 上に10nm程のZnO薄膜(無添加、アルミ添加、ある いは、In2O3 (ZnO) 5組成)を堆積させるプロセ スであり、その後、約15分間ほどの製膜休止時間を おいた後に、後期のIn2O3 (ZnO) 5薄膜の堆積を 開始した。この製膜休止の時間中、基板温度は、製 膜温度に保持した。図4に得られたIn2O3 (ZnO) 5組成の薄膜のX線 極点図形を示す。SBLを用いない薄膜(左図)では、 配向性が低く、特に、酸素を供給しない場合、著し く配向性が劣化した。この配向性劣化は、高濃度に Inが添加されたことが原因であり、同条件で、純粋 なZnOを堆積した場合には、高い配向性が確認され ている。一方、In2O3 (ZnO) 5組成、あるいは、 ZnO組成の10nm厚のSBLを堆積した後に、In2O3 (ZnO) 5組成の薄膜を堆積した場合、As-depo.でも 高い配向性が得られた。As-depoの薄膜は、平均構 造としてウルツ鉱型ZnO固溶体と同定されており、 高濃度のInが加えられ、かつ、SBLを用いない場合、 配向性が乱れやすくなると考えられる。熱処理後で は、配向性という観点では、SBLの有無による極端 な差異は認められなかった。as-depo.の状態では本系で特徴的である層状構造 は形成されず、アニール後は、不均質ながら層状構 造の形成が認められた。これに対して、SBLを用い た薄膜では、整然とした超格子構造の形成が認めら れた。先の極点図形では、SBLの有無に関わらずア ニール後には、高い配向性が認められたが、超格子 構造の完全性という視点からは、SBLの有無がアニ ール処理後であっても、大きな意味を持つことがわ かった。以上のバッファレイヤに関わる界面構造の知見に 基づき、高品質な窒化物系ウルツァイト化合物薄膜 の合成についても手掛けた。窒化物ウルツァイト化 合物は、GaN系の高効率青色発光ダイオードが実用 化さたことで、注目されているが、この実現にはバ ッファ層技術がキーになったことは間違いない。こ こでは、ZnO基板上に比較的大きな格子不整合 (8.8%)を有するInN薄膜を成長させ、その結晶構 造、界面構造について検討した結果を紹介する。InN薄膜はMBE法により成膜した。基板には市販 されている水熱合成法で育成されたZnO単結晶の (0001)面、(000-1)面を用いた。本研究では、通 常のⅢ族窒化物半導体成長の際に用いられる基板窒 化・低温バッファ層プロセスは適用せずに、ZnO基 板上に直接InNを550℃ ― 650℃で成長させた。550℃で成長させたInN薄膜のXRDプロファイル は、ZnO基板とInN膜のピークのみ観察されたが、 650℃で成長させたInN薄膜は、In2O3のピークが見 られ、基板と薄膜が反応し、In2O3が形成されてい ることがわかった。XRDのロッキングカーブ評価に よれば、650℃で成長させた薄膜は、FWHMが 3600arcsecと大きく、結晶性は悪かったが、550℃で 成長させたInN薄膜のFWHMは160arcsecと極めて結 晶性の高い膜が得られることがわかった。この結晶 性は、これまで報告されているサファイア基板上に、 基板窒化・低温バッファ層を用いて成長させたInN 薄膜と比べても遜色はない。これらの結果から、酸 化亜鉛基板を用い、界面構造を十分制御すれば、基 板窒化・低温バッファ層プロセスを用いないシンプ ルなプロセスで高結晶性InN薄膜が得られることを 示している。(3)酸化亜鉛のパターニング酸化亜鉛は従来からのバリスタや蛍光体から、薄 膜として用いられる事の多い透明電極や薄膜発光素 子への展開が急ピッチでなされている。これらのデ バイスでは、旧来のバリスタを含めて、酸化亜鉛を パターン化して実装する事が不可欠になっている。 以上の状況を踏まえ、我々のグループにおいてもパ ターン化に関する研究を推進してきた。材料の微細 加工には大別して二つのプロセスが考えられる。一 つは、やや大きな材料にトップダウン的に加工を施 していく方向で、もう一方は、分子レベルからボト ムアップ的に、階層構造を構築していく方法である。 電子セラミックスグループにおいても、これら両方 向からのアプローチを展開してきた。トップダウン 的なアプローチでは電子線リソグラフィー等のシリ コン半導体プロセスを活用してきたが、シリコンと は全く異なるエッチッング手法等を開発する必要が あった。一方、ボトムアップ的なアプローチは、シ リコン分野においても発展途上の技術と言うことも あり、基礎的な研究を行ってきた。この際、将来の 経済的・環境負荷等を考慮し、加熱が不要な水溶液 からの酸化亜鉛直接パターニング手法の開発に注力 してきた。ここでは、本手法についてさらに詳しく 紹介する。ボトムアップ的な酸化亜鉛パターニングの手法の フローを図3に示した。基板上にphenyl基終端自己 組織膜(Self-Assembled Monolayer, SAM)を形成、 フォトマスクを介してUV照射して部分的にOH基に 変性させることで、特定の官能基をパターン化させ た。この基板をパラジウム触媒液に浸すと、phenyl 基終端のみに触媒粒子が付着する。さらに、この基 板をジメチルボランと硝酸亜鉛水溶液中に浸すと、 触媒の作用で、硝酸イオンは亜硝酸イオンに変化し、 その結果、触媒近傍のみpHが上昇し、その結果、 水酸化亜鉛が析出する。温度がある程度高いと、水 酸化亜鉛は脱水反応を起こすため、水溶液中で直接 酸化亜鉛を析出させることが可能である。図3 SAM膜を用いた酸化亜鉛のパターン析出図4に作製した酸化亜鉛パターンのSEM写真を示 す。白く見える部分が析出した酸化亜鉛であり、 phenyl基上のみに析出する高い選択性が示されてい る。高倍率で見ると、粒径約0.2μmの酸化亜鉛粒子 より構成されていることが分かる。同図に見るよう に線幅では最小μmのラインパターンの描画に成功 し、パターンの解像度は粒径の数個分相当と見積も られた。試料のSEMおよびTEM観察の結果、析出膜は単粒 子膜で構成されていることが判明した。また、シリ コン基板上のアモルファス層の上に直径4nm程度 の触媒粒子がついており、その上に酸化亜鉛が析出 した状態となっている。酸化亜鉛粒子は触媒基板に 面接触しており、基板への密着性も十分であった。 さらに、粒子同士も接触して析出していた。得られた酸化亜鉛パターンの蛍光特性を、カソー ドルミネッセンス(CL)法により評価した。アニ ールなしの試料であるにもかかわらず、酸化亜鉛の 析出したフェニル基上で500～800nmの可視光発光 が観測された。通常の酸化亜鉛のグリーン発光 (530nm)よりも長波長の発光であったのは、今回 の試料が低温の水溶液中で作製されたため、なんら かの欠陥を含んでいるためと考えられる。図4 パターン析出させたZnOのSEM写真(4)水素ドープした酸化亜鉛ZnOに水素を添加することによって、その欠陥を 不活性化し、欠陥によるキャリアーの再結合確率を 低減させることが可能であり、結果として、紫外線 発光効率の向上をもたらす。そこで、本研究では、 物質研究所/プラズマプロセスグループと連携し て、水素の酸化亜鉛発光に対する効果について検討 する事とした。ZnOへの水素ドープには、水素プラ ズマを用いた。この手法についてはプラズマプロセ スグループの項を参照されたい。水素ドープ後の試料中の水素濃度は、2次イオン 量分析計(SIMS)によって定量した。定量分析に あたっては、測定の精度を上げるため、水素ガス (1H2)の代わりに重水素ガス(2D2)を用いてプラ ズマ処理した試料を用意し、定量分析を実施した。ZnO結晶中に元来存在する欠陥と水素との間の相 互作用を知るため、①水熱育成ZnO単結晶、②無添 加のZnO焼結体、③気相成長ZnO単結晶、④市販の 緑色蛍光体粉末の4種類を試料として用いていた。 水熱結晶は、育成時に混入するアルカリ不純物で特 徴づけられ、また、気相成長ZnOは、陽イオン組成 として高い純度を持つことを特徴とする。また、市 販の緑色蛍光体は、Zn過剰のZnOとされ、高効率で 緑色の光を発する蛍光体として利用されているもの である。水熱結晶についても、当初から可視発光強度が低 く、また、水素添加後に、紫外発光効率が約2倍に 向上していたことから、非発光の再結合中心が水素 によって不活性化され、バンド端の紫外発光が強調 されたものと理解される。一方、処理前から強い紫 外発光が観測され、また、可視発光が見られないこ とを特徴とした気相成長結晶では、水素化による顕 著な発光効率の変化は認められなかった。このこと は、高純度のZnOである場合、その結晶中に再結合 中心となる欠陥の濃度が低いため、水素による欠陥 改質の効果が顕著に見られないためと理解できる。市販の緑色発光体では、水素化の前後で発光スペ クトルに変化が認められなかった。比較のために実 施した、銅を添加して得られる、CuZnxが原因とな った緑色発光を示す試料では、水素ドーピングによ って、そのCuZnx由来の発光が消失する様子が確か められた以上実験結果に基づく考察から、ZnOへの水素添 加によって、水素からイオン化したドナー、あるい は、アクセプターへの電荷の移動が誘起され、これ によって、欠陥の状態に変化が起こり、キャリアー の再結合に対する可視発光、あるいは、非輻射再結 合の確率が減少し、その結果として、励起子発光効 率の向上がもたらされたと考えられる。また、これ までに解明されていない欠陥発光の機構を明らかに してゆく上で、水素ドープは欠陥構造を知る上での 有用なプローブとして勝つよう可能であることが示 唆された。(5)高機能可視光応答型光触媒の開発光触媒は、光だけをエネルギー源とした化学反応 が可能なことから環境調和を目指したグリーンケミ ストリーの象徴的な材料として、産学独の多くの研 究機関によって様々な研究が取り組まれている。し かしながら、万能とも思える光触媒も、暗所ではも ちろん作用しないし、低い可視光応答性、そもそも 熱触媒に比して遙かに低い効率といった欠点を有し ている。我々は、これらの欠点の克服を目指し、光 触媒と吸着剤との複合化技術を開発し、有害化学物 質除去に有効な光触媒の合成に取り組んできた。こ の目的のため、安価で製造でき、大規模化も可能な 噴霧熱分解法をベースとした方法を採用した(図 5)。噴霧発生器中には、原料となる溶液、あるい は複合化させる際には顕諾液があり、これを霧滴化 した液的を一挙に炉内に導入・分解し、所望の組成 を持つ光触媒粉体を得る方法である。一段のプロセ スで光触媒が得られるため、安価な製造法となって いることが特徴である。得られた複合光触媒の光触媒活性評価した結果 を、図6に示した。NFTOが、 活性炭を伴わない単図5噴霧熱分解法の概略図 独の可視光応答型であるが、活性炭と複合化させた NFTO-ACF、 NFTO-ACAともに活性が向上している。図6可視光照射による各種VOCの分解P25:比較標準試料。NFTO:窒素、フッ素同時添 加粉体。NFTO-ACF : メソポーラス共存活性 炭―NFTO複合体。NFTO-ACA :通常活性炭― NFTO複合体反応条件:光触媒、0.50g ;キャリアガス、 N2/O2 = 79/21 (v/v)濃度:アセトアルデヒド― 930 ppm,トリクロロエチレン―943 ppm,トルエ ン―265 ppm(6)成果の発信以上、成果の一部を紹介したが、これらの成果は 物質・材料研究機構発足後に限って、150報以上学 術論文誌に投稿されている。口頭発表については、 主に国際会議を中心として200報以上報告した。本 グループの特徴は、学術面だけでなく技術展開も重 視してきた点にあり、その基本となる特許も20件以 上を数える。これらの技術情報は、現在まで28回を 数える「電子セラミックス研究会」を通して産業界 に向け発信された。この結果、学・独のみならず産 業界とも深い連携をする事ができた。また、一部の 成果が、ベンチャービジネスとして発展したことも 付け加えておきたい。3.今後の展望以上紹介したように、比較的少ないメンバー数に もかかわらずある程度の成果を挙げることができ た。これは、ウルツァイト系物質が脚光を浴びてい る時期遭遇したという幸運な点もあるが、メンバー の努力の賜であることは間違いない。バンドボーイ ングをはじめとした固溶体に纏わる問題で未解決な 点も残っているが、それ以上に、我がグループでは オプトセラミックスあるいはセンサとしての研究展 開する機運が高まっている。従って、今後、この両 方向に基盤的な研究を発展させていくことで、社会 に大きく貢献しうるものと確信している。機能性ガラスグループの5年井上悟、岩野隆史、Olivier Noguera、勝田喜宣、小池長、小谷和夫、小西智也、小宮山蓉子、坂本知之、柴田修一、末原茂、武 島延仁、竹内太志、田中修平、轟眞市、鄭��益秀、福田盛正、藤本憲次郎、牧島亮男、三輪友紀、安盛敦雄、横尾俊信、吉門進三、 若桑睦夫、和田健二1.グループの発足無機材質研究所の第9研究グループから発展し、 平成13年の物質・材料研究機構の誕生時に物質研究 所の機能性ガラスグループとして発足した。物質研 究所は無機材質研究所時代のグループ制を継続して おり、「シリケートガラス表面パターン形成」を研 究するグループとして発足した。2.グループの活動経緯グループ研究テーマ「シリケートガラス表面パタ ーン形成」は、ガラス表面にレーザー光を短時間照 射して加熱し、照射部分のガラスの仮想温度を変化 させて屈折率を周囲より低下させて屈折率パターン を形成する方法である。原理的に全てのガラスに適 用でき、また、ガラス固有の現象であるガラス転移 を機能に結びつけた方法で、正にガラス固有の屈折 率パターン形成法である。テルライトガラスやケイ 酸塩系ガラスについてパターン形成に成功してい る。レーザー照射の条件を変えることで屈折率を段 階的に変えられることを利用して、光多重記録法と 光多重記録用ガラスとして特許登録している。平成11年度に独立行政法人化を見据えた科学技術 庁先導プログラムとして出発した「コンビナトリア ルマテリアル科学技術の創製と先端産業への展開」 プロジェクトに「コンビナトリアルケミストリー手 法による新ガラス創製の研究」をテーマに参画し、 機能性ガラスグループ発足後も研究を続け平成16年 度からは第二期を迎え、ガラスに加えてセラミック スコンビナトリアル合成の研究をソフト化学グルー プより引き継いでいる。この7年間に世界初のコン ビナトリアルガラス研究システムを開発し、同シス テムを用いて数多くの新ガラスを発見している。ま た、セラミックスの分野では、コンビナトリアル湿 式セラミックス合成装置、コンビナトリアルX線回 折計測・解析装置等を開発し、特に合成装置は登録 商標“コンビック”、“コンビット”として発売し、 コンビナトリアル研究手法の普及に務めている。平成12年度からは、ミレニアムプロジェクトの一 つ として 「有害化学物質除去触媒の探索・創製」プ ロジェクトに「透光性触媒坦体の開発」をテーマに 参画し、平成16年度まで高性能の光触媒を開発する 研究を実施した。独創的なアイデアに基づく透光性 坦体を開発し、更に二酸化チタンを坦持することで 高性能の光触媒モジュールを開発した。ダイオキシ ン類や環境ホルモン等の有害化学物質の分解に有効 であるとの結果を得ている。平成14年度からは機構ナノテクノ ロジー研究プロ ジェクトの一つである「ナノ組織制御による次世代 高特性材料の創製に関する研究」プロジェクトに 「セラミックス新機能創製」をテーマに参画し、陽 極酸化技術をナノテクノロジー技術に発展させた独 創的技術の開発により、3次元ナノ構造薄膜作製法 を開発している。また、同方法により超高密度の磁 気記録媒体開発の可能性を示している。グループメンバー個々も独自の研究を精力的に実 施している。通信ガラスファイバー網を光過剰入力 から守る光フューズの開発や分子軌道法に基づくガ ラス物性予測計算法等を開発している。外部機関との事業として、企業や大学との共同研 究やフランスレンヌ大学ガラスセラミックス研究所 との国際共同研究(平成15年～平成17年)、フラン スよりのJSPSフェロー 3名の受け入れなどを実施し ている。新材料の開発研究ばかりでなく、平成17年度から はNEDOの省エネルギープロジェクトの一つである 「直接ガラス化による革新的省エネルギーガラス溶 解技術の研究開発」プロジェクトに「原料調整法に 関する研究」をテーマに参画している。ガラス産業 の発展に大きく寄与するテーマとして産業界から注 目されている。3. 5年間の成果および代表的トピックス1)シリケートガラス表面パターン形成研究ソーダ石灰シリカガラスにおいて、フェムト秒パ ルスレーザの照射により、アブレーションを起こす ことなく屈折率低下現象を発生させる条件を明らか とした。図―1に実験例の照射部分の光学顕微鏡写 真、触針計凹凸マッピング図、そして屈折率分布図 を示す。照射表面が滑らかな状態で約0.015程度の 屈折率低下が発生している。図1 レーザー照射部分の状態および屈折率マップ2)シリケートガラス表面パターン形成機構研究有限要素法に基づく伝熱シミュレーションを用い て計算した、ソーダ石灰シリカガラス表面に 0.3J/mm2の照射エネルギー密度でレーザ光を照射し た時の照射部が最高温度に達した時の温度分布を図 2左に示す。また、これらの計算を様々な照射条件 で行い、それぞれの最高到達温度(近似的に仮想温 度と見なした)を推定した。図2右に、誘起された屈折率変化を推定した仮想温度に対してプロットし た。仮想温度の上昇にともない屈折率が直線的に低 下しており、パルスレーザ照射加熱により照射部の ガラスの仮想温度を変化させて屈折率の低下量を制 御できることが明らかとなった。図2有限要素法による屈折率変化の見積3)陽極酸化法によるガラス表面への3次元ナノ構 造薄膜の作製研究図3に形成法を示す。ガラス表面に導電膜を形成 し、更に、この上にアルミニウムの薄膜を蒸着法や スパッタリング法により形成する。NIMSが独自に 開発した機能性ガラス作製法である。アルミニウム 薄膜を陽極酸化してナノサイズの細孔がガラス面に 垂直に配列した非晶質アルミナ多孔体薄膜とする。 導電膜はアルミニウムの陽極酸化を最後まで進める ための電極である。また、一般のアルミニウムの陽 極酸化膜では不可能であるが、ガラス表面上の酸化 膜では、バリア層と呼ばれる細孔底部のアルミナ膜 が側面のアルミナ膜より薄いため、エッチングによ り完全に取り除ける。自己組織化過程であるため、 マスク等なしでナノメータオーダーの細孔組織が形 成できる。図3 陽極酸化法によるガラス表面へのナノ構造細孔中へは、ゾルディッピング、電析法により化 合物が導入できる。チタニアゾルを導入して熱処理 したものは高性能の光触媒として機能し、ハウスシ ック症候群の原因とされるホルムアルデヒドの光分 解による空気浄化に有効として、全国紙を含めた7 紙に報道された。電析法による導入においては、磁 性合金であるFe-Pt合金を導入しその磁化特性を評価 し超高密度の磁気記録媒体として応用可能であるこ とを明らかとし、新聞でも報道された。図4にFe-Pt 合金を導入した細孔組織のSEM写真を示す。約 50nmのFe-Ptナノロッドのアレイが形成されており、 磁化特性評価では、面に垂直のロッド配向方向に優 先的に磁化し易いとの結果が得られた。図4 Fe-Ptナノ ロッドアレイの断面S EM写真また、多孔質化が不可能とされてきたTiを多孔質 化する新規の陽極酸化手法に関して研究した。ガラ ス基板上のAl/Ti複合金属薄膜の陽極酸化により、 Al陽極酸化膜をスルーマスクとして使用し、世界で 初めてTi金属の陽極酸化に成功し種々の3次元ナノ 構造を作製した。図5は、リン酸、シュウ酸、硫酸 溶液中で定電位・定電流で二段階陽極酸化により作 製したチタニヤナノロッド(白い丸棒部分)配列構 造体のSEM写真である。アルミナ皮膜の細孔位置に 従って緻密型のチタン酸化物が成長した。作製した チタニヤナノ ロッドは高性能の光触媒として機能し た。図5 Al/Ti複合金属薄膜陽極酸化による3次元 ナノ構造のSEM写真4)ファイバヒューズに関する研究光によって光ファイバが破壊される現象を利用し た光ファイバヒューズの開発およびその超高速連続 写真撮影を世界で初めて成功させた。(図6)大64個までの試料を作製することができるロボット である。複数の出発原液の秤��量・混合から攪拌後の 盛り付け・乾燥に至るまでの全ての作業は、グラフ ィカル・ユーザー・インターフェースを備えたコン ピューター制御プログラムによって効率的に行われ る。また、COMBIT TMは、省スペース・ポータビリ ティに注目して設計されたため、本装置を用いれば、 わずかな実験スペースにコンビナトリアル技術を導 入し、研究効率をアップすることが可能である。図 8に装置全景写真を示した。図6 光ファイバーヒューズ動作瞬間写真1987年に発見されたこの現象は、近年のレーザー 光源の高出力化に伴い、光システムの深刻な脅威と なっている。数Wの光が伝搬している光ファイバ回 線を折り曲げると、図7写真に示すような発光体が 発生し、光ファイバの中を光源に向かって約1m/秒 の速度で移動する現象が観察された。写真内の輝点 列は、発光体の通過直後に空孔が生成していること を示しており、本現象の本質的解明の一助となる。図8コンビナトアリル湿式自動試料作製装置 (COMBIT TM)図7 ファイバヒューズ伝搬の連続写真。写真の横幅 は400nm。使用した光ファイバの外径とコア径は、そ れぞれ125nmと10nm5)コンビナトアリル湿式自動試料作製装置(COMBIT TM)の開発コンビナトリアル湿式自動試料作製装置を新規に 開発した。本装置は、スラリーや溶液などを原液と して用い、35x35mm2のライブラリプレート上に最6)高速新ガラス探索研究ガラス組成を変化させて新規のガラスを探索する 方法として、コンビナトリアル手法を取り入れたガ ラス研究システムを世界に先駆けて開発した。従来 の100倍以上のスピードで新ガラス探索が可能であ る。図9にシステムの概念図を示す。試料合成や物 性測定を並列操作により高速処理することで研究を 高速化している。また、網羅的研究により、従来困 難であった偶発的な成分相互作用による新規の機能 性ガラスの発見に繋がる。7)計算科学によるガラスの物性予測法研究コンピューターシミュレーションや光電子分光法 などを使って化学結合からのガラス物性発現原理を 研究している。分子軌道法や分子動力学法等の計算 手法を主に用い、出来るだけ簡便な方法で精度良く 計算するための計算方法の開発と同方法を用いてガ ラスの光学物性を予測する研究を進めている。5年間(平成17年度は10月まで)の査読発表論文 総数は48編、特許は出願・登録合わせて12件であ る。図9コンビナトリアルガラス研究システム概念図4.ガラス材料分野の研究動向ガラス材料は、窓ガラス、ガラス瓶、食器などの 伝統的かつ生活密着型の製品から光学機器のレン ズ、コンピューターのハードディスク、ディスプレ ー用ガラス、光通信ファイバーなどの機能性ガラス 材料として広く使用されている。特に、現在精力的 に研究されている機能性ガラスがナノガラスと呼ば れる高度に組織制御を施すことにより新規の機能を 発揮させる機能性ガラスである。図10にナノガラスに対する基本的な考え方を示し た。第1世代に示した状態は、ガラス中に原子やイ オン状の活性点がランダムに分散した状態で、いわ ゆる普通の機能性ガラスである。希土類イオンを分 散させたレーザ発振に使われる蛍光発光体などがこ のグループに属する。研究開発では、ガラス組成を 種々変えてガラス化する新組成を探索し、その中か ら役立つ物性を有するガラスを探し出す。第2世代 に示した状態は、原子やイオンが数個集まった微粒 子状活性点がランダムに分散した状態で、ガラスと しての性質が支配的なナノガラスである。非線形光 学材料として期待される半導体微粒子分散ガラスが このグループに属する。第3世代の状態は、活性点 のサイズが少し大きくなると共にガラスマトリック ス中に規則的に配列して分散している状態で、結晶 としての性質が現れてくるナノガラスであり、非線 形光学材料用のフォトニクス結晶としての機能を発図10ナノガラス基本概念 現し得るガラスである。第3世代の状態のナノガラ スが現在世界で精力的に研究されている。第3世代 の状態は、化学的な相として見ればガラス状態であ るが、結晶に相当する物性が発現する状態である。現在世界で精力的に研究されている代表的な機能 性ガラスやナノガラス作製技術を以下に列挙する。・気相合成法原料ガスどうしを化学反応させてその反応物を基 板に堆積させる CVD (Chemical Vapor Deposition) 法や目的物質と同じ材料(ターゲット)にイオンを ぶつけて目的のイオンを叩き出して基板に再び堆積 するスパッタリング法などによる気相合成法であ る。・レーザー誘起構造法フェムト秒レーザ光をレンズでガラス中に絞り込 み、照射部に構造変化を誘起して屈折率の高い部分 を形成する方法である。点だけでなく線、即ち光導 波路も形成できる。制御性・簡便性に優れる。・結晶化法・分相法結晶化法は、ガラス中にナノサイズの結晶を析出 させる方法で、透明結晶化ガラスの製造法である。分相法は、液相状態で2液に分離する液―液分相 (安定不混和現象)或いは液相線温度以下の潜在分 相現象を利用する方法である。分相析出相が液滴と なる、核形成・成長機構による分相領域を利用す る。これらの方法の他に、本稿3にて既に取りあげて いる機能性ガラスグループの研究成果である、陽極 酸化法とコンビナトリアル研究手法もナノガラス研 究に不可欠の製造法と研究手法である。ここで紹介した各種機能性ガラス作製法はそれぞ れに特長のある方法であり、どれが優れているとい うものではない。開発するガラスの種類に応じて使 い分けられる。気相合成法、レーザ誘起構造法、エ ッチング法は規則的な2次元、3次元分散を作製す るのに適しているが、生産性はあまり高くない。陽 極酸化法は規則構造を有する比較的大きなナノガラ スを生産性良く製造するのに適している。析出現象 を利用する結晶化法や分相法も生産性に優れた方法 であるが、規則的な結晶の分散は不得意である。今 後、ここに紹介した様々な方法による材料開発研究 が並行して進み、それぞれの方法の特長を活かした 実用機能性ガラスが生み出されてゆくであろう。新ガラス材料の開発は、多様な合成技術とコンビ ナトリアル手法探索の組み合わせにより精力的に進 められると期待される。特に、環境・エネルギー ・ 情報分野におけるガラス材料への要求が強く、当該 分野の研究が進むであろう。また、ガラス産業はエ ネルギー多消費型の産業であり、CO2排出削減のた めの省エネルギー型生産技術開発も急務である。リ サイクル技術の高度化と共に新規のアイデアに基づ く工業的ガラス製造法の研究開発も求められるであ ろう。ソフト化学グループの5年佐々木高義(2001.4～)、Natalia Hajdukova (2005.9～)、糸瀬将之(2005.4～)、海老名保男(2001.4～)、太田鳴海(2002.4～)、 長田実(2003.7～)、坂井伸行(2002.4～)、高梨元気(2005.5～)、高田和典(2001.4～)、張聯斉(2003.4～)、中野智志(現超 高圧グループ2003.4)、中村聖(2004.4～)、馬仁志(2004.4～)、道上勇一(現先端結晶解析グループ2003.4)、楊暁晶(2004.1～)、 與口聡(2005.4～)、李 亮(2004.9～)、刘兆平(2004.9～)、渡辺明男(2003.4～)、渡辺遵(現(独)物質・材料研究機構 監 事)、和田弘昭(2003.4～)1.グループの目的「ソフト化学合成」とは穏和な条件下での材料合 成という意味である。通常のセラミックス合成が原 料を1000℃前後の高温で焼成することにより熱平衡 状態を経由して行われるのに対して、ソフト化学合 成は非平衡合成法の一つでインターカレーション、 イオン交換、剥離反応などの室温付近で進行するソ フト化学反応を活用して物質を多段的に誘導して合 成を行う。そのため通常のセラミックス合成法では 得られない特異な組成、構造、形態の無機材料の合 成が期待できる。我々は平成7年度より「ソフト化 学」をグループ名に採用し、このような趣旨に基づ いた研究を行ってきている。主な物質系としてチタ ン、スズ、コバルトなどの酸化物を対象として、電 極材料、光触媒、固体電解質などへの応用を期待し た様々な材料合成に関する研究を展開している。2.活動経緯平成13年のNIMS発足時はグループ研究課題とし てそれ以前より進めていた「スズ・チタン酸塩に関 する研究」を引きつぎ、渡辺リーダー(物質研究所 長と兼務)のもと職員5名の体制で研究を開始した。 その後グループの解散再編成を行い平成15年度より 「酸化物ナノシートに関する研究」を新研究課題と して取り上げた。運営交付金プロジェクト研究としては独法化先導 プログラムとして平成11年度より開始された「コン ビナトリアル材料合成に関する研究」に電極材料開 発を行うサブグループとして参加し第一期終了時 (平成15年度)まで研究を行った。あわせて「ナノ スケール環境エネルギー物質に関する研究(平成13 年度―18年度)」のサブテーマである「光エネルギ ー材料に関する研究」を担当した。また外部資金プ ロジェクト研究では「光機能自己組織化ナノ構造材 料に関する研究(JST,CREST ;平成14年度―19年 度)」、「燃料電池自動車等用リチウム電池技術開発 (NEDO :平成14年度―18年度)」を推進している。グループ構成員は新規正規職員の配属(高田、長 田、馬)、上記プロジェクト研究を通じた特別研究 員の参加、民間企業との共同研究による外来研究員 の受け入れ、連携大学院制度などによる大学院生の 受け入れなどで総数20名を超えるグループとなっ た。以下ではソフト化学グループの活動により得られ た主要な成果をトピックス的に記述する。3.研究トピックス(1)機能性ナノシートの創製層状マンガン酸化物、層状複水酸化物にソフト化 学処理を施すことにより単層剥離させ酸化マンガン および水酸化物ナノシートを新たに合成した。前者 はMn3+/Mn4+のレドックス性を示すこと、後者はこ れまで合成されたナノシートとは異なり正電荷を帯 びていることが特徴である。また最近酸化チタンナ ノシートに磁性元素をドープすることなどで電子 的、磁気的性質を積極的に制御する試みも始めてお り、強磁性が発現するなどナノシートの新しい側面 が拡がってきている。図1 酸化マンガン(上)と水酸化物ナノシート(下)(2)ナノシートを用いた材料合成ナノシートは液媒体中に分散したコロイドとして 得られるため、これに様々なプロセッシングを適用 することが可能であり、ナノシートをビルディング ブロックとした多様なナノ構造材料を合成した。・フロキュレーションナノシートゾルに適当な溶液を混合すると、ナノ シートの再凝集が起こり、図2のような微細組織を 特徴とするナノ複合体が簡便に合成できることを示 した。ナノシートと再凝集剤の組み合わせによって 様々な特徴を持つ光触媒(図2)、電極材料、蛍光 材料、細孔材料が得られた。・レイヤーバイレイヤー累積静電的自己組織化法によりナノシートをレイヤー バイレイヤー累積することで、セルフクリーニング 機能やエレクトロクロミック機能を持つナノ薄膜が 形成できることを明らかにした。さらに水酸化物ポ リイオンや金属錯体、ナノチューブ、ナノ粒子など をナノシートと組み合わせて累積し、多彩なナノ高図2 ルテニウム担持酸化ニオブナノシート再凝集体光触媒による水の全分解次構造を構築できることを示した。・ナノ形態制御ナノシートが非常に柔軟であることに着目してポ リマービーズ上に累積したり、再凝集体を再剥離す ることによってナノ中空シェルやナノチューブを誘 導した(図3)。図3 ナノシートを用いて合成した酸化マンガン中空 シェル(左)と酸化チタンナノチューブ(右)(3)層状コバルト酸化物超伝導体の発見新規ナノシートを探索する目的で層状コバルト酸 化物にソフト化学処理を施した結果、層間に水分子 層が2層取り込まれることに伴ってCoO2層の間隔が 大きく拡大した相が生成し(図4)、4.7Kで超伝導 性を発現することを見いだした。本化合物はコバル ト酸化物系で初の超伝導体であり、大きな反響を呼 んでいる。図4 層状コバルト酸化物超伝導体(右)とその出発 物質(左)の結晶構造(4)全固体型リチウムの開発リチウム電池の高エネルギー密度化に伴う危険性 回避のために求められている全固体化を2種類の硫 化物ガラス固体電解質を用いた構成(図5)により 実現した。これにより市販のリチウム電池に匹敵するエネルギー密度を達成した。残された問題であっ た高速放電時の特性についても活物質と固体電解質 の界面接合をナノレベルで制御する最近の研究によ りほぼ解決しつつある。図5 全固体型リチウム電池の構成(5)ホーランダイト型光触媒の開発ホーランダイト構造を持つスズ酸化物が光触媒作 用を示すことを明らかにした。有機塩素化合物であ るトリクロロエチレンの分解反応においてはC-Cl結 合が優先的に切断されるなど、酸化チタン光触媒上 とは異なるプロセスで反応が進むことなどを明らか にし、新しい環境浄化用光触媒としての可能性を指 摘した。(6)分子動力学計算を用いた固体電解質内の可動イ オンのダイナミクスの解明1次元トンネル構造を有する固体電解質内で伝導 イオンがどのように振る舞うかについて計算科学的 にアプローチし、実測のイオン伝導性、イオンの分 布をよく説明できることを明らかにした。5年間の研究成果は原著論文、解説・総説、特許 などとして発表している。詳細はホームページ (http://www.nims.go.jp/softchem/index.html) を 参考 に していただきたい。平成13年 論文23報、総説9編、特許出願16件 平成14年 論文32報、総説1編、特許出願3件 平成15年 論文23報、総説9編、特許出願3件 平成16年 論文31報、総説1編、特許出願 9件 平成17年論文31報、総説17編、特許出願 4件 (平成17年11月末現在)4.研究の動向・展望5年間を振り返ると層状ホスト化合物を舞台にし て機能性ナノシートの創製とその展開、コバルト酸 化物超伝導体の発見、全固体型リチウム電池の提案 など多くの先導的な成果を得ることができた。ソフ ト化学合成ではナノシートのレイヤーバイレイヤー 累積により材料を設計的に構築する、いわばウェッ トプロセス・ナノテクノロジーといった新技術に発 展しつつあり、さらなる展開が期待される。http://www.nims.go.jp/softchem/index.html%25ef%25bc%2589スーパーダイヤグループの5年神田久生、安藤寿浩、石垣隆正(現プラズマプロセスグループ2003.4)、岩崎幸治、宇佐美達己、片桐雅之、小泉聡、小出康夫、 柴崎健、中川清晴、松本精一郎、三重野正寛、Liao Meiyong、渡邊賢司、1.組織発足の経緯・目的当グループは旧無機材質研究所時代の研究グルー プから続いているが、その源は1969年に発足した炭 素グループといえる。このグループは1974年にダイ ヤモンドグループとなり、その後、何度か再編成さ れて、当機構に引き継がれた。この間の1980年代初 め、当グループはダイヤモンドの気相合成法を確立 し、ダイヤモンドの合成研究の世界的な大ブームの さきがけとなった。これを機に、ダイヤモンドグル ープは、ダイヤモンド合成とプラズマ技術をキーワ ードとして研究を進めてきた。また、1993年に始ま った、科学技術庁のCOE育成プロジェクトに無機材 質研究所が選ばれた際には、本プロジェクトの一分 野としてダイヤモンドグループも参加し、研究は一 段と加速した。無機材質研究所独自予算でも、スー パーダイヤモンドというキャッチフレーズで、ダイ ヤモンド薄膜、BN薄膜の研究を進めた。宝石や工 具用途の従来のバルクダイヤモンドに限らず、電子 材料への応用をめざしてダイヤモンドの研究を展開 した。2.グループの活動経緯無機材質研究所時代のCOE化プロジェクト、スー パーダイヤ研究が進行中の2001年に、独法化という 組織改変が行なわれた関係で、スーパーダイヤグル ープは実質的にそのまま継続した。しかし、組織的 には2002年度でグループは一旦終了し、再編成され た。研究内容としては、独法化直前の1997年に、n型 半導体ダイヤモンドの合成に世界に先駆けて成功し たことが旧ダイヤモンドグループの大きな成果であ ったことから、それをベースに独法化後の当グルー プのこの5年間は、半導体電子材料を強く指向する ものであった。しかし、グループのメンバー個々の 自主性を優先に研究を行なったことから、多岐にわ たるオリジナリティの高い成果が得られた。3.成果(1)半導体ダイヤモンドダイヤモンドは5.5eVという大きなバンドギャッ プを持つ半導体であることから、そのギャップに近 い200nm付近の深紫外線発光素子が期待される。当 グループでは、リンドープによるn型ダイヤモンド とホウ素ドープによるp型ダイヤモンドを積層した pn接合膜を作製した。この膜が整流特性を示すこと を確認し、半導体技術にとって必須のpn接合の作製 を、ダイヤモンドにおいて初めて成功した。そして、 その接合膜に電流を流すとpn接合界面から発光が観 測された(図1)。この発光のスペクトルには、図2に示すように、5.27eV ( 235 nm )に深紫外線の 発光がみられる。これは自由励起子の発光に相当す る。このような短波長の発光ダイオードはいままで に世界初のものである。また、このpn接合膜に光を 照射すると、230nm以下の短波長でのみ電流が流れ ることを見出し、このpn接合膜は深紫外線センサー の機能ももつことが確認できた。図1 ダイヤモンド半導体pn接合界面からの発光(青 色リング状)。ここではpn接合膜は円柱状にメサ加工し てあるため、接合界面が露出した、円柱の側面から発 光が認められる。金色部分は金属電極図2 ダイヤモンドLEDの発光スペクトル。5.27eV (235nm)に励起子によるシャープな発光が観察される。 しかし、500nmにブロードなピークの発光(バンドA) も見られる。このため図1では青白い発光がみえるわ けであるが、このような可視発光はダイヤモンドに含 まれる欠陥による。さらに強い紫外線発光を実現する には、ダイヤモンド薄膜の欠陥の抑制が必要である半導体ダイヤモンドと金属電極との組み合わせを 工夫することで、高性能の深紫外線センサー機能を 発揮する技術も開発した。図3は、ホウ素を添加したp型半導体ダイヤモン ド表面に炭化タングステンとチタンを電極として付 着させたものである。これが深紫外線(270nm以下) を選択的に検出できるすぐれた特性をもつことが見 出された。図4に示すように、深紫外線を照射した ときのみ電流が流れる。この電流を測定することで 紫外線光を検出できる。可視光の照射では電流が流 れないので可視光は検出されない。それで、ソーラ ーブラインドセンサーということができる。つまり、 太陽光のもとでも太陽光を感知せず紫外線のみを検 出する。この特性から、火災報知機としての利用が 期待されている。図3 ダイヤモンド紫外線センサーの表面パターン。 円の内部にWC薄膜が蒸着されており、外側にTi薄膜が 蒸着されている。円の外周にWCとTi膜のギャップがあ る。WCとTi薄膜に配線して用いる図4 ダイヤモンドの光伝導の波長依存性。横軸が照 射波長、縦軸が電流。270nm以下の波長の照射でのみ 電流が検出されることがわかる(2)カーボンナノチューブ世界中で活発な研究が行われているカーボンナノ チューブ関連でも、興味深い合成法を開発した。メチルアルコールなど有機化合物液体の中にシリ コン基板を入れて、それを通電加熱すると、その表 面で有機化合物液体が分解して炭素が析出する。そ の際、基板表面に鉄の微粒子を付着させておくと、 それが炭素化反応の触媒となり、カーボンナノチュ ーブが基板から垂直方向に高配向で成長し、絨毯の ようになる(図5)。この合成法は、ガラス製フラ スコを用いて行なうことができる極めて簡単な方法 であるところに特徴がある。生成するナノチューブ は6～100nm程度の直径で、その成長速度は1分間 で数μmである。図5 アルコールの中で通電加熱した基板上に成長した配向性カーボンナノチューブまた、別の方法で、図6、7に示すような、ユニ ークなナノカーボンの合成にも成功した。これは、 ナノチューブやナノフィラメントが、中心の微細核 から放射状に成長して球状になったものである。苔 のマリモと類似の形態であることからマリモカーボ ンとよぶことができる。図6 マリモカーボンのSEM像図7 マリモカーボンの拡大写真。ナノサイズの繊維 状であることがわかるこのマリモカーボンは、ダイヤモンド微粒子にNi などの金属を付着させ、それを充填した電気炉 (400―600℃)にメタンガスを導入することで合成 される。マリモカーボンは、触媒担体や電気二重層 キャパシタなどとして優れた性能を示しており、航 空機、自動車用部材、太陽電池、燃料電池用電極な どの新しい炭素材料として用途への応用が期待され る。この関連の研究で、表面を酸化したダイヤモンド 表面にⅧ族遷移金属や酸化バナジウム、酸化クロム、 酸化チタンなどの粉末を担時させると、これが有機 化合物ガスの化学反応触媒機能をもつことが発見さ れた。例えば、酸化クロムを担時させた表面酸化ダ イヤモンドに、エタンガスを炭酸ガスとともに導入 すると、エタンがエチレンに変わる脱水素反応が効 率的に起こる。(3)立方晶窒化ホウ素(cBN)薄膜立方晶窒化ホウ素(cBN)はダイヤモンド類似の 構造であることから、高硬度、ワイドバンドギャッ プなど特徴的な性質を持ち、ダイヤモンドよりも優 れた用途も期待されている。しかし、ダイヤモンド に比べて、気相合成は非常に困難で、はっきりした cBN薄膜の合成は、多くの研究者の挑戦にもかかわ らず成功しなかった。当グループにおいて、直流ア ークジェットプラズマ気相合成法により、初めて、 はっきりしたcBN薄膜の合成に成功した。原料にフ ッ化物を含むガスを用いる点が大きなポイントで、 混合ガス(BF3 + N2 + H2)を用いて合成した。合成 したcBN薄膜は、図8に示すように、20μm以上の 厚みをもち、90%以上がcBN成分である。このよう なcBNを主成分とする厚い膜の合成は世界初めての ことである。これはX線回折、赤外線吸収スペクト ルだけでなく、ラマン散乱法においても、cBNのシ グナルがはっきりと見られ、膜の厚さのみならず、 結晶性においてもすぐれている。ただ、基板との接 合強度に問題があり、工具など実用化に向けて、さ らに改善が必要である。図8直流アークジェットプラズマ気相合成法によって 合成した立方晶窒化ホウ素(cBN)薄膜の断面(走査型電 子顕微鏡写真)。基板はシリコン(4)六方晶窒化ホウ素(hBN)からの紫外線レーザー六方晶窒化ホウ素(hBN)は黒鉛類似の結晶構造 をもつ薄片状の結晶である。しかし、黒鉛と異なり 無色透明の絶縁体である。この物質は、潤滑剤など として古くからよく知られているが、2004年、この 物質から215nmという深紫外線が発光し、しかもレ ーザー発振することが見出された。この結晶は、当機構の超高圧グループにおいて、 高圧高温条件で合成された。hBNをBaBNという高 温高圧下で溶媒となる物質の中で数ミリの単結晶に 成長させたものである。特に不純物の混入を抑え高 純度化に成功したという点がポイントである。この結晶に、電子線を照射すると強い紫外線の発 光(カソードルミネッセンス)がみられる。そのス ペクトルをみると、215nmの励起子発光が強く、そ れ以外の不純物・欠陥に関係する発光はほとんど認 められない。高純度化の効果である。この高純度 hBN単結晶の劈開面を利用して、表裏両面を反射面 とするレーザー共振器構造を作製し電子線を入射し て試料を励起したところ、この波長215nmの発光が レーザー動作に特有のいくつかの現象を起こす事を 見いだし、室温レーザ発振を確認した(図9)。現在、窒化ガリウムなどで紫外線発光の研究がさ かんであるが、ここで実現したhBNのレーザー発振 は、固体では最も短い波長である。コンパクトで高効率な遠紫外発光素子には、多方 面の応用が考えられる。たとえば光触媒による環境 汚染物質の分解処理法用光源として、あるいは光記 録デバイスの高集積化、蛍光灯の励起光源としての 利用、病院や食品加工などに用いられる殺菌用水銀 ランプの半導体発光素子への置換など新しい用途展 開が期待される。図9電子ビーム照射によるhBN単結晶からの215nm深 紫外線のレーザー発振(5)宝石ダイヤモンド図10は、茶色の低品位の天然ダイヤモンドを熱処 理によって、高品位のピンク色に改質したものであ る。数年前より、このような、低品位のダイヤモン ドを熱処理により宝石価値を向上させる技術が広ま ってきた。しかし、宝石ダイヤモンドにおいては、 人工的な処理を加えない天然結晶が最も珍重される ため、人工的な処理の有無を見分ける技術の向上の 要求が一段と高くなった。当グループでは、ダイヤモンドの高圧高温 (HPHT)処理実験と分光学的な評価を行なうことで、 熱処理で生じる特徴的な変化を発見した。ひとつは、 茶色の天然ダイヤモンドにみられる紫外線の2BDと 呼ばれる発光が、熱処理によって減少するという点。 もうひとつは、合成ダイヤモンドを熱処理すると、 天然ダイヤモンドに特徴的な転位に関係する発光像 が生じるという点である。これらの情報は、天然ダ イヤモンドの人工的な熱処理の有無の鑑別に役立つ ことが期待される。図10高圧高温処理により、茶色からピンクに変色し た天然ダイヤモンドプラズマプロセスグループの3年間の活動をふりかえって石垣隆正、飯島志行、YE Rubin、池田征史、岩淵芳典、岡田勝行、鎌田啓嗣、亀井雅之、川上裕二、小井土由将、小林法夫、佐 藤仁俊、椎野修、鈴木廣良、鈴木了、Büchel Robert、村上貴章、守吉佑介、吉川雅人、吉田豊信、李継光、渡辺隆行、渡邊洋子1.はじめに平成15年4月に新しくスタートしたプラズマプロ セスグループは、材料合成プロセスの進行する化学 反応場をプラズマにより精密に制御して新材料を創 製することをめざしてきた。独自のプラズマ発生法 の開発を通してセラミックス材料の高機能化を進 め、欠陥構造、サイズ、構成相を制御した酸化チタ ン、ナノクリスタルダイヤモンド等ナノサイズ粒子 のプラズマ合成、パルス変調高周波熱プラズマ処理 による発光材料の開発、パルス化スパッタリング法 による酸化物薄膜合成に関する研究を行ってきた。プラズマプロセスグループの研究アプローチを簡 単に記述すると、次のようになる。①プラズマ計測、 プラズマ過程の数値解析により、新しいプラズマプ ロセッシングの特性評価をする。②プラズマキャラ クタリゼーションを反応装置設計へのフィードバッ クにいかす。③最適化された反応装置、プロセスパ ラメーターを利用して、ナノ粒子、ナノクリスタル 合成、それらの機能化、高機能ナノ粒子の利用に不 可欠な粒子修飾技術の開発に資する。プラズマプロセッシングの高度化においては、プ ラズマ発生周波数を切り口として、プラズマ温度、 電子密度、活性化学種濃度を精密に制御し、新しい 反応場を探索してきた。具体的な研究対象は、周波 数の高い方から、①従来利用されていなかったVHF 帯(30 ―300MHz)利用プロセッシング、②RF帯 (30k ―30MHz、特に1―4MHz)あるいは③MF帯 (30kHz以下)利用プラズマを出力変調した2種類の タイムドメイン制御プロセッシングの高度化である。RF熱プラズマに関しては、もっぱら高温熱源と して利用されてきた熱プラズマからその超高温の陰 に隠れがちな“高化学反応性”を抽出する意図をも ってナノ粒子合成、ナノ組織制御に関する研究を進 めてきた。そのために、反応雰囲気制御、タイムド メイン発生制御、プラズマ流の均質化を行って、プ ラズマ中の気相励起状態を積極的に利用し、酸化チ タン等の酸化物セラミックス材料を、通常環境下で は合成困難な化学組成、形態をもったナノ構造制御 微粒子、ナノドメイン構造体を合成してきた。MF帯の周波数を利用するプラズマ組成の時系列 制御では、MFパルス電力駆動およびリアルタイム フィードバック機構を融合させることにより、大面 積にナノ構造制御薄膜を形成させることが可能な次 世代スパッタリングマシンを提案し最近そのプロト タイプを作り上げた。この成膜装置はプラズマの化 学組成の時系列制御を実現するため、デジタル原子 層制御およびアナログ原子層制御をシームレスに融 合させること(ハイブリッド原子層制御)が可能に なる。また、従来あまり使用されていなかったVHF帯の 利用法を開発した。プラズマ励起周波数としてよく 使われる13.56MHzのRF及び2.45GHzのマイク口波の 中間のVHF帯(30 ―300MHz)は、プラズマ発生に ほとんど利用されていなかった。最近のプラズマ計 測により、VHFプラズマはそのプラズマ特性として 低圧力かつ高密度化、低電子温度化が実現でき、薄 膜合成に有利な環境を作り出すことが可能であるこ とが示唆されたことをふまえ、低圧誘導結合VHFプ ラズマを用いたプラズマCVDの高度化を目指してき た。2.グループの活動経緯物質の材料化をすすめるために、プラズマプロセ スを利用したナノメートルオーダーの材料組織制御 の貢献をめざしてきた。プラズマを材料プロセスに 応用すると、形態、結晶構造、化学組成において従 来にない材料を合成することが可能である。プラズ マ利用プロセスは、他の方法にない材料プロセッシ ングに重要な特徴を有しているので、合成プロセス が進行する化学反応場の制御性を高めることによ り、ナノ構造が制御された材料創製が可能である。 プラズマプロセスグループではでは特に、ナノサイ ズの高結晶性粒子、ナノクリスタルの高機能化を推 進してきた。パルス変調RF熱プラズマ(PM-ICP)は、本グル ープで世界に先駆けて初めて発生に成功したプラズ マ発生法であり、熱プラズマ中に内在する化学的側 面を、タイムドメイン制御により顕在化させること に成功したオリジナルなプラズマプロセスである  (図1)。今までに、PM-ICPを高化学的反応性の水素 ラジカル源として利用し、水素ドーピングにより酸 化亜鉛の高効率紫外発光を実現した(プレス発表 「新しい水素ドーピング法により酸化亜鉛の紫外発 光高効率化に成功(平成14年)」)。図1パルス変調RFプラズマ発生の概念図発生法の高度化とともに、(1)熱プラズマ発生装 置・化学プロセスの高度化、(2)通常の電気炉と同 じような感覚で使用できることをキーワードとし  て、熱プラズマプロセスの民間への普及、大学との 研究協力を行ってきた。特に、すでに実用化されて いる材料の研究では、民間企業との共同研究が重要 であり、本グループ発足前から企業と共同研究を行 ってきたプラズマ処理黒鉛粉末のリチウムイオン二 次電池負極材への応用では、充放電容量、充放電効 率の増加をもたらした。(プレス発表「プラズマ処 理によりリチウムイオン電池の充放電効率がアップ (平成15年)」)。この共同研究により、ごく最近、黒 鉛にリチウムがインターカレーションする充電反応 の理論値をこえる充電容量が得られた。MF帯のパルスプラズマを利用するデュアルマグ ネトロンスパッタリングでは、プラズマの高密度化 技術により室温基板上への結晶化TiO2光触媒薄膜の 成長を実現した。(プレス発表「二酸化チタン光触 媒薄膜を無加熱で作製することに成功」(平成16年)。 これにより加熱不能な基板(建築用大型ガラス、プ ラスチック等)表面に光触媒活性を付与することが 可能になった。本件は一般紙を含む新聞に掲載され、 同年のNIMSフォーラムにおいても多数のサンプル 提供依頼、技術相談依頼、共同研究依頼を受けてい る。3. 3年間の成果本グループでは、萌芽的研究「プラズマプロセス 酸化物微粒子合成(平成15～17年)」を基盤として、 機構内プロジェクトである「周波数高度制御プラズ マプロセッシングによる光機能ナノクリスタルの合 成(平成16～17年)」、「熱プラズマ法による希土類 ドープ酸化チタンナノ粒子発光体の合成(平成16～ 17年)」、物質研究所奨励研究「低圧誘導結合VHFプ ラズマCVDによるナノクリスタルエンジニアリング の確立(平成15年)」、「超常環境を利用した新半導 性物質の創製・材料化」、「ナノ組織制御による次世 代高特性材料の創製に関する研究・ナノ組織新機能 材料」、「微量成分による高次構造制御技術の開発」、 外部資金による、科学研究費萌芽研究「パルス変調 ICPと固体の化学的相互作用を活用したセラミック ス材料の高機能化(平成14～15年)」、双葉電子記念 財団研究助成「パルス変調熱プラズマによる酸化亜 鉛発光体の高機能化に関する研究(平成15年)」、産 業技術研究助成事業(NEDO)「高効率エネルギー 変換のための光機能性酸化物の表面付活に関する研 究(平成15～17年)」に参画して研究をすすめてき た。前項でも述べたように、材料化をめざして、民間 企業との連携を意識し、共同研究(「デュアルマグ ネトロンスパッタリング法によるTiO2、SiO2系多 層・混合光学薄膜の高速形成手法の確立(平成15～ 16年)」、「デュアルマグネトロンスパッタリング法 による新規硬質酸化物被膜の開発(平成15～16年)」、 「半導体薄膜を用いた色素増感太陽電池に関する研 究/無加熱結晶化に関する研究(平成15～17年)」、 「TiO2/SiO2多層光学薄膜の高精度パターニング形 成に関する研究(平成16年)」、「反応性熱プラズマ を利用した微粒子合成に関する研究(平成16年)」、 「熱プラズマを利用した炭素系材料の高機能化に関 する研究(平成16年)」、「プラズマ法による機能性 微粒子の合成と特性評価に関する研究(平成17 年)」)、研究協力、業務委託を行った。さらに、外国機関との研究連携を行うため、物質 研究所と韓国およびカナダの大学とのMOU締結に 中心的に参加した(韓国・仁荷大学、“ Advanced Materials Processing through Controlling Chemical Reaction Fields”、平成15年10月17日;カナダ・ Sherbrooke大字、“Advanced Nanoceramics Plasma Processing”、平成17年 9 月26日)。具体的な成果を以下にしめす。平成15年(オリジナル論文24件、解説等3件、特許出願8件) ①高結晶性黒鉛粉末の熱プラズマ処理により、10～ 20ミリ秒間という短い時間でプラズマ中を飛行する 間に、化学組成、構造が変化した新しい表面層が形 成された。このプラズマ処理黒鉛粉末をリチウムイ オン二次電池の負極に応用した。リチウムが炭素電 極に入ったり出たりする量(充放電容量)が10%近 く増加した。また、大気未開放条件で粉末を採取し て粒子表面への水蒸気吸着を抑制することにより、 図2に示したように充放電効率が大幅に向上した。図2 プラズマ処理による充放電効率の変化②窒化チタン粉末の熱プラズマ酸化反応により、窒 素ドープ酸化チタンナノ粒子を合成した。このナノ 粒子は、可視光照射下で光触媒活性を示した。②三塩化チタン水溶液から、ブルッカイト単相、単 分散、球状酸化チタンナノ粒子を常温・常圧・ノン ドープ条件で合成した。(図3)図3 ブルッカイト単相からなる酸化チタンナノ粒子 ③酸化チタン単結晶薄膜に関する安定したDLTS測 定法を確立し、DLTS法による深い準位測定ではル チルとアナターゼ薄膜で全く異なる準位を禁制帯中 に有していることを明らかにした。④ラングミュアプロ ーブ法により低圧誘導結合VHF プラズマの特性の詳細な診断・計測を行い、プラズ マの放電維持機構の周波数依存性を見いだした。⑤低圧誘導結合プラズマCVDにより合成したナノク リスタルダイヤモンドのsp2/sp3結合状態を電子エネ ルギー損失分光法(EELS)により評価し、サブグ レインの約1nmの粒界幅を観測した。平成16年(オリジナル論文29件、解説等2件、特許出願9件、 受賞:岡田勝行・第2回プラズマエレクトロニクス 賞[応用物理学会プラズマエレクトロニクス研究 会])①高周波熱プラズマによる酸化チタンナノ粒子の合 成;液体プリカーサーを酸素含有高周波熱プラズマ 中にミストとして噴霧し、蒸発、酸化反応をへて鉄 およびユーロピウム添加酸化チタンナノ粒子を合成 した。ミスト噴霧法の利点は原子レベルで均質なナ ノ粒子合成、凝縮時の気相過飽和度の制御性にある。 鉄ドープナノ粒子では、非平衡組成(従来法の4～ 5倍の鉄ドープ量)をもつ高結晶性均質ナノ粒子が 得られた。Fe3+によるTi4+の置換は酸素空孔形成を もたらしたが、高濃度ドープナノ粒子では酸素空孔 の規則化が起こり、一種のShear構造が見られた (図4)。ユーロピウムドープTiO2では、TiO2母格子に吸収 されたエネルギーが、非輻射遷移をへてEu3+に効率 的にエネルギー移動し、明るくて、色純度の高い赤 色発光(617nm)が得られ、イオン半径がTi4+より かなり大きな(約145%) Eu3でも酸化チタン格子中 に固溶可能なことが示された。②無加熱基板上への光触媒二酸化チタン結晶薄膜の 成膜;デュアルマグネトロンスパッタリング法と呼 ばれるパルス波形の電力で駆動されるスパッタリン グ装置に独自の改良を加え、二酸化チタン薄膜が結 晶化に要するプロセス温度を著しく下げることに成 功した。この技術により無加熱の基板上に結晶化し た二酸化チタン薄膜を直接形成することが可能とな った。図5にPET樹脂フィルム上に形成した光触媒 二酸化チタン薄膜を示す。スパッタリング成膜であ るため密着性に優れ、PET樹脂フィルム上にも曲げ ても剥離せず摩擦に強い光触媒二酸化チタン薄膜を 形成できた。図6に無加熱基板上に本技術を用いて 作成した二酸化チタン薄膜の光触媒効果を利用して 浮き上がらせた物質・材料研究機構のロゴマークを 示す。これにより良好な光触媒活性を有しているこ とが確認できた。図5 PET樹脂フィルム上に無加熱で作成した光触媒 二酸化チタン薄膜図6 無加熱ガラス基板上に作成した二酸化チタン薄 膜の光触媒効果を利用して浮き上がらせた物質・材料 研究機構のロゴマーク図4 酸素空孔の規則化による濃淡縞が見られる鉄ドープ酸化チタンナノ粒子のTEM像③パルス変調高周波熱プラズマの非平衡性の解析; パルス変調高周波熱プラズマのミリ秒オーダーの投 入電力スイッチングにともなう過渡状態の非平衡性 を解析するため、二温度時間依存モデルを開発した。 純Arプラズマに関する解析は、プラズマ電力の高速 スイッチングにともない、重粒子温度と電子温度の 偏倚(熱的非平衡性)、およびイオン化率の非平衡 性があらわれることを示した。この非平衡性は、ス イッチング直後、1ミリ秒以下の時間範囲で顕著で あった。さらに、材料プロセッシングに有利なパル ス変調周期は2～10ミリ秒であることが示された。 ④ナノクリスタルダイヤモンド合成用低圧誘導結合 プラズマの数値解析;モンテカルロ直接法および電 子モンテカルロ法により、プラズマ特性として最も 重要な電子エネルギー分布関数についてのシミュレ ーションを行った。通常の解析で取り上げられる不 活性ガス(Ar)の計算のみならず、実際のプロセス ガス(CH4/H2)に関する計算においてもラングミュ アープローブによる実測値にほぼ一致する計算結果 を初めて示すことができた。平成17年(オリジナル論文18件、解説等2件、特許出願5件) ①ガスシュラウドによるナノ粒子径の制御;熱プラ ズマ流が反応容器上部に設置したガスシュラウドか  らの旋回流により、反応容器内のガス流を均質化 (温度・流速分布の半径方向の平坦化)して、酸化 チタンナノ粒子の粒径制御が可能であることを示し た。②TiO2/SiO2多層光学薄膜の高精度パターニング形 成;TiO2/SiO2多層光学薄膜の高精度パターニン形 成に際してTiO2膜の光触媒活性等を用いる新しい高 精度パターン形成技術を確立した。③黒鉛粉末の熱プラズマ処理;塊状黒鉛粉末の熱プ ラズマ処理、これに引き続く大気未開放電極調製に よりリチウムイオン二次電池負極材として、黒鉛に リチウムがインターカレーションする充電反応の理 論値372 mAh/gをこえる充電容量をえた。④酸化チタンナノ粒子の相選択性制御;比較的マイ ルドな条件下の水熱反応により、三塩化チタン水溶 液から、純相のルチル、ブルッカイト、あるいはア ナターゼからなるナノ粒子を選択的に合成した。4.グループがカバーしている研究分野の動向、展 望物質の材料化をすすめるためのブレークスルーと して、その一つの形態がナノ粒子であるが、ナノ粒 子の特性が必ずしも有効に引き出されていないのが 現状である。本グループでは、酸化物ナノ粒子の特 性を引き出すために、高度制御プラズマプロセスを 用いて高結晶化、表面制御、非平衡組成導入、原子 オーダーでの均質性をめざす。セラミックス材料の ナノ粒子合成は、従来、主として溶液プロセスを中 心として進められてきた。発光特性を例にとると、 溶液合成酸化物ナノ粒子の機能化を妨げていた大き な理由として、低結晶性、表面に結合した水酸基に よる消光、不完全な組成制御(ドーピング濃度、表 面偏析)などがあげられる。熱プラズマは、大気圧付近で発生し、1万度以上 の高温をもつ。また、プラズマ発生領域をはなれる とき、105-7K/sという超急冷プロセスを内包してい る。本グループでは、最近、ミスト噴霧熱分解法に よるナノ粒子合成を重点的に行っている。この方法 では、熱プラズマ中に、液体原料の大きさ約10μm のミスト(霧状液滴)を供給し、蒸発、酸化プロセ スを経て、高い過飽和度をもつ気相からナノ粒子が 生成する。熱プラズマのもつ1万度以上の高温、高 化学反応性、内在する急冷プロセスを材料プロセス に有効に利用すると、非平衡な形態、結晶構造、化 学組成をもつナノ粒子を合成することが可能であ る。均質な混合金属液体プリカーサーを用いるので、 表面偏析のない粒子内部への固溶が可能になり、原 子オーダーで均質な高結晶性ナノ粒子が、一段プロ セスで合成できる。したがって、機能性発現の賦活 剤(Activator)を平衡組成以上に高濃度ドーピング でき、その働きが顕在化するようになる。さらに、ナノ粒子を材料科学的見地から評価する とともに、構造体化して多機能性の付与するところ まで一貫して行い、発展性の高い研究をめざしてい る。そのために、ナノ粒子の溶媒あるいは樹脂中へ の完全分散をキーワードとして展開する。プラズマ合成ナノ粒子を構造体化するために、ま ず、ナノ粒子を高度分散した液滴を利用してインク ジェット法による機能性マイクロパターン形成を試 みる。この方法では、最近、金など貴金属ナノ粒子 を含む溶媒の噴射により100nmを切る太さでパター ン形成が行われ、LSI用電極に応用可能なレベルに 到達している。さらに表面特性のより複雑なセラミ ックスナノ粒子の分散は扱うことは、多くの開発要 素をクリアーする必要があるが、ナノ粒子分散構造 体の応用例を示すことが期待される。また、より高 濃度の粒子分散系であるスラリーへの応用も考慮に 入れながら展開をめざす。また、ナノサイズの磁性粒子を樹脂に分散すると 電磁波吸収特性が大幅に向上し、電磁波吸収シート を薄くできる。したがって、磁性ナノ粒子を樹脂中 に高密度に分散させる技術を考案し、粒子濃度と特 性の関係を明らかにすることにより、ナノ粒子の応 用範囲拡大につながる画期的な成果となることが期 待される。光学単結晶グループの5年北村健二、竹川俊二、栗村直、中村優、島村清史、藤田武敏、太田正恒、Dongfeng Xue, Ramasamy Jayavel, Sarverswaran Ganesamoothy, Somu Kumaragurubaran, Oleg A. Louchev (独立研究)井伊伸夫、澤田勉、藤井和子平成13年度～平成17年度1.はじめに本グループは、物質・材料研究機構が発足する以 前、平成10年度より旧無機材質研究所第13研究グル ープとして組織されており、平成13年4月物質・材 料研究機構へと改組されてからも光学単結晶グルー プとして継続してきた。平成10年度から平成14年度までは、グループ研究 テーマとして、「定比ニオブ酸リチウム、タンタル 酸リチウム」に関する研究を推進してきた。LiNbO3 (略称LN)およびLiTaO3(略称LT) LNは、 Li/Nb比またはLi/Ta比において幅広い不定比性を 示す材料としてよく知られている。両材料とも表面 弾性波による周波数選択機能素子としてビデオコー  ダー、 携帯電話、コードレス電話、ポケットベル等 に広く使用されており、すでに単結晶育成における 大型化も進み、3～4インチ径のウエハーが手頃な 価格で市販されている。圧電材料としては、すでに 確立された材料に見られるが、光学用途としての利 用を目指すと依然多くの問題がある。それは、これ らの材料が単結晶育成における便宜上、一致溶融組 成を用いた回転引上げ法で育成されるため、育成さ れた単結晶が高い不定比欠陥密度を有しているから である。本研究グループでは、この幅の広い不定比組成性 を有するLNおよびLTの定比組成単結晶を中心的な 対象物質とし、不定比組成を制御した光学用酸化物 単結晶育成技術の開発、不定比欠陥の構造解析と制 御、さらに光誘起屈折率特性(フォトリフラクティ ブ特性)等の評価を通して、不定比欠陥の光学的・ 電気的性質への影響を材料科学の基本的な現象とし て明らかにする事を目的としていた。さらに、当該 材料の基礎的な研究を基に、光機能、特にフォトリ フラクティブ効果を利用した光・光増幅素子、高速 転送・大容量ホログラフィック光メモリー等の素子 として優れた特性を有する材料の開発、逆に、フォ トリフラクティブ効果を抑制して光変調や波長変換 素子として優れた材料の開発等を目指した。また、所内大型プロジェクトとして「欠陥制御ダ イナミックスによる光機能の高度化」もグループ研 究の発展型としてが光学単結晶グループが中心とな って行った。平成15年度からは「定比ニオブ酸リチウム、タン タル酸リチウム」に関する研究成果を基に、「強誘 電体ニオブ酸単結晶」と題し、LNおよびLT単結晶 を光変調器、光周波数変換素子等のデバイスに加工 する際に直接関係する拡散、熱伝導、分極反転、電 気伝導という輸送現象における欠陥の役割を解明す るグループ研究を展開している。この間、科学技術振興調整費の知的基盤整備制度、 産学官共同研究の効果的な推進制度に採択され、分 極反転技術の基礎基盤研究、企業との連携により欠 陥制御材料の実用開発に向けたプロジェクトを推進 した(表1参照)。定比ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムの研 究は、単結晶材料の不定比欠陥と特性の関係という 材料基礎科学としてスタートしたが、その研究成果 は実用化まで発展する形となった。平成12年10月に は、これらの材料を製造販売するベンチャー企業 「株式会社オキサイド」を設立した。ここでは、研 究成果の活用から国家公務員が休職して企業の代表 取締役に就く第一号となった。さらに、欠陥制御し た材料を用いたプロトタイプの波長変換素子を有償 配布する「有限会社SWING」を設立した。これは、 物質・材料研究機構における研究成果活用を目指し た企業として認定された第一号であり、機構内でイ ンキュベーションできる支援制度を活用している。2.グループの研究成果定比ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムに関 する研究成果では、不定比欠陥が光学特性や素子の 加工特性へ強く影響している事が明らかになり、こ れらの欠陥構造や密度を制御することが光機能材料 への応用において重要な課題であることを世界に示 した。LNおよびLTの不定比は主として陽イオンサイト におけるアンチサイト欠陥と空位欠陥からなり、一 致溶融組成ではそれらの密度は数%にもおよぶ。従 来、LN等の結晶特性はこれら高濃度の欠陥を含ん だ一致溶融組成結晶を用いて特性を計測しており、 本来の定比LNおよびLT結晶の特性とは異なる。しかし、良質の定比組成結晶が育成困難であるこ とから、定比結晶の屈折率、電気光学係数、電気機 械結合係数といった基本的な材料特性すら正確には 求められていない状態であった。定比組成結晶は従 来の一致溶融組成結晶とは種々の特性において大き な差を示し、応用においても新材料とみなせる可能 性を示してきた。〈光学特性の不定比組成依存性〉例として表2ではLNの電気光学定数の不定比組 成依存性をしめしている。同様に2次の光非線形性についてもSHG メイカー フリンジパターンから計測 して比較された。 表3か らわかるように、d31はLNにおいてもLTにおいても表1 光学単結晶グループ年次表年度 平成10 平成11 平成12 平成13 平成14 平成15 平成16 平成17組織 無機材質研究所 第13研究グループ物質・材料研究機構 物質研究所 光学単結晶グループグループテーマ 定比ニオブ酸リチウム・タンタル酸リ チウム強誘電体ニオブ酸 単結晶所内/機構内 プロジェックト欠陥制御ダイナミックスによる光機能 高出力 波長変 換材料 素子外部資金 科学技術振興調 整費知的基盤整備制度量子標準体系の高度化に関する研究 「光周波数変換用デバイスの開発」産学官共同研究の効果的な推進 「ITを支えるオプトメディア結晶の実用開発」研究成果活用 事業 機構認定ベンチャー 株式会社オキサイド設立機構認定ベンチャー 株式会社SWING設立表2 LNにおける電気光学定数の不定比組成依存性 (マッハツェンダー干渉法 波長:633nm)試料 r33 (pm/V) r31(pm/V)定比組成LN Tc :～1200℃38.3 ±1.4 10.4 ±0.8一致溶融組成LN Tc :～1140 ℃31.5±1.4 10.0 ±0.8ほとんど変化しない。これに対し、d33はLNで特に 強い不定比組成依存性を示している。約30%もSLN でd33が増大している。d33は、LNやLTの擬似位相整 合(QPM)波長変換において、もっとも重要な性能 指数でもあり、それが増加していることは波長変換 効率の増大が期待できる。表3 LN、LTにおける2次非線形性の不定比組成依存 性(SHG Maker-Fringe法 基本波長:1064nm)試料 d33 (pm/V) d31(pm/V)定比組成LN (Tc :～1200℃)44.3 ±3.6 6.3 ±0.6一致溶融組成LN (Tc :～1140℃)34.1 ±2.5 6.1 ±0.6定比組成LT (Tc :～680℃)30.4±3.2 2.5 ±0.2一致溶融組成LT (Tc :～600℃)26.2 ±2.2 2.3 ±0.3〈分極反転特性の不定比組成依存〉一方、分極反転特性においても大きな違いが発見 された。強誘電体分極を周期的に反転することにより、擬似位相整合(QPM)から波長を変換する技術 は、原理上、材料の透明波長領域のすべての波長を 発振することができるため、実用化が高く期待され ている。特に前述したように、LNやLTでは異常光 を使うことにより、他の無機材料よりも大きな非線 形光学効果(d33)を使うことができ、高効率発振が 期待できる。ところが、CLNやCLTでは分極反転に 必要な印加電圧(抗電界)が非常に高い。通常、22kV/mmという高い抗電界が必要であるた め、厚い試料で分極反転することができない。これに対して、光学単結晶グループは、LNとLT における抗電界が不定比欠陥密度により、大きく変 わるという画期的なことを発見した。LTの場合、 CLTでは分極反転に20～22kV/mmという高い電圧が 必要であったのに、SLTでは、2kV/mm以下で分極 反転できることが判明した(表4)。LT同様、LNに おいてもストイキオメトリに近づくと反転電圧はか なり低下する。ただし、今までのところLTほど低 い抗電界値は得られていない。4kV/mm程度である が、それでもCLNの5分の1以下である。従来、単結晶の抗電界などは、材料固有の値であ ると考えられていたが、分極反転メカニズムそのも のが欠陥密度に強く依存していることが分かった。 MgO添加で抗電界が下がることは知られていたが、 不定比欠陥制御で抗電界が1桁も下がることは予想 されていなかった。これにより、厚く、耐光損傷性 にすぐれた分極反転デバイスの作製が可能となっ た。表4 LTにおける分極反転特性の不定比組成依存性一致溶融組成 定比組成キュリー温度(℃) 601±2 685±1融液組成(Li20 mo1%) 48.5 60.0分極反転電圧(kV/mm) 20 1.7内部電圧(kV/mm) 4 0.1自発分極(aC/cm2) 60±3 55±3〈 LN/LT熱伝導度の測定〉LNおよびLTにおける熱伝導特性の欠陥密度依存 性を計測する目的で、CLN、SLN、MgO添加SLN (Mg : SLN)、MgO添加CLN (Mg : CLN)さらにCLT、 SLT、MgO添加SLT (Mg : SLT)の7種類の試料を、 レーザーフラッシュ法により比熱容量および熱拡散 率計測、熱伝導度を算出した。その結果は表5に示 し、次のようにまとめることができる。①LN、LTどちらにおいても、不定比欠陥密度を低 減することにより、熱伝導率はかなり大きくなる。 すなわち不定比欠陥により熱伝導率は大幅に悪くな る。②SLN、SLTどちらにおいても1mol% MgOを添加 するだけで熱伝導率はわずかに低下する。熱のフォノン伝播では、格子の非調和振動をおこ す欠陥による散乱から、平均自由行程が短かくなり、 熱伝導率が下がる。この傾向が、LN、LTの不定比 欠陥について顕著に現れている。不定比欠陥にはLi イオンサイトを占める過剰NbあるいはTaイオン (アンチサイト欠陥)、それに伴う空位欠陥がある。 通常、非常に重さの異なるイオンによる置換はフォ ノン散乱の原因となる。その意味では、Liイオンを 置換するNb-アンチサイト欠陥よりはTa-アンチサイ ト欠陥の方が、熱伝導率を大きく低下させてもよい が、そのような傾向は見られない。Mgを添加して、 LiイオンがMgイオンに置換されると、やはり空位 欠陥を伴わざるを得ない。そのために熱伝導率が Mg添加で下がっていることを考慮すると、空位欠 陥密度が熱伝導率低下に大きな役割を果たしている 可能性が強い。表5 LN/LTにおける熱特性の不定比組成依存密度 g/cm3比熱 kJ/(kg ・ K)熱拡散率 10-4 m2/s熱伝導度 W/m ・ KCLN 4.64 0.628 0.0134 3.92Mg:CLN 4.63 0.636 0.0147 4.63SLN 4.62 0.651 0.0198 5.97Mg:SLN 4.60 0.629 0.0192 5.62CLT 7.47 0.397 0.0156 4.62SLT 7.44 0.410 0.0288 8.78Mg:SLT 7.43 0.408 0.0278 8.43強誘電体の周期的分極反転構造による擬似位相整 合(QPM)波長変換では、高調波発振のように特定 波長への変換で、発振効率が温度に依存する。たと えば、MgO添加SLTを用いて、1550nm基本波長から 第二高調波(755nm波長)発振すると、21.0μm周期 では、64.5℃近辺で最大出力を示し、温度に対する 出力ビーク半値幅は約4℃である。また、光パラメ トリック発振では、アイドラ光の波長も温度に依存 している。MgO添加SLTを用いて30.0μm周期の分極 反転素子に、1064nmポンプ光から発振するアイド ラ光波長の温度依存をBrunerらの屈折率データから 計算すると、温度1℃の変化にともない、発振波長 は1.2nm変動する。このように、温度による変換波 長の可変性は、応用において魅力的ではあるが、素 子の温度制御が変換効率、変換光のスペクトル幅に 大きく影響すると思われる。今後、高出力用波長変 換素子や熱を発生する光機能デバイスでは、熱放出 に対する設計が極めて重要になり、欠陥制御材料の 高熱伝導度は大いに注目されると期待できる。3.グループの研究成果活用について〈実用化プログラムからベンチャー起業まで〉不定比欠陥密度を制御すると従来よりも遥かに少 ない量のMgO添加で光損傷性を抑制できることも分 かった。しかし、これらの結果は、後から考えれば ごく自然な傾向とも考えられる。欠陥密度を制御す れば、分極反転のように分域壁移動というカイネテ ィックな現象に欠陥はピン留めの役を果たすであろ うし、また添加による効果も欠陥密度が低ければ少 ない量で顕著に現れることも当然である。熱伝導度 の増大もしかりである。しかし、これらの事は定比 単結晶を育成して始めて確認できた。欠陥の少ない材料は必ず欠陥の多い材料にとって 代わるであろうという信念から、材料の実用化を早 急に進めるべく、平成11年春から実用化プログラム を企業数社に提案した。これは、原料供給システム を備えた2重るつぼ法の実用レベル開発を中心に、 研究機構所有の育成法および材料に関する特許実施 を前提とした2年計画のプログラムである。最終的 には、2年後の2001年春に国内5社と特許実施契約 を交わした。〈株式会社オキサイドの設立〉さらに本材料のデバイス化に向けて本格的に始動 するには、材料の供給体制に拍車をかける必要が生 じた。このことから、自らも会社を設立することに より、この実用化を促進すべきという判断をした。 幸い平成12年春に、国立大学教員および国立研究所 研究員が休職して自らの成果を活用する企業の代表 取締役となれる人事院制度の改正が行われた。この ような改正の最初の例として取り組む価値を、研究 所が認め、第13グループ古川保典主任研究官が研究 所を休職して代表取締役となり株式会社オキサイド を平成12年10月に設立した。ネットワークビジネス の異常な加熱がさめ、「ものづくり」に再び目が注 がれた事、付加価値の大きい光情報技術等に関連し た材料であること、また国立研究所の研究成果活用 として企業化され研究所と連携した開発が期待でき る事などから、起業として非常に高い評価を受けた。 このことから、評価基準の厳しい東京中小企業投資 育成株式会社から資金提供を受けることができ、山 梨中銀キャピタル等からもスムーズな資金調達がで きた。これにより資本金5,000万円でスタートした。4.今後の展望について下図は、年次別によるタンタル酸リチウムをタイ トルとした論文数の推移を示している。緑コラムは 全体。青は不定比欠陥に関する論文数。殆どは波長 変換に関する論文で、物質・材料研究機構が先導し ていることがわかる。また今後、この分野が発達す るであろう事も予想される。株式会社オキサイドの社屋(山梨県北杜市)オキサイドはすでに、設立以来5年以上を経過し ている。その間、増資を繰り返し、現在資本金は約 1億5000万円にまで達し、年間売り上げも3億円を 越えるところまで成長した。また、中小企業長官賞、 日本結晶成長学会技術賞、つくばベンチャーチャレ ンジ賞などを受賞している。材料を製造販売すると いう利幅の少ない業種のベンチャー企業がここまで 到達できた事は大変価値のあることといえる。ベン チャーブームで多くのベンチャーが大学、国立研究 所からスピンオフしているが、製造販売で、ここま で到達できる例は稀である。また、実用化では、先端研究と異なり、再現性、 信頼性が極めて重要な開発課題であり、これらの中 には基礎・基盤研究のシーズとなるべきテーマが多 く含まれている。今後は、ニーズに基づいた、基礎 研究での大幅な進歩を目指すべきと言える。〈有限会社SWINGの設立〉さらに、機構で開発した材料および素子の実用化 を目的として、平成15年5月には、光学単結晶グル ープが開発してきた欠陥制御単結晶を用いた、プロ トタイプ波長変換素子、ホログラム用単結晶などを 有償配布する有限会社SWINGを設立した。SWINGは、光学単結晶グループのメンバーが出資 したベンチャー企業で、機構の第一号認定ベンチャ ーとしてスタートした。ここでは、機構所有特許が 優先的に独占実施できること、それらの再実施権を 与えられていること。また、施設、設備の有償貸与 を受けることができることなど、研究成果活用企業 に対する支援措置を受けている。その後、増資を伴いながら、有限会社から株式会 社へ平成17年7月に組織変更を行っている。幸い、 経済産業省の補助事業、委託研究開発プロジェクト が採択され、インキュベーションから独立へとテー クオフの時期を迎えている。左図物質・材料研究機構 で開発した光パラメトリッ ク発振用バルク周期分極反 転素子。SWINGで事業化先端結晶解析グループの4年山本昭二、泉富士夫、松井良夫、道上勇一、木本浩司、高倉洋礼(現北海道大学、2004年3月退職)1.グループ設立の経緯物質・材料研究機構発足の一年後に、物質研究所 内の研究グループとして発足した。準結晶、変調結晶、複合結晶等の周期を持たない 結晶の構造解析法、粉末回折法、電子顕微法に於け る新手法の開発および高度化による、結晶構造解析 法の進展を目指して設立された。物質研究所の前身 である無機材質研究所では物質を中心にグループを 結成して研究を行ってきたが、当グループは解析手 法を中心として結成された初めてのグループであ る。2.グループ活動の経緯当グループは、主にX線回折を中心とした研究、 粉末中性子回折と結晶構造解析ソフトの開発を中心 とした研究、また電子顕微鏡の高度化による、結晶 構造解析を中心とした研究の3つの活動を平行して 行ってきた。X線回折は、KEK,Spring-8のワイセンベルグカメ ラによる準結晶の回折実験を通して、準結晶の精密 構造解析に挑戦してきた。粉末構造解析法の高度化では、コンピュータソフ トの開発を中心に活動し多くのソフトを開発した。電子顕微法の高度化では新規の顕微鏡下での分析 プログラムの開発、電荷整列構造、磁気構造の解明 などを行った。3. 4年間の成果非周期結晶解析法の研究では、6次元空間の結晶 として記述される正20面体対称Al-Cu-Fe(A70Pd12Mn8) 準結晶の構造解析を初めて成功させた他、Al-Cu- Fe,Al-Pd-Re正20面体準結晶がこれと同型であること を明らかにした。また初めて発見された2元準結晶 であるCd-Yb準結晶の構造をフランスのESRFとの共 同研究で決定した。BaxBi2-xTi4-xO11-4x (x=0.275)に みられる、結晶学的せん断構造と呼ばれる非周期結 晶の構造解析を、独自に開発した低密度消去法を用 いた非周期結晶構造用の直接法プログラムの開発に よって、初めて成功させた。これはあらゆる非周期 結晶の構造解析に応用可能であるので、今後広い範 囲の非周期結晶に応用されることが期待される。そ の他、準結晶の表面構造や、その一軸方向からの投 影構造を6次元空間の周期モデルから計算する手法 を提唱した。これによって表面構造の解釈が容易に なった。さらに準結晶の構造解析用プログラムパッ ケージQUASIをWebで公開した。粉末回折法の研究では、構造解析プログラムパッ ケージRIETAN2000を開発し、X線および中性子粉 末回折法による結晶構造解析の容易化を促進した。 解析後結晶中の原子の電子分布を精密に計算する、 最大エントロピー法プログラム、PRIMAの開発を行 ったほか、解析結果の3次元表示プログラムパッケ ージVENUSを開発した。これは3次元電子分布と 結晶構造を3次元グラフィックスで表示し、任意の 断面などを計算出来るものである。これはX線回折 による電子密度の他、中性子回折による核密度関数 や量子力学による波動関数の等高面も表示でき、汎 用性が高い。これらによって、構造解析が合成の容 易な粉末によって容易に行えるようになり、さらに その結果から精密な電子分布の決定、表示までが連 続的に行えるようになった。電子顕微鏡による研究では、結晶構造解析、電子 エネルギー分光法(EELS)による電子状態解析、 ローレンツ電顕による磁気構造の解析等を行なっ た。主な成果は以下のとおりである。硝酸塩超伝 導体(Cu、C、N) Sr2Can-1CunOy (n=l-6)の、電荷 調節ブロックにおける炭酸基(一部硝酸基)と銅の 規則/不規則配列について、電子回折と高分解能 TEMにて詳細に解析した。磁性超伝導体として注目 される Ru系RuSr2Gd1.5Ce0.5Cu2O10-δ等について、RuO6 八面体のわずかな回転に起因する超構造と、ナノド メイン組織の観察を行なった。EELSの測定分解能 を向上させるための新しいソフトウェア技術を開発 し、またそれを用いて、Si上のAl2O3薄膜の構造と電 子状態の解析等を行なった。Nd1-xSr1+xMnO4を始め とする、Mn酸化物等の低温における特殊構造(電 荷・軌道整列構造)を低温電子回折と高分解能電顕 法により解析を行った。また各種磁性材料について、 ローレンツ電顕による磁区構造解析を行ない、特に 構造相転移に伴う磁区構造の変化をナノレベルで解 析した。図1 BaxBi2-xTi4-xO11-4x (x=0.275)を 4 次元結晶とし て記述した時の、3次元断面の電子密度を低密度消去 法で求めたもの。水平な面での切り口が3次元空間で の原子の電子密度2次元断面を与える3.並木地区正門photograph : National Institute for Materials Science超微細構造解析グループの5年板東義雄、左右田龍太郎、福島整、Dmitri Golberg、吉川英樹、三留正則、Chengchun Tan、貫井昭彦(2005.3)、田村修蔵 (2005.3)、田中雅彦(2004.12～)、北村優(～2003.3)、二澤宏司(～2003.3)、Yihua Gao (2004.6～)、Junqing Hu (2004.8)、 Chunyi Zhi (2004.8～)、Jinhua Zhan (2003.2～)、Longwei Yin (2003.5～)、Sergey Tovstonog (2005.2)、Yubao Li (～2004.12)、 Yingchun Zhu (～2004.7)、Andrey Prokofev (2005.7～)、Fangfan Xu (～2001.8)、Zongwen Liu (～2004.7)、Baodan Liu (2004.3 ～)、荻野一信(2004.3)、紺藤倫生(～2004.3)、柴田貴史(～2004.3、寺尾剛(2004.3～)1.グループの目的「超微細構造解析グループ」は電子線、イオン、 放射光などのビーム技術を活用して装置開発や解析 手法の開発、さらにはビーム技術を用いた先端材料 の利用研究を行うことを目的としている。具体的に は、電子顕微鏡を用いた局所構造解析、イオン散乱 分光等を用いた表面構造解析、放射光を用いた薄 膜・バルク構造解析などがその主な研究対象領域で ある。また、ナノチューブやナノワイヤーなどの1 次元のナノスケール物質を探索・創製し、その微細 構造や特性評価の研究も推進している。特に、新規 なナノスケール物質の探索では、当該グループの有 する高度な電子顕微鏡観察技術が有効に利用されて いる。また、西播磨に稼働中のSpring-8の施設整備 と利用研究も行っている。2.活動経緯当該研究グループは前無機材質研究所時代の平成 8年度に発足し、その後NIMS設立後の今日まで継 続して一貫した研究が進められてきた。平成5年度 に発足した「COE育成研究;超常環境を利用した先 端材料開発」(科学技術振興調整費)において、超 高圧領域、超高温領域、超微細領域の中で、当該グ ループは超微細領域研究のサブテーマを担ってきた (第1期COEは平成5年度から9年度までの5カ年 間)。その後、本プロジェクトは平成13年度に、「超 常環境を利用した新半導性物質の創製・材料化に関 する研究」(運営交付金プロジェクト、平成13年度 から17年度)として引き継がれている(第2期COE プロジェクトは平成10年度から14年度までの5カ年 間で科学技術振興調整費により一部充当)。また、運営交付金プロジェクトとして、平成13年 度から「ナノスケール環境エネルギー物質」が発足 し、当該グループは本プロジェクトの「ナノスケー ル物質」のサブテーマを担った(板東フェロー)。 さらに当該グループは、「SRを用いた研究及び施設 整備の総合的推進」(運営交付金プロジェクト)の 推進を図った(福島主席研究員)。また、「ナノテク ノロジー総合支援プロジェクト」に参画し、「原子 識別電子顕微鏡」と「Spring-8}の装置共用を行っ た。グループ構成員(NIMS研究者)は、電子顕微鏡 やナノ物質合成を専門とする職員、イオン散乱の表 面分析を専門とする職員、SRを専門とする職員で 約10名弱であった。NIMS職員以外に、特別研究員 (ポストドク)、企業等の外来研究員、筑波大学連携 大学院生などが当該グループに参画し、全体で総数 25名を超えるグループとして、積極的な研究活動が 展開された。以下に、超微細構造解析グループの活動により得 られた主要な研究成果をトピックス的に記述する。3.研究トピックス(1)電子顕微鏡を用いた構造解析世界最高のエネルギーフィルター像の分解能を持 つ原子識別電子顕微鏡(300kVのエネルギーフィル ターTEM)を用いて、B-C-Nナノチューブ等の組成 分布を高分解能で観察技術の開発に成功した。図1 はB-C-NのナノチューブのB、C、N元素のエネルギ ーフィルター像で、チューブ内部にBN層が、外部 にC層からなる複合ナノチューブであることが明ら かとなった。図1B-C-Nナノチューブのエネルギーフィルター像と その構造モデル図2は新規な構造を有するBNナノチューブの TEM写真とその構造モデルである。発見したBNナ ノチューブは従来のナノチューブと異なり、チュー ブ壁が互いに平行でなく、 コーン状にしかも螺旋状 に巻いた構造を有する。直径が数十nmで長さは数 百ミクロンと長繊維が特徴である。電子回折から上 下の原子面は対応格子の関係をもって規則的に配列 していることが明らかにされた。また、sp2構造を 有する六方晶BNに12Hや15Rといった多形が存在す ることを発見した。図2 コーン状をしたBNナノチューブの発見図3はCVDで合成したBNナノチューブの格子像 と電子回折である。カーボンナノチューブと異なり、 BNナノチューブがジグザグ型の原子配列を優先的 にとることが明らかとなった。図3 CVDで合成したBNナノチューブの格子像とジグ ザグ構造モデル電子顕微鏡を用いてBNナノチューブ以外の新規 ナノチューブを探索し、その構造を解明することに 成功した。図4は発見した新規なナノチューブの実 例を示す。図4電子顕微鏡を利用して発見した新規ナノチューブ(2)イオン散乱を用いた表面構造解析アモルファス氷のガラス転移や結晶化に関してい まだ議論が混沌としている。図5に、アモルファス 氷薄膜(H216O)にH218O分子を1モノレイヤー吸着 し、表面組成の変化を昇温TOF-SIMS法を用いて解 析した結果について示す。吸着したH218O分子は135- 140Kでアモルファス氷のバルクに取り込まれ、水 分子の自己拡散が起こり始めることがわかる。さら に昇温して165Kになるとアモルファス氷薄膜が突 然液滴を形成し、Ni (111)基板からのNi+イオンが 観測されるようになる。液滴は水の表面張力により図5 TP-TOF-SIMSによるアモルファス氷の解析例形成される。このように、165K以上ではアモルフ ァス氷は明らかに液体の水としての性質を示すこと がわかった。(3)SRを用いた施設整備と利用研究SPring-8専用ビームラインは、0.5keV～60keVの広 エネルギー帯域で高輝度放射光を実現すべく、リボ ルバー型アンジュレーターや計算結合型二結晶分光 器を新規開発した。これと並行して世界最高レベル の波長分解能を有する粉末回折計、表面汚染を気に せず10nm近い深層を解析可能にする高エネルギー 光電子分光装置(XPS)、絶縁物の光電子イメージ ングを始めて可能にする光電子顕微鏡(PEEM)、 二結晶蛍光分光装置の開発を行ってきた。実用デバ イスへの解析応用例として、磁気トンネリング素子 のFeCo合金/アルミナ界面におけるFeの選択酸化の XPS解析やPEEMによるDVDビットのアモルファ ス・結晶相の構造相転移時の伝導帯変化の解析例を 図6に示す。図6 ビームライン及び各装置の写真と実用デバイス解析への展開例5年間の研究成果は原著論文、解説・総説、特許などとして発表している。詳細はホームページ(http://www.nims.go.jp/abs /index.html) を参考にして いただきたい。平成13年 論文51報、総説9編、特許出願3件 平成14年論文76報、総説14編、特許出願33件 平成15年 論文86報、総説5編、特許出願45件 平成16年 論文88報、総説5編、特許出願38件平成17年 論文55報、総説3編、特許出願25件 (平成17年11月末現在)4.研究の動向・展望5年間を振り返ると、電子顕微鏡やイオン散乱な どNIMSがこれまでに蓄積してきた技術と経験を下 に、装置開発や解析研究で優れた研究成果を挙げる ことができた。特に、新ナノチューブ等の発見は高 度な電子顕微鏡観察技術の裏付けがあったからこそ 為し得たものである。電子線や放射光等のビーム技 術はナノマテリアル研究の重要性とともに、今後ま すますその技術の高度化が求められる。超高性能な 電子顕微鏡など世界に先駆けた新規な装置開発を今 後積極的に推進してゆくべきである。http://www.nims.go.jp/abs高分子性酸化物グループの活動をふりかえって一ノ瀬泉、川端美穂、Jin Jian、Huang Jianguo、 Peng Xinsheng1.はじめに高分子性酸化物グループは、平成15年2月に発足 した。本グループは、無機材料と高分子材料の境界 領域における新物質を探索するために立ち上げら れ、理化学研究所から招聘された一ノ瀬アソシエー トディレクターが、総括責任者としてグループ運営 を担当した。同年2月13日に開催された新規グルー プ課題説明会では、本グループの研究課題として 「あたかも高分子のような特徴を有する新しい無機 材料の探索」が謳われている。タンパク質に匹敵す るような高度の分子機能を有する無機材料を発掘す ることが、本グループの重要なミッションであった。分子ユニットが一定の規則で配列すると、個々の ユニットには見られない新しい特性が生まれる。こ のような高分子性は、液晶からタンパク質まで、有 機材料の優れた特性の源となっている。高分子性酸 化物とは、高分子性(Macromolecularity)を示す金 属酸化物であり、例えば、特異な形状やコンフォメ ーション特性、キラリティーなどの分子特性をもつ 無機材料などが想定された。本グループでは、この ような新しい無機材料を創製するために、界面化学 的な手法による無機クラスターの構造制御あるいは 新しい自己組織化手法の開発を目指した。2.グループの活動経過(1)酸化物ナノストランドの発見遷移金属イオンの多くは、酸性水溶液中で水和イ オンとして存在し、アルカリ性にすると水酸化物と して沈殿する。この現象は、水酸化物イオン(OH-) の配位と、引き続くオーレーションにより化学量論 的に説明されてきた。本グループでは、金属イオン のオーレーションの初期過程を系統的に研究し、希 薄な水溶液中で様々なナノファイバーが自発的に形 成することを発見した(図1)。図1水酸化カドミウムのナノストランドのTEM像水酸化カドミウムのナノファイバーは、直径が 1.9nmであり、長さが数μmに達する。このナノフ ァイバーは、サイズが二本鎖DNA (double-stranded DNA)に匹敵することから、酸化物ナノストランド と命名された。その後の研究から、ナノストランド の表面が著しく正に荷電しており、負に荷電した有 図2 水酸化カドミウムのナノストランドによるDNA 鎖の捕捉(模式図) 機分子を強く吸着することが見出され、短いDNA鎖 の効率的な分離・濃縮技術へと展開した(図2)。 また、ナノストランドの結晶学的構造ならびに形成 メカニズムは、高分解能TEM観察により原子レベル で解明された。その後、同様な酸化物ナノストランドが、水酸化 銅でも形成することが見出された。さらに、有機分 子や金属ナノ粒子との精密な複合化が検討され、ナ ノストランドを機能材料の構造要素として用いる多 くの実証的な研究が行われた。特に本グループでは、 酸化物ナノストランドをフィルター表面に固定化す る技術を開発し、均質な自己支持性ナノ薄膜を製造 する手法として、幅広く展開させた。(2)セルロースのナノコーティング本グループでは、平成15年度から3年間、萌芽研 究として、「高分子材料との戦略的ナノ融合」に関 する研究が実施された。本プロジェクトは、既存の 高分子材料のハイブリッド化、あるいは無機や金属 材料とのミクロな複合化により、高分子研究の新た なフロンティアの創成を目指すものである。高分子 性酸化物グループでは、特に、天然セルロースに着 目し、新しい特性を有するナノファイバーの製造を 検討した。紙やコットンの主要な成分であるセルロースは、 グルコースの直鎖状高分子が集まってナノファイバ ーを形成し、さらにこのナノファイバーが集合して マイクロファイバーの3次元的なネットワークを形 成している。このような階層的構造は、セルロース の柔軟性と力学的な安定性に寄与しており、分離膜 などに活用されている。本グループでは、重合吸着 法と呼ばれる高分子薄膜の作製手法をセルロースに 適用し、コア/シェル構造を有するナノファイバー の開発を行った。図3には、ポリピロール(ドーピ ングにより導電性を示す)でコートされたセルロー スのSEM像を示す。また右上には、1本のセルロー ス鎖のTEM像を示す。本研究では、高分子の重合条 件を制御することで、幅約40nmのナノファイバー に一定厚みの高分子コーティングを行うことに成功 した。図3 ポリピロールでコートされたセルロース繊維のSEM像(右上はTEM像)(3)乾燥泡膜の発見本グループの大きな研究課題の一つとして、有機 や無機、金属やタンパク質などの様々なナノ物質を 組織化するための一般的な方法論の探求があった。 中でも、新しい自己支持性ナノ薄膜の作製は、本グ ループの重要な研究目標であった。我々は、その研 究の過程で、シャボン膜(泡膜)から得られる全く 新しい分子膜を発見した。シャボン玉やセッケンの泡は、表面が界面活性分 子で覆われた薄い水の膜でできている。水の膜の厚 みが光の波長の4分の1より小さくなると、反射強 度が弱まって黒く見えるため、「Black Film」と呼ば れる。このような膜の存在は、1672年、ロバート・ フックによって確認されている。また、シャボン膜 の干渉光とその膜厚との関係は、1704年、アイザッ ク・ニュートンによって体系化された。以来、約 300年間、多くのシャボン膜に関する研究が行われ てきた。しかしながら、その全ては、構造安定化の ための水の存在を必要とし、乾燥すると消滅するよ うな膜であった。我々は、数マイクロメートルの微細なフレームの 中で形成されるシャボン膜(泡膜)を系統的に研究 する過程で、特定の界面活性分子を用いた場合、乾 燥後に厚みが分子2個分に相当する極めて薄い膜が 得られることを見出した。この分子膜は、高真空下 でも安定に存在することができ、150℃以上の熱安 定性を示すものもあった。我々は、この新しいナノ 薄膜を「乾燥泡膜」(Dried Foam Film)と命名し、 その形態や化学的特性、熱安定性などの幅広い研究 を行った。図4 乾燥泡膜の断面のSEM像図4には、ドデシルトリメチルアンモニウムブロ ミド(DTAB)という界面活性分子を用いて調製さ れた乾燥泡膜の断面のSEM像を示す(膜の両面には 約2nmの白金が蒸着されている)。レースのカーテ ンのように透けて見えるのは、この膜が非常に薄く、 2次電子が透過してしまうためである。DTABの乾燥泡膜は、150℃まで安定に存在する。 しかし、DTAC (DTABの臭化物イオンが塩化物イ オンになったもの)では、熱安定性が40℃も低下す る。このことから、乾燥泡膜の安定性には、親水部 の結晶性が重要であることが推定された。一方、フ ーリエ変換赤外スペクトル(FTIR)の測定では、 疎水部(アルキル鎖)が著しく乱れていることが確 認された。(4)固体表面でのポリペプチド鎖の分子認識生物の分子認識の中での最も重要な研究対象とし て、タンパク質間相互作用が挙げられる。本グルー プでは、酸化物ナノ薄膜を利用して固体表面にポリ ペプチド鎖を固定化し、生体分子との相互作用の新 しい評価手法を確立することを目指した。我々は、高pH域でα ―ヘリックス構造を有する ポリリジンに着目し、これを表面ゾルゲル法により 作製した酸化チタン薄膜上に静電的に吸着させた。 ポリマー鎖のコンフォメーションをFTIRなどの手 法により評価した後、アニオン性の蛍光色素(SRB) を吸着させ、ポリリジン表面でのD-(or L-)グルタミ ン酸とのイオン交換の速度を蛍光スペクトルから評 価した(図5)。我々は、このような実験の過程で、ポリリジン表 面でのアニオン交換が高度にエナンチオ選択的であ ることを発見した。即ち、D―グルタミン酸の吸着 は、L―グルタミン酸の吸着よりも速く、その速度 は、放出されるSRBの蛍光強度から比較することが 可能であった。この発見は、未知の生体分子間の相 互作用を相対的に評価するための手法へと展開しつ つある。図5 ポリリジン表面でのアニオン色素(SRB)とD―グルタミン酸とのイオン交換3.今後の展望本グループでは、酸化物ナノストランドという新 しいナノ物質を見出し、有機・高分子材料との複合 化の手法、あるいは新しい自己支持性ナノ薄膜の製 造技術を開発した。特に、乾燥泡膜は、超高真空下 でも安定なことから、気相法の薄膜製造技術と組み 合わせることも可能であった。本グループの成果は、 ナノ分離膜やMEMSなどの新技術、あるいは次世代 の環境や安全、グリーンケミストリーを支えるため の重要な基盤技術となるであろう。機能モジュールグループの歩みDirk G. Kurth、赤坂夢、大塚雄紀、佐藤由美子、正村亮、林灯、樋口昌芳、万立平1.組織発足の経緯・目的本研究グループは、ドイツのマックスプランク研 究所コロイド界面部門グループリーダーのDr. Kurth をディレクターとする国際研究グループであり、物 質研はもとより国内の大学や研究機関を眺めても類 例のない極めてユニークな形態を有する研究グルー プである。独法化に伴ってNIMSが目指した2つの 目標(有機材料研究グループの創成と国際化の推進) を直接的に具体化したグループと言える。本グルー プでは、有機高分子化学を基盤として、金属ナノ複 合化による環境調和型機能材料(電子、光、磁気、 触媒、医薬)の創製を目標としている。2003年4月にグループ発足、同年8月に実質的な グループ運営を行う若手研究者を慶應義塾大学から 招聘したときから実際の活動が開始したため、グル ープとしての歴史は長くないが、2005年のAngew. Chem. Int. Ed.誌の国際ニュースで紹介されるなどそ の研究動向は国内外で高い注目を集めている。現在、 特別研究員や研究補助員を含め8名のグループとし て、独創性の高い機能有機材料研究を行っている。2.研究活動の特徴本グループでは、外国人ディレクターの数週間程 度の日本滞在と、グループの日本人研究員の数週間 程度の訪独を頻繁に行うことで、ディレクターの所 属するドイツのマックスプランク研究所とより緊密 な共同研究を推進している点が大きな特徴である。 海外の優れた研究者をディレクターとして招聘する ことで、NIMSにおける有機材料研究を短期間で世 界水準の高いレベルに上げることが可能であったこ と、またNIMSの有機材料研究を海外において広く アピールできた点において、本研究グループの形態 は画期的であった。と同時に、この新しい試みは国 内的にも注目を集める結果も引き起こした。すなわ ち、研究環境の国際化の進展によって、近年、他の 研究機関や大学でも外国人をリーダーとする研究グ ループの創成が盛んになってきており、本研究グル ープは明らかにその先駆けとなった。また一方で、国内では企業や大学との共同研究を 行い、新規有機/金属ハイブリッド物質に関する基 礎研究から応用・実用研究にいたる連続した研究を 行っている。3.機能モジュール:有機材料の新しい形生体内の光合成や呼吸反応では、有機高分子であ るタンパク質内部の微量の金属種が反応活性中心と して決定的な役割を果たしている。有機高分子がつ くる三次元空間内に精密に金属種を配置させた時、 高効率的電子移動やエネルギー変換が達成される。 生体に似たシステムを人工的に作れば類似の機能あ るいは生命を超える機能が得られるのではないか? と、多くの高分子錯体(有機高分子と鉄や銅などの 金属イオンとの複合物質)が合成されてきた。機能モジュールグループでは、従来にない機能 (電子・光・磁気・触媒)を有する有機/金属ハイ ブリッドナノ材料の創製を目的として、有機ユニッ トと金属ユニットをナノサイズで複合化させた様々 な高分子錯体の開発を行っている。構造要素として両親媒性化合物、機能要素として 金属を含んだ超分子ポリマーあるいは酸化物クラス ターを用い、機能モジュールの結合、配向や位置を 決め、階層構造のデザインのための原理や方法を研 究している。デバイス作製に自己組織化の原理を用 い、多段階の自己集合過程を経て、機能モジュール を組織化する。モジュール性を利用する物質設計の アプローチは、分子から巨視的なスケールにおける 構造や機能の制御を可能とし、ナノ構造や薄膜ある いは中間層における構造―機能相関の解明に役立つ と期待される。高分子内部に位置と個数を精密に制 御して金属イオンを導入することで、有機ユニット と金属ユニットの異なる物性の相乗作用が期待さ れ、有機EL素子、センサー、太陽電池、ドラッグ デリバリーなど、様々な機能材料への応用が可能で ある。有機/金属ハイブリッドナノ材料は、有機ユ ニットと金属イオンや金属クラスターをナノサイズ で精密に複合化させた材料であり、量子効果などに 基づいた従来にない電子・光・磁気・触媒機能の発 現や医薬などへの応用が期待される。また、従来の 共有結合のみからなる有機材料にはない、これらナ ノ複合物質を用いるメリットは、個々のユニット (機能モジュール)を単純に混ぜ合わせるのみで、 精密複合化や高次構造の形成が可能な点であり、材 料の回収や再利用も容易である。次の章では、研究 成果として、直鎖状、環状の2種類のハイブリッド ナノ材料のユニークな物性について紹介する。図1有機/金属ハイブリッド高分子4.研究成果(1)マルチカラーエレクトロクロミック材料π共役有機配位子を用いて高分子主鎖に金属イオ ンを導入すれば、電子移動性に優れた高分子が得ら れるだけでなく、電気や光によって金属や配位子の 電子状態を変化させることで電子・光物性や磁性を 制御できると期待される。ターピリジンと2価の鉄 イオンからなる錯体はMLCTに基づき青色を呈する ことが知られている。そこで、ターピリジル基を両 末端に有するビス(ターピリジル)ベンゼンと酢酸 鉄(Ⅱ)を混合することで、濃青色の高分子錯体を 得た(図1)。この高分子錯体は、サイクリックボルタンメトリ ーにおいて、鉄イオンのレドックスに基づく可逆な 酸化還元波を示した。さらに、この高分子錯体を ITO基板上にスピンキャストし、有機溶媒中で電位 を印可すると鉄イオンの価数の変化に応じて膜の色 が濃青色から無色へと変化することを見いだした。 このエレクトロクロミック変化は高速かつ可逆であ った(図2、3 )。 一方、酢酸コバルトとビス(タ ーピリジル)ベンゼンからなる高分子錯体では、赤 色に呈色することを見出した。さらに、酢酸鉄と酢 酸コバルトを導入した高分子錯体を合成したとこ ろ、単独のポリマーでマルチカラーを表現できるエ レクトロクロミック材料となることを発見した。さ らに、有機配位子に電子吸引基を導入することで、 高分子錯体における金属イオンの酸化還元電位や呈 色の波長をコントロールできることに成功した。図2 エレクトロクロミック(2)マルチイオンセンシング材料有機/金属ハイブリッドナノ物質において、レド ックス活性を示すのは金属ユニットだけとは限らな い。ケトンとアミンの脱水縮合反応を用いて、新規 な環状ポリフェニルアゾメチンを合成した。この有 機物は電気化学的に不活性であり、サイクリックボ ルタンメトリーにおいてレドックス波は示さない。 ところが、この溶液に塩化スズなどの金属塩を添加 すると、有機ユニットの酸化還元に基づくレドック ス波が発現することを見いだした(図3)。さらに、 この系では金属イオンの添加量によって酸化還元電 位をコントロールすることが可能であった。さらに、 この環状化合物への金属集積が段階的に起きている ことを発見した。図3イオンセンシング発足した2004年度、2005年度ともグループで年間 20報以上学術論文を発表し、また特許も年間3件程 度出願、ISAMなどの国際会議の開催など、精力的 に研究活動を推進してきた。その他にも、企業や大 学との共同研究や、各種学会への積極的な参加を行 い、それまで有機材料分野ではほとんど無名であっ た「物質・材料研究機構」と「機能モジュール」の 名を、広く国内外に広めてきた。5.研究の展望有機物と金属種を精密に複合化することで、興味 深い電気化学的特性が発現することを見いだした。 有機/金属ハイブリッドナノ材料における機能モジ ュールの組み合わせは無限であり、今後、精密複合 化の手法を開発することで有用な機能の発現が期待 される。6.組織運営上の提言海外在住の外国人ディレクターを有するユニーク な研究グループとして、組織運営上の提言はしてお かなくてはなるまい。本グループが成功した主な要 因は(1)機知に富んだ優れたディレクターの招聘(2)旅費や研究費などの経済的サポートがなされていた点にあった。また、本グループは旧 来型の事務処理で対応できないことも多く、合理的 かつ国際的な事務組織への移行と、NIMSの今後の 有機材料研究の目標設定における多少の参考になれ ば幸いである。超分子グループのあゆみと研究成果有賀克彦、大森修、中西尚志、道信剛志、宮原雅彦、Jan Labuta1.超分子グループの発足とその使命ご存知のように、物質・材料研究機構は、金属材 料技術研究所と無機材質研究所が統合されて2001 年4月に発足しました。この経緯からわかりますよ うに、無機物質と金属物質の研究分野に、特に高い アクティビティーを持つ組織が土台となっておりま す。しかしながら、“物質・材料”と銘打つからに は、幅広い物質を対象とした研究組織に発展する必 要があり、有機・高分子物質の分野の研究要素がか けていると懸念されていました。この分野の研究ア クティビティーの中核をになうものの一つとして、 2004年1月に「超分子グループ」は発足されました。さて、超分子とは何でしょうか?また、有機・高 分子物質の中で特に超分子を研究ターゲットにする 意義はどこにあるのでしょうか?まず、はじめの質 問に対する答えとしては、「分子と分子が特異的な 相互作用をして会合するもので、個々の構成分子に はない機能を発揮する物が超分子」ということにな ります。とらえどころのない定義ですので、様々な 拡大解釈(?)がなされて様々な機能有機物質の開 発に超分子の概念が用いられているのが現状です。 端的にいうと、分子が集まってできた機能分子・物 質系であるが、ただ漠然と分子集めたものではなく、 ある設計や意図を持って集めたものということにな ります。有機物質と無機物質の大きな違いは、分子という 単位があるかどうかということになります。有機分 子は、その構造や性質も多彩で、また、その集まり 方によって様々な機能物質・材料が生まれます。で すから、超分子の考え方で、デザインして、意図して、 思い通りに分子を集めて有機物質・材料を作製して いくのは、単なる構造材料から脱却した高機能有機 高分子物質を開発するための真髄となるのです。また、超分子の概念は、物質・材料研究機構の必 須の研究ターゲットであるナノテクノロジーにも大 きく貢献します。これまで、ナノ構造を作製してい く手段として中心的役割を果たしてきたのは、大き な材料を削って精緻な構造体を作製してゆくという トップダウン型の技術でした。ただし、その手法に は加工精度の制限による限界が危惧されています。 それを、解決するために今注目されているのがボト ムアップによるナノ構造作製・開発です。これは、 小さいところから構造をくみ上げてゆく、つまり、 原子や分子などの単位となるものを思いのままに集 めてナノ構造を作ろうというものなのです。この発 想自体は、超分子のコンセプトにまさしく合致して います。超分子とは、デザインして、意図して、思 い通りに分子を集めて機能構造・物質を作製してい くものだからです。以上のように、物質・材料研究機構に新たな有 機・高分子分野を創始する目的で発足された超分子 グループは、新時代の機能性有機物質・材料の開発 を進めるとともに、ナノテクノロジーの発展に欠く ことのできない寄与をなすことを使命として持って いるのです。2.超分子グループの研究活動上述のように、超分子グループが果たす役割は重 要なものではありますが、その研究活動の開始は必 ずしも容易ではありませんでした。なにしろ、有機 化学とは無縁の研究施設に、機能有機分子の合成開 発に必要なセットアップをしなければならなかった のですから・ ・ ・グループ創設以後数ヶ月は、与え られた小部屋に倉庫からテーブルやいすを持ち込 み、一つのストーブを数人で分かち合うような形で 研究意欲を高め、仮住まいの研究室でもくもくと研 究を始めていました。春に研究スペースと正式なオ フィスが決定し、研究員の献身的な努力により、有 機合成実験に必要な実験台やドラフト、有機化学に 特化した様々な機器・装置をそろえることができ、 夏には新しい環境での本格的な研究活動が始まりま した。幸いなことに、2005年には、有機化学の研究 に必要な大型機器の整備も始まり、研究環境は年々 整いつつあります。さて、超分子グループは発足間もない小さなグル ープですので、研究を活発に行うためにはいろいろ な方との協調によって研究のスコープを広げていく ことが重要です。当グループでは、いろいろな方と の共同研究を積極的に進めています。共同研究相手 は、機構内外、国内外を問いませんが、物質・材料 研究機構には大変ユニークな研究を行っている方々 が多数おり、共同研究相手に困ることはありません。 特に、我々のグループと同時期に創始された若手国 際研究拠点(ICYS)の研究員と積極的に共同研究し ており、中でも Dr. Ajayan Vinu、Dr. Jonathan P. Hill は当グループの研究員と同じ実験室で研究し、数々 の成果を出しました。また、ナノマテリアル研究所、 エコマテリアル研究所、生体材料研究センター、強 磁場研究センターなどの独自の研究アクティビティ ーを持った方々とも広く共同研究を行っています。 我々は、物質・材料研究機構の中では少数派の異端 ですが、むしろその方がこれまで機構にないタイプ の研究を生み出せるのではないかと思います。海外 との共同研究も行っており、ドイツのマックスプラ ンク研究所への研究員の派遣などを積極的に進めて います。3.研究成果グループ発足以来、およそ一年半で得た研究成果 の一部を紹介します。ユニークな光学的・電気的特性を示すナノカーボ ンの代表例“フラーレン”は、これまで、その溶液 物性が検討されているに過ぎず、材料化への大きな 進展はありません。フラーレンを実際に“使える材 料”にするためには、単量体として扱うのではなく ナノメートルからサブミクロンレベルの集合構造と する必要があります。当グループでは、フラーレン に適当な官能基を導入し、自己集合過程を誘発する ことによって、様々な低次元性のナノ構造体を作製 することに成功しました。図1の球形の集合体、ナ ノアレイ型の集合体の他、ファイバー型、チューブ 型、ディスク型、ホーン型、フラワー型のナノ構造 が自在に作り出せます。これらは、電子的な配線や キャパシタなどナノデバイスの部品としての応用が 期待されています。図1フラーレンでできた(A)球形のスフィアと(B) ナノアレイ水面上に展開した単分子膜は、ナノメートルオー ダーの構造精度を持つとともに、自由に圧縮・膨張 することのできるユニークな超分子です。当グルー プでは、ステロイドシクロファンという分子の単分 子膜を圧縮したり膨張したりすることによって、水 中に溶解しているゲスト分子を動的に捕捉できるこ とを見出しました(図2)。この技術は、選択性の 高いセンサーや、極微量有用物質の検知・抽出に応 用できます。超分子の集合体を無機などの物質に転写してナノ 構造を作製する試みも行っています。たとえば、 ICYSのDr. Vinuとの共同研究として、ナノメート ルサイズで精緻に制御されたケージ型構造を持つカ ーボンナノケージという新物質を開発しました(図 3 )。この物質は、従来のいかなるメソポーラスカ ーボンに比べても(メソ細孔として有効な)比表面 積・孔体積を持っており、リゾチームなどの生体分 子に対する極めて高い吸着容量を示しました。これ は、各種有用物質あるいは環境汚染物質に対する吸 着材としての応用から、環境低負荷型のバイオリア クター、バイオナノデバイスの創成まで広い範囲の 応用が期待できます。図2分子を捕まえる超分子図3 カーボンナノケージの作製上記に示したもの以外にも研究を活発に進め、オ リジナル論文や総説・解説を含め、2004年度に19報、 2005年度に54報(2005年11月9日現在で受理が確定 したもの)を発表するに至りました。独立研究グループの4年間赤羽隆史、大吉啓司、関田正實、野崎浩司、三島修、渡辺昭輝、*末次寧(*生体材料研究センターと兼務)1.はじめに独立研究グループは、平成14年4月に発足した。 従って、「機構5年のあゆみ」という表題の下ではあ るが、平成14年度からの4年間の活動を振り返って みたい。独立行政法人化以前の無機材質研究所において は、研究グループ制が採用されてきた。研究グルー プ制とは、一つのテーマ、特に、特定の物質に関す るテーマを中心に、専門の異なる複数の研究者が集 まってグループを結成し、おおむね5年間研究を行 い、目標を達成すると当該グループは解散するとい う制度である。この方式は、専門分野に応じて縦割 り型の組織を構成し、組織に時限を設けないという 従来の国立研究機関のやり方とは、大きく異なるも のであり、それなりの成果をあげてきた。しかしな がら、すべての研究課題について、数人のグループ を形成しなければならないというのでは、課題の選 択に制約を課すことになって好ましくないというこ とで、無機材質研究所の時代に、独立研究という制 度が取り入れられた。これは、有望ではあるがグル ープを結成して取り組むには至っていない課題、外 部資金等との関係で推進する必要はあるが関係者が 少ない課題等、従来のグループ制になじまないもの について、個人の創意と努力に依拠した研究活動を 許容するという制度である。所内における事前評価 を経て、複数の課題が実施されてきた。独立研究グ ループは、平成14年度の組織改正において、これらの 独立研究担当者の一部を、主として事務的な理由で 統合してグループとしたものである。従って、グル ープ結成後も、独立研究という性格は変わっておら ず、以下に述べる研究課題についても、相互に連携し たものではなく、研究期間もそれぞれ異なっている。2.研究課題この4年間に進めてきた研究の概要は以下の通り である。(1)酸素ポンプ用イオン導電性ビスマス複酸化物に 関する研究(担当:渡辺昭輝)本研究の目的は500～600℃の中温領域で安定に作 動する酸素ポンプへの応用を期待して、新規なイオ ン導電性ビスマス複酸化物を開発することである。Bi2O3の高温安定相(δ相)は、良好な酸化物イ オン伝導体であるが、安定温度領域が狭い・蒸気圧 が高い・相転移に際して体積変化が無視できない等 の欠点があるために、これまでに希土類酸化物を添 加してδ相を安定化する試みがなされた。その結果、 安定化は成功したように思われたが、得られた相は すべてδ相が急冷凍結された準安定な状態であり、 500～600℃の中温領域で相転移または分解してイオ ン伝導性は失われてしまうことが判明した。この原 因を解明し、この現象を避けるためにBi2O3-Er2O3系 を基本とした三成分系の相平衡を検討したところ、 Bi2O3-Er2O3-MO3 (M=Nb、Mo、W)系の限られた組 成領域で、δ相が安定化され、良好な酸化物イオン 伝導体(輸率>95%)が得られ、実用材料としても 有望でることが明らかになった。(2)磁気ポーラロンを中心とした希薄磁性半導体中 のスピン物性探索(担当:梅原雅捷)Ⅱ―Ⅳ族、Ⅲ―Ⅴ族化合物半導体の陽イオンの一 部を磁性イオンで置換した希薄磁性半導体は、電荷 とスピンという二つの自由度をもち、物理的に非常 に興味深いだけでなく、二つの自由度を同時に制御 することによって、新しいデバイス材料となること が期待されている。本研究では、これらの希薄磁性 半導体における、電子及び正孔と磁性スピンとの sp-d交換相互作用によって生じる電気的・時期的・ 光学的物性の発現機構の理論的解明と物性探索を、 磁気ポーラロン現象を中心に進めてきた。その結果、Cd1-xMnxTe等の希薄磁性半導体におい ては、局在した励起子磁気ポーラロンの形成に磁性 イオン濃度の局所的な揺らぎが本質的な役割を果た していること等を明らかにすることができた。(3)水の液体―液体臨界点仮設の実験的検証に関す る研究(担当:三島修)水の密度は4℃で最大になる。この水の奇妙な性 質はその単純な分子構造にもかかわらず、現在でも 充分に理解されていない。水の性質を理解するため、 ここ十数年間、理論計算や実験を通じて「水のポリ アモルフィズム」の考え方に基づく研究が進められ てきた。これらの研究の成果は、水が凍らなければ、 水には低温で密度が異なる2つの液体状態とそれら に対応した2つのガラスが存在することを示してい る。そうであれば、水が2つの状態に分かれ始める 臨界点が低温に存在し、その臨界点近傍で生じる揺 らぎの影響が水の特異な性質を引き起こすことにな ると言える。しかし、低温の水は凍りやすく、この ポリアモルフィズムを実験で直接証明することは困 難であった。この5年間、我々は水に対する低温高 圧実験を行ってきた。得られた結果は、間接的では あるが2つの水の不連続な転移が低温にあることを 示唆し、臨界点の存在を支持している。更に、水の ポリアモルフィズムの考え方が水溶液でも使えるこ とを指摘した。液体シリコンなどの物質でも水と同 様のポリアモルフィズムが報告され始め、ポリアモ ルフィズム研究は、液体やガラスの分野における一 つの大きな研究領域になりはじめている。(4)結晶中の希土類イオンの光物性に関する研究(担当:関田正實)本研究では、希土類イオンの純色性に優れた性質 に注目し、省資源に寄与できる高輝度の発光材料や レーザー材料への応用を期待して、希土類イオンの 発光機構の解明や光学物性研究を進めてきた。希土類酸化物のナノチューブの光物性研究におい ては、酸化イットリウム(Y2O3)にEuを添加すると、 ナノチューブ自体は特別強い発光は示さないもの の、1000℃で焼成するとナノ結晶化して発光強度が 約100倍に達することを見出した。ネオジムを添加したガーネット(Nd:YAG)は 極めて効率の良いレーザー材料として知られている が、これに匹敵する、或いはそれを上回るレーザー 材料を開発するために、Ndを添加した酸化イット リウムの透明焼結体、Ndを添加したニオブ酸リチ ウム(LiNbO3)結晶等、いくつかの系について光学 的な研究を行い、それぞれの系について、克服すべ き問題点や、レーザー発振特性を明らかにした。(5)鉄族硫化物のMBE合成(担当:野崎浩司)超高真空中の清浄な単結晶表面で、金属原子と硫 黄分子を反応させ(MBE法)、遷移金属硫化物の膜 を合成する手法の開発を進めた。この方法は、反応 温度が低いこと、非平衡反応であること、基板表面 の化学結合、格子周期、表面形状を反映した膜を作 製できること等の特徴があり、通常の熱平衡反応で は作製困難な低温安定化合物、新物質、単結晶に近 い配向膜等を合成できるという特徴を有している。MgO (001)基板を用いてMBE法により銀硫化物 超イオン伝導体、錫硫化物半導体、ニッケル硫化物 のエピタキシー膜を作製し、その結晶構造や膜組織 構造を調べた。これらを通じて、MgO基板を用いた MBE法が、従来の合成法では得られない硫化物に適 した合成方法であることを明らかにした。(6)陽電子ビームを用いた分析・評価方法の開発(担当:赤羽隆史)陽電子は、電子の反粒子であり、固体中の空孔型 欠陥に対して高い親和性を持つこと、表面での仕事 関数が小さいことなどの特異な性質を有しており、 固体や表面に対するプローブとして高い可能性を持 っている。本研究では、磁場誘導型及び静電型のエ ネルギー可変陽電子ビームの生成・制御技術の高度 化を進めるとともに、陽電子ビームを利用した材料 の分析・評価手法の開発を進めた。同時計数ドップラー幅測定法の確立、化学研磨を併 用することにより、固体内の空孔型欠陥の検出にあた って深さ方向の分解能を向上させる手法の開発等の 成果を得たが、特に、陽電子誘起イオン脱離現象を世 界で初めて観測することに成功した。陽電子は特異な 表面敏感性を有しており、陽電子によってイオン脱離 を引き起こすことができれば、表面吸着現象について の強力なプローブとなることが期待される。脱離イオ ンの観測が可能な静電型陽電子ビームを整備し、金表 面上に吸着したエタンチオール等が陽電子照射によ り脱離することを確認した。電子照射による実験との 比較により、このイオン脱離は陽電子が吸着に関与し ている電子と対消滅することにより引き起こされて いる可能性が高いことを明らかにした。(7)イオン注入による非平衡な構造の形成と制御に 関する研究(担当:大吉啓司)イオン注入は加速した原子または分子イオンを固 体表層に打ち込む技術であり、固溶限や化学反応に 左右されない非化学平衡的な不純物の添加法であ る。それゆえ、イオン注入により形成された固体表 層の原子構造や化学結合状態は熱平衡状態から外れ ることが常である。本研究ではイオン注入に特有な 非平衡な現象を理解することを目的とした。一例を あげると、シリカガラスに鉄をイオン注入し、高温 で長時間熱処理を行うことで、注入した鉄が熱処理 時間の増加と共にガラスの表面方向に系統的に移動 するという現象を発見し、その挙動を解明した。(8)放射性核種固定用セラミックスの開発に関する研究(担当:末次寧)原子力発電所や核燃料再処理施設で発生する放射 性廃棄物の一つヨウ素129は、半減期が1570万年と 非常に長く、長期安定固定化技術の開発が強く望ま れている。本研究では、物理・化学的に安定で水溶 性がきわめて低いアパタイトをヨウ素固定化に利用 する技術を開発することを目的とした。ヨウ素の担 持剤にはゼオライトを用いることとし、ゼオライト が分解しない低温・高圧条件を用いたアパタイトの 焼結技術の開発を行った。(9)易焼結性酸化物セラミックス粉末の製造技術開 発(担当:池上隆康)イットリウム酸化物は、耐熱・耐食性の光学材料と して非常に重要である。本研究では、当機構で開発し た低温熟成法を利用して、添加物を用いることなく気 孔を完全に除去して透明性に優れたY2O3焼結体を製 造するための最適条件の探索と透明焼結体の製造技 術の開発を進めた。低温熟成法とは、アンモニア水を 約10℃という低温で硝酸イットリウム水溶液と混合 し水酸化イットリウムの沈殿を生成し、この沈殿に硫 酸アンモニウムを滴下して濾過・洗浄し、約1100℃で 仮焼する易焼結性のY2O3粉末の合成法である。透明なY2O3焼結体を製造するのに不可欠とされた 硫酸アンモニウムの効果を詳細に調べ、焼結の機構 を解明した。3.まとめ独立研究という方式は、研究者個人の創意と努力 に全面的に依拠するという点で、国立研究機関とし ては、従来にない挑戦的な試みであった。独立研究 グループの4年間を含め、無機材質研究所時代から の独立研究を振り返ってみると、各研究担当者がの びのびと研究を進めてきたという実績はあるもの の、一方で、一人で研究を進めることの難しさを認 めざるを得ない。材料科学の急速な進展の中で、研 究者個人の発想を尊重することの重要性は、更に高 まってくると予想されるが、独立研究のような制度 を活かしていくためには、外部の研究者コミュニテ ィーへの積極的な参加や、機構内における有能なア ドバイザーの存在が不可欠であると思われる。2ナノマテリアル研究所ナノマテリアル研究所の5年をふりかえって青野正和(所長)、秋津和美、雨倉宏、有沢俊一、飯島陽子、井口家成、石井明、井上純一(併任)、今中康貴、内橋隆、植村隆 文、宇佐美清章、宇治進也、梅澤直人、梅田直樹、浦山慎也、榎本健悟、海老名保男(併任)、海老原知子、大川祐司、大竹晃 浩、大西桂子、大毛利健治、沖明男、岡崎紀明、小川涼、奥澤恵子、岡田利之、押切光丈、落合哲行、鴻池貴子、小沼幸子、笠 原章(2002.4異動)、加藤誠一、金井俊光(併任)、北澤英明、北原昌代、北村健二(併任)、木村知子、金鮮美、川岸京子 (2001.10異動)、川辺光央、岸本直樹、木戸義勇(併任)、草野修治、久保理、熊倉つや子、倉上和久、栗村直(併任)、黒田圭 司、黒田隆、倉橋光紀、河野健一郎、小口信行、後藤真宏(2002.4異動)、小森和範(2001.10異動)、坂本謙二、鷺坂恵介、佐 久間芳樹、櫻井亮、迫田和彰、佐々本高義(併任)、佐々本洋征、佐竹紀子、佐藤康一、澤田勉(併任)、品川秀行(2005.1異動)、 清水順也、白木一郎、肖占文、徐明祥(2004.3異動)、新ヶ谷義隆、鈴木修、鈴木博之、鈴木正美(2005.2異動)、関口隆史、孫 霞、左右田龍太郎(併任)、高瀬雅美、高野義彦、高増正、高見誠一、武田良彦、竹口雅樹、竹端寛治、立木昌、田中潔(2004.4 異動)、田中雅代、田中美代子、田村拓郎、知京豊裕、陳君、張建武、塚本茂、塚本智子、辻��井直人、鶴岡徹、手島伸子、寺嶋 太一、寺部一弥、上佐正弘(2002.4異動)、徐永源、富本博之、豊玉彰子(併任)、中尾秀信、長尾雅則、長岡克己、長田貴弘、 中島清美、中谷功、中山知信、中山美穂、新倉ちさと、西村光佳、日塔光一、根城均、野田武司、橋岡真義、長谷川明、長谷正 司、長谷川剛、羽多野毅、原眞一、板東義雄(併任)、樋口誠司、広瀬由美、平石敬三、深田直樹、福富勝夫(2001.10異動)、 福本麻紀、藤田大介、古林孝夫、古屋一夫(併任)、堀池靖弘(NIMSフェロー)、真木郁子、町田真一、松重涼子、間野高明、 間宮広明、三木一司、三井圭太、三井正、三石和貴、三留正則(併任)、宮城茂彦、宮本麻矢、宮原美穂(2004.4異動)、室町洋 美、森井奈保子、矢ヶ部太郎、八木修平、八木拓真、柳生進二郎、柳沼晋、山内泰、山内康弘、山際正和、山口尚秀、山下努、 山下理恵、山田和佳子、吉武道子、姚永昭、袁暁利、尹炅成、梁長浩、李西軍、李万燕、劉文友、劉暁燕、若山裕、渡辺厚子、 渡辺みか(併任)、王華兵、Chang Chiahsien、Che Renchao、Dmitri Golberg (併任)、Dmitrity Kukuznyak、Esther Barrena、 Ivan Turkevych、Jong-Su Kim、Hai-Song Wang、 Zhi-Quan Liu、Ngu-Yen Nam、 Wei-Jie Song、 Oleg Plaksin、Rao Jianchu、Saminathapillai Madeswaran、Slavomir Nemsak、 William Nochol、 Yaroslava Lykhach、Zhang Wei1.ナノマテリアル研究所の発足ナノマテリアル研究所は、2つの旧国立研究所す なわち無機材質研究所と金属材料技術研究所が平成 13年度に合併し、独立行政法人物質・材料研究機構 National Institute for Materials Science (NIMS) として 再出発した際に設立された。その時NIMSは3つの 主要研究所と幾つかのセンターとして出発したが、 ナノマテリアル研究所は3つの主要研究所の一つと して設立された(他の2つは物質研究所と材料研究 所)。すなわち、ナノマテリアル研究所は、無機材 質研究所と金属材料技術研究所の研究者の中からナ ノテクノロジーやナノサイエンスに関係の深い研究 者を集めて設立されたのである(5年後の今日、ナ ノマテリアル研究所の研究者の半数はその後に新た に採用された人達であるが)。ナノマテリアル研究所が平成13年すなわち21世紀 の最初の年(2001年)の春に発足したことは、時代 の流れの象徴であった。ナノテクノロジーは、21世 紀のキーテクノロジーであり、それを支える物質・ 材料の研究を強力に推進する中核的な機関が必要と されたのである。世界に眼を向けると、前年の末 (2000年12月)に、米国大統領が「国家ナノテクノ ロジー推進施策」(National Nanotechnology Initiative) を発表し、米国はもとより、その発表に触発された 世界の各国が、ナノテクノロジーの研究開発に国を あげて取り組み始めた。その結果、世界各国に、ナ ノテクノロジーやナノサイエンスに特化した研究機 関が数多く設立された。ナノマテリアル研究所は、 そのような状況の中で発足したのである。ナノテクノロジーが21世紀のキーテクノロジーで あると言われる理由は、それが情報通信技術、バイ オテクノロジー、エネルギー工学、医療工学などの 実用工学から、物理学、化学、生物学、医学などの 基礎科学にわたる広範な分野に革新をもたらす普遍 的底流としての新技術だからであるが、ナノマテリ アル研究所は、このキーテクノロジーの発展に特色 のある役割を果たしたいと考え、我が国が国是とし ている高度情報化社会の実現を目指し、次世代の情 報通信技術のための新しいナノエレクトロニクスデ バイスに必要な新材料の開発に主眼を置くことにし た。そして、NIMSの「使われてこそ材料」という理 念のもとに、新物質・新材料のような技術シーズを 実用化に向けて苗木に育て上げる研究が重要である と考えた。そのためには、企業との積極的な共同研 究が不可欠である。しかし、その前に、優れた技術 シーズを生み出すための挑戦的な基礎研究を勇気を もって進めることがナノマテリアル研究所に課せら れた真の使命であると判断した。それゆえ、既存技 術やその派生技術においてベストワンを目指すより は、むしろオンリーワンの新技術の開拓を推奨し、 運営の各場面においてその方向へ誘導する方策をと ることにした。2.ナノマテリアル研究所の研究組織ナノマテリアル研究所は吉原一紘所長のもとに出 発し、約1年半後の平成14年8月に所長が青野正和 に交代した。研究体制としては、現在、以下の16の グループが置かれている(【】で示した分野分類 は組織上の正式なものではなく便宜的なもの、() 内はグループの代表者であるディレクターまたはア ソシエートディレクター、各分野および各グループ の英文名については下図を参照):【ナノ技術応用】分野ナノデバイスグループ(小口信行)ナノ量子エレクトロニクスグループ(羽多野毅)原子エレクトロニクスグループ(長谷川剛)ナノシンセシス&エンジニアリンググループ(北村健二(併任))【ナノ評価】分野ナノ電子光学材料グループ(関口隆史)ナノ電気計測グループ(中山知信)ナノシンセシス&アナリシスグループ(Dmitri Golberg (併任))ナノキャラクタリゼーショングループ(古屋一夫(併任))【ナノ加工】分野ナノファブリケーショングループ(所長併任(青野正和))ナノファンクショングループ(岸本直樹)ナノアーキテクチャーグループ(三木一司)ナノマテリアル立体配置グループ(知京豊裕)【ナノ科学】分野バイオナノマテリアルグループ(荒川秀雄)ナノ量子輸送グループ(宇治進也)極限場ナノ計測グループ(藤田大介)ナノ物性グループ(木戸義勇(併任))なお、これらのグループの中で代表者の名前に (併任)と付されているグループでは、構成員の一 部または全員がナノマテリアル研究所以外の研究ユ ニットと併任している。また、これらのグループと は別に、NIMSフェロー :堀池靖浩特別主席研究員:中谷功が独自のグループとして研究を進めている。さらに、 各種の微細加工のための共用施設(NIMS全体に開 かれている)として、ナノ量子ファウンドリー(代表エンジニア:清水進也)を置いている。以上がナノマテリアル研究所の組織の骨格である が、グループ横断的な研究プロジェクトとして、 ―「ナノデバイス新材料の開発に関する研究」 ―「量子機能発現に関する研究」―「コンビナトリアル材料創製に関する研究」―「電子・光極微応答の解明と半導体機能の発現に 関する研究」のプロジェクトが活発な研究を推進した。3.ナノマテリアル研究所の運営平成14年度の後半以降、それまでのグループの数 をほぼ倍増し(それによって現在の16となった)、 それらの代表者(ディレクターまたはアソシエート  ディレクター)に若手研究者を登用し、その人達の リーダーシップに期待する組織改変を行った。これ は、研究所の活動を大いに活性化したと思う。ただ し、新体制が落ち着いて本当にその力を発揮するま でには約1年の過渡期が必要であった。新グループの発足に関しては、バイオナノマテリ アルグループを発足したことを述べておくべきであ ろう。NIMSは歴史的に固いもの(無機物質)の研 究が中心になりがちであるが、バイオナノテクノロ ジーは今世紀の極めて重要な研究分野なので、 NIMSがこの分野においてNIMSの得意分野との融合 によって新展開を図るため、バイオナノマテリアル グループを新設した。ナノマテリアル研究所は新しく発足した研究所で あるために、研究者相互の意思疎通を活発化して団 結を図る必要があった。そのため、毎月「研究交流 会」を開催し、各グループが持ち回りで研究の現状 を報告し、他のグループから率直な意見を聞く会を 催した。当初は他のグループの研究に意見を述べる ことに躊躇が見られたが、回を重ねるにつれ活発な 議論が起こるようになり、そこから共同研究のきっ かけが幾つか生れた。ナノマテリアル研究所を外部と密接に協力し合う 研究所とするための一環として、国内、国外の優れ た研究者を積極的に招待してセミナーを開いてもら う“NMLセミナー”(NMLはナノマテリアル研究所の 英語名Nanomaterials Lboratoryの略)をシステムと して運営した。すなわち、申請、審査、採択の手続 きを経れば、専用予算から旅費や謝礼を支出できる システムである。このシステムが発足して以来、計 60回以上のNMLセミナーが開催された。国際協力を密にする観点から、外国の研究機関と の人材交流、情報交換、共同研究を円滑にするため の覚書(M0U)を積極的に締結した。相手機関は、 スタンフォード大学(線型加速器センター)、ワシ ントン大学(工学部)、バージニア州立大学、ロシ ア物理・電力研究所、ハンヤン大学(量子フォトニ ック科学センター)、韓国基礎科学資源研究所、ケ ンブリッジ大学(ナノサイエンスセンター)、中国 科学院上海応用物理研究所、韓国地球科学鉱物資源 研究所、マックスプランク微細構造物理学研究所、 カレル大学(数学物理学部)、チャルマース大学 (応用物理学科)、テキサス大学(ダラス分校)(順 不同)の計13件である。国別件数は、米国4、韓国 3、英国、ドイツ、ロシア、中国、チェコ、スエー デン各1である。国際化の一環として、NIMSとケンブリッジ大学 との間で、Nanotechnology Students' Summer Schoolを 開催した。これは、NIMSとケンブリッジ大学のそ れぞれからナノテクノロジー関連の大学院生(ポス ドクではなく大学院生に限る)が約20人ずつ集まり、 各人が自身の研究のプレゼンテーションを行って、 それに対する質疑応答を他の学生や聴衆との間で行 うものである。2004年に第1回目をつくばのNIMS において、2005年に第2回目をケンブリッジ大学に おいて開催した(毎年、つくばとケンブリッジで交 互に開催する予定)。毎回、ベストプレゼンテーシ ョン賞をNIMS側とケンブリッジ大学側からそれぞ れ1件ずつ出している。また、サッカーの試合が恒 例になりつつある。2004年は3対2でケンブリッジ 大学の勝ち、2005年は3対3で引き分けのあとPK 戦でNIMSの勝ちであった。勝利側は“岸カップ” (NIMSの岸理事長が与えるカップ)を獲得するが、 NIMSの大学院生達は、2004にケンブリッジに持ち 帰えられたカップを2005年にみごと奪い返してきた のである。さて、このSummer Schoolが参加した大 学院生に与えた大きい影響について記しておかなけ ればならない。どちら側の学生からも、「言葉では 表わせないほど良い経験になった」、「この経験は将 来に必ず役に立つと思う」、「このような機会を与え てもらったことに心から感謝する」という意味の言 葉を聞いた。少なくとも、日本の大学院生は、国際 性に関して一皮むけたと観察できる。それらの大学 院生はすぐにポスドクになり、すぐに第一線の研究 者になる。ナノマテリアル研究所は発展的に終結す るが、このイベントは困難があっても継続するのが 現所長としての責任と考えている。ナノマテリアル研究所の5年の短い歴史において 一つの重要なできごとは、2004年の春に並木地区に 床面積13,000平米の新棟が完成し(前々頁の写真を 参照)、ナノ ・生体材料研究棟と命名され、ナノマ テリアル研究所の研究者の多くがそこに集結したこ とである。ただし、ナノマテリアル研究所が使用可 能な面積は諸般の事情で限られたため、実際には研 究者の1/3しかそこに入居できなかった(他の1/3は 千現地区に、残る1/3は桜地区に残った)。これはナ ノマテリアル研究所の研究者の相互協力にとって不 都合であったが、多くの研究者が新棟の瑞々しい雰 囲気の中で研究できたことは大いに幸せであった。4.ナノマテリアル研究所の研究成果ナノマテリアル研究所は、この5年間に幸いにし て多くの優れた研究成果を上げることができた。こ れによって、ナノマテリアル研究所が世界的によく 知られる存在となったことは喜ばしい。実際、2002 年頃は内外からの見学者はそれほど多くはなかった が、2006年の今日、特に外国からの見学者が急速に 増えている。ナノマテリアル研究所の各グループの研究成果に ついては、各グループのディレクターまたはアソシ エートディレクターが個々のグループの成果を本書 の別の部分で述べている。それゆえ、ここではそれ らの簡単な抜粋を記すにとどめる(物質研究所との 併任であるナノシンセシス&アナリシスグループ、 ナノシンセシス&エンジニアリンググループに関し ては、同研究所の記載に譲る)。ナノデバイスグループは、量子ドットの自己形成 法である液滴エピタキシー法を開発し、その利用展 開を図ってきた。最近、化合物半導体のピラミッド、 リング、2重リングなどの形状の量子ドットの創製 と配列制御に成功し、その応用展開を図りつつあ る。ナノ量子エレクトロニクスグループは、酸化物高 温超電導体を用いて、その結晶構造に内在したジョ セフソン接合を利用したテラヘルツ帯の電磁波発振 デバイス、単結晶薄膜を用いたテラヘルツ帯の電磁 波検出デバイスを開発してきている。また、ホウ素 を添加したダイアモンドが超伝導体化することを見 出した。原子エレクトロニクスグループは、原子の移動を 制御する新しいスイッチングデバイス「原子スイッ チ」を開発し、それを用いたキロビット級の不揮発 性ランダムアクセスメモリー、プログラマブル集積 回路用のスイッチング回路の試作に成功した(NEC と共同)。ナノ電子光学材料グループは、高分解能電子顕微 鏡の開発を基礎にした高分解能カソードルミネッセ  ンスの計測により、半導体中の微細構造や欠陥構造、 量子ドット、ナノ粒子などの分析評価に成果をあげ た。ナノ電子計測グループは、世界で最初に多探針 STMを開発した実績と経験を基礎に、それを用いて ナノ構造の電気伝導の計測を進めてきた。最近、カ ーボンナノチューブの電気伝導が長さの減少ととも に拡散型からバリスティック型へ変ることを見事に 観測した。ナノキャラクタリゼーショングループは、高分解 能透過型電子顕微鏡を観察だけでなくナノスケール での造形加工に用いる研究を進めてきた。最近、そ の方法によってナノ磁石を構築し、かつその電子線 ホログラフィーによる評価に成功した。ナノファブリケーショングループは、強磁性体ナ ノ粒子の研究を進め、ナノ粒子における巨視的量子 現象、ナノ粒子の集合体における協同現象やスピン 偏極電子伝導と巨大磁気抵抗効果などを見出した。ナノファンクショングループは、イオンや原子と 固体との相互作用の基礎および応用の研究を行なっ てきた。誘電体への金属イオン注入による非線形光 学特性材料の創製、準安定励起原子を用いた最表面 のスピン計測や微細加工などがその例である。ナノアーキテクチャーグループは、新しい情報処 理デバイスの実現を目指して、ナノ構造をアーキテ クチャー化する研究を進めてきた。最近のトピック スとして、シリコン結晶中へのナノ細線の敷設、ポ リマーの光誘起傾斜配向などがある。ナノマテリアル立体配置グループは、コンビナト リアル法による種々の電子材料の開発、各種の電子 分光法を駆使した絶縁膜/金属の界面の精緻な解析、 有機分子を用いた電子デバイスなどの研究を進めて きた。バイオナノマテリアルグループは、発足して間も ないが、将来の準備を着実に進めた。生体物質をナ ノマシンとして捉え、その制御技術の開拓を目指し ている。ナノ量子輸送グループは、有機超伝導体の研究を 進め、超伝導に関する従来の常識とは逆に強磁場中 でのみ超伝導体になる有機物質を発見した。そして その応用展開を図りつつある。極限場ナノ計測グループは、極低温、強磁場、極 高真空の極限環境場で動作する走査トンネル顕微鏡 を開発するとともに、それを用いて未解決であった Si (001)表面の最安定構造を決定するなど、様々 な興味深い試料の観察評価に応用した。ナノ物性グループは、広範な研究を展開してきた。 例えば、超伝導体MgB2の世界最大の単結晶の育成 とその利用、化合物半導体に添加したイットリウム の特異な発光、固体を用いた量子計算の可能性を示 す量子ドットに関する研究などを行なった。5.さいごにNIMSの平成18年度からの再編にともなってナノ マテリアル研究所は発展的に終了するが、その成果 はNIMSの様々な場所で生かされるであろう。ナノ物性グループの5年木戸義勇、Ivan Turkevych、Jiri Prchal(現カレル大、2005.9帰国)、Zhanwen Xiao (退職)、Zsolt Szabo、新居周子(退職)、飯島隆 広(現京大、2005退職)、石川克彦(現JR東海、2004.3MC)、泉直宏(現タムロン、2005.3MC)、井上純一(ICYS併任)、今中康貴、 宇治進也(現QT、2002.1異動)、宇田川知生(2004.9DC)、榎本健悟(現QT、2002.1異動)、大井修一(現SCL、2001.4異動)、大 西桂子(現EX、2001.4異動)、岡田利之、奥澤恵子(現EX、異動)、押切光丈、落合哲行、小沼幸子、加藤京子(現筑波大、 2003.3退職)、加藤誠一、金山公子(退職)、北澤英明、北原昌代(現EX、異動)、熊倉つや子(現EX、異動)、倉上和久、黒田圭 司、黒田隆、小山弘(現静大、2005.3退職)、斎藤陽輔(退職)、鷺坂恵介(現ICYS、異動)、迫田和彰、佐藤康一、澤崎意久雄 (2004.6退職)、品川秀行(現TML、2005.1異動)、鈴木修、鈴木正美(現TML、2005.2異動)、清水禎(現TML、2002.4異動)、鈴 木博之(現QT、2002.1異動)、瀬山実穂(2004.3退職)、高木成和(現セイコーエプソン、2003.3MC)、高橋美香(退職、2003.2異 動)、高増正、竹端寛治、竹屋浩幸(現SCL、2001.4異動)、田中潔(現TML、2004.4異動)、塚本智子、辻��井直人、寺井慶和(現 阪大、2003.3退職)、寺倉千恵子(現産総研、2003.3退職)、寺嶋太一(現QT、2002.1異動)、豊島陽子(2003.9退職)、中村いずみ (2004.12退職)、永山和子(2005.10退職)、西村光佳(現QT、2002.1異動)、萩田香織(退職)、橋本すみえ、端健二郎(現TML、 2002.4異動)、長谷正司、平田和人(現SCL、2001.4異動)、平間隆(現東芝ライティング、2004.3MC)、藤田大介(現EX、2001.4 異動)、眞隅泰三(2004.3退職)、三井正、光原美和子(退職)、宮部亮(現古川電工、2003.3MC)、宮本麻矢、森井奈保子、八木 拓真、矢野聡(2003.11退職)、劉兵(退職)、後藤敦(現TML)、茂筑高士(現SCL、2001.4異動)、矢ケ部太郎 (現QT、2002.1異動)略号の説明、QTナノマテリアル研究所量子輸送グループ、EX:ナノマテリアル研究所極限場ナノ機能グループ、SCL:超伝導研 究センター、TML :強磁場研究センター、MC :修士課程修了、DC :博士課程修了1.組織発足の経緯・目的・目指したもの等旧金材研の機能特性研究部メンバーの全てと金材 研内で微視的な領域の物性研究を行っていたメンバ ーを合わせたかなりの大所帯で、ナノ領域、ナノ構 造および強磁場で誘起される量子現象の解明を目的 に発足しました。発足1年後に現ナノマテリアル研 究所量子輸送現象グループ、同極限場ナノ機能グル ープ、超伝導材料研究センター薄膜・単結晶グルー プが独立し、研究目的は量子計算機の実現に繋がる 量子物性を中心とした研究に目標を集約しました。 更に約1年後強磁場研究センター発足に伴いNMR研 究を行っていたメンバーが強磁場研究センター磁場 科学グループに異動した。ここでは現在ある3つの サブグループ毎の研究について述べます。2.研究成果第1サブグループ当サブグループでは、各種結晶育成法や強磁場物 性計測法を生かして、物質中の微細な構造に基づく 新奇な量子現象を示す物質開発をめざしました。特 に、本期間では、次のテーマを中心に研究を展開し ました。(1)鋭い発光スペクトルを示す磁性半導体結晶・ ナノ結晶の開発。(2) NMR量子コンピューターの候補と考えられて いる1/2核スピン系列からなる物質の開発。(3)強相関電子系物質開発と強磁場電子物性。(4)希土類ナノコンポジット永久磁石材料開発と 強磁場特性。2.1金属系高温超伝導体MgB2の単結晶開発 (13年度)2001年の初頭に秋光らのグループによって発見さ れた新超伝導体MgB2は、超伝導転移温度が金属系 材料の中では高く、結晶構造が単純で、安価な元素 からなるため応用面からも期待を持って受け入ら れ、瞬く間に世界中の研究者を巻き込みました。 我々のグループでは、一早く Mo坩堝を用いた気相 成長法により、世界で初めて最大約0.5x0.5x0.02mm3 のMgB2単結晶育成に成功しました(図1)。電気抵 抗率及び、帯磁率の温度変化測定により、MgB2単 結晶試料の超伝導転移温度Tcを38.5Kと決定しまし た。また、c軸方向に比べてab面内に磁場を印加し た方が、超伝導を壊すのに2.6倍大きな磁場(上部 臨界磁場:Hc2)を必要とすることを明らかにしま した。APLに発表された本論文はその後多くの論文 に引用されることとなり、2005年12月現在で被引用 回数137回以上に達しています。図1MgB2単結晶SEM写真2. 2機能性新希土類金属間化合物開発(14年 度)新規希土類化合物PrInNi4の合成に成功し、その特異 な磁場誘起強磁性転移を利用した低磁場で動作する 磁気冷凍材料を開発しました。また、幾何学的フラ ストレーションに起因した新たな巨大磁気抵抗 (GMR)効果材料として希土類化合物TbPd1-xNixAl 系を開発すると共に、希土類化合物PrPtBiの単結晶 育成に成功し、超音波測定により、低温で示す相転 移が四極子秩序に起因していることを明らかにしま した。2. 3ナノ磁性体及び量子計算材料開発(13―16年度)ナノ磁性体の磁気的性質を調べる目的で、Niナノ ワイヤーを多孔質アルミナをテンプレートとして電 気めっき法で作成することに成功しまた。作成され たNiナノワイヤーは、アスペクト比が高く、個々の サイズの非常に揃っています。直径15nmと50nmの Niナノワイヤーの磁化測定を行ったところ、ワイヤ ー方向に磁場を印加した時にのみ両者とも磁化曲線 にヒステリシスが観測されました。さらに抗磁力の 温度変化を測ったところ、直径15nmの場合は、抗 磁力が温度とともに増加するのですが、直径50nm のナノワイヤーの場合は、抗磁力は温度の減少とと もに減少する事が分かりました。また、多キュビット化が可能な固体NMR量子計算 機の材料探索の一環として、黒リンの核スピン物性 を調査しました。NMR実験で得られた31P核のスピ ン格子緩和時間T1は、室温で数分にも達し、量子計 算に要求されている特性時間としては、十分な長さ であることが判明しました。図2 多孔質アルミナ中に成長されたNiナノワイヤー (左上)のSEM写真2 . 4量子スピン系及び強相関電子系材料開発 (15-16 年度)Rb2Cu2Mo3O12が第1近接と第2近接交換相互作用 を持つ1次元スピン系(S=1/2)のモデル物質であ ることを発見しました。帯磁率の温度依存性と磁化 の磁場依存性から、第1近接交換相互作用の値J1 は-138K (強磁性)、第2近接交換相互作用の値J2 は51K (反強磁性)であると評価しました。J2/J1 (=-0.37)の値から、基底状態は非磁性インコメ ンシュレイト状態と予想されます。実際にJ1とJ2の 値よりもずっと小さい2Kの温度まで、磁気相転移 はありません。一方、J1が強磁性である他のモデル 物質では反強磁性秩序が観測されました。従って、 Rb2Cu2Mo3O12は非磁性インコメンシュレイト基底状 態を研究するための最適なモデル物質であると考え られます。また、いくつかの強相関系Yb化合物の低温にお ける比熱と電気抵抗の温度変化の系統的研究から、 従来のフェルミ液体論の証拠とされてきた経験則で あるKadowaki-Woods則から大きくずれることを見出した。このずれは、これまで無視されてきたf電 子の縮重度を取り入れた補正項を考慮することで、 図3に示すようにこれまで謎とされてきた問題も一 挙に解決できることを明快に示すことに成功しまし た。さらに、次世代炭素系新材料であるC60ナノウィ スカー結晶の構造や物性をNMRやX線や精密磁気計 測法によって評価しました。ポリマー化された表面 層と構造の乱れたコア部分の2種類からなるコア・ シェル構造モデルで実験結果を説明できることを示 しました。図3 重い電子系の電気抵抗のT2係数Aと電子比熱係数γの間のGrand-Kadowaki-Woods則の発見2. 5量子スピン系材料開発(平成17年度)量子スピン磁性体Cu2CdB2O6において、30Tまでの 強磁場磁化測定により2.9Kの温度で1/2磁化プラト ーを観測しました。帯磁率や比熱測定等の結果を総 合すると、図4に示すようにCu2CdB2O6内の2種類 のCuにおいてそれぞれ、非磁性(スピン1重項)状 態と反強磁性秩序状態の大きく異なる状態が共存し ており、磁場に対する応答も大きく異なることがわ かりました。図4 量子スピン系磁性体Cu2CdB2O6の強磁場中のス ピン状態また、量子スピン系ハルデン物質PbNi2V2O8にお いて、強磁場印加により非磁性から誘起された反強 磁性秩序を見いだし、マグノンのボース・アインシ ュタイン(BE)凝縮によって説明できることを明 らかにしました。ハルデン系でマグノンのBE凝縮 が見つかったのはこれが初めてです。また、量子多 体的一重項状態(ハルデンギャップ相)から、巨視 的量子凝縮状態(磁場誘起反強磁性相)への転移を 磁場によって制御できることが明らかとなり、量子 効果を利用する次世代技術において重要な知見とな りました。第2サブグループ半導体中、特にヘテロ構造界面に生成される低次 元電子系は、不純物散乱の影響を極限まで排除した 理想的な電子系と考えられています。こうした低次 元電子系は、電子間の様々な量子効果によって、低 温、磁場中で多くの興味深い現象を示します。こう した電子系の量子効果についての知見を得るため に、我々は以下の項目について研究を行いました。 1.高易動度GaAs/AlAs中2次元電子系試料および 希土類原子を含む超格子構造試料の作製。2.磁性 不純物、量子ドット構造を含む2次元電子系での電 子相関。3.電子状態の研究のための各種プローブ の開発1.半導体界面中の電子の量子現象の解明には、高 品質の2次元電子系を有する半導体ヘテロ構造の成 長が必須です。我々は、成長時に液体窒素を用いな い水冷型分子線エピタキシー装置を用いた成長を行 い、高品質、高易動度のGaAs/AlGaAsヘテロ接合中 2次元電子系試料の作製に成功しました。また、半 導体バンド電子と孤立する不純物電子系の相関の研 究を目的として、GaAs/AlAs超格子中に希土類原子 Ybをドープした試料を分子線エピタキシーにより 作製しました。これらの試料における発光特性や輸 送特性を強磁場下で詳細に測定しました。図4 水冷分子線エピタキシー装置の外観図純粋な2次元電子系試料においては、量子ホール 効果、分数量子ホール効果に伴う電子相関による発 光エネルギーの変化を系統的研究し、2次元電子系 の電子状態の空間的な広がりにより、電子相関の大 きさが変化することを明らかにしました。また、希土類原子YbをAlAs/GaAs結晶中に添加し た系では、Yb内核電子からの発光が、母結晶のエ ネルギーギャップによりその効率を飛躍的に変化さ せることを見出しました。超格子試料においては、 バンド内発光、光励起伝導度との同時測定から、バ ンド電子と4f電子との相関やエネルギー緩和機構に 関する情報が得られます。本研究でGaAs/AlAs : Yb 試料において、井戸内のみの励起を行うような励起 波長を用いることにより、永続的な電気伝導を示す ことを発見しました。同時にGaAsバンドギャップ 中からの幅広い発光バンドを発見しました。このバ ンドは磁場印加にともなって磁場の逆数に対して等 間隔の磁気振動を示し、電気伝導度も同期した振動 を示すことから、井戸内に励起された電子―正孔対 がYb不純物トラップにより一旦分離し、実空間間 接発光を行っていることがわかりました。また、こ の現象の解析より、電子の各過程における緩和時間 をみつもることに成功しています。2.希薄磁性半導体中の2次元電子系においては、 電子スピンのゼーマンエネルギーを磁性不純物の濃 度によって自由に変化させられることが知られてい ます。こうした試料を用いて、ゼーマンエネルギー の異なる電子系における電子相関がスピン状態にも たらす影響をCdMnTe/CdMgTeヘテロ構造において 研究を行った。この結果、特異なスピン励起状態に 関係すると思われる新たな発光現象を見出しまし た。図5 AlAs:Yb/GaAs超格子試料における磁気発光スペ クトルと同時測定した磁気抵抗振動2次元電子―局在電子相関の研究では、GaAs/ AlGaAsヘテロ構造に、InAsドットを埋め込んだ系 に対して、2次元電子系の伝導特性に対する量子ド ットの影響を調べました。この系では、試料デバイ ス表面に透明電極を設けることにより、2次元電子 系に対する量子ドットの相対エネルギーを変化さ せ、同時に量子ドットの電荷状態を変化させること が出来ます。強磁場における量子ホール効果状態の ゲート電圧依存性を調べた結果、量子ドット内の電 子数が変化することにより、量子ドットと2次元電 子系の間にスピンフリップ型の散乱が生じている事 を見出しました。この現象は、スピン量子状態の選 択的な操作、ひいては量子計算素子へと繋がる現象 と考えられます。3.電子状態の量子的効果は、その非局所性に大き な特徴を持ちます。このような特長を詳細に調べる ためには、低温、強磁場下における局所的な物性測 定の手段としての十分高分解能の局所プローブが必 要である。本研究では、この目的のため強磁場、低 温で用いることが可能な走査プロ ーブ顕微鏡の開発 を行いました。図6は、その1例である強磁場用自 己検知型MFMである。また、MFM型の検知におい ては、カンチレバーそのものの持つ磁性が試料の磁 気構造を破壊するため検知感度の向上が妨げられて いたが、新たな方式のスキャンを提案し、これを行 うことにより、強磁場においても十分小さな磁化に 対しても正しい検知が行えることを示した。また、この走査型プローブ顕微鏡のカンチレバー をケルビン型、STM等に換装することにより、局所 的な容量、電気特性等の計測に用いることが可能と なりました。第3サブグループ半導体や誘電体のナノ構造による電子状態と輻射 場の制御、および、それらを利用した新しい量子現 象の開拓を目指して平成14年度に研究を開始した。 まず、フェムト秒レーザーとストリークカメラを利 用した超高速分光装置を立ち上げるとともに、単一 ドット分光のための顕微レーザー分光装置を自作し た。また、フォトニック結晶の解析のためにスーパ ーコンピューター用のソフトウェア開発を行って本 格的な研究の準備を進めました。平成15年度には自作した顕微分光装置を用いて、 GaAs単一量子ドットの発光の検知が達成できた。 図7は、顕微分光装置と超高速分光装置を組み合わ せて測定した、単一量子ドットの時間分解発光スペ クトルである。励起光強度の増大に伴って量子ドッ ト内に複数の励起子が生成し、固有の緩和過程を通 して光エネルギーを放出する様子を明瞭に捉えるこ とに成功しました。図7 GaAs単一量子ドットのピコ秒時間分解発光スペ クトル図6 強磁場用走査型プロ ーブ顕微鏡の構造図8はフォトニック結晶に固有の発光過程につい て、スーパーコンピューターを用いて行った理論解 析の一例である。屈折率を光の波長程度の周期で変 調したフォトニック結晶中では、光の固有モードの 存在しない周波数領域(フォトニックバンドギャッ プ)が生成する。ギャップ端近くに遷移周波数をも つ原子は電磁場と強く結合して、電子準位に大きな 分裂(真空ラビ分裂)を生じる。赤い矢印で示した ギャップ端が原子の本来の発光周波数に近づくと、 発光スペクトルが分裂する。これはフォトニック結 晶に固有の全く新しい量子電気力学(QED)効果で あり、実験検証が待ち望まれている。平成15年度には、半導体量子ドットの励起子およ び励起子分子を利用した2量子ビット演算の実現が 科学技術振興事業団のさきがけ研究に採用されまし た。平成16年度には顕微レーザー分光装置にマイケル ソン干渉計を導入することにより、単一量子ドット の高分解能測定を実現した。分光器を用いた従来の 測定と比べて分解能を2桁向上させることができ、単一 GaAs量子ドットのデコヒーレンス時間の測定 に成功しました。図8フォトニック結晶中の2準位原子の発光スペク トルこれと平行して、ナノデバイスグループが新たに 開発した半導体2重量子リングの解析を進めた。顕 微レーザー分光装置で測定した2重量子リングの発 光スペクトルに現れた微細構造から電子励起エネル ギーを求めることができた。これを第1原理計算で 求めたエネルギー準位と比較することにより、半導 体2重量子リングの電子構造を解明できました。また、大阪大学接合科学研究所宮本教授との共同 研究の中から、マイクロ波からテラヘルツ領域に大 きな共振のQ値を有するフォトニック結晶やフォト ニックフラクタルが見つかった。時間領域差分法 (FDTD法)を用いた数値計算を行って、共振モード の固有周波数、Q値、電場分布等を精度よく求める ことができた。さらに、90度光散乱スペクトルを計 算してフォトニックフラクタルの精巧な解析手法に なり得ることを提案し、実験観測と良い一致を見ま した。また、光学単結晶グループが作製したコロイ ド結晶についてコッセル線の理論解析を球面波展開 の方法で行い、実験観測と極めて良い一致を得まし た。平成17年度には、超高速分光法を用いて量子ドッ トのコヒーレント制御に成功した。励起レーザーパ ルスの強度の増大に伴って発光強度が振動する現象 (励起子ラビ振動)を明瞭に観測できた。このこと は励起子準位を量子ビットとして用いた量子演算の 第一として大きな成果である。また、マイケルソン 干渉計を導入した顕微分光装置を用いて強励起時の 発光スペクトルを観測することにより、量子ドット の励起子分子準位のデコヒーレンス時間の観測にも 成功しました(図9)。図9 単一光子相関における量子ビート他方、テラヘルツ領域のフォトニック結晶の実験 解析を目的として、低温成長GaAs薄膜による光伝 導アンテナを用いたテラヘルツ時間領域分光計を自 作して、動作確認を行いました。これを用いて大阪 大学接合科学研究所で作製したフォトニック結晶の 特性評価を行い、共振器モードを見出しました。ま た、グリーン関数法を用いて非線形フォトニック結 晶による第2高調波発生を詳細に理論解析し、これ まで知られていなかった新しいタイプの位相整合条 件を見出しました。この位相整合条件の下では光の 低群速度効果が自動的に発現するので、比較的単純 な構造で大きな変換効率が期待できる。早急な実験 検証が望ましいと考えられます。これらの研究に加えて、現在、超伝導マグネット による強磁場下での顕微レーザー分光装置を開発中 です。半導体ナノ構造の分光研究に適用することに より、各種の新しい量子効果の発見が期待できま す。サブグループ間この他、特定のサブグループに属さずに行われた 研究にDNAの磁場配向と配向技術を応用した 「DNA分子鎖の新しい配向法と機能化膜」の研究が あります。即ち、DNA自体の磁気異方性は数%と決 して大きくありませんが、DNA繊維が集まると磁場 に対して反応する様になります。本研究では水溶液 から水分が蒸発する過程に10Tに至る強磁場を加え ましたが、殆ど完全と言って良いほど完全に配向し たDNA膜を10Tの磁場中で作ることに成功しまし た。DNA配硬膜の利用では、「DNAとDNA結合体の 結合様式を光学的決定」があげられます。これは世界に先駆けて提案、実証したことです。図10 DNA膜のX線強度の角度依存性3.成果の公表研究成果につきましては誌上および口頭の論文発 表および著作に加えまして特許出願の形で行いまし た。一部は新聞でも大きく報道されました。本グル ープが中心となって行った量子機能発現に関する研 究は今後益々その重要性が高まると考えられます。ナノファンクショングループの活動と成果岸本直樹、雨倉宏、梅田直樹、大久保成彰(現原研機構、2004.2退職)、巨新(現南京大、2004.3退職)、倉橋光紀、河野健一郎、 鞏金竜(現上海応物研、2005.3退職)、須賀建夫(現キャノン(株)、2003.1退職)、鈴木拓、孫霞、武田良彦、張建武、札本安識 (2005.10退職)、O.A.Plaksin、山内泰、呂静(2005.12退職)、Haisong Wang1.ナノファンクショングループの発足と経緯ナノファンクショングループは、ナノ物質材料と 相互作用する場を極限化し、物質材料と場の量子的 相互作用を計測評価するとともに、ナノスケール構 造に起因する材料機能の発現を行うことを目的とし た研究グループです。当グループは、物質材料と相互作用する「場」を極 限化し、物質材料と場の相互作用を、ナノスケール で、その場計測評価することにより、量子的相互作 用の基礎的機構を明らかにするとともに、その相互 作用を利用してナノ構造を創製し、ナノスケール独 特の新しい材料機能、すなわち、「ナノファンクショ ン」の発現を目指してきました。極限的な場として、 イオン、フォトン、中性原子等、及び極高真空場を用 い、新機能としては、ナノ粒子によるフォトニクス、 スピントロニクス、ナノコーティング、ナノ輸送現 象、ナノ メカトロニクス等を対象としました。以上のコンセプトの下、当グループは2002年に主 に当時のナノファブリケーション研究グループから 分離し、発足しました。当初、4つのサブグループ (SG)により構成されていましたが、後に極高真空 場、ナノコーティング、ナノメカトロニクスなどを カバーする2つのSGはそれぞれ微小造形グループ、 ナノ立体配置グループの発足とともに当グループを 離れました。本文では中性原子ビームSG(第1SG) と重イオンビームSG (第2SG)の4年間の成果に ついて記述します。2.ナノファンクショングループの活動経緯当グループは、中性原子ビームと重イオンビーム による物質の励起制御や配置制御の技術を駆使し て、ナノファンクションの発現を目指した先進的な 材料の創製、計測の分野を開拓して来ました。中性原子ビーム、特に低速・準安定原子ビームは、 表面敏感性が原理的に優れていると同時に、スピン制 御性を兼ね備え、ナノ表面計測・制御に高いポテンシ ャルを持っています。しかし、準安定原子線を生成す ることは困難であり、STMに匹敵するレベルの高い 表面敏感性が、逆に極めて高度な清浄を要求するた め、いまだに国内外で技術的蓄積のあるグループでし か取り組まれていません。スピン偏極に至っては、世 界で5指に満たないグループが携わっているだけで、 発展途上にあります。当グループは、独自の技術開発 を重ねつつ、ナノファンクション発現に向け、電子分 光以外の脱離分光や散乱分光、露光源へ独創的な展開 を図り、数々の成果を挙げました。重イオンビームに関しては、大電流負イオン照射、 負イオンダイナミックミキシング、イオンビームと レーザーの複合照射、並びにイオン照射下のその場 光学計測等、国内外でも極めて独自性の高い照射技 術を確立・応用して、主に透明材料中のナノ粒子の創 製制御やナノ機能発現に数々の成果を挙げました。3.成果1)第1SG機能素子の細密化、高速化は、ナノファンクショ ン発現の大きなテーマですが、情報の担体を従来の 電荷のみに頼るのには限界があり、スピンで情報を 伝達することが提唱されています。また、ナノファ ンクション素子の大量生産に適したリソグラフィー 技術については、従来の紫外光、X線や電子線が抱え る回折限界や透過性、後方散乱等の原理的限界のブ レークスルーも求められています。これらの課題に 対し、当グループでは、準安定原子線を開発・適用 しました。具体的には、He (23S)の電子スピンを偏極 させることによって、最表面の電子スピンを計測し、 表面磁性や誘起スピンの振る舞いを明らかにするこ と、また、準安定原子によって極薄レジスト膜を露 光しパターン転写を行う技術開発やその素過程であ る最表面の脱離現象の解明を通じて、ナノファンク ションの可能性を追求しました。以下、さまざまな 成果の中から4つのトピックについて述べます。ナノ構造がスピン偏極に及ぼす影響を検討するた めに顕微観察の必要性が増しています。当グループ では6極磁子を用いて低速He*原子線を集束すると 同時にスピン偏極する技術やスピン反転器の開発を 行いました。その結果、図1―1に示すように、磁 性体最表面の磁区を反映したものと思われる、スピ ン偏極2次元走査像を撮ることができました。顕微 観察の基本機能を達成していて、視野内で厚みや被 覆率を傾斜させた薄膜や吸着系の精密なスピン偏極 分光へ応用することができます。今後、投射型拡大 系との組み合わせによって高分解能顕微観察が可能 です。最表面電子のスピン偏極は薄膜成長や表面での化図1―1MgO(100)劈開面に蒸着した鉄薄膜の磁化 していない表面のスピン偏極走査像(a)、と2次電子 像(b)。画素数64×64、画素寸法17×20 mm学反応や吸着・脱離に係わる重要な意味を持ってい ます。当グループでは電子スピンを偏極させたHe* を用いて脱離現象が表面電子のスピン偏極に依存す ることを初めて明らかにしました。He*の照射による脱離は、当グループが発見して 以来知られるようになった現象です。さらに電子ス ピンと脱離の関係を明らかにしました。図1―2 (a)はスピン偏極He*を試料表面に照射した際に試 料から放出される正イオンの飛行時間分布を示した ものです。試料は磁化したNa/Fe積層基板の上にOH 基を吸着させたものです。観測されている信号は He*照射によりOHが分解し、その結果脱離したH+で す。H+の脱離収率がHe*のスピンの向きによって異 なっています。脱離メカニズムを図1―2 (b)に 示します。表面にHe*を照射するとOHから電子が引 き抜かれ、表面は励起状態となりますが、寿命があ ります。励起状態の寿命は、電子空孔が同じスピン の電子(主にNa電子)によって埋められるまでの 時間です。この表面のNa電子の数はスピンにより 異なるため、励起状態の寿命はスピンに依存します。 この寿命の長い(短い)方が、脱離収率が大きく (小さく)なります。我々の発見は、脱離のような 物体表面で起こる化学反応とスピン偏極との関係を 直接的に初めて示したものです。僅��かですが、He*が表面で脱励起せずに準安定状 態のまま散乱されることが知られています。脱励起 によって放出される電子強度にスピン差があるのと 同様に、この散乱He*原子の強度にもスピンによる 差を生じる可能性があります。つまり、脱励起確率 が高ければ生き残り確率が小さくなり、またその逆 の関係も成り立つことでスピン差が生ずるはずです が、脱励起確率が大きく異なっても、生き残り確率 に大きく影響しない報告もありました。また、反強 磁性体であるNiOの表面で散乱された無偏極He*原 子の回折強度の解析に生き残り確率のスピン依存性 が仮定された例はありましたが、 確かなデータが求 められていました。当グループは、この生き残り確 率のスピン依存性の直接観測に成功しました。図図1―2 スピン偏極準安定ヘリウム原子線によって 脱離した水素イオンの飛行時間分布(a)と脱離メカニ ズム(b)図1―3垂直磁化鉄薄膜の水蒸気露出量に対する(a) 散乱He*強度(上段)、(b)散乱強度のスピン非対称率 (下段)1―3 (b)に示すとおり、散乱He*ピークの強度と スピン非対称率は、水蒸気への露出量に応じて大き く変化します。生き残り確率の増加は、鉄清浄表面 のFermi準位直上に位置する密度の大きな表面状態 が、水分子の吸着によって完全になくなるとともに 共鳴イオン化を抑えて生き残り確率が高くなったも のと考えられます。このことから、低露出量の段階 では、He*の共鳴イオン化確率のスピン依存性が主 にHe*の散乱非対称率に反映されると考えられます。 一方、水の曝露量が大きくなると、もう一つの脱励 起過程であるAuger脱励起が競合するようになり、 非対称率が水吸着面で負となると考えられます。図1― 4 ドデカンチオールSAMレジストに原子線露 光を施した後、エッチングでパターンを現像したマイ カ上の金薄膜(20nm厚)のAFM像(a)とマスクに用 いたTEMグリッド(2000 mesh/inch)のSEM像準安定原子線による自己組織化単分子膜(SAM) の露光によるパターン転写を実証しました。マイカ 上の金を蒸着してドデカンチオール2mMエタノ ー ル溶液に1昼夜浸漬し、基板表面にSAMを作成しま した。これに準安定He原子線を照射したのちアルカ リ溶液でエッチング処理することにより図1―4 (a)に示すような明瞭なグリッドパターンを得まし た。準安定原子線が照射されたホール部分が暗くな っており、照射部がエッチングされています。イオ ン脱離研究の成果をあわせると、パターン転写のメ カニズムは、SAM分子の先端のHまたはCH3が放出され欠陥ができ、次いで、大気中の酸素あるいは水 によって欠陥部が部分酸化されて疎水性が失われ、 この領域の金薄膜が選択的にエッチングされたもの と考えられます。2)第 2SG第2SGは、重イオン領域で未踏の、エネルギー 数MeV ・ mA級の極限的な「イオン場」、及びレーザ による高密度「フォトン場」との複合化を達成して おり、その場計測系を整備しています。この極限 性・非平衡性を極めた場(極限粒子場)は、物質 流/光量子による複合効果等、物質工学の新しい道 具として期待されます。ビーム固体相互作用、及び 非平衡相の変遷過程等を、構造解析、高速時間分解 光学計測、磁気特性計測あるいは非線形光学の計測 等を行うことにより、非平衡過程の基礎的解明を行 い、それらを利用した金属ナノ粒子形成等のナノ構 造作製技術の開発、及び量子サイズ効果等極微構造 に起因する新機能、すなわちナノファンクションの 発現を目指しています。具体的な成果として、絶縁体材料に対して表面帯 電を避けて精密に原子導入を行う、負イオン技術を 開発しナノ粒子形成制御に適用しました。多種にわ たる金属負イオン(Cu、Ag、Au、Er、W、Ta、Ni、 V、Fe、C、Si)のビームを発生させ、さまざまな無 機絶縁体材料(非晶質SiO2、結晶SiO2、MgAlスピネ ル、LiNbO3、SrTiO3、 TiO2、 ZnO、Si3N4、 Al2O3)に おいて、金属ナノ粒子の自発的形成に成功しました。 また、高分子ポリマーのポリカーボネート(PC)、 ポリスチレン(PS)、高密度ポリエチレン(HDPE) 基板に対しても負イオンビーム適用し、PC基板が 比較的高い耐照射性を有することを見出し、負イオ ン注入法によるAg、Cuナノ粒子の自発的形成にも 成功しました。金属ナノ粒子分散材料は、表面プラズモン共鳴に より特徴的な光学特性、光学非線形性を示すことか ら光学材料としての応用が期待されきる材料です。 特に非線形応答は半導体材料を凌ぐピコ秒レベルで 動作するため、超高速の光スイッチング材料として の研究を進めました。金属ナノ粒子材料の光学特性 を支配する表面プラズモン共鳴は、ナノ粒子並びに 母相である絶縁体の誘電率に依存します。一方、イ オン注入法においては、非平衡に原子導入を行うた め金属元素種並びに基板種の選択の自由度が高いた図2 ―1 各種誘電体中のCuナノ粒子材料の光吸収ス ペクトル図2 ― 2 石英ガラス中の各種金属ナノ粒子材料の光 吸収スペクトル め、任意の材料選択による光学設計が可能となりま す。屈折率の異なる各種絶縁体基板中に作製したCu ナノ粒子材料の光吸収スペクトルを図2 ―1に示し ます。基板の屈折率が高くなるにつれて表面プラズ モン共鳴ピークは低フォトンエネルギー側へシフト し、光学設計が可能であることを示しました。また、 石英ガラス中に貴金属及び高融点金属ナノ粒子を形 成し、それぞれのナノ粒子を反映した表面プラズモ ン共鳴を示し(図2 ― 2)、共鳴エネルギーの制御を 実証しました。この成果は、本イオン注入法による ナノ粒子作製の非線形光学材料もしくはフォトニッ ク材料応用への優位性を示すものです。作製したこ れらナノ粒子分散材料に対して、フェムト秒レーザ ーによる非線形光学特性の評価を行い、超高速・非 線形光学応答の確認、エレクトロンーフォノン間の エネルギー遷移過程の評価、非線形光学特性に対す る基板材料種による影響等を明らかにしました。さ らに材料応用として光スイッチング素子化構造の検 討に関しては、光双安定性、非線形グレーティング、 導波路構造等の提案、動作実証等を行っています。これまでに、空間制御性に優れたイオンビーム技 術において、2次元分布した金属ナノ粒子の自己形 成に成功していますが、さらなるナノ粒子形成制御 を目的として、高エネルギーイオンビームとパルス レーザーによるフォトン照射を同時に重畳するイオ ン・レーザー複合照射技術を、独自の技術として確 立しました。イオン照射下の過渡的電子状態にレー ザー照射によるフォトン吸収を付加し、電子励起を 独立に付与することで原子移動効果が増強され、低 濃度領域でのナノ結晶成長が促進されることを示し ました。イオン単独照射(無析出)、イオン・フォ トン順次照射(粒径2 ― 4 nm)に比べ、粒子径の 成長・増大(5―25nm)を確認しています(図図2 ― 3 石英ガラス中のCu析出効果:(左)イオン 単独照射、(中)イオン・レーザー順次照射、(右)イ オン・レーザー同時照射2―3)。さらに同時照射効果は、単独照射では生 じない表面の原子脱離効果、バルクの欠陥アニール 効果もしくは石英ガラス基板表面の形態変化に強く 影響することが認められ、同時照射による電子励起 が促進する動的な原子変位効果によるものです。さ らに低エネルギーイオンビームへの適用、レーザー 波長、エネルギー、パルス数依存性等の検討も行い、 ナノ粒子形成制御にも成功しています。一方、イオン注入法によるナノ粒子形成技術の更 なる制御性の向上を達成するために、その物理的な 素過程に関する検討を多角的に進めました。特に重 要な役割を果たしたのがイオン照射下におけるその 場分光技術です。ナノファンクションGの発足以前 から我々は低エネルギーイオン照射誘起による発光 その場分光を波長走査型の分光器を用いて行ってい ましたが、それを発展させ多波長同時測定系を導入 し、イオン照射下での発光及び光吸収分光を、MeV 及びkeVイオンそれぞれに対して実施しました。ま たパルスイオン照射と組み合わせた時間分解測定も 成功しました。特に注目すべき結果は、貴金属ナノ粒子に特徴的 な表面プラズモン共鳴(SPR)吸収と、媒質中に分 散された孤立貴金属イオンの発光をイオン注入下で 連続的にその場測定した例です。60keVのCuイオン をシリカにイオン注入した場合(図2 ―4)、孤立 Cuイオンからの発光強度は最初照射量とともに増加 しますが、0.5×1016ions/cm2程度で減少に転じ、 1.5×1016ions/cm2では照射量に依らない一定の値に 到達します。一方、貴金属ナノ粒子に特徴的なSPR 吸収は1.5×1016ions/cm2までは出現せず、それ以上 ではほぼ照射量に比例して増加します。発光強度は 媒質中に孤立Cuイオンとして存在するものの濃度、 SPR吸収は金属ナノ粒子の量と見なせますが、これ らの挙動はまさに核生成過程を捉えたものです。非 固溶性媒質に原子が強制導入されると最初は孤立原 子として存在し、導入量とともに孤立原子濃度は増 加します。しかしナノ粒子形成が始まると孤立原子 濃度は急激に下がり、その後は原子導入量が増えて も一定の値を示します。ナノ粒子量に比例するSPR 吸収に潜伏期間がある事実も以上から説明できま す。さらに図2―4の単純な核形成過程以上の結果 も含んでいます:孤立原子の平衡濃度が照射線量率 に依存し、大きな注入速度では高い平衡濃度が得ら れました。これらの結果から金属ナノ粒子形成過程図2 ― 4 60keV Cuイオン照射したSiO2中のCu孤立原 子からの発光(2.25eV)の照射線量依存性。図中の数 字はμ A/cm2単位の照射線量率に関する重要な知見が得られました。また負イオン注入にナノ粒子の光学以外の特性発 現の可能性を探求するために、シリカ中への磁性イ オンであるNiのナノ粒子の形成を行い、その磁気的 性質を検討しました。低温及び室温での磁化ループ、 無磁場・磁場冷却での磁化の温度変化から、形成さ れたNiナノ粒子が超常磁性状態にあることを明かに しました。また光磁気Kerr効果によるCurie点近傍で の挙動からナノ粒子が有限個の原子からなることに 起因する特異な挙動が観測されました。Niナノ粒子を酸素雰囲気中で熱処理したところ、 NiOの酸化物ナノ粒子が形成されることを偶然的に 発見しました。さらに本手法を応用するとCuOや ZnOなどの酸化物ナノ粒子が比較的容易に形成でき ることを示しました。ZnOナノ粒子は光学応用上重 要な材料であり現在精力的に研究を展開中です。ま た本手法を高度化し、低酸素分圧下でCuOナノ粒子 を還元し、Cu2Oナノ粒子を形成することにも成功し ました。研究以外では、日本MRSの「イオンビーム革新材 料」セッションを2002年に発足させ、以後毎年、開 催のために貢献しております。4.まとめと展望第1SGは、準安定原子線の内部エネルギー及び 電子スピンを利用して、上記トピック以外にも有機 分子吸着面や垂直磁化超薄膜をはじめ各種吸着磁性 表面を系統的に調べてスピン素子に影響する諸因子 を検証し、脱離分光や散乱分光も行うことにより、 磁化した表面での電子遷移を伴う現象がスピンの影 響を受けることを突き止めました。また、原子線リ ソグラフィの原理的実証を完了しました。今後、走査法だけでなく投射法も取り入れ、また スピン偏極He原子線に放出電子顕微鏡を組み合わせ て高空間分解能化を進めます。この他、磁場重畳下 での最表面スピン測定やスピン偏極イオン散乱分光 法さらに光放出等の新たな展開を目指します。また、 SAM等をレジストとした原子線露光リソグラフィ技 術の開発を進めます。第2SGは、高エネルギーの正・負イオンを用い たイオン注入法、薄膜生成を組合わせた負イオンダ イナミックミキシング法、さらにはレーザーとイオ ンの複合照射技術等により、さまざまな無機及び有 機透明材料中に多様な金属や酸化物のナノ粒子を形 成・制御し、線形・非線形光学特性、磁性・光磁気 特性など多様な特性を評価し、次世代光情報通信用 の光スイッチング材料などへの有効性を確認しまし た。またその場発光・吸収分光法を用いてナノ粒子 の形成機構を明らかにするとともに、レーザー複合 照射によるナノ粒子析出の空間制御にも成功しまし た。今後更なるナノ粒子技術が期待されます。その他にも多くの研究成果がありますが、両SG の成果は162編の論文発表、204件の国際会議発表、 169件の国内発表として公表されています。ナノ電気計測グループの活動をふりかえって中山知信、内橋隆、久保理、新ヶ谷義隆、肖占文、塚本茂、富本博之、中谷真人、長岡克己、長尾忠昭、樋口誠司、町田真一、 柳沼晋、李万燕、渡辺厚子(以上、2005.12現在の在籍者)、大川祐司、桜井亮、田村拓郎、長谷川剛(以上、現原子エレクトロ ニクスグループ、2003.1異動)1.ナノ電気計測グループの沿革当グループは、平成14年8月、ナノマテリアル研 究所内に発足しました。発足にあたり、独立行政法 人理化学研究所・表面界面工学研究室[青野正和主 任研究員(現ナノマテリアル研究所所長)]のメン バー(中山、長谷川、桜井、大川、新ヶ谷、久保) がグループの母体となりました。研究の目的は、 “ナノテクノロジーの発展に必要不可欠な「個々の ナノ構造特性を直接計測する新しいツールと手法」 の開発と、その応用計測によるナノ構造の特異な物 性と機能の抽出”でした。約3ヶ月をかけて、多く の設備を理化学研究所から物質・材料研究機構へと 移設し、新しいグループとしての研究活動を開始し ました。平成15年1月には、新しい機能素子である「原子 スイッチ」に関する研究をさらに発展させるべく、 当グループから原子エレクトロニクスグループが発 足し、原子スイッチに関連する研究は原子エレクト ロニクスグループに移行しました。ナノ電気計測グ ループは、走査型マルチプローブ顕微鏡(*)をは じめとする走査型プロ ーブ顕微鏡関連技術の開発と それを用いた低次元ナノ構造やナノ材料の研究を、 引き続き推進することとなりました。この時期、材 料研究所から原子細線アレーの電気伝導特性を研究 していた内橋研究員を、カリフォルニア大学バーク レイ校からは極低温超高真空走査トンネル顕微鏡の 開発を行っていた長岡研究員を新メンバーとして迎 えました。なお、研究設備等は主として千現地区に 設置していましたが、平成16年2月に並木地区ナ ノ ・生体材料研究棟が竣工し、同年5月には、同棟 へ全ての研究設備と居室を移転しました。ナノ ・生体材料研究棟への移転を機に、研究対象 とする物質・材料をエレクトロニクス関連材料のみ ならずバイオマテリアルまで拡大しました。平成16 年9月には、低次元ナノ構造におけるプラズモニク ス(電荷のダイナミクス)を研究していた東北大学 金属材料研究所の長尾助教授を第2サブグループリ ーダーとして迎えました。この時点から、走査型プ ローブ顕微鏡関連技術を中心とした第1サブグルー プ(サブグループリーダー:中山が兼務)と表面プ ラズモニクスの基礎ならびに応用研究を中心とする 第2サブグループ(サブグループリーダー:長尾) からなる体制に移行しました。第2サブグループで は、溶液中での高感度生体分子検出など、低次元表 面(例えば金属微粒子や金属ナノワイヤー表面)の 増強効果利用に関する研究を推進することとしまし た。現在我々は、第1サブグループと第2サブグルー プの融合的な研究推進を通じて、エレクトロニクス 材料からバイオマテリアルに至る広汎な物質・材料 に対応する次世代ナノ計測技術の実現と新規ナノ構 造・ナノ物性の創出を目指しています。なお、当グループは2004年4月より、筑波大学大 学院数理物質科学研究科物質・材料工学専攻のナノ 電気計測研究室として、学生の教育・指導も行って います。(*)走査型マルチプローブ顕微鏡は、理化学研究 所・表面界面工学研究室において、青野・中山が平 成8年に開発を開始し、平成10年には世界に先駆け て第1号機を完成させました[OYO BUTSURI 67, 1361(1998)]。2.研究活動の経緯研究の基盤技術について当グループの研究活動の原点と特徴は、個々のナ ノ構造特性を直接計測する新しいツール、走査型マ ルチプローブ顕微鏡にあります。図1は、我々が開 発した走査型マルチプロ ーブ顕微鏡の第1号機で す。走査型マルチプローブ顕微鏡は、一般的な走査 プロ ーブ顕微鏡のプロ ーブと同等の性能を発揮する プローブを複数備え、それらのプローブの独立駆動 と、1/100nm精度でのプローブ位置制御を両立して います。これらによって、計測したいナノ構造の観 察のみならず、狙ったナノ構造に対して必要な数の プローブを接触あるいは近接させて、その物性や機 能の直接計測が可能になりました。2本のプローブ を用いてナノ構造の電気抵抗を計測する場合は、 「ナノテスター」とも呼ばれています。図1 超高真空走査型マルチプローブ顕微鏡走査型マルチプローブ顕微鏡を用いて、シリコン 表面上に自己組織的に成長したErSi2ナノワイヤーの 電気抵抗を直接計測した例を図2に示します。幅3 ナノメートル、高さ1ナノメートル(長さは数百～ 1マイクロメートル程度)という微細なErSi2ナノワ イヤーについて「電気抵抗の長さ依存計測」を実現 したことで、この装置の性能と可能性を確認しました。従来不可能であった計測が可能になることから、 国内外の複数の有力グループが同様の装置開発に取 り組んでいますが、現在のところ図1に示した装置 を凌駕する性能は報告されていません。我々は、走 査型マルチプローブ顕微鏡が、その価値は認識され ながらも、利用しづらく利用範囲が限定される計測 ツールとなることを危惧しました。そこで、装置の 汎用化と高度化を進めながら、その応用計測例を示 していくことにしました。図2 走査型マルチプローブ顕微鏡を用いたErSi2ナノ ワイヤー電気抵抗の長さ依存計測。異なる断面積を持つErSi2ナノワイヤーから得られた結果を示す基盤技術の汎用性拡張に向けたナノマテリアル研究既に我々は、AFMとして動作する走査型マルチプ ロ ーブ顕微鏡を30K程度の低温環境に対応させてい ますが、さらに溶液中や極低温などの環境に対応す る装置を構築しています。極低温下でのマルチプロ ーブ計測では、空間的にもエネルギー的にも精密な 物性計測が可能なので、予備実験として極低温走査 トンネル顕微鏡によるナノ構造電子状態計測も行っ ています。プローブとプローブとの最近接距離を狭 めることは重要です。我々は極微細プローブ開発に 着手し、エピタキシャル成長技術を応用してナノ構 造に接触を繰り返しても特性に変化が無く安定な極 微細ナノプローブを開発しました。図3 電子線重合C60薄膜の電気特性計測。4本のプロ ーブを一つのドメイン内に設置することによって、重 合薄膜の金属的特性が明らかとなった特徴のあるナノ材料の計測例として、電子線や光 によって重合させたフラーレンC60ナノフィルムの 電気抵抗計測を行いました。この計測は東京工業大 学・尾上順助教授と共同で進め、電子線重合C60薄膜に関する研究成果(図3)には、多くの問い合せ がありました。カーボンナノチューブの長さ依存電 気抵抗計測にも着手しました。この計測では、科学 技術振興機構の国際共同研究事業ICORPを通じた英 国ケンブリッジ大学との緊密な協力関係が大いに役 立ちました。また、独自のナノ構造作成技術の開発も並行して 進めました。走査型マルチプローブ顕微鏡では、ナ ノコンタクトをナノ構造に対して一時的に形成しま すが、将来のナノデバイスではナノスケールの電極 を目的のナノ構造に恒久的に接続する必要がありま す。ナノコンタクトの物性制御は、今後のナノエレ クトロニクスの鍵を握るとも考えられる重要な課題 です。そこで、超高真空環境下でのナノ電極形成技 術開発に取り組んでいます(図4)。Si (111)4x1- In表面上には、一次元電気伝導性を示すIn原子列 (Inナノワイヤー)が整列していますが、このIn原 子列上にAg薄膜電極を低温形成すると、Ag電極表 面にも一次元構造が現れることが分かりました(図 5 )。これは、金属電極と原子ワイヤーとのナノコ ンタクトを精密に理解し制御する上で重要な手がか りを与えるものと期待しています。図4 ErSi2ナノワイヤーへの微細電極接続例 電極間 隔は約300ナノ メートルである図5 Si (111)4x1-In表面上に低温成長させたAg電極表面のストライプ構造計測対象となるナノ構造の作製技術に関連して、 C60分子間の化学結合を、走査トンネル顕微鏡のプ ローブ直下のナノスケール領域で自在に生成解消で きることを見出しました(図6)。この技術が、新 しい分子デバイスにも応用できることを試作レベル で確認しています。ところで、ナノ計測やナノ構造 形成技術の研究では、理論的な考察が非常に大きな 役割を果たします。当グループでは、理論計算を専 門とする特別研究員を採用し、実験研究者と理論研 究者が机を並べることで、実験と理論との連携を “物理的”に強くする工夫をしています。我々のC60関連研究でも、実験家と理論家の緊密な連携が、実 に効果的に働きました。提供することが最終目的であり、現在も、ソフトウ ェアと制御機能の高度化を中心に日夜開発を推進し ています。なお、実際の開発作業では、実機の駆動 が必要不可欠であり、そのために大気中走査型マル チプローブ顕微鏡(図8)による実際のナノ計測も 並行して行っています。図6 C60分子間化学結合の形成と消去。分子間結合が 形成されると暗いコントラストで観察される。一旦形 成された分子間結合も自在に解消できる走査型マルチプローブ計測の高度化に向けた走査型 マルチプローブ統合制御装置の開発既に触れたように、走査型マルチプローブ顕微鏡 は、操作と運用の難しい装置です。このことが、 我々の技術をナノテクノロジー研究全般のレベルア ップに役立てる上で大きな障害となるであろうこと は容易に予測され、このことが我々を悩ませていま した。丁度その頃、文部科学省が推進するリーディ ングプロジェクトに、当グループが提案する「走査 型マルチプローブ統合制御装置の開発」が採択され (平成16～18年度)、京都大学、堀場製作所と共同で、 市販を前提とした制御装置の開発を進めることにな りました。図8 走査型マルチプローブ統合制御装置の開発に利 用している走査型マルチプローブ顕微鏡。試作デバイ スの評価にも利用している(挿入図)マルチプローブによる新しい研究: バイオナノテクノロジック研究平成14～15年度は、半導体表面や金属(シリサイ ド)ナノワイヤー、フラーレンやカーボンナノチュ ーブなど、現在から近い将来のナノエレクトロニク スを意識した物質・材料を主な研究対象としてきま した。しかし、ナノ ・生体材料研究棟への移転をき っかけに、本格的にバイオマテリアルを取り入れ、 従来からの研究と並行して“バイオナノテクノロジ ック”研究を開始しました。我々には、マルチプロ ーブ手法をバイオマテリアルや生体に適用すれば、 新しいナノバイオ研究を展開できるはずだと確信が ありました。しかし、バイオマテリアルに関する知 識や技術を持たずに研究を推進しても、オリジナリ ティのある研究の実行は難しいとも考えていまし た。そこで、東京都総合臨床医学研究所の原田慶恵 博士にお願いして、工学の立場からのバイオ研究に 必要な、最小限の基礎知識を実地で教えて頂きまし た。その知識を基に、バイオマテリアル専用の小規 模な研究設備を整備しました。図7 開発中の走査型マルチプローブ統合制御装置。 3段構成を取っており、上段:デジタルプロセッサ、 中段:帰還制御回路、下段:高電圧増幅回路である図7は、リーディングプロジェクトで開発中の走 査型マルチプローブ統合制御装置です。この装置に ディスプレイとキーボード、マウスを接続すれば、 4本のプローブ走査から最終的な電気特性計測に至 る計測プロセス全体を制御することが可能です。 我々が蓄積してきた実験ノウハウと将来を見越した 高度なプロ ーブ制御機能を誰にでも使いやすい形で図9 (a) 38℃、(b) 30℃、(c) 23℃で自己組織化したDNA薄膜のAFM像。平坦性の高い薄膜(b)を調整 するための条件は、DNA構造(長さ、塩基配列)に依 存するその小規模な研究設備を利用して作製したバイオ ナノ構造を二つ紹介します。図9は、固液界面で自 己組織化形成されるDNA薄膜の連続性(平坦性)が、温度条件によって大きく変化することを示していま す。図10では、細胞分割蛋白質FtsZ分子の自己組織 的環状構造生成に成功しています。このような自己 組織化ナノ構造作製技術とマルチプロ ーブ計測を駆 使して、バイオマテリアルが発現するナノ機能の探 索と解明を目指しています。図10細胞分割蛋白質FtsZ分子の自己組織化構造。マ イクロメートルスケール(左)およびナノメートルス ケール(右)の環状構造が形成されるバイオナノテクノ ロジック研究の延長線上には、 「多種多様な分子から構成される複雑な構造体“細 胞”が生み出す機能を、ナノスケール信号伝達の視 点から解明する。」という大きな目標があります (図11)。平成17年度は、この目標に向けて、溶液環 境に耐えうる強固なカーボンナノチューブ探針の開 発や金属表面へのセンサー分子吸着に関する研究も 進めました。図11 細胞内信号伝達ナノ計測の概念図3.ナノ電気計測グループの成果成果発表誌上発表:原著論文 27篇解説・総説・著作 26篇プロシーディングス 15篇口頭発表:(招待・一般、国内・国際を含む)180件 主な研究会開催(企画、実施): (1)The 1st International Symposium on the Functionality of Organized Nanostructures, 30 Nov. -2 Dec. 2004, Tsukuba, Japan.(2)1st UK-Japan Nanotechnology Student Summer School, 26-30 Jul. 2004, Tsukuba, Japan.(3) 2nd UK-Japan Nanotechnology Student Summer School, 11-15 Jul. 2005, Cambridge, UK.受賞:(1) 2005年 7 月:13th International Conference on Scanning Tunneling Microsocpy/Spectroscopy and Related Techniques (札幌)、ポスター賞「Striped Ag Films Grown at Low Temperature on Si(111)-4x1 In Chains 」、大渕千種、内橋隆、中山知信.(2) 2005年 7 月 : 2nd UK-Japan Nanotechnology Student Summer School (Nanoscience Centre, University of Cambridge, UK), Best presentation award : Control of nanoscale reversible chemical reaction of C60 molecules, 中谷真人、塚本茂、中山知信、青野正和.4.総括“ナノテクノロジーの発展に必要不可欠な「個々 のナノ構造特性を直接計測する新しいツールと手 法」の開発と、その応用計測によるナノ構造の特異 な物性と機能の抽出”を目指して研究をスタートし、 3年4ヶ月が経過しました。千現からナノ ・生体材 料研究棟移転した後はノイズや振動などの点で研究 環境が改善しました。最近、一次元ナノワイヤーの 拡散伝導とバリスティック伝導に関する非常に興味 深い結果が得られ始めるなど、グループ内外での議 論も活発になってきました。この時期に、走査型マ ルチプローブ統合制御装置の開発を進められる機会 を得たことは、装置開発の意義を高めるためにもま た計測の精度や信頼性を高めて、ナノテクノロジー を牽引するナノ計測を確立するためにもプラスに働 くはずです。計測の幅を拡げるため、あるいは計測 の意味を深く掘り下げるために行ったナノマテリア ル研究も成果を生み出し始めました。バイオナノテ クノロジック研究では、半導体や金属にはないバイ オマテリアルの柔軟な自己組織化能力に驚くと共 に、我々の持つナノテクノロジー関連技術を活用し て、この魅力的な材料を有意義に活用したいという 決意と意欲が湧いてきました。次期中期計画におい ても、当グループの3年強の研究活動から得た成果 は必ずや活用できるものと信じています。最後になりましたが、我々の研究活動は、多くの 人々との交流の上に成り立っています。青野正和ナ ノマテリアル研究所所長、走査トンネル顕微鏡の開 発者でありノ ーベル物理学賞を受賞されたHeinrich Rohrer博士、ケンブリッジ大学ナノサイエンスセン ターのMark E. Welland教授、ヒューレットパッカー ド研究所の R Stanley Williams博士、UCLAのJames K. Gimzewski教授、ソウル国立大学のYoung Kuk教授、 Purdue大学のAlexander Wei助教授、ワーウィック大 学のChristopher F. McConville教授、東京工業大学の 高柳邦夫教授、早稲田大学の塚田捷教授、前出の原 田慶恵博士や尾上順助教授をはじめとして多くの先 生方からの貴重なご意見、ご指導、叱咤激励を頂け たこと、また、当グループに在籍したポスドクや学 生、NIMSの多くの研究者からも様々なご意見を頂 けたこと、この紙面をお借りして、深く感謝の意を 表します。ナノデバイスグループの5年小口信行メンバーリスト(2005年12月時点での物質・材料研究機構在籍者)有沢俊一 現ナノマテリアル研究所 ナノ量子エレクトロニクスグループ2003.6異動石井 明 現ナノマテリアル研究所 ナノ量子エレクトロニクスグループ2003.6異動内橋 隆 現ナノマテリアル研究所 ナノ電気計測グループ2002.8異動大竹晃浩 現ナノマテリアル研究所 ナノデバイス第1グループ2002.4異動笠原 章 現材料研究所 微小造形グループ2002.4異動川岸京子 現材料研究所 超耐熱材料グループ2001.10異動川辺光央 現ナノマテリアル研究所 ナノデバイス第1グループ2002.4採用後藤真宏 現材料研究所 微小造形グループ2002.4異動小森和範 現超伝導材料研究センター SQUIDグループ2001.10異動高野義彦 現ナノマテリアル研究所 ナノ量子エレクトロニクスグループ2003.6異動知京豊裕 現ナノマテリアル研究所 ナノマテリアル立体配置グループ2003.1異動土佐正弘 現材料研究所 微小造形グループ2002.4異動根城 均 現ナノマテリアル研究所 ナノデバイス第2グループ2002.4異動野田武司 現ナノマテリアル研究所 ナノデバイス第1グループ2003.4採用羽多野毅 現ナノマテリアル研究所 ナノ量子エレクトロニクスグループ2003.6異動福富勝夫 現超伝導材料研究センター 酸化物線材グループ2001.10異動間野高明 現ナノマテリアル研究所 ナノデバイス第1グループ2004.1採用宮原美穂 現生体材料研究センター 2003.4採用2004.4異動柳生進二郎 現ナノマテリアル研究所 ナノマテリアル立体配置第2グループ2002.4異動山内康弘 現ナノマテリアル研究所 ナノマテリアル立体配置第2グループ2002.4異動山際正和 現ナノマテリアル研究所 ナノデバイス第1グループ2005.4採用山田和佳子 現ナノマテリアル研究所 ナノデバイスグループ2002.4採用吉武道子 現ナノマテリアル研究所 ナノマテリアル立体配置第2グループ2002.4異動若山 裕 現ナノマテリアル研究所 ナノマテリアル立体配置第1グループ2003.1異動Jong Su KIM 現ナノマテリアル研究所 ナノデバイス第1グループ2002.3採用Zhangwen XIAO 現ナノマテリアル研究所 ナノ電気計測グループ2002.8異動Kyung Sung YUN 現ナノマテリアル研究所 ナノ量子エレクトロニクスグループ2003.6異動1.組織発足の経緯ナノデバイスグループはナノマテリアル研究所の 発足と同時に、「金属、半導体、誘電体、有機物等 の良く制御された量子ナノ構造の創製技術を確立 し、新しいデバイス用材料としての可能性を追求す ること」を目的として、2001年4月に設立された。設立当初は40名の常勤、非常勤研究者が在籍し、 6つのサブグループから構成されていた。これらの 各サブグループのリーダーおよび研究内容は次の通 りであった。第1サブグループサブグループリーダー:羽多野 毅研究内容:高温超伝導薄膜・ウィスカーの合成 とデバイス応用基盤第2サブグループサブグループリーダー:福富勝夫研究内容:大面積基板上の高温超伝導薄膜の配 向制御とマイクロ波応用第3サブグループサブグループリーダー:土佐正弘研究内容:ナノトライボロジーとナノ相互作用 を制御する表面改質技術の開発第4サブグループサブグループリーダー:根城均研究内容:分子・ハーモニック構造の構築と電 磁場制御デバイスの開発第5サブグループサブグループリーダー:吉武道子研究内容:表面局所ポテンシャル制御によるナ ノ加工第6サブグループサブグループリーダー:知京豊裕研究内容:コンビナトリアル機能材料界面研究これらの6つのサブグループは、各研究内容の進 展にともない独立したグループへ発展的に分離さ れ、また新たな分野へも対応していくことを目的に 整理された。2005年12月時点で、当グループを構成 しているサブグループは2つであり、これらの各サ ブグループのリーダーおよび研究内容は次の通りで ある。第1サブグループサブグループリーダー:小口信行研究内容:液滴エピタキシィ法による量子ナノ 構造の形成と論理演算デバイス材料技術の確第2サブグループサブグループリーダー:根城均研究内容:単一サイズの電磁場制御デバイスの 開発に関する研究2.組織再編の経緯ナノデバイスグループの設立当初から現在に至るまの組織再編の経緯を下の表に示す。第1サブグループ高温超伝導薄膜・ウイスカーの合成とデバイス応用基盤羽多野毅(サブグループリーダー)石井明有沢俊一高野義彦YUN. Kyung Sung2003.6現ナノマテリアル研究所ナノ量子エレクトロニクスグループ 現ナノマテリアル研究所ナノ量子エレクトロニクスグループ 現ナノマテリアル研究所ナノ量子エレクトロニクスグループ 現ナノマテリアル研究所ナノ量子エレクトロニクスグループ 現ナノマテリアル研究所ナノ量子エレクトロニクスグループ第2サブグループ大面積基板上の高温超伝導薄膜の配向制御とマイクロ波応用福富勝夫(サブグループリーダー)小森和範川岸京子2001.10 現超伝導材料研究センター酸化物線材グループ現超伝導材料研究センター SQUIDグループ現材料研究所超耐熱材料グループ第3サブグループナノトライボロジーとナノ相互作用を制御する表面改質技術の開発土佐正弘(サブグループリーダー)笠原章後藤真宏2002.4 現材料研究所微小造形グループ 現材料研究所微小造形グループ 現材料研究所微小造形グループ大竹晃浩 現ナノマテリアル研究所ナノデバイス第1グループ2002.4第4サブグループ分子・ハーモニック構造の構築と電磁場制御デバイスの開発2002.4根城均(サブグループリーダー) 現ナノマテリアル研究所ナノデバイス第2グループ若山裕2003.1現ナノマテリアル研究所ナノマテリアル立体配置第1グループ内橋隆 肖占文2002.8 現ナノマテリアル研究所ナノ電気計測グループ 現ナノマテリアル研究所ナノ電気計測グループ第5サブグループ表面局所ポテンシャル制御によるナノ加工吉武道子(サブグループリーダー)柳生進二郎山内康弘2002.4 現ナノマテリアル研究所ナノマテリアル立体配置第2グループ 現ナノマテリアル研究所ナノマテリアル立体配置第2グループ 現ナノマテリアル研究所ナノマテリアル立体配置第2グループ第6サブグループコンビナトリアル機能材料界面研究知京豊裕(サブグループリーダー)2003.1現ナノマテリアル研究所ナノマテリアル立体配置グループJong Su KIM 2002.3川辺光央 2002.4野田武司 2003.4間野高明 2004.1山際正和 2005.4第1サブグループ山田和佳子ナノデバイスグループ2002.4 第2サブグループ3.研究トピックス上述した組織の再編、整理にともない分離独立し たグループの研究成果に関しては、それぞれの新し いグループごとに別途記述があるので、ここでは現 在のナノデバイスグループを構成している二つのサ ブグループの研究トピックスを紹介する。3.1第1サブグループ半導体で作られる0次元的な人工ナノ構造(いわ ゆる量子ドット)においては、量子サイズ効果が顕 在化するため、バルク状半導体では不可能な新しい 機能が発現する可能性がある。このような材料を利 用することにより、その高性能化にやや閉塞感のあ るシリコンを中心とした従来の半導体デバイスの性 能をはるかに凌駕するようなデバイスができるので はないだろうかという期待感から、量子ドットに関 して世界中で研究が活発に行われてきた。第1サブグループでは、1990年に世界に先駆けて 半導体量子ドットの自己形成法である「液滴エピタ キシィ法」を提案し、その高い可能性を生かした次 世代論理演算デバイスのための材料技術の確立を目 指して研究を行ってきた。この手法を用いると、格 子不整合系の半導体材料のみではなく格子整合系半 導体材料においても量子ドットの形成が可能であ る。格子整合系であるGaAs/AlGaAsおよびひずみ系 であるInGaAs/GaAsを対象として、これらの量子ド ットの形成機構、ピラミッド状、単一リング状、同 心二重リング状などへの量子ドットの形状制御、量 子ドットの配置制御、およびこれらの試料の光学的 性質の解明に関する研究を進めてきた。またこれと並行して、量子ドットなど半導体ナノ 構造形成の際の代表的な基板材料であるGaAs (001) 表面に関して、複数の表面分析手法を用いて、その 表面原子配列の評価と制御を行ってきた。図2 単一のGaAs同心二重量子リングからの発光スペ クトルとその電子状態図これらの研究で得られた代表的な結果として、図 1に液滴エピタキシィ法で自己形成により作製した GaAs同心二重量子リング構造のAFM像を、また図 2には単一のGaAs同心二重量子リングからの発光 スペクトルと計算により求めたその電子状態図を示 す。これらの量子ドット構造は、将来の量子情報処 理用デバイス材料として有望である。なおこれらの 結果は、ナノ物性グループ、ミラノ大学との共同研究の成果である。図3 位置制御InAs量子ドットの形成(a) AFMによる酸化物ドッの形成(b)原子状水素によるナノホールの形成(c)液滴エピタキシー法による位置制御InA量子ドット(SCQD)の作製(d) SCQDのPL特性図1 滴エピタキシィ法により作製したGaAs同心二重 量子リング構造のAFM像図3には配置制御InAs量子ドットの形成に関する 研究において得られた成果を示す。原子間力顕微鏡 (AFM)と原子状水素による基板表面清浄化手法お よび液滴エピタキシィ法を併用することにより、配 置の制御された良質の量子ドットが形成されていることがわかる。また図4にはGaAs (001)表面原子配列の評価と 制御に関する研究において得られた成果を示す。液 滴エピタキシィ法により量子ドットを作製する際の GaAs (001)基板表面の原子配列に関しては、実験、 理論両面で従来多くの研究はあったが、統一のとれ た解釈はなされていなかった。本研究によりこの表 面の原子配列に関して初めて明確な解釈が行なわ れ、この結果は今後のナノ構造の形成、表面物理の 進展という観点から注目される。図5トンネル電子顕微鏡図4 GaAs (001)表面原子配列の評価(a)最もGaリッチなGaAs(001)-(4x6)表面のSTM像(b)-Aと(c) -Aは明線部と暗線部の拡大像を、(b) -Bと (c)-BはGa (青丸)とAs (赤丸)の原子位置を示す(b)-C と(c)-Cはシミュレーション像3. 2第2サブグループ第2サブグループでは、単一サイズの電磁場制御 デバイスの開発を目指して研究を行ってきた。この ようなデバイスは現行のデバイスの機能を上回る機 能を持つのみならず、単一分子という量子力学的対 象がマクロの熱浴と接続されたときに、どのような エネルギー散逸が見られるかという新たな物理現象 解明のカギをも含んでいる。図5には、第2サブグループにおいて開発された トンネル電子投影顕微鏡の外観を示す。この装置を 用いて、現在までカーボンナノチューブバンドルを 試料として、これに電子波を照射することにより電 子波の干渉縞(図6)を観測し、試料周辺の静電ポ テンシャルが電子の干渉縞に与える影響を検討し た。今後さらなる研究が必要である。図6トンネル電子投影顕微鏡により観察したカーボ ンナノチューブ内の電荷の分布4.今後の動向「量子ドット」に代表される量子ナノ構造に関す る研究は、高性能化にやや閉塞感のあるシリコンを 中心とした従来の半導体デバイスの性能をはるかに 凌駕するようなデバイスの開発に繋がる可能性を秘 めている。しかし、「量子ドット」の固体素子関連の応用と して現在まで実用化に近い状態に達しているもの は、量子ドット研究のきっかけにもなった量子ドッ トレーザ、あるいはポリシリコンを利用する室温動 作単一電子メモリィなどであり、これらはいずれも それぞれの最初の論文が発表されてから20年以上を 経過している。また半導体量子ドットに関しては生 体、分子標識への応用の分野で一部すでに実用化さ れているものもあるが、これは古くから行われてき た微粒子に関する多くの研究が土台になっていると 考えられる。量子ナノ構造を種々の実用的な応用に 結びつけるためには、多くの研究が必要である。今 後とも各分野で着実で継続的な多くの研究、特にナ ノ構造の創製、構造および特性評価に関する研究が 必要である。ナノファブリケーショングループの5年古林孝夫、間宮広明、青野正和、雨倉宏「現ナノマテリアル研究所、2002.4異動」、荒木弘「現材料研究所、2003.4異動」、岸本 直樹「現総合戦略室、ナノマテリアル研究所、2002.4異動」、倉橋光紀「現ナノマテリアル研究所、2002.4異動」、河野健一郎 「現ナノマテリアル研究所、2002.4異動」、後藤真宏「現材料研究所、2003.1着任-2003.4異動」、佐久間芳樹「現ナノマテリアル研 究所、2002.4着任-2003.1異動」、下田正彦「現材料研究所、2002.4異動」、鈴木拓「現ナノマテリアル研究所、2002.4異動」、鈴木 裕「現材料研究所、2003.4異動」、関口隆史「現ナノマテリアル研究所、2003.1異動」、竹口雅樹「現ナノマテリアル研究所、 2002.4異動」、武田良彦「現ナノマテリアル研究所、2002.4異動」、田中美代子「現ナノマテリアル研究所、2002.4異動」、土佐正 弘「現材料研究所、2003.1着任-2003.4異動」、中谷功「現ナノマテリアル研究所、2003.7異動」野田哲二「現理事、2003.4異動」、 古屋一夫「現ナノマテリアル研究所、2002.1着任-2002.4異動」、三井正「現ナノマテリアル研究所、2003.1異動」、三石和貴「現 ナノマテリアル研究所、2002.4異動」、山内泰「現ナノマテリアル研究所、2002.4異動」1.ナノファブリケーショングループについてナノファブリケーショングループは2000年4月、 6サブグループ、20名以上のメンバーで、ナノスケ ールでの微細加工を中心に据えたグループとして発 足したが、その後紆余曲折を経て現在3名(併任で ある所長を含む)を残すのみとなった。転出したメ ンバーの研究内容はそれぞれのグループに引き継が れているので、本稿では現在のメンバーが関与した 研究についてのべることとする。2 .研究の概要強磁性体を研究対象とし、試料サイズをナノメー ター程度にすることによって特異な磁性を引き出し 様々な応用に結びつけることを目的とし、ナノメー ターサイズの磁性体の作製技術、磁気物性及び応用 について研究を行って来た。主な研究成果は以下の 通りである。2 ―1.磁性流体の相図―分散安定性と高機能化―ナノサイズの磁性体を界面活性剤で覆い液体中に 分散させた磁性流体は、ナノ複合材料の先駆けとし て40年近く研究され続けてきた。この間、その磁石 と液体の両者の機能を併せ持つ特徴から、様々な応 用の提案があったものの実用化に至った例は数少な い。この主な原因としては、これまで経験的に行わ れてきた材料開発では分散安定性と十分な磁気特性 を兼ね備えた磁性流体が得られなかったことが挙げ られる。一方、本来こうした材料開発を支えるべき 理論的な理解も、多体系の取り扱いの難しさからそ の進展は遅れ、dipolar hard sphere (DHS) fluid等の 理想系で相図(図)が予測されるようになったのは 大規模シミュレーションが可能となった最近のこと である。そこで本研究では、DHS fluidに近いと考え られる粒径の揃った窒化鉄磁性流体を用いてこの相 図を検証し、そこから磁性流体の分散安定性の改善 と磁気特性の向上を図る手段を探ることとする。本研究では、粒径のばらつきによる影響を避ける ために、気相液相反応法を用いて均一な粒径を持っ た窒化鉄ナノ粒子からなる磁性流体を作成した。こ うして作成した磁性流体に対して小角X線散乱を測 定し、そのプロファイルからナノ粒子の空間構造を 推定した。また、磁気測定では、交流磁化率等を広 帯域に渡って測定し、そのコールコールプロット等 により静磁化率(f=0)を得ることで、相転移と磁 性ナノ粒子に一般的なブロッキング現象とを混同す ることを避けた。まず、希薄な磁性流体において、低温で気相液相 転移に相当する密度の異なる2相への相分離が理論 的に議論されていることを考慮し、界面活性剤を含 めた粒子の体積分率が0.1の系の振舞を観測した。 その結果、静磁化率は降温に伴い増大した後、熱エ ネルギーが粒子間の磁気力の1/5程度に低下した温 度において急減する。この振舞にはヒステリシスが 存在するので、これは相分離のような一次転移に帰 せられる。この均一分散相が不安定となる温度は概 ね理論予測に一致し、磁性流体の分散安定性の原理 的限界が予測通りにこの付近にあることが確認でき た。一方、比較的濃厚な磁性流体では、位置の自由度 を保った流体状態において磁性ナノ粒子の磁化ベク トルが一様に配向する強磁性液体の存在が予測され ている。そこで、界面活性剤を含めた粒子の体積分 率が0.3の系の振舞を観測したところ、静磁化率は やはり熱エネルギーが粒子間の磁気力の1/5程度に 低下した温度において発散的に増大することがわか った。これは強磁性的な揺らぎが急激に強くなって いることを示しており、これまでの理論予測と矛盾 しない。ここで得られた磁化率の著しい増進機構は、 今後磁性流体の透磁率の飛躍的向上を図る上で極め て興味深い。図磁性流体に予測されている相図2―2.鉄貯蔵タンパク質フェリチンに内包された 反強磁性体ナノ粒子の磁気緩和近年の量子コンピュータへの期待の増大ととも に、鉄貯蔵タンパク質フェリチンに内包されたオキ シ水酸化鉄様反強磁性体ナノ粒子における磁化の巨視的量子トンネル現象に大きな関心が寄せられつつ ある。そこでは、約2.3K以下の温度領域における温 度に依存しない緩和率から基底状態からのトンネル  現象が、また約2.3K以上の温度領域で観測された磁 場印加によるブロッキング温度の上昇から励起状態 間の共鳴トンネル現象が示唆されてきた。しかしな がら、これらの振舞はいずれも十分な証拠とはなら ないために、トンネル現象による緩和を巡って議論 が続いている。そこで、本研究では、これらのナノ 粒子の磁気緩和を詳細に再検討することで巨視的量 子トンネル現象の有無を明らかにすることを試み た。まず、不均一なナノ粒子に対して緩和率の温度依 存性を測定した場合について検討すると、低温では 小さな粒子の磁気緩和を、また高温では大きな粒子 の磁気緩和を観測している可能性が考えられる。こ の場合、それぞれの緩和自身は温度に依存していて も粒径分布によっては見かけ上温度に依存しない緩 和率が観測される。そこで、ここでは同一粒子の磁 気緩和の温度依存性を明確にするために、緩和中に 一時的に温度を変化させる実験を行った。この結果、 2K近傍における磁気緩和は冷却すると減速し、加 熱すると加速する熱励起型の緩和過程に支配されて いることが明らかとなった。一方、約2.3K以上の温度領域において注目された ブロッキング温度は、動的磁化率が減少し始める温 度から推定されていたため、動的磁化率の係数であ る平衡状態の磁化率の温度依存性からの非本質的影 響を受けているのではないかという疑問が残った。 そこで、ここではこの影響を取り除くために、同一 温度における同一の磁場の反転、消去並びに印加に よって誘起された磁気緩和の比較を行った。この結 果、2K以上の温度領域において磁気緩和は磁場印 加により古典的な理論の予測通りに加速されること が明らかとなった。このことから、この温度領域で は、磁気緩和は励起状態間の共鳴量子トンネルの影 響をほとんど受けていないことがわかった。2―3.強磁性体―反強磁性体ナノグラニュラー薄 膜の磁性強磁性体と非磁性絶縁体からなるナノグラニュラ ー薄膜は組成によって超常磁性からハード、ソフト に至る様々な磁性を示す。本研究は絶縁体として反 強磁性体を用いることの効果をネール点TNの上下で の磁性の比較によって調べた。ここでは強磁性体と して金属鉄を、反強磁性体として2フッ化マンガン (MnF2、TN=67 K)を組み合わせた。試料は真空中(5 ×10-8 Torr以下)で金属鉄と MnF2を同時蒸着することにより作製した厚さ約300 nmの薄膜である。基板はカプトンまたはガラスを 用い、基板ホルダーは水冷した。磁化測定およびFe のメスバウワー効果の測定を行った。Fe50vol%の試料は室温で強磁性であり、HC=15Oe 程度の軟磁性を示した。X線回折によって求めたFe の粒径は6nm程度であった。温度を下げるとHCは MnF2のTN近傍で増大し、5Kで100Oeとなった。メスバウワーパラメ ータからFeはすべて金属の bcc Feの状態にあることが示され、酸化物等は検出 されなかった。77Kでは2番目と5番目の線の強度 が強く、磁化方向が面内にあることを示している。 これに対し4.2Kではこれらの線が弱まり、磁化方向 はほぼランダムとなることがわかった。TN以上では通常の軟磁性グラニュラー膜と同様に Fe粒子同士は交換相互作用により強磁性的に結合し 軟磁性を示す。この時形状異方性のため磁化方向は 面内となる。これに対しTN以下では、MnF2が反強 磁性になることにより、Feとの界面での交換結合に より交換異方性を生じる。その結果、磁化容易方向 がそれぞれのFe粒子についてランダムになり、磁化 方向もランダムになると考えられる。2―4.反応蒸着法によって作成したマグネタイト 薄膜の磁性と磁気抵抗マグネタイトFe3O4はハーフメタルでありフェル ミ面での電子は100%偏極していると考えられ、ス ピンエレクトロニクス素子用材料として期待されて いる。多結晶や粉末を固めた試料では負の磁気抵抗 が観測され、結晶粒界でのスピン偏極電子の散乱に よるものと考えられている。本研究ではマグネタイ トの多結晶薄膜の作成法として、酸素雰囲気中で鉄 を蒸着させる反応蒸着法について検討した。特に、 室温基板上での作成を試み、メスバウワー効果によ るキャラクタリゼーション、磁化曲線及び磁気抵抗 効果の測定を行った。真空槽に酸素を導入し、1×10-6～1×10-5 Torr の範囲で設定した一定の圧力を保つようにしながら 金属鉄を抵抗加熱によって蒸着した。製膜速度は約 0.5 Å/sec、膜厚は約3000Åとした。基板はガラス及 びカプトンを用い、基板ホルダーは水冷した。作成 した試料はX線回折により調べ、カプトン上に作成 したものについて透過メスバウワー効果を測定し た。更に磁化及び磁気抵抗の測定を行った。X線回折及びメスバウワー効果の結果、室温基板 上では、酸素圧力が5 ×10-6 Torr前後の狭い範囲で 純粋なマグネタイトが得られた。これより低い圧力 ではα-Fe及びNaCl構造のFeOが混在した。また酸素 圧力を高めると、X線回折では純粋なスピネル相が 見られたが線幅が増大し構造の乱れが示唆される。 メスバウワー効果の結果、5 ×10-6 Torrの酸素圧力 で作成した試料については室温ではほぼ2 :1の割 合の2成分からなるマグネタイトのスペクトルが観 測された。これに対し1×10-5Torrの酸素圧力で作 成した試料は、アイソマーシフトの値から、同じス ピネル構造のγ-Fe2O3ではなく、構造の乱れたマグ ネタイトと考えられる。磁気抵抗の変化率は5 × 10-6 Torrの酸素圧力で作成したもの(純粋なマグネ タイト)が6Tで-5.3%と本研究で作成したものの中 では最大であった。ナノキャラクタリゼーショングループの5年石川信博、大澤朋子、小島直美、木村仁美、熊本麻利子、小林里栄、坂田陽子、下条雅幸、鷹巣めぐみ、竹口雅樹、田中美代子、 溜池あかね、豊島聖美、中山佳子、長谷川明、林香緒里、古屋一夫、三石和貴、G.Xie、J.C.Rao、Z.Liu、R.Che、W.Jiuba、 W.Lu、 W.Zhang1.ナノキャラクタリゼーショングループ設置の目的ナノマテリアル研究所・ナノキャラクタリゼーシ ョングループは、電子顕微鏡を用いナノデバイス材 料のナノレベルの構造・組成等のナノキャラクタリ ゼーションの研究を推し進めるとともに、ナノデバ イス新材料の創製自体を電子顕微鏡技術を積極的に 用いることで行っていくために設置された。2.ナノキャラクタリゼーショングループの活動内容主な研究テーマは、「電子波デバイス材料の創 製・評価技術の開発に関する研究」であり、ナノ メ ートルサイズの電子ビーム照射を用いたナノパター ン加工へ向けて最適な創製方法を探索し、現状の電 子線露光技術による限界の微細加工能力を凌ぐナノ メートルレベルの回路パターン加工する技術、及び それによって形成されたナノ回路を高い分解能で評 価する技術を開発することである。主な研究成果は以下の通りである。2.1 電子励起脱離によるナノ構造作製電子励起脱離(ESD)分解と電子ビームスパッタ によるナノレベル加工を行った。前者はAl2O3やNiO などの金属酸化物をナノ メ ートルサイズ電子ビーム 照射による電子励起脱離(ESD)現象によって還元 できることが実験的に確かめられ、金属ナノ構造の 微細加工への可能性が見出された(図1)。図2電子線誘起蒸着の模式図いて行うことにより、これまでで最小のナノドット を位置を制御しつつ作成する技術の開発に成功し た。今回、使用する電子線の加速電圧を、従来広く 用いられていた20～30kVから200kVに大きく引き上 げ、かつ電界放射型電子銃を用い、非常に収束した 電子線を用いることで、これまでの限界を大きく下 回る5nm以下のサイズを実現した(図3)。シリコ ンの基板上に有機金属ガスの一つであるタングステ ンカルボニル(W(CO)6)を流し、200kVの電界放射 型電子銃から得られた電子線を収束し、基板の任意 の場所に照射する。電子線を走査することで基板上 に線幅10nm以下の任意の2次元的なパターンを描図1 電子励起脱離(ESD)分解によって形成されたAl2O3薄膜ナノホール2. 2電子線誘起蒸着によるナノ構造作製電子線誘起蒸着は、誘起金属などの原料ガスを試 料近傍に導入し、そこに収束した電子線を照射する ことによって照射された領域にのみ局所的な蒸着を 行いナノ構造を作製する手法である。我々は電子線 誘起蒸着法を加速電圧の高い透過型電子顕微鏡を用 図3 EBIDによって作製されたナノ構造の例(a)ナノドット作製例(b)得られたナノドットの高分 解能電子顕微鏡像。(c) 2次元および(d) 3次元構造 の作成例図4 超高真空電子顕微鏡中で作製された、ナノドッ トの高分解能電子顕微鏡像(a、b)と、大角度走査透過暗視野法像(c)くことができるほか、空中に3次元的に成長させる ことも可能であり、微小デバイスの配線や、量子機 能素子などの研究への応用が期待される。また、超高真空透過電子顕微鏡を用いて同様の実 験を行うことでより小さなサイズのナノ構造を作成 することができる。図4に得られたナノドットの高 分解能電子顕微鏡観察結果(a、b)と、大角度走査 透過暗視野法による観察結果(c)を示した。図中 の白い線が交差する位置に5sの照射時間でナノドットを作製した。通常の高分解能電子顕微鏡像では もはや観察することが困難なサイズであるが、原子 番号の違いにより強いコントラストが得られる大角 度走査透過暗視野法では、はっきりと重い元素が存 在することが確認できる。この技術により、触媒粒 子を1nmレベルで配置するなど、多くの可能性が 期待できる。また、これら微細構造の評価には、や はり高いレベルの電子顕微鏡技術が必要であり、こ れら双方を発展させていくことでより大きな成果が 期待できる。2. 3絶縁体基板上のナノ樹木状構造作製技術の 開発絶縁体基板上に電子線誘起蒸着と同様に原料ガス となる誘起金属ガスを導入し電子線を照射すること により、照射した領域のみ選択的にナノ樹木状構造 を作製することが出来る技術を開発した。絶縁体基 板に電子を照射することによってチャージアップが 起こり、それが真空へディスチャージする際に原料 ガスを分解し蒸着が起こると考えられる。得られる 樹木状構造の枝のサイズは5nm程度であり、触媒な どの担持材料として期待される。2. 4表面ナノ構造のその場観察技術の開発表面ナノ構造創製を制御するため、ナノ構造形成 過程をその場観察する技術の開発を行った。計算機 を用いた結像条件の検討と基板の超薄膜化法の考案 により最適な観察条件を見出し、TEMによる表面吸 着原子・クラスターの原子分解能での実時間観察に 世界で初めて成功した。図5 (a)には、約300°Cの Si (111)清浄表面へPdを微量蒸着したときに形成 された1x1格子とPdクラスターの高分解能像である。 Si基板からの{220}反射より高周波の回折を対物絞 りでカットし、最適なビーム収束角とフォーカス条 件を選ぶことにより観察することができた。図5 (b、c)は観察の最適条件を得るために行った像の 計算結果とその構造モデル(厚さ23.5nm)である。 Pdクラスターがトリプレットとして表れており、実 際の観察像はこれとよい一致を見せていることが分 かる。3.まとめ当初の目的通り、電子顕微鏡によるキャラクタリ ゼーションと、電子顕微鏡をナノ構造作製の道具と して用いた研究を行ってきた。今後もこれらを車の 両輪として、精力的に研究を行っていきたい。図5 Pd吸着したSi(111)-1x1上の、Pdクラスターの 高分解能電子顕微鏡観察像(a)と、Pdクラスター像の 計算結果(b)と用いた構造モデル(c)ナノシンセシスグループの5年板東義雄(2001.4～)、佐々木高義(2001.4～)、左右田龍太郎(2001.4～)、Dmitri Golberg (2001.4～)、三留正則、(2001.4～)、 海老名保男(2001.4～)、Chengchun Tan (2003.4～)、馬仁志(2004.4～)、Yihua Gao (2004.6～)、Junqing Hu (2004.8)、Chunyi Zhi (2004.8～)、Jinhua Zhan (2003.2～)、Longwei Yin (2003.5～)、Yubao Li (～2004.12)、Yingchun Zhu (～2004.7)、Fangfan Xu (～2001.8)、Zongwen Liu (～2004.7)、Baodan Liu (2004.3～)、寺尾剛(2004.3～)楊暁晶(2004.1～)、李亮(2004.9～)、刘 兆平(2004.9～)1.グループの目的「ナノシンセシス・アナリシスグループ」とは、 ナノチューブやナノシートなどの一次元あるいは二 次元の形状を有するナノスケール物質を探索・創製 し、その構造・機能の解明や発現を目指す研究グル ープである。特に、一次元のナノスケール物質では BNナノチューブなどカーボン以外の新規なナノチ ューブの探索・創製とその原子構造や特性の評価・ 解明を行う。また、ナノシートでは、半導体特性や イオン導電性を有するセラミックス材料をナノ粒子 化あるいはナノシート化し、新機能の発現を研究す る。さらに、自己組織化反応を活用して、ナノスケ ール物質を基板上に累積・接合させ、機能の集積・ 混成化技術を確立し、光エネルギー貯蔵素子機能を 有する新デバイス等の開発を目指す。2.活動経緯当該研究グループは運営交付金プロジェクトであ る「ナノスケール環境エネルギー物質」の推進グル ープとして、NIMS発足後の平成13年年度に新たに 発足した新研究グループである。物質研究所の「超 微細構造解析研究グループ」と同研究所の「ソフト 化学研究グループ」が合体してできた研究グループ である(研究者は物質研究所の各グループと併任し ている)。「ナノスケール環境エネルギー物質」プロ ジェクトのサブテーマである「ナノスケール物質」 を超微細構造研究グループ(板東フェローとD. Golberg)が、同サブテーマ「光材料」をソフト化 学研究グループ(佐々木ディレクター)がそれぞれ を担当している。グループ構成員は、電子顕微鏡やナノ物質合成、 ソフト化学を専門とするNIMS研究者の他に、特別 研究員(ポストドク)、企業等の外来研究員、筑波 大学連携大学院生などが当該グループに参画し、全 体で総数20名を超える研究グループとして、積極的 な研究活動を展開した。以下に、当該グループの活動により得られた主要 な研究成果をトピックス的に記述する。3.研究トピックス(1)ナノ温度計の発見GaNナノチューブ探索の失敗の副産物として、ナ ノ温度計を偶然に発見した(Nature、2002) 。多層 カーボンナノチューブ(直径約80nm)の中に液体 金属Gaが包含され、温度変化によりチューブ内の 液体体積が膨張・収縮することから、その温度が計測できる仕組みである。図1は電子顕微鏡を用いて 観察した結果である。約500℃までの高温変化に対 して、液体ガリウム柱の長さの増減は可逆的に変化 している様子がわかる。最近、-80℃までの低温で も同様の温度作用を示すことが見出され(PRL、 2004)、ナノ温度計が低温から高温までの広い温度 範囲で局所温度センサーとして利用できることを明 らかにした。図1 ナノ温度計とその温度作用の測定結果また、MgO、In2O3、SiO2などの酸化物ナノチュー ブを創製し、そのチューブ内にGaやInの液体金属を 注入することにより、カーボンナノチューブよりも 耐熱性に優れた酸化物ナノチューブを用いたナノ温 度計として利用できることを明らかにした。図2 単結晶MgOナノチューブの形状とナノ温度計(2)新規半導体ナノチューブの創製これまでにその存在が知られていない新規な半導 体ナノチューブの探索を行い、Si、GaN、ZnSなど の新規なナノチューブの合成に成功した。図3はSiナノチューブの合成方法と生成したSiナ ノチューブのTEM写真である。ZnSの一次元ナノワ イヤーをテンプレートした合成方法で、ZnS/Siの2 層からなるナノワイヤーを作製する(ナノワイヤーはともに単結晶)。その後、塩酸でZnS層を選択的に 溶解させることにより、直径50-100nmのSiナノチュ ーブができた。電子回折や格子像観察からナノチュ ーブは単結晶であることが確認された。図3 Siナノチューブの合成方法とそのTEM写真(3)新規なBNナノチューブの合成法の開発板東らはBNナノチューブの新規な合成法として 置換反応法(APL、1998)に開発してきたが、この 方法はカーボンの不純物を含む問題点があった。今 回、開発したCVD法は置換反応と異なり、出発原料 にカーボンを全く含まない合成系を用いることによ り、高純度なBNナノチューブの合成を行う方法で ある(図4)。本法の成功により、BNナノチューブ の高純度大量合成の道を開くことが可能となった。図4高純度BNナノチューブの合成方法(4)新規ナノシートの創製層状化合物に嵩高いゲストをインターカレーショ ンすることにより大きく膨潤させ、単層剥離させる というプロセス(図5)によって、酸化マンガンなど 様々な機能性ナノシートの合成に成功した。得られ たナノシートは厚み方向には原子面数枚より構成さ れるのに対して、横方向にはその千倍以上の拡がり を有する2次元単結晶であることを明らかにした。このような特異な構造を反映して、ナノシートは バルク状態とは大きく異なる特性、挙動を示すこと を明らかにした。酸化マンガンナノシートは波長 500nm以下の可視光に応答して光電流を生成するこ とを見いだした。遷移金属酸化物では通常d-d遷移 が強く局在化しているため電荷分離が効率的に起こ らず光電流の生成もほとんど報告されていないが、 ナノシートは分子レベルで薄いため生成した電子、 正孔が再結合する前に界面に移動し光電流として取 り出すことができたと考えられる。また酸化チタン ナノシートの超薄膜の加熱挙動を調べたところ、通 常のアナターゼへの転移温度(400℃前後)を大き く上回る800℃にならないとアナターゼが結晶化し ないこと、さらに生成したアナターゼナノ結晶がc 軸配向することなどを見いだした。この現象は極薄 2次元結晶であるナノシートからアナターゼ核が容 易に生成せず、原子の拡散が熱的に大きく活性化さ れる必要であるためであると解釈される。図5 層状物質の剥離ナノシート化の概念図(上)と 合成した機能性酸化物ナノシート(下)5年間の研究成果は原著論文、解説・総説、特許 などとして発表している。平成13年論文72報、総説13編、特許出願18件 平成14年論文94報、総説10編、特許出願36件 平成15年論文98報、総説13編、特許出願48件 平成16年論文109報、総説6編、特許出願46件 平成17年論文79報、総説20編、特許出願18件 (平成17年11月末現在)4 .研究の動向・展望5年間を振り返ると、新規なナノチューブやナノ シートの創製において、数多くの新物質を発見する ことができ、この分野で世界をリードする地位を NIMSが獲得することができた点は特筆に値する。 特に、本プロジェクトで発見した2つの研究成果、 即ちナノ温度計の発見とコバルト酸化物超伝導体の 発見は世界的な反響を得た。ナノチューブやナノシ ートはナノスケール物質の中で最も実用的に重要で あるだけなく、新物質探索の宝の山でもあり、基礎 研究においても重要である。今後も新規な合成法を 開発しながら、新ナノスケール物質の創製と機能発 現を解明し、その実用化を展開してゆくことが必要 である。ナノ電子光学材料グループ関口隆史、佐久間芳樹、深田直樹、袁暁利、陳君、高瀬雅美、姚永昭、平石敬三、福本麻紀(2005.12現在の在籍者)、三井正 (2004.4異動)、及川英俊(2005.4異動)、新妻潤一(2005.10異動)、小野寺恒信(2005.4異動)、謝栄国(2005.9異動)、新井保江 (2005.10異動)1.ナノ電子光学材料グループのあゆみ当グループは、平成15年1月、ナノファブリケー ショングループから独立して、 ナノマテリアル研究 所内に発足しました。主として従事するプロジェク トは、「電子・光極微応答の解明と半導体機能の発 現に関する研究(電子光極微応答)」であり、(1) ナノスケールの空間分解能を持つ光学機能評価法を 高度化し、(2)これらを用いて半導体ナノ構造の機 能評価を行い、材料の新機能を探索するというもの です。当初のプロジェクトメンバーは関口、三井であり、 カソードルミネッセンス(CL)近接場顕微鏡 (SNOM)の空間分解能と検出感度の向上と、評価 法の開発に取り組みました。平成14年に富士通から 佐久間研究員、東北大多元研より及川助教授(3年 間の人材交流プログラム)が加わり、半導体量子ド ットや有機・無機ハイブリッドナノ材料の作製を開 始しました。平成17年には筑波大より深田研究員が 加わり、Siナノワイヤーの作製と物性評価を行って います。居室と実験室は、千現地区の研究本館と精密計測 棟でしたが、ナノ ・生体材料棟の竣工に伴い、平成 16年4月に並木地区に移りました。平成14年秋から中国浙江大学の博士学生を受け入 れていましたが、平成16年より、筑波大学数理物質 科学研究科物質・材料工学専攻の研究室として、大 学院生を受け入れ、教育・研究指導を行っていま す。2.研究活動の経緯ナノスケールでの半導体発光機能評価電子光極微応答プロジェクトでは、励起を極微小 領域に絞ることで、ナノスケールで材料の光機能を 評価する手法の開発に取り組みました。電子線励起 のカソードルミネッセンス(CL)では、空間分解 能を向上させるために、低加速電圧での観察、光学 系の最適化、検出系の感度向上に取り組みました。 また、CLの生体材料への応用(地域新生コンソー シアム)簡易型CL検出装置の開発(マッチングフ ァンド)も行いました。さらに、CLの普及を目指 して、測定データの公開を始めました。近接場顕微鏡(SNOM)では、低温観察と偏光検 出に取り組みました。さらに、電子励起と光励起の 相違を検討しました。この研究から派生したものとして、超高真空低エ ネルギー電子顕微鏡を立ち上げ、低加速電子を用い た新しいナノ材料観察手法の開発にも取り組んでい ます。図1カソードルミネッセンス観察装置CLを用いた半導体材料・ナノ材料の光学機能評価CLによる光学機能材料の評価を推し進めました。 半導体、セラミックスなどの、バルク結晶からナノ 粒子まで、広範囲な材料の発光評価を行いました。 発光波長も、紫外から可視、赤外領域を網羅してい ます。[機構内]ZnO系材料では、物質研電子材料グル ープと共同で、バルク結晶中の欠陥の物性から、ナ ノ粒子の発光特性評価まで、多岐にわたる研究を行 いました。半導体量子ドット構造では、ナノデバイ スグループと共同で、GaAs/AlGaAs系の量子ドット からの発光の空間分解評価を行いました。さらに、 超微細グループと共同で、様々な半導体ナノワイヤ ーの発光機能の評価を行いました。[機構外]東北大、北大など国内の大学、独立行 政法人、企業の研究所から多くの試料を受け入れて、 ナノ材料からデバイスまでのCL評価を行いました。 海外でも中国、イタリア、ドイツの大学と共同研究 を行っています。図2に示すように、CL分光像から、材料の発光 分布がわかり、これを解析することで、結晶の完全 性や発光をもたらす不純物や欠陥の制御に関する指 針が得られます。図2 ZnO六角ナノチューブのCLスペクトルとSE像、CL分光像(室温)[理研張博士との共同研究]Si系材料の欠陥評価Si系材料では、これまで行ってきた拡張欠陥の研 究成果を基に、次世代の材料と期待されていた歪 Si/SiGe基板、貼り合せSiウエハ、さらには太陽電池 用多結晶Si材料の電気的光学的特性評価を行いまし た。歪Si/SiGeでは、電子線誘起電流(EBIC)法を使 って、非破壊で表面下数十nmにあるのミスフィッ ト転位の観察に成功しました。また、多結晶Siの結 晶粒界の電気特性を粒界性格や不純物汚染などと関 連付けて系統的に整理しました。図4 ペリレンナノ結晶のAFM、TEM、NSOM像およ び発光スペクトルのサイズ依存性量子暗号通信に向けた半導体量子ドットの作製量子暗号通信の核となる単一光子発生源を目指し て、高品質の半導体量子ドットの開発を行いました。 MOCVD技術を使って、光通信で重要な1.3～1.55μm 帯で極めて強い発光を示すInAs/InP量子ドットの成 長に成功しました。図3左上は、2段階キャップ法 によって形成した、量子ドット1個の断面の透過型 電子顕微鏡(TEM)写真です。InPとInAsの上下の ヘテロ接合界面が原子レベルで極めて平坦にできて います。また、右に示す発光(PL)ピークも、半 値幅が250μeV以下で、理想的な量子ドットです。こ の材料を使って、富士通・東大グループが通信波長 帯での単一光子の発生を世界で初めて確認しまし た。図3 InAs/InP量子ドットのTEM像、SEM像、および 顕微PLスペクトル 有機ナノ結晶の光学特性有機物のナノサイズ効果を明らかにするために、 ペリレン微結晶を合成し、その発光特性をNSOMに よって調べました。この微結晶では、図4に示すよ うに、結晶サイズが小さくなるにつれて、波長 550nm近傍に現れる自己束縛励起子の発光が短波長 側にシフトしていきます。この現象は、量子サイズ 効果では説明できません。我々は、有機微結晶特有 の格子緩和を考えて、この現象を説明しました。さらに、非線形光学素子を目指して、有機無機コ アシェル型ナノ結晶を作製し、プラズモン増強によ る非線形光学効果の向上に取り組みました。3.ナノ電子光学材料グループの成果成果発表原著論文(他機関との共同研究を含む)95篇解説・総説・著作 11篇プロシーディングス 34篇受賞:(1)2005年6月:日本顕微鏡学会論文賞「Striped Ag Films Grown at Low Temperature on Si (111) -4x1 In Chains 」、関口隆史、佐久間芳樹、武部敏彦。4.総括この5年を振り返ると、前半では、CL、NSONと いったナノスケールでの材料の機能評価法の高度化 に取り組み、これを用いて、機構内外の多くの研究 者との共同研究を推進しました。論文の過半数は、 このような共同研究の賜物であります。また、後半 は、我々自身で、半導体ナノ構造作製のための結晶 成長装置の立ち上げを行いました。こちらは、これ からの5年間でじっくりと成果を出していきたいと 思っております。共同研究でお世話になった多くの 方々に感謝するとともに、いろいろご支援していた だき、また有益な助言をくださった先生方に御礼申 し上げます。研究を推進してくださったポスドクや学生諸子に 感謝します。電子光極微応答プロジェクトでは、励起を極微小 領域に絞ることで、ナノスケールで材料の光機能を 評価する手法の開発に取り組みました。電子線励起 のカソードルミネッセンス(CL)では、加速電圧 を下げることでプローブサイズを小さくし、光学系 の最適化と検出器の感度向上で、ナノ材料の発光評 価を可能にしました。また、近接場顕微鏡(SNOM) では、試料冷却系を整備し、半導体材料の発光スペ クトル評価ができる装置を立ち上げました。さらに 偏光観察装置を製作しました。ナノマテリアル立体配置グループの活動の輝石梅澤直人、大毛利健治、岡崎紀明、佐々木洋征、高見誠一、知京豊裕、長田貴弘、中島清美、中山美穂、広瀬由美、新倉ちさと、 若山裕、柳生進一郎、山内康弘、吉武道子、Esther BARRENA、 Dmitrity KUKUZNYAK、 Yaroslava Lykhach、 Saminathapillai Madeswaran、 Slavomir Nemsak、 Williaam Thomas Nochole、Nam Nguyen、 Weijie Song1.ナノマテリアル立体配置グループの誕生平成13年の年末、物質・材料研究機構のナノマテ リアル研究所の誕生と同時にこのグループは誕生し た。それぞれのグループは特徴ある材料研究を行っ ているが共通するコンビナトリアル手法による材料 開発、計測技術、有機分子を使ったデバイス作製な どでお互いに連携を進めている。例えば、半導体材 料開発では材料探索と同時に仕事関数計測などの情 報が必要であるが、この連携もこのチーム内で可能 である。また、有機材料を開発する手法としてもコ ンビナトリアル手法は有効であることが示されてい る。それぞれの研究の背景が異なることがこのチー ム内での研究領域の融合を生み、新しい材料研究を 可能にしている。2.コンビナトリアル材料科学と先端産業への応用コンビナトリアル薄膜材料合成手法を用いて各種 電子材料の開発を進めている。コンビナトリアル合 成は有機材料や生体材料分野での研究を加速するた めに考えられた方法であるが、物質・材料研究機構 ではこれを無機材料、例えば酸化物材料や金属材料 開発に応用している。この研究プロジェクトは1999 年から旧無機材質研究所と金属材料技術研究所、そ れに東京工業大学応用セラミックス研究所との先導 研究、「コンビナトリアル材料科学の創製と先端産 業への展開(COMET):研究代表 鯉沼秀臣教授 (現:物質・材料研究機構理事)」としてスタートし た。その後、このプロジェクト研究は2年間、延長 され現在に至っている。物質・材料研究機構の薄膜 系コンビナトリアル合成装置と特徴は移動マスクと 基板回転機構を組み合わせて、すべての組成を含む 3元化合物を1回で自動合成する点にある。また、 この合成では2元領域と1元で膜厚を変化させた領 域を同時に作製することができ、材料開発を飛躍的 に向上させている。この手法を用いて当グループで はこれまでゲート酸化膜、金属ゲート材料探索、酸 化物系熱電材料探索などで実績をあげている。・ゲート酸化膜膜材料探索図1は平成13年～15年にかけて開発したHfO2系ゲ ート絶縁膜の探索例である。次世代集積回路に求め られるゲート酸化膜は高誘電率の非晶質材料が求め られている。そのために材料としてHfO2HfO2-Al2O3 にわずかにY2O3を入れることで良好な特性をもつゲ ート絶縁膜を開発することに成功している。また、 high-k材料中の炭素が負の電荷をもつことを系統的 にしめすことにも成功した。図1 コンビナトリアル作製装置概観、コンビナトリ アル試料写真とゲート絶縁膜特性(誘電率と構造)。丸 印が良好な特性を示した組成また、平成16年からは、コンビナトリアル手法を メタルゲート材料探索に適用し、Pt～Wの合金をつ かった仕事関数制御とメタルゲート/HfO2などの high-k材料界面の制御を行っている。3.極薄エピタキシャルアルミナ膜の成長制御―MIM電子放出源・MIMセンサー、環境用モデル 触媒をめざして―MIM構造を持つ電子放出源やセンサーへの応用、 環境用触媒のモデル系として、我々独自の極薄エピ タキシャルアルミナ膜成長法を用いて、極薄金属 膜―極薄アルミナ膜―Al合金構造の作製や金属ナノ クラスター―極薄アルミナ膜の研究を行っている。 超高真空中、X線光電子分光法(XPS)、オージェ電 子分光法(AES)、紫外線光電子分光法(UPS)、低 速電子線回折(LEED)、反射高速電子線回折 (RHEED)、ケルビンプロ ーブ法(KP)、走査型トン ネル電子顕微鏡法(STM)を用いて、in-situキャラ図2 多くの試料作製及び分析機能をもつin-situ表面分 析装置と低速電子回折像クタリゼーションを行いながら単結晶アルミナ膜の 成長制御をめざしている。4 .仕事関数のナノ計測・制御と分子吸着サイトの 制御ナノ メーターサイズの構造の仕事関数を走査型ト ンネル顕微鏡を用いて定量的に計測する手順を確立 しまた。イオンスパッタと自己組織化を組み合わせ て作製したナノ構造の再構成表面やナノピット表面 で、局所的仕事関数の関係を調べ、分子の吸着制御 をつかった新しいデバイスの開発を目指していま す。また、この計測手法は次世代集積回路のための メタルゲート材料探索と仕事関数制御でも使われて います。ナノ メーターサイズの構造の仕事関数を走査型ト ンネル顕微鏡を用いて定量的に計測する手順を確立 しました。イオンスパッタと自己組織化を組み合わせて作製 したナノ構造の再構成表面やナノピット表面で、局 所的仕事関数の関係を調べ、分子の吸着制御をつか った新しいデバイスの開発を目指しています。図3 ナノスケールの仕事関数計測を可能にする複合 装置5.有機分子デバイスの開発有機分子は単一分子・ナノ結晶・単一分子膜・分 子ワイヤ・薄膜など様々なナノ構造を形成し、さら にそれらに対応した多様な機能を発現する。ここで は単一分子を最小の構成ユニットとして用い、それ を自在に組立てるための技術開発と機能性探索に取 り組んでいる。特に分子 構造の設計技術と超高真 空技術を駆使して単一分 子の機能発現からナノ結 晶の成長機構解明、有機 デバイスへの応用展開な どを目指している。また、さまざまな製膜機能を複合化させることに より分子・金属・絶縁体などの異種材料を自在に積 層させるためにナトリアル合成法をつかってと信頼 性を兼ね備えた材料開発を進めている。 図4有機分子合成装置とC60を埋め込んだ機能性絶縁 膜この装置を使って有機分子を使った光メモリーな どの新デバイスを提案しています。6.有機分子の組織化と機能探索有機分子は単一分子・ナノ結晶・単一分子膜・分 子ワイヤ・薄膜など様々なナノ構造を形成し、さら にそれらに対応した多様な機能を発現する。ここで は単一分子を最小の構成ユニットとして用い、それ を自在に組立てるための技術開発と機能性探索に取 り組んでいる。特に分子構造の設計技術と超高真空 技術を駆使して単一分子の機能発現からナノ結晶の 成長機構解明、有機デバイスへの応用展開などを目 指している。図5 超高真空走査トンネル顕微鏡装置とその装置で 観察されたCu (111)面上の銅フタロシアニン結晶。 自己組織的に配列していることがわかる7.今後の抱負いま、電子材料は大きな転換点にあります。これ まで電子材料では使われなった材料がこれからの電 子デバイスに求められており、ますます、材料研究 での重要性が高まっている。当グループはこれらの 時代の要請に応えるべく、多様な材料開発をチーム で進めている。ナノアーキテクチャーグループの3年三木一司、宇佐美清章、大橋勝文「現鹿児島大学助教授」、郭新立「現東北大学ポスドク」、草野修治、坂本謙二、白木一郎、田 中雅代、寺田康彦「現筑波大学ポスドク」、董振超「現中国科学技術大学教授」、中尾秀信、成島哲也「現トリニティカレッジポ スドク」、日塔光一、八木修平、矢代航「現東京大学助手」1.グループ発足の目的・目指したものナノスケールの構造(ナノ構造)作製技術は確立 しつつありますが、その多くは単独構造に留まって おり、複数のナノ構造を組み合わせるまでには至っ てない。また、ナノ構造は極限的な寸法(10億分の 1メートル程度)のため、ナノ構造への信号の入出 力も困難である。当グループでは、ナノスケール独 特の科学技術を探索しながらナノ構造の機能階層化 (アーキテクチャー化)の研究を行っている。ナノ スケール科学は物理・化学・生物の融合分野である ため、それぞれの利点を活かしてクロスオーバさせ ながら新しい物質技術へと展開している。本グループでは、二つの異なるナノマテリアル研 究によって、微細化を指向するエレクトニクス分野 での貢献を考えている。一方向として、主としてナ ノサイエンス推進の立場から、(1)ナノスケール構 造の機能化とナノ構造へのアクセス手法の開発を目 指すこと。もう一つの研究方向として、(2)化学反 応に注目した微細加工技術の研究を推進することで す。以下、このコンセプトが分かる代表的な研究を 紹介する。2.グループの代表的な研究2―1.完全原子細線の研究:原子レベルの配線を 目指してナノメートル・スケールの構造体はナノ構造と一 般的に呼ばれるが、それらはその構造形態によって、 0次元の超微粒子、ドット、1次元のワイヤ、チュ ーブ、2次元のナノ薄膜、3次元のナノバルクと分 類できる。そのうち、ナノ微粒子は触媒や化粧品に 既に実用化されているが、現状では、ナノ構造体の 多くは応用に向けた探索的な研究開発の途上であ る。特に、1次元のナノ構造は、そのサイズ効果に 起因する優れた電気的特性(例えば、バリスティッ ク伝導、半導体的性質や金属的性質の発現など)の ため、ナノ ・エレクトロニクス素子(論理演算素子、 記憶素子など)への応用が期待されている。ナノ ・エレクトロニクス素子を作製するには、複 数のナノ構造を組み合わせた機能階層化(アーキテ クチャー化)が必須である。これまで作製されたナ ノ構造は、単独構造のものが多かったが、単独では 素子構造は実現できない。原子レベルの配線機能、 演算機能を付与するには、複数の構造を組み合わせ ていく事になる。原子細線の埋め込み技術は、その 実現のキー ・テクノロジーである。埋め込み技術を 用いると、細線構造を複雑に組み合わせたクロス構 造(配線構造)などを形成できたり、配線構造上に 他の微細構造を配置したりすることが可能になる。 だが、埋め込みプロセスの加熱処理によって、蒸発 や拡散が起こり、その構造が失われる問題がある。 ナノ構造の場合には、構造を形成している原子の数 が少ないため、構造から僅��かな原子が失われるだけ で、構造の破壊や消滅が容易に生じてしまう。つま り、構造を残した状態で埋め込む方が遥かに難しい。 こういった構造形成には新しい作製手法や概念が必 要である。ナノアーキテクチャーグループは、基板シリコン (001)表面上に自己組織化により成長したビスマス 原子細線の作製に成功している。走査型プローブ顕 微鏡像(図1)によると、原子レベルにおいて完全 性の高い、長さ0.4μm、幅1.5nmのビスマス原子細 線が存在している。図1 ビスマス原子細線の走査型トンネル顕微鏡像この上にシリコンをエピタキシャル成長させて、 ビスマス原子細線を埋め込む(敷設する)技術を開 発した。ビスマス原子のサイズはシリコン原子より 大きいため、ビスマス原子細線がシリコン結晶中に 埋め込まれると大きな歪を生じる。この歪によって、 シリコンのエピタキシャル成長中に、ビスマス原子 細線のビスマスが、成長中のシリコンと入れ替わる (表面偏析現象)。この現象のため、ビスマス原子細 線は破壊され、シリコン中に埋め込むことができな い。この問題を解決するために、一時的にサーファ クタントと呼ばれる第3のプロセス材料を利用し た。成長中だけ、原子細線とは違う構造のビスマス 原子層(サーファクタント)で表面を覆う。成長中、 この層が常に表面に存在することで、表面偏析を回 避することができ、ビスマス原子細線構造をシリコ ン中に埋め込むことが可能となる。最終的に表面に 残留したサーファクタント材料は、埋め込みプロセ ス終了後、エッチング薬品により除去することがで きる。図2 原子細線の構造評価方法。(a)実験の配置図。 (b)入射X線が原子細線と直交した場合のX線回折図形。 図中に示した直線的な回折図形が細線構造を示す結晶中に埋め込まれた構造の観察は、表面のよう に直接観察できないため、一般的に難しい。構造を 破壊して電子顕微鏡で観察するなどの手法が良く用 いられるが、試料作製時に微細な構造が破壊される 可能性も高く、非破壊法でその構造を解明されるこ とが理想的である。非破壊法の代表である、これま でに確立されたX線技術と高輝度シンクロトロン放 射光とを組み合わせても、今回対象としているよう なナノ構造の構造評価は至難の業である。今迄��の手 法では、1モノレイヤー(原子層1枚分)の約1/ 10とビスマス原子細線の体積が微量であり、信号強 度が微弱すぎて構造を評価できない。評価は、(財) 高輝度光科学研究センターの坂田修身主幹研究員ら が、逆格子イメージング法と呼ばれるX線回折の方 法を開発して初めて可能となった。シリコン内部に 埋め込まれたビスマス原子は非常に微量であるた め、ビスマス細線からの回折X線は微弱である。そ れにもかかわらず構造の解析を行うには広い立体角 にわたって回折データの収集が必要となる。これら の要求を満たすべく、強力な放射光利用と組み合わ せて、迅速かつ検出感度の高い回折データの収集が 可能である2次元検出器(イメージングプレート) を利用した測定手法(逆格子イメージング法)が開 発された。これにより、ビスマス原子細線の原子数 は、原子層1枚分の約1/10程度と極めて微量である にもかかわらず十分な回折信号を得ることができ た。図2は高エネルギー単色X線を試料表面にすれ すれの角度で入射(図2 (a);測定配置)し、2 次元検出器によって記録されたビスマス原子細線構 造からの回折X線イメージ(図2 (b);イメージ の結果の例)を示す。図2 (b)の左図は、右図の 四角の枠内の拡大図を表している。左図の1/2、k=0、 -1/2と数字で示された下にある縦線(回折図形)を 観察できたことが、ビスマス原子が細線構造を保持 したまま埋め込まれている証となる。これらの(回 折)線は、埋め込まれたビスマス原子細線中のビス マス原子のペア構造(図3において後述)から生じ る特徴的な回折図形である。これらの(回折)線を 観察できたことから、予想通りに原子細線の埋め込 みに成功していることが明らかになった。ナノ構造の作製には、作製手法の開拓と適切なナ ノ計測の採用に加えて、計算機科学を駆使したナノ シミュレーション技術の利用が必要である。構造作 製中に起きている現象は複雑である。ナノ計測で判 明した構造情報を基にして、実際に得られているナ ノ構造をモデル化することにより、一貫した研究・ 材料開発が遂行できる。若手国際研究拠点フェロー のDavid Bowler博士(現所属はロンドン大学)が、 X線回折法で得られた構造情報を基にして、最適な 原子構造モデルを求めた。構造をモデル化する計算 機科学手法(ナノシミュレーション)として、密度 汎関数法と呼ばれる方法を用いた結果、明らかにな った埋め込み前と埋め込み後の構造モデルを図3の 上下に示す。実験的に得られた重要な構造知見は、 ビスマス原子細線の一次元構造が維持されているこ と、ビスマス原子がペア構造を維持していることで ある。ナノシミュレーションによると、ビスマス原 子は原子一個でシリコン結晶中に構造をつくること図3シリコン結晶上に形成されたビスマス細線構造 (a)とシリコン内部に敷設されたビスマス細線構造(b)ができるが、ビスマスペア構造を壊すと、ビスマス 原子をペア構造から引き抜くエネルギー損失に加え て、引き抜かれたビスマス原子をシリコン中に置換 配置するエネルギー損失も負う。この2重の損失は 非常に大きいため、ペア構造は保持されるべきであ る。単独ビスマス原子構造とペアビスマス原子構造 の存在比率をナノシミュレーションによって求める と、ビスマス原子細線を埋め込むプロセスの温度 (400度)では1:40,000になる。これは、実験的に 観測されたペア原子構造が理論的にも安定であるこ とを示している。この研究成果は、ナノ構造のエレクトロニクスへ の実用化に欠かせない、機能階層化(アーキテクチ ャー化)ナノ構造の実現を大きく前進させるものと 期待される。原子細線を結晶中に埋め込む技術が実 証できたことで、結晶内にクロス構造(配線構造) を実現する夢が近づいた。ビスマス原子細線によう に自己組織的に形成される材料を使って、より高次 の構造を指向する研究が、今後盛んになると予想さ れる。2―2.有機分子の配向制御:アゾベンゼンの光異 性化反応に注目した微細加工技術機能性有機分子を配向させるために用いる光配向 膜の研究を行った。本研究で注目した光配向膜材料 はアゾベンゼンを骨格構造に含むポリアミック酸 (Azo-PAA)である。アゾベンゼンは紫外・可視光 照射下でシスートランス光異性化反応を繰り返し、 電界強度最小の方向に向かってその分子軸を回転す る。Azo-PAAはフレキシブルな骨格構造を有するた め、アゾベンゼンの光誘起配向変化を利用してAzo- PAA骨格構造の配向を制御することができる。Azo- PAA骨格構造の配向を光制御したあと熱イミド化す ることにより、その後の光照射に対して応答しない ポリイミド(Azo-PI)配向膜が得られる。これはイ ミド化により骨格構造のフレキシビリティーがなく なることに起因する。ポリイミドは本来、化学的、 熱的に安定な高分子であるから、上述した方法によ り極めて安定な配向膜が得られる。はじめに光照射によるAzo-PAAおよびAzo-PI骨格 構造の配向制御性について調べた。厚さ22nmの Azo-PAA膜に波長365-400nmの直線偏光を照射し、 誘起された膜の面内異方性を測定した。その結果を 図4に示す。Azo-PAA膜の面内異方性が光の照射量 とともに徐々に増加することがわかる。しかし、光 照射だけで誘起される面内分子配向秩序度は315 J/cm2で0.14 (二色比1.32に対応)と、決して大きい ものではない。ところが、 その膜を熱イミド化して図4 直線偏光照射によって誘起された(a) Azo-PAA膜と(b) Azo-PI膜の面内分子配向秩序度 得られたAzo-PI膜の異方性は非常に大きいことがわ かる。熱イミド化過程で分子配向秩序の増大が起こ り、その結果として大きな分子配向の異方性を有す るAzo-PI光配向膜が得られることがわかった。液晶ディスプレイの配向膜として、現在ラビング されたポリイミド膜が広く用いられている。しかし、 機械的な接触工程に由来する様々な欠点が指摘され ており、非接触な配向膜作製技術の開発が望まれて いる。Azo-PI光配向膜は、ラビングされたポリイミ ド膜に代わる液晶ディスプレイ用配向膜として有望 である。そこで、Azo-PI光配向膜上の液晶(低)分 子の配向特性を調べた。その結果、Azo-PI光配向膜 を用いることによって、液晶ディスプレイのコント ラスト比が向上することを見いだした。また、斜め から無偏光の光を照射することにより、基板面に対 する液晶分子の平均傾斜角(プレチルト角)を制御 することに成功した。ポリイミド膜上の液晶分子の配向機構を明らかに するためにAzo-PI光配向膜上の液晶単分子層の分子 配向を調べた。その結果、液晶分子の長軸の配向が Azo-PI骨格構造の配向と等しいことがわかった。こ れは液晶単分子層の分子配向がポリイミド分子との 短距離相互作用によって決定されていることを示し ている。また、液晶性を示さない分子の場合でも、 Azo-PI光配向膜によって異方的な単分子層の分子配 向を誘起できることを明らかにした。ポリフルオレン系の高分子は一次元π共役高分子 であり、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光 材料、有機電界効果トランジスタ素子の半導体層材 料として注目されている。ポリフルオレンは液晶性 を示すため、その性質を利用して高配向のポリフル オレン薄膜を作製することができる。我々はAzo-PI 光配向膜をポリフルオレン系高分子材料の配向膜と して用いた。その結果、フォトルミネッセンス (PL)の偏光比で30を示すポリフルオレン結晶層、 PL偏光比11を示すポリフルオレンガラス状層を実 現した(図5)。現在、これらの配向有機膜を用いた電界効果トラ ンジスタの研究に着手している。図5 Azo-PI光配向膜上に作製した高配向ポリフルオ レン層の偏光PLスペクトル:(a)結晶層、(b)ガラス 状層。⊥、∥はそれぞれ配向処理に用いた光の偏光方向 に対して垂直、平行を意味する3.装置開発:アトムテスターの高度化ナノアーキテクチャー構築の要素技術として行っ ているナノ計測装置の研究開発について述べる。ナ ノスケールの素子の電気的特性の測定には、絶縁基 板を用いる必要がある。これは基板中を流れるリー ク電流を殆ど皆無にしないと、ナノ構造である原子 配線網中に流れる極微小電流の検出は不可能だから である。このため、原子間力顕微鏡を基盤技術に用 いた電気特性測定用のプローバー装置の開発が必要 になる。ナノスケールでの機能性部品、言い換える ならば、わずかな数の原子(アトム)から構成され る機能性部品やその配線網の信号の入出力評価装置 (テスター)として、我々は、「アトムテスター」の 開発(特許取得済み)に取り組んできた。アトムテスターは、4つの大きな特徴を持つ。(1) 液体ヘリウム温度で稼動する、(2) 2プローブAFM 装置であること、(3)光学系を用いない力検出機構 「ピエゾ抵抗効果型AFM」を採用していること(既 に特許化済)、(4) 2プローブの相対位置補正機能 (特許申請中)を持つこと、である。我々のピエゾ抵抗効果型AFMは、既に原子分解能 を達成している。グラファイト表面の観察例を図6 に示す。従来のAFMの変位検出(力検出)機構に広 く採用されている光てこ方式などでは、レーザーが 一般的に用いられている。光源であるレーザー光が 測定対象に照射されると、電気伝導測定における光 起電力の影響など、物性に影響を与える。こういっ た問題点が我々の装置には無い。ピエゾ抵抗効果型AFMでは、カンチレバー上に組 み込まれたピエゾ抵抗の抵抗値が、カンチレバーの 変位に応じて変化する。このときの抵抗変化率Δ R/Rをホイーストンブリッジ回路などで検出し、そ の値に比例した量として実際の変位が分かる。なお、 このときの比例定数は、ピエゾ抵抗効果型カンチレ バーでの感度((ΔR/R) /nm)と呼ばれる。我々は、高 感度化のためにプリアンプの開発を行い、実際に本 プリアンプを用いながら、液体ヘリウム温度(5K) にて、接触モードによるAFM動作確認を行った。さ らには、非接触モードにて、同じく 5Kにて原子分 解能AFM観察を行った。ピエゾ抵抗効果型AFMを 用いた極低温での原子分解能観察に成功したのは、 我々の知る限り、本成果が世界で初めてである。試作したプリアンプの感度は、抵抗変化dR/R = 1x10-5に対して、4Vバイアス電圧、ゲイン ×11,000、図6 原子分解能AFM像の例 カットオフ1kHz程度で、110mVの出力(ノイズレ ベル±5mV未満)である。±5mVのノイズレベルは 元信号にして±0.5μV未満であり、ノイズレベルが 極めて低いことが分かる。4.将来的なナノアーキテクチャーに向けて:バイ オインターフェースの研究バイオ、ケミストリー、シリコンテクノロジーの 融合は、ナノスケール領域で始めて可能となり、テ クノロジーの成功の可否を決定する大きな鍵であ る。未踏の一つはバイオ・ナノエレクトロニクスで、 21世紀の重要な科学技術分野の一つとみなされてい るが、高度に発達した半導体集積回路技術と生体化 学反応系との融合(集積化)は殆ど実現していない。 本グループでは、将来的なナノアーキテクチャーの ために、バイオインターフェースの研究を開始して いる。特に、バイオ機能構造による信号変換系を利 用したバイオリソグラフィの実現や細胞内観察用の 計測・操作装置を開発しようとしている。将来的に は、本手法を利用したデバイスの作製、さらにはバ イオ演算型コンピュータ作製手法へとつなげること を夢見ている。バイオリソグラフィの1手法として、基板上に伸 張固定化されたDNAを用いる手法を試みている。 DNAはそれ自身がナノスケールの配線として魅力的 な材料であるが、機能性ナノ材料(微粒子、たんぱ く質、有機機能材料)を固定化するためのテンプレ ートとしても有効である。DNAと適当な強さで相互 作用する高分子でコートされた基板上にDNA水溶液 を滴下後、吸い取るという簡便な方法で、DNAを気 液界面移動方向に伸張固定することができる。現在、 基板として用いる高分子膜の分子配向を光で制御、 パターン化することによって、伸張固定されるDNA の密度制御、パターン化を試みている。バイオインターフェースの研究を推進するにあた り、平成16年度には、バイオテクノロジーの専門家 と共に、組織的な「生命分子基盤計算機に関する企 画調査」の研究会を行った。両会議とも、科研費基 盤研究C企画調査(三木一司代表)の予算による開 催である。開催会合名「第一回生命分子基盤計算機研究会」:オープンワー クショップ「バイオとナノテクノロジーの融合研究」 と称して平成16年度10月7 ― 8日に京都で開催。「第二回生命分子基盤計算機研究会」:「有機・バ イオ超分子研究意見交換会議」と称して平成17年度 1月28―29日に強羅で開催。上記研究会の討議等を基にして、次期中期計画で は、超分子を基盤技術に用いてバイオインターフェ ースを構築する研究を推進していく。ナノ量子輸送グループの研究活動宇治進也、寺嶋太一、鈴木博之、矢ヶ部太郎、山口尚秀、榎本健悟、鴻池貴子、西村光佳、室町洋美1.グループの設立、目的ナノ量子輸送グループは、ナノメートルレベルで 発現する量子輸送現象に関する研究を行うことを目 的として、平成15年2月に設立されました。試料のサイズが、その「物性を決めている特徴的 な長さ」と同程度になると、試料の形状に起因する 新規の量子輸送現象が発現することが期待されます (サイズ効果)。我々のグループでは、超伝導体や磁 性体試料を微細加工し、量子現象が顕著に現れやす い低温、磁場中で試料の電気的、磁気的特性を測定 し、サイズ効果に起因する新規の量子現象発見を目 指してきました。さらに有機物や、CeやU等を含む 強相関電子系においても、新規量子現象を発見して きました。2.研究装置サイズ効果が発現するような微細な加工を行うた めには、多くの方法がありますが、当グループでは 収束イオンビーム装置や電子線リソグラフィー装置 を導入しました(図1)。図1 収束イオンビーム装置(上)とや電子線リソグ ラフィー装置(下)この装置を駆使することで、サブミクロンサイズ での試料の微細加工を行ってきました(図2)。ま た、量子現象は、温度の揺らぎが十分に抑制される 極低温環境で顕著となるため、量子輸送現象の観測 には、希釈冷凍機等の極低温発生装置が必要になり ます。さらに量子状態を制御するために、磁場を試 料に印加する必要があります。そこで強磁場研究セ ンター内に、低温物性マグネットを設置し、極低温 強磁場中での精密測定を可能としました。図2 収束イオンビーム装置によるNbSe3細線試料の微 細加工の例(左)と電子線リソグラフィー装置を用い て作製されたアルミニウムの超伝導量子ディスク(右)3.主な活動と研究トピックス1)メゾスコピック超伝導試料が超伝導体であれば、その特徴的な長さは超 伝導コヒーレンス長や磁場侵入長です。典型的な金 属超伝導体であるアルミニウムの場合には、超伝導 コヒーレンス長や磁場侵入長は300nm程度になるの で、試料サイズをそのサイズ程度まで小さくするこ とで、バルク試料では決して現れない量子現象が発現します。図3 Al量子ディスクの抵抗Rの様々な温度での磁場(H)変化図2 (右)に示すように、シリコン基板上のアル ミニウムの微細構造体(量子ディスクと細い電極4 本)では、発現する超伝導は試料サイズに大きく依 存して、ディスク部分と電極部分で臨界磁場や臨界 電流が大きく異なってしまいます。したがって磁場 や電流を調節することで、超伝導状態をディスク部 分と細線部分でほぼ別々に制御することができま す。これを利用して、異種金属を用いず、単体で常 伝導―超伝導―常伝導(N/S/N)接合を作ることに 成功しました。図3にはAl量子ディスクの抵抗の磁 場変化を様々な温度で測定したものです。低磁場で 最初に超伝導状態が磁場で壊された後に、特徴的な抵抗の極大を示します。さらに0.045Kの極低温では、 440G付近で超伝導状態が再び発現する様子(再起 超伝導現象)が出現することを初めて明らかにしま した。抵抗の極大は、電極とディスク結合界面で温 度の揺らぎにより不安定なS/N界面が生じ、そこで 準粒子の散乱が激しくなることで説明できます。電 極の超伝導が壊れる時に、その超伝導干渉長が発散 します。その時にS/N/S結合での近接効果が増大し、 再帰超伝導が発現すると考えられます。この発見は 単一金属量子デバイスへの提案に繋がりました。2)磁場誘起超伝導現象最近の有機合成技術の発展により、通常の金属・ 合金なみの高い電気伝導性を有し、さまざまな構造 や組成を持つ有機物(有機伝導体)が合成されてき ています。有機伝導体には通常の金属・合金では見 られない興味ある電気的、磁気的性質を示すものが 多く、その性質を利用した新規材料としての実用化 への道が模索されています。これらの性質は有機伝 導体の特異な電子状態に起因するものと考えられて おり、そのメカニズムの解明が期待されています。 我々のグループでは、結晶中に大きな磁気モーメン トをもつ有機伝導体に注目し、その電気的、磁気的 性質を調べてきました。一般的に「超伝導状態」は、 磁場を印加することでエネルギー的に不安定にな り、通常の「金属状態」に戻ってしまいます。とこ ろが特殊な有機伝導体において、通常では考えられ ない現象、「磁場によって絶縁体から超伝導体へと 転移する現象」が起こることを発見しました。図4 λ-(BETS)2FexGa1-xCl4(x=0.45)の抵抗の磁場変化。 磁場により、絶縁体が超伝導体に転移するこの特異な現象は、λ-(BETS)2FexGa1-xCl4という有 機物でx=0.45の組成で出現します。この有機物は、 2次元BETS (ビスエチレンジチオテトラセレナフ ルバレン)有機分子配列とFeCl4分子配列が交互に積 み重なった層状構造を持っています。伝導電子は BETS分子層にあり、この面内で電気が非常に流れ やすく、この面に垂直な方向では電気は流れにくい 構造となっています。図4に示すように、1.6Kとい う低温では、4T以下の低磁場中では抵抗は非常に 大きく、絶縁体状態ですが、約4Tの磁場で抵抗が 急激にゼロまで減少するという現象が発見されまし た。これが磁場によって誘起される「絶縁体―超伝 導転移」です。このメカニズムを利用して、非常に 強い磁場中でも超伝導状態が安定に存在するような 材料の開発や、外部磁場によって精密に制御できる デバイスの新規動作原理への提案を行うことができ ました。3)高圧化の量子振動測定当機構で開発したNiCrAl合金を使用した高圧容器 を開発し、世界的にも例のなかった約2GPaの高圧 下でのドハース・ファンアルフェン(dHvA)効果 測定に成功しました。dHvA効果とは、超低温、強 磁場中で金属の磁化が磁場の逆数に対し周期的に振 動する現象で、この振動を解析することにより電子 状態の微視的な情報を知ることができます。dHvA 効果を測定した物質は、強相関電子系のひとつであ るUGe2で、大気圧から1.6GPaの臨界圧力までは強磁 性体であり、これより高圧では常磁性となります。 興味深いことに、依然強磁性である約1～1.6GPaの 圧力範囲で超伝導が発現します。一般的に超伝導と強磁性は相容れないものです。 強磁性体の作る磁場が超伝導の妨げとなるからで す。なぜ、強磁性と超伝導とが共存するのかという 問題に答えるため、臨界圧力を越える高圧まで dHvA効果を測定しました。図5が結果です。挿入図に示したのが、大気圧 (0.1MPa)と臨界圧力以上の高圧(1.76GPa)での dHvA振動です。それぞれの振動に含まれる周波数 成分を知るためにフーリエ変換を行った結果がメイ ンパネルです。一つ一つのピークが異なる性質の電 子に対応します。臨界圧力を前後で電子の性質が大 きく変わることがわかります。さらに、電子の見か けの重さ(有効質量)が超伝導の発現する圧力域で 大きく変わることもわかりました。この研究により、 磁性超伝導体研究に大きな貢献ができました。図5強相関系UGe2での量子振動現象(挿入図)とフ ーリエ変換スペクトル原子エレクトロニクスグループの活動長谷川剛、飯島陽子、植村隆文、海老原知子、大川祐司、桑原皓二、櫻井亮、清水順也、高城大輔、田村克己、田村拓郎、鶴岡徹、寺部一弥、根岸良太、原眞一、細木茂行、松重涼子、松嶋精一、マニシャクンドゥ、三澤豊、梁長浩1.グループの概要原子エレクトロニクスグループは、原子や分子の ダイナミクスに関連した基礎物理現象の解明とその デバイス応用を目指して、平成15年1月に、ナノマ テリアル研究所のナノ電気計測グループより分離独 立して設立された。当グループでは、特に、固体電 気化学反応を利用した原子スイッチの研究、原子領 域からの発光現象の解明とその応用に関する研究、 有機分子の重合反応を利用した機能素子開発などに 力を入れてきた。また、これらの研究を推進するた めに必要な装置の開発も併せて行ってきた。一方、平成15年度末より整備を開始した機構の共 通設備施設であるナノ量子ファウンドリーの運営に ついても、当該施設を運営する正式な組織が設立さ れるまでの間、原子エレクトロニクスグループにて、 その運営を行ってきた。以下では、主な研究内容並 びに業務内容に付き、その概略を紹介する。2 .主な研究成果固体電気化学反応を利用した原子スイッチの研究 では、実用化に不可欠な集積化技術の開発と、単一 原子(イオン)の輸送制御を目指した新たなデバイ ス開発に関する基礎研究を進めてきた。その結果、 原子スイッチの特徴である電子・イオン混合伝導体 電極と金属電極間の1ナノメートルのギャップの作 製技術を確立し、集積化を実現した。この成果は、 英国科学雑誌「ネイチャー」(平成17年1月6日発 行)に掲載されたほか、朝日、読売、毎日、産経、 日経などの新聞でも紹介された。図1に、集積化さ れた原子スイッチの電子顕微鏡写真と原子スイッチ の模式図を示す。原子スイッチには、単にサイズが 小さく低消費電力化が可能というだけでなく、不揮 発性や低オン抵抗、学習機能などの特徴がある。図1 原子スイッチの模式図とその電子顕微鏡写真これらの特徴を利用すると、半導体トランジスタ を使ってでは実現不可能な、新しい領域の製品開発 も可能になる。その実現を目指した企業との共同研 究にも着手した。同共同研究は、文科省の産官学連 携プロジェクト(「原子スイッチを用いた次世代プ ログラマブル論理演算デバイスの開発」(代表者: 青野正和ナノマテリアル研究所所長))としても採 択され、実用化に成功したナノデバイスの代表例の ひとつとすべく研究を進めているところである。単一原子(イオン)輸送の制御を目指した研究で は、電子・イオン混合伝導体ナノワイヤーやナノア イランドの形成とその集積化技術の開発を進めてき た。その結果、直径20ナノメートルの電子・イオン 混合伝導体ナノワイヤーの形成に初めて成功するな ど、様々な要素技術の開発に成功した。その一例と して、図2に作製したナノワイヤーの電子顕微鏡写 真を示す。作製したナノワイヤーによるスイッチン図2 硫化銀と銀のヘテロ接合を持つナノワイヤー グ現象の観測にも成功しており、 これらは、新しい 概念で動作するナノデバイス開発に繋がることが期 待される成果である。原子領域からの発光現象の解明とその応用に関す る研究では、独自に開発を進めてきたSTM誘起発光 法を用いて、電子軌道対称性の検出に成功した(図 3)。これにより、双極子遷移によって光が生成さ れること、トンネルギャップでの光生成過程におい て光学選択則が成立していることを実証することが できた。この他、スピン分布やスピンダイナミクス をナノスケールの空間分解能で検出することなどに 成功した。図3 光生成過程における光学選択則(a)、(b)とそ れを実証した実験結果(c)、(d)有機分子の重合反応を利用した機能素子開発に関 する研究では、独自に開発したSTMによる連鎖重合 反応を局所的に誘起する方法を用いて、金属ナノア イランドに複数の導電性ナノワイヤーを接続するこ とに成功した。図4に、その模式図と実際に作製し たナノ構造のSTM像を示す。この構造は、単一電子 トランジスタとして機能することが期待できること から、多探針プローブ顕微鏡などを用いて、その特 性評価を行うべく、研究を進めている。この他、多 層分子膜の各層内に制御して導電性ナノワイヤーを 形成する技術の開発などを進めている。図4 単一電子トランジスタとしての動作が期待でき るナノ構造独創性の高い研究を進めるためには、オリジナル な装置の開発も欠かせない。例えば、開発した材料 やナノ構造の機能評価、それらをデバイス構造化し た際の動作特性を評価は、市販の装置では行えない 場合が多い。このため、走査型プローブ顕微鏡技術 をベースにした独自の装置開発を進めてきた。図5に、ナノ電気計測グループの協力を得ながら 開発した4探針原子間力顕微鏡の写真を示す。本装 置は、原子スイッチのスイッチング現象の実時間観 察に用いられるなど、当グループの研究を進める上 で、不可欠、かつ強力なツールとなっている。この 他、近接場光による表面ナノ構造の形態と光学特性 の制御を行うための走査型近接場プローブ顕微鏡の 開発などを進めてきた。図5 4探針原子間力顕微鏡3.ナノ量子ファウンドリー機構外の従来型ファウンドリーは持ち込める材料 に制限が多いことから、機構内で研究開発されてい る多種・多様な材料については、微細加工や集積化 が思うように出来ないという問題があった。ナノ量 子ファウンドリーは、この状況を打開するため、平 成15年度末より、ナノマテリアル研究所が中心とな り整備を開始したものである。広さ約100平方メー トル、クラス1000のクリーンルーム内に、電子線描 画装置、フォトリソグラフィー関連装置などのパタ ーン形成装置、製膜やエッチング装置などを備え他 結果、一連の微細加工プロセスがオンサイトで行え るようになった。現在では、毎月の延べ利用者数が 200名に達するなど、機構内の研究者に広く使われ る共通施設となっている。正式な運営組織ができる までの間、原子エレクトロニクスグループにてその 運営を代行してきたが、平成18年度より、その運営 は正式な組織に引き継がれる。4.次期中期計画に向けて原子エレクトロニクスグループでは、新しい概念 で動作するデバイスやコンピューターの開発を目指 して研究を進めてきた。そのために、従来の半導体 デバイスとは動作原理の異なるデバイス開発を目指 して、基礎物理現象の探索から研究を進めてきた。 その結果、原子スイッチの実用化に目途を付けるな どの成果を上げることができた。今後も、基礎研究 と応用研究のバランスを取りながら精力的に研究を 進めて行く所存である。これにより、半導体エレク トロニクスにも匹敵しうる原子エレクトロニクスの 世界を確立し、次世代高度情報化社会の実現に寄与 していきたい。関係各位のご理解とご支援をお願い する次第である。ナノ量子エレクトロニクスグループの5年羽多野毅、有沢俊一、石井明、高野義彦、王華兵「ICYS」、金相宰「現国立済州大学、2002.11退職」、井口家成、池田省三 「2003.3退職」、猪股邦宏「現理化学研究所、2005.3退職」、浦山慎也、大森昌「現NECソフトウェア、2003.3退職」、川江健「現金 沢大学、2005.3退職」、河上真一「現凸版印刷、2004.3退職」、金鮮美、宿彦京「現北京科学技術大学、2003.3退職」、周思海「現 Wollongong大学、2005.8退職」、徐永源「ICYS」、立木昌、長尾雅則、福代明広「現NTTソフトウェア、2002.3退職」、宮城茂彦、 山下努、尹炅成1.新原理超伝導エレクトロニクスの開発を目指して高温超伝導体の結晶構造に1.5ナノ メ ートル周期 で内在する超伝導体層/絶縁体層/超伝導体層のジ ョセフソン素子構造(固有ジョセフソン接合)を利 用したテラヘルツ周波数帯域の超高周波素子開発を 行う。当機構の薄膜・単結晶合成技術と微細加工技 術を原資として、現行の超伝導デバイス技術を Quality-jumpさせうるポテンシャルをもつ固有ジョ セフソン効果のテラヘルツ応用を戦略目標として選 択した。テラヘルツ帯発振素子開発という明確な出 口目標を設定し、基礎から応用に渡る総合的な研究 開発を集中して行う。固有ジョセフソン接合は、単 に接合列の方向だけでなく、 3次元にデバイス構造 が集積しており、さらにその構造が単結晶の並進対 称性により保証されている理想的なナノ集積デバイ スである。さらに、超伝導の超高速性と超低消費電 力性を備えていることから(それぞれ半導体に較べ て3桁)、ポストシリコンの有力候補として育成し ていく必要がある。超伝導現象一般は巨視的量子現象として、さらに 長期的な視点でナノ・量子サイエンスの主役に成長 していく重要研究領域である。新超伝導体物質の高 品質な単結晶・薄膜合成技術の開発を行うととも に、基礎物性を解き明かす中で、新現象・新機能探 索を行う。2.グループの活動経緯2.1.テラヘツル発振素子ビスマス系高温超伝導体(Bi-2212)単結晶ウイ スカーを用いて、収束イオンビーム法による微細加 工により固有ジョセフソン接合の加工・低温高磁場 測定・高周波測定環境を整備し研究を開始した。図1 収束イオンビーム法によりBi-2212単結晶ウイスカーに微細加工を施した固有ジョセフソン接合当初は、図2のように結晶に内在する接合層に平 行に磁場を印加し、量子化されたジョセフソン磁束 が接合間を流れる電流によるローレンツ力で接合面 を運動(フロー)し、ジョセフソンプラズマを励起 するという理論的予測に基づいて、テラヘルツ発振 の条件を探った。図2 量子化された磁束が接合間を流れる電流による ローレンツ力で接合面を運動(フロー)し、ジョセフ ソンプラズマを励起する概念図実験データからの仮説として、各接合の発振の位 相を一致させるために、磁束の格子配列を三角格子 から四角格子へ転換するために接合両端のつくる箱 形ポテンシャルを利用するデバイス設計を考案し試 みたところ、幅1.8μmの接合において、理論の示す 処とは異なり、磁束フロー電圧による交流ジョセフ ソン効果の交流周波数と素子の幅で定在波発振 (Fiske共鳴)現象を発見した。図3に示した電流― 電圧曲線における電流ステップがそれである。この 試料における発振周波数は、ジョセフソンの周波 数―電圧関係式から、 と表される。電流ステップの現れる電圧から、ƒ=70 GHzであった。ここで、eは素電荷、hはPlanck定数、 Vは一接合あたりの磁束フロー電圧である。定在波 発振の周波数は、この物質中での電磁波の速度を一 定と仮定すると素子幅に反比例することから、素子 幅をさらにサブミクロン領域にまで変化させたとこ ろ、図4に示すように発振周波数は0.5 THzに到達 した。2次の高調波では、1.0THzに到達した。図3 素子幅1.8 μmの固有ジョセフソン接合素子の電 流―電圧特性において見出されたFiske共鳴発振現象。 1st-4thと矢印で表された電圧で、共鳴による電流ステ ップが観測された。図中の数字は規格化された磁場の 値で、Hp=0.765T図4 素子幅に反比例して発振周波数が増加し、基本 振動数で発振周波数は0.5 THzに到達した。2次の高調 波では、1.0THzを超えた発振パワーは、「電流ステップ高さ×ステップの 現れる電圧」に比例するが、電流は素子の面積に比 例するが、幅はサブミクロンの制約があるので、奥 行きを長くとるか、素子を並列に集積する必要があ る。また、ジョセフソン電流は、温度依存性がある ので、低温程有利である。さらに低温ではジョセフ ソン磁束フローの散逸も減少するため、より高速の フローが実現できることから、フロー電圧が高くな り、発振パワー ・発振周波数の両面で有利である。収束イオンビーム法により固有ジョセフソン接合 を作製する手法では、奥行きを長くとるにも、素子 を並列に集積するにも限界がある。そこで単結晶を 両面から、電子ビームリソグラフィーとアルゴンイ オンビームエッチングにより、浮遊帯移動法で作製 した単結晶の両面に施すことにより、大面積化・集 積化を実現した(両面加工法)。図5に集積された並列素子の顕微鏡写真を示す。図5素子幅1.0 μm、奥行き30 μmの固有ジョセフソン 接合素子を単結晶に40スタック集積した素子の顕微鏡 写真このように、集積化された素子の電流―電圧特性 を図6に示す。固有ジョセフソン素子幅サブミクロ ン領域では、各接合がそれぞれFiske共鳴状態に遷 移することが見出され、共鳴状態になった接合は、 互いに打ち消し合うことなく、接合数の増加に伴い 発振パワーが増大することが明らかになった。図6 集積化された素子の電流―電圧特性に見出され た各接合のFiske共鳴遷移による電流ステップ以上のように、理論的及び遠赤外吸収実験のデー タからその存在が予測されていたジョセフソン・プ ラズマに該当するテラヘルツ帯において、明確に発 振現象を引き起こす、デバイス設計と発振条件を実 現した。現在40接合を集積することにより、発振パ ワー10μW超を達成しているが、集積度のアップに よりさらに1― 2桁は容易に出力を増加させること が出来るので、1mW級までの目途はついた。2. 2.テラヘツル受信素子テラヘルツ(THz)帯の電磁波検出器を単結晶レ ベルの高品質な酸化物超伝導体薄膜で実現した。 Tri-Phase-Epitaxy法による希土類123系超伝導体単結 晶薄膜を、方位の異なる単結晶を接合した酸化マグ ネシウムバイクリスタル基板上に成長させ、基板の接合部に粒界接合を作製し、さらに電子線リソグラ フィー加工および集束イオンビーム加工を施した。 これにより幅数百ナノから数ミクロンの高品質なブ リッジ状粒界ジョセフソン接合素子の作製に成功し た(図7)。高周波印加による電流―電圧特性に現 れる階段状のマイクロ波応答ステップ(シャピロ ・ ステップ)が明瞭に観測さた(図8)。4.4mVまで ステップが観測されていることから、2THz以上の 高周波に対しても応答可能である。この高い特性は 極めて高品質の超伝導薄膜を用いることにより実現 された。これらの結果から、素子の再現性・信頼性・耐久 性に優れた粒界ジョセフソン接合素子が再現性良く 作製可能であることが実証された。高周波検出器以 外にも、液体窒素温度以上で動作可能な発振器、電 圧標準、SQUID、論理デバイス等、さまざまな応用 が考えられ、これまで進んでいなかった高温超伝導 体のデバイス実用化が一気に進展することが期待さ れる。図7 ブリッジ状粒界ジョセフソン接合素子図8 高周波印加による電流―電圧特性に現れる階段状のマイクロ波応答シャピロ ・ステップ2. 3.ウイスカー十字接合高温超伝導体のオーダーパラメターがdx2-y2の対 称を示すことに着目して、二本の単結晶ウイスカー をc面でツイストして重ね、ウイスカー成長温度の800℃台で加熱することで、微細加工を行うことな くジョセフソン接合が作製できる手法を発明をし た。ツイスト角度により、dx2-y2対称性に起因して 接合特性を制御することが可能になり、応答周波数 可変高周波受信素子の作製が可能となった。このジ ョセフソン接合を用いて、SQUID動作も評価され た。図9 dx2-y2対称性に起因したウイスカー十字接合の臨 界電流密度のツイスト角度依存性2. 4.希土類123系高温超伝導体ウイスカーの成 長従来ビスマス系高温超伝導 体(Bi-2212)でのみウイス カーの合成が可能であった。 ウイスカー成長の前駆体にテ ルル、テルルとカルシウム、 及びアンチモンを添加するこ とで、希土類123系高温超伝 導体ウイスカーを成長させる 方法を発明した。図10イットリウム123系単結 晶ウイスカー2. 5.希土類123系固有ジョセフソン接合ビスマス系と並ぶ高温超伝導の典型物質である希 土類123系ウイスカーの成長に成功したことで、固 有ジョセフソン効果の研究が大きな拡がりを見せ始 めている。2.1.で述べたジョセフソン・プラズ マ周波数はジョセフソン接合の臨界電流密度ととも に増加することから、より高い周波数領域のデバイ ス技術に繋がるポテンシャルを有している。図11に 示したのはテルル添加法で作製したイットリウム 123系ウイスカーに加工した固有ジョセフソン接合 の電流―電圧特性である。多重接合に典型的な多重 ブランチ構造が明瞭に観測され、今後、この物質系 も固有ジョセフソン効果のもう一つの主役として研 究が進展することが期待される。図11イットリウム123系単結晶ウイスカーに加工した 固有ジョセフソン接合の電流―電圧特性2. 6.高濃度ボロン添加ダイヤモンド超伝導薄膜2004年にロシアで超高圧合成された高濃度ボロン 添加ダイヤモンドが超伝導になることが発見され た。これに対して、早稲田大学川原田研究室と共同 で、化学気相蒸着法(CVD)により超伝導ダイヤモ ンドの薄膜化に成功した。超高圧合成に較べ、試料 の形状が薄膜であるため扱い易く、またボロン濃度 の制御が容易であるなどの優位性から、最近ではこ の新超伝導体の研究の中心はCVDダイヤモンドに完 全に移行している。現在は基礎物性の研究を行って いる段階であるが、ダイヤモンド超伝導体は超伝導 を担うキャリアの濃度が極端に低い新しいタイプの 超伝導物質であり、基礎物性の解明に続く新現象発 掘に期待がかかる。図12 CVDダイヤモンド超伝導薄膜の二次電子顕微鏡 写真2. 7.集積ステップ構造を有する酸化マグネシウ ム単結晶基板潮解性などで劣化が起きやすい酸化マグネシウム 単結晶基板の(001)表面を酸素中高温処理するこ とで、集積ステップ構造(bunching step)の形成が 行われることを発見した。今後、量子細線やナノド ットなどのナノ構造作製の基板材料としての多彩な 応用が期待される。3.この5年間の組織の成果研究トピックス:「新しい超伝導体MgB2、MgB2 図13酸化マグネシウム単結晶基板の表面に作製した 集積ステップ構造 の高圧合成と超伝導特性」(20016)、「超高周波デ バイス材料、固有ジョセフソン接合―結晶構造その ものが素子構造」(2001.10.)、「自然の結晶構造を利 用したテラヘルツ発振素子の研究」(2004.3.)「高品 質粒界接合接合を用いた超高周波検出素子の開発」 (2005.1.)、「気相成長ダイヤモンドの超伝導」 (2005.5.)、「固有ジョセフソン接合集積テラヘルツ発振素子」(2005.7.) 。論文執筆件数、及び特許申請件数。平成13年度:論文17報、特許申請2件 平成14年度:論文7報、特許申請1件 平成15年度:論文13報、特許申請3件 平成16年度:論文15報、特許申請0件 平成17年度:論文4報、特許申請2件研究集会開催:第4回高温超伝導体の固有ジョセ フソン効果とプラズマ振動シンポジウム(2004.11.) を主催、ダイヤモンド及び関連物質の超伝導国際ワ ークショップ主催(2005.12.) 。4.グループがカバーしている研究分野の動向・展 望固有ジョセフソン効果に、選択と集中することに より、立ち上げから4年で当該分野の世界的研究拠 点として認知されるに至り、2004年度に国際シンポ ジウムを開催するに至った。特に、素子幅をサブミ クロンにして、定在波発振させる手法の発見により、 テラヘルツ発振が初めて現実のものとなった。次回 2006年の会議にも当グループから3名の委員を輩出 している。2004年にロシアで発見された高圧合成ダイヤモン ド超伝導体は、薄膜ダイヤモンドに研究の主流が完 全に移行し、2005年度に当グループで国際ワークシ ョップを開催するに至るなど、世界的研究拠点とし て活動している。5.組織運営上の問題点、反省点、提言等独立行政法人化により、ポスドク等非常勤職員雇 用の自由度が高くなったことから、テラヘルツ研究 に選択と集中するための柔軟で機動的な研究態勢の 構築が可能となり、急速に当該分野をゼロからピー クまで駆け上がることが可能となった。バイオナノマテリアルグループの発足荒川 秀雄、三井圭太、Dmitry Bulgarevich1.発足の経緯・目的・目指すものバイオナノマテリアルグループは、2004年6月よ りナノマテリアル研究所に発足した。多くの生体分 子が複雑な構造を持ちつつ高度な機能を実現してい ることを考えれば、ナノマテリアル研究の1分野と して生体分子を対象とする研究をすることは、世の 中のニーズに応えたものであるのは明らかであろ う。発足時はディレクター(アソシエイト)の荒川の みであったが、2005年1月より研究員の三井が加わ り、2005年10月より特別研究員としてBulgarevichが 加わって現在に至る。本グループでは、生体分子個々の特性に着目し、 その仕組みを人間が利用できるまでに解明すること を目的としている。例えば、遺伝子の配列を調べる 技術は大きく発達しておりそこから産物の蛋白質の アミノ酸配列はわかるが、その折り畳まれ方やその 機能について予言することは難しい。その為、相似 性や相同性からそれらを予想しているのが現状であ る。生体分子を原理から理解し技術としてより完璧 に使えるようになる為には、実体としての分子を精 査する必要がある。ナノテクノロジーの発展によっ て、個々の分子をあたかも機械を分解組立するよう に操作して研究することができるようになれば、こ の分野が大きく進歩することは間違いなく、そのよ うな基盤技術を作ることが目的である。この技術の目指すところは、生体機能分子のデバ イス化である。生体分子やその複合体には、光、電 気、化学的、力学的な信号を相互に変換する機能を 持つと考えられるものがある。これらをデバイスと して使えるように仕立てていく。ナノデバイス化し た生体分子が汎用的で万能なものとなるのは難しい であろうが、その特異な特性から、多様なナノエレ クトロニクスデバイス群の中にあって、柔らかい計 算アルゴリズムのための最重要要素となる役割が期 待できる。以上はバイオナノマテリアルのボトムアップ的な 研究であるが、逆にトップダウン的手法も目指して いる。則ち「生体反応の現場検証」と名付けた技術 である。生体の反応が起こっているとき、そこには 他種類の生体分子がごく少数参加している。現在の 技術では、核酸以外の生体分子、蛋白質、脂質、糖 質などはフェムトモル近くの量を精製してこないと その解析をできないのが普通である。これに対して、 生体反応の現場を高解像度イメージングすること で、その反応に関わっている生体分子を同定しよう というのが「生体反応の現場検証」である。しかし、単に高解像度イメージングをしても、多 くの球状蛋白質の外形は区別が難しい。そこで、本 物の現場検証でも時に司法解剖が必要であるよう に、「生体反応の現場検証」でも「分子解剖」が必 要であると考える。つまり、反応現場の分子を部分 的に解きほぐすことで各分子の特徴をより引き出す 必要があると考える(図2)。この為には、原子間 力顕微鏡の仕組みを利用して、個々の分子に制御さ れた力を加えてナノ操作をできるようにする必要が ある。こうした「生体反応の現場検証」とその為の「分 子解剖」が可能になれば、病気の診断や解明のため にも画期的な方法として使われるようになるであろ う。例えば現代の難病には、蛋白質の立体構造や分 子間の相互作用の変化が重要な役割を果たしている ことがわかってきたものが多い。狂牛病に代表され るプリオン病はまさにこの類であり、アルツハイマ ー病に見られるようなアミロイド繊維の形成も正常 な蛋白質の立体構造が転位することにより発症す る。こうした病気の研究には、蛋白質分子そのもの を相手にする技術が必要となることは言うまでもな い。薬の開発にしても、生体分子との相互作用が薬 の作用の第一段階であり、それを分子レベルで直接 観測するのが生体反応の現場検証であるから、この 手法を使うことで大きく改善されるであろう。2.グループメンバーの活動経緯当グループが物質・材料研究機構にできてからの 活動は、まだ立ち上げ段階を抜けておらず、既に世 の中でできる各種の高度な技術をここでもできる状 態に持ってきているのが現状である。そこで、ここ ではメンバーのこれまでの活動経緯に簡単に触れた い。ディレクター(アソシエート)の荒川は、生化 学・生物物理学をバックグランドに持ち、1988年か ら走査プロ ーブ顕微鏡の生体分子試料への適用にも 挑戦を始め、この分野に最も初期から参画した研究 者の一人であり、特に生体分子の力学測定に成果を 上げている。例えば、蛋白質のコンフォメーション の違いが分子力学特性に反映されることの発見やシ ャペロニン(他の蛋白質の折り畳みを助ける蛋白質) の機能の力学的解釈モデルの構築に関わってきた。 また、全反射型蛍光顕微鏡と原子間力顕微鏡の複合 装置によって非常に高感度な蛋白質検出システムの 制作をしている。研究員の三井は、大学院時代に荒川が助手を務め る研究室で、蛋白質1分子の力学特性を世界で初め て原子間力顕微鏡で測定したのを始め、世界で初め て蛋白質が折り畳まるときに縮まる力の力学的検出 に成功している。その後、ドイツ・マックスプラン ク高分子研究所においては、表面プラズモン分光な どの光学的測定と原子間力顕微鏡による力測定を同 時に解析できる装置の構築を行った。帰国してからは、光ファイバーと金ナノ粒子を使い、局在プラズ モンを使って蛋白質などの物質の高感度検出装置の 創作などを行っていた。このように、当グループは原子間力顕微鏡による 力測定について世界最高レベルの技術と経験を持つ 上に、光学的な高感度測定法とそれを原子間力顕微 鏡と組み合わせる装置に精通している。3.組織の成果残念ながら、まだ当グループが発足してからの独 自の成果を報告できる段階には至っていないが、新 しい技術として、生体分子・有機分子の力学的性質 の新測定法の開発と、プローブ技術の新しい利用法 の考案という2つのトピックスを中心に当面の活動 をしている。また、日本顕微鏡学会の下、SPMで生命現象を捉 える手法の開発研究部会を2004年度、2005年度と主 催し、2005年2月27日、28日に静岡県伊豆・熱川ハ イツにおいて、また2005年12月11日、12日につくば 市筑波温泉にて開催した。この研究会では、全国の 生物系の走査プローブ顕微鏡研究者が集まり、合宿 形式で日夜を問わず深い議論が行われた。4.グループがカバーしている研究分野の動向、展生体分子研究について、現在の最も大きな流れは、 ゲノム解析からプロテオーム解析に至る展開であ る。これらの研究の中で様々な生物の全ゲノム解析 が既に行われ、今後もデーターが蓄積されていくの は間違いない。また、プロテオーム解析が分子生物 学と蛋白質立体構造解析、分子間相互作用検出技術 などの融合によって成功裡に進められている。これ らのデーターの蓄積により、生体反応においては、 そこに存在する可能性のある生体分子のリスト、そ れらの分子の立体構造のリスト、さらにはそれらの 分子のどれとどれが相互作用をするかのリストがど んどん充実していくだろうと考えられる。そうした未来予測に立てば、「生体反応の現場検 証」こそが次に必要な基盤技術であり、また情報の 蓄積がその為にも必要であるとも言える。5.組織運営上の問題点、反省点、提言等本グループは発足間もないとも言えるが、十分な スタートダッシュができなかった面を反省してい る。場所、人、金がスタート時点で一気に一定レベ ルに達して、何年も研究を続けているグループ同様 に研究室が稼働するのが理想だが、現実には難し い。しかし見方を変えれば、第2期中期計画の始まる 前に我々のグループは設立でき、準備期間を持つこ とができたので、第2期中期計画期間の活動の為に は理想的(に近い)体制を築けたものと思う。これ までの5年間の物質・材料研究機構のあゆみの中で は、その最後の方でバイオナノマテリアルグループは現れただけだが、次の5年間のあゆみに期待して いただきたく、また我々としては大きな発展を期するところである。図1溶液中観測用原子間力顕微鏡 中央部に水滴を保持して液中動作させる。図2 プローブにより、蛋白質分子を部分的に解きほ ぐした状態の概念図極限場ナノ機能グループの活動をふりかえって藤田大介、大西桂子、鷺坂恵介、大木泰造、迫坪行宏、肖占文(現ナノ電子計測グループ、2004.4異動)、徐明祥(現超伝導セン ター、2004.3異動)、奥澤恵子、佐竹紀子、熊倉つや子、北原昌代、新居周子(2004.9退職)、石川好洋(2003.3退職)1.組織発足の経緯・目指したもの極限場ナノ機能グループの前身は、金属材料技術 研究所時代の極高真空場ステーション清浄表面機能 発現ユニットである。2001年4月の物質・材料研究 機構発足時にナノマテリアル研究所ナノ物性研究グ ループ第6サブグループとして新たな位置付けがさ れた。その後、機構内における組織改編によりナノ マテリアル研究所ナノデバイスグループを経て、 2004年8月にナノマテリアル研究所の新しい研究グ ループとして極限場ナノ機能グループが設置され た。ところで、高度先進科学技術の基盤となるナノテ クノ ロジーの効率的な推進には、ナノ構造の創製技 術と解析技術の高度化が必要不可欠である。この観 点から、当グループは前身の金属材料技術研究所時 代より一貫してナノスケールの創製・計測技術を駆 使して、新規極微構造の創製やナノ機能探索の研究 を推進してきた。新規なナノ構造体を創製し、極微 性に起因する新規機能と物性を探索するためには、 ナノ構造創製環境や機能・物性発現環境を計測空間 に実現しながら、多元的な物性情報(電子状態・力 学的状態・光学特性・スピン状態など)を超高分解 能で計測する技術を確立すること、即ちナノ計測と ナノ創製の融合技術が重要である(図1)。図1 ナノ評価技術とナノ創製技術の融合このような観点から、機構としての5年間(2001 ～2005年度)における当グループの第一目標は、複 合極限物理場環境と融合した先端ナノ計測・創製シ ステムを開発することにより、ナノ構造体を創製し ながら、極微性に起因する新規量子機能を探索する ことである。具体的には、極低温場・強磁場・極高 真空場・応力歪場・高温場などの極限物理場環境を ナノスペースに実現しながら、原子分解能の多元的 機能探索を可能とする技術を開発している(図2)。 様々な機能を有する独自の走査型プロ ーブ顕微鏡群 を試作することにより、ナノ機能計測技術とナノ創 製加工技術の開発を推進している。それにより、分 子・クラスター ・ナノカーボン・ナノワイヤ・表面 2次元電子系などにおける様々な新規物性と機能の 解明が進展している。図2 興味ある機能が発現する環境を実現しながらナ ノ機能発現メカニズムを解析2.グループの活動経緯当グループでは2001年度より運営費交付金 (NIMS内競争的資金)、文部科学省振興調整費研究 先導的研究「アクティブ・ナノ計測基盤技術の確立」 (2001～2003年度)等により高度ナノ計測技術の開 発並びにナノ構造の創製、新規ナノ機能の探索に関 する研究を推進してきた。ここでは振興調整費研究 並びに運営費交付金による研究について活動の経緯 を報告する。振興調整費研究ではアクティブ・ナノ計測技術の 開発と知的基盤の整備を目標とした。アクティブ・ ナ ノ 計測(Active Nano-Characterization)とは“アク ティブ操作を付与したナノ計測”の意味で、我々の 造語である。“Active”という単語の語義は、“活動 的な、積極的な”という意味であり、“積極的”に “活きている”場を創製し、その場でナノ計測を行 うという主旨である。具体的には、アクティブ・ナ ノ計測とは、図3に示すように、多次元パラメータ ー化されたアクティブ操作(応力場、電場、磁場、 高温場、極低温場、極高真空場、分子線照射場等) を与えながら高精度ナノ計測を行い、材料の多元的 情報(電子状態・原子位置・化学状態・スピン状態 等)を時間分解で収集する手法である。従来のナノ 計測手法においては、静的環境での計測もしくは1 個程度の環境パラメーターを変化させる、いわゆる “その場計測”であり、1次元的な計測であった。 一方、アクティブ・ナノ計測とは、基本的に環境パ ラメ ーターを多次元に付与しながらナノレベルの計測をおこなう点が本質的に異なる。図3アクティブ・ナノ計測技術の定義このプロジェクトにおいて当グループが担当した テーマは、走査型トンネル顕微鏡(STM)によるア クティブ・ナノ計測技術の開発であった。複合極限 物理場環境(極低温場、強磁場、極高真空場)にお ける原子分解能STM、応力歪場環境UHV-2探針走査 型プローブ顕微鏡(SPM)、等の装置開発、探針パ ルス電場によるメタルナノ構造の創製技術、トンネ ル電子エネルギー制御による表面超構造制御、STM 探針による原子操作、等のアクティブ・ナノ計測技 術の開発を行った。NIMS内競争的資金(萌芽的研究)としては、 2001年度から2005年度までに以下の3つを行った。①「極限場における極微量子効果発現に関する研 究」(2001～2003年度)②「ノベルナノカーボンプロジェクト」(2004 ～2005年度)③「極限物理場環境ナノエクスプローラ」(2004 ～2005年度)①では極低温・極高真空環境における極微構造の 量子効果の探索を目指した研究である。トンネル電 子誘起フォトン検出のための低温極高真空STM、ナ ノ構造の電子状態・原子構造を解明するための高分 解能低温極高真空STMの開発を行うと共に、多様な 極微構造の量子効果の探索を行った。②では新しい機能性ナノカーボン構造体(ノベル ナノカーボン)の合成方法および機能探索に関する 研究をエコマテリアル研究センター、ナノマテリア ル研究所、物質研究所の3ユニットにより、横断的 に行うものである。当グループでは、カーボンナノ ドット・ナノワイヤ・ナノベルトを包含するカーボ ン・ナノスプラウトの発見に基づいて、さらに構 造・機能・創製メカニズムに関する研究を、原子分 解能STMなどを用いて行った。③ではナノ構造創製・制御とナノ量子物性計測を システムとして一体化した強力なナノ物性探索シス テム(ナノエクスプローラ)の開発を行った。ナノ エクスプローラの開発により、極限物理場環境にお けるナノ構造制御のメカニズム、ナノクラスター ・ ナノワイヤ・表面2次元系等のナノ構造体における 量子力学的な新規機能探索を行った。3. 5年間の組織の成果当グループでは、極限物理場環境STMやトンネル 誘起フォトン解析STM、応力場SPMなどのアクティ ブ・ナノ計測技術開発、極限環境における新規機能 探索、新規ナノ構造創製技術、新規ナノカーボン合 成技術、等の成果を挙げている。以下に特に顕著な 業績を示す。①Si (100)表面の極低温安定相とナノ周期構造操作Si (100)は半導体産業を支える最重要材料であ り、構造に関して多くの研究が行われてきたが、表 面の極低温最安定構造は2003年に至るまで確定して いなかった。このような基礎的表面構造が未解決で あることはエレクトロニクスや計算科学の発展に影 響するため、早急に解決しなければならない。基底状態として提案されている構造のなかで、対 称ダイマー相と呼ばれる(2×1)構造は室温におい て観測されてきた。これは静的な構造ではなく、非 対称ダイマーが高速でフリップフロップすることに よる“見かけの対称ダイマー構造”である。フリッ プフロップは熱的に励起されるため、低温では停止 し、非対称ダイマーとなる。その際、下地格子ひず みを緩和するためにダイマーはバックリング方向を 交互に変えながら整列する(ジグザグ構造)。さら に隣り合うダイマー列間でジグザグ構造の位相が等 しいものと異なるものの2種類の周期構造が存在 し、それぞれp (2×2)構造とc (4×2)構造と呼ば れる。ところが、2000年に複数のグループから低温 で対称ダイマー相が安定に存在することが報告さ れ、世界的な議論を誘起した。当グループは極低温・原子分解能STM技術を用い てSi (100)表面の基底状態の決定を試みた。正し い答は極限物理場環境STMにより与えられた。0.7 Kにおいて計測されたSi (100)表面の原子分解能 STMでは、従来報告されたような静的もしくは動的 な対称ダイマーに起因する構造は観測されていな い。また、非対称ダイマー構造のなかでも、c (4× 2)相が優勢に存在している。当グループの実験結 果は、80 Kから0.7 Kにいたる範囲においてc (4×2) 構造が基底状態であることを示しており、第一原理 計算による構造予測と一致する。極低温相の原子分解能イメージングを追求する過 程において、我々はSTM探針から注入するエネルギ ーを制御することにより、Si (100)表面原子の周 期構造の操作に成功した。我々は準安定相であるp (2×2)構造が出現する条件を発見し、さらにSTM 探針と表面間の電圧を制御することによってc (4× 2)構造とp (2×2)構造間の可逆的な操作に成功し た(図4)。このような周期構造の操作は、ナノデ バイス構造を作り分けるテンプレートを作製する要 素技術として役立つ可能性がある。また、周期構造 操作技術の発見は、Si (100)表面の基底状態を決 定する上でも、重要な知見を与えている。さらに計 算材料科学センターと共同で、第一原理計算により、 周期構造がトンネル電子の注入により変化するメカニズムを解明しつつある。図4 極低温STMによるSi (100)表面の周期配列の操 作。c(4×2)⇨周期構造変化⇨p (2×2)構造②トンネル誘起フオトンの近接場高分解能計測当グループはトンネル電子により誘起されるフオ トンを近接場にて高感度単一光子計測する技術を確 立し、蛍光性分子からの微弱なSTM発光を観測する ことに成功した。STMイメージングと同時に単一光 子計数による高感度フォトン像の計測、並びに任意 の位置における高感度分光計測が可能である。近接 場光子マッピングにおいて原子ステップ分解能を Ag (111)表面(局所プラズモン発光)において達 成した。さらに、表面層のドーパント1個からのフォトン 計測に成功したが、その例を以下に示す。図5 (a) に、超高真空劈開により得られたp-GaAs (110)表 面のトポグラフィーーフォトン同時マッピングを示 す。発光原理は、注入された電子とホールとの再結 合発光である。表面から数層以内に位置するドーパ ント(Zn)がSTM像では凸部として観測される。こ れは負の電荷を帯びたZnドーパントの近傍において 局所的なバンドベンディングが生じ、トンネル電流 のパスが伝導帯のみならず価電子帯へも発生するこ とに起因する。一方、フォトン像ではドーパント近 傍において光子強度が大幅に減少している。このメ カニズムは図5 (b) (c)に示すように、バンド構 造の局所的な変化に起因している。Znドーパント近 傍では価電子帯にトンネル電子が注入されることか ら、発光に寄与する電子数が減少すると共に、発光 を伴わずにホールと再結合する。その結果、発光効 率が大幅に減少したといえる。STMと光子像の同時 計測は、これまでのSTM計測では得ることが困難で あった光学的な情報をナノレベルで提供することに なり、原子レベルでの化学状態やバンド構造のイメ ージングに道を拓くものである。図5 (a) GaAs(110)表面のSTM像とトンネル誘起発光像(80K)。ドーパントのないテラス上(b)及びZn ドーパント近傍(c)からのトンネル発光メカニズム③低温STMによるナノクラスターの単一電子効果計 測極微クラスター構造に起因する量子効果の一つと して、単一電子トンネル効果(Single Electron Tunneling : SET)がある。トンネル障壁により電気 的に外部回路につながったメタリックなナノクラス ターでは、1個の電子注入による静電エネルギー変 化が～100meVオーダーになるため、電子の輸送に おいて有限のエネルギーが必要になる。ナノクラス ターの電荷を電子1個レベルで制御できるため、極 微なトランジスターやメモリーを創製することがで きる。当グループでは、Au (111)基板上に作製し たジチオール分子の自己組織化単分子膜(SAM)上 にサイズ(直径～1nm)の揃ったAuナノクラスタ ーを均一に分散することに成功した。このような基 板と絶縁されたAuナノクラスターを、金STM探針 により超高真空中において低温STS計測することに より、SET効果によるクーロン階段(電子が一個ず つAuナノクラスターに収容・抽出されていく過程) を明瞭に計測することに成功した。このようなAu ナノクラスターは、STM探針により操作(除去)可 能であり、STMによるナノ回路の創製も期待できる。 低温環境におけるSTM/STS計測により、ナノクラス ターの有する自己静電容量のサイズ依存性を求めた が、モデルシミュレーション結果と良い一致を示し た。また、メタルナノクラスターの有する化学ポテ ンシャルの揺らぎなど様々な極微構造特有の現象も 明らかになってきた。④STMによるメタリックナノ構造の創製STM探針にパルス電圧を印加するアクティブ操作 によりナノ構造を創製することができる。このアク ティブ操作は、探針―表面間に電圧パルスを印加す ることにより、表面の任意位置に探針物質を移送・ 付着させる技術である。この手法の開発により、当 グループでは図6に示すように原子レベルで清浄な Si(111) -(7×7)表面にAgのメタリックナノ構造を Ag被覆W探針・ Ag探針からの物質移送を用いて創 製することに成功した。1996年に開発したAu探針 の場合(創製確率～50%)と比較して、格段に優れ た創製確率(～100%)が得られている。探針物質 移送のメカニズムとしては、従来の電場蒸発(Field Evaporation)ではなく、新たに、電場誘起拡散によ り伸張したAg探針先端がSi (111)表面と点接触す るモデルを提案している。Agの高いエレクトロマ イグレーション性及び点接触後に生ずべきSi原子と の比較的強い結合により、点接触したAgがSi基板上 に高確率で移送される。このようなアクティブ操作 により、ナノデバイスをボトムアップにより創製す ることが可能となる。図6 Ag被覆探針を用いたパルス電場誘起点接触によ りSi(111)-(7×7)表面に形成したAgナノ構造4.極限場STM計測分野の動向、展望STMは構造や状態を原子分解能で解析可能な表面 計測手法であるが、近年、極限環境における量子効 果を探索する強力な解析法として急速に進化してい る。ナノデバイスやナノマテリアルの新規機能は量子 力学的な効果に起因することが多い。大概、それら は極低温(LT) ・強磁場(HM) ・超高真空(UHV) などの複合された極限環境において明瞭に観測可能 になる。また、超伝導状態の物理的起源を明らかに するためには、LT (1K以下)・可変磁場(0～数テ スラ以上)における高エネルギー分解能(1meV以 下)の走査型トンネル分光(STS)計測が必要であ る。このため、LT-HM-UHV複合極限環境でのSTM 開発が米・独・日を中心に活発に進められている。この分野では米国コーネル大学のDavis教授グル ープが先導している。1999年に3He冷却によりLT (250mK) HM (7T) UHV環境における高分解能 STMを開発したが、更に、その後、希釈冷凍機によ る LT (～20mK) ・ HM (9T)のUHV-STMの開発に も成功した。Davisグループのミリケルビン-STMは 主に酸化物超伝導物質の物性解明に大きな威力を発 揮しており、最近、理研グループと共同で、低濃度 正孔をドープしたCa2-xNaxCuO2Cl2における「チェッ カーボード」様の電子結晶状態を擬ギャップ領域に おいて発見した。一方、ハンブルグ大学の Wiesendanger教授グループが3He方式によりLT (300mK) ・ HM (14T)のUHV-STM を 2004年に完成 させた。スピン状態やランダウ量子化の機構解明に 用いるものと思われる。現時点ではWiesendangerグ ループの達成した磁場強度はLT-UHV環境では世界 最高である。国内における極限環境STMの開発は、東京大学の 福山教授グループが1990年代から取り組んでおり、 最近、希釈冷凍によるLT (20mK) ・ HM (6T)の UHV-STMの開発に成功した。東大グループは超低 温領域の物性探索が専門であり、グラファイトのラ ンダウ量子化などの低次元物性の探索に適用してい る。NIMSにおける極限環境SPMの開発は1990年代 に極低温原子分解能UHV-STMとして着手した。さ らに2001年より複合極限場環境における原子分解能 STMの開発が推進され、極低温(400mK) ・強磁場 (11T) ・極高真空の原子分解能STMの開発に成功 した。NIMSでは極高真空創製技術という固有技術 を有しており、清浄表面創製技術と組み合わせるこ とにより、他のグループでは観測できない表面の原 子分解能計測に成功している。特に、Si (100)表 面やAu (111)再構成表面の1K以下の極低温におけ る原子分解能STM計測に初めて成功している。今後の課題としては、さらなる低温、強磁場、極 高真空、高分解能(～100μ eV)が挙げられる。特 に、より強い磁場は本質的な新規物性の探索を可能 にすることから、強磁場開発競争は活発化すると思 われる。このような世界最高水準の計測技術は、ナ ノ構造の発現する機能や物性のメカニズムを解明す るうえで強力なツールとなり、全く新しいナノ機能 や量子効果の発見をもたらす可能性が大きい。5.今後への提言第3期科学技術基本計画においては、新しい原 理・現象の発見や解明を目指す基礎研究を中心とし た知識の蓄積の上に、原子・分子レベルで急展開す る生命科学や材料科学等において探求されているよ うな非連続的な技術革新の源泉となる知識への飛躍 が期待されている。また、科学技術の限界へ挑戦す ることも追求すべき目標とされている。人類が見る ことや知ることができずにいる領域の情報を得るこ と、極限的な環境でのみ出現する現象を発見するこ とにおいて、世界をリードすることが求められる。 このような要請は、当グループがこれまで推進して きた、極限場環境における原子レベルでの高度ナノ 計測技術開発の目指す方向性と良く 一致している。一方、当機構は、極限的な環境における高度表面 ナノ計測技術の開発において主導的な役割を果たし てきた。特に1990年代には、極限場研究センターを 設置し、強磁場、極低温、極高真空環境などの極限 場における極微構造創製と量子機能発現の研究を先 導してきた蓄積がある。このようなNIMSが保有す る“極限的な環境での高度ナノ計測技術”は、物 質・材料研究分野における“飛躍知の発見”や“科 学技術の限界突破”を実現するための重要なキーテ クノ ロジーであり、さらに整備充実、重点化の戦略 が必要である。3材料研究所材料研究所の5年小野寺秀博、佐藤彰(所長、平成2001年4月―2002年3月)、吉原一紘(所長、平成2002年4月―2003年9月)、野田哲二(所長、 平成2003年10月―2005年3月、現理事)、青木画奈、青木智史、浅香由美子、阿部英司、阿部信雄、阿部英樹、天野史、新井智 子、荒木弘、飯島清一、飯塚早苗、葉安州(YEH Anchou)、五十嵐慎一、砂金宏明、石岡邦江、石川泰成、石田章、板倉(中村) 明子、市坪哲、伊津野仁史、伊藤マリ子、稲葉良徳、今井基晴、今須淳子、岩渕祥子、武穎娜(WU Yingna)、魚津良雄、宇田雅 広、打越哲郎、江頭満、江場宏美、江村聡、大石敬一郎、大久保忠勝、大崎智、大沢真人、大塚和弘、大沼正人、大畠宏文、小 口英雄、小熊英隆、奥村務、奥山絵美子、奥山秀男、小澤清、尾高聡子、加賀屋豊、香川豊、掛谷信和、笠原章、笠谷岳士、片 山英樹、加藤尚子、川岸(端)京子、川喜多仁、川崎昌彦、菊池武丕児、岸本哲、北澤宏美、北嶋具教、北島正弘、金炳男 (KIM Byung Nam)、木村秀夫、木本高義、京野純郎、谷月峰(GU Yuefeng)、郭洪波(GUO Hongbo)、郭樹啓(GUO Shuqi)、黒 田聖治、栗生佳世子、小泉裕、後藤真宏、小林敏治、小林幹彦、小松誠幸、小山由香、今野武志、蔡安邦(TSAI An Pang)、崔 傳勇(CUI Chuanyong)、齋藤祥、酒井隆、坂内英典、坂本正雄、崎間公久、櫻井健次、佐々木泰祐、目義雄、佐藤彰洋、佐藤敦 史、佐藤守夫、澤口孝宏、志田宣義、柴田光寛、島村清史、下田正彦、張建新(ZHANG Jianxin)、張立学(ZHANG Lixue)、張慶 新(ZHANG Qingxin)、朱新文(ZHU Xinwen)、周玉美(ZHOU Yumei)、庄司雅彦、沙江波(SHA Jiangbo)、白幡直人、許亜(XU Ya)、新谷紀雄、新野仁、杉本武、鈴木達、鈴木崇宣、鈴木裕、関智孔、関澤由美子、関野雅人、高木昌子、高梨基宏、高橋和 也、高橋邦夫、高橋秀和、高橋弘光、高橋康夫、高橋有紀子、武井厚、武江智子、武川哲、多田節子、田中克志、田中義久、種 池正樹、田宮匡子、田村正和、田村至、唐捷(TANG Jie)、丹治亮、千田哲也、千東鉉(QIAN Dongxuan)、筒井裕美、出村雅彦、 土佐正弘、戸田雅也、内藤公喜、名嘉節、中泉富子、永川城正、中澤静夫、中島道子、中田聖士、長沼環、長濱大輔、中村恵吉、 中村玄徳、中村博昭、中山浩美、西田貴司、二瓶正俊、野口和子、野口順子、野口祐二、野田和彦、野村美智子、萩原益夫、長 谷宗明、原田広史、平出貞夫、平賀啓二郎、平野敏幸、平徳海(PING De-hai)、藤井克彦、藤岡順三、布施綾子、不動寺浩、古 川隆一、古海誓一、古屋泰文、寳野和博、堀越久美子、馬雁(MA Yan)、眞岩幸治、毛勇(MAO Yong)、真木紘一、増田千利、 升田博之、増田安次、松井満代、松下明行、松本一秀、三浦佳子、三上容平、三木理子、水沢多鶴子、御手洗容子、宮崎昭光、 宮崎英樹、宮嵜博司、宮代寛、宮本綾子、村上恵子、村上秀之、村雲岳郎、村瀬義治、籾��山大、森田孝治、森藤文雄、森弘元人、 森脇三千代、屋代如月、矢田雅規、山口晃宏、山本徳和、山脇寿、楊森(YANG Sen)、楊文(YANG Wen)、横川忠晴、横山賢 介、吉田慶子、吉田知枝子、吉田英弘、吉田祥典、米澤徹、李世勳(LEE Seahoon)、任暁兵(REN Xiaobing)、劉文鳳(LIU Wenfeng)、劉楊(LIU Yang)、劉麗麗(LIU Lili)、呂芳一、渡辺健二、渡邊誠、王宇(WANG Yu)、Alok SINGH、Rajani Kanth AMMANABROLU、 Andreas HAKANSON、 Andreas KUNDIG、 Anjana ASTHNA、 Benjamin DHATTON、 Carlos Quioshi HIRAMATU、 Zuyong FENG、 Golden KUMAR、 Hem Raj SHARMA、 Hrvoje PETEK、 Isabelle MARTIN、 Jestine ANG、 Kallol MONDAL、 Maje Jacob PHASHA、 Mohammad Kamal HOSSAIN、 Oleg MISOCHKO、 Philipp LUCAS、 Lu-Chang QIN、 Ramasamy SIVAKUMAR、 Rong LU、 Vijay Karthik SANKAR、 Srinivasa Rao BONTA、 Stefan VORVERG、 Tatiana BOLOTOVA、 Yuriy PIHOSH、 Zsolt GERCSI1.組織発足の経緯・目的材料研究所は、2001年4月に旧金属材料技術研究 所のメンバーを中心として発足した(佐藤彰所長)。 材料基盤研究センター(戸叶一正センター長)の中 に、物性解析研究グループ(中村森彦)、計算材料 研究グループ(松本武彦)、エネルギー変換材料研 究グループ(井上廉)、インテリジェント材料研究 グループ(新谷紀雄)、強磁場研究グループ(和田 仁)、非周期系物質・材料研究グループ(蔡安邦)、 生体材料研究グループ(塙隆夫)、燃焼合成研究チ ーム(海江田義也)の7グループ、1チーム、構造 材料研究センター(高橋稔彦センター長)の中に、 材料創製研究グループ(福沢章)、構造体化研究グ ループ(入江宏定)、評価研究グループ(萩原行人)、 耐食材料研究グループ(小玉俊明)、耐熱材料研究 グループ(原田広史)、力学特性研究グループ(八 木晃一)の6グループ、さらに、材料試験事務所、 エコマテリアル研究チーム(原田幸明)、材料研究 所業務室からなる組織であった。()内はグループ リーダー。その後、2001年10月に、機構全体の改組が行われ、 高比強度材料(平野敏幸)、高融点微結晶材料(平 賀啓二郎)、超耐熱材料(原田広史)、溶射工学(黒 田聖治)、信頼性評価(萩原行人)、寿命予測(篠原 正)、非周期系材料(蔡安邦)、基礎物性(松下明行) 機能融合材料(新谷紀雄)、機能基礎(吉原一紘所 長併任)、ナノ組織解析(寶野和博)反応・励起の ダイナミクス(北島正弘)、腐食解析(升田博之)、 高輝度解析(櫻井健次)、微粒子プロセス(目義雄)、 燃焼合成プロセス(海江田義也)、微小造形(野田 哲二)の17研究グループと千現業務室(渡辺健二室 長、2004年4月より野口和子室長)からなる、ほぼ 現在の体制に近い組織となり、材料研究所(吉原一 紘所長)としての出発はこの時点といえる。()内 はディレクター。2003年4月には、新たに複合材料グループ(香川 豊)、が発足し、2003年10月からは野田哲二所長に よる新体制となった。2004年4月には、機能基礎グ ループが圧電体単結晶(木村秀夫)に、信頼性評価 グループが耐照射材料グループ(永川城正)に改組 され、寿命予測グループはエコマテリアルセンター へ移動し、新たに設計試作グループ(増田安次)が 加わった。2005年4月時点で、燃焼合成、非周期系 材料の2グループは大きな成果をあげて研究を終了 し、16研究グループ、1業務室の現体制(小野寺秀 博所長)となった。材料研究所の目的は、中期計画に定められた、ナ ノ物質・材料、環境エネルギー材料、安全材料、研 究基盤・知的基盤の各分野におけるプロジェクト研 究及びプロジェクト研究の芽となる萌芽研究の推進 にある。そのため、主として構造材料に関する研究グルー プ群、機能材料に関する研究グループ群、及び材料 基盤技術に関する研究グループ群から構成されてい る。材料研究所では、「国民の生活の向上に関わる材 料開発に関し、企業との共同開発が可能となるよう な基盤的研究の推進」を大きな目標として設定し、 企業との共同研究を積極的に行い、産業界との密接 な連携を保ちつつ、社会のニーズに対応できるよう な研究開発を目指した。但し、通常、企業では直接 製品化につながる応用研究に重点があるので、材料 研究所では材料の実用化に不可欠な基盤研究に重点 を置いている。2.ユニットの活動経緯2.1重点プロジェクト研究材料研究所のメンバーが中心となって推進した中 期計画における重点プロジェクト研究は以下であ る。・新世紀耐熱材料プロジェクト(原田広史、1999―2007)超合金では中期計画の目標である耐用温度(137MPa、 1000h)1100℃を達成し、1150℃で使用可能な材料 の提案を行っている。高融点材料のIr合金では1750℃ まで到達している。また、企業と発電用、コジェネ 用タービンの実用化も実施した。・加工性に優れた先進構造材料の開発に関する研究(平賀啓二郎、2001―2005)ZrO2系セラミックス材料で1300℃高速超塑性 (10-2/s)を実現した。また、耐熱性に優れるが脆性 材料であるNi3Alの長尺箔(23μm)の作製に成功す るとともに、水素製造反応における触媒機能を発見 した。また、加工性の優れたTi2lNb合金のTiB分散によ る耐熱強度改善の目標を達成した。・素機能融合化技術による安全材料の開発に関する研究 (岸本哲、2001―2005)構造系材料では、金属コーティング粒子の金属同 士を焼結することにより、衝撃安全性に優れた超軽 量なクローズドセル構造金属材料創製技術を開発し た。また、ナノ領域での組織を制御することにより、 締結部材や強化材として用いる安価な鉄系形状記憶 合金や高温損傷を自己修復する自己修復耐熱鋼を開 発した。機能材料では、粒子アセンブル技術等により、電 子機器に用いる多機能保護素子材料やフレキシブル かつ自らが温度調節をする自己調温ヒーターシート 及び光を高度に制御できるフォトニック結晶および 精密操作技術を用いたフォトニック結晶の製造技術 を開発した。また薄膜化技術により応答速度の速い 微小機械用Ti-Ni系形状記憶合金薄膜を開発した。・ナノ組織制御による次世代高特性材料の創製に関する研究 (寶野和博、2001―2005)ナノ組織磁性材料では、Sm(Co,Fe,Cu,Zr)x, Nd-Fe-B 系ナノコンポジット磁石材料で磁気特性向上のメカ ニズムをナノ組織解析に基づいて解明し、高周波特 性の優れたナノ結晶軟磁性材料を開発した。また、 SmCo5/Fe多層膜でSmCo5の理論限界を超えるエネル ギー積の実現に成功した。FePt粒子の規則化のサイ ズ依存性の検証と理論的解明により、次世代超高密 度磁気記録媒体の設計条件を提示した。また、大き なGMRを示すCCP-CCP-GMRにおけるGMR増大のメ カニズムを解明した。ナノ組織高強度金属では、種々の強歪加工プロセ スにおける2相ナノ組織形成過程を解明した。また、 Al,Mg合金におけるナノクラスター、ナノ析出物の 解析を行い、ナノ組織形成メカニズムを解明した。 また、メカニカルミリングしたパーライト粉末で形 成されるナノフェライト組織は、炭素原子の粒界偏 析によりナノ組織安定化が生じていることを明らか にした。さらに、Fe-C鋼のメカニカルミリング、ス パークプラズマ焼結により、降伏応力1900Mpa、最 大応力3500MPa、伸び40%の超高強度ナノスチール の製造に成功した。2. 2 NIMS内指定研究・非鉄金属材料構造材料の展開に関する調査研究(平野敏幸、2003―2005)環境・エネルギー分野における非鉄金属材料の有 望な研究開発シーズを探索するための調査研究を実 施した。自動車、航空機用軽量構造材料として、チ タン、マグネシウム、アルミニウム、複合材料の製 造技術、機械的特性の調査を実施した。同時に、航 空機エンジン用耐熱チタン合金及び生体用高強度、 低弾性チタン合金、高温マイクロリアクター用材料 としてのNi3Al箔材料の適用可能性、形状記憶合金 薄膜のマイクロアクチュエータへの応用、MEMS作 製に不可欠なSiナノワイヤーの作製及び可視光レー ザー光硬化プロセスを用いた有機系構造材料の微小 造形法等の開発及び調査を実施した。これらの調査を進め、非鉄金属材料の研究を次期 プロジェクト候補課題として抽出した。2. 3 NIMS内競争的個人研究、チーム型研究、 中期計画推進プログラム中期計画の目標達成を加速、促進することを目指 して設定された下記の一連の研究を推進した。[NIMS内競争的個人研究]・ Ni3Al単結晶箔作製のための材料科学的指針の確立 (出村雅彦、2002)・ダイヤモンド型半導体3次元フォトニック結晶の構造探索と創製 (宮崎英樹、2002―2003)・点欠陥のナノ秩序による特異なマルチスケール現 象と新奇物性 (任 暁兵、2003―2005)・機能性有機分子の微小構造体創製とナノパターニ ング (後藤真宏、2003―2004)・角度分解環状暗視野電子顕微鏡法による原子極小 変位分布の直接観察 (阿部英司、2003―2004)[NIMS内競争的チーム型研究]・超短パルス光励起による相転移ダイナミクス (北島正弘、2003―2004)[中期計画促進プログラム]・環境に応じて構造色が変化する視認型化学センサー材料 (不動寺 浩、2004―2005)・単分散コロイド微粒子の磁性及び光触媒特性 (小澤 清、2004―2005)・カーボンナノチューブプローブ及びナノチューブ 連結の作製・制御・応用に関する研究(唐捷、2004―2005)・ナノ組織を有する酸化物セラミックス複合材料の 創製に関する基盤研究(森田孝治、2004―2005)・形状記憶合金薄膜アクチュエータの研究開発 (石田 章、2004―2005)・ γ/εマルテンサイト変態に伴う疑弾性を利用した制 震ダンパー用高減衰能材料の開発(澤口孝宏、2004―2005)・環境及び腐食センシングによる構造物の腐食安全 性モニタリング (片山英樹、2004―2005)・レーザ超音波利用簡易超音波CT法の実証(山脇 寿、2004―2005)・新しいX線技術を用いた複酸化物ナノ材料の効率 的探索法 (江場宏美、2004―2005)・表面応力による表面反応ダイナミクスの制御 (矢田雅規、2004―2005)・清浄準結晶表面および清浄準結晶表面上の金属ク ラスターとガス分子の反応(下田正彦、2004―2005)・誘電及び磁気材料の不均一構造の発現と応力による機能制御 (名嘉 節、2004―2005)・分解溶融型層状バルク強誘電体単結晶(木村秀夫、2004―2005)・機能性Siネットワーク化合物の探索(今井基晴、2004―2005)・金属ガラスの組成・構造ゆらぎの解明(大沼正人、2004―2005)・外場制御コロイドプロセスによるセラミック高次構造制御体の作製 (目 義雄、2004―2005)・金属化合物微小コンポーネント作製に関する研究(野田哲二、2004―2005)・フォトニック構造物操作技術の高度化(宮崎英樹、2004―2005)・粒子アセンブル技術の電子産業への展開(小林幹彦、2004―2005)・高性能耐環境コーティングに関する総合的研究(黒田聖治、2004―2005)・高輝度光による埋もれたナノ構造解析法(櫻井健次、2004―2005)・非鉄金属系構造材料の研究(平野敏幸、2004―2005)2. 4外部資金研究外部資金研究にも積極的に応募し研究資金の獲得 を図り、以下の研究を行った。[科学研究費補助金]・準周期表面における薄膜の成長(下田正彦、2002―2005)・新規機能性金属錯体マテリアルの創出とキノリ ン、インドールライブラリー構築への展開(下田正彦、2002―2004)・光電効果を利用した新しい電子線源の高輝度化に関する研究 (木本高義、2002―2004)・金属間化合物Ni3Al冷間圧延箔の単結晶化に関する研究 (出村雅彦、2003―2004)・プラズモン共鳴構造物研究のための金属ナノパタ ーンのマニピュレーション技術の確立(宮崎英樹、2003―2004)・金属における光励起電子及びコヒーレントフォノ ンのフェムト秒超高速分光(長谷宗明、2003―2004)・粒界ナノ量子構造制御による新機能セラミックス開発プロセスの創出 (吉田英弘、2003―2005)・シリコンの酸窒化処理による表面応力の動的挙動と電気特性 (板倉明子、2003―2005)・ TEM―3DAPによるナノコンポジット合金のナノ組織解析 (大久保忠勝、2003 ―2005)・水系電気泳動プロセスによる粒子堆積機構の解明 とセラミックス高次構造体の評価(打越哲郎、2003―2005)・水素により微粉末化される金属材料の探索(奥山秀男、2003―2005)・金属ガラスの材料科学(寶野和博、2003―2007)・超高温白金族金属基形状記憶合金の相変態と機械的特性 (御手洗容子、2004―2005)・高密度レーザー光子場におけるフォノン制御(北島正弘、2004―2005)・抗原抗体反応を利用したナノ磁気微粒子によるア トモル微量化学分析の研究(川岸京子、2004―2005)・高密度レーザー光子場におけるフォノンダイナミクスとその制御 (北島正弘、2004―2005)・構造物の腐食安全性モニタリングを目指したセン シング技術に関する研究(片山英樹、2004―2005)・軽量耐熱O相基チタン合金の金属組織制御による 室温特性及び高温特性の両立(萩原益夫、2004―2006)・三元系C32型シリサイドの超伝導(今井基晴、2004―2006)・カーボンナノチューブストリングの作成・制御に関する研究 (唐 捷、2004―2006)・セラミックスを内包するマイクロクローズドセル 構造金属材料創製技術の開発(岸本 哲、2004―2006)・その場計測が可能な硫黄及びSOxセンサー用固体 電解質に関する研究 (中村博昭、2004―2006)・コロイドプロセスの高度化による高次構造セラミ ックスの創製 (目 義雄、2004―2006)・磁場と電場を用いた配向積層構造制御による新規 セラミックスの創製 (鈴木 達、2004―2006)[原子力試験研究費]・先進的原子力材料の照射劣化抑制に関する研究 (永川城正、1998―2002)・表面及び界面の反応と欠陥生成過程の高分解能解 析 (北島正弘、1999―2003)・高熱伝導性同位体材料に関する研究(野田哲二、2002―2006)・核融合炉構造材料の力学特性に及ぼす核変換ヘリ ウムの効果 (山本徳和、2001―2005)・高エネルギー放射光励起X線スペクトロスコピに よるランタノイド金属のケミカルスペシェーショ ンに関する研究 (櫻井健次、2001―2005)・ 3次元アトムプローブによる構造材料中における 溶質原子クラスター形成と材質変化の研究(寶野和博、2001―2005)・複合的微細組織材料における動的照射効果の研究 (永川城正、2003―2007)・材料劣化のその場多次元モニターに関する研究 (升田博之、2003―2007)・コロイドプロセスの高度化による高次構造耐環境 セラミックスの作製に関する研究(目 義雄、2003―2007)[戦略的創造研究推進事業]・光波アンテナによる輻射場の制御と発光特性 (宮崎英樹、2000―2003)・自己集合膜を利用したストレス制御とパターニン グ (板倉明子、2002―2004)・点欠陥秩序の対称性と特異なmultiscale現象 (任 暁兵、2002―2004)[原子力安全基盤調査研究費]・ X線顕微鏡による迅速材料診断技術の開発 (櫻井健次、2004―2006)[科学技術振興調整費]・ナノヘテロ金属材料の機能発現メカニズムの解明 に基づく新金属材料創製に関する研究(寶野和博、2000―2004)・ナノ メータX線アクティブ計測技術に関する研究(櫻井健次、2001―2003)・軽量耐熱Ti2AlNb合金の疲労破壊機構(荒岡 礼、2001―2002)[基礎的研究発展推進事業]・準周期構造を利用した新物質の創成(蔡 安邦、2002―2004)[NEDO産業技術研究助成事業]・スペースプレーン用高融点超合金の開発(御手洗容子、2000―2002)・超高効率ガスタービン用遮熱コーティング材の設 計及び開発 (村上秀之、2000―2002)・排ガス浄化触媒担体用金属間化合物箔の開発(岸田恭輔、2000―2002)・コンビナトリアルコーティングを利用したタービ ンシステム材料の開発(後藤真宏、2002―2004)[21世紀未研究分野研究開発プログラム]・構造材料の力学特性を支配するナノ組織の原子レベル評価 (寶野和博、2003 ―2004)[産・学・官共同研究事業(茨城中小企業公社)]・超軽量クローズドセル構造金属/セラミックス系複合材の開発 (岸本 哲、2003―2005)[新井科学技術振興財団]・電気化学的手法による溶融塩からの超伝導体MgB2にの合成 (阿部英樹、2002)[材料財団研究助成]・Ir基超高温材料の固溶強化に関する研究 (御手洗容子、2004―2006)[池谷科学技術振興財団研究助成]・強誘電体メモリー用難合成バルク層状単結晶の合 成と評価 (木村秀夫、2004)[日産科学技術財団若手研究者育成助成]・二酸化炭素発生の抑制に寄与する複酸化物ナノ粒 子の合成 (江場宏美、2004)[資生堂サイエンス研究ファンド]・環境センサー等に寄与する複合酸化物ナノ粒子の 作成方法に関する研究 (江場宏美、2004)[信越化学工業(株)研究助成]・希土類磁石と軟磁性材の保磁力機構解明に関する 研究 (寶野和博、2004)[三菱化学研究奨励基金]・超塑性を利用した格子欠陥制御による固体電解質の開発 (吉田英弘、2004―2005)[三菱財団自然科学研究助成]・超微細粒子分散高速超塑性セラミックスの創製 (森田孝治、2003―2004)[第6回宇宙場利用に関する地上研究]・包晶系における核生成と成長の速度論的研究(眞岩幸治、2002―2003)2. 5 国際共同研究覚書締結材料研究所では、国際的な研究協力を積極的に推 進するとともに、更なる連携の発展を図るため共同 研究覚書の締結を推進し、現在までに下記の10機関 と研究を行っている。・ Korea Advanced Institute of Science and Technology (Korea)(新耐熱材料用金属間化合物NiAl/Ni3Al箔 の開発に関する研究、平野敏幸、2002―2007)・ Research Institute of Industrial Science & Technology (Korea)(スマート材料・ヘルスモニタリングシ ステムの開発、新谷紀雄、2003―3008)・ The University of Pittsburgh (US)(半導体シリコ ンにおけるコヒートレントフォノン・電子励起の 超高速ダイナミクス、北島正弘、2003―2008)・ The University of North Carolina (US)(一次元ナノ “糸”の作製及び新性質・新応用の探索、唐 捷、 2003―2008)・ Max Planck Institute for Polymer Research (Germany) (自己修復単層及びポリマー物質によるストレス コントロール、北島正弘、2003―2008)・ Politecnico di Torino (Italy)(ナノ構造材料、プロ セス及び評価、吉原一紘、2003―2008)・ Council for Scientific and Industrial Research, MINTEC (South Africa)(超耐熱材料の研究、特 に白金族元素を有効活用した新合金の基礎から応 用に関する研究、原田広史、2004―2009)・ Thailand Institute of Scientific and Technological Research (Thailand)(セラミックス及び耐火金属 のプロセス技術及び環境腐食評価、野田哲二、目 義雄、升田博之、平賀啓二、土佐正弘、2004― 2009)・ Xi'an Jiotong University (China)(形状記憶合金、 強誘電材料、磁性材料等の機能材料及び材料評価 に関する協力、野田哲二、任暁兵、2004― 2009)・ Institute for Problems of Materials Science (Ukraine) (ナノ構造物質等に適した先進プロセス開発、目 義雄、2004―2009)以上の各機関の所在地を世界地図で表したのが図 1である。図1MOU締結機関の所在地2 . 6 萌芽的研究・金属ナノ組織の発現機構の解明とナノ組織材料の 特性向上に関する研究(寶野和博、2001―2003)・凝縮系における反応および励起のダイナミクス(北島正弘、2001―2003)・ミクロ・ナノ構造制御と機能特性に関する研究(目 義雄、2001―2003)・ Ni基非磁性高強度合金の高性能化と用途開発に関 する研究 (松本武彦、2001―2002)・ Ni3Al冷間圧延箔に関する研究(平野敏幸、2000―2002)・異材接合による複合部材の創製に関する研究(城田 透、2001―2002)・高融点金属の高性能化のための組織制御に関する研究 (藤井忠行、2001―2002)・構造材料と照射環境との相互作用に関する研究(永川城正、2001―2002)・先進高融点材料の高度化に関する研究(森藤文雄、2002)・近赤外領域に光吸収・発光を示す新規な有機色素の合成と物性 (砂金宏明、2002)・機能を持つSi化合物の探索(今井基晴、2001―2002)・強弾性物質における特異なmultiscale現象(任暁兵、2001―2003)・希土類原子の高エネルギー状態に関する基礎的研究 (小川洋一、2001―2002)・プラズマイオン注入による超硬物質被覆に関する 研究 (新野仁、2001―2002)・微小領域における各種エネルギー変換誘電体結晶 材料の開発 (木村秀夫、2001―2002)・固体の混合伝導挙動に関する研究(中村博昭、2002)・金属間化合物スパッタリング・ターゲット材料の 燃焼合成に関する研究(海江田義也、2001―2002)・大気腐食の寿命予測に関する研究(篠原正、2002)・燃焼合成プロセスで製造した金属間化合物の諸性 質に関する研究 (海江田義也、2003)・未知の磁気ネットワークを持つ量子スピン系の磁 性の研究 (長谷正司、2003)・微小造形のための微小コンポーネントの特性評価 に関する研究 (野田哲二、2003)・ Ni3Al基金属間化合物の圧延異方性制御(岸田恭輔、2004)・白金族金属基形状記憶合金の探索(御手洗容子、2003―2005)・原子炉炉内材料に及ぼす照射の影響(永川城正、2003―2005)・先端的プロセッシングによる高融点材料中の微量 元素の役割解明に関する研究(森藤文雄、2003―2005)・準結晶の構造と物性に関する研究(蔡 安邦、2004―2005)・非石油型エネルギー利用のための材料開発(松下明行、2002―2004)・光電効果を利用した新しい高輝度電子線源に関する研究 (木本高義、2002―2005)・低原子価典型金属元素の超原子価化を利用した新 規近赤外色素の合成 (砂金宏明、2003―2005)・アルカリ/アルカリ土類元素を含む機能物質に関 する研究 (今井基晴、2003―2005)・不均一構造をもつ磁気・誘電材料の機能発現と制 御 (名嘉 節、2003―2004)・点欠陥のナノ秩序による巨大圧電効果の探索(任 暁兵、2003―2005)・ナノ制御によるニチノールを超える高性能鉄系形 状記憶合金 (小林幹彦、2003 ― 2004)・弾性波フィルター用圧電体薄膜結晶の開発(木村秀夫、2003―2005)・プラズマイオン注入によるアンカー接合超硬質被膜の研究 (新野仁、2003―2004)・弾性波フィルターの分極特性に関する研究(中村博昭、2004―2005)・シリコン酸窒化中の応力検出(板倉明子、2004―2005)・多次元・多階層損傷計測による新材料開発に関する研究 (升田博之、2004―2005)・化学溶液法によるコロイド結晶の作製とそれらの 表面ナノ構造制御に関する研究(小澤清、2004―2005)・水素による省エネ的合金微粉末の作製(奥山秀男、2004―2005)・微小コンポーネントのその場計測に関する研究(土佐正弘、2004―2005)・スペーストライボロジー材料の開発に関する研究(笠原 章、2004―2005)・長尺シリコンナノワイヤーの作製技術と特性評価 (鈴木 裕、2004―2005)3. 5年間の組織の成果3.1研究トピックス材料研究所における特筆すべき主要な研究トピッ クスを年度別に下記に示す。[2001年]・金属やゴムのように加工し易いセラミックスを開 発(Nature誌掲載)・金属強弾性合金AuCd形状記憶合金に点欠陥によ る特異なmultiscale現象を発見・In-Ag-Ca及びIn-Ag-Ybの安定な準結晶を発見[2002年]・ Ni3Alの長尺箔(23μm)の作製に成功・ Ti2AlNbでW添加とTiB粒子分散により機械的特性 の大幅向上・耐用温度(137MPa,1000 h)1100℃を達成し、 1150℃で使用可能な材料を提案。・高融点材料のIr合金で耐用温度1750℃を達成。・セラミックスで10-2s-1以上での高速変形を実現・耐熱高活性準結晶触媒の開発(銅系触媒のシンタ リングの問題を解決)・電場、強磁界印加コロイドプロセスを開発し、配 向制御構造体の作製に成功[2003年]・Ni3Al箔を用いたハニカム構造体の作製に成功し、 水素形成反応における優れた触媒特性を発見・ ZrO2-スピネル-Al2O3で、歪速度10-2s-1以上で最高 2500%の引張延性、1300 ―1350℃の加工温度を達 成・粒子アセンブル技術により微小球ダイヤモンド型 フォトニクス結晶を作製・半導体シリコンにおける電子と格子振動との量子 干渉のフェムト秒観測に成功(Nature誌掲載)・ Fe-BaTiO3等で巨大電歪効果を発見(Nature Material誌掲載)・フォトカソード電子源の電子線束測定装置を開発・鉄系形状記憶合金で初期歪4 %で90%以上の形状 回復を達成・放射光を用いて100万画素0.1秒の高速X線顕微鏡 を開発・スーパーケルビンフォース顕微鏡により腐食初期 過程を解明・燃焼合成技術によるMgB2の高性能材料作製技術 を開発[2004年]・圧縮で降伏応力1.9GPa、破壊応力3.5GPa、伸び 40%を示す、超高強度バルクナノスチールを創製・異方性Sm(Co,Cu)5/FeCoナノコンポジット多層膜 で、SmCo5単相の理論限界を超えるエネルギー積 を実現・ ZrO2系で1300℃/0.01s-1の低温化・高速超塑性を達 成し、高速深絞り型成形性を実証・開発単結晶超合金TMS-138を経済産業省ジェット エンジンプロジェクトのIHIにおける超音速エン ジン試験にて、ガス温度1650℃で評価、成功裏に 終了 (2004.3)・鉄系形状記憶合金で4 %の回復歪、300MPa以上 の回復応力達成・ Warm Spray法によって緻密で低酸素含有量 (1mass%以下)のチタン膜を大気中で形成。・電気メッキ法によるMgB2超伝導線材開発・ CNTAFM探針の作製に成功・高品質六ホウ化物単結晶ナノワイヤの作製に成功・ CuO二重鎖の高温超伝導の発見・電池材料、磁性材料、強誘電体、超伝導体につい て化学溶液法による低温合成方法を開発・スマート光学材料(構造色を呈するゴムシートで 弾性変形によって構造色が変色)を開発3. 2産業界との連携材料研究所では、「国民の生活の向上に関わる材 料開発に関し、企業との共同開発が可能となるよう な基盤的研究の推進」を大きな目標として設定し、 企業との共同研究を積極的に行ってきた。3. 3に 示す特許件数、企業との共同研究数、及びその推移 がこれを裏付けている。代表的な内容を以下に示す。 中でも「巨大電歪み効果」は基礎的な萌芽的研究か ら生まれた成果であり、大きなインパクトがあるこ とから、企業6社との共同研究プロジェクト推進に つながった例である。各研究の詳細については担当 グループの内容を参照していただきたい。・従来の電歪効果の40倍という桁違いに大き巨大電 歪み効果の発見(民間6社と共同研究開始)・鉄系形状記憶合金によるパイプ接合法等の実用化 共同研究及び建築構造物の制振技術の開発・開発した超耐熱合金を用いた、企業との共同研究 によるコジェネ用小型ガスタービンの実用化研究・開発単結晶超合金TMS-138を経済産業省ジェット エンジンプロジェクトの参加企業における超音速 エンジン試験にて、ガス温度1650℃で評価・腐食の損傷モニター装置開発と大気腐食試験装置 の製品化・ガスシュラウド付きHVOF (High Velocity Oxygen Fuel Thermal Spray)の特許許諾・ポータブル海塩粒子測定装置の製品化・強磁場コロイドプロセスによるセラミックス配向 作製技術に関する共同研究実施・準結晶粒子強化Mg合金の実用化のための共同研 究・開発したNi基単結晶合金を合金メ ーカーにライセ ンス・開発したNi基単結晶合金の評価試験を国外企業と 実施3. 3 5年間の論文数、特許数、研究会開催等材料研究所の年毎の発表論分数、特許、共同研究 等のリストを表1に示す。発表論分数は、2年めで 減少しているが、これは新規研究ユニットの立ち上 げにより材料研究所の研究者数が減少したためで、 研究者一人当たりでは年々増加し、中期計画目標で ある2.0報/人を達成している。論分数が増加しているとともに、トピックス等で も紹介したようにNature誌などのインパクトファク ターの高い雑誌での掲載が増加している。これらは、 独立行政法人化に伴い、新たに導入された個人業績 評価制度の影響によるところが大きい。特許出願数は大きな変動はないが、一人当たりで は、2年目に急増して、その後は維持している状況 である。成果の普及を図る上で、国際会議やワークショッ プの開催も重要である。材料研究所のメンバーが主 催もしくは共催した主な国際会議を下記に示す。・第11回日独化学情報ワークショップ11th German-Japanese Workshop on Chemical Information 2003.6・第1回MINS-RISTスマート材料ワークショップ1st NIMS-RIST Workshop on Smart Materials 2003.7・ X線・中性子による薄膜ナノ構造および埋もれた 界面の先端解析技術に関するワークショップ New opportunities for nano-structure of thin films and buried interfaces : Advanced characterization using X-rays and neutrons 2003.7・ナノ粒子研究会第21回講演会21st Symposium of Nano-particles Forum 2003.7・金属材料研究者のための小角散乱セミナー「ナノ メタルの定量解析を目指して」Small Angle Scattering Seminar“Towards quantitative analysis of nanometals” 2003.9・第5回PACRIMセラミックス国際会議「ナノマテリアルズとナノテクノロジー」5th International Meeting of Pacific Rim Ceramic Society“Nano Materials and Nano Technology” 2003.9・第10回 準結晶研究会10th Workshop on Quasicrystals 2003.10・ IUMRS-ICAM 2003,シンポジウム「化学反応場制御による革新的材料合成」 IUMRS-ICAM 2003, Symposium“Innovative Materials Processing by Controlling Chemical Reaction Fields” 2003.10・ナノ構造材料に関する日伊協力Japan-Italy collaboration on nanostructured materials 2003.10・第2回MINS-RISTスマート材料ワークショップ 2nd NIMS-RIST Workshop on Smart Materials 2003.12・粉体工学関東談話会講演会および見学会 Symposium of Powder Technology of Kanto division 2004.1・第3回スマート材料国際会議3rd International Symposium on Smart Materials 2004.3・第1回つくば国際(日独)コーティングシンポジ ウム1st Tsukuba International (Japanese-German) Coatings Symposium 2004.5・ PF ・ KENS合同研究会「ナノサイエンス・テク ノロジーと放射光/中性子反射率法」 Synchrotron radiation and neutron reflectometry for nano sciences and technologies 2004.7・ IUMRSのセッションとして“協奏反応場を利用し た新規材料プロセスに関するシンポジウム” “Symposium of Innovative Materials Processing by Controlling Chemical Reaction Fields” as a session of IUMRS 2004.10・第10回極限場研究に関する国際シンポジウムThe 10th International Symposium on Advanced Physical Fields (APF-10) 2005.3表1発表論分数、特許出願数等の年次変化2001年 2002年 2003年 2004年論文数 349 155 208 172プロシー ディング160 87 75 84特許出願 95 89 97 87登録 17 14 34許諾 2 1 1企業との 共同研究23 38 29国際共同 研究13 8 27(MOU締結) 1 8 11職員数 206 91 89 84研究会開催 12 44.ユニットがカバーしている研究分野の動向材料研究所内の各分野における研究動向の詳細は 各担当のグループの項を参照して頂きたい。また、 当機構の情報誌「NIMSアウトルック」でも、物 質・材料研究の今後の展望としてまとめた記事が掲 載されている。材料研究所の活動としては、「非鉄金属材料構造 材料の展開に関する調査研究(平野敏幸、2003―2005) 」を実施し、環境・エネルギー分野における 非鉄金属材料の有望な研究開発シーズの探索を行っ た。その結果、Ni3Al箔体のマイクロリアクターへ の応用、航空機エンジン用の高強度耐熱チタン合金 や生体関連用低弾性チタン合金の開発、マイクロセ ル構造を有する金属材料、形状記憶合金薄膜のマイ クロアクチュエータへの応用、MEMS作製用Si系ナ ノワイヤー等の微細加工技術、可視光レーザー光硬 化プロセスによる微小造形法、マイクロマテリアル の信頼性確保に必要な微小領域での腐食機構解明、 等を重要課題として抽出した。これらの調査の結果 は、次期中期計画におけるプロジェクト課題の提案 に生かされている。また、複合材料に関しては軽量高機能構造材料と しての期待が高く、今後の重要な研究分野と考えら れることから、材料研究所では2003年度に新たに複 合材料研究グループを立ち上げ、FRP, CMC, MMC及 びナノ複合材料を対象として、優れた機械的特性と 高信頼性を兼ね備えた複合材料の実現を目指してい る。高比強度材料グループの5年平野敏幸、荒岡礼「2003.3退職」、江村聡、岸田恭輔「現京都大学、2005.3退職」、北澤宏美、岸田恭輔「現京都大学、2005.3退 職」、S.H. Kim「現サムスン電子、2004.2」、小林覚「現Max-Planck Inst. Eisenforschung、2002.10」、許亜、G. Cao「現浙江大学S.H. Song「現KAIST、2005.2」、S.Zaefferer「現Max-Planck Inst. Eisenforschung、2002.3」、高梨基宏、F. Tang「現UCDavis 校、2002.8」、 D.H.Chun、C.Y Cui「現超耐熱材料グループ、2004.6」、出村雅彦、中村玄徳、萩原益夫、G.He「現上海交通大学、2005.4」、Y.Mao、松本武彦「現エコマテリアル研究センター、2003.3退職」、Y.Ma、S.J. Yang「現サムスン電子、2004.2」、D.Q. Li「現Alfred 大学、2003.1」1.目的本グループは、軽量で高強度(高比強度という) の構造材料の開発を目的としている。宇宙航空、エ ネルギー、生体などの分野では優れた構造用高比強 度金属材料の要求は不断にあるが、成熟したといわ れるこの分野では、斬新な材料開発が難しく、ブレ ークスルーが望まれている。本グループでは、この 要求に答えるべく、Ni基およびTi基金属間化合物を として取り上げ、製造技術と特性向上など新しい構 造用材料の開発を目指している。また、ジェットエ ンジン、自動車エンジン、燃料改質器、人工骨、高 圧発生装置など、新たな用途開拓を目指している。2.活動の経緯グループ発足時は、Ni基非磁性高強度合金(松本 武彦担当)、Ni3Al冷間圧延箔(平野敏幸担当)、Ti 基金属間化合物(萩原益夫担当)の3材料の研究で 開始した。2002年からは、Ni3Al冷間圧延箔とTi基 金属間化合物の研究を継続している。主な研究成果は、(1)世界で初めてNi3Alの冷間 圧延箔を製造し、ハニカム構造体の組立に成功した こと、Ni3Alの触媒特性を発見したこと、(2)クリ ープ特性に優れた新しい3種のTi基金属間化合物 (Ti-22Al-20Nb-2W, Ti-22Al-12.5Nb-2Cr-2W, Ti- 22Al-11Nb-1Fe-2Mo)を開発したことである。5 年間の主な研究プロジェクトは、次のとおりである・ NEDO産業技術研究助成事業「排ガス浄化触媒担 体用金属間化合物箔の開発」(2000.4-2002.3)・ NIMSプロジェクト研究「加工性に優れた高効率 先進構造材料の開発に関する研究」(2001.4- 2006.3)・ NIMS萌芽的研究「Ni基非磁性高強度合金の高性 能化と用途開発に関する研究」(2001.4-2002.3)・ NIMS重点研究「非鉄金属系構造材料の研究」 (2004.4-2006.3)この間、中国、韓国、ドイツの研究グループと共 同研究を進めるとともに、客員研究員、ポストドク ター、大学院生を多く受け入れ、活発に研究を進め た。3. Ni3Al冷間圧延箔の研究成果本グループでは、1990年、Ni3Alの欠点である脆 さを一方向凝固によって改善する方法を開発した。 微量のボロン添加によらないこの方法は、ボロン添 加法よりもはるかに大きな延性改善効果がある。この延性のあるNi3Alを冷間圧延し、図1に示すよう に世界で初めて厚さ23μmの薄い箔を製造すること に成功した。金属間化合物は脆く、冷間圧延が困難 な場合が多いが、箔製造は画期的成果である。図123μmの薄いNi3Al冷間圧延箔本研究では、箔製造から成型・組立、用途開発に わたる分野における重要な技術の基礎研究を展開し た。箔製造については、冷間圧延箔の微細組織・集 合組織の解析し、それに基づいて冷間圧延変形機構 を解明した。また、Ni3Al/Ni2相合金の冷間圧延箔 の製造に成功した。箔の組織と機械的性質の制御に ついては、熱処理による調質技術を確立した。成 型・組立については、コルゲート加工、レーザー溶 接法を研究し、図2に示すように、Ni3Alハニカム 構造体の試作に成功した。用途開発については、メ タノール分解による水素製造反応に対する触媒特性 を発見し、燃料電池改質器への応用の可能性を見出図2 Ni3Alハニカム構造体した。以下に、熱処理による機械的性質の制御技術 と触媒特性のトピックスを述べる。3 .1 熱処理によるNi3Al箔の機械的性質の制御強加工したNi3Al冷間圧延箔は歪が多量に蓄積さ れているので、破断強度は非常に高く、ほとんど延 性がない。また、曲げ変形に対しては大きな異方性 があり、そのままでは製品への2次成型加工が困難 である。冷間圧延箔の機械的性質を調質する必要が あり、本研究では熱処理時の再結晶・粒成長を利用 する方法を確立した。Ni3Al冷間圧延箔は、600℃以上の温度で再結晶し、 次いで粒成長する。特徴は、図3に示すように、強 い(110)冷間圧延集合組織が、再結晶後では複雑 な集合組織に変わり、次の粒成長段階で再び冷間圧 箔と同じ(110)集合組織に戻ることである。この 集合組織の回帰現象は、他の金属でも報告がない珍 しい現象である。粒成長した箔の結晶粒界は、結合 力の高いΣ1、Σ3が大部分を占めるため、大きな室 温延性を示す。また延性の異方性もなく、2次成型 加工が可能になった。図2のハニカム構造体のコア は、粒成長まで熱処理したものをコルゲート加工し たものである。図3熱処理した箔の結晶方位と室温引張性質3 . 2 Ni3Al箔の触媒特性Ni3Alの触媒特性はこれまで報告がない。本研究 では、Ni3Alが粉末、箔のいずれの形態でも、メタ ノールを分解し、水素を生成する反応を促進する触 媒特性を示すことを発見した。図4に示すように、 箔の場合、440℃以上で触媒活性が現れ、水素が生 成する。触媒活性、転換率、選択率の温度依存性、 安定性などの反応特性を明らかにした。特筆すべき ことは、カーボンナノファイバーに数10nmオーダ ーのNi超微粒子が担持した構造が触媒反応中、 Ni3Al箔表面に自発的に生成することを見出したこ とで、これが触媒活性発現の原因である。メタノール、メタンから高効率、低価格で水素を 製造する改質器の開発は、燃料電池の実用化にとっ て重要な課題である。図2に示したハニカム構造体 は、さらにセルを高密度、微細化すれば水素製造装 置として利用できる。マイクロチャンネルからなる 積層型のマイクロリアクターも試作しており、この 分野への発展が期待できる。図4 Ni3Al箔のメタノ ール分解反応に対する触媒特性3.3今後の研究展開Ni3Al箔は、本グループで初めて製造に成功した 素材であり、耐熱性に加えて触媒特性が明らかにな った。触媒と耐熱構造特性の2つの特性を持つ Ni3Alは、他に例を見ない材料である。次期中期計 画では、燃料電池のマイクロリアクター型改質器へ の実用化を目指して、触媒特性のさらなる向上、容 器材としての適正化を図る計画である。4. Ti基金属間化合物の研究成果軽くて強いチタンは、今後更に、耐熱構造部材の 分野で必要性が高まると期待されている。またチタ ンは生体親和性にも優れていることから、高齢化社 会の出現に対応して、生体関連の分野でも大きな需 要が見込めると予想されている。しかしながら、既 存のチタン合金は稠密六方相(hcp相)を主体とし ているため加工性能に劣り、製造コストは著しく高 い。このため、これら二つの分野への応用は限られ、 関連業界全体の発展も妨げられるのではないかと危 惧されている。近年、加工性能に優れた結晶相(具体的には、体 心立方相(bcc相)、体心立方規則相(B2相)あるい は斜方相(O相))を主要な構成相とするチタン合 金が、高加工性軽量材料として有望視され始めてい る。しかしながら、これらの高加工性チタン合金は、 従来、室温用の高強度構造材料に分類されていたた め、高温用途あるいは生体用途に適合した最適組成、 最適組織、最適製造プロセスなどを明確にする研究 は極めて不十分である。このような状況を鑑みてこの5年間のチタン研究 では、高温用途及び生体用途にターゲットを絞り、 これらの二つの用途分野に適合した新しいタイプの 高加工性の先進高強度チタン合金の開発を試みた。 即ち、高温用途のチタン合金に関しては、Ti2AlNb (O相)基合金を対象として、組成制御、金属組織 制御及びナノ寸法TiB粒子の複合化の研究を行い、 高加工性の高強度軽量耐熱チタン合金の開発を試み た。また生体用途のチタン合金に関しては、Ti- (Ta,Nb) -Cu-Ni-Siナノ構造金属ガラス合金を対象に、 人体に為害作用のあるNiをFe、CoあるいはCrで置換 する、などの組成制御を行い、高強度、低弾性率チ タン合金の開発を試みた。このようにこの5年間で は二種類の研究を同時並行的に進めたが、研究努力 の大部分はTi2AlNb (O相)基合金の開発に向けられ たので、本報告では本合金の開発に関する研究の概 略を記すことにする。4.1 軽量耐熱Ti2AlNb (O相)基合金の開発チタン合金は軽量かつ高強度であるが、高温特性 がニッケル合金と比較して大幅に劣るという欠点を 持つ(チタン合金の使用上限温度:600℃、ニッケ ル合金の使用上限温度:l,100℃)。一方γ-TiAl金属 間化合物は、850℃までの使用に耐え得るとされて いるものの室温延性が極めて乏しく、また破壊靱性 値が低い、などの致命的な欠点を持つ。このように 600℃以上の使用に耐える軽量耐熱材料は不在であ り、このような状況から、例えばジェットエンジン 部材のように軽量であることが要求される部材にお いても、600℃以上の温度域では重たいニッケル合 金を使わざるを得ないのが現状である。従ってこの 温度域で使用可能な新しいタイプの軽量耐熱材料の 開発は必要不可欠であり、かつ緊急な課題である。今から15年ほど前に、Ti-Al-Nb 3元系において Ti2AlNb化合物相が存在することが見出された。斜 方晶の結晶構造を持つことからO相と名づけられ た。本化合物相の特性を調べたところ、γ -TiAl、 α2-Ti3Alなどの既存のチタン系合金よりも加工性、 破壊靱性に優れているが判明し、これより本化合物 相は信頼性の高い新しいタイプの軽量耐熱材料とし て注目されるに至った。とは云えTi-6Al-4Vなどの通 常のチタン合金と比較して靱性、延性は低いので実 用材の開発に際しては、高温相であるB2相(CsCl型 構造)を金属組織中に組入れ、これらの特性値の改 善を図っている。今までに開発された代表的な (O+B2)型の合金として、Ti-22Al-27Nbが挙げられ る。しかしながら現状ではO相基合金は、γ-TiAlや ニッケル合金と比較して、650℃以上の温度域で軟 化が始まる、一次クリープ歪みが1%にも達し極め て大きい、などの欠点が指摘されており、従って、 650 ℃以上の温度域での高温特性の改善が必須の検 討事項である。また本合金のより一層の信頼性確保 の観点からは、優れた高温特性と優れた室温特性と が両立可能な金属組織法を確立することが重要であ る。本研究はO相基合金のこのような欠点を克服し、 高信頼性の新しいタイプの軽量耐熱材料を開発する ことを目的としたものである。この目的を達成する ために、組成制御、金属組織制御及び粒子複合化に 関する三つの研究を同時に遂行してきた。4.1.1組成制御組成制御は、より高温強度特性が優れたO相基合 金の開発を意図したものである。代表的なO相基合 金であるTi-22Al-27Nb (Reference)のNbの一部を他の bcc元素で置き換えたTi-22Al-20Nb-2W, Ti-22Al- 12.5Nb-2Cr-2W及びTi-22Al-11Nb-1Fe-2Mo合金では、 クリープ特性は著しく向上することを見出した(後 者の二合金の例は図5参照)。W添加によるクリー プ特性の向上の機構を透過電子顕微鏡(TEM)観察 などから検討した。Ti-22 Al-27Nbにおいて、700℃ 以上の温度域においてクリープ特性が劣化するの は、クリープ試験中にB2相からO相への変態が生じ るためであると判明した。即ち変態時にO-B2界面 において柱面(プリズマチック)転位が発生し、柱 面上でのすべりが活発化するからである。一方Wを 添加した場合にはB2相が安定化されるためにB2相 からO相への変態は抑制されていた。従って、B2/O 界面での転位の発生及びすべり活動は抑制されクリ ープ特性の向上に結びついていた。このような実験 事実とは別に、別な要因として、Wの添加によりB2 相が固溶強化され、O相基合金の室温及び高温での 特性向上に寄与したことが考えられる。またB2相中 での規則格子ペア転位から通常の一本の転位への転 移が高温側にシフトし、高温特性の向上をもたらし たことも考える。これらの二つの可能性は今後の検 討課題である。図5各種実験合金のクリープ特性4.1.2 金属組織制御O相基合金の用途によっては、信頼性確保の観点 から、素材は十分な室温延性を有していることが必 須の条件である場合も考えられる。室温延性を付与 するためには結晶粒径を細かくすることが効果的で ある。しかしながらチタン系合金においては、加工 熱処理により結晶粒径を数十ミクロン程度にまで微 細化することはほぼ不可能である。材料中のTiの拡 散が極めて早いために、圧延材あるいは鍛造材を高 温の単相域に僅��かな時間保持しただけで粒径は数百 μmにまで急激に粗大化してしまうからである。本研究では(α2+B2)二相域圧延材を再度(α 2+ B2)域に過熱した際に形成される等軸相を粒界 ピン止め効果に利用するという結晶粒径制御法を考 案し、その結果、B2結晶粒径を8μm～200μ mの範 囲に制御することに成功した。B2結晶粒径が細かく なるにつれて引張り強さ、延性は大幅に向上した。 粒径が8μ mの時には16%の室温伸びが得られた (図 6)。図6 Ti-22Al-27Nbの室温延性に及ぼす粒径の効果4.1.3ナノ寸法TiB粒子の複合化本研究では、“耐熱性のセラミック粒子を分散さ せることも耐熱性の向上に有効ではないか!”との 視点に基づいて、TiB粒子強化型のO相基合金を製 造した。粒子の分散による特性の向上は、分散粒子 が微細であればあるほど顕著となることから、本研 究では超急冷凝固法の一手法であるガスアトマイズ 法を用いて粒子の複合化を試みた。分散粒子は、熱 的に安定であること、ヤング率が高いことなどを考 慮してTiBを選択した。また分散粒子の体積分率は、 従来の粒子強化型複合材料のデータを参照して 6.5%とした。Ti-22Al-27Nb/6.5TiB複合材では、Ti-22Al-27Nb基 質材と比較して、引張り強さ、高サイクル疲労、ク リープ、ヤング率など、多くの特性は向上すること を確認した。4 . 2今後の展望本研究により、Ti2AlNb (O相)基合金の高温特 性、室温延性などは、組成制御、金属組織制御及び 粒子複合化により向上することを確認した。新しい O相基合金としてTi-22Al-20Nb-2W、Ti-22Al-12.5Nb- 2Cr-2W及びTi-22Al-11Nb-1Fe-2Mo合金を見出したの は本研究の大きな成果である。平成18年度から始ま る中期計画期間中にはこれらの組成合金を中心に据 えて組成制御、組織制御をよりきめ細かく行い、特 性のより一層の高度化を試みたい。また、高温圧縮 変形シミュレーション試験、恒温鍛造試験などによ り、部材の製造を想定した材料学的評価を行い、実 際の部品の製造に結びつけたい。5.研究成果のまとめ2001年 2002年 2003年 2004年 2005年論文 19 12 21 17 15特許 2 1 3 2 2MOU 0 1 0 0 0共同研究 3 2 2 1 1研究会 0 0 3 0 0高融点微結晶材料グループの5年平賀啓二郎、上平一茂(現材料情報基盤ST、2003.4移動)、金炳男、吉田英弘(2005.4～)、森田孝治、定年退職者一名(2003.3)1.発足の経緯と目的多結晶体の高温変形・破壊機構に基づいて、高温 で金属のように高速で自在に塑性加工できるセラミ ックス(高速超塑性セラミックス)の創製を主課題 とするグループとして発足した。母体は独法化前の 力学特性研究グループ(当初は強力材料研究部)第 3研究室であり、約25年の間、歴代メンバーが金属 や金属間化合物の加工集合組織、動的再結晶、相変 態、水素脆性、さらにセラミックスの疲労破壊、超 塑性、損傷発生成長、結晶粒成長等の基盤的研究で 内外第一線の成果を上げてきた経緯を持つ。これに、 再結晶を用いて高融点金属(Mo)の巨大結晶を作 製する手法を創出したグループが加わり、現グルー プとなった。本グループでは材料創製には新たな基盤的知見の 獲得と統合が不可欠との立場をとってきた。上記の 目的の達成を図るために、粒界・粒内の構造と組成、 超塑性変形との関係、変形に関わる粒界移動・結晶 粒成長・高温粒界すべり挙動、粒界損傷の発生・成 長挙動についても実験と理論解析による解明を目指 してきた。粒界結合とイオン伝導や拡散との関係に ついても研究を着手した。微粒子プロセスグループ とも連携して下記プロジェクトと萌芽的研究3件と を実施した。○高加工性セラミックスの創製(2001.4～2006.3) ○ナノ組織酸化物セラミックス(2004.4～2006.3) ○酸化物セラミックスの塑性加工技術の開拓 (2004.4 ～2006.3)2.主要成果2.1 高速超塑性セラミックスの創製Al2O3、 ZrO2(3Y)、 MgO ・ nAl2O3の 3 相から構成さ れる系で高速化の可能性を見出した(Acta Mater., 49 (2001)887)。検討の結果、これらの相がほぼ等 量の微結晶材料で、最大の変形速度が1s-1(従来の 約104倍)に達する超塑性を世界で始めて実現した (図1(a))。従来の速度限界を大きく越えるもので あり、Natureに掲載された(Nature 413(2001)288)。 またこの材料は、約10-1s-1の速度で2500%にも達す る巨大な引張延性を示すことが明らかになった (Scr. Mater., 48(2002) 775) 。さらに本研究を通じて、 以下の新たな知見を得た。・変形曲線にyield dropが現れる(図1(c))。・超塑性変形中に、結晶粒(セラミックスでは一般 に剛体と見なされる)が粒内転位の活動によって ある程度変形する(図1(d))。・粒界損傷が強く抑制される。これらの現象はZrO2(3Y)-30%MgAl2O4でも見出され (J. Am. Ceram. Soc., 85 (2002)1900, Philos. Mag. Lett., 83 (2003) 533)、いずれも10-1～100s-1域での高速変形 が実現したことと深く関係すると結論された。今後、 より低い温度で高速超塑性を示す材料を開発する上 でも、極めて重要な知見である。図1Al2O3-ZrO2(3Y)-MgO・nAl2O3系で達成した高速超 塑性(Natureに掲載):(a)引張試験片、(b) SEM組織、 (c)変形曲線、(d)変形後の粒内(ZrO2) TEM組織2. 2 超塑性セラミックスのネットシェイプ成形高速超塑性材料の創製とともに、その応用に必要 な基盤研究として、塑性成形について研究を実施し た。図2に示すように、表面亀裂などを発生させず に半球状にまで深絞り成形することが可能であった。図2 ZrO2基材料の超塑性成形2 . 3 極微細粒化による高強度ジルコニアの開発 高速超塑性を示すZrO2(3Y)-30%MgAl2O4を対象と して、高エネルギーボールミル粉砕と混合による粉 体粒子のナノ化(粒子径約10nm)と放電プラズマ 焼結による緻密化を行い、焼結後の粒径を約90nm にまで微細化できた。その結果、超塑性発現温度の 低下に加えて、破壊強度を2.5GPa域にまで大きく向 上させることに成功した(図3 : Scr. Mater., 53 (2005)1007)。2 . 4多結晶体における高温変形の理論解析多結晶体の高温変形や結晶粒成長の理論解析とシ ミュレーション(図4)を行い、基礎的事象の解明 を図った。粒成長については寸法分布と成長速度の 理論的関係(Mater. Trans 44 (2003) 2239)を明らか にした。変形については、拡散機構とエネルギーバ ランス法に基づいた解析により、粒界すべりおよび 粒の回転、拡散による調整機構、巨視的なひずみ速 度の間の相互関係(Acta Mater 53 (2005)1791)、結 晶粒の形状(Philos. Mag.. 83 (2003)1675)や寸法分図3 ZrO2(3Y)-30%MgAl2O4系高速超塑性材料のナノ 組織化と高強度化)図4 動的粒成長を伴う拡散クリープ:粒の成長、消 滅、伸張、衝突や位置変化が同時に生じる布(Philos. Mag.. 85 (2005) 2281)との関係を明らか にした。これより、通常は無視されている粒界の粘 性抵抗の占める割合が結晶粒の微細化と共に大きく なり、ひずみ速度が低くなる(変形しにくくなる) ことが明らかとなった。実際に、このような実験結 果が最近報告されている。本解析結果はその原因を 説明するとともに、極微細粒化と高温特性の関係の 設計に不可欠の情報を与える。2. 5超塑性変形挙動の解析応力―ひずみ速度関係の精密計測、変形時の結晶 粒・粒界・粒内における構造・組成・組織変化の解 析、高温変形の基礎理論に基づいて、ZrO2(3Y)や新材 料の変形機構を明らかにした。精密計測、動的粒成 長を考慮したデータ解析(図5 (a))、粒内構造変化 の検討(図5b))から、ZrO2(3Y)超塑性における粒内 転位活動の関与(Acta Mater.,50 (2002)1075、Philos. Mag. Lett., 81(2001)311、閾応力の存在確認と起源 の考察(Philos. Mag. Lett., 83 (2003) 97)、Si4+ ドープ の影響(Acta Mater., 52 (2004) 3355)について新た な知見と理解が得られ、高速化の指針となった。図5 微細粒ZrO2(3Y)の変形挙動解析:(a)変形応力- ひずみ速度関係、(b)変形後の粒内構造(TEM像)2. 6粒界損傷挙動の解析超塑性変形で不可避的に生じる粒界損傷の寸法- 数密度分布 (図6)の解析から、損傷発生・成長の 過程、速度、関与するプロセシング因子(J.Am. Ceram. Soc., 85 (2002) 2763)や超塑性破断の条件 (Z.Metallkude., 95 (2004) 559)を明らかにした。また、 損傷核の連続発生・塑性成長・合体を組み込んだモ デルの構築とシミュレーションによって損傷蓄積の 諸相を明らかにした(Metall. Mater. Trans. 33A (2002) 3449)。2.1～2. 6節の知見の統合から、粒界損傷を 抑制して高速化を実現するための組織・組成の設計 指針を導いた(J. Ceram. Soc.Jpn.,113 (2005),191)。以上の研究成果の公表状況を表1に示す。表1研究成果の発表H13 H14 H15 H16 H17論文件数 8 6 11 9 7プロシーディングス5件、解説・総説9件、特許2図6粒界損傷の寸法分布解析(ZrO2-分散Al2O3)3.今後の研究方向材料創製と基本事象の実験・理論解析を通じて培 った基盤を発展させ、次世代材料の創製に取り組む。 とくに、図7に示すような粒界の局所構造・組成と 輸送現象・粒界移動・高温塑性・強度・熱物性との 関係を重視し、基本特性(耐熱高強度)に導電性、 高温可塑性、耐化学浸食性あるいは光学特性を洗練 して重畳させた多機能性バルク材料の創製を目指す 予定である。図7 今後の方向:粒界のナノ構造・元素分布・結合 状態と輸送現象や物理特性との関係の解明と設計によ る新機能材料の創製5年の歩み:超耐熱材料グループ原田広史、新井智子、ANG,Jestine、葉安洲、伊津野仁史、呉豊「現三菱伸銅株式会社、2003.12退職」、Rudder WU「現Imperial College (英国)(学生)、2005.8退職」、Markus WENDEROTH「現 University of Bayreuth (ドイツ)(学生)、2005.3退職」、大沢真人、 大畠宏文、小熊英隆「三菱重工業株式会社、2005.11～」、尾高聡子、川岸京子、北嶋具教、谷月峰、CORNISH, Lesley「MIMTEK、 2005.10」、郭洪波「現溶射G、2004.4異動」、小泉裕、河野朱美「現日立ハイテクノロジーズ株式会社、2005.3退職」、小口英雄、 小林敏治、佐藤彰洋、佐藤敦史、佐藤昌弘「現川崎重工業株式会社、2003.3復職」、沙江波、白石春樹「2005.3退職」、酒井高行 「電力中央研究所、～2004.3」、柴崎倫男「芝浦工業大学、～2003.3」、杉本武、鈴木彩「芝浦工業大学、～2004.3」、鈴木崇宣「芝 浦工業大学、2005.4～」、DOUGLAS, Alistair「MIMTEK、2005.10」、種池正樹「三菱重工業株式会社、2005.10～」、田村至、崔傳 勇、周浩「現 Queensland University of Technology (オーストラリア)、2003.11退職」、張建新、中澤静夫、PHASHA, Maje Jacob 「University of Limpopo (南アフリカ)、2005.8 ～2005.12」、PARASURAMAN, Kuppusami「Indira Gandhi Centre for Atomic Research、 2002.2 ～2003.8」、坂内英典、平徳海、V_LKL, Rainer「University of Bayreuth (ドイツ)、2003.10～2004.10」、VORBERG, Stefan 「University of Applied Sciences Jena (ドイツ)、2005.3 ～2005.12」、黄晨「現 China Institute of Atomic Energy (中国)、2005.7退職」、 福本倫久「2001.9退職」、藤岡順三、VOLOTOVA, Tatiana、松本一秀、Kyle MARTE「現 University of British Columbia (カナダ) (学生)、2005.8退職」、御手洗容子、宮本伸樹、村上秀之「現溶射G、2005.4異動」、村雲岳郎、横川忠晴、WRIGHT,Paul 「2002.10退職」、LUCAS,Philipp、 REED,Roger 「Imperial College (英国)、2005.4」、呂芳一、脇真宏「現株式会社キグチテクニ クス、2004.9復職」、王錦程「現Northwestern Polytechnical University (中国)、2004.9復職」1.研究の目標CO2削減、地球温暖化防止などを目的として、新 世紀耐熱材料プロジェクト(第一期:平成11―17年 度)を推進した。プロジェクトでは、以下に述べるように、材料設 計、組織解析などを基礎に、137MPa、1000時間で のクリープ耐用温度にて1100℃のNi基超合金、 1500℃のSi3N4系セラミックス(物質研担当)、 1800°Cの高融点超合金の開発に取り組んだ。また、 民間企業や宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと 協力して、超高温仮想タービンの開発とそれを用い た開発材料の評価や、実機ガスタービンでの実証試 験を行い、ガスタービンやジェットエンジンの高温 化・高効率化への効果を実証した。2.材料設計解析新耐熱材料開発に必要な材料設計法の開発と組織 解析を行った。これまでに、①貴金属元素(Ir、Ruなど)を添加した第4、第5 世代Ni基超合金に関して、任意の組成、温度、応 力条件に対してミクロ組織因子とクリープ強度な ど高温特性を予測する合金設計プログラムを開発 した。②熱力学および統計熱力学計算をベースとしたフェ イズフィールド法計算により、超合金のミクロ組 織形成過程を組成、温度、外部負荷応力条件から 予測するシミュレーション法の基本プログラムを 開発した。③超合金の構成相であるγ、γ'相の弾性定数、格 子定数ミスフィットなどの物性値を高温で測定す るとともに、これらを用いてミクロ組織変化の3 次元有限要素法計算プログラムを作成し、高温で 安定なミクロ組織形状の予測を可能にした。④1150℃までの高温でのミクロ組織変化と900℃ま での高温のクリープ変形挙動を、400kV電子顕微 鏡内でのその場観察を行って直接解析し設計に反 映した。3.材料開発材料設計指針に基づき、次世代ジェットエンジン や超高効率ガスタービンの実現に必要な新耐熱材料 の開発を行った。これまでに、①Ni基超合金については、γ/γ '界面転位網の微 細化設計により、図1に示すように、開発目標を 超える耐用温度1105℃の第5世代Ni基単結晶超合 金(世界最高)など一連の単結晶を開発した (IHI、東芝などと協力)。また第3、第4世代一 方向凝固超合金を開発した(一部川崎重工と協 力)。②高融点超合金については、貴金属元素Ir (イリジ ウム)などをベースに用いてγ/γ'析出組織を 制御することによって、図2に示すように耐用温 度1750℃の新合金(世界最高)を開発した。図1開発単結晶超合金の耐用温度③Ni基超合金に適合し、高温で長時間使用しても拡 散層を生じないEQ (Equilibrium :平衡)コーテ ィングを世界で始めて提案した。また、EB-PVD セラミックコーティング装置を設計開発し実験を図2イリジウム基高融点超合金のクリープ耐用温度開始した。④クロムをベースとしたBCC系新耐熱合金の可能性 を検討し、Ag (銀)添加により室温で20%の破 断延性を示すCr基合金などを開発した。⑤16年度より新たにタービンディスク用合金開発を 開始し、既存合金の耐用温度700℃に比べて約 50℃以上高いNi-Co基鍛造超合金の可能性を示し た。4.実証試験既存ガスタービン等を利用して、開発材料をター ビン翼として用いた実証試験を行った。また、仮想 ガスタービンを開発するとともに、これを用いて出 力・熱効率向上効果の評価を行った。これまでに、 ①開発した第2、第3世代Ni基単結晶超合金を1300℃級発電ガスタービン(東芝京浜工場内)の タービン翼として400時間の発電試験に用い、既 存合金と比較して開発材の実用性を示した。②経済産業省/NEDO「超音速エンジンESPRプロジ ェクト」の空冷翼用に、開発第4世代Ni基単結晶 超合金TMS-138を提供し、短時間(15分間)では あるがタービン入り口ガス温度1650℃の地上エン ジン試験によりその実用性が示された。③材料設計プログラムとシステム設計プログラムを 統合化した1700℃対応の仮想ガスタービンシステ  ムを開発した(東芝、JAXAと協力)。④仮想ガスタービンシステムにより、開発Ni基超合 金を用いた場合、天然ガスコンバインドサイクル 発電にて熱効率56%以上(既存天然ガスコンバイ ンド最高52%、全火力発電平均約40%)が可能で あることなどを示した。また、仮想ジェットエン ジンへの展開を開始した(JAXA、東芝と協力)。図3第4世代単結晶超合金動翼と、コアエンジン試験 の様子(NEDO/IHI提供)5.技術移転15年度までの成果をもとに、他省庁や民間企業と の連携により次世代ガスタービン、ジェットエンジ ンへの適用化研究を16年度拡充予算により開始した (図 3)。5.1高効率発電への開発材料の適用①1700℃コンバインドサイクル発電用大型ガスター ビンの開発に必要な要素研究として、大型タービ ン翼の開発を資源エネ庁/三菱重工と協力して行 い、開発合金の熱疲れ特性向上のための合金改良 や、大型単結晶タービン翼への鋳造性評価を行っ た。②高効率コジェネレーション用小型ガスタービンへ の適用を目的に、川崎重工と協力し、第3世代一 方向凝固合金TMD-103のタービン翼への鋳造性評 価、実機試験に必要な材料データ取得などを行っ た。5. 2国産ジェットエンジンへの適用①50席ジェット機用の環境適合小型エンジンプロジ ェクト(経済産業省/NEDO/重工各社)に参画 (第2期:16 ―18年度)、石川島播磨重工と協力し て開発Ni基単結晶超合金の適用化研究を行った。 組成変動の際の高温強度特性変化、イットリウム 添加による耐酸化特性向上など、実用化に必要な 材料組成スペックの確立のための基礎データを取 得した。6.新しい研究の萌芽新世紀耐熱材料プロジェクトのほかにも、新しい 研究テーマが生まれ、グループメンバーにより研究 開発が進捗��している。6 .1超高温固溶強化合金の開発スペースプレーンのエンジンなどに用いるための 高温鍛造が可能な貴金属基耐熱合金を、イリジウム をベースとした固溶強化型合金として開発してい る。6. 2超高温形状記憶合金白金族金属をベースに、従来に比べて遙かに高温 で使用可能な形状記憶合金の開発が進んでいる。6. 3構造用高強度アルミ合金の設計開発Ni基超合金の合金設計の考え方をアルミ合金に適 用し、2000系、7000系などの合金の改良が試みられ ている。7.新世紀耐熱材料プロジェクト第二期の展開次期中期計画での新世紀耐熱材料プロジェクト (第二期:5年間)では、引続き、設計解析、新材 料探索等の基礎研究を重視しつつ、現在行っている 国内企業との協力に加えて、海外ジェットエンジン メーカーでの実用化も視野に入れ超耐熱材料開発を 進めて行く計画である。(新世紀耐熱材料プロジェ クト:http://sakimori.nims.go.jp/)%25e3%2582%25af%25e3%2583%2588:http://sakimori.nims.go.jp/%25ef%25bc%2589溶射工学グループの5年間の歩み黒田聖治、村上秀之、川喜多仁、渡邊誠、石川泰成、H.B.Guo、K.Cai、Y.N.Wu、横山賢介、酒井隆、柴田光寛、山口晃宏、小 松誠幸、掛谷信和、吉田慶子、武江智子1.溶射工学クループ発足の経緯溶射工学グループはNIMS誕生の翌2002年4月に 表面コーティングを専門に扱う研究グループとして 発足した。遡��れば、NIMSにおける溶射研究は、金 材技研の溶接研究部の中で1960年代にプラズマ熱源 を利用した特殊接合技術の一つとしてスタートした 長い歴史がある。2002年の時点では、黒田聖治、川 喜多仁の2名の研究者であったが、2004年に力学や 非破壊評価を専門とする渡邊誠が、2005年には耐熱 材料や熱プラズマプロセスを専門とする村上秀之が グループに加わり、さらにポスドク研究員4名、大 学院生3名、学部生1名、技術補助、事務補助各2 名のバランスのとれた布陣となってきた。海外の有 力なコーティング研究の拠点では、専門の異なる複 数の研究者、技術者が集結して研究開発を遂行する 体制をとっており、ようやく我々もそれに近づきつ つある。現在、東京理科大学、芝浦工業大学、千葉 工業大学から連携大学院制度で学生を受け入れてい る。海外の大学や研究機関との交流も活発で、2005 年にはドイツのHelmut-Schmidt UniversityとMOUを 締結し、中国の大学とも予定している。最近はポス ドクだけでなくドイツやカナダから学生を数ヶ月受 け入れたり、当方から派遣を行ったりもしている。2.活動当グループは構造材料を過酷な使用環境から保護 し使用寿命を長期化する為の耐環境性コーティング を主なテーマとし、原料、プロセス、評価までを一 貫して研究開発することを目指している。使用環境 やコーティング材料は多岐に渡るが、特に産業界の 需要が大きいもの、チャレンジ度の高いもの、材料 科学的に興味深いものを選択して研究している。1)耐食コーティング大気中で緻密な金属やサーメットの厚膜を形成で きるプロセスとして、高速フレーム(High Velocity Oxy-Fuel:HVOF)溶射法に注目し、ガスシュラウ ドを付加することによって溶射粒子速度の増大と酸 化抑制を行い、大気中で緻密な100ミクロンオーダ の厚膜を大面積に形成する技術を確立した。超鉄鋼 材料プロジェクトの中で、海洋環境でも最も腐食の 厳しい飛沫帯などへの適用を目指して研究を進め た。耐環境性の必要条件である皮膜の緻密性を実験 室で確認するだけでなく、実際の海洋環境に試験片 を浸漬し、1年間以上の耐食性能を確認した。最近は、チタンの優れた耐食性や生体適合性に注 目し、チタンの溶射に適した二段式HVOF溶射装置 (Warm Spray)を開発した。このプロセスによれば チタンの酸化を抑制しつつ、粉末を高速度に加速し図1 開発したWarm Spray装置の原理図と形成された チタン皮膜の断面組織(緻密組織とポーラス組織の例)て非常に緻密な皮膜からポーラス皮膜まで構造を大 きく変化させられる。図1にWarm Spray装置の概 略と得られたチタン皮膜の断面組織の例を示す。燃 焼炎に混入する不活性ガスの流量を変化させること によって、基材投射時のチタン粉末の温度を広範囲 に制御できる点が特長である。今後、本プロセスは 他の活性材料への、チタン皮膜は生体関連分野への 応用が期待される。2)耐摩耗コーティング製鉄、製紙、印刷などの分野で大面積上に硬質の 耐摩耗コーティングに強い需要がある。従来広く使 われていた硬質クロムメッキが規制されることもあ って、溶射によるクロムメッキ代替コーティングが 注目されている。材料としては炭化物粒子と金属バ インダー相を混合したサーメットが最も広く使われ ているが、未だに大きな性能向上の余地が残されて図2 WC-Coサー メットHVOF溶射皮膜の基材との界 面靭性値とWC一次粒子径の関係いる。上記のガスシュラウド付HVOFプロセスは炭 化物の劣化を抑制し、皮膜の緻密化も期待できる。 WC-CrC-Ni系のサーメットに適用して、皮膜の硬度、 耐摩耗性や耐食性に顕著な改善効果が認められた。 また、HVOF溶射したサーメット皮膜は鋼基材に非 常に高い密着性を示すが、その密着メカニズムを研 究し、炭化物の一次粒子サイズが重要な役割を果た していることを明らかにした。図2は皮膜にノッチ をいれた四点曲げ試験によって測定したWC-12%Co サーメット皮膜の炭素鋼上の界面破壊靭性値であ る。サーメットを構成するWC炭化物の一次粒径が0.2から6 μmと増加するにつれ、密着の強さを示す 界面靭性値は約三倍も増加した。この原因は、硬質 WC粒子が高速で衝突する時に基材に食い込んで破 壊を妨げる杭の働きをすること、一次粒子が大きい ほど成膜時にロスが多く、金属の割合が多い皮膜組 織になる傾向があることなどが考えられる。このよ うなデータを蓄積していくことによって、要求性能 に応じたサーメットの設計・成膜技術を構築してい く可能性が見えてきた。3)耐熱コーティングジェットエンジンや発電用タービンの高温部で は、燃焼ガス温度が金属部材の融点を上回る状況と なっており、冷却と遮熱コーティング(Thermal Barrier Coating : TBC)が必須技術となっている。 TBCは遮熱性の高い多孔質セラミックのトップコー トと基材とトップコートをつなぎ酸化を抑制する役 割のボンドコートの二層構造をしている場合が多 い。TBCの耐熱温度上昇や使用寿命の延長が、機器 のエネルギー効率向上やメンテナンスコスト低減の ために重要な技術課題となっている。我々は、イリ ジウムの持つ優れた特性(ニッケル基合金に拡散す ると融点が上昇、耐食性、機械的特性がプラチナよ り良好で価格が低い等)に着目し、ボンドコート材 としての適用性を研究している。図はAl拡散処理を図3 Al拡散処理したPt-Ir合金膜のサイクル酸化試験結 果(1サイクルは1150℃、1時間保持後に室温まで冷 却)。Pt-30Ir, 50Ir合金は重量変化が少なく優れた耐酸化 性能を示した行ったIr-Pt合金の繰り返し酸化試験結果で、30% Ir ―Pt合金が耐酸化性に優れており、従来から用い られているPt-Al合金を凌ぐボンドコート材料として 有望であると考えている。また、トップコートとして最近注目されている縦 割れジルコニアコーティングの組織制御や、火力発 電プラントの主蒸気管内面用の水蒸気酸化を抑制す るコーティングについても研究を行ってきた。3.成果2001 2002 2003 2004 2005論文 1 5 7 5 12解説・著書 1 2 2 1 4特許 2 1 1 2 1プレス発表2002年3月 日刊工業新聞「海中でも 錆��びない鉄鋼」等6誌独日コーティングシンポジウム 2004年5月、 NIMS防錆��溶射技術に関する調査報告書200、防錆��技術 協会海外研究者受け入れ:米国、ドイツ、フィンランド、 インド、中国、ポーランド4.世界の研究動向溶射関係のプロセス開発動向は、ほぼ10年ごとに 革新的なプロセスが登場しており、最近ではCold Sprayと呼ばれる原料の粉末粒子をまったく溶融さ せずに高速度で基材に衝突させるプロセスが注目さ れている。また、用いる粉末粒子サイズのナノ化や、 ナノ構造を有するコーティングの開発も活発に進め られている。サイエンスとしては成膜現象の基礎と なる粒子衝突のシミュレーションや皮膜のマルチス ケールでの組織・特性評価等が興味深い展開を見せ ている。コーティングの応用分野としてはTBCの研究が非 常に活発な状態が続いている。エネルギー ・環境問 題に密接に関係するキーテクノロジーであり、目的 や使用環境は明らかであるが、実機での皮膜の劣化 機構やコーティングプロセスなどに未解明の問題が 残されている。今後、トップコート、ボンドコート の材料開発、コーティングプロセスの開発、損傷評 価と余寿命予測などが重要な研究テーマと考えられ る。今後もエネルギーや環境に関連したコーティン グの研究がこの分野の動向をリードすることが予想 される。5.今後の展開物質や材料をテーマとするNIMSにおいて溶射と いうプロセスを看板に掲げて進んできたが、今やグ ループの活動は特定のプロセスには納まらなくなっ てきた。次年度からはより大きな視点から他分野と の連携をさらに進めつつ研究を展開する予定であ る。耐照射材料グループの5年永川城正、内尾彰吾、崎間公久、古川隆一、村瀬義治、森藤文雄、山本徳和、山脇寿1.耐照射材料グループの目指すもの耐照射材料グループは、原子力材料など高エネル ギー粒子による照射にさらされる材料中で生じる 種々の現象、特に照射中にのみ発生するダイナミッ クな挙動や核反応によって材料中に生成される元素 の効果を評価・解明するとともに、照射による材料 の劣化を生じ難くする新しい原理の探求を目的とし て、平成16年度に発足した。2.耐照射材料グループの活動経緯旧金属材料技術研究所時代より、小型サイクロト ロン加速器による軽イオン照射が有する長時間の制 御された照射が可能という特徴を利用して、世界的 にも数少ない(現在、他にはEUの一、二の機関の み)照射下における「その場」変形・疲労破壊特性 を研究する技術を確立させてきた。この様な高エネ ルギー粒子による照射下においては、次々と発生す る点欠陥が応力の影響下に動き回るというダイナミ ックな状況にあり、原子力材料の照射特性評価とし て一般的に行われている照射後における実験で得ら れる材料の変形・破壊特性とは大きく異なる挙動が 誘発される。原子炉の運転中は材料が正にこの様な 照射下の状況にさらされるため、照射下特性の評 価・解明は原子力材料の信頼性評価・耐照射特性向 上のためには必須の研究である。平成16年度より、このような研究をさらに最先端 の原子力材料に活用すべく新たに「耐照射材料グル ープ」を設け、上記のサイクロトロン加速器をもち いた研究を軸に、原子炉照射をもちいた先進高融点 材料の研究、ならびに超音波計測・計算機シミュレ ーションによる先進的構造材料の材質・信頼性評価 向上の研究を推進してきた。なお、これらの研究は 平成15年度までは旧信頼性評価グループの中におい て行われた。また、平成10年度より現在まで、九州 大学大学院総合理工学府先端エネルギー理工学専攻 の連携講座(先端エネルギーシステム学講座)とし て多くの大学院生の教育にも携わってきた。本グループの研究によって、我が国の原子力エネ ルギー開発に幾つかの重要な貢献を行うことが出来 た。主なものとしては、軽水炉高経年化による炉心 部シュラウド構造物等の割れ発生を予防するための 炉中その場ピーニング処理(衝撃波により表面に圧 縮応力を形成する)後の炉運転に伴う照射誘起応力 緩和の評価に成果を活用し、割れ抑制技術の確立に 貢献した。ITERの次の段階である核融合原型炉の 炉心構造物用候補材料に関する核反応生成ヘリウム による脆化挙動評価・解明ならびに照射下及び照射 後の疲労挙動評価・解明は、今後の核融合実用化に 大きく貢献することが期待される。先進高融点材料 の疲労を含めた機械的特性の耐照射性向上に及ぼす 微量元素の効果解明は今後の新型原子炉開発に役立 つことが期待される。また、レーザー超音波による 非破壊評価研究は原子力のみでなく、広い分野での 活用が期待できる。3.耐照射材料グループの研究成果5年間の主な研究プロジェクトは以下の通り。・原子力研究「先進的原子力材料の照射劣化抑制に 関する研究」(1998.4～2003.3)・原子力研究「核融合炉構造材料の力学特性に及ぼ す核変換ヘリウムの効果」(2001.4～2006.3)・原子力研究「複合的微細組織材料における動的照 射効果の研究」(2003.4～2008.3)・萌芽研究「純金属の疲労挙動と組織変化に関する 研究」(1998.4～2002.3)・萌芽研究「構造材料と照射環境との相互作用に関 する研究」(2001.4～2003.3)・萌芽研究「先進高融点材料の高度化に関する研究」 (2002.4 ～2003.3)・萌芽研究「原子炉炉内材料に及ぼす照射の影響」 (2003.4 ～2006.3)・萌芽研究「先端的プロセッシングによる高融点材 料中の微量元素の役割解明に関する研究」 (2003.4 ～2006.3)・理事長特別ファンド競争的資金「レーザ超音波利 用簡易超音波CT法の実証」(2004.4～2006.3) また、これらのプロジェクトで取り扱った主な研究トピックスは以下の通り。○ステンレス鋼冷間加工材の照射誘起変形挙動解明 ○照射誘起変形の計算機シミュレーションによる予測の基盤確立○ステンレス鋼の疲労破壊に及ぼす照射効果の解明 ○核融合低放射化フェライト鋼の照射下疲労 ○微細な分散第2相を含む材料における疲労破壊と照射効果の解明○核融合低放射化バナジウム合金におけるヘリウム 脆化特性挙動評価・解明○核融合低放射化マルテンサイト鋼におけるヘリウ ム脆化特性挙動評価・解明○ヘリウム脆化現象の機構論的検討○粒内ヘリウム保持に及ぼす析出組織の影響解明と 脆化抑制のための最適化条件の提案○モリブデンならびに先進高融点材料の疲労特性と 微細組織構造の相関性の解明○先進高融点材料の照射特性向上に及ぼす微量元素 の効果解明○超微細粒鋼の強度・組織異方性のレーザー超音波 による評価○超音波シミュレーションの材料評価への適用○レーザー超音波による簡易超音波CTの実証以下、年度別に主な研究成果の概要を示す。(1)平成13年度の成果核融合原型炉の候補材であるF82H低放射化フェラ イト鋼について、照射下における荷重制御疲労試験 を60℃の温度にて行った。図1に示す結果より、原 子弾き出し速度と付与される疲労変形の強さ(上下 ピーク荷重の比:R値)のバランスが疲労寿命に対す る動的照射効果に強い影響を与えることを明らかに した。これは、核融合炉などの実機での照射下疲労 を実験室で評価する上で非常に重要な知見である。真空を利用した負荷機構を有する新しい照射下ク リープ試験機開発し、実炉中での水中レーザーピー ニング表面制御による再生高経年劣化材料に対応さ せたSUS 316L鋼冷間加工材の照射誘起変形データを 得た。図2はクリープ変形速度の応力依存性を測定 した結果で、応力下での点欠陥カイネティックスを 基にしたの計算機シミュレーションとかなり良い一 致を示している。高応力域での強い応力依存性は、 非照射時の熱活性化による通常のクリープ変形が照 射によって促進されたものと考えられる。図1F82H鋼の60℃での照射下疲労試験結果図2 316鋼の照射下クリープ速度:計算と実験低放射化マルテンサイト鋼溶解材の中で、最も耐 熱性に優れるもののひとつである9Cr3WVTaB鋼を用 いて、同鋼の最高使用温度(873K)でHe注入 (100appm)後クリープ試験を行った。図3にHe注入 材と非注入材のクリープ破断線図を示す。両者の間 に有意な差はなく、Heによる悪影響は認められなか った。同様のことは他のクリープ特性についても言図3 9Cr3WVTaB鋼のクリープ破断線図え、低放射化マルテンサイト鋼が873Kでの使用に耐 えうる可能性があることを示唆する結果を得た。微細組織の典型である転位密度が異なる材料にお ける照射誘起変形の違いについて、計算機シミュレ ーションをもちいて応力下での点欠陥の動的な活動 と転位ダイナミックスを結びつけることにより、照 射下クリープ変形や照射誘起応力緩和などへの影響 が詳細に調べられた。また、この計算結果を検証す るためにサイクロトロン加速器をもちいたプロトン 照射下でのその場実験を実施し、両結果の良好な一 致が得られた。図4照射誘起変形機構別の転位密度依存性Moの疲労試験を室温、4Hzで軸荷重制御、引張― 圧縮(R=-1)あるいは引張―引張(R=0.1)で実施 した。試験片は圧延材および再結晶材(真空中1573 K,1.8ks)であった。主要な結果:(1)圧延材の疲 労限度は、再結晶材より高い。R=0.1での疲労限度 はR=-1より高い。これは通常の純粋な金属と同様。 (2)強加工材のR=0.1の場合には、疲労硬化は観察 されなかった。最終処理が温間加工による比較的低 い加工度のため、粒内および結晶粒界の近くの転位 密度は疲労変形によって増加し、セルの形成および サブ粒の微細化が生じた。したがって、Moの疲労 硬化がR=0.1条件においてさらに進展したと考えられた。(3)強加工材のR=-1の場合には、疲労軟化 が生じた。温間圧延されたMoの加工度はやや低い が、小さな疲労軟化がR=-1で認められた。サブ粒 の中の転位は少数であり、転位密度はむしろ低い。 (4)再結晶材では、R=0.1およびR=-1のいずれの疲 労条件下でも疲労硬化が生じた。再結晶材のR=0.1 条件でも著しい疲労硬化が確認された。粒内の転位 密度は増加し、セルの形成およびサブ粒の微細化が 明らかに認められた。(5)再結晶材のR=-1の場合 には小さな疲労軟化を示した。低い転位密度の絡み 合った転位束が多くのサブ粒内で観察された。平成13年度の論文数:13報、共同研究数:5件(2)平成14年度の成果最近、軽水炉シュラウドのき裂が問題となってい るが、その防止のために開発された水中レーザーピ ーニングによる表面残留圧縮応力を活用したき裂抑 制法の照射環境下における耐性を評価するため、冷 間加工されたSUS 316鋼における照射誘起応力緩和 を計算機シミュレーションにより求めた。図5に一 例を示すように、緩和挙動は転位密度(冷間加工度) に依存するが、その依存性は単純ではないことが示 された。また、これまでに得られた照射下クリープ 変形の転位密度依存性の実験結果は、計算で得られ た挙動と良い対応を示している。図5 SUS 316鋼の照射照射誘起応力緩和核融合原型炉の候補材であるF82H低放射化フェ ライト鋼について、予想使用温度である500℃にお ける照射下荷重制御疲労挙動の評価を実施した。図 6に示すように、照射後には疲労寿命が非照射時と 比べてかなり長くなるのに対し、照射下ではほぼ同 じかむしろ短くなった。この結果は、照射下で非常 に大きな寿命の伸長が現れた60℃における挙動と対 照的であり、点欠陥(格子間原子や原子空孔)なら びにそれらの集合体の形成・移動・消滅及び転位運 動との相互作用の両温度(高温と低温)における違 いが疲労挙動に影響するためと考えられる。使用温度の向上を目指して開発された改良型低放 射化マルテンサイト鋼9Cr3WVTaBの耐He脆化特性 図6 F82H鋼の500℃での照射下疲労試験結果を調べるために、He注入(300appm)材のクリープ 試験を行った。図7に示すHeを含まないコントロー ル材との破断時間比を含めて、Heによるクリープ特 性の劣化は他の低放射化マルテンサイト鋼と同様に 小さく、またHeよる粒界破壊の誘発も観察されなか った。これらの結果は低放射化マルテンサイト鋼が、 より高温での使用に耐えうる可能性を示唆するもの である。図7 低放射化マルテンサイト鋼におけるHe注入材と コントロール材のクリープ破断時間比ロシア国立原子炉研究所(RIAR)との共同研究 により、室温から160℃までのMo-Re合金の照射特性 を明らかにした。主な結果は、Re量の比較的高い Mo-Re合金溶接材では照射脆化を生じ難い傾向が認 められた。Re量の増加につれて転位ループの密度は 減少し、破壊の形式は粒界破壊から粒内破壊へと変 化した。また、照射によって誘起される第2相の形 成はいずれの試料にも認められなかったなどであ る。文科省の招聘制度によって、RIAR側の研究責 任者であるDr. Chakinを日本に招待して、今後の研 究計画の議論を詳細に行った。将来の鉄鋼材料のオンライン計測・評価の可能性 をふまえ、ピコ秒パルスレーザと光位相共役干渉計 を用いて、音速異方性の非接触計測を可能にした。 微細粒鋼試料の縦波超音波の音速計測の結果、超微 細粒鋼の引張り強度と音速の間に比例関係があり、 強度・加工組織異方性を含めて非破壊的に推定可能 なことを明らかにした。溝ロール圧延材では、微細化して引張り強度が増加すると音速も大きくなり、 引張り強度異方性が音速異方性と対応関係にあるこ とが確認された。平ロール圧延材では、引張り強 度・組織異方性の軽減を目的とした圧延中の圧延面 回転の効果が音速異方性の軽減という形で評価でき ることも確認された。平成14年度の論文数:11報、共同研究数:6件(3)平成15年度の成果疲労破壊挙動への動的照射効果に及ぼす複合的微 細組織の影響を明らかにするため、均一組織を有す るSUS 316鋼についてサイクロトロン加速器を用い た照射下ならびに照射後、非照射における疲労試験 を行った。さらに、き裂面ならびにその近傍の精密 な解析を行い、照射下疲労した試料と非照射及び照 射後に疲労させた試料との破壊挙動の相互比較を実 施して、それぞれの場合でき裂発生及び伝播の過程 が異なることを明らかにした。一例として、図8に 破断面のストライエーション(サイクル毎のき裂進 展に対応した縞模様)幅の変動の違いを示す。図8 SUS316鋼の疲労破面ストライエーションヘリウム脆化を受けて破壊したFe-Ni-Cr合金の微 細組織観察で得られた結果を基に、理論的検討を行 い、脆化軽減化に対するヘリウムの粒内保持の効果 を定量的に評価した。その結果、図9に示すように、 ヘリウムの粒内捕獲率が上昇するほど脆化は低減さ れる傾向にあるが、場合によっては効果は限られた ものであることが分かった。このため、十分な脆化 抑制を達成するためには、粒界気泡の微細化や成長 抑制を実現することが重要であることが明らかとな った。軽水炉シュラウドの割れの主要原因として、製作 段階での材料表面層への冷間加工が指摘されてい る。NIMSサイクロトロン加速器をもちい、初期製 作軽水炉の主要材料であるSUS 304鋼のBWR炉内温 度288℃における照射下クリープ変形と冷間加工の 影響を調べた。図10に示すように、問題となる比較 的に低い応力領域では変形速度が応力の2乗に比例 し、現在の主要材料であるSUS 316鋼(1乗に比例) と異なることが明らかにされた。また、SUS316鋼 に比べて冷間加工による変形抑制の効果が大きいこ とも明らかになった。第9図 破断材における破断時間比と粒内捕獲率図10 304鋼の照射下クリープ速度の応力依存性立教大学原子炉および日本原子力研究所(JRR-4) において、約43.2ks (12時間)熱中性子照射を行っ た後、α線トラックエッチング(ATE)法を用いて、 Mo-B合金中の微量添加Bの可視化を試みた。また、 トリチウムオートラジオグラフ(TA)法によって、 水素の集積サイトとしてのBの効果を調べ、以下に 示すような結果を得ることができた。1)Mo-B合金の鋳造材では、ATE法の解析によると 結晶粒界と粒内にBに富む相、硼化物の生成が観察 され、さらに結晶粒界三重線または母相中に偏析し たBの分布を可視化することに成功した。2) Mo-B合金の溶体化処理材でも同様に、結晶粒界 三重線または母相中に偏析したBの分布を可視化で きた。1273K～1773Kと溶体化処理温度を変えた場 合も同様にATE法による定量的な解析を行い、粒界 三重線近傍のB量について統計的な頻度分布を測定 した。1373K以下の溶体化温度では再結晶が起こら ず、Bの粒界偏析は認められなかった。再結晶組織 となるが、1473Kのように溶体化温度が比較的低い 場合、Bの粒界偏析は不均等分布を示した。1773K のように溶体化温度が高くなると結晶粒界三重線上 に沿ってBの分布は均等であることを明らかにした。3) TA法によると、Mo-B合金中の水素は主に結晶粒 界に沿って観察され、粒内では認められなかった。 これはB濃度の相違によって水素のトラップ効果が 異なるためであることを明らかにした。このように Bを含む析出物や転位は水素のトラッピングサイト として機能しているおり、TA法は材料中の水素の 挙動を調べる手法として非常に有効であることが確 認された。平成15年度の論文数:12報、共同研究数:5件(4)平成16年度の成果異種結晶を含有した複合的微細構造を持つSUS 304鋼15%冷間加工材(CW材)と均一なオーステナ イト相を持つSUS 304鋼焼鈍材(SA材)について 300℃で非照射、照射下、照射後疲労試験を行い、 これらの結果ならびにその解析をもとに微細なマル テンサイト相の存在が照射下及び照射後疲労挙動に 及ぼす影響について検討した。図11にSUS 304鋼 15%CW材における疲労破断試験結果を示す。照射 下では疲労寿命にバラつきがあるものの非照射に比 べてやや伸長傾向を示し、照射後では逆にやや短縮 傾向にあるが、先に報告した均一なオーステナイト 相を持つSUS 316鋼CW材の結果に比べると著しく小 さい。図12にCW材でのストライエーション間隔を ノッチ先端からの距離でプロットした結果を示す。 照射下、照射後ともに非照射に比べて幅に大きな違 いは見られない。疲労サイクル毎に1本のストライ エーションが形成されることより、クラック発生か ら破断に至るまでの伝播過程で照射の影響はほとん ど現れていない。図11SUS 304鋼冷間加工材の疲労寿命図12冷間加工材のストライエーション間隔均一なオーステナイト相を持つ焼鈍材におけるノ ッチ先端近傍での塑性変形領域発達を評価するため に、二次元硬さ分布測定を計測した結果を図13に示 す。黒から白になるにつれて硬度が上昇しているこ とを表す。照射下では顕著な硬度変化は見られず、 また、照射後試料(予照射量0.0086 dpa)ではノッ チ先端近くに塑性変形域が限定されている。よって、 図13は照射下及び照射後では非照射に比べてノッチ 先端近傍での塑性変形の発達が抑制されることを示 している。この結果より、冷間加工による(相を含 まない焼鈍材では316鋼冷間加工材と本質的に同様 な照射下および照射後における疲労抑制現象を示す と結論できる)。図13 SUS 304鋼焼鈍材での2次元硬度分布400Kで5 x 1021n/cm2 (E>0.1 MeV)中性子照射し た15%～41%Reを含むMo合金電子ビーム溶接材の 破面組織について調べた。Re量の増加につれて破面 は粒界破壊から粒内破壊へと変化した。溶接後 1173Kで1時間焼鈍したMo-30%Re合金および溶接 後1673Kで1時間焼鈍し、中性子照射したMo-41% Re合金において、σ相と考えられる第2相を溶融部 に見出した。773K～1273Kの照射後焼鈍によって、 Mo-41%Re合金の硬さは回復し、粒内破面の増加と よい対応が認められた。Mo-50%Re合金の電子ビー ム溶接材は温間圧延加工ができることを確かめた。 さらに、適当な熱処理を施すことによってσ相の形 成を促進するとともに、σ相の大きさ、分布を調整 し、溶接材の機械的性質を向上させることができた。 σ相の析出は高転位密度の場所、サブ粒界、粒界な どの領域に優先的に生じており、しかもバンド状に 連なって成長していた。このような材料は機械的性 質がさらに向上する可能性を示しており、Mo-50% Re合金は溶接性に優れていることを明らかにした。ニーズの高まっている材料表層や被膜の非破壊的 材質評価法に関連して、超音波を用いた方法の検討 を進め、差分法を基にした超音波伝播の計算機シミ ュレーションを用いて検討した。ピーニング処理で は表層の塑性加工による組織変化により、音速の増 加が見込まれる。シミュレーションでは、表層部の弾性率変化分布・厚さをモデル化し、表面波の音速 変化との関連を再現した。誤差の原因としてあげら れている表面粗さをモデル化したシミュレーション 計算により、粗さと音速低下に比例関係があること が明らかになった。また、表面境界の影響を受けな いとされるSH波においても、粗さにより音速低下と 強度低下が生じることが新しい知見として得られた。 溶射被膜などでは機械的測定が難しく、また弾性異 方性を有しているため、超音波音速による弾性率計 測が検討されている。シミュレーションによって、 実際の試料の計測結果の有効性の確認、SH波を発生 させる最適条件の確認、被膜内でのSH波の伝播の可 否の検討などに役立て、有用性を実証した。平成16年度の論文数:12報、共同研究数:4件(5)平成17年度の成果初期の軽水炉における主要炉心部構造材料である SUS 304鋼は、冷間加工を受けることによりオース テナイト母相中に微細なマルテンサイト相を形成す る。この様な複合的微細組織が照射誘起変形に及ぼ す影響を調べるため、NIMSサイクロトロン加速器 をもちいた照射下実験を行い、照射誘起変形速度の 応力依存性が求められた。さらに、得られた依存性 より照射誘起応力緩和挙動を評価した。一例として 5 %冷間加工材の評価結果を図14に示す。これより、 均一なオーステナイト組織を持つSUS 316鋼と比較 して、応力緩和がかなり抑制されることが分る。図14 304と316鋼冷間加工材の照射誘起応力緩和He脆化を低減する一手段として、粒内にHe気泡 の生成場所となる析出物を導入してHeの粒界への移 動を阻止する方法が考えられている。本研究では、 この手法の有効性を吟味するために、サイクロトロ ンでα線を照射することによって原子炉におけるHe の核変換生成を模擬したFe-Ni-Cr合金のクリープ破 断試験片に対して、微細組織の定量解析を実施した。 図15及び16には、粒内に存在する個々の気泡に含ま れるHe原子数を計算して求めた粒内He捕獲量と析 出組織の相関が示してある。析出物の数密度や界面 面積が数桁にわたって増加しても、Heの粒内保持量の変化は2倍程度にとどまっており、粒内析出物の 単純な高密度分散が必ずしも脆化の軽減に効率的に 寄与しない可能性があることが示唆された。より高 度な脆化抑制には、粒界気泡分布の微細化等の対策 との併用が必要と考えられる。図15粒内He原子密度と析出物数密度の相関図16粒内He原子密度と析出物界面面積の相関以前の超鉄鋼プロジェクトにおいて、鋼材溶接部 の健全性評価法として、水浸式超音波計測で、溶接 部の3方向からの超音波スキャンによる欠陥形状・ 位置の簡易的CT画像化を実現し、さらに溶接部金 属の凝固部の形状の画像化に適用できることを明ら かにした。この簡易超音波CTを発展させ、レーザ ー超音波技術を取り入れて、気中での溶接部欠陥・ 凝固金属の非接触画像化の実現を進めてきた。まず、 レーザー超音波の高度化として、粗面への適応性の 高い光位相共役干渉計の光学系の基礎的改良を進め てきた。現在、簡易CT画像化装置としての装置構 築を進めており、試料走査や、波形収集、画像化計 算処理などのプログラムや機構製作をすすめてい る。平成17年度の論文数:6報、共同研究数:4件(平成17年11月現在)基礎物性グループの5年Feng Zuyong、Liu Lili、Liu Wenfeng、Liu Yang、Wang Yu、 Yang Sen、Zhang Lixue、 Zhou Yumei、 阿部英樹、砂金宏明、今井基晴、 大塚和弘、加賀屋豊、木本高義、高木昌子、唐捷、中山浩美、任暁兵、松下明行、名嘉節(現東北大学、2005年5月退職)1.研究を振り返って本グループは、元々は松本武彦前計算材料部長が 旧金属材料技術研究所において始めた高圧物性研究 の流れを汲む。NIMS発足を機に、葉金花氏が光触 媒グループとして独立し、木本高義氏他が新しく加 わることとなった。これにより、“高圧”色は薄れ、 面白いことなら何でもやるスペクトルの広い研究グ ループとなった。NIMSが発足した2001年は金属系高温超電導体 MgB2が青学大秋光グループによって発見された年 にあたる。高圧物性研究者は、新しい超伝導体発見 の数時間後にはそのTcの圧力効果を測っていると言 われる位、新超伝導体の研究を好む。MgB2が発見 されると、秋光グループ出身で本グループの前客員 研究官(現産総研)の鬼頭聖氏が、早速自ら高圧合 成した良質のMgB2を提供してくれた。MgB2は良質 試料を作るのは容易でなかったので、この試料提供 は大きなアドバンテージとなり、この試料について、 本グループの高圧屋である唐捷氏が電気抵抗と格子 定数の圧力効果を、キュービックアンビルとKEKで それぞれ大急ぎで測定して、BCSの範囲内で測定結 果が良く説明できるという結論で論文にした。案の 定、前後して何報かの圧力効果の論文が提出される という徒競走的研究であった。我々はこの後、ナノ 研北澤氏のグループがフラックス法により作製した MgB2単結晶を用いた超伝導異方性の研究や、東京 大学の光電子分光による超伝導ギャップの研究など にも関係した。また、島根大との共同研究で、多元 同時スパッタ法によるプラスチックの上のMgB2薄 膜作製にも成功している。この他、本グループの今 井基晴氏はMgB2と同じ結晶構造を持ったSr(Ga,Si)2の 超伝導を発見し、注目を集めた。MgB2の膜作りでは、阿部英樹氏がユニークな研 究成果を上げている。同氏は、所内各所から廃棄装 置や廃棄部品を集めてきては再利用するのが得手な 研究者であるが、この5年間は、溶融塩に電極を差 し込み、電析によって様々な新物質を合成すること に心血を注いだ。その中で最も注目を集めた研究成 果は電析による金属系高温超伝導体MgB2膜の合成 であった。図1は、電析により作製されたMgB2膜 の写真である。MgB2はMgとBの融点等が著しく異 なるため合成や膜作りが難しい。この手法では、良 質のMgB2膜が容易にできるため、MgB2の発見者で ある秋光教授に注目され、同教授に請われて同グル ープへの技術移転を行っている。超伝導分野では、この他にもCuO二重鎖の高温超 伝導発見に本グループは携わった。高温超伝導の大 半は、よく知られているように、いわゆるCuO2面と いう構造単位で生じているので、CuO2面とは異なる 新しい構造単位であるCuO二重鎖の高温超伝導発見 は高温超伝導研究の歴史において大発見とは言わな くても少なくとも中発見位の部類には入る。この CuO二重鎖の高温超伝導は、Pr2Ba4Cu7O15という物質 で発見された。このPrなにがしという物質は、結晶 構造的には高温超電導体と同じなのだが、なぜか超 伝導を示さないので、誰も目を向けなくなった物質 である。さて、山形大松川氏は、この物質に強い還 元処理を施して、超伝導を示さないと考えられてい たこの物質が、高温超伝導を示すことを発見した (本グループは測定を担当)。従来の高温超伝導体で はホールが電気を運ぶので、酸化してホール密度を 上げ、超伝導を発現させるのが常識であった。つま り、松川氏は、(実は別の目的だったのだが)常識 とは逆のことを行ったのである。この事例はセレン ディピティとはどういう風に起こるかを示していて 面白い。つまり、新発見とは、誰も振り返らないよ うな物質について、さらに常識とは逆のことをやっ て初めて生れるわけである。さて、すわ大発見だと いうので、まずNatureに投稿した。が、 ダメ。次々 と雑誌のレベルを落としていくが、すべてリジェク トされた。ついには、日本物理学会誌(JPSJ)に投 稿したが、あろうことかリジェクトされ、「某有名 研究者が以前に出した(別の物質についての)新超 伝導体発見の論文は、ワシらよりひどいデータなの に掲載されとる。」と、ぼやきながら弱小研究者の 図1 電析によって作製したMgB2膜SEM写真 図2 光電効果型電子線源を用いた陰極ユニット悲哀を味わった。さて、新しい分野を生むには、このように新しい 物質を発見するか、あるいは他に無い新規な装置の 開発が通常必要であろう。木本高義氏は、透過電子 顕微鏡(TEM)の専門家で、Cs3Sbが示す量子効率 の高い光電効果に着目し、これを用いた全く新しい タイプのTEM電子線源の開発にこの5年間取り組ん だ。通常の研究提案では副産物としての研究成果が 安全装置として用意されているが、本研究のような 装置開発では副産物として出てくるのはノウハウが 大半で、論文とか特許は途中の段階ではほとんど期 待できない。所内の大きい予算も取りにくいため、 科研費と萌芽研究で開発を進めた。現在試作にまで 漕ぎつけ関連登録特許が3件出ている。図2に試作 した陰極ユニットの写真を示す。名嘉節氏(現東北大)は、本グループにおけるも う一人の高圧研究者で、高圧下の磁性研究の専門家 である。高圧下の磁性測定では、高圧下の電気抵抗 のように試料のみの信号をとることができず、圧力 容器の分を差し引かなくてはいけないので、大変精 度の高い測定が要求される。同氏は、磁気天秤��を用 いた測定方法に取り組み、世界的にも有数の測定技 術を構築し、この5年間で非フェルミ流体や量子臨 界点の研究で重要な成果を上げている。砂金宏明氏はフタロシアニン色素合成の専門家 で、この分野では若手(というほど若くないが)の 第一人者である。フタロシアニンは様々な金属元素 と結合して錯体を作るので、極めて多様性に富む。 工業的にも重要であり、膨大な研究がなされている 中で、本グループの加賀屋豊氏と組んで、SbとBiの 新しいフタロシアニン錯体の合成に初めて成功して いる。フタロシアニン錯体には色素以外にも面白い 応用がありそうであるが、この5年間思うように新 しい境界領域分野の取り組みが進まなかったのはリ ーダーの力不足であった。さて、前出の唐捷氏は松本武彦氏の超高圧研究を 引き継ぐ研究者であるが、同氏の夫で現ノースウェ スタン大助教授の秦氏は、カーボンナノチューブ (CNT)で有名な飯島澄男氏と一緒にCNTの発見を した人物で、その影響を強く受けた唐氏自身もCNT図3 電気泳動法によるCNT繊維の作製 の高圧による圧縮挙動の研究から始まる一連のCNT 研究に打ち込むことになる。これにより唐氏は純水 中に分散させたCNTを、電気泳動法により繊維のよ うにつなぐ技術を開発した。図3に、電気泳動法で W電極の先にCNT繊維が成長していく様子を示す。 CNT一本は人間がハンドリングすることは不可能だ が、このように繊維状の束にすると一気に扱いやす くなり、様々なことができる。たとえばこの技術で AFMチップの先端にCNTを容易にとりつけることに 成功し、分解能が良くなることを実証している。任暁兵氏はマルテンサイト変態の専門家だが、本 グループにやってきて、この5年間物性への応用を 模索してきた。彼が本グループに来たとき見せてく れたのが金属のゴム弾性である。マルテンサイト変 態した材料(ただし、何でもよいというわけではな いらしい)に外力を加えると材料内の結晶(ドメイ ン)の方位が変わることによって変形するが、外力 をはずすと“なぜか”変形が元にもどる、これがゴ ム弾性である。このメカニズムについて同氏は、原 子空孔の分布に変形前の対称性が残っており、これ が駆動力となるという点欠陥の対称性原理の仮説を 提案し、Nature誌に掲載されている。しかし、同氏 の真骨頂はここからで、彼はマルテンサイト変態す る誘電体に対して外力のかわりに電場が使えること を着想し、実際に電場で巨大電歪効果が出現するこ とを示した。図4にBaTiO3単結晶が示す巨大電歪効 果の結果を示す。この効果は従来のPZT材料の電歪 効果よりも一桁以上大きいだけでなく、環境上大変 問題になっている鉛を含まないという画期的なもの であった。2.論文数等論文108報特許8件図4新概念による巨大電歪効果機能融合材料グループの5年岸本哲、小野寺秀博、石田章、江頭満、笠谷岳士、菊池武丕児、京野純郎、小林幹彦、今野武志、佐藤守夫、澤口孝宏、新谷紀雄、不動寺浩、宮崎英樹、浅香由美子、今須淳子、松井満代、森脇三千代、野田哲二(現理事)、黒川要一 (現ICYS,2004.8移動)、佐々木敏雄(現ICYS,2003.11移動)、長谷正司(現ナノマテリアル研究所)1.組織発足の経緯・目的・目指したもの2001年4月に旧金属材料技術研究所・インテリジ ェント材料グループを中心に機能融合材料グループ が発足した。当時インテリジェント材料グループは 「機能要素のアセンブル化による多機能材料の創製 に関する研究」と「適応性構造材料の開発に関する 研究」という機能性材料系と構造材料系の2つのプ ロジェクトを有しており、この2つを統合し、材料 の作製手法を“一つの素機能を有する材料を組み合 わせて融合させる”ことに着目して中期計画プロジ ェクト「素機能融合化技術による安全材料の創製に 関する研究」を立ち上げ、機能材料の高度化と融合 化技術による安全材料の創製を目指すグループを結 成した。2.活動の経緯機能融合材料グループでは、材料の持つ多種の機 能を引き出し、それらを組み合わせる事により、材 料をインテリジェント化し、安全に使用できる材料 の実現を目指している。2001年のグループ発足当初、 クローズドセル構造材料、自己修復耐熱鋼、鉄系形 状記憶合金等の構造材料系、粒子アセンブル技術と 形状記憶合金薄膜等の機能材料系で始まった研究 は、それぞれ大きな成果をあげつつあり、国内の企 業等との共同研究、さらには海外の研究機関との協 力にまで発展している。セル構造材料、光学インテリジェント膜、フォト ニック結晶、形状記憶合金などは世界的にも高い評 価を受けており、また、マイクロピックアップシス テム、トレーニングレスFe-Mn-Si形状記憶合金、マ イクロアクチュエータ用Ti-Ni合金膜などは事業化に 近い段階まで来ている。5年間で行った、研究プロジェクト、企業や国内 外の研究機関との共同研究課題を以下に示す。2.15年間の研究プロジェクト・中期計画プロジェクト「素機能融合化技術による 安全材料の創製に関する研究」(2001.4-2006.3) 本プロジェクトにおいては、安全性・信頼性に関 わる基本多岐な機能を材料本来の各種機能に融合化 させた多機能な安全材料を開発した。構造系材料で は、金属コーティング粒子の金属同士を焼結するこ とにより、衝撃安全性に優れた超軽量なクローズド セル構造金属材料創製技術を開発した。また、ナノ 領域での組織を制御することにより、締結部材や強 化材として用いる安価な鉄系形状記憶合金や高温損 傷を自己修復する自己修復耐熱鋼を開発した。機能 材料では、粒子アセンブル技術等により、電子機器 に用いる多機能保護素子材料やフレキシブルかつ自 らが温度調節をする自己調温ヒーターシート及び光 を高度に制御できるフォトニック結晶および精密操 作技術を用いたフォトニック結晶の製造技術を開発 した。また薄膜化技術により応答速度の速い微小機 械用Ti-Ni系形状記憶合金薄膜を開発した。・萌芽研究「ナノ制御によるニチノールを超える高 性能鉄系形状記憶合金」(2002.4-2004.3)・文部科学省宇宙開発関係在外研究員派遣制度 「単分散コロイド粒子の自己組織化に関連する研 究」(2002.1-2003.1)・ホソカワ粉体工学振興財団研究助成「マイクロ 鋳型によるナノ粒子のマイクロパターニング」(2004.1-2004.12)・中期計画推進プログラム「環境に応じて構造色が 変化する視認型化学センサー材料」(2004.4-2006.3)・ NIMS内競争的個人研究「ダイヤモンド型半導体3次元フォトニック結晶 の構造探索と創製」(2002.4-2004.3)・中期計画推進プログラム「フォトニック構造物操作技術の高度化」 (2004.4-2006.3)・科学技術振興事業団さきがけ研究21「光波アンテナによる輻射場の制御と発光特性」 (2000.10-2003.9)・科学研究費補助金「位相制御領域を有するフォトニック結晶の作製 とその光デバイスへの応用」(2000.4-2002.3)・科学研究費補助金「プラズモン共鳴構造物研究のための金属ナノパ ターンのマニピュレーション技術の確立」(2003.4-2005.3)・材料研究所萌芽研究費「未知の磁気ネットワーク を持つ量子スピン系の磁性の研究」 (2003.4-2004.3)・材料研究所萌芽的研究「ナノ制御によるニチノー ルを超える高性能鉄系形状記憶合金」(2003.4-2005.3)・中期プロジェクト「粒子アセンブル技術の電子産 業への展開(2004.4-2006.3)・科研費「大気圧下での高電圧マイクロ放電を利用 した局所還元に関する研究」(2005.4-2007.3)・科学研究費「セラミックスを内包するマイクロク ローズドセル構造金属材料創製技術の開発」(2004.4-2007.3)・池谷財団「セル壁とは異なる材料を内包するマイ クロクローズドセル構造金属材料の変形過程」(2005.4-2006.3)・茨城県産・学・官共同研究事業「超軽量クローズ ドセル構造金属/セラミックス系複合材料の開 発」(2003.4-2005.3)2. 2企業及び国内外の研究機関との共同研究・走査電子顕微鏡下微粒子アセンブル法による光機 能材料の創製に関する研究(東京大学、2001―2003年)・位相制御領域を有するフォトニック結晶の作製と その光デバイスへの応用 (理化学研究所、2002年)・鉄基形状記憶合金の建築分野における応用に関す る研究(企業、2002―2005年)・半導体3次元フォトニック結晶の創製に関する研 究(東京大学、2003―2005年)・ 3次元超微細構造光学素子の開発 (企業、2004―2006年)・ Development of new technologies for smart materials and health monitoring (スマート材料およびヘルス モニタリングシステムの開発)(Research Institute of Industrial Science and Technology, Pophang, Korea,(財)浦項産業科學研究院、2004)・ NbC添加Fe-Mn-Si基形状記憶合金の細線化、高機 能化及び用途展開に関する研究(企業、2004 ―2005年)・スマート型検査プローブの作製技術に関する研究 (企業、2004 ―2005年)・走査電顕下マイクロマニピュレーション法による 光機能材料の創製に関する研究(東京大学、2004―2005年)・韓国,Research Institute of Industrial Science and Technology (RIST)と MOU締結(2003年)関連ワークショップ・第1回 RIST (韓国)―NIMSワークショップ開催 (2003年)・第2回 RIST-NIMSワークショップ開催(2003年)・第3回 RIST-NIMSワークショップ開催(2003年)・第4回 RIST-NIMSワークショップ開催(2005年)・第3回 NIMSコンファレンス開催(2004年)3. 5年間の研究トピックス・帯電パターンによるマイクロ粒子のパターニング 及び精密配列プロセス・静電場によるアルコキシド分子の選択堆積現象の 発見とそのパターニングプロセス(日本特許及び米国特許の取得)・世界初のダイヤモンド型フォトニック結晶の作製 に成功微小球でフォトニック結晶を作製する場合、ダイ ヤモンド型に積層すれば優れた光学特性が得られる と予測されていた。我々はマドリード材料科学研究 所と共同で、走査電子顕微鏡観察下で微小球を1個 1個積層することにより、世界初のダイヤモンド型 フォトニック結晶の実現に成功した。・世界最多層の半導体3次元フォトニック結晶の組 立に成功理化学研究所・横浜国立大学と共同で、半導体プ ロセスによって作った2次元プレートを走査電子顕 微鏡で観察しながら積み重ねることにより、最大20 層の3次元フォトニック結晶を作製することに成功 した。・等方分布円柱群におけるフォトニックギャップの 発見・プローブマニピュレーション技術の開発タングステンプロ ーブに数十Vの電圧を印加し、 通常の針状プロ ーブではピックアップできないサイ ズの金属粒子に適用した。・柔軟性のあるPTC薄膜の開発PTC材料である半導体化チタン酸バリウムを粒子 状にし、その周囲に金属粒子を分散して被覆する複 合化技術を開発した。さらに、この複合化したPTC 粒子を、真空パックの袋に薄膜状に充填することに より、セラミックであるのに可撓性のあるPTC薄膜 となった。・マイクロクローズドセル構造金属材料創製技術の 開発・形状記憶合金薄膜アクチュエータの開発・電子線モアレ法を用いた複合材のファイバー周辺 の残留応力測定技術開発・低コスト・高性能なNbC添加Fe-Mn-Si基形状記憶 合金の開発・鉄系形状記憶合金の新しい加工熱処理方法の開発 鉄系形状記憶合金強化型プレストレスト・コンク リートの提案・鉄系形状記憶合金を用いた新鉄骨締結技術の開発・ fcc/hcpマルテンサイト変態を利用した制振合金の 提案4. 5年間の論文数、特許関係、研究会開催等2001 年度2002 年度2003 年度2004 年度2005 年度論文数 25 34 41 23 (6)特許数 6 12 18 18 (6)MOU締結 1 1 (1)協働研究件数2 4 4 7 (6)研究会開 催4 1 (1)5.代表的な研究トピックスの詳細説明5.1 マイクロクローズドセル構造金属材料創製 技術の開発岸本哲はじめに軽量・高強度である上に、制振性やエネルギー吸 収性など、多数の機能を有する構造材料を開発する ために、3次元的なハニカム構造を有するセル構造 材料に着目し、セル壁とは異なる物質をセル壁内に 閉じこめ、金属をセル壁とするクローズドセル構造 金属材料作製技術を開発した。マイクロクローズドセル構造金属材料の作製本研究で用いたクローズドセル構造金属材料作製 法を図1に示す。作製の手順は以下のとおりであ る。1)ミクロンサイズの内包させる物質の粒子に無電 解メッキや蒸着等により金属をコーティングする。 2)これを成形容器に充填し、等方静水圧加圧によ り成型し、グリーン体を作製する。3)このグリー ン体を真空中で加熱・焼結によりセル壁同士を接合 すると有機物を内包するクローズドセル構造金属材 料が完成する。また、1)のコーティング終了後、 このコーティングした粒子をグラファイト製のダ イ・パンチの内部に充填し、放電プラズマ焼結法を 用いて焼結する方法も用いた。(図2)さらに、グリーン体の側面にセラミックスの粒子 を充填して焼結時に荷重を負荷し、セラミックス粒 子がグリーン体を押して、一軸荷重の放電プラズマ 焼結法を用いながらあたかも等方的に荷重が負荷さ れている状態で焼結する手法も開発した。(図3)マイクロクローズドセル構造金属材料作製したマイクロクローズドセル構造金属材料の 走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。Ni-P合金をコ ーティングした粒子を、成形後、真空中850℃にお いて1時間加熱・焼結し、直径約10mm高さ約10mm の円柱状のクローズドセル構造金属材料を作製した 試料の断面である。セル壁同士は良く接合し、また その内部にはセル壁とは異なる物質が内包されてい る。またこの材料は、純アルミニウムと同程度の減 衰率や高いエネルギー吸収率を有することが明らか となった。また、発泡ポリスチレン粒子にNi-P合金をコーテ ィングして焼結し、比重が0.78g/cm3と非常に軽い材 料も作製できた。まとめ金属をセル壁とするマイクロクローズドセル構造 材料作製法を開発した。本手法は、軽量な構造材料 を開発するばかりでなく、機能材料作製にも応用が 考えられ、今後、本手法を用いて多くの機能を有す る材料を開発する。図1 マイクロクローズドセル構造材料作製法図2 放電プラズマ焼結法を用いたマイクロクローズ ドセル構造材料作製法図3 放電プラズマ焼結法を用いた擬似等法静水圧負荷法によるマイクロクローズドセル構造材料作製法図4 マイクロクローズドセル構造金属材料の断面の走査型電子顕微鏡写真5. 2 形状記憶合金薄膜アクチュエータの開発石田章機器の小型化や携帯化により利便性の増大と高機 能化が進んでいる近年の技術分野において、微小な 部品を動かすためのアクチュエータの開発は新たな 製品を生み出すためのキーテクノロジーとして重要 性を増している。本研究所で開発を行っている形状 記憶合金薄膜は、従来の圧電素子に比べて発生力で 15倍以上、変位量で50倍以上の性能を示すことから、 大変位強力マイクロアクチュエータとしての応用が 期待されている。本研究では、スパッタリング法に よりTi-Ni二元系形状記憶合金薄膜をSi基板上に成膜 してバイモルフ型アクチュエータを試作し、アクチ ュエータ特性を評価した(図5)。薄膜単体では、 高温の形状しか覚えていないためにアクチュエータ に必要な可逆的な変化は得られないが、基板からの 熱応力を低温での変形に利用する(バイアス力)こ とによって、加熱・冷却により形状が完全に可逆的 に変化するアクチュエータを作れることがわかっ た。このアクチュエータの評価結果を踏まえて、京 都大学田畑研究室の協力により、マイクロデバイス の作製を行った。図6は図5のバイモルフ型アクチ ュエータを用いて作製したマイクログリッパと歩行 ロボットの例である。いずれも数V程度の電圧で繰 返し作動し、マイクロアクチュエータとしての性能 を実証することができた。また、本研究では、同時 に、二元系形状記憶合金薄膜の結果を三元系に展開 させるために、三元系合金薄膜の成膜技術と組成制 御技術の開発を行った。バルク材においても、形状 記憶特性の向上に第三元素の添加が有効なことが知 られているが、三元系合金になると急に脆くなるこ とから、添加量が低く抑えられており、またTiNi単 相領域の非常に狭い組成範囲に限られている。例え ば、図7に示すようなTi-Ni-Zr系合金では、脆くて 形状記憶効果は調べられていなかった。ところが薄 膜では、バルク材では脆くて形状記憶効果が調べら れないような広い組成範囲においても組織の微細化 によって優れた機械的特性を示し、従来のバルク材 よりも逆に優れた形状記憶効果が得られることが明 らかになった。Ti-Ni-Zr合金薄膜の結果は一例に過 ぎず、今後、種々の三元系合金に本研究で得られた 成膜技術を適用することによって、従来に報告され ていないようなナノメーターオーダーの組織が見出 され、その結果、さらに形状記憶特性が優れた新し い材料が得られることが十分に期待できる。Ti-Ni二 元系合金薄膜を用いたデバイスの作製によって形状 記憶合金薄膜が実用的な材料であることを実証でき たことと、またさらに三元系合金薄膜に展開するこ とによって形状記憶合金薄膜の特性の一層の向上が 示唆されたことにより、形状記憶合金薄膜アクチュ エータの実用化に向けて期待できる成果が得られ た。図5 バイモルフ型マイクロアクチュエータの動作特性微小物体を掴むマイクログリッパコンデンサを運ぶ歩行ロボット(形状記憶合金薄膜でできた2 2 0本の 足を使ってむかでのようにして歩く)図6 試作したマイクロマシン図7 Ti35.0Ni49.7Zr15.4薄膜の微細組織と形状記憶特性 (左下の鋳造材の組織に比べて結晶粒径は2桁小さくな っている。)5. 3 新しいトレーニングレス鉄系形状記憶合金 の開発とその応用化技術菊池武丕児、澤口孝宏5. 3.1 新しいトレーニングレス鉄系形状記憶 合金の開発Fe-Mn-Si基形状記憶合金(SMA)は安価で機械的 特性や溶接性・耐食性が良く、一方向形状記憶効果 を利用したパイプ締結部材などへの実用化が期待さ れている。この合金の性能向上には変形と加熱を複 数回繰り返すトレーニングと呼ばれる加工熱処理が 有効であることが知られている。当グループでは、 トレーニング処理を施した合金の内部微細組織や変 形組織を、光学顕微鏡(OM)、原子間力顕微鏡 (AFM)、透過型電子顕微鏡(TEM)および高分解 能透過電子顕微鏡(HREM)を用いてミクロからナ ノにわたる様々なスケールで観察した。その結果、 変形組織中のマルテンサイトが特定の晶壁面と特定 シアー方位で記述される単一バリアントに属し(図 8)、かつ、微細であることが、良好な形状記憶効 果を得るための必要条件であることを見出した。ま た、この仮定の下、ナノサイズのNbC炭化物を均一 に析出させたFe-Mn-Si基SMAを開発し、トレーニン グ処理を施すことなく形状記憶特性の改善に成功し た。さらに、NbC炭化物の時効析出処理の前に所定 の塑性加工により実用レベルの形状記憶特性が得ら れることも判明した。開発合金は、トレーニングレ スであるため製造コスト低減が可能であり、部材形 状の自由度も高い。また、前加工により形状回復力 を従来よりも高くできることも特徴である。図8 マルテンサイトが単一バリアントからなること を示すAFM象5. 3. 2 NbC添加Fe-Mn-Si基合金の形状記憶 特性と内部組織NbC炭化物は母相とキューブ・キューブの方位関 係を有し、母相(111)f面5層ごとにミスフィット転 位を生じながら半整合に析出する(図9)。NbC炭 化物の粒径は時効熱処理のみ施した試料で数十nm 程度、前加工後時効した試料では数nm程度と微細 になる。NbCの微細化に対応して、変形により誘起 されるマルテンサイト・プレートの板厚もナノ ・レ ベルまで微細化される。これは、NbC炭化物がマル テンサイトの核生成サイトとして作用するためと考 えられる。マルテンサイトの微細化は単一バリアン ト(図8)生成に有利であり、その結果変形―加熱 による正逆マルテンサイト変態の結晶学的可逆性が 増すことによって、形状記憶特性が改善されると考 えられる。図9 NbC炭化物の高分解能電子顕微鏡像5. 3. 3 NbC添加Fe-Mn-Si基合金の応用化技 術開発NbC添加Fe-Mn-Si基SMAの用途は、①締結材、② 強化繊維、③制振材料に大別することが出来る。① の代表例はパイプ締結材である。すでに、従来タイ プのFe-Mn-Si基合金(NbC無添加トレーニング材) が地下大型配管の締結などで実用化されている。 NbC添加の新合金は締結力が大きいことと低コスト が特徴であり、今後の実用化が期待される。また、 当グループではロッド状SMAを用いた新しい鉄骨締 結技術も開発した。H型鋼やボックス柱をスプライ ス・プレートと呼ばれる部材を介して連結する技術 で、圧縮変形させたロッド状SMAを鉄骨とスプライ ス・プレートを貫く穴に設置後、加熱することによ り接合が完了する。また、②のタイプの応用技術と してSMAを強化繊維として用いたプレストレスト・ コンクリートを提案している。コンクリート系材料 中に弾性引張変形させた高張力鋼を設置して母材に 圧縮力を加え、引張・曲げ強度を改善した材料であ り、SMAの形状回復力を利用することにより、特有 の施工技術や利用形態が期待される。近年、低降伏 点鋼を用いた鋼材ダンパーが急速に普及している。 地震の際、構造物が本体よりも早期に降伏変形して、 弾塑性ひずみヒステリシスにより振動エネルギーを 吸収する仕組みである。SMAを用いれば、これとは 異なる変形メカニズムにより、メンテナンスフリー の制振ダンパーを開発する事も期待される。Fe-Mn- Si基SMAは、Ni-Ti系合金やCu系合金等熱弾性型 SMAとは異なり、変態擬弾性は示さないと考えられ てきたが、当グループでは、NbC添加Fe-Mn-Si基 SMAが繰り返し引張・圧縮変形下で、マルテンサイ ト/オーステナイト界面の可逆的な運動に起因する と考えられる制振挙動を示すこと確認した。近年社 会的要請が高い激甚災害対策に資する新しい制振材 料が開発出来る可能性があり、今後注力していくべ き課題である。図10 SMAプレストレスト・コンクリート5.4 プローブマニピュレーション技術の開発今野武志、江頭満、齋藤恭子、小林幹彦、新谷紀雄概要:プローブマニピュレーションは、先鋭なプロ ーブの針を操作し、微小物を針の先端で任意の位置 に運搬、配置する技術である。このような技術は AFMによる原子操作に代表されるように、非常に微 細なものを対象としており、「大きく」て「重い」直径 が十μm以上の金属粒子には適用できなかった。我々は、タングステンのプローブに電圧を印加し、 静電気力を作用させることにより、このような対象 物にも適用できるようにし、さらに高電圧放電を利 用し、これらの金属粒子を溶接する技術を開発した。技術の詳細:図11は試作した装置の全景で、実験中 の写真である。タングステンのプローブを使い、金 基板上で作業を行うが、この際にプローブと基板間 に電圧を印加できるようにした。金属粒子を基板上に散布し、プローブを固定した まま基板をステージでX、Y、Zの各方向に移動させ て、プローブと粒子との相対的な位置を制御する。 焦点をプロ ーブ先端に合わせた2台の光学顕微鏡を 設置し、光学顕微鏡に取り付けたCCDカメラの画像 をモニターしながら、作業を行った。粒子を吸着する際には、プローブ先端を粒子上面 に接触した状態で、60V程度の電圧を印加するとよ いことがわかった。電圧を印加しなければ吸着しな い数十μmの金属粒子が、電圧を印加することによ り、プローブ先端に吸着した。次いで吸着した金属粒子を、所定の位置に運搬し て接合するために、それぞれ接触接合、非接触接合 と呼んでいる2種類の微小物接合法を開発した。接触接合は、プローブを粒子に接触した状態で 4kV以上の高電圧を印加する方法で、基板と粒子の 接触部で火花放電が生じて粒子が接合される。接合 力は弱いが、粒子と基板の表面に変化はない。さら にプローブを数十μm引き上げてから2kV以上を印 加して、接合部が放電炎で包まれるようにすると、 表面に放電痕が生じるが、接合力は強くなる。これ が非接触接合である。図12の(a)および(b)はそれぞれ接触接合、 非接触接合時の放電の様子を捉えた写真である。接触接合、非接触接合はいずれも、コッククロフ ト回路を搭載した低電流・高電圧(定格1mA、 10kV)の直流高電圧電源を使うことにより、可能 であることがわかった。図13に約40μmの金粒子で作った、金基板上に立 っている文字を示す。応用:本研究は、もともと多機能材料創製を目的と した技術開発であったが、電子部品や機械部品等の 微小化の流れの中で、微小物の新しい取り扱い技術 として注目されるようになってきた。実験室での使用のための特注品であるが、本技術 を利用したマイクロピックアップ装置が、企業によ り製作・販売され、分析操作の支援品として使われ ている。また、接合型プローブの作製、およびMEMSプロ ー ブ中の不良品の交換への応用研究が、微小物の溶接技 術に注目した企業からの提案という形で行われた。図11 プローブマニピュレーション装置図12微小接合時の放電の様子図13 プローブマニピュレーション装置により作製さ れた立体文字5. 5 マイクロ組立技術による3次元フォトニッ ク結晶の作製宮崎英樹フォトニック結晶とはフォトニック結晶とは、光の波長程度(数100nm ～数μm)の周期を持った2～3次元的な構造物で、 超微小光回路や高性能レーザなど、次世代の情報通 信技術を支える光学材料として注目されている。2 次元的なフォトニック結晶は半導体加工技術を利用 して数多く試作されており、実際に光集積回路に応 用される日もそう遠くないと思われる。それに対し て、3次元フォトニック結晶は、レーザの性能を抜 本的に改善できる唯一の材料として実用化が望まれ ているものの、今なお作製手法が確立していない。 半導体加工技術は本来平面的な構造を作る手法であ るため、3次元構造物の作製は苦手としている。簡 便な手法として微小球の自己組織化が注目されてい るが、設計通りの構造物を実現することは容易では ない。マイクロ組立技術本研究では、東京大学と共同で、走査電子顕微鏡 の画面を観察しながらマイクロロボットを操縦し、 微細な部品を1個1個積み上げることにより3次元 フォトニック結晶を組み立てる技術を開発した。取 り扱える物体の大きさは70nm～100μmで、材質の 制限は特にない。これほど微小な物体は、針の先に 付着させて容易に持ち運ぶことができる。それは、 物体が小さくなると重力はサイズの3乗に比例して 急激に小さくなり、静電力や分子間力のような付着 力の方が優勢になるからである。図14に微小な球を 並べている時の電子顕微鏡映像を示す。右上にプロ ーブと、その先端に付着している球が写っている。 画面には作りたい構造のCADデータを表示してお き、輪郭がそれにぴったりと合うように精度良く配 置していく。次元フォトニック結晶の作製例本手法では、並べる微小球の数を少しずつ増やし たり、上に積み重ねていきながら、光学特性がどの ように変化していくかを調べることができる。その 過程で、層数が2層の場合にだけ、特異的に強い光 回折現象が起こることを発見した。これは我々の手 法ならではの成果である。図15は球でできたダイヤモンド型フォトニック結 晶である。微小球の自己組織化でできる面心立方型 の結晶では大きな発光制御機能が現れない。微小球 をダイヤモンド型に積み上げるとよいことが理論的 に予測されていたが、我々はマドリード材料科学研 究所と共同で、シリカ粒子を積み上げる方法により、 世界で初めてその実現に成功した。また、理化学研究所・横浜国立大学と共同で、半 導体加工技術によって作ったインジウムリン製の平 板部品をプラモデルのように枠から切り離しては積 層し、最大20層の3次元フォトニック結晶を作るこ とにも成功した(図16)。従来の技術ではこれほど 多くの層を積み上げることはできなかった。1つの 半導体チップ上への数種類の結晶の集積化や、発光 制御に必要な欠陥層を中間に挿入し、その共鳴モー ドを観測することにも成功した。図13微小球を配列中の様子 図14シリカ球のダイヤモンド型フォ トニック結晶図15半導体3次元フォトニック5. 6 光学インテリジェント膜の創製と応用不動寺浩5. 6.1粒子アセンブルによるスマート材料創 製サブミクロンサイズの単分散コロイド粒子を最密 パッキングすることで人工オパールを形成した。こ の微粒子集積体は屈折率の周期構造を有しており、 光をブラッグ回折によって選択反射を起こす(図 16A)。可視光領域の光は構造色として肉眼で認識 することができる。図16構造色が変化する仕組みさらに立方最密充填した微粒子集積体の隙間をエ ラストマーで充填することでコンポジットを創製し た(図16B)。この新材料は外部から配列周期Dを変 化させることでブラッグ回折光の波長をシフトする ことができる(図16C)。すなわち外部環境の変化に より構造色を可逆的に変化することが可能である。5. 6. 2膨潤による構造色変化図17視認型溶媒センシング材料エラストマーを溶媒に浸けると膨潤する。体積膨 張により配列周期が拡大し、構造色は長波長側へ変 色する。図17Aの試験片はイソプロパノールに浸け ると緑 (ⅰ) から赤色(ⅱ)へ変色した。図17Bは微 細構造のSEM像であり、最密充填した配列コロイド 粒子が観察できる。この配列周期が拡大することで 変色する。図17Cは分光スペクトルであり反射ピー クはⅰとⅱの間を可逆的に変化する。5. 6. 3 歪みによる構造色変化新材料を応力で変形させると配列周期の間隔が変 化するため構造色も変色する。これはコロイド粒子 とエラストマーの異なる弾性率に起因する。初期状 態が赤色であった試料が応力歪みが加わると緑色に 変色する(図18A)。この変化は可逆的であった。 一方、この新材料を塑性材料に薄膜として形成した (図18B)。イラストのようにコート層は基板の変形 に追随する。右の写真では赤色であった構造色が歪 みにより青緑まで変色する。図18変形歪みによる構造色が変色する材料現在、以下の応用例を検討している。・弾性変形による構造色変化(特願2004-20410) ゴムなどの弾性体シート上にコンポジット材料をコ ーティングした。このシートを水平方向に引張ると 垂直方向は圧縮する。構造色はオリジナルの赤色か ら緑色へと変色した。この構造色変化は配列周期が 縮小するためで、ブラッグ回折波長も低波長側へ移 動した。この配列周期の変化は10nmレベルで変化 する。・歪み分布の可視化(特願2005-060454)塑性変形材料の基板表面にコロイド結晶薄膜層を形 成する。構造色は基板の塑性変形により変色する。 ブラッグ回折の波長変化は歪み量に対応する。初期 状態では全体が赤色の構造色である。基板を加熱状 態で引き延ばし、そのまま室温に冷却すると変形し た状態で固定される。ノッチ近傍が緑色に変色し、 応力による歪み分布を構造色変化として視認でき る。圧電体単結晶グループをめぐる5年木村秀夫、新野仁、中村博昭、眞岩幸治、宮崎昭光、小川洋一(現客員研究員2003331定年退職)、貝瀬正次(現分析ステーシ ョン2002.4.1移動)、鯨井脩(現評価室2002.8.1移動)、NIMSポスドク(2003.6.6～2005.6.5)、JSPSフェロー (2003.10.11～2005.10.1)、 他:外来研究員1名、客員研究員3名1.圧電体単結晶グループとは圧電体単結晶グループは金属材料技術研究所に由 来し、物質・材料研究機構の発足時から幾多の変遷 を経て現在に至っている。簡単にまとめると次のよ うになる。2001年度:材料研究所材料基盤研究センターエネルギー変換 材料研究グループ(木村、貝瀬、新野、宮崎) 材料研究所材料基盤研究センターインテリジェン  ト材料研究グループ(小川、鯨井、中村、眞岩)2002、2003年度:材料研究所機能基礎グループ(小川、木村、新野、 中村、眞岩、宮崎)2004、2005年度:材料研究所圧電体単結晶グループ(木村、新野、中村、眞岩、宮崎)2001年度においては、金属材料技術研究所時代の 組織のまま活動した。2002年度には、材料研究所材 料基盤研究センターエネルギー変換材料研究グルー プから3名、材料研究所材料基盤研究センターイン テリジェント材料研究グループから4名が集まり、 光、電子材料等の機能性材料における基盤研究の実 施を目的に材料研究所機能基礎グループがスタート した。その後、2004年度に材料研究所機能基礎グル ープを引き継ぐ形で材料研究所圧電体単結晶グルー プが発足し、現在に至っている。圧電体単結晶グループでは、主として以下のこと を目標としている。圧電体の中の強誘電体では、強誘電体メモリーが 次世代メモリーとして注目され、近年盛んに研究さ れ、実用化が進められているが、今後の小型化、高 集積化、高機能化のためには詳細な物性の理解が重 要である。材料としてはBi4Ti3O12が注目されている が、層状化合物で、かつ分解溶融型(包晶型)化合 物であるため、バルク単結晶の育成は困難で、バル ク単結晶の物性理解の前に、ヘテロエピタキシャル 薄膜を育成し、その特性評価が進められている。そ れ故に材料特性の本質的理解が十分でなく、材料改 良、特性向上の障害となっている。そこで、従来困 難とされているバルク単結晶の育成を我々独自の育 成法で試み、バルク単結晶特性を評価することで材 料本来の物性を明らかにするとともに、バルク結晶 を基板として低欠陥の薄膜結晶、厚膜結晶を育成し、 その強誘電性、圧電性を評価、さらなる強誘電体メ モリー、圧電体素子の特性向上を目指す。2.グループの活動経緯【運営費交付金による研究】2.1萌芽的研究の概要グループの主たる研究テーマは萌芽的研究であ り、以下に年次毎の概要を示す。1998年度～2001年度「加圧によるイオン伝導体の創製に関する研究」酸化物セラミックスのイオン伝導物質を利用し た固体電解質に関する研究は多くの研究者により 行われており、酸素センサー用の固体電解質とし て実用化されている。固体電解質を用いて特定す る化学種をリアルタイムで測定するためには、化 学種に関連した化合物を固溶した高イオン伝導物 質を合成することが必要である。しかし、大気汚 染物質に関連する化学種の多くは高温で分解しや すいことから、イオン伝導性を示す複合化合物を 合成する試みは皆無であった。本研究では加圧し た状態での焼成により、分解しやすい化合物の分 解を抑制して合成することを目的とした。これに よってイオン伝導性を示す複合化合物からなる固 体電解質の種類を拡大することができ、比較的低 温度で導電率が高く、腐食性ガス等を選択的に識 別し、しかも定量が可能な固体電解質の創製を行 うことが可能となった。「包晶系における結晶の成長・溶解機構に関する 研究」包晶化合物結晶の成長、溶解は一般に包晶反応 (α+L→β、分解反応(β→α+L)によって説明さ れる。このような物質の例として鉄鋼材料、金属 間化合物、超電導酸化物がある。しかしこの過程 を直接観察した例はなく、その機構は不明である。 本研究では、室温に包晶点(29.3℃)を持つ Sr(NO3)2-H2O系を例に、包晶化合物結晶の成長、 溶解のその場観察を通して、その機構を実験的に 検証した。2001年度～2002年度「微小領域における各種エネルギー変換誘電体結 晶材料の開発」化学量論組成ではなく、結晶を置換型固溶体と することで置換元素周囲の構造をミクロに制御 し、エネルギー変換機能を利用することで、非線 形光学結晶、圧電結晶などの結晶に新しい機能を付加させるための基盤研究を実施した。さらに、 ガラスを用いた3次の非線形光学材料に関する研 究を実施した。「希土類原子の高エネルギー状態に関する基礎的 研究」希土類原子の特異な性質を利用したプロセス開 発には、希土類原子やイオンの制御が重要である。 しかし、希土類原子の制御に必要な、固相での励 起・イオン化による高エネルギー状態に関する基 礎的研究は少ない。ここでは、二波長二段階レー ザー共鳴イオン化分光法-オプトガルバノ分光法 あるいは原子ビーム法を用いることにより、希土 類原子の自動イオン化状態(イオン化限界以上で 存在する原子状態)およびリュードベリ状態(イ オン化限界以下の高エネルギー原子)の探索を行 った。「プラズマイオン注入による超硬物質被膜に関す る研究」プラズマイオン注入法は、室温で3次元複雑形 状物の全表面に同時にイオン注入表面処理が可能 である。この方法で金属材料表面に炭素系超硬物 質被膜を作製し、密着性を向上させる手法を開発 した。さらに、炭素膜への窒素イオン注入により 超硬質膜を作製した。2002年度～2003年度「固体の混合伝導挙動に関する研究」固体電解質における電極材料には電子伝導とイ オン伝導の混合伝導を示す固体化合物が使われて おり、これらの材料の高性能化を図るためには伝 導挙動を解明する必要がある。混合伝導挙動を解 明するためには従来の概念とは異なる新しい方法 が重要である。ここでは、制御された雰囲気中お よび高真空中で定電位における分極により可動イ オンを電極近傍に固定すること、および可動イオ ンを高真空中に放出させてイオン伝導を防止する ことでV-I特性を求め、電子伝導性を明らかにし た。さらに、混合伝導挙動の基盤を確立するため に結晶構造が明らかにされている高純度結晶が必 要なため、包晶系における結晶の生成・溶解挙動 を明らかにした。2003年度～2004年度「プラズマイオン注入によるアンカー接合超硬質 被覆の研究」DLC (ダイヤモンド状炭素)膜は超低摩擦係数、 超硬質で耐摩耗性に優れているため家庭用ロボッ トのような省電力が求められる複雑な小型精密機 械の摺��動部品への利用に適している。プラズマイ オン注入では室温で複雑形状立体物に超硬質低摩 擦のDLC膜を被覆できるが、膜の密着性が不十分 である。特に、長寿命化のため膜厚を厚くすると 膜の内部応力が高くなり界面で剥離しやすくな る。本研究では膜の密着力の強化のため、Al酸化 膜の高密度微細孔をマスクとして基材表面にアン カー孔加工を行いプラズマイオン注入によりDLC 膜を注入被覆した基材中に高密度に微小な根を張 ったDLC膜を作製し、その特性を評価した。2003年度～2005年度「弾性波フィルター用圧電体薄膜結晶の開発」本研究では表面弾性波フィルターや強誘電体メ モリー用として期待される酸化物圧電体・強誘電 体単結晶を研究対象とした。具体的には、バルク 単結晶、ファイバー単結晶の育成研究を引き上げ 法、引き下げ法で行うとともに、薄膜・厚膜結晶 の育成研究をゾルゲル法、PLD法により行った。 育成したバルク単結晶、ファイバー単結晶、薄 膜・厚膜結晶について結晶性を評価するととも に、誘電特性、強誘電特性を評価し、バルク結晶、 ファイバー結晶と薄膜との特性の相違を明らかに するとともに、実用化を目指した。2004年度～2005年度「弾性波フィルターの分極特性に関する研究」圧電性は情報通信技術の中で広く使用されてい るが、特に強誘電体メモー用材料、弾性波フィル ター用圧電体材料等の開発が望まれている。圧電 性は結晶の歪みのためにイオンの相対的な位置が 変化したことにより起きるが、弾性波フィルター の高周波側では不可避的に混入した微量不純物に よって起こる微小欠陥構造が大きな影響を与えて いる。微小欠陥は電気特性に影響を及ぼすことか ら、高機能化を図るには詳細な電気的特性の評価 を行い、得られた知見を材料の製造過程にフィー ドバックさせることが重要である。本研究では、 結晶に電場をかけてわずかな変形を生じさせたと きの電位と電流の経時変化から電気特性(電価胆 体)を解明する方法の確立を目標とした。これに よって結晶質のイオン種と混合伝導体の伝導挙動 を明らかにすることが可能となるので、高機能性 を持った材料の開発を行うための基礎データを得 ることができた。2. 2中期計画推進プログラム研究の概要2004年度に中期計画推進プログラム制度がスター トし、1テーマが区分「B」で採用されたので、以 下に概要を示す。2004年度～2005年度「分解溶融型層状バルク強誘電体単結晶の育成と ホモエピタキシャル膜育成による誘電特性の向 上」強誘電体メモリーは、低消費電力、高速、不揮 発性であることから、次世代メモリーとして注目 され、近年盛んに研究されている。強誘電体メモ リーは、分極疲労の問題が解決されてきたことか ら、近年実用化されてきているが、今後の小型化、 高集積化、高機能化のためには詳細な物性の理解 が重要である。材料としてはBi4Ti3O12が注目され ているが、層状化合物で、かつ分解溶融型(包晶 型)化合物であるため、バルク単結晶の育成は困 難で、バルク単結晶の物性理解の前に、基板を用 いてヘテロエピタキシャル薄膜を育成し、その特 性評価が進められている。それ故に材料特性の本 質的理解が十分でなく、材料改良、特性向上の障 害となっている。本研究では、従来困難とされて いるバルク単結晶の育成を我々独自の引き下げ 法、引き上げ法で試み、結晶本来の特性であるバ ルク単結晶特性を評価するとともに、それを基板 として薄膜結晶、厚膜結晶を育成し、その誘電性 を評価、さらなる強誘電体メモリーの特性向上を 目指した。3. 5年間の成果3.1成果概要5年間は長く、多くのことを実施したが、以下に は主だった成果について示す。2001年度研究トピックス:*イオン伝導体の創製*包晶反応、分解溶融のその場観察*プラズマイオン注入の計算機シミュレーション―1*超硬質CN化合物の合成*自動イオン化プロセスの探索*リュードベリ状態の探索*紫外光まで透明な非線形光学ガラスの開発―1*レーザー波長変換用非線形光学結晶の開発*光導波路用ガーネット結晶の開発論文数:3報(査読国際誌のみ)他に解説等1件知財関係:特になし研究会開催:0件2002年度研究トピックス:*混合伝導挙動の解明―1*包晶化合物の生成・溶解挙動の解明―1*パルス電圧によるグロー放電を用いたプラズマ イオン注入実験*プラズマイオン注入の計算機シミュレーション― 2*Smの自動イオン化状態の検討*誘電体単結晶材料の探索*分解溶融結晶合成法の開発*紫外光まで透明な非線形光学ガラスの開発―2 外部資金獲得:1件日本宇宙フォーラム宇宙環境利用地上公募研究萌 芽研究「包晶系における核形成と成長の速度論的研究」 (2002-2003)2成分系の液相と固相の相平衡関係の基本的なも のの一つに包晶系がある。相平衡関係から、包晶系 での結晶生成、分解は包晶反応、分解溶融で説明さ れることが多いが、実験的に検証された例は無い。 一方で、過冷された液相からは高温相及び低温相の 2つの固相が同時に核形成、成長することも可能で もある。2つの固相がどのような条件で生成するか を知るためには、結晶の核形成及び成長のカイネテ ィクスを、それぞれの固相について明らかにする必 要がある。本研究はSr(NO3)2-H2O系でモデル実験を 行い、結晶生成過程のその場観察を通して、包晶系 における個々の固相の成長を、速度論的に明らかに することを目的とした。結晶の核形成、成長実験で は、微小重力環境は対流および不均一核形成抑制の 点で理想的な環境である。その対照実験として、地 上実験では溶液流のもとで実験を行い、その影響を 調べた。論文数:3報(査読国際誌のみ)他に解説等2件、招待・依頼講演2件知財関係:特になし研究会開催:1件(日本電子材料技術協会金属材料 研究会に協賛)2003年度研究トピックス:*混合伝導挙動の解明―1*包晶化合物の生成・溶解挙動の解明―1*微細孔作製法の検討* KNbO3単結晶作製技術の開発* Pb2KNb5O15単結晶作製技術の開発と電気特性評 価*強誘電体Bi4Ti3O12バルク単結晶の開発と電気特 性評価*ゾルゲル法によるKNbO3薄膜結晶合成技術の開 発外部資金獲得:1件日本学術振興会外国人特別研究員試験研究費、科 学研究費補助金(特別研究員奨励費)「ペロブスカイト型ニオブ酸薄膜の創成、ミクロ 組織制御および強誘電性の応用」(2003-2005)ペロブスカイト型ニオブ酸の一つであるニオブ 酸カリウム結晶において、近年バルク結晶で大き な圧電特性が報告され、次世代圧電結晶として注 目されているが、分解溶融結晶で、固相転移が二 つもあるためにバルク結晶の育成は困難で、応用 には薄膜の利用が不可欠である。しかし、薄膜結 晶に関する研究はほとんど無い。本研究では、新 しい化学溶液法、PLD法により固相転移が影響し にくい低温で薄膜結晶の成膜を試み、電気特性評 価を行った。さらに、FeRAM用強誘電体薄膜と して注目されるチタン酸ビスマスバルク結晶も対 象とし、薄膜成膜を試みた。特に、ドーピングの 効果、電極の影響評価に重点をおいた。論文数:5報(査読国際誌のみ)他に解説等1件、招待・依頼講演1件知財関係:特になし研究会開催:2件(日本電子材料技術協会金属材料 研究会に協賛)2004年度研究トピックス:*固体電解質における定電位分極測定方法の検討 * Sr(NO3)2-H2O系における溶解度曲線の決定*微細孔作製技術の開発*他元素ドープKNbO3、Bi4Ti3O12バルク単結晶・薄膜の合成と評価外部資金獲得:2件池谷科学技術振興財団研究助成「強誘電体メモリー用難合成バルク層状単結晶の 合成と評価」(2004)バルク単結晶の合成が困難な強誘電体メモリー 用層状酸化物について、独自特許を用いた溶融引 き下げ法、チューブ引き上げ法によりバルク単結 晶育成を試み、異方性を考慮した結晶本来の特性 であるバルク単結晶の誘電特性、非線形光学特性 を評価し、今後の強誘電体メモリー用結晶材料開 発のためのデータ取得を目的とした。科学研究費基盤研究C「その場計測が可能な硫黄及びSOxセンサー用固 体電解質に関する研究」(2004-2006)大気汚染物質である硫黄とSOxは酸性霧や酸性 雨の生成を促し、森林及び植物生体系や人間の生 活環境に深刻な影響を与えている。現在の硫黄と SOxの分析法では試料採取をしてから分析を行う ため、発生源での瞬時分析ができない。本研究で は、金属製錬、化石燃料の燃焼工程等において硫 黄とSOxの変化量を安価で、in-situに連続分析を 行うことができる固体電解質センサーの開発を目 的とし、発生源での計測技術の開発と、それによ るSOx抑制技術の向上を目指す。受賞:JSPSフェロ ー優秀発表賞(日本電子材料技術 協会第41回秋期講演大会、2004.11.2)論文数:8報(査読国際誌のみ)他に招待・依頼講演2件知財関係:国内特許出願1件、国内特許登録1件、 企業からの受託研究1件研究会開催:2件(日本電子材料技術協会金属材料 研究会に協賛)2005年度研究トピックス:*電場分極による固体電解質の電化胆体の解明* Sr(NO3)2-H2O系における包晶反応機構の解明*微細孔作製過程における電気化学反応機構の解 明*他元素ドープKNbO3、Bi4Ti3O12バルク単結晶・ 薄膜の電気特性評価外部資金獲得:2件科学研究費基盤研究C「ゾルゲル法により生成したアモルファス薄膜へ の外部磁界印加による結晶配向性の制御」(2005- 2006)ユビキタス社会の到来には、機器の小型化が重 要である。電子回路部分の小型化は比較的容易だ が、アクチュエーター、振動子部分の小型化は、 機械的駆動部が必要なため容易ではない。形状記 憶合金の利用もあるが、有望なのは圧電体の電 気-機械結合の利用である。小型化のためには圧 電体薄膜の利用が重要だが、圧電体はバルク結晶 としての使用が多く、特性の良い圧電体薄膜の生 成は困難である。圧電体薄膜の効率的生成にはゾ ルゲル法が有効である。本研究は、ゾルゲル法に より生成したアモルファス薄膜の結晶化の際に磁 界を印加することで結晶配向性を制御して圧電・ 強誘電特性を向上させ、小型高性能アクチュエー ター、振動子の実現を目指す。日本宇宙フォーラム宇宙環境利用地上公募研究宇 宙利用先駆研究「光触媒を用いた宇宙環境における汚染防止技術 の開発」(2005-2006)人類の宇宙空間での活動が活発化するにつれ宇 宙環境の汚染が問題となってきた。本研究の目的 は、地上で広く利用されている光触媒技術を宇宙 環境での汚染防止技術として利用するための基盤 技術の開発にあり、主なターゲットはLEOにおけ るスラスタープルームに起因する炭化水素の分解 である。光触媒としては酸化チタンを想定し、酸 化チタンの汚染防止対象物への光触媒の表面コー ティングには、我々が開発した新しいゾルゲル法 を主として採用する。この方法はバインダーを使 用しない方法のため、バインダーによる光触媒効 率低下を抑制することができる。なお、比較のた めPLD法による試料についても検討する。具体的 には宇宙真空環境における光触媒の有効性を検討 するとともに、地上模擬環境での曝露実験、 JAXAスペースチャンバーを利用した曝露実験に より、紫外線環境、熱サイクル環境、真空環境等 の宇宙環境で光触媒を使用する場合の問題点を抽 出する。論文数:8報(査読国際誌のみ)他に解説等6件、招待・依頼講演2件、雑誌編集 2件知財関係:特になし研究会開催:1件(日本電子材料技術協会金属材料 研究会に協賛)3.2成果の詳細ここでは、3.1.成果概要に示した外部資金に よる研究2例につき、成果の詳細を簡単に示す。日本宇宙フォーラム宇宙環境利用地上公募研究萌芽 研究「包晶系における核形成と成長の速度論敵研究」 (2002-2003)包晶系では、包晶温度Tpの上下で液相と平衡な 固相が異なり、低温相(β)および高温相(α) は、包晶反応(α+L→ β)および分解溶融(β →α+L)により成長する。溶液が両相に対し過 飽和ならば、二相が同時に成長する。本研究では Sr(NO3)2-H2O包晶系(図1)でこれらの過程のそ の場観察を試みた。図1の点A-Dの溶液中での結晶の溶解および成 長の結果を図2a-dに示す。点Aの溶液中で溶解す るβ相(Sr(NO3)2)の周りにα相が晶出し(図2a)、 点Bで溶解するα相(Sr(NO3)2・4H2O)の周りにβ 相が晶出する(図1b)。両者の温度はTpから大き く離れている。二相に対し過飽和な溶液C, Dでは 両相が同時成長する(図2c, d)。しかし二相が接 近すると準安定相は溶解し、安定相は成長する。 成長もしくく、安定相の飽和濃度は準安定相の飽 和濃度より小さい。Tpから離れるに従い二相の飽 和濃度差は大きくなり、ある温度Tgで準安定相が 溶解すると、その周りには安定相に対して過飽和 な溶液が生じ、過飽和度が十分大きいと安定相が 晶出することになる。これが分解溶融と包晶反応 のメカニズムである。二相がある温度で同時成長 する場合、安定相周りの溶液濃度は準安定相に対 して不飽和であり、二相が接近すると準安定相は 溶解する。また、図2のいずれのケースでも、 Tg>Tpでは安定相の成長面は準安定相の溶解面に 追いつかないのに対し、Tg<Tpでは追いつく。よ って、包晶組織は前者ではできず、後者ではでき る。包晶が形成されるかどうは準安定相の溶解速 度と安定相の成長速度の差によって決まる。日本学術振興会外国人特別研究員試験研究費、科学 研究費補助金(特別研究員奨励費)「ペロブスカイ ト型ニオブ酸薄膜の創成、ミクロ組織制御および強 誘電性の応用」(2003-2005)強誘電体メモリー、圧電素子の観点から、 KNbO3、Bi4Ti3O12等の薄膜結晶をゾルゲル法、 PLD法により成膜し、強誘電体テスター、インピ ーダンスアナライザーを使用して電気的特性を評 価した。ゾルゲル法では、蒸留水ではなく過酸化水素水 を使用することで緻密なKNbO粒子を生成できる ことを見いだし、この手法をBi4Ti3O12の合成にも 適用した。本研究では、Si単結晶基板を用いて薄 膜結晶成膜条件を探索したが、電気特性評価では Pt電極形成法の影響が大きいため、Si/SiO2/Pt、 Si/Pt、Si/SrRuO3/Ptなどの電極構成を試み、電極 形成法が電気特性に与える影響を評価した。育成 した膜に関しては、SEM観察、SPM観察を行い、 電気特性評価結果と関係付けた。Bi4Ti3O12におい ては、Smをドープすることで117方位に大きな自 発分極をもつ薄膜の形成に成功した(図3)。図1Sr(NO3)2-H2O包晶系における状態図(相図)図2 分解溶融(a)、包晶反応(b)、同時成長(c,d)図3117に配向Sm: Bi4Ti3O12薄膜のP-E曲線4.圧電体研究分野の最新動向1)世界の動向多くの酸化物は誘電体である。誘電体に分類され る圧電体は、結晶構造に対称中心を持たない誘電体 として定義される。圧電体が示す圧電現象とは、歪 みを与えると電界が生じ、電界を印加すると変形が 生じる現象(電気機械結合現象)で、酸化物圧電体は種々の電子デバイスの中で電気エネルギーと機械 エネルギーとの変換に使用されている。多くは単価 の安いセラミックスとして、センサー、アクチュエ ーター、トランスとして使用されているが、単価の 高い単結晶・薄膜としても、振動子、フィルター、 メモリーとして使用されている。分類上、圧電体に は強誘電体も含み、ここではこれらのセラミック ス・単結晶・薄膜をとりあげる。圧電体セラミックスは、おおよそペロブスカイト 型、タングステンブロンズ型、ビスマス層状化合物 型に分類される。古くから知られている代表的なも のは、ペロブスカイト型BaTi3O (BTO)、Pb (Zr, Ti) O3 (PZT)である。ここ10年くらいは、不規則型 (非化学量論型)のリラクサ系セラミックスPb (B',B")O3が、 大きな誘電率を持つことから盛んに 研究されている。最近では、Pbの環境問題から、 Ba系、K系、Bi系酸化物の研究が行われるようにな ってきている。特にヨーロッパでは環境意識が高く、 電子デバイスへのPbフリー化のための法整備が進 み、Pbフリー圧電セラミックスに関する研究プロジ ェクトも立ち上げられている。圧電体単結晶としては、バルクの状態でLiNbO3 (LN)、LiTaO3 (LT)、La3Ga5SiO14 (ランガサイト) が表面弾性波(SAW)フィルターとして、SiO2 (水 晶)が発振子・振動子として、主にテレビ、移動体 端末のRF部、IF部で使用されている。今後はテレ ビが飽和し、移動体端末での需要が多くなると予想 される。特に、水晶とランガサイトは強誘電体でな い圧電体として高温環境での使用が可能であり、自 動車等でのセンサー部品としての使用が試みられて いる。単結晶の場合には方位異方性が大きいため、 用途によりさまざまな方位で使用されている。一方、強誘電体メモリーとしては薄膜状態で使用 され、低消費電力、高速、不揮発性であることから 次世代メモリーとして注目されている。従来のフラ ッシュメモリーの動作速度が1ミリ秒クラスである のに対し、強誘電体メモリーは100ナノ秒クラスと DRAMと同程度であり、しかも遥かに低電力で動作 可能である。ここでもPb系であるPZT系が研究され、 実用化が進んでいるが、今後のPbフリー化、小型化、 高集積化、高機能化のためにはBi系が有望とされて いる。しかし、Bi系化合物は層状化合物であり、バ ルク単結晶育成が困難であったため、本来の物理特 性が十分理解されないまま応用化研究が進んでいる のが現状で、既存材料の改良や新規の強誘電体メモ リー材料の開発に障害となっている。Bi系層状化合 物強誘電体(BLSF)の代表はSrBi2Ta2O9 (SBT)系 であるが、近年Bi4Ti3O12 (BIT)系が、低温育成が 可能であること、元素置換による特性制御が可能で あることから注目されている。国際会議では、強誘電体に関する会議が毎年数多 く開催されている。全世界を対象とするものだけで なく、アジアの会議、二国間会議も盛んである。一 方で圧電体の会議は少なく、強誘電体会議の一セッションとして開催されている程度である。主な会議 は次の通りである。* Asian Meeting on Ferroelectrics (AMF) : 3 年ご とに開催されるアジアの会議。AMF-3 (香港、 2000)、AMF-4 (インド、2003)。* International Symposium on the Applications of Ferroelectrics (ISAF) : IEEE主催の 2 年ごとに開 催される強誘電体の応用に関する国際会議。次回 は2006年に米国で開催予定。* The Meeting on Ferroelectric Materials and Their Application (FMA、強誘電体応用会議):毎年京 都で開催される会議。海外からの発表も多い。雑誌では、強誘電体の専門誌としてFerroelectrics が出版され、強誘電体応用会議では、Proceedingsが Jpn. J. Appl. Phys. (JJAP)の通常号No.9として毎年 出版されている。2)国内の動向日本においてもPbフリー化の流れがあるものの、 リラクサ系を中心にPb系圧電体に関するプロジェク トがいくつも立ち上げられている。目的の一つには、 医療用超音波機器の性能向上がある。SAWフィルターは、圧電体結晶表面の櫛形状電 極間で表面弾性波のやりとりをするもので、レイリ ー波を主に利用するが、反射の際にモード変換が必 要なため、BGS波を利用する試みもある。また。バ ルク波を利用したフィルターの試作も行われてい る。一方で、フィルター用結晶には電気機械結合係 数が大きくなければならないという条件があり、し かも温度係数ゼロが望ましい。水晶は電気機械結合 係数は大きくは無いが温度係数がゼロの方位がある ため、SAWフィルター結晶として広く使われてい る。LN、LT結晶では電気機械結合係数は大きいが、 温度係数がゼロとはならない。最近、温度係数がゼ ロである結晶としてLi2B4O7 (LBO)結晶が注目され、 ブリッジマン法による単結晶育成が行われている。強誘電体メモリーについては、大学、企業を問わ ず、多くの機関で研究開発が行われており、文献も 数多く出版されている。近年、文部科学省科学研究 補助金「特定領域研究(B) (2) , No.12134203」が 終了し、2003年秋の応用物理学会で「強誘電体薄膜 の物性と次世代メモリデバイス」シンポジウムが開 催された。研究機関としては、大学関係では奈良先端大学院 大学、富山県立大学等で圧電体単結晶・薄膜・セラ ミックスに関する研究が、東京工業大学、東北大学 等でドメイン制御に関する研究が実施されている。 また、産業技術総合研究所では無鉛圧電体セラミッ クスに関するプロジェクト研究が行われた。研究発 表の多くは、日本物理学会誘電体分科、応用物理学 会強誘電体薄膜/誘電材料・誘電体セッション、日 本セラミックス協会電子材料部会、日本電子材料技 術協会セラミクス材料研究会等で行われている。企業関係では、多くの電子部品メーカーで圧電体 セラミックスに関する研究開発が行われ、商品化さ れている。企業の最新情報は、(社)日本電子材料 工業会(圧電セラミックス部会、誘電体セラミック ス部会)で知ることができる(当工業会は、(社) 電子情報技術産業協会に平成17年4月1日付けで統 合された)。また、国内の動向については、産業技術総合研究 所楠本博士のホームページに詳しくまとめられてい る(http://staff.aist.go.jp/k-kusumoto/) 。3)NIMSの現状・NIMSの研究NIMSでは、圧電体に対して圧電現象を利用する 真の意味の圧電体としても、強誘電体としても研究 を行っている。圧電体・強誘電体の単結晶・薄膜と しては、SAWフィルター用としてバルクKNbO3 (KN)単結晶育成技術の開発に取り組んでいる。ま た、LN、LTでは、化学量論組成の結晶育成技術を 開発し、大幅な性能の向上に成功している。強誘電体メモリー用としては、層状化合物である ため従来困難とされているBLSFのバルク単結晶を 独自の引き下げ法、引き上げ法で育成し、バルク単 結晶特性を評価するとともに、メモリー特性の向上 を目指して、PLD法による薄膜化を試みている。圧電体薄膜作製研究においては、過酸化水を使用 する新しい化学溶液法(ゾルゲル法)を開発し、微 細粒子からなるKN、BIT結晶を作製した。さらに、点欠陥配列制御による新しい圧電メカニ ズムを考案し、BaTiO3系で実証するとともに、関連 特許を出願中である。なお、この件ではPbフリー圧 電体の技術開発を対象とした企業との共同研究が進 行中である。4)NIMS外の注目研究、今後の動向Pbフリー圧電体単結晶としてKN、K(NbTa)O3 (KNT)、BIT結晶が注目され、ブリッジマン法によ る単結晶育成技術の確立が試みられている。新しい 結晶としては、産業技術総合研究所で(Bi0.5Na0.5) TiO3-BaTiO3 (BNT-BT)が開発されている。LT結晶 では、表面電荷発生を抑えるために電気抵抗を低く したSAWフィルター用結晶が開発され、市販も始 まっている。強誘電体では、ドメインエンジニアリングの言葉 が定着しつつあり、東北大のグループによる微細ド メインの形成制御、東工大グループによるエンジニ アード・ドメイン構造の作製、NIMSのグループに よる強誘電体組成制御によるドメイン制御が行われ ている。材料としては、最近東北大のグループが古 くから知られているKNにおいて、電気機械係数が 大きな方位があることを報告し、再び注目を集めて いるが、バルク単結晶育成技術の確立が課題であ る。強誘電体メモリーでは、Pbフリーの観点からPZT 系ではなく、BITのようなBi系薄膜の改良が今後進 んでいくものと考えられる。http:%25e3%2580%2583staff.aist.go.jp/k-kusumoto/5.組織運営上の問題点、反省点、提言などこの5年間は組織、システムが目まぐるしく変わ り、落ち着いて研究ができる状態ではなかったが、 この変化の容易さが独立行政法人の特徴であり、今 後はプラスの方向に働いていくことが期待されてい る。日本全体を見ても、国の財政削減の中にもかかわ らず科学技術研究費は微増の状態を保ってきたが、 その目的とするところは大きく変化し、基礎研究重 視の時代から研究成果活用の時代となり、大きなギ ャップを経験することとなった。もちろん納税者へ の説明責任も大きくクローズアップされ、研究テー マの設定、進め方も変わってきている。研究対象の 点では、軽薄短小の時代がさらに進み、これからは 基礎から応用にまたがるナノテクノロジー全盛の時 代へとなろうとしている。その時には、ナノスケー ルと我々人間のスケールとをつなぐインターフェー スも益々重要となるに違いなく、我々が研究対象と する圧電体も、センサー、アクチュエーター等とし て重みが増していくことだろう。材料分野におけるナノテクノロジーの重要性も、 これから増していくことだろうが、「Trueナノテク ノロジー」(亀井信一、「Trueナノテクノロジー」 の時代へ、日本電子材料技術協会第42回秋期講演大 会講演概要集(2005) Ⅰ-1)を常に念頭におき、研究 を進めていきたい。ナノ組織解析グループの5年宝野和博、大久保忠勝、大沼正人、高橋有紀子外来研究員:阿部信雄、大崎智、大石敬一郎、佐々木泰介、関智子、長濱大輔、J. Buha, Z. Gercsi, S. V. Karthik, G. Kumar, I. Martin, K. Mondal, A. Rajanikanth転出者:平徳海、本間智之、R. Ghlamipour, R. Gopalan, A. A. Kundig, B. S. Murty, T. Na, J. C. Oh, Y. Q. Wu, X. Xiong, C. Y. You, H. W.Zhang, J. Zhanghttp://www.nims.go.jp/apfim/1.ナノ組織解析グループナノ組織解析グループは実用的に重要な金属系材 料のナノ組織をアトムプローブ(APFIM)、電子顕 微鏡(TEM)、小角散乱(SAS)により精密に解析 し、ナノ組織と特性の因果関係を解明することによ り、新材料の開発に貢献するという目標を掲げて 2001年4月に発足した。発足当時の職員は宝野和博、 大沼正人、平徳海であったが、2002年4月から大久 保忠勝が大阪大学から転入、平徳海が2003年4月に 転出、高橋有紀子が2005年1月採用となり、現在職 員4名からなる小グループである。この間、常時ポ スドク、JSPSフェロー、筑波大連係大学院生が入れ 替わり立ち替わり在籍し、これらの非正規職員がグ ループの研究活動を支える大きな力となっている。 このようにグループ構成員が常時変化してきたの で、テーマもその都度時機を得たものに更新するこ とができた。また大学院修士課程の学生の未熟なが らも若い力を活用し、常に挑戦的な新しいテーマを 開拓している。グループ名が示す通り、ナノ組織解析グループは 「解析」グループとして発足した。しかしならが、当 初からグループの目的はナノ組織解析により材料開 発に貢献することという考えがあり、そのため英語 名は Metallic Nanostructure Group というように、「解 析」を意味する言葉を入れていない。構造材料であ れ、機能材料であれ、金属系材料は構成相のintrisic な物性を利用するだけでなく、それらが加工や熱処 理により複雑にからみあう「微細組織」を制御して 材料としての優れた特性を得ている。そのため実用 材料開発には「微細組織制御」が重要となる。近年、 従来材料を凌駕する特性を得るために様々なプロセ スで微細組織をナノスケールで制御する手法が発達 し、それに伴ってナノ組織解析の重要性が高まって きた。このような背景から、3次元アトムプローブ (3DAP)、電子顕微鏡(TEM)、小角散乱法(SAXS) を相補的に用いて金属系材料のナノ組織を精密に解 析するプロ集団としてグループが発足した。当初、ユニークなナノ組織を持つことにより優れ た特性が得られる材料を企業や他の研究グループか ら入手し、その組織を解析して特性と組織の因果関 係を解明するという研究手法を採っていた。ところ がナノ結晶軟磁性材料、ナノコンポジット磁石のナ ノ組織と特性に関する成果を公表し始めると、それ らの研究結果に興味をいだいたプロセスに経験を有 する研究者がポスドクとして応募してくるようにな った。これらの研究者を採用することにより、他所 で創製された材料を解析するだけでなく、自前でナ ノ組織材料を試作し、その特性と組織を評価して、 その結果を新たな材料設計に活用する研究手法に移 行していった。またポスドクとしてグループ結成当 初から参加した高橋有紀子は大学院時代薄膜プロセ スの研究を行っていたので、超高密度磁気記録媒体 用材料として注目され始めていたFePt磁性薄膜の創 製とその特性評価・微細組織解析の研究を新たに展 開し始めた。図1ナノ組織解析グループのコンセプト2.プロジェクト研究このようなプロセス・評価・解析の三位一体の研 究を加速したのが2000年度から開始した科学技術振 興調整費総合研究課題「ナノヘテロ金属材料の機能 発現メカニズムの解明に基づく新金属材料創製に関 する研究」(代表:宝野和博)の実施である。この 研究課題では高度な解析手法を活用して得られたナ ノ組織と特性の因果関係についての研究に基づい て、新たな金属系ナノ組織材料を開発するというプ ロジェクトであり、このプロジェクトを産官学共同 で実施する過程で、さまざまな実用材料のナノ組織 の問題に取り組むことができた。このプロジェクト により最新の3次元アトムプローブの製作、小角散 乱装置、動径分布解析装置の整備、超高真空多元ス パッタ装置の導入、さらに薄膜や粉末から3DAP分 析用針状試料を作製するための収束イオンビーム装 置の導入が可能となり、一挙にグループのナノ組織 解析能力を高めることができた。それと平行して実 施した原子力試験研究課題「3次元アトムプローブ による構造材料中における溶質原子クラスター形成 と材質変化の研究」(代表:宝野和博)でも、最新 の3次元アトムプローブを製作し、それを大洗の原 http://www.nims.go.jp/apfim/子力研究所構内にある東北大学金属材料研究所材料 試験炉実験施設(現東北大学金属材料研究所附属量 子エネルギー材料科学国際研究センター)の放射線 管理区域内に設置し、原子炉内で中性子照射を受け た放射化試料の3DAP分析を可能とする設備を整備 し、長谷川雅幸教授のグループと共同でその運営管 理を行っている。この研究プロジェクトを通じて、 Cuを不純物として含む圧力容器鋼中の熱時効や中性 子・電子線照射による溶質原子のクラスター過程の 解析を陽電子消滅実験と併用して行い、アトムプロ ーブで溶質原子クラスターを直接観察し、空孔・溶 質対を陽電子消滅で解析するという手法を開拓し た。このように個々の解析手法を研究対象とするの ではなく、複数の手法の融合により解析研究の目標 を材料の問題解明に定めるという一貫した姿勢で金 属系材料のナノ組織解析を展開した。本施設は管理 区域内に設置された唯一のアトムプローブとして中 性子照射による材料損傷の研究の発展に大きな役割 を果たしている。図2 東北大学金属材料研究所材料試験炉実験施設の 放射線管理区域に設置された放射化試料分析用3DAP (NIMSとの共同運営)またグループ発足後1年遅れで運営交付金プロジ ェクト「ナノ組織制御による次世代高特性材料の創 製に関する研究」(代表:宝野和博)が採択された。 本研究プロジェクトは様々な手法により金属・セラ ミクス材料のナノ組織を制御し、ナノ組織特有の特 性を活用した材料創製を行うことを目的としたプロ ジェクトであり、そのサブテーマとして本グループ は主として「ナノ組織磁性材料」を主体的に実施し、 「ナノ組織高強度材料」のサブテーマにも参加した。 ナノ組織磁性材料ではFePt薄膜の磁気特性と構造、 永久磁石材料のナノ組織と特性、ナノ結晶・ナノグ ラニュラー軟磁性材料のナノ組織と特性に関する研 究を実施した。これらの研究を通して、将来データ ストレージの分野でますますナノ組織磁性材料が重 要になることがクローズアップされ、それに迅速に 対応するために点接触アンドレーフ反射を用いたス ピン分極率測定装置を2005年に立ち上げ、ただちに ホイスラー合金を初めとするスピトロニクス材料の 創製とスピン分極率の直接測定に取り組んだ。また この研究を契機として科研費基盤研究B「データス トレージ用磁性材料のナノ構造と磁気特性」(代 表:大久保忠勝)が採択され、データストレージ材 料のナノ構造解析をさらに精力的に推進している。 一方、ナノ組織高強度材料ではマグネシウム合金中 のナノ析出物の解析、強歪み加工による2相ナノ組 織の創製とその解析、その結果からプロセス提案を 行い、バルクナノ結晶スチールの試作などを行った。 マグネシウム合金のナノ解析の研究は平成17年度の 運営交付金プロジェクト新規課題「ナノボール状化 技術による超軽量構造材料の創製」(代表者:向井 敏司)のサブテーマ「原子レベル欠陥制御による高 比強度合金の創製」にスピンオフした。また振興調整費総合研究「ナノヘテロ金属材料の 機能発現メカニズムの解明に基づく新金属材料創製 に関する研究」の課題の一部として取り組んでいた アモルファス合金のナノ結晶化の研究は、平成15年 度に採択された科研費特定領域研究「金属ガラスの 材料科学」(領域代表者:東北大井上明久教授)の A05班の研究課題「金属ガラスの結晶化・ナノ組織 形成」(班長:宝野和博)にスピンオフし、科研費 のテーマとして本格的に取り組み始め、2相金属ガ ラスの発見や金属ガラスの相分離の従来の学説の再 考など、ユニークな成果を得た。また、金属ガラス の構造解析、相分離の検出を有効に行うために機構 内萌芽研究テーマ「金属ガラスの組成・構造ゆらぎ の解明とそれを利用した材料開発」(代表:大沼正 人)により小角散乱装置と動径分布測定装置の充実 を計った。本グループの研究を推進するに当たり、計算材料 研究部の粒子・統計グループと密接な共同研究を行 い、実験的に観察されたナノ組織形成の熱力学的解 釈、Phase Field法・分子動力学によるモデリングに よるナノ組織形成予測を併用した。3.成果の概要3次元アトムプローブ(3DAP)、電子顕微鏡 (TEM)、小角散乱(SAS)を相補的に用いて、様々 な金属系ナノ材料の微細組織を評価し、特性とナノ 組織の因果関係を解明することにより、さらに優れ た特性を得るための材料開発の指針を得た。そのた めに、最先端の3次元アトムプローブの製作、ラボ ラトリーSAXSの整備の他、収束イオンビームによ る3DAP用針状試料作製法の確立を行い、極めて効 率的に金属系材料の高度なナノ組織解析を行える環 境を構築した。さらにナノ組織解析に基づいてナノ 組織材料の創製を行うために、液体急冷装置、アー ク 溶解装置、 真空溶解装置、アークキャスティング 装置、ボールミル、超高真空多元スパッタ装置を整 備し、ナノ組織解析に基づいた材料創製を実践でき る環境を構築した。3DAPによる代表的な成果として、アモルファス の結晶化によりナノ結晶組織が形成される過程での 合金元素挙動、さらにナノ析出物やクラスターを分 散させた高強度金属材料のナノ組織を解析し、これ らの材料におけるユニークな組織形成のメカニズム を解明した。特に3DAPは軽元素を原子レベルで解 析することが出来るので、ナノ結晶軟磁性材料やナ ノコンポジット磁石等の組織解析と磁気特性との因 果関係の解明に決定的な役割を果たした。当初は 3DAPならびに電子顕微鏡(TEM)を活用し、工業 的に重要な既存の金属材料のナノ組織解析を行い、 合金元素添加がナノ組織形成に及ぼす影響、それら が磁気特性を変化させるメカニズムの解明を行っ た。その結果に基づいて、熱処理プロセス条件の最 適化により優れた特性を示すナノコンポジット磁石 材料の試作を行った。SASを活用した例としてはナノ結晶軟磁性材料や ナノグラニュラー軟磁性材料を磁場中熱処理したと きに付与される高い誘導磁気異方性の起源の解明が ある。ナノグラニュラー軟磁性材料の誘導磁気異方 性は応用上重要な問題であるにも拘わらず、その起 源があきらかでは無かった。TEMレベルではナノ組 織の異方性は全く観察されないが、SAXS、SANSを 用いることにより平均的な情報として組織の異方性 を観察することができ、これにより長年憶測でしか なかった異方性の起源を明確にすることができた。その他にも、磁気記録媒体としての用途を想定し たFePtナノグラニュラー薄膜、薄膜磁石応用を想定 したFe/FePtナノコンポジット磁石薄膜のナノ組織 制御による磁気特性の向上を試みた。構造材料では ナノ析出物を分散させて強化を実現した自動車用ア ルミニウム合金や析出強化型耐熱鋼の解析を企業と 共同で実施し、さらにマグネシウム合金中のナノ析 出物3DAP解析に世界で初めて成功するなど構造材 料におけるナノ組織解析においても注目される成果 を得た。一部の材料ではそのナノ組織解析からえられた特 性改善のための指針を自ら実施し、高周波特性に優 れた軟磁性材料の開発、比較的低い希土類濃度で高 いエネルギー積の実現できる等方性ナノコンポジッ ト磁石の開発、2相金属ガラスの創製、強度と延性 を兼ね備えたバルクナノ結晶スチール、エネルギー 積の理論限界をこえる異方性ナノコンポジット磁石 薄膜の創製に成功した。主な成果の要旨は下記の通 りである。図3 Coを40at.%含んだ高周波用ナノ結晶軟磁性材料。 Co量を増加すると通常保磁力が増加し、軟磁気特性が 失われるがCu量を制御することによりCo含有で且つ軟 磁気特性の発現するFeCoSiBNbCu合金を開発。右図に 示されるように共鳴周波数がCu量y=1で約2倍に向上し ている3.1ナノ結晶軟磁性材料各合金元素がナノ結晶軟磁性材料のナノ結晶組織 形成に果たす役割を実験的に明らかにし、熱力学的 考察を加えることによりCo量を高めた(Fe,Co)-Si-Nb- B-Cu合金で、ナノ結晶組織を微細化する方法を提案、 高周波特性の優れた軟磁性材料の開発に貢献した。 (図3)また種々の応力下で結晶化熱処理を行った Fe-Si-B-Nb-Cu合金の磁気異方性とFe-Si結晶相の残留 歪みとの関係を透過法によるX線回折測定を用いて 検討し、この熱処理により誘導される磁気異方性の 起源が磁気弾性効果によることを明らかにし、ナノ 結晶軟磁性材料の高周波領域への応用への展開に貢 献した。3. 2 Fe-Nd-B系ナノコンポジット磁石Fe-Nd-B系ナノコンポジット磁石のナノ組織を詳 細に解析し、ナノコンポジット組織中の添加元素の 分布、ナノ結晶のサイズと磁気特性の因果関係を調 べることにより、保磁力、エネルギー積を向上させ る元素、合金組成、熱処理温度を探索し、磁石特性 に優れたα-Fe/Nd2Fe14B、Fe3B/Nd2Fe14Bナノコンポジ ット磁石用材料の開発に貢献した。さらにPd-Fe-B 系の検討、ネオマック社により工業化されたNd-Fe- B-Ti-C系合金のT、Cのナノ組織と磁気特性の影響を 明らかにした(図4)。図 4 (a) Nd9Fe73B12.6C1.4Ti4合金の3DAPによる Nd元素マップと(b)粒界相近傍の組成プロファイル。Ti、 C添加によりFe濃度の少ない粒界相の存在が確認された3.3 SmCo系磁石合金高温用磁石として有望視されているSm2Co17/SmCo5 系2相分離系磁石のナノ組織を詳細に解析し、 Sm(Co0.72Fe0.2Cu0.055Zr0.025)7.5焼結磁石製造に工業的に用 いられている徐冷プロセスが保磁力を向上させるメ カニズムを解明した。また液体急冷法によりSm-Co系 磁石合金のナノ組織を制御し、新たな磁石合金の可 能性を探索、液体急冷特有のナノ組織と保磁力メカ図5 SmCo5単相磁石の理論限界を超えるエネルギー積 を持つ[Sm(Co,Cu)5/FeCo]6異方性ナノコンポジット磁石薄膜ニズムを研究した。さらにモデルナノコンポジット 磁石として面内異方性[SmCo5/ Fe]n積層ナノコンポジ ット膜を試作し、これがSmCo5単相磁石の理論限界エ ネルギー積ならびに商用Sm(Co,Fe,Cu,Zr)7.5焼結磁石の 最高エネルギー積を超えるエネルギー積を実現でき ることを実証した。(図5)3 . 4 (Fe,Co)-Zr-O系ナノグラニュラー薄膜電気抵抗が高く GHz帯での応用が期待されている 酸化物・強磁性材料グラニュラー薄膜のナノ組織と 磁気特性の因果関係を解明し、磁気記録媒体や高周 波用軟磁性材料として最適な特性を発現するための ナノ組織を得るための指針を得た。(図6)また、 大きな異方性磁界Hkを示す金属―非金属ナノグラ ニュラ軟磁性膜についてナノ組織とHkとの関係をも とに強磁場熱処理による異方性磁界の増幅を試み、 最大で300%の増幅効果を見いだした。また、電気 抵抗とHkとの関係を検討し、Co-Al-O、 (Co,Pd)-Si-O、 Co-Zr-Oのいずれの系でも103μΩcm付近でHkが最大値 を示すことを見いだした。図 6 (Fe0.65Co0.35)1 00-x-yZrxOy (0≤x≤4、 0≤y≤14)グラニュラー薄膜の磁気特性と微細構造3. 5 FePt磁性薄膜の構造と磁気特性高い結晶磁気異方性と優れた耐食性から次世代の 磁気記録媒体材料として注目されているL10-FePtナ ノ粒子薄膜を創製し、ナノ組織と磁気特性の因果関 係を調査することにより、薄膜で保磁力を実現する ためのナノ組織的知見を確立した。また磁気記録で 非常に重要な問題となるFePtナノ粒子の規則度の粒 子サイズ依存性を世界で初めて実験的・理論的に明 らかにした。MgO (001)基板状にエピタキシャル 成長させた磁気的に孤立したFePtナノ粒子をアモル ファスアルミナでコーティングすることにより、界 面に不規則相のナノレヤーを導入し、反転磁場を半 減させる手法を提唱、さらにこれらの界面規則化に より反転磁場が減少しても、磁化反転のエネルギー 障壁に変化がないことを見いだし、界面不規則化 FePtナノ粒子が磁気記録媒体として有望であること を実証した(図7)。またこれらの薄膜でのナノ組織と保磁力の知見を バルク材料に展開し、ナノスケールで非磁性相と FePt-L10規則相とを混在させたリボン状FePtP合金を 作成し20kOeに達する高保磁力を得ることに成功し た。さらにそれをメカニカルミリングで粉砕、スパ ークプラズマ焼結法でバルク化することにより高保 磁力バルク磁石を試作することに成功した。図7 MgO(001)単結晶基板にエピタキシャル成長させ たFePtナノ粒子のAl2O3キャッピングによる界面不規則 化による保磁力の減少。このように保磁力を制御して 磁気記録への応用の可能性を検討3. 6 ホイスラー相の構造とスピン分極率スピン分極率の高いハーフメタル強磁性材料は巨 大磁気抵抗(GMR)素子やトンネル型磁気抵抗 (TMR)素子などのスピントロニクス材料として注 目されている。実用的にはキュリー点が高いホイス ラー合金が素子応用の観点から注目を集めている が、現在のところホイスラー相を用いたTMR素子で 理論予測で得られるようなMR値は実現されていな い。この問題に材料学的に立ち向かうために、点接 触アンドレーフ反射によるスピン分極率測定装置を 立ち上げ、キュリー点の高いホイスラー合金を作製 し、それらの微細構造、L21規則度とスピン分極率 の直接測定を行うことにより、実用的に応用できる ハーフメタル強磁性材料の探索を行っている(図8 )。図8 点接触アンドレーフ反射によるCoCrxV1-xAlホイ スラー合金の分極率測定3. 7金属ガラスの結晶化と相分離バルク形成能に優れた金属ガラスの結晶化にとも なって形成されるナノ結晶・アモルファス複合組 織、準結晶・アモルファス複合組織中の合金元素の 分布を原子レベルで解析することにより、結晶化初 期の合金元素の挙動、不純物として存在する酸素が 及ぼす結晶化への影響を調べた。その結果、不純物 酸素量により結晶化過程が大きく変化し、ある不純 物酸素量以上でナノ準結晶が形成すること、またPd、 PtなどZrと大きな負の混合熱を持つ元素の添加によ り準結晶が安定化することを見いだし、金属ガラス の形成能を理解するための重要な知見を得た。バルク形成能の優れた多くの金属ガラスで熱的安 定性の一因として、ガラス状態での相分離が提案さ れていた。これを実験的に検証するために従来過冷 却液体中で相分離するとされていたZr-Cu-Al-Ti-Be、 Zr-Ti-Beなどのガラス遷移点近傍での構造・組織変化 を3DAP、HREM、ED、SAS、熱分析法(DSC)によ り詳細に調査し、熱的安定性の高い金属ガラスの過 冷却液体状態での相分離の検証、相分離傾向とガラ スの安定性の因果関係、金属ガラスのナノ結晶化の メカニズムについて包括的な実験研究を行った。そ の結果、従来相分離が結晶化の前駆段階で進行する とされていた合金系で結晶化は相分離を経ないで、 直接単相ガラスから生ずることを実証した。さらに 液相で相分離する金属ガラスを熱力学的に検討し、 液体急冷により2相金属ガラス状態を初めて実現し、 あらたな金属ガラスのナノ組織制御法を提案した。3. 8構造材料のナノ組織解析Al、Mg合金の時効析出によるナノクラスター、 ナノ析出物の解析を行い、ナノ組織形成のメカニズ ムの解明と自動車ボディーパネル用6000系アルミニ ウム合金のベーク硬化のメカニズムを明らかにし た。また、Mg合金のアトムプローブ分析に世界で 初めて成功し(図9)、著しい時効硬化性を示すMg 合金のナノ析出物形成過程を明らかにした。その結 果に基づき、現在新しい析出効果型マグネシウム合 金の創製を行っている。ングにより強歪み加工を加え、セメンタイトが完全 に分解したナノフェライト組織を得た。このナノフ ェライト粉末からFIB法により3DAP試料を作製し、 ナノフェライト中の炭素の分布状態の3DAPによる 直接解析に成功し、炭素原子が粒界に偏析すること によりナノ結晶組織を熱的に安定化していることを 見いだした。炭素偏積によるナノ組織の熱的安定性 に注目し、ナノフェライトをプラズマスパーク焼結 法でバルク化し、ナノ結晶と粗大結晶粒が混在する 複合組織を実現、圧縮試験で降伏応力1800 MPa、歪 み40%という高強度バルクナノスチールの創製に成 功した(図10)。またパーライトレール鋼の転動疲労を受けた白層 組織を3DAP分析することに成功、炭素がほぼ均一 に固溶したナノ結晶マルテンサイトであることを見 いだした。図10 メカニカルミリングしたFe-Cをスパークプラズマ 焼結することにより得られたバルクナノスチール。高強 度でありながら、2つのサイズ分布を持つ微細粒の存在 により、加工硬化と40%もの歪みがえられている図9 Mg-Ca-Zn合金に形成された2層板状ナノ析出物 のHAAD、FIM、3DAPによる解析例。HAADFで底面の 6原子層をへだてて、重い原子(Zn)が板状に析出し ていることが分かる。3DAP解析によりそれらの原子面 にはZn、Caの元素が濃縮していることが明らかとなっ た。Mgの安定なFIM観察は本グループ以外では発表さ れていない鉄鋼メーカーと共同で、Cuを含む極低炭素ベイナ イト鋼、Alを含む析出硬化型ステンレス鋼などのナ ノ析出物で強化される鉄鋼材料のナノ組織形成過程 と析出硬化の関連を3DAP、SAXSを併用することに より明らかにし、さらに高強度を達成するための設 計指針を示した。パーライト鋼線の強歪み伸線加工によるナノ組織 変化を3DAP、TEMにより解析し、真歪みが5を超 える超高強度極微細線でセメンタイトがほぼ完全に 分解され、炭素がフェライト中に固溶していること を示した。このセメンタイト分解のメカニズムを解 明するために、セメンタイト粉末にメカニカルミリ3 . 9中性子照射原子炉材料の解析中性子照射、高エネルギー粒子照射誘起、熱時効 による原子クラスターの形成過程と材質変化を解析 するために、陽電子消滅装置を持つ東北大学金属材 料研究所大洗施設のRI管理区域内に、エネルギー補 償型3DAP装置を移設し、溶質原子の分布を解析す るのに有効な3DAPと、空孔や空孔集合体を敏感に 検出できる陽電子消滅法を相補的に併用し、材質変 化とクラスター形成の因果関係について調べた。中性子線照射によって、原子炉圧力容器鋼のFe- Cu2元およびNi、Mn等を添加した3元モデル合金中 で、Cuと空孔集合体が形成され、熱処理によって、 空孔集合体が消失することや、中程度Cuを含む低合 金鋼では、10 mdpa程度の低照射量においても、高 照射量領域と同様なCuリッチ析出物が形成するとと もに、それが硬さの増加の主要因となっていること を確認した。一方、電子線照射後および400℃焼鈍 後試料のビッカース微小硬さは、いずれの試料も硬 化が見られたが、特に焼鈍後は、生成しているCu析 出物は極めて微小であるにもかかわらず、30～40以 上の微小硬度上昇が起きていおり、クラスター形成 の機械特性への影響を明らかにした(図11)。図11 照射後焼鈍したモデル合金で形成されたCuクラ スター:(a) Fe-0.3Cu-0.7Ni、 (b) Fe-0.3Cu-1.5Mn3.10レーザ補助3次元アトムプローブの開発3次元アトムプローブ(3DAP)は試料中の全構 成元素を原子レベルの空間分解能で3次元マップと して表示する事が出来るユニークな分析手法である が、従来のアトムプローブでは、測定中に試料先端 に印加される強電界により試料の破壊が頻繁に起き るという問題ある。また、電圧パルスで試料先端の 原子を電界蒸発させるため、導電性材料のみが解析 が可能であるという制約があり、分析領域を広げる ために直線型アトムプローブを用いると、質量分解 能が著しく低減するなどの問題があった。このよう な現状の3DAPの制約を一挙に解決するために、直 線型3DAPをフェムト秒レーザーをで駆動し、レー ザー補助3DAPの可能性を検討した(図12)。その結 果、レーザー補助電界蒸発により直線型アトムプロ ーブでも著しい質量分解能の向上が認められ、結晶 性導電性材料で測定された3D原子マップでも従来 の3DAPと全く同等のデータが取得できることが確 認された。さらに、電圧パルスでは試料破壊のため に分析が困難であったマルテンサイト鋼、金属ガラ ス、マグネシウム合金でも殆ど試料破壊を経験せず に大量のデータが取得できることが確認された。ま た、未ドープSiの高質量分解能測定にも成功し、半 導体材料のナノ組織解析への可能性も示された。今 後、新たな鏡体を設計し、レーザ補助広角3次元ア トムプローブとして展開する予定である。図12フェムト秒レーザ補助3次元アトムプローブ4.将来展望5年前に解析グループとして発足したが、本稿で 概観したように、年を経るにしたがって自ら材料を 創製し、自らその特性を評価し、その構造・組織を みずから解析するという研究姿勢が定着した。これ はポスドク採用時に解析研究者よりも職員の専門と 異なる経験をもつ研究者を採用してきたこと、筑波 大学連係大学院制度により9名の大学院生とともに 研究を推進できたことが大きい。また「ナノ組織と 特性」という共通の現象に軸足をおいたため、磁性 材料だけでなく広く構造材料の基礎的な問題にも取 り組むことができた。磁性材料と構造材料をカバー する研究グループは世界的にもユニークである。今 後も「ナノ組織と特性」というキーワードを共有し つつ、ナノ組織を制御することにより優れた材料開 発を目指す研究を継続していく。その際、ナノ組織 を精密に解析するという基本姿勢を維持していく方 針である。2006年度から始まる次期中期計画においては、運 営交付金プロジェクト「ナノ構造制御による高機能 ナノ磁性材料の創製」において、来るべきユビキタ ス社会を実現するために必要な磁性材料・スピント ロニクス材料を試作し、そのナノ構造の解析、構造 と磁気特性の因果関係の確立を行うことにより、ユ ビキタス用ナノ磁性材料の開発指針を材料科学的視 点で確立することを目指している。このプロジェク トでは磁気記録技術への用途を想定した高密度磁気 記録媒体用薄膜、記録ヘッド用高磁束密度軟磁性材 料、再生ヘッド用CPP-GMRスピンバルブ、TMRデ バイス用ハーフメタル薄膜、MEMS応用を想定した を薄膜永久磁石材料についてナノ構造を原子レベル まで遡��って徹底的に解析し、ナノ構造と磁気特性の 因果関係を解明する。その知見に基づきデータスト レージ技術やパワーエレクトロニクスで要求される ナノ磁性材料を開発し、企業における磁気デバイ ス・システム開発のための材料学的指針を確立しよ うとしている。これまでNIMSでは本格的に磁性材 料の開発研究に取り組んでこなかったが、次期中期 計画では磁性材料のなかでも特にナノ構造を制御す ることにより特性の改善されると考えられる材料開 発に取り組んでいく。ただし、デバイスや記録シス テムの研究については企業での実用化研究に対抗す ることは現実的ではないので、あくまでもデバイス やシステムを構築するために必用な磁性材料の研究 に特化し、可能な限り産独学の連携を深めつつ、本 グループが得意とするナノ組織解析を活用しつつ存 在感のある基礎研究を実施していく方針である。このような磁性材料研究に平行して、金属系材料 のナノ組織解析の実績を活用し、ナノ組織がキーワ ードとなる構造材料の開発にも基盤研究として取り 組む。具体的には新しい時効硬化性マグネシウム合 金の開発、ナノ結晶、ナノ複合組織を持つバルク材 料の創製である。これらの研究をポスドク、筑波大 大学院数理物質科学研究科物質・材料専攻の院生と ともに行い、人材育成にも同時に貢献し、将来 NIMSで学位を取得した学生が材料科学の分野で活 躍する日が来ることを願っている。反応・励起のダイナミックスグループの歩み北島正弘、新井隆道(2005.3.31外来研究員終了)、五十嵐慎一、石岡邦江、板倉明子、伊藤マリ子(研究補助員)、植田寛和 (2005.3.31 NIMSジュニア終了、現FOM (オランダ))、オレグ・ミソチコ、久保敦(2003.4.15外来研究員終了、現さきがけ研 究員(ピッツバーグ大学))、齋藤有紀(2005.3退職)、佐藤俊太郎(2005.3.31外来研究員終了)、芝本孝平(2004.12.31退職、現首 都大学東京)、下田正彦、ジリ・デュボハラフ(2004.5.9特別研究員終了)、成島哲也(2004.3.31外来研究員終了、現トリニティ カレッジダブリン研究員)、中島信一(2004.3.31シニアフェロー終了、現産業技術総合研究所)、長谷宗明、ハルボエ・ペテク、 深田直樹(2005.3.31外来研究員終了、現NIMS若手国際研究拠点)、福田真也(2003.3.31外来研究員終了、現ボッシュ株式会社)、 プラヤット・ ロバート・ビノド(2003.10.31外来研究員終了、現産業技術総合研究所)、ヘム・ラジ・シャルマ、三上容平、モハ マド・カマル・ホサイン、森澤邦友(2004.3.31外来研究員終了)、矢田雅規、山本良明(2003.2.28外来研究員終了)、ルディガ ー ・ベルガー、ロン・ルー、ビンセント・フォルネー1.発足の経緯と目的経緯)本グループは萌芽研究「凝縮系における反応 及び励起のダイナミクスの研究」を行っていた当時 の材料研究所材料基盤研究センター物性解析研究グ ループ第6研究室と第7研究室のメンバーを主体 に、ナノ研から下田が加わり、発足したものである。 目的)凝縮系における原子・分子の運動、すなわち 結晶の格子振動、界面における分子振動および原 子・分子間衝突などのダイナミクスの観察とその制 御は、機能物性の発現を時間的・空間的に制御する 第一歩であり、デバイスの超小型化、超高速度化を 目指す上でのKey-technologyとなり得る。そのため、 凝縮系における振動の励起・緩和、表面反応過程を 10-15秒台から10秒台に渡る広い時間スケールで実時 間観察し、その動的過程を解明することを主たる目 的とした。2.研究活動・経緯本グループにおける研究活動の対象は大きくわけ ると以下の2つの領域にわけられる。1つは超高速 で起きる光励起・緩和過程を時間領域で観測に関す るものである。ここでは、フェムト秒(10-15s)の パルス光を用いてコヒーレントフォノン・キャリア ー分光の高度化を行い、それにより光励起による電 子や格子の運動状態の制御手法の開発を行った。も う一つは表面における化学反応過程及び膜成長過程 に係わるものである。そこでは、微少応力との関係 に着目しナノパターニング形成や反応ダイナミック スの解明と制御、および光電子分光や走査プローブ 顕微鏡を組み合わせ準周期物質表面の微視的構造解 析を行った。その間、国内では筑波大、東大、阪市大、東工大、 慶応大、分子研、産総研、理研、海外ではピッツバ ーグ大、ロシア科学アカデミー固体物理研究所、マ ックスプラン高分子研究所、ナンシー鉱山大学他機 関などと多くの共同研究を行い、重要な成果を得 た。3.成果研究トピックス)1)超短時間領域における電子・格子間の量子干渉 の観測固体における電子波と格子波との間で起きる量子 干渉を時間領域おいて初めて捉えた。図1はフェム ト秒レーザーのポンプープローブ測定による(a) Si (100)面からの異方的な反射率変化及び(b)時 間―周波数マップである。遅延時間ゼロ付近の鋭く 複雑な応答は電子系からの非周期的応答およびそれ と格子系との間の量子干渉の現れである。引き続き、 その後すぐにコヒーレント光学フォノンによる振動 が現れる(図1(a))。この時間領域波形を時間― 周波数マップを使うと、現象はより鮮明に見ること ができる。遅延時間ゼロ付近で垂直に伸びる成分は 電子系の光応答であり、周波数15THz付近に水平に 広がる成分はシリコンのコヒーレントな格子振動で ある。これら2つの成分が交わる点に見られる「穴」 が、電子波と格子波の量子干渉を示すものであり、 この時間から‛準粒子'の成長が始まると考えてい る。(ピッツバーグ大学との共同研究(MOU)に基 づく成果)図1 フェムト秒レーザーのポンプープローブ測定に よる:(a) Si(100)面からの異方的な反射率変化及び (b)時間―周波数マップ 2)表面化学反応ダイナミクスの制御シリコンや銅単結晶表面上での初期酸化反応の動 的過程について、従来のマクロかつ静的な制御因子 である酸素分圧や基板温度とは別に、酸素分子の並 進エネルギーと外的に印加する表面応力がきわめて 重要な役割を果たすことをはじめて見いだした。図 2に一例を示す。Si (001)表面における酸素解離 吸着確率への外的な応力の影響である。O2の解離確 率の運動エネルギー依存性は外部応力に敏感である ことが分かる。これは2つの分解過程:分子吸着熱 解離過程及び直接分解過程の反応分岐比が外部応力 の印加により制御できることを示す。本結果は応力 による表面反応の制御が可能であることを示すもの であり、牽いては、酸化物格子の形成を時間的かつ 原子層以下のオーダーで精密に制御できる新たなプ ロセス技術(時空間反応制御技術)につながるもの と期待出来る。図2 Si (001)表面における酸素解離吸着確率への外 的な応力の影響3)準周期物質表面の微視的構造解析走査トンネル電子顕微鏡(STM)で準結晶表面の 原子像を観測し準結晶特有の5回対称的な原子配列 の直接観察に成功した。また表面の特殊なステップ 構造をバルクの構造モデルに基づき詳しく解析する ことにより準結晶の安定表面生成にかかわる法則を 導出した。すなわち、図3に示すように、(a) Al- Cu-Fe準結晶表面の5回対称表面には高さの異なる 2種類のステップ(LとS)が存在する。L/Sはほぼ 黄金比(=1.618...)になる。(b)同表面の原子像。 準周期構造の特徴である正5角形をモチーフとする 原子配列が明瞭に見られる。(物質研、東北大学と の共同研究)。これらの成果は当初の予想を上回るものであっ た。ここでは詳しく説明しなかったが、超高速分光 に関連しては電子・フォノンの欠陥散乱の観測、光 パルス励起による構造相転移ダイナミクスに関する 一連の研究、およびフォノンの量子性の研究などに 大きな進展を見た。また有機分子の吸・脱着を利用した微少応力制御 によるナノパターニング形成法の提案と基本手法の 開発などの研究も大きな進展が見られた。今後の一 層の発展も期待できる。成果の発表)Nature, Phys.Rev. Lett., Phys.Rev.B, Appl.Phys. Lett., Sur. Sci.等の国際誌、および特許の出願を 行った:誌上発表 ～88編(論文、プロシーディングス、書 籍を含む)。 特許出願 15件(2001年～現在まで の4年間)。その他、国際会議、その研究会主催数 件。図3 Al-Cu-Fe準結晶表面のSTM像。STM images of the surface of Al-Cu-Fe4.研究分野の動向フェムト秒レーザーによる固体の超高速分光、特 に半導体におけるコヒーレントな格子と電子との相 互作用ダイナミクスについては世界に先駆けて観測 に成功した。その後、金属やグラフアイト及びダイ アモンドの研究へと発展している。これらの研究は 光利用による物質構造制御やデバイス特性の評価 法、センサーなどの開発に繋がる。微少応力との関係に着目したナノパターニング形 成や反応ダイナミックス制御の研究は世界的に見て も本グループ独自のものでもあり、他機関との共同 研究への展開が見られた。準結晶表面の原子像及びステップ構造の研究も本 グループ独自のものであり、他のグループの追随を 許さない。新規物性の発現が期待できる。5.今後の課題など発足当初は、物質におけるダイナミックスを横軸 に、表面おける化学反応、膜成長・構造および電 子・格子の運動状態の解析とそのための計測手法の 開発を目標に、研究対象を「相当」幅広いものとし た。時間の進展に伴い、グループ内の個々のテーマ が独自のものへと発展したことは喜ばしいことであ るが、これは別な見方をすると、「ダイナミックス」 を共通軸とする一グループの範囲を超えていること を意味する。今後は本グループで得られた基礎的研 究の成果をもとに、個々のさらなる発展を図るべき である。腐食解析グループの5年升田博之、片山英樹、野田和彦(現芝浦工業大学、2003年退職)1.研究概要、目的非常に小さな領域の現象から目にみえる大きな材 料損傷現象まで異なるスケールでの材料損傷現象の 観察から、従来ほとんど理解されていなかった大気 腐食、水溶液腐食、応力腐食割れなどの材料損傷の 解明を開発したスーパーケルビンフォース顕微鏡や 交流インピーダンス測定など種々の観点から行い、 超耐食鋼の開発指針や種々の合金の信頼性の向上を 図る。また新たな材料損傷モニター装置を開発し原 子力設備の安全管理などの向上を目指す。2 .研究の新規性・独創性従来、多くの腐食研究が行われてきたがほとんど が可視レベルのもので、一部ナノメータスケールで 行われたものも可視レベルの腐食との統合性がとれ た研究はなかった。材料開発を行う場合、メカニズ ムを理解することが非常に重要である。そのために はナノ メータスケールの現象の観察をとおして可視 レベルの現象が理解できるような研究が有効であ る。腐食現象をナノメータスケールでその場観察で きる装置として走査プローブ顕微鏡が挙げられる。 しかしこの顕微鏡は走査範囲が通常水平方向100μ m、垂直方向6 μmと狭く、可視レベルの現象を追 うことはできない。我々が開発したスーパーケルビ ンフォース顕微鏡(SKFM)はこの欠点を補い、走 査範囲が水平方向1cm、垂直方向0.2mmとナノ メー タスケールから可視レベルまで腐食現象を追うこと ができる世界で唯一の装置である。この装置を基本 として、豊富な計測装置(走査プローブ顕微鏡、 EDX, FT-IR顕微鏡,ラマン顕微鏡、レーザ顕微鏡、 走査電気化学顕微鏡、X線顕微鏡など)を利用した その場複合計測を行い、種々のその場観察、その場 分析をとおしてメカニズムの解明、材料開発の指針 を得ることを特徴とする研究を行う。更に種々の計 測およびモニター装置の開発をとおして他の研究者 が容易に真似のできない研究を行う。また同時に高 度な画像解析に必要なソフトウェアー(例えばホー ムページで公開中のImageSPM)の開発により他の 追随を許さない高精度なデータの取得を行うことに 独創性を有する。3.本研究の世界での動向腐食、特に大気腐食や水溶液中の腐食である湿食 の研究は古くから行われている。水溶液中の腐食研 究は主にポテンシオスタットを用いた分極特性や腐 食電位の変化から耐食特性を求める研究が行われて きた。また不働態皮膜の研究ではESCAやXPSなど による皮膜分析も盛んに行われているが問題点とし てはその場分析ができないところにある。局部的な 腐食の観察としは走査電極や電気化学走査トンネル 顕微鏡による観察も少しであるが行われている。更 に最近では走査電気化学顕微鏡による酸化皮膜特性 の研究など目新しい手段も登場している。大気腐食 では暴露試験を主体として腐食による重量変化の測 定およびさびの分析が通常の試験法となっている。 また濡れ時間の重要性からACMセンサーや交流イン ピーダンス法による濡れ時間のモニターが盛んに行 われている。大気腐食試験では水溶液中の試験のよ うに分極特性を調べることができないので、表面電 位から腐食特性を求めるためケルビン顕微鏡を用い て腐食反応のその場測定がかなり行われたが、装置 の分解能の限界から細かい腐食機構は把握されてい ない。この装置に替わりケルビンフォース顕微鏡を 用いて大気腐食の機構を調べ始められている。4. 5年間のグループの成果4.1 種々の腐食試験装置の開発と実用化既存の腐食試験装置の欠点を補うため、種々の腐 食試験装置を開発し特許化し一部実用化に漕着け た。その中で代表的なものは飛来海塩粒子量を短期 間でその場測定する装置、海塩粒子が付着して結 露/乾燥過程を繰り返して腐食が進行するという現 実環境をシミュレートできる加速試験装置(新大気 腐食試験装置:図1)、鋼構造物に形成されたさび の保護性をその場で評価する装置(表面反応測定装 置:図2)である。図1 実用化が間近な飛来海塩粒子量を制御できる唯 一のプログラマブル新大気腐食試験装置(QCMによる 飛来海塩粒子量のその場モニターが可能である。)図2実用化され市販されている表面反応測定装置応力腐食割れ研究では、従来の手法であるU-bend 法で亀裂を発生させた試験片を用いて常温で孔食発 生を観察したところ腐食が亀裂先端のみに発生し、 あたかも常温で亀裂が成長しているような信じられ ない現象を発見した。この原因を探るためナノスケ ールでの亀裂成長や電位分布の連続観察を可能にす るために薄板に小さな液滴を付着させるという新し い試験法を開発した(特許出願2件)。図4は新試 験法で発生させた亀裂の先端近傍の光学顕微鏡像と 我々が開発した世界で唯一広範囲の形状像と表面電 位分布像を同時に取得できるスーパーケルビンフォ ース(SKFM)顕微鏡像で、亀裂先端近傍に非常に 電位の低い部分が形成され時間とともに電位分布が 変化するという現象を発見した。4. 2 種々の新現象の発見低合金鋼へ人工海塩粒子を付着させ相対湿度を変 化させながら大気腐食の発生をその場SKFM観察し、 相対湿度高くなると腐食の発生とともに10nm以下 の非常に薄い液膜の形成が起こりイオンの移動を可 能にし、その結果腐食部に塩素イオンの濃縮が起こ って腐食を加速させる機構を発見した(図3)。図4 表面亀裂の光学顕微鏡像とSKFM像。矢印は非常 に小さな不連続き裂が発生している個所を示している図3 開発したスーパーケルビンフォース顕微鏡によ る海塩粒子からの大気腐食成長のその場観察(左:形 状図、右:電位分布図)。走査範囲0.4mm × 0.4mm4 . 3鋼構造物における大気腐食モニタリング鉄鋼材料の大気腐食に関する多くの研究は平板試 験片を用いた大気暴露試験により行われてきた。し かしながら、構造物の場合、すべての部位が大気暴 露試験と同じ環境になっておらず、構造物の部位に よっては、平板試験片とは腐食の状況が大きく異な ると考えられる。腐食解析グループでは交流インピ ーダンス法を利用し、屋外環境に暴露された模擬構 造物のそれぞれの部位での大気腐食のモニタリング (図5)を行った。その結果、構造物では各部位に よって濡れや結露などの腐食環境が異なるため腐食 挙動が大きく異なること、また、垂直面より水平面、 天井部よりフランジ部、対空面より対地面の腐食環 境が厳しい(図6)ことを明らかにした。図5 腐食センサーを取り付けた構造物模擬試験体図6 約1年間暴露試験した構造物模擬試験体各部位 の腐食量の比;1:天井部対空面、2 :天井部対地面、 3 :北向き面、4 :南向き面、5 :フランジ対空面、 6 :フランジ対地面。ここでは北向き面の腐食量を1 とした4. 4 海浜地域における大気腐食シミュレーション四面が海に囲まれている我が国では主要な構造物 が海浜地域に集中しており、鉄鋼材料の腐食に関し て飛来塩分の影響が非常に大きいことが知られてい る。腐食解析グループでは、飛来海塩粒子が材料表 面に付着し気温や相対湿度の変化に伴って乾燥や吸 湿する過程に注目し、作製した模擬海塩を噴霧する 装置により実験室内で炭素鋼の初期大気腐食現象を 再現することを試みた。その結果、炭素鋼の初期大 気腐食挙動を再現するためには、付着塩の粒子サイ ズおよび付着分布、炭素鋼表面近傍の温度や相対湿 度、結露による表面での濡れが重要な因子であるこ とがわかった(図7)。図7 屋外環境における腐食試験(a)および腐食シミ ュレーション試験(b)をおこなった炭素鋼の表面変化。 図中の割合は腐食面積率を表す4.5 大気環境下における亜鉛系表面処理鋼板の 腐食挙動亜鉛系表面処理鋼板は、めっきの金属コーティン グによる下地鋼板の保護作用を有するだけでなく、 そのコーティングに欠陥が生じ母材鋼が露出した場 合でも亜鉛の犠牲陽極作用により良好な耐食性を示 す。しかしながら、大気環境では形成される水膜が 非常に薄いため、亜鉛の犠牲陽極作用による防食効 果は期待できずその腐食挙動は不明な点が多い。腐 食解析グループは大気環境下での亜鉛系表面処理鋼 板の腐食機構を解明するため、表面のpH分布測定 (図8 )および電位分布測定により模擬大気環境下 での腐食による表面反応解析を行った。これにより 大気腐食環境下ではめっきによる犠牲防食作用以外 に亜鉛の腐食生成物による保護作用も母材鋼露出部 の防食に大きく寄与することを明らかにした。図8 表面のpH分布測定が可能な光走査型化学顕微鏡 (SCHEM)とその測定例(腐食試験後の亜鉛めっき鋼 板)4. 6 5年間の成果特許登録:8件(内1件実施)、論文数:30件、 著作物:8件4.並木地区ナノ ・生体材料実験棟photograph : National Institute for Materials Science高輝度光解析グループの活動を振り返って桜井健次、江場宏美、水沢まり、庄司雅彦、Carlos Quioshi Hiramatsu1.高輝度光解析グループ発足の頃高輝度光解析グループは、2002年4月に材料研究 所傘下の1グループとして発足した。その際キーワ ードとして掲げたのは「SPring-8の次」であった。 当グループの前身(旧金属材料技術研究所精密励起 場ステーション高輝度光励起場ユニット)のミッシ ョンは、SPring-8において物質・材料のサイエンス での放射光利用で成果を挙げることにあり、10年の 長きにわたり雌伏して準備した後、SPring-8の共用 ビームラインの建設および立ち上げに貢献すること であった。諸外国でも競争の激しい分野の1つであ った超微量分析においても成果を挙げ、世界のトッ プに躍り出て、まさに所期の目標を順調に達成しつ つある頃であった。他方、2001年、SPring-8に専用 ビームラインを所有する旧無機材質研究所との統合 の結果、NIMSは自動的にSPring-8に研究拠点を確 立している研究所になった。こうした状況に鑑み、 当グループは、SPring-8における物質研究所専用ビ ームラインの研究活動と棲み分け、「SPring-8の次」 に来るエネルギー回収型直線加速器(図1)や自由 電子レーザー等の新放射光源、第4世代放射光源と 呼ばれ、いくつかの先進国では2010年頃に登場す る見通しを視野に入れ、そのような先端的な高輝度 光源を利用する新しい計測・解析技術の検討を通じ て新領域の開拓をめざす活動を開始した。図1 エネルギー回収型直線加速器の概念図2.計測・解析技術の戦略的意義物質・材料のサイエンスでは、いわゆる「ものづ くり」、あるいは新物質についての発見、発明とい った活動が非常に重要な位置を占め、第1発見者が その栄光を独占する文化があり、また、そこには、 熾烈な競争がある。NIMSはじめ、世界中の主要な 研究機関は、当然にも、こうした活動において高い 競争力を保持するための戦略に熱心である。その中 身としては、人材確保やマネージメント、またデー タベースはじめ膨大な情報を扱うもの、理論や予測 技術に関するもの等、多様な内容が含まれるが、な かでも重要なのは計測・解析技術である。「計測・ 解析を制する者は、その分野の科学を制する」と言 われるが、物質・材料のサイエンスには最もよくあ てはまるように思われる。近代の戦争は、実戦に至 る前に、軍事力の質、具体的には戦略的なハイテク 兵器の優劣により事実上の勝敗が決していることが 多い。これになぞらえるとすれば戦略兵器である計 測・解析技術において遅れをとるようであれば、物 質・材料のサイエンスの競争で勝つのはかなり難し いのではないだろうか。物質・材料の専門家のなかには、市販の計測・解 析装置群を買い揃え、それらをルーチン的に駆使す ることで十分競争力のある研究が展開できると考え る方もおられるかもしれない。これは、いわば通常 兵器を巧妙に使いこなそうとすることに相当し、多 くの研究者は当然日々行っているであろう。もちろ ん必要なことではあるが、重要性も困難度も高い内 容をめざす場合には決して十分ではない。良い例え ではないかもしれないが、犯罪捜査において、刑事 の長年の経験によるヤマカン等で犯人を事実上探し 当てられることがある。こうした場合、科学的な鑑 識による物証は、犯人を見つけ出し事件を解決する ための手段ではなく、逮捕後の公判を有利に展開す るための裏づけ資料として用いられるに過ぎない。 物質・材料のサイエンスにおいても、計測・解析技 術をすでに解けている問題あるいは容易に解くこと のできる問題に対して用いるのであれば、おそらく 似たようなことになるであろう。しかし、物質・材 料のサイエンスのもっともエキサイティングな部分 は、刑事のヤマカン(既成の理論、知識、経験の単 純な延長上にあるもの)だけではどうやっても見つ けられない未解決の難事件に相当するものであるは ずである。「見えなかったものを見る」ことで、初 めて新しい世界が開け、解けなかった問題が解ける ようになる局面は無数にある。そこでフル活用でき る高度な計測・解析技術を開発し、誰よりも早く実 戦で使用しようとする気概を持ちたいものである。3. 21世紀前期の計測・解析のフィロソフィこれまでの計測・解析技術の発展を振り返ると、 それは個々の技術に関し、ある1点においてきわめ て高度な性能を実現しようとする歴史であったよう に感じられる。すなわち、「超」のつく技術をめざ す過程であった(当グループにおける成果は表1)。 しかし、ここで、注意を喚起しておきたいのは、物 質・材料のサイエンスにおいて必要な計測・解析技表1当グループが開発した「超」のつく独自技術1989 X線反射率フーリエ解析法(超高精度)1992 EXAFS用ラボX線源(超高強度)1995 シンチレーション検出器(超高計数率)2000 全反射蛍光X線分析(超微量)2001 高効率X線分光器(超小型)2002 蛍光X線動画(超高速)2003 X線回折顕微鏡(超高効率)術は、単に量的に「超」がつくだけでは十分ではな く、質的にも異なる発展段階、すなわち、1点にお いて高度であることに加え、「奥行き」や「広がり」 を併せ持つ段階に移行させなくてはならないという ことである。「見えなかったものが見えた」瞬間が きわめて貴重なものであったとしても、物質・材料 のサイエンスにおいては、「見たいものが見える」、 そして、何がしかの複眼的なプロセスを経て「わか らなかったことがわかる」ところまで進むことがで きてこそ意義がある。「奥行き」「広がり」にも、いろいろなものがあ り、それぞれに重要性を持つと思われるが、当グル ープとしては、そのなかでも「合成や機能評価と融 合する」(変化の過程を解析する)、「木も森も見る」 (原子レベルの構造情報を局所のみでなく、広い面 積・体積にわたって取得する)といった性格を付与 できるようにしたいと願っている。図2 木も森も見ることのできる「奥行き」「広がり」 のある新しい技術を求めて4.高輝度光解析グループの主要な研究成果 (1)世界最小の高効率蛍光X線分光器の開発と超微 量分析および化学状態分析への応用高輝度光源を用いると、微弱な信号を大きくでき ることは想像に難くないが、バックグラウンドレベ ルも同様に大きくなるため、それだけでは、必ずし も検出が容易になるわけではない。蛍光X線分光法 には、半導体検出器を用いるエネルギー分散型と結 晶分光器を用いる波長分散型の2つの方法が知られ ている。後者はエネルギー分解能では優れているが、 検出効率が著しく低いため、微量分析を行う能力に 関しては後者が前者に勝ることはありえないと長く 信じられていた。当グループでは後者の技術に着目 し、ヨハンソン型結晶分光器を取り上げ、地道な改 良の努力を続けた。その結果、ダウンサイジングに より分解能をさほど損なうことなく、従来の欠点で あった検出効率の低さを飛躍的に改善できることを 見出した。2000年～2001年にローランド円半径120 ミリの独自の小型分光器を全反射蛍光X線分析法に 応用して超微量分析の世界記録を更新し(サブフェ ムトグラム、ppt濃度)、その後も装置の高度化を継 続し、世界最小のローランド円半径100ミリの分光 器を実用化した(図3)。環境物質等に含まれる超微量元素の分析のほか、 優れたエネルギー分解能を活用して、化学状態の識 別を行うための分光学的な基礎研究やナノ材料中の 金属占有サイト識別等への応用も試みている。図3世界最小の蛍光X線分光器(2)蛍光X線顕微鏡の発明と世界初の元素動画イメ ージングの成功元素の空間的な分布イメージを得る方法である蛍 光X線顕微鏡と言えば、小さなビームを作って走査 する方法以外は知られておらず、世界中で誰もがい かに小さなビームを形成するかにしのぎを削ってい た。しかし、そのビームを走査するには、それなり の時間を必要とするため、画像といえば静止画が当 たり前であった。当グループでは、まったく異なる アイデアをもとにして、いっさいの走査を行うこと なく瞬時に蛍光X線画像を得る装置を発明した。 CCDカメラや光学系の開発に取り組むことにより、 蛍光X線動画計測(電気分解による金属樹枝状晶の 析出過程のリアルタイム観察)を世界で初めて実現 した(図4)。このような迅速性は、「合成や機能評 価と融合する」(変化の過程を解析する)「奥行き」 や「広がり」のある新しい技術に通じるものであ る。図4 世界初の蛍光X線動画イメージング(3)X線吸収微細構造顕微鏡・X線回折顕微鏡によ る構造イメージングと材料研究への応用展開上記の蛍光X線顕微鏡の研究は、その後、さらに X線吸収微細構造やX線回折に拡張することに成功 し、元素の識別にとどまらず、結晶構造や原子レベ ルの情報の画像化ができるようになった。これまで のX線解析の技術では、試料の均一性を前提となっ ていたが、本来、物質・材料の研究では不均一な試料を扱うことの方が多く、また不均一さの中に興味 深い対象がある。当グループの発明は、これまでの X線解析のこうした制約を解決するものと言える。 1枚の基板に多数の試料を配列させたコンビナトリ アル試料等を迅速に評価・解析する新技術として応 用することや、X線回折のデータから得られる残留 応力の画像化により、構造材料の非破壊的な信頼性 評価の新手法として用いることも提案している。図5当グループの発明したX線回折顕微鏡の原理(4)その他当グループでは、上記のテーマ以外にも、次のよ うな実験研究を行ってきている。○X線反射率法による薄膜・多層膜の表面および界 面の構造評価法の新しい理論に関する研究(ウエ ーブレット変換を用いたモデルフリーな解析法の 検討)○角度走査を必要としない新しい反射率測定技術に 関する研究○高エネルギー放射光を用いるランタニドの化学効 果の解明に関する新しい分光研究(図6)○安全安心な社会に貢献するX線検査技術の応用に 関する研究(X線イメージング法による燃料電池 用水素タンク内部の亀裂評価法の検討)○地球温暖化問題に貢献するX線解析技術の応用に 関する研究(二酸化炭素吸収材料の開発とコンビ ナトリアル蛍光X線イメージング)○太陽電池に関する研究○新しいX線蛍光体(シンチレータ)の探索と新規図6 酸化セリウムの高分解能スペクトル測定例合成法の研究(希土類酸硫化物および希土類硫化 物のボールミル法およびゾルゲル法による合成) ○パルスレーザーを物質に照射した際に発生するX線の計測に関する基礎研究5.高輝度光解析グループの運営当グループは、独立行政法人に移行した当初より 外部資金プログラムに積極的に応募し、それらを活 用して研究を進めてきた(表2)。他方、2004年か らの2年間は、運営費交付金から中期計画推進プロ グラムで応援して頂いた。そのおかげで、科学技術 振興調整費があった当時に採用した助手(ポスドク 研究員)を継続して雇用することができ、たいへん 助けられた。また、独自の機器開発の取り組みを継 続する上でも、非常に有り難かった。当グループは、放射光を駆使した研究テーマを担 当しているので、放射光施設のビームタイムの配分 を受ける必要がある(図7)。ビームタイム獲得の ためには、予算要求と同様、課題審査があり(年2 回)、また競争がある。当グループは、2002～2004 年、Photon Factoryにおいて、高い優先度でビーム タイムの配分を受けられるS課題(Sはspecialの意 味)の指定を受けたこともあり、たいへん恵まれた 状況にある。2つの施設での複数の共用ビームライ表2当グループが活用した外部資金プログラム2000～2002科学技術振興調整費「ナノヘテロ金属材料の 機能発現メカニズムの解明に基づく新金属材 料創製に関する研究」2001～2005国立試験研究機関原子力研究費「高エネルギー 放射光励起X線スペクトロスコピによるランタ ノイド金属のケミカルスペシェーションに関 する研究」2001～2003科学技術振興調整費「アクティブ・ナノ計測 基盤技術の確立」2003 民間研究助成金(資生堂サイエンス研究グラ ント)「環境センサー等に寄与する複合酸化物 ナノ粒子の作成方法に関する研究」2004～2006民間研究助成金(日産科学振興財団研究助成 金)「二酸化炭素発生の抑制に寄与する複酸化 物ナノ粒子の合成」2004 資金提供型共同研究「X線イメージング技術の 開発」2004～2005原子力安全基盤調査研究((独)日本原子力安 全基盤機構)「X線顕微鏡による迅速材料診断 技術の開発」2004～2006学術創成研究「パルス中性子源を活用した量 子機能発現機構に関する融合研究」2005 民間研究助成金(財団法人池谷科学技術振興 財団)「X線反射率法による埋もれた薄膜界面 ナノ構造の新評価法の研究」2005 民間研究助成金((財)日本板硝子材料工学助成 会)「フェライトの磁性制御を目指した無機化 合物中における金属占有サイトの新しい識別 法」2005～2006科学研究費補助金基盤研究(C)「多結晶不均一 系のX線回折動画イメージングに関する研究」2005～2007科学研究費補助金若手研究(B)「新しいX線技 術を活用した環境汚染解消材料の開発」図7 当グループに配分された放射光ビームタイムンの課題をすべて足し合わせると年間で1500時間以 上になり、これは放射光施設が1年間に運転して光 を供給する時間の30～40%にあたる。他方、ビーム 使用料のような費用は今のところ徴収されていない ので、経費の大半は自ら持ち込む機器の開発費であ り、その他は、機器を輸送するためのトラック代や 試料準備等の消耗品、旅費等である。当グループは、2名の正職員(ディレクターと研 究員)、1～5名のポスドク研究員、一時的な訪問 研究員、大学院生等で成り立っている少規模な研究 室である。マンパワーが小さいことは、一般的には 不利なことのように考えられがちであるかもしれな  い。だが、もともと研究という仕事は、人海戦術で 達成できる性質のものではない。また、NIMSのよ うな機関では、なるべく多くの物質・材料の領域を カバーするべきであるし、戦略兵器たる計測・解析 技術についても、できるだけ多種多様な領域にわた っていることが望ましい。となると、当然、1つの グループの規模をそれほど大きくすることはできな いはずである。当グループは、少人数で研究を進めてきたが、そ れでも2002～2003年頃、ポスドク研究員の増員を試 みたことがある。その時に明らかになったことは採 用する側に基礎学力や素質を見抜く力量がなくては ならないということである。概してポスドク研究員 の応募者は玉石混交状態にあり、慎重な対応が必要 である。2004年からは筑波大学の連係大学院に加わ った。大学院生の教育は、次の世代の研究者を育成 するという観点で行うべきものである。即戦力とし て期待するのは適当ではないが、研究室に良い刺激 を与える効果がある。学生数があまり多くならない 範囲で、積極的に受け入れたほうがよいと考えてい る。若手研究者の健全な育成のためには、論文量産主 義の文化はマイナスであると考える。論文はあくま で結果であり、目的ではない。新しい実験計画を討 論し、具体的な準備作業を行い、更に得られたデー タ を検討するといった当たり前の研究生活で毎日が まわってゆくようにしなくては、基礎体力は養われ ない。当グループは、放射光施設での限られたビー ムタイムでの実験が主であるため、不利な点もあっ た。何ヶ月も先の実験に備えた作業を今やるべきことと実感して理解し行動できるようになるために は、リーダー自身が身を持って範を示し続けなくて はならない。6.今後の展望当グループの研究ポリシーは今後も大きくは変わ らない。「SPring-8の次」に来る新放射光源を念頭に 置いた新たな放射光利用の検討を行いつつ(表3)、 既存の放射光施設の高度利用を進める考えである。 第2期(2006～2010)のNIMSの間にはまだ新放射 光源は具体的な姿を現さないので、第3期にダッシ ュがかけられるだけの準備を周到に行うべきであ る。他方、第2期には大強度パルス中性子源J- PARCが運転を開始する。放射光と中性子の併用は、 これからは世界の趨勢になり、狭い専門分野にとど まっていては遅れをとるであろう。当グループも、 反射率法等による「埋もれた」界面の科学の研究に おいて、相補利用を積極的に推進したい考えである。 もう1点、将来に向けて考慮したいのは、当グルー プメンバーまたは関係者による起業の可能性であ る。少数精鋭の利を生かし独自の解析技術や機器を 生み出し続けてきた当グループは、資金や人材の運 用面でこれまで以上に大きな自由を得ることによっ て、さらに大きく飛躍できるのではないかと考えて いる。表3次世代放射光源による物質・材料研究テーマ案X線イメ ー ジング・高分解能透過電子顕微鏡に匹敵する原子 分解能のX線顕微鏡による材料研究・ X線ホログラフィーによる原子配列の立 体ビジュアリゼーション(細胞エンジニアリング、原子スイッチ、 ナノチューブ、ナノワイヤーの微細構造、応力腐食割れの原子レベル直接観察)X線分光 (元素分析・ 化学状態分 析)・究極の超微量分析(原子配列中の異種原 子の識別)・励起状態の蛍光X線スペクトロスコピー・内殻電子の波動関数の直接観察(光触媒・クリーンエネルギー、発光デバ イス、環境モニタリング、生体計測)X線回折・ 散乱(構造 解析)・ X線光子相関反射率法による埋もれた界 面のダイナミクス研究・相転移・化学反応のリアルタイム(4次元) 構造解析・結晶構造を持たないアモルファス・非平 衡物質・単分子等の超精密構造解析 (ソフトマテリアル、光スピンエレクトロ ニクス、燃料電池、社会インフラの余寿命 評価)物質創製・ 加工・ X線アブレーションによるエキゾチック マテリアル創製(ナノマシン、X線ピンセット、形状記憶 デバイス、複雑系物質のナノコーティング)特殊な応用 ・コヒーレントX線による真空・宇宙空間 での超高精度リモート計測制御(ナノレベルの位置決め制御、日本列島周 辺のプレート運動の精密計測)微粒子プロセスグループの5年目義雄、今須淳子「現材料研究所機能融合グループ、2005.4異動」、宇田雅広「現パイオニア(株)、2005.4異動」、打越哲郎、奥山 秀男、小澤清、Oleg Vasylkiv「現若手国際研究拠点、2004.4異動」、栗生佳世子、朱新文、鈴木達、田宮匡子、湯楓秋「現クィーンズランド大学、 2004.10退職」、中泉富子、古海誓一、Benjamin Hatton、三木理子1.グループ発足の経緯・目的先端セラミックスへの新しい機能の付与や性能の 向上のためには、組織の微細化が重要で、さらにナ ノサイズからミクロンサイズの粒径を持つ組織の階 層化、傾斜化、配向化が求められている。これらの 要求を満たすためには、粉体プロセスの高度化が必 要である。粉体プロセスは、①粉体の合成、②粉体 表面処理、③成形、④焼結、の過程を含む。焼結後 の微細組織を得るためには、出発原料として微粒子 を用いる必要がある。しかし、粒子径が小さくなる とともに粒子は凝集しやすくなり、凝集粒子に起因 する大きな空隙や不均一な組織になりやすい。その 解決策として、微粒子を溶媒中に分散し固化・成形 するコロイドプロセスが注目されてきた。微粒子の 分散・凝集制御により、成形体の細孔分布狭く、高 密度に充填できれば、低温で緻密化が進み、高密度 の微細粒体が得られる。さらに、コロイドプロセス 中に外界から電場、強磁場などを印加することで、 高度な微構造制御につながる。以上の観点から、コ ロイドプロセスの高度化の研究を中心に、そのため の様々な微粒子の作成および得られた特殊構造体の 評価を推進するグループとして、2001年4月に微粒 子プロセスグループが材料研究所に発足した。2.グループの活動1)研究プロジェクト、外部資金研究の推進(1)運営費交付金プロジェクト・中期計画推進プログラム、外場制御コロイドプロ セスによるセラミックス高次構造制御体の作製 (2004-2005)代表者(以下略):目 義雄・中期計画推進プログラム、単分散コロイド微粒子 の磁性及び光触媒特性(2004-2005)小澤清(2)外部資金研究・振興調整費総合研究、電・磁界印加した粒子分散 場の協奏増幅によるミクロ構造規則化制御に関する 研究(2001-2002)目義雄・原子力研究、コロイドプロセスの高度化による高 次構造耐環境セラミックスの作製に関する研究、 (2003-2007)、目義雄・科研費基盤(C)、水系電気泳動プロセスによる粒 子堆積挙動の解明とセラミックス高次構造体の評価 (2003-2005) 打越哲郎・科研費基盤(C)、水素により微粉化される合金の 探索(2003-2005)奥山秀男・科学研究費補助金基盤(C)、磁場と電場を用いた 配向積層構造制御による新規セラミックスの創製、 (2004-2006)、鈴木達・科学研究費補助金(B)、コロイドプロセスの高度 化による高次構造セラミックスの創製(2004-2006) 目義雄・ホソカワ粉体工学振興財団研究助成、外場制御コ ロイドプロセスによる高次構造セラミックスの創製 (2003)打越哲郎・池谷科学技術振興財団研究助成、強磁場電気泳動 堆積法によるセラミックス配向積層コンポジットの 創製(2005)打越哲郎・(財)石川カーボン科学技術振興財団研究助成、 強磁場を用いて作製した炭化珪素焼結体の配向過程 解析と機械的特性の改善(2005)鈴木達・資生堂サイエンス研究グラント、コロイドプロセ スと強磁場を用いた配向セラミックスの創製(2005) 鈴木達・(財)化学技術戦略推進機構 アカデミアショウ ケース、半導体ナノ粒子とキラル液晶の融合による 光通信デバイスの開発(2005)古海誓一2)萌芽的研究の推進・ミクロ・ナノ構造制御と機能特性に関する研究(2001.4-2004.3) 目 義雄・ナノ粒子とキラル液晶の融合による新規な光学増 幅現象に関する研究(2005.4-2006.3)古海誓一・水素による省エネ的合金微粉末の探索(2005.4- 2006.3)奥山秀男・化学溶液法によるコロイド結晶の作製とそれらの 表面ナノ構造制御に関する研究(2003.4-2006.3)小 澤清3)他機関との連携(1)企業との共同研究:・(株)アルバック、強磁場印加によるポリ尿素配向膜 の作製とその物性評価、目 義雄・村田製作所(株)、配向性機能材料の開発、鈴木達、・トクヤマデンタル(株)、電機泳動堆積法による精密 成形技術確立に関する研究、打越哲郎・東邦亜鉛(株)、超微粒子に関する研究、奥山秀男・パイオニア(株)、プラズマを用いたナノ粒子の創製 および水素貯蔵技術などへの応用、奥山秀男・セイミケミカル、固体酸化物型燃料電池セル化技 術に関する研究、打越哲郎(2)大学、独法等:・独立行政法人 産業技術総合研究所、中分子コレ ステリック液晶を用いたレーザー発振制御、古海誓一 ・大阪大学接合科学研究所、共同研究、コロイド的 手法による微粒子分散と電気泳動堆積法により成形したナノ・マクロ構造との関係、目義雄・大学院生の研究を通しての共同研究:東京大学工 学部(岸尾教授)、東京大学先端研(宮山教授)、武 蔵工業大学(宗像教授)、早稲田大学理工学研究科 (黒田教授)、・連携大学院:東京理科大学理工学部、芝浦工業大学4)国際連携、国際化MOU :ウクライナ、Institute for Materials Science Problems, Valeriy V. Skorokhod (所長)MOU :イタリア、POLITECNICO DI TORINO (トリ ノ工科大学)5)プレス発表、表彰等(1)プレス発表・活性プラズマ反応法による超微粒子発生装置の開 発。(奥山秀男)・コロイド結晶による高効率なレーザー発振に成功 した。(古海誓一)(2)表彰・日本粉体粉末冶金協会 論文賞 「アルミナの磁場配向」(平成13年5月)鈴木 達、目 義雄、他・ 8th International Conference on Ceramic Processing Science「ポスターコンテスト172件中第1位: Preparation of Porous Materials with Controlled Pore Size and PorosityJ (平成14年9月)湯 楓秋、打越 哲郎、目義雄、他・日本粉体粉末冶金協会 研究進歩賞 「直流プラ ズマ法による金属、セラミックスおよびその混合、 複合ナノ粒子の作製と評価」(平成16年5月)奥山 秀男、目義雄、他・応用物理学会有機分子・バイオエレクトロニクス 分科会 奨励賞「Electrical control of the structure and lasing in chiral photonic band-gap liquid crystals」 (平 成16年9月)古海誓一・日本セラミックス協会学術賞「コロイドプロセ スの高度化による高次構造セラミックスの作製」 (平成17年5月)目義雄・日本粉体粉末冶金協会 研究進歩賞「強磁場コロ イドプロセスによる弱磁性体セラミックスの配向制 御」(平成17年5月)鈴木 達、目 義雄、他・ Chinese Ceramic Society Award「China International Conference on High-Performance Ceramicへの貢献」 (平成17年11月)目義雄3. 5年間のグループの成果1)5年間の論文(査読付プロシーディング含む)、特許(出願含む)件数年度 論文(件) 特許(件)2001 31 12002 27 102003 24 42004 36 42005 38 62) 5年間の成果(トピックス)(1)化学溶液法による機能性酸化物粒子の合成 に関する研究(小澤清)ゾルゲル法や水熱法などに代表される化学溶液法 は、環境負荷の少ない金属酸化物の合成手段として 注目されているが、それ以外にもナノ粒子合成など 粒子の形状制御にも有効な手段である。金属の酢酸塩やアルコキシドを過酸化水素水と反 応させる方法によって、アンチモン酸(HSbO3・ nH2O)、及びそれのY、Bi、Nb添加化合物について サイズのそろったナノ粒子(単分散ナノ粒子)の作 製に成功した。図1に示すように、これらの粒子は、 数十ナノメーターのサイズをもち、そのサイズは数 ナノメーター間隔で制御可能である。これらのプロ トン伝導性が水素結合距離と関連していることを実 験的に確かめた。また、このようなアンチモン酸の 単分散ナノ粒子は、紫外線領域での光触媒機能をも ち、工場排水の環境浄化物質としての利用が可能で ある。一方、ここで示した合成手法はLiTaO3などの 低温合成にも有効であり、現在も研究を進めてい る。図1 化学溶液法(アルコキシドとH2O2との反応を利 用した)によって合成したアンチモン酸の単分散ナノ 粒子のTEM写真。粒子サイズは数ナノメーター間隔で 変化しているLiOHとV2O3の水熱反応によって新規のLi-V酸化物 を合成した。この化合物はLi0.86V0.8O2の組成をもち、 200 nm程度のサイズをもつ単分散粒子として得られ る。この化合物は、従来の固相反応から合成した Li0.96VO2と比べて、充放電容量の増加といった優れ た電気化学的特性をもつ(図2)。その理由が結晶 の安定性とV空孔の存在と関連していることを見出 した。この成果はLixNiO2など他のリチウム二次電池 の正極材にも応用可能である。図2 新規に合成したLi0.86V0.8O2と従来の手法で合成し たLi0.96VO 2の充放電曲線(2)直流プラズマによるナノ粒子および膜の合 成(奥山秀男)「活性プラズマ―金属」反応法を用いてナノ粒子 のエアロゾルを任意形状のフィルターに形成された 均質な超微粒子の膜を得ることができた。形成され た膜は、逆圧をかけて剥離することも出来るが、フ ィルターの材質に金属短繊維を選択しそのまま利用 することで超微粒子膜に強度を付与させることも可 能である。ナノ子化する材料には水素透過膜材料と して知られているPdで試みたが、この作製方法によ れば、金属はもとよりセラミックスやこれらの積層 および傾斜積層した膜の作製が可能である。また、「活性プラズマ―金属」反応法を用いて金 属とセラミックスがミクロな領域で複合したナノ粒 子を作製した。一例として、Pd金属とTiNセラミッ クスが複合した粒子のTEM写真を示す(図3)。中 央部がTiNであり両端がPdの複合ナノ粒子である。 本法を用いて創製できる複合ナノ粒子は、材料と反 応ガスの組み合わせ、あるいは反応場の選択によっ て表面や界面・構造など異なることが予測され、自 然界では存在しない新しい機能を持つ新奇な材料が 期待される。図3 Pd-TiN系複合ナノ粒子のTEM写真アーク溶解法で作製した表面清浄なNb-Zr-Fe系三 元合金は、室温で水素ガスと接触させると、活性化 処理を施さなくとも極めて容易に水素ガスを急速に 吸収しながら崩壊し、合金微粉末となることを見出 した。図4にNb-Zr-Fe系三元合金の水素による粉化 領域を斜線で示したが極めて広範囲の約60%組成域 が粉化することが判明した。図5に示したように粉 化した合金は、フレーク状で大きさが約10～200μ mであった。粒子表面には各所に多数の微細なわれ が存在していた。一例として、20at%Nb-40at%Zr- 40at%Fe合金の水素含有量は、1.8mass%であり200C までは殆ど水素を放出しないことが判明した。図4 水素によるNb-Zr-Fe合金の粉化領域図5 水素により粉化した合金とその表面SEM写真(3)ナノ粒子の液相合成とコロイドプロセスに よるナノ結晶粒の作成(O. Vasylkiv)ナノ粒子の大量合成においては、凝集は避けられ ない。ここで重要なことは、アグリゲート(強固な 凝集体)サイズが均一なナノ粒子の調整である。 我々は、水熱沈殿法で作成した、ジルコニア系粉末 の洗浄、分散、過熱処理を制御することにより、図6に示すように、アグ リゲートサイズが30nm のナノ粒子が合成でき ることを報告した。こ の3YTZナノ粒子に高分 子電解質を適量添加す ることにより分散した サスペンションを調整 した。スリップキャス ト、CIP処理すること により、1150℃の大気 中熱処理で緻密化し、 100nm以下の微細構造 体が得られた。同様に、図6 水熱法で作製したジル コニア(3YTZ)ナノ粒子イットリアおよびアルミナの添加量と粒径を系統的 に変えてその力学特性を評価し、KICの変化を一例 として図7に示すように優れた力学特性示した。図7 イットリア固溶ジルコニア(YZ)系およびアル ミナ微量添加YZ系ナノコンポジットノ破壊靭性超音波還元法により3YTZにPtナノ粒子を析出さ せる方法により、Pt-3YTZ系の複合ナノ粒子が合成 できた。このナノ粒子は優れた触媒特性を示した。 これをスリップキャスト、焼結することでPt-3YTZ 系のナノコンポジットが作製できた(図8)。図8 超音波処理により作製したPt-3YTZ複合粒子をス リップキャスト、低温焼結により作製したナノコンポ ジットのTEM写真(4)高速超塑性セラミックス(本研究は、材料研 究所の平賀グループとの共同研究である。) 高速超塑性を達成するための要件として、微粒化、 粒成長抑制、拡散促進、表面エネルギーの増大、粒 界エネルギーの減少、が挙げられる。組成・組織制 御の手法として、残留欠陥の低減、粒子分散、異種 陽イオンの添加、プロセス手法の高度化が重要であ る。高速超塑性が達成されたセラミックスは、セラ ミック相の構成で分類すると4種類に大別できる。 つまり、①ガラス相共存型、②主要組成が母相と同 じ結晶系で異なる相の共存型、③単相型、④主要組 成と結晶系が母相と異なる固相の分散型。ここでは、 高速超塑性の要件に基づき我々の開発した③の型に ついて紹介する。拡散促進のためにAl3+あるいはTi4+の添加によっ て粒成長の速い立方相単独相生成を回避(Ti4+添加 の場合はMg2+も同時添加)し、さらに残留欠陥の 低減と微細化を目的にコロイドプロセスを適用して 低温焼結で高密度緻密焼結体を作成した。このよう にして、3Y-TZに0.2wt % Al2O3を添加した単純な組 成で高速超塑性を実現した。図9に、Al2O3にMn3O4 を同時添加した3Y-TZ系の引張り変形前後の写真を 示す。また、TiO2-MgOを固溶した3Y-TZ系では、 1350℃で高速超塑性を実現した。現在までに公表さ れたデータの中で、1350℃は高速超塑性の発現した 最も低い温度である。図9 Al2O3とMn3O4を同時添加した3Y-TZ系の引張り 変形前後の外観写真(5)コロイドプロセスによる多孔質体の作成 (湯楓秋)図10に多孔体作製の模式図を示す。核となるポリ マー粒子表面と修飾するセラミック粒子表面の表面 電位が所定のpHで異なるサスペンションを別々に 調整する。つぎに両者を混合すると、両者間に静電 引力が作用し、ポリマー表面にセラミックス粒子が 均一に修飾される。このようにして作製したヘテロ 凝集体のサスペンションを、減圧鋳込成形法により 固化成形したのちに、所定の温度で焼成する。焼成図10高分子とセラミック粒子のヘテロ凝集によるセ ラミック多孔体作製の模式図 により、球状ポリマー粒子は燃焼除去され、同時に セラミックス微粒子間が結合することにより、気孔 形状が揃いかつ規則的に配列したセラミックス多孔 体が作製できる。図11 (a)は、粒径350 nmの PMMA (ポリメチルメタアクリレート)粒子と粒径 34 nmのγ-アルミナ粒子の水系サスペンションのpH 制御のみで調整した例で、図11 (b)は、粒径800 nmのPMMA粒子と粒径150 nmのα-アルミナ粒子の 水系サスペンションの調整例で、それぞれ点線の範 囲内でヘテロ凝集体が作製できる。ここで、α-ア ルミナはPMMAと同じ負に帯電したため、α-アル ミナ粒子に正の電荷を付与するため、カチオン性分散剤であるPEI (ポリエチレンイミン)を添加し、 ヘテロ凝集体を作製した。図12に、減圧鋳込成形し た成形体を500℃4時間の仮焼後、850℃で焼成した γ-アルミナ多孔体および1100℃で焼成したα -アル ミナ多孔体の破面のSEM写真を示す。いずれも細孔 径が揃った3次元多孔体が作製できていることが分 かる。図11(a)粒径350 nmのPMMA (ポリメチルメタアク リレート)粒子と34 nmのγ--アルミナ粒子、(b)粒径 800 nmのPMMA粒子と150 nmのα-アルミナ粒子の水 系サスペンションのpHとゼータ電位の関係図12 γ-アルミナ(左図)およびα-アルミナ(右図) 多孔体のSEM写真本手法は、セラミックスの種類、粒径および高分 子の種類、粒径を変えることで、多様な系、粒径の 制御が可能な簡便な多孔体作成の手法である。(6)磁場中コロイドプロセスによる弱磁性セラミッ クスの配向制御(鈴木 達、打越哲郎)反磁性・常磁性体は、従来は非磁性物質として扱 われ、磁場を作用させることによる組織制御は行わ れてこなかった。しかし、近年、超伝導技術と冷却 技術の発達により比較的容易に数テスラの磁場を印 加することが可能となり、反磁性体などの物質に対 しても、強磁性体に対し永久磁石が及ぼす作用と同 様の磁気的効果が期待されるようになった。非対称な結晶構造をもつセラミックス粒子を磁場 に置くと、結晶磁気異方性と磁場との相互作用によ り発生した磁気トルクが、粒子を回転させる。しか しながら、粒子間に凝集があると強磁場といえども、 常磁性・反磁性セラミックス粒子の回転は困難であ り、粒子回転を容易にする成形手法が必要であった。 そこで、コロイドサスペンションを作製して粒子の 分散制御を行い、強磁場中でサスペンションを固化 成形することでセラミックスの配向制御を可能とす るプロセスの開発に成功した。図13に示すようにAl2O3を例にした場合には、磁 場印加方法垂直面(T面)ではc面が発達し、磁場印加方向平行面では(S面)ではa、b面が発達してい ることから、磁場印加方向とc軸が平行に配向して いることが分かる。また、組織においては板状に発 達した結晶粒が、その板状面を磁場印加方向と垂直 になるように重なる配向組織が発達していることを 確認した(図14)。更に磁場と電場を重畳作用させることにより配向 積層制御が可能であることを実証した。強磁場中で 電気泳動堆積法を行うことにより方位制御された層 を積み上げる。その際に、磁場と電場(基板)のな す角度(φB-E)を任意に設定することにより、基板 に対してある特定の配向方向を選ぶことが出来る。図13Al2O3サスペンションを10Tの磁場を印加して成 形し、1873Kで焼結した試料のX線回折図14Al2O3サスペンションを10Tの磁場を印加して成 形し、1873Kで焼結した試料の微構造組織また、一定時間毎にφB-Eを変化させることで、結晶 配向の方位が異なる層を積層することが可能となる (図15)。φB-E= ±45°とした場合には、板状粒子が 45°傾いている層と-45°傾いている層とを交互に 積層させることが出来る(図16 (a))。この試料で 曲げ試験した場合には、亀裂はジグザグに、ちょう ど各層毎に結晶粒子が配向している方向(結晶のc 面に沿う方向)へ進展する(図16 (b))。このよう に積層体の各層の結晶方向を揃えて亀裂進展を制御 することにより、機械的特性の改善が期待される。図15結晶配向方位が層ごとに制御された積層配向コ ンポジットの創製図16多層配向積層焼結Al2O3 (φB-E=±45°)の微構造 組織と曲げ試験における亀裂進展上記のAl2O3以外にも、AlN、アパタイト、ZnO、 SiC、Si3N4など様々な物質への適用が可能であるこ とを確認している。強磁場を用いた配向性セラミッ クスの創製プロセスは、適用可能な物質の広さと成 形手法の選択性から汎用性の高い配向プロセスであ り、高次構造制御を可能とする。(7)自己組織化フォトニック結晶を用いたレーザー 発振デバイスの創製(古海誓一)本研究では、図17のようなキラル液晶やコロイド 結晶の自己組織化フォトニック結晶構造を用いて、 そのフォトニックバンド効果によるレーザー発振に ついて検討を行った。図17本研究で用いた自己組織化フォトニック結晶。 キラル液晶(左)とコロイド結晶(右)キラル液晶はボトムアップ的にサブマイクロメ ー トル程度の超分子らせん構造を形成し、一次元フォ トニック結晶と見なすことができる。これに蛍光性 色素を添加すると、外部共振器を必要としないレー ザー発振を誘起することができる。従来、励起光と して直線偏光を用いた研究がほとんどであったが、 キラル液晶の超分子らせん方向を考慮して円偏光励 起を行うと、高効率にレーザー発振することを見出 した。また、レーザー発振光は指向性の高い円偏光 発光であった。一方、基板上にポリマー微粒子を三次元的に自己 配列させ、シリコンゲルで固定化した薄膜(コロイ ド結晶薄膜)を用いて、そのフォトニックバンド効 果を利用したレーザー発振デバイスの創製に成功し た。本コロイド結晶膜はガラス基板上だけでなく、 PETフィルム上でも作製できるので、全高分子材料 から構成されたフレキシブル、かつ加工性のあるレ ーザー発振デバイスの作製が可能になった。安価で 高性能な微小光学素子へ応用されることが期待でき る。4.今後の課題と研究方針ナノ粒子は、0次元とみなされるが、1次元とし ての細線、2次元としての膜、そして3次元として のバルクとしての利用がある。ナノ粒子作成技術の 課題として、粒径、形態・界面制御された安定なナ ノ粒子、安価・大量生産技術の確立が挙げられる。 特に、量子効果の発現を目的とする場合、ナノサイ ズでのシャープな粒径制御が必要である。利用に当 たっては、安定化、分散化処理、微小空間の利用、 ナノオーダーでの複合化、生成した粒子の膜化、バ ルク化するハンドリングの高度化が必要である。従 来の材料の枠にとらわれず、それぞれの技術を活か すとともに、遺伝子工学と材料の融合など学際的な 取り組が必要とされている。我々は、溶液中でのナノ粒子、ナノチューブある いはナノ空間を利用したボトムアップ法によりナノ からマイクロオーダーまでの高次構造制御体を作製 するための基盤プロセス技術を確立し、優れた特性 を有する0次元から3次元の高次構造制御体を創製 することを目標に研究を推進する。そのため、①外 場印加(主に強磁場)によるナノ粒子、ナノチュー ブなどの配列、集積化、②外場制御コロイドプロセ スと焼結法による高次構造セラミックスの創製、に 関する研究を行う。①では、ゼロ次元体であるナノ 粒子に対し分子認識現象を巧みに利用しアセンブル することでナノ構造体にまでボトムアップ的に組み 上げるプロセスを確立する。また、中間相(メゾフ ェーズ)を示す有機・高分子材料を用いて、ボトム アップ法とトップダウン法からアプローチされた交 差領域である数十ナノメートルからサブマイクメー トルの微小空間を創り出し、ナノ粒子、ナノチュー ブなどを固定化することにより、新規有機・無機ハ イブリット材料の創製を試みる。さらに、強磁場の 高度利用により、弱磁性材料の配列、集積化、擬単 結晶化(高配向粒子集合体)創製の基盤技術を確立 する。②では、我々が開発した強磁場中コロイドプ ロセスによる弱磁性体の配向制御技術および水系溶 媒を利用した電気泳動堆積による積層体化技術を基 に、微粒子分散制御の高度化、焼結技術の高度化と、 強磁場、電場など多様な外場エネルギーをコロイド 成形時あるいは焼結時に印加することにより、高次 の構造制御を行う。特に、配向度、配向方位と機能 特性の関連を明確にし、高度な組織制御技術の開発 にフィードバックさせる。日本の得意分野であったはずのナノ粒子およびそ れを利用したナノ構造体作成技術が、先端分野では 米国に、既存技術では中国、韓国に追い越されよう としている。今後もトップランナーとしての地位を 維持、さらに発展していくには、地道な系統的な学 際的な研究を継続させていく必要がある。微小造形グループの5年土佐正弘、小野寺秀博、荒木弘、笠原章、後藤真宏、鈴木裕、野田哲二、Yuriy Pihosh、小西陽子「現早稲田大、2002.3退職」、 大石哲雄「現産総研、2004.3退職」1.目的高性能MEMSやNEMSの創製は、次世代の超大容 量高速高信頼性通信システムの構築やマイクロ・ナ ノ医療福祉分野への大きい貢献が期待されている が、その作製には微小造形技術を開発するとともに、 構成部品である微小コンポーネントをその微小形状 のまま操作し、その各特性を評価する計測技術の開 発が不可欠である。そこで、微小コンポーネント材 料であるシリコン系ナノワイヤーやマイクロポリマ ーコンポーネントを加工・作製するとともに、微小 レベルでの操作をこころみ、熱物性、電気電子特性、 および機械特性等性能を微小サイズのまま個々に精 密計測できる評価システムを開発して、微小デバイ スの造形・組立および高次元マイクロ・ナノマシン 開発技術に資することを目的とする。2.活動内容2.1主な内容微小コンポーネント材料として期待されるシリコ ン系ナノワイヤーを熱CVD法や帯域溶融法等によっ て高精度に形状制御して作製しナノワイヤー1本毎 の熱伝導度、電気的ならびに機械的特性を測定でき る計測システムを開発するとともに、微小マニュピ レーション操作によりナノコイル・ナノアーム等を 設計・試作して動作諸特性を確認するとともに、さ らに、簡便なナノ秒パルスレーザープロセスを用い て多種多様な機能を選択できる有機分子を注入プロ セスや光重合反応を応用することにより、ミクロン サイズ以下の微小領域において、容易かつ円滑に配 列固定、あるいは固化する簡便な光プロセス技術を 開発しシリコン系ナノワイヤーと組み合わせること でマイク口光学デバイスや3次元ナノコンポーネン ト組立のための微小造形技術の開発を推し進めてき ている。また、表面偏析現象やコンビナトリアルス パッタコーティング法を用いて被膜の微小構造や組 織を制御することでマイクロマシン部品をはじめタ ービン環境や宇宙軌道環境など極限環境下で円滑に 作動できる固体潤滑材コーティング手法や表面改質 技術の開発についても研究を行ってきている。2. 2企業との共同研究・「炭素系同位体化合物の熱物性に関する研究」 (2000.10 ～2002.3)・ 「シリコンナノワイヤーを用いた素子」(2004.9 ～2005.3)・ 「窒化ホウ素コーティングによる低摩擦真空材料 の開発に関する研究」(2004.1～2005.3)・ 「コンビナトリアルコーティングを利用したター ビンシステム用低摩擦材料の開発」(2002.4～2005.3)3.研究プロジェクト○原子力試験研究費研究「同位体変換制御材料に関 する研究」(～2002.3)○知的基盤研究費「機能性材料の熱物性計測と標準 物質に関する研究」(～2002.3)○原子力試験研究費研究「同位体変換制御材料に関 する研究」(2003.4～継続中)○萌芽的研究「同位体シリコン化合物に関する研究」 (2003.4 ～2004.3)○萌芽的研究「長尺シリコンナノワイヤーに関する 研究」(2004.4～2005.3)○萌芽研究「金属化合物微小コンポーネント作製」 (2005.4 ～2006.3)○平成12年度NEDO即効型産業技術研究助成、「表 面エネルギー制御コーティング技術による真空遮断 器材料の開発」(2000.9～2002.3)○平成14年度NEDO産業技術研究助成、「コンビナ トリアルコーティングを利用したタービンシステム 材料の開発」(2002.9～2005.3)○NIMS内競争的個人研究、「機能性有機分子の微小 構造体創製とナノパターンニング」(2003.4～ 2005.3)○NIMS萌芽的研究「液中マイクロファクトリーに 関する研究」(2005.4～2006.3)○科学研究費補助金特定領域研究、「パルスレー ザー光励起された有機分子の固液界面上での動的挙 動の研究」(2005.4～2007.3)○NIMS萌芽的研究「ナノコンポーネント材料の要 素技術に関する研究」(2001.4～2003.3)○NIMS内競争的個人研究「静電分子モータに関す る研究」(2002.4～2003.3)○NIMS萌芽的研究「非鉄金属材料構造材料の展開 に関する調査研究」、(2003.4～2004.3)○NIMS萌芽的研究「スペーストライボロジー材料 の開発に関する研究」(2004.4～2006.3)NIMS萌芽的研究「微小造形のための微小コンポー ネントの特性評価に関する研究」(2003.4～2004.3) ○NIMS萌芽的研究「微小コンポーネントのその場 計測に関する研究(2004.4～2006.3)○NIMSプロジェクト「量子機能発現に関する研究」 (2001.4 ～2006.3)○科学技術振興調整費研究、「物理標準の高度化に 関する研究-気体と金属壁との相互作用に関する研 (～2002.3)○池谷科学技術振興事業財団研究助成「スペースト ライボロジー材料の開発に関する研究」(2005.4～ 2006.3)○財団法人日本宇宙フォーラム研究助成「光触媒を 用いた宇宙環境における汚染防止技術の開発」 (2005.4 ～)4.研究トピックス○赤外多光子解離によるシリコン同位体濃縮に及ぼ すレーザー照射長の影響の解明○自由電子レーザーによるシリコン及びモリブデン の同位体濃縮○同位体シリコン単結晶の低温比熱の測定と評価 ○改良熱蒸発法によるSi粉末からの長尺Siナノワイ ヤーの製造○B、Si及びダイヤモンドの熱伝導度に及ぼす同位 体効果の測定と評価○プラズマCVDによる同位体制御SiC薄膜の作製と 評価○プラズマCVD法SiC薄膜の形成速度に及ぼす基板 温度の影響の評価○プラズマCVD法SiC薄膜形成におけるガス組成の 影響の評価○長尺アモルファスSiO2/Siナノワイヤーの構造とIR スペクトルの測定評価○S2H6用いたSiナノワイヤーの低温合成○Siナノワイヤーによる低温電極配線○大型CVI装置の作製○高純度SiCf/SiC複合材料の作製○SiC繊維とマトリックス界面の組織制御○SiCナノワイヤー作製法○高分子薄膜上における有機分子クラスター注入と 操作○窒化ホウ素・銅混合薄膜を用いた表面エネルギー 制御とナノトライボロジー○透過水素遮蔽��性真空容器内壁用銅窒化ホウ素混合 被覆法の開発○表面ナノラフネス制御による超高真空用潤滑材料 の開発○エキシマレーザーを利用した新規高真空低摩擦コ ーティング法の開発○宇宙用長寿命駆動材料実現に向けた耐紫外線・酸 化真空低摩擦コーティングの開発○超高真空中で低摩擦特性を有する酸化銅コーティ ング薄膜○内部応力をトリガーとした基板表面上への窒化ホ ウ素ナノ凝集体の作製とマイクロトライボロジー特 性○高分子膜上における複数の機能性有機分子のマイ クロパターン作製○コンビナトリアルスパッタ法による低摩擦コーテ ィング膜の作製○ZnOコーティング膜の結晶配向制御と真空摩擦特 性○パルスレーザーを用いた有機微小構造材料の作製 とマイクロパターンニング○コンビナトリアルスパッタコーティング法によるZnO膜の結晶配向制御とその摩擦特性○パルスレーザー光励起された有機分子の固液界面 上での動的挙動の研究5.代表的研究トピックス5.1SiCファイバーを用いた高性能複合材料の 開発SiCは、耐熱・耐酸化性及び低放射化材料として も優れていることから航空宇宙材料・半導体材料及 び核融合炉材料として有望視されている。しかし、 SiC単体では脆性破壊を起こすため構造材料には適 していない。この問題を改善することを目的とし SiCファイバーを用いたSiCf/SiC複合材料の開発を行 った。マトリックス原料にはMTS (メチルトリクロロシ ラン)、キャリアーガスとして高純度水素ガスを用 いた。圧力14.4kPa ・温度1248-1298Kの条件により CVI (Chemical Vapor Infiltlation)法にて作製した。 この条件下において析出されるSiCは高純度β -SiCが 得られる。プリフォームにはTyaranno-SA ・ Hi- Nicalon平織りSiC繊維を同一方向に積層(7―10層) し、3.6ksCVIを施した後、72ksの本CVIにてSiCf/SiC 複合材料を作製した。しかし、これらの材料もマト リックスとSiC繊維は強固に密着するため脆性破壊 を起こした。これらの改善法として写真1に示すよ うに、プリフォーム作製前にSiC繊維の周りに炭素 被服による界面制御a)、マトリックス内へのSiCナ ノワイヤーを析出b)させた。結果、脆性破壊は改善され見かけ状の延性が認め られ、800MPaの曲げ強度が得られた。又、CVIの欠 点である空隙率も10%以内に抑えることが出来た。写真1 炭素被服a)、SiCナノワイヤー析出、及び炭素 被服b)による界面制御したSEM像5. 2赤外多光子解離によるシリコン同位体濃縮 に及ぼすレーザ照射長の影響の解析自然界のシリコンは28Si、29Si、30Siの3種類の安定 同位体からなっており、その存在比は28Si:29Si : 30Si =92.23 : 4.67 : 3.10である。シリコンの同位体組成 を制御することが出来れば熱物性、核的性質におい てよりすぐれた特性が期待できる。特に28Siは最も 存在比率が高いためこの濃度をより高めた材料が出 来れば、熱伝導率の向上による半導体デバイスの熱 特性の改善が期待できる。そこで、赤外レーザ多光子 解離によるシリコン同位体濃縮について28Siの濃縮 度とその収率に与える照射光路長の影響を調べた。長さがそれぞれ2m、3m、4mの反応管に原料 ガスであるSi2F6を圧力10.6～266.6Pa、流量3.33～ 166.7mm3s-1で導入しながらTEA-CO2バルスレーザに よって波数930～985cm-1、エネルギー0.5～3.12Jで照 射を行った。照射によりSi2F6はSiF4に分解されるが 照射条件を選択することで未分解Si2F6中には28Siが 濃縮される。ガス中のSi同位体濃度は、4重極質量 分析器によって求めた。また収率は、使用した自然 同位体比Si2F6量に対する生成28Si濃縮Si2F6量で示し た。図1にそれぞれの長さの反応管を用いた場合の未 分解Si2F6中での28Siの濃度と収率の関係を示す。2m 反応管では、28Si濃縮度が上がると急激にその収率 は下がるが、3 m、4m反応管では比較的28Si濃度の 高いSi2F6が50%以上の収率で得られた。これらの結 果から、材料化につながる多量の同位体Siを得る方 法が期待される。図1 未分解Si2F6中での28Siの濃度と収率の関係5. 3 Siナノワイヤーの低温合成とそれを用いた 配線技術の確立シリコンナノワイヤーは、ナノサイズの半導体の みならず、コイル、ナノピンセット、ナノアーム、 ナノ回転軸、ナノモータ部品など医療用あるいはサ ブミクロンサイズのナノマシン用部材として、その 用途は極めて広いと考えられる。また、取り扱いの 面でも、直径が50nm以上で長さが数mm以上あれば、 一般の走査型電子顕微鏡(SEM)あるいは光学顕微 鏡にマニピュレーション装置を組み入れて扱うこと が可能となり、組み立て加工も容易となる。現在、 世界各国でナノワイヤーの研究開発が微小半導体へ 向けられているなかで、当所で開発したcm級長尺 ナノワイヤーの応用化は、世界の先端技術開発の競 争の中で急務の課題と考えられる。そこで、この長 尺シリコンナノワイヤーの熱・電子・機械的物性を 明らかにするとともに組成を制御することを試み、 マイクロ・ナノマシンシステムへの応用研究を推し 進めた。作製できるシリコンナノワイヤーには2種類あ り、1つは長さが数mm以上に成長し、ワイヤーの 操作が容易になるためナノワイヤー1本1本の熱物 性、電気特性の測定に適したものと、もう1つは 300℃程度以下の低温で作成が可能で、基板への損 傷低減や様々なLSI基板への応用が期待される。マイクロデバイスへの応用をはかるために最初の ステップとして作製したナノワイヤーの材料物性を 測定するための冶具デバイスの製作を行った。図2 はLSI用リソグラフィーを用いた微細加工により作 製したマイクロ測定用冶具デバイスの表面にナノワ イヤー(100nm径、約30μm長)をセットした写真 である。この測定用デバイスはナノワイヤー1本の 熱伝導率を評価することができる。また、微小応力 測定用歪みゲージを先端に装備したマイクロ操作プ ローバーを用いてナノワイヤーの材料強度物性をは かるマイクロ材料試験器の構築も行っている。このようにナノワイヤー1本毎の材料物性を精確 に評価するシステムが確立されればマイクロデバイ スへの幅広い応用が展開されていくと期待される。図2 Siナノワイヤーをセットした熱伝導測定用マイク ロデバイス5. 4表面ナノラフネス制御による真空潤滑材料 の開発真空中では固体表面同士がこすれると清浄表面が 容易に出現するために、摩擦の増大や焼付き、さら にガス放出など駆動機能の低下や雰囲気や清浄表面 の汚染などのトラブルが発生し、したがって、真空 中での潤滑性をいかに安定かつ簡便に提供することが安全で円滑かつ低コストで高品質な真空システム を保持する際の重要な課題となっている。そこで、 典型的真空用材料であるSUS304ステンレス鋼につ いて表面粗さの大きさ(Ry)が真空中摩擦特性に 及ぼす影響について検討し、100nm台のナノ表面粗 さを持つ試料が、超高真空中で最も低摩擦性が得ら れることを見いだした。試料のナノ表面粗さ作成には、SUS304鋼板を硝 酸塩酸系腐食液に3 min浸漬した化学研磨(CP)、 および、電解複合機械研磨(ECB)の2種類を用い、 304鋼製の鏡面研磨球圧子(約3 mm径、Ry=60nm)、 印加荷重0.49Nの条件にて、同一場所を同一方向に 繰り返し、大気圧から超高真空まで圧力を変えた雰 囲気で摩擦力測定を行った。摩擦測定器は、基本的 な計測システムとして確立されているバウデンレー ベ ン型摩擦試験器を改造して超高真空中で作動でき るように構成部品を真空対応にしたものである。図3 大気中と10-6Pa台の超高真空中で摩擦係数(μ) の変化大気中と10-6Pa台の超高真空中で摩擦係数(μ) を測定した結果を図3に示す。CPやECBの各処理方 法に関わらず100nm台のナノ表面粗さを持つ試料 が、大気中と同様に超高真空中でも低摩擦が得られ ることがわかる。これは、100nm未満の表面粗さで は、平滑な表面となり水吸着層や炭化水素系吸着物 などの潤滑層としての吸着層が薄くて摺��動により容 易に除去されやすいため超高真空中では清浄表面が 現れやすく、一方、200nm以上の表面粗さでは、表 面積が増大して吸着量は増大するが、吸着物が試料 表面凸部分の先端付近に供給されにく くて少なくな り、この凸部分の先端清浄域を圧子先端面が直接摺�� 動するために摩擦μが増大するものと考えられ、潤 滑を促進すると考えられる吸着物の接触部への供給 しやすさの大小が摩擦の違いに影響したものと推測 される。このようなナノスケールでの表面粗さに起因する 表面吸着物の離脱性を利用することにより材料を問 わず真空中摩擦を容易に低減できる手法は、薄膜作 製装置や表面分析器から宇宙探査衛星まで真空シス テムの駆動機構への広範囲の応用が期待される。5. 5ナノスケール超低摩擦自己組織被覆膜六方晶窒化ホウ素(h-BN)を含む混合薄膜を同時 スパッタ蒸着することによりnmレベルで摩擦が非 常に小さくなる薄膜表面を作製することに成功し た。これは所定の条件で作製した膜の表面の摩擦係 数μは0.01以下となり、さらに、吸着力も非常に小 さい値となり、表面原子間力を活用した原子スケー ルギャップのニアコンタクトで走査する超高密度記 録メディアシステムの開発に道を開くと期待され る。六方晶窒化ホウ素膜は、自己組織化により基板面 に垂直にc結晶軸が配向する多層構造層に偏析する ためにBNの六角結晶格子網面状c面間の結合力がa 軸方向に比べ格段に小さく劈開が起こりやすくな る。このために基板に対して水平に力が働くと六角 網面状のBN原子層が容易に滑るため摩擦力は小さ くなり、このような性質は反発力が作用する原子間 隔まで物体を層面直上に最接近させることができ、 超低荷重下では層面と安定にナノギャップで一定距 離のまま超低摩擦下で走査できることが期待され る。BNと銅の高周波マグネトロンスパッタ法により 共蒸着時間を変えて異なる膜厚となるB混合膜を SUS304ステンレス鋼基板上に作製した結果、図4 に示すように30分間蒸着後の表面はLFM観察におい て非常になめらかな画像が得られ、さらに、摩擦係 数μは図5に示すようにLFM計測では0.01以下とな り、また、表面吸着力も0.7nNと非常に小さい値と なり、水や炭化水素などの吸着ガスの影響を受けず 摩擦がきわめて小さい表面が創製されることがわか る。BN低温偏析促進のメカニズムを検討するために BN混合層を箔片上に作製し、蒸着により薄片に生 じた湾曲度から混合層の内部応力を求めたところ、 蒸着初期で急激に内部応力が発生して歪みエネルギ ーが蓄積されていき、0.9ks時には約150Mpaの最大 の圧縮応力となり、その後、急激に低下していくこ とが示された。通常のBN蒸着プロセスではBN蒸着 層は結晶面がアトランダムに形成されるが、スパッ タプラズマという非平衡プロセスを用いることによ りCu蒸着膜中に過飽和にBおよびNを強制過飽和固 溶させることによってCuの格子歪みが大幅に増大 し、このために膜内に増大した歪みエネルギーが室 温に近い低温で偏析現象を起こす駆動力としてBN がその結晶c面が基板に平行になるよう混合膜内に 自己組織化創製されるものと考えられる。自己組織化BN表面偏析混合膜は、雰囲気環境に かかわらず優れた超低摩擦特性を有するため、ニア コンタクト型超高密度磁気記録メディアシステムの みならず、先進表面改質層として真空機器や宇宙機 器等の低ガス放出性の超高真空駆動系材料への応用 が期待される。図4 蒸着後のAFM像(左)とLFM像(右) (100nm×100nm)図5 被覆膜のLFM測定による蒸着時間と摩擦係数 (μ)の関係5. 6コンビナトリアルスパッタ法の開発と各種 薄膜材料への応用スパッタコーティング手法は、大面積にミクロン レベルの厚さの成膜が可能なことから、工業的に広 く応用されている。しかしながら、成膜時における パラメータが多いことや精確な制御の困難性から、 必要とする薄膜特性を得るには膨大な時間と労力を 要することが多い。我々は、コーティングの結晶配 向性を制御し、薄膜の諸性能を最適化するために新 たにコンビナトリアルスパッタコーティングシステ ムの開発を行った。これにより、薄膜材料の低摩擦 化、ピエゾ効果、半導体特性、光触媒性能の向上、 光記録材料の作製に成功した。このコンビナトリアルスパッタコーティングシス テムは図6に示すように一度の真空排気で14枚のコ ーティング作業が可能であり、すなわちコーティン グ条件としてのパラメータを14組セットすることが でき、従って最適条件を極めて効率的に決定するこ とができる。この応用例の一つとして図7に酸素分 圧を高精度に制御した酸素分圧により作製された CuOコーティング膜の摩擦特性変化を示す。1回の コーティングプロセスだけで最適酸素分圧条件を得 ることができ、この結果を主体として他の条件を加 味して図8に示すようにタービンシステム内フロー ティングベアリング部品表面にCuOコーティングを 施し、優れたトライボロジー性能を示すことができ た。図6 コンビナトリアルスパッタコーティングシステ ムの模式図図7 酸素分圧を高精度に制御した酸素分圧により作 製されたコーティング膜の摩擦特性変化図8 CuO固体潤滑材をコーティングしたフローティ ングベアリング部品5. 7レーザー光を用いた微細配列・微小造形有機材料を用いてナノ・マイクロスケールのデバ イスを作製するためには、微小領域に位置選択的に 有機分子を注入配置、あるいは有機材で固定造形す る必要がある。しかしながら、シリコン系材料の主 な微細加工技術として従来からLSI製造に用いられ ているリソグラフィー加工技術は、多段階工程で複 雑であり、大型装置で高度な運転技術を必要とする。さらに、無機材料と異なり、高エネルギーを有する ビーム注入・加工技術を用いると、有機分子は容易 に分解するという問題点がある。そこで、可視光パルスレーザーを集光照射するだ けというシンプルな手法によって、多様な機能を選 択できる有機分子を複数種ミクロンサイズ以下の微 小領域に注入配列、もしくは固定造形することが容 易にできるプロセス技術を独自に開発することに成 功した。図9にレーザー分子注入(固定)法を模式的に示 す。これは、所定の有機分子を高分子溶液に分散さ せ、この分散液をガラス板に被覆し、このガラス板 (有機分子源膜)と、高分子膜だけを被覆した別の ガラス板とを重ね合わせて、高分子膜同士をサンド イッチし、これにレーザーを集光照射することによ って、有機分子源膜中の有機分子を他方の高分子膜 の微小領域に注入固定する方法です。図10に色素分 子(クマリン6)注入のミクロ配列パターン描画像 を示す。一方、高分子膜の代わりに色素分子を添加した光硬 化性樹脂溶液にレーザーを照射することで所定形状 のみを光硬化させた後、未硬化部をエタノールで除 去して造形したマイクロ歯車を図11に示す。さらに、 これを応用して図12に示すように世界で初めてガラ ス板上への複数種の有機分子のミクロ配列にも成功 した。このように、容易に有機分子をミクロンサイズ以 下で注入・固定できる本手法は、マイクロ ・ナノス ケールの光学デバイスやマイクロマシンを構成する ナノコンポーネントの有力な作製手法として期待さ れている。図9レーザー分子注入(固定)法の模式図図10有機分子マイクロ注入配列パターン図11レーザー造形したマイクロ歯車(直径160μmφ～5 μmφ)の可視像(上)と蛍光像(下)図12複数種の有機分子のミクロ配列(340 μ m × 530 μ m)6.論文数、知的関係、研究会開催等(年度毎)2001 2002 2003 2004 2005論文数 15 22 17 16 14特許数 7 5 10 9 2共同研究数 2 2 3 3 1(大学公的機関も含む)MOU締結 0 0 2 3 3研究会開催 3 2 3 2 0複合材料グループの5年香川豊、郭樹啓、坂本正雄、田中義久、田村正和、張慶新、内藤公喜、長沼環、平林達也、村上恵子、 Ramasamy Sivakumar、李世勲1.活動経緯現在の複合材料グループは、機構発足当時には金 属系複合材料の力学特性評価および標準化活動を中 心として材料研究所力学特性研究グループに所属 し、2002年4月には材料基盤情報ステーション金属 基複合材料グループに所属した。2003年10月に金属 系複合材料グループが組織を変更し、プラスチック 系、セラミック系の複合材料を取り込んだ組織とし て現在に至っている。金属系複合材料グループでは、 SiC粒子分散Al系複合材料のクリープや疲労破壊機 構の解明、SiC繊維強化Ti系複合材料の高温疲労や 界面力学特性の解明に取り組んできた。グループの 名称が「複合材料」に変更になると同時に、プラス チック系及びセラミック系複合材料の研究者を新た にメンバーに加え、複合材料の分野を総合的に取り 扱うグループになった。特に近年、使用量が増加傾 向にある繊維強化プラスチック(FRP: Fiber Reinforced Plastics)とセラミック系複合材料(CMC: Ceramic Matrix Composites)の新たな研究を開始し たことは、NIMS内での新しい分野の開拓と将来の 複合材料の分野を考慮したものとして特筆されるこ とといえる。2. 5年間の成果・金属系複合材料:SiC粒子分散AlやSiC繊維強化Ti が材料として完成の域に達し始めたのは2000年頃で ある。金属基複合材料グループでは、これらの材料 を実用的に用いるための問題点を解決するという立 場から、疲労特性やクリープ特性などの時間依存型 特性の材料学的観点からの信頼性確保を行うための 材料利用技術を確立する事に重点を置いた研究を行 った(図1、SiC繊維強化Ti複合材料の室温と高温 疲労損傷のその場観察の一例)。同時に、繊維とマトリックス間の界面力学特性な どの新たな研究分野の開拓も行った。さらに研究領 域を力学的機能を基本とし、熱伝導や熱膨張を制御 するための組織制御技術に関しても新たな知見を得 ている。・プラスチック系複合材料:2003年度からNIMS内 におけるプラスチック系複合材料の研究分野立ち上 げに関する検討を開始した。2004年、2005年に新メ ンバーを加えるとともに、研究対象とする材料を将 来の発展が期待されている耐熱炭素繊維強化ポリイ ミド系材料に絞り、成形技術の確立を図ることを第 一の目標とし、研究を行っている。これとは別に、 繊維強化プラスチックの分野の社会的な要請に答え るためにプラスチック系複合材料の接合・接着技術 及び非破壊試験・検査技術の研究にも着手した(図図1SiC繊維強化Ti複合材料の(a)室温、と(b)高 温疲労損傷(550℃)その場観察の一例図2その場非破壊試験・検査技術2、プラスチック複合材料のその場非破壊試験・検 査技術)。・セラミック系複合材料:金属基複合材料グループ 時代にもSiC繊維強化SiCの力学特性に関する基礎的 検討を行っていたが、2005年度からは、セラミック 系複合材料の研究者を採用し、工業材料として有望 なAl2O3の力学特性および、将来の超高温セラミッ ク系複合材料としてZrB2系マトリックスの研究にも 着手した(図3、SiC繊維強化SiC複合材料の破断面 観察の一例)。図3 SiC繊維強化SiC複合材料の破断面観察の一例 (繊維プルアウト挙動が観察される)3.複合材料グループの展望2005年度には複合材料グループはNIMS研究者6 名、ポスドク3名という規模になり、取り扱う材料 も広範囲なものとなった。今後は、特に、プラスチ ック系、セラミック系複合材料の研究に重きを置き、 まず「NIMSで生まれた複合材料」を作りだし、そ れをグループメンバーの得意分野から研究対象とし たい。いずれの複合材料でも、現状での材料利用技 術分野と将来の材料技術分野をバランスよく取り込 み、すぐに役に立つ研究と将来の夢が見出せる分野 にチャレンジしていくことを考えている。論文リスト1. Y.-F. Liu , Y Tanaka and C. Masuda, “Effect of Interfacial Debonding and Sliding on Matrix Crack Initiation during Isothermal Fatigue of SCS-6/Ti-15- 3 Composites”,Metallurgical and Materials Transactions A, Vol. 31A, pp.2637-2645,2000.2 . Y. Tanaka, Y. Kagawa, Y-F. Liu, and C. Masuda, Interface damage mechanism during high temperature fatigue test in SiC fiber reinforced Ti alloy matrix composite, Mat. Sci. and Eng., A314, pp.110-117,2001.3 . M. Ando, K. Hyodo, H. Sugiyama, A. Maksimenko, W. Pattanasiriwisawa, J. Roberson, E. Rubenstein, Y. Tanaka, “Novel X-ray Optics Own and Trinity to Visualize Object Inside”, Jpn. J. Appl. Phys., Vol.41, pp.4742-4749,2002.4 . W.D. Zeng, P.W.M. Peters, Y. Tanaka, Interfacial bond strength and fracture energy at room and elevated temperature in titanium matrix composites (SCS-6/Timetal834) , Composites A, 33, pp.1159- 1179, 2002.5 . Y-F. Liu and Y. Tanaka, In-situ characterization of tensile damage behavior of a plain-woven fiber- reinforced polymer-derived ceramic composite, Materials Letters, Vol.57, Issues 9-10, pp.1571- 1578,2003.6 . Y. M. Xing, Y. Tanaka, S. Kishimoto and N. Shinya,Determining interfacial thermal residual stress in SiC/Ti-15-3 composites, Scripta Materialia, Vol.48-6 pp. 701-706,2003.7 . Y. Tanaka, Z.-Y. Deng, Y.-F. Liu and C. Masuda, In- situ observation on fatigue crack growth in SCS6/Ti-15-3 composite at elevated temperature, Acta Materialia vol.51,pp. 6329-6340,2003.8 . Y.M. Xing, S. Kishimoto, Y. Tanaka and N. Shinya, A novel method for determining interfacial residual stress in fiber-reinforced composites, J. Composite Materials, vol. 38-2, pp. 137-148,2004.9 . Y. Xu, Y. Tanaka, M. Goto, Y. Zhou and K. Yagi, Thermal conductivity of SiC fine particles reinforced Al alloy matrix composite with dispersed particle size, J. Appl. Phys., vol.95 No. 2, pp. 722-726,2004.10.坂本正雄、田邊祐治、田中義久、木村一弘、増 田千利、SiC粒子分散強化A6061合金におけるク リープ試験中の徐荷弾性率の変化とクリープ損 傷、材料試験技術、Vol.49, No.l, pp. 22-28,200411.Z.-Y. Deng, Y. Zhou, M.E. Brito, Y. Tanaka and T. Ohji, Effects of rare earth dopants on grain boundary bonding in alumina-silicon carbide composite, J. Eur. Ceram. Soc., vol.24, pp. 511-516, 2004.12. Z.-Y. Deng, F.F. Xu, J. She, Y. Tanaka and Y. Bando, Effects of zirconium doping on grain-boundary bonding in alumina-silicon carbide composites, J. Am. Ceram. Soc., 87-3, pp. 493-495,2004.13. Z.-Y. Deng, Y.-F. Liu, Y. Tanaka, J. Ye and Y. Sakka, Modification of Al Particle Surfaces by g-Al2O3 and Its Effect on the Corrosion Behavior of Al, J. Am. Ceram. Soc, 88-4, pp. 977-979,2005.14. Z.-Y. Deng, Y.-F. Liu, Y. Tanaka, H.-W. Zhang, J. Ye and Y. Kagawa, Temperature Effect on Hydrogen Generation by the Reaction of g-Al2O3-Modified Al Powder with Distilled Water, J. Am. Ceram. Soc., 88- 10,2975-2977,2005.15. Z.-Y. Deng, Y. Inagaki, J. She, Y. Tanaka, Y.-F. Liu, M. Sakamoto and T. Ohji, Long Crack R-Curve of Aligned Porous Silicon Nitride, J. Am. Ceram. Soc., 88-2,462-465,2005.16. Z.-Y. Deng, Y. Tanaka, Y. Sakka and Y. Kagawa, Porous Al2O3/Al catalyst supports fabricated by an Al(OH) 3/Al mixture and the effect of agglomerates, J. Mater. Res. Vol.20, No.3, pp. 672- 679,200517. Y. Xu, Y. Tanaka, M. Murata, K. Kamihira, M. Yamazaki and K. Vagi, Effect of reinforcement nonuniformity on effective thermal conductivity of composite, Mat. Trans. Vol.46, No.8, pp. 1786-1789, 2005.設計試作グループのあゆみ魚津良雄、川崎昌彦、高橋弘光、多田節子、平出貞夫、増田安次、宮代寛1.グループの発足の経緯設計試作グループは、前身である科学技術庁金属 材料技術研究所管理部研究支援課と同無機材質研究 所研究支援室が、平成13年4月の物質・材料研究機 構の発足に伴い、研究業務部技術支援課としてスタ ートした。その後平成16年12月には研究業務部技術 支援課の設計試作部門が独立し、材料研究所のーグ ループとして、新たな形で発足した。2.グループの主な業務内容本グループは機構内の全研究者を対象に技術支援 を行っており、機構発足後の新しい組織や、研究業 務の多様化に伴う高度な支援業務に対応できるよう に努めてきた。以下に主な業務内容を列挙する。1、実験装置の設計製作2、電子顕微鏡等で使用する観察用試料加工、精密 切断、埋込、研磨3、ジグ等の設計製作や試験片加工4、装置の改良5、工具の貸し出し、材料などの提供6、技術相談・技術指導7、各種機械の保守管理8、一般公開参加協力9、工作機械操作講習会の開催10、見学希望者への対応千現地区の機械工作室では、前身の金属材料技術 研究所時代からの大型研究実験装置の設計及び加 工、組み立てまでの依頼が主力を占めていたため、 大型装置用の各種工作機械が多く設置されてきた が、近年では小型の実験装置やジグ加工の依頼が主になり、また精密加工、微細加工の依頼が増えてきている。一方並木地区の機械工作室では、研究者の実験内 容と概念図からCAD (コンピュータによる機械設計機械工作室全景支援システム)を用いて設計図を起こし、部品加工 から装置全体の組み立てを行ってきた。例えばコロ イド結晶作製装置、高融点単結晶育成装置などがあ る。そのほか、各地区で研究者が自由に使える工作機 器の保守と技術指導も行っている。機械設計支援システム試料作成室では、顕微鏡観察(材料解析)を行う ために試料を切断し、埋込成形し研磨を行い解析可 能な試料面を作り出す作業を行っている。共通設備 として各種研磨装置を配備するほか、ガス吸着量測 定装置・自動比表面積測定装置などを備え、利用の 便宜を図っており、毎年多くの利用者がいる。近年、学会及び工業会ではナノの領域が主流とな っており、それに伴い緻密解析の必要性が増してい る。試料作成の面でもこうした研究・技術の流れに 対応できるように支援室スタッフ個々の技術を磨い ているところである。試料作成室最後に、ガラス工作室では、理化学ガラス装置や 器具類を作製し、研究者の実験が円滑に行われるよ うに支援を行ってきた。特殊な装置等の作製については研究者と密接にコンタクトを取り、研究者の要 望にあった装置の作製を行っている。ガラス工作依 頼件数はこの5年間でやや増加の傾向にあり、より 機能的で高い精度を要求される作業傾向にある。作製した主なガラス装置、器具類としてはナノ粒 子・ナノ構造製造装置、(光)触媒反応装置、有機 合成用カラム等があげられる。特徴としては高い加 工精度を要求される石英基板の作製や極小径ロッド の作製、極小径の穴明けが必要となる実験器具の作 製依頼が増加している。これらの要望に対処するた めに、新たにジグを開発した。また石英管等への試 料封入作業では超伝導材料の依頼が多くあった。超 耐熱鋼など石英管の耐熱温度を超えるような高温で の熱処理が必要な材料も多くなったため、二重封入 した管内の圧力を調整したり肉厚管を使用するなど の技術を用いた。また、触媒材料や燃料電池になる パウダー状の試料が増え、石英管に試料を充填する 際ガラスで特殊なロートを作り挿入するなど様々な 創意工夫が必要な作業が増えている。ガラス旋盤作業3.今後の抱負今後の組織改変や、研究業務の多様化に伴う高度 な支援業務に対応していくためにも、スタッフ一同 は能力開発セミナーなどに積極的に参加しており、 今後とも技術の向上に努めていくつもりである。また、つくば地区における各研究機関の技術者と の技術交流会、見学会、意見交換の場が出来つつあ り、今後とも互いに技術の協力、情報の交換など、 密な関係を続けていく予定である。4生体材料研究センター生体材料研究センターの5年執筆者名:田中順三ユニット内メンバー(50音順):筏義人、五十嵐聡、生駒俊之、板谷純、伊藤倫子、上野耕治、内田義之、太田一史、大塚英典、岡野光夫、小川涼、沖明男、奥 田順子、柿澤資訓、柿木佐知朗、梶山哲人、片岡一則、上村渉、加藤正文、菊池正紀、喜多清、黒澤康紀、黒田大介、黒飛紀美、 甲田裕子、小山弘、小林尚俊、坂田利弥、白井暢子、末次寧、高山剛、田口哲志、竹村太郎、武本真治、立石哲也、谷口彰良、 谷口英樹、陳国平、中村森彦、橋岡真義、花方信孝、広近玲、廣本祥子、藤沢章、藤田隆、堀池靖浩、松田篤、丸山純夫、丸山 典夫、宮永豊、宮原裕二、紋川亮、山本玲子、柚木俊二、和田健一、渡辺博、徐麗明、倪恨美、范紅松、樊渝江、張興棟、John P. Hulme、Rao Sethumadhavan、 Ye Sang Ho1.センター発足の経緯近年、患者の肉体的および経済的負担を低減する ため、メスを使用した外科手術を極力行わずに高い 治療効果を得る低侵襲性治療が行われている。また、 磁気共鳴画像(MRI)診断に代表される低侵襲かつ 高精度な診断技術の発展にともない、身体に負担を かけることなく患部の状態を画像化し、効率よく治 療する新しい技術も開発されている。これらの侵襲 の少ない治療および診断は短期間で患部の治癒を可 能にするため、結果として患者の早期社会復帰の実 現と治療後の快適な社会生活提供に貢献している。 さらに、患者自身の細胞あるいは組織から損傷した 臓器を再生する「再生医療」が次世代の低侵襲性治 療技術として期待されている。再生医療では生体材 料と各種細胞の適合性を高度に制御し、免疫反応や 感染症の心配のない治療を施し、これまでよりもは るかに安全、安心、快適な社会生活を提供する。社 会の高齢化にともない、より高い機能や性能を有す る生体材料、診断デバイスおよび治療技術の開発が 求められている。これらを背景に、生体材料研究センターは、次世 代医療技術の開発ならびに高度医療社会の実現を目 指して、2001年10月15日に設立された。生体材料、 診断技術などの開発には、材料、細胞、遺伝子、バ イオエレクトロニクス、医学などの専門知識と技術 を有する研究者らによる横断的研究が必要である。図1 生体材料研究センターの研究組織 また、研究成果をすみやかに実用化し、我が国の医 療・産業の発展に貢献させるためには、医療機関や 企業との連携が不可欠である。生体材料研究センタ ーは6つのグループと2チームにより構成されてお り(図1)、材料開発から企業との実用化研究まで を1つのセンター内で遂行できることを特徴として いる。2004年3月には物質・材料研究機構並木地区にナ ノ ・生体材料研究棟が完成し(図2)、機構内およ びセンター内のグループ横断的研究、外部機関との 共同研究・人的交流などの促進に貢献した。図2ナノ・生体材料研究棟2.センターの活動経緯高度低侵襲治療に要求される操作性(ハンドリン グ)、安全性、機能性を兼ね備えたセラミックス材 料、金属材料、高分子材料を開発した。運動機能系 疾患治療に使用される人工骨材料として高強度アパ タイト多孔体、骨誘導再生膜、アパタイト/コラー ゲン骨類似複合体などを開発した。高強度アパタイ ト多孔体については企業と共同で実用化展開し、 2003年に厚生労働省の認可を受け販売が開始され た。循環器系疾患治療に使用されるステント素材と して、Niを含まない低アレルギー Niフリーステンレ ス鋼を開発した。臓器疾患治療に使用するために、 低毒性かつ高い接着強度を有する生体用接着剤、人 工角膜材料などを開発した。ドラッグデリバリーシ ステム(DDS)の薬剤担持材料として、多層構造化 セラミックスおよびカルボン酸を修飾した有機酸誘 導体により調製した徐放性マトリックスを開発し た。これらの材料の一部については技術説明会を開図3 生体材料研究センターの産学独連携体制催し、企業へ技術移管した。また、細胞工学と遺伝子工学を用いて、肝臓や歯 の再生のための安全で遺伝子発現を誘起する再生医 療用複合基盤材料とに、生体材料と細胞の相互作用 や医薬品の毒性を簡便かつ高感度に検出できる機能 化細胞を開発した。さらに、バイオテクノロジーと エレクトロニクス技術を融合させ、在宅医療、遠隔 医療システムの中心となるバイオチップを開発し た。このような生体材料および診断技術にとどまら ず、センター内の生体材料学、工学、細胞生物学の 研究者と臨床医学の研究者の専門知識や技術を融合 し、副作用を最大限に抑制しつつ効率よく狙った病 巣部に薬剤を運ぶ、新しいコンセプトのDDS治療技 術開発を行った。一方、我が国の生体材料研究の中核機関となるべ く、国内の企業、理工学系大学、医学系大学と産学 独連携体制を積極的に構築した(図3)。また、生 体材料研究に関する情報交換および人的交流のため に国外の大学や研究機関とも連携し、学会やシンポ ジウムを開催した(6節を参照)。3.生体材料推進事業3 ―1.研究概要老人性痴呆症を誘発する運動系機能障害と心筋梗 塞を誘発する循環器系疾患を効果的に治療し、失わ れた機能を回復させる新規医療デバイスを開発す る。特に、運動機能系では無機系材料を中心に骨・ 軟骨・靱帯・神経組織を再生させる材料、循環器系 では金属系材料を中心に血管拡張ステントなどの低 侵襲性材料の開発を視点にして開発を進める。変形 性関節症・動脈硬化などの次世代治療技術の開発に 貢献する。3 ― 2.年度ごとの成果平成13年度運動機能系材料の開発① 骨系:高強度アパタイト多孔体と骨誘導再生 膜を開発し、企業に技術移管した。また、ア パタイト/コラーゲン骨類似複合体を開発し た。② 軟骨系:生体親和性の高い軟骨再生材料を開 発し、医学応用の検討を開始した。③ 神経・靱帯系:キトサンチューブを開発し、 神経再生を実証した。また、靱帯再生を加速 する材料技術を開発した。循環器系材料の開発① 高窒素鋼のワイヤー ・箔加工技術を開発し、 循環器系デバイスへの加工が可能になった。② Nアモルファス合金の生体模倣環境での化学 的・力学的耐久性を明らかにした。③ 金属材料の血液適合性評価のために、マイク ロチャンネルアレイを試作した。平成14年度運動機能系材料の開発①高強度アパタイト多孔体:泡構造固定化技術 で開発した。多孔体人工骨の治験を終了し た。② 骨誘導再生膜:実用化のための最適化を行っ た。③ アパタイト/コラーゲン複合体:自己組織化 した骨類似構造材料の製造技術を移管した。④ 骨・軟骨界面再生材料としてアパタイト/コ ラーゲン/多糖類複合体を開発し、軟骨細胞 との親和性・細胞外マトリックス産生を示し た。⑤ 氷結晶の成長を制御することで配向性を持っ た多孔体の開発を行った。循環器系材料の開発運動機能系疾患治療材料の創出循環器系疾患対応材料の創出図4生体材料推進事業の概要①低コストで医療用デバイスに応用できるNiフ リーステンレスの新製造プロセスを開発し た。② 生体用アモルファス合金の生体疑似環境での 化学的・力学的耐久性を明らかにした。③ 金属の血液適合性の差を明らかにするため、 マイクロチャンネルアレイチップを開発し た。平成15年度運動機能系材料の開発① 高強度アパタイト多孔体:厚労省の認可を受 け販売中。② 骨誘導再生膜:臨床治験のための生物学的安 全性試験を行った。③骨類似アパタイト/コラーゲン複合体:骨類 似構造材料の多孔質化技術を移管した。④ 骨・軟骨界面再生材料:ヒト幹細胞から軟骨 組織を再生した。⑤ 一次元連通多孔体:配向性を持った多孔体の 開発を行った循環器系材料の開発① Niフリーステンレス綱の生体親和性を調べ た。② 生体用アモルファス合金の動物埋入試験によ り骨形成を確認した。③ 金属マイクロチャンネルアレイチップを開発 し、金属間の血液適合性の差を明らかにし た。人工臓器材料の開発① 生分解性ポリリンゴ酸の合成及びその誘導体 合成を行い架橋剤としての展開を検討した。② 肝細胞のスフェロイド生成技術を開発し機能 を検討した。③ 高分子ミセル遺伝子導入用のキャリアの開発 を行った。平成16年度運動機能系材料の開発① 水酸アパタイト/コラーゲン自己組織化ナノ 複合体からなるスポンジ状多孔体を開発し た。② パルス通電加圧法により、各種アパタイトの 透明焼結体を作製することに成功した。③無機結晶上にシランカップリング剤による修 飾を試み、タンパク質固定化技術を開発し た。循環器系材料の開発① Niフリー合金の最適なCr量の範囲が20から24 mass%の間にあることが明らかになった。② 血液適合性評価金属マイクロアレイにより、 流れ下での吸着タンパク量を高感度で検出し た。人工臓器材料の開発① コラーゲンやPGAなどの汎用生体高分子材料 を用いて機能化ナノファイバーの開発を行っ た。② 基盤パターン作成技術の開発、細胞接着性コ ントロール表面の開発を行った。③In situゲルの調製条件を確立し、医療用接着 剤、軟骨再生材料への応用の可能性を明らか にした。平成17年度運動機能系材料の開発① 骨誘導再生膜の前臨床データを収集し、治験 を年度内に開始予定。② 骨類似人工骨の生物学的安全性を評価した。③配向連通アパタイト多孔体の製造技術を最適 化した。循環器系材料の開発① Niフリー合金の実用化へ向けて、企業への技 術移管を開始した。② 毛細血管モデルである金属マイクロチャネル アレイを用いることにより、流れ下での材料 表面の血液適合性を高感度で評価できること を明らかにした。人工臓器材料の開発① 人工角膜材料の有効性を動物実験で検証し た。② 基盤化スフェロイドの再生医療への展開技術 を開発した。③In situ gelの骨・軟骨に対する有効性を動物 実験で検証した。4.革新的ナノ薬物送達システム(DDS)のための 担体材料開発4―1.研究目標物質・材料研究機構が東京大学、京都大学、北海 道大学等と共同でナノテクノロジー・材料技術を活 用して、薬物送達システムのための担体材料を開発 する。ガン、肝炎等の難治性疾患の効果的な治療を 実現するための革新的な材料技術を確立し、医療側 に提供する。4―2.成果概要c①多層構造化セラミックスの開発亜鉛・鉄・マグネシウムを含有させた金属イオン 担持多孔質キャリアー材料の開発を行った。金属イ オン種・含有量により比表面積が、市販されている 類似材料と比較した場合、約3倍の比表面積をもつ ことが分かった。また、合成した結晶の大きさが 10nm程度と小さく (図5)、生体内に移植しても炎 症を生じさせない安全な材料であることを動物実験 により明らかにした(図6)。インスリン等の長期 徐放化(1週間)に成功した。その結果、糖尿病ラ ットの血糖値を長時間低く抑えることが確認できた (図7)。今後は、2週間以上の超徐放性製剤の実現多層構造化セラミックス薬物の放出 図5長期徐放化セラミックス材料の開発図6 動物実験による安全性の確認図7糖尿病ラットを用いたインスリンの徐放性試験を目指す。また、歯科領域のDDSにおいては、エナメルマト リックスタンパクの主成分であるアメ ロゲニンとハ イドロキシアパタイトの複合体はエナメル上皮細胞 に対し分化を誘導する効果が認められた。②接着性DDSの開発生体高分子および電子吸引性基によりカルボン酸 を修飾した有機酸誘導体から構成される担体材料合 成技術を確立した。具体的には、硬化剤を高純度、 高収率で合成する技術を確立した。本担体材料によ る歯と軟組織との接着性を確認した。さらに抗がん 剤であるアドリアマイシンの担体材料からの徐放性をin vitroで確認した。③有機・無機複合体材料の開発Green Fluorescent Protein (GFP)のベクターを含 有するリン酸カルシウムのナノ粒子を作製し、遠心 により、ウシ関節軟骨細胞への導入を行った。遠心 により遺伝子の導入率が上昇することが観察され た。また、吸入DDS薬剤の開発を行っている。抗酸 化剤ebselenを水溶液化に成功し、現在実際の吸入に 用いるナノ粒子の作成中である。さらに、吸入デバ イス及び徐放化製剤の試みも同時に進行中である。5.リーディングプロジェクト ナノテクノロジー を活用した人工臓器の開発5―1.研究概要人工臓器・人工感覚器開発のための生体適合性材 料の創出研究を行う。生体適合性材料の創出にあた り、その基礎となるマテリアルゲノミクス技術の開 発とその情報を基にして従来のレベルを遥かに超え た生体適合性を持つナノ構造制御生体適合性材料の 開発及び細胞―生体適合デバイス化技術の創出研究 を行う。具体的には、(1)人の細胞外組織と類似し た材料を創製し長期間安全に機能する人工骨、人工 靭帯、人工角膜、人工神経などを実現すための、ナ ノ構造制御技術による生体適合性材料の開発、材 料・外的因子が誘起する遺伝子発現パターンを解析 し、細胞膜を介した生体情報を制御するためのナノ 構造最適化技術の確立、(2)人工膵臓開発のための 要素技術開発、人工肝臓開発のための要素技術開発、 (3)人工臓器を長期機能させる血管化材料技術の開 発を行った。5 ― 2.研究成果①ナノ構造制御技術による生体適合性材料の開発人工骨の研究では、HAp/Col自己組織化ナノ複合 体を合成する際に、出発物質濃度を制御することで HAp/Colの重量比を維持したまま繊維長を制御する ことができた。これにより、引っ張り強度を維持す るための長繊維と隙間を埋めるための短繊維をそれ ぞれ合成することが可能となり、高い引っ張り強度 を持った緻密HAp/Colシートを作製することが出来 た。HAp焼結体の結晶面を制御するために、テンプ レートとして板状結晶であるブラッシャイト (CaHPO4 ・ 2H2O)を用いて、アルカリ溶液中でHAp へ転化させた。これを用いて配向焼結体を作製し、 HApのc面とa面の表面電位を測定したところ、各面 の表面電位が大きく異なっており、細胞接着に適し ているのはa面であると推察された。このことから、 HApのa面が外を向いているHAp/Colナノ複合体は、 細胞接着・侵入には有利であることが推察された。 荷重骨に用いることが可能で血管化を容易にする一 次元連通多孔構造化セラミックス人工骨の開発を進 め、一次元連通多孔体の大量作製法を確立した。連 通孔と平行な方向で、従来の多孔体の1.5から2倍、 垂直方向で同程度の強度を持つ多孔体が得られた。靭帯の研究では、交互浸漬法を用いて手術中に軟 部組織の任意の場所にリン酸カルシウムアパタイト を析出させ、「軟部一硬組織界面」の初期固定強度を 上げ、長期的に解剖学的構造の再生を目指した。家 兎モデルで、術後早期に軟組織と骨との直接的な結 合像が観察され本法の有用性が確認された。山羊モ デル実験を施行し、6週群において実験モデルの正 当性を実証し、運動機能回復状態を経過観察中であ る。神経再生材料の開発では、①再生促進因子の表面 修飾:ラミニンの神経成長促進部位(ラミニンフラ グメント:人工的に合成できるペプチドYIGSR、 IKVAV)をキトサン表面に結合させる技術を開発し た。カニ腱由来のキトサンのアミノ基に4- thiobutyrolactoneを反応させ、反応性の高いチオール 基を導入YIGSR、IKVAVの末端に存在するシステイ ンのチオール基を反応させる事で、カニ腱キトサン の物理的性質、及び合成ペプチドの変性を伴うこと なく、カニ腱キトサンの表面に生理活性物質を共有 結合で固定化した。②キトサンチューブ内の足場 材料の開発:カニ腱キトサンチューブ内における、 神経細胞の足場材料として、キトサンーハイドロキ シアパタイト複合体繊維を開発した。マテリアルゲノミクスの研究では、生体材料上に 細胞を播種し、その細胞からmRNAを抽出し、遺伝 子解析を行う必要がある。簡便かつ高感度に生体材 料と細胞の相互作用を検討するため、機能化細胞 (センサー細胞)の作成を試みた。生体材料の細胞 毒性を検出するのに、ストレスタンパクの遺伝子に 注目した。ストレスタンパク(HSP70B)の発現を コントロールしている遺伝子(HSP70Bプロモータ ー)とホタルやクラゲの発光・蛍光タンパクの遺伝 子を融合し、ストレスに応答して蛍光を発する細胞 を作成した。この発光信号を検出してセンサーとし て用いることが可能であった。また、組織・臓器に 対する材料の生体適合性を遺伝子レベルで制御する ため、三次元培養システムを用いてスキャフォール ドによる遺伝子発現制御を検討するための培養技術 の基礎検討を行った。3次元培養による軟骨組織再 生を行い、15×7 ×3mm程度の大きさの軟骨組織を 試験管内で再生し、これが、ウサギの関節軟骨部で 生着・機能発現をすることを実証した。②人工膵臓、肝臓開発のための要素技術開発膵幹細胞を膵β細胞へ分化させる基盤材料の開発 を試みた。ラミニンとポリリジンが高い膵β細胞接 着活性を有することが判明した。膵臓細胞を集団化 させるため、回転培養装置を用いて生体単位組織の 構築機構に関する知見の収集を行った結果、膵管構 造を含む疑似膵組織の再構築の可能性が明らかとな った。半導体ナノ技術と組み合わせて肝微小単位組 織(スフェロイド等)を作成するため、高分子ブラ シ表面を構築し細胞接着性を検討した。ブラシ表面 のリガンド分子密度やブラシ密度、モビリティーな どの物理化学的特性がリガンド-レセプター結合の 介在する細胞接着性に大きな影響を与える因子であ ることを明らかとした。異種細胞間の情報伝達に関 する遺伝子レベルで解析する方法を確立した。③人工臓器を長期機能させるための血管化技術の開発低毒性の架橋剤を用いたコラーゲンゲル、エレク ロトロスピニングにより調製したPGAナノファイバ ーに対するb-FGFの複合化技術を検討した。上記材 料を一定量のb-FGFに浸漬するのみでも血管の誘導 が増強される可能性がラットを用いた予備的試験で 示唆された。6.主催研究会・学会以下のような国際会議等を主催した。6―1.ナノ ・バイオ融合テクノロジーに関する国 際シンポジウム(FNB2003)主催:ナノテクノロジー総合支援プロジェクトセン ター及び生体材料研究センター日時:2003年3月9日、10日会場:つくば国際会議場(エポカルつくば)招待講演19件、ポスター発表49件の講演が行われ、 2日間で約200名の参加があった。6―2.ナノ ・バイオ融合テクノロジーに関する国際シンポジウム(FNB2004)主催:ナノテクノロジー総合支援プロジェクトセン ター及び生体材料研究センター日時:2004年3月12日、13日会場:つくば国際会議場(エポカルつくば)招待講演15件、ポスター発表25件の講演が行われ、 2日間で約250名の参加があった。6―3. 2nd BMC-NIMSシンポジウム主催:生体材料研究センター日時:2004年3月12日、13日会場:つくば国際会議場(エポカルつくば)特別講演2件、招待講演9件、ポスター講演25件の 発表が行われた。(図7中)6―4.日本バイオマテリアル学会シンポジウム 主催:日本バイオマテリアル学会及び生体材料研究 センター日時:2004年11月15日、16日会場:つくば国際会議場(エポカルつくば)特別講演2件、口頭発表55件、ポスター発表144件 の発表があり、300名近い参加者があった。(図7 右)6―5.第4回アジア生体材料国際シンポジウム (AISB4)及びナノ ・バイオ融合テクノ ロ ジーに関する国際シンポジウム (FNB2004)主催:ナノテクノロジー総合支援プロジェクトセン ター、日本バイオマテリアル学会及び生体材 料研究センター日時:2004年11月16 ― 18日会場:つくば国際会議場(エポカルつくば)9カ国から約250人の参加があり、60件の講演と184 件のポスター発表、25件の講演が行われ、再生医療 やDDSといった分野におけるアジアの著名な研究者 から最先端の研究内容の紹介があった。(図7左)6―6.第1回日中生体材料ミニシンポジウム主催:生体材料研究センター日時:2005年3月24日会場:物質・材料研究機構特別講演44件と招待講演14件の演題があった。中国 四川大学、生体材料研究センター長である張興棟教 授を招待し、日中生体材料研究者は最先端の研究成 果を発表、意見交換をし、有意義なシンポジウムに なった。図7 生体材料研究センターが開催した学会およびシンポジウムの代表例表1国際共同研究覚書締結機関一覧No. 相手国 相手機関 締結 期間研究 ユニット 機構C/P 相手C/P 研 究 課 題1 韓国 慶北大学生体材料研究所 1999 ～2004 生体研 塙隆夫 Kyo-Han Kim, Director 生体材料に関する共同研究2 シンガポール シンガポール大学 2001～2006 生体研 塙隆夫 Prof. Swee-Hin Teoh 生体材料に関する共同研究3 スウェーデン リンコピン 2003 ～2008 生体研 宮原祐二Prof. Peter Varbrand, Deanミクロー及びナノ技術に基 づくセンシング装置微小化4 スウェーデン チャルマース大学 2003 ～2008 生体研 田中順三 塙隆夫Prof. Bengt Kasemo Biomaterials for Medical and Biotechnology Applications5 イギリス インペリアルカレッジ 2003 ～2008 生体研 宮原祐二 Prof. Andreas Manz ミクロ全分析システムの研 究開発6 イギリス ブリストル大学 2003 ～2008 生体研 田中順三 塙隆夫Stephen Mann, PhD, DirectorMechanism of hard tissue formation in living organisms7 台湾 国立ナノデバイス研究所 2004 ～2009 生体研 田中順三 Simon M. Sze Director 生体材料に関する共同研究8 ETH Swiss Federal Institute of Technology Zurich 2004.3.24 ～ 生体研 岸輝夫Olaf Kubler,Ulrich W.Suter,9 四川National Engineering Research Center for Biomaterials, Sichuan University 2004.11.17 ～ 生体研 田中順三 Prpf.Xingdong Zhang Regeneration Materials based on Calcium Phosphates10 上海 ティッシュエンジニアリング研究セン ター 2005.03.31 生体研 田中順三 陳国平Director General Yulin Cao, Prof. Wei LiuTissue Engineering Using Three-Dementional Biomaterials11 イギリス リーズ大学 2005.5.25 生体研 田中順三 小林尚俊John Fisher, Director/ John Egan, ManagerBiological Biomaterials-FromConcept to Clinic12 上海Biomaterials and Tissue Engineering Research Center, Shanghai Institute of Ceramics Chinese Academy of Sciences/上海硅酸塩研究所2005.11.22 生体研 田中順三 Jiang ChangDevelopment of Theree- Dimension Porous Scaffols for Tissue Engineering6―7.ソフトナノテクノロジー国際会議2005 (ISSN2005)主催:北海道大学及び物質・材料研究機構 日時:2005年6月20日、21日会場:北海道大学特別講演2件、招待講演24件、ポスター講演33件の 発表があり、2日間で200名近い参加者があった。7.国際共同研究表1の機関と覚書を取り交わし、人事・情報・交 流および共同研究を進めている。8.生体材料研究の動向・提言 8―1.社会的背景と医療環境日本国民の健康水準は、第二次大戦後の生活水準 の向上や公衆衛生等の社会保障の充実ならびに医療 技術の画期的な進歩が寄与し著しく向上した。総務 省統計局による日本の推計人口は2003年10月1日現 在で127,621千人、世界保健機関(WHO)が2003年 に発表した加盟192ヶ国の健康指標資料によると、 日本人の平均寿命は81.9年と世界最長である。また、 2003年版高齢社会白書は、2002年10月で65歳以上の 人口は3,360万人(高齢化率18.5%)であり、前期高 齢者(65～74歳)が2015年にピークに達し以後減少 に転じるが、後期高齢者(75歳以上)は増加を続け 2020年に前期高齢者を上回ると予測し、更なる高齢 化社会の進行を示唆している。死亡原因の疫学的変 遷は第二次大戦前後でその様相は大きく変化し、戦 前は肺結核等の感染症が高率であったが、1960年以 降は所謂生活習慣病(癌、心臓病、脳卒中)が支配 的な要因となっている。厚生統計協会の医療施設調 査報告によると国内の一般病院総数は8,116施設 (精神病院と結核診療所を除外)であるが、表1に 示すようにベッド数199床以下の小規模病院が全体 の約74%を占め、500床以上の大病院は5.5%に過ぎ ない。また、診療科別では一般外科ならびに整形外 科を5,000病院以上が、消化器科は4,000病院以上が 設置し、以下放射線科、循環器科、小児科の順位と なる。表2 一般病院にあるベッド数とその比率20～99床100～199床200～299床300～399床400～499床500床 以上一般病院数 6,842 4,261 1,515 1,081 531 822比率(%) 45.5 28.3 10.0 7.2 3.5 5.58―2.医療機器の国内市場(株)矢野経済研究所発刊の2004年版市場分析報告 は、医療機器(インプラント、体外循環および関連 装置)34品目54製品での2003年度国内市場規模は約 4,640億円(対前年比+4.2ポイント)と推計してい る。診療科別の市場規模経緯と予測を図7に示すが、 整形外科系(人工関節、内固定材・脊柱固定具等) が1,484億円(32%)と最大であり、対前年比+ 8.2 ポイントの伸びを示した。2004年度は償還価格改定 等の影響を受け伸び率は低下傾向と予測している。 次いで胸部・心臓血管外科系(各種ステント、ペー スメ ーカ、人工心肺・遠心ポンプ、人工腎臓等)は 1,325億円(29%)、対前年比+ 5.7ポイントの伸びを 示し今後も新製品の市場投入により+ 5ポイント以 上の市場拡大が続くと予測している。人工腎臓関連 では主力のダイライザーが血液透析患者の増加や高 付加価値製品の市場投入で対応しているものの、納 入価格の下落により伸び率は低迷状態である。なお、 上位2分野における製品群の年間販売額の80%以上 は海外製品であり、医療機器に対する海外依存度の 高さは他の工業製品分野と大きく異なる。調査会社のシード・プランニングは、再生医療ビ ジネスの将来展望に関する調査(再生医療に参入し ている大手製薬やバイオベンチャーなど39社を対 象)をまとめた。日本の再生医療ビジネスは2006年 に事業化第1号が登場し(培養皮膚が投入され7億 円の市場が形成されると予測)、その後軟骨や角膜 などに広がり培養施設などのインフラ整備も進み、 心筋、神経、肝臓、すい臓まで拡大し10年には800 億円市場になると予測している(2004年7月12日付 日経産業新聞)。将来的な再生医療ビジネスの発展 を睨み、既に取組み中の生体材料研究センターにお ける足場材料や担体の研究を基に更なる研究範囲の 拡大と充実も重要である。図8 診療科別の市場規模経緯と予測8―3.ナノメディシン最近、様々な分野で、原子・分子のサイズや精度 でものを加工(processing)し、組み立て(assembly)、 高次な機能を持つユニットを形成する技術(ナノテ クノ ロジー)が注目されている。とりわけ、先端医 療の分野においては、薬物や遺伝子の体内分布を時 間的・空間的に正確に制御する事によって、「必要 な時(timing)に、必要な部位(location)で、必要 な薬物・遺伝子治療(action) 」を最小限の副作用で 達成する高精度ピンポイント治療に対する関心が高 まっているが、この目的を首尾良く達成する為には、 ナノスケールで精密設計された高機能化薬物・遺伝 子運搬体(ナノキャリア)の開発が最重要とも言え る課題である。特に、遺伝子治療との関連では、副 作用や危険性が指摘されているウイルスベクターに 取って代わる合成ベクターの開発競争が米国をはじ めとする各国のベンチャー企業や大学を中心に過熱 状態の様相を呈しつつある。一方、上記の様なナノ 治療とともに、体内に潜むがん細胞を的確に検出し、 がんの早期発見を可能とするイメージング技術(ナ ノ診断)にも熱い期待が注がれている。イメージン グに関しては、空間的に異常部位を検知する解剖学 的イメージング(anatomical imaging)のみならず、 体内の特定部位における何らかの分子レベルでの変 化を時系列的に検出する機能的イメージング (functional imaging)も最近、注目されている。この 様な機能的イメージングは、例えば、腫瘍部位にお ける薬物の効果をがん細胞のアポトーシス検出を通 じて速やかに判定したり、あるいは、外科的手術に 先立つイメージング剤の投与と三次元画像処理技術 との組み合わせによって、悪性部位の摘出範囲を特 定したりすることに大いに役立つことが期待され る。in vivoのナノ診断・ナノ治療は「ナノ メディシ ン」のまさに、根幹をなすものであり、我が国を含 めて各国で急速にプロジェクト化が進行しつつある が、直近の話題としては、米国国立がん研究所 (National Cancer Institute, NCI)が認可機関である米 国Food and Drug Administration (FDA)との連携の 元で昨年より10年計画でスタートさせたCancer Nanotechnology Plan (CNPlan)が挙げられる。この CNPlanにおいては、医工学連携に基づく 5つの中核 研究センターを全米の大学から公募し、最先端ナノ テクノロジーを効率良くがんの診断・治療へと展開 することによって、今後10年間で飛躍的にがんによ る死亡率を下げようという意欲的なプランが策定さ れている。同時に、人材養成にもかなりの力点がお かれており、ナノテクノロジーを駆使出来る医療従 事者と最先端ナノテクノロジーの医療応用を速やか に実施出来る理工学研究者を育成するプログラムが 準備されている。8―4.生体材料の国際標準化VAMAS Steering Committeeが2005年 5 月に英国 National Physical Laboratoryで開催された。そこで新 たに組織工学用足場材料のTechnical Working Area、 TWA30が認められ、NIMS-BMCが議長になった。国際標準機構(ISO)は、参加国は146ヶ国を数え、 電気技術以外のさまざまな分野での国際標準化に取 り組んでいる。ISOの基本原則は、幅広いコンセン サス、全地球規模、そして全ての利害関係者の自由 な参加(ボランティア)であり、分野別に188の技 術委員会(Technical Committee : TC)が結成されて いる。TC1のねじ規格、TC4のベアリング、TC17の 鉄鋼など、基本的な機械要素、材料が歴史的にも古 く若い番号となっており、医療関係では、TC106の 歯科製品、TC150の外科用インプラント、TC170の 外科用器具、TC194の医療器械の生物学的安全性、 TC210の医療機器の品質管理などがある。各TCは、 技術専門家(エキスパート)と国の代表者で構成さ れ、標準化の個別案件は各TCで審議され、最終的 には1国1票の投票で決定される。生体材料は、TC150 :外科用インプラントの SC1:材料において審議されており、その他合計6 つの小委員会(subcommittee : SC)が結成されてい る(図9)。TC150の事務局は、ドイツ工業標準局 (DIN)に置かれており、投票権を持つ参加国が21 ヶ国、オブザーバーが17ヶ国で構成されている。米国ではASTM (American Society for Testing andMaterials)がセツション F04 : Medical Devices を結成 し、生体材料も含めて精力的に標準化に取り組んで いる。最近特に国際協調を強力に推し進めASTM Internationalとして米国以外の国との連携、外国メ ンバーの参加を歓迎している。また、1982年のベル サイユサミット会議で合意された新材料と標準に関 するプロジェクト(VAMAS)でも生体材料が取り 上げられており、サミット7ヶ国が参加するプレス タンダードの活動という位置付けで定期的な会議が もたれている。図9 ISO/TC150の構成8―5. NIMS生体材料研究センターの役割と提言欧州諸国及び米国は、製品や技術の実用化、産業 化のためには標準化が必須という認識の上に立っ て、世界の標準化をリードしている。新しい生体材 料、あるいは医療機器が開発され、広く人類の医 療・福祉に貢献するためには、その材料や製品、あ るいは技術が標準化され、それによってメーカー、 ユーザーとしての医療関係者そして患者といった関 係者全ての全世界的な規模での共通の認識と理解を 得ることが必要であり、さらにそれらの共通認識の 基盤上に新たな開発が進められる。特に命と健康に 直結する分野であるだけに、安全性や有効性に関す る全世界的に共通な認識と理解が重要となってきて いる。図10に示すようにNIMS生体材料センターとして これまでに研究開発してきた新しい生体材料の実用 化とグローバルな普及をはかるためには、これらの 国際標準化を推し進める必要があり、また従来にも 増して今後は生体材料の国際標準の動向を常にワッ チしながら、世界の生体材料開発のトレンドを国際 標準という指標で把握していく必要がある。そのた めにもISO,VAMAS及びASTMのup to dateの情報の入 手と積極的な参加を推進していく必要がある。図10 NIMS生体材料研究センターの役割5.桜地区正門photograph : National Institute for Materials Science組織再生材料グループ田中順三、生駒俊之、太田一史、菊池正紀、早乙女進一、坂内英典、佐藤忠朝、白井暢子、末次寧、外川賢、范紅松、紋川亮、 柚木俊一、Rigozzi Samuela、Ye Sang Ho1.研究目的本グループは、高齢社会・高度医療社会において 求められる生体材料、特に損傷した運動機能系組織 を回復させるための再生医療用材料の開発を目的と する。生体材料に求められる機械物性・生化学性能 等の課題は、主に有機高分子と無機化合物からなる 新規複合材料の創生により解決を図る。自己組織化 による有機無機複合系の構築を材料科学的に制御可 能なプロセスとして捉え、モデル実験系を用いた有 機無機界面の解析、生体活性な微形態の制御技術の 開発などと併せて、複合素材を創出する合成技術に ついて検討する。2.成果(1)人工骨・軟骨材料の開発に関する研究① 高強度多孔質人工骨:泡セラミックスの技法に より、連結した開気孔を持つ高強度アパタイト多孔 体を作製した。in vitro/in vivoの実験により、細胞 が気孔内に侵入し材料が骨組織と一体化することを 明らかにした(図1)。大阪大学付属病院で治験を 終了し(2002年)、製造承認を得て企業より販売を 開始した(2003年～)。②骨類似材料:水酸アパタイト結晶とコラーゲン 繊維を自己組織化させ、骨と同じナノ構造・組成を図1アパタイト多孔体をラット皮下に埋入して8週 後の組織像。V :血管 B :骨芽細胞 C :骨 細胞もったスポンジ状人工骨を合成することに成功した (図2)。凍結温度・速度によって気孔径・気孔率を 制御することが可能であった。本多孔体はコラーゲ ン単体(スポンジ)よりはるかに優れた高い弾性を 示した。さらにスポンジ状多孔体をウサギ脛骨に埋入して 骨組織反応を調べた(図3)。スポンジ状多孔体は 骨リモデリング代謝によって吸収された。本当の骨に変る人工骨(骨補填材)として、企業 に技術移管を終了した(2005年)。③ 骨・軟骨界面材料:水酸アパタイト・コラーゲ ン・多糖類(ヒアルロン酸・コンドロイチン硫酸)図2 アパタイト/コラーゲンのスポンジ状複合多孔体図3ウサギ脛骨に埋入して2週間後のアパタイト/コ ラーゲンスポンジ。気孔内に細胞が侵入し、一 部骨組織ができているを用いた新規複合体を開発した。アパタイトと有機 高分子を自己組織化することにより、高い透明度と 高い強度(87MPa)を実現した。さらに動物実験に より骨・軟骨組織を接合できることを実証した。ナノ薬物徐放システム(ナノ DDS)プロジェクト (2004～2008年度)の担体として、生活習慣病治療 への応用のための研究が進行中である。④新規キトサン系材料:キトサンとアパタイトを 複合化して、柔軟で耐熱性が高い新材料を開発した。 ビーグル犬の大腿骨内に埋入した結果、複合体の吸 収と同時に新生骨の形成が起こることを確認した。地域新生コンソーシアム(2005～2006年度)に採 択され、神経再生材料として展開している。(2)有機・無機界面の解析及び生体由来材料に関す る研究。① 界面構造の解析:有機単分子膜の上に炭酸カル シウム結晶を析出させ、in situで赤外線スペクトル を観察した。基盤と炭酸カルシウム結晶の方位関係 の変化を明らかにした。② 魚コラーゲンの開発:魚類のウロコは、コラー ゲン繊維の配向方向が90度ずつ交互に回転した層状 構造をもっており、無機成分のアパタイトもこれに あわせて配列していることを示した(図4)。また、 ウロコから高純度コラーゲンを抽出し、魚種による アミノ酸配列の違い、およびコラーゲンの変性温度 の変化との関係を明らかにした。魚コラーゲンは人獣共通ウイルスのリスクを避け るために有望視され、化粧品への応用も期待される (2005年JST独創モデル研究に展開)。図4焼成して有機物成分を除去した魚類ウロコの内部 構造。アパタイト結晶が格子状に配列している③タンパク固定化:無機結晶上にタンパク質を固 定化する技術を開発するため、生体無機モデル物質 として水酸アパタイトの焼結体を作製し、表面処理 方法を最適化して各種タンパク質の吸着挙動を調べ た。アミノシランによるカップリングによって長さ 約40nm程度のフィブリノーゲン分子を高イオン濃 度水溶液中で吸着させることに成功した(図5)。図5 水酸アパタイト表面に固定化したフィブリノー ゲン分子(原子間力顕微鏡位相差像)(3)無機素材の微構造制御に関する研究① 一方向連通多孔体:氷の結晶成長を利用して、 一方向に配列した連通孔をもつアパタイト多孔体を 開発した(図6)。凍結速度を調節して気孔径を制 御し、細胞・血管の侵入に適した組織を構築した。 微量成分の添加により結晶粒成長を制御し高強度化 を達成した。企業に技術移管を開始した(2005年)。② 触媒材料の開発:金属塩水溶液と多糖類の一種 であるデキストランを混合し、ペースト状にして焼 成することにより、多孔体を開発した(図7)。従 来の金属多孔体と比較して大きな比表面積を有す る。金属酸化物のナノ粒子を添加して触媒材料とし ての活性を高めることにも成功した。図6氷の結晶成長によって作製した1方向連通多孔体図7 酸化銅微粒子を均一に分散させた銀多孔体。③DDS担体の開発:スラリーの乾燥過程を制御す ることにより、アパタイトの多孔質球形微粒子を合 成した(図8)。さらに表面改質法を検討し、タン パク質薬剤を担持させることに成功した。ドラッグ デリバリー材料としての応用が期待される。図8アパタイト多孔質球形微粒子の透過電子顕微鏡像機能再建材料グループの5年黒田大介、黒飛紀美、田中順三、武本真治、塙隆夫、廣本祥子、丸山典夫、山本玲子1.グループ発足の経緯生体材料の素材として、金属材料、セラミックス 材料および高分子材料が使用されている。これらの 材料の中で、金属は他の材料と比較して優れた力学 的強度および靱性を有しており、生体材料として最 も力学的信頼性の高い材料である。しかし、生体内 は腐食、疲労、摩耗などが複雑に絡み合った特殊環 境であるため、生体内で長期間安心して使用できる 金属系生体材料および材料の生体内挙動を高精度で 評価できる技術の開発が強く望まれてきた。また、 金属材料から溶出する金属イオン、摩耗粉などが生 体に対して毒性を発現したり材料自身の劣化の要因 となるため、より高い生体適合性を有する金属材料 の開発も重要である。そこで、合金設計、表面改質、疲労特性評価、腐 食特性評価、生体適合性評価などの専門知識と技術 を有する研究者が金属系生体材料についての横断的 研究を推進するために、機能再建材料グループを発 足した。2.グループの活動経緯2―1.Niフリーステンレス鋼の製造技術の開発素材が高価、成形が困難など、これまでNiフリー ス テン レス鋼の実用化を妨げてきた問題を解決する ために、軟らかい状態で製品形状に成形し、最終形 状製品にNを吸収させることで強度、耐食性、生体 適合性を改善する低コストかつ簡便なNiフリーステ ンレス鋼の製造技術を開発した。N吸収前の状態で、 線材、板材などの形状に容易に成形・加工できた。 これを1200℃で0.5～72時間のN吸収を施すことによ り引張およびねじり特性が飛躍的に改善され、生体 材料に用いられている従来のステンレス鋼よりも優 れた力学的特性を示した(図1)。また、力学的強 度だけでなく、 生体材料として要求される耐孔食 性、細胞適合性および生体適合性も改善された。図1N吸収したNiフリーステンレス鋼と既存の生体用 ステンレス鋼の引張特性現在、歯科部材、線材、板材などを製造する国内 企業の生産設備を利用してそれら部材を試作すると ともに(図2)、低コスト・量産化技術を検討中で ある。図2新技術で試作した歯列矯正用バッカルチューブ2―2.細胞培養下疲労試験装置の開発金属系生体材料の疲労特性を細胞培養下で長期間 測定できる評価技術を開発した(図3)。予め表面に 細胞を付着させた試験片を細胞培養容器内に挿入 し、30℃～40℃の範囲で温度調整した培養液を循環 させることで生きた細胞に栄養分を補給しながら疲 労特性を長期間評価することができる(図4)。この 技術により、金属系生体材料の耐久性データの信頼 性向上、新規生体用デバイスの適切な設計基準設定 が可能になる。今後、信頼性・安全性のより高い生体材料の開発 に明確な指針を与えることが期待される。図3 細胞培養下疲労試験装置図4疲労試験中に試験片表面で増殖したL929細胞2―3.細胞培養下電気化学測定装置の開発表面で細胞を培養しながら金属の電気化学測定を 行う技術を開発した(図5)。本技術により、①細胞 の存在により、生体用金属材料の耐食性が変化する こと、②細胞および細胞外マトリックスであるコラ ーゲンの存在で材料界面での拡散挙動が変化するこ と、③金属材料表面で培養した細胞近傍のpHが低 下することなどを明らかにした。本技術を用いて生体内での金属材料の腐食挙動を 解明することで、材料の生体外評価環境の至適化に 寄与する。これは、動物実験の減少に繋げることが できる。図5 細胞培養下電気化学測定セル2―4.血液適合性評価装置の開発金属と血液細胞との相互作用(血液適合性)を簡 便かつ短時間で評価できる技術および評価装置を開 発した(図6)。毛細血管モデルである微細流路(マ イクロチャネル)を有するSi基盤上(図7)に種々 の金属を被覆あるいは目的とする金属上に微細流路 を直接加工し、ヒト全血を流れ下で被覆金属と一定 時間接触させることにより血栓形成反応を評価す る。Siを基準としてAu、Cr、Tiの血液適合性を評価 した結果、生体に対して安全性が高いと考えられて いたAuでは顕著な血栓形成が認められた。他の金 属でもSiよりも高い血栓形成が認められた。本法に より、流れ下における材料表面の血液適合性を高感図6血液適合性評価装置度で評価できることが明らかになった。今後、金属系生体材料を使用する患者に対して最 適かつ安全な金属材料を選択するための検査技術としての利用が期待できる。図7 マイクロチャネルアレイ3. 5年間の成果2001 2002 2003 2004 2005新聞発表 3 4 6 4 10原著論文 4 15 12 8 7特許出願 0 3 4 1 5特許登録 0 2 0 1 0研究会開催 5 5 5 5 54.金属系生体材料分野の研究動向と展望整形外科領域で使用される医療器具全体に占める 金属材料の割合は70%程度であり、金属材料は生体 材料分野で不働の地位を維持している。金属材料が 使用されている部材にセラミックスあるいは高分子 材料を使用する試みも行われている。しかし、毒性 やアレルギー性のない金属元素のみで構成されるチ タン合金、ステンレス鋼、Co-Cr合金などが国内外 で開発されると同時にステント、塞栓コイルなどの 循環器系疾患治療器具としての需要が急速に増加し ている。そのため、生体材料分野での金属材料の必 要性は依然として高い。今後は、それぞれの使用部位に求められる特殊な 性質を有する新材料の開発と適用部位に応じた性能 評価技術の確立が望まれる。例えばステントでは、 血管の形状に沿わせるための柔軟性と閉塞部位を拡 張するための剛性が求められる。ステントを患部に 運ぶガイドワイヤーには、血管追従性とトルク伝達 性が望まれる。結紮に使用されるワイヤーでは、ね じり結紮に耐えうるねじり強度が必要である。これ らの特性に加えて、使用中に血栓形成や腐食による 金属イオンの溶出を抑制する表面制御技術の開発も 不可欠である。また、評価手法では血流、拍動、細 胞、タンパク質などを考慮することが重要である。生体分野での新材料や評価技術の開発には、中立 性や継続性のある研究体制の構築が望まれる。人工臓器材料グループの5年片岡一則、小林尚俊、大塚英典、田口哲志、柿澤資訓、松田篤、梶山哲人、板谷純、里見智美、舘野加代子、本田貴子、古川早 苗、森作員子、加藤正文、五十嵐聡、上野耕治、藤田隆、伊藤倫子、柿木左知朗、佐藤春香、YANA Dewi1.研究概要高分子材料は、失われた生体組織の機能を維持す るために用いられており、致命的な疾患も、人工心 臓や肝臓あるいは人工皮膚などの人工臓器があれ ば、治療することができる。失われた生体組織の再 生も高分子材料によって支えられている。人工臓器 は、それぞれの臓器が持っている機能を復元するこ とが最も重要な役割であるが、生体は埋め込まれた 材料を異物と認識すると、それを排除しようとする。 そこで、本研究では、異物反応を起こさず、長期間 にわたって生体と融合する人工臓器材料の開発を、 さらに組織再生を目的とした細胞機能の分化誘導手 法について、下記の各課題に従って進めた。図1 細胞接着と分化・増殖能の制御2.生分解性ポリリンゴ酸及びその誘導体の合成水溶性で生体内分解吸収性高分子であるポリリン ゴ酸及びその誘導体の高分子量体の重合方法を開発 し、生分解性架橋剤等の開発を行った(図2)。図2水溶性生分解性架橋剤の合成3.神経再生カニの腱を出発材料とした神経誘導デバイス上へ の新規細胞接着因子の固定化法を開発した(図3)。図3神経因子固定化4.細胞スフェロイドアレイ基盤パターン作成技術の開発、細胞接着性コント ロール表面の開発を行った。肝細胞機能チップとし ての性能を評価した結果、薬物代謝活性が2週間以 上維持されることを確認し、空間的に規格化された 微小組織塊を作り上げる技術の優位性が検証され た。さらに、このような基板パターン作成技術を軟 骨細胞に応用すると、分化機能を亢進しながら成長 するスフェロイドが得られ、再生医療でのコア技術 となることを示した(図4)。図4 ナノ厚さを有する高分子ブラシ表面のマイクロ パターニングで作成する細胞アレイ培養基板5.長期安定界面創出のための新規分子設計これまでの研究結果から、メルカプト基による単 点型の金修飾では大気中室温下、高分子修飾表面の 劣化によって性能維持が不可能であることが解決す べき問題であった。そこで、ピリジンユニットの多 点吸着によって長期安定な金基板修飾を可能とする PEG―ポリピリジングラフト共重合体を合成した (図5)。本目的を達成するためのグラフト共重合体 の必要条件は、リガンド分子の連結に用いる官能基 を親水性PEG連鎖末端に定量的に配し、かつ金・銀 などの金属表面との多点結合によって安定に表面に 固定化できるピリジン連鎖を有することである。こ の要求を効率良く達成するため、メタクリロイル末 端PEGマクロモノマーとメタクリロイルピリジンモ  ノマーとの共重合比を任意に変化させた共重合体を 合成し、PEGブラシ界面構築の最適化を達成した。図5多点吸着により安定なバイオセンシング界面を 与える新規高分子合成6.新規高分子系生体材料及びデバイスの開発コラーゲンやPGAといった汎用生体高分子材料を 用いて機能化ナノファイバーの開発を行った。機能 化したナノファイバーは角膜再生の足場材料などへ の展開が可能であった。PGAナノファイバーが家兎 の角膜実質細胞と強い親和性を持つことが見出され た(図5)。図8 ナノ微粒子材料の細胞への取り込み図6 PGAナノファイバー上に付着した家兎角膜実質 細胞のSEM像7.細胞組み込み型ゲルマトリックスの開発三次元マトリックス中に細胞を生きた状態で組み 込むため、ポリエチレングリコール骨格の側鎖に活 性エステル基を有する四官能性架橋剤を用いてアル カリ処理コラーゲンを軟骨細胞存在下でin situ調製 した。マトリックス内の細胞は、生体軟骨と同じよ うにマトリックス内部に均一に分散しており、1週 間後も軟骨特有の丸い形状を保持していた。 Safranin-O陽性の部位が細胞の周りに観察されるこ とから、軟骨細胞は生きた状態でプロテオグリカン (特にChS)を生合成していることが明らかとなっ た。9.有機酸誘導体と生体高分子から構成される医療 用接着剤の開発現在臨床で使用されている医療用接着剤には、接 着強度と生体親和性に一長一短があり、両者を併せ 持つものが存在しない。そこで、クエン酸などの有 機酸から合成した誘導体を硬化成分とし、コラーゲ ンなどの生体高分子を接着成分とする2成分系の医 療用接着剤を開発した。この接着剤は、生体組織に 浸透し(図9)、高い組織接着力と生体親和性を示 すことが明らかになった。図9接着剤の軟組織への浸透10.マイクロポーラスPVA-Hap-Col複合体の作製 法の確立人工角膜デバイスの辺縁部材料としてPVA―アパ タイト複合体ゲルへの多孔構造を導入する方法の検 討を行った。結晶性の異なるアパタイト微粒子をゲ ル内に練りこみ酸で後処理を行うことで多孔構造を 導入することが可能であった(図10)。図7 マトリックス内に組み込まれた軟骨細胞による プロテオグリカンの産生(赤色)8.遺伝子デリバリー機能を有するナノ微粒子材料 ブロック共重合体(ポリアスパラギン酸―ポリエ チレングリコール、PEG-PAA)を合成し、その存 在下でリン酸カルシウムの結晶を成長させることで 無機―有機ハイブリッド粒子を形成させることに成 功した。粒子は、細胞外の環境では安定で細胞内で 溶解する性質を有することが示された。図10.多孔構造を持つPVA-HAp複合体 細胞基盤技術グループの活動をふりかえって谷口彰良、今泉由美恵、奥田順子、郭立坤、徐麗明、高山剛、竹澤道昭、陳国平、津田行子、樊渝江、和田健一細胞基盤技術グループは生体材料研究センター内 に平成14年度からスタートした新しいグループで す。生体材料研究センターは当初無機と金属材料を 対象とした研究グループしか存在しなかったため、 材料と細胞の相互作用や細胞そのものを材料として 研究するグループとして発足した。当グループでは、 細胞に関連したさまざまな研究開発を行っている。 その一つとして生きた細胞を用いた新しいセンサー の開発を目指している。細胞はさまざまな環境のわ ずかな変化に敏感に応答する能力を持っている。こ の対応能力を生体材料、医薬品、食品添加物などの 安全性評価に応用すれば、従来技術では不可能であ った高感度な検出法が可能になる。また、本グルー プでは細胞を遺伝子工学的、細胞工学的、材料工学 的に制御し環境変化に呼応して変化する細胞と、細 胞が集積化した機能の高い細胞集団の開発を目標に 研究を行ってきた。1)遺伝子工学的手法:環境変 化に呼応して変化する特定の遺伝子の発現をクラゲ の蛍光タンパクであるGFPに置き換えて検出する。 この方法により、遺伝子の発現の変化を高感度に視 覚化、定量出来る。2)細胞工学的手法:培養細胞 は増殖が盛んであるが、機能は著しく低下している。 そこで、細胞シートを用いて細胞を集積化し、機能 化した組織集団を作成する。3)材料工学的手法: 細胞を材料工学的に3次元的に集積化し、この技術 を用いて試験管内で組織に近い状態を作り、機能化 組織の再構成を目指している。また、遺伝子工学的 手法を用いて作成した組み換えタンパクを用いて、 歯の再生を目指した研究も着手している。1.センサー細胞の開発図1ストレスに応答して蛍光を発する細胞Wada et al., Biotech. Bioeng. 92,410-405 (2005)ストレスタンパク(HSP70B')の発現をコントロ ールしている遺伝子のプロモーター(遺伝子のスイ ッチ)とホタルやクラゲの発光・蛍光タンパクの遺 伝子を融合し、ストレスに応答して蛍光を発する細 胞を作成した(図1)。この細胞にストレスを与え るような刺激をするとホタルやクラゲの発光・蛍光タンパクの遺伝子のスイッチをオンにして発光・蛍 光を発する。細胞毒性を示す物質として塩化カドミ ウムを用いてこの方法の感度を検討した。その結果、 既存の細胞死を用いて細胞毒性を判定する方法より 5倍以上高感度だった(図2)。また、この方法は 細胞が死ぬ前に測定できるため、細胞死を判定する 方法より迅速に判定できる。今後はマイクロアレイ やマイクロ流路の技術を用いて、ハスループットな システムを構築していきたい。図2 機能化細胞の塩化カドミウムに対する感度2.細胞の重層化による機能化組織の開発図3肝―内皮重層化培養細胞は体内ではさまざまな機能を発揮するが、い ったん、この細胞を単離し、試験管内で培養すると その機能は著しく低下する。たとえば、肝細胞は体 内ではさまざまな物質を代謝したり、血清タンパク を合成する能力をもっている。しかし、試験管内で 単独培養した肝細胞はこれらの能力が著しく低下す る。この機能低下の原因の一つに細胞集団同士の相 互作用の欠落が考えられる。肝細胞の場合、in vivo では内皮細胞と相互作用することで肝臓の機能を維 持していると考えられる。そこで、このような相互 作用を試験管内で再現するシステムが必要になる。 我々は細胞シート工学を用いて試験管内で異なった 細胞集団同士を重層化するシステムを開発した。ラット肝細胞の上に温度感受性培養皿で作成した内皮 細胞シートを重層化した試験管内での肝小葉体モデ ルを作成した(図3)。その結果、アルブミンなど の血清タンパクやApoA-Iなどの脂質代謝に関係する 遺伝子の発現が上昇してた(図4)。以上の結果は 肝実質細胞と内皮細胞との相互作用が肝実質細胞の 機能を活性化していることを示している。今後は試 験管内での薬物代謝試験などに応用していきたい。図4 重層化培養での肝特異的遺伝子の発現上昇Kurosawa et al., Tissue Eng.11,1650-1657 (2005)3.細胞の3次元培養による活性化軟骨細胞や間葉系幹細胞を生体吸収高分子の多孔 質基盤材料中で培養し、三次元培養による細胞の遺 伝子発現の影響を検討した。多孔質材料中で培養し た細胞は関節軟骨細胞の遺伝子の発現が良好だっ た。この材料は軟骨再生材料として期待される。図5 材料による細胞の3次元化4.歯の再生を目指した材料開発歯の再生のための材料開発は歯の発生時に発現す る物質と環境を再現することが重要であると考えら れる。そこで、当グループでは歯の発生時に大量に 発現するアメ ロゲニンを用いた歯の再生材料開発に 着手した。昆虫細胞系で発現させた組み換えアメ ロ ゲニンをHAT-7細胞に添加し分化関連遺伝子の発現 を検討したところ、内在性アメ ロゲニンmRNA発現 が100倍程度増加した(図6)。しかし、アメ ロブラ スチンなど他の分化関連遺伝子の発現には影響を与 えなかった。したがって、この発現増加はアメ ロゲ ニン遺伝子に特異的であると示唆された。ルシフェ ラーゼアッセイの結果からアメ ロゲニンタンパクよるアメ ロゲニンmRNAの発現増加にはアメ ロゲニン プロモーターの活性化を伴わないことが明らかにな った。したがって、アメ ロゲニンmRNAの発現増加 は転写以降で制御されていると考えられた。そこで、 アメ ロゲニンタンパクのアメ ロゲニンmRNAの安定 性に与える影響を検討したところ、アメロゲニンの 添加よりアメ ロゲニンmRNAの安定性が高められ た。さらに、FITCで標識した組み換えアメ ロゲニン タンパクはその一部が細胞内に再吸収され、細胞質 に局在していた。以上の結果から、アメ ロゲニンタ ンパクは細胞質で自身のmRNAの安定性を高めるこ とによって、mRNAの発現量を増加させていると考 えられた。歯の発生過程においてエナメル上皮細胞 はアメ ロゲニンを大量に分泌する必要があるが、以 上のようなメカニズムによりアメ ロゲニンタンパク を大量に発現していると考えられる。以上の結果、アメ ロゲニンは歯の上皮細胞の分化 を促進する効果が認められた。図6 アメ ロゲニンによるHAT-7細胞の遺伝子発現に 与える影響Xu et al., J.Biol.Chem. in press.5.最後に当グループはこの中期計画で基盤的技術を開発し てきた。次の中期計画では、この技術をナノバイオ の分野に展開していきたいと考えている。バイオエレクトロニクスグループの活動をふりかえって宮原裕二、花方信孝、坂田利弥、竹村太郎、森田浩美、飯田利江、井上裕美1.はじめにバイオエレクトロニクスグループは平成14年10月 に設立され、3年あまりの間研究活動を行ってきた。 バイオテクノロジーとエレクトロニクス技術を融合 させた、新しい生体分子検出・解析技術の研究・開 発を目標としている。血液などの生体試料の成分を 調べることにより、疾患や健康状態をチェックした り、薬の効果や副作用を検査したりするバイオチッ プを開発し、IT技術と組み合わせて、在宅医療シス テムの実現を目指している。この3年あまりの間は特に遺伝子解析デバイスの 研究を中心に、生体分子と半導体材料とのインター フェース、 遺伝子解析手法、信号変換機構などの基 盤技術の研究・開発を立ち上げてきた。その結果、 現在までに遺伝子トランジスタ、高分子光検出デバ イス、界面機能性分子、遺伝子発現解析技術などを 開発した。2.グループの活動経緯(1)遺伝子トランジスタ図1に示すように電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor, FET)のゲート上に DNA プロ ー ブ を固定化した遺伝子トランジスタを提案し、DNAの 特異的ハイブリダイゼーションを直接電気信号に変 換して検出できることを確認した。図1遺伝子トランジスタの概念遺伝子FETの応答とDNA濃度との関係を図2に示 す。FETのしきい値電圧の変化を調べた結果、約 100fM (フェムトモル、10-13 M)の濃度まで検出で きることを確認した。これは分子数にして約6×106 個であり高感度測定が可能であることがわかった。 また、蛍光色素として用いられるインターカレータ ーが正電荷を有することに着目し、遺伝子トランジ スタのゲート上で形成された二本鎖DNAの検出に応 用した結果、一塩基の違いを高精度に検出できるこ とを実証した。プライマー伸長反応による一塩基多型(SNP)解 析では、DNAプローブ末端がSNP部位になるように 塩基配列を設計し、遺伝子トランジスタのゲート上 で伸長反応を行わせた。伸長反応により合成された 電荷の増加分の検出により高精度SNPタイピングが できることを確認した。図2遺伝子トランジスタの感度上記結果に基づき、ターゲットDNAとのハイブリ ダイゼーション後、dATP, dGTP, dCTP, dTTPのそれ ぞれを順次DNAポリメラーゼとともにゲート表面に 添加し、一塩基伸長反応の有無をしきい値電圧の変 化として調べた。添加した塩基がターゲットDNAと 相補的であれば伸長反応が進み塩基が合成され、し きい値電圧が変化する。相補的でなければ伸長反応 が進まないため、しきい値電圧は変化しない。この 原理に基づき、DNAシーケンシングを行うことがで きることを実証した。(2)高分子材料を用いた光検出バイオデバイスディスポーザブルバイオチップへの応用を目指 し、高分子材料のマイクロ ・ナノ加工プロセス技術 を開発した。高分子材料(ポリウレタン、ポリジメ チルシロキサンなど)を基板上に展開し、粘性、硬 化緩和時間などの材料パラメーターを最適化し、急 冷転写技術を開発した。この技術とフォトリソグラ フィー技術と組み合わせて、図3に示すようにマイ クロメーターサイズのピラー構造とナノメーターサ イズの構造(ピッチ300nm、深さ70nmのグレーティ ング構造)を同一基板上に製作するプロセスを開発 した。図3高分子材料のマイクロ・ナノ構造(3)DNA/半導体材料インターフェース分子生体分子の配向性制御・安定固定化技術の開発を 目指し、熱力学的効果に基づいた多点結合型機能性 分子に関する研究を推進している。基板表面に生体 分子の配向性を制御して固定化するために、図4に 示す三脚型界面機能性分子を設計・合成した。炭素 原子の正四面体構造の4つの頂点のうちの3つにチ オール基を結合配置し、他のひとつにカルボキシル 基を有する官能基を配置した。チオール基3点で金 基板表面に結合され、残りのカルボキシル基を利用 してオリゴヌクレオチドを固定化する構造である。 炭素原子の正四面体構造の骨格を利用しているた め、オリゴヌクレオチドは基板表面に垂直に配向し て固定化することができる。また、1個のオリゴヌ クレオチドプローブに対してチオール基3点で基板 表面に固定化されるので、1点での固定化より基板 との結合力が強く、オリゴヌクレオチドプローブの 安定性が向上する。図4 三脚型界面機能性分子上記界面機能性分子を金基板上に固定化し、その カルボキシル基にアミノ基で修飾したオリゴヌクレ オチドを結合させ、1点結合型分子と安定性を比較 した。その結果、図5に示すように基板表面への固 定化強度が2～3倍向上することを確認した。図5 三脚型界面機能性分子の安定性(4)大規模遺伝子発現解析In vitroにおける生体材料の評価のために細胞特異 的な遺伝子マーカーが用いられている。本研究では、 細胞内で発現している遺伝子をDNAマイクロアレイ により網羅的に解析することにより、生体材料の物 理化学的特性の違いにより変動する遺伝子群を抽出 し、その結果を新たな生体材料設計にフィードバッ クすることを目指している。この目的を達成するた めの最初のステップとして、図6に示したマウスの 各遺伝子に特異的な29,184個のアンチセンスオリゴ ヌクレオチドをスライドガラス上に固定化したDNA マイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現解析用ア ルゴリズムを開発した。このアルゴリズムは、DNA マイクロアレイにより得られた遺伝子発現強度の信 頼性検定、同一遺伝子の複数スポット間の再現性検 定、異なるマイクロアレイ間のデータ結合、階層型 およびk-meansクラスタリング化による発現プロフ ァイルの作成から構築されている。これにより、骨 芽細胞の異なる培養基板上での遺伝子発現プロファ イルを作成し、骨芽細胞の分化に影響を及ぼす基板 表面の様々な性質の順位づけができることを確認し た。さらに、この順位づけから、骨芽細胞の分化に 最も大きな影響を与える材料表面の物理化学的因子 を抽出することにより材料設計へのフィードバック ができる。図6 DNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析以上のようなナノ/マイクロ技術とバイオの融合領 域では、高感度生体分子計測、細胞機能の解明、再 生医療など、21世紀の医療・創薬分野におけるブレ ークスルーが創出される可能性があり、大きな期待 が寄せられている3.バイオエレクトロニクスグループの成果上記の研究成果を現在までに論文5報にまとめて いる。また、12件の発明を出願して(国内5件、海 外7件)知的財産の確保を図り、2社と共同研究契 約、1社と秘密保持契約を締結している。上記の成果に対し、電気学会優秀論文発表賞、第61 回電気学術振興賞「進歩賞」、第18回応用物理学会 講演奨励賞を受賞している。医療応用技術グループの5年内田義之(ディレクター)、上村渉(特別研究員)、倪恨美(特別研究員)、白井暢子(特別研究員;～2005.3)、中瀬雅彦(特定 分野業務員;～2005.3)1.組織発足の経緯・目的生体材料研究センターでは、材料開発技術を活か して、医薬品や再生医療の応用開発に取り組んでい る。新製品を開発するためには、開発した新技術を できるだけ早く、臨床試験の場に持ち込むシステム づくりが欠かせない。医学と工学の連携強化を目指 した初の試みとして、医学研究者と工学系技術者か ら成る医療応用技術グループが結成された。医工連 携のシステムづくりに取り組む一方、DDS (薬物送 達システム)の材料開発と評価にも着手した。2.グループの活動経緯良好な治療効果が認められながら、そのDDS能の 悪さから、実用化が困難となっている薬物が多くあ る。抗酸化物質・エブセレンもその一つである。 我々は、エブセレンを基盤とした水溶性の医薬を合 成し、これら医薬を送達するための新規デバイスシ ステムの開発を目指した。具体的には難溶性エブセ レンの溶解性を改善するため、エブセレンと相互作 用をする化合物とのコンプレックスを検討した。そ の結果、還元型グルタチオン(GLU)とN-アセチル システイン(NAC)の2化合物において安定なコン プレックス形成とそれによる著しい溶解性の向上が 確認された。そこで、この高い溶解性をもつエブセ レンを医薬とした薬物送達システム(DDS)の開発 へと移行した。その際、2つの新しい概念を提唱し た(図1)。ナノ繊維マットを用いた吸入型DDSと リーゼガングパターンによる非線形放出型DDSであ る。前者は分散媒非存在下において、個々の薬物ナ ノ粒子を分散化する独創的な手法であり、後者は生 体の周期的リズムを考慮した非線形型DDSとして新 規な手法となる。これら2つの概念に基づいて研究 を行い、基礎的な知見を得た。目的化合物が高収率で得られたことを確認した。エ ブセレンーGLUは水溶性であり、室温において安定 に透明性を保持していた。これに対し、エブセレ ン-NACは僅��かに疎水性であるため、水溶性は低い ものの、エタノールに対して高い溶解性を示した。エブセレンは高い治療効果が認められているもの の溶解性の低さから、実用化が困難とされている薬 物の一つである。今回の技術は、弱い結合でコンプ レックスを形成することで、低分子状態で高い溶解 性を確保できる。これによって、従来の可溶化法で は成しえなかった新しいエブセレンのDDS展開も可 能となり、実用化に大きく近づいた。リーゼガングパターンを用いた非線形型DDS開発ゲル内部で自律的に無機塩の沈降パターンが形成 されるリーゼガング効果は、自然界にみられる非線 形反応として知られている現象である。再現性に欠 き、応用研究が殆どなされていなかったこの現象が、 デバイスの周期パターン形成に有用であることを明 らかにした。リーゼガングパターン形成を体系的に 調べることで、バンド間隔やバンド幅を任意に再現 性良く制御する手法を確立した(図2)。また、球 状、円柱状、平板状などゲル形状に因らず三次元的 にパターン形成を制御することにも成功した。我々 はこの技術を薬物がパルス的に放出される新たな DDSとして展開した。化学架橋したゼラチンゲル内 部にリン酸カルシウムの周期パターンを形成させ、 そのゲルの酵素分解挙動を評価した。ゲルは形成パ ターンに応じた非線形な分解挙動を示した。図1.医療応用技術グループにおける研究3. 5年間の成果■16年度成果エブセレンを有する水溶性医薬の合成本研究では2つの化合物(エブセレン-GLU及び エブセレン-NAC)を合成し、構造解析・溶解性・ 安定性を評価した。1H-NMRとHPLC-MSの結果から、図2 リン酸カルシウムのリーゼガングパターン吸入型DDSのための新規デバイスの開発紡糸ノズルとして二連の管を用い、エブセレン溶 液とPVA溶液を同時に噴射して電解紡糸を行う。こ の簡便な手法によって、ナノ繊維上に薬物のナノ粒 子が付着した構造体が得られることを明らかにした (図3)。溶液中において分散状態となっているナノ 粒子でも、大気中に移行する過程で会合・凝集は免 れない。今回の技術によって、これまで困難とされ ていた「ナノ粒子を分散した状態でデバイス化」す ることが可能になった。この技術を活用することで、 これまでにない吸入型DDSデバイスを考案した。図3ナノ繊維にエブセレン粒子が付着した構造体■17年度成果リーゼガングパターンを用いたパルス型DDS開発リーゼガングパターンの形成メカニズムは主に酸 塩基反応である。従って、これまでに報告されてい るリーゼガング現象は無機・金属化合物の例が殆ど である。我々は、リーゼガング効果を酸化還元反応 やゲル内部の局部的なpH変化の伝播など、他の物 理化学反応系へと展開した。この結果、低分子有機 薬物であるエブセレンや、生体高分子であるインス リンのパターン形成に世界で始めて成功した。この ことは、リーゼガング効果が極めて多様な物質に対 して適用できることを示唆する。また、モデル薬物 としてアスコルビン酸を縞状に充填することで、薬 物放出が波状に変化するパルス型DDSを実現した (図4 )。パルス型DDSは長期投与による薬物耐性の 回避、生体リズムによる最適な投与タイミングなど を考慮した次世代のDDSとして注目を浴びている。 今回確立した技術は、DDSのみならず、あらゆる分 野の研究に展開し得る可能性を秘めている。ナノ粒子吸入デバイスの開発ナノ粒子を吸入させ、直接動脈内に薬剤を投与す る。これによって経口剤の数十分の一の薬剤量で十 分な薬理効果を発現させる可能性がある。我々は全 身投与を目的としたナノサイズ粒子を吸入するため のデバイス開発に成功した。世界で最初の吸入デバ イスになる可能性が高い。現在、吸入インスリン療 法を皮切りに全身投与を目的とした粒子吸入デバイ ス開発が世界的に進行しつつある。その多くは3μ mサイズの粒子を最適として開発に挑んでいる。こ のサイズは呼吸生理学的に考えると殆ど肺胞に到達 しえず、むしろ500nm以下粒子サイズが妥当である。 我々はナノ粒子を繊維上に付着させ粒子同士の凝集 を防ぎ、ナノ粒子を吸入させるシステムを考案した。 生体内分解性の水溶性高分子であるPVAを用い、電 解紡糸法によってナノ繊維とした。更に、光架橋反 応によって繊維の機械的強度を向上させた。このナ ノ繊維上に薬物ナノ粒子を付着させた。この場合、 スプレードライ法を用いることでサイズの揃った粒 子を選択的に付着することが可能となった。このナ ノ粒子は人の吸気速度で離脱することを確認してお り、ナノ粒子吸入デバイスとして開発が可能である ことを示している(図5)。安静換気で吸入し吸気 の状態で少し息止めをすることによって、肺胞内の ガスあるいは粒子は拡散で血管内に移行していくと 推定される。これまでに薬物としてエブセレンやク レアチンを用いた系を確立している。図4 球状デバイス断面とアスコルビン酸の放出 図5 (A)ナノ繊維上に付着させたナノ粒子薬剤(B)吸気と同程度の気流で離脱したナノ粒子薬剤5超伝導材料研究センター超伝導材料研究センターの5年熊倉浩明、飯嶋安男、石井聡、石川智克、磯部雅朗、糸崎秀夫、井上廉、植松宏、内田吉茂、大井修一、M.Gaifullin、笠原成、 川嶋哲也、菊池章弘、北口仁、黒田恒生、小林裕希、小森和範、櫻井裕也、櫻井義博、B.Sarkarainadar、 E.H.Sadki、静谷満幸、 姜春海、徐明祥、田川浩平、滝川博幸、竹内孝夫、竹屋浩幸、立木昌(現ナノマテリアル研究所2005.4)、立木実、田中和英、田 中学、戸叶一正、中根茂行、西村浩輔、林忠之、伴野信哉、平田和人、福富勝夫、藤井宏樹、何東風、松本明善、室町英治、茂 筑高士、山浦一成、山下努、余珊、吉田勇二1.組織発足の経緯1―1.背景21世紀に入り人類はエネルギー、資源、地球環境 等の新しい問題に直面し、これまでのような天然資 源大量消費型産業の延長では安定的経済成長や国民 生活の向上が実現できないと危惧されている。また、 近年IT革命での発展途上国の進展もめざましく、我 が国が先進国として引き続き国際的リーダーシップ を維持するためには、ソフト面ばかりでなく情報・ 通信の基盤技術開発でも大きく貢献することが求め られている。超伝導は量子効果が巨視的に発現する現象であ り、電気抵抗の完全な消失、磁束の量子化といった 特異な効果として現れる。この超伝導は物性物理的 な興味のみならず、大電流をエネルギー損失無しに 流すことを可能とし、また磁束の量子化はセンサー や高速情報機器への応用を可能とするため、実用的 にも興味が持たれている。したがって、超伝導は情 報・通信、エネルギー、環境、交通・運輸、医療・ 生命科学など広範な分野への超伝導の適用が期待さ れており、21世紀のキーテクノロジーの一つとして 位置付けられている。超伝導は1911年に発見され、以後現在までより高 い臨界温度をもつ物質の探索や、実用化のための努 力が続けられてきた。その結果、1960年から1970年 代にかけて金属系のニオブーチタン合金とニオブ錫 化合物が実用線材化された。しかし、これらの金属 系超伝導体は高価な液体ヘリウム(絶対温度4K) で冷却する必要があり、このことが超伝導応用の飛 躍的な発展の最大の障害となっていた。一方、1980 年後半から1990年代にかけて、液体窒素温度(絶対 温度77K)を超える臨界温度をもつ多数の酸化物系 高温超伝導物質が発見された。これを契機に世界各 国で活発に研究開発が進められており、我が国にお いても戦略的な視点に立った取り組みが求められ た。この酸化物系高温超伝導体に関しては、物質毎の 長所、短所が明らかにされ、それに応じた材料プロ セス開発が進められて、線材化、薄膜化等の基本的 な技術がようやく確立されつつある。しかし、真に 実用的な線材、薄膜を実現させるためには、さらに 特性改善の努力を続ける必要がある。超伝導研究は、 基礎理論、物質開発・評価、材料化、システム化な どの幅広い領域における総合的な推進が不可欠とな る分野であり、基盤技術とその出口としての応用を 有機的に連携させた研究開発を強力に実施していく 必要がある。近年、MgB2等、高温超伝導フィーバーの再来を 予感させる、新たな物質・材料、および現象の発見 が相次いでおり、21世紀初頭が超伝導にとってコペ ルニクス的展開の時期となる期待が高まっている。 また、既存超伝導材料の高度利用に関しても、現在、 まさにその端緒が切り開かれつつあり、材料の一層 の高性能化と新規材料の展開、システムの実証等が、 広範な産業化への鍵を握るステップとして浮上して いる。物質・材料研究機構ではこうした超伝導の状況に 的確に対応するために、超伝導研究に総合的に取り 組み、我が国の超伝導科学技術の一層の進展に寄与 することとした。1―2.必要性科学技術基本計画では、物質・材料を、広範な分 野での飛躍的発展の鍵を握るという観点において重 要研究と規定しており、特に、①情報通信や医療等 の基盤となる原子・分子サイズでの物質の構造及び 形状の解明・制御や、表面、界面等を制御する物 質・材料技術、②省エネルギー ・リサイクル・省資 源に応える付加価値の高いエネルギー・環境用物 質・材料技術、③安全な生活空間を保証するための 安全空間創製材料技術、等の推進に重点を置くこと としている。超伝導は上記の3項目全てに密接に関 係し、特に②において主役を勤める材料技術である。また、産・学・官の有識者を集めた、超伝導科学 技術研究会は、我が国の超伝導研究のあり方に対し て、「21世紀超伝導研究開発戦略」、「NMR/MRI技術 の開発について」、「新物質・現象発見に伴う超伝導 研究開発の今後のあり方について」等の提言を行っ ている。そこで提起されている重要課題の中で、① 新物質への展開と基礎理論的展開、②材料基盤技術 と計測評価技術の高度化、③多電力消費が懸念され る情報化の進展に対する省電力情報化社会実現、④ ライフサイエンス、環境浄化技術に向けた超伝導磁 石の高度化、等は、物質・材料研究機構の研究イン フラ、ポテンシャル等の活用が期待できる課題であ り、機構が主体として推進すべきものである。物質・材料研究機構における中期計画において も、新超伝導材料研究開発は重点項目の一つとして あげられており、NMR等のシステム開発を念頭にお いた実用レベルの超伝導線材の開発や、探索・基礎 物性解明等の基盤的研究を実施することとしてい る。超伝導利用技術は多分野に関係する技術であり、 産・学・官の連携と役割分担が不可欠である。従っ て、機構の持つ特徴と研究ポテンシャルに相応しい 課題を選択し、他機関と連携を取りつつ強力に実施 していくことで、我が国超伝導技術の展開に資する ことが可能になる。1―3.超伝導材料研究センターの組織以上を背景として、機構においては、(1)新規超伝導物質・材料の発掘、構造評価および 理論に関する研究(2)酸化物系ならびに先進金属系超伝導物質の線材 化に関する研究(3)大面積完全結晶薄膜化、高品質単結晶育成とそ の解析、SQUID素子技術等の情報・通信への応 用基盤に関する研究(4)強磁場超伝導マグネットの開発と生命、環境へ の応用基盤に関する研究の四つを研究課題として設定し、このうち1―3を 実施する組織として超伝導材料研究センターを設立 し、また4をこれまでの強磁場センターで実施する こととし、基礎・基盤研究と応用・開発を指向した 研究を有機的に連係させつつ、総合的に推進するこ とにした。超伝導材料研究センターには、図1に示すように 5つの研究グループを設置し、30名弱の機構常勤研 究職員に加えてポストドク、外来研究員、大学院生 等がここに集まって研究を行ってきた。また図1に 示すように、超伝導センター本体に加えてそれと連 携して研究を行う5つのサテライト組織を設置し、 幅広い分野を含む超伝導研究を総合的に実施してき ており、サテライトまで含めると、50名規模の常勤 研究職員が関係している。図1超伝導材料研究センターの組織図センターの第1期は機構の中期計画の期間とされ ており、上記した(1)―(3)の研究を遂行するた めに、図1に示すようにセンター内に、新物質探索 グループ、酸化物線材グループ、金属線材グループ、 薄膜・単結晶グループ、ならびにSQUIDグループ5 つのグループを設置した。以下、センターに属する各研究グループ及びサテ ライトに於ける研究活動について述べる。2.活動の経緯2―1. 新物質探索グループ研究の目的新規超伝導体の発見は基礎から応用に至るまで大 きな波及効果を及ぼし、時にはブレークスルーをも たらす。この意味で、新規物質の探索研究は継続性 を持って実施すべき課題である。このような新超伝 導物質の探索については、大学等広範な研究機関に おいて進められているが、超高圧、超高酸素圧、超 高温等の極限環境を利用した発掘研究は、通常の研 究機関では実施が困難なことから極一部で試みられ ているにすぎない。特に超高圧環境は、MgB2で代 表されるような揮発性の高い物質系も極めて簡単に 扱うことができるという、大きな特徴を持っており、 これを最大限に活用することは今後の展開に重要で ある。本グループでは、新超伝導材料の探索を目的 とするが、特に超高圧合成やソフト化学などの超常 環境下における合成技術を活用して、組織的、系統 的に新規超伝導物質および関連物質の探索を行い、 興味深い特徴を持った超伝導体及び関連物質を発見 することに力を注ぐ。さらに、得られた新物質の構 造、基本物性の評価を行い、その結果を探索実験に フィードバックすることで、探索研究の効率化を図 る。特にペロブスカイト型関連酸化物等に焦点を当 て、超伝導性の賦与等の伝導機能の高度化を達成す る。研究の概要(1)金を含む超伝導体金を含む新しい高圧安定超伝導体シリーズ AuBa2Can-1CunO2n+3についての研究を進め、n=2の相 の単結晶構造解析を実施し、詳細な構造データを取 得した。(2) Ru-1212系強磁性と超伝導が共存する系として知られている ルテニウム銅酸化物系を高圧下において検討し、 Ru-1212高圧相の磁性の解明、新規Ru-1222相の高 圧・高酸素圧合成とその評価、新高圧相Ru-1232の 合成、評価等を実施し、超伝導と強磁性の共存には かなり疑問が多いことを提示した。(3)水和コバルト酸化物超伝導体物質研究所のソフト化学研究グループと共同で、 超伝導を示すコバルト酸化物を初めて発見した。こ の超伝導体、NaxCoO2・yH2Oは、 CoO2層から成るナ トリウムコバルト酸化物に水分子を導入した物質 で、約5Kで超伝導転移が確認された。磁気的方法 により、上部臨界磁場Hc2は61Tという極めて高い値 が得られた。逆に、下部臨界磁場Hc1は28Oeと異常 に低い値を取る。ここから、コヒーレンス長 (ξ)、 磁場侵入長(λ)、Ginzburg-Landauパラメータ(K≡ λ/ξ) は、各々2.32 nm, 5.68×102 nm, 244と見積もら れ、いずれも、従来型超伝導体としては考えられな い数値であり、高温超伝導に類似した異常な超伝導 を示唆している。現在、種々の角度からこの新たな 超伝導体の評価を行っている。(4) Co-214系新しい、K2NiF4型物質Sr2-xYxCoO4 (x=0―1)を高圧下で合成した。エンドメンバーのSr2CoO4はTc=255 Kで強磁性転移を示した。転移温度はYの置換で次 第に低下し、x=0.67で強磁性は消えた。x=0.5以下 では、Co4+、 Co3+は共にintermediate spinの状態を取 っていることが強く示唆された。Sr2CoO4にはかな り大きな負の磁気抵抗効果が見いだされた。(5)強磁性レニウム銅酸化物系強磁性レニウム銅酸化物系において、新しい高圧 安定強磁性体を発見した。この物質の強磁性転移は 420Kに観測され、銅酸化物系としては異常に高い Tcを持っている。(6)その他新たな327型ロジウム酸化物高圧相を発見し基本 物性を明らかにした。(Nd, Ce)2CaCu2O6新規高圧相 を合成し、弱強磁性転移の存在を明らかにした。2―2.酸化物線材グループ研究の目的超伝導線材については、金属系、酸化物系ともに、 機構において幾多の独創的な技術を開発して高性能 線材を実現し、世界の線材化研究をリードしてきた 実績を有する。酸化物系では、これまでにビスマス 系高温酸化物超伝導体の発見を成し遂げるととも に、部分溶融―徐冷法やPAIR法等の微細組織制御 法を開発して、世界最高レベルの特性を有するテー プ状の線材を開発してきた。 また、これらの線材を 使用して小型マグネットを試作し、このマグネット と既存の超伝導マグネットシステムとを組み合わせ て、発生磁界の向上を目指した。その結果、超伝導 マグネットによる磁界の発生記録を次々と塗り替え ることに成功した。しかしながらビスマス系線材の 実用化のためには、更なる特性の向上が必要不可欠 であり、そのために、より精密な微細組織制御が求 められる状況にあった。一方、近年日本で発見されたMgB2は、超伝導遷 移温度が39Kと金属系超伝導材料としては非常に高 く、その実用化に大きな期待が持たれている。 NIMSにおいては、発見以来いち早く MgB2の線材化 に取り組み、いわゆるパウダー ・イン・チューブ法 でJc特性を向上させてきたが、まだその特性は実用 化レベルにははるかに届かず、またそれまでの MgB2線材は、長さが高々m級であり、長尺化の研究 が待ち望まれていた。このような状況のもとで、本プロジェクトでは、 ビスマス系酸化物ならびにMgB2線材に対して、 種々の手法によって更なる組織制御を試み、より一 層高いJc特性を達成することを目的とした。これに よって液体窒素冷却、または冷凍機冷却で使える高 臨界電流密度線材を目指す。また、ビスマス系線材 では、テープ状線材よりも断面形状が円の丸線材の 方が実用的には利用価値がはるかに高い。そこで丸 線材を作製できる企業と連携して高性能丸線材を開 発する。一方、MgB2線材においては、高Jc化を目指 すと共に100m級の長尺線材を開発し、実用化の基 盤を確立することも目指した。研究の概要(1)Bi-2212丸線材の精密熱処理制御実用化には多芯丸線形状の線材が有望であるが、 これまで高いJcが得られていなかった。そこで熱処 理温度を融点直上に精密に制御することによって、 世界最高のJcを得ることに成功した。詳細な組織観 察の結果、熱処理温度によるBi-2212結晶粒の粒径 制御が、マクロな組織の均一性を達成し、高特性線 材の開発につながったと考えられる。(2) Bi-2212線材における酸素不定比性の研究Bi-2212テープにおいて酸素不定比性に関する研 究を行った。本焼成後のBi-2212線材に、酸素分圧 (100気圧まで)を制御した低温ポストアニール処理 を行うと、母相の余剰酸素量が変化して、Jc-B特性 の可逆的な制御が可能になることがわかった。この Bi-2212の酸素不定比性を最適条件に制御すること でJc-B特性を従来の1.6倍に向上させることに成功し た。(3) Bi-2212コイルの試作高磁界内挿コイルの作製を目標に、Bi-2212多芯 丸線材を用いてソレノイドタイプのコイルの試作を 進めた。また、このコイルをGM冷凍機によって冷 却し、2Tの磁界発生に成功し、Bi-2212線材が冷凍 機冷却用の超伝導線材として有望であることを示し た。(4) MgB2線材出発原料として、Mg粉末の代わりにMgH2粉末を 使うとより優れた特性の得られることを見いだし た。MgH2は500℃前後の低温で分解して活性なMg粉 末が得られるため、MgとBの反応が速やかに進んで、 通常のMg粉末を使った場合の5 ― 6倍の高いJcが得 られることがわかった。また、種々の不純物添加効 果を調べ、その結果、SiCのほかにSiO2、WB、WSi2、 ZrSi2、 ZrB2などの添加によりJc特性の向上が認めら れた。(5) MgB2線材の特性評価(4)で作製したMgB2テープについて、Bc2やBirr を評価した。その結果、SiC添加テープでは、4.2K において22.5TのBirrが得られた。この値はブロンズ 法によるNb3Sn実用線材のBc2にほぼ等しい値であ る。また20Kでは、9 ―10TのBirrが得られたが、こ の値はNb-Ti実用線材の4.2KにおけるBc2に匹敵する。 これより、MgB2線材は20Kや高磁界応用に有望であ ることがわかった。(6)長尺線材ならびにコイルの試作企業と共同でin situ法により100m級の単芯線材を 作製し、これを用いて小型のソレノイドコイルを世 界で初めて試作した。2 ― 3 .金属線材グループ研究の目的Nb3Sn実用線材よりもさらに高磁界特性の優れた Nb3Alについては、線材化が難しく、長い間高い特 性を持った線材は得られていなかった。NIMSにお いては、いわゆる独創的な急熱・急冷―変態 (RHQT)法が開発され、この手法によるNb3Al線材 においては、従来の線材を大幅に凌ぐ、すぐれた臨 界電流特性が得られるようになって来ている。この Nb3Al線材は、特にその優れた高磁界特性と機械的 特性から、核融合炉や加速器などに使用される高磁 界マグネット用線材として世界的に注目されている が、実用化のためには更なる特性の向上が望まれる。 そこで、マグネットを作製した場合の発生磁界を更 に上げるために、なお一層のBc2およびJcの向上を目 標とした。NIMSで開発したRHQT法Nb3Al線材は、優れた高 磁界特性と機械的特性から高磁界マグネット用線材 として世界的に注目されており、その実用化を目指 して長尺化のための要素技術を確立するとともに、 その超伝導特性を向上させる。RHQT法Nb3Al線材 の実用化のために、(1)大型ビレットによる長尺ジ ェリーロール(JR) Nb/Al前駆体線製造、(2)均一 な急熱急冷(RHQ)処理、(3)安定化材複合、(4) 変態熱処理、(5)コイル化、の各要素技術の確立を 実施する。また、超伝導特性の向上を目指して、(6) 高度な変態技術の開発、等を実施する。大学等での基礎研究の成果を活用すると共に、長 尺化、低交流損失化、高強度化などの実用化に関連 した研究開発については、超伝導線材で優れた実績 を有する企業とタイアップすることにより、効率的 に進めることとした。研究の概要(1)長尺前駆体線製造技術4百トン静水圧押し出し機を用いて500m長さの 前駆体を試作し、加工歪量10.6がジェリー ロール法 Nb/Al前駆体の加工限界であることを明らかにした。 次に、この加工限界を考慮して、4千トン静水圧押 し出し機を用いて50kgマルチビレットの伸線加工を 実施し、最終線径(Cu-Ni除去後1.35mmΦ)まで無 断線で2.6km長さの長尺前駆体線の試作に成功した。(2)急熱・急冷(RHQ)処理技術到達最大加熱温度のパラメータである通電加熱電 流値に対して、急冷後の生成相および2次熱処理 (変態熱処理)後の超伝導特性の変化を詳細に調査 し、1900℃-2050℃の領域から急冷すると単相のbcc 過飽和固溶体が生成し、通電加熱温度のバラツイキ で超伝導特性が鋭敏に変化しないプラトー領域が存 在することを明らかにした。このプラトー領域を利 用して最長470mのRHQ処理を実施し、長手方向のIc, Tcの分布が均一であることを確認した。(3)安定化材複合技術Cuストリップを線材外周に巻き付けてそのまま平 角形状に圧延成形するクラッド加工法を開発し、 370 mのCuクラッド安定化Nb3Al線材の作製に成功し た。なお、クラッド加工時の約40%の塑性変形が変 態を促進させ、Jcを2倍に向上させることを明らか にした。また、高温においてAgがNbと反応しない ことに着眼し、Nb被覆Agロッドを用いることによ り、体積比で35%までAgを含む内部安定化材の開 発に成功した。(4)変態熱処理技術bcc相過飽和固溶体からA15相へ変態する際に一旦 bcc相がDO3相に規則化し、最終的なA15相にはAlが 濃化した面状欠陥が生成すること、面状欠陥が生成 すると母地の組成がAl-poorになりTc,Bc2が若干低下 すること、を明らかにした。また、室温から変態温 度までゆっくり昇温するとbcc相が規則化して超伝 導性が劣化すること、しかし、急冷後の塑性変形が 超伝導特性劣化の抑制に効果的であることを明らか にした。(5)コイル化技術Al2O3繊維で絶縁被覆したCuクラッド加工線材 300mを利用してWind-&-Reactコイルを試作し、14T バイアス磁場中で3.2Tの追加磁界発生に成功した。 これにより長手方向のIcの均一性を確認した。NMR 応用に不可欠な超伝導接続抵抗は1.2T以下で10-11Ω 以下と十分低いこと、またn値(4.2K,21T)は約25 と十分高いことを明らかにした。(6)高度な変態技術高速で昇温するとbcc相の規則化が抑制される。 2回RHQ処理等により1000℃以上で不規則bcc相か ら変態させると、変態熱の解放によりアップクエン チ現象が生じて不規則であるが、面状欠陥密度の低 いA15相を生成できること、その後、750-800℃で長 範囲規則度改善のための熱処理を行うと通常の RHQT法よりTcで0.5KまたBc2で4T高くなること、ま た、高磁界のJcが大幅に改善することを明らかにし た。2―4.薄膜・単結晶グループ研究の目的高温酸化物超伝導体の薄膜や単結晶を合成し、こ れを詳細に調べることは、単に高温超伝導体の物理 特性を理解したり、超伝導発現メカニズムの解明に 役立つだけでなく、これらを用いた新しい超伝導デ バイスを開発したり、また超伝導線材の特異な振る 舞いを理解する上でも極めて重要であると考えられ る。特に理論的に予測されているジョセフソンプラ ズマ現象は、新しい超伝導デバイスを可能にすると 期待されているが、しかしながらビスマス系をはじ めとする種々の高温酸化物超伝導体においては、そ の磁束線のダイナミックスなどの基礎特性が十分に は理解されておらず、デバイスへの応用もまだ目処 が立っていない状況である。そこで本研究では、ビスマス系酸化物をはじめと する各種超伝導体単結晶の高品質化や大型化を達成 し、物理特性の詳細な理解と各種デバイスへの応用 可能性を検討することとした。また各種の超伝導体 を合成し、それらの特性を調べて比較をすることに より、超伝導物質のより深い理解をめざすことを目 的としている。研究の概要(1)高品位単結晶の育成MgB2単結晶を世界に先駆けて合成するとともに、 超伝導の基礎的なパラメターを解明した。Bi-O平衡 蒸気圧下のBi-2212針状結晶成長法を開発し、組成、 表面性状を改善した。仕込み組成の改良によりBi- 2223相の混晶のない単結晶合成技術を開発した。 Tc=約8KのNbB2超伝導相が燃焼合成法によって生成 することを発見した。NbB2は唯一 MgB2と全く同じ 構造を持つことから、磁束線ピニングセンターとし ての可能性を検討している。また、これらの単結晶から特性評価用の素子を作 製する技術を開発し、物理特性を詳細に評価するこ とで新機能特性の発見や、新しいデバイスへの応用 可能性を探っている。(2)ジョセフソンフロー抵抗の周期的振動現象収束イオンビームによってBi-2212単結晶を微細 加工した素子において、ジョセフソンフロー抵抗の 周期的振動現象を発見するとともに、この現象のメ カニズムをほぼ解明することができた。これにより、 これまで実験的に解明できなかった、ジョセフソン 磁束系の磁気状態図の解明が可能になると期待され る。また、Bi-2212系で理論的に予測されていた、 磁気的、熱的励起によるパンケーキ磁束線対の形成 と考えられる現象を観測した。そこで次にBi-2212 単結晶におけるジョセフソン磁束線(JV)相図の解 明を、JVフロー抵抗を測定することにより行った。 JV系が三次元的に長距離秩序があることをJVフロー 抵抗のビート現象により実験的に確認した。(3)ナノメートルサイズ超伝導体の作製また、ナノメートルサイズの超伝導体を作製し、 その特性評価も進めている。収束イオンビーム、 MOCVD法、ナノポーラスアルミナ法によるナノサ イズ超伝導細線の作製技術を開発し、電気蒸着法に よりナノサイズPbワイヤーを作製し、これまで測定 されていなかったPbナノワイヤーの磁界中特性の測 定が可能となった。現在、その特性を評価中である。 また、有機金属タングステンカーボオキシルを収束 イオンビームにて分解蒸着することによりタングス テンナノワイヤーを形成できることを見出し、その 超伝導特性を評価した。(4) FeSr2YCu2O6+δ超伝導体磁性と超伝導共存物質系における結晶構造解析に よりFeSr2YCu2O6+δの超伝導化に成功した。磁気秩序 の可能性を実験的に検証するとともに、元素置換効 果と超伝導特性との関係を究明した。さらにFeSr2 YCu2O6+δ磁性超伝導酸化物の固体化学的立場から, 鉄酸素八面体が一次元的に配列する斜方晶の構造を 持つ相を新たに発見し、この相の形成が超伝導の発 現に大きく関わること解明した。同様にコバルト酸 素八面体を持つCoSr2YCu2O6+δにおける超伝導相の発 見にも成功している。(5) Y2C3超伝導体Y2C3超伝導体は合成条件によって超伝導遷移温度 が大幅に変わるなど、興味深い物質である。そこで 本物質について合成条件の改善による高品質化に取 り組み、Tcが大幅に変化する要因を構造的な観点か ら解明した。炭素原子間結合の存在と、その結合距 離が超伝導の発現に重要な役割を果たしていること が解明されつつある。2―5. SQUIDグループ研究の目的第1期超伝導プロジェクトの事前評価を踏まえ て、超伝導デバイスの応用化研究の強化として、酸 化物高温超伝導体によるSQUIDの開発ならびにその 応用を担当するSQUIDグループを新たに組織し、超 伝導デバイスの応用化技術に関する研究を立ち上げ た。SQUIDは超伝導を利用した超高感度磁気センサー であり、短期的な応用技術の展開が期待できる。す なわち、心臓診断などの生体磁気計測、バイオ関連 の磁気ビーズを用いた抗原抗体反応免疫診断、金属 疲労やクラック検査などの非破壊検査、食品などへ の異物混入検査、地質調査など広範囲な分野が検討 対象となる。実用化に要求される計測装置としての シンプルさ、低コスト化を念頭に、磁気シールドな しで微小磁界を計測する技術、簡便な冷却技術、パ ソコンによる簡易操作とデータ処理など、総合的に 高温超伝導SQUIDの実用化を捕らえた検討を行う必 要がある。そこで、SQUIDに必要な研究施設の整備と、 SQUID応用研究の立ち上げを進め、具体的な応用技 術として、磁気顕微鏡や非破壊検査などへSQUIDを 利用する研究の見通しを明らかにする。またSQUID の基礎技術として、高温超伝導薄膜技術、素子化技 術、駆動電子回路技術などの高度化を検討すること を目的とする。研究の概要(1)磁気計測研究施設の整備パーマロイ3層構造の小型磁気シールドルームを 設置した。また微小磁気計測装置などの整備を進め た。特に、SQUID特性を評価できるように、ベクト ルシグナルアナライザーや磁界のシミュレーション ソフトなどの整備を実施し、SQUID応用研究の環境 を整えた。(2) SQUID磁気顕微鏡の開発走査型高温超伝導SQUIDプロ ーブ磁気顕微鏡を開 発した。空間磁気分解能を大幅に改善するために、 先端径をサブミクロンに加工した高透磁率パーマロ イの針をプローブとして用いる方式を開発し、約1 ミクロンの空間分解能を得ることに成功した。また、 これを用いてミクロンスケールの磁気分布観察に成 功した。(3)非破壊検査などへのSQUIDの利用技術の開発磁気微粒子をマーカとする抗原抗体反応を利用し た免疫診断技術に関して、糸に検査物をとりつけ、 高速連続検査を可能とする装置を試作した。また、 渦電流により金属亀裂を診断する装置を試作した。 本装置は非磁性の2次元走査機構をそなえており、 航空機などに利用される合金アルミ材に人工的な亀 裂を入れてその検出実験を実施した。(4) NQRによる化学物質リモートセンシングの研究NQR (核四極共鳴)を利用した化学物質の検出実 験を科学技術振興機構(JST)からの受託研究とし て開始した。NIMSのNMR技術を基にNQR装置を開 発し、擬似爆発物としてヘキサメチレンテトラミン  を30cmの距離から検出できることを示し、リモー トセンシングの基礎実験に成功した。2―6.サテライト組織上記の5研究グループに加えて、4つのサテライ ト組織を設置して多面的な研究を行うこととしてい る。サテライトメンバーは、組織上は機構の他の研 究ユニットに属しているが、超伝導が広範な研究分 野に関連することから、グループとサテライトの連 携は研究推進にとって極めて重要である。(1)構造評価サテライト構造評価サテライトは超伝導体等の局所及び平均 構造の解明や、構造データの精密化等を主要な任務 としている。特に高分解能電子顕微鏡やローレンツ 型電子顕微鏡を用いた局所構造や磁気構造の解明、X線・中性子線粉末回折図形に関する精密リートベ ルト解析技術の開発などを行っている。(2)超伝導理論サテライト強相関電子系における超伝導発現機構及び反強磁 性と超伝導競合に関する理論的研究、高温超伝導磁 束系のダイナミクス特性の理論的解明、柱状ピン止 めによる高温超伝導磁束系特性の改善に関する理論 的研究等を行っている。基礎的バックグランドを提 供することで、超伝導材料研究全体の活性化を目指 している。(3)物性評価サテライト超低温、強磁界、さらに超高圧という複合した極 限環境を利用し、f電子系超伝導化合物や有機超伝 導体等について新規物性の探索、電子状態の解明等 を行っている。また、AlB2型構造をもつ化合物及び 関連物質の物性測定より、新超伝導物質の開発への 展開を図っている。(4)強磁場マグネットサテライト酸化物系、先進金属系超伝導物質の有用性を実証 する研究開発として、ライフサイエンスや環境等へ の応用を目的とした超強磁界マグネットの研究開発 を実施している。特に、タンパク質の構造解析をタ ーゲットとする高分解能NMRマグネットを中心と し、そのプロトタイプとしての固体NMRマグネット、 磁気分離及びMRIのための大口径マグネットについ て研究を行う。また強磁場マグネットの運転に不可 欠な冷却技術について、次世代冷凍機を中心に開発 を実施している。3. 5年間の組織の成果3―1.研究トピックス(1)新規水和コバルト酸化物超伝導体、f電子系、 磁場誘起超伝導体、AlB2系等について、新規超 伝導物質、関連物質の開発に成功。構造評価、 物性評価について評価法の高度化に成功。新た な超伝導理論の開発と展開に成功。(2) MgB2の線材化において、世界最高レベルの臨 界電流密度を達成。Bi-2212丸線材の開発を進め、 4.2K、10テスラの磁界中で25万A/cm2とBi-2212 丸線材としては世界最高の臨界電流密度を達 成。(3) RHQT-Nb3Al線材とそれを用いたコイルの開発 に成功し、14Tのバイアス磁界中で3.2Tの磁場 発生に成功。さらに、大型ビレット押し出しに より2.6kmまで前駆体線の長尺化に成功。Nb3Al 導体の絶縁材を最適化すると共に、600m級Cu 複合Nb3Al線材を用いた16T級コンパクトコイ ル試作に着手。Nb3 (Al,Ge,Si)、 Nb3Ga化合物の 線材化が進展。(4)ジョセフソン磁束線フロー抵抗に見られる周期 的振動という新たな物理現象の発見とそのジョセフソン相図解明への適用。Tri-Phase Epitaxy 単結晶薄膜法の高度化、単結晶ウイスカーの結 晶性・表面性状・厚さの改善等に成功。ダイヤ モンド薄膜超伝導体の発見。(5) 高温超伝導体SQUID素子を用いた高分解能 SQUID顕微鏡の開発に成功。地雷探知、非破壊 検査等へのSQUIDの適用。3―2.論文、特許等平成14年度原著論文: 87報プロシーディングス:22報解説・総説: 20報著作: 2件特許出願: 12件受賞: 3件研究会の開催センター内超伝導セミナー 13回開催その他米国アドバイザーを交えたアドバイザリーボードミ ーティングを開催(平成14年11月20日)(財)未踏科学技術協会と超伝導科学技術研究会ワ ークショップを共催(平成15年3月14日) 平成15年度論文数: 100報プロシーディングス:8報解説・総説: 14件著作: 1件特許出願: 15件受賞: 2件研究会の開催センター内超伝導セミナー 8回開催その他、第11回日米高温超伝導体ワークショップを米国エネ ルギー省ならびに(財)未踏科学技術協会と共催 (平成15年10月31日～11月2日)磁束線物理国内会議を開催(平成15年12月4日～12 月5日)Nb基超伝導材料の進展に関する国際ワークショッ プを開催(平成16年2月2日～2月3日) 平成16年度論文数: 112報プロシーディングス:24報解説・総説: 17件著作: 2件特許出願: 21件受賞: 4件研究会の開催センター内超伝導セミナー 8回開催その他超伝導科学技術研究会第30回シンポジウムを(財) 未踏科学技術協会と共催(平成16年6月21日)平成17年度論文数: 100報プロシーディングス:38報解説・総説: 4件著作: 1件特許出願: 4件受賞: 1件研究会の開催センター内超伝導セミナー 8回開催4.研究分野の動向・展望1.でも述べたように、超伝導は、エネルギー、 環境保全・資源保護、医療、生命科学、新材料、超 高速情報通信などの重要領域において画期的な技術 を誕生させる可能性をもっている。これらの超伝導 利用技術が実現すれば、二酸化炭素排出の問題を始 めとする、人類の懸案事項の殆どが解決されると言 っても過言ではない。このような超伝導技術の成否 は多くの場合、優れた超伝導材料が開発されるか否 かにかかっている。前述のごとく、超伝導センターでは、総合的に超 伝導の研究開発を行い、高性能な超伝導材料を開発 してきた。しかしながら、これらの超伝導材料を実 用化するためには、更なる特性の向上が必要である が、これまで進めてきた結晶粒の組織制御法、等だ けでは、特性向上の限界があると考えられ、新たな る手法による研究開発が必要不可欠と考えられる。 超伝導材料を特徴づける基本的なパラメーターには コヒーレンスの長さがあり、これはナノメートルレ ベルであることから、ナノメートルレベルの構造制 御が特性向上には有効と考えられる。例えば急冷法Nb3Alでは、前駆体のNb/Al拡散対の サイズが100 nm以下になると、Jcが向上することが 最近になって判明し、そのような前駆体の微細化に 加え、変態熱処理後の微視的組織をナノメートルレ ベルで制御できると、Jcが大幅に向上すると期待さ れる。そこで、これまで超伝導センターで行ってき たマイクロメートルレベルでの組織制御の研究実績 をベースに、更に進んで結晶内部の構造や結晶粒界 構造にまで踏み込んだナノ メートルレベルの構造制 御を行うことにより、実用レベルの臨界電流密度が 達成できると期待される。また、これまでの超伝導材料は、冷媒として液体 ヘリウムを使用しており、冷却が煩雑でかつ高コス トとなる点が超伝導の普及を妨げる大きな要因とな っていた。ビスマス系酸化物や近年日本で発見され たMgB2は、従来の超伝導材料に比べて超伝導遷移 温度が遥かに高く、もしこれらの材料を使った高性 能線材が開発されれば、液体水素冷却(沸点:20K) や近年進展の著しい冷凍機による冷却(20～50K) が可能になると期待される。このような液体水素や 冷凍機で冷却する超伝導線材が実用化されると、液 体ヘリウムの束縛から解放されることになり、超伝 導の利用が飛躍的に普及すると考えられる。そこで、 今後の有望な研究のひとつは、液体水素や、冷凍機 冷却で簡単に得られる温度である20～50K前後の温 度で、実用レベルの臨界電流密度Jcを有するMgB2な らびにビスマス系線材を開発することである。一方、Nb3Alをはじめとする先進金属系超伝導材 料では、耐応力ひずみ特性が決定的に重要となる次 世代の高エネルギー粒子加速器、核融合炉および強 磁界マグネットなどに有望と考えられる。高性能な超伝導材料の開発のためには、材料内部 の微細な領域における、超伝導電流分布、物性、組 成などの解析・評価が非常に重要となり、評価技術 の確立が急務である。このような超伝導材料の微細 レベルの研究において、SQUID顕微鏡が有力な手段 になると考えられるが、すでに超伝導センターにお いては高温超伝導体を用いたSQUIDの研究開発を進 め、独自のSQUID磁気センサー、駆動電子回路、応 用システムなどを構築してきた。すでに、SQUID顕 微鏡としては、世界で初めてミクロンスケールの磁 気画像の検出に成功しているが、本装置を超伝導材 料の微細領域の評価に適用することで超伝導材料の 電流分布についての理解が大きく進むと期待され る。さらに本顕微鏡は超伝導材料の評価のみならず、 磁性材料のナノ構造解析や、半導体などの電子物性 の研究、およびLSIの検査技術等にも威力を発揮す ると期待される。また、ナノテクノロジーを活用することで、材料 の特定微細領域の超伝導関連物性が評価できる手法 が確立されれば、微細組織と超伝導特性の関係を明 らかにすることが可能になり、高Jc化に向けての大 きな進展が期待できる。NIMSは現在、マイクロ波 STMを考案・試作し、試行実験中であり、本装置が 稼動すると、実空間における超伝導特性分布、或い は、磁性物質のスピン局在分布等が観測可能となる。 さらに、カーボンナノチューブを用いたナノコイル の作製にも成功しており、ナノ領域の磁場励起及び 磁化観測の技術開発を行うことで微小領域の試料評 価が可能となり、超伝導材料評価法の高度化にもつ ながるものと考えている。さらにこのような解析手 法は、一般の材料評価にも適用でき、大きな波及効 果をもたらすと期待される。一方、これまでに発見された超伝導材料を上回る 特性を有する超伝導材料が発見されれば、超伝導応 用も飛躍的に進展する可能性があり、次世代の線材 や薄膜のシーズとなる超伝導物質を探索する基礎・ 基盤研究も極めて重要である。特に超高圧、ソフト 化学など、特殊な合成環境を活用することで、高い 遷移温度、高い臨界電流密度を有する新規超伝導体 の創製や既知超伝導体の改質に大きな期待がかか る。以上のように、超伝導の研究は依然として大きな 可能性を秘めており、魅力的な研究分野であるが、 世界的に見て超伝導に関連した諸産業はまだ十分に 成熟しておらず、民間企業が多額の研究開発費を投 資することは、リスクの観点からも到底不可能であ る。さらに、科学技術政策の観点からその重要性が 認められている高エネルギー粒子加速器および核融 合炉については、建設時期が不明であることに加え、 建設後継続した線材需要が見込めないことから、民 間企業がその超伝導材料開発のために研究開発費を 投資することは望めない。超伝導研究は、上述した 人類が直面する諸問題の解決に結びっく大きな社会 性を有するものであることから、国家プロジェクト として早期に取り組むべき研究開発課題であると考 えられ、NIMSが継続して研究開発に取り組むべき であると思われる。新物質探索グループの5年室町英治 ディレクター、Veer Pal Singh AWANA、 Balamurugan SARKARAINADAR、 Alberto UBALDINI、 Mingxiang XU(徐明祥)、磯部雅朗、内田吉茂、川嶋哲也、櫻井裕也、佐藤知、静谷満幸、田中学、西村浩輔、 藤巻恵子、山浦一成1.はじめに当グループでは高い特性を有する新規な超伝導物 質・材料及び関連物質・材料の探索・開発研究に取 組んできた。特に、物質・材料研究機構および前身 の無機材質研究所で開発された高度な超高圧力発生 技術を活用して超高圧下における探索研究を実施し た。さらに、物質研究所のグループと共同で、ソフ ト化学合成を超伝導体の探索に適用し、コバルト酸 化物の超伝導体を初めて発見した。また、探索され た物質について、構造解析、物性測定等を実施し評 価を行った。さらに、外部研究機関との共同研究を 実施してより詳細な物性の解明を行うなど連携研究 も活発に推進した。2.研究成果(1)銅酸化物超伝導体①6GPa、1250 ―1300℃の高温・高圧環境におけ る合成手法を活用すること、新しい超伝導体 AuBa2Can-1CunO2n+3 (n=3,4)の合成に成功した。両 相ともに斜方晶に属し、n=4の相はTc = 99Kの超伝 導体であることを明らかにした。n=3の相のTcは約 30Kであり、超伝導体積分率も低い。体積分率は 300℃でアニールする事で増大することから、この 相はホールのオーバードープ領域にあるものと推定 した。②窒素を含む炭酸塩高圧相超伝導体(Cu,C,N) Sr2Can-1CunOy (n=1-6)について、高分解能電顕法 ならびに電子エネルギー損失分光法による構造およ び局所組成評価を行い、n=1-4では電荷調節層でCu とC(N)が規則配列しているのに対して、N=5, 6で はランダム配列していることを明らかにした(図 1)。③強磁性と超伝導が共存する系として知られてい るルテニウム銅酸化物系を高圧下において検討し、 Ru-1212高圧相の磁性の解明、新規Ru-1222相の高 圧・高酸素圧合成とその評価、新高圧相Ru-1232の 合成、評価等を実施した。(2)水和コバルト酸化物超伝導体物質研究所のソフト化学研究グループと共同で、 ソフト化学合成手法を活用することで超伝導を示す コバルト酸化物(図2)を初めて発見した。この超 伝導体、NaxCoO2・yH2Oは、CoO2層から成るナトリ ウムコバルト酸化物に水分子を導入した物質で、約 5Kで超伝導転移が確認された。磁気的方法により、 上部臨界磁場Hc2は61Tという極めて大きな値が得ら れた。逆に、下部臨界磁場Huは28 Oeと異常に小さ い値を取る。ここから、コヒーレンス長 (ξ)、磁場 侵入長(λ)、Ginzburg-Landauパラメ ータ(K≡λ/ξ) は、各々2.32 nm, 5.68×102 nm, 244と見積もられ、 いずれも、従来型超伝導体としては考えられない数 値であり、高温超伝導に類似した異常な超伝導を強 く示唆している。一方、ソフト化学合成プロセスを詳細に検討する ことで、超伝導体の厳密な化学式はNax(H3O)z(H2O) nCoO2であり、Na+イオンが占めるべき席の一部が、 オキソニウムイオン(H3O+)で置換されていること が明らかになった。さらに、ナトリウム量(x)と オキソニウムの量(z)を制御して系統的に試料を 作成することに成功し、それらの物性を測定するこ とで極めて重要な結果が得られた。図3 (a)に示図1 窒素を含む炭酸塩高圧相超伝導体の格子像 図2 水和コバルト酸化物超伝導体(NaxCoO2・yH2O) の構造と出発物質(γ-NaxCoO2)からの合成プロ セス子の双方の特徴を有することを明らかにした。④Ca1-xCuO2, LiTiSi2O6, Sr5Pb3CoO12等の種々の物質 系の合成、構造評価、物性評価を行った。⑤新しい、K2NiF4型物質Sr2-xYxCoO4 (x=0-1)を高 圧下で合成した。x=0のSr2CoO4はTc=255 Kで強磁性 転移を示した。図3 Nax (H3O)z(H2O)nCoO2の超伝導相図(a) s=+3.4の時のT-z/x相図、(b) s=+3.4,z/x=0.68に対するT-H相図すようにコバルト価数sを+3.4に保って、z/xを変化 させると、z/x=0.7～0.8近辺に磁性相Mが出現し、超 伝導領域は磁性相で分断される。また、Mに近い組 成を持つ超伝導相(z/x=0.68)に強い磁場を印加す るとM相への転移が誘起される(図4 (b))。これ らは、超伝導の発現機構に磁気的相互作用が何らか の重要な役割を果たしていることを強く示唆する結 果となっている。この研究は、まさに物理と化学の 境界分野に位置し、両者の連携によって初めて可能 になったという点も強調したい。(3)その他の研究①高圧下で新しい複合ペロブスカイト化合物 Sr8ARe3Cu4O24 (A=Sr,Ca)を発見した。この物質は Tc=420Kの強磁性体であり、銅酸化物系としては異 常に高いTcを持っている(図4)。同物質の結晶構 造を解明するとともに磁気的測定、NMR測定などに より物性を明らかにした。②新たなロジウム酸化物SrRhO3、Sr3Rh2O7、 NaRh2O4などの高圧合成に成功し、基本物性を明ら かにした。それらの中で、ペロブスカイト構造を持 つSrRhO3は優れた金属的電気伝導を示し、低温では フェルミ液体的金属状態に特有な温度依存性が観測 された。また、スピン揺らぎの存在が磁化率や磁気 比熱の測定から示唆された。③新規ミスフィット層状コバルト(水)酸化物 [CaOH] 1.14CoO2を発見し、その抵抗率、ゼーベック 係数、帯磁率、比熱等を測定し、この物質の電子状 態が、強い2次元性を持つこと、遍歴電子と局在電図4 Sr8ARe3Cu4O24 (A=Sr,Ca)の結晶構造3.おわりに新しい物資の発見は時としてブレークスルーのき っかけとなる。この4年余りの間、当グループは全 力で新たな物質の探索を続けてきた。その結果はか なり満足のいくものであったと自負している。新物 質・新材料開発の重要性は今後も変わらないはずで あり、当グループで積み上げられた種々のポテンシ ャルが新たな組織においても継承され、活用される ことを期待する。酸化物線材グループの5年熊倉浩明、北口 仁、黒田恒生、姜 春海、田中和英、戸叶一正、中根茂行、福富勝夫、藤井宏樹、松本明善1.目標超伝導遷移温度が高くて種々の応用が期待される ビスマス系高温酸化物線材ならびにMgB2線材にお いて、材料学的諸問題を解決して高性能化を達成し、 実用化のための基盤を確立する。2.グループの活動経緯 2―1.ビスマス系線材これまでに培ってきたビスマス系線材化技術をさ らに発展させて、臨界電流特性の高性能化を目指し ている。具体的には、原料粉末を金属管に充填して 加工・熱処理をおこなうパウダー・イン・チューブ 法(PIT法)によるBi-2212テープや丸線材の作製に おいて、配向組織制御や酸素量の制御、等によって 高い臨界電流密度 (Jc)を目指している。Bi-2212テープにおいては酸素不定比性が特性に 大きく関与する。本焼成後のBi-2212線材に、酸素 分圧(100気圧まで)を制御した低温アニール処理 を行うと、余剰酸素量が変化してJc-B特性の可逆的 な制御が可能になることがわかった。このBi-2212 の酸素量を最適条件に制御することでJc-B特性を従 来の1.6倍に向上させることに成功した。Bi-2212線材の実用化には多芯丸線形状の線材が 有望であるが、これまで高いJcが得られていなかっ た。そこで昭和電線(株)と協力して、熱処理温度 を融点直上に精密に制御することによって、世界最 高のJcを得ることに成功した(図1)。組織観察より 均一なフィラメント組織が得られ、またBi2212結晶 粒がほぼフィラメント径と一致していることがわか った。熱処理によるBi2212結晶粒の粒径制御が、マ クロな組織の均一性を達成し、高特性線材の開発に 結びついたと考えられる。図1Bi-2212丸線のJc(4.2K,10T)の熱処理温度依存 性。挿入図は丸線材の断面写真2―2. MgB2線材MgB2超伝導材料の優れたポテンシャルにいち早 く注目して線材化を精力的に進めた。手法としては、 PIT法においてMg+Bの混合原料粉末を使う方法(in situ法)、ならびにMgB2粉末を使う方法(ex situ法) を中心に線材開発を進め、原料粉末や熱処理条件の 選択、不純物添加などで優れた超伝導特性を目指し た。また、長尺化のための基礎研究を進めた。Ex situ法では、シース材としてステンレス鋼など の硬い材料を使うと、熱処理無しでも4.2K、ゼロ磁 界で40万A/cm2以上の高いJcの得られることを初めて 示した。一方、in situ法では、出発原料としてMg粉末とB 粉末を用いる方法が主流であったが、我々はMg粉 末の代わりにMgH2粉末を使うと、Mgの場合よりも 5 ― 6倍高い優れた特性の得られることを見いだし た。さらに、プラズマスプレー法で作製したナノレ ベルの微細Mg粉末を使うと、さらに高いJc特性が得 られることも見いだした。また、種々の不純物添加 効果を調べ、その結果、SiCのほかにSiO2、WB、 WSi2、ZrSi2、 ZrB2などの添加によりJc特性が向上す ることがわかった。次にこれらのMgB2テープについて、上部臨界磁 界Bc2や不可逆磁界Birrを評価した。その結果、SiC添 加テープでは、4.2Kにおいて22.5Tのが得られた (図2 )。この値は実用Nb3Sn線材のBc2にほぼ等しい 値である。また20Kでは、9-10TのBirrが得られたが、 この値はNb-Ti実用線材の4.2KにおけるBc2に匹敵す る。これより、MgB2線材は低温、高磁界応用のみ ならず20K応用にも有望であることがわかった。図2 MgB2線材のBc2ならびにBirr。比較のために、Nb-TiならびにNbsSn実用線材のBc2も示す図3試作したMgB2ソレノイドコイルの例(外径: 48mm,内径:30mm,高さ:50mm、巻き数:459)一方、これらのMgB2線材を用いて小型のソレノ イドコイルを試作し、MgB2コイルとしては世界で 初めての励磁試験に成功している。まず、100m級 のMgB2単芯丸線材をin situ法で作製した。シース材 は線引き中の断線を避けるために、外側が銅、内側 が鉄の二重金属管を用いている。コイルは、巻き線 後に熱処理をするWind & React法を採用した。図3 に試作をしたコイルの一例を示す。このコイルを 種々の温度、磁界中において励磁試験を行った。そ の結果、4.2Kの温度で2.3T (2Tのバイアス磁界)、 20Kでは3..3T (1Tのバイアス磁界)の磁界発生を得 た。なお、コイルの臨界電流Icは短尺線材のIcとほぼ 一致し、線材100m長にわたって均一な特性を有す ることがわかった。これより、MgB2線材は超伝導 マグネット用の巻き線材として有望であると考えら れる。特に、20Kで1T以上の磁界発生が得られたこ とは、液体ヘリウムが不要で使いやすい冷凍機冷却 あるいは液体水素冷却マグネットが可能であること を示唆しており、明るい展望が得られた。なお、コ イルの試作はJR東海、(株)日立と共同で進めた。3.グループにおける5年間の成果 研究トピックス1.Bi-2212線材において、熱処理後の高圧酸素熱処 理により、高Jc化を達成。2. Bi-2212丸線材において、融点直上から徐冷をす ることにより、28万A/cm2 (4.2K,10T)と、ビ スマス系丸線材最高のJcを達成。3. MgB2線材において、Mg粉末の代わりにMgH2粉 末を用いることにより高いJcの得られることを 見いだした。4. SiC添加したMgB2線材において、4.2Kで23T、 20Kで10Tの臨界磁界の得られることを見いだ し、MgB2線材が超伝導マグネットなどの磁界 応用に有望であることを見いだした。5.開発したMgB2線材を用いてマグネットを試作、 励磁試験に成功し、MgB2のマグネット応用の有用性を実証した。オリジナル論文数:151編解説: 20編特許: 15件研究会開催:超伝導センターのセミナーに毎回発表をしている 他、酸化物線材グループ独自のものとして、平成17 年度より、国内の研究者を集めて「ビスマス系高温 超伝導線材高性能化検討会議」を主宰。また、電気 学会の「先進超電導線材の製造技術と特性に関する 調査専門委員会」において、委員長と幹事を当グル ープ員が務め、積極的に活動している。4.今後の研究課題と展望上述したように、これまでビスマス系線材ならび にMgB2線材について、材料の組織制御を図り、臨 界電流特性の向上を得てきたが、これらの線材を実 際の超伝導機器に応用する観点からは、依然として どちらの線材もJcがまだ実用上十分なレベルに達し ておらず、更なる高Jc化が必須である。これらの線 材の更なる特性向上のためには、これまで進めてき た結晶粒の組織制御、等だけでは特性向上に限界が あると考えられ、新たなる手法による研究開発が必 要不可欠と考えられる。超伝導材料を特徴づける基 本パラメータにコヒーレンスの長さがあり、これは ナノメートルレベルであることから、ナノメートル レベルの構造制御が特性向上には有効と考えられ る。より具体的には、以下に述べるような研究開発 が重要であろう。1.ビスマス系線材出発物質のナノ粒子化、層状結晶構造や粒界構造 の改変、キャリアドープ、ならびにナノメートル粒 子の導入など、ナノスケールの構造制御技術の開発。 これによって液体水素冷却や冷凍機冷却、あるいは 液体窒素冷却で実用上十分な臨界電流密度を有する 線材を開発する。またナノ構造を解析・評価するた めの技術の確立も必要である。2. MgB2線材出発原料物質の前処理・ナノ粒子化、元素置換や 不純物添加、ならびにナノメートル粒子の導入など の構造制御技術の確立。これによって液体窒素や液 体水素冷却、あるいは冷凍機冷却で実用上十分な臨 界電流密度を有する線材を開発する。また元素の置 換や加工による歪導入などで電子散乱中心を導入 し、Bc2をより高めることも重要である。さらに現 在の鉄チューブ(シース材)は実用長尺線材作製に は不向きなため、他のシース材の選択、合金化、複 合化などによる長尺線材作製の可能性を探る必要が あろう。金属線材グループの5年竹内孝夫、飯嶋安男、菊池章弘、伴野信哉、瀧川博幸、吉田勇二、井上廉(現徳島大学、2004.3退職)、福崎智数(現理研)、若 田光延、田川浩平(現日立電線)、櫻井義博(現日立電線)1.目的旧金属材料技術研究所における代表的な研究成果 の一つに挙げられていたブロンズ法Nb3Sn線材と同 じく、機構が発足する数年前から、急熱急冷変態 (RHQT)法Nb3Al線材は同所において発明され研究 がスタートしていた。この線材は、Nb3Snと比較し て高磁界特性が格段に優れるだけでなく、大きな電 磁力が加わったときにも超伝導特性の劣化が小さい (耐歪み性)という特徴を有していた。ライフサイ エンス(タンパク質のNMR分光分析)、核融合、高 エネルギー粒子加速器などの応用分野では、短・中 期において幾らかでもその高磁場化が急務であっ た。しかし、Bi系やY系などの高性能酸化物超伝導 線材の実用化には今しばらく時間を要する状況であ った。Nb3Alをはじめとした先進金属系超伝導線材 は、それら超伝導機器の高磁場化への要望を比較的 短期間に満足させることができることから、Nb3Al を筆頭とした先進金属系超伝導線材の実用化が求め られていた。2. Nb3Alの研究成果RHQT法Nb3Al線材の実用化のために、次の7項 目について開発研究を進め、成果を得た。(1)長尺前駆体線製造技術:4百トン静水圧押し出 し機を用いて500m長さの前駆体を作製し、加工ひ ずみ量(2ln (d0/df) 10.6がジェリー ロール法Nb/Al 前駆体の加工限界であることを明らかにした。この 加工限界を考慮して、大型Cu-Niパイプ特注品、シ ートへの変更した最外層Nbマトリックス材、押し 出しまま材・六角シングル線のそれぞれの伸線加工 性について事前検討を行ってその健全性を確認し、 4千トン静水圧押し出し機を用いて、同部材を用い た50kgマルチビレットの伸線加工を実施し、最終線 径(Cu-Ni除去後1.35mmΦ)まで無断線で2.6km長さ の長尺前駆体線の試作に成功した。(2)急熱急冷(RHQ)処理技術:到達最大加熱温 度のパラメータである通電加熱電流値IRHQに対して、 急冷後の生成相および2次熱処理(変態熱処理)後 の超伝導特性の変化を詳細に調査し、温度に換算し て1900℃-2050℃の領域から急冷すると単相のbcc過 飽和固溶体が生成し通電加熱温度のバラツキに対し て最終的な超伝導特性が鋭敏に変化しないプラトー 領域が存在すること、さらに通電加熱温度を高温に すると、Al-poorとAl-richな2種類のbcc相となる部 分溶融領域、次いで再び組成が均一となる完全溶融 領域が現れることを明らかにした。これより1900℃ 付近では、既存の状態図と異なって、Al濃度が少な くとも25at%以上までbcc相が拡張していることが判 明した。このプラトー領域を利用して、上記2.6km 前駆体線の半分を利用して、1300mのRHQ処理を実 施しその前後端のIcが一致することを確認した。(3)安定化材複合技術:bcc相の過飽和固溶体が室 温で良好な展性を有することを利用して、Cuストリ ップを線材外周に巻き付けてそのまま平角形状に圧 延成形するクラッド加工法を開発し、この方法によ り280mのRHQ処理材から370mのCuクラッド安定化 Nb3Al線材の作製に成功した。なお、クラッド加工 時の約40%の塑性変形が変態を促進させ、Jcを2倍 に向上させることを明らかにした。また、高温にお いてAgがNbと反応しないことに着眼し、シングル ビレットでJRの中心ロッド、またマルチビレットで NbダミーフィラメントおよびJRフイラメントをそれ ぞれNb被覆Agロッドに置き換えて体積比で35%ま でAgを含む内部安定化材の開発に成功した。Cuク ラッド加工材と異なり丸線形状での利用も可能で、 核融合や加速器などの大電流容量導体の素線として 利用が期待できる。さらに、イオンプレーティング 法(IP法)を用いてNb3Al急冷処理材表面に銅を薄 く強固に付着させ、その後通常の電解メッキにより 銅を多量に複合する技術も開発した。(4)変態熱処理技術:bcc相過飽和固溶体からA15相 へ変態する際に一旦bcc相がD03相に規則化すること、 そのため最終的なA15相にはAlが濃化した面状欠陥 が生成することを明らかにした。変態熱処理温度は 750-800℃が最適であること、しかし、面状欠陥が生成 してしまうと母地の組成がAl-poorになりTc,Hc2が若 干低下することを明らかにした。また、室温から変態 温度までゆっくり昇温するとbcc相が規則化して超伝 導性が劣化すること、しかし、急冷後に実施する塑性 変形プロセスが超伝導特性劣化の抑制に効果的であ り、速い昇温が困難なWind-&-Reactコイル熱処理では この塑性変形が不可欠であることを明らかにした。 (5)コイル化技術:Al2O3繊維で絶縁被覆したCuク ラッド加工線材300mを利用してWind-&-Reactコイル を試作した。Ar雰囲気中で800℃まで5時間かけて 昇温し10時間保持するコイル変態熱処理を行い、そ の後蜜蝋で含浸処理した。長尺線の両端短尺試料の 臨界電流Icに匹敵する電流値までコイルに電流を流 すことができ、14Tバイアス磁場中で3.2Tの追加磁 場発生に成功し、これにより長手方向のIcの均一性 を確認した。NMR応用に不可欠な超伝導接続抵抗は 1.2T以下で10-11Ω以下と十分低いこと、またn値 (4.2K,21T)は約25と十分高いことを明らかにした。 長尺線材の総合性能試験として、コイル電流密度を 更に向上させるために絶縁材の厚みを薄くすること やコイルの大型化に伴う最適な変態熱処理方法の検 討が、現在も、引き続き実施中である。(6)変態技術の高度化:高速で昇温するとbcc相の 規則化が抑制される。2回RHQ処理等により1000℃ 以上で不規則bcc相から変態させると、変態熱の解 放によりアップクエンチ現象が生じて不規則である が面状欠陥密度の低いA15相を生成できること、そ の後、750-800℃で長範囲規則度改善のための熱処 理を行うと通常のRHQT法よりTcで0.5KまたHc2で4T 高くなること、また、高磁界のJcが大幅に改善するこ とを明らかにした。さらに、高温変態熱処理には内部 安定化方式が、またコイルの高温変態熱処理には通 電加熱が原理的に適用可能であることを確認した。 (7)合金添加技術:Alに少量のCuを添加したRIT法 Nb/Al前駆体をRHQ処理すると急冷途中にA15相に 変態してしまうがHc2 (4.2K)が29.3T、化合物相あ たりのJc(21T,4.2K)が620A/mm2に改善されること を明らかにした(2元系で通常のRHQT法の場合、 26T, 345A/mm2)。臨界磁界が大幅に改善する可能性 のあるNb3(Al,Ge (Si))に関しては、鋳造材が脆い 共晶組成・ Al-Ge合金およびAl-Si合金に室温延性を 付与する方法を開発した。即ち、ガスアトマイズ法 と混合粉末を芯に充填した前駆体を途中低温でRHQ することにより生成した準安定Al合金から微細なGe (Si)粒を析出させる中間急冷法の2つである。3.外部資金研究と萌芽的研究Nb3Al以外の先進金属系超伝導材料の開発も、外部 資金を導入して積極的に進めた。また、外部資金の 獲得には至らなかった研究には、機構内競争的萌芽 的研究を立ち上げて対応した。以下に、概要を記す。 (1)核融合炉の超強磁場化のための要素技術の開発 (原子力試験研究委託費)H13-H15 (代表 竹内): 5カ年計画の後半3年の成果として、Ag内部安定 化・急冷法Nb3Al素線がCu線と一緒に撚られてステ ンレス製コンジットに封入された構造を有するCIC 導体を試作した。コンジット内部のケーブル間の隙 間を液相と気相が区別できない臨界状態ヘリウムが 強制的に流れて超伝導線を冷却することを特徴とし た核融合炉超伝導マグネットに不可欠な大電流容量 導体である。液体ヘリウム中に浸漬冷却してCIC導 体の14TでのIcが3.5kAとなって、素線Icの16倍で定 義される設計値にほぼ匹敵することを確認した。(2)マイクロ複合粉末を原料としたMgB2等先進化 合物系超電導線材の開発(NEDO) H14-H17 (代表 菊池):マイクロ複合粉末を原料に用いた改良型 PIT (powder in tube)法により前駆体線材を作製し、 今まで線材化が困難であった化合物系超電導材料の 線材化と更なる特性向上を図った。Mg2Cuを出発材 料とすることにより、Mg粉末表面の酸化皮膜のた めに生じていたMgとBとの拡散反応抑制に関する材 料学的課題を解決し、MgB2の新しい合成法の開発 に成功した。(3)線状連続急冷処理による難加工超伝導材料の先 進複合線材化プロセッシング(科研費)H15 (代表 伴野):急熱・急冷技術を用いてNb/Al-Ge複合線材 の加工性を改善し、Nb3(Al,Ge)超伝導線材(臨界 磁場約40T)の前駆体となるNb/Al-Ge複合極細多芯 線材の作製に成功した。(4)低誘導放射化・超伝導線材基盤技術の確立(原 子力試験研究委託費)H16-H17 (代表 竹内):5 カ年計画の前半2年の成果として、次世代核融合炉 用に開発が進行中の急熱急冷法Nb3Al線材について、 放射化した際のNb (マトリックス、拡散バリア)お よびAg内部安定化材が長半減期の各種であることを 考慮して、NbをTaに置換すること、またCuがTaと 高温でも反応しないことに着眼してTa被覆Cuフィラ メントを内部安定化材に採用することにより、低誘 導放射化対応のNb3Al線材の試作に成功した。(5)新製法による高臨界電流密度Nb3Sn超伝導線材 の創製(機構内萌芽研究)H16-H17 (代表菊 池):固溶体をSn源とするブロンズ法の欠点を改善 するため、Sn含有量が遙かに多いCu-Sn化合物・微粉 末を出発材料とするNb3Sn線材の新製法を開発した。(6)急冷変態法を適用したV3Ga線材の研究(SMC 萌芽研究)H15 (代表 竹内):Nb3Alと同じA15型 化合物のV3Gaも、急冷するとNb3Alと同様に過飽和 固溶体が生成することが知られており、V3Gaに RHQT法が適用できることを実証した。(7)要素線の拡散反応を利用したNb-Zr合金多芯線 の開発(SMC萌芽研究)H16-H17 (代表竹内): NbとZrの要素線を束ねてこれを拡散反応することに より、溶解鋳造工程を省略したNb-Zr合金多芯線の 新製法を開発した。(8)新方式NMR分析技術の開発(科学技術振興費) H15-H17 (代表 酸化物線材G 北口仁):金属線 材グループとして積極的に参画し、サブテーマとし てのNb3Al超伝導線材の高性能化研究に従事した。4.共同研究Nb3Alの実用化に貢献すべく、国内外の研究機関 と下記の共同研究を実施した。●足利工大(クラッドチップ押し出し法)。●加速器応用を目指して、KEK (客員教授)、オ ハイオ州大、フェルミ国立研、ウィスコンシン 大と共同研究を実施。●核融合応用を目指して、核融合研(客員教授)、 原子力機構、オーストリア原子研究所と共同研 究を実施(中性子照射効果の評価)。5.表彰H14.6未踏科学技術協会超伝導科学技術賞(竹内) H14.11日本金属学会奨励賞(伴野)H15.5低温工学超電導学会優良発表賞(竹内) H16.5低温工学奨励賞(菊池)H16 日本金属学会優秀ポスター賞H17.5低温工学奨励賞(伴野)6.そのほか● Nb3Al特許:特許実施。● Nb基超伝導体に関する国際ワークショップ主 催(H16.2)。薄膜・単結晶グループの5年平田和人、石井聡(2003.4～)、大井修一、笠原成(2005.4～)、Marat Guifullin (2004.4～)、El Hadi Sadki (2002.1～)、竹屋浩幸、 茂筑高士、余珊(2002.4～)1.組織発足の経緯・目的2001年まで新超伝導材料に関する研究プロジェク トの特性評価コア、そして、2002年から新規超伝導 材料研究プロジェクトが始まり、薄膜・単結晶研究 としてグループの研究を行ってきた。当グループの 研究は高品質な超伝導体単結晶、多結晶を作製し、 構造解析、そして、その物性を極低温、高磁場、マ イクロ波等の諸条件の中で物理現象を究明し、この 中で見出された新規物性を利用したデバイスの基礎 を築くことにある。物性測定のため、作製された単 結晶にナノ加工を施すための加工技術を確立し、加 工された試料の測定技術開発する。そして、また、 2002年より超伝導体のサイズを小さくした場合に現 れる新規現象を究明するため、ナノ細線材料の作製、 測定技術開発と特性評価に取り組んできた。ナノ細 線は高温超伝導体が有するナノレベルの超伝導層に 準粒子或いは超伝導粒子を注入するための電極とし ても活用するためである。2.グループの活動経緯高品質単結晶の育成と構造解析―これまで平衡状態結晶成長方法として浮遊帯溶融 結晶成長法、アークメルト法、非平衡状態結晶成長 方法として静電浮遊結晶成長法、等を用いて作製に 成功した単結晶には、Bi2Sr2CaCu2O8+y (図1), Nd2-xCexCuO4, ReT2B2C (Re=Y,Ho,Yb,Lu ; T=Ni,Pd), NbB2,Nb(図 2),多結晶体には、Y2C3,Li2Pd3B,Li2Pt3B, RuSr2YCu2O6+y等がある。これらの作製された結晶に ついて、X線、中性子線回折測定を行ない、その結晶 構造、結晶性を解 析した。Bi2Sr2Ca Cu2O8+y単結晶では 多元系結晶として は非常に結晶性の 良い、二結晶X線 回折の半値幅で75 秒を記録している。図2静電浮 遊法による Nb単結晶図1Bi2Sr2Ca Cu2O8+y 単結晶超伝導磁性共存系―RuSr2YCu2O6+y結晶(右図参照)は超伝導が強磁性と共存する系として超伝導機構発現への磁性の関与を調べる格好の材料として知られ ている。特に、FeSr2YCu2O6+y結晶 は超伝導を発現させるためにはキ ャリアを導入する特殊な方法が必 要で、酸化還元反応条件を工夫す ることにより超伝導化に成功し、 超伝導転移温度(Tc)50Kを達成し た。また、詳細な中性子線回折実験 RuSr2YCu2O6+y 系結晶構造により磁性元素スピン分布の秩序化が観測された。硼炭化物系―1996年にTSFZ法により大型単結晶化に成功した ReT2B2C系単結晶は、磁性と超伝導とが共存する系 で唯一大型、純良な結晶性を有する超伝導体である。 Reサイトに磁性元素を入れ、その組成比を変えた単 結晶を育成し、磁性の影響を中性子散乱、磁化測定 等により調べた。この結果、磁性元素がある結晶軸 に沿ってスパイラル状に分布していることが判明し た。また、この材料には自発磁化の可能性があるこ とを示した。ナノ細線の作製と評価―ナノ細線の作製はナノサイズ電極を酸化物高温超 伝導体の超伝導層に設け、ナノレベルで超伝導特性 を制御する目的で行ってきた。右図はカーボンナノチューブを 金属液滴上に成長させた珊瑚礁 型の例である。その他、W-C系化 合物を収束イオンビームを用い て堆積させる方法も開発した。これは配線用に用い られ、ナノサイズで描画することができる。また、 カーボンナノチューブ自体も低温で抵抗が急激に下 がることも確認しており(超伝導ではないが)、そ の特性、物性を解明している。さらにナノサイズ金 属系超伝導体の作製をナノポーラスを用いた化学蒸 着法にて行い、その構造、超伝導特性評価を行った。新超伝導体とその物性―Y2C3超伝導体は合成条件によりTcが6Kから11.5 K まで変化し、最近ではさらに18 Kまで上昇すること が報告されている。C-C結合の存在とその結合距離 が超伝導の発現に重要な役割を果たしている可能性 があることを付き止めている。Li-Pd-B系超伝導体は2004年に東北大学戸叶教授と の共同研究により発見された希土類元素、遷移金属 元素を含まない超伝導体である。Tcは約8Kで、Pd元素をPt元素にTcは約8KでPd元 素をPt元素に置き換えた場合、約2Kに下がる。結晶 構造を右図に示した。結晶構 造は全く同じ構造をとるにも 関わらず、超伝導転移温度が 急激に減少することは非常に 興味深く、X線、中性子線回折 実験による構造評価から、 PdB6オクタヘドロン内のボン ド角が効いている可能性が有 ることを示した。物性評価――ジョセフソンプラズマ発振磁気相図の解明を行っている。―人工的ピン止め導入と磁気相図の解明酸化物高温超伝導体は超伝導層と非超伝導相とが 交互に積層した結晶構造を有し、超伝導層間に固有 ジョセフソン効果があることが1996年に発見されて いる。固有ジョセフソン結合は酸化物高温超伝導体  にジョセフソンプラズマが安定して存在することを 示し、逆に、ジョセフソンプラズマを励起すること により強力なTHz領域の光を発振できる可能性が理 論的に示されたが、現在のところ素子から外部への 発振は確認されていない(素子内部にジョセフソン プラズマが励起されていることは1998年に既に証明 されている)。―ジョセフソン磁束系酸化物高温超伝導体の特徴は結晶構造の層状性に よる強い異方性と高い超伝導転移温度による熱的な 揺らぎによって、磁場が超伝導層に垂直にかけられ た時には磁束線格子融解が一次転移として観測さ れ、実験・理論的にその磁束線相図が解明されてい る。磁場が超伝導層に平行にかけられたとき、磁場 はジョセフソン磁束線となって 酸化物高温超伝導体に侵入す る。ジョセフソン磁束線の磁気 的な相図については特に異方性 の強い超伝導体に関しては進ん でいなかった。ジョセフソンプラ ズマ発振の可能性を 探るべく、ジョセフ ソン磁束線フローの 特性を評価した際に ジョセフソン磁束線 フロー抵抗に周期的 な振動があることを 見出した。右図は実験に用いた素子であり、Bi- 2212単結晶を収束イオンビームにて加工したもので ある。その実験例を下図に示した。電流を超伝導層 に垂直に流し、磁場を平行にかける。するとジョセ フソン磁束線フロー抵抗には低磁場から高磁場まで 再現性のある一定周期の振動が観測された。その周 期は磁場に対して垂直方向の素子の幅のみによって 決定されており、普遍的な性質であることが証明さ れた。この周期的振動は絶対磁場測定、そして、テ スラオーダーの磁場でミリテスラの精度で磁場を測 定できることを示した。さらに周期的振動はジョセフソン磁束系の磁気相 図を解明する上で非常に有用であることを示した。 周期的振動が起こっている磁場、温度領域ではジョ セフソン磁束線は異方性の強さに従ってc軸方向に 潰れた三角格子を形成している実験的な証拠である ことを示した。現在のところジョセフソン磁束系が 格子を組んでいることを証明する唯一の実験事実で ある。これらの周期的振動、ジョセフソン磁束線フ ロー、電流一電圧特性等からジョセフソン磁束系の人為的に形、分布、数が制御さ れたピン止め中心を導入すること によって、酸化物高温超伝導体の 磁気相図の解明を行った。ピン止 め中心は収束イオンビームによる ナノサイズ柱状欠陥を導入した。右図はBi-2212単結晶に設 けたナノサイズ柱状欠陥を 有する試料のSEM写真と測 定の一例である。欠陥孔は 300nmの直径を有し、各孔 は1μm間隔で分布してい る。抵抗測定の結果では孔 の密度に対応するマッチン グ磁場の整数倍の磁場に抵 抗のディップが観測され、かつ、このディップは元 のBi-2212単結晶内の磁束線が液体状態である領域 においても観測されている。これはナノサイズの欠 陥を導入することで、Bi-2212単結晶の磁気的相図 を制御することが可能であることを示唆している。3. 5年間の組織の成果2001年―FeSr2YCu2O6+y結晶の超伝導化に成功。磁気 秩序の解明。2002年―ジョセフソン磁束線フロ ー抵抗に周期的振 動を発見。Physical Review Letters詩に掲載。2003年―平行磁場の磁気相図の解明。2004年―新超伝導体LiPdB系の発見。Physical Review Letters詩に2件掲載。日本物理学会詩(JPSJ) 注目論文賞受賞(東京工業大学との共同研究)。2005年―人工的ピン止め中心による磁束状態の解 明。4.研究分野の動向、展望高温超伝導体が発見されてから既に20年が経過し ようとしている。高温超伝導体発見当時に比べると 研究者の数、学会等での発表件数が減少してきてい る。しかしながら、酸化物高温超伝導体には、材料 作製の困難さにもかかわらず、金属系超伝導体には ない、そして、従来の材料では実現できない特徴的 な物理特性があることが次第にわかってきた。これ らの特徴を生かした新規デバイスへの基礎、或いは、 更なる新規特性の発見と解明を行うことがナノ材 料・ナノ加工技術の開発とともに今後この分野の鍵 となるであろう。5.組織運営上の問題点、反省点、提言等2006年度から特別研究員の任期が、一律、原則と して2年となり、優れた技術、才能を問わず、研究者 を手放さざるを得ない状況となってしまった。機構 内ではエンジニア職もあり、特別研究員についても 別の判断基準があってもよいのではないだろうか?SQUIDグループ発足と歩み糸崎秀夫(2004年4月より大阪大学教授、NIMSディレクター兼任)、石川智克(千葉工業大学大学院生)、小森和範、川岸京子 (2004年4月耐熱グループへ移動)、立木実、林忠之(2004年4月より仙台電波高専へ復職、NIMS特別研究員兼任)、福富勝夫 (2003年3月退職)、何東風、R. Koetiz (現フランス企業研究員)、E. Romans (現英国ストラスクライド大学)、1.SQUIDグループの誕生超伝導材料研究センターの発足に当たり、外部評 価委員より、超伝導薄膜のエレクトロニクス応用強 化が必要との進言を受け、2001年12月に、民間企業 にて高温超伝導薄膜を用いた超伝導量子干渉素子研  究を進めてきた糸崎秀夫をSQUIDグループを立ち上 げるディレクターとして招聘し、それまで超伝導薄 膜を研究していたメンバーを併合して、SQUIDグル ープを発足させた。2 .SQUIDグループの立上SQUIDは超高感度な磁気センサであり、その応用 研究をまず立ち上げることとし、SQUID評価のため の計測機器の整備や磁気シールドルームの設置など を2002年度に進めた。研究立上にあたっては、 SQUIDを用いた磁気顕微鏡、非破壊検査、バイオ免 疫診断などの研究開発環境の整備と推進を実施し た。人材としては、2002年4月から2年間仙台電波高 専より林忠之を特別研究員として採用し、SQUID研 究体制の整備やSQUID磁気顕微鏡研究を進めた。ま た、海外の一線の研究者2名を夫々半年間招聘した。 米国NISTからはR. Koetitzを招聘し、顕微鏡イメージ の画像処理技術を構築した。また、英国ストラスク ライド大学より、E. Romansを招聘し、SQUIDによ る非破壊検査研究を立ち上げることができた。さら に、研究交流として、ドイツ低温物理学研究所より D.Drungを短期招聘し、電子回路技術研究の加速を 図った。ドイツギーセン大学よりvon Kreutzbruckを 短期招聘し、非破壊検査研究に有効な有限要素法に よる誘導電流シミュレーション技術を立ち上げた。 また、2003年度より早稲田大学より立木実を主任研 究員として迎え入れ、SQUID研究の本格的稼動体制 を構築し、SQUID作成プロセスの立上を進めるとと もに、後述するNQR研究の立上を進めた。また、千 葉工業大学との連携により、同大学院生の石川智克 を2004年度から2年間研究生として受け入れ、磁気 顕微鏡の画像処理技術の展開を進めた。また、2004 年7月岩手産業振興センターより何東風を研究員と して雇用し、SQUID研究の強化を図り、SQUID用電 子回路の低雑音高速化を進めた。また、2003年度より、JSTの戦略的創造研究の地 雷探知技術研究を受託し、核四極共鳴(NQR)を利 用した爆発物の探知技術を新たに立ち上げた。立上 に当たっては、強磁場センターにおいてNMR研究を 進めている清水禎、端健二郎の強力な支援を得て、 急速な立上をすることができた。その結果、TNTな どの爆発物をリモートセンシングする可能性を実証 することに成功した。3. 5 5年間の組織の成果SQUID磁気顕微鏡開発SQUID磁気顕微鏡の空間分解能を向上するため に、試料とSQUIDの間に高透磁率の針を磁束線ガイ ドとして用いることにより、大幅な空間分解能の向 上を達成することができ、ミクロンスケールのレー ザプリンタートナーのイメージングに成功した。こ の成果は国際会議などで高く評価を受けている。NQR(核四極共鳴)による地雷探知窒素の核四極共鳴を利用した爆発物探知の技術 は、従来の金属探知やレーダ探知と異なり、爆発物 の化学成分を明確に判定することが可能であり、誤 認率が低く、アフガニスタンなどの復興支援への展 開が期待されている。爆発物の擬似材料として HMTを用い、30cmのリモートセンシングに成功し、 NQRの実用化の可能性を実証し、総合的な開発を JSTの支援を受けて進めている。4 .超伝導エレクトロニクスの現状超伝導を利用した高速デジタル回路開発、マイク ロ波受信機などの開発が進展している。またSQUID は、脳や心臓などの生体信号計測、バイオ免疫診断、 地質調査、食品検査、非破壊検査など広い分野への 展開が世界レベルで研究開発が進められている。 NIMSにおける磁気顕微鏡開発もその一環であり、 NIMSの成果は大いに注目と期待を集めている。図1SQUIDプロ ーブ磁気顕微鏡図2千円札夏目漱石の目の部分を、光学と磁気で観察.5 .今後の展開SQUIDグループでは、独自開発の走査プローブ SQUID磁気顕微鏡を微小部分を流れる電流を非破壊 非接触にて検出する技術などへ展開する予定であ る。また、NQRに関しては、化学物質のリモートセ ンシングとして、地雷探知や手荷物検査など、安全 安心な社会作りへの貢献を進める。6計算材料科学研究センター計算材料科学研究センターの5年大野隆央、阿部太一、新井正男、大出真知子、大沼正人(現材料研究所、ナノ組織解析G)、小野寺秀博、片桐昌彦、河野昌仙、 小林一昭、小山敏幸、佐々木泰造、下野昌人、鈴木哲郎、諏訪嘉弘、ソロヴィエフ・イゴール、田中秋広、天神真純、中田悦夫、 中村裕、野々村禎彦、橋本清、濱野悦子、胡暁、前園涼、松嶋茂憲、山本一雄、李群祥、ワン・ユアンス(王渊旭)1.はじめに計算材料科学研究センターは、2001年10月に材料 研究所・計算材料研究部を前身として、発足しまし た。社会生活を支える物質・材料の開発・改良を行 うための研究基盤技術として、計算材料科学は不可 欠です。本研究センターでは、物質・材料の諸性質、 現象に対し、その起源を明らかにするとともに予測 までを可能にする材料設計の理論的体系構築を目指 しました。さらに、その成果を広く普及し利用を促進 するための仮想実験システムの構築を図りました。2.ユニットの活動経緯本研究センターは、第一原理物性G、第一原理反 応G、強相関モデリングG、粒子・統計熱力学Gの4 グループから構成され、第一原理解析法、大規模解 析、量子モンテカルロ法、強相関モデリング法、分 子動力学法、Phase-field法等の様々な手法を用いて、 物質・材料の物性・特性を、電子状態、電子相関、 原子挙動の多様な視点から解析し予測することを目 指しました。この5年間の主な研究プロジェクトを 以下に示します。NIMSプロジェクト研究・仮想実験技術を活用した材料設計統合システムの 開発(2001年度～2005年度)・新規超伝導材料研究―理論サテライト(2001年度～2005年度)その他、多数のプロジェクト研究に参加し、さら に萌芽的研究も行いました。また、主な外部資金プ ロジェクトは以下のとおりです。振興調整費研究・原子配線の高度第一原理計算に関する研究(2000 年度～2004年度)・ナノヘテロ金属組織の精密解析による機能発現メ カニズムの解明に関する研究(2003年度～2004年度) 戦略的創造研究推進事業(JST-CREST)・Phase-field法による組織・特性予測法の確立 (2003年度～2007年度)計算科学技術活用型特定研究(ACT-JST)・ナノスケール触媒創成シミュレータの開発(2001 年度～2004年度)文部科学省ITプログラム・戦略的基盤ソフトウェアの開発―ナノシミュレー ション・システムの開発(2002年度～2004年度) 科学研究費補助金・高温超伝導層間ジョセフソン磁束量子系の新奇な 熱平衡相関とダイナミクス(2002年度～2004年度)・ MDおよび統計熱力学手法による金属ガラスのナ ノ構造解析(2003年度～2007年度)ナノテクノロジープログラム(NEDO)・ Phase-field法を用いた組織形成素過程の記述手法 の開発(2002年度～2004年度)数値解析にはNIMS材料数値シミュレータを使用 しています。初代システムNEC-SX4 (20CPU、 40GFLOPS)が1996年3月に導入され、2000年4月 にNEC-SX5 (32CPU、256GFLOPS)に更新し、2004 年4月に現システムHITACHI-SR11000/62 (62 ノ ー ド、992CPU、 6.7TFLOPS、 2TByte)に更新され、 計算能力は大幅に向上しました。また、計算機リソ ースの効率的な利用を図るため、ITBL協定機関と の間で計算機リソースの一部開放と相互利用を行っ ています。3. 5年間の組織の成果この5年間の主な成果の一部を下記に紹介しま す。他にも多くの成果があり、その詳細に関しては 本研究センターの各グループの記事をご覧下さい。 ○第一原理手法による表面ダイナミクスの解析・予 測:半導体薄膜成長における重要な反応過程である 原子の吸着・拡散過程を、従来のエネルギー論的な 解析から脱却し運動論学的に解析した。特に、水素 終端Si (001)表面における吸着Si原子の拡散過程に 表面水素原子が支援的に寄与する特異な表面拡散過 程を始めて見出し、水素終端化がエピタキシャル成 長に与える効果を原子レベルで解明した。水素終端Si (001)表面に吸着したSi原子○大規模量子シミュレーション手法の開発:従来の 第一原理手法は計算量が系の原子数Nの3乗に比例 し増大する。計算量が原子数Nに比例するオーダー N手法の開発が、次世代の材料開発、ナノバイオテ クノ ロジー、ナノ触媒などの研究に必須である。第 一原理オーダー N法プログラムCONQUESTの開発を 行い、現実のナノ物質系の一つである、Si (001) 上のGeクラスター等、数万原子を含む系の第一原理 計算に成功した。Si (001)上のGeクラスターの電荷密度(約2万原子)○固体金属への第一原理拡散量子モンテカルロ法の 適用:拡散量子モンテカルロ法は、電子間相互作用 の効果を最も精密に調べることのできる理論手法で ある。従来、分子を中心に量子化学分野で用いられ てきた。金属の多電子波動関数の取り扱いや解析結 果の処理法を確立し、金属(bccNa)への適用に初 めて成功し、凝集エネルギー等を高精度(凝集エネ ルギーの実験との差は0.002eV)に解析できること を示した。金属Na中の原子核位置の電子周りの2体分布関数○新規コバルト系超伝導のスピン三重項ペアリング の提案:当機構の実験チームが発見した新規超伝導 体NaxCoO2 ・ yH2O (転移温度5K)は、電気伝導を担 うCo原子サイトが三角格子を形成するという著しい 特徴を持つ。六回対称性を持つ系の群論的性質と、 フェルミ面の幾何形状に基づいたエネルギー論的考 察を単一バンドの範囲で行った結果、フェルミ面セ グメント間のペア散乱によるスピン三重項超伝導状 態が形成されるという興味深い可能性のあることが 判明した。現在、この超伝導体でのスピン三重項ペ アリングが多くの実験によって確認されている。コバルト酸化物の超伝導ペアリング状態○Phase-field法による組織形成の動的過程に対する シミュレーション技術の開発:Fe-Cu-Mn-Ni合金に おけるα相(bcc)の相分離過程のPhase-fieldモデル を作成し、Fe-20at%Cu-5at%Mn-5at%Ni4元合金の 873Kにおける相分解過程のシミュレーションを行 った。初期にCu-rich相が形成され、MnとNiはCu-rich 相に分配されるが、時効の進行に伴いMnとNiはCuFe-20at%Cu-5at%Mn-5at%Ni合金の873K等温時効にお ける2次元相分解計算析出相の界面に濃化することを明らかにした。Fe- Cu-Ni-Mn4元系合金は軽水炉圧力容器鋼の基本成分 系であり、特にCuの析出が材料脆化の原因と考えら れている。Mnの界面偏析は他の研究者によって実 験的にも確認されており、本成果は圧力容器の機械 的性質を理解する基本情報を与えるものと思われ る。○仮想実験技術を活用した材料設計統合システムの 開発:プロジェクトは、政府のe-Japan重点計画で推 進しているITBLプロジェクトの一環として行われ た。図に示すように、数値シミュレーションやデー タベース、知識処理などを統合化したシナリオベー スのタスクフローエンジンをもつ計算機環境を仮想 実験プラットフォームとして、現場の技術者や教育 関係者などに広く提供しようとするものであり、並 行してこの上で動く各種材料設計アプリケーション モジュールソフトウエア開発も行った。このような研究は、NIMS実験グループを初めと して、国内外の研究・教育機関、産業界との密接な 連携の下に行われ、その成果は積極的に公開・発信 しました。以下に、論文、特許、共同研究、研究会 開催の年度毎の件数を示します。2001年 2002年 2003年 2004年 2005年論文数 36 21 54 59 68特許数 0 0 1 0 0共同研究 0 0 2 3 2研究会 0 0 1 1 1この他にも、開発プログラムを「仮想実験プロジ ェクト」の統合化システム(MatEX)に組み込みホ ームページで公開するとともに、2004年度には NIMS認定ベンチャー企業「(株)材料設計研究所」 を設立しその普及を図りました。第一原理物性グループの5年大野隆央、稲川亜紀子、牛尾二郎、小山紀久、木野日織、田島暢夫、館山佳尚、奈良純、西野正理、宮崎剛1.はじめに第一原理物性グループでは、材料・物質の構造・ 物性・機能を第一原理的に高精度に解析・予測する ことを目的にし、そのための計算科学手法の開発、 及び科学的・工業的に重要な対象系の現象解明を目 指しました。2.活動経緯我々の主要な手法である第一原理計算は、密度汎 関数理論(DFT : Density Function Formalism)に基 づく解析手法であり、構成原子の種類だけから物質 の電子状態を高精度に解析することが出来ます。近 年の解析手法の発展と計算機パワーの向上により、 数百原子程度の多数原子群の構造、物性、機能の解 析・予測が可能となってきました。我々は、表面・ 界面、固体欠陥、有機固体、ナノ物質等の多様な対象 に適用し、その構造・物性の解明を図りました。こ の5年間の主な研究プロジェクトを以下に示しま す。NIMSプロジェクト研究・仮想実験技術を活用した材料設計統合システムの 開発(2001年度～2005年度):第一原理解析法の 開発NIMS萌芽的研究・物質の破壊メカニズムに関する量子古典融合手法 による研究(2000年度～2001年度)・固体中の欠陥形成及びダイナミクスに関する理論 的研究(2002年度～2005年度)また、外部資金プロジェクトは以下です。科学技術振興調整費研究・原子配線の高度第一原理計算に関する研究(2000 年度～2004年度):表面ナノ構造の創成と物性の 解析・予測、分子細線を通した量子伝導特性の解明計算科学技術活用型特定研究(ACT-JST)・ナノスケール触媒創成シミュレータの開発(2001 年度～2004年度):オーダーN法による大規模解 析手法によるナノ触媒系シミュレーションの開発・ナノ物質・量子シミュレータの開発(2001年度～ 2004年度):第一原理法―TB法―古典法を融合 した大規模シミュレーション手法の開発文部科学省ITプログラム・戦略的基盤ソフトウェアの開発―ナノシミュレー シ ョン ・ システムの開発(2002年度～2005年 度):次世代半導体ナノデバイス開発促進のため のナノ物質の構造・物性・機能の解析・予測シス テムの開発科学研究費補助金・高圧下等環境下の分子導体の第一原理計算及び諸 物性の理論的予測(2004年度～2005年度)・第一原理オーダー N手法の開発とナノ物質への応用(特定領域研究2005年度～2008年度)これらの研究により、(1)表面物性のenergeticsからdynamicsへの展開(2)機械的特性の微視的解明(3)無機物質から有機系、分子系への展開(4)ナノ物質の構造と機能の解明(5)新たな手法開発への挑戦等を目指しました。以下に、5年間の研究成果を紹 介します。3.5年間の研究トピックス3.1表面ダイナミクス物質表面の性質を変えるために異種原子で表面を 被覆することがよく行われている。表面被覆は原 子・分子の吸着、拡散などの表面ダイナミクスに影 響を及ぼし、その結果、エピタキシャル成長などの 成長様式を著しく変化させ、制御する手段になると 期待されているからである。最も重要な半導体の一 つである Si に対する表面被覆物質と して水素原子が よく使われ、研究が進められている。しかしながら 原子レベルでの振る舞いについてはよくわかってい ない。そこで我々は水素終端Si表面でのSi原子吸 着・拡散について第一原理手法を用いて理論的に調 ベ、水素終端の効果について考察した。水素終端Si 表面にふらせたSi原子は水素原子を表面から引き抜 いてSiHとして表面に吸着する。この吸着SiHはさら に他の表面Si原子から水素を引き抜いて、エネルギ ー的に最も安定な吸着SiH2を形成します。従来、水 素終端処理によりSi原子吸着が阻害されると考えら れてきましたが、そのような効果はないことがこの シミュレーションからわかった。さらにその拡散過 程を調べたところ、水素原子の移動が非常に重要で あることがわかりました。すなわち、吸着Si原子は H原子2個とずっと結合したまま拡散するではな く、表面との間で水素原子の受け渡しをしながら拡 散することがわかった。その拡散バリアは清浄表面 と比べると非常に大きく、水素終端によってSi原子 の拡散は極めて抑制されていることがわかった。近 年、水素終端処理を施すこ とによってSiのエピタキシャ ル成長が阻害されることが 実験的に報告されているが、 それは吸着の阻害によるの ではなく、拡散の抑制のた めだと考えられる。急速に進む半導体デバイ スの極微細化に伴い、遷移 金属とSiとの反応は非常に重 要なトピックスとして精力 的に研究が進められている。 水素によるSi表面の平 坦化のメカニズムそこで我々は第一原理計算によってこの点について 調べた。計算結果より、Si表面のH終端化による興 味深い反応が予測された。ベアなSi (001)表面下 では安定に存在することが出来たNi原子が、H終端 化Si (001)表面下では安定に存在することが出来 なくなる。このことから、H終端化により、Si表面 下のNiを、表面上へと析出させることが出来ると考 えられる。原子レベルで平坦なSi (001)表面を作 成しようとする際、ダイマー欠損欠陥(Dimer vacancy defect)の存在が大きな問題となる。この表面欠陥 の最大の原因は、欠陥近傍の表面下に存在する金属 不純物原子、特にNi原子による汚染であると考えら れている。Si表面近傍の金属不純物原子による汚染 も、デバイスプロセスにおいて好ましくない。H終 端化によるNi原子の表面析出反応から、それに伴う Si表面の高純度化とともに、欠陥密度の低減による Si表面の高平坦化が期待される。これらの効果を利 用することにより、アニーリングなどの従来の表面 処理の方法では達し得なかったレベルでのSi表面の 高純度化、および高平坦化が、室温程度の低い温度 で行うことが可能になる。H終端化によるこれらの 効果は、Matsuuraらにより、実験的にも確認された。自動車排気ガス中の有毒成分の一つである窒化酸 化物(NOx)の還元過程は空気汚染を防ぐためにと ても重要な化学反応である。そのために白金(Pt) などの遷移金属微粒子を用いた触媒がよく用いられ る。それゆえ、Pt上のNO分子の吸着などについて は長年にわたって調べられてきている。しかしなが ら驚くべきことにこのような非常に単純な系におい てさえ基本的な吸着構造についての決着がついてい なかった。従来は高密度の吸着サイトとして、実験 的にfccサイトやontopサイトが提案されていた。し かし実験の振動スペクトルについてうまく説明する ことが出来ていなかった。そこで我々は第一原理計 算を用いてこれを解析した。すると、このような密 度ではfccサイト吸着とontopサイト吸着が共存して いることがわかった。また、この構造について振動 解析を行ったところ図のようになった。グラフでは ピークが二つ見えるが、片方は大きいがもう一方は 小さく見える。これは吸着種の数の違いではなく、 基板との間の電子移動が影響した双極子―双極子相 互作用によって引き起こされるということを新たに 提案した。このような現象は遷移金属表面に高密度 に吸着したCO分子やNO分子には一般に起こると考 えられるため、実験結果を解釈するときにはこの効 果を心に留めておくべきだと思われる。Pt表面上のNO分子とその振動解析結果3. 2機械的特性の解明材料中の欠陥の形成・拡散がマクロな機械的特性 に多大な影響を及ぼすことはよく知られているが、 その原子スケールでの振舞いについては不明な点が まだ数多くある。我々は、高精度な第一原理計算を 用いて金属・半導体中の欠陥形成・ダイナミクス・ 不純物効果等について数々の新しい知見を得た。産業的に重要な問題となっている鉄鋼等の水素脆 性破壊の微視的メカニズム解明を目標に、第一原理 計算を用いて鉄中の空孔と水素の相互作用について 解析を行った。常圧下における鉄中の主要空孔―水 素複合体が従来信じられていたVacH6ではなく VacH2 であることを明らかにした。その要因がH-Fe間に生 じる共有結合と空孔内Hのクーロン反発の競合によ ることが明らかになった(上図)この発見によりエ ネルギー的に不利と考えられていた常圧下での空 孔―水素複合体の結合が逆にエネルギー的に有利で あることがわかった。更に水素トラップ起因による VacH2の対称性の破れは、水素なしの場合の球対称 なクラスターと対照的に、異方的(平坦)な空孔 (―水素)クラスター形成を誘起することを示した。 (上図)この異方的クラスターはクラック形成・塑 性変形促進と密接に関連づけられ、そこから水素脆 性破壊の微視的メカニズムの新しい見方を提示し た。半導体中の転位はデバイス特性を決定づける重要 な欠陥の一つであるが、長年の研究にもかかわらず 最も基本的なSi中の転位でさえ、そのダイナミクス の素過程すら明らかではなかった。そこで本研究で はSi中の転位のダイナミクスを律速すると考えられ ている30°部分転位の拡散過程について、大規模第 一原理計算により検討した。得られたキンクの形成 エネルギーおよび拡散バリアは実験結果と非常によ い一致を示しており、Si中の転位ダイナミクスは 30°部分転位に律速されることを計算で初めて示し た。またすべり速度の活性化エネルギーの評価から、 転位のダイナミクスがこれまで考えられてきたキン ク同士の衝突が律速されるのではなく、何らかの非 衝突モデルに従っていることが示された。3. 3有機導体BEDT-TTF系のような電荷移動型の有機固体(分 子性固体)は、一般に低次元性が強く、金属絶縁体 転移、反強磁性転移、超伝導転移など様々な興味深 い現象を示す。これらの物質は一般に柔らかく、小 さな圧力によって劇的な物性の変化を示すものが多 く存在する。さらに、最近の実験手法の発展により 超高圧下、一軸性の圧力効果などが精力的に調べら れており、新しい有機超伝導体の発見など興味深い 現象が数多く報告されている。しかし、圧力下の実 験の困難さのために、構造、電子状態に対して実験 から得られている情報は限られている。我々のグル ープでは、密度汎関数法にもとづく第一原理電子状 態計算を精度良く、効率的に行うことによって、β'- (BEDT-TTF)2ICl2等の有機固体に対して、高圧下や高圧下有機超伝導体β'-(BEDT-TTF)2ICl2の結晶構造一軸性圧力下の結晶構造(格子定数、内部座標)、 バンド構造を理論的に再現、予測することを試みた。 さらに、得られたバンド構造をもとに作られる信頼 性の高い理論モデルに対してスピン揺らぎに基づく 理論解析手法を用い、超伝導発現機構の解明、超伝 導転移圧、転移温度の再現と予測などを行うことを 目指した。有機固体の圧力効果に対する第一原理計算による 研究を行うために、我々はまず圧力下の構造最適化 手法に関する計算精度のチェックを詳細に行った。 密度汎関数法に基づく通常の第一原理手法では、一 般に弱い分子間相互作用を表すことに問題がある場 合が多いが、我々の行った計算結果と常圧下の実験 データなどを比較すること等により、電荷移動型の 有機固体に対しては第一原理計算による構造最適化 の精度が高いことが分かった。これは、理論計算に よる圧力下の詳細な構造決定が可能であることを示 している。我々は、この手法を様々な系に適用し た。最初に(CH3)4X [M(dmit)2]2と表される系(X=N, P ; M=Ni, Pd)に対する圧力効果の研究を行った。 これらの物質の結晶構造は同じ空間群に属するが、 Ni塩とPd塩では、定性的に異なる物性を示すことが 実験から示されている。我々は第一原理計算による 圧力下の構造最適化を行うことによって、Ni塩は常 圧下で1次元的な電子状態を示すが、圧力下で、よ り2次元的になること、一方Pd塩は常圧下で2次元 的な電子状態が逆に圧力により、より1次元的にな ることを示した。次に行ったのは、β'-(BEDT-TTF)2ICl2、そしてβ'- (BEDT-TTF)2AuCl2に対する超高圧下の構造と電子 状態である。この二つの物質の常圧下の構造と物性 はほとんど同じであるが、圧力下ではICl2塩が金属 的になり低温で超伝導転移を示す(8.2GPaにおける 超伝導転移温度14.2Kは有機超伝導体の最高転移温 度)のに対し、AuCl2塩に対しては約10 GPaの圧力 をかけても金属化すら起こらない。我々は、24GPa (実験では現在、実現困難)までの圧力下の構造と 電子状態を第一原理計算で求めた。その結果、圧力 による構造変化は従来考えられてきたような単純なAuCl2塩のフェルミ面の圧力変化ものではないことが分かった。さらに、この二つの 塩のバンド構造は常圧下では擬一次元的であるが、 圧力をかけることによってICl2塩は2次元的、AuCl2 塩は3次元的になることを示した。また、この第一 原理計算で得られたバンド構造を再現するような Tight Binding (TB)モデルを構築し、それを用いて スピン揺らぎに基づく理論解析を行い、反強磁性転 移温度、超伝導転移温度を求め、ICl2塩で観測され ている温度・圧力相図の再現に成功し、高い超伝導 転移温度の原因を明らかにした。また、一軸性圧力下で観測されているα-(BEDT- TTF)2I3の特異な電子状態に対する第一原理計算を 行い、バンド構造の一軸性圧力による変化、温度に よる変化を明らかにした。本研究の一部は、科学研究費補助金特定領域研究 「新しい環境下における分子性導体の特異な機能の 探索」の平成16―17年度公募研究課題「高圧下等環 境下の分子性導体の第一原理計算、及びそれに基づ く理論解析」によって行われた。3. 4ナノ物質の電気伝導近年、実験技術の進歩によってナノサイズの物性 に注目が集まっている。その中でもナノサイズの電 子輸送現象は、近年のデバイスの微少化や、最近研 究が盛んになってきている分子デバイス、ナノワイ ヤによる伝導などと関連して非常に興味が持たれ研 究が進められてきている。このような問題に対して は、平衡状態を扱う従来の第一原理計算手法は使う ことが出来ない。電極間にバイアス(電位差)があ る状態での電子の散乱問題を解かなければならない からである。また系の境界条件として従来は周期系 か孤立系を扱っていたが、伝導計算では開放系の計 算をしなければならない。我々のグループではリッ プマン・シュインガー法及び非平衡グリーン関数法 を用いた伝導特性解析プログラムの開発をすすめて いる。Alは単純金属のためジェリウムによる近似が非常 に有効であると考えられてきた。そのため、Al細線 の伝導特性解析においても細線に原子構造を考慮し ても電極としては原子構造を考えずにジェリウムで 置き換えたモデルを用いて解析がなされてきた。 我々は結晶電極の効果を見るために電極にAl原子層 を増やしていったときの透過率曲線、I-V曲線の変 化を調べた。すると、図のように結晶性を考慮する にしたがって同じバイアスでも電流が小さくなるの がわかった。さらに解析を行ったところ、σ軌道に はほとんど変化がないものの、π軌道には大きな変 化があり、それによって電流が小さくなっているこ とがわかった。つまり、ジェリウム電極はπチャン ネルのみを過大評価していることがわかった。ジェ リウム電極は定性的な評価には簡単なモデルである こともあり非常にいいが定量的な評価をする場合に はその影響は一定ではないため注意を要する。Al細線のI-V曲線及び微分コンダクタンス次に有機単分子伝導の典型例として、金電極に挟 まれたベンゼンジチオール(BDT)分子の伝導特性 を示す。図は結合構造を変えたときの透過率曲線で ある。結合構造に依存して伝導特性が非常に異なっ ていることがわかる。さらに、これらに対する分子 軌道の寄与についても調べた。図中にある番号は分 子軌道の番号である。同じ分子軌道でも結合構造に よってその寄与が大きく変わることがわかる。この ことは全ての分子軌道が伝導に寄与するのではない ことを意味する。以上のことは分子伝導を研究する 上で、分子固有の性質のみならず、接点構造を考慮 することが非常に重要であることを示す。さらに金 電極以外の可能性を考えるためPt, Ag, Cu電極につい ても計算した。その結果、Pt電極は結合も強く透過 率も大きいという結果が得られた。このことからも、 電極材料として有用なのではないかと考えられる。 透過率のピークは分子準位に密接に関わっているこ とがわかったため、分子の準位をなんらかの方法で 移動出来れば透過率のコントロールが可能になるこ とが示唆される。一つの方法として他原子で電極を 修飾することが考えられる。我々はPt電極にK原子 を導入した場合のBDTの透過率を調べた。すると、 フェルミ準位から離れた準位はその影響を大きく受 けるがフェルミ準位近傍ではほとんど影響を受けて いないことがわかった。このような準位に依る差に ついては今後の検討課題である。金電極に挟まれたBDT分子の透過率曲線DNAは様々な立体構造を自己組織化的に形成する ことから、次世代の導線の有力な候補となっている。 DNAの電気伝導度に関してはさまざまな実験が行わ れているがμmオーダーのサイズのDNAで10-4Ωcm から106Ωcmまでさまざまな値をとっており実験的 にDNAの電気伝導の値は確定してない。一方、理論 的な研究によるとDNAはleV程度のHOMO-LUMOギ ャップをもつ絶縁体であり、フェルミ準位はギャッ プの中にあることから室温以下の低エネルギー励起 で大きな直流電気伝導を示すことは不可能である。 本研究では水和水の有無による金属カチオンの電子 状態の変化に着目した。水和水があるときフェルミ 準位はギャップの中にあるが、水和水がないとフェ ルミ準位が移動し、HOMOにホールを空けることを 第一原理計算で示した。このホールのドープが通常 のシリコン半導体のように大きな伝導度の上昇をも たらし、何桁も違う伝導度実験結果がDNAの置かれ ている環境の変化によるものであると示唆した。ま た、アンダーソン局在を基にしたI-V特性の解析も 行った。このようにDNAを用いた次世代ナノデバイ スの可能性を提案した。金属イオンからDNA鎖への正孔の移動3. 5 新しい解析手法の開発(a)大規模系の計算手法密度汎関数法に基づく第一原理計算手法は、結果 の信頼性の高さから様々な分野に適用され、材料科 学にとって必須の手法となっている。最近の計算手 法の発展、計算機の速度向上のために、現在では数 百原子系に対する第一原理分子動力学が(例えば、 NIMSの材料数値シミュレータなどを用いることに よって)可能になっている。一方、生体反応や現実 の複雑なナノ構造をシミュレートするのには、少な くとも数千から数万原子を含む系を扱う必要がある が、現在用いられている手法では計算量が系の原子 数Nの3乗に比例するために、これらの系に対する シミュレーションを行うことは現実的に不可能であ る。そのため、計算量が原子数Nに比例するオーダ ーN法第一原理計算手法の開発が、次世代の材料開 発、ナノバイオテクノロジー、ナノ触媒などの研究 において必須になっている。我々は、ACT-JSTプロ ジェクト「ナノ触媒創成シミュレータの開発」(平 成13年―16年)において、英国University College LondonのM. J. Gillan教授のグループと共同で第一原 理オーダー N法プログラムCONQUESTの開発を行っ てきた。CONQUESTは現在、Kohn-Sham方程式を満たす波 動関数を求める代わりに、密度行列を最適化するこ とによってオーダーN法第一原理計算を実現してい る。密度行列を表すための基底は、計算効率の高い 擬原子軌道(Pseudo Atomic orbitals : PAO)と、平 面波展開と同等の高い精度を持つB-spline関数のど ちらかを選択できる。また、プログラムの特長とし て、精度の異なった3つの計算方法(non-SCF ab initio TB, SCF ab initio TB, full ab initio)を一つのプ ログラムで計算可能としている。どの精度の計算に おいても、全エネルギーと力の表式が完全に一致し ているので、構造最適化、分子動力学が可能である。 プログラムの並列化効率は非常に高く、さらに、 PCクラスタのような安価な計算機から超並列計算 機やベクトル並列計算機などの大型計算機まで、 様々なプラットフォーム上で高い実行性能を示す。 我々はすでに現実のナノ物質系の一つである、Si (001)上のGeクラスターの安定性の理論研究を開始 し、数万原子を含む系の第一原理計算に成功した。ACT-JSTプロジェクト(短期集中型)「複雑系の ための量子古典ハイブリッド型大規模数値解析手法 の開発」(平成10年度)において量子古典ハイブリ ッド計算手法及びそのプログラムCAMUSの開発を 行った。亀裂伝搬などの破壊現象、固体表面や溶液 内の化学反応の多くはマルチスケール現象と見なす ことができる。つまり化学結合変化が起きる中心部 分は電子状態変化が支配する一方、結合変化を伴わ ない周辺部分も反応中心に対する外場(応力、静電 など)の役割を担い、その両寄与とも重要となって いる。これらの現象の取り扱いを目指し、電子状態 解析が必要な領域には第一原理MD法やTight Binding (TB) MD法などの量子的な手法を、そし て電子状態変化が少なく経験ポテンシャルで充分な 記述が可能な領域には古典MD法を採用し、その境 界領域は異なる手法を連続的に接続し融合するため の新技術を導入した量子古典ハイブリッド手法を開 発した。上図に半導体中のクラック伝搬に対する応 用例を示す。赤が量子、黄・緑が境界、青が古典領 域を表す。我々の手法は量子計算が最も必要な領域 を見極めて自動的に領域の空間移動を行う技術を導 入しており、上図においてそれがうまく機能してい ることがわかる。またクラック近傍の量子的取り扱 いにより、実験の再現性が向上することを確認した。 我々のプログラムCAMUSはFortran90の様々な最新 技術を駆使したものとなっており、様々な系への応 用がしやすいものとなっている。CAMUSはNIMSサ イトから公開されている。(b)ナノシミュレーション手法の開発文部科学省ITプログラム「戦略的基盤ソフトウェ アの開発」プロジェクト(平成14年～平成16年)に おいて、東大生産研連携研究センターと共同で PHASE (第一原理計算)、UVSOR (誘電率計算)、 ASCOT(伝導計算)などのナノシミュレーション 向けプログラムを開発し、一般に公開している。物質の誘電応答は周波数に依存して変化し、 CMOSの動作周波数領域(1メガ～数百ギガヘルツ) においては、誘電率は電子状態と格子振動状態の双 方が電気的に分極することに起因する。次世代 CMOS用のゲート絶縁膜として検討されている高誘 Si(001)上のGeクラスターの電荷密度(約2万原子) 各種high-k材料の比誘電率の計算値。実測値を括弧内に 示す電体材料のほとんどは金属酸化物や金属シリケート などのイオン性の強い物質である。そのため、イオ ン振動に起因する誘電率が大きく、材料の誘電応答 を理論的に計算するには、電子系・格子系の双方の 解析が必要である。プログラムUVSORではそれぞ れ時間依存摂動法及び格子振動解析とBerry phase分 極理論を用いて解析することが出来る。表に代表的 なhigh-k材料の静的な比誘電率の計算値を実験値と 併せて示す。計算値は電子系eelec及び格子系誘電率 Clatticeの実測値をほぼ定量的に再現していることがわ かる。誘電率に異方性がある場合(alpha-Al2O3)で は、その異方性も再現できている。この計算手法を 適用することによって、今後の誘電体薄膜設計に大 きく寄与出来ると考えられる。(c) TDDFTの光異性化現象への適用1984年にRungeとGrossにより定式化された時間依 存密度汎関数理論(TDDFT)はその後外場に対す る線形応答を仮定して振動数ドメインで定式化され た表式による光吸収スペクトルなどの計算の面で盛 んに利用されて来た。最近、一旦原点に立ち戻り TDDFTをそのまま時間ドメインで扱うことによっ て実時間発展の直接解析に応用しよういう試みも出 始めて来ている。このような背景の下、我々は光励起状態のアト・ フェムト秒スケールでの電子―原子核ダイナミクス の第一原理的な解析のための、実時間発展(RTP) TDDFTの計算コード開発・精度確認を行った。実 時間発展部分はピコ秒以上でも計算精度が落ちない 杉野・宮本らによって提唱された高次のsplit- operator 法 を用い、更に励起初期のFranck-Condon状 態に対する近似としてKohn-Shamレベルの占有数変 更を用いた。実時間発展TDDFTの定式(pは―電子軌道、nは電子密度、 H_{KS}はKohn-Shamハミルトニアン、{R_l}は原子核座 標)、及び光励起状態のダイナミクスの概念図。我々の 手法はFranck-Condon(FC)状態からの励起状態のダイナ ミクス(Siポテンシャル面上の赤矢印)を精度よくシ ミュレートできることが分かったやアゾベンゼンの光誘起異性化反応についてRTP- TDDFTを適用し、励起状態の分子振動数や励起寿 命の実験との一致度を精査した。その結果我々の計 算手法は励起状態のポテンシャル面を精度よく再現 することが明らかになった。従って本手法は今後 様々な光励起状態研究―フェムト秒パルスレーザ技 術により観測されている超高速光励起反応のシミュ レーション、光合成・光触媒・フォトクロミック反 応のメカニズム解析、光駆動スイッチの材料設計な どーへの応用が可能な段階まで来たと考えている。光異性化を用いた光駆動スイッチの―モデル3 . 6成果発表以上のような研究成果は、NIMS実験グループを 初めとして、国内外の研究・教育機関、産業界との 密接な連携の下に得られたものであり、その成果を 積極的に公開・発信しました。以下に、論文、特許、 共同研究の年度毎の件数を示します。2001年 2002年 2003年 2004年 2005年論文数 7 10 10 23 23特許数 1 2 0 0 3共同研究 1 2 1 1 2論文はPhysical Review, Physical Review Letters, Journal of Chemical Physics, Applied Physics Letters等 の学術誌に掲載され、論文数は研究の進展とともに 年々順調に増加しています。特許としては、Si表面 の高純度化及び平坦化法、ダイアモンド膜成長法、 ナノ構造の選択成長法、アモルファス網状高分子の 分子構造生成法、絶縁膜用材料の成膜法、等に関す る特許を出願しました。また、第一原理電子状態解 析プログラムPhase (2003年公開)、量子・古典融合 手法プログラムCAMUS (2002年公開)等、開発し たプログラムの公開も行っています。2005年10月に ロンドン・ナノテクノロジー ・センター(英国)と の間でMOUを締結したのを始めとして、国内・海 外研究機関との共同研究も積極的に推進していま す。これらの計算技術の精度を確認するために、比較 的実験データのある固体ベンゼンの光誘起開環反応第一原理反応グループの4.5年佐々木泰造、新井正男、小林一昭、ソロヴィエフ・イゴール、中村裕之、前園涼、松嶋茂憲、山本一雄、ワン・ユアンス(王渊 旭)1.第1原理反応グループの発足第1原理反応グループは平成13年(2001年)秋計 算材料科学研究センターの発足と同時に前園、新井、 小林、佐々木の4人でスタートした。それ以前は、 旧金属材料技術研究所をその母胎とした材料研究所 に前園及び佐々木が所属し、新井・小林は旧無機材 質研究所からのメンバーを中心とした物質研究所に おいて研究を行ってきていた。機構発足から半年が 経過し、従来両研究所で半ば独立に行われてきた研 究を一体化し、より緊密な研究協力を行おうという 趣旨でセンターが発足し、併せてこのグループがス タートしたわけである。なお、発足後半年は、従来 の組織との併任という形であり、翌年の春、併任が 解除された。その後、1年間、他のグループより合 流した方もいたが、残念ながら(?)北海道大学へ と転出されていった。平成17年の4月には、グルー プの初の外国人職員としてソロヴィエフが新たに機 構に採用され合流した。グループ発足の経緯は、上記のように学術的指向 と言うよりは、組織的な性格が濃いものであった。 また、何れのメンバーもそれぞれ研究実績を積んで きており、それらを無視して新たに限られた一つの 問題に集中することは不可能に思われた。ただし、 研究手法として、第1原理に立脚した電子状態計算 に基づいて物性の解明に取り組むという点では共通 していた。これに加えて、あまり派手さはないが、 何れのメンバーも物性の基礎的性質に大きな関心を 持っているという点は、学術的指向の共通した点で あった。計算材料科学研究センターには、他に第1 原理物性グループが存在するが、恐らくこの点が違 いとなる。そこで、当グループでの目指すところを、 第1原理理論を駆使し、より基礎的な物性の解明と より基礎的な第1原理理論自体の研究、加えて第1 原理理論計算を実行する基礎的な環境の構築に設定 した(図1)。図1 計算材料科学研究センター発足式に用いたスライドの一部計算科学は、実験・理論に続く第3の科学と呼ば れることがある。しかし、理論式にのっとって実験 結果の説明を試みたり、或いは予測を行うという点 では、やはり理論の一部と見なすべき部分も多々あ る。この点で実験家との連携は非常に重要である。 グループ発足以前、前園・佐々木は千現地区、新 井・小林は並木地区で研究を行っていた。引っ越し の煩雑さもさることながら、いずれもそれぞれの地 区において実験家との繋がりを持っており、これを 失うことは残念なことであるため、グループの活動 も引き続き両地区で行うこととした。2.グループの活動論文として発表される研究活動は、次節で述べる こととし、ここではそれ以外の活動について記す。先に触れたようにメンバーは、グループ発足以前 より研究実績を積んでおり、それに伴って最終目的 は同じでも、それぞれが慣れ親しんだ計算プログラ ムコードを用いてきた。これらを統合することは事 実上不可能である。そこで、グループ内ではそれぞ れの持ち味を生かしつつ、協力関係を深めるために 共通データ書式を決めることとした。それによって 異なるプログラムコードによって得られたデータを 共通に解析を行うことが可能となる。我々は、第1 原理電子状態計算において現れる多くのデータにお いて統一的なデータ書式を設定した(図2)。また、 その後新たに作成された解析用コードは、この書式 に準拠したものとなっている。電子状態計算関係の プログラムコードは、現在様々な種類のものが使わ れるようになってきているが、将来データ書式の透 明性が確保できれば、理論の発展の上での意味は大 きいと考えられる。解析用コードは、SAZENプロジ ェクトと称して、Webページ上で公開されている。グループの紹介のために、計算材料科学研究セン ターのホームページ下に当グループのページを開設 した。これには、Webページの運用には多くの経験 を有する小林が尽力した。また、研究成果の更新な どの保守も同氏が多大な貢献をしている。このペー ジを基に様々な問い合わせを行ってくる外部研究者 もいる。一方、新井によってグループ内の情報交換 の場として、グループ内ページが開設された。Wiki によるページでメンバーによる書き込み・修正が可 能となっている。上記のような活動などにおいて期 待以上に活用されてきた。民間や大学など外部の研究機関との共同研究も進 められた。前園は、長期にわたり英国ケンブリッジ 大学に滞在し、また同大学よりTowler氏を招聘、 密接な関係を保ちながら共同研究を行ってきた。国 際的な共同研究は、この他、米国ペンシルバニア大図2 電子状態計算共通データ書式の例学との間でも進められつつある。また、ソロヴィエ フはロシア・金属物理研究所との間の共同研究を計 画しつつある。日常的な活動としてグループミーティングをほぼ 隔週で開催、連絡事項の他、上記のような活動に関 する打ち合わせ、各自の研究トピックスや最近の興 味ある論文を話題とした。3 .得たもの・得られたものこれまでの第1原理反応グループの研究成果など を以下に記す。3.1第1原理量子拡散モンテカルロ法による電 子相関の研究2001年4月より前園が新たにグループに参加した が、着任前よりケンブリッジ大学キャベンディッシ ュ研究所のR.J. Needs教授の下で進めていた第一原理 量子モンテカルロ法の固体周期系への適用に関する 研究を継続すべく、2001年6月～2002年12月の期間、 再渡英し、ナトリウム金属固体の凝集や電子構造に 関する研究を遂行した。帰国後、この成果を論文に まとめる一方、次の研究対象として磁性金属酸化物 NiOの電子構造計算に取り組んだ(現在も継続中)。図3 第1原理反応グループの公式ホームページ尚、この時期に物材機構にて主に使用した計算機は HP社ES45 (4cpu) 4台であった。また途中、HP社 GS1280 (16cpu)も利用したが、いずれも当時にお いては非常に高いパフォーマンスを享受する事が出 来た。帰国後は固体周期系の他に、原子・分子やクラス タなど孤立系も計算対象としてカバーできるよう分 子科学計算の周辺知識の習得につとめ、この流れか ら孤立原子基底状態に関するフント則解釈の問題を 手掛けた。2003年6月より東北大金研の大学院生で ある本郷研太氏と共同で孤立炭素原子の精密エネル ギー計算に取り組み、その成果を2004年に論文とし て発表した。尚、この計算は、上記のES45の他、 2004年4月から運用を開始したHitachi SR11000上で 行われた。孤立原子の研究成果や知見は、その後グ ループリーダである佐々木との議論に引き継がれ、 オンサイトクーロン斥力Uの模型化に対する再検討 という研究課題につながっていった。この間、クラスタ系や生体分子系を対象とした計 算体制(分子科学計算、基底関数系、擬ポテンシャ ルに関わる事項)を徐々に整え、2004年10月には生 体分子系を対象とした研究提案が3年間の研究期間 図4ナトリウム固体の対分布関数の計算例。電子相関に関する基本的な情報を含んでいるでJST戦略的創造研究推進事業(さきがけ)の研究 課題に採択された。一方、Needs教授らとの共同で進めている固体周 期系の研究は、NiOに対する取り組みが長期化する が、この間、新たにダイアモンド固体を対象とした 研究を2005年に開始した。2005年6月～8月にキャ ベンディッシュ研究所に滞在し、新たに局所スプラ イン基底、QMC適合擬ポテンシャル、ジャストロ関 数の最適化に関する新算法等の最新の結果を盛り込 んでダイアモンド固体の計算が順調に進行中であ る。こうした成果を基盤に、2005年10月から4カ年 の研究期間にて文科省科研費・特定領域研究「次世 代量子シミュレータ・量子デザイン手法の開発」 (領域代表者;赤井久純)の計画研究課題として 「固体系拡散モンテカルロ法の開発」が採用された。 (前園)3. 2古典的第2種超伝導体の定量的理解を目指 して本研究の目的は、BCS理論が適用可能な古典的超 伝導体について、混合状態の物性を定量的に評価で きる理論を構築することである。高い臨界温度を示す酸化物超伝導体が発見されて 以来、超伝導研究の主流を酸化物系が占める状況が 続いているとはいえ、古典的な超伝導体の重要性も 失われていない。2001年には約40Kの臨界温度を示 すMgB2が発見された。発見当時には様々な超伝導 機構が提唱されたが、現在のところMgB2はフォノ ンを引力媒介としたBCS理論で理解できると考えら れている。しかし、その超伝導特性には特異な物性 が報告されており、複数のギャップの存在がトンネ ル測定や比熱の実験で明らかとなった。これらの現 象を説明するためには、MgB2の電子構造の詳細を 理解する必要がある。MgB2では、ホウ素のp軌道か ら派生するバンドのうち、ホウ素面に並行なp軌道 が主に寄与するσバンドと面に垂直なp軌道から派 生するπバンドの2つがフェルミ面を構成して、伝 導に寄与する。このうち2次元的な性質を持つσバ ンドかフォノンと強く結合して超伝導現象に対して 支配的な役割を果たす。そのため、MgB2は超伝導 状態で強い異方性を示す。また、大きさの異なる2 種類のギャップを、σバンドとπバンドに帰属して 実験結果を解釈することができる。このように、超伝導体の物性を定量的に理解する には、電子構造を取り込んだ理論を構築する必要が ある。特に、磁場の一部が超伝導体内に侵入した混 合状態の物性には、電子構造の詳細が強い影響を及 ぼすことが知られている。我々は準古典理論を出発 点とし、微視的な情報を取り込んで混合状態の物性 を計算する手法を開発し、汎用的なプログラムコー ドの作成を進めている。まず第一歩として、超伝導状態を完全に破壊する 磁場の強さである上部臨界磁場Hc2を理論的に計算 するプログラムを作成した。このプログラムでは第 一原理計算によって得られた電子構造データを入力 として用い、弱結合BCS理論の範囲でHc2を計算する。 残念ながら、現在のところ電子格子相互作用の詳細 を考慮していないために、絶対値を議論することは できないが、温度依存性と印加磁場の方向依存性に 関しては定量的な評価を行うことができる。最も典型的な第2種超伝導体であり、詳細にHc2 の方向依存性が測定されているNbに対して適用し た結果を図6に示す。立方対称性を持つNbでは、 印加磁場の方向依存性をいくつかのパラメ ーターa4, a6, a8,a10によって表現することができる。図6に示 した温度依存性から、低温になるにつれてHc2の異 方性が強くなることが読み取れる。青点が実験結果、 赤線が今回の研究によって得られた理論値である。 第一原理計算によって得られた電子構造データを用 いているために、いっさいの可変変数を持たないに も関わらず、実験値をよく説明している。同様の計算を2次元的な超伝導体NbSe2とMgB2に 対しても適用し、その上部臨界磁場の異方性と温度 依存性を理論的立場から議論した。今後はその他の図5 Nbのフェルミ面 図6 Nbの上部臨界磁場の印加磁場方向依存性物理量を計算できるように理論とプログラムを拡張 してゆく予定である。(新井)3. 3層状物質の超伝導2001年永松等による新超伝導物質MgB2の発見を 機に、小林は山本氏(第一原理反応グループ客員研 究員)と共にMgB2の電子状態及び圧力下での安定 構造の計算を行なった[1][3] [6]。加えてr点の みであるが、フォノン振動数の計算も行なった。MgB2に関連する物質として、LiBCについても同 様な計算を行なった(新井との共同研究)[4] [5]。 当初は超伝導に関わる計算を考えていたが、この化 合物は異方的に圧縮すると、負のポアソン比的振舞 いを示すことが計算により判明した。更に探索を行 なったところ他に同様な負のポアソン比的振舞いを 示す化合物(h-MgB [7] [8]、 HBC [9])をみつけ た。HBC、h-MgBなどはいずれも仮想物質である。 h-MgBは新井との共同研究。HBCの計算は、新井、 佐々木との共同研究。更に、仮想物質C6B2に関する電子状態計算を行な った[11] [14]。この物質を計算する動機は超伝導 の可能性の検証であった。最初に計算したC6B2 (Na3As構造)は、異方的圧縮に対し、LiBCなどと同 様に負のポアソン比的振舞いをすることが分かっ た。C6B2の電子構造は、MgB2に類似する部分があり、 弱いながらも非調和性を示すことが、判明した。ただ、 エネルギー的には不安定な物質であることも分かっ た。特に、線形応答を使ったフォノン振動数の計算 では、振動数が虚数になる結果が得られた。これは 構造的にこの物質が安定でないことを示している。 C6B2の計算[1]は、青山学院大学の秋光グループ との共同研究である。更に、C6B2の関連物質でより安定かつ超伝導にな りそうなものを探索中である[14]。上記以外に、超高圧グループの竹村氏等との共同 的研究(Osの高圧下での計算[12]、水銀の高圧下 での計算[13])、同グループ谷口等との共同的研究 (h-BNの計算)がある。ノルム保存型擬ポテンシャルデータベースである NCPS2Kの構築、配布を行なっている。既に内外の 多数の研究グループ等に配布し、一定の成果を挙げ ている。参考文献[2]参照。尚、本データベース は“SANZEN”プロジェクト(第一原理反応グルー プ)に参加している。(参考文献)[1] K. Kobayashi and K. Yamamoto, J. Phys. Soc. Jpn.70,1861(2001).[2] K. Kobayashi, Mater. Trans. 42,2153 (2001).[3] K. Kobayashi and K. Yamamoto, J. Phys. Soc. Jpn. 71,397 (2002).[4] K. Kobayashi and M. Arai, Physica C 388-389, 201(2003).[5] K. Kobayashi and M. Arai, J. Phys. Soc. Jpn. 72, 217 (2003).[6] K. Kobayashi, M. Arai and K. Yamamoto, J. Phys. Soc. Jpn. 72,2886 (2003).[7] K. Kobayashi and M. Arai, Mater. Trans., 45,1465 (2004)、特集号Ⅲ.[8] K. Kobayashi and M. Arai, Molecular Simulation, 30,981(2004) (ICMS-CSW2004の特集号).[9] K. Kobayashi, M. Arai and T. Sasaki, Trans. MRS- J, 29,3799 (2004) [IUMRS-ICAM2003].[10] K. Kobayashi, Mater. Trans. 46,1094 (2005).[11] K. Kobayashi, Y. Zenitani and J. Akimitsu, Physica C 426-431,374 (2005) [ISS2004].[12] K. Takemura, M. Arai, K. Kobayashi and T. Sasaki, Proc. Joint 20-th AIRAPT - 43-th EHPRG, 2005 (CD-ROM).[13] K. Kobayashi, M. Arai and K. Takemura, Trans. MRS-J, 30, 893 ( 2005)[15-th MRS-J Symposium].(投稿中)[14] K. Kobayashi, M. Arai and K. Yamamoto, Proc.ISS2005 (Physica C),(投稿中)(小林)3. 4遷移金属酸化物TiO2の構造安定性結晶構造は、物質の諸性質の中で最も基本的なも のの1つであるが、一般には高圧下では構造相転移 を起こし、様々な構造を示す。密度汎関数法による 第1原理理論は、局所密度近似(LDA)や密度勾配 補正(GGA)といった低い近似を用いただけで、こ のような性質を精密に記述するものとして広く受け 入れられている。しかし、FeOやNiOのような遷移 金属酸化物では、常圧での結晶構造すら正しく記述 出来なかったり、或いは圧力下での構造の変化が実 験と異なったりしており、このような物質では十分 な理論とはなっていない。理論の改良もさることな がら、計算の手軽さから、LDAやGGAが遷移金属酸 化物への適用可能性を見ておくことも意味があるで あろう。ここでは、遷移金属酸化物でも軽い遷移金 属を含むTiO2の高圧下での構造相転移を計算で調 ベ、実験と比較してみることにした。この酸化物は、 近年様々な用途への応用も行われている。GGAにより交換相関エネルギーを表し、擬ポテン シャル平面波法によって、様々な結晶構造の全エネ ルギーを体積の関数として計算した。これから状態 方程式・エンタルピーを導出し、圧力の関数として 安定な構造が得られる。図7は、実際に調べた結晶構造の例である。これ らは、密に並んだO原子の隙間にTi原子が分布する 仕方により違いが生じている。計算されたエンタル ピーの圧力依存性を図8に示す。常圧ではルチル型 構造が安定となり、7.5GPaになるとα-PbO2型構造が より安定となり、さらに26GPaより上ではバデライ ト構造が最も安定になっている。これらの変化は、 かつて注意深い実験により報告されていたが、今回、 計算によっても独立に導くことができた。なお、類 似の物質(HfO2)で観測されているブルッカイト型ルチル型構造 α-PbO2型構造バデライト型構造図7 TiO2が高圧下で示す種々の結晶構造。青色がTi原 子、赤色がO原子を表す構造は、準安定にしかならないことも計算から示さ れた。名目上のTiのd電子数は、0であるが実際には結合 の共有性もあり、相当数のd電子が存在するはずで ある。しかし、この計算の範囲内ではFeOやNiOのよ うな極端な実験事実と計算結果の食い違いは、見ら れなかった。さすがにこのあたりの遷移金属酸化物 の構造は、GGAで十分記述が可能ということである。(佐々木)3. 5 遷移金属化合物CuIr2S4は、強相関系か?CuIr2S4は、NIMSの松本武彦氏や古林孝夫氏、唐 捷氏などによって実験的に調べられてきた物質であ る。スピネル構造を持っており、Cuは四面体位置 (A-site)Irは八面体位置(B-site)にある。この物質は、 NMRの測定からCuが1+であることが示されており、 名目的には、Irは3.5+の価数となる。従って、金属 であることが期待される。常温では確かに金属であ るが、230K以下では絶縁体となることが以前から 知られていた。しかし、結晶構造が長らく不明で絶 縁相の電子構造は、推測の域をでなかった。古林氏 らは、この絶縁相の結晶構造を決定することに成功 し、基本胞は化学式単位4倍の大きさを持ち、最も 対称性の低い三斜晶であることがわかった。対称性 は低いものの、Ir原子の配置は大きく 2通りに分け られ、8個のIr原子のうち4個は、2つづつの組を 作っていることが分かった。松本氏よりバンド理論 からの検討を依頼され、密度汎関数理論の枠内で調 ベてみることとなった。Irは、重い元素であるためにスピン―軌道相互作 用も気になるところではあるが、簡単のためにこれ を無視することとした。通常のLDAと擬ポテンシャ ルの組み合わせによりバンド計算を行った。なお、 擬ポテンシャルの検討において、純Cuの電子状態を うまく記述する擬ポテンシャルが、CuClではゴース ト状態を生じさせるという結果得られた。これはCu の擬ポテンシャルの移植性が悪いことを意味してい 図8 計算から求めた種々の結晶構造のエンタルピー (ルチル型構造との差)。エンタルピーの低いものほど 結晶構造が安定となるるが、併せて擬ポテンシャルの検討の仕方にも注意 を要することを示している。なお、実際の計算では、 局所部分を適当に選び直すことでゴースト状態は現 れないようにした。図9は得られたバンド構造である。僅��かではある が間接型のエネルギーギャップが現れており、低温 相の絶縁性はバンド理論によっても説明しうること が示された。結晶構造との観点からは、対を形成し たIrにおいてIr-Sの共有結合が強くなり、結合状態と 反結合状態に分かれたことがエネルギーギャップの  出現へと結びついていることになる。図10は、計算 された反結合状態の密度分布である。低温相の絶縁性の起源について、Irの5d軌道に起 因する電子相関により説明しようとする試みもなさ れていた。一方、5d軌道は、Crなどの3d軌道と比べ てその広がりは、大きく電子相関の効果はあまり強 く無いはずである。実際、5d化合物において電子相 関が重要とする積極的な証拠は知られていない。 我々が得た計算結果は、重い遷移金属化合物でのバ ンド理論の重要性を示している。 (佐々木)図9 CuIr2S4低温相のバンド構造とブリルアン帯図10 CuIr2S4最低価電子帯の分布4.今後の行方このグループで主として研究されている密度汎関 数理論は、1990年代以降急速に発展すると共に広く 普及してきた。計算機の能力向上は言うまでもなく、 計算のためのソフトウェアの発展も重要な要因であ る。近年は、高度なグラフィカルユーザーインター フェースを備えたものも手に入るようになり、簡単 な計算であれば、実験家でも行えるようになってき ている。しかし、現在密度汎関数理論により精度よ く計算できる物理量は、実は限られている。結晶構 造の安定性は、密度汎関数理論の得意とするところ であるが、輸送係数や電気的磁気的性質などは限ら れた情報しか得られない。新井らは、金属のフェル ミ面から様々な情報を得るための研究を行っている が、今後さらに深められていくものであろう。絶縁 体のエネルギーギャップは、重要な物理量であるが、 大抵は実験値の半分程度の値しか得られない。励起 状態の第1原理理論は、活発な研究が行われている 分野の一つであり、近い将来、標準的な理論が得ら れるであろう。基底状態にも強相関系と呼ばれる物 質では、多くの困難にであう。前園を中心として取 り組んでいる量子モンテカルロ法は、ある意味究極 の第1原理理論と捉えられ、今後、より一層研究が 進んでいくことであろう。ただ、圧倒的に多くの計 算量が要求されるという事実があり、願わくば量子 モンテカルロ法により得られた知見を基により簡便 かつ精密な理論の構築が行われるものと期待した い。より深刻な問題は、密度汎関数理論は絶対零度に 対する理論という点である。殆どの物性は温度によ って変化する。これを第1原理から説明することは、 非常に困難な問題であり、標準的な理論の構築は現 時点では絶望的である。有限温度の問題は当面は、 対象とする物質・物理量それぞれについて各個撃破 的に取り組まざるを得ないが、当分の間、全ての第 1原理理論分野の研究者の頭の片隅に存在し続ける であろう。5.振り返って見ると振り返ってみるに、グループ内の情報交換が初期 の頃に比べて幾分減ってきたようにも感じられる。 研究上のやりとりは勿論のこと、例えば2節で触れ た活動の一部は、特にデータ書式に関する件は、残 念ながら未だ完成を見るに至っていない。それぞれ のメンバーが、以前にもまして時間的余裕が無くな ってきていることに、十分に対応し切れなかったの ではとも思われる。かつて、準備に数日はかけて論 文紹介なども活発に行われていた。現在、それだけ の時間が取れる自信はない。この問題を解決する方 策をすぐに思いつくことは出来ないが、検討してい くことは大いに必要である。強相関モデリンググループの5年胡暁、野々村禎彦、田中秋広、河野昌仙、李群祥、濱野悦子 平成17年11月25日1.研究目標超伝導や強磁性は多体相互作用が本質的な役割を 果たす協力的量子現象であり、ミクロな量子効果が マクロスケールの物性に影響を及ぼす。高温超伝導 の発見以来、強相関電子系の研究の重要性は益々強 く認識されるところとなった。21世紀の物質科学発 展の視点から見ても、強相関系の研究が重要である。 強い相関を持つ系の外場(電磁場、温度場、密度場 等)への応答が巨大になり、低エネルギー消費の実 現に極めて有利だからである。物性研究に於ける強相関的アプローチは物理現象 の本質を表す自由度の抽出(モデリング)に大きな 重みを置いている。この過程には統一的な手法がな いため、強相関系の研究は取っ付き難い面を持つ。 しかし、一旦モデリングとその理論解析に成功すれ ば、新規現象の本質が一気に解明される事例も良く 知られており、強相関的アプローチの魅力は大きい。 このため、我々のグループが力を注いでいる研究活 動の一つに、物性物理に於ける新規理論概念や理論 手法の研究が挙げられる。また、熱揺らぎや多体量子効果を全面的に取り込 める大規模計算機シミュレーションは多くの場合、 他の方法にはない大きな威力を発揮できる。当グル ープでは、スーパーコンピュータを利用した大規模 数値シミュレーションを行い、有用な知見を提供 していくとともに、強力な新計算科学手法の開発に も積極的に取り組むことを目標としている。第一期中期計画の5年間に於いて、本グループは 超伝導発現機構、第2種超伝導渦糸量子系、新規磁 性特性、ナノ物性を主な研究テーマに掲げて研究活 動を展開した。以下に、我々が参画・推進した研究 プロジェクト、それによって挙げた研究成果及び主 要発表論文を紹介する。2.プロジェクト[1]NIMSプロジェクト研究「新規超伝導材料研究 ―理論サテライト」(2001.4～2006.3)[2] NIMS中期計画推進プログラム区分B研究「超伝 導磁束量子系研究の新展開:相図から新規量子機能 へ」(2004.4～2006.3)[3] NIMS中期計画推進プログラム区分A研究「量子 コンピュータ実現に向けたマルチキュービット超伝 導体の理論研究」(2004.4～2006.3)[4] NIMSプロジェクト研究「仮想実験技術を活用 した材料設計統合システムの開発―超伝導磁束状態 顕微鏡の開発」(2001.4～2006.3)[5] NIMS萌芽的研究「ナノ物質磁気特性及び輸送 現象における強い量子相関効果の理論的研究」 (2001.4～2006.3)[6]科学研究費特定領域公募研究「超伝導発現にお けるスピン揺らぎの量子位相効果及び秩序間の競合 に関する理論研究」(2001.4～2002.3)[7]科学研究費基盤研究(C)「高温超伝導層間ジョ セフソン磁束量子系の新奇な熱平衡相図とダイナミ クスーシミュレーション研究」(2002.4～2004.3)[8]科学研究費先端研究拠点事業「超伝導ナノサイ エンスと応用」(2004.2～2009.1)3.研究成果[1]新規コバルト系超伝導のスピン三重項ペアリン グの提案NIMSで層状三角格子超伝導体、NaxCoO2 ・ yH2Oが発見されたことを受け、対称性とフェルミ面形状に 基づく理論考察を行った。単一バンド内の散乱過程 の範囲では、フェルミ面セグメント間のペア散乱を 用いたスピン三重項超伝導状態がエネルギー的に有 利であることを指摘し、当初支配的だった共鳴価数 ボンド(RVB)描像に基づく 一重項ペアリングとは 異なる発現機構の可能性を示唆した。現在、コバル ト系超伝導体は強相関電子系の重要テーマの一つに 発展しており、同様の散乱過程を複数バンドに拡張 したスピン三重項ペアリングが引き続き実験・理論 両面から検討されている。図1 フェルミ面(緑)上の超伝導ギャップ分布パタ ーン[2]スピン・電荷間量子位相干渉効果による超伝導 性発現の理論反強磁性体に適量のホールをドープすることによ り超伝導が発現する銅酸化物高温超伝導体では、そ の前駆現象として、低濃度ドープ側でスピンギャッ プ相と呼ばれる非磁性状態が観測される。スピンギ ャップ相を経て超伝導状態に至る絡繰への理解を深 めるため、本研究では、典型的スピンギャップ物質 である擬一次元スピンパイエルス系に注目し、そこ にホールを導入した状況を理論的に解析した。それ によれば、ホール近傍では局所的に反強磁性秩序が 回復し、ホールの波動関数の位相を支配する。この 量子位相干渉効果は更にホール間のペアリング(超 伝導)を助長することが分かった。以上のシナリオ が適用されるスピンギャップ物質は、非磁性不純物 に対する応答から判別できることから、本成果は超 伝導候補物質の探索指針に示唆を与えると考えられ る。図2 ホールとスピン集団の間の量子干渉[3]高温超伝導層間ジョセフソン量子渦糸系の新規 熱平衡状態と相図の解明固体は温度上昇で液体に融解する。この日常的な 現象が量子力学に支配される超伝導状態の磁場応答 と深く関わり、興味深い物理を見せる。超伝導状態 に磁場を印加すると、超伝導電流が磁場を遮蔽��しよ うとして、ミクロな渦を作る。磁場方向に並んだ渦 糸(磁束量子線)が互いに斥力を及ぼし合い、磁束 線格子が形成されることを最初に理論化した業績で アブリコソフ博士は2003年のノーベル物理学賞を受 賞した。実は、渦糸格子が温度の上昇によって渦糸 液体になり、潜熱を伴う熱力学1次相転移が観測さ れたのはここ10年のことである。この際超伝導特性 も同時に失われることは我々の大規模計算機シミュ レーションで分かった。一方、高温超伝導体では超伝導層と半導体層がナ ノメートルスケールで交互に積み重なり、超伝導層 間は量子トンネル効果で結合し、多重ジョセフソン 結合が自然に出来ている。磁場を層平行に印加する と、渦糸は超伝導層を避け、半導体層に入る。渦糸 間の相互作用は面間と面内では非常に異方的であ り、且つ渦糸の面垂直方向の運動や揺らぎに対して 超伝導層がピン止め効果を及ぼすから、ジョセフソ ン渦糸系の熱力学状態と融解過程は複雑である。れの面内規則渦糸配列が互いに自由にスライドでき る状態が中間温度領域で現れる。この場合、渦糸格 子は2回連続相転移を経て液体状態に融解する。ま た、密度汎関数理論により、ジョセフソン渦糸が密 集する半導体層が1層おきに現れ、層内では液体的 な短距離秩序を示すスメクチック状態が現れる磁 場・温度領域の存在も判明した。この場合の融解過 程は1次相転移と2次相転移の逐次融解になる(図 3参照)。これらの新しい渦糸状態に関する知見は、高温超 伝導固有ジョセフソン結合を利用したテラヘルツレ ーザー発振開発研究に役立つ。また、これらの研究 は、DNA操作に使われる脂質・ DNA超格子や、高 温超伝導の母物質に見られる電荷ストライプ状態の 理解にも示唆を与える。[4]ピン止めセンターを含む超伝導渦糸系の熱平衡 状態相図の解明c軸に平行な磁場中における高温超伝導体の渦糸 相図は、酸素欠損等の点状ピン止めセンターの効果 で複雑な構造を示す。我々は、フラストレートした 異方的3次元XYモデルに点状ピン止めセンターを 導入し、渦糸格子が準長距離秩序を持つブラッググ ラス相、渦糸がランダムにピン止めされて凍結した 渦糸グラス相、パンケーキ磁束が超伝導面内で短距 離秩序を持つ磁束スラッシュ相、超伝導秩序パラメ ータの振幅は有限だが位相成分が秩序を持たない渦 糸液体相からなる4元渦糸相図(図4)を初めて数 値的に再現した。ブラッググラス相と渦糸グラス/ 磁束スラッシュ相の境界では1次相転移が起こり、 ブラッググラス相と磁束液体相の間の渦糸格子融解 線と繋がること、磁束スラッシュ相と磁束液体相の 間の1次転移線が臨界点で止まることも実験と一致 する。図4 点ピン止めセンターを含む渦糸量子系のピン止 め強さ・温度相図図3層間ジョセフソン量子渦糸系の磁場・温度相図我々の計算機シミュレーションによると、全ての 半導体層に渦糸が入る程度の強磁場下では、それぞ我々はこのアプローチを、重イオン照射によって 柱状ピン止めセンターを導入した系にも拡張し、柱 状ピン止めセンターの数が渦糸の数よりも少なくピ ン止め力が強すぎない場合には、渦糸格子の準長距 離秩序と渦糸のピン止めが同時に起こるブラッグ= ボーズグラス相、渦糸の一部がピン止めされ、それらとの相互作用で全渦糸が凍結するボーズグラス 相、ピン止めされた渦糸は凍結し、それ以外は自由 に動き回る間隙液体相、渦糸液体相からなる4元渦 糸相図(図5)を見出し、点状ピン止めセンターを 含む渦糸相図(図4)との類似性を初めて指摘し た。図5 柱状ピン止めセンターを含む量子渦糸系のピン 止め密度・温度相図[5]超伝導磁束量子系ダイナミクス相転移の解明ランダムピン止めポテンシャル中に置かれた周期 系が駆動力を受け、ピン止めされた静止状態から動 的状態へ転移する現象は物性物理の重要なパラダイ ムの一つである。特に臨界駆動力近傍では、系全体 の運動方式は、多数粒子に見られる協力現象、ラン ダムピン止めによるグラス的特徴、非平衡履歴現象 等を示し、豊富な物理を含んでいる。この一見古典 的な問題に対する理解は、未だに不十分であり、そ の理論構築は物性研究の挑戦的な研究課題である。 電流によって駆動される磁束量子系はその典型的な 事例である。図6 動的ブラッググラス相を示す磁束量子相関関数我々は超伝導磁束量子系のXYハミルトニアンに 準粒子電流及び外部電流を加えた、RSJダイナミク スを用いてこの問題を調べた。このアプローチは超 伝導位相を自由度として扱い、磁場による超伝導渦 電流はジョセフソン関係(位相差の正弦関数に比例 する電流)、準粒子電流は動的ジョセフソン関係 (位相差の時間微分に比例する電圧形成)によって それぞれ与えられる。このモデルが位相因子間の短距離相互作用によって記述されるため、計算コードの高度ベクトル化・ 並列化が可能であり、3次元電流駆動磁束量子ダイ ナミクスの大規模シミュレーションが実行できた。ランダムな静的配置を示す磁束量子系が、電流駆 動を得て動的結晶化し(動的ブラッググラスの形成 に対応、図6)、電流の更なる増大によって動的融 解を起こすことが分かった。また、動的融解に於い て渦糸ループの励起の役割も判明した。これは弾性 体近似に基づくアプローチでは得られない知見であ る。[6]室温銅酸化物フェリ磁性と軌道秩序の理論解明 及び半金属の物質設計室温で磁化をもつ銅酸化物Sr8CaRe3Cu4O24の磁性 について計算機シミュレーションを行い、磁性の起 源および諸性質を明らかにした。第一原理シミュレ ーションにより、軌道状態が秩序化しているために この物質の転移温度が高くなっていることが分かっ た(図7)。この結果に基づき磁性有効モデルを導 入し、量子モンテカルロ法を用いて有限温度の解析 を行った。その結果、実験で得られた磁化の振る舞 いをうまく説明することができ(図8)、実験で測 定されていない物理量の振る舞いについても予測す ることができた。また、この物質にホールドープや元素置換を行う と半金属になることを、第一原理シミュレーション によって予測した。図7スピンと軌道の秩序化の模式図図8 磁化の温度依存性(赤線:数値計算の結果、青 点:実験結果)[7]スピン多体Berry位相の理論量子臨界現象の近年の研究は、相転移に関する従 来のギンツブルグ=ランダウ(GL)理論の範疇で 捉えきれない新規量子現象の存在を示唆し始めてい る。ここではそのような臨界現象を生むと考えられ ている、二次元モット絶縁体における反強磁性秩序 とvalence bond solid (並進対称性を破った非磁性状 態)秩序の競合を、場の量子論の手法を用いて研究 し、GL理論に対応する有効理論を導いた。得られ た理論は全系に渡るスピンのグローバルな量子揺ら ぎ(磁気単極子励起)に付随するベリー位相項を含 むことが分かった。このことから、GL理論が取り こぼしていたベリー位相の情報を取り込むことで新 しいクラスの量子臨界現象を記述できる可能性が示 唆される。図9新規量子臨界現象で重要な磁気単極子励起[8]カーボンナノチューブによる分子モータの理論 提案ナノサイエンス・ナノテクノロジーの研究が目覚 しい発展を遂げている。その多くはナノスケールで の電磁気特性に限られている。一方で、ナノスケー ルでの機械運動の制御も重要であり、ナノテクノロ ジーの最も基本的技術の一つと言っても良い。その 中で、電磁気エネルギーから機械運動エネルギーへ の変換をナノスケールで如何に効率的に実現するか は主な研究課題になっている。このため、様々な人 工分子モータの動作原理が検討されている。我々は分子モータの実装構造の一例として、異な る巻き数(カイラリティー)を持つ同軸2重カーボ図10同軸2重カーボンナノチューブによる分子モータンナノチューブ(CNT)に軸方向電場を印加するデ バイス構成を提案した(図10)。理論的には、CNT にあるカーボン分子間のファン・デル・ワールス力 をベースに、2重CNT系のフォッカー ・プランク方 程式を解くことにより、軸方向に印加される電場の 時間変化により、外側のCNTの一定方向での回転運 動を見出した。分子モータの基本的要請である空間 対称性の破れは、2重CNTのカイラリティーの違い が保証している。つまり、この分子モータでは、2 重CNTはファインマンが提唱したラチェット仕掛け に含まれる爪車と歯止めの両方の役割を担ってい る。炭素より高い圧電効果を示す物質のナノチュー ブが実現されれば、より高いエネルギー変換効率を 持つ分子モータが期待できる。4.主な研究成果発表状況2001年:論文5編;国際・国内会議招待講演5回 2002年:論文2編;国際・国内会議招待講演4回 2003年:論文24編;国際・国内会議招待講演10回 2004年:論文15編;国際・国内会議招待講演5回 2005年:論文21編;国際・国内会議招待講演8回5.主要論文(1) A. Tanaka and X. Hu, “Possible spin triplet super­conductivity in NaxCoO2 ・ yH2O”, Phys. Rev. Lett. 91 (2003) 257006.(2) A. Tanaka and X. Hu, “Quantal phases, disorder effects and superconductivity in spin-Peierls systems”, Phys. Rev. Lett. 88 (2002)127004.(3) X. Hu, “Bicritical and tetracritical phenomena and scaling properties of the SO (5) theory”,Phys. Rev. Lett. 87 (2001)057004.(4) X. Hu and Q.-H. Chen, “Comment on ‛Vortex liquid crystal in anisotropic type II superconductors'”,Phys. Rev. Lett. 92 (2004) 20971.(5) Y. Nonomura and X. Hu, “Effects of point defects on the phase diagram of vortex states in high-Tc superconductors in B | | c axis”,Phys. Rev. Lett. 86 (2001)p.5140.(6) Q.-H. Chen and X. Hu, “Nonequilibrium phase transitions of vortex matter in three dimensional layered superconductors”, Phys. Rev. Lett. 90 (2003)117005.(7) X.-G. Wan, M. Kohno, and X. Hu, “Orbital order and ferrimagnetic properties of the new compound Sr8CaRe3Cu4O24”, Phys. Rev. Lett. 94 (2005) 087205.(8) X.-G. Wan, M. Kohno, and X. Hu, “Robust half- metallic character and large oxygen magnetism in a perovskite cuprate”, Phys. Rev. Lett. 95 (2005) 146602.(9) A. Tanaka and X. Hu, “Many-body spin Berry phase emerging from the π-flux state : competition between antiferromagnetism and the valence-bond-solid state”, Phys. Rev. Lett. 95 (2005) 036402.(10) T. Hikihara, T. Momoi and X. Hu, “Spin-chirality duality in a spin ladder with four-spin exchange”, Phys. Rev. Lett. 90 (2003) 087204.6.謝辞この5年間当グループに在籍した朱嘉麟、引原俊 哉、安田千寿、陳慶虎、羅孟波、萬賢綱、塗展春、 馬余強、聶青苗の諸氏、多くのご助言を頂いた立木 昌先生、その他の共同研究者に感謝する。粒子・統計熱力学グループの5年小野寺秀博、阿部太一、大出真知子、大沼正人(現材料研究所、ナノ組織解析G)、片桐昌彦、小山敏幸、下野昌人、鈴木哲郎、 諏訪嘉弘、天神真純、中田悦夫、橋本清1.組織発足の経緯・目的粒子・統計熱力学グループは、2001年10月の計算 材料科学研究センター設立の際、分子動力学法等の 粒子シミュレーション手法や熱力学解析手法によ る、相変態、析出等の材料における諸現象の機構解 明と特性の予測、さらに、材料微視組織の形成過程 解明と時間発展過程の予測手法の開発と、ナノ結晶 材料等の具体的な材料に対応できる組織予測手法確 立を目指して設置された。これらの研究開発を通じて、計算材料科学研究セ ンターの大きな目標である、「ナノ物質・材料、環 境・エネルギー材料、安全材料について、性能の改 善や新奇な特性の材料開発を効率的に行うための基 盤技術として、計算材料科学手法の確立」を目指し ている。2.ユニットの活動経緯2.1活動方針先端の材料に対する効率的な設計手法を確立する 上で、先端分野で材料開発を行っている研究グルー プとの密接な連携が不可欠である。そこで、当グループでは、NIMS内外の材料開発 研究グループと連携し、実際の材料開発に使える計 算材料科学手法の研究開発を進めてきた。具体的に は、NIMSプロジェクト研究「ナノ組織制御による 次世代高特性材料の創成」、「加工性に優れた先進構 造材料の開発に関する研究」において、NIMS内の 実験的材料開発グループとの連携のもとに組織形成 過程のモデリングとシミュレーションを行い、FePt 微粒子の規則化に及ぼすサイズ効果を理論的に解明 し、また、分子動力学シミュレーションによる粒界 不純物元素の役割を解明するなど、材料開発研究の 指針を提示することでプロジェクトの推進に貢献し てきた。また、科研費補助金研究「「MDおよび統計熱力学 手法による金属ガラスのナノ構造解析」、NEDO 「ナノテクノロジープログラムナノマテリアル・プ ロセス技術 材料技術の知識の構造化(Phase Field 法ナノ組織予測システム)」、振興調整費研究「ナノ ヘテロ金属組織の精密解析による機能発現メカニズ ムの解明に関する研究(Phase-field法に基づく組織 形成モデリングを用いた最適ナノヘテロ構造の予 測)」、CREST (JST)「材料の組織・特性設計統合化 システムの開発―Phase-field法による組織・特性予 測法の確立」等の外部資金研究プロジェクトにおい ては大学、独立行政法人研究機関、民間企業等との 連携、さらに、民間企業との直接の共同研究を通じ て、材料開発の現場で使える計算材料科学手法の開 発に貢献してきた。また、開発した計算手法の公開と社会への普及も 重要な責務である。当グループで開発した様々な材 料系に関する組織形成過程のモデリング手法や計算 プログラム、解析結果等については、論文や学会発 表、国際会議等で公表するとともに、開発したソフ トウェアについては、NIMSプロジェクト研究「仮 想実験技術を活用した材料設計統合システム」で開 発された材料設計統合システム「MATEX」に組込 み、インターネットのホームページ上で公開してい る。また、開発したソフトウェアを普及する上で、 その保守と改良が不可欠であり、そのためにはプロ ジェクト等の研究開発終了後にも継続的な保守管理 体制が必要となる。そこで、大学や独立行政法人、 民間企業の研究者と連携して開発したソフトウェア やデータベースの保守管理を目的としたNIMS認定 ベンチャー企業を発足させた。2. 2 5年間の研究プロジェクト当グループのメンバーが中心となった、あるいは サブテーマを担当して進めたプロジェクト研究は以 下である。・ NIMSプロジェクト研究「仮想実験技術を活用し た材料設計統合システム」(2001.4～2006.3)二 瓶正俊スピー ノーダル分解、核生成―成長型析出、マ ルテンサイト変態、再結晶等、組織形成の機構が 異なる様々な材料系について、Phase-field法によ るモデリングを行い、組織形成過程のシミュレー ション手法を開発した。開発したプログラムは、 同プロジェクトで開発された材料設計統合システ ム「MATEX」に組込み、ホームページ上で公開 した。・ NIMSプロジェクト研究「加工性に優れた先進構 造材料の開発に関する研究」―分子動力学法によ る金属間化合物の加工性改善のための粒界・界面 制御―(2001.4～2004.3)小野寺秀博分子動力学シミュレーションにより、水素誘起 非晶質化のシミュレーションを行い、副格子レベ ルでの安定性が重要であることを明らかゝにした。・NIMSプロジェクト研究「ナノ組織制御による次 世代高特性材料の創成(2002.4～2006.3)寶野和 博種々の磁性材料における組織形成過程のPhase- field法によるモデリングと解析を行い、ナノ組織 形成機構を明らかにした。FePt微粒子の規則化に 及ぼすサイズ効果を理論的に解明し、次世代高密 度磁気記録媒体の設計条件を提示した。・科学研究費補助金「MDおよび統計熱力学手法に よる金属ガラスのナノ構造解析」(2003.4～2008.3)小野寺秀博分子動力学法及び熱力学解析手法による合金の ガラス形成能評価手法の提案を行った。詳細はト ピックスの項を参照していただきたい。・科学研究費補助金「フェーズフィールド法による ナノオーダー電気配線組織制御因子の決定」 (2004.4～2006.3)大出真知子・振興調整費研究「ナノヘテロ金属組織の精密解析 による機能発現メカニズムの解明に関する研究 (Phase-field法に基づく組織形成モデリングを用い た最適ナノヘテロ構造の予測)」(2003.4～2005.3) 小山敏幸・振興調整費研究「計算機支援による耐熱コーティ ング材の設計」(2003.4～2005.3) 大出真知子・ CREST (JST)「材料の組織・特性設計統合化シス テムの開発(石田清仁)―Phase-field法による組 織・特性予測法の確立」(2003.10～2008.3)小野 寺秀博・ NEDO「ナノテクノロジープログラムナノマテリ アル・プロセス技術材料技術の知識の構造化 (Phase Field法ナノ組織予測システム)」(2003.4～ 2005.3)小野寺秀博・文部科学省「超高速コンピュータ網形成プロジェ クト(NAREGI),ナノサイエンス実証研究(ナノ 複合系設計;ナノ組織化材料のシミュレーショ ン)」(2003.4～2008.3)小山敏幸・原子力基盤研究(第3期クロスオーバー研究) 「微細組織を考慮した材料特性の計算機シミュレ ーション」(1999.4～2005.3)楠克之・萌芽的研究「組織設計手法の確立に関する基礎的 研究」(2002.4～2006.3) 小野寺秀博3. 5年間の組織の成果3.15年間の研究トピックス主な研究トピックスについて以下に述べる。3.1.1 金属ガラスの物性に関するMDシミュ レーション下野昌人、鈴木哲郎、小野寺秀博金属ガラス、およびその熱処理により生成するナ ノ結晶は、従来の金属材料には見られない優れた力 学特性および電磁気特性を示し、新世代材料として 注目されている。しかしながら、金属ガラスに関し ては、その微視的構造や、ガラス化および結晶化の メカニズムなど、基本的な理解が不足しており、物 理的な理解を深めることで、より演繹的な材料開発 が可能になる。本研究では、原子の動きを微視的に 追跡できるMDシミュレーションを用い、金属ガラ スの物性に関する基礎理解を深め、材料開発に応用 することを目的とする。金属ガラスの短・中範囲秩序構造原子間力に経験的ポテンシャルを用い、液相冷却 シミュレーションによって金属ガラスを仮想的に作 成する。得られたガラス相の各原子について隣接原 子の配位を解析し、その対称性によって分類したも のが図1である。青色で示される正20面体クラスタ ーが短範囲秩序の基本構造であること、またその正 20面体型の局所構造と結晶的な局所構造とが数ナノ メートル程度の中範囲秩序を形成していることがわ かる。図1 金属ガラス相における中範囲秩序。青色が20面 体的配位を、緑色が結晶的配位を持つ原子液相およびガラス相における拡散機構の解明液相からガラス相へと冷却シミュレーションする 過程で原子の拡散係数を計算することにより、小さ な過冷却の液相、大きな過冷却の液相、そしてガラ ス相と、原子拡散は3段階の異なる温度依存性を示 すことを見いだした。(図2)また、拡散経路の解 析により、ガラス相および大きな過冷却相において、 ひも状の集団運動が原子拡散を担っていることを示 した。(図2挿入図)図2 ガラス転移における拡散速度の温度依存性MD法による金属ガラスの形成能予測従来、ガラス形成能の高い合金系の探索は経験的 に行なわれてきたが、MDシミュレーションでそれ を可能にするためには、計算能力の制約から非常な 困難が伴う。そこで、原子サイズ比・混合熱など合 金を特徴づける要素を抽出し単純化した合金モデル を用い、ガラス形成能を決定する支配要因を調べた。 まず、高いガラス形成能獲得のためには、原子サイ ズの効果が混合熱の効果に比して大きく、より支配 的であることが判った。次に、ガラス形成能の高い 系では、過冷却液相において20面体クラスター数密 度が高く、原子の充填率も高くなること、またその ために拡散能の低下と緩和時間の増大がもたらされ ることを明らかにした。このことは、過冷却液相の 安定性が高いガラス形成能に反映することを示唆し ており、過冷却液相の充填率を指標とすることで、 MDシミュレーションでは困難であった合金のガラ ス形成能予測を可能にした。図3は原子サイズが 10%ずつ異なる三元系合金についてシミュレーショ ンで予測したガラス形成能分布であり、ほぼ同じ原 子サイズ比を持つ合金系(Zr-Al-Cu系およびZr-Al-Ni 系)の実験結果を大まかに再現している。結論このように、金属ガラスに関する種々の物性を MDシミュレーションにより明らかにすることで、 新しい材料開発のための指針を得ることができる。図3 原子サイズ比1.1:1:0.9の三元合金系における ガラス形成能のMDによる予測3.1.2 Cu-Zr,Ni-Zr合金のガラス形成能評価阿部太一、下野昌人、小野寺秀博 はじめに:液体中の原子の分布はランダムではなく 短範囲秩序構造が存在していることが知られてお り、特に化合物形成傾向の強い合金系の液相で顕著 である。こういった液相の構造を考慮できる熱力学 モデルとして、会合溶体モデル[1]があり、近年 ではアモルファス形成系における液相/過冷却液相 の熱力学評価に用いられている。本研究では、会合 溶体モデルを用いて、アモルファス形成系である Cu-Zr, Ni-Zr二元系液相の自由エネルギを評価し、結 晶化の駆動力、TTT曲線、臨界冷却速度を求め、両 合金系のガラス形成能の比較をおこなった。方法:液相の比熱、過冷却液相からの結晶化の潜熱、 混合のエンタルピ、活量など、幅広い温度範囲から 得られた熱力学データを用い、Thermo-Calcにより 液相の熱力学評価をおこなった。金属間化合物の自 由エネルギは、Zaitsevら[2,3]による値を用いた。 液相中の会合体は、X2Zr1 (X=Cu, Ni)を仮定した。 Saunders and Miodwnik [4]によると、液相中の結 晶の体積分率がXvとなるまでの時間tは、(1)式で 与えられる。ここで、k,R,T,r0,ƒ,Nv,η,G*, Gmは、ボルツマン 定数、気体定数、温度、原子半径、幾何学的因子、 単位体積あたりの原子数、粘性、臨界核の自由エネ ルギ、結晶化の駆動力である。得られた自由エネル ギ関数から、G*、Gmを求めた。粘性にはVogel- Fulcher-Tanmannの式を用いた。(1)式からTTT曲 線を求め、臨界冷却速度の推定をおこなった。結果:(1)実験で観察されているガラス形成領域 (GFR) [5,6]は、両合金共に、臨界冷却速度が低下 する組成域とほぼ一致している。(2)Cu-Zr, Ni-Zr合 金系で共に35at.%Zr近傍において、臨界冷却速度は 最小値を示し、35at.%Zr合金が最もガラス系性能が 高いことが示唆される。(3)Cu-35.5at.%Zr合金が 最もGFAが高いことがWangら[7]により示されて いる。この組成は、図1(a)において臨界冷却速 度が最も遅くなる組成と一致している。(4) Cu-Zr 系における臨界冷却速度は、ほとんどの組成域で Ni-Zr系と比べて遅いことから、Cu-Zr合金のガラス 形成能は、Ni-Zr合金よりも高いと考えられる。[1] V.T.Witusiewicz, F.Sommer : Metall. Trans. B 31B (2000) 277.[2] A.I.Zaitsev, N.E.Zaitseva, E.Kh.Shakhpazov, A.A.Kodentsov : Phys. Chem. Chem. Phys. 4 (2002) 6047.[3] A.I.Zaitsev, N.E.Zaitseva : High Temp. 41(2003) 42.[4] N.Saunders, A.P.Miodownik : Mater. Sci. Tech. 4 (1988) 768.[5] Z.Altounian, T.Guo-hua, J.O.Strom-Olsen : J. Appl. Phys. 53 (1982) 4755.[6] A.Kundig : Unpublished work.[7] D.Wang, Y.Li, B.B.Sun, M.L.Sui, K.Lu, E.Ma : Appl. Phys. Lett., 84 (2004) 4029.図4 (a)Ni-Zr、(b)Cu-Zr二元系における臨界冷却速度の組成依存性3.1.3 Fe-Cu-Mn-Ni合金における α相(bcc) の相分離過程に対するPhase-fieldモ デリング小山敏幸 はじめに:現在、Phase-field法は材料組織学を中心 に材料科学・工学を横断的に発展しており、ナノ ・ メゾスケールにおける総合的な組織形成解析シミュ レーション法の1つに成長しつつある(1)(2)。Phase- field法の枠組みは、ナノ ・ メゾスケールにおける形 成組織の安定性や形成プロセスを理解する上で非常 に有効である。なぜならば、Phase-field法はこのス ケールにおける複雑な組織の全自由エネルギーを基 礎に、その組織の形成過程のダイナミクスをシミュ レーションする一般的枠組みであるので、エネルギ ー論と速度論を兼ね備えた極めて頑健な体系をもつ からである。本研究ではPhase-field法を用いた固相 変態のモデル化の一例として、特にFe-Cu-Mn-Ni合 金におけるα相(bcc)の相分離過程のPhase-fieldモ デル作成を試みた(3)。計算手法:本計算では、固相変態における通常の Phase-field法を用いて、本合金における濃度場の相 分離の計算を行った。特に化学的自由エネルギー関 数については、平衡状態図のGibbsエネルギーに関 する熱力学的データベースを採用した。したがって、 本計算は実際の当該合金系の状態図と直接対応した 解析となっている。研究成果:図5はFe-20at%Cu-5at%Ni合金の、873K 等温時効における2次元相分解計算結果で、上段が Cu濃度(黒:0%Cu,白:100%Cu)、下段がNi濃度 (黒:0%Ni,白:20%Ni)を明暗にて表現している。 図中の(a)～(d)の数値は無次元化した時効時間 である。初期に微細なCu-rich相が形成され、Niは始 めCu-rich相に分配されるが、時効の進行に伴いNiは Cu析出相/母相間の界面に濃化していくことがわか る。図6はFe-20at%Cu-5at%Mn合金の873K等温時効 における計算結果で、図の見方は図1の場合と同様 であり、下段のMn濃度については、黒が0%Mnお よび白が20%Mnに対応している。全体的な相分解 の筋道はFe-Cu-Niの場合と等しいが、Mnの界面への 偏析傾向はNiの場合ほど大きくは無い。図 7 はFe-20at%Cu-5at%Mn-5at%Ni4元合金の 873Kにおける結果で、上段がCu濃度(黒:0%Cu, 白:100%Cu)、中段がNi濃度(黒:0%Ni,白:20% Ni)、および下段がMn濃度(黒:0%Mn,白:20% Mn)を明暗にて表現している。ちょうど図5と6 を組み合わせたような組織形成となっており、初期 にCu-rich相が形成され、MnとNiはCu-rich相に分配さ れるが、時効の進行に伴いMnとNiはCu析出相の界 面に濃化する。濃化傾向はMnよりもNiの方が大き く、また界面において相対的にNiの内側にMnが位 置する形態となる。Fe-Cu-Ni-Mn4元系合金は軽水炉圧力容器鋼の基本 成分系であり、特にCuの析出が材料脆化の原因と考 えられている。Mnの界面偏析は他の研究者によっ て実験的にも確認されており、本成果は圧力容器の 機械的性質を理解する基本情報を与えるものと思わ れる。おわりに:材料の組織形成過程の大多数は、非線形 現象であり、これを完全に計算のみから予測するこ とはほとんど不可能に近い。したがって、実験にお ける組織形成を定量的に記述・再現できるモデル を、多くの組織形成の種類ごとに全て作製して、こ れを次々に積み上げモデル自体をデータベース化す ると伴に、これらモデルを自在に取捨選択・活用で きる計算システムが、実際のもの造りでは有益と思 われる。このシステム構築には、全自由エネルギー 論と組織形成ダイナミクスを兼ね備えたPhase-field 法の枠組みは非常に有効である。参考文献(1)小山敏幸:“まてりあ”,42 (2003), 397,470.(2)小山敏幸:“ふぇらむ”,9 (2004), 240,301, 376,497, 905.(3) T.Koyama and H.Onodera : Mater. Trans., 46 (2005),1187.図5 Fe-20at%Cu-5at%Ni合金の873K等温時効における 2次元相分解計算図6 Fe-20at%Cu-5at%Mn合金の873K等温時効におけ る2次元相分解計算図 7 Fe-20at%Cu-5at%Mn-5at%Ni合金の873K等温時効 における2次元相分解計算3.1.4水素誘起アモルファス化の分子動力学シミュレーション片桐昌彦、小野寺秀博 目的:水素誘起アモルファス化(Hydrogen-Induced Amorphization ; HIA)とは、金属間化合物に水素を 吸蔵させると、結晶がアモルファスに相変態する現 象である[1]。 HIAは、通常の液体急冷法と異なる 手法でアモルファスを作製できるという点で興味深 いだけでなく、水素吸蔵合金の性能劣化などに関係 する、重要な現象である。さらにアモルファスから 結晶を作成すると微細な組織が得られることから、 この相変態を利用した微細化技術の向上が期待でき る。金属間化合物を構成する原素の半径比がある値 以上になると、HIAが発現することが、実験的に明 らかされている[1]。しかし、原子サイズ効果の微 視的・動力学的役割については不明であった。我々 は分子動力学法を用い、原子レベルでのHIA発現機 構解明を目指した。方法:我々は、水素導入による弾性論的安定性の低 下に着目した。そこで分子動力学計算による時系列 データをもとに、揺らぎ理論から導かれる次式を用 いて弾性定数を計算した[2]。右辺各項は、圧力揺らぎ(fluctuation)、運動 (kinetic)、ポテンシャル(potential)による寄与で ある。得られた弾性定数を用い、体積弾性率B、せ ん断弾性率G',Gを計算した。結晶格子が弾性論的に 安定であるためには、全ての弾性率が有限な正の値 をとる必要がある。また新たに副格子の弾性定数を 定義し、格子の安定性を副格子レベルで解析した。 原子サイズ効果の意味を明確にするため、2対相互 作用の一種であるレナード・ジョーンズ原子間相互 作用を用いた。結果:HIAを起こさない系であるYAl2と、起こす系 であるCeNi2を比較した。まず水素を導入していな い結晶格子を低温で等方的に引っ張り、破壊させた。 YAl2では、副格子と全格子の体積弾性率がほぼ同じ 体積で零に到達し、劈開破壊した(図8左)。一方、 CeNi2では、Ni副格子の体積弾性率が小さく、引張 に伴いこれが最初に零に到達し、アモルファス化し た(図8右)。この破壊モードの違いは、原子サイ ズ効果に求められる。純物質状態と比べ、CeNi2で はCe原子は収縮し、Ni原子は膨張している。このNi 原子膨張のため、Ni副格子の体積弾性率安定性が低 く、これが等方引張で最初に不安定性に到達する。 このNi副格子の破壊が引き金となり、全格子が破壊 されることがわかった。等方引張の代わりに水素を導入した。YAl2に水素 を導入すると、体積膨張による体積弾性率の低下が 起きた。この場合、水素は系の体積を膨張させる役 割を果たしている。また弾性定数の成分で考えると、 等方引張の場合と同様に、体積膨張によるポテンシ ャル項の減少が、体積弾性率の低下に主に寄与して いる。この意味で、水素導入と等方引張は弾性論的 安定性において等価である。一方、CeNi2に水素を 導入すると、弾性定数の圧力揺らぎ成分が負に大き く増大し、これが体積弾性率Bの低下に大きく寄与 する(図9)。その結果、等方引張と比べ、水素導 入では遥かに小さな体積で弾性論的不安定性に到達 し、アモルファス化が起きる。この圧力揺らぎの増 大は、水素導入による金属原子の座標緩和によるも のと考えられる。CeNi2ではサイズ効果による原子 の収縮と膨張が共存しているため、この様な原子座 標緩和が可能となる。緩和によるエネルギーの変化 は小さくても、圧力揺らぎが受ける影響は大きい。 また昇温や欠陥の存在により、この圧力揺らぎは増 大する。HIAにおけるサイズ効果の微視的・動力学的役割 とは、水素導入による金属原子の座標緩和を実現さ せ、その結果、圧力揺らぎの増大による弾性論不安 定性を導くことにあると見出した。参考文献[1]K.Aoki, K.Masumoto, Materia Jpn, 34 (1995),126.[2] J. Wang, et al., Phys. Rev. B, 52 (1995),12627.図8 等方引張によるYAl2の劈開(左)とCeNi2のアモ ルファス化(右)図9 水素導入(■、●)および等方引張(点線)に よる弾性定数のポテンシャル項と揺らぎ項の変化3.1.5原子力クロスオーバー研究「微細組織 を考慮した材料特性の計算機シミュレ ーション」楠克之 はじめに:原子炉材料では照射によって生じた原子 空孔や格子間原子が凝集してボイドや転位ループを 形成し、材料の強度や延性を劣化させる。実験が困 難な照射環境下での材料の挙動や特性を,計算機シ ミュレーションにより予測する技術の開発・高度化 は重要な課題である。本研究では、原子レベルでの 照射欠陥の発生から集積する過程、欠陥を含む材料 の変形・破壊特性まで、ミクロからマクロにわたる 原子力用材料の挙動に関するシミュレーションを行 う計算コードの開発と実験を行った。照射欠陥の生成・消滅と集積の初期過程α鉄中の〈100〉方向へ10.7keVのノックオンエネ ルギーを与えた場合のクラスターの形成過程を調べ た。その結果、中心部にできた原子空孔の密な領域 を格子間原子の集団が次第に取り囲んでいく様子、 原子空孔クラスター、格子間原子クラスターとも、 (110)面に平行な板状になる傾向があること等が明 らかになった。また、一旦できた残留原子空孔及び そのクラスターは(試料温度を900Kまで上げても) 殆ど動かないのに比べて、格子間原子及びそのクラ スターはかなり活発に移動することも解った。図10 ノックオンカスケードの形態の時間変化。白丸 は原子空孔、黒丸は格子間原子積層欠陥四面体による移動転位の固着作用点欠陥としての空孔濃度と降伏応力の関係につい て詳細に調べた結果、一般に空孔の存在は降伏応力 を上昇させないことが解った。このことは、実際の 炉材に見られる照射硬化が単純な空孔ではなく転位 ループや積層欠陥四面体のような複合欠陥によって 生起することを示唆している。そこで、積層欠陥四 面体(SFT)と移動転位との相互作用をシミュレー トしてみた。その結果、SFTの存在は残留応力を上 昇させ、かつ、転位の移動を大きく阻害(固着)す ることによって、変形応力をも上昇させることが示 された(図11)。図11SFTと転位との相互作用、及びSFTの崩壊の様子 (左から右へ)。隣り合う3枚の(111)原子面中の構造 を抽出して表示。黄と緑は表面原子ソリトン機構による点欠陥の一次元運動自己格子間原子のダイナミックな特質として、単 純な拡散機構の他にソリトン的な一次元運動が実際 の金属中で起こり得ることが明らかになった(図 12) 。図12 300Kにおけるα鉄中の格子間原子のソリトン運 動S :始点、E :終点。矢印は再帰現象を示す3.1.6 はんだのPhase-fieldモデリング大出真知子欧州連合は2006年7月より電気機器への重金属使 用を規制する法案を可決している(WEEE指令、 RoHS指令)。つまり鉛フリー化に期限が設けられた ことを受け、関連業界では鉛フリーはんだの研究を 精力的に行ってきていた。鉛フリーはんだ合金はSn-Ag-Cu系など絞られつつ あるが、鉛フリーはんだ特有の問題としてリフトオ フ(lift- off)を示すことがある。これはスルーホー ル基板をフローはんだ付けする際、 はんだフィレッ トが基板からプロセス直後に剥離する接合不良で、 その発生は搭載する電気基板の不良に通じる。一方、はんだ付けの良否は、目視またはレーザー 試験機によるはんだ表面の光沢によって判断されて きた。なぜなら光沢は「粗大な初相スズ相の比率の 増加とともに失われる」ため、理想的な凝固組織 (=高共晶率)の判定に利用できるからである。こ こで、Sn-Ag-Cu系はこの共晶率が平衡状態図より得 られる予想よりも低いことが報告されており、その 正確な予測が重要視されていた。本研究トピックでは・リフトオフの支配因子の特 定と・共晶率の予測をフェーズフィールド法による 数値計算により行った。現在、リフトオフ発生は凝固偏析によりランド上 部に形成される低融点液相膜により助長されると言 われている。そこで液相膜の形成に対する凝固偏析 の影響をを評価するためにリフトオフがほぼ100% 発生するSn-5wt%Biを対象としてフェーズフィール ド法により凝固偏析の予測を行った。図13 (a)に Sn-5wt%Bi合金のはんだフィレ内部の凝固組織の計 算結果、(b)に図(a)中に示された矢印上の濃度 分布を示す。図13は優先成長方位がランドに対して45°傾いて いる場合であるが、偏析の影響はデンドライト先端 の成長がランド表面で僅��かに曲がるのみである。一 方0°の場合の計算も行ったが、ランド面に沿って 成長する2次枝が観察され、凝固過程においてラン ド表面に液膜が残らない事を示している。また図13 (b)の濃度分布からも、ミクロ偏析は確認されるも のの、ランド表面付近の凝固遅れを促すようなマク ロ偏析は認められなかった。これにより、偏析がリ フトオフの支配因子でないことが明らかになった。また、このような偏析計算を応用しSn-4.0Ag- 0.5Cu合金の共晶率の変化の予測をフェーズフィー ルド法によっておこなった。偏析計算としてはシャ イルの式が取扱いの簡便さから採用されることが多 い。しかし、図14に示すとおり、シャイルの式では、 液相濃度が均一と仮定するため凝固初期の誤差が大 きくなる。つまりはんだ組織として適切とされる高 共晶率組織になるほど両者間の予測誤差が大きくな ってしまう。一方、フェーズフィールドの偏析計算 をベースにした共晶率予測値は実験結果と良い一致 を示した。実験による研究手法では複数の因子が同時に結果 と矛盾しない説明を与えることができれば、各因子 の影響度を議論することは難しい。このような場合、 計算機実シミュレーションが有効であるときがあ る。一方、計算機シミュレーションによって、実験 的に開発された材料(組織)を理論的に再現するこ とができれば、実用前材料に対する一種の保障を与 えることができる。本トピックでは、計算機シミュ レーションの実用という観点から、上記計算を行っ た。図13フェーズフィールドよるSn-5wt%Bi合金の凝固 組織の再現図14フェーズフィールド法とシャイルの式による偏 析計算結果の比較(Distunce :凝固先端の位置)3. 2 ソフトの公開と普及当グループで開発した様々な材料系に関する組織 形成過程のモデリング手法について、NIMSプロジ ェクト研究「仮想実験技術を活用した材料設計統合 システム」で開発された材料設計統合システム 「MATEX」に組込み、インターネットのホームペー ジ上で公開している。公開したプログラムを以下に 示す。Phase Field法を用いた組織構造予測プログラム・ 3相(α,β,γ)スピノーダル分解・ Fe-Cr合金におけるα (bcc)相のスピノーダル分解・強誘電体(もしくは強磁性体)のドメイン形成・ 成長および外場による組織変化・ Ni-Al合金における(γ + γ ')2相分離・結晶成長および再結晶・ Al-Zn合金におけるα (fcc)相の相分解・ Al-Zn合金におけるα (fcc)相の相分解のモンテカ ルロシミュレーション・ Fe-Cu合金におけるbcc相の相分解・結晶変態(立方晶→正方晶)におけるツイードお よび双晶組織形成・ ZrO2-YO1.5部分安定化ジルコニアにおける相分離3. 3 NIMS認定ベンチャー企業の設立開発したソフトウェアを普及する上で、その保守 と改良が不可欠であり、そのためにはプロジェクト 等の研究開発終了後にも継続的な保守管理体制が必 要となる。そこで、物材機構、産総研、東北大学、 九州工業大学の材料分野に携わる研究者9名と(有) インターサイエンスから2名が参加して、産学独の 連携によるベンチャー企業、「株式会社材料設計技 術研究所」を2003年9月12日に発足させた。目標は、材料設計に必要な状態図計算用自由エネ ルギー関数データベースの開発(銅合金:Cu-Cr-Fe- Ni-Si-Sn-Zn系、鉛フリーはんだ合金:Ag-Bi-Cu-In - Pb-Sb-Sn-Zn系、Fe-S基用:Fe-C-S-Ti-Cr-Mn-Ni系、Fe- B基及び磁性材料データベース等)とPhase-field法組 織形成シミュレーションの基本ソフトウエア開発で ある。3. 4 5年間の論文数、特許数、研究会開催等4.グループがカバーしている研究分野の動向状態図は材料開発に不可欠であり、多くの系につ いて実験により求められてきた。全ての多元系状態 図を実験で求めることは不可能であるが、近年、熱 力学モデルの高度化と計算機性能の向上により、 CALPHAD (CALculation of PHAse Diagram)法と呼 ばれる状態図計算手法が著しい発展を遂げている。平衡状態における安定相に関しては高精度な予測 が可能となってきた。しかし、材料組織の予測や制 御には、状態図による平衡組織の情報だけでは不十 分であり、時間とともに変化する組織の予測手法が 必要である。フェーズフィールド法は、組織の形態 を濃度や規則度等の複数の変数で表現し、その時 間・空間変化を発展方程式に基づいて計算すること により組織形成過程を解析する方法である。フェー ズフィールド法により、現実の材料における様々な 組織形成過程のダイナミクスが次々と解明され、実 用的な合金系での組織予測が可能となりつつある。 フェーズフィールド法で扱えるのはナノからメゾス ケールであり、現実の部品スケールに繋げるために は、さらに有限要素法などの手法と連結させること が必要である。FEMを核とした内部組織変化の解析を行う上で、 再結晶速度定数、回復速度等の材料情報が不足して いる。この材料情報を化学組成の関数としてフェー ズフィールド法、MD法等により理論的に求めるこ とができればマクロな組織予測が飛躍的に進展す る。高強度や優れた磁気特性の期待されるナノ結晶材 料については、組織形成のメカニズム自体が明らか でなくモデリングが困難な状況である。従って、金 属ガラスの結晶化に伴うナノ組織形成過程を、統計 熱力学解析及び分子動力学シミュレーションに基づ いて解明し、特に結晶の初相が析出する前後のダイ ナミクスの解析によりナノ組織形成の原子レベルで のキーファクターを解明することが重要な課題であ る。2001年 2002年 2003年 2004年 2005年論文数 13 2 11 11 9特許数 1共同研究 2 3 2研究会開催 1 1 17超鉄鋼研究センター超鉄鋼研究センターの4年間長井寿、青山祐子、高橋稔彦、津崎兼彰、宝野純子1.組織発足の経緯・目的・目指したもの1.1目的「超鉄鋼研究センター」は、グローバルでは地球 環境問題など、東アジアでは高耐震性・高耐食性な どを抜本的に解決する超鉄鋼を実現するための基礎 研究(設計、創製から商品化まで)を戦略的に推進 し、超鉄鋼に関する国際的研究集会や重要鉄鋼プロ ジェクトのコーディネート機構を果たす目的で平成 14年4月1日に設置されました。1.2 方針1.国際的視野に立った研究戦略と連携戦略を基本 とします。2.「使われてこそ材料」の精神に基づき、エンド ユーザー、製品設計サイドとの連携を強化しま す。3.単に組織設計、探索にとどまらず、スパイラル ダイナミズムを堅持し、「形と質を同時に造り 込む」新しいものづくりの基礎研究に挑みま す。4.産業界、学界との密接な連携のもと、それぞれ の社会的責務を遂行しつつ、相互ポテンシャル を効果的有機的に結合し、新シーズの発掘・育 成から商品化までの幅広い展開を図ります。5.国際的な視野で、鉄鋼研究の次代を担う人材の 育成に寄与します。1.3 センターの沿革・1997年4月 フロンティア構造材料研究センターを設置・ 2001年10月 構造材料研究センターに改組・ 2002年4月 超鉄鋼研究センターを設置・超鉄鋼研究センター人員数推移2002年12月現在 :110名2003年12月現在:110名2004年12月現在:108名2005年12月現在 :93名1. 4超鉄鋼研究センターの活動経緯(STXニュース巻頭言から) (長井寿)①基礎、商品化、ナンバー1(第57号、H14年5月号)人類にとって空気や水が生きていく上で不可欠な ように、鉄もほぼ同じ意味で大切である。ところが 大切なものは、身近というより、ありふれて当たり 前のものと感じられがちである。「当たり前のもの」 を研究対象にするのは大変な勇気である。ましてや 「成熟した産業」「衰退は確実」と多くの人が信じて いるものに敢えて向かうのは「学者バカ」以外の何 者でもないと多くの人は思うに違いない。30年も前になったが、Physical Metallurgyという 一語に取り憑かれた。一学生の想像力を遙かに越え た魅力的な概念だった。さあ、でも、この30年間に どれくらい進めることができたのであろうか?翻っ て自分の非力さを嘆く。一方で、冶金、鉄鋼、金属 という名称が大学から消えて行った。ますます悔し い。「水はH2O」と言い切れば、「水」の持つ多様性 を否定しかねない。物質は多様性を持っている。炭 素を初めとした多種の元素が混じっていても「鉄」 と呼ばれ、結晶粒という細かい粒々がくっついてい てもバラバラにならず、顕微鏡で覗くとなんとも不 思議な顔をしていて一つとして同じ姿には巡り会え ず、回折像は夜空の星のよう! ・・・などと感動し たのは、自分だけだったのか?と鬱ぎ込んでしまう。 いかに多様性を持っていようが「成熟」したら、衰 退は自明だ。日本の鉄は「成熟」したのだろうか? 韓国POSCOのゲートに「資源有限、創造無限」と 書いてある。中国の鋼鉄研究総院には「以効益為中 心、以市場為導向、以科技為基礎」と掲げてある。 両国は鉄の未来に限りを置かない。「鉄は大切な物質」と多くの人は知っている。鉄 は生き物のように変化し、向き合う相手に合わせて 姿を変える。この5年間、ある意味で「鉄バカ」達 が集まり、無限にある可能性から見ればほんの少し の新種に出会えたと言える。これを大事に育て根付 かせることが「超鉄鋼研究センター」に課せられた。 私の4年任期の課題は、1)基礎をより発展させる シーズ応用の実践、2)驚異的な装置ポテンシャル の最大限活用、3)次代を担う人材の育成、4)ナン バー1戦略の肉付けと思う。センター将来像は、国 際的な協調と競合をリードし、シーズとニーズをマ ッチングさせる中核である。なんとかナンバー1と なり、さらに20年後もトップたるためにどうもがく か。そのための若手プロジェクトリーダーの起用な ど、とにかく若気の至り的無謀挑戦である。どうか、 思慮深い諸兄のご指導ご鞭撻を心から期待する。②共同目標達成研究へ(第68号、H15年4月号)「基礎、商品化、ナンバー1」をスローガンに超 鉄鋼研究センターを発足させてあっという間に一年 が過ぎました。大きな特徴は、国際交流の活発化、 共同研究案件の検討進捗��、そして「商品化研究室」 の活躍ぶりだったと思います。私の任期中の課題として、1)基礎をより発展さ せるシーズ応用の実践、2)驚異的な装置ポテンシ ャルの最大限活用、3)次代を担う人材の育成、4) ナンバー1戦略の肉付けを挙げ、センター将来像 として、「国際的な協調と競合をリードし、シーズ とニーズをマッチングさせる中核」、「ナンバー1 となり、さらに20年後もトップたる」ことを念頭に 置きました。この1年間の経験を通じて、「ものつくりリン ク」、すなわち、素材、加工、組立などの産業連携 がシーズ応用のキーであることを今更ながら痛感し ました。この点で商品化研究室は、その成果を論じ る以上に、豊かな経験を積んだことに意義がありま す。自分自身、「共同研究」について「AとBとが 仲良く補い合って行う。やること自体に意義がある」 という牧歌的な理解を残していたと反省します。独 り言ですが、目的、目標、期限、分担を明確にして、 共同で目標達成するという意味では、「共同目標達 成研究」と言い換えた方が適切と思います。ただ、私どもは「特許を実施する機関」ではなく、 あくまでも公的な研究機関です。意味ある共同開発 をコーディネートし、シーズ応用と同時に新しい研 究シーズを発掘していく視座が大事です。わが国の国際競争力を高め、維持する戦略的な事 業とはなにかを常に分析する大事さを噛みしめてい ます。さて、「鉄研究に新しさはありえない」とい う専門家の世評が一般には主流です。新しさが研究 意義を説明する唯一の基準だとしたら、研究の存在 意義自体が先細りだと思いますが、新しさが耳目を 引きつけるのも事実です。ですが、パフォーマンス として新しさをアピールするのではなく、むしろ新 しい概念の実現に愚直に注力すべきです。例えば、 「超微細粒」は「超微細複相組織」コンセプトを実 現するためのステップに過ぎません。「超微細粒」 の可能性を汲み尽くす研究の先には、「超微細複相 組織」実現の高いハードルが必ずあるはずです。2年目は、「共同目標達成研究」の推進力となる ポテンシャルをきちんと高めます。そのために、超 鉄鋼利用企画を推進する「プロトタイプ化推進室」 と、装置の最大限活用を念頭に置いた「技術開発室」 を立ち上げる計画です。5基礎研究グループと3 室体制で盤石の構えにしたいと思います。③応用研究で基礎を鍛える(第80号、H16年4月号)超鉄鋼研究センター三年目の始まりに、改めて初 心を振り返ります。「任期中課題」として、1)基礎 をより発展されるシーズ応用の実践、2)驚異的な 装置ポテンシャルの最大限活用、3)次代を担う人 材の育成、4)ナンバー1戦略の肉付け、さらに、 「センター将来像」として1)国際的な協調と競合を リードし、シーズとニーズをマッチングされる中核、 2)ナンバー1となり、さらに20年後もトップたる ことをあげました。商品化研究チームを先導役として、シーズ応用の キーとなる「ものつくりリンク」すなわち素材、加 工、組立などの産業連携を可能なところから作りは じめ、今ではその取り組みがセンター全体に波及し ております。いずれも民間各位のご理解を得てのことと改めて 感謝申し上げます。2004年度はまさにその果実を実 現のものとしていく勝負の年でこれが最大課題で す。昨年度、超鉄鋼利用企画を推進するために「プ ロトタイプ化推進チーム」と装置の最大限活用を念 頭に置いた「技術開発チーム」を立ち上げました。 前者は「耐震・耐食・軽量・橋梁モデル」プロジェ クトを(独)土木研究所、(社)日本鋼構造協会と 共に推進していく中核として活動しております。広 範な方々の参画なしにはこのプロジェクトの発展は ありえません。後者は超鉄鋼研究センター独自のも のつくり基礎力を強め、内部だけでなく外部の方に も活用していただくための一歩を踏み出した段階で す。5研究グループのミッションはより一層鮮明に しなくてはいけません。それぞれが国家戦略的に分 担すべき基礎分野先鋭化した力量を発揮できるよう にすることが課題です。その中で若手が大きく成長 することが望まれています。30余名の顔がそれぞれ 光るようにしたいと強く思います。国際規格戦略の重要性が指摘されています。材料 基盤情報ステーション等と歩調を合わせ、アジアを 中心とした国際共同研究ネットワークの構築に踏み 出すタイミングです。欧米ともよく交流・情報交換 し、また重要な国際研究集会を企画し、ひとつずつ 成功させていく活動も引き続き進めていきたいと思 います。世界をリードできる成果を持続的に生み出せる材 料研究者として身に付けていくためには、エンドユ ーザーとの結びつきをより一層強めるべきです。超 鉄鋼と他の素材との複合化なども視野に入れた柔軟 さを持って、対話を深めていきたいと思っておりま す。「常在戦場」の心意気でお会いできることが楽 しみです。④ものつくりリンクと基礎研究(第92号、H17年4 月号)「式年遷宮」という言葉に誘われ伊勢神宮を訪れ ました。従来技術の伝承、新技術の取り入れを程よ く組み合わせていくばかりでなく、新旧原料の中長 期的な調達も視野に入れた素晴らしいシステムを先 人達は考案されたと実感し、感動した次第です。今、超鉄鋼サンプルが欲しいという大学の先生方 の輪が広がりつつあります。大変有難いことです。 その際に小耳にしますが、ここ20年ばかり新しい鉄 に巡り合えたことがない、規格表にある鉄鋼だけが 研究対象材料だと思っていた、と。同じような話が 超鉄鋼を試された加工業者の方々からも届いていま す。設計図をもらい、規格材を購入し、部品に加工 して納めるのが商売だと思っていたが、新しい材料 で作った部品をお客さんに提示できることが分かっ た、と。ここでは「比べる」という研究・作業が展開され ます。今までの材料と性質がどう違うのか、加工性 がどう違うのか、などの比較の中で、驚きも生まれ、 新しい困難も生まれ、そして新しい挑戦が生まれ、 新しい人材が生まれてくるようです。先生方や業者 の方々の好奇心が膨らんで、いざ本格的な研究や事 業に発展させたいとなると、「知的」原料と「素材」 原料の供給が量的に拡大し、質的にも転換していく ようです。「素材」原料は自明でしょうが、「知的」原料と はなんでしょうか?私は系統的基礎データの提示と 解析・分析能力の革新のことだと思います。別の表 現では、新しいもしくは拡大した座標軸空間におけ る基礎知見の体系的把握です。この際に既存材料と 新材料のデータが共に並んでいる図面は強い発言力 を発揮します。強度2倍、寿命2倍の超鉄鋼は、研 究座標軸空間を体積で少なくとも4乗倍膨らませる ポテンシャルを持っているはずです。「日本のインフラは更新・補修が主体となる」、 「人口は2006年をピークに減少に転じる」、「中国の 鉄鋼生産は3億トン時代に」、「GDPが中国に追いつ かれ追い越されるのは時間の問題」がついに現実の 時代となりました。素材-部品-組立のものつくりリ ンクを鍛え、産と学の研究基盤を鍛えなおすのが、 このような「内憂外患」の日本が生き延びていくた めの王道であると痛感しています。国際競争の激し い時代に、一回でも「式年遷宮」を怠れば、技術的 な後退を余儀なくされるのは確実です。超鉄鋼研究 センターはものつくりリンクにかかわるすべての産 側の方々、学の方々と手を携えて、未来に向けた新 しい「式年遷宮」システムをいよいよ構築していき たいと熱望しております。1.5 商品化研究チーム(STX21ニュース No.61:H14年9月号より)(片田康行) 【はじめに】平成14年4月、超鉄鋼研究センター内に耳慣れな い「商品化研究室」なる新しい組織が設置された。 この組織の設立目的、活動方針およびこれまでの活 動状況を紹介する。【設立目的】超鉄鋼プロジェクトは、平成9年4月に開始され、 5年間の第1期研究を経て、同14年4月から第2 期研究が開始されている。同プロジェクトの主な目 的は、超鉄鋼を利用したインフラ整備のための新し い構造物設計指針を提案することにあるが、これま での得られているシーズ研究成果の中には最終年度 を待たず速やかに社会に還元すべき特筆すべき成果 も多い。そこでこれらの中からいくつかの候補を挙 げ、企業との共同研究を通して、実用化・商品化の ための基礎研究を推進する。【超鉄鋼商品化研究の例】(1)超微細粒鋼製品:軟鋼組成のままで結晶粒超微 細粒化により得られる高強度鋼は、高強度化のため の添加元素が不要で、リサイクル、省資源化に寄与 するのみならず、高強度化のための熱処理工程(焼 入、焼戻)を必要としないメリットがある。機械部 品等への応用が期待される。(2高窒素ステンレス鋼製品:加圧ESR法により1重 量%以上の窒素を含有する高窒素ステンレス鋼を創 製し、その優れた耐食性、高強度特性を明らかにし てきた。本鋼は新しい高耐食・高強度・省ニッケル 型ステンレス鋼として機械部品への応用が期待され ると同時に、ニッケルを全く含まないステンレス鋼 の創製も可能であるため、抗ニッケルアレルギー材 として医療・生体用材料として期待されている。【商品化研究の進め方とこれまでの活動】「使われてこそ材料」のスローガンのもとに、超 鉄鋼の具体的な商品化を目指して、適用可能な用途 開拓を行い、必要となる塑性加工性、破壊靱性、耐 摩耗性、被削性、コスト等を対象に実用化前基礎研 究を企業との共同研究を通して進める。また、超鉄 鋼の用途開発や商品化に必要な特許検索やマーケテ ィング調査等については技術展開室*)と連携して 進める。最近の当研究室の活動例としては、新聞でも紹介 された諏訪商工会議所と超鉄鋼研究センターとの共 同事業による「STX-21共同研究会」の取り組みが ある。同地区は世界の精密機械工業をリードしてき た技術家集団であるが、将来のさらなる国際競争力 を確保するための新素材および新技術として、超鉄 鋼プロジェクトの成果である超微細粒鋼や高窒素ス テンレス鋼に注目したのであった。商品化研究室と しても共同研究体制のもと商品化を全面的に支援 し、今後の幅広い活動の先例としたい。*)技術展開室:当機構研究業務部内の組織で、特 許管理、特許実施権設定等の知的財産管理並びに、 展示会・講演会等、研究成果の社会への普及・還元 等の促進を担当する(現在、知的財産室として再 編)。1.6技術開発チーム(現:創製技術チーム STX21ニュースより)(岩崎智)【設置目的】超鉄鋼研究センター(以下SRC)において開発さ れた技術シーズを効率的に運用し、かつその高度化 を図るために必要な業務を行うために、SRC内に技 術開発チーム(以下チーム)を設置することが決ま り、平成15年6月2日より施行致しました。【業務内容】チームの業務内容を列記いたしますと、・ SRC内特殊実験装置運営・機構内外より溶解・圧延・加工依頼業務・各実験設備・関連機器の管理運営・機構内における関連する広報活動(実演) などと、なっております。【SRC内特殊実験装置】機構内においても大型設備に入る装置やNIMS独 自開発の特殊性が高い装置の管理運営を当チームが 行っております。以下に装置名と簡単な特長を示し ます。〈せん断付与圧延機〉通常圧延の他にクロスロール圧延と異周速圧延が 行えて、板材に対して圧縮ひずみとせん断ひずみを 同時に導入できる最大荷重300tonの圧延装置。〈組織制御溶解装置〉組成制御溶解から、可変水冷銅モールドおよび2 次冷却装置による凝固冷却可変の急冷凝固組織を創 製する溶解凝固装置。〈25ton圧延・鍛造シュミレター装置〉多方向加工による組織制御の可能性を見いだすた めの、加工モードによる組織と機械的特性変化を検 討する加工装置。〈コールドクルーシブル浮揚溶解装置〉耐火物るつぼを使用しないため、高純度金属材料 や活性金属の溶製・合金溶製や各種精錬反応の応用 などに適した溶解装置。NIMS独自の2重電源方式。 〈加圧ESR溶解装置〉NIMS独自の高圧下での窒素雰囲気による、高窒 素含有ステンレス鋼を創製する溶解装置。溶解量 20kg、最大50気圧。上記以外に現在、〈研究内容に合わせて特殊実験 装置2台を開発中〉であります。なお、上記浮揚溶 解装置については、依頼溶解も受け付けておりま す。【溶解作業】〈高周波真空溶解炉鉄換算3kg、20kg用2台〉真空または不活性ガス雰囲気中において、各種金 属元素を溶解合成し、各種形状の試験片及びインゴ ットを作製するための設備。(3 kg):最大出力:20kW、排気系:R.P-M.B.P-D.P (20kg):最大出力:50kW、排気系:R.P-M.B.P-D.P 〈コールドクルーシブル浮揚溶解装置〉不活性ガス雰囲気中において、高純度金属や活性 金属などを溶解合成し、高純度試料作製や各種試験 片を溶製するための設備。溶解量:鉄換算2.3kg、最大出力:150kW+100kW排気系:R.P-M.B.P-D.Pガス置換。【圧延加工作業】〈 300tf油圧鍛造装置〉金属材料の一部または全部の高さを上下方向から 圧縮し、横方向に広げることによって成形加工を行 い、あるいは素材の組織を改善するための鍛錬を行 う設備。出力:300tf、ストローク:700mm最大材料 加熱温度:1250℃〈熱間2段圧延機〉冷間又は加熱した金属材料を回転するロールの間 を通して塑性変形させ、厚さを減ずる設備。板幅:250mm以下、板圧:2 ～30mm、最大圧延荷重:150ton、リバース圧延可能。〈角溝ロール圧延機〉金属材料等を熱間または温間で棒状に圧延加工 し、材料の内部歪みや結晶粒、さらには棒断面形状 を高精度に制御する装置。溝寸法:40mm□→7.9mm□ 24本溝、最大圧延荷重:150ton、最高圧延温度:1000℃〈冷間4段圧延機〉板状の各種金属材料を常温のままで、回転するロ ールの間を通して塑性変形させ、厚さを減ずる設 備。最大板圧:5 mm、最大板幅:180mm、最大圧延荷 重:150ton、冷間一方向圧延。〈スエージングマシーン大小2台〉各種金属材料の管または棒を常温または加熱して 縮径させるための連続圧延成形装置。(大):最大加工寸法:30mmΦ、最小:6 mmΦ、最 大加圧力70ton(小):最大加工寸法:10mmΦ、最小:0.35mmΦ、 最大加圧力18ton【熱処理作業】〈鍛圧用加熱炉〉最高使用温度:1250℃、炉内有効寸法:440× 1200×470mm〈カンタル炉〉最高使用温度:1200°C、炉内有効寸法:150× 250×150mm〈大型熱処理炉〉最高使用温度:1350℃、炉内有効寸法:600× 1200×400mm〈焼鈍用熱処理炉〉最高使用温度:850℃、炉内有効寸法:300× 800×200mmその他、作業に伴う機械加工用設備、溶接設備な どの機器類も取りそろえております。【他部署との関わり】[知的財産室]外部機関より依頼を行うにあたっての手続きは依 頼内容により契約形態が分かれますので、技術的内 容の問い合わせは当チームまで、契約に関しまして は知的財産室まで問い合わせお願い致します。[広報室]広報室業務における科学技術週間・一般公開や青 少年特別企画さらに中学生ミニ博士など機構行事と しての企画に、技術開発チームでは鋳物の溶解鋳造 実演や鍛造・圧延加工による金属成形の実演を公開 しております。これら年間行事以外にも、施設公開の一環として 当チーム管理設備の見学は、随時受け付けておりま す。お問い合わせは、広報室までお願い致します。表1チーム管理一般機器類共用単純使用設備 チーム員専用機11kW :大型剪断機2.2kW :帯鋸盤5.5kW :高速切断機1.5kW :直立ボール盤0.4,0.75,1.5kW :各種グラインダー2.5ton :フォークリフト電気アーク溶接機TIG溶接機 ガス溶接機器 旋盤 フライス盤 配管ねじ切り盤Fig-1 NIMS内支援体制[設計試作グループ]特殊実験装置、依頼作業設備、さらには表1に示 す鍋釜的設備・機器などを維持管理するにあたっ て、技術支援課の機械工作室およびガラス工作室と は、業務遂行上必要不可欠な関係があります。 Fig.1に共用設備支援体制の1フローを示します。機械工作室とは、装置改良・開発に関する試作や 試験片加工において協力体制にあります。また、ガ ラス工作室とも同様な体制を整えております。[分析ステーション]分析ステーションなくして、当チームの素材創製、 素材加工業務は成り立ちません。組成制御による素 材創製には、化学分析が必要不可欠でありますし、 組織制御による素材加工には物理分析を行うことに よって、介在物や組織の確認などが必要となりま す。[商品化研究チーム]SRCに属する商品化研究チームとのタイアップに よって、SRCのシーズを実用化に結びつける努力を して、SRCの目標である「使われてこそ、材料であ る。」を実現しています。その成果をSRC展示コー ナーに例示しておりますので、見学にお越しくださ い。1.7 プロトタイプ化推進チーム(現:破壊チー ム STX21ニュースより)(邱海)【設置目的】超鉄鋼研究センター(以下SRC)では超微細粒 (1μm以下)組織を持つ鋼板を開発しました。そ の鋼板は靭性・強度バランスが良く、土木、建築分 野、自動車産業への活用が期待されます。超鉄鋼を 実用化するため、土木研究所、建築研究所との府省 連携プロジェクトの発足を目指します。鉄鋼ユーザ ーである建築、土木、橋梁関係者のニーズを理解し、 またSRCから、KIC等の破壊力学データや新たなシ ーズを設計の現場に広めることを目指します。鉄鋼 ユーザーとの交流を通じて、超鉄鋼を利用した建設 構造物の安全性評価に向けてNIMSの取り組むべき 課題を抽出します。その役割を担うため、SRCにお いて平成16年4月1日より破壊チームが立ち上がり ました。【研究内容】超鉄鋼を利用した鉄骨建築物・橋梁の破壊特性、 また、近年自動車産業で注目されるハイドロフォー ミングにおける塑性加工限界を評価し、安全・信頼 性を判定することを目標とします。そのため、チー ムの研究内容を挙げると、き裂先端開口変位、KIC の破壊基礎データ、有効結晶粒径とシャルピー遷移 温度(DBTT)の関係、HAZ軟化部の破壊特性評価、 塑性加工限界の評価などとなっております。【研究方針】研究方針として素材の破壊、小型部材の破壊およ びより大型寸法の実模擬構造物の破壊の3段階を進 めていきます。この3段階において、まず、標準試 験片サイズの素材および溶接部継手の破壊特性を解 明します。次に得られた結果を用いて、小型部材、 実模擬構造物の破壊評価モデルを確立します。H16～H17年2年間にわたり、基礎データの系統 的取得を実施し、平成17年からは有限要素法を用い た小型部材の評価モデルの構築を実施する予定で す。【実験装置】当チームが管理している装置およびそれらの特長 を以下に示します。〈破壊靭性試験装置〉荷重容量200kN、負荷速度範囲0.01～5,000mm/sec の油圧式引張試験機を使用しています。低速、高速 負荷において、標準試験片の三点曲げ試験、コンパ クト引張試験を行って、素材および溶接継手部の静 的、動的破壊靭性を評価できます。試験温度は - 180℃～室温の範囲で調節できます。〈精密引張試験機〉試験機の荷重容量は50kNで、歪速度および試験 温度はそれぞれ10-6～102sec-1および-196℃～50℃の 範囲で調節できます。2 4年間の成果2.1 安心・安全な社会・都市新基盤実現を目指 す超鉄鋼研究(超鉄鋼研究プロジェクト第 2期:再生プロジェクト)①第1期の成果と第2期の展開平成9年4月に開始した超鉄鋼プロジェクトは第 1期5年の研究を終えました。4種類の「強度2倍、 寿命2倍の超鉄鋼材料」を実験室的な規模で創製す ることができ、また、その「溶接などの構造体化技 術の基盤確立」及び「新しいコンセプトに基づく材 料、構造物の評価技術の確立」にも画期的な成果を 上げることができました。本年度から始まる第2期 では、第1期研究で得られたシーズを最も有効に社 会に還元できる対象として「都市新基盤の構築に貢 献する超鉄鋼材料」と「高効率火力発電プラントの 実現に貢献する超鉄鋼材料」を選び、その実現を目 指して「強度2倍×寿命2倍のファクター 4材料の 開発」、「大型材料の創製手法と構造体化技術の開発」 を課題に掲げて研究を発展させることを計画してい ます。さらに、「超鉄鋼材料を有効に利用した革新 的構造物の提案」も、新たに設計・構造関係者との 連携を指向するなかで行っていきたいと考えており ます。「革新的な構造・設計を可能にする超鉄鋼材料の 創製」と「超鉄鋼の優れた機能を生かす新構造・設 計の提案」を目指して展開していきます。超鉄鋼研 究では、①強度2倍寿命2倍のシーズ技術を生かし、 「強度も寿命も2倍とするファクター 4の超鉄鋼の 創製」と、②「大型サイズあるいは実部品形状の超 鉄鋼材料を製造できる創製原理の創出」を目指しま す。具体的には、以下の課題(2つのタスクフォース) を設定し、新構造・設計になる実模擬体の製作から 実環境をシミュレートした試験による特性評価を視 野に入れて研究を推進していきます。また、この2つの課題(タスクフォース)に加え て第1期超鉄鋼研究で得られた多くのシーズ技術に 関し、未解明現象のメカニズム解明と指導原理の確 立、及びナノ―メゾ―マクロにわたる多階層の解 析・評価技術を活用して開発材料を含む材料基礎デ ータを蓄積し、将来の標準化を目指す研究も推進し ていきます。(1)新都市基盤に資する高強度耐食鋼の研究(高強 度耐食鋼タスクフォース)微細粒化技術を発展させ、高強度で高耐候性を兼 ね備えた「ファクター 4」超鉄鋼を厚板サイズで創 製する課題、1期で開発した超狭開先GMA溶接、 大出力パルス変調CO2溶接により構造模擬体を製作 する課題、及び現場施工での主流となると想定して いるボルト接合に対して耐候性組織での2000MPa鋼 の創製とボルト化の課題に取り組む。新構造の実模 擬体を実模擬環境において力学因子と環境因子を総 合的に評価するためのシステム開発を目指す。(2)高効率火力発電用耐熱鋼の研究タスクフォース (耐熱鋼タスクフォース)超々臨界圧火力発電プラントの実現に向け、第1 期で得られた粒界近傍組織を長時間安定化する材料 設計指針に基づき、主蒸気管等の大径厚肉鋼管創製 の材料最適化をはかるとともに、溶接HAZ部の薄肉 化や細粒部の析出抑制によるタイプⅣクリープ破壊 の抑制、表面保護皮膜による高温水蒸気中の耐酸化 性向上をはかり、耐熱鋼構造部材の高強度化と超寿 命化を達成する。②研究のまとめ(1)高強度耐食鋼(都市新基盤構造用鋼)リサイクル容易元素であるAl、Siを適用した高強 度耐候性溶接構造用鋼の開発と超鉄鋼材料の大型化 と部品化技術並びにその特性を活かして構造体化す る技術の開発に取り組みました。■成果・リサイクル容易組成のAl-Si系耐候性鋼を微細粒化 し、強度と靱性を確保できる目途を付けました (Fig. 1)。・遅れ破壊に強い新マルテンサイト組織の作込みに 成功し、1800MPa高強度ボルトの試作に成功しま した。・バックシールドガス無しで12mm厚Al-Si系超鉄鋼 板の無欠陥貫通レーザ溶接を達成しました。また 25mm厚板をレーザ並みの総入熱33kJ/cmの2パス アーク溶接を実現しました。・低変態温度溶接部の変態挙動をレーザ計測技術に より2次元の変形場として可視化することに成功 しました。(Fig.2)Fig.1 Effect of rolling temperature on mechanical properties of Al-Si weathering ultra-fine grained steelFig.2 Measurements of strain distribution during welding by ESPI system(2) CO2削減耐熱鋼(高効率火力発電用)材料大型化、溶接継手のクリープ強度向上など工 業化に向けた総合特性向上に取り組みました。■成果・ボロン添加9Cr鋼の母材のクリープ強化に微量の 窒化物による析出強化が有効であることを見いだ しました。(Fig.3)・機械的特性に有害な窒化ボロン(BN)介在物が 生成するボロンと窒素の、組成の条件を決定しま した。(Fig.4)・Crショットピーニングと予備酸化処理の組み合わ せにより、試料表面に高Cr濃度の保護酸化皮膜を 形成させ、耐水蒸気酸化特性を向上させることに 成功しました。・ Cフリーマルテンサイト合金やフェライト母相を 利用した15Cr鋼の、革新的耐熱材料のクリープ強 度を、金属間化合物の析出強化により向上させる ことに成功しました。Fig.3 Microstructure around the grain boundaries is stabilized.Fig.4 BN precipitation is controlled by N addition③関連研究活動超鉄鋼研究シーズを活かすための新構造の調査や 将来動向調査等を行っています。1)調査研究 「超鉄鋼材料を活用する橋梁・建築 の新構造に関わる課題の提案」(社団法人日本鋼構 造協会:JSSC)目標:2002、2003年度の調査委託結果を踏まえ、 課題として抽出されたものの中から、超鉄鋼材料の 素材特性を活用した都市新基盤構造物となる上木構 造物、建築構造物について、ユーザニーズと超鉄鋼 技術シーズの摺り合わせを行ってきた。超高力ボル ト接合、微細粒鋼の試設計用基本データなどを共同 して採取し、具体的な超鉄鋼による新構造形式の検 討を開始した。平成15年度の調査結果は、下記の2分冊にまとめ られた。(1)調査研究 「超鉄鋼材料を活用する橋梁の新構 造に関わる課題調査(2004.3.25)」(社団法人日本鋼 構造協会:JSSC)(2)調査研究 「超鉄鋼材料を活用する建築の新構 造に関わる課題調査(2004.3.25)」(社団法人日本鋼 構造協会:JSSC)また、ナノテクノロジー ・材料分野の産業発掘構 想のうち革新的構造材料として超鉄鋼材料が取り上 げられ、府省「連携プロジェクト」が、下記課題で 開始された。課題名【耐震、耐食、軽量、低コスト橋梁構造体】本課題に関して、2004年度はユーザニーズと超鉄 鋼技術シーズの摺り合わせを行うこととし、社団法 人日本鋼構造協会の上記調査研究と強く連携して推 進している。2. 2リサイクル鉄の超鉄鋼化①プロジェクトの説明ミレニアムプロジェクトは、1999年12月、当時の 小渕内閣総理大臣の下、新しいミレニアム(千年紀) の始まりを目前に控え、人類の直面する課題に応え、新しい産業を生み出す大胆な技術革新に取り組むこ ととして、始まりました。具体的には、夢と活力に 満ちた次世紀を迎えるために、今後の我が国経済社 会にとって重要性や緊要性の高い情報化、高齢化、 環境対応の三つの分野について、技術革新を中心と した産学官共同プロジェクトを構築し、明るい未来 を切り拓く核を作り上げるものです。本プロジェクトである「リサイクル鉄の超鉄鋼化」 は、環境・エネルギー材料分野の一つであり、リサ イクル鉄(スクラップされた鉄をリサイクルして生 産される鉄)の活用推進のため、強度に優れた高品 質のリサイクル鉄を製造する技術を確立するものと して、2000年度より物質・材料研究機構で開始され、 2004年度を持って、終了いたしました。我が国では、大量の鉄スクラップが蓄積され、増 加しています。社会インフラの更新に伴い、30年後 には、スクラップ量が内需を上回る試算予測もあり ます(図1)。このような背景から、スクラップ鉄 を鉄源とし、低環境負荷、低設備費であり、かつ多 品種少量生産に対応した21世紀型の製造設備体系と そのための材料開発の必要性が増しています。この ような社会的要求に応えるために、本プロジェクト は、スクラップ鉄の中で“悪”とされていた不純物 元素を積極的に利用し、悪を“善”に転用させる発 想に基づいた材料創製プロセスに関する基礎研究を 柱として2000年度にスタートしました。第1期(2 年間)では、不純物元素の融合化技術と回生異物の 融合化技術を研究しました。同時に、第2期を睨ん で主に凝固―圧延の一貫した基礎研究のための大型 設備の準備もしてきました。2002年4月からの第2期では、第1期で得られた 知見と導入した設備を基に、“凝固から始まる組織 制御”、“工夫した新加工技術”を中心に、図2のよ うに上工程から下工程までの一貫した視点で、不純 物を含有する材料から高品質鋼板を創製するプロセ スを確立するために、急冷凝固と加工熱処理に関す る基礎研究を行いました。基礎試験で得られた知見 を生かして、大型の実験設備で数十kgオーダーの試 験鋼塊の創製を行い、回生材を原料とするリサイク ル鉄鋼材料の強度1.5倍化を達成しました。図1 日本国内における鉄鋼内需と発生スクラップの 予測。内需予測は予測人口と一人当りの平均需要の積 によって、スクラップ予測は予想鉄蓄積量と統計的ス クラップ発生率の積によって予測された図2高品質スクラップ鉄製造プロセスの提案イメージ②研究のまとめ(1)急冷凝固組織形成鋼中不純物を有効利用するために、薄スラブ連鋳、 ストリップキャスティングなどの急速凝固・冷却プ ロセスの適用を考え、創製材の調査・観察、機械的 性質の測定などを行った結果、リンを含む鋼では、 不純物リンの偏析などにより、鋳造組織が微細化さ れたこと、銅、硫黄を含む鋼では、従来の介在物に 代わって非常に微細な化合物が析出し、さらに強度 向上に寄与していることが分かりました。すなわち、 急速凝固・冷却プロセスにより、鋼中不純物が有効 利用できることが分かりました。上図は、100mm厚で鋳込んだ0.1%P含有スラブの 偏析による点、A3点の変化を局所平衡マッピング 法により示したものです。りんが大きく偏析し、δ 相が低温まで残留して、鋳造γ粒の成長を抑制し、 組織の微細化に寄与していることがわかりました。固相域での冷却速度が大きくなると、鋳造γ粒は 小さくなります。2 mm厚のストリップ鋳片、100mm 厚の薄スラブ鋳片、その他の実験値とも、上図のよ うに冷却速度(T)の逆数と、γ粒の二乗成長量(dγ2 -d02 )の対数は直線関係を満たし、その挙動を 古典的粒成長モデルで整理することができました。 また、リン含有の影響を、γ粒急成長開始温(Trg) 低下と粒界面エネルギー(σ)低下として組み入れ ることにより、鋳造γ粒径の固相冷却速度とリンの 効果の二大因子による予測が可能となり、これは約 2万K/sの超急冷凝固域まで適用可能なこともわか ってきました。せん断付与圧延機外観板厚全面に圧縮ひずみと同時にせん断ひずみを導 入。一般の圧延鋼板と組織、特性が異なることを確 認しています。ストリップキャスティングにより鋳込んだ、リン、 銅、硫黄含有鋼中には、上図のTEM観察写真のよう な平均粒径15nmの超微細化合物Cu2Sが析出してい ることが分かりました。これが析出強化による強度 向上に大きく寄与すること、固相冷却速度が大きい ため、MnSの晶出を抑制することがわかりました。 また、リン共存が同化合物微細析出に有利なこと、 生成条件による析出形態の違いなどが分かってきて います。(2)新加工プロセス技術の開発鋳造断面が小さくなることは、製品寸法が同じで ある限りは、加工熱処理工程における“加工度”の 制限が顕在化してきます。板厚全面に圧縮ひずみと 同時にせん断ひずみを導入できるせん断付与加工を 提案し、同じ圧下量であっても組織は微細となり、 さらにせん断ひずみ効果は、粗大なオーステナイト 粒径ほど大きいことを明らかにしました。上図のように、同じ相当ひずみでも、せん断ひず みを導入したことでオーステナイト粒内に方位差角 150以上の変形帯を数多く生成することができま す。せん断付与圧延の一つであるクロスロール圧延 で、クロス角度を5°、10°と変化させ、3パス圧延 した鋼板の形状と変形・負荷特性を実験と数値シミ ュレーションの両面から検討した。上図の左はスリ ットを挿入し圧延した鋼板のC断面、右は数値シミ ュレーションによる相当ひずみ分布を示していま す。この実験と数値解析結果より以下のことがわか りました。➣塑性流動が大きく変化する➣ 通常圧延に比べ幅広がりが大きい➣断面形状が異なる➣クロス角度が大きくなることで、幅端部に存 在する小ひずみの領域が拡大する➣ 幅中心周辺に導入されるひずみに大きな違い はないすなわち、最終板厚が同じであっても、 その加工プロセスの中で1パス当たりの圧下 率とクロス角度の組み合わせで様々な塑性流 動を断面に引き起こすことができることがわ かりました。(3)関連活動研究会活動「自動車および家電に関するリサイクル材料技術」 研究評価調査委員会を発足し、「スクラップ経由の 不純物を許容して、なお現状以上の性能を持つ自動 車用鋼材とその創製・加工・成形技術を開発する」 ことを目指し、産学界の有識者によるピアレビュー と研究推進のための委員会を開催してきました。本調査を通じて行われるワークショップでは、プ ロジェクト内外の講師の発表を基に材料技術に関す る研究戦略、新たなる考えの提示などについて広く 議論しました。調査研究活動基礎研究を進めると共に、基礎・シミュレーター、 実験プラントの各発展段階に研究内容を照らし合わ せるために、企業等との意見交換や技術討議、製造 ラインなど設備見学を積極的に行ってまいりまし た。広報活動本プロジェクトでは研究トピックスをメ ールマガ ジンで2001年7月より月1回、計45回配信してまい りました。また、プロジェクトの背景やコンセプト までをわかりやすく紹介したホームページも開設し ています。http://www.nims.go.jp/millennium/訪問日時 訪問先 目 的2002.2.6 住友金属工業総合技術研究所 Sumitomo Metal Industries Ltd.NIMSにおけるプロジェクト研究の説明 圧延試験機、溶解鋳造試験場の見学2002.2.17 王子製鉄群馬工場Oji Steel Co., Ltd. Gunma Works平鋼製造プロセスの見学平鋼材質の検 討クロス圧延効果の説明2002.2.20 株式会社中山製鋼所Nakayama Steel Works, Ltd.NFG(Nakayama-Fine-Grain鋼)創製 の新熱延ミルなどの見学NIMSにおける超鉄鋼・微細粒鋼研究 の紹介2002.2.21 住友金属関西製造所Sumitomo Metal Industries Ltd.部品産業の現場製造と材料技術の調査 NIMSにおける鉄鋼研究活動のPR2002.2.28 大同特殊鋼知多工場Daido Steel Co., Ltd. Chita Worksスクラップ原料を実使用している特殊 鋼工場の見学NIMS成果の開示報告2002.3.1 愛知製鋼株式会社 Aichi Steel Corp.知多工場内の棒線圧延工場、鍛造工場 の見学NIMSにおける超鉄鋼・微細粒鋼研究 の紹介2002.3.7 上越マテリアルJoetsu Materials Corp.連続鋳造および部品製作の工程を見学 銅合金のリサイクル問題を主に技術討議 NIMSのプロジェクト研究紹介PR2002.3.8 株式会社住友金属直江津Sumitomo Metals (Naoetsu) Ltd.ステンレス鋼製造プロセス(ほぼ全工 程)の見学NIMSにおけるプロジェクト研究の説明2002.3.11 トヨタ自動車株式会社 Toyota Motor Corp.NIMSにおけるプロジェクト研究の説 明及び情報交換自動車製造ラインの見学2004.2.26 マックスプランク研究所 Max-Planck-Institut fuerEisenforschung (MPIE)ドイツの鉄鋼研究の現状調査とNIMSに おけるプロジェクト説明及び情報交換2004.2.27 ドイツ鉄鋼協会VDEh German Iron and SteelInstitute (VDEh)ドイツの鉄鋼研究の現状と部品化プロ セスに関する調査2003.2.27 鉄鋼研究所Betriebsforschungsinstitut (BFI)ドイツの鉄鋼研究の現状と部品化プロ セスに関する調査2004.3.1 アーヘン工科大学塑性加工 研究所Institute for Metal Forming (IBF in RWTH)ドイツの鉄鋼研究の現状と部品化プロ セスに関する調査2004.3.2 アーヘン工科大学鉄鋼冶金 研究所Institute for Ferous Metallurgy (IEHK in RWTH)ドイツの鉄鋼研究の現状と部品化プロ セスに関する調査2004.3.3 住友金属株式会社Sumitomo Metal Industries Ltd.連鋳設備の見学2004.3.17 Nucor Corporation / Herdford ミニミルの見学と意見交換2004.3.18 Nucor Corporation / Hickman Hot Coil ミニミルの見学と意見交換2004.3.18 Nucor-Yamato Steel Company ミニミルの見学と意見交換2004.5.20 王子製鉄株式会社 Oji Steel Co., Ltd.原料配合から圧延にいたる一貫製造ラ イン見学2004.7.8 株式会社日本製鋼所 Muroran Plant, The Japan Steel Works, Ltd.鍛造技術及び大型鍛造製品に関する調 査と見学2004.10.6 鈴木金属工業株式会社Suzuki Metals Corporation細線製造工程見学2004.10.28 住友金属株式会社Sumitomo Metal Industries Ltd.凝固研究交流会2004.12.9 大同特殊鋼株式会社Daido Steel Co., Ltd.知多線材圧延工場の見学2004.12.13 株式会社中山製鋼所Nakayama Steel Works, Ltd.棒線ライン工場見学http://www.nims.go.jp/millennium/2. 3独法成果活用プロジェクト超鉄鋼プロジェクト(STX-21)は、第一期研究と して1997年から5ヵ年間実施され、引き続き2002年 4月から第二期研究として継続しています。第一期 研究では多くの特筆すべき成果が得られましたが、 社会に役に立ちそうな新素材・新技術については速 やかに実用化を図り、社会還元を進めるべきという 社会的要因に応える必要があります。そこで第二期 研究の一環として、「独法成果活用プロジェクト」 を新たに開始し、実用化を目指して必要な基礎研 究・応用技術を産学と連携して推進しています。こ のプロジェクトでは、2つの実用化前研究課題(超 微細粒鋼製品、新溶接線材)と2つの調査研究(高 窒素ステンレス製品、超微細粒非鉄製品)を設定・ 実行しています。さらに、このプロジェクトを効率 的に推進するために、2002年8月より、企業と研究 センターとのリエゾン機能として「商品化研究チー ム」を新たに設置しました。①超微細組織ネジネジは、一般的には、鋼線を素材として、これに ヘッダ成形、切削あるいは転造を施して成形した後、 焼入れおよび焼戻しの調質処理を施して製造されて いる。しかしながら、このネジの製造において、焼 入れ焼戻しの調質処理は手間のかかる工程であり、 調質処理を省く非調質での製造が可能となれば、生 産性が向上し、工業的にきわめて有利となる。超微細組織鋼は、単純組成であるにもかかわらず、 高強度であり、同時に高靱性であるため、高強度ネ ジの素材として適していると考えられる。図に超微 細組織鋼を素材として作製したM1.6ネジの外観写真 を示す。ヘッダ成形、転造によって作製した。これ は、(株)降矢技研との共同開発のもと、作製され たものである。ネジの芯部硬さは、Hv=260あり、 JIS強度区分で8.8を満足する。さらに現在、諏訪市を中心とした金属加工メーカ ー10社(STX -21共同研究会)とNIMSで共同開発 を行い、図右のタッピングネジの試作に成功してい る。超微細組織鋼はネジのみならず各種冷間圧造品 への適用が可能と考えている。②新溶接材料一般に溶接部には引張残留応力が発生し、溶接継 手の疲労強度が低下する。この問題をブレークスル ーするため、後熱処理(応力除去焼き鈍し)なしでも引張残留応力を除去できる溶接材料を開発し、継 手の強度を確保し溶接構造物の安全性を高めること を目指す。室温付近でマルテンサイト変態膨張する低変態温 度溶接材料は、溶接部の引張残留応力を低減や圧縮 残留応力の誘起が可能となる。この特性を用いるこ とにより継手の疲労強度向上が可能になった。(世 界初、業界初)図 新型溶接ワイヤによる疲労強度の向上溶接金属は1000MPaの高強度となるが、溶接割れ を回避できる成分設計により予熱処理が不要である。今後、溶接材料の販売を予定している。建設機械 の締結部位、橋梁の上部構造部などの新設計・補 修・補強部位、さらに自動車足回り部位などへ広く 適用し、高強度で安全な溶接構造技術を世界に先駆 けて展開する。さらに実用化を推進するためには、 コスト低減と溶接部の性能向上が必要である。そこ で、ワイヤ製造コストを低減し同時に継ぎ手の靭性 や延性を向上できる新構造ワイヤ(ハイブリッドワ イヤ)として展開する。低変態温度溶接ワイヤ 補修用低変態温度溶接棒開発された新溶接ワイヤおよび溶接棒③高窒素ステンレス鋼窒素添加と素材の清浄化を同時に実現できる装置 として、窒素ガス加圧式ESR (Electro-Slag Remelting) 装置を国内で初めて開発し、高清浄化ためのCaによ る脱酸技術を確立して、高強度高耐食高窒素添加ス テンレス鋼(HNS)の開発に成功した。HNSの耐食性、優れた機械的性質を明らかにし た。高濃度の窒素添加によりニッケルフリー高窒素ス テンレス鋼の創製にも成功し、その優れた加工性を 実証することができた。下図は髪の毛より細い高窒 素鋼ワイヤの加工例である。今後、この素材は抗ニッケルアレルギー材として も生体・医療用分野への応用が期待されている。ニッケルフリー・高清浄度・高窒素ステンレス鋼 の細線化(φ50μm)に成功3その他の活動記録研究協力の覚書調印(MOU)・中国鉄鋼総院(中国)締結日:2002年4月6日・ MPAシュトゥットガルト大学(ドイツ)締結 日:2003年10月11日・スロバキア工業研究所溶接研究所(スロバキア) 締結日:2003年7月3日・マックスプランク鉄鋼研究所(ドイツ) 締結 日:2004年2月26日民間企業・大学との共同研究等・ 2004年総計24件・ 2005年 民間企業との共同研究等19件(内、資 金提供有り16件)大学、協会との共同研究連携 4件 (2005年11月24日現在)論文、特許数論文数2005年53件2004年88件2003年72件2002年76件2005年11月18日現在特許出願 (括弧内は登録件数)2005年 国内14件 (0件)国際5件 (0件)2004年 国内13件 (8件)国際24件 (12 件)2003年 国内4件 (2件)国際20件 (7件)2002年 国内20件 (1件)国際10件 (2件)2005年11月18日現在研究集会等開催(2005年)・12 月15、16 S International ATS Steelmaking Conference・ 9 月 6、7 日 International Workshop on Perfor­mance and Requirements of Structural Materials for Modern High Efficient Power Plants・ 7月21日フロンティアサークル・ 7月20、21日第9回超鉄鋼ワークショップ・ 7月7、8 H 日本ースロバキア溶接・接合セミ ナー最新の溶接技術・ 4月25日 「リサイクル鉄の超鉄鋼化」プロジェクト最終報告会・ 4 月12、13 日 Symposium on USC Steels for Fossil Power Plants 2005(2004年)・12月10日 平成16年度ミレニアムワークショップ・11月25日腐食シンポジウム・ 7月21、22日 第8回超鉄鋼ワークショップ・ 4 月14-16 日 ICASS2004・ 3月17日 NIMS-MPA ワークショップ・ 3月11日 第2回日中自動車材料ワークショップ (2003年)・11月25日腐食シンポジウム・ 6月24、25日 第7回超鉄鋼ワークショップ・ 3月19日技術調査ワーキンググループ・ 2月28日 平成14年度研究推進委員会・1月29日第1回高強度耐食鋼フォーラム・1月23日 ミレニアム超鉄鋼フォーラム・1月21日第1回耐熱鋼フォーラム(2002年)・ 9月20日第1回中日自動車材料ワークショップ・ 8月29日 第17回フロンティア企画調整委員会・ 5月22-24日 第1回超鉄鋼研究センター国際会 議(ICASS2002)・ 5月21日第6回超鉄鋼ワークショップ刊行物(2005年)・ STX-21ニュース(毎月一回発行)・超鉄鋼研究センターパンフレット (和文・英文併記、平成17年3月発行)・ SRC Annual Report 2004 (和文・英文併記、平成 17年4月発行)・第9回超鉄鋼ワークショップ概要集―できたも の、わかったこと、そしてこれから―(和文・英文併記、平成17年7月発行)(2004年)・ STX-21ニュース(毎月一回発行)・ SRC Annual Report 2003 (和文・英文併記、平成 16年4月発行)・「近未来の鉄鋼材料を知る」(アーク溶接・レ ーザ溶接版)(和文、平成16年6月発行)・第8回超鉄鋼ワークショップ概要集―新構造の提 案と求められる材料技術(和文・英文併記、平 成16年7月発行)・超鉄鋼研究センターパンフレット(和文・英文併 記、平成16年11月発行)・「近未来の鉄鋼材料を知る」(耐候性鋼・腐食解 析版)(和文、平成16年11月発行)(2003年)・ STX-21ニュース(毎月一回発行)・超鉄鋼研究センターパンフレット(和文・英文併 記、平成15年1月発行)・「近未来の鉄鋼材料を知る」(ナノ版)(和文、 平成15年1月発行)・ SRC Annual Report 2002 (和文・英文併記、平成 15年4月発行)・「近未来の鉄鋼材料を知る」(ギガ版)(和文、 平成15年9月発行)(2002年)・ STX-21ニュース(毎月一回発行)・超鉄鋼研究センターパンフレット(和文・英文併 記、平成14年5月発行)・第6回超鉄鋼ワークショップ概要集 新構造用 鋼と新構造への期待(平成14年5月発行)・ Proceedings of the FIRST INTERNATIONAL CONFERENCE ON ADVANCED STRUCTURAL STEELS (ICASS 2002)(英文、平成14年 5 月発 行)・「近未来の鉄鋼材料を知る」(耐熱・耐食の合本 版)(和文、平成14年7月発行)・平成13年度プログレスレポート(超鉄鋼プロジェ クト第1期総括号)(和文)(平成14年12月発行)新聞等掲載2005年9. 9 nikkei.bp.jp「降矢技研、物材機構からの技術移転で超鉄鋼 タッピングネジを実用化」8. 5 日経BP「物材機構とSTX-21共同研究会、超鉄鋼向け 軟化処理法を開発」8. 4 日経産業新聞 「超微細粒鋼製ネジ 熱処理なくし信頼性向上」7.12 常陽新聞 第9回超鉄鋼ワークショップ6. 24 鉄鋼新聞2004年鉄鋼生産技術の歩み〈1〉「超鉄鋼」超微細粒組織実機で厚板製造に成功6. 9 鉄鋼新聞「物質・材料研究機構 リサイクル鉄 超鉄鋼化で最終報告書」4.18 鉄鋼新聞 「第9回超鉄鋼ワークショップ、7月開催」4.1 工業材料4月号 「橋梁・船舶に応用が期待される新溶接材料」2.18 日刊工業新聞 高強度鋼向け開発1.13 鉄鋼新聞「超微細粒結晶厚板 世界初、35ミリ厚を製造原料にスクラップ」2004年10.16 朝日新聞(夕刊) 「匠の技を産業に日本刀の秘密を探れ」10.1 会報たんあつ12号“強くすると脆くなる”という鋼の矛盾克服にメド9.21 橋梁新聞 物質・材料研究機構 スクラップ再生鋼板を開発35ミリ超微細粒、民間設備で9.1 向學新聞 21世紀 新潮流 ～未来を拓く人々～超鉄鋼9.1 溶接技9月号 超鉄鋼ワークショップ開催される8. 24 日刊工業新聞 次世代超臨海発電プラント向け 耐熱ボルト 鋼材試作へ8.15 鉄構技術2004年9月号第8回超鉄鋼ワークショップ 新構造の提案と求められる材料技術8.1 建築雑誌2004年8月号物質材料研究機構の超鉄鋼(超微細粒鋼)の写 真が掲載されました。7. 23 日経産業新聞強度・寿命2倍に 低コスト製造品質確認カギ 超微細粒鋼で成果相次ぐ7.12 常陽新聞 第8回超鉄鋼ワークショップ6. 30 日科技連出版社日科技連出版社から出版された「エコマテリ アル・ガイド」に当センターの資料が転載さ れました。6.16 日経産業新聞 厚板鋼鈑強度2倍6.15 常陽新聞 スクラップ鉄で超微細粒厚板6.2 産業新聞 世界初超微細粒厚板製造に成功5.28 鉄鋼新聞 鉄スクラップから微細粒鋼板5.26 化学工業日報 高強度の微微細粒鋼鈑5. 26 日刊工業新聞 結晶粒10/1で35mm鋼鈑5.25 スクラップ原料で35mm厚の超微細粒鋼板の 試作に世界で初めて成功2003年7.17 朝日新聞 650度耐える鋼物質・材料研が開発7.17 ナノ析出物設計により高強度耐熱鋼を開発7.16 化学工業新聞耐熱鋼フェライト鋼 物材研が開発成功窒化バナジウムをナノ分散7.15 S&T TODAY高強度鋼線材コイルの長尺化に成功:物質・材料研究機構/大阪精工7.1 ふぇらむ 鉄鋼材料を進化させるナノテクノロジー5. 26 鉄鋼新聞超微細粒鋼の線材コイル 大阪精工が長尺・高強度化 物質・材料研と共同開発 量産化可能に5. 23NikkeiBP(NETWORK)物材機構と大阪精工、800MPa級高強度の超微細粒鋼コイルを試作5. 22 日経産業新聞 高強度鋼使い線材大阪精工物材機構5.21 日刊工業新聞超微細粒鋼線物材機構が量産技術共同開発圧延を工夫し高強度に5.21 日本工業新聞物材機構大阪精工強度2倍「超微細粒鋼」 製長尺コイルを試作超鉄鋼で初の実用材料5. 20 超微細粒鋼線材コイルの量産化に目処5.12 鉄鋼新聞 「超鉄鋼研究センター年次レポート」を発刊4. 22 日刊工業新聞 フェライト耐熱鋼 高強度・強靭化に成功4.17 鉄鋼新聞 遊歩道「盤石の構え」4.7 化学工業日報鋼材の水素トラップサイト チタン炭化物が有効物材機構遅れ破壊に強い4.4 化学新聞遅れ破壊に強い高強度鋼 物・材機構 創製に向け成果3. 26 日経産業新聞 鋼材の劣化防止チタン粒子で水素吸排出nikkei.bp.jp3. 26 化学工業日報 高強度鋼の遅れ破壊対策チタン炭化物が有効3. 25 日本工業新聞高強度鋼 遅れ破壊解決のカギ発見 物材機構2000 メガパスカル以上の鋼も視野3. 25 日刊工業新聞高強度鋼水素原子移動を抑制チタン酸化 物析出と分析の制御で3. 24 遅れ破壊に強い高強度鋼の創製に大きな期待3.6 鉄鋼新聞 超微細粒薄板創製と自動車への利用2. 25 鉄鋼新聞物質・材料研の超鉄鋼研究 中小企業とも共 同研究開始2. 25 鉄鋼新聞 6月に超鉄鋼ワークショップ1.31 鉄鋼新聞 超鉄鋼研究の総括書を発行1.22 鉄鋼新聞ミレニアム関連プロジェクト「リサイクル鉄 の超鉄鋼化」1.9 Hindustan Times NML, Steel City impress this Japanese expert2002年11.13 化学工業日報 「超微細粒鋼」実用化めざす10. 29 鉄鋼新聞スクラップから良質の再生材 不純物の積極活用に挑戦10. 25 鉄鋼新聞 高窒素ステンレス鋼の新展開10.19 信濃毎日新聞 超鉄鋼のねじ製品化10.16 日刊工業新聞 諏訪圏工業メッセ200210.7 日刊工業新聞 諏訪圏工業メッセ17日開幕9.13 日本工業新聞ビッグプロジェクトの成果と教訓 超鉄鋼 実 用化へ「分散型」組織9.12 日本工業新聞ビッグプロジェクトの成果と教訓超鉄鋼くず鉄を「優等生」に変身9.11 日本工業新聞ビッグプロジェクトの成果と教訓超鉄鋼“夢 の鉄”開発へ「人材探せ」9.10 日本工業新聞ビッグプロジェクトの成果と教訓超鉄鋼強度、寿命2倍に“超”戦8. 24 東京新聞 夢の超鉄鋼で自動車軽く8.14 読売新聞 超鉄鋼実用化へ国が支援国際競争力も“2倍の強さ”に8.7Nikkei BPPNETWORK物質・材料機構、超微細粒鋼製の自動車向けハイドロフォーム成形品を共同開発へ8.6 Nikkei BPNETWORK物質・材料機構、ホンダなどと2μmの超微細粒鋼8.1Nikkei BPNETWORK物質・材料研究機構、鉄鋼材料の研究成果を伝える学生用小冊子7.31 日本工業新聞 産学官共同研究など今.度新規課題97件7.31 日本工業新聞文科省の今年度科技振興調整費新規研究に97テーマ採択7. 30科学技術動向2002. 7月号微細結晶粒金属材料の研究開発動向-次世代高強度材料を目指して-7. 23 鉄鋼新聞 超微細ハイテン鋼板自動車部品用、共同研究7.9 日本経済新聞 諏訪で共同研究が始動部品などの用途開発へ6. 25 鉄鋼新聞物質・材料研 超鉄鋼プロジェクト(5)超鉄鋼研究成果の商品化を目指して6.21 鉄鋼新聞物質・材料研 超鉄鋼プロジェクト(4)新材料設計指針の確立と材料特性・評価の標準化へ6.19 鉄鋼新聞物質・材料研 超鉄鋼プロジェクト(3)高効率発 電用フェライト系耐熱鋼の長寿命化を目指して6.18 鉄鋼新聞 物質・材料研 超鉄鋼プロジェクト(2)高強度6.17 鉄鋼新聞 高耐食の新構造体目指して6.12 日刊工業新聞物質・材料研 超鉄鋼プロジェクト(1)第1期 の成果と第2期計画概要5. 22 茨城新聞 物質機構などの用途開発プロ諏訪地11社が応募5.21日経ナノテクノロジー・ホームページ寿命100倍の耐熱鋼開発 つくばの物質・材料研 火力石炭、.13万トン節約5.21Nikkei BPNETWORK物材機構、ナノ粒界制御で火力発電向け耐熱鋼の強度2倍・寿命100倍に1基当たり石炭使用量を.間約13万t削減5. 20 毎日新聞物質・材料研究機構、ナノ粒界で火力発電向 け耐熱鋼の強度2倍・寿命100倍に5. 20 鉄鋼新聞 強度2倍、寿命は100倍の耐熱鋼開発5.17 日刊工業新聞 強度2倍・寿命100倍物質材料研 新耐熱鋼を開発5.17 日本工業新聞650度Cで倍の強度 物材研 ナノ組織制御技術を駆使5.17 化学工業日報火力発電効率5%アップ可能に 物材機構が新耐熱鋼を開発5.17 日経産業新聞フェライト系耐熱鋼 高強度・長寿命タイプ 物材機構溶接構造体向け開発5.16 日刊工業新聞650度に耐える鋼材料物材機構高効率の石炭火力向け5.16650℃で強度2倍・寿命100倍の溶接構造体向 け耐熱鋼開発に成功4. 22 日経産業新聞つくばで第一回超鉄鋼国際会議物材研、22日から 超鉄鋼ワークショップ4.13 信濃毎日新聞 高強度厚鋼板実用化へ共同研究参加募る4.2 日経産業新聞 鉄硬化の結晶ゆがみ物材機構・九大など発見4.1 化学工業新聞 金属粉末のナノ構造欠陥 原子レベルで解析受賞受賞 年月日 授与機関 受賞の名称 氏名(所属) 受賞の理由及び対象論文H17.10.25NanoSPD3 (The 3rd International Conference on Severe Plastic Deformation) Organizing CommitteeExcellentPoster AwardSUSARLAVenkata Surya Narayana Murty、鳥塚 史郎、長井寿 (冶金)Controlling mechanism of ferrite grain size generated through large strain deformation of 0.15C steelH17.10.22TXテクノ ロジ ー・ショーケ ース ツクバ ・イン・アキバ2005TXテクノロ ジー ・ショ ーケース ツクバ・イ ン・アキバ 2005ベスト・プレゼン テーション鳥塚史郎 (冶金)超鉄鋼を利用した低環境 負荷高強度精密部品H17. 9.6ダルムシュタ ット工科大学 (ドイツ)Autust-Thum記念賞阿部富士雄 (耐熱)耐熱鋼、耐熱合金の基礎 的研究の功績に対してH17. 6. 2 (社)日本造船学会日本造船学 会奨励賞榎並啓太郎 (冶金)対象論文:榎並啓太郎、 萩原行人、三村宏「高張 力鋼の延性・脆性破壊発 生評価手法」H17.4.21 (社)溶接学会 溶接学会業 績賞平岡和雄 (溶接)「アーク現象の定量化とア ーク溶接プロセス制御へ の展開」に対して受賞 年月日 授与機関 受賞の名称 氏名(所属) 受賞の理由及び対象論文H17.4.21 (社)溶接学会 溶接学会論 文奨励賞伊藤礼輔(現 川崎重工業)対象論文:伊藤礼輔、平 岡和雄、志賀千晃:超狭 開先アーク溶接における 超細粒鋼熱影響部の特性- 超細粒鋼溶接熱影響部の 軟化域とミクロ組織(第1 報)-H17. 4.21 (社)溶接学会溶接学会誌 ベストオー サー賞村松由樹(溶 接)連載講義「レーザスペッ クルによるひずみ測定法 の溶接への応用」の執筆 に対してH17. 3. 29 (社)鉄鋼協会 学術貢献賞 (三島賞)長井寿 (冶金)強靱材料の破壊の微視組 織的研究H17. 3. 29 (社)鉄鋼協会学術記念賞 (西山記念 賞)鳥塚史郎(冶金)超微細粒鋼製造の基礎理 論と実証H16.ll.15 (社)溶接学会溶接構造シ ンポジウム 2004シン ポジウム奨 励賞目黒奨 (溶接)ESPIシステムの溶接への 適用H16.11.6 (社)日本機械学会機械材料・材料加工部 門部門一般表 彰(新技術開 発部門)片田康行(耐食)高窒素ステンレス鋼の開 発とその展開H16.10. 25スロバキア溶接 研究所(VUZ), スロバキア共和 国工業会、スロ バキア溶接学会ヨーゼフ・ コベルカ賞 (YOZEF CABERKA Award)志賀千晃(現 大阪大学客員 教授、元金属 材料技術研究 所)溶接発展への貢献に対し てH16.10.22 (社)日本機械 学会優秀講演表 彰戸田佳明(耐 熱)Improvement in Creep Strength of Precipitation Strengthened 15Cr Ferritic Steel by Controlling of Carbon and Nitrogen ContentsH16. 5. 22 (社)日本塑性 加工学会 新進賞 井上忠信(冶金)加工ひずみ制御による高 効率な結晶粒微細化技術 の探索H16. 3. 30 (社)日本金属学会 功績賞 鳥塚史郎 (冶金)H16. 3. 30 (社)日本鉄鋼 協会 澤村論文賞吉田直嗣(冶 金)、梅澤修 (横浜国立大 学)、長井寿 (冶金)Influence of phosphorus on solidification structure in continuously cast 0.1 mass% carbon steelH15.ll.20先端材料技術 協会(第8回 SAMPE先端材 料技術国際会 議)Poster Award大久保弘、宗木政一(耐 熱)、岡田浩 一(現住友金 属工業(株))、 阿部冨士雄 (耐熱)Effects of A New Thermomechanical Heat Treated Process on Creep Properties of High Cr Ferritic Heat Resistant SteelsH15.10.ll (社)日本金属 学会 論文賞早川正夫、松岡三郎(疲 労)、原徹、 津崎兼彰(金 相)、寺崎聡(現石川島播 磨重工業(株))改良オースフォームした 耐水素割れ感受性に優れ る中炭素鋼焼もどしマル テンサイトのAFM組織解 析H15. 9.17The Institute of Materials(第6回チャー ル ズ パーソン ズ・タービン 材料国際会議)最優秀論文 賞阿部冨士雄、 種池正樹(耐 熱)、澤田 浩太(クリー プ研究)Improvement of Creep Strength by Boron and Nano-Size Nitrides for Tempered Martensitic 9Cr- 3W-3Co-VNb Steel at 650℃受賞 年月日 授与機関 受賞の名称 氏名(所属) 受賞の理由及び対象論文H15. 5. 27 (財)溶接接合 工学振興会 木原奨励賞 川口勲 (溶接)高出力深溶込みレーザ溶 接における欠陥防止のた めの出力変調制御法の開 発H15. 5.19 (社)高温学会 論文賞中村照美、平 岡和雄 (溶接)超狭開先GMA溶接開発 のための溶接プロセス数 値シミュレーションシス テムH15.4. 24 (社)溶接学会 論文賞中村照美、平 岡和雄 (溶接)超狭開先GMA溶接プロ セスの開発のための制御 技術に関する一連の研究(第1報～第4報)H15. 4. 24 (社)溶接学会 研究発表賞伊藤礼輔(現川崎重工 業(株))超細粒鋼溶接熱影響部の 金属組織学的検討H15. 3. 27 (社)日本鉄鋼 協会 俵論文賞土田武広(現(株)神戸製鋼 所)、原徹、 津崎兼彰(金 相)V添加高強度鋼の水素吸 蔵挙動と微細組織の関係H14.12.25 (社)日本塑性 加工学会日本塑性加 工学会優 秀論文講演 奨励賞井上忠信(冶 金)せん断付与圧延による圧 延鋼板の特性H14.ll.19 (社)溶接学会(社)溶接 学会シンポ ジウム賞高木周作(現 川崎製鉄(株)技 術研究所)、 寺崎聡、津崎 兼彰(金相)、 井上忠信(冶 金)、南二三吉 (大阪大学)Weibull応力による高強度 鋼の水素割れ感受性評価H14.11.19 (社)溶接学会溶接構造シ ンポジウム 2002奨励 賞原徹(金相) V添加高強度鋼の水素吸 蔵特性と組織の関連H14.11.3 (社)日本鉄鋼協会日本鉄鋼協 会144回講 演大会第16 回学生ポス ターセッシ ョン優秀賞小関尚志(冶金)1パス大ひずみ高Z加工 による超微細フェライト 粒形成におよぼす加工温 度とひずみ速度の影響H14.11.2 (社)日本金属学会日本金属学 会論文賞高木周作(現 川崎製鉄(株)技 術研究所)、 井上忠信(冶 金)、津崎兼 彰(金相)、 南二三吉(大 阪大学)Weibull応力による高強度 鋼の水素割れ感受性評価H14.10. 27th LiegeConference Materials for Advanced Power EngineeringBest Poster Certificate Steam Turbine Category九島秀昭、木 村一弘(クリ ープ研究)、 阿部冨士雄 (耐熱)Long-term Creep Strength Prediction of High Cr Ferritic Creep Resistant Steels学位取得一覧取得 年月日 授与機関学位 の名称 氏名(所属) 学位取得論文題目2002/3/25 大阪大学 博士 (工学)中村照美(溶接グループ)超狭開先GMA溶接にお けるワイヤ溶融挙動とそ の溶接プロセスに関する 研究2002/3/25 東北大学 博士 (工学)坂下真司(現(株)神戸製鋼)コンクリート中の線材及 び棒鋼の電気化学的手法 による腐食特性評価と防 食技術に関する研究2003/3/25 東京工業大学 博士 (工学)相良雅之(現住友金属工業(株))オーステナイト系ステン レス鋼の窒素添加による 耐局部腐食性向上に関す る研究2004/3/25 北海道大学 博士 (工学)堀内寿晃(現(株)日立製作所)フェライト系耐熱鋼にお けるFe-Pd基L10型規則 相の相安定性に及ぼすNi の効果の現象論的計算2004/3/31 Imperial College(英国) Ph. D. 仙波潤之(耐熱グループ)Creep Modelling of Microstructurally Unstable Martensitic Steels2004/4/15 東京大学 博士 (工学)大森章夫(現JFEスチール(株))超微細フェライト組織鋼 の創製と機械的特性の制 御に関する研究2005/3/25 大阪大学 博士 (工学)高木周作(現JFEスチール(株))ローカルアプローチに基 づく超高強度鋼の水素割 れ感受性評価手法に関す る研究冶金グループの活動をふりかえって長井寿、井上忠信、殷福星(YIN Fuxing)、岩崎智、岡田ひろみ、北井崇貴、黒田秀治、小林正樹、小林能直、坂巻育子、佐久 間信夫、櫻井敦子、鐘勇(ZHONG Yong)、SUSARLA Venkata Surya Narayana Murty、鈴木仁、趙明純(ZHAO Ming-Chun)、邱 海(QIU Hai)、塚本雅敏、土谷悦子、鳥塚史郎、中里浩二、野澤智子、花村年裕、檜原高明、藤原昌樹、黄蘭(HUANG Lan)、 Elena BULGAREVICH、細田義郎、村松榮次郎、森俊博、本木悦子、山本重男、余黎明(YU Liming)1.冶金クループのミッション安価・高性能素材創製のために、凝固、加工、熱 処理における組織形成過程をモデリングと実験シミ ュレーションを結合して相互連携的に把握し、合金 組成鈍感、不純物利用、微細組織設計制御を可能と する新プロセス構築のための設計理論と基礎知見を 提供する。2.研究トピックス2.1 スクラップ有効利用のための材料プロセス 基礎研究の考え方(井上忠信)循環型社会への道循環型社会への転換は21世紀の人類的課題であ る。そのための日本の寄与が求められている。資源 循環においてリサイクルが重要なキーテクロノジー となる。既に国民のリサイクル意識は高く、産業界 の活動も活発である。また、日本は地下資源に恵ま れておらず、ほとんどの原料を輸入しており、大量 生産、大量廃棄の時代を経てきている。しかし、埋 め立て処分場の不足など廃棄には多くの限界があ り、産業廃棄物の大幅な削減が必要となっている。 2015年辺りには日本の人口は減少に転じると予想さ れており、内需もそれに伴って減少していくものと 推察される。一方、スクラップ発生は漸増し、終に は内需量を上回る時代が到来する。これらの近未来 的な時代の変化に鉄鋼製造技術を適合して行かねば ならない。その意味で、われわれが主題とすべきは、 「リサイクル性設計」と「スクラップ利用の新しい 鉄鋼プロセス開発」となる(Fig.1)。Fig.1 Research scheme for scrap-utilized process小規模プロセスのメリット・デメリットスクラップ発生場所は分散し、質量共に変動幅が 大きい。したがって、電気炉プロセスのような小規 模プロセスがスクラップ再生に向いている。しかも、 小規模プロセスは、低エネルギー消費率、低環境負 荷、低投資コストなどの利点も有している(Fig.2)。 下図では、薄スラブ連鋳、ストリップ連鋳を通常の 大型連鋳プロセスと比較してある。一方、既存の小 規模プロセスには、製品の品質が低い、製造可能品 目が限定されるなどの不利な面があるとされている。Fig.2 Estimation of total consumption energy, CO2 emission and investment cost in various fabrication systems急冷凝固の利用と新しい加工熱処理法の開発小規模プロセスでは急冷凝固となり、その結果微 細凝固組織が得られるという優位性がある。急冷凝 固において、スクラップに含まれている様々な不純 物がどのように分散し、どのような大きさの組織を もたらすかをまず明らかにしなければならない。そ の際に検討すべき冷却速度範囲は1～1000Ks-1とな るだろう。また、凝固まま材の性質があまり知られ ていないので、その系統的な研究が必要である。最 終的には加工熱処理法(TMCP)によって組織調整 を行うが、凝固スラブ厚さが小さくなるので、加工 率を大きく取ることができない。そこで、その限界 を打破する試みとしてせん断付与加工法を検討す る。加工モードが結晶粒径と集合組織の制御に重要 な役割を果たすと考えている。以上のような基礎研究の成果に立って、新しい組 織制御プロセス法を提案するのが目標である。井上忠信、長井寿:材料52, 9 (2003) pp1107-11152. 2 高リン鋼のメタラジー(1)MnO-SiO2-FetO系におけるリンの熱力学(小林能直)高濃度不純物の原料を効果的に脱酸するためには 溶融状態での酸化物系の平衡状態に関する理解が必要である。ここでは、MnO-SiOz-FetO系において、 リンのスラグ-溶融鉄間分配を調べた。平衡実験の方法対象とする温度域(鉄の融点)によって二つの方 法を使い分けた。すなわち、ひとつは鉄坩堝中で1 グラムの電解鉄(1ミリ厚板)と10グラムの予溶融 MnO-SiO2-FetOスラグを1673～1773Kの間の温度で12 時間保持し平衡させた。別に、MgO坩堝中で2グラ ムの電解鉄と同じスラグを1823～1923Kで3時間保 持し平衡させた。保持中Arガスを流し続けた。酸素 分圧を制御するために鉄酸化物を5.94から12.4 mass%添加した。鉄中のリンと酸素、スラグ中のリ ン、全鉄、二価鉄MnO、SiO2とMgOの各含有量を測 定した。リン保持と脱酸この系でのリンの反応はEq.[1]、フォスフェイ ト・キャパシティはEq. [2]で表される。ここで、(mass%PO43-)とƒPO43-はそれぞれスラグ中 のリン酸イオン1mass%に対する濃度と活量係数、 Pr2とPO2はリンと酸素の分圧、K1はEq.[1]の平衡定 数、aO2は酸化物イオンの活量である。フォスフェイ ト・キャパシティは金属中の酸素量、リン量、スラ グ中のリン量から計算できる。固相鉄実験における 酸素分圧は、MnO-SiO2-FetO系におけるFetO活量から 推定できる。Fig.1 Phosphate capacity for MnO-SiO2-FetO system at temperatures between 1673 and 1773K.Fig.1は1673、1723、1773Kにおけるフォスフェイト・キャパシティをXMnO/XSiO2モル比の関数として示している。CPO43-はモル比の増加、温度の低下に 伴って増加していることが分かる。Fig.2は、1823K と1873Kにおける結果である。MgOのスラグへの溶 解度も示してある。低温側とは逆にCPO43-はXMnO/ XSiO2比の増加と共にわずかに減少する。この減少は MgO溶解度の低下を伴っている。MgO坩堝中では、スラグに溶解したMgOは平衡固溶状態であり、塩基 性酸化物として働いていると思われる。このように フォスフェイト・キャパシティはCaO添加スラグ中 と比較して極めて小さい。例えば、CaOsatd.-CaF2-SiO2 系スラグでは1573KでlogCPO43-=25.7である。その結 果、本来のリンの分配比(スラグ中/金属中)は、 溶解鉄中酸素0.02mass%、XMnO / XSiO2=2の場合、 1873Kで0.027と計算される。すなわち、リン含有鋼 をMn-Si脱酸することにより、有効に脱酸しかつほ とんどのリンを金属中に保持できることになる。Fig.2 Phosphate capacity and MgO content for the MgOsatd.-MnO-SiO2-FetO system from 1823 and 1873K.Y. Kobayashi, N. Yoshida and K. Nagai: ISIJ International,1,44(2004) pp21-26(2)リン含有鋼の鋳造γ粒径①連続鋳造0.1%C鋼の柱状晶γのリンによる微細化(吉田直嗣)Fig.1 Columnar grain structures of prior γ: (a) 0.01 P and (b)0.10P.リンは低炭素鋼の包晶反応遅延、γ域の低温化な どにより鋳造組織、特にFig.1に示すようにγ粒組織 を微細化する。ここでは、リンの影響に注目しつつ、 δ/γ変態温度域と粒成長予測に関する熱力学的/反 応速度論的検討を行う。リン含有の鋳造スラブの作製と解析Fe-0.1%C-0.15%Si-0.6%Mn (mass%)組成をベー スに、リン量を0.01～0.20mass %、すなわち0.01P、 0.10P、0.20Pの間で変化させ、実験室規模の連鋳機 によって厚さ100ミリ、幅800ミリのスラブをそれぞ れ作製した。1/4厚さ位置の偏析状態をEPMAで調べ、 以下の手法で解析した。1)Local Equilibrium Mapping (LEM): EMPAデータを元に変態点と相比を マッピングする。2) Classical Grain Growth Model (CGM): Burke(1949)の式を元にTurnbull(1951)が提案 した近似解をHondros(1965)の粒界エネルギーを使 って解いた。その結果得られた式を示す。ここで、dγ : γ粒径、d0 :初期粒径、σ :粒界エネ ルギー、V :モル体積、r :冷却速度、λ:粒界厚さ、 R :ガス定数、Dgb(T):粒界拡散係数、T0、Tf :急 速成長の開始、終了温度である。このモデルを図示 したのがFig.2である。Fig.2 Schematic representation of γ grain growth in CGM.粒成長の予測LEMの解析結果はδ/γ変態領域の低温化を示し た。リンのミクロ偏析はそれを助長し、δ相をより 低温まで残留させる。例えば、高リン鋼では平衡変 態点より100K低い温度でも完全γ相にならない。 1555Kでのγ相比は0.10Pで0.995以上、0.20Pでほぼ 0.95となる。CGM解析は粒径に及ぼす成長速度と急 速成長開始温度の影響を強調した。さらにリン添加 による粒界エネルギー減少はある程度成長速度を減 少させる。リン添加が変態温度域を下げ、急速成長 開始温度を低下させる。Fig.3に示すように、CGM から予測される粒成長曲線はγ粒生長に及ぼすリン の影響をよく説明している。Fig.3 The grain growth curves with various starting temperature of rapid growth, T0.is Calculated by Eq. [1],using T0=1726K (adopted for 0.01 P),1657K (Ae4 for 0.20P) and 1555K (adopted for 0.10P and 0.20P), and cooling rate of 1.0Ks-1.σP is 25% lower than σ0.Fig.4 Effects of cooling rate and P addition on as-cast γ grain size in 0.1C-0.15Si-0.6Mn steels. σP is 25% lower than σ0.冷却速度の影響以上の考え方をベースにし、スラブ厚さの違う鋳 造材で、冷却速度の違いがγ粒径に及ぼす影響を検 討した。Fig.4はγ粒の二乗成長量の実験値と推測値 を同時に示している。二乗成長量は冷却速度の逆数、 T-1に比例する。冷却速度は凝固後のものであり、 100ミリ厚スラブでは1Ks-1、2ミリ厚スラブでは 40Ks-1と見積もられる。0P(0.01%P)鋼の実験結果は TrgをLEMから得られる1726Kを代入した推測値と良 く 一致する。0.1～0.2%のリン添加はいずれのスラブ 厚でもγ粒径を微細化する。リン添加鋼ではTrgは 1555Kと見積もられ、Ae4より100K以上低い。これは リンのミクロ偏析によるものである。N. Yoshida, O. Umezawa and K. Nagai: ISIJ International, 3, 43 (2003) pp348-357N. Yoshida, O. Umezawa and K. Nagai: ISIJ International, 3, 44 (2004) pp547-555吉田直嗣、小林能直、長井寿:鉄と鋼、4, 90 (2004)pp198-205②超高速急冷による鋳造γ粒の微細化(KIM Hansoo)電子ビーム溶接法で超急冷凝固を模擬0.1%P鋼で105Ks-1までの冷却速度を再現し、一次 デンドライト・アーム間隔(PDAS)と鋳造γ粒径 (PAGS)の関係を統一的に理解しようとした。Fig.1 のように電子ビームの移動速度を変えて冷却速度を 変化させた。冷却速度の推定にはRosenthal thick plate式で熱流量計算を用いた。PAGSは既述の手法 で計算した。Fig.1 Schematic illustration of the electron beam surface remelting experiment.Fig.2. Relationship between the cooling rate and the initial grain size.PDASとPAGSの関係の考察本検討では、d0をPDASに等しいと仮定すること で推論することとした。前項までの実験で得られた PDAS実,験結果とそれらの回帰式をFig.2に示す。 Fig.3はPAGSの二乗成長量の計算式と実験値を示し たもので両者の良い一致が認められる。以上は冷却 速度が100Ks-1以下の場合であるが、それ以上では 二乗成長量は著しく減少し、PAGSはPDASに接近し てくるものと考えられる。CGM理論から、が導かれる。Fig.4は冷却速度が100～2 ×104Ks-1の 極めて広い範囲で、本式から得られるPAGSが実験 から得られるPAGSと極めて良い一致を示すことを アピールしている。Fig.3. Relationship between the cooling rate and the growth amount of the austenite grain.Fig.4. Comparison of the experimentally measured PAGS with the calculated values.H. S. Kim, Y. Kobayashi and K. Nagai: Materials Science and Engineering A, 403(2005) pp311-317(3)高不純物鋼鋳造材における硫化物(LIU Zhongzhu)硫化物の形態の冷却速度による違い硫化物は鋼中によく見られる析出物である。酸化 物に析出した硫化物(Coexisting Sulfide and Oxide, CSO)も観察される。ここでは、冷却速度がCSOの 形状や組成に及ぼす影響を議論する。そのために、 通常連鋳材(210mm厚、CC)とストリップ連鋳材 (3.7mm、SC)を用意し、硫化物を詳細に組織観察 した。Fig.1 CSO in (a) CC steel and (b-c) SC steel.CC材では低冷却速度を反映しCSOは球状であり、 Fig.1(a)に示すように硫化物は酸化物を完全に覆って いる。EDS解析ではコア酸化物内にもマトリックス 以上のS含有量が示された。SC材では、二種類の形 態が見られる:(1)Fig.1(b)のようにCSO全体は球 状で、硫化物はその一部を構成する。他に(2) Fig.1(c)のように、半球状の酸化物と硫化物同士が合 わさった形態のものがある。これらの形態から、硫 化物は液相酸化物中で析出し、固相鉄中でのMn、S の拡散に伴って成長すると判断される。Fig. 2 Precipitation of MnS from (a) oxide vs. temperature and (b) oxides with different sulfide capacity.硫化物析出モデルの検討ミクロ偏析モデルから酸化物上の硫化物析出を検 討してみる。Fig. 2はCC材での検討結果である。凝 固中にSは固相―液相鉄間で再分配する。同時にSは、 液相鉄と液相酸化物間においても再分配する。鉄相 の完全凝固後では、温度低下に伴い酸化物が凝固す るまで酸化物中のMnS固溶度低下によって、MnSが 液相酸化物から析出する(Fig.2(a))。次に、Sの溶 解度が異なる酸化物ができたと仮定する(Fig. 2(b) において、酸化物B酸化物Aより高い硫化物キャパ シティを持つ)。すると鉄相の完全凝固後、酸化物B からの硫化物析出は酸化物Aにおいてよりも早く始 まり、析出量も多くなる。(4)ストリップ連鋳材の性質①ナノサイズ銅硫化物の析出による高強度化(LIU Zhongzhu)ストリップ連鋳によって微細な組織が得られるは ずだが、凝固ままの性質についてはあまり系統的な 知見がない。そこで、0.11%P-0.01%S-0.07%Cuを含 む低炭素鋼のストリップ連鋳材の引張性質を連鋳材 の焼鈍材と比較した。Fig.1にその結果をまとめて示 す。まず、連鋳まま材が焼鈍材よりも高降伏強さ (YS)を示し、引張強さ(TS)との差すなわち加工 硬化能も優れていることが分かる。さらに、既に他 で得られた高純度材の結果と比較すると、今回検討 の高不純物含有材がさらに優れた強度―加工硬化能 バランスを示していることがわかる。高不純物含有鋼が何故優れた強度特性を示すのか 様々な観点から検討したが、結論的にはFig.2に示すような、主に数10ナノの硫化物の析出によると結論 付けられた。ナノ硫化物は、主としてCuとSとから なり、わずかにFeを含む。この硫化物は焼純によっ て100-800ナノの大きさに成長する。Fig.1 Yield strength and work hardening ability of thepresent as-cast and annealed strips compared with thestrips with low impurities.Fig. 2 Nano-scale copper sulfides in present as-cast strips with high impurities: (a) Dark field, thin foil; (b) EDS, extraction replica.Z. Liu, Y. Kobayashi and K. Nagai: Materials Transactions, 2, 45(2004) pp479-487.Z. Liu, Y. Kobayashi and K. Nagai: Materials Transactions,1,46(2005) pp26-33.②塑性異方性の検討(殷福星)、(XU Pingguang)高純度鋼A (0.05C%)と高不純物鋼B (0.08%) のストリップ連鋳材(3ミリ厚)から、それぞれ、 入手まま材(Sample C).それを直接1473Kで1.08 × 104s焼鈍したもの(Sample H)、一旦75%冷間圧延後、 873Kで1.8× 104s再結晶焼鈍(R1)、973Kで1.8× 103s 再結晶焼鈍したもの(R2)を準備した。それらから 鋳造方向に対して0°、45°、90°に引張試験片を採取 し、γ値、γm =(γ0+2γ45+γ90) /4 と Δγ =(γ0-2γ45+γ90) /2 を 求めた。Fig.1に示すように、A鋼のSample Cの引張強さは 360MpaでSample Hより40MPa以上高い。全伸びは 32%と優れている。再結晶焼鈍材はより高強度でさ らに優れた全伸びを示す。B鋼でも同様の傾向を示 し、強度x伸び=12000～14000のバンドにすべてのデータは含まれる。この中で特にB鋼のSample Cが 高い強度を示していることが注目される。Table 1 Chemical composition of experimental steel strips (mass %)Steel C Si Mn P S Sol. Al Total Al Cu N OA 0.049 0.12 0.29 0.014 0.004 <0.003 <0.01 0.01 0.0046 0.0055B 0.080 0.06 0.54 0.105 0.010 <0.003 <0.01 0.07 0.0083 0.0162Fig.1 Strength and elongation of the strip-cast steels.Fig. 2 γ-value and Δγ value of the SC steel in different samplesFig. 2はγ値とΔγ値をそれぞれのサンプルで比べた ものである。これらを総合すると、A鋼、B鋼によ らず連鋳まま材が、最も優れた強度―加工性バラン スを示すこととなる。γ値に影響を及ぼす微視組織因子は、集合組織 (面内{111}方位分布など)と粒径である。集合組織 解析の結果、連鋳材の面内方位は{111}と{114}で 特徴付けられ、それは少なからずその後の焼鈍材に 引き継がれる。検討の結果、連鋳材の優れたr値は、 {111}方位結晶の粒径の大きさに起因し、焼鈍材で は{001}方位の発達がマイナス要因で、{114}方位 の発達がSample C、Hで低Δγ値をもたらしたと結論 付けられた。P. XU, F. YIN, and K. NAGAI, Material Transactions, 45 (2004)pp447- 456P. XU, F. YIN, and K. NAGAI, Material Transactions, 45 (2004) pp2456-24622. 3超微細組織素材を創る基礎・基盤研究 (1)薄スラブ連続鋳造シミュレータの開発(岩崎智)装置の概略薄スラブ連続鋳造プロセスの簡便なシミュレータ を試作した。Fig.1がその概念図である。高周波誘導 溶解炉は鉄換算で35kgを溶解する能力がある。誘導 コイルを巻いたスリット付水冷鋳造モールドは、鋳 造厚さを30～100ミリ、幅を70～150ミリの間で可変 であり、高さは300ミリと設定されている。銅壁の 表面はサーマル・スプレイセラミックコーティング されている。モールドの底を金属ダミーバーで支え、 溶解金属はマグネシア坩堝の底にある金属―セラミ ック複合材料製のノズルから注入される。鋳造サン プルはモールドの底から引き出され、空気中に置か れるか水冷スプレイで冷却される。Fig.1 Schematic drawing検証―鋳造組織―0.05C-0.10Si-0.5Mn (mass%)組成の50ミリ厚商用 スラブと鋳造組織を比較した。Ar中で溶解し、鋳型 に注入したまま空冷した。得られたサンプルは50ミ リ厚、70ミリ幅、300ミリ高さである(Photo.1)。 Photo.2 (a)に横断面写真を、(b)に商用スラブの 同断面を比較して示す。柱状デンドライト組織が表 面から中心まで見られる。冷却速度(r:Ks-1)は二 次デンドライト・アーム間隔(S2 :μm)の大きさの 変化から次式[1]を用いて推定すると、2 (中心付 近)～30 (表面)Ks-1と見積もられる。柱状γ粒の大きさは、表面から10mmのところで 約0.8mmである。得られた鋳造組織は50mm厚商用 スラブのものとほぼ同等で、開発装置が薄スラブ連 続鋳造組織のシミュレータとして有効であることを 示している。Photo.1 A look of ingotPhoto. 2 Macrostructures in the longitudinal cross section.(2)Mnミクロ偏析による変態フェライト粒微細化 の促進(山下晃生)連続鋳造材では通常ミクロ偏析が完全に破壊され ているとは思われない。それに対して、実験室サン プルでは均質化したものを対象に基礎データを得て いる。そこで、100ミリ厚連鋳スラブ(0.10C-0.16Si- 0.6Mn-0.01P-0.003S mass%)を用いて、Mnミクロ偏 析あり(steelA :二次デンドライト・アーム間隔は 137μm).なし(steelB)のサンプルを用意した。 SteelBは1623Kで70%の圧延後、24時間保持し、 EMPA精度でミクロ偏析が検出されないことを確か めた。両サンプルを1473Kに加熱し60s保持後(γ粒 径はいずれも200μmになった)冷却し、γ域である 1073Kで種々の量のアンビル圧縮を施した。圧縮後、 直ちに10Ks-1で冷却し、変態フェライトーパーライ ト組織を得た。Fig.1は横軸に種々のアンビル圧縮量によって減少 するγ粒厚さ(THγ)に対して、得られるフェライ ト粒径がどう微細化されるかを示している。この結 果で注目されることは、Mn偏析ありのSteelAがMn 偏析なしのSteelBより同じ圧縮量でより微細なフェ ライト粒径を与えることである。以上の結果をMn偏析がオーステナイト粒界と同 様にフェライト粒成長を妨げていると考えると、 Mn偏析ありの場合、THγが実質的により小さくなる ことになる。Fig.2がこのような考えでFig.1の結果を 再整理したもので、Steel A、Bの結果が全く同じ関 係で整理されることが分かる。すなわち、Mnミク ロ偏析が加工熱処理による微細化を促進する働きが あることが判明した。Fig.1 Relationship between ferrite grain size and pancake austenite grain thickness: THγFig.2 Relationship between ferrite grain size and modified THγ by considering secondary dendrite arm spacingT. Yamashita, S. Torizuka and K. Nagai: ISIJ International, 43, 11(2003) ppl833-1841(3)せん断付与変形による変態フェライト粒微細化 の促進(井上忠信)フェライト変態前のオーステナイト変形の際の加 工モードがフェライト粒組織に与える影響の検討は あまり行われていない。そこで、0.17C-0.3Si-1.5Mn 鋼を用いて、オーステナイト変形における相当塑性 ひずみが同じ場合に、せん断ひずみを受ける場合と 受けない場合に生じる変態フェライト粒組織を比較 した。アンビル圧縮変形を15 ×15 ×100mmの寸法のサン プルに加えた。並行してFEMでサンプル内部のひず み分布状態を計算した。摩擦条件としては実験結果 から決定した摩擦係数を持つCoulomb modelを用い た。サンプルをまず1173Kに加熱し60秒保持した (γ粒径は17μmとなる)後、Ar3以上である1023Kで、 5秒保持し、直ちに1s-1のひずみ速度で圧縮した。 その後、平均10Ks-1で823Kまで冷却しフェライト変 態させた。Fig.1 Relationship between εeq obtained by FE analysis and dα thermomechanical treatment of specimens with 50% and 72% compressions, open and solid symbols indicate sites in the area with and without shear strain respectively.せん断ひずみ:γxyの影響の有無を明確にするため に、得られるフェライト粒径:dαと相当塑性ひず み:εeqの関係を、せん断ひずみの有無で区別して比 較することにした。Fig.1がその結果を表している。 これから明白なように、せん断ひずみありの場合は、 なしの場合に比べて、同じ相当ひずみで得られるフ ェライト粒径は小さくなる。その効果の大きさは、 同じ大きさのフェライト粒径を達成するのに必要な ひずみ量を比較すると分かりやすい。例えば、 2.5μmを得ようとするならば、せん断ひずみなしで は相当ひずみ1.68 (圧下率換算で77%)必要だが、 せん断ひずみありでは1.13 (圧下率換算で62%)と なる。せん断ひずみを積極的に導入する板圧延方法 としては、大クロス角クロス・ ロール、異周速ロー ル、上下異径ロールなどが考えられる。T. Inoue, S. Torizuka and K. Nagai: MATERIALS SCIENCE & TECHNOLOGY,18 (2002) pp.1007-1015中嶋宏、山下晃生、井上忠信、鳥塚史郎、花村年裕、長井寿:鉄 と鋼、89, 2(2003)pp.71-78井上忠信:Journal of the Japan Society for Technology of Plasticity, 45, 527(2004) pp.1042-1044J. Cho, T. Inoue, F. Yin and K. Nagai, Mat.Sci., 45,10(2004) pp.2966- 2973井上忠信、岩崎智、長井寿:塑性と加工、46, 537(2005)pp.989-993(4)サブミクロン超微細粒実現のための基礎研究(Narayana Murty、鳥塚史郎)フェライト粒径が1ミクロン以下の超微細粒 (UFG)鋼を工業的に製造していくためには、必要 なプロセス・パラメータとその定量化が不可欠であ る。我々は温間多方向変形による高Z―大歪加工を 工業的に最も有力な手法として提案しているが、こ こでは、一軸アンビル圧縮において、ひずみ、ひず み速度、加工温度と得られるフェライト粒径の関係 を系統的に明らかにする。Fig.1が得られた結果を統 一的に示したものである。Fig.1. Compressive strain-Z parameter-grain size plot for high Z-large strain deformation for a 0.15 carbon steel. The arrow markings show an example to obtain products with a grain size of 0.5μm.検討している加工温度域では、ひずみの増大と共 に(a)変形組織のみが発達する領域、(b)超微細 粒が現れ、変形組織と混在する領域、(c)超微細粒 のみが観察される領域へと変遷する。高Z側(すな わち、高ひずみ速度側もしくは低加工温度側)では、 領域を画するひずみ量が増大する。本研究ではそれ らの境界線を定式化することに成功した。さらに得 られるフェライト粒径とZ因子は比較的単純な関係 にあり、それも定式化できた。それによると高Zほ ど微細なフェライト粒径が得られる。これらの結果、例えば0.5μm粒径を得ようとする ならば、Z因子:1014相当の加工条件が必要であり、 完全UFGを得るためには3.7以上のひずみが必要なこ とが分かる。このようにFig.1は必要なUFG粒径を得 るための製造条件を簡明に示すことができる。鳥塚史郎、長井寿:鉄と鋼、88, 3(2002)pp148-154大森章夫、鳥塚史郎、長井寿、山田賢嗣、向後保雄:鉄と鋼、88, 12(2002), pp857-864S. Torizuka and K. Nagai: J. Advanced Science,13, 3(2003) pp343-347 大森章夫、鳥塚史郎、長井寿:鉄と鋼、89, 7(2003)pp765-772 大森章夫、鳥塚史郎、長井寿、小関尚史、向後保雄:鉄と鋼、89, 7(2003) pp781-788S. Torizuka and K. Nagai : Materials Science Forum, 426-432 (2003) pp4573-4578A. Ohmori, S. Torizuka and K. Ngai: ISIJ International, 44, 6 (2004) pp1063-1071A. Ohmori, S. Torizuka, K. Nagai, N. Koseki and Y. Kogo: Materials Transactins, 45, 7(2004) pp2224-2231S.V.S. Narayana. Murty, S.Torizuka, K.Nagai, N.Koseki and Y.Kogo: Scripta Materialia, 52, 8(2005) pp 713- 718 鳥塚史郎:ふぇらむ、10, 3(2005) pp188-195 鳥塚史郎:溶接学会誌、74, 2(2005) pp13-17S.V.S. Narayana Murty, S. Torizuka and K. Nagai: ISIJ International, 45 ,11(2005) pp1651-1657S. V. S. Narayana Murty, S. Torizuka and K. Nagai: Materials Transactions, 46,11(2005) pp2454-2460S.V.S. Narayana Murty, S. Torizuka and K. Nagai: Materials Science and Engineering A, 410-411(2005) pp319-323S.V.S. Murty, S. Torizuka and K. Nagai: Scripta Materialia, 53, 6 (2005) pp763-768S.V.S. Murty, S. Torizuka and K. Nagai: Materials Science Forum, 503- 504(2006) pp687-692S. Torizuka, A. Ohmori, SVS Murty and K. Nagai: Materials Science Forum, 503-504(2006) pp329-334(5)二軸温間加工で発達する集合組織の検討(殷福星)二軸温間加工は、変形組織にRD∥〈110〉 fiber textureを導入できる可能性が高い。Fig.1はここで検 討した異なった二軸圧延方法を示している。Fig.1 Three different modes studied here0.155C-0.37Si-1.39Mn (mass %)鋼を供試材に、 まず1423Kに加熱後水冷し、923Kで7.2×103s焼戻し た。そして923Kで温間多パス圧延して11ミリ角棒 材を得た。断面圧下率は85%である。Schulz XRD回 折法でODFを求めた。Fig.2がRD方向におけるODF (φ2=45°)マップである。ここから二つの特徴的な 方位組織が見られる。ひとつは、α-fiber:RD∥〈110〉 およびND∥{211}、{322}もしくは{111}であり、もうひとつは cubic orientation:RD∥〈 100〉 および ND ∥{001}である。Caliber圧延はα-fiberを顕著に発達させているのが 特徴である。それに対して、二軸鍛造はほとんどす べてのcubic orientationを現出させている。二軸圧延 では両者がほぼ同じ割合で併存する結果となった。Fig. 2 ODF (φ2=45°) maps of bi-axially processed steels in the RD section corresponding to three deformation modes.F. Yin, T. Inoue and K. Nagai: Materials Science Forum, 495-497 (2005) pp387-392(6)35ミリ厚超微細粒板材の試作(井上忠信)微小サンプルでの基礎知見、データをFig.1のよう な手法で蓄積してきたが、それらを元に素材寸法を 大型化していく試みが求められる。まず、小型素材 を対象に、変形時の荷重変化、得られる微細組織 (特に粒径)、素材形状の変化などを正確に予測でき るようになった。そこで、(株)日本製鋼所室蘭製作所 殿の協力を得て、同所所有の大型プレス機によって 大型素材を試作することとなった。数回のトライアルの結果、重量約90kg、厚さ 35mmのUFG板材(Fig.2)の試作が可能になった。 変形荷重、形状変化、到達組織の予測も正確に再現 された。Fig.1 Cross-section of compressed sample (left-hand side) and distribution of equivalent strain predicted by numerical analysis (right-hand side). Region of large strain corresponds to fine microstructure.なお、今回は原料としては、王子製鉄(株)殿のご協 力を得て、同社がスクラップから連続鋳造した鋼塊 を用いた。これはスクラップを有効利用する重要さ を認識してのことだが、我々の提唱するUFG製造方 法がスクラップ鉄にも問題なく適用できることを実 証できた。このように、スクラップ原料から民間実機によっ て一定規模の大型UFG素材が製造できることを確かめたので、製造コストの低減などの課題は残るが、 今後は必要に応じて必要素材を提供できることにな った。Fig.2 Appearance of test-produced large-scale UFG plateT. Inoue, S. Torizuka and K. Nagai: MATERIALS SCIENCE & THECHNOLOGY,17,11(2001) pp.1329-1338.T. Inoue, S. Torizuka, K. Nagai, K. Tsuzaki and T. Ohashi: MATERIALS SCIENCE & TECHNOLOGY,12(2001) pp.1580- 1588.2. 4超微細粒組織鋼の性質(破壊)(1)超微細粒鋼の強度―靭性バランスの確認(花村年裕)リン添加鋼で実証リンは1mass%辺り強度を690Mpa上昇させる元 素として知られているが、 靭性(ここでは50%破面 遷移温度を指標とする)を決定的に損なうものとし て最低限量に含有量を抑制されることが多い。しか も、焼入れ―焼戻し(QT)条件で脆化は顕著であ る。これはリンが焼戻し中に前オーステナイト粒界 に偏析し、粒界エネルギーを低下させることが原因 であると言われている。フェライト粒組織でのリン 脆化の検討はあまりないが、少なくとも粒径を微細 化することは、それだけ単位体積中の粒界面積を増 加させることを意味し、粒界偏析の度合いを軽減す る効果が容易に期待される。Fig.1 Comparison of strength-toughness balance due to structural difference.そこで、鋼の組織をF/P (フェライト―パーライ ト、フェライト粒径20μm)、QT (前γ粒径100μm)、Uf-F/C (超微細粒フェライト―セメンタイト、フェ ライト粒径0.9μm)の三種類の異なった金属組織を リン無添加、リン添加材(0.1mass%)で準備し、 強度―靭性バランスを比較した。Fig.1に結果を整理 して示す。確かにリン添加は金属組織によらず強度 を上げている。さらにリン添加は金属組織によらず DBTTを押し上げているが、Uf-F/Cでは上昇度合い がわずかであることが分かり、超微細粒組織の利点 を実証している。(2)超微細粒鋼の有効結晶粒径の決定(花村年裕)UFG鋼の優れた靭性の発現メカニズムを解明して いくために、前項で述べた種々の金属組織(ここで はQ :焼入れのみも検討している)の有効結晶粒径 (dEFF)を決定した。有効結晶粒径は脆性破面の基本 単位の大きさを表す概念である。仮定に基づき、破 壊応力(σF)をdEFFとDBTTの関係から求め、さら に破壊表面エネルギーを推定した。採用した仮定は、 以下の関係である。dEFFとσFが決定できれば破壊表面エネルギーγが求ま る。Fig.1 Side view of cross section of fracture surface for each microstructure. The notch is located on the far right and the crack propagated from the right to the left.Fig.2 Relationship between fracture stress (σF) and effective grain size (dEFF)for each microstructure.まずFig.1に示すような検討を行い、dEFFはUf-F/C、 F/P、Q、QTに対してそれぞれ8、20、100、25μmと 決定された。対応する金属組織単位は、F/P :フェ ライト粒径、Q :前γ粒径、QT :マルテンサイトパ ケットサイズとなった。しかし、Uf-F/Cは平均フェ ライト粒径に対応しない。そこで詳しく検討した結 果、Uf-F/Cのフェライト粒径がbimodal分布を持ち、 dEFFは大きい粒径ピークに対応することが明らかと なった。σFはDBTTにおける流動応力に等しいという仮定 で実験的に求めた。Fig.2にこのように求めた各金属 組織のdEFFとσFをまとめて示してある。ここからま ず、Uf-F/Cが最も高いσFを示すことが分かる。次に 原点を通る直線の傾きから破壊表面エネルギーを求 めるとF/P : 7.7J/m2、Uf-F/C と QT : 34.6J/m2な どとな り超微細粒組織が大きな破壊表面エネルギーを呈す ることが推測される。T. Hanamura, F. Yin and K. Nagai, ISIJ International, 44, 3 (2004) pp610-617.(3)超微細粒鋼の溶接ボンド部靱性の検討(Hai Qiu、西村俊弥、平岡和雄) 高Al―高Si組成の超微細粒耐候性鋼Al、Siは耐侯性を改善するが、鉄の脆化元素でも ある。そこで超微細粒化によって脆性を克服した 0.8Al-0.8Si鋼を開発した。この開発鋼の溶接ボンド 部の靭性を検討した。Fig.1に示すように、Al、Si共 にフェライト安定化元素でもある。したがって、γ 相温度域は狭まるので、0.8Al-0.8Siでは高炭素側で のみしかγ単相は得られない。Fig.1 Phase equilibrium diagrams of Al-Si steels.Fig.2 Weld bond absorbed energy at RT and Ceq.Fig.3 Results of the Charpy impact tests. Ep, absorbed energy.溶接ボンド部靱性Fig.2は炭素当量Ceqと溶接ボンド靭性Epの関係を 示している。Epは最高加熱温度1350℃、800℃から 500℃までの冷却時間8秒を模擬した熱サイクルを 与えたサンプルから得た。ここでCeqはC+Mn/6+ (Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15:IIW 版である。トレンドラインで示すように一般にEpはCeqの増 加に伴って減少する。しかし、この傾向から外れた 結果がAl-Si鋼に現れる。Fig.3にそれらのシャルピー 試験結果を示す。G1～G4の組成(1.5Mn)はG1: 0.10C-0.6Si-0.6Al,G2 : 0.17C-0.6Si-0.6Al,G3 : 0.10C- 0.8Si-0.8Al,G4 : 0.17C-0.8Si-0.8Alである.IIT780と SM490Cも参照に使った.Ceq (IIW)はG1:0.35, G2 : 0.42, G3 : 0.35, G4 : 0.42, SM490C : 0.41である。明ら かにAl-Si鋼のボンド靭性はSM490Cより良い。さら にAl-Si鋼ではCeqを高くするとボンド靭性は良くな っている。これはFig.1で解析したようにAl-Si鋼では 高炭素側でのみγ単相が得られることと密接な関係 があると考えられる。2. 5超微細粒組織鋼の性質(延性)(1)高速変形挙動の解析(土田紀之)変形応力は結晶粒径5μm以下で急激に上昇する。 そこで、ひずみ速度103s-1の場合の変形挙動を実験 的に求めた。JIS-SM490 (0.15C-0.4Si-1.5Mn mass%) 鋼からフェライト粒径3.6、9.8、46.2μmのフェライ ト―パーライト(FP)組織サンプルを準備した。 FP (3.6μm)は、1173Kで3.6ks再加熱し、1053Kで 90%圧下後冷却した。FP (9.8μm)、FP (46.2μm) はそれぞれ1173K、600s再加熱、1423K、5.4ks再加 熱後、炉冷して得た。スプリットHopkinson pressure bar試験用の板状試験片(ゲージ長:3.8mm)を準備 した。引張試験はひずみ速度103s-1で試験温度77、 210、296Kで行った。その結果の一部、296Kでの荷 重―変位曲線を下図に示す。実験結果の解析の結果、変形応力は粒径とHall- Petch型の関係を示すことが分かった。結晶粒は変形 応力の非熱成分を上昇させ、熱成分には全く影響を 与えないことが示された。パーライトは加工硬化の 非熱成分を増加させ、FP鋼の高速変形延性向上に寄 与する。以上の理由で、超微細粒FPは高速変形にお いて良好な強度―延性バランスを示すことになる。土田紀之、友田陽、長井寿:鉄と鋼、90,12(2004)pp1043-1049(2)円周切欠引張試験による塑性変形限界の決定(榎並啓太郎)深絞りやハイドロフォームなどでは鋼を塑性相当 ひずみ1近くまで変形させることがある。多くの場 合、薄板の塑性変形限界(PWL)は最高荷重点伸び (εu)で指標化される。実際の材料ではεuはせいぜい 0.3であるので、PWLが果たして正当に評価されて いるかどうか曖昧である。一方、丸棒円周切欠引張 試験(CNT)は厚板の延性破壊発生の検出のために 有効である。そこで、CNTによるPWL決定法を検討 した。熱延16mm厚板JIS-SM490B鋼(0.16C-0.44Si-1.46Mn- 0.013P- 0.004S mass%)からネック深さ2mm、ネッ ク径6mm、ネック曲率半径15mmの円周切欠試験片 を作成した。クロスヘッド速度1.0mm/minで引張変 形し、荷重とネック径の変化を計測した。参考に通 常の平滑丸棒試験片による引張試験も行なった。上図が平均応力―相当ひずみ曲線である。平均応 力、相当ひずみは下式で計算した:ここで、P:荷重、a:時々刻々のネック径、a0: 初期ネック径である。このように求めた平均応力― 相当ひずみ曲線は、平滑試験片から求めたそれに等 しい。平滑試験片からはひずみが0.17までしか平均 応力―相当ひずみ曲線が得られないが、CNTでは 0.85まで作図で得られる。さらにPWLはCNTでの平 均応力―相当ひずみ曲線からの離脱点で任意性無く 判定できる。榎並啓太郎、長井寿:鉄と鋼、91,2(2005)pp285-291 榎並啓太郎、長井寿:鉄と鋼、91,9(2005) pp712-718 榎並啓太郎、長井寿、鳥塚史郎、井上忠信:鉄と鋼、91,10 (2005) pp769-7762. 6 Mn基制振合金の開発(殷福星)Mn基制振合金の組織に及ぼす凝固冷却速度の影響 Mn基制振合金は高強度と高振動減衰能を兼有し、 構造体の制振応用に大いに期待されている。また、 この合金は鋳造のままの状態においても十分な制振 性能を示している。本研究はこれまで鉄鋼材料のプ ロセスに関する研究で得られた知見を生かし、Mn 基制振合金の組織及び制振性能に及ぼす凝固冷却速 度の影響を系統的に調べたものである。その結果、 凝固冷却速度を10-250Ks-1の範囲で変化させた場合、 合金の二次デンドライト・アーム間隔の変化範囲は 18-4μmである。また、冷却方向に沿って成長する柱 状結晶粒の粒径は500-120μmの範囲で変化すること が分かった。合金組織は凝固冷却条件に大きく依存 する一方、合金の制振特性はそれに殆ど依存しない ことが明らかとなった。Fig. Dendrite microstructure of a Mn-based damping alloys at the different positions with the varied distance to the water-cooled solidification layer.F. Yin, S. Iwasaki, T. Sakaguchi and K. Nagai: Proc. 2nd Int. HDM Symposium, Kyoto, 2005.MnCu制振合金の双晶組織と制振挙動MnCu制振合金が高振動減衰能を示すために、合 金の双晶組織の存在が不可欠である。しかし、双晶 の組織がどのように合金の制振挙動に寄与するかは まだ明らかではない。本研究では、Mn-30Cu (at%) を用いて、固溶体化処理後に徐冷冷却処理或いは時 効処理を施し、合金の双晶組織及び制振挙動に及ぼ す処理方法の影響を調べた。EBSD手法で合金双晶 組織を評価した結果、徐冷処理で得た双晶組織は結 晶粒中で傾き方位が揃った双晶バンドとなる。これ に対して、時効処理した合金の双晶組織は異なる方 位の双晶バンドが交叉しあっている。時効処理に比 べて徐冷処理した方が双晶の制振ピークは低い熱活 性エネルギーと高い双晶制振性能を示す。Fig. Twining microstructure of Mn-30Cu (at%) alloy depending on the heat treating conditions, a: slow- cooling, b and c: aging treatment.F. Yin, T. Sakaguchi, Q. Tian, A. Sakurai and K. Nagai: Materials Transactions, 46,10(2005) pp2164-2168 to be published3.グループ4年間の原型と今後(長井寿)超鉄鋼研究の推移の中で、冶金グループ(前身は 材料創製研究グループ第3ユニット)に在籍した 方々は50人以上に及ぶ。それらの方々による研究成 果はここで紹介したもの以外にも多岐にわたる。そ れらを詳細に述べることは本書の趣旨に添わない が、「凝固、加工、熱処理における組織形成過程を モデリングと実験シミュレーションを結合して相互 連携的に把握」というグループミッションの方向性 とその後の展開の礎を築いたものと評価されるべき である。まずそれらの方々の貢献に心から敬意を表 し、感謝したい。素材工業の成長は製造プロセス(ハード・ソフト 両面)の成長なくしてありえない。世界最新鋭のハ ードを得てもソフト(操縦技能・技術)なくして良 質な素材を得ることはできない。または、市場から の素材要求は必ず厳しくなるが、それに見合ったハ ードの展開がなければ、早晩国際競争で敗退する。そこで先見性を超えた「先験的な基礎・基盤研究」 が求められることになるが、現在のところ、素材の性 能を実現する内部組織の形成過程の把握を自家薬籠 中のものとするのが王道である。そのためには、材料 基礎学問に精通するだけでは覚束ず、市場が求める新 しい製品に必要な材料課題に精通することが同時に 求められるようになってきた。いわばニーズとシーズ に関する理解を同時に磨くということになる。国際競争を横目に見れば、他の分野、世界の他の アイデアなどに広く、深く、関心の目を注ぎ、耳を 傾けなくては、国際土俵での不戦敗が待っている。ニーズ側の材料担当者の持つ鋭い視点を材料基礎 学問の言葉で解釈しきり、両者の共通語を見出すこ とがニーズ・シーズ双方の材料担当者の成長を促進 する。将来、新しい技術が実現した時に、それを正 しく理解し、使い切ることができるのはニーズ側の 材料担当者でなくてはならない。彼らの抜群の成長 なくしては新しい技術は根付かず、それ以降の発展 も雲散霧消してしまう。実際に新しい素材を生み出 すのは素材産業である。ここの技術力の強化が日本 の技術力の源泉とならなければならない。このような近未来の場面場面で、冶金グループの 成果が活用され、冶金グループに関与された面々が 大いに活躍する姿を夢見ている。金相グループの4年間の活動をふりかえって津崎兼彰、秋山英二(現耐食グループ2005.4より)、足立吉隆、荒木玲子(現耐食グループ2005.4より)、板垣孟彦、韋富高、 大村孝仁、木村勇次、坂井義和、佐藤直子、O.Sitdikov、T.Sundararajan (現耐食グループ2005.4より)、高田悦子、那須有利子、 原徹(現耐熱グループ2004.4より)、広田ゆり子、A.Belyakov、堀洋子、村山光宏1.グループのミッション実用強度を高める材料設計指針を提供するため に、加工・熱処理による組織形成過程の明確化、マ ルテンサイト組織を中心とした微細複相組織の解析 と強度発現機構の解明、水素脆化機構の明確化と安 全性評価パラメ ータの提示、加工性と靱性を確保す るための理想組織像の提示を行う。2.グループの活動経緯金相グループは、超鉄鋼研究プロジェクト第2期 と独法成果活用プロジェクトを効率的に遂行するた めに設置された。前者では遅れ破壊に強い2000MPa 級高強度鋼の創製と遅れ破壊評価法の確立、後者で は1800MPa級高力ボルトと高強度高電気伝導性Cu合 金ワイヤの製造を主に担当した。これらを達成する ために、グループのミッションで示した基礎研究を 遂行した。さらに「使われてこそ材料」の超鉄鋼研究センター のモットーに基づき、基礎研究成果をもとにした民間 企業との共同研究を積極的に行った。それによって、 新たな基礎研究課題が見出せたことと、実用化に結び つけるために必要な基礎研究のあり方を学べたこと は、グループにとっての大きな財産となった。解析研究者とものつくり研究者の融合金相グループには「解析」と「ものつくり」に長 じた研究者がそれぞれ存在している。各人の特徴を 活かして、それぞれが独自性を持ち、上記の研究課 題に取り組んだ。特に、解析研究者にはものつくり 指針をブレイクスルーする解析力の獲得、ものつく り研究者には理想組織像とそれを達成する新しい創 製プロセスの提示力の向上を目指して活動した。こ れらの研究ポテンシャルの向上と融合こそが材料研 究力に結びつくと考えたからである。以下3章では、金相グループで行った基礎研究の 成果の一部をトピックスの形で示す。3.グループの研究成果(トピックス)3―1ものつくり研究A:相変態を利用した組織制御A―1)マルテンサイト鋼(木村勇次)遅れ破壊感受性の低減を目指して鋼は室温での引張強度が1200MPaを越えると水素 脆化感受性が高まり、これが大気腐食環境を含めた 水素侵入環境での高強度鋼の適用を制限している。 この水素脆化を克服する手段として、加工熱処理に よる焼戻しマルテンサイト組織の微細化を検討した。破面形態が粒内擬へき開破壊型から粒界破壊型と なることによって破壊応力が急激に低下する事実に 基づき、粒界破壊の抑制を狙いとした組織制御を検 討した。具体的には、1)旧オーステナイト粒径の 微細化を含む母相組織の均一微細化、2)硬質第二 相である粒界フィルム状セメンタイトのサイズと量 の低減に着目した。加工熱処理の利用われわれの目指す微細複相組織は、改良オースフ ォームプロセスによっても達成できるが、ここでは 温間溝ロール圧延加工とその後の急速加熱短時間オ ーステナイト化処理プロセスによる組織制御の検討 結果を示す。温間加工のねらいは、前組織である焼戻しマルテ ンサイトまたはベイナイト組織を、微細フェライ ト+球状セメンタイト組織にすることにある。これ を急速加熱短時間オーステナイト化処理すると、未 固溶セメンタイトを含む旧オーステナイト粒径3 μmのマルテンサイト組織が得られる。これに通常の 焼戻し処理を施すと、粒界フィルム状セメンタイト の存在しない組織が得られた(Fig.1、SCM440鋼)。旧 オーステナイト粒界は焼戻し時におけるセメンタイ トの優先的な核生成サイトであるが、先在する未固 溶セメンタイトの成長が優先するために粒界フィル ム状セメンタイト生成が抑制されたと考えている。Fig.1 Carbide microstructures of (a) fine-grained sample(Dγ=3mm) and (b) conventional QT sample (Dγ=17μm)引張強度を1400MPaに調整した旧オーステナイト 粒径3μmの焼戻しマルテンサイト鋼は、通常の焼 入れ焼戻し処理した鋼(粒径17μm)と比べて遅れ 破壊感受性が低く(Fig.2)、粒界破壊領域も縮小し ていることを確認した。Fig.2 The results of the hydrogen embrittlement test. (The applied stress;0.9TS)組織制御のポイントこの組織制御における一番のポイントはオーステ ナイト化処理前の組織の最適化にある。以上のよう に金属組織を大幅に変化させて遅れ破壊感受性との 関係を検討することによって、遅れ破壊に強い理想 組織とその達成手段を併せて提示することが目標で ある。A―2)フェライト鋼(足立吉隆)メタラジーの永遠課題粒径、結晶方位、複相組織およびそれらの分布状 態を、省資源的に、効率的に、制御することはメタ ラジーの永遠の課題である。従来、加工後に粒界や 転位上に組織を生成(動的変態に対して、静的変 態・析出と記す)させることにより組織制御(特に 組織の微細化)が図られてきた。一方、変形・核生 成・成長をほぼ同時にあるいは短時間のうちに連続 して高時分割制御するメタラジーが近年報告されて いる。その一つが、動的変態・動的析出(以降動的 変態と記す)である。動的変態により、超強加工し なくても、組織はサブミクロンサイズまで微細化す ることが報告されている。動的変態・動的析出動的変態・動的析出とは「加工中に生じる変態・ 析出」と定義される。比較的低温域での熱間加工 (700―800℃)あるいはより低温域での温間加工 (500 ―600℃)により生じる。変態の前後に塑性加 工が加わり、また応力下で変態が進行するという特 徴を有する(図1)。しかし、変態機構が「動的」 であることが、組織や特性にどのように影響してい るかについては明らかにはなっていない。図1加工開始時期の比較 (a)静的変態、(b)動的変態ここでは、組織に及ぼす変態機構(動的)の意味 を明らかにすることを目的に、変態前・後の加工が、 母相/生成相間の方位関係に及ぼす影響を調べて得 られた結果を示す。粒界析出相の方位分散試料にはモデル合金としてNi-Cr合金を用いて、 fcc母相からのbcc相析出を検討した。粒界に析出物が生成した試料に後加工を加えるこ とにより粒界近傍の母相中で局所的な方位変化が生 じる(図2EBSD像)。これは、粒界からの距離に応 じて異なる転位密度分布を解消するために幾何学的 に必要な転位(GN転位)が導入された結果である。 この母相格子の局所的な方位回転により、隣接する どちらか一方の母相とある許容範囲でKS方位関係 をもっていた粒界生成相は、最大13度程度までKS 方位関係(面・方向平行関係)からずれる(図3)。 母相の方位回転角度は粒界ごとに異なり、さらに同 じ粒界でも場所によって異なる。即ち、動的変態過 程で加わる後加工は、粒界生成相のKS方位関係か らのずれを大きくすることに加えて、分散させる効 果(ずれ角度の標準偏差を大きくする)がある。特定方位関係から大きくずれるということは、界 面構造が(部分)整合から非整合へ変化することを 示唆する。前加工も方位関係からのずれを大きくす る効果があるが、その程度は後加工ほど大きくはな図2 後加工(20%、室温)による方位変化図3 KS関係からのずれに及ぼす前・後加工の影響く、ずれ角度の標準偏差(方位分散度)への効果は 小さい。このように、前・後加工(ならびに外部応 力)が複雑に粒界生成相の方位に影響していること が明らかとなった。動的変態ではそれらが重畳して いるものと推察される。今後も動的生成相/母相界面のナノ構造から界面 エネルギーまでの階層的評価、高時分割測定手法の 開発、物性との関係を調査し、動的変態による組織 制御の可能性を更に検討したい。B:強ひずみ加工を利用した組織制御B―1)銅合金(坂井義和)高強度と耐熱性の両立銅は高い導電性や熱伝導性を有し、耐食性に富み 加工しやすいことから、工業的に広く利用されてい る。しかし、強度が低い、或いは、耐熱性に劣るな どの欠点がある。強度は第2元素、第3元素を添加 して合金化することで向上できるが、その場合は導 電率が低下する。したがって銅マトリックスに含ま れる元素を析出させることで導電率の低下を抑える 工夫がされたCu-Zr、Cu-Cr-Zr等の析出型銅合金が広 く用いられている。析出型銅合金は室温では優れた 高強度、高導電性を持つが、時効温度(400～500℃) 以上に加熱されると、著しくその特性が損なわれる。 その欠点を解決すべく、第2相としてAl2O3などの 高温で安定な酸化物を銅マトリックス中に分散した 酸化物分散型銅合金が米国、SCM社で開発された。 その銅合金(GlidCop)の製造法は、まずCu-Al合金 を溶解し、それをアトマイズ粉末にして、酸化雰囲 気中でAlを内部酸化させた後、余分な酸素を還元雰 囲気中で除去し、最終的にその粉末を固化成形する 工程からなっている。このようにして製造された Cu-1wt.%Al2O3合金(GlidCopAL-60)の特性は導電 率78%IACSで、耐熱性は従来の析出型銅合金に比較 して著しく高いが、強度は600MPa (Hv200)で、 Cu-Zr等の析出型銅合金と比較すると若干高い程度 である。そこで、銅粉末と微量酸化物粉末のメカニ カルミリング+固化成形プロセスを利用してより高 強度を有する耐熱性銅合金の開発を試みた。メカニカルミリング+固化成形プロセスの利用分散する酸化物粒子は高温でも安定で且つメカニ カルミリング中に分解しても銅に固溶しないCaOを 選んだ。まず市販の電解銅粉1kgに1.0～3.0wt.%の CaO粉末(いずれも平均粒径30μm)を混合し、鋼球 とともに遊星型ボールミルでメカニカルミリングを 50h行った。その後、粉末をシース缶に詰め500℃、 5h真空中で脱気処理を施した後に封缶した。それか ら、600℃の温度で溝ロールを用いて減面率90%ま で加工して固化成形した。粉末をミリング無しで固 化成形したものに比べ、メカニカルミリングするこ とで、酸化物粒子は微細に粉砕され銅粉末中に均一 分散され、 粉末の硬度は著しく高くなる。図1に メカニカルミリング+固化成形プロセスで創製した Cu-CaO合金の硬度と導電率の関係を示す。Cu-CaO 合金はCu-Zr合金やCu-Al2O3合金と同様な強度・導電 率バランスを有し、且つ高強度を実現できることが 分かる。図2は各温度に1h加熱した後の硬度変化を 示す。Cu-CaO合金はCu-Al2O3合金と同様な軟化特性 を示す。図1Cu-CaO合金の硬度と導電率の関係図2 Cu-CaO合金の軟化特性B―2)フェライト鋼(A. Belyakov)強ひずみ加工による微細化の限界塑性相当ひずみ5を超える強ひずみを与える種々 のプロセス技術が開発されて、強ひずみ加工による 結晶粒径の微細化の研究が盛んに行われている。し かし、加工条件と得られる結晶粒径の関係、結晶粒 径の支配因子、さらに結晶粒微細化の限界について は十分解明されていない。材料の結晶粒径を制御す るためには、これらの基礎的理解が必要である。0.7Tm以上(Tm:融点)の高温域で加工を施すと 加工中に再結晶が起こり、動的再結晶と呼ばれてい る。この場合、あるひずみ(臨界ひずみ)以上では、 変形応力と内部微視組織が一定となる定常状態が得 られる。そして、加工温度が低いほどひずみ速度が 大きいほど、臨界ひずみは大きくなり定常状態での 結晶粒径は小さくなる。さらに、変形前の初期結晶 粒径が微細であると、臨界ひずみは小さくなるが、定常状態での変形応力と微視組織は変化しないこと が知られている。素朴な疑問高温域での動的再結晶挙動と定常状態の特徴は、 加工温度域を低下させるとどうように変化するのだ ろうか?特に拡散速度が極端に小さくなる0.3Tm以 下の低温域で、そもそも加工だけでアニールなしに シャープな大角粒界が形成されるのだろうか?とい う素朴な疑問が研究の発端であった。われわれは、このような素朴な疑問を動機として、 0.7Tm～0.3Tmの中温域、0.3Tm以下の低温域と幅広 い温度域条件での加工と組織の関係に関する研究を 行ってきた。ここでは、bccフェライト鋼の低温域 での検討結果を示す。初期組織の影響試料には、微細なマルテンサイト組織を有する Fe-18Cr-7Ni合金と、比較として粗大なフェライト組 織を有するFe-22Cr-3Ni合金をモデル合金として取り 上げた。前者はサブグレイン径0.23μm、大角粒界率 50%、後者は温間加工後にサブグレイン径700μmで あった。これらの試料を室温(0.18Tm)で、溝ロ ール加工さらにスウェージング加工によって相当ひ ずみ7までの大ひずみを与えた。微視組織は、加工方向に伸びたリボン状の典型的 な加工組織を示した。累積相当ひずみ3では、マル テンサイト鋼で組織がより微細になっているが、相 当ひずみ7では、初期組織によらず加工方向と垂直 な方向の粒径はともに0.1μmであった(Fig.1)。Fig.1.Deformation microstructures in ferritic stainless steels after bar rolling/swaging to different strains (e)定常状態の発現と新たな疑問ひずみにともなう硬さHv、横方向結晶粒径d、大 角粒界率HABをFig.2に示す。マルテンサイト鋼では 相当ひずみ3以上で、Hv、d、HABがいずれも一定 である。これは0.18Tmという低温であっても定常 状態が発現することを示している。また図から微細 組織形成のキネティクスは初期組織に依存するが、 最終的な到達組織は一定であることが見て取れる。 これらの特徴は、高温での動的再結晶挙動と極めて 類似している。Fig. 2. The strain effect on the hardness (Hv), the transverse (sub)grain size (d) and the fraction of high-angle加工による変形組織は、格子欠陥の蓄積過程と復 旧過程による欠陥の減少から構成されるから、蓄積 速度と減少速度がバランスする定常状態が現れるこ と自体は驚きではない。しかし、復旧過程の素過程 は不明である。これを知ることが、微細化の限界を 知り、さらには効率的な微細化プロセスの提案に繋 がると考えている。3―2解析・評価技術活用研究A:高分解能電子顕微鏡活用A―1)鋼中ナノ析出物の解析(韋富高)水素脆化を抑制する合金ナノ析出物水素は元素の中で最も小さく、室温でも鉄鋼材料 に出入できます。通常、鉄鋼材料に存在できる水素 の量は数重量ppmまたはそれ以下で極めて僅かです が、亀裂先端の応力集中部に集積しやすいため材料 の脆性破壊を促進します。材料の強度が高いほど水 素による脆化に対する感受性が高くなります。水素 脆性の感受性は超高強度鋼にとって最も厳しく評価 される項目の一つです。水素脆性を抑える方法として、水素と強い相互作 用を持つ微細粒子を材料に導入し、水素をトラップ (捕捉または固定)すれば水素が亀裂の先端部に行 けなくなり、水素を無害化することができると考え られます。析出強化粒子として知られるチタン炭化 物(TiC)やバナジウム炭化物(VC)はそのような微 細粒子で、大量に水素をトラップする機能を持つ物 質であることを見出しました。また、熱処理などに より、析出物粒子をナノ化することにより水素を最 も効果的にトラップすることを明らかにしました。 ナノ析出物の格子像観察鋼中のナノ析出物は、焼戻し2次硬化を示すこと から70年代から多くの関連研究があります。しかし、 ピーク時効条件での析出物の格子像観察は、われわ れの研究まで行われておらず、析出物のサイズや界 面構造などは未解決でした。水素が析出物のどこに トラップされているのか?析出物内部なのか、界面 なのか、弾性応力場なのか?を明らかにするために はナノ析出物の高分解能観察が必要です。しかし、 磁性を持つ鋼中のナノ析出物の高分解能観察は困難 がともないます。薄膜作成の最適化と観察に適した 入射線方位に出会うまで何枚もの薄膜サンプルを作 成するという地道な研究が必要でした。図1は鉄鋼中に析出したナノサイズTiC粒子の格 子像の一例です。われわれは今まで困難とされてき た低合金鋼中のナノ粒子の高分解能観察に成功した ことによりナノ粒子の結晶学的構造及び水素吸蔵量 の定量評価ができるようになりました。TiCナノ粒 子は図2に示すようにマトリックスの鉄との間に半 整合界面を作り、ここには水素原子を格納する歪ん だ場所(トラップサイト)が作られます。そのトラ ップサイトはミスフィット転位芯およびその付近の 整合界面部分、さらに界面近傍のマトリックスの弾 性歪み場からなります。これらのサイトはそれぞれ 水素と異なる結合力を持ちます。転位芯に近いほど 結合力が強くなります。図1 鉄に析出したTiCナノ粒子の高分解能像図2 TiCナノ粒子/鉄界面による水素のトラップ 水素トラップサイトの定量的解析われわれは、水素のトラップサイトとなるナノ析 出物の構造を定量的に観察解析するとともに、鋼中 に吸蔵された水素に対して、トラップサイトと水素 の結合エネルギーと水素吸蔵量を質量分析器を用い て定量的に解析する手法を確立しました。この二つ の解析技術によって初めて、微量の水素がどこにど のようにトラップされているかを定量的に議論でき るようになりました。この基礎研究成果や先の記述 した母地組織制御の知見を総合して、遅れ破壊に強 い1800MPa級ボルトのプロトタイプの提示をするこ とが出来ました。未解明課題山積で魅力ある鉄鋼われわれは鋼中のナノ析出物の高分解能観察に世 界で初めて成功しました。しかし、水素の存在状態 を直接的に観察したわけではありません。今後、中 性子線回折とX線回折の併用による異相界面での水 素存在の検証を計画しています。「このような地道な研究活動が、安心して使える 高強度鋼の開発を支えるんだ」との使命感とそれに 増す情熱を持って研究を進めています。鉄鋼には未解明でワクワクするような未解決課題、 われわれの社会に役立つ研究課題が山済みです。A―2)ナノ粒子における表界面エネルギー解析(村山光宏)界面エネルギーの評価相境界や結晶粒界などでは余分なエネルギー(界 面エネルギーσ)が存在し、これが析出や偏析を生 じる要因となる。我々は、ナノ 2相粒子の粒界三重 点における界面および表面エネルギーを直接評価す ることに成功し、界面エネルギーと表面エネルギー のバランスが固相間の相分率によって変化すること を示した。等方的な系において、三重点または3相境界での熱 力学的平衡状態は二面角θとσこより次式で表される:一方、組成の異なる2相間と気相での3相境界の ように異方性を持つ系で、3つの界面のうち1つま たは2つが低エネルギー界面である時には、二面角 がある程度のばらつきを示すことが知られており、 例えば結晶粒界におけるばらつきの要因に関しては 現在も検討が行われている。2相合金ナノ粒子における二面角の測定測定にはアモルファスカーボン膜上に堆積した後 520℃で熱処理し平衡化したCu-Ag合金粒子を用い た。EDSによる組成分析を行ったところα相(Ag rich)には520℃での固溶量に相当する3.8at.%Cuが 含まれており、表面偏析は生じていなかった。すな わち粒子は520℃での平衡状態を保持したまま急冷 されたと考えられる。図1は、このような2相粒子 のうち直径60nm程度のものについて二面角を測定した例である。この粒子では{111}面で構成された 相境界が紙面にほぼ垂直に見られ、Ag相-Cu相-気相 からなる3重点が粒子の両端で観察できる。ほとん どの粒子では、2相は部分整合な{111}面を相境界 とするcube-on-cubeの方位関係を持っていた。この ような粒子12個を測定した結果から、{111}界面エ ネルギーに対する表面エネルギーの比はα相では 2.1、β相では3.5となった。図1直径60nmの2相粒子を用いた二面角測定の例図2に実験から求めたα相とβ相の表面エネルギ ーおよび界面エネルギー比を基に計算した、α相分 率の変化に対応した平衡粒子形状変化を示す。(c) はα相分率が0.44と図1に示した粒子と近い値であ り、3相境界の形状を比較的よく再現している。(d) にはα相分率の変化に対応した二面角の変化を示す。 θβの絶対値が実験値より高く見積られているが、計 算結果は実験値の傾向を忠実に再現しており計算の 妥当性が検証された。図2 (a)―(c)異なるa相の相分率に基づき計算から予 測した平衡粒子形状(d) a相分率の変化に対応した二 面角の変化(計算値)本研究から求められたAgとCuの表面エネルギー 比は0.61であった。これは純銀と純銅の平均的な表 面エネルギー値1250、1850mJ/m2から求めた比率 0.68とよく一致している。同様に、実験で求めたCu の表面/界面エネルギー比から、Cuの界面エネルギ ーは537mJ/m2となるが、これはfccにおける部分整合 界面エネルギーとして妥当な値である。組織形成シミュレーションの高精度化本研究ではナノ粒子の低エネルギー界面を含む3相境界において、固相の相分率が二面角のばらつき と相関を持つことを実験的に明らかにした。また、 本手法は特に個々の相の体積が小さく、局所平衡状 態が比較的得られやすいナノ粒子やナノ組織を持つ 材料にはそのまま応用できる。界面エネルギーを精 密に測定できれば、計算機シミュレーションの正確 さを増すことや核生成などの組織形成機構または界 面における種々の現象についての定量的な理解を深 めることが可能である。B:ナノインデンテーション活用B―1)粒界強化の解析(大村孝仁)ナノインデンテーションによるk値の評価塑性変形がある結晶粒から隣接する結晶粒へ伝播 する抵抗は、例えばホール・ペッチ式(σ :流動応力、σ0 :定数、k:ホールペッチ係数、 d:粒径)のk値に対応する粒界強化として理解され る。一般的に、この値はホールペッチプロットの傾 きとして評価されるが、その機構についてはいくつ かのモデルが提案されているに過ぎず、実験的な検 証はほとんど見あたらない。我々は、ナノインデン テーション法を用いて、一つのサンプルでσ0とkを 分離して評価することに成功した。この手法によっ て見積もられる粒界強化分と組織の関係について、 Fe-C焼戻しマルテンサイトを例に紹介する。焼戻し軟化挙動における粒界強化の変化図1は、種々の炭素量のマルテンサイト鋼におい て、ナノインデンテーションによって求めた粒内の マトリクス硬さHnと同一サンプルのビッカース硬 さHvの比Hn/Hvを焼戻し温度に対してプロットした ものである(測定はすべて室温)。Hnはσ0に対応す るので、Hn/Hvはマトリクス強度がマクロ強度に寄 与する比率と理解される。言い換えると、比の値が 大きいほど相対的に(1)式の第2項の寄与が小さ いことを意味する。図に示すように、すべての炭素 量において673K付近(破線)でHn/Hvの顕著な上昇 が見られる。これは、前述のようにkd-1/2が低下した ことを意味するが、粒径dを調べたところ573Kと 723Kでほとんど変化が無かった。つまり、k値が低 下したと断定できる。k値の低下は粒界炭化物の消滅が原因次に、k値が低下する原因について検討してみる。 図2は、573Kと723KにおけるTEM写真である。 573Kでは粒界にセメンタイトがフィルム状に析出 しているのに対し、723Kではほとんどのセメンタ イトが球状化して粒界のフィルム状セメンタイトは 消滅していた。 フィルム状のセメンタイトは、結 晶粒間の変形伝播の抵抗に寄与するであろうから、 723Kにおいてこれが消滅したことによってkが低下 したものと考えられる。これをpile-upモデルで考察してみる。隣接粒内の転位源に働くせん断応力τは 次式で表わされる。ここで、αは定数、τsはすべり面上に働くせん断 応力、Lは転位が堆積する距離、rは堆積転位の先頭 (粒界)から隣接粒内の転位源までの距離である。 粒界に厚さtのフィルム状セメンタイトが存在する 場合、Lとrはセメンタイトの厚さ分だけそれぞれL-t およびr+tになるであろう。これらの項の変化は、 同じτsの条件下ではいずれもτを低下させることにな る。つまり、隣接粒の転位源を活性化するためには より大きなτsが必要となり、見かけ上の粒界の変形 伝播に対する抵抗が高くなることに対応する。図1Fe-C合金におけるHn/Hvの焼戻し温度依存性図2 Fe-0.4C合金におけるTEM写真。焼戻し温度はそれぞれ(a) 573K、(b) 723 K、(焼戻 し時間:5400 s)4.超鉄鋼研究プロジェクトとしての成果(グループ全員)これまでに示した基礎研究成果を得つつそれらを 総結集することによってプロジェクト目標の達成に 4年間活動した。4―1.高力ボルトの創製2000MPa級でしかも遅れ破壊に強い高力ボルトの 創製、これが金相グループで担った超鉄鋼研究プロ ジェクト2期の目標であった。素材レベルであれば、 強度1500MPa以上で遅れ破壊に強い材料を創製する ことはさして難しくない。しかし、大量生産を念頭 において複雑形状に部品化できる鋼材の開発は困難 を極める。経済性を考慮すると合金元素の多量添加 は出来ない。その上で高強度化を図るならば必然的 に炭素量の増加を必要とする。高炭素ゆえに軟質化 が難しく成形性に劣る。またボルト形状に成形した 後に熱処理を行うという製造プロセス条件の制限か ら改良オースフォームなどの加工熱処理を適用でき ない。課題山積で目標達成は不可能のように思える。 しかし、ハードルが高いからこそプロジェクト目標 に設定されたのである。幸いプロジェクト1期で遅れ破壊に強い理想組織 とその達成手段の一例を提示することが出来た。こ れを財産に部品化可能鋼材の開発を行った。ポイン トは、ボルト成形前までの過程で加工熱処理を最大 限活用して、成形性とその後の焼入れ焼戻し処理に よる組織形成の最適化を図ったことである。その結 果、図1に示すM22ボルト(Fe-2Si-1Cr-1Mo-0.6Cプ ロトタイプ鋼)を開発することが出来た。強度レベ ルは1800MPaで目標値の下限であるが、ラボ試験で は大気腐食環境で遅れ破壊を起こさないことを確認 している。現在は、大気腐食実暴露試験による検証と高力ボ ルトを使った新しい接合構造体の検討を、外部研究 機関と連携して進めている。図11800MPa級プロトタイプ鋼によるM22ボルト4―2.遅れ破壊評価法の確立求められる評価法は、鋼材の特性の優劣を判定す る相対評価ではなく、特定の部材が特定の使用環境 で破壊することなく安全に使えることを保証する評 価法である。このためには、遅れ破壊の支配因子を 知ることが必要不可欠な前提条件となる。幸いに本 分野の多くの研究者の活動とプロジェクト第1期の研究活動で、応力と水素が支配因子であるとの目処 がたった。特に部材中の応力が高い領域での局所応 力とそこでの局所水素量が、遅れ破壊を支配するこ とが示唆された。次の段階は、1)鋼中に侵入した水素量と破断応 力の関係、つまり鋼材の水素割れ感受性を定量的に 評価する技術と、2)実使用環境から鋼中に吸蔵さ れる水素量を定量的に評価する技術の二つの技術を 確立することであった。後者は、現在耐食グループ に在籍する秋山英二が担当責任者として研究遂行し た(耐食グループ参照)。前者は、プロジェクト第 一期に一定の目処を立てることができた。しかし、 データ量の蓄積と、高水素量吸蔵条件での破断応力 評価実験における水素放散の抑制技術などに課題が 残されていた。図1は大気暴露試験に供したものと同じ鋼材の破 断応力と鋼中水素量の関係を示す。水素量が2ppm まで再現性よくデータを取得できる技術を確立し た。図2はパラメータをノッチ底の最大主応力値と そこでの局所水素量にとったものである。データは 試験片のノッチ形状すなわち応力集中係数によらず 一つの曲線に乗っている。この結果は、破断発生起 点での局所応力と局所水素量が破壊を支配している ことを明確に示している。図11320MPa級SCM435鋼のノッチ引張強度に及ぼ す水素量の影響(Kt:応力集中係数)図2 破断時におけるノッチ底の最大主応力と最大集 積水素量の関係1320MPa級SCM435鋼(Kt :応力集中係数)複雑大型部材であっても、FEMを援用すれば設計 負荷応力から応力集中部での局所応力を求めること ができる。したがって、環境から鋼中に侵入吸蔵さ れる水素量を定量的に見積もることが出来れば、破 断発生の定量評価と適正な安全率設定が可能になる と考えている。5.鉄の研究の今後(津崎兼彰)「鉄に研究することが残されているのですか?」超鉄鋼研究プロジェクトという巨大プロジェクト が進行中も、一般の方々や研究者の方々を問わず時 折質問を受けた。特に報道関係の方々から取材を受 けた際には、冒頭この質問を受けることが多かった。 われわれ鉄鋼研究技術者が社会に対して十分な説明 をしてこなかったと反省せざるを得ない。しかし、 超鉄鋼研究センターの新聞発表の項で示したように 数多くの記事が実際には掲載された。これは取材さ れた記者の方々がその重要性を認識されたものと考 えている。現在、私は表題の質問に対して次のような回答を 試みている。まず逆に、今までに「極めつくした材料」「研究 し尽くした材料」というのはあるのですか?と問い 返している。答えは明快で否である。現在使われて いる材料において技術開発の進歩をやめた材料はな いのである。その材料を使って製品をつくるのだか ら、製品の競争力アップのために材料研究は営々と 続けられている。もちろん鉄は過去に膨大な研究があるから、新た な技術開発研究はより高度且つ困難であるが、鉄鋼 製品の競争力アップのためには材料研究課題に知恵 を絞って取り組まなければならない。技術開発研究を やめたら競争力を失い、関連産業が廃ることになる。「研究課題があるからやる」は受身、「研究課題を見 出す」という能動的姿勢が研究者に求められている。こんな感じの回答なのだが、相手の方々には「確 かに加工貿易で成り立っている日本なのだから、工 業製品の競争力アップに構成材料の技術開発は不可 欠で、やめたら産業が廃れるだけですね。」と納得 していただけたことが多いようであった。「ではどんな研究が大切なのですか?」構成基盤材料としての歴史が長いだけに研究対象 が多岐にわたりしかも高度化しているので、一般の 方々に理解していたただくのが難しい設問である。 しかし、超鉄鋼研究プロジェクトで掲げた、資源枯 渇の中で合金元素を使わないものくつり技術の重要 性は、比較的理解を得やすい回答であった。その他にも「鉄の研究を税金でやる必要があるの ですか?」「なぜ民間企業ではなく公的研究機関が やるのですか?」「大学ではなく、なぜ国研なので すか?」など種々のご意見を頂いてきた。これらのコメントに適切に応えていかないと若者 を含めて多くの方々を失望させることになると思っ ている。関係各位と協力しながらしっかりと説明責 任を果たして行きたいと考えている。耐熱グループ4年(2002.4-2005.12)のあゆみ阿部冨士雄、板垣孟彦(2003.3退職)、岩崎智(現 冶金グループ、2003.3異動)、大久保弘、岡田浩一(現住友金属、2003.10 退職)、九津見啓之、櫻谷和之、仙波潤之、種池正樹(現 三菱重工、2004.3異動)、戸田佳明、原徹、春山博司(現 日立製作 所、2005.3異動)、宗木政一、吉田治、Jun Woong Baek (2004.5韓国へ帰国)1.耐熱グループの研究目的将来我が国の主要な発電を担う石炭火力のうちで CO2削減の期待が大きい650℃、350気圧の超々臨界 圧火力発電プラントの実現に向け、クリープ中の組 織回復の機構解明を基に粒界近傍組織を長時間安定 化する材料設計指針を確立し、当該プラントでキー となる主蒸気管等の大径厚肉鋼管創製のための材料 最適化を図るとともに、表面保護被膜による高温水 蒸気中耐酸化性向上を図り、耐熱鋼の高強度化、長 寿命化を達成するための新たなメタラジーを基礎的 観点から創出する。さらに、650℃より高温化を達 成するための革新的な組織安定化の指導原理を創出 する。2.研究成果の概要2.1長時間組織安定化の材料設計指針焼戻マルテンサイト組織の9Cr (mass%)系耐熱 鋼の主要な強化因子である炭窒化物による析出強化 の支配因子を明らかにするために、Crリッチの M23C6炭化物とV、NbリッチのMX炭窒化物のクリー プ中の凝集粗大化挙動、ボロン添加による粒界近傍 炭窒化物の凝集粗大化抑制、炭窒化物のナノサイズ 化及び高分解能観察による界面構造解析、磁場中熱 処理による炭窒化物の分布制御、Fe2Wラーベス相 の析出挙動を主としてTEM観察により調べた。その 結果、ボロン添加により粒界近傍のM23C6炭化物中 にボロンが濃縮し、M23C6炭化物のクリープ中の凝 集粗大化を抑制し粒界近傍のマルテンサイト強化組 織を長時間まで維持できること、ボロンと窒素を過 剰に添加すると高温で窒化ボロン(BN)が多数生 成するためM23C6炭化物中に濃縮する固溶ボロン濃 度が非常に低下すること、極低炭素濃度にするとナ ノサイズMX窒化物の均一分散が得られること、高 温熱処理後に磁場中で冷却中してマルテンサイト変 態させると、その後の焼戻中の炭窒化物分布が微細 均一化され、通常の熱処理では得られない組織を創 製できること等を明らかにした。焼戻マルテンサイト組織とは異なるフェライト組 織、逆変態オーステナイト組織の新たな材料につい て、炭窒化物や金属間化合物の析出挙動を主として TEM観察により調べた。その結果、転位密度の低い フェライト組織の15Cr鋼について、W、Co等の成分 設計と熱処理条件最適化を基にナノサイズ金属間化 合物を粒界―粒内に均一に析出させ、クリープ強度 及びシャルピー衝撃特性の両方とも満足する組織を 創製できることを明らかにした。また、極低炭素マ ルエージ鋼を高温用に改良したFe-12Ni-9Co系の炭素 フリーマルテンサイト合金について、逆変態オース テナイト相では変態によって高密度の転位が均一に 導入され、加工によって導入される不均一転位分布 とは異なること、その後析出する金属間化合物も変 態導入転位の均一分布の影響を受けて粒界―粒内に 均一に分布すること、この組織は700℃程度の高温 でも長時間安定であること等を明らかにした。2. 2長時間クリープ強度向上の材料設計指針耐熱鋼のクリープ曲線は、通常、始めにクリープ 速度が時間ととともに低下する遷移(一次)域が現 れ、最小クリープ速度を経た後、クリープ速度が時 間ととともに増大する加速(三次)域を経て破断に 至るが、組織安定性に留意してクリープ変形機構や 寿命の支配因子を明らかにした。ボロンを添加する と、遷移域のクリープ速度はほとんど変化しないが、 加速クリープの開始が長時間まで遅延すること、そ の結果、最小クリープ速度が低下し寿命が延長する ことを明らかにした。加速クリープの開始は、クリ ープ中の析出物凝集粗大化によるピンニング低下に 伴いラス・ブロック境界が移動し始めることに対応 すること、従って組織安定性と密接に関係すること を明らかにした。この考えに基づいて、加速クリー プ開始を長時間まで遅延させるには、クリープ中に 例えば析出物凝集粗大化に伴う無析出領域等のいわ ば弱い領域を部分的にでも作らないこと、特に粒界 近傍では組織回復が促進されるので、粒界―粒内を 通じて均一な組織を長時間まで維持する材料設計が 必要であることを提案した。ボロンは粒界近傍炭窒 化物の凝集粗大化を抑制することにより加速クリー プ開始を長時間まで遅延させ、長寿命化する。窒化 ボロン(BN)が生成しない範囲内でボロンと窒素 を添加すると、ボロン効果と窒素添加による微細 MXの析出強化が重畳すること、これにより外挿値 であるが650℃、105hクリープ破断強度100MPaが達 成できることを示した。ボロン添加は、長時間クリ ープ強度向上だけでなく、破断延性を向上させる上 に、溶接継手部のクリープ強度劣化(Type Ⅳ破壊) も抑制できることを明らかにした。このように本研 究では、従来から困難あるいは不可能と考えられて きた、溶接継手部も含めた長時間安定材料の設計指 針を明確にした。従来鋼にない新たなクリープ強化法を探索し、炭 窒化物で強化した従来の9-12Cr耐熱鋼とは全く異な りナノサイズの金属間化合物で強化した、フェライ ト組織の15Cr系鋼及び炭素フリーマルテンサイト合 金について、外挿値であるが、650℃,105hで 140MPa、700℃、105hで80MPa以上を達成した。 700℃、105hで80MPaのクリープ破断強度は、650℃、 105hでは120MPに相当。これにより、ナノサイズの 金属間化合物の均一微細分散とその長時間安定化が 耐熱鋼高温化に非常に有効であること、及び、フェ ライト系耐熱鋼の使用温度域が650℃以上にも拡張 できることを示し、新しい研究領域を開拓した。2. 3表面保護被膜による高温水蒸気中耐酸化性 向上オーステナイト系ステンレス鋼に比べてCr濃度の 低い9Cr鋼でも、0.5%程度のSi添加とAr中予備酸化 処理の組み合わせや、Crショットピーニングと大気 中予酸化処理の組み合わせ等により、ナノ厚さの Cr2O3保護スケールが生成し650℃の高温水蒸気中の 耐酸化性が飛躍的に向上することを明らかにすると ともに、Cr2O3保護スケール生成のメカニズム解明 を行った。従来、Cr2O3の保護スケール生成にはCr含有量は 20%程度以上が必要と考えられてきたが、9Cr鋼で もCr2O3の保護スケールの生成が可能なことを実証 した点は、科学的・技術的意義が高い。フェライト 系耐熱鋼では、通常、表面にFe3O4主体の厚い酸化 スケールが生成する。このため、従来の酸化研究は Fe3O4スケールの成長を如何に抑制するかであった が、本研究ではCr2O3の保護スケール生成という新 しい研究領域を開拓した。一方、Cr2O3保護スケール生成挙動に関しては、 1h程度までの酸化の初期過程を薄膜X線回折や表 面ナノスケール断面組織のTEM観察によって解析 たし。その結果、従来鋼のようにFe3O4主体の厚い酸 化スケールが生成する場合は、酸化初期に少量の Fe3O4を含むFeO主体のスケールがまず生成し、次第 にFe3O4主体のスケールに変化していくのに対し、 Cr2O3の保護スケールが生成する場合は、少量の Cr2O3を含むFe3O4主体のスケールがまず生成し、次 第にCr2O3主体のスケールに変化していくことを明 らかにし、保護スケール生成解明の道筋をつけた。2. 4大径厚肉鋼管創製のための材料最適化上述したクリープ強度、溶接性、耐酸化性等の研 究成果を基に、主蒸気管や管寄せの大径厚肉鋼管用 として、各種特性を総合的に満足する耐熱鋼として、 130ppmのボロンを添加した焼戻マルテンサイト組 織の9Cr-3W-3Co-VNb鋼を提案した。開発鋼の熱間加工性や溶接性を民間企業と共同で 検討した結果、熱間圧延や熱間押し出しでの割れ等 の欠陥生成限界といわれる60%の絞り値を十分上回 る延性を有しており、実際に試作試験においても欠 陥のない良好な鋼管が製造出来ること、溶接継手に ついても欠陥なく製造され、本鋼の様なマルテンサ イト系耐熱鋼で問題となる融合部に沿ったδフェラ イトの存在しない良好な継手を施工出来る技術を確 立した。これらの成果を基に、開発鋼について、民 間企業と共同で、実規模サイズの大径厚肉パイプ製 造性―溶接施工性を検討し、3トン溶解インゴッ ト―大径厚肉パイプ(外径470mm、肉厚65mm、長 さ1300mm)成型技術を確立した。以上より、中期計画「長時間組織安定化を基に 超々臨界圧の条件で使用できることを実証する。」 を達成するとともに、基礎的なメカニズム解明につ いても数多くの成果を上げた。3研究成果の科学技術的意義及び社会的意義3.1 科学技術的意義と新たな研究領域の開拓従来のフェライト系耐熱鋼の使用上限温度は620 ～630℃であったため、650℃級フェライト系耐熱 鋼を開発するには、使用上限温度の限界をブレーク スルーするための革新的な材料設計指針の確立が必 要とされた。本研究では、上述したように、ボイラ 系大径厚肉鋼管にとってキーとなるクリープ強度、 耐酸化性のそれぞれに関して、従来にない新たな材 料設計指針を明確に提示するとともに、(1)ボロン活用の新たな研究領域(ボロン金属学) (2)ナノサイズ炭窒化物、金属間化合物の高温長時間耐久性に関する新たな高温ナノ析出物研究領 域(3)ナノ厚さのCr2O3保護皮膜に関する新たな表面 ナノスケール研究領域等を開拓した。また、特性向上を長時間試験で実証 した。さらに、650℃にとどまらず、より高温の 700℃級耐熱鋼のクリープ強化指針も明確に提示し た。これらによって従来の金属学では解決できなか った諸問題について解決の糸口や解決の方法論を明 確にした点は、科学的・技術的意義が極めて高く、 新たな金属学創成につながるものである。3. 2社会的意義(1)発電効率向上によって、CO2排出削減、資源節 約に寄与できる。我が国の従来型火力発電プラ ント(蒸気温度538-566℃)を650℃にリプレー スすると、発電効率が5 %アップし、従来プラ ント全てをリプレースすると我が国のCO2総排 出量を3 %削減でき、安全安心な21世紀社会の 構築に寄与できる。(2)長期間にわたって高温構造材料を安全に使用す るための信頼性・安全性が確保され、安全で持 続可能な社会構築に寄与できる。(3)応用分野は次世代の火力発電プラントだけでな く、化学プラント、自動車高温部品、建築用耐 火鋼等広範囲に及び新産業創出に寄与できる。4.研究トピックス4.1 焼戻マルテンサイト組織の9Crフェライト 系耐熱鋼の高性能化(1)窒化ボロン(BN)系介在物の生成挙動(櫻谷和之)近年開発された高強度フェライト系耐熱鋼には、 クリープ特性を改善する目的で合金元素としてホウ 素(B)が数10ppm、窒素(N)が数100ppm程度添 加されている。しかし、鋼中でのBの存在形態やB の及ぼす影響については不明な点が多い。本研究で は、Bの挙動を解明する研究の一環として、延性破 面を観察して窒化ホウ素(BN)系介在物の分布を 評価する新しい手法を開発し、BN系介在物の生成 消滅挙動を検討してきた。試料破断面のSEM観察によるBN分布評価法耐熱鋼材より36mmφの丸棒を切り出し、更に2 mmφまで切り欠いたエッジ部を作り、この部分を 室温で繰り返し曲げにより破断し、破面のSEM観察 を行い、試料中に観察された介在物のEDS分析を行 った。図1は火力発電所の主蒸気管用に使用されて いる耐熱鋼(10.5Cr-l.9W-0.3Mo-0.2V-0.06Nb-0.003B- 0.06N)より作製した試料についての結果である。 この耐熱鋼では、数μmにまで成長した粗大なBN系 介在物が多数見られ、それらが集合体を形成してい た。それぞれの介在物はEDS分析により窒化ホウ素 であることが確認できる。これらのBN系介在物は、 この耐熱鋼を再溶解し、凝固する際に速い冷却速度 の場合には生成されないことから、粗大なBN系介 在物の生成は冷却速度に関係している。また、これ らの粗大なBN系介在物は、1150℃までの温度で長 時間熱処理しても、消失することはないが、1200℃ では、時間の経過と共に消失傾向が見られ、更に、 1250℃まで温度を上昇すると、短時間(30分以内) で消失することも確認された。したがって、これ らの実験結果より、破面で観察される粗大なBN系 介在物は、鋳造後の耐熱鋼インゴットの冷却過程あ るいは、高温での鍛造・熱処理中に生成するものと 考えられる。図1 耐熱鋼試料の破断面と破断面での介在物分布及 びBN系介在物のSEM観察とBN系介在物のEDS分析結 果。数μmのBN系介在物の集合体が観察された粗大BNが生成するBとNの濃度範囲すでに開発された、あるいは開発中のいろいろな 濃度のBとNを含む高Crフェライト系耐熱鋼につい て、その破断面のSEM観察より、lμm以上に成長 した粗大なBN系介在物が存在するかどうかを示し たのが、図2である。この図より、粗大なBN系介 在物は、B濃度が0.001%以上、N濃度が0.02%以上 の濃度範囲で生成することが分かる。図2 濃度のBとNを含む高Crフェライト系耐熱鋼の破 断面のSEM観察によるBN系介在物の有無(2)BN系介在物の熱処理による制御(櫻谷和之)本研究で確立した効率的に窒化ホウ素(BN)系 介在物の分布を観察する破断面のSEM観察法を用い て高Crフェライト系耐熱鋼中のBNの分布を詳細に 調べたところ、生成するBNは熱処理条件によって かなり異なること、すなわちBNの分布を熱処理で 制御できることがわかった。熱処理条件と熱処理後の固溶B濃度NIMSで開発中の材料の一つであるM4 (低C-9Cr- 3Co-1.8W-VNb-0.05N-0.007B)について、図 3 に示す ようなM4AからM4Eまでの5種類の異なった熱処理 を行った。熱処理後の試料のsol.B (固溶B)とtotal Bの化学分析の結果よりinsol.B (非固溶B)を算出し た結果を図3に示した。1250℃で30分保持後水冷する熱処理(M4E)では、 試料中のBはほとんど固溶して、BN介在物は消滅す る。一方、BNが固溶消滅した状態から、焼もどし のみ(M4A)、焼ならしと焼もどし(M4B)、100℃ /hで徐冷後焼ならしと焼もどし(M4C)及び受入れ 材を焼ならし焼もどし(M4D)では、どの熱処理で もtotalB中の80%以上がinsol.Bとなり、BN系介在物 を生成していた。(この場合は、M4材の成分と熱処 理温度域から推定するとすべてBNと考えられる。) 熱処理条件と析出するBN介在物図4は熱処理後の試料破断面をSEM観察した結果 である。いったんBNを固溶させた状態から、焼な らし/焼もどしを行う熱処理では、非常に小さいBN (M4A)が析出する。またM4BではBNをSEM観察で は確認できなかったが、図3でBNの存在は確実な ので、SEMでは観察できない程度の大きさのBNが 析出していると考えられる。一方、徐冷(M4C)を行うと、この過程でBNは 非常に大きく成長する。そこで、徐冷過程の各温度 で試料を取り出すと、1150℃以下の温度では大きな BNが観察されることから、大きな粒径へのBNの成 長は1150℃付近の温度で開始することがわかった。図3 耐熱鋼試料M4材の熱処理法のちがいによる固溶Bと非固溶Bの関係図4 熱処理のちがいによるBN介在物の生成挙動を示 す。水冷後焼もどしのみのM4Aでは0.5μm以下のBNし か観察されないが、受入れ材を焼ならし焼もどしのM4Dでは、2～3μm程度の、徐冷のM4Cでは10μm以上の大きさにまで成長している(3)ボロンによる長時間組織安定化(仙波潤之)CO2削減に有望な高効率火力発電用の650℃級フェ ライト系耐熱鋼の研究開発は、現在、日本とヨーロ ッパでしのぎを削っている。NIMSでは、クリープ 強度(目標値:650℃-10万時間のクリープ破断強度 100MPa)だけでなく、耐酸化性、溶接継手強度な どに関して新たな材料設計指針を提示するととも に、実用化に不可欠な材料大型化の研究を民間企業 と共同で進めてきた。その結果、650℃級9Cr鋼開発 の糸口や方法論を明確にするとともに、フロントラ ンナーとしての役割を着実に果たしてきた。以下で は、クリープ強度向上に関して、これまでの成果と 今後の展望を述べる。長時間クリープ強度向上の材料設計指針焼戻マルテンサイト組織の9-12Cr鋼では、粒界近 傍など部分的にでも弱い組織が形成されると局所的 にクリープ変形が促進され早期に破断することを明 らかにし、粒界近傍の強化組織を長時間まで維持で きる材料設計指針をいくつか明確にした。その一つがボロン添加で、図5に示すように、650℃で9Cr鋼 のクリープ破断強度はボロンを添加しないと長時間 経過後急激に劣化するが、ボロン濃度が高くなるに つれ長時間での強度劣化が軽減され、130ppm程度 のボロン添加で長時間まで安全に使用できる材料の 指針が得られた。その原因として、ボロン添加によ って粒界近傍のM23C6炭化物の凝集粗大化が長時間 まで抑制さナノサイズMX窒化物のみで粒界近傍組 織の安定化を狙った9Cr鋼もボロン鋼と同様に有望 である。しかし、ボロンはボイラ系大径厚肉鋼管に とって深刻な溶接継手のクリープ強度劣化も抑制す るので、高温溶接構造物の特性向上に対する切り札 と言える。なお、従来から耐熱鋼のボロン上限は 50ppmと言われてきたが、本研究で100ppm以上の ボロンを活用できたのは、窒素100ppm以下として 粗大なBNの生成を抑えたことによる。図5 ボロン添加による9Cr鋼の長時間クリープ破断強 度向上(650℃)ボロンとナノサイズMX窒化物強化の加算効果BNが生成しない低窒素濃度条件では、ボロン強 化と窒素添加によるMX窒化物析出強化の加算効果 が見られるが、BNが生成するほど過剰の窒素を添 加すると逆に強度が低下することを見出した(図 6)。ボロン140ppmmで窒素濃度79ppmまではMX窒 化物強化によりクリープ破断強度が顕著に増大する が、窒素を650ppmも添加するとBNが多数生成し強 度は逆に低下する。79ppm窒素添加の場合、650℃、 10万時間クリープ破断強度が目標値の100MPaに達 する期待がもたれる。図6140ppmボロン添加9Cr鋼のクリープ破断強度に 及ぼす窒素添加の効果今後の展望材料設計の妥当性を検証するための長時間クリー プ試験は今後も継続すべきで、その結果に注目が集 まっている。また、ボロン効果のメカニズム解明を よりミクロ・ナノレベルから進めるべきで、新たな メタラジー創成に向けて挑戦していきたい。(4)開発鋼の大型化技術(岡田浩一)これまでの基礎研究において、高濃度のB添加に よりM23C6型炭化物の成長を抑制した高B鋼、炭化物 より安定なMX型窒化物で粒界の安定化をねらった 窒化物強化鋼、あるいはPd添加によりフェライトマ トリックスに整合析出するFePd基L10型規則相を利 用したPd添加鋼等により、高温長時間クリープ特性 の向上を図ってきた。一方、基礎研究で得られた新耐熱鋼を実用化に導 くためには、単にクリープや水蒸気酸化特性だけで なく、対象とする火力発電プラント用大径厚肉部材 としての製造性や溶接等の施工性も重要である。ここでは、Pd添加鋼を取り上げ鋼管および溶接継 手の試作を行った結果を紹介する。鋼管および溶接継手の試作結果試験に用いたPd添加鋼の化学組成は0.1C- 9Cr-3W- 0.7Pd-0.5Re-V,Nb,N,B [mass%]である。ここで、Re の添加はM23C6型炭化物やクリープ中に析出する Laves相(Fe2W)の成長を抑制し、長時間クリープ 特性を向上させることから添加した。また、比較鋼 としてPd、Re無添加鋼を準備した。供試鋼は、真空 高周波溶解により180kg鋼塊とし、熱間鍛造により ビレットへ、さらに熱間押し出しにより外径84肉厚 12.5長さ4000 [mm]の鋼管とした。また、溶接継 手の試作は同鋼塊を25 [mm]厚さの鋼板に加工し た後、インコネルの溶材を用いてGTAW (Gas Tungsten Arc Welding)により製造した。Pd、Re添加鋼の熱間加工性は図7に示す様に、主 蒸気管として十分な製造実績を持つMod.9Cr-1Mo鋼 に比較すると劣るが、熱間圧延や熱間押し出しでの 割れ等の欠陥生成限界といわれる60%の絞り値を十 分上回る延性を有しており、実際に試作試験におい ても欠陥のない良好な鋼管が製造出来た。また、溶 接継手についても欠陥なく製造され、本鋼の様なマ ルテンサイト系耐熱鋼で問題となる融合部に沿った図7 供試鋼の熱間延性(グリーブル試験絞り値) δフェライトの存在しない良好な継手が製造できた (図8)。なお、板材を用いたクリープ破断試験結果 を図9に示すように、本鋼は厚肉部材として製造し た場合においても、既存鋼で最も高いクリープ強度 を有するP92鋼より650℃において20Mpa程度高い強 度を有していることを確認している。今後の展開高B鋼や窒化物強化鋼に関して本鋼同様に実用上 の性能を見極め、コスト面も考慮した上で開発鋼の 実用化への技術確立を進めていきたい。図8 溶接継手のミクロ組織図9鋼板のクリープ破断試験結果(5)析出物ナノサイズ化によるクリープ強度向上(種池正樹) 発想の転換耐熱鋼は10年に及ぶ長期に渡って使用されるた め、材料組織変化に伴う強度低下を抑えることが重 要な課題となっている。特に析出強化粒子の粗大化 は最も強度低下に影響を及ぼす。典型的なフェライ ト鋼中の析出物としては、主に境界上に析出する M23C6 (M:Fe,Cr,W)、比較的高温安定で主にラス・ ブロック内に析出するMX (M : Nb,V、X : C,N)が あり、それぞれ境界近傍組織の安定化、ラス内転位 の安定化、に寄与すると考えられるため、これら析 出物の粗大化を抑えるための様々な努力がなされて きた。しかし構成元素の工夫により、多少粒子粗大 化を抑えることができるものの、粗大化傾向を劇的 に改善するのは難しい。そこで析出強化粒子の役割 を一から見直し、粗大化しやすいM23C6を無理に利 用せず、高温安定なMXのみで析出強化を行った方 が高温安定化を見込めるのでないかと考えた。すなわち添加炭素量を極限まで減らすことによりM23C6 の析出を無くし、MX型窒化物を境界上にも析出さ せることで高温クリープ強度の改善が見込めるかど うかを検討した。画期的な新フェライト系耐熱鋼試験鋼として9Cr3W-3Co-0.06Nb-0.2V-0.05Nを基本 組成とし、炭素無添加(<20ppm)とした鋼を作製 した。650℃におけるクリープ試験結果を図10に示 す。本試験鋼(粒界ナノ窒化物強化鋼)のクリープ 寿命は、既存鋼(P92)の100倍程度、本プロジェク ト提案の粒界炭化物強化鋼(ボロン添加鋼)の10倍 以上にも達する。図11に示すように、本試験鋼中に はM23C6が析出せず、境界上に粒径数～数十nm程度 のMX型窒化物が析出しており、境界近傍組織の安 定化によりクリープ強度が飛躍的に向上したと考え られる。今後強化メカニズムの明確化を通して、理 想的なMX型窒化物分散組織を提案していく。図10応力-破断時間図(6)ナノ析出物のキャラクタリゼーション(原徹)ナノサイズMX析出物のキャラクタリゼーション 手法について検討した。キャラクタリゼーションには透過型電子顕微鏡を用い、エネルギーフィルタや EDXによる元素分布マッピング、高分解能電顕観察 等の観察から、析出物の大きさ、分布、成長挙動な どを測定した。クリープ試験によるMX析出物の変化極低炭素9Cr鋼におけるMXの安定性を評価するた めにクリープ中断試験前後の試料について、MXの 大きさ等を評価した結果を以下に示す。なお、クリ ープ中断試験は650℃、225MPaで300時間行ったも ので、この条件は最小クリープ速度を示す時間域に 相当する。図12は、ラス内に析出したMXの透過電 顕写真である。この写真はクリープ中断試験後のも のである。この写真の析出物はマトリクス(α)の {100}に平行にBaker-Nuttingの方位関係を持って析 出した板状MXを板面に平行に観察したものである が、クリープ中もこの方位関係は保たれていること がわかる。クリープ試験前ではMXの大きさは、稜 の長さ10nm、厚さ1nmであったが、クリープ中断 試験後(図12)は稜の長さ20nm、厚さ1.7nmとなっ ており、クリープ試験中にアスペクト比はほとんど 変化せずに相似形で成長していることがわかった。 図13のような高分解能電顕写真のフーリエ変換像か らマトリクス-MX間の格子ミスフィット値を直接計 算すると約2 %と求められた。高分解能電顕写真で マトリクス-MX界面のミスフィット転位の観察をす図12クリープ中断試験後のMX析出物(650℃、225MPa、300時間)図13クリープ中断材のマトリクス(α)-MX析出物の 界面構造(650℃、225MPa、300時間)ると、導入されている転位数はこの値から予測され る数よりも少ないため、この析出物は歪をある程度 弾性的に緩和していると考えられる。今後の検討課題今後は、各種粒界上の析出物についても同様の観 察を行う予定である。析出サイトの異なる析出物の 高温での安定性についての議論を行い、さらにより 高温で長時間安定なナノ析出物組織設計指針を得る ことが今後の課題である。(7)磁場利用による理想的な組織創製(大久保弘)従来のフェライト系耐熱鋼は、マルテンサイトの 微細な組織と炭窒化物の析出強化を巧みに組み合わ せているが、ミクロ組織が不均一で、これがクリー プ強度劣化要因の一つになっている。本研究は、合金元素添加を中心とした従来の材料 設計の考え方と異なり、プロセス制御により微細均 一なマルテンサイト組織創製を目指すとともに、ク リープ強度にとって理想的な組織像を探求すること を目的としている。このため、磁場と加工熱処理を 組み合わせることが可能な「磁場中加工熱処理装置 (TMMT)」を試作した。装置の整備と改良本装置は世界的に見てもユニークな試作品であ る。それ故当初はスムースな運転が困難であったが、 熱電対溶着方法、組織制御プログラム、液体ヘリウ ム充填方法など、改良と工夫を重ねて、現在では常 時運転を可能にしている。磁場中熱処理によるクリープ長寿命化Fe-0.08C-9Cr-3.3W-3.0Co系鋼を供試材とした。 1100℃ x10min焼きならし→770℃ x 4h焼戻の通常 熱処理材をBase材とし、焼きならし後の冷却中にマ ルテンサイト変態開始温度(Ms点)直上から3Tesla の磁場を印加してマルテンサイト変態させた後、非 磁場中で770℃x 4hの焼戻を施した磁場中熱処理材 (3Tesla材)を作成し、磁場処理効果を検討した。 図14はBase材と3Tesla材の650℃、120Mpaでのクリ ープ特性を比較している。図14 (a)から3Tesla材 の破断寿命がBase材と比べ約3倍に向上しているこ とがわかる。その原因は、図14 (b)のクリープ速 度一時間曲線からわかるように、3Tesla材の最小ク リープ速度(クリープ速度の最小値)がBase材に比 べ約1/5にまで低下したためで、磁場中熱処理によ ってクリープ変形抵抗が増大することが明らかとな った。磁場中熱処理による組織変化図15は、Base材(a) (c)と3Tesla材(b) (d)の クリープ試験前の熱処理組織の走査電顕像である。 白く光った部分(粒子)が析出物である。実際には M23C6炭化物とMX炭窒化物の2種類が析出している が、ここで観察できるのは主として約100nm以上の M23C6炭化物である。磁場中熱処理すると、粒界の みならず粒内のM23C6炭化物が微細均一分散化する こと、特に、粒内炭化物の微細分散化が顕著であることがわかる。更に、透過電顕の高倍率観察によっ て、数十nmのMX炭窒化物も磁場中熱処理すると微 細化することも確認された。これらが、クリープ変 形抵抗増大の主因と考えている。本研究の成果は2003年第8回SAMPE先端材料技 術国際会議において発表しPoster Awardを受賞した。 今後の検討課題M23C6炭化物やMX炭窒化物が微細分散化するメカ ニズムを検討するとともに、磁場―熱処理の組み合 わせだけでなく、磁場―熱処理―加工の組み合わせ も用いて理想的な組織像を探求していく計画である。図14磁場中熱処理によるクリープ特性の向上 (a)クリープ曲線(b)クリープ速度―時間曲線図15 Base材(a) (c)と3Tesla材(b) (d)の焼き戻 し処理(770℃×4h)後の初期組織4. 2 新しいフェライト系耐熱鋼:15Cr系フェ ライト母相鋼(1)フェライト母相の利点(戸田佳明)従来の高強度フェライト系耐熱鋼の組織は焼もど しマルテンサイト組織である。したがって、クリー プ強度を向上させるためには、焼もどしマルテンサ イト組織の高温安定性を高めることが重要である。 しかし、高温での長時間使用中には、旧オーステナ イト粒界近傍で優先的に回復が進行するため、クリ ープ強度は低下する(STX-21ニュース、1998年12月 号)。ところで、最近我々は、フルアニールしたフェラ イト・パーライト組織の長時間クリープ強度は、マ ルテンサイトやベイナイトよりも高いことを明らか にした(鉄と鋼、86 (2000)、p.542)。したがって、 高温安定性の高いフルアニールしたフェライトを母 相として活用することにより、高温で長時間使用し ても材質劣化による強度低下が少ない耐熱鋼を開発 できる可能性がある。また、母相をフェライトとす ることにより、従来材料よりもCr量を高くすること ができるため、耐酸化特性の向上も期待できる。W及びCo添加によるクリープ強度の向上0.1C-15Cr-1Mo-3W-0.2V-0.05Nb-0.07N-0.003B鋼 を基 本組成(3W-0Co)とし、クリープ強度に及ぼすW 量及びCo添加の影響を調べた。熱処理条件は1200℃ で30分保持後、炉冷の焼なましである。650℃にお ける供試鋼の応力―クリープ破断時間曲線を図16に 示す。W量の増加(6W-0Co)及びCoの添加(3W- 3Co)によりクリープ強度は向上する。とくに、W 量の増加とCo添加の複合効果(6W-3Co)によりク リープ強度は著しく向上し、クリープ破断時間は約 100倍に延長する。6W-3Co鋼のクリープ強度は、従 来材料で最も高いクリープ強度を有するASME T92 にほぼ匹敵する強度である。図16 650℃におけるクリープ破断強度に及ぼすW及び Co添加の効果650℃-100MPaでクリープ破断した6W-3Co鋼の走 査電子顕微鏡組織(二次電子像)を図17に示す。粒 界には粗大な塊状相が析出し、粒内には微細な板状 の相が比較的密に析出している。W量の増加及びCo 添加により、金属間化合物(χ相、μ相)及び炭化 物(M23C6)の析出量が増大し、析出強化量が増大 するため、クリープ強度は著しく向上することが明 らかとなった。図17 650℃-100MPaでクリープ破断した6W-3Co鋼の 走査電子顕微鏡組織(二次電子像)(2)析出強化型15Crフェライト耐熱鋼の高強度 化・強靭化(戸田佳明)既存のフェライト耐熱鋼に代わる新しい高強度耐 熱鋼として、既存鋼よりもCrを多量に添加し、高温 で保持後、炉冷の焼なましによりフェライト母相に した15Cr-1Mo-3W-V-Nb鋼のクリープ強度を調べた結 果、Wの増量とCoの添加により、焼戻しマルテンサ イト組織を用いた既存のフェライト耐熱鋼と同程度 までクリープ強度は向上し、それが炭化物や金属間 化合物の微細分散析出によることを以前に報告し た。しかし、次世代高効率火力発電プラントの高温 構造部材等に実用化するためには、さらなるクリー プ強度の向上と靭性の確保が必要である。ここでは、 本開発鋼のCおよびN添加量の最適化とNi添加、熱 処理条件の工夫により、クリープ強度と靱性の両方 が著しく向上したことを報告する。析出物制御により高強度化図18はCとN添加量を変化させた15Cr-1Mo- 6W- 3Co-V-Nb鋼を焼なまし熱処理によりフェライト母相 にして、クリープ強度を調べた結果である。火力発 電プラントの使用条件に近い低応力域では、 0.07mass%C 添加(0C-7N)鋼、または0.05mass % C- 0.03mass%N添加(5C-3N)鋼の破断時間が最も長く なり、既存鋼で最も高いクリープ強度を有するT92 鋼の約10倍に増大した。また、これらの2鋼種では、 炉冷中に形成された粗大な塊状析出物や粒界周辺に 存在する無析出帯が少ないこと、クリープ試験中に 形成される第二相の成長速度が遅いことを明らかに した。溶体化熱処理とNi添加により強靭化上記開発鋼のシャルピー衝撃値は15J/cm2以下と非 常に小さい。そこで、靭性を向上させる方策を検討 図18 650℃における各鋼種の応力―破断時間曲線を示 す。火力発電プラントの使用条件に近い低応力域では、 (0C-7N)鋼と(5C-3N)鋼の破断時間が最も長く、既 存のASME T92鋼の約10倍であるした結果、CおよびN添加量を最適化してNiを適量 添加するとともに、焼なましではなく、高温で保持 後、水冷の溶体化熱処理をすることにより、衝撃特 性を飛躍的に改善することに成功した。特に5C-3N 鋼に2mass%Niを添加した材料は、図19に示すよう に室温で100J/cm2以上の優れた衝撃値を示し、延性 脆性遷移温度は約50℃に低下した。この材料の衝撃 特性の向上は、結晶粒径や第二相の析出形態、一部 の鋼種で観察されたマルテンサイト相の生成等の 個々の組織因子だけでは説明できず、フェライト母 相そのものの靭性が向上したためと推察している が、その詳細は現在検討中である。図19 (5C-3N)鋼にNiを添加し溶体化熱処理をした 材料の試験温度に伴うシャルピー衝撃値の変化を示す。 Ni添加量が増加するに伴いシャルピー衝撃値は向上し、 かつ延性脆性遷移温度は低下している高効率火力発電プラントへの応用をめざしてこれより、化学組成と熱処理法を工夫することに より、フェライト母相を有する材料のクリープ強度 と靭性の両方を向上させることに成功した。現在、 以上の結果から選び出した0.05C-15Cr-1Mo- 6W-3Co- 2Ni-V-Nb-0.03N鋼の溶体化熱処理材の650℃クリープ 試験を行っており、高温強度-靭性バランスの最適 化を図っている。また今後は、火力発電プラント等 の大型高温構造部材への応用をめざして、加工性や 溶接性等の検討を行いたい。(3)世界最強レベルをめざして(戸田佳明)既存のフェライト耐熱鋼に代わる新しい高強度耐 熱鋼として、フェライト相を母相とした15Crフェラ イト鋼を提案し、金属間化合物による析出強化を有 効に活用することでクリープ強度が向上すること、 化学組成の最適化や溶体化熱処理によりフェライト 母相の欠点であった衝撃特性を飛躍的に改善できる ことを明らかにした(STX-21ニュース'03年4月号)。 その後、衝撃特性を改善した上記開発鋼の650℃に おけるクリープ強度を、さらに高めることに成功し たので報告する。強度2倍・寿命1000倍0.05C-15Cr-1Mo-6W-3Co-V-Nb-0.04N (mass%)鋼 にNiを添加した溶体化熱処理材(WQ)のクリープ 試験結果を図20に示す。同組成の開発鋼の炉冷材 (FC)と、既存鋼で最も高いクリープ強度を有する ASMET92鋼のクリープ強度も同時に示した。WQ 材のクリープ強度はFC材のそれよりもさらに向上 し、最も優れた材料は200MPaでの破断寿命が約1 万時間に達した。これは、1万時間破断応力が既存 鋼の2倍、200MPaでの破断寿命が既存鋼の1000倍 であり、著者らが知る限り、バルク材から作成した 650℃級フェライト耐熱鋼としては世界最強レベル である。しかし、衝撃特性の向上に有効なNiを多量 に添加した材料ほど、長時間域でクリープ強度が大 きく低下する傾向を示す。図20 650℃における各鋼種の応力-破断時間曲線を示 す。溶体化熱処理材(WQ)は既存のT92鋼のクリープ 強度を大きく上回り、200MPaでの破断寿命が約1万時 間に達した均一微細分散析出による高強度化図21は、(a) 0.4%Ni添加鋼と(b) 2.0%Ni添加鋼 の、650℃/200MPaクリープ破断材の走査型電子顕 微鏡(SEM)写真であり、写真中のtrは破断時間を 示す。既存鋼の焼もどしマルテンサイト組織は 923Kの高温では不安定で、組織変化に起因した材 質劣化によりクリープ強度は大きく低下することが 知られている。しかし、そのような高温で数千時間 のクリープ試験後にもかかわらず、破断時間の長い 0.4%Ni鋼では、フェライト母相中に数百nm程度の 第二相が均一微細な状態で存在し、組織の高温安定 性が非常に高い。FC材では徐冷中に粗大な塊状の 第二相や無析出帯が形成され、それが析出強化の効 果を低下させるのに対し、急冷による溶体化熱処理 を行うことで有害な組織因子の形成が抑制され、析 出物を形成する固溶元素の過飽和度が高まったた め、微細な第二相が均一に析出したと考えられる。 一方、2.0%Ni鋼では多くのマルテンサイト相が観 察され(図21(b)の中央から右半分)、その内部に は様々な大きさの粗大な析出物がまばらに存在し、 組織の不均一性が大きい。衝撃特性の向上に有効な Niの添加量が増加すると、溶体化温度においてフェ ライト相中にオーステナイト相が形成され、冷却中 にマルテンサイト相に変態したためである。今後は、Niを添加して衝撃特性を維持しながら、 熱処理法や化学組成を最適化してマルテンサイト相 を抑制し、高温強度とのバランスを図って、火力発 電プラント等の大型高温構造部材への応用をめざ す。本研究は平成15年度NEDO産業技術研究助成事業 に採択された。本研究成果の一部は、(社)日本機械学会動力エ ネルギーシステム部門より優秀講演表彰を戴いた。図21(a) 0.4%Ni添加鋼と(b) 2.0%Ni添加鋼の、 650℃/200MPaクリープ破断材のSEM写真を示す。 0.4%Ni銅では、第二相の微細分散析出が観察されたの に対し、2.0%Ni鋼では、マルテンサイト相の形成によ る組織の不均一性が高い4. 3 700℃級フェライト系耐熱鋼の開発(1)炭素無添加新合金によるクリープ特性向上(宗木政一)650℃、350気圧の過酷な雰囲気に長時間耐えられる耐熱鋼の開発を目的として検討してきた合金の中 で、炭化物の析出しない炭素無添加新合金は、 650℃以上でミクロ組織の変化が起こりにくい特徴 を生かしたクリープ特性の向上が期待されている。 (STX-21ニュース、1999年12 月号)。最近この合金において、従来の高Crフェライト系 鋼では達成不可能な700℃、100MPaの条件において、 1万時間を超えるクリープ性能の得られることが分 かり、更に検討を進めている。強化のメカニズム図22は、700℃、1000時間時効処理材のミクロ組 織である。Fe-Ni-Coマルテンサイトの軟らかい母相 から、組織全面に硬い金属間化合物のμ相とラーベ ス相が、均一微細に析出していることがわかる。こ の組織状態が、1万時間を超える長時間・高温クリ ープ雰囲気中で維持され、驚異的なクリープ特性の 向上をもたらした原因と考えられる。図22 700℃、1000時間時効処理材のミクロ組織図23は、オーステナイト系ステンレス鋼の SUS304と新合金の700℃、100MPaのクリープ変形挙 動を比較したものである。新合金は、初期クリープ 速度は同程度であるが、遷移クリープ域が長時間ま で持続し、1万時間を超えてようやく最小クリープ図23 700℃、100MPaのクリープ速度―時間曲線速度を示している。両合金の最小クリープ速度の差 は、この時点ですでに二桁を優に上回っていること がわかる。さらに、750℃、100MPaのクリープ試験経過を図 24に示した。新合金は、千時間を超えて最小クリー プ速度が現れている。このように、炭素無添加新合 金は、従来の高Crフェライト系鋼からは考えられな かった高温クリープ特性向上が可能となり、より高 温への適用範囲の拡大が期待される。図24 750℃、100MPaのクリープ速度―時間曲線(2)クリープ特性向上のさらなる挑戦(宗木政一)炭素無添加マルテンサイト合金は、従来の高Crフ ェライト系鋼では不可能な700℃以上の高温クリー プ特性の向上が可能となり、適用範囲の拡大が期待 されている(STX-21ニュース、2002年1月号)。 高強度化の現状図25は、炭素無添加マルテンサイト合金の700℃ から900℃の応力―破断時間線図である。700℃. 300MPa の約10h から 200MPa の2554h、 150Mpa の10、 741hへ応力の低下に伴い破断時間が大幅に延長し図25応力―破断時間線図た。そして曲線の勾配を外挿すると10万時間破断応 力は120MPaに達するものと期待される。700℃、 100MPaについては27,000hを経過し、安定なクリー プ変形域に位置し、80MPaでは42,700hを経過してい ずれも試験継続中である。750℃も同様に300MPaの 5.7hから200MPaの127.4h、100MPaの6,940h、そして 60MPaの約17,000hへと応力低下に伴い、破断時間が 大幅に延長した。800℃と850℃についても同様の傾 向を示した。そして、900℃も200MPaの0.25hから 150MPaの3.6h、120MPaの29h、そして60MPaの 235.9hであった。このように、本合金は700℃から 900℃までの試験温度全域にわたり、急激な強度の 低下はなく、応力―破断時間関係が非常に良好な材 料であることが明らかとなった。熱サイクル試験による安定性電力需要の昼夜の変動、週末変動が大きくなり、 これらの変動の対応として火力プラントには、DSS (Daily Start Stop)運用の要請が高まり、熱効率向上 に加えて運転性の向上が要求されている。すなわち、 熱サイクル負荷に対応できる材料が必要となってい るのが現状である。表1は、ストローク制御による 応力負荷と200℃と700-1000℃の加熱-冷却を繰り 返す熱サイクル試験の結果である。700-1000℃の任 意の温度に加熱、保持しストローク制御で0.1-1mm の伸びに相当する引張応力を負荷し、所定時間経過 後200℃まで冷却し、再び700-1000℃の温度に加熱 負荷を行う熱サイクルを破断するまで繰り返し、 100回経過後破断しないものをNFと表記した。この 試験でオーステナイト系ステンレス鋼のType316は 加熱上限温度750℃、0.5mmのストローク負荷の繰 り返し34回で破断した。同様に加熱上限温度が 800℃では14回で破断した。これに対し、炭素無添 加マルテンサイト合金は、同一条件の100回繰り返 しでは破断せず、900℃で49回、1000℃で2回、さ らに800℃の1mmストローク5回でようやく破断 し、過酷な熱サイクル試験にも十分耐えられること が明らかとなった。表1熱サイクル試験結果Type 3160mm 0.1mm 0. 5mm 1mm700℃ NF NF 1750℃ NF NF 34800℃ NF NF 14炭素無添加マルテンサイト合金* NF :100回繰り返し試験後破断せず 表中数字:破断までの繰り返し数0 mm 0.1mm 0. 5mm 1mm700℃ NF NF NF NF750℃ NF NF NF NF800℃ NF NF NF 5900℃ 491000℃ 24 . 4高温水蒸気中耐酸化性向上(1)保護皮膜による9Crフェライト系耐熱鋼の耐水 蒸気酸化性向上(九津見啓之)超々臨界圧発電プラント用フェライト系耐熱鋼の 開発が進められている中で、高温長時間強度の向上 とともに、材料の耐酸化性を向上させることも重要 な課題である。これまで種々の高Crフェライト系耐 熱鋼の水蒸気酸化挙動を検討し、Cr、Si以外にMo、 微量のSなどが耐酸化性向上に有用であることなど を明らかにしてきた。一方オーステナイト系耐熱鋼 は、ショット・ブラスト等の加工処理によって水蒸 気中で鋼表面に保護皮膜が生成し、耐酸化性が著し く向上することが知られている。フェライト系耐熱 鋼ではこの種の保護被膜は生成しないとされてきた  が、3 %のPdの添加、またはAr気流中での予備酸 化により、Cr-rich保護被膜が生成することが分かっ たので報告する。Pd添加による保護被膜形成図26は9Cr-3.3W-3Pd-V-Nb鋼(P3)及びPd無添加 鋼(B2)の表面仕上げ条件による水蒸気酸化スケー ル性状の違いを示した結果である。それぞれ表面を 320grit耐水研磨紙で研磨、あるいは700℃/50hの真 空焼鈍した後に650℃/100hの水蒸気酸化を行った 試験片断面を光学顕微鏡で観察したものである。 320grit研磨状態のP3表面には薄く強固な酸化被膜が 生成して酸化の進行が著しく抑制されたのに対し て、真空焼鈍を行った試料では加速酸化を起こして 厚い二層スケールが形成されている。また、320grit 研磨後さらにバフ研磨した試験片表面でも真空焼鈍 試料とほぼ同程度の二層スケールが観察された。こ のことから、P3試料における酸化挙動の変化は表面 ひずみ層の有無に依存して現れることが分かる。Pd 無添加鋼においては、表面仕上げ条件に関わらず、 厚い二層スケールが生成した。また、PdまたはPtの 表面被覆によっても同様の結果が得られた。すなわ320grit 研磨 750℃, 50h真空焼鈍図26 Pd添加鋼及び無添加鋼の表面仕上げ条件の違い による水蒸気酸化スケールの変化を示す。表面加工層 が存在するPd添加鋼は水蒸気酸化により強固な保護被 膜が形成され、酸化の進行が著しく抑制されるちPdまたはPtの存在だけでなく、表面加工ひずみが 残存することによって、酸化の初期に保護性の高い 酸化被膜が生成して、その後のスケール成長を抑制 するものと考えられる。予備酸化処理による保護被膜形成一方、PdやPtが存在しなくても、0.5%以上のSiを 含む9Crフェライト鋼に高温のAr気流中での予備酸 化処理を施すと、同様の保護酸化被膜が生成可能で あることが分かった。使用したArの酸素含有量は 0.3ppmである。図27は0.5%Siを含む9Cr-3W-V-Nb鋼 に700℃のAr気流中で50h予備酸化処理を施した後、 650℃、100hの水蒸気酸化試験を行った試験片の表 面に観察された保護酸化被膜断面のSTEM像及び Fe、Cr、Oの元素マップを示した。保護被膜はCr- rich な 酸化物層 と Fe を 多 く含む酸化物層の二層から 成っており、厚みは0.1μm程度であった。また図に は示さないが、予備酸化直後の被膜も同様の厚みで あり、各元素の分布も同様であった。従って、予備 酸化処理によって生成した保護被膜は、その後水蒸 気酸化によってほとんど変化せず、安定であること が明らかになった。図27 0.5%以上のSiを含む9Cr-3Wを高温のAr雰囲気で 予備酸化処理すると、試験片表面に、Cr-richな酸化物 層と相対的にFeを多く含む酸化物層の二層から成る、 薄く安定な保護被膜が形成され、水蒸気酸化による二 層スケールの成長を抑制することができる(2)初期酸化挙動の解析(春山博司)これまで、9%Cr鋼でも3%のPdを添加し、表面 加工ひずみ層を付与すると、高温水蒸気中でCrリッ チな保護性の酸化皮膜が生成し、その結果、耐水蒸 気酸化性が飛躍的に向上することを見出した。しか しながら、保護皮膜生成の詳細なメカニズムは明ら かになっていない。そこで、どのように保護酸化皮 膜が形成されるかを解明するために、Pdを添加した 高Crフェライト鋼の短時間の水蒸気酸化試験を行な い、初期の酸化挙動について検討した。初期酸化挙動図28は、650℃/10h水蒸気酸化試験後の3 %Pd添 加鋼(9Cr-3.3W-3Pd-VNb)とPd無添加鋼の薄膜X線 回折結果を示す。表面はともに320grit研磨により仕 上げ、加工ひずみを付与した。Pd無添加鋼では、初 期段階においてFe3O4とともにFeOのX線回折パター ン を確認 した。 さらに短時間の10min試験後におい ても、Fe3O4及びFeOが検出された。したがって、Pd 無添加鋼では、初期にCrリッチな保護皮膜が生成し ないため、Fe3O4及びFeOが生成し、そのままFeの酸 化が進行して最終的に二層スケールを形成すること が分かった。一方、3 %Pd添加鋼ではCr2O3及びFe3O4のX線回 折パターンが現れ、FeOは検出されなかった。この ことからPd添加鋼では酸化初期にCr2O3の保護皮膜 が形成されることによって、Oの内部への拡散が抑 制され、その後の酸化がほとんど進行しなかったと 考えられる。図28 650℃/10h水蒸気酸化試験後の3 %Pd添加鋼及 びPd無添加鋼の薄膜X線回折結果を示す。Pd無添加鋼 ではFeO及びFe3O4が確認され、酸化が進行したが、Pd 添加鋼ではCr2O3及びFe3O4が確認され、ほとんど酸化 は進行しなかった保護皮膜の生成図29は、650℃/1h水蒸気酸化試験後の3 %Pd添加 鋼の断面STEM像及びFe、Cr、Oの元素マップであ る。試験片表面に厚さ0.1～0.2μmの均質なCrリッチ図29 650℃/1h水蒸気酸化試験後の3 %Pd添加鋼の断 面STEM像及びFe、Cr、Oの元素マップ保護皮膜が確認できる。この安定した保護皮膜は、 水蒸気酸化のごく初期の段階で形成されることが判 明した。またその生成原因は不明だが、表面近傍の フェライト母相は平均粒径1μm以下の超微細組織 になっている。一方、Pd無添加鋼では保護皮膜が生 成しないため、粒界に沿ってOが内方へ拡散してお り、1h後には厚さ約2 μmの内部酸化層が見られた。 したがって、Pdの添加によりCrの保護皮膜が形成さ れ、Oの内方拡散を抑制したものと考えられる。今後の計画今後は、表面加工や合金元素添加など、保護被膜 を形成するための条件を明確にしていく予定であ る。(3)炭素フリーマルテンサイト合金の水蒸気酸化挙 動(九津見啓之)650℃級USC発電プラント用フェライト系耐熱鋼 の研究が進められている中で、炭素フリーマルテン サイト合金の高温長時間組織安定性が従来の高Crフ ェライト系耐熱鋼よりも高いことが分かってきてお り、この傾向は特に700℃以上の高温で顕著である。 即ち650℃級USCよりさらに高温のプラントへの適 用も期待できる。一方、開発を進めるうえで、高温 長時間強度とともに、耐水蒸気酸化性向上が重要な 課題である。そこで種々の組成の炭素フリーマルテ ンサイト合金の水蒸気酸化特性を調べた。水蒸気酸化試験対象合金は、Fe-12Ni-9Co-5Mo-0.5Mn及びFe-12Ni- 9Co-10W-0.5Mnを基本成分としてNi、Co、Mo、W、 Cr、Si、Pd等の添加量を変えた12合金である。各合 金は真空誘導溶解後、1200℃2h均質化処理、1000℃ 熱間圧延(16mmφ)、1000℃ 30minの溶体化処理を 施して供試材とした。試験片は10×20×2mmの短冊 状に加工し、表面は320gritの耐水研磨紙で仕上げた。 水蒸気酸化試験は600～750℃の水蒸気雰囲気で最長 1000hまで実施し、酸化スケールの解析を行った。 水蒸気酸化スケールの構造Crを5～9 %添加した合金の水蒸気酸化スケール は、Magnetite/(Fe,Cr)3O4の2層から成り、従来の典 型的なフェライト系またはオーステナイト系耐熱鋼 の水蒸気酸化スケールと同様の構造を有している が、他のCrを含まない合金では、図30に示すように、 全く異なるスケール構造が見られた。これらの合金 の水蒸気酸化スケールはFe3O4 (Magnetite)単層で、 スケール直下には母材組成よりも相対的にFeが少な く、Ni含有量が多い内部酸化層が認められた。水蒸気酸化に及ぼす添加元素の影響酸化増量で整理すると、Cr、Pd、Siは酸化増量に あまり影響を及ぼさないが、図31に示したように、 Ni濃度の増加によって700℃以上での水蒸気酸化特 性が向上した。この結果12Ni合金の750℃における 酸化増量は6Ni合金の40%程度にまで低下する。ま た、700℃及び750℃での12Ni合金の酸化増量は Mod.9Cr1Mo鋼の約50%程度であり、700℃以上の高温では水蒸気酸化の観点からも従来の高Crフェライ ト系耐熱鋼より優れていることが明らかになった。図30 Crを含まない炭素フリーマルテンサイト合金の 水蒸気酸化スケール断面図31 炭素フリーマルテンサイト合金の水蒸気酸化に 及ぼすNi濃度の影響5 状況の変化及び今後の研究の進め方(阿部冨士雄)5.1 状況の変化とフェライト系耐熱鋼のニーズ この5年間の間に、下記に列挙するように、アジ ア及び欧米で超々臨界圧発電プラント用フェライト 系耐熱鋼に関するプロジェクトが新たにスタートし た。・中国では、2004年10月から650℃級超々臨界圧発 電プラント用フェライト系耐熱鋼の研究開発プロ ジェクトがCentral Iron & Steel Research Institute (略称CISRI)が中心になってスタートした。・ヨーロッパでは、15ヶ国が参加して1998年から実 施された650℃級超々臨界圧発電プラント用フェ ライト系耐熱鋼の基礎的研究(COST 522プロジ ェクト)が終了し、2004年7月からプラント実用 化に向けた研究プロジェクト(COST 536)がス タートした。・米国では、760℃級超々臨界圧発電プラント用Ni 基超合金および耐熱鋼の適用性を評価するVision 21プロジェクトがエネルギー省(DOE)、電力研究所(EPRI)、オークリッジ国立研究所(ORNL) が中心になって2001年10月から5年計画でスター トした。700℃以上で長時間使用できるフェライト系耐熱 鋼は現状ではないため、Ni基超耐熱合金あるいは高 強度オーステナイト系耐熱鋼がプラント最高温部の 候補材に挙げられている。しかし、これらの材料は Niを多量に含有するため非常に高価である。そのた め、最高温部には、Ni基超耐熱合金あるいは高強度 オーステナイト系耐熱鋼を使うとしても、安価で熱 物性特性(熱膨張、熱伝導度)の優れたフェライト 系耐熱鋼を出来るだけ高温まで使用したいと欧米の プラント設計者、材料研究社は考えている。以上のように、フェライト系耐熱鋼を650℃ある いはより高温で長時間使用可能とする材料研究は今 後とも重要と考えられる。5. 2今後行うべき研究この5年間の研究で見出した「ナノ析出物による 粒界近傍組織の弱化抑制に基づく高温強化・長寿命 化」の新規な考えを発展させ、高温強化手法で最も 有効な析出分散強化の極限化、すなわち、ナノ析出 物による高温強化に加え、高温使用中の部分的な組 織弱化を抑制する視点に立ってナノ析出強化組織を 高温長時間まで維持できる理想的な材料組織の設計 指針確立が必要である。このためには、基礎的観点 から・ナノ析出物遷移過程・組織形成シミュレーション・ナノ析出物の均一分散制御技術・ナノ析出強化の機能発現機構・高温長時間安定ナノ析出物設計などに関する研究を行うべきである。これらの研究 により、高温長時間まで高強度を維持できる理想的 なナノ析出強化組織の明確化および耐熱鋼の高温 化、長時間安全性確保が期待できる。耐食グループの4年片田康行、秋山英二、大橋重雄、河端光裕、黒沢勝登志、清水敦子、Thiyagarajan SUNDARARAJAN、高田悦子、永野彩子、西 村俊弥、ブロス美穂、Kulandaivelu RAVICHANDRAN、鷲頭直樹1.目的耐食グループでは、海浜・海洋環境下で安心して 使用でき、かつ環境に優しくリサイクル性に優れ、 LCCを考慮した次世代型超鉄鋼の材料設計指針を提 示するため、具備すべき高耐食性と構造体化に必要 な溶接性を確保するための新しい合金設計、耐食溶 接金属、表面改質技術開発の検討を行ってきた。ま た原子力委託研究の一環として、放射性廃棄物地層 処分関連研究、並びに軽水炉用構造材料の環境助長 割れ関連研究の2課題についても進めてきた。2.グループの活動経緯超鉄鋼研究プロジェクトで創生された研究シーズ のうち耐候性鋼、高窒素ステンレス鋼、超高力ボル トの材料開発に伴う各腐食課題、すなわち大気腐食、 海水腐食、水素脆化の評価が不可欠である。材料開 発の要件としては、環境に優しく、リサイクル性に 優れ、LCCを考慮した取り組みが求められている。 耐候性鋼については、結晶粒の超微細化による高強 度化のみならず希少金属としてのNiを含まない省資 源型の素材開発でリサイクル性と低コスト化を指向 している。高窒素ステンレス鋼については、固溶窒 素を用いることによりリサイクル性とNiの省資源化 を指向している。高強度鉄鋼材料の開発に当たっては水素脆化の問 題がありその評価法の確立が不可欠である。当グル ープでは高強度材の大気暴露試験と水素脆化割れ評 価の体系化を目指している。その他にも微生物腐食 に関する研究を行っている。以下にそれらの概要をトピックスとして述べる。3. 4年間の組織の成果(研究トピックス)1)LCA、LCCに対応した微細粒高強度耐候性鋼の開発 (西村俊弥)NIMSにおいて開発された高Si高Al添加の微細粒高 強度耐候性鋼は、溝ロール圧延機により棒材に、 600℃で累積断面減少率90%の温間圧延加工した結 果、結晶粒径が1 μmの微細粒組織を示した。一般 に高Si高Al鋼の靱性は著しく低いが、結晶粒微細化 により驚異的に靱性を改善することが可能である。 図1に供試材の強度(降伏強度:MPa)―腐食量マ ップを示す。促進腐食試験において炭素鋼の腐食量 を100%と仮定した相対腐食量を求めると、供試材 は、比較鋼の1%Ni鋼および3 %Ni鋼の中間の耐食 性を示しており、0.2mdd (mg/dm2/day)程度の海浜 地域でも使用可能と推定される。また、微細粒化と SiとAlの固溶効果により降伏強度を700から900MPa 以上にまでに作り込める。腐食試験後にさび層の断面をEPMAで観察した結 図1 開発材の降伏強度(MPa) -腐食量マップ 開発材の降伏強度は、700-900MPa、耐食性は、1%Ni 鋼と3%Ni鋼の中間レベル果、Al-Si系の複合鉄酸化物がさび下層に緻密に形成 することにより、Clイオンの透過を防いで高耐食性 を発揮する機構が判明した。このように、供試材は、 強度、靱性、耐食性に優れており、今後、溶接性も 含めて各特性の機構解明の観点から総合特性の向上 を計って行く。2)促進腐食試験による耐候性鋼の評価(黒沢勝登志)ち密なさび層の生成には、さびの熟成時間と環境 の付与が不可欠である。促進腐食試験では、さび熟 成に重要な工程は乾燥工程と考えられた。そこで、 乾燥工程での環境条件を湿度50%、50℃一定とし、 2種類の耐候性鋼を用いて最も腐食量が多くなる条 件を探索した。図2は、耐候性鋼の腐食量に及ぼす乾燥時間の影 響を示したものであり、上記の式より600h後の腐食 量をプロットしたものである。実際の試験は、720h 行った。その結果、水洗工程のない(無水洗)場合、 5 %NaClの場合、また乾燥時間が6hの場合に腐食量 が多く、これらの条件で迅速に耐食性評価が得られ ることが判明した。しかし、無水洗では腐食量の差 はなく、5 %NaClでは密着性の劣るさび層を生成し た。一方、乾燥時間6 hの場合、ち密なさび層が生 成したため、2種類の耐候性鋼の腐食量に差違が認 められ、腐食速度は自然環境の場合と同様、試験時 間とともに減少した。Ni添加鋼の場合、添加量が多くなるに従って腐食 量が単純に減少した。Cr添加鋼の場合、添加量1～ 5 %で腐食量の極大値を示したが、この現象は塩素 イオンが多量に存在する大気環境中でも認められる 図2 塩水噴霧0.5h +乾燥Xh +湿潤1.5h (または湿 潤1h +水洗0.5h)を1サイクルとした時の、耐候性鋼 の腐食に及ぼす乾燥時間の影響が、原因は必ずしも明解ではない。3)耐海水性高窒素ステンレス鋼の開発(片田康行)当機構では、1997年から超鉄鋼プロジェクト研究 (STX-21)が開始されており、その一環として、窒 素(N)添加による「耐海水性ステンレス鋼の開発」 を進めている。この新素材の開発指針としては、窒 素の高濃度固溶添加と素材の清浄化を図ることによ り、Cr、Ni、Moの合金元素を極端に増加させるこ となく、海水中で局部腐食のない優れた耐食材料を 開発することである。窒素添加と素材の清浄化を同 時に実現できる装置として、加圧ESR (Pressurized Electro- Slag Remelting)装置を国内で初めて開発 し、不純物混入の原因となるMnを添加しない高窒 素添加ステンレス鋼(HNS:23%Cr系)の試験溶製 に成功した。γ単相HNS棒鋼の固溶化処理後の引張 強さは1000～1200MPa程度で、高強度であるにもか かわらず、伸びや絞りはSUS316鋼とほぼ同程度で あった。図3 高窒素ステンレス鋼のすき間腐食発生挙動HNSの耐食性については、人工海水中において、 マルチクレビス試験片を用いたすき間腐食試験評価 を行った。供試材は、23%Cr-4%Ni-1%Moをベース 材として加圧ESR法により窒素添加したもので、す き間腐食試験では35℃、人工海水中で、すき間腐食 電位(CCP)と窒素含有量の関係を調べた。その結 果、図3に示すように加圧ESR法で溶製した高窒素 鋼については窒素の増加とともにCCPが高くなり、 N含有量が1%を超えると酸素発生電位でもすき間 腐食は発生しないことがわかった。さらに鹿島港 (茨城県)に設置した実海水中暴露試験上において HNSの暴露試験を行っており。これまでのところ 2.5年以上にわたってすき間腐食の発生は確認され ていない。この窒素添加ステンレス鋼のもう一つの特長とし て、窒素がオーステナイト相の形成元素であるため、 同じ効果をもつニッケルの含有量を大幅に削減する ことができ、最終的にはニッケルフリー高窒素ステ ンレス鋼の創製が可能となった。この素材は、抗ニ ッケルアレルギー対策材として、生体・医療分野へ の展開が強く期待されている。4)バイオフィルム内過酸化水素による電位貴化 ―海水中におけるステンレス鋼の微生物腐食発生機 構を解明― (鷲頭直樹)バイオフィルムおよび微生物の働きと電位貴化と の因果関係についてはいくつかのモデルが提唱され ているが、それらに確証を与えるような実験結果は これまで得られていなかった。本トピックスでは一 般的な好気性微生物の多くが細胞外へ放出している とされる過酸化水素に着目し、これがバイオフィル ム内に蓄積することによってカソード反応に寄与す ると予測した。実海域に存在する微生物の活動は、 水温の低い冬季では低く、水温の高い夏季に高まる。 したがって、もし微生物が過酸化水素の濃度および 自然電位に影響を与えるとすれば、それらの値も季 節によって変動すると考えられる。この予測をもと に、1年間のうちのいくつかの時期において実海域 に1ヶ月間もしくは2ヶ月間暴露したSUS316L鋼に 対して、自然電位ならびに表面バイオフィルム内の 過酸化水素濃度を測定した。ただし、腐食の発生を みた試験片は測定対象から除外した。この結果を図 4に示す。過酸化水素濃度および自然電位ともに冬 季では低く夏季においては高い値となった。これは 微生物が代謝した過酸化水素がバイオフィルム内に 蓄積され、これが電位の貴化を誘起していることを 示唆している。自然電位貴化に過酸化水素が不可欠か否かを検証 する目的で、酵素を使用した過酸化水素分解試験を 行った結果、ステンレス鋼の自然海水中における微 生物由来の電位貴化は、過酸化水素を仲介として引 き起こされることが判明した。図4 バイオフィルム内過酸化水素濃度と自然電位の 季節変動。夏季に過酸化水素濃度および電位ともに高 い値を示した5)高強度ボルトの実暴露試験による遅れ破壊評価(秋山英二)鉄鋼材料の高強度化のニーズは増しており、高強 度ボルトにおいても接合部のコンパクト化、施工コ スト削減と工期短縮、省エネルギーに寄与する超高 力ボルトが期待されているが、遅れ破壊が高強度化 を制限する主要な因子である。開発材料の耐遅れ破 壊特性を評価する方法の開発を目標とし行われた 「超高力ボルトの性能評価法の開発」(第一期:平成 9―13年度)にNIMSは13年度より加わり、続く第 二期(平成14―16年度)では、建築研究所・日本鉄 鋼連盟・ NIMSとの3者の共同研究を行った。平成 17年からは日本鋼構造協会の「超高力ボルトの遅れ 破壊特性評価法の開発」に場を移し現在も研究を継 続中である。この研究では水素量基準の遅れ破壊特 性評価法を検討するため、沖縄の宜野湾(海浜)お よびつくばの建築研究所の屋外および室内(田園)図5 遅れ破壊発生確率(B15、B13 : SCM435、1500、1300MPa、A13、A11:ボロン鋼1300、1100MPa)に、クロムモリブデン鋼SCM435を1500および 1300MPaに、ボロン鋼を1300および1100MPaに調整 した直径22mmの建築用ボルトを締め付けて暴露試 験に供し、破断発生の確率およびボルト中の吸蔵水 素量の昇温脱離分析を行った。図5には高強度ボル トの遅れ破壊発生の累積確率の変化を示す。また、 それぞれの材料について、遅れ破壊発生限界水素量 Hcの測定を行った。その結果、遅れ破壊発生確率は、 Hcが低くなる程高く、また、遅れ破壊発生確率は腐 食環境の厳しい沖縄で高くなることが確認された。 また遅れ破壊発生の季節依存性についても確認され た。環境中での吸蔵水素量Heは塑性変形したねじ部 が、弾性変形した軸部よりも高く、ボルト締め付け 角に依存した増加が見られた。6)耐隙間腐食性に優れたチタン合金の開発(K. Ravichandran、西村俊弥)チタンは高い耐食性を示すが、高温、高塩化物環 境では隙間腐食感受性を示す。チタンの耐隙間腐食 性を改善するためにモリブデン添加合金を開発し た。隙間内部における高温、高塩化物環境でのチタ ンの隙間腐食を理解するためにマイクロ電極を新た に開発した。純チタンでは、試験4日後に急激に隙 間電流が増加するのに対して、15%モリブデン添加 チタン合金では変化が見られないことが図6で示さ れる。このことから、純チタンでは使用ができない 100℃. 20%塩化物環境で15%モリブデン添加チタ ン合金は隙間腐食を生じないことが示された。図6 純Tiと15%Mo-Ti合金の隙間内部の電流変化7)軽水炉用構造材料の高温水中低サイクル疲労試験のデータベース構築 (X.Wu、片田康行)H13年度より原子力委託研究の一環として、軽水 炉用構造材料の高温水環境下の非定常条件下の低サ イクル疲労挙動の検討が進められているが、得られ たデータや解析結果の効率的な利用を図るために、 ノートパソコンでも気軽に利用できるユーザーフレ ンドリーなデータベースの開発を進めている。開発 したデータベースは図7に示すように、データ検索 機能、データバンク、図表データおよび文献データ の4つからなり、すべてのプログラムはMS-Excel 2000を用いてVisual Basicで記述されている。開発 したデータベースの利用方法としては、構造部材の 安全評価、材料選択、現象のモデル化構築支援等の 直接的な利用だけでなく、知識ベース化を図ること により実験室では実験困難な因子の組み合わせによ る仮想実験データの評価も可能であろう。このデー タベースについては、既存のNIMS材料情報データ ベースとの連携も考慮してさらなる有効利用を進め たい。4.組織運営上の問題点、反省点、提言等社会生活に密着した安心で安全な材料開発におい て、金属材料の腐食は避けて通れない課題であるが、 実際の現象は非常に長期間の経過を経て進行するた め、腐食現象を短時間で評価できる促進試験が必要 であり、また使用環境に依存した現象であるので、 個々の使用環境における暴露試験等の実証試験が不 可欠である。このような一連の研究は長期間にわた る研究体制が必要であるが、実際の研究活動は、期 間限定のプロジェクトにより進めざるを得ないこと から、長期的視野に立った研究体制を国内はもとよ り国際連携を見据えた研究体制の整備が強く望まれ る。図7開発したデータベースの基本構成溶接グループの活動をふりかえって平岡和雄、塚本進、村松由樹、中村照美、目黒奨、本田博史、荒金吾郎、伊藤礼輔、川口勲、山本純司、銭谷哲、早川直哉、 近藤雅之、清水正嗣、杉野友洋、Frantisek GUNIC、寺嶋久榮、柳田治美、松田鋼、岩橋裕樹、松岡範幸、方波見正己、菅野勉、 浅井義一、竹内俊博、馬場洋子、寺島ナホミ1.溶接クループのミッション次世代鉄鋼材料の特性を活かして構造体にするた め、各要素ニーズに適合する最適な溶接特性を確保 するために、選択(Best Selection)と組み合わせ (Best Mix)を可能とする溶接技術シーズの探索研究 を行う。2.研究トピックス2.1 高強度鋼を活かす溶接プロセスの開発高品質な溶接継手を形成するための溶接プロセス 制御手法について、溶接プロセス数値シミュレーシ ョンを活用し、新制御技術を提案してきた。また、 アーク溶接やレーザ溶接で提案した制御技術を組み 合わせて無欠陥・スパッタレスを目指す先進レー ザ・アークハイブリッド溶接技術へも展開してき た。2.1.1 高品質継手のためのアーク溶接技術(中村照美、平岡和雄)(1)小入熱化厚板溶接継手への挑戦超狭開先アーク溶接での狙いは、アーク熱源をレ ーザ溶接のように板厚方向へ線状熱源化し、かつ小 入熱化することである。従来の大入熱指向に対して、 新たな溶接視点を展開するためである。図1 厚板における溶接入熱と開先面積の関係このような視点から数Hzの低周波パルス電流波形 により、アーク発生位置を板厚方向に周期的に揺動 して、アーク熱を分散させ、熱密度を低減する溶接 方法を提案した。この制御方法によって、従来は施 工が不可能とされていた継手開先幅5 mm以下での 超狭開先溶接を可能にした。板厚25mmでの溶接における入熱量と開先面積の 関係を図1にまとめた。ここで、溶接する両部材間 に設ける溝を開先、その断面積を開先面積と定義す る。厚板溶接においては二通りの考え方により溶接 条件が選定される。一つは開先を埋め尽くすために溶接ワイヤの溶融 量の確保を行うものである(溶着量指向型)。この 時、開先面積に比例した入熱量が必要となる。もう一つは開先を埋めることよりも、溶込みを確 保する(深溶込み指向型)ものである。現状サブマ ージアーク溶接施工で25mm厚では、11000J/mm以 上の入熱が投与されており、これは開先面積によら ない。また、深溶込みが可能な小入熱溶接法として レーザ溶接がある。この入熱範囲は(A)にプロッ トされる。溶着指向型の従来狭開先溶接(図1(B))のさら なる超狭開先化により、図2の超狭開先溶接時の入 熱量はレーザ溶接に近いレベルまで低減できた(図 1(C))。ちなみに、厚さ25mmの接合面を融点まで 加熱する最小の入熱量は約500J/mmであり、これが 極限の最小入熱量である。アーク熱源のさらなる線 熱源化制御を推進すれば、極小入熱溶接プロセスの 可能性が見えてくる。図2厚板の超狭開先溶接結果(図1(C)点) (2パス溶接での総入熱量3300J/mm)(2)高品質で高効率な溶接継手への挑戦ステンレス鋼や低温用鋼では溶接部での割れや靭 性の低下を防ぐため、純Ar中でのTIG溶接が使われ ている。溶接施工能率を確保する観点からは、純Ar 中での消耗電極式溶接(MIG溶接)の適用が期待さ れているが、実現していない。純Ar中のMIG溶接では、溶接が不安定となり実用 的には2～5 %程度の活性ガスが混合されて使用さ れているのが現状で、高靱性や耐溶接割れに問題を 残している。純Ar中でのMIG溶接の不安定原因として、陰極点 挙動に注目されてきた。純Ar中でのアーク現象を高 速ビデオカメラで観察した結果を図3に示す。ワイ ヤの先端には長く伸びた溶融金属液柱が観察され、 これが不規則に回転している。アークも不安定に回 転をしており、電流や電圧も不安定となる。この結 果、図4に示すように蛇行した溶接ビードが生じ る。図3 純Ar中でのMIGアークと溶融金属液柱図4 純Ar中のMIG溶接で生じる不安定溶接ビード (通常ワイヤ使用)純Ar中のこのようなMIG溶接不安定は溶融金属液 柱の不安定挙動に起因し、溶融金属液柱を安定にす るためには、液柱部分の長さを抑えることが有効で あると判断した。そこで開発中のGMA溶接プロセス数値シミュレ ータによるワイヤ溶融挙動解析から、通常の同一組 成のワイヤとは異なり、ワイヤ径方向に沿って組成 が変化する分布を持つワイヤを提案した。その一例として、ワイヤの周辺部を溶融しにく く するために、ワイヤの周辺部を鋼(融点:1500度)、 中心部をインコネル(融点:1400度)となるように 径方向の組成成分を変えた1.2mm径のワイヤ(NIMS Hybrid Solid Wireと称す)を試作した。純Ar中で溶 接を行った結果、図5に示すように溶融金属液柱は 明らかに短くなり、その結果不規則な挙動が抑制で きた。安定化により図6に示すようにビード蛇行を 防ぐことができる。この時の溶込みは左右対称の溶 込み形状となり、溶融金属柱の安定化に対し、本ワ イヤが有効であることがわかる。従来、TIG溶接で高品質継手を得ていたが、本ワイヤを用いれば高能率MIG溶接で置換できる目処が 立った。図5 同軸ワイヤを使用した純Ar中でのMIGアークと溶 融金属液柱図6 同軸ワイヤを使用した純Ar中でのMIG溶接ビード2.1.2 厚板継手のための高精度レーザ溶接技 術(塚本 進、川口 勲、荒金吾郎、本田博史、杉野友洋)(1)気泡発生メカニズムの解明から欠陥発生抑制制 御への挑戦高出力レーザは、厚板を高精度で高能率に溶接で きる熱源として、産業界で本格的な実用化が期待さ れている。しかし、板厚の増加に伴って種々の溶接 欠陥が発生しやすくなり、これが実用化の障害とな ってきた。レーザ溶接ではキーホール挙動が溶接品質に大き く影響する。キーホールとは図7に示すようなレー ザ照射部 にできる 細長い穴 を示す。図7気泡の発生機構X線透過装置によりレーザ溶接中のキーホールを 観察すると、その深さは、レーザ出力が一定(CW) にもかかわらず、ランダムで激しく変動している。 そして、キーホール長さが減少するときに、欠陥発 生の原因となる気泡がキーホール先端付近から発生 し、キーホール挙動と気泡の発生の関連性を示唆し ている。キーホール先端付近のX線透過観察結果を 図8に示す。(a)においてキーホール長さが最大値 を示した後、(b)に示すようなくびれが生じ、その くびれからキーホールが分断され、(c)に示すよう に気泡が発生する。図8 気泡の発生形態元来、キーホールは、図7に示すように、細長い 不安定な形状をしており、くびれと膨らみが生じて いる。くびれた部分には高エネルギー密度のレーザ が照射され、溶融金属に大きな反跳力が生じて押し 戻されることにより、キーホールが維持される。し かし赤丸で囲んだキーホール先端部に供給されるエ ネルギー密度が、キーホールを維持できる臨界値以 下に減少した場合、キーホールがくびれた部分より 分断されて気泡として残留し、欠陥発生の原因とな ると考えられる。CW溶接においては、このような キーホールのランダムな振動により気泡が発生して しまうが、溶融池の固有振動と一致する出力変動制 御するとキーホールを安定化でき、ポロシティ発生 を抑制できる。この効果は、出力波形を最適化する ことで、図9 (b)のようにさらに効果的となり、 ほとんど欠陥のない溶込み溶接が可能となった。図9欠陥抑制の効果(2)無欠陥厚板貫通レーザ溶接への挑戦図10には、貫通溶接で見られる代表的な欠陥を示 す。(a)は溶込み底部で見られるポロシティであり 、 裏面のシールドを行わずに溶接した時に発生しやす い。貫通溶接では、材料を貫通したレーザにより、 キーホール直下で空気中の分子が電離したプラズマ が形成される。プラズマからは、溶融鉄に溶解しや すい原子状窒素が大量に供給されるため、裏面の溶 融池では窒素が過飽和に固溶し、温度の低下と共に これが気泡として放出される。図11 (a)は、溶接 時に試験片側面からX線透過像を撮影した結果であ る。キーホール後方の溶融池底部から気泡が発生し、 これが残留することによりポロシティが形成される 様子が分かる。図10貫通溶接で見られる溶接欠陥このようなポロシティは、裏面をArやHeでシー ルドする事により防止できる。しかし、裏面に流し たシールドガスはキーホール内部に侵入し、図11 (b)に示すように、キーホールに大きな乱れを形成 する。その結果、図10 (b)に見られるように、乱 れが生じた位置で局部的な膨らみを持つ溶込み形状 となる。膨らみが生じた位置では、最終凝固相でひ ずみが集中しやすく、多くの場合凝固割れが発生す る。図11レーザ溶接時のin-situX線透過像観察凝固割れ及びポロシティの発生を同時に防止する には、材料中に窒素と親和力の強い元素を少量添加 し、裏面のシールドを行わずに溶接することが効果 的である。図11(c)は、Alを0.8%添加した鋼材を、 裏面シールド無しで溶接したときのX線透過像を示 す。(b)で見られた気泡の発生が完全に抑制される と共に、裏面からシールドガスの巻き込みがないた め安定したキーホールが形成され、凝固割れの発生 が防止できる。このような欠陥の防止効果は、通常 の鋼材でも、裏面にあらかじめAlをコーティングし ておくことにより達成することができ、厚板の高品 質な貫通溶接継手を得る上で非常に有効である。現 在当センターで開発中の高強度耐食鋼は、耐食性を 付与する目的でAlとSiが含有されており、溶接欠陥 の防止に適した材料である。2. 2 溶接構造用鋼としての素材開発1μm未満のフェライト粒とほぼ均一に分散する 直径0.14～0.16μmの球状セメンタイトの2相組織を 持つ軟鋼成分での800MPa微細粒高強度材の溶接性 についてHAZ組織および機械的特性について解析を 実施し、問題点の抽出とその解決手法について検討 した。2. 2.1Si-Mn系超微細粒高強度鋼HAZの解析 (伊藤礼輔、柳田治美、塚本進、平岡和雄)Si-Mn系超微細粒(UFG)鋼を通常の溶接条件で 実施すると、フェライト粒径の粗粒化により著しい 軟化を生じるが、超狭開先GMA溶接や厚板大出力 レーザ溶接での小入熱溶接法において、軟化を抑制 することが可能であることを明示し、さらに軟化抑 制には高炭素化による第2相の組織割合増大化が有 効であることも示した。またHAZ軟化域における切 欠き靱性については再現HAZ試験から図12のように 評価できた。フェライト粒径とvTrsの関係を示した もので、vTrs値はほぼフェライト粒径で関連づけら れ、均一で微細に分散するセメンタイトまたはM-A の影響はほとんど無いと判断できる。また、粒径 0.9μm (母材)～8μmまでのvE-40は、200J以上を確 保しており、母材の超微細粒鋼の高靱特性を引き継 いでいることがわかった。図12シャルピー衝撃試験における粒径とvTrsの関係一方、小入熱溶接時においても、鋼板の低炭素当 量化によって市販780MPa鋼よりもボンド硬化を抑 制できることを示し、ボンド硬化抑制には低炭素化 が必須であることを示した。さらにボンド靱性の高 靱化にも低炭素化が必須という結果となる(図13)。以上のように、HAZ軟化抑制とボンド切り欠き靱 性向上において、炭素量(炭素当量)にトレードオ フ関係が存在し、両特性改善には新たなブレークス ルーが必要である。図13 HAZボンド切り欠き靱性に及ぼす炭素量の影響2. 2. 2 Al-Si-Mn系超微細粒高強度鋼の開発 (早川直哉、平岡和雄、邱海、西村俊弥) 耐食性と溶接性の視点から溶接容易でリサイクル 性に優れるNiフリーでのAl添加微細粒高強度耐候性 鋼の開発を課題として検討した。Alは、脆化元素であり、母材靱性確保に問題が生 じる。この解決のために結晶粒微細化技術を適用し た。Alを0.8%、Siを0.8%複合添加する場合を基準 材として検討し、18mm角の棒鋼および16mm厚 100mm幅の鋼板を試作した。図14は、フェライト粒 径1μmまで細粒化した場合(C : 0.1～0.17wt%)の 棒鋼のシャルピー衝撃試験結果である。軟鋼成分系 微細粒鋼と大差ない優れた特性を示すことがわか る。図14 Si-Al系超微細粒鋼のシャルピー靱性特性微細粒耐候性鋼の溶接性図15は板厚12mmの微細粒耐候性鋼を入熱14kJ/cm で超狭開先GMAで片面1パス溶接した場合の溶接 金属からHAZの硬さ分布である。高炭素含有0.17C- Si-Al鋼において、HAZ軟化は軟鋼成分の0.15C-Si-Mn 系微細粒鋼より改善される傾向にあること、またボ ンド硬化もほぼ軟鋼並みに抑制されていることがわ かる。次に、ボンド近傍HAZでは、微細化技術で克服し た脆化元素Si、Alの影響が顕著に現れることが危惧 される。図16は、Si-Mn系微細粒鋼とAl-Si-Mn系微細 粒鋼および参考としてHT780鋼における加熱温度 1350℃の再現ボンド部での切欠き靱性を示してい る。Si-Mn系微細粒鋼Sl (0.1C-1.5Mn-0.3Si)では、 HT780レベルの高靱性を示すのに対し、高炭素のS2 (0.15C-1.5Mn-0.3Si : SM490相当)では、著しく靱性図15 HAZボンドからの硬さ分布図16各種成分系鋼板溶接HAZボンド部の切り欠き靱 性特性図17 S2、G3およびG4鋼溶接ボンド部のミクロ組織が劣化している。一方、Si-Al系微細粒鋼G2 (0.17C- 1.5Mn-0.6Si-0.6Al)およびG4 (0.17C-1.5Mn-0.8Si-0.8 Al)の高炭素材でのボンド切り欠き靱性が低炭素材 Si-Al系微細粒鋼G1(0.1C-1.5Mn -0.6Si-0.6Al)および G3 (0.1C-1.5Mn-0.8Si-0.8Al)のそれより顕著に改善 される特徴的な結果を示すことがわかった。図17に S2、G3およびG4鋼の再現ボンドのミクロ組織を示 す。図17 (a)の通常SM490相当の旧オーステナイト 粒サイズに比べてSi、Al添加鋼(b)、(c)の旧オー ステナイト粒は細粒化している。 また(b)の0.1% Cではオーステナイト粒界でフェライトが析出・成 長するのに対し、(c)の0.17%Cではベーナイト、 マルテンサイトが主となっている。これらはAe3の 温度の差異によってもたらされた結果と考察してい る。以上のように、高Si、Al含有鋼は、適切にC (お よびMn)を増量添加する(炭素当量を増大)条件 で、HAZ軟化抑制、ボンド硬化抑制、ボンド切欠き 靱性向上が同時に果たせる可能性を示した。2. 2. 3 HAZ割れ改善耐熱鋼の開発(近藤雅之、清水正嗣、塚本進、殷福星、田淵正明、 阿部冨士雄)発電効率の高い650℃級の超々臨界圧(USC)火 力発電プラントを実現するには、650℃でのクリー プ強度が高い耐熱鋼の開発とともに溶接継手も高い クリープ強度が必要である。しかし、従来の実用耐 熱鋼の溶接継手では、溶接熱影響部(HAZ)にクリ ープボイドが生成し、ボイドの連結により亀裂が形 成し、脆性的にしかも早期に破断する、いわゆる Type-Ⅳ破壊が起こりやすく、その克服が急務とな っている。Type-Ⅳ破壊のメカニズム「Type-Ⅳ破壊は、クリ ープ強度の低いHAZ細粒域で生じ、この細粒域がク リープ強度の高い溶接金属や母材などから拘束を受 けることに密接な関係がある」に基づいて、ボイド 生成抑制や粒界強化に効果があると考えられるボロ ンを効果的に添加した開発耐熱鋼を用いて、Type- Ⅳ破壊の抑制による溶接継手の長寿命化を目的とし た。ボロンを130ppm添加した9Cr-3W-3Co-NbV鋼の溶 接継手をガスタングステンアーク溶接にて作製して クリープ試験に供した。開発したボロン鋼は、BN の形成を抑制するため、窒素の添加量を極力低減している。このため、100ppm以上のボロ ンを添加しても良好な溶接継手を作製 することができた。図18に示すように、 実用鋼では最も優れたクリープ特性を 示す9Cr鋼のP92の溶接継手(P92 Weld) はType-Ⅳ破壊のため母材(P92 Base) より低応力長時間側で寿命の低下が著 しいが、130ppmボロン鋼の溶接継手 (130ppmB鋼Weld)は、Type-Ⅳ破壊が生じずに、母材(130ppmB鋼Base)と同等のクリー プ破断寿命を示すという画期的な成果が得られた。 これによって溶接構造体としては、従来鋼に比べて 強度2倍寿命2倍のファクター 4が達成できる見通 しが得られた。図18130ppmボロン鋼溶接継手のクリープ特性図19130ppmボロン鋼とP92銅の溶接継手のEBSP解 析(結晶方位解析)結果ボロン鋼の溶接継手のHAZの組織観察をEBSP解 析(結晶方位解析)にて行った。図19に示すように、 130ppmボロン鋼は、P92が細粒HAZを示す溶接界面 から1.5mmの位置に、いわゆる細粒HAZは存在して いない。この位置には、母材と同程度の結晶粒から なる組織が存在し、各々の結晶粒内にはマルテンサ イト的な組織が存在することがわかった。ボロンを 添加した開発鋼の溶接継手においてType-Ⅳ破壊が 抑制されている一因として、細粒HAZ組織が形成さ れないことが考えられる。ボロン添加によって細粒HAZの形成が抑制された 原因を解明することは、耐熱鋼の溶接継手のさらな る長寿命化の指針となると考えられ、今後も引き続 きブレークスルーを狙った研究を展開していく。2 . 3高強度鋼溶接のための溶接低温割れの改善 溶接材料の開発(銭谷 哲、早川直哉、山本純司、Frantisek GUNIC、 寺嶋久榮、平岡和雄) 高強度鋼のアーク溶接では溶接時に吸収される水 素により溶接金属に割れが生じることが大きな問題 である。継手疲労強度の向上を図るために開発した「低変 態温度溶接材料」が低温割れ抑制に有効であること をy形溶接割れ試験で既に実証している。Ms点を 100℃に低下させると、さらに耐割れ性が向上する (図20)ことも明らかにした。図20溶接割れ試験(y-slit)結果低温割れは溶接直後に水素が応力集中位置に集積 して発生する。Ms点を200℃から100℃にすると、 室温で未変態オーステナイトが残留する。このこと によってマルテンサイト変態による膨張量が減少 (図20)するので耐割れ性の向上は単に変態膨張に よる引張応力の低減効果とは考えられない。そこで、 溶接金属に残留する未変態オーステナイトの存在に 着目した。フェライトやマルテンサイトと異なりオ ーステナイト中に水素は固溶し、拡散速度も遅い特 徴があるので、溶接直後の水素の応力集中位置への 集積挙動にオーステナイトが大きな影響を与えるも のと考えられる。図21に溶接金属中の水素を昇温により放出させた ときの水素量と加熱温度との関係を示す。試料はオ ーステナイトを10%内包する溶接金属(残留γ材) とその溶接金属をサブゼロ処理により強制的にオー ステナイトからマルテンサイトに変態させた溶接金 属(マルテンサイト材)であり、化学組成や溶接条 件、試験片サイズは同じである。マルテンサイト材 に含まれる水素を溶接直後に測定した場合では 200℃以下で全水素量の約90%の水素が放出されるのに対し、残留γ材では200℃以下で放出される水 素量は約50%に過ぎない。一方、溶接後48時間試験 片を放置した後に溶接金属に残留する水素を測定し た場合は低温側200℃以下での水素放出量はγ材も マルテンサイト材もほぼ同等であり、残留γ材は、 一般に低温割れが発生するといわれる溶接後から48 時間以内での拡散性水素量の放出が抑制されている ことが示唆される。すなわち、ある程度の変態膨張 による引張残留応力低減効果と残留オーステナイト による溶接後の水素拡散の抑制効果によりMs点図21溶接金属の水素放出挙動100 ℃の溶接金属は高い耐割れ性を示したと考えら れる。マルテンサイト系溶接金属は高強度は得られる が、靱性や延性が低下する。そこで現在2.1.1 項で述べた純ArMIG溶接技術を活用することで、溶 接金属の切り欠き靱性100J、伸び15%の高品質溶接 金属が形成し得ることを確認しつつある。2. 4溶接継手評価技術の開発2. 4.1 溶接中のひずみ分布計測技術の開発(村松由樹、目黒奨)溶接継手の冷却途上における相変態は継手の残留 応力に大きな影響を及ぼすが、これをその場測定す ることは従来極めて困難であった。また、溶接部は 場所によって熱サイクルも拘束の程度も異なり、継 手の残留応力分布の数値計算結果の実証や低変態温 度溶接材料の効果の確認のためには溶接部とその周 辺の変位分布の傾向を知る必要がある。そこで、レ ーザの干渉を利用した非接触測定法ESPI (Electronic Speckle Pattern Interferometry)システムを用いて溶 接途上の変位分布を測定し、数値計算結果と比較し た。幅60mm、長さ120mm、板厚4mmの試験片で、 ESPIの測定範囲はその中央部の40x40mmとした。試 験片表面の中央部をGTA (gas tungsten arc)で長手 方向に線状加熱し、同時に裏面の変位分布を測定し た。加熱線長さは60mm、加熱時間は30秒である。図22では、加熱線に垂直な方向の変位のみを示した。 9 %Ni鋼の加熱途上と冷却途上における変位分布の ESPI測定結果と数値計算結果を示す。図中の赤矢印 は加熱線の位置と方向を、赤い領域は右、青い領域図22 9 %Ni鋼の加熱途上と冷却途上における変位分 布のESPI測定結果と数値計算結果は左に向かう変位を示す。加熱途上では熱源の通過 に伴う収縮が見られ、冷却途上では試験片全体が一 様に収縮している。変位量は熱源周辺を除いておお むねオーダー的に一致している。図23は加熱終了直前から一様な収縮に至る間の変 位分布の時間変化で、図中の黒矢印で示す部分が相 変態によって膨張している領域である。ESPI測定と 数値計算の結果はおおむね良い一致を示すことが明 らかになった。この相変態領域は早い時期では図中 の下部に見られ、時間の経過に伴い上方に現れる。図23 9 %Ni鋼の変位分布の時間変化これは、熱源が図中の下部から上部に移動すること から、冷却の開始時期は下部ほど早くなり、試験片 内で変態開始温度に到達する時期に差が生じるため である。これらの結果から、残留応力や変形を含めた溶接 継手の信頼性に関するデータの測定にESPIシステム を適用することができる可能性が示された。2. 4. 2レーザ溶接継手の靱性評価法(塚本進、松田鋼、萩原行人)超狭開先アーク溶接や特にレーザ溶接継手の標準シャルピー衝撃試験(以下STD-Cvと記す)におい ては、特に、遷移領域より高温側で、硬くて狭い溶 接金属から母材側に破断経路がそれやすくなる(図 24) 。 この現象はFPD (Fracture Path Deviation)と呼 ばれており、FPDが起こると、見かけ上吸収エネル ギーが大きくなり、正確な靱性評価ができなくなる。 これを回避するには、図25に示すサイドノッチシャ ルピー試験(以下SN-Cvと記す)を行うことが有効 である。しかし、STD-Cv試験と比べて、破面遷移 温度が高温側にシフトし、吸収エネルギーの値が極図24 FPD(Fracture Path Deviation)図25 サイドノッチシャ ルピー試験片端に低くなる問題がある。溶接グループでは、衝撃 試験片の破面形態を解析することにより、SN-Cv試 験結果からSTD-Cvの吸収エネルギーを推定する手 法について検討を行っている。強度、靱性レベルが異なる5種類の母材及び超微 細粒鋼レーザ溶接継手を用いて、STD-Cv試験並び にSN-Cv試験を行い、破面形態の違いを調べた。図 26 にSTD-Cv試 験で見られる典 型的な破面を示 す。破面は、(1) ノッチ底及び試 験片底部で見ら れるフラットな 延性破面(Df)、(2) Dfの底部から発生する脆性破面(B)、(3)両サ イドに形成されるシアリップと呼ばれる延性破面 (Ds)の3つに分類できる。ここで、それぞれの破 面を形成する単位面積あたりのエネルギーEDf、EB、 EDsが存在すると仮定し、得られたすべての試験片 の吸収エネルギーから、各材料のEDf、EB、EDsを重 回帰分析により求めた。その結果、各材料の単位破 面形成エネルギーが、試験法並びに試験温度に依存 しないで、決定できることがわかった。また、どの 材料においても、各単位破面形成エネルギーの間に は、EDs≒2.3EDf、EB≒0.1EDfなる関係が認められた。 両試験法で吸収エネルギーの値が異なるのは、各破 面の面積率が異なるためである。SN-Cv試験におい ては、単位破面エネルギーの大きいDs破面が消滅し、 エネルギーの小さいB破面が増加することから、吸 収エネルギーが小さくなる。上記破面解析結果を基に、SN-Cv試験の結果から STD-Cvの吸収エネルギーを予測する手法について 検討した。その結果、SN-Cv試験で求めた破面遷移 温度、上部棚エネルギー並びに材料の引張強度と吸図26破面の分類収エネルギーのデータからSTD-Cvの吸収エネルギ ーを精度良く求めることができた。図27は結果の一図27標準シャルピー吸収エネルギーの予測例を示しており、赤線で示した予測値が、●で示し た実験結果と良く一致していることがわかる。他の 材料においても同様な一致が確認され、提案した手 法の有効性が示された。3.溶接グループ5年のまとめ小入熱用高強度溶接鋼板としてボンド切欠き靱性 保証・軟化抑制型Al含有設計を提案・実証し、溶接 HAZにおける新たなナノ ・ミクロ組織制御分野への 展開が期待される。また、純Ar雰囲気中でのMIG溶接技術は、従来の オキサイドメタラジーとは異なる酸化介在物レスの クリーンウェルドメタラジーの開拓が期待され、 1000MPa超溶接構造体化へのマルテンサイト系高強 度高靱性溶接金属の可能性が見えてきた。今後、高品質・高能率溶接技術として純ArMIG溶 接や先進アーク・レーザハイブリッド溶接における 新分野クリーンウェルドテクノロジーの開拓を目指 していく。8エコマテリアル研究センターエコマテリアル研究センターの5年原田幸明1.エコマテリアル研究センターの基本コンセプトエコマテリアル研究センターは、21世紀型の環境 を考慮し環境に調和した材料技術への転換を図る研 究の機構および国内外の中軸として、持続可能循環 型社会を支える物質・材料技術の確立と、物質・材 料の環境を配慮した適正な利用技術の構築に資する 基礎技術の開発、指針の鮮明化を目指して2002年4 月に設立された。このエコマテリアル研究センターが設立された 2002年はリオデジャネイロサミット10年目の節目と して、「リオ+10」の年と呼ばれた年であり、地球 環境問題が問題提起の段階から具体的な解決(ソリ ューション)に向けて踏み出す段階にさしかかった 時期であった。そのような中で、古来から人類の生 活と生産を支えてきた材料技術についても、この地 球環境問題に対して、その責任と役割を再認識し、 積極的に将来の社会像の基盤技術としてのあり方を 提示していくことが求められており、また、そのよ うな地球環境問題を意識した産業のグリーン化、製 品のグリーン化が今後の経済の中でも大きな流れと なっていくものと考えられ、わが国の物質・材料研 究の中核機関である物質・材料研究機構にこのよう なセンターが創設されたことの意義は大きく、ひき つづく諸大学などでの環境やサスティナビリティに  かかわるユニット設立のさきがけともなりえたと考 えられる。この研究センター名である「エコマテリアル」と は、1990年代の初頭に日本で提唱された地球環境を 配慮した材料技術に対する考え方である。そこでは、 図1のように、それまでの材料の性能を伸ばせば図1エコマテリアルの考え方よいとする方向(フロンティア性)に対して、環境 への配慮(環境調和性)、人への優しさ(アメニテ ィ性)、を考慮した3つの方向のバランスの取れた 総合的発展を目指す材料の発展方向として打ち出さ れたものであった。これは、単に「地球環境に迷惑 をかけない」というだけではなく、積極的に性能を 伸ばし貴重な資源を有用に役立てる、今で言う資源 生産性向上の考え方に基づいたものであり、当時の 金属材料技術研究所、無機材質研究所のメンバー等 が中心になって国内外の材料の研究者、開発者、利 用者とともに議論し育んできた表現である。この間、 有害物質を含まない材料、低い環境負荷で製造でき る材料、物質・エネルギー効率の高い材料、リサイ クル性に富む材料、環境浄化などの機能に富む材料、 環境調和型エネルギーシステムに必要な材料と、エ コマテリアルに求められる領域は広がり、着実に社 会に定着していこうとしている。さらにはこれらの 材料群がリサイクルをベースにした循環型社会や、 資源生産性の高い持続可能社会に向けて、実社会を 動かす技術として大きく展開することが期待されて おり、そのための技術、学術、情報面での頼りがい のあるコアの形成にセンターが大きな役割を果たす ことが求められているなかで当エコマテリアル研究 センターは設立された。2.センターの構成当初エコマテリアル研究センターは4つのグルー プでスタートした。環境循環材料グループでは、LCAやマテリアルフ ロー分析等の手法をもとに、持続可能な循環型社会 に適合する材料のライフサイクルデザイン指針及び 設計原理の鮮明化を図ること、と同時にその指針に 対応した、循環対応の材料創製・循環技術等の新た な材料プロセス技術を開発を行うことで、ライフサ イクルデザインを具現化する材料技術の創出を目指 した。LCAとは環境ライフサイクル分析で素材や製 品のライフサイクル(資源採取から製造、加工、輸 送、使用、廃棄、リサイクル)を通じた環境負荷を 定量化して表現する評価手法であり、循環材料グル ープではそのための素材に関する基礎データの算 定、収集、整備や、大局的なマテリアルフローと結 びついた評価手法の開発を進めた。同時にそのよう な評価から得られた指針を材料技術に生かすため に、リサイクルを前提にした材料創生技術の開発を 進め、特に、鉄スクラップ中の銅のようにリサイク ルで必然的に混入する不純物を材料の中に取り込ん で強化因子、対磨耗因子などとして積極的に利用し て高性能素材として再生させるプロセス技術の開発 に重点をおくことにした。エコデバイスグループでは、エコインテグレーシ ョン実装に関する研究として、有害物質フリー、低 環境負荷、解体・リサイクル性、高資源生産性を集 積した低コスト・高機能の次世代デバイス・インテ グレーション技術を対象に、インターコネクト・エ コデザインやミクロ解体性設計などの「エコインテ グレーション」実装・パッケージングの要素技術を 確立することを目指した。ICやそのパッケージング に用いられる素材は、ひとつひとつは小さくとも、 さまざまな製品の中に組み込まれ、現代の日本では 生活のあらゆる部分に入り込み、多くは消費者の手 によって混然と処分されているが、この中にははん だ中の鉛などのようにその高機能性のために環境へ の拡散を考慮せずに使われていたものも多いため、 エコデバイスグループでは、東大先端研の須賀氏を 併任ディレクターとして迎え、そのリーダーシップ のもと鉛フリー接合のような有害物質フリーの接合 技術だけでなく、次世代の高密度実装を高い資源生 産性のもとで実現できるような常温接合やナノ構造 接合、さらには解体性因子を事前にインプラントし たミクロ解体設計の研究をとりあげた。環境エネルギー材料グループでは、環境調和型エ ネルギーシステムの普及に向けて、システム用デバ イスとして水素分離膜用材料、熱電材料、固体電解 質(燃料電池用)などを対象として材料の選択・デ ザイン、合成プロセスの開発を行い、パフォーマン スの画期的な高度化と実用化へのブレークスルーを 目指した。環境にやさしいエネルギーシステムの実 現にはシステムの原理や設計とともに、それらを実 体化することのできる素材の存在が不可欠である。 取り分けて熱電材料や固体電解質燃料電池のように 熱変換機能そのものやイオン伝達機能などを素材に 依存するエネルギーシステムにおいては素材開発や 新たな機能性物質の登場がシステム設計全体に大き な影響を及ぼす。比較的現実的となった水素につい ても同様で貯蔵、輸送、精製など実用化に向けて解 決すべき課題が山積している。環境エネルギー材料 グループでは、これらの材料課題にも積極的に取り 組みますが、単に当面の技術課題の解決や効率化だ けでなく、10年先20年先のエネルギーシステムを意 識し、そのために物質の持っているエネルギー変換 やエネルギー輸送などの機能を大きく引き出してい けるような物質の探索や設計を重視して、長期的ス パンにたった新たなエネルギー機能性物質の創製の 基盤となることを目指して研究をすすめた。環境浄化材料グループでは、微量認識、知的応答 など高機能な次世代環境浄化機能材料の開発をめざ し、光触媒反応やホストゲスト反応等を環境浄化や 環境応答に適用する技術を開発・探索し、新たな環 境機能素子を実現していく基盤を確立する研究を対 象とした。特に従来の環境浄化はシステムの末端か らの高濃度の有害物質を処理するエンドオブパイプ 型の処理が主流であったが、生活の隅々まで入り込 んださまざまな人工物質の極微量な転化でも有害物 質として作用するケースがみられており、これから の有害物質除去では、微量の物質を発生するその場 の希薄な状態でかつ高いエネルギー使用などの必要 ない容易な除去方式を開発していく必要があるとし て、そのために高化学反応活性・選択性新規ナノ複 合構造材料など物質自らがもっている特性を積極的 に活用した有害物質の除去・分解反応の機能性材 料、分子選択性センサーなどとしての応用も目指し た探索型研究を推進することとした。また、触媒反 応はすぐれた環境浄化機能にもつながるが、それだ けでなく、触媒ナノ構造の解析と設計を通じて新規 高効率可視光応答型光触媒材料の研究を積極的に展 開することを掲げた。さらに、2004年度からは、環境負荷低減の社会的 要請を背景に構造用途への気運が高まりを背景に、 マグネシウム等軽量金属の構造材料を研究する軽量 環境材料グループを立ち上げた。軽量環境材料グル ープでは、環境低負荷に貢献する軽量構造材料の開 発研究として (ⅰ) 構造物の軽量化により、駆動用 エネルギーの節約とCO2やNOx等の排出ガスの低減 を実現すること、および、(ⅱ)リサイクルに要する エネルギーの低い材料を主として開発することによ り、省資源に貢献すること、の2本の柱を基礎とし て、地球環境にやさしい構造材料開発を対象とした 研究をめざした。特に、軽量構造材料の高強度化の みならず、延性ならびに靱性を同時に付与すること により、持続性に優れた安全な軽量素材開発を行う ことも研究開発の必須項目とした。なお、機構内連 携として、材料研究所・ナノ構造解析Gとの共同研 究を行い、原子レベルでの材料構造解析を通じて、 従来にない高性能材料の開発に取り組む体制とし た。当初の目標としては構造用マグネシウム合金素 材の開発に取り組み、マグネシウムは密度にして鉄 鋼材料の約1/4と構造用金属材料中で最軽量である ことから、環境負荷低減の社会的要請に応えうる構 造用材料の新技術の創生を目指した研究をスタート させた。また、2005年度には、環境循環材料の「循環」を 単なる人間経済圏のなかのリサイクルにとどめるの ではなく、自然との大きな循環を考え、それに適合 しうる物資の創生という観点に拡張してより広範な 物質と循環を対象とするために、従来の環境浄化材 料のメンバーの中でゼオライト等天然物質構造と機 能の利用と高度化による浄化材料研究を行っていた サブグループを環境循環材料グループに異動し、よ り広範な視点からの研究が進められるように組織の 改変を行った。同時に、環境浄化材料グループは、 光触媒のサブグループをひとり立ちさせ、より集中 的な成果につながるような組織構成とし、現在に至 っている。3.タワー&プラットフォーム&スターズ―エコマテリアル研究センターの3つの基本―エコマテリアル研究センターは、21世紀型の環境 を考慮し環境に調和した材料技術への転換の基礎の 形成を目指すとともに、そのような持続可能社会を 支える物質・材料技術の指針化およびその技術の環 境を考慮した適正な利用技術の指針化を目指してお り、新たな技術の探索や研究開発のみならず、その 方向を指し示していくという課題をもって活動して いった。これらの活動は、単に物質・材料研究機構 の中における研究の集中点としてのセンターを越え て、わが国の環境材料開発のセンター、さらには世 界のセンターを目指すものであった。そのため、エ コマテリアル研究センターの活動の基本は、ハード 研究におけるシーズの創出にとどまることなく、 LCAなどに関わるソフト面での研究や、国内外での ネットワークつくりなど多様な側面をもっている。エコマテリアル研究センターでは、これらをタワ ー&プラットフォーム&スターズの3つの基本活動 としてとらえ推進してきた。タワーとは環境材料技 術研究の中核機関としてのリーダーシップの発揮を 意味し、環境問題にかかわる材料開発の今後の方向 や、その評価のための指針となりうる情報や定量的 議論のためのパラメ ータを灯台のように発信してい くことである。プラットフォームは、共通の場の設 定である。エコマテリアル研究すなわち環境材料研 究は典型的な目的指向型の研究であり、特有のディ シプリンをもったり既存のディシプリンに拘束され るものではない。そのため、より幅の広い研究者や その成果の利用者のつながりと相互交流が必要であ り、それが、新たな研究課題をも鮮明にできる。エ コマテリアル研究センターでは、国内、国外に対し てそのような場の形成を積極的に行った。スターズ は将に輝く星たちであり、ひとりひとりの研究者の 個性の発揮である。当研究センターだけでなくさま ざまなところで環境問題に貢献する材料研究が行わ れていることがプラットフォーム活動を通じて認識 されたが、エコマテリアル研究センターでは、さら に抜本的な問題解決へとつながる材料技術開発をす すめるために、それらの活動などを通じて個人に呼 び起こされた問題意識を重視し、グループのサブ組 織レベルでの共通の問題意識を中心に萌芽研究単位 を構成し、個々のアプローチの展開を図り新たな研 究の萌芽を生み出すことに重きをおいた。以下にそ の内容を述べる。4.環境材料技術研究の中核機関としてのリーダー シップの発揮―タワー資源生産性委員会学術会議物質工学創製委員会の下に置かれた小委 員会で、将来の地球環境も考慮した資源生産性の向 上に対する材料技術の役割を鮮明にするための委員 会、正式名称は「資源生産性とその向上の方向性に 関する委員会」。御園生東大名誉教授を委員長に金 属学会、高分子学会など材料系の8学会学会とその 他の学識経験者より構成され、当エコマテリアル研 究センター長が運営面でのとりまとめを行った。 2003年7月に「資源生産性向上のための材料戦略」 として報告書がまとめられ、「ソリューション指向 の材料システムの構築」「産業間フュージョンによ る新しい生産体制」「国際マテリアルリース社会の 構築」の3つの課題が明らかにされた。ナノテクノロジーアセス検討会ナノテクノロジーは広範な科学技術領域・産業・ 社会に大きな革新をもたらすと期待されているが、 未知・未経験の領域であるため社会的影響を配慮し た技術アセスメントが求められ、国際的にも技術導 入の前提条件になりつつある。わが国でも早急にナ ノテクノ ロジーの社会的影響の科学的議論にもとづ いた技術アセスメントの基盤を構築する必要があ る。そこで、物質・材料研究機構エコマテリアル研 究センターでは、2005年3月からナノテクノロジー アセス検討会を設置し、ナノテクノロジーが健全に 社会の発展に貢献していくために必要な環境、健康、 倫理等の社会的影響を配慮したアセスメントを科学 的に進めるための必要要件を検討し、必要な手順の 明確化、情報基盤の確立、国際ネットワークの構築 などの課題を鮮明にする。これにより国際的な情報 ネットワークの下で、知識・知見を正確に伝え、リ スク管理や合意形成手法が融合してアセスメントを 進めるための科学的な情報基盤の構築に資すること とした。ナノテクノロジーアセス検討会は、ナノテ クノ ロジーの社会・環境に関する不確定のリスクに 関して、知(information) 、 技(technology)、法 (management)の観点から検討を進め、特に、知の 分野において、不確定のリスクの不確定の部分を小 さくしていくための科学的知見の収集および交流を 学術会議と連携して進める。また、ナノテクノロジ ーアセス検討会は、技、法の分野に関してもそのフ ィージビリティを検討している。行政関係諸委員会、学会等での活動エコマテリアル研究センターでは、また、研究の 成果やそこで得られた知識を生かし国民的貢献に付 し、かつ、それによりエコマテリアル研究として新 しい材料研究の課題の抽出に役立てることを推奨し てきた。また、学界においても委員会などで積極的 な役割を果たし、研究成果のみならず企画立案など 学会の進め方に関しても積極的な貢献を行なうこと を進めてきた。行政等にかかわる諸委員会としては、 「グリーン調達特定調達品目検討会(環境省)」、 「LCAデーベース運営委員会(経済産業省)」、「日本 学術会議情報学研連委員」、「科学技術政策研究所 客員調査員」、「化学物質リスク総合管理技術研究イ ニシャティブタスクフォースメンバー」などがあ る。学界においては、副会長、理事、幹事長などを 勤めているもの、日本LCA学会、日本MRS、日本材 料学会、日本エコデザイン推進機構、日本イオン交 換学会、日本エレクトロニクス実装学会、粉体粉末 冶金協会、日本鋳造工学会、未踏科学技術協会・エ コマテリアル研究会。評議員、戦略委員、分科会委 員長、運営委員などを務めているもの、日本金属学 会、日本鉄鋼協会、日本粘土学会、日本鉱物学会、 日本顕微鏡学会、熱電変換研究会。専門委員、編集 委員などに携わっているもの、電気学会、溶接学会、 日本セラミクス協会、耐火物技術協会、無機マテリ アル学会、日本マグネシウム協会、JRCM、電子情 報技術産業協会などである。材料環境情報の発信素材や材料は、あらゆる製品をかたちづくってい る存在であり、かつ、資源として地球環境圏から取 り出され、廃棄物として地球環境圏に戻される、地 球環境に密接に係わった存在でもあり、それゆえ素 材の製造者だけでなく、製品の製造者、使用者、さ らには処理に係わる人達すべてが、使用されている 素材に対して、その素材に係わる環境負荷やリサイ クルのしやすさ・状況等を的確に知り資源生産性の 向上や持続可能な社会に向けた選択に生かして行く ことが、経済活動や生活のあらゆる局面で地球環境 を考慮した改変が進んでくるようになってきている 現在求められている。しかし、そのために必要な材 料の環境負荷や循環に対する情報はまだあまり整備 されておらず、中には一部の側面だけを肥大化させ た情報などが散見され判断に困る場合も出てきてい る。このような状況に対し、エコマテリアル研究セ ンターでは、信頼性のおける材料環境情報の整備が 物質・材料研究の中核機関として欠くことのできな い努めであると判断し、NIMS-EMC材料環境データ をシリーズとして発行する事にした。これはデータ 集やデータベースとは若干赴きは異なるが、専門家 による綿密な聞き込み調査などをもとに統計資料な どでは得られない材料の製造や循環に係わるデータ や、LCA的な考察に不可欠の材料データなどの提供 を目指した。これまでに出版済もしくは印刷中の環境データ は、「No.1金属元素の精錬・精製段階における環境 負荷算定に関する調査」、「No.2鉛マテリアルフロー 作製のための基礎調査」、「No.3我が国における自動 車用白金族触媒のリサイクル動向」、「No.4鉄スクラ ップの消費動向とその拡大技術シナリオのLCA的検 討」、「No.5我が国のアルミニウムマテリアルフロー  調査」、「No.6バイオマスの利活用に関する調査」、 「No.7中国の非鉄金属リサイクルの動向」、「No.8資 源の利用に関する環境影響特性値化係数」、「No.9各 種材料の関与物質総量の算定」である。これらは統 計等による調査のみならず、関与物質総量(図2) や資源枯渇指標(図3)など資源指標に必要なパラ図2各種金属の関与物質総量 メータの科学的算定も行い、LCAなど製品や材料の 環境管理のための基礎データとして提供している。図3 各種金属の資源枯渇指標5.環境課題の解決に結びつく機関連携の推進―プラットフォーム国内シンポジウム・展示会環境問題は気候変動に見られる地球温暖化から地 域の汚染問題の解決まで多様な課題が存在してお り、材料分野における解決のアプローチもそれによ って異なってくる。そのような中でこのような課題 の解決に結びつくような方向性をもって研究課題を 適切に設定し、さらにその研究を推し進めていくに は、多くの研究者や関係者の結集の場が必要である。 エコマテリアル研究センターはそのような見地か ら、物質・材料の研究者だけでなくその材料の利用 者などの広範な人々に呼びかけたシンポジウムを積 極的に行ってきた。まず2002年6月に研究センター 設立記念シンポジウムを開催し200名近い参加者を 得、さらに2003年2月には、「エコマテリアル:エ コインダストリーと自然系素材の出会い」と題する シンポジウムと展示会を行い、50数社の出展、200 名近くの参加を得、我が国でのエコマテリアル開発 の結集の場をつくった。また、2004年10月には、 「エコマテリアルとエコインテグレーション ～環 境機能デバイスの可能性～」として東大の武田ホー ルでシンポジウムを行い、これもまた実装関係の研 究者、技術者を中心に200名近くの参加を得た。さ らに、我が国最大級の環境総合展示会であるエコプ ロダクツ展にたいしても、エコマテリアル研究セン ターは未来の技術や生活スタイルを変える最新の研 究・開発の紹介及び情報交換の場として「エコマテ リアルが変える近未来の生活と環境」と題して、 2003年、2004年ととりくみ、他研究機関にもよびか けて環境に関するマテリアル関係の企画を行った。 なかでも機構全体の環境関係の材料開発の展示およ びパンフレットの作成・配布を行ない環境問題に関 する材料技術の貢献を製品製造メーカーや一般の市 民にも知る機会を与え好評を得た。大学等との連携国内の大学等との連携は、東京大学、東北大学、 名古屋大学、北海道大学との学独連携や、千葉工業 大学との連携大学院、東北大学との連携ラボ、、のほ かに、エコマテリアル研究センターのメンバーは東 大先端研、金沢工業大学、東京工業大学、さらには 産業技術総合研究所で客員教授や客員研究員、特認 教授の形で研究協力をすすめ、筑波大学では学位論 文審査専門委員を務めている。また名古屋大学、高 知工科大学、法政大学、千葉大学、埼玉大学で非常 勤講師を務めるとともに、海外技術研究協会や群馬 県立高崎女子高等学校でも非常勤の講師として活動 している。さらに、卒論生などを外来研究員として 恒常的に受け入れる体制となっている大学は、芝浦 工業大学、茨城大学、工学院大学、同志社大学、大 阪大学、京都大学、法政大学がある。民間との共同研究の推進民間等との共同研究や民間等からの委託研究も積 極的に展開した。取り上げられたテーマの代表的な ものを列挙すると、「環境適合設計支援ツールの開 発」、「高強度制振合金の開発に関する研究」、「凝固 組織制御による高機能アルミニウム合金の開発に関 する研究」、「高性能鋳鉄材料の高付加価値化研究」、 「ハイブリッド噴霧法による極微細アルミ粉末製 造」、「鉛フリーはんだの信頼性向上」、「特殊形状フ ラーレンの作製と応用に関する研究」、「フラーレン ナノウィスカーの燃料電池応用」、「遷移金属の水素 脆化に関する研究」、「合成プロセスによるMg-Si系 環境半導体の熱電的性能向上に関する研究」、「有害 化学物質除去触媒の探索・創製に関する研究」、「ホ ーンダライト・チタニア複合光触媒による有機・ハ ロゲン化合物の浄化に関する研究」、「水素急蔵合金 の熱交換特性改良の研究」、「可視光応答型光触媒」 などがある。また、「ミニチュア試験片による鉛フ リーはんだ材料の非線形力学特性」、「エコデバイス グループに対する助成」、「鉛フリーはんだ研究に対 する助成」、「フラーレンナノウィスカーの合成」、 「アルミニウム含有鋳鉄の特性評価」、「環境循環グ ループに対する助成」、「環境循環型材料のエコマテ リアル評価に関する研究」、「新規可視光応答型バナ ジウム複合酸化物光触媒の高活性化及びメカニズム 研究」などで助成金がよせられ民間からの期待が示 されている。さらに受託研究として「『鉱物資源使 用』カテゴリーの特性化係数作成委託」、「ハンダ微 細接合部の力学的信頼性評価方法の調査」、「難加工 性金属材料の低環境負荷製造技術」、「ナノ設計され た光触媒を用いる次世代有機炭素分析装置の開発」、 「省エネ・環境調和型半導体接続技術」を遂行した。標準化への貢献この中でも特に鉛フリーはんだに関する研究は、 フォローアップとしての鉛フリーはんだの国際標準 化と連携した取り組みとなっている。さらに、はん だ接合部を構造材として取り扱うことで高い信頼性 が要求される実装部の材料開発に必要な極めて微小 材料(マイクロマテリアル)の力学的信頼性を正確 に評価できる試験技術および解析技術として、微細 LSI実装部に繰り返しひずみを負荷できるマイクロ 疲労試験機の開発や、微細接合部に対応するマイク ロバルク試験片の作成方法などを開発し、より信頼 性に優れる実装材料の開発や疲労寿命予測方法とし てのマイクロ構造物特有の新しい力学特性評価方法 を規格化すべく基準認証研究としても活動をすすめ ている。図4 マイクロ疲労試験機で疲労試験したバンの損傷 状態図5 はんだ材の力学特性計測用マイクロバルク試験 片機関間国際連携の推進この間、機関間の研究協力の覚書を交わした機関 は、KITEC (Korea)、メルボルン大学(Australia)、 EMPA (Swiss)、忠南大学(Korea)、INCT (Poland)、 クイーンズランド大学(Australia)、南京大学 (China)、アルフレッド大学(U.S.A.)、St.Andrews大 学(UK)、高麗大学(Korea)、ハノーバー大学 (Germany)、チャールズ大学(Czech Republic)の12 機関におよび、また国際連携大学院としてカレル大 学(Czech)から大学院生を受け入れ、さらにワル シャワ工科大学(Poland)とも受け入れの計画がす すんでいる。また、エコマテリアル研究センターの メンバーが、チャールズ大学(チェコ)の客員教授、 オーストラリア5国立大学連携ナノ構造解析機構の インターナショナルフェロー、International Thesis Examiner (School of Engineering of Science, Swinburne University of Technology, Melbourne, Australia)、 International Thesis Examiner (School of Mechanical Engineering, University of Western Australia, Perth, Australia)を引き受けており、積極的な国際的研究ネットワークを形成してきた。国際ワークショップとエコマテリアルキャラバンこれらの、組織的連携とともに、2003年3月ナノ 環境材料国際シンポジウム、2003年10月エコマテリ アル国際ワークショップ、2004年2月NIMS国際コ ンファレンス「光触媒」など国際的なワークショッ プを積極的に組織し、世界中の環境材料に関わる科 学者、技術者の結集の場所を積極的に構築した。しかし一方で、このように重要な持続可能社会の ための材料研究に対して、エコマテリアル研究セン ターのような常設的な機関を作って総合的に研究し ている国は日本以外にはみあたらないのが現状なの であった。そこで、それぞれの国や地域の研究者が その地域で関心ある研究者や学生を集める場に協力 し、地域に根付いた取り組みの契機にしていくため に、エコマテリアル研究センターのメンバーが集団 的に参加して会議のトピックスやセッション作りに 貢献していく取り組みをすすめてきた。2003年7月 マドリッドのThermec2003におけるエコマテリアル のセッション、2004年10月オランダセラミック協会 と日本の無機マテリアル学会主催のInternational Symposium on Inorganic and Environmental Materials 2004 (オランダ)、2005年1月アジアナノテクフォ ーラム主催、NIMS協賛のInternational Symposium on Nanotechnology in Environmental Protection and Pollution, ISNEPP 2005 (タイ)、2005年 7 月の第七回 エコマテリアル国際会議(シンガポール)、さらに はNIMS と INCT共催の2nd Poland-Japan Workshop on Materials Science : Materials for Sustainability in 21st Century (ポーランド)などである。当センターで はこれをエコマテリアル・キャラバンと呼ぶことに した。これまでのエコマテリアル・キャラバンの足 跡と今後の予定を下図にしめしている。6.それぞれの専門領域での探索的研究の推進―スターズ個々の研究者の発想を生かした専門領域での探索 的研究の基本ベクトルは、第二世代のエコマテリア ルの探索である。環境に対する材料の取り組みはエ コマテリアル以前から進められていた。触媒や高効 率のエネルギーシステムのための機能材料がそれで ある。1990年代のエコマテリアルの提唱からライフ サイクルでの環境負荷を意識した従来材料の転換が 開発されてきており、それらは、「有害物質フリー」、 「高資源生産性」、「低環境負荷資源」、「低環境負荷 プロセス」、「環境浄化性」「高リサイクル性」など の視点から開発が進められている。これらを第一世 代のエコマテリアルと呼び、それ以前の環境に対す る機能材料は第ゼロ世代のエコマテリアルと呼ばれ る。現在社会で注目されている第一世代のエコマテ リアルは、これ以上環境負荷を増やさないために重 要な開発目標である。しかし、現在のアジア・アフ リカを初めとする世界の多くの人々はより急速な発 展を願っており、環境負荷を増加させること無くそ の要求を実現していくためには、エネルギーの供給、 資源の利用・循環、排出有害物質の処理に関する飛 躍的な技術の革新が求められている。エコマテリア ルもこれに応じて進化していくべきであり、クリー ンなエネルギーシステムの効率や浄化機能を飛躍的 に増大させる技術の開発に応えることのできる素材 を生み出していく、しかも、それらが資源や製造エ ネルギー、廃棄などの新たな問題を生み出さないよ うに、自らも低環境負荷の素材として製造されるこ とを目指していく必要がある。これが、これからの エコマテリアルの課題、第二世代のエコマテリアル である。もちろん、エコマテリアルはそれに留まることは なく、将来の来るべき持続可能な社会を目指して、 多数で多様な個々人の要求に対して無駄なく負荷無 く快適に応える最適化可能でコンパクトなシステム図6 エコマテリアル・キャラバンを作り上げるのに必要な画期的な素材やデバイスを 生み出していく必要がある。そしてさらには、これ らの素材がカーボン・ニュートラルなど自然の循環 の中に調和・融合できることが理想であり、これら が、第三、第四世代のエコマテリアルといえる。こ れらを簡単に表にまとめると以下のようになる。第ゼロ世代エコマテリアルエコマテリアルの提唱以前からあった環境材料: 浄 化材料、エネルギー用材料など第一世代エコマテリアル:ライフサイクルの環境負荷を意識した従来材料の転換第二世代エコマテリアル:環境制約を守りながら、浄化・エネルギーの高機能 化・革新を通じた環境問題への貢献第三世代エコマテリアル:持続可能なサービスシステムの実現を可能にする材料第四世代エコマテリアル:それらが自然の循環と調和・融合できる。エコマテリアル研究センターの研究開発課題は、 この第二世代エコマテリアルを目指すものである。 すなわち、水素、燃料電池などのクリーンなエネル ギーシステムや環境浄化に貢献する素材などの画期 的な性能向上を目指しながら、同時に、その性能向 上を資源、エネルギー、有害物質などの環境制約化 で達成していく技術の芽を作っていくことである。 以下に、代表的な内容を示す。a)水素純化膜の貴金属から回生金属への転換水素エネルギーに純化分離膜は欠かせない。現在 は貴金属のPdが用いられているが、廃触媒・燃焼灰 等からも得られ資源量が豊富なVを用いて既存のPd- Ag合金の性能を超えて価格が1/10以下のV-Ni合金を 開発した。水素の効率的な透過には膜厚を減ずる必 要があるが、bcc構造の本合金を熱処理と圧延方法 を最適化することにより20mmまでの薄板化に成功。 Pdは水素解離触媒性として僅か100nmの被覆で済み 約2倍の水素透過流量0.18mol/m-2s-1を達成(40mm、 300℃)し、耐久性にも優れている。図7 バナジウム系水素透過膜b)重金属を用いない高性能熱電材料の探索熱電素子は熱を電気に、また電気を熱(冷熱)に 変えることのできる素材である。これは廃熱からの エネルギーの回収だけでなく脱フロン冷蔵庫、さら には高密度デバイスの熱管理に期待が集まってい る。現在はBiTe系、PbTe系が主体であるが、以前 の金材技研時代からのFeSi系の実績を生かして、 MgSi系など重金属を用いない構成の熱電素子の探索図8様々な熱電材料の特性を進めている。またそのためにもBiTe、PbTe系の 特性と合成の関係を綿密に調べており、高精度の熱 特性評価技術を持っている。c)複雑な組成でなくシンプルな物質で最大の効果 を目指す電解質材料焼結性ナノサイズ粒子の形態を任意制御と最適組 成化で、焼結体中に原子レベルで存在する秩序構造 (ドメイン)のサイズと分布を制御し、導電率の向 上及び燃料電池の高出力化をすすめている。焼結性 球状ナノ粒子の合成と最適組成の検討により、ドメ インサイズの低減に成功。ドメインサイズ大きいと イオン伝導の活性化エネルギー74kJ/molだが、ドメ インサイズ小さいと60kJ/molになり電流が流れやす い。700度における電池最大出力も従来の0.1W/cm2 以下から0.3W/cm2へと向上。ナノ組織の設計により、 さらなる特性向上が期待される。図9 メイン構造制御高性能燃料電池用電解質d)多様な物質に秘められた可視光応答光触媒の可 能性の発掘(In、Ni) TaO4の世界初の可視光応答型水分解光 触媒の開発で知られている当センターの可視光応答 光触媒開発は、結晶物理学的な材料設計手法を用い て、フォトン、フォノン、キャリア、スピンの協調 構造を設計することに大きな特徴があり、これまで図10可視光光触媒の性能例と構造 注目されなかった物質からも光触媒の可能性を切り 開いている。今は探索対象をこれまで注目されてき た4d、5d元素の複数多面体チェーン構造からs軌道 元素まで拡張し、非局在性軌道構成と結晶場による 軌道分裂の利用と抑制および不純物準位の導入と制 御に基づいた物質設計であらたに(BaO)m ・ (In2O3)n の可視光応答光触媒の開発に成功した。この系はm、 nの組み合わせで多様な電子構造が可能となるため 今後の可能性も大きい。e)天然物質・ありふれた材料を生かした浄化素材 の開発ゼオライトなどの天然素材にみられる選択性ナノ 複合構造を制御してありふれた物質をもとにソフト な合成で高機能の吸着・浄化材を目指している。一 例として、合成が比較的容易で陰イオン吸着能を有 するベーマイトに着目し、合成温度制御等で結晶性、 比表面積をコントロールすることで、従来材(クロ ボク)の10倍の吸着能で安定性の高いリン吸着材を 開発した。これは河川・湖沼のリン吸着材として富 栄養化対策に期待できる。図11ポーラス材料による浄化機能f)エコ・インテグレーション技術の開発デバイス等の接合においても高信頼性と同時に、 特殊な物質を用いないこと、必要な条件下で解体で きること、がリサイクル等の視点から必要になって きている。常温接合(SAB)は接合されるもの自体 の持っている表面活性を利用した接合であり、ハン ダのような媒介物質が不要になるだけでなく従来の 接合方法と異なり拡散層が殆どないためきれいに剥 がせる事が期待できる。常温接合により、イオン衝 撃を用いた表面活性化手法によってダイヤモンドと Alの常温での接合が可能であることを示し、さらに、 Au-Cu常温接合界面においては従来の接続を上回る 高信頼性を確認した。図12インターコネクト・エコデザインのための常温接合g)カーボン・デバイスの可能性の探索自然界に最もありふれた炭素のみを用いた電子素 子などのデバイスの実現は資源や環境問題にとって 大きな夢である。カーボンのナノ材料はその可能性 を秘めた素材であり、フラーレンをファイバー化す る技術を開発しその実現を近づけた。図13フラーレンナノウイスカと繊維なおこれらの研究は、運営費交付金に基づくエコ マテリアル研究センターの経常的研究費とともに、 下記の表に示すような外部資金によって遂行され、 それらの資金を提供していただいたJST、JSPS、環 境省、文部科学省に感謝の意を表するものである。また、これらの研究を土台に、2006年度から「燃 料電池」「光触媒」「新構造材料」の3つのNIMSの 研究プロジェクトが発進することとなった。エコマ テリアル研究センターは、タワー&プラットフォー ム&スターズとともにプロジェクト・ランチャーの 役目も果たすことができたということができる。表エコマテリアル研究センターの外部研究資金による研究○材料の低環境負荷ライフサイクルデザイン実現のためのバリアフ リープロセシング○国際物質循環時代のエコマテリアル化指針○素材転換による温暖化防止効果の予測○マテリアルリースシステム構築のための総合研究○可視光応答型光触媒の実用に向けた高効率化研究○バンド構造制御による高効率太陽光水素製造光触媒の研究・気相拡散浸透法を中心としたV-Ni系水素透過膜の製造・水素透過精製用合金膜の高度化と総合特性評価に関する研究・混合プラスチックのおよび機能素材の再資源化システム・燃料電池用高性能固体電解質内のナノ構造の解析・サステナビリティ指標としての物質・材料フロー・隠れた物質フローの算定に関する研究・放射性ヨウ素の処理処分に関する技術開発◆リサイクルのための不純物含有合金素形材化プロセス技術の開発 に関する研究◆フラーレンナノウィスカの作成とその構造・物性・機能◆錫同素変態を利用したはんだ接合部の分離・解体に関する研究◆固相プロセスによる熱電半導体のナノミクロ組織制御に関する研 究◆酸化物固体電解質ナノ粉末の合成及びイオン伝導性と焼結◆高温ナノイオニクスを基盤とするヘテロ界面制御フロンティア◆マイクロ燃料電池用ナノ固体電解質、ナノ電極材料及びナノ触媒 合成とそのナノ構造解析▽日豪二国間国際共同研究○は複数機関連携の研究で研究リーダーを務めたもの、◆は科研費、▽はJSPS二国間連携研究環境循環材料グループの5年井島清「現軽量環境材料グループ2005.5異動」、井田慶介「現茨城大学2003.3異動」、宇野光、大澤嘉昭、垣澤英樹、菊池健(現 東洋アルミ(株)2004.3異動)、佐藤彰、島田正典「現軽量環境材料グループ2005.5異動」、下村周一、添野良彦(2003.3退職)、 高森晋、谷村洋一(2004.3退職)、田村堅志、中島謙一「現軽量環境材料グループ2005.5異動」、永田真寿美(2004.6退職)、永野 厚子、成田悠子、橋爪秀夫、原田幸明「現センター長兼軽量環境材料グループ2005.5異動」、山田勝利「現軽量環境材料グループ 2005.5異動」、山田裕久、皆川和己、森山恵(2005.3退職)、横山信吾「現電力中央研究所2005.7異動」、芳須弘「現軽量環境材料 グループ2005.5異動」、劉新宝、劉允中「現中国中南大学2003.3異動」、DONATELLA GARIPOLI「現Università di Brescia2005.9異 動」1.環境循環材料グループ材料のライフサイクルデザインを可能とする革新 的プロセシング技術の具現化を目指します。そのた め鋳造プロセス技術では、スクラップ中の高濃度不 純物を凝固制御で微細に分散させ、有効な分散層と して活用する不純物無害化技術の確立を目指しま す。粉末プロセス技術では、高濃度不純物を含有す る原材料であっても有効利用できるような、急冷凝 固法や温間域で固化成形技術の開発を行っていま す。また、平均粒子径が10μ m以下の球状でしかも、 粒度分布の幅が狭い低酸素の粉末製造技術の開発を 行っています。最終年度においては、地球環境全体でのライフサ イクルデザインを視野に入れ、金属系に加えのライ フサイクルデザインを可能とする革新的プロセシン グ技術の具現化を目指しました。2.環境循環材料グループの活動経緯資源循環型社会の構築においてはゼロエミッショ ンが重要な課題となり、材料のリサイクル性を向上 させることが不可欠です。しかし、製品に使用され る材料は高機能化にともない複合化や異種材料の組 み合わせが進んでおり、リサイクルの段階で大きな 問題となります。廃棄製品をシュレッダー破砕した スクラップにはトランプエレメントと呼ばれる難除 去性金属不純物が残留し、不純物が大量に混入した スクラップはリサイクルされることなく埋め立て処 分されています。また、今後リサイクルが繰り返さ れることにより、スクラップ中のトランプエレメン ト濃度はますます上昇していくと考えられていま す。このような背景から、現在リサイクルされてい ないスクラップを有効に利用する新しいプロセスの 開発や、リサイクルや処分まで考えたライフサイク ルデザインを実現する革新的プロセシング技術の提 案が必要とされています。我々のグループでは、ス クラップ中の不純物を強化因子としてむしろ積極的 に利用していく 「回生原料の不純物利用素形材化プ ロセス」を中心に、持続可能な循環型社会に適合す る材料プロセス技術の開発に取り組んでいます。さらに日常社会に必要不可欠となってきる高分子 系材料の高機能・高性能化を目指し、従来にないポ リマー ・無機化合物ナノコンポジットの新規プロセ スの開発を行い、21世紀型環境社会の実現への貢献 に取り組んでいます。3. 5年間の環境循環材料グループの成果○2001～2005の環境循環材料グループのトピックス 外部資金研究テーマ・[名称]科学技術振興事業団振興調整費研究総合 研究[期間]平成11年度～平成15年度[研究課題名](大テーマ名)材料の低環境負荷ライ フサイクルデザイン実現のためのバリアフリープロ セシング技術に関する研究(担当テーマ)回生原料の不純物利用素形材化プロ セス[研究経費]102,000千円・[名称]科学研究費補助金基盤研究(B) (2)課 題番号15310065[研究課題名]リサイクルのための不純物含有合金 素形材化プロセス技術の開発に関する研究[期間]平成15年度～平成17年度[研究経費]13,300千円・[名称]科学研究費補助金若手研究(B)課題番 号[研究課題名]天然材料のナノタフニング機構を応 用した有機/無機ナノ積層複合材料の創製[期間]平成16年度～平成18年度[研究経費]4,300千円・[名称]池谷科学技術振興財団[研究課題名]貝殻真珠層のナノタフニング機構を 応用した有機/無機ナノ積層複合材料の創製[期間]平成17年度～平成17年度[研究経費]1,500千円・[名称](株)日本軽金属研究寄付金[研究課題名]凝固組織制御による高機能アルミニ ウム合金の開発に関する研究[期間]平成16年度～平成17年度[研究経費]500千円・[名称]社団法人日本鋳造工学会研究助成金[研究課題名]鋳鉄材料の制振性に及ぼすアルミニ ウムの影響とその評価[期間]平成17年度～平成17年度[研究経費]500千円・[名称](株)三井金属マッチングファンド[研究課題名]ハイブリッド噴霧法による微細球状 粉末開発に関する研究[期間]平成16年度～平成17年度[研究経費]15,000千円・[名称]資金提供型共同研究[(株)大同特殊製鋼][研究課題名]高性能制振合金の開発に関する研究 [期間]平成17年度～平成18年度[研究経費]6,000千円研究成果トピックス平成13年度(2001)銅が混入した鉄スクラップ原料では、図1に示す ように急速凝固して銅を微細粉末中に封じ込め、銅 が溶解しない温度で溝ロール圧延での強加工固化成 形による棒材の創製に成功した。図1 急冷凝固したFe-10%Cu合金のSEMによる断面観察図2 アルミニウム含有鋳鉄のピンオンディスク摩耗試験結果図3固化成型温度を変化させた試片による引張強度 と銅添加量の影響図4 大気中熱処理によるアルミナ層のEPMA解析平成14年度(2002)鉄スクラップ中にアルミニウムが多量に混入した 原料は、鋳鉄原料への利用を研究した。片状黒鉛鋳 鉄にアルミニウムを1～20mass%添加し、その影響 を調べた。すると図2に示すようにアルミニウムの 添加によりマトリックス部分にFe-Alの炭化物が非 常に生成しやすい8～12mass%Al前後で硬度が上昇 し、耐摩耗性が向上することを見いだした。平成15年度(2003)図3に示すように銅が混入したスクラップ原料を 用い、急速凝固粉末を700℃で強加工固化成形した ものの引張特性を調べた。銅含有量が増加するに従 い強度が上昇し5mass%～15mass%の銅の含有で 1000Mpaにも達した。これは、銅を含まない粉末焼 結合金のみならず、溶製法で作った材料をも凌駕し た材料となった。平成16年度(2004)大気中の電気炉で1000℃および800℃で保持した 場合大気中の酸素により鋳鉄の黒鉛が脱炭し、そこ へ素地中からアルミニウムが拡散して酸素と結びつ きアルミナが黒鉛の形に生成する。この断面の図5銅による強化機構EPMA写真を図4に示す。白く見える部分は、酸素 の多い部分であり、これはアルミナの存在する場所 と一致する。時間とともに周囲から、アルミナの層 の厚さが増えてくる事がわかる。1000℃では、途中 からあまり厚さが増えないが、800℃では、速い速 度でアルミナが内部まで生成してくることがわか る。表面部のみ硬さの高いアルミナ層にした表面改 質が可能となった。平成17年度(2005)銅が混入した鉄スクラップ原料では、図5に固化 成形体の降伏応力と結晶粒径の関係を示す。図中 (a) ―(c)は鉄の代表的なPetchの関係を示したもので ある。700℃および800℃で結晶粒強度と結晶粒径の 関係はPetchの関係に非常によく従っており、この 温度領域での強化機構は銅による再結晶粒の微細化 であると考えられた。1000℃で固化成形された材料 はPetchの関係から期待されるよりもはるかに大き な強化が得られていることがわかる。この温度域の 固化成形では固化成形中に固溶した銅が再析出する ことにより結晶粒微細化と析出強化の両方が発現し ていることが明らかになった。図6 天然マイカ/エ ポキシ複合系の透過型 電子顕微鏡写真(試料 台上の超薄切片試料を 見ています)ナノコ ンポジット:厚み1nm のマイカナノシートが 均一に分散従来型の高分子コンポジットと比べて軽量で優れ た力学特性やガスバリヤ性を示す粘土―高分子ナノ コンポジット(厚さ1ナノメートルの粘土層状珪酸 塩を高分子マトリックス中に分散制御した複合材 料)を創製した。近年スメクタイト(粘土鉱物の一 種)や膨潤性合成フッ素マイカ用いた高分子ノコン ポジット化が試みられているが、そのサイズ効果の ため十分な物性が実現されていない。世界ではじめて非膨潤性・非イオン交換性の天然 マイカのナノコンポジット化に成功した(図6)。 スメクタイトに比べ、粒子サイズの大きい天然マイ カを特殊な条件下で有機処理し、高分子中でマイカ 層を一層一層剥離させ天然マイカ/エポキシコンポ ジットを創製した。図7混合層珪酸塩/エ ポキシナノコンポジ ットの透過型電子顕 微鏡写真(3層一組で 分散している)さらにユニークな層状珪酸塩、混合層珪酸塩(膨 潤層と非膨潤層が規則的に積層した構造をもつ)を 合成し、その膨潤層のみを剥離させることで数層一 組の珪酸塩ナノシートを高分子中に分散させた新規 ナノコンポジットを作成した。3層一組の珪酸塩ナ ノシートがエポキシマトリックス中に均一に分散し たナノコンポジット化技術は様々な高分子に幅広く 展開できる。今後は珪酸塩ナノシートの高次構造を 制御して高性能、高機能性の高分子複合材料を提案 していきたいと考えている。環境循環材料グループでは、ここまで記述した新 たな材料技術、材料プロセス技術の研究とともに、 循環型社会の構築にかかわる材料の環境負荷評価に 関する研究を遂行してきた。これらのテーマは外部 資金研究として遂行され、以下のような課題を遂行 してきた。すなわち、科学技術振興調整費総合研究 「材料のバリアフリープロセシング」の「物質・材 料効率」サブテーマ(2001-2003)、(2001-2003)環 境省研究「地球温暖化ガス低減に対する素材転換に よる効果」(2001-2003)、JST社会技術研究循環型社 会領域「マテリアルリースシステムの構築に関する 総合研究」(2002-2004)である。「材料のバリアフリープロセシング」の「物質・ 材料効率」においては、まず、採掘段階で地球環境 圏から人間圏に組みこまれる資源の総量であるTMR を以前に算定した金属鉱石分に加えて石油などのエ ネルギー資源に対して算定した。その結果、石炭燃 焼1MJ当たりのTMR (関与物質総量)は0.47kg/MJで あり、0.55t/MWhが電力1MWh当たりの石炭火力発 電のTMRとなった。石油については油井のライフサ イクルを考慮し石油燃焼のTMR=0.19kg/MJが得ら れ、それより石油火力発電はTMR=0.76kg/MJとなっ た。天然ガス燃焼TMR=0.031kg/MJ、天然ガス発電 は0.088kg/MJであり、原子力発電は0.066kg/MJとな り日本の平均的電力使用に対するTMRは1.6kg/kWh となった。また廃棄物処理に関しても、希釈法を用 い単位量あたりの排出物をあるレベルまで希釈する ために必要とされる希釈物の量として廃棄物要求関 与物質総量を求めた。これらにより、関与物質総量をライフサイクル全 体に対してもLCA的に適用することが可能となり、 (サービス)/ (ライフサイクルで要するTMR)とし て評価できるようになった。さらに、この評価方法 を科学技術振興調整費総合研究「材料の低環境負荷 ライフサイクルデザイン実現のためのバリアフリー プロセシング」で取り組まれた以下の課題、すなわ ち、1.界面制御によるプラスティック複合材のイ ンプロセス高機能化、2.結合相制御による木質材 料の循環性インプロセス高機能化、3 .微細組織制 御による循環型素材(AL,MG)の高機能化、4.局 所傾斜組織制御技術によるヘテロ組織インプロセス 制御による高機能動力伝達部品のネット成形、5. メゾスコピック複合制御による力学デザイン、6. トランプエレメント制御による鉄鋼の加工性能デザ イン(トランプエレメント制御)、7.金属/化合 物複合構造体のパフォーマンスデザイン(溶射組 織)、8.金属/化合物複合構造体のパフォーマン スデザイン(焼結組織)、9 . ロバストパフォーマ ンス実現のための分布構造制御(循環型金属不純物 (AL)分布制御)、10. ロバストパフォーマンス実 現のための分布構造制御(循環型金属不純物(CU) 分布制御)、11.ロバストパフォーマンス実現のた めの分布構造制御(高情報機能ガラス境界構造電磁 界分布制御)に対して適用し、物質・材料効率改善 のための研究開発は、改善指数小・影響差分大とな る使用段階重視型、改善指数中・影響差分中のマテ リアルフロー制御型、改善指数大・影響差分小の新 機能創出型として評価できることを明らかにした。環境省研究「地球温暖化ガス低減に対する素材転 換による効果」においては、材料技術転換事例を例 題とし、地球温暖化防止効果の算出方法の検討およ び算出を行った。4つの事例を対象とし、それぞれの事例に対し技 術転換なし(無転換)、技術転換なしと技術転換後 の両者が混在している(現状)、すべてが技術転換 (ポテンシャル)の3の状況でのCO2発生量を算出し た。算出結果を下表に示す。この表で、無転換およ びポテンシャルは、現状との差を示している。例え ば、変圧器の鉄心を方向性電磁鋼板に技術転換する 事例では、技術転換が行なわれていない時代では、 現状よりもCO2が7.02Mt/y多く発生していた事にな り、すべての変圧器が方向性電磁鋼板に転換された 場合は、現状よりも1.67Mt/yCO2が削減される事を 表している。表1地球温暖化防止効果の算出単位 Mt/y電磁鋼 板自動車 軽量化鉄道軽 量化断熱材 使用 総和現状 7. 33 112.9 8.18 61.9 190.3無転換 7.02 8.4 1.49 2.2 19.11ポテンシャ ル -1.67 -4.1 -0.67 -19.2 25.64各事例のポテンシャルを比較すると、家屋の断熱 材使用により冷・暖房使用時のエネルギー削減は他 の3事例よりポテンシャルとしての削減量が多い結 果となった。JST社会技術研究循環型社会領域「マテリアルリ ースシステムの構築に関する総合研究」においては、 図8に示すように素材生産者のもとに使用済み製品図8 マテリアルリソースシステム図9リサイクルによる天然資源消費削減効果図10関与物質総量ベースの自動車リサイクル素材が還流してくるマテリアルリースシステムを提 案し、そのシステムが実現できるための要件を検討 した。その結果、図9に示すように現在のリサイクルで は本来の循環型社会の形成で求められる天然資源の 削減効果があまりあがっていないことが明らかにな り、現行のワンウェイ型のリサイクルからマテリア ルリース型に転換する必要性が明確にされた。また、 その移行を推進するために、TMRなどの資源指標を 用いて製品およびリサイクルのシステムを見ていく ことを提案し、自動車のリサイクルに対して適用し た。図10がその一例であり、リサイクルの主たるサ イトが手分解であること、白金などの微量成分のリ サイクルが無視できないこと、シュレッダーダスト は銅としてとらえるのが妥当なことなどがわかる。 これらをもとに「資源情報登録制度」が提案された。4.環境循環材料グループの研究分野の動向鋳造、粉末冶金プロセスでは、自動車産業などの 輸送機器や、工作機械など多くの生産量を誇ってい る。最近は、環境問題としてのCO2削減などから軽量 化の要請が大きく、鋳鉄からアルミニウムやマグネ シウムなどの軽量金属への移行が多くなっている。21世紀型持続可能な循環型社会においては、金属 系材料に加えて、無機系材料、有機系材料も視野に入 れた材料系全体のライフサイクルデザインを可能と する革新的プロセシング技術の実現が必要とされる。5.組織運営上の問題点特になしエコデバイスグループの4年須賀唯知・宮澤薫一・細田奈麻絵・苅谷義治デバイスインテグレーション・サブグループ(DI-SG)須賀唯知(併任) 2002年4月～細田奈麻絵 2002年4月～2003年3月(併任)、2003年4月～(常勤)苅谷義治 2002年4月～王 謙(NIMSポスドク) 2002年4月～2003年3月王英輝(外来研究員) 2003年4月～桑山直樹(外来研究員) 2002年4月～園田悠太(外来研究員) 2005年4月～細井拓也(外来研究員) 2002年5月～2003年3月新美智一(連携大学院生) 2002年5月～2005年3月浅井 強(連携大学院生) 2004年5月～2005年3月杉山俊彦(連携大学院生) 2004年5月～2005年3月小板橋かおる(技術補助員) 2005年7月～フラーレンナノファイバー ・サブグループ(FNF-SG)宮澤薫一 2002年4月～湊淳一(NIMSポスドク) 2004年4月～藤野真久(外来研究員) 2002年4月～田口拓志(外来研究員) 2003年12月～2004年10月天野昌江(外来研究員) 2003年12月～2004年3月武藤広史(外来研究員) 2004年11月～加藤良栄(技術補助員) 2005年4月～1.グループ発足の経緯本研究グループは2002年4月、エコマテリアル研 究センターの設置とともに発足した。有害物質フリ ー、低環境負荷、解体・リサイクル性、高資源生産 性等の新しい機能を集積した低コスト・高機能の次 世代デバイス・インテグレーション技術を開発する ことを目的に、従来のIT集積化技術の中に、インタ ーコネクト・エコデザインやミクロ解体性設計など の「エコインテグレーション」の概念を明確化し、 その実現のための新しい実装・パッケージング技術 とその要素技術を確立する、というのがその趣旨で ある。その後2003年4月、本グループを、デバイス インテグレーション・サブグループ(DI-SG)とフ ラーレンナノファイバ・サブグループ(FNF-SG) の2つのサブグループに再編した。前者では、1) 環境有害物質フリー接合技術の開発、2) IT集積化 に有効な低エネルギー微細接合法の開発、3)エコ インテグレーションを支える分離機能のある接合法 の開発、4)自然界の技術を取り入れたバイオミメ ティックス接合の開発、5)微小荷重疲労試験機、 ナノサーボ疲労試験の開発、6)鉛フリーはんだ合 金ならびに微細接合部の非線形特性評価、信頼性評 価等に取り組み、後者では、フラーレンナノファイ バーに焦点を絞って、フラーレン分子からなるナノ ファイバーの合成と物性の解明及び応用を志向した 研究を行い、現在に至っている。以下、サブグルー プのテーマ毎にこれまでの研究経過を振り返る。2.活動経緯2.1 デバイスインテグレーション・サブグループ(DI-SG)2002年1)フラックスレス鉛フリー微細接合の開 発2) Sn-Ag系はんだと金の常温接合(接合 法の開発)3) C3F8および酸素プラズマ表面処理に よるフラックスレス鉛フリーハンダ接 合4)ダイヤモンドと金属の常温接合(界面 微細構造解析)5)微小荷重疲労試験機の開発2003年 1)Sn-Ag系はんだと金の常温接合(界面 構造解析)2)ダイヤモンドと金属の常温接合(プラ ズマ照射欠陥の少ないダイヤモンド表 面処理法の開発)3)液体金属を利用した新しい接合部分離 技術の開発4)鉛フリー微細実装部の信頼性評価2004年1)バイオロジカルアタッチメントを利用 した可逆的インターコネクション2)はんだ材のミニチュア力学試験法の開 発と鉛フリーはんだ材の非線形特性評 価2005年 1)液体金属を利用した新しい接合部分離 技術の開発(微細配線接合分離への応 用)2)昆虫の吸着力へ及ぼすナノスケール表面構造の影響3)低温鉛フリーはんだ合金の力学特性評 価と微細接合部の信頼性試験法の確 立。ナノサーボ疲労試験機の開発2. 2 フラーレンナノファイバー ・サブグループ (FNF-SG)2002年 1)フラーレンナノウィスカー合成方法 (液―液界面析出法)の確立2) C60ナノウィスカーの高圧焼結2003年 1)フラーレン誘導体ナノウィスカーの合 成に成功2 )フラーレンシェルチューブの発見2004年 1)フラーレンナノチューブの発見と合成 法の開発に成功2)フラーレンカプセルの発見2005年 1)フラーレンナノウィスカーとフラーレ ンナノチューブの溶媒和構造の解明2)フラーレンナノチューブの可除去テン プレート応用3)フラーレンナノチューブのNIMS標準 物質認証作業の開始3.研究成果3.1環境有害物質フリー接合技術の開発(DI-SG)環境への配慮からこれまで多種の鉛フリーハンダ が開発されているが、鉛フリーはんだは一般的に濡 れ性が悪く、従来のフラックスでは対応できないケ ースも報告されている。環境負荷低減の視点から、 フラックスを洗浄しない無洗浄、あるいはフラック スそのものを使わないフラックスレス・ソルダリン グがその一方で要求されている。そこで本研究では、 Sn-Ag等の代表的鉛フリーはんだとCuを対象に、そ の表面酸化層を分析するとともに、その表面をドラ イプロセスにより改質し、その改質層を用いたフラ ックスレス・ソルダリングの可能性を検討した。フ ラックスレス・ソルダリングはC3F8および酸素プ ラズマ表面処理により実施した。その結果、C3F8- RIB照射による表面処理によりSn-Ag (3.6%)の表 面上には約430nmの厚いフッ化物層が形成され、酸 化速度が押さえられ少なくとも4日間表面改質の効 果は持続し、フラックスレス・ソルダリングが可能 である事が分かった。フッ化物(SnF2)層は低融点 であることからこの層の存在により大気放置後もソ ルダリングが可能である事が分かった。フッ化処理 後のSn-Ag (3.6%)表面は大気放置により徐々にFと O原子が入れ代わり酸化が進行する事が分かった。3. 2 IT集積化に有効な低エネルギー微細接合法 の開発(DI-SG)1)AuとSnの常温微細接合高温で溶融し接合する所謂はんだ付けは配線の微 細化に伴い、精密なアライメントが困難、高温によ る高い熱残留応力などの問題が深刻になり新しいテ クノロジーの開発が望まれている。本研究では表面 活性化常温接合法を用いてフリップチップなどで使 用されているAuとSnの常温微細接合を試み、その 界面の微細構造を明らかにした。2)ダイヤモンドは熱伝導も良く優れた半導体とし て次世代のエレクトロニクス材料として期待されて いる。金属とダイヤモンドの接合は従来ロウ接など 高温プロセスで行われるため、本研究では将来のダ イヤモンドを利用したIT集積化の実現を目的に低温 で微細接合も可能な接合技術の開発を行った。本研 究ではダイヤモンドと金属の接合は、高速原子線の 照射により常温で接合できることを示し、さらにこ の接合体を溶液処理により分離し殆ど損傷のない状 態でダイヤモンドを取り外す事に成功した。これに より使用後はダイヤモンドのリサイクルも可能であ る事を示す事ができた。従来のロウ接では接合界面 に反応物が形成されるため損傷が激しくリサイクル が困難であった。また、より低ダメージのダイヤモ ンド表面処理を実現するため新しい活性化手法とし て酸素ラジカル照射による損傷の評価を行い、常温 接合に適用できるかどうか検討を行い良好な結果が 得られた。3. 3エコインテグレーションを支える分離機能 のある接合法の開発(DI-SG)冶金的に接合した部分は分離が困難であるため、 リサイクルを考慮した製品を設計する場合は一般に ボルト、ネジ、スナップフィットなどが使用されて いる。本研究では、これまで困難であった冶金的な 手法で接合した接合部を簡単に分離する手法を提案 するものである。この手法は常温で液体金属を接触 させるだけで接合界面付近のみを液化し接合体を分 離することができるものである。ここでは常温で液 体で存在する金属の一つであるガリウムを用いた。 ガリウムはアルミニウムに接触させた場合、結晶内 部よりも結晶粒界での拡散が速く、界面を迅速に脆 化する事が知られている。この性質を利用し接合部 を分離するには想定する分離位置に2次元ないしは 3次元に繋がった界面の存在が必要である。本研究 では表面活性化常温接合法によりアルミニウムとア ルミニウム、アルミニウムとサファイアを接合し拡 散経路を作成し、分離実験を行った。塗布後ガリウムは接合界面に浸透し界面が液化し その結果分離が生じた。界面の液化による分離はア ルミニウムとアルミニウム、アルミニウムとサファ イアの両方の組み合わせで確認された。応用例とし て、微細配線のモデル基板とチップの分離実験を行 った。その結果、常温でガリウムを接触する事によ り微細配線及び微細接続部を簡単に分離できること を発見し、さらにこの技術をエレクトロニクスの実 装基板に使用する事で簡単にLSIチップを取り外す 事に成功した。この成果について特許出願を行い、 日刊工業新聞、日経産業新聞、日本経済新聞、化学工業日報、科学新聞、産経新などで取り上げ、られた。 この技術は分離解体に特別な施設が必要なくなるな ど環境への取り組みに大きく貢献できる事が期待さ れている。図3.3.1 ガリウムを塗って実装基板からLSIチップを 取りはずすところ3. 4自然界の技術を取り入れたバイオミメティ ックス接合の開発(DI-SG)接合・分離という視点から昆虫の足の裏のアタッ チメント機構の調査を行った。ハエやハムシなどの 昆虫の足の先端には数ミクロンサイズのアタッチメ ントデバイスがあり、これは表面に吸着するために 進化した物で、迅速、的確かつ可逆的に吸着する優 れた仕組みを持っている。この吸着機能と表面粗さ の影響を調査し、吸着・非吸着系表面の関係を明ら かにした。環境調和型製品にとって分離し易い解体性設計は 重要であり、接合部の分離技術はそのキーテクノ ロ ジーとも言える。しかし、従来の接合技術は多くの 場合高い接合強度を得る事のみに視点を置かれて開 発されているため分離することが困難であった。環 境を考慮した次世代の接合技術は分離性も考慮した もので、使用中においては結合部の信頼性は保証さ れなくてはならないため、容易に外れず簡単に外せ るという一見矛盾した要素を兼ね備えた結合手法が 要求されるのである。現在、部品のマイクロ化が進 んでいるなかで、マイクロアセンブリにおいても不 必要に強過ぎず簡単に外せる新しい接合手法の開発 は必要と言える。図3.4.1 ダイヤモンドとアルミニウムの常温接合界面ところで、自然界が造り出した生物は環境に調和 するための優れた仕組みを持っている。特に我々が 図3.4.2エゾノギシギシのレプリカ上に吸着するハム シ(Gastrophysa viridula)の足先端の剛毛注目しているのはマイクロマシンとサイズが類似し ている昆虫である。ハエやハムシなどの昆虫の足の 先端にある数ミクロンサイズのアタッチメントデバ イスは表面に吸着するために進化した物で、迅速、 的確かつ可逆的に吸着する優れた仕組みを持ってい る。我々はこのハムシのアタッチメントデバイスの  吸着特性を先端技術を用いて調査し、その機構を理 解するため研究を行った。この吸着機能と表面粗さ の影響を調査するため、1nmから300nmの表面粗さ を制御する手法を提案し実験を行った結果、100nm 程度の粗さの表面上では吸着機能が大きく低下し歩 行がほとんど不能になることを発見した。今後はさらに昆虫のアタッチメントデバイスと植 物表面の関係から吸着系・非吸着系の仕組みを調査 し、マイクロデバイスの可逆的接合手法の開発に役 立てていきたいと考えている。(本研究はドイツの マックスプランク金属研究所のS.Gorb博士と共同研 究として行われた。)3. 5機械的試験による電子実装部の信頼性評価 の確立(DI-SG)電子機器の小型化にともない、微細はんだ実装が 普及、その信頼性を決定するはんだ接合部の疲労寿 命評価が重要な課題となっていた。はんだ接合部の 疲労寿命評価法としては熱疲労試験(温度サイクル 試験)が多く行われるが、定量的な解析が複雑であ る、広範囲に渡るひずみ量を負荷することが事実上 できない、また試験時間に膨大な時間がかかるなど の諸問題を抱えていた。これに対し、機械的試験に より実装部の疲労試験を行えば、温度、ひずみおよ び負荷波形など、疲労特性解析上、重要なパラメ ー タを独立に制御出来るため、実装部の信頼性を検討 する上で、きわめて有益な情報を与える。しかし、 実装部の機械的疲労試験に関しては、既存の疲労試 験機で実現不可能な非常に微小な変位や荷重を制御 できる試験機が必要であり、試験方法が確立されて いなかった。そこで、まず、はんだ接合部の機械的疲労試験に必要なレベルを満足する試験機の開発を 行った。電子実装部の熱疲労は、部品間の熱膨張係数差よ り生じるひずみ(微小な強制変位)に起因する。こ の微小な変位をアクチュエータにより機械的変位を 与え、はんだ接合部を変形させる試験機および試験 法を開発した。試験機には、1ミクロン程度の繰り 返し振幅が求められるため、アクチュエータにリニ アDCモーターを採用し、エアーベアリングを用い てアクチュエータの摩擦抵抗を極力低減した。また、 静電容量式のセンサーにより試験体の変位を非接触 で計測し、その変位によりアクチュエータを制御す るフィードバック方式を用いることにより微小なは んだ実装部にきわめて正確な繰り返し強制変位を与 えることが可能となった。図3.5.1開発した微小荷重疲労試験機の概略図図3.5.2機械的疲労試験による電子実装部(フリップ チップ接合部)の疲労寿命評価結果開発した試験機および試験法により図3.5.2に示す ようにはんだ実装部の疲労寿命評価が正確にかつ短 時間に行えるようになり、新材料開発の期間を大幅 に短縮することが可能となった。この試験方法を用いて、新しい実装用鉛フリーは んだ合金の開発を民間企業と共同で行い、一部製品 として採用されるまでに至っている。また、試験法 の標準化も求められており、現在、経済産業省の基準 認証開発事業のテーマとして取り上げられている。3.6ミニチュア力学試験法の開発と鉛フリーは んだ材の特性評価への応用(DI-SG)電子実装部の信頼性評価には、上述にように実装 部に対して直接信頼性試験することが有効であるが、新しい合金の開発や、接合部の力学的信頼性を 解析するには、はんだ合金の力学特性を正しく理解 することが求められる。特に、微細はんだ接合部の 力学的信頼性解析に際しては、有限要素法解析が用 いられることが多く、はんだ合金の力学特性を記述 する適切な加工硬化則やクリープ構成式が求められ ている。一般に、はんだ合金の力学特性は、接合部サイズ を考慮した試験片を用いることが困難なため、JIS 規格に準じた接合部サイズに比較してはるかに大き な引張試験片を用いて計測される。しかし、微小体 積におけるはんだ合金の組織と大型材における凝固 組織は異なり、また、損傷機構に対するサイズ因子 も影響し、その力学特性も同一でない。微細はんだ 材の力学特性を明らかにするには、微小体積に製造 した試験片を用いて疲労試験する必要があり、微小 疲労試験法の確立が望まれる。このような背景から、 微小試験片を用いた力学試験法を開発した。作成した微小試験片のサイズは、図3.6.1に示すゲ ージ長さ2 mm、径0.5mmのドックボーン形状とし た。これを精密金型を用いた溶融加工法を用いて機 械加工などを用いず作成する。ドックボーン形状の 試験片としては世界最小レベルのサイズを達成し た。図3.6.1 鉛フリーはんだ合金のミニチュア疲労試験片図3.6.2ミニチュア疲労試験片による各種鉛フリーは んだ材の低サイクル疲労寿命評価この試験片と前述の微小荷重力学試験機により各 種はんだ合金の力学特性を評価し、その微小体積に おける凝固組織と力学特性を解明した。まず、凝固組織は、特異なデンドライト構造を有し、大型の凝 固試験片とは全く異なる組織となることが明らかと なった。そのため、クリープなどの静的な力学特性 は、大型材と異なり、電子実装部の信頼性解析に用 いる材料特性は、微小に溶融加工した材料を用いる ことが明らかとなった。さらにこの試験片を用いて低サイクル疲労試験を 行うことにも成功した。ただし、試験機には前述の 試験機よりさらに微小な制御が要求されるため、ア クチュエータ部をピエゾステージに変更したナノサ ーボ疲労試験機を新たに開発した。この試験機によ り引張圧縮型としては世界最小のミニチュア低サイ クル疲労試験が可能となった。図3.6.2に示すように、 はんだ合金のミニチュア試験片の低サイクル疲労寿 命が正確に計測でき、これまでに明らかにされてい なかった微小体積における疲労損傷機構が解明され た。電子実装用材料の開発や実装部の信頼性設計に 大いに役立つことが期待され、民間企業との共同研 究が多く進められている。3. 7ミニチュア試験法の今後の展望(DI-SG)電子実装部の信頼性解析には、我々のグループで 開発してきたミニチュア試験法は必要不可欠な技術 となりつつある。現在、このミニチュア試験法は、 電子実装材料の標準力学試験法として期待されてお り、IECおよびJIS規格にすべく、経済産業省の基準 認証開発事業で研究が続けられている。今後は標準 化に必要なデータの整備が求められる。また、この 試験法は電子実装部の信頼性解析のみならず、溶接 部材の任意領域における力学特性計測、運転中の機 器からのサンプリング計測、傾斜機能材料の特性解 析などさまざまな分野への応用が期待されており、 実装材以外の材料を用いた試験評価が望まれてい る。3. 8 Snの同素変体を用いた接合部分離に関す る基礎的検討(DI-SG)スズは286K以下で体心正方晶の白スズからダイ ヤモンド構造の灰スズへ同素変態(スズペスト)を 起こす。ダイヤモンド構造の灰スズへ変態する際に 26%の体積膨張を伴うため、最終的には粉末状に崩 壊する。現在、実用化が進められている鉛フリーは んだ合金は、スズが主成分であり、スズペストを起 こす可能性を有していると考えられる。この現象を 用いれば、スズを主成分とするはんだを用いて電子 実装した実装部を廃棄時に分離することが可能とな る。この分離技術に関する基礎検討としてスズを主 成分とするはんだ合金の同素変態を検討した。図3.6.1にSn-0.7mass%Cu合金で作成したBGA (Ball Grid Array)タイプLSI実装用はんだボールを 243Kで時効した際に、スズペストが起きた様子を 示す。微細はんだボールでスズペストが起こると、 はんだボールは破壊し、最終的には粉末状に崩壊す る。この現象が実際の実装部で起これば、はんだ接 合部は破壊することになり、部品や基板にダメージ を与えずに分離が可能であることを示唆する結果が 得られた。なお、Pb、SbおよびBiなどスズに固溶し 易い元素を含有するはんだにおいては、事実上、ス ズペストは起きないことが明らかになった。ただし、 変態点以下でも白スズが安定であることと、不純物 元素の影響で、変態速度は非常に遅く、たとえ、変 態点以下であっても容易に変態しないため、今後は、 加速因子について検討し、分離の条件や分離可能な 合金組成についての研究が期待される。図3.8.1 スズペストによりSn-0.7mass%Cuはんだボー ルが破壊する様子 (上:スズペストにより破壊を開始 したはんだボール。下:崩壊したはんだボール)3. 9フラーレンナノウィスカーの合成と性質の 解明(FNF-SG)2001年に、C60を添加したチタン酸ジルコン酸鉛 (PZT)のコロイド溶液中に、ナノメートルオーダ ーの直径を持つひげ結晶を発見した。これを、C60 ナノウィスカー(C60NW)と名付けた。さらに、C60 NWは、液―液界面析出法(液―液界面法、液―液 法、liquid-liquid interfacial precipitation method) に よ って合成できることを明らかにした。液―液法とは、 フラーレンの良溶媒の飽和溶液にフラーレンの貧溶 媒を添加して液―液界面を形成し、このガラス容器 を一定期間保管することによって、フラーレンのナ ノウィスカー(フラーレンナノウィスカー、FNW) を成長させる方法である。例えば、C60NWは、C60の 飽和メタキシレン溶液に、イソプロピルアルコール (IPA)を重層し、21℃以下の温度に保存することに より、育成することができる。C60NWは数10nmから 1μm未満の直径を持ち、長さは、約100μmから1 mmのオーダーに成長する。液―液法を用いると、 C70NWやC60[C(COOC2H5)2]などのフラーレン誘導体か らなるナノウィスカー (NW)、C60マトリックス中 にC70を固溶させたC60-C702成分NWや、C60-C3H7N2成 分NWなど多様なFNWを合成することができること を示した。図3.9.1に、C60ナノウィスカーの走査電子 顕微鏡写真を示す。C6ONWは、合成したてのものは溶媒和しており、 六方晶の構造を持つが、室温中で乾燥させると溶媒 を失って面心立方晶(FCC)に転移することが判明 した。C60NWは成長軸方向にC60分子が稠密に充填し ているが、透過電子顕微鏡(TEM)で観察すると、 C60分子の中心間距離が、ファンデルワールス力で 結合したC60分子の中心間距離に比べて数%縮小し ていることが明らかとなった。これは、電子線照射 の結果、C60分子間がファンデルワールス力だけで は説明できない力によって結合するに至ったことを 示している。図3.9.1C60ナノウィスカーの走査電子顕微鏡写真C60NWは、以下のような性質を示した。(1)数10μm以下の小さな曲率半径でしなやかにか つ弾性的に曲げ変形させることができる。(2)適度な真空度で加熱すると中空構造にすること ができる。この中空構造となったものをフラーレン シェルチューブ(fullerene shell tube)と命名した。(3) TEM内その場加熱実験により、真空中では約 600℃以上で非晶質化が始まる。(4)約30GPa～170GPaのヤング率を持つ。(5) NMRにより、C60NW中のC60分子は室温で回転し ており、ファンデルワールス力で結合している。(6) C60NWの電気抵抗率が、温度の低下に伴ってス テップ状に変化して上昇する。(7)1μm以上の太いC60針状結晶においては、その 直径が小さくなるとともに電気抵抗率が急激に減少 する。(8)優れた焼結性を持つ。また、C70NWについては、室温乾燥したC70NWは 面心立方晶であり、成長軸方向にC70分子が最密に 充填していることが判明した。3.10フラーレンナノチューブの発見と合成法の 開発(FNF-SG)2004年に、我々は、壁がフラーレン分子から成る 中空のフラーレンナノウィスカーを発見した。これ は文字通りフラーレン分子から成るナノチューブで あるので、フラーレンナノチューブ(FNT)と呼ん でいる。最初に発見したFNTはC70分子からなるC70 ナノチューブ(C70NT)であり、これは、C70を飽和 させたピリジン溶液とIPAの系による液―液法によ って合成できることを発見した(図3.10.1)。C70NT の合成に続いて、C60-C702成分NT、C60NTの順に合成 が可能となった。C60NTとC70NTは、室温乾燥させた ものは面心立方晶であるが、合成したてのものは、 六方晶である。さらに、六方晶C60NWと六方晶C60 NTとは、異なった格子定数を持っていることが判 明した。これは、内部が充填されたウィスカーと中 空なウィスカーとでは、本来、結晶学的な構造が異 なっており、成長メカニズムが異なっていることを 示唆する重要な発見となった。図3.10.1C70ナノチューブの透過電子顕微鏡写真C60NTやC70NTは、FNWの合成温度よりも低い温 度で、成長し、1mm以上の長さに成長する。FNW と同様に、C60NTは黄褐色、C70NTは赤褐色の金属光 沢を呈する。C60NTは温度の低下とともに、電気抵 抗がステップ状に変化して上昇することが明らかに なった。C60NTの内径は約100nmのオーダーであって、ナ ノ触媒を担持するのに適度な大きさを持っているの で、触媒担体として多くの用途を持つが、内部で物 質を合成し、かつ、壁を有機溶媒に溶解させて、合 成した物質のみを取り出すということが可能とな る。実際、モデル実験として、メチルアルコールに 臭化カリウム(KBr)を溶解した溶液にC60NTを浸 すことにより、KBrの単結晶をチューブ内部に堆積 させることに成功した。さらに、堆積のみならず、 チューブ壁をトルエンで溶解除去することにより、 堆積させたKBrを取り出すことにも成功した。この ように、C60NT、広く、FNTは物質合成のための可 除去テンプレートとして用いることができることが 明らかになった。C60NTは、真空加熱によって、約500℃の温度以上 で非晶質化するのに対して、電子線を照射しながら 加熱すると、少なくとも700℃まで単結晶状の構造 を維持することが分かった。これは、電子線照射に よってC60分子がポリマー化して、より耐熱性の高 い構造になったことを示唆する。これに対して、同 じTEM中その場加熱実験を施したところ、C60NWは、 約600℃の温度で非晶質化が始まった。このことは、 C60NTの耐熱性がC60NWよりも優れていることを示 している。この原因として、C60NTはC60NWと異な った結晶構造を、合成したての段階で持っているこ とのために、より高度にポリマー化しやすいことが 考えられる。3.11 フラーレンナノファイバーの今後の展望 (FNF-SG)上記のフラーレンナノウィスカーとフラーレンナ ノチューブは、ともに、フラーレンナノファイバー (FNF)としてまとめて呼ぶことができる。 以下 に、FNFの可能性を列挙する。(1)FNFは、新しい有機トランジスタ、ダイオード、 発光素子など多くの電子デバイスとしての用途が見 込める。(2) C60はアルカリ元素をドーピングすることによ り超伝導を発現するので、FNFも同様に、超伝導を 発現することが期待できる。(3) FNFは熱処理によって、形状や導電性を多様に 変化させることができるので、軽量導電性ナノファ イバーとして、ナノ配線の領域で力を発揮すること が期待できる。(4) FNTは中空であるので、内部に触媒を担持する ことが可能であり、優れた化学的活性を付与する媒 体として、燃料電池などの分野で利用できる可能性 がある。(5) FNTは、適度な大きさの内径を持っているため、 内部で物質を合成するためのテンプレートとして使 用することができる。しかも、FNTは有機溶媒に溶 解除去して、内部で合成した物質を取り出すことが できる。このように、FNTは可除去テンプレートと して用いることができるため、フラーレンを回収し、 再利用することが可能となる。(6) FNFは、強磁場中で配向させて、樹脂中に複合 させることが可能であるので、新しい複合材料を作 ることができる。FNFは、絶縁体、半導体、導電体 の広い範囲に及ぶ電気物性を発現するので、電気的 に多様な物性を示す複合樹脂材料を作ることができ る。しかも、使用後は、有機溶媒によりFNFを分解 して、フラーレン分子を回収することができる。(7) C60は優れた電子受容体であり、優れた太陽電 池素材である。従って、FNFは太陽電池材料として も大いに注目される。4.成果公表4.1出版物等(1)雑誌掲載論文2002年 8件2003年 8件2004年 9件2005年17件 (2)解説記事2002年 2件2003年 5件2004年13件2005年 8件(3)報告書2004年 3件2005年 3件 (4)新聞掲載2003年1件2004年 3件2005年 7件(5)雑誌ニュース記事等2003年1件2004年 3件4.2知財関係(1)特許出願2002年 3件2003年 2件2004年12件2005年 4件 (2)成立特許2002年1件(米国特許)2005年2件(米国特許1件、国内特許1件)4. 3シンポジウム開催等(1)NIMSシンポジウム「エコマテリアルとエコイ ンテグレーション―環境機能デバイスの可能性」 2004年10月12日東京大学武田ホールにて開催 (2)フラーレンナノウィスカー研究会(FNW研究 会)。第1回2003年4月18日(東京、発表7件)第2回2003年11月4日(東京、発表10件)第3回2004年3月16日(東京、発表7件)第4回2005年3月10日(東京、発表10件)第5回2005年12月19日(東京、発表11件)** (社)電気学会の「ユビキタス社会のためのナノ マテリアル・プロセス技術調査専門委員会」(宮澤 委員長)との合同研究会として開催。(3) ノベルナノカーボンシンポジウム2004年9月2日第65回応用物理学会学術講演会 ((社)応用物理学会、東北学院大学)において開 催。5.分野の動向と展望5.1インターコネクトエコデザイン環境破壊の深刻化により循環型社会構造の重要性 が認識され20世紀末には環境保全に対する法整備も 進められた。それと伴に、製品の解体性についても 注目され始めるようになってきた。だがしかし、接 合部分離技術は環境調和を基本とした次世代の技術 のなくてはならないものではあるもののまだまだ萌 芽的な段階である。インターコネクトエコデザイン に関する研究は、今後も接合部の易分離性・無毒 性・低エネルギー化・高性能をキーワードに発展させて行きたい。5. 2電子実装部の信頼性評価について電子実装の微細高密度化に伴い、信頼性評価に関 してもより微小な領域での実験的手法および解析的 手法が求められている。現状、力学特性計測方法は、 我々のグループで開発してきたマイクロ力学試験法 が先導する立場にあり、この技術をベースとした本 分野の発展が期待される。マイクロ力学試験の発展 のためには、今後、これまでに無い微小変位測定法 の確立が必要不可欠であり、新しいアイデアの創出 が求められる。また、実験的手法による直接計測が 困難である微小領域では、実験的手法と解析的手法 を組み合わせたハイブリッド評価法を中心に発展す ることが期待されている。さらに、試験法の標準化 を世界にさきがけて行う必要もある。5. 3 フラーレンナノファイバーについて2001年に、我々が、フラーレンナノウィスカー (FNW)のひとつであるC60ナノウィスカー(C60NW) を発見してより、5年が経過した。この間、FNW 研究会を年2回のペースで開催して研究を進めて来 た結果、東北大学、千葉大学、共立薬科大学、東京 大学、横浜市立大学、筑波大学、法政大学、産業技 術総合研究所、物質・材料研究機構、民間企業、高 崎高等学校他が参加して、多様なFNWの研究が行 われるようになった。フラーレンナノウィスカーは、 注目先端材料として、マスコミでも取り上げられて 来ている。外国では、中国でFNWの研究が開始 された。また、中国で、多孔質アルミナの孔にC60 をコーティングすることにより、短い多結晶のC60 ナノチューブの合成が行なわれたが、我々の技術に より、初めて、自己組織的に成長し、単結晶の壁構 造を持ち、長さがミリメートル以上に成長するフラ ーレンナノチューブ(FNT)の合成が可能となった。. さらに、フラーレンナノチューブについて、NIMS 標準物質としての認証作業が2005年に開始された。FNWとFNTを合わせてフラーレンナノファイバー (FNF)と呼ぶが、FNFは研究の歴史は浅く、物質 の構造の解明の他に、これからは物性の解明に注力 することが必要である。また、C60やC70以外の高次フラーレン、金属内包 フラーレン、フラーレン誘導体を合金化したFNW やFNTを合成することができると期待される。これ らのFNFは各フラーレン分子の性質を反映し、かつ、 フラーレン分子の周期構造を反映した構造を持つの で、これまでのカーボン繊維やカーボンナノチュー ブとは全く異なった新規な物性を発現することが期 待され、将来の発展が楽しみな分野に成長するに違 いない。6.謝辞本研究の遂行にあたっては、下記のような支援の 他、多数の機構内外の研究者の協力を頂いた。ここに厚く御礼申し上げる。(1)機構内予算環境機能デバイスの創製に関する研究(須賀)マイクロインターコネクトマテリアルの力学特性評価法の確立(苅谷)ノベルナノカーボンプロジェクト(宮澤)(2)外部資金科学研究費補助金(課題番号14350367、15651063、 17201027 :宮澤)(課題番号17686006、15710071:苅谷)(課題番号17651076 :湊)環境エネルギー材料グループの5年西村睦、磯田幸宏、今井義雄、遠藤弘毅、大杉功、大平記央、加島潤児、加藤雅彦、小林智昭、古牧政雄、篠原嘉一、田代雅紀、 高橋基、永井貴寛、中島啓光(2005.10退職)、平石謙太朗、森利之、吉岡洋一、米田征司、Richard BUCHANAN, Jihye GWAK (2005.9退職)、Je-Deok KIM, William MCPHEE (2003.11退職)、Ding-Rong OU, Libor SEDLACEK, Bretislav SMID, Yarong WANG, Junyou YANG, Fei YE, Yi ZHANG (2004.1退職)1.組織発足の経緯・目的・目指したもの環境エネルギー材料グループは、環境調和型のエ ネルギーシステムにおける機能デバイス、エネルギ ー変換材料のデザインおよび合成プロセスの開発を 行い、パフォーマンスの画期的な高度化を、できる だけ環境負荷の低い原料・プロセスによって達成す ることを目指して、2004年4月にエコマテリアル研 究センターの設立時に設置された。本グループでは、 水素分離膜材料、燃料電池用固体電解質、及び熱電 材料の3つの材料を対象として研究開発が行われて いる。以下に材料毎にこの5年のあゆみをまとめ る。1-1.水素分離膜材料水素エネルギー時代到来の期待が高まる中で、燃 料電池技術が急激に進展している。その燃料電池の 電極触媒である白金が、わずか10ppmレベルの一酸 化炭素で劣化してしまうため、超高純度水素を大量 に手軽に製造する技術が切望されている。一番簡単 なのが膜を透過させる膜分離法で、ポリマーなどい ろいろな材料があるが、ガス分離性と透過速度の総 合特性で他の追随を許さないのが金属系水素分離膜 であり、現在はPd合金が実用化されている。しかし Pdは高価で、資源も少ないため、幅広く使われるに は至っていない。そこで我々は資源が豊富で安価な Vに着目して、V-Ni合金を開発し、実用化に向けた 取り組みを行っている。1―2.燃料電池用固体電解質増え続ける電力需要に応えつつ、地球環境保全に 資するためには、高性能燃料電池用材料の研究を通 して、その民生用としての普及拡大をはかることが、 急務とされている。本研究では、酸化セリウム(CeO2)系材料に着目 し、バルク内ナノ構造制御やナノ界面構造を制御す ることで、燃料電池用高性能固体電解質および高性 能電極材料の作成を行うことを目的にとした。1―3.熱電材料熱電材料は米ソの冷戦時代(1950～60年代)に軍 事技術の一環として精力的に研究開発が行われた。 ベルリンの壁が崩壊して16年、今ではエネルギー ・ 環境技術として熱電変換が見直されるようになっ た。分散型エネルギー供給システムであるマイクロ グリッド構想の中では、太陽電池、燃料電池、風力 発電、バイオマス発電などと共に、主要技術の一つ として注目されている。材料による環境貢献を目指 したエコマテリアルの一つとして、廃熱利用発電の ための熱電エネルギー変換材料を研究開発するた め、本研究グループを発足した。2.活動の経緯2 ―1.水素分離膜材料Vは地球上での資源量がPdと比べて約26000倍も 豊富である。さらに貴金属であるPdは鉱石中の濃度 が極めて低いのに対して、Vははるかに高濃度で存 在するため、採掘時の環境負荷はPdの1/1000程度と 試算されている。また価格はPdと比較して約1/10で ある。このように資源量が豊富で環境負荷が小さく、 安価な原料を用いて高性能を達成する、まさに機能 対応型エコマテリアルの優等生であるV系水素分離 膜の実現を目指して研究を行っている。2―2.燃料電池用固体電解質使いやすさ・寿命の観点から切望されている中低 温域における燃料電池用固体電解質の開発を念頭に 置き、高分散・易焼結性ナノ希土類ドープセリア粉 末(平均粒径15-30nm)の合成、ナノサイズ(15- 30nm)における粉末形態制御(球状から柱状まで)、 100-300nm程度の粒径を有する高密度焼結体の作製 と特性評価、サブミクロンサイズ(1―3ミクロン) の粒径を持つ高密度焼結体の原子レベルにおける微 細構造の特徴の解析と導電特性の相関性に関する検 討などを行い、これまでにない、ナノからサブナノ レベルにおける微細構造設計による燃料電池用高性 能固体電解質の作製と評価を行っている。また2003 年度から、主として高分子型燃料電池用電極材料な らびに固体電解質のナノレベルの微細構造と特性の 相関性に関する研究も開始した。2―3.熱電材料中温廃熱(200～500℃)用材料として実用的なn- PbTe系、p-Pb1-xSnxTe系およびp-AgSbTe2系、重金属 を含まない次世代の中温用材料としてp,n-FeSi2系と n-Mg2Si系を研究対象とした。平成14年度からは世 界でも一例しかない高分子系について、低温廃熱 (～100℃ ;体温など)用材料として研究開発を開始 した。実用を目指す場合、純粋な材料研究だけではNGで ある。材料と電極を接合する技術、用途に合ったモ ジュールを形成する技術など、総合的な実用化技術 の開発も必要になる。本研究グループでは企業と共 同で電極構造開発も実施しており、材料と社会との 関わりを真正面にすえた研究開発を推進している。3. 5年間の研究成果概要以上のような目的、フィロソフィーの元に環境エ ネルギー材料の研究開発に取り組み、グループ全体 として5年間で以下のアウトプットおよび外部との 連携を達成した。査読付原著論文:102件プロシーディングス:65件特許出願:26件、特許登録:5件外部競争資金獲得実績 :科研費特定領域研究(NANO IONICS)、科研費基盤C (2件)原子力試験委託研究費JSPS日豪二国間国際共同研究助成(2回、4年 間)、JSPS日英国際ワークショップ開催助成、 (株)化研研究助成、岩谷財団研究助成国際共同研究覚書(MoU)締結機関クイーンズランド大学電子顕微鏡センター(豪) アルフレッド大学セラミックスカレッジ(米国) チャールズ大学数理物理学部(チェコ共和国) セントアンドリュース大学化学科(英国) スイス連邦材料研究所(EMPA)(スイス) 高麗大学物質材料工学科(韓国) 忠南大学(韓国)連携ラボ東北大学多元物質科学研究所連携大学院千葉工業大学次に対象材料毎の研究トピックスを述べる。3 .1水素分離膜材料V-Ni合金は温度の低下とともに水素透過度が増大 するV本来のユニークで魅力的な性質を保ち、200 ～300℃のような低い温度での使用に特に有望であ る。0.05mol%のTiの添加により、合金に含まれて いる酸素などの不純物によるトラッピングの影響 (不純物が水素原子を捕捉することによる拡散の妨 害効果)が取り除かれ、より高い水素透過度を示 す。本合金を水素分離膜として用いて水素透過流量 (処理能力)を増大させるためには、膜を薄く加工 する必要がある。これまでに、アーク溶解したV- 15Ni合金のインゴットを一旦1000℃以上の高温で熱 間圧延または鍛造して凝固組織を破壊してから冷間 圧延することにより、6cm巾で厚さ20μmまでの箔 が得られている。この冷間圧延で得られた箔にスパ ッター法でPd-Ag合金を被覆した複合膜は、同じ厚 さのPd-25Ag合金の理想値よりも1.4倍の性能を示 し、これまでに300℃水素圧1気圧において 0.2mol/m2s1の水素透過流束が得られている。システム中で用いるためには、耐水素脆性や溶接 性などを調べることも重要である。耐水素脆性に関 連して、水素透過を行った後の試料の残留水素量を 昇温脱離法により検討した結果、放出水素量は膜の 厚さが薄いほど、また透過試験後のガス排気時間が 長いほど減少するが、膜厚が50μm程度になると、 ごく瞬間的な排気によって完全にバックグラウンド まで低下することが明らかとなった。これにより本 合金を用いた水素分離システムのシャットダウン時 に瞬間的にガス排気を行うと、膜中の残留水素量は ゼロとなり、水素化物の生成等による割発生の可能 性は低い事が明らかとなった。図1(左)は、V-15Ni合金を冷間圧延して得られ た40μmの箔をパイプ状に丸めて溶接し、さらにSUS フランジに溶接した構造体の写真であり、(右)は 40mmの箔を波型に加工したものである。レーザー 溶接時の入熱量・出熱量の制御により、ガスリーク のない強固な接合が可能となった。このように本合 金は溶接による構造体化や加工による大面積化が可 能であり、高い水素透過特性と合わせて、燃料電池 への水素供給用、オンボード改質器、新しい反応容 器であるメンブレンリアクターなどへの応用が期待 されている。図1V-15Ni合金の溶接性および加工性また、実際に水素精製に用いる際には、不純物ガ スの影響を検討する必要がある。図2はPd-Agを被 覆したV-15Ni合金膜についてH2Sを10ppm含む混合 水素ガスを用いて水素透過を行った際の水素透過度 の時間変化を示したものである。実験を行った200- 400℃の温度域において、H2Sの影響は認められず、 10ppm程度の濃度であれば被毒を受けないことが分 かる。H2Sは特にバイオ系の原料から水素を作る際 に含まれる場合が多く、本合金水素分離膜が、バイ オ由来のガスの最終段階の高純度化に適用可能であ ることを示している。図2 Pd-Agを被覆したV-15Ni合金膜について10ppm H2Sガスを含む水素ガスを用いた水素透過の時間変化3. 2燃料電池用固体電解質Gdドープ、Yドープ、Ybドープ、Smドープ、Dy ドーフ。、およびLaドープCeO2固体電解質ナノ粉末を、 共沈法により合成し、その焼結挙動、焼結体内ナノ 構造、ナノ構造が導電特性に与える影響、および好 ましいナノ構造の作成手法の検討などを行った。得られた粉末を用いて作成した焼結体は950℃程 度の温度以上において、理論密度の95%以上に高密 度化することが分かった。こうして得られた各種ドーパントを固溶したドー プドセリアの結晶相を電子線回折試験(SAEDP)に より検討した結果、SAEDPのバックグラウンドには、 セリアのホタル石構造には属さない、エクストラ反 射が確認された。またこのエクストラの周囲には、 ディフーズ・スキャッタリングが確認された。この ことは、バルク内にホタル石構造とは異なる、秩序 化した酸素欠陥を有する微小領域(マイクロ ・ドメ イン)が存在することを示唆している。マイクロ ・ドメインの結晶構造は、ドーパントの 種類により、おおよそ2種類に分類された。YやYb をドープしたセリアにおいては、c型希土類類似構 造を示し、Gd、Sm、Dy、Laなどのドーパントが固 溶した場合には、パイロクロア構造に類似した構造 をとることが分かった。こうしたドメイン構造は、XAFSによる構造解析 の結果、室温のみならず、500℃の温度においても 焼結体内に分散していることが分かった。さらに、 EELSを用いたドメイン内部の解析から、ドメイン 内部では、ドーパントの濃度が、マトリックスであ るセリア内部(ドメイン外部)に比して増加してい ることも分かった。以上のことから、ドメイン内部は、ドメイン外部 のマトリックス内結晶構造に比して、原子の位置 (原子間距離、面間隔)もドーパント濃度も異なるこ とが分かった。こうした領域は、高濃度のドーパン トを含有する組成ほど大きく現れることが分かった。 そこで、こうした導電率を低下させる要因であるマ イクロ ・ドメインサイズを最小化し、ナノサイズの ドメイン(ナノドメイン)化させることが、固体電 解質の高性能化には必要であることが分かった。図3には、こうしたマイクロ ・ドメインサイズを 最小化する方法として、易焼結性ナノ球状粒子を用 いて、通電焼結と常圧焼結を組み合わせた焼結法に より作成した固体電解質の特性と微細構造の関係を 示す。この図から、常圧焼結によるDyドープセリ ア焼結体では、粒径が減少するに従い導電率が低下 する傾向を示すが、本手法を用いて作成した焼結体 では、その特性の低下がなく、組成の最適化を行う ことで、さらに特性は向上し、ドープドセリアの中 でも高い特性を示すGdドープセリアにならぶ特性 が現れることが分かった。こうした2種類の焼結体図3 焼結体の粒径と電気化学的特性値との関係 のナノレベルにおける微細構造を観察すると、導電 率が向上した焼結体内のドメインサイズは、2nm程 度の大きさまで、減少しており、ナノレベルにおけ る微細構造の変化が、低温領域の特性に大きな影響 を与えることが分かった。(図4)図4 ドープドセリア焼結体中のドメインサイズと伝 導度の関係固体電解質材料の他にも、400度以下の温度にお いてメタノールや低純度の水素を燃料とする電極を 将来的に開発する目的で、白金・ピュアセリア系複 合電極の開発を通して、現状の白金・ルテニウムに 代わる高性能電極の提案を試みた結果、オンセット ポテンシャルや電流密度の両方において、既存の合 金電極を超える性能を持つ複合電極を開発した。3. 3熱電材料PbTe系とPb1-xSnxTe系は300～500℃で熱電性能が 極大値を示す材料系で、典型的な中温用材料である。 これらで構成される熱電モジュールは極地用電源と して実用化されているが、 本研究グループでは一層 の性能向上と安定化を目指した。温度勾配に沿って 材料内部でキャリア濃度を傾斜させることは発電出 力を数十%向上させること、添加剤の多重ドープは 添加剤からのキャリア発生効率を2倍以上高めるこ とを明らかにした。AgSbTe2系は中温用p型材料の中で最も高性能な 材料系の一つである。しかし100～300℃で構造変態 を起こすために、熱サイクルによって内部亀裂が生 じるという問題点があり、宇宙探査以外に用いられ ることはなかった。「この材料を工業廃熱利用の発 電に応用できないか」という視点から、組成の精密 制御による構造の安定化法を明らかにした。FeSi2系とMg2Si系材料は地殻に豊富に存在し、環 境への影響が少ない元素を用いた次世代の材料であ る。合成プロセスにの諸因子が熱電性能に及ぼす影 響を明らかにし、熱電性能を向上させることを目指 した。FeSi2系は熱電性能が低いという欠点があった。 MnおよびCoを添加したFeSi2における熱電特性の結 晶粒径依存性を明らかにし、特に冷間プレス焼結法 では熱電性能の高い熱電素子となる出発粉末粒径が p型で1.1μm、n型で2.12μ mであることを見出した。Mg2Si系はMgの沸点がSiの融点よりも低いために 原料を溶解合成することは困難であったが、熱処理 炉内で液体Mgと固体Siを反応させる液―固相反応法 とHP法による合成法を見出した。これにより合成 した試料はほとんど単相のMg2Siで、焼結体の密度 比は94% (1.88g/cm3)であった。焼結体の熱電性能 は従来法に匹敵するZ=3.5× 10-5K-1となった。これ まで困難であったMg2Si0.5Sn0.5組成の単相試料を得る ことも可能となり、キャリア濃度制御した 7500ppmSb添加試料では、図1に示すように、約 600KでZT=1.2という高性能の実現に成功した。図5 Sb添加Mg2SiO. 5Sn0.5における無次元性能指数 ZTの温度依存性(Z :エネルギー変換効率、T :絶対温 度)多くの熱電材料は、1)重金属系主体の無機材料、 2)高い製造エネルギー、3)低い耐衝撃性、4)乏 しい資源などの問題点を有する。これらの問題への 対応をベースとして、さらにユビキタス電源やLSI などの新規応用分野を目指すと、豊富な資源、安全 性、低製造エネルギー、軽量性、耐衝撃性などの要 件を兼ね備えた材料として導電性高分子が有望であ る。現在、高分子系熱電材料の研究成果を公表してい る研究機関は世界で4グループである。日本が3グ ループ、カナダが1グループである。山口東京理科 大グループが2000年と最も早く、2003年から当研究 グループ、2004年にSIMS (カナダ:Steacie分子科学 研究所)グループ、2005年に産総研グループが研究 成果の公表を始めた。東京理科大グループはポリア ニリン系を中心としているのに対して、我々のグル ープはポリチオフェン系が中心である。SIMSグル ープはバンドギャップの小さな高分子探査、産総研 グループは液晶性高分子で研究開発を開始したが、 次に述べる我々の研究成果を受けて、現在の研究対 象はポリチオフェン系にシフトしている。ポリチオフェン系高分子の熱電特性に対する側鎖 分子サイズの影響を基礎的に検討し、その結果を元 にして、図2に示すように、ポリチオフェン系の熱 電特性を飛躍的向上させ、高分子系熱電材料の新た な可能性を定量的に明らかにした。この研究成果が 引き金となって、日本のみならず、米国、カナダ、韓国においても高分子系熱電材料研究の裾野が広が りつつある。図6 高分子径熱電材料のゼーベック係数と導電率の関係4.環境エネルギー材料分野の動向・展望環境エネルギー材料の代表として燃料電池用固体 電解質を例に挙げて動向を見る。図7は固体酸化物 型燃料電池に関する論文のうち、実用化に近いシス テムで主に使用されているYSZ(部分安定化ジルコ ニア)に関するものとそれ以外との推移を示した。 どちらも1990年頃から大きく伸びているが、明らか にYSZ以外のものが伸びがより顕著であり、材料研 究・基礎研究への回帰が見て取れる。図7固体酸化物型燃料電池に関する論文のうちYSZ をキーワードに含むものと含まないもの環境エネルギー材料グループでは、金属、セラミ クス、半導体を中心に、最近では高分子までを視野 に入れて、画期的なエネルギー変換効率および高性 能と寿命の両立を、できるだけ環境負荷の小さい材 料・プロセスを用いて行うことを目指して研究に取 り組み、多くの成果を挙げてきた。地球の持続可能 性が危ぶまれる今、21世紀の材料研究は20世紀のそ れとは異なるあり方、社会との関係を築くことが求 められており、その構築に資する材料研究を続けて 行く必要がある。環境浄化材料グループの5年宇野光「現環境循環材料グループ2005.5異動」、加古哲也、張偉風、下村周一「現環境循環材料グループ2005.5異動」、松本武彦、 田村堅志「現環境循環材料グループ2005.5異動」、橋爪秀夫「現環境循環材料グループ2005.5異動」、山田裕久「現環境循環材料 グループ2005.5異動」、葉金花、姚偉峰、楊立群、横山信吾「現電力中央研究所2005.7異動」、王徳法1.環境浄化材料グループ人類は20世紀において、資源やエネルギーを、大 量に消費し、汚染物質を排出しながら発展を遂げて きました。その結果、自然の自浄能力、再生能力を 上回って環境に負荷を与え、地球環境の急激な劣化 を招きました。人類社会が健全に存続することがで きる可能性を高め、21世紀を「環境の世紀」と呼べ るような形で、未来世代に引き継ぐためにも、大気 環境・土壌環境・水環境の浄化、保全は必要不可欠 であります。環境浄化材料グループでは、微量認識、知的応答 など高機能な次世代環境浄化機能材料の開発を目指 しました。光触媒反応やホストゲスト反応などを環 境浄化や環境応答に適用する技術を開発・探索し、 新たな環境機能素子を実現していく基板の確立を進 めました。そのために高選択性新規ナノ有害物質除 去材料の開発および新規高効率可視光応答型光触媒 材料に注目し、高機能な次世代環境浄化材料の創製 を目指しました。特に最終年度は、新規可視光応答 型光触媒材料の創製に特化したグループとして活動 を行いました。2.高選択性新規ナノ有害物質除去材料の開発工業的に生産される化学物質(約10万種)は、そ の製造・使用・廃棄の過程で、人の健康や生態系に 悪影響を及ぼす化学物質として環境に排出され、環 境中へ拡散・蓄積することによって、地球環境の破 壊・地球環境問題を招いてきた。多様で複雑な様相 を持つ環境問題を克服・環境の浄化・保全を推進す るために、有害汚染物質を選択的に吸着・分離・分 解・除去する材料の創製を進めてきた。ナノ有害物質除去材料としては、特定の化学物質 に反応するサイズの空き間をもつ多孔質材料に注目 しました。ミクロ・メソ・マクロにわたる空き間お よび構造の制御、表面特性の設計、結晶形態の制 御・反応基の選定等を行い、有害汚染物質を選択的 に吸着・除去する材料の創製を目指しました。ゼオ ライトに代表されるナノポア系材料は、重金属イオ ンの選択的吸着剤としての機能が期待されていま す。また1990年代はじめに開発されたメソポア系材 料は、その特異な構造により有機金属錯体、有機物 吸着・除去等に大きな期待が寄せられています。し かし、いまだ十分な機能・化的安定性等は見出され ておらず、新規多孔質材料の創製が望まれていま す。有害陽イオン除去材料ミクロ細孔型の多孔質材料であるゼオライトに注 目した。ゼオライトは、構造中にナノメーターオーダーの規則正しい空隙構造(細孔)を持つ縮合アル ミノケイ酸塩で、大きな比表面積、陽イオン交換能 を持ち、吸着材や触媒担体として用いられている。 その陽イオン交換性ゆえに、生活廃水等による閉鎖 性水域・湖沼・河川の水質汚染の主因であるアンモ ニア除去、カドミウム、砒素等の重金属イオンの吸 着・除去材料として検討した。さらに天然鉱物をア ルカリ水熱処理することでアンモニウムイオン吸着 効率の高いゼオライトへ転換する技術についても検 討した(図1)。ゼオライトは、新規な細孔構造と その形状選択性などの特性の制御が可能であり、今 後のさらなる開発も期待されている。図1 天然ゼオライトのアルカリ水熱処理によって合 成したフィリップサイトのSEM像有害陰イオン除去材料水質汚染の主因の一つである排水中の陰イオン・ リン除去材料として、Al-OH基を含む化合物に注目し た。アルミナ1水和物であるベーマイトは、そのナ ノ粒子径、比表面積等の制御がソフトナノケミスト リー法により容易に可能であり、リン捕獲・除去材 として有用であることを明らかにした(図2)。その 薄膜化への検討も行った。さらに多核水酸化アルミ ニムウムイオンを架橋前駆体とする粘土層間ナノ多 孔体も同様に検討し、その利用・有用性を示した。図2 結晶性の異なるベーマイトの合成とそのリン吸着挙動多機能有害物質分離・除去材料陽イオン吸着能をもつゼオライト表面に、陰イオ ン吸着能をもつ層状複水酸化物(LDH)をコートし た新規多機能性水環境浄化材料を、ソフトナノケミ ストリーを適用して開発した。この材料は、陽イオ ン・陰イオン同時除去水質浄化材料として期待され る(図3)。生体材料として注目されているアパタイトは、難 溶解性で、水銀・カドミウム等の有害物質に対するイ オン交換能も有している。先と同様にゼオライト表 層にアパタイトを水熱処理法によりコートした高機 能性環境浄化材料を創製し、その有用性を評価した。図3 LDHをコートしたゼオライトLTAのSEM像有害有機物除去メソポア材料メソポア領域の細孔径を有する材料は、ゼオライ ト細孔では対応できないサイズの分子の関与する反 応、ゼオライト等のマイクロポア材料にない大きな ポアサイズの触媒担体、分子篩、吸着剤、包接化合 物のホストとして注目を浴びている。界面活性剤の 集合体を超分子鋳型として、構造制御をおこないメ ソ孔が規則的に蜂の巣状に配列した構造をもつメソ ポーラスシリカの合成とその評価を行った(図4)。 この材料はダイオキシン等の環境関連メソ分子の吸 着・分離・浄化、重油等のエネルギー関連メソ分子 の分解・軽質化、ビタミン・酵素等の医薬バイオ関 連のメソ分子の担持・精製などに対する物質として 注目されている。有機―無機複合系における超薄膜分子認識センサー、非線形光学素子、光電変換素 子、そしてEL素子というような機能性材料の開発 をターゲットにした有機無機ナノ構造薄膜の研究が 盛んである。これらの試みにおいて無機層状化合物 は有機分子を配向制御して機能増幅や層構造の強化 という効果をもたらしている。ラングミュア―ブロ ジェット(LB)法は気液界面に形成した単分子膜 を基板上に移し取り配向性の高い多層膜を作成する 技術として知られている。LB法を利用して粘土ナ ノシートと両親媒性金属錯体のハイブリッド膜の形 成技術を検討し、生活環境中の微量の化学物質に対 して生体反応に匹敵するような高度な選択性で分子 認識する材料技術の開発をめざした。図4 メソポアシリカへのアミノ酸吸着挙動3.新規高効率可視光応答型光触媒材料光触媒材料は、エネルギー変換及び次世代環境浄 化材料として近年多大な注目を集めている。しかし、 従来のTiO2光触媒は、活性が紫外線照射下のみに限 定されるという根本的な欠点があるため、効率が低 く、応用が限られてきた。光触媒科学やその関連産 業が更なる飛躍的な発展を遂げるためには高感度な 可視光応答型光触媒材料の開発が重要な鍵を握って いる。そこで、本研究グループでは、光触媒の応用 市場の大幅な拡大を目指し、可視光領域で活性な光 触媒の開発と実用に向けた高効率化研究を目的とし た。具体的には、バンド構造の制御によって可視光 領域に活性を示す可視光応答型光触媒を開発するこ とと、ナノテクノロジーを応用した表面ナノ構造制 御によって高効率化を図ることである。また、高効 率実現の指針を確立するため、光触媒のメカニズム 解明などの基礎研究も平行して行った。可視光応答型光触媒の創製と評価可視光応答型光触媒材料の開発は、これまで主に、 紫外線照射下でのみ高活性な二酸化チタンの修飾に よって進められてきた。例えば、酸化チタン、チタ ン酸ストロンチウムなどにNやSなどのアニオンを ドープした材料やVやCrなどのカチオン、そして、 LaとNといったカチオンとアニオンをコドープした 材料が可視光照射下で有機物を完全に分解できるこ とが報告されている。しかし、ドーピングにより大 量の欠陥が生じ、活性の向上を妨げている。また、 二酸化チタンなどの結晶構造を維持するため、ドー ピングできる量がごく微量であり、可視光化効果が 限定的であった(500nm程度まで)。そこで本グループにおいては、太陽光及び室内照 明に多く含まれる可視光領域で最大強度分布を有す る波長範囲(500～600nm)にも応答できる材料を 開発するため、二酸化チタンの枠組みにとらわれな い新規可視光応答型光触媒の設計・開発を行った。 材料設計においては、有機物等を分解するのに必要 な酸化還元力を保ちながら、結晶構造及び電子構造 の制御によってバンドギャップを小さくし、可視光 領域の広い範囲で光触媒活性を持つようにした。ま た、構成元素の価数、外殻電子配置、スピン状態、 軌道の局在性などをも考慮した。このような探索指 針に基づき、この5年間にわたって二十数種の新規 可視光応答型光触媒の開発に成功した:InMO4 (M=Ta, Nb, V)、MIn2O4 (M=Ca, Sr, Ba)、BaCrO4. BaCr2O4、BaM1/3Nb2/3O3 (M=Co, Ni, Cu)、MBi2O4 (M=Ca, Sr, Ba)、AgInW2O8、ABiM2O7、 ABi2M5O16 (A = Ag, Cs ; M = Nb, Ta)、Ba2In2O5/In2O3複合酸化 物など。最大550nm以上の可視光照射下において水 溶液から水素を発生する、或いは各種有機有害物質 を分解・除去することに成功した。中でも産総研と の共同研究で開発したNiドープInTaO4光触媒は世界 で初めて可視光照射下で水を水素と酸素に2対1の 化学量論比で分解できたことで注目を集めた。図5 可視光照射(波長>440nm)におけるアセトア ルデヒドの光触媒酸化分解による二酸化炭素への転化 率の経時変化図5に一例として最近開発したCaBi2O4光触媒に よるシックハウス症候群の原因物質であるアセトア ルデヒドの酸化分解データを示す。比較としてTiO2 を用いた実験も行った。図から分かるように可視光 照射下(λ>440nm)においてはTiO2を用いた場合、 アセトアルデヒドの分解によって発生する二酸化炭 素が微量にとどまった。しかし、CaBi2O4を用いた 場合は僅か20分の可視光照射で65%ものアセトアル デヒドが完全分解し、最終生成物の二酸化炭素へと 転化した。照射時間を延ばすと、転化率がさらに上 がり、約2時間後には80%の転化率を実現した。一 方、アセトアルデヒドの濃度は初期値の837ppmか ら0に減少した。また、図6にCaBi2O4の吸収スペクトル並びにア セトアルデヒド分解活性の波長依存性を示す。入射 した光の波長が長くなると共に、吸収率の低下と同 調して、アセトアルデヒドの転化率も徐々に下がる が、540nmのカットオフフィルターを使用した場合 でも明らかな活性が確認できた。さらに、CaBi2O4は工業的廃水の主成分であるメ チレンブルーの分解にも効果的である。図7に示す ように、TiO2では、可視光照射によるメチレンブル ーの分解速度は非常に緩慢で、自然減衰と大差がな かったが、CaBi2O4光触媒が存在する場合には、可 図6 CaBi2O4光触媒によるアセトアルデヒドの二酸化 炭素への転化率の波長依存性及びCaBi2O4光触媒の吸収 スペクトル視光のみの照射条件においても比較的早いレートで メチレンブルーを分解・脱色することができる。こ のように、開発したCaBi2O4は、室外のみならず紫 外線が少ない室内での応用に可能性を秘めた光触媒 特性を持っている。その上、気相のみならず液相に も応用することも可能など多用途な特性を持ち、今 後の実用化が期待される。図7 可視光照射(波長>420nm)におけるメチレン ブルー濃度の経時変化表面ナノ構造制御による高効率化光触媒反応において、光励起した電子と正孔の表 面への素早い移動、再結合の抑制、電荷分離などが 極めて重要である。我々は開発した材料の高効率化 を図るため、溶液法合成による微粒子化、及びナノ スケールでの金属酸化物の複合化を行うことによっ て、光触媒材料の高効率化に成功した。図8に一例として固相反応法(1230℃で48時間焼 結)とゾルゲル法(最終焼結温度:750℃)で作製 したBaCo1/3Nb2/3O3光触媒の水素発生速度を比較し た。固相反応法で作製した試料は焼成温度が高いた め、粒径が数百ナノメートルに成長し、比表面積は 僅かに2.2m2 ・ g-1であった。一方、ゾルゲル法で作 製した試料の粒径は30nm程度で、比表面積は固相 反応法で得られたそれの約9倍の19.7m2 ・ g-1にもな った。これら粒子サイズ、比表面積の差が光励起し た電子や正孔の表面まで移動する確率及び反応活性点に影響を及ぼし、両者間の光触媒としての活性で は8倍ほどの差が得られた。図8 BaCo1/3Nb2/3O3光触媒材料の作製法の違いによる メタノール水溶液からの水素発生量の照射時間依存性。 実験条件:300W Xeランプ、照射光波長:>420nm、 0.1mass%Pt担持、メタノール:15vol%また、光照射により生成した電子とホールの有効 分離が光触媒の活性に支配的であることから、異種 材料をナノスケールで複合化させることによって、 新しいタイプの光触媒材料の開発を試みた。その結 果、新規ナノ構造複合酸化物光触媒Ba2In2O5/In2O3を 開発した。この複合系を構成するそれぞれの酸化物 は単独では低い光触媒活性しか示さないが、高温で 焼結することにより、紫外線及び可視光照射下にお いても水から水素と酸素を生成できるようになっ た。高分解透過電子顕微鏡を用いて調べた結果、複 合酸化物はオーミックな接合状態にあるナノ微粒子 構造をしていることが分かった。このような接合状 態にある酸化物は、個々の酸化物の伝導帯及び価電 子帯のポテンシャルの間に適切な差があれば、光励 起した電子とホールが別々な酸化物微粒子上に移動 しやすいと考えられる。その結果、電荷の空間的な 分離を促進し、再結合を押さえることによって、光 触媒活性の発現に繋がったと推測できる。光触媒のメカニズム解明新規材料の探索と平行し、より高効率な光触媒開 発に有効な指針を与えるため、物性解析的実験手法 と第一原理計算理論を駆使することにより、光触媒 反応における活性制御因子の究明を行ってきた。図9に最近開発した新規光触媒系RVO4 (R=Y、 La-Lu)による水素発生活性を示す。これらの化合 物は同じ結晶構造を有しながらも、図に見られるよ うに大変強い希土類元素依存性を示した。Y、Gd、 Luを含む化合物は他の希土類化合物に比べ、光触媒 活性が極端に高いことが判明した。これら3種類の 希土類元素の外殻電子の配置は、それぞれY: 4d15s2、Gd : 4f75d16s2、Lu : 4f145d16s2である。つま りYにはf電子がなく、Gdはf軌道が半分充満され、 またLuではf軌道が完全に充満されている状態であ 図9 RVO4 (R=希土類)複合酸化物によるメタノール 水溶液からの水素発生速度の希土類依存性。実験条 件:400WHgランプ、0.2mass%Pt担持、メタノール:15vol%る。第一原理に基づく理論計算から、RVO4 (R=Y、 Gd、Lu)のバンド構造はいずれも伝導帯が主にV3d、 価電子帯がO2pによって構成されることが分かっ た。またR=Gdにおいては、空のGd 4 f軌道が伝導帯 の下端付近に位置し、充満したGd 4fは価電子帯を 構成するO2p軌道と混成する模様である。さらにLu 系では完全に充満した4f軌道が価電子帯の下端付近 に下がってくる。他のf軌道が中途半端に埋まって いる希土類系の場合について、現段階では精度の高 い計算が困難であるが、上記3種類の化合物のバン ド構造の計算結果から、Rの未充満4f準位がV3dと O2pの間に位置し、充満4f準位は価電子帯の近傍に あると推測できる。また、4f電子数の増加と共にこ れら4f準位が次第に低下し、特に充満4f準位はO2p 準位の下端までに下がると考えられる。このことか ら、R = Y、Gd、Lu以外の希土類化合物の場合、4f 準位が光励起キャリアのトラップセンターとなりや すいため、これら化合物の低活性を招いた要因と解 釈される。電子構造が光触媒活性に強い影響を及ぼ していることが明白である。ほかにはラマン分光法を用いて光触媒化合物にお けるフォノンの振動モードを調べ、キャリアの移動 度と光触媒活性との関連を明らかにした。以上のように、この5年間の研究を通じて、新規 可視光応答型光触媒材料の可能性と多様性を示した と共に、より高効率材料の実現に重要な設計指針が 得られた。今後は本研究で得られた知見を生かし、 変換効率のブレークスルーを目指して新たな材料開 発に挑むと共に、環境とエネルギーの両方の視点か ら、開発した材料の高機能化・実用化を図っていく 予定である。軽量環境材料グループの2年井島清「旧環境循環材料グループ2005.5異動」、宇都宮裕「現大阪大学大学院2004.10異動」、大野浩美、島田正典「旧環境循環材 料2005.5異動」、染川英俊、中島謙一「旧環境循環材料グループ2005.5異動」、原田幸明「現センター長兼軽量環境材料グループ」、 向井敏司、山田勝利「旧環境循環材料グループ2005.5異動」、芳須弘「旧環境循環材料グループ2005.5異動」、V.Gartnevoa「現 Charles University in Prague 2004.9～2005.9在籍」、A. Jager「現Charles University in Prague 2004.9～2005.9在籍」、H.-S. Kim「旧冶金グ ループ2005.10異動」、F. Fereshtehsaniee「現Bu-Ali Sina University 2005.2～8在籍」1.軽量環境材料グループの目標地球環境にやさしい構造材料を開発するために、 構造材料の精製から廃棄までのライフサイクルを評 価しました。例えば、飛行機、列車、自動車等の輸 送機に使用されている構造材料のライフサイクル で、エネルギー消費は稼働中が最も大きな割合を占 めています。そこで、(ⅰ)構造物の軽量化により、 稼働用エネルギーの節約とCO2やNOx等の排出ガス の低減を実現すること、および、(ⅱ)リサイクルに 要するエネルギーの低い材料を主として開発するこ とにより、省資源に貢献すること、の2本の柱を基 礎として構造材料開発に取り組みました。また、軽 量化を推進するための高強度化のみならず、延性な らびに靱性を同時に付与することにより、持続性に 優れた安全な軽量素材開発を目指しました。2.軽量環境材料グループの活動経緯マグネシウムは密度にして鉄鋼材料の約1/4と構 造用金属材料中で最軽量であることから、環境負荷 低減の社会的要請を背景に構造用途への気運が高ま っています。また、マグネシウム合金は、素材を開 発する上で学術的に解決するべき課題が山積してお り、新規の合金開発も十分に可能であるため、世界 的規模で研究開発に拍車がかかっています。そこで、 構造用マグネシウム合金素材の開発に取り組みまし た。本研究では、溶質原子分布が強度と延性に及ぼ す影響についての研究からスタートしました。溶質 原子を用いた原子レベル欠陥によるマグネシウムの 高強度―高延性化に関する研究は、「第3回トヨタ 自動車先端技術研究公募」に採択されました。他方、 溶質原子のみならず、ナノ析出粒子の生成と分散状 態制御に関する研究にも着手し、強度―延性バラン スに優れた素材開発研究プロジェクトとして、「ナ ノボール状化技術による超軽量・高強度構造材料の 開発」にも取り組んでいます。ここでは、ナノ構造 解析グループとの共同研究を行い、原子レベルでの 材料構造解析を通じて、従来にない高性能材料の開 発に取り組みました。また、大阪大学との学独連携 を通じて、圧延プロセスを応用した高強度マグネシ ウム合金の共同研究にも取り組みました。3. 2年間の軽量環境材料グループの研究成果トピ ックス○平成16年度(2004)グループ発足年度は、素材開発研究対象を合金構 成の基礎的単位である結晶粒組織に置き、マグネシ ウムの結晶粒サイズおよび結晶面方位分布の改良に 注力した。プロセスは直接押出ならびに側方押出 (ECAE)を素材に施すことにより、結晶粒径を数百 μmから1 μm以下まで微細化するとともに、結晶 方位を比較的ランダム化することができた。その結 果、0.3at.%以下の低濃度合金であっても、溶質原 子の種類によっては降伏応力が300Mpa以上で、引 張伸び値が15%以上の合金創製が可能であることを 明らかにした。ここでは、溶質原子の分布を変化さ せるために温間で加工熱処理を施した。得られた材 料は図1に示すように、サブミクロン・オーダーの 均一微細結晶粒組織が形成されている。また、ナノ EDSを用いて濃度解析を行った結果、結晶粒界近傍 の溶質原子濃度が結晶粒内のものに対して約3倍の 値で高濃度配置されており、粒界近傍にネットワー クを形成していることがわかった。その結果、粒界 を強化することによる強度の増加とともに粒内変形 能が維持されることにより、従来のマグネシウム展 伸材にはない高比強度と延性が得られた。図1微細結晶粒マグネシウム合金のミクロ組織例マグネシウム合金の効果的な高強度化を実現する ために、ナノ構造解析グループとの共同研究を通じ て、Mg-Ca-Zn合金を例として時効析出物の形態制御 に取り組んだ。その結果、合金成分の適切な濃度の 存在を見出すとともに、その特異な原子分布形態 (図2)を確認した。図2 強化粒子の構成原子マッピング例(Mg-0.3Zn- 0.3Ca (at.%)、473K、60Ks時効材)○平成17年度(2005)長岡都市エリア産学官連携促進事業の一環として 「難加工性金属材料の低環境負荷製造技術の開発と そのLCA評価」(2004 ― 2006)を実行している。現 時点までで、マグネシウムの製錬のシステムフロー データを得てTMR分析を用いてマグネシウムの資源 生産性を検討した。その結果が下図であり、Mg1 kgあたりほぼ120―140kgの関与物質が必要とされて いる。図3 マグネシウム精錬のフローとTMRまた、実操業と経験的理論計算から、Mgの溶解、 一次圧延の基準とすべきエネルギー消費量を算定し た。その結果、約3MJ/kgが一次圧延に必要なエネ ルギーと推算された。一般構造材料と比較して非常に低い靭性を有する マグネシウムの高靭化に取り組んだ。結晶粒微細化 の効果は、純マグネシウムならびにAZ31合金の結 晶粒を1μm程度まで微細化することで、3割程度 の増加が可能であることを見出した。また、靭性増 加の一因として、変形組織観察から結晶粒微細化に 伴う非底面すべりの寄与が大きくなっていることを 確認している。さらに、加工ひずみ負荷による結晶粒内析出物の 球状化に取り組み、図4に示すような数十nmオー ダー析出物の均一分散化を実現した。その結果、図 5に示すような高強度化と同時に破壊靭性値の増加 が可能となった。図中に示す開発目標である、高強 度アルミニウム合金に匹敵する高強度―高靭性バラ ンスを実現するための材料組織の実現に着手してい る。図4ナノ球状析出物強化マグネシウム合金(Mg-Ca- Zn)のミクロ組織例図5マグネシウム合金の高強度―高靭性化の取り組 み大阪大学との学独連携研究では、マグネシウム合 金の重ね板圧延(ARB)を用いた結晶組織微細化に 取り組み、Mg-Li系合金の室温延性を維持しながら、 約3割の高強度化が実現可能であることを見出し た。4.軽量環境材料グループの研究分野の動向携帯用電子機器の軽量化のみならず、最近では自 動車等の軽量化を目的として、マグネシウム合金の 研究開発が世界的規模で推進されてきている。その 具体的対象は耐熱用鋳造合金創製、安価な板材製造 プロセス開発、既存のアルミニウム合金に匹敵する 強度-延性バランスを有する合金創製である。海外 では、独・米・中・韓など主要国における国家主導 プロジェクトが遂行されており、国内でも多数の地 域研究コンソーシアムなどが立ち上がっている。素 材およびプロセス開発をバックアップする系統的基 礎研究が重要である。5.組織運営上の問題点特になし9強磁場研究センター強磁場研究センターに関する5年木戸義勇、浅野稔久、阿部晴雄、荒川隆之、池田龍一、伊藤喜久男、宇田雅寛、大木忍、大塚秀幸、岡田秀彦、小原健司(現金 沢工業大学教授2004年3月31日辞職)、神谷宏治、北島厚夫、北濱康孝、木村恒久、木村史子、木村恭之、木吉司、小菅通雄、 後藤敦、佐藤明男、品川秀行、清水禎、関川重芳、高澤健、田村守孝、丹所正孝、段塚知志、常程康、出口健三、藤部康弘、永 井秀雄、中原康晴、新岡十三男、二森茂樹、沼澤健則、Hao Xinijang、端健二郎、朴光哲、樋口明年、廣田憲之、藤戸輝昭、前 田実、松本真治、松本文明、村上美和、山本裕輔、湯山道也、吉成明、若山信子和田仁(現東京大学・大学院新領域創成科学研究科教授2004年3月31日辞職)、吉原一紘(2004年4月1日から31日までセンター 長)機構内の異動 竹内孝夫、伴野信哉(現超伝導材料研究センター金属線材グループ2002年異動)1.はじめに強磁場を用いた物理現象の研究は欧米を中心に行 われてきましたが、日本の定常強磁場施設は主に超 伝導線材の評価に特化して整備され、線材開発を推 し進めてきました。一方、最近になり、中国と韓国 ではそれぞれ30～40T級の水冷マグネットとハイブ リッドマグネットを導入し、有機物、半導体、磁性 体などの物理学的な基礎研究を行う計画が現実もの となってきました。ところで、強磁場を用いてNMR 等の物性研究を行うには、磁場変動が極めて低いな ど磁場の質の面で極めて高いものが要求されます。 今回、センターでは使用している電源の大改造を行 う事が出来ましたので、今後は超伝導線材の評価と 開発研究のみならず、ナノ領域の構造解析、ナノ物 質の物性解明など幅広い応用展開が大いに期待出来 ます。次に強磁場研究センターの機構内の位置づけと研 究内容などについて述べます。本センターの元とな った材料研究所材料基盤研究センター強磁場研究グ ループは2000年4月1日に旧金材研の極限場センタ ー強磁場ステーションを元に発足しました。特徴は 世界で第2位にあたる40T級のハイブリッドマグネ ットを有して超伝導線材の開発に行ってきた事で す。代表的成果としては、これまでに、世界1位と 2位の強磁場NMRマグネットを完成した事で、それ を用いた蛋白質構造解析や材料の微細構造評価研究 をおこなっています。その他、本センターには2台 の20T超精密マグネットをはじめ、最大発生磁場が 10Tから13Tの無冷媒超伝導マグネットを多数有し ていてハイブリッドマグネット同様、広く外部共同 利用に供しています。また、本センターでは極低温 発止技術の開発並びに幅広い強磁場の利用方法につ いても研究しています。2.磁場発生技術グループ強磁場研究センターでは、1976年の17.5T超伝導 マグネットに遡るマグネット開発の技術を継承し、 発展させてきました。この5年間も、世界最先端の 強磁場発生施設を陳腐化させることなく 一層の高度 化を進めるとともに、さらに一歩進んでユーザーの 目的に沿ったテーラーメイド磁場の発生にも取り組 みました。5年間で自主開発したマグネットは下記の通りで す。何れも特徴のあるマグネットであり、高く評価 されています。強磁場での臨界電流密度および強度をそれぞれ向 上したNbsSn線材を使用して、920MHz (発生磁場 21.6T)および930MHz (発生磁場21.9T)の高分解 能NMRマグネットを開発しました。何れも、開発時 点でのNMRマグネットの世界最高磁場を更新してい ます。920MHz高分解能NMRマグネットは2001年に 竣工した第1NMR実験棟でタンパク質の構造・機能 解明に、930MHz高分解能NMRマグネットは2003年 に竣工した第2NMR実験棟で固体の高分解能計測に 使用されています。またハイブリッドマグネット用水冷銅マグネット として、室温ボア径32mmで定常磁場の国内最高記 録を更新する37.9Tを発生する水冷銅マグネットお よび32mmを超えるボア径では世界で最も強い定常 磁場35.5Tを発生する水冷銅マグネット(室温ボア 径52mm)を開発しました。さらに強磁場研究センターの所有する磁場発生技 術を活用して、均一磁気力場発生マグネット、異方 性導電シート製造用スプリットマグネット、 Workbench超伝導マグネットと、個々の磁場応用に 特化した特徴あるマグネットを開発しました。磁場 の発生技術は新材料の開発、評価と密接に結びつい ています。その意味でも磁場発生技術の高度化は今 後一層重要になってきます。今後も、当センターで 蓄積してきた技術をより高度化し、様々なニーズに 応えていきたいと考えています。2.低温発生技術グループ低温発生技術グループは、大型マグネットや各種 小型マグネットの運転・維持を担当しています。設 立以来、電源・冷却設備・制御監視システムなどマ グネットの運転環境を整えてきました。また、外部 の研究者が利用するための仕組みづくりに取り組ん できました。利用者の研究成果は、年報の発行とと データベースの構築の形で外部に広報しています。冷凍機とマグネットの運転では、この5年間でメ ーカー依存体質から脱却し、自分達の技術で運転で きるように体制を立て直しました。さらに冷凍機と マグネットの双方の運転要員の技術交流をはかり、 一つの部隊で冷凍機と大型マグネットの両方の運転 をみられる新しい体制を構築した。これらの施策に より大幅な経費削減を実現しました。920/930MHz NMRの開発では、冷却システムの設計に携わりました。当グループの開発した温度差制 御方式を導入し、無人運転が可能な安定した冷却シ ステムを実現しました。NMRの設置後は、当グルー プの保守によりこれまで無事故で運転を継続してい ます。また、超伝導マグネットの性能を極限まで引 き出すための超流動ヘリウム冷却は強磁場施設にと って不可欠です。920/930MHz NMRでは無人運転で きるようにはなりましたが、それでも定期的な液体 ヘリウムの補給が不可欠です。当グループでは、1.8Kで冷凍能力が1W以上ある 小型冷凍機を開発しました。また、この冷凍機を用 いて伝導冷却の小型のマグネットを開発し、17.3T の高磁場発生に成功しました。さらに長期運転性能 の検証に取り組んでいます。3.磁場科学グループ磁場科学グループでは、磁場発生グループや関連 企業等と協力して、920MHz (溶液NMR用磁石で世 界最高磁場)および930MHz (固体高分解能NMRで 世界最高磁場)など、世界最先端の装置の開発を推 進してきました。開発した装置は、タンパク3000プ ロジェクトや新機能材料開発プロジェクトなどに活 発に利用され初めています。また、気体分子の電子構造やダイナミクスに対す る強磁場の効果を、様々なレーザー分光技術を駆使 して研究しています。これまでに、水冷銅マグネッ トが発生する25Tの強磁場中でレーザー誘起蛍光励 起スペクトルが測定可能な装置を開発し、励起分子 に対する強磁場効果を詳細な観測に成功しました。 さらに、強磁場中に発生した分子線をレーザー多重 共鳴法によりイオン化し、飛行時間型質量分析法に より質量分析して検出する装置も開発しました。こ れにより、強磁場中における質量分析分子線分光が 可能になりました。4.材料プロセスグループ当グループは磁場利用の立場から、磁場配向、磁 気マイクロパターニングを中心に、フィラー/高分 子複合材料系の、磁場配向、磁気プロセッシングの 基礎・応用研究を発展させることを目指しました。 また、変動磁場を印加することにより、二軸結晶の 三次元配向化ができることを発見しまた。熱と磁性との関わりの研究では、強磁場中で磁性 材料が示す発熱・吸磁現象(磁気熱量効果)や熱輸 用特性を応用した実用材料やシステム機器への応用 を進めました。これれは、我々の開発したガーネッ ト系セラミックス磁性材料が性能の要となっていま す。また、新規に開発した酸化物磁性体Gd2O2Sは、 超伝導機器の冷却に不可欠な4K冷凍機の性能を飛 躍的に高めることを実証しました。その他、磁気アルキメデス浮上法を利用して多成 分の精密分離、弱磁性物質間の双極子間相互作用に よる自己組織化を見出しました。また、弱磁性物質 に作用する磁気力の利用について研究しています。高勾配磁気分離技術による環境ホルモン、ダイオキ シン等の除去による環境水浄化技術、使用済み核燃 料の再処理に関する技術開発、条件最適化のための シミュレーションコードの開発を行ないました。磁場発生技術グループの5年木吉司、浅野稔久、伊藤喜久男、松本真治1.磁場発生技術グループの沿革磁場発生技術グループの形成は金属材料技術研究 所極限場研究センター強磁場ステーション変動磁場 ユニットに遡ります。物質・材料研究機構設立時に は材料研究所材料基盤研究センター強磁場研究グル ープ第2サブグループとなり、2002年4月1月に強 磁場研究センターが発足したのを機に磁場発生技術 グループとなりました。特別研究員、特定分野業務 員や非常勤職員については多くの出入りがありまし たが、職員4名の変更はありませんでした。2.磁場発生技術グループの役割当グループの役割は1976年の17.5T超伝導マグネ ットに遡るマグネット開発の技術を継承し、発展さ せることにあります。この役割は1988年に開始され た超伝導材料研究マルチコアプロジェクトの一環と して、ハイブリッドマグネット等の大型マグネット が整備されたことに伴い、さらに重要となりまし た。現在は、世界最先端の強磁場発生施設を陳腐化さ せることなく一層の高度化を進めるとともに、さら に一歩進んでユーザーの目的に沿ったテーラーメイ ド磁場の発生にも取り組んでいます。3. 5年間に開発したマグネット3.1.強磁場NMRマグネット強磁場での臨界電流密度および強度をそれぞれ向 上したNb3Sn線材を開発することで、920MHz (発生 磁場21.6T)および930MHz (発生磁場21.9T)の高 分解能NMRマグネットを開発しました。NMRマグ ネットは試料空間の磁場の空間的均一度と時間的安 定度が極めて優れていることが特徴です。開発した マグネットは何れも、開発時点でのNMRマグネット の世界最高磁場を更新しています。920MHz高分解能NMRマグネットは理化学研究所 ゲノム科学総合研究センターとの共同研究でタンパ ク質の構造・機能解明に、930MHz高分解能NMRマ グネットは固体の高分解能計測に、主として使用さ れています。3. 2.水冷銅マグネットハイブリッドマグネットは超伝導マグネットの内 側に水冷銅マグネットが組み込まれた構造となって います。水冷銅マグネットは銅合金のコイルに大電 流を通電し、コイルの発熱を大量の純水で冷却する ことで強磁場を発生しています。過酷な環境で使用 されるため、1年程度で交換が必要となります。こ のため水冷銅マグネットを定期的に製作していま す。当グループでは単に同じものを製作するのではなく、より効率的に磁場を発生するために改良を続け ています。その結果として、室温ボア径32mmで定 常磁場の国内最高記録を更新する37.9Tを発生する図1920MHz高分解能NMRマグネットおよび930MHz高分解能NMRマグネット図2 室温ボア径32mm用水冷銅マグネットに 使用したビッター板図3 室温ボア径52mm用水冷銅マグネットに 使用したビッター板水冷銅マグネットおよび32mmを超えるボア径では 世界で最も強い定常磁場35.5Tを発生する水冷銅マ グネット(室温ボア径52mm)を開発しました。3. 3.テーラーメイド磁場の開発当グループの持つ磁場発生技術を使用して、個々 の磁場応用に特化したマグネットを開発しました。 (a)均一磁気力場発生マグネット科学技術振興事業団・戦略的基礎研究推進事業 「磁気力を利用した仮想的可変重力場におけるタン パク質の結晶成長」(1997～2002年)のために、試 料空間内に均一に制御された磁気力場を発生する冷 凍機伝導冷却型超伝導マグネットを開発しました。 直径10mm、高さ10mmの試料空間での磁気力場の軸 方向、径方向誤差成分をそれぞれ1%および2 %以 下に制御し、401.5T2/m (中心磁場11.5T)を発生し ました。さらに強磁性体のリングと円盤で構成され る磁気力ブースターを組み込むことで、代表的な反 磁性である水を浮上できる1400T2/m以上の磁気力場 (1546T2/m)を発生することに成功しました。(b)異方性導電シート製造用スプリットマグネット文部科学省・科学技術振興調整費「強磁場を利用 した高機能導電デバイスの開発」(2002～2004年) のために、室温口径400mm、横方向水平ボア(幅 321mm、高さ73mm)を有し、中心磁場3Tを発生 する冷凍機伝導冷却型超伝導マグネットを開発しま した。ポリマテック(株)と共同で、本マグネット を組み込んだ異方性導電シート製造装置を組み立 て、直径0.15mmの電極が0.25mmのピッチで78,400 極整列した異方性導電シートの試作に成功しまし た。(c) Workbench超伝導マグネット従来の超伝導マグネットは円筒形状の中心部を使 用するため、試料の観察、処理に様々な苦労が伴い ました。そこで平面上に磁場を発生することのでき る冷凍機伝導冷却型超伝導マグネットを開発しまし た。図6のように完全にオープンなスペースを片側 に確保した状態で、永久磁石で得られる磁場の2倍 以上である3.4Tを発生しました。磁気分離を当面の 応用としていますが、磁場中でのX線回折や各種磁 場プロセスへの適用が期待できます。4.今後の展望物質・材料研究機構では異質と見られやすい研究 分野ですが、磁場の発生技術は新材料の開発、評価 と密接に結びついています。その意味でも磁場発生 技術の高度化は今後一層重要になると考えていま す。NMRスペクトロメータの分野では1GHz (磁場 23.5T)を発生するマグネットが切望されています し、ハイブリッドマグネットを使用した、超伝導マ グネットでは発生困難な磁場でのNMR計測の試みも 開始されています。磁場応用の分野でも冷凍機伝導 冷却型超伝導マグネットの進歩に伴い、強磁場の産業応用への適用が次第に増加しています。今後も、当グループでこれまで蓄積してきた技術 をより高度化し、これらのニーズに応えていきたいと考えています。図4均一磁気力場発生マグネット(2号機)図5 スプリットマグネットを組み込んだ 異方性導電シート製造装置図6 Workbench超伝導マグネット低温発生技術グループの5年間の活動佐藤明男、荒川隆之、北島厚夫、小菅通雄、関川重芳、段塚知志、永井秀雄、中原康晴、新岡十三男、二森茂樹、樋口明年、前 田実、松本文明、湯山道也、吉成敏明1.組織発足の経緯・目的強磁場研究センターは1994年日本における強磁場 研究の中核施設として発足した。40T級ハイブリッ ドマグネットを中核に世界最高級クラスの大型マグ ネットを揃え、共同利用磁場施設として広い分野の 研究者に利用されている。2.グループの活動経緯低温発生技術グループは、大型マグネットや各種 小型マグネットの運転・維持を担当している。設立 以来、電源・冷却設備・制御監視システムなどマグ ネットの運転環境を整えてきた。この施設で数々の 磁場の世界記録を打ち立てる一方、外部の研究者が 利用するための仕組みづくりに取り組んできた。この施設の一番の問題は運営経費である。当初は 冷凍機の運転もマグネットの運転もメーカーに委託 していたため多額の費用を要していたが、この5年 間でメーカー依存体質から脱却し、自分達の技術で 運転できるように体制を立て直した。さらに冷凍機 とマグネットの双方の運転要員の技術交流をはか り、一つの部隊で冷凍機と大型マグネットの両方の 運転をみられる新しい体制を構築した。これらの施 策により休日と予冷時の深夜運転にも柔軟に対応で きるようになり、かつ大幅な経費削減を実現した。2002年には920MHz NMRが稼動を開始し、続いて 2004年には930MHzが設置された。当グループはこ の冷却系の開発・設計に関わり、1.5Kまで安定して 冷却できる装置を開発した。この装置の大きな特徴 は無人で自動運転できることである。当グループの 保守によりこれまで重大なトラブルもなく運転を継 続している。表1共同研究所属別割合大学 公的研究機関 企業 計2001年 47 12 9 682002年 55 14 13 822003年 56 13 17 862004年 54 13 17 842005年 60 8 23 91図1共同研究契約数の推移3.利用者の推移施設の利用は、一部有料のものもあるが、そのほ とんどは共同研究によるものである。利用者は、表 1と図1の共同研究件数からも分かるようにこの5 年間で確実に増加している。920/930MHz NMRの線 材評価もこの施設で行われた。4.世界の強磁場施設の動向と将来展望ナイメーヘンでは施設・設備が更新され、中国で も40Tクラスの強磁場施設の建設計画が持ち上がっ ている。このように世界中で強磁場研究施設の重要 性は認識される中で我々の施設は運営費の削減を強 いられ、設備の更新もままならず、第一線の設備と しては次第に陳腐化しているのが実情である。このような状況を打開すべく、将来の施設改造を 視野に入れた冷凍システムの研究を行っている。超 伝導マグネットの性能を極限まで引き出すための超 流動ヘリウム冷却は強磁場施設にとって不可欠であ る。しかし、既存の21T超流動ヘリウム冷却システ ムは運転経費がかさむ。920/930MHz NMRでは無人 運転できるようになったが、それでも定期的な液体 ヘリウムの補給が不可欠である。当グループは、 1.8Kで冷凍能力が1W以上ある小型冷凍機を開発し た。また、この冷凍機を用いて実際に小型のマグネ ットで17.3Tの高磁場発生に成功した。さらに長期 運転性能の検証に取り組んでいる。これが完成すれ ば液体ヘリウムの補充を必要としない真の無人運転 システムが実現する。6.桜地区第2NMR実験棟photograph : National Institute for Materials Science磁場科学グループの5年木戸義勇、阿部晴雄、飯島隆広、池田龍一、大木忍、北濱康孝、木村恭之、後藤敦、品川秀行、清水禎、高澤健、丹所正孝、出 口健三、藤戸輝昭、端健二郎、宮部亮、村上美和、山本裕輔、若山信子磁場科学グループでは、磁場発生グループや関連 企業等と協力して、920MHz (溶液NMR用磁石で世 界最高磁場)および930MHz (固体高分解能NMRで 世界最高磁場)など、世界最先端の装置の開発を推 進してきました。開発した装置は、タンパク3000プ ロジェクトや新機能材料開発プロジェクトなどに活 発に利用され初めています。また、気体分子の電子 構造やダイナミクスに対する強磁場の効果を、様々 なレーザー分光技術を駆使して研究しています。こ れまでに、水冷銅マグネットが発生する25Tの強磁 場中でレーザー誘起蛍光励起スペクトルが測定可能 な装置を開発し、励起分子に対する強磁場効果を詳 細な観測に成功しました。さらに、強磁場中に発生 した分子線をレーザー多重共鳴法によりイオン化 し、飛行時間型質量分析法により質量分析して検出 する装置も開発しました。これにより、強磁場中に おける質量分析分子線分光が可能になりました。1.強磁場NMRとタンパク質構造解析NMRは高分子の構造を知るための最も強力な技術 です。そのため、医薬品の開発にはNMRが不可欠の 装置となっています。高性能な医薬品を開発するた めに、タンパク質の構造と機能との関係を解明する ことが世界的な重要課題です。それを実現するため に最も重要な技術要素はNMRの強磁場化です。磁場 科学グループでは、磁場発生グループ等と協力して、図1920MHz-NMR装置で測定したエチルベンゼンの 水素核NMRスペクトルが表紙に掲載されたJMR誌156 巻(2002年)溶液NMR用磁石としては世界最高磁場となる 920MHzにおいてNMR分析(図1)を実現させまし た。これは独法化する以前から13年間に渡って継続 してきた国家プロジェクトの成果であり、開発した 技術は、その後、タンパク3000プロジェクトとの共 同研究としてタンパク質構造解析に活発に利用され ています。2.強磁場固体NMRと固体材料の分析本来、NMRは周期律表の約90%の元素に対して分 析可能(図2)ですが、従来は磁場が低かったため に、水素や炭素など主に3元素しか分析対象にでき ませんでした。他の元素が分析できない理由は、四 極子核であるために、20T以上の強磁場を用いない 限り実用的な分解能が得られなかったからです。 20T以上の磁場ならば、高分解能測定が可能になる 四極子核は、磁場が高ければ高いほど(図3)徐々図2 90%の元素がNMR分析可能(図中の青、赤、黄)、 しかし従来技術では主要3核種(H、C、N)だけでし た。NMR可能な核種のうち75%は四極子核(図中の赤)。 四極子核は強磁場によってのみ分析可能です図3四極子核における感度(縦軸)と分解能(横軸) の関係。等高線から、磁場が高くなるほど分析可能な 核種が増えますに増えていきます。非晶質物質や非周期構造など、 NMRでなければ分析できない構造を持った材料は無 数にあり、それを実現させるために、20T以上の強 磁場固体NMRの実用化が急務です。磁場科学グループでは、固体用NMR磁石としては 世界最高磁場となる930MHz分光計(図4)を開発 し、これまでに、酸素、アルミ、ホウ素、カルシウ ム、窒素、重水素などの四極子核において高分解能 測定を実現させました。図4と図5は分光計マグネ ットの写真と、得られた実験結果です。更に高い磁場を目指して、NIMSが保有する40Tハ イブリッド磁石を用いたNMR分析を実現させるため の基礎研究も継続的に実施しています。40T級の強 磁場は、ガラスなど非常に複雑な分子構造を持つ物 質の構造を解明するためには不可欠です。この40T ハイブリッド磁石もまた、独法化以前に実施してい図4 930MHz-固体NMR用装置。21.9Tの磁場を発生している図5 ポーラスアルミナの粉末試料の27A1MASNMRス ペクトルと、決定された構造た国家プロジェクトで構築した資産であり、ハイブ リッド磁石の新しい用途として期待されています。 現在、電源を改造中で、大幅な性能向上が期待され ています。3.強磁場NMRと量子コンピュータ量子コンピュータは電子商取引等に常用されてい る電子暗号システムを根底から変更してしまう革新 的技術として世界の科学者から注目されていま。今 日までのところ、量子コンピュータは、7ビットと いう非実用的段階とは言え、NMRによってのみ実現 されています。磁場科学グループでは、実用的な量 子コンピュータへ向けて克服すべき課題の基礎研究 を行ってきました。最も優先順位の高い課題は、レジスターの初期化 技術を開発することです。当グループでは、大阪大 学の北川勝浩教授のグループ等と協力して、核スピ ンの超偏極技術を半導体InPに応用(図5)した初 期化技術を開発しました。これによって、従来の初 期化率よりも約600倍の改善を実現することが出来 ました。同じく重要な課題として量子相関の構築技術を開 発するために核スピン間の相互作用を利用する方法 が有力です。しかし、この相互作用はほとんど調べ られていませんので、当グループでは半導体InPの InとPの間の核スピン間相互作用を実験的に調べる 方法(図6)を開発しました。その結果、核スピン 双極子相互作用よりも大きい間接相互作用が働いて いることが分かり、良好な量子相関を構築できる可 能性があることが分かりました。図6 光ポンピング法による超偏極技術を化合物半導 体InPに応用して初期化率を約600倍改善しました図7 In-P間の交差分極NMRスペクトル。この測定か ら1kHz以上の間接相互作用が働いていることを明らか にしました4.強磁場分子分光ゼーマン効果に代表される分子に対する磁場効果 は、古くから詳しく研究されてきました。しかし、 これまでは2T程度の弱磁場を用いた研究がほとん どであり、より強い磁場が引き起こす磁場効果につ いては、ほとんど研究されていませんでした。我々 は、これまで分子科学の領域で利用されることのな かった10Tを越える強磁場と、最先端のレーザー分 光技術を組み合わせて、分子の電子構造やダイナミ クスに対する新しい磁場効果の発見を目指して研究 を行いました。4.1 強磁場中高励起分子の分光研究分子内の電子は原子核に強く束縛されています。 このため、強磁場マグネットが発生する10T以上の 強磁場下でも、磁場による電子のエネルギー変化は、 電子の束縛エネルギーに比較すると1%にも達しま せん。ところが、高励起状態の分子では、電子に対 する原子核からの束縛が弱まり、10T程度の磁場で もその電子状態を大きく変化させることができる可 能性があります。強磁場中の励起分子の観測手段と して、25T (水冷銅マグネット)および10T (無冷 媒超伝導マグネット)の強磁場中で、気体分子のレ ーザー誘起蛍光励起スペクトルの測定が可能な装置 を開発しました。これらの装置を用いて、気体分子 の励起状態を強磁場中で観測し、強磁場による電子 構造変化を詳細に観測しました。さらに、マグネッ ト(10T)のボア内で二波長二重共鳴イオン化検出 分光法を可能とする装置を開発し、NO分子のイオ ン化極限直下の高励起状態を強磁場中で観測しまし た。その結果、高エネルギー軌道に励起された電子 が、強磁場により分子の周りをサイクロトロン運動 することにより生じたエネルギー準位(擬ランダウ 準位)を分子では初めて観測することに成功しまし た。図8強磁場中(6T)のNO分子の二波長二重共鳴スペ クトル4. 2強磁場中質量分析分子線分光装置の開発近年の分子科学の進歩には、分子線と質量分析法 を組み合わせた、質量分析分子線分光法の発展が大 きく寄与しています。この分光法を用いると、測定 対象のスペクトルと質量数の情報が同時に得られる ため、分子の解離ダイナミクスや原子・分子クラス ターの強力な研究手段となります。したがって、質 量分析分子線分光法を強磁場中で行うことができれ ば、分子のダイナミクスに対する強磁場効果の研究 や、クラスターに対する強磁場効果など、新規な研 究領域の開拓が可能になります。しかし、強磁場下 での分子線発生や質量分析は未踏の技術であり、実 現は困難であると考えられてきました。我々は、超 伝導マグネット(10T)のボア内にパルス分子線を 発生し、レーザー多光子イオン化した分子を、飛行 時間型質量分析法により質量分析して検出する装置 の開発に世界で初めて成功しました(図9)。これ により、ゼロ磁場下で行われてきた分子のダイナミ クス研究やクラスターの分光研究をそのまま強磁場 下に拡張することが出来ました。図9強磁場中質量分析分子線分光装置の概念図図10強磁場中質量分析分子線分光装置の写真5.強磁場中の顕微分光測定従来の分子分光測定は光に対する多数の分子の応 答の平均値(アンサンブル)を測定していますが、 測定空間を狭めるとともに計測感度を向上させる と、たった一つの分子(あるいは分子会合体)の応 答を計測することが可能になります。これは単一分 子分光と呼ばれます。我々は、平均化を排除して、 強磁場が個々の分子に与える影響を観測するため に、超伝導マグネット(10T)のボア内に光学系を 組み込み、強磁場中顕微分光装置を開発しました。 この装置を用いて、単一有機色素分子や単一色素会 合体に対する強磁場効果の測定を行い、顕著な成果 を得ることに成功しました。材料・プロセスグループの2年半木村恒久、宇田雅広、大塚秀幸、岡田秀彦、神谷宏治、木村史子、田村守孝、常程康、沼澤健則、廣田憲之、朴光哲、Hao Xinjiang安藤努 現東京大学大学院2005.6退職、小原健司 現金沢工業大学2004.3退職、盛岡弘幸 現大日本インキ2004.9退職、横 山和哉現足利工業大学2005.11退職、若山信子磁気科学グループ2004.4異動1.組織発足の経緯・目的・目指したもの強磁場発生技術の進歩に伴い、強磁場利用の重要 性が認識されるようになり、強磁場研究センターの 磁気セラミックスグループ、相変態グループ、磁気 分離グループ、新磁気科学グループに、新たに外部 より高分子グループが加わり、2003年9月に材料・ プロセスグループとして発足した。磁場発生と磁場利用は車輪の両輪であり、本グル ープでは、磁場利用の側から、材料プロセスの基 礎・応用研究を発展させることを目指した。日本を中心とする最近の「磁気科学」の急展開に より、強磁場が非磁性体全般のプロセッシングに有 効であることが明らかになってきているが、実際の 応用はまだ緒についたばかりである。共同利用の手 助けを通じて、あるいはグループ独自の先端的研究 を呼び水として、潜在的利用者を積極的発掘するよ う心がける。強磁場施設を有する当研究センターは、日本の磁 場応用をリードすべきとの立場から、シンポジウム の開催等を通じて、磁場利用の普及を図ることを目 指した。2.グループの活動経緯セラミックス磁性材料研究熱と磁性との関わりを調べ、強磁場中で磁性材料 が示す発熱・吸磁現象(磁気熱量効果)や熱輸用特 性を利用した実用材料およびシステム機器への応用 を進めている。磁気熱量効果を利用した磁気冷凍機は、極めて高 い効率をもつ次世代の冷凍方式である。NEDO水素 革新技術プロジェクトにおいて、水素液化磁気冷凍 の提案が採択され、磁気冷凍として初めての水素液 化実証試験が進行 中である(2003 ―2005年)。また、 超低温磁気冷凍装 置の開発が2005年 度よりJAXA宇宙 環境利用公募研究 に採択され、現在、 NASAと共同で宇 宙用冷却システム の開発を行ってい る。いずれにおい ても、新開発され たセラミックス磁 性材料が性能の要 図1水素磁気冷凍装置となっている。また、磁性に起因する巨大な比熱を応用した磁性 蓄冷材料の開発に成功している。開発された酸化物 磁性体Gd2O2Sは、超伝導機器の冷却に不可欠な4K 冷凍機の性能を飛躍的に高めることが実証されてお り、すでに日本及び米国で実用機に使用されている (2003―2005) 。相変態研究主として鉄系合金における種々の固相/固相変態 に及ぼす強磁場の影響について研究することにより 核生成・成長などの相変態のメカニズムを明らかに するとともに材料の組織制御に磁場がどのように利 用できるのかを解明する。これにより、材料の機能 を改善したり新たな材料を開発することを目的とす る。過去2年ほどは拡散変態に対象を絞って研究して きた。キュリー点以上においても磁場印加により変 態温度が上昇すること、変態kineticsが促進されるこ と、さらに変態組織が条件によっては磁場印加方向 に平行に伸長した配向組織になること、などを明ら かにしてきた。また、日本鉄鋼協会における研究会を組織し、全 国の磁場を利用する研究者30名弱とともにシンポジ ウム開催、論文特集号の発行、研究会開催などを行 った。当該分野は近年、フランス、韓国、アメリカ など海外における研究も盛んになっており、特に中 国における研究の進展が著しい。磁気分離研究磁気分離は磁場により分離対象物質を分離・除去 する技術であり、通常の膜フィルタ等と異なりフィ ルタ材自体が廃棄物にならない等の環境に優しい特 徴を持っている。我々はこの特徴を生かして、有害 物質の除去や廃棄物中の有用物質のリサイクル技術 の研究開発を行っている。その成果として、地熱発 電所から出る地熱水中のヒ素を、排水基準以下まで 取り除く、大量処理が可能な超電導マグネットを使 った地熱水を有効利用する経済的なシステムを開発 した。また、工場などからの排水に含まれる環境ホ ルモンやダイオキシン等の有害有機物質を効率よく 除去する磁気分離技術を開発した。現在は、更にガ ス中の有害な微小物質の分離除去や、使用済み核燃 料の再処理に応用可能な磁気分離技術の開発を行っ ている。新磁気科学研究空間的に変化する磁場の下で弱磁性物質に作用す る磁気力の利用について多角的に検討した。物質の 周囲媒体を制御して増強した磁気力により弱磁性物質を浮上させる磁気アルキメデス浮上では、物質の 持つ性質に依存して浮上位置が決定されるため、物 質の空間的な分離が実現する。これを利用して、血 液製剤やタンパク質などの生体関連物質が、わずか な構造の違いなどにより分離できることを実証し た。また、強磁場下では弱磁性物質間に磁気的な相 互作用が存在することを確認し、これを利用して、 多粒子系の構造制御が可能であることを実験と分子 動力学法によるシミュレーションにより示した (図2)。さらに、水の磁化率がわずかながら温度に 依存して変化することに着目し、磁気力を利用して 熱対流の制御が可能なことを見出した。これらの知 見は、今後、材料作製プロセスへ利用可能であると 期待される。このほか、磁場中での現象を微視的に その場観察するため、共焦点レーザースキャン顕微 鏡用ペリスコープを開発した。既に、磁場下での銀 の無電解析出時に 観測される特異な 形態形成のメカニ ズム解明に成功 し、今後、更なる 磁場影響の機構解 明に向け、有力な ツールとなると期 待される。高分子材料研究磁場モジュレーターを用い、局所的な磁場分布を 作ると、分布に応じて非磁性微粒子がパターニング される。この磁気マイクロパターニング法は、他の 方法に比べて、基板の化学的、物理的前処理が不要 であること、どの様な粒子(細胞からセラミックス に至るまで)に対しても適用できるという長所を持 つ。強い磁場を用いると、ナノ粒子もパターニング することができる。パターンのサイズは現在100 μm 程度であるが、リソグラフィーを用いたモジュレー ター作製を行えば、サブミクロンのピッチも可能と 考えている。有機結晶や高分子繊維は磁化率の異方性を持つの で、磁場中で配向する。この現象を利用すると、高図2多粒子系の構造制御分子マトリクス/ フィラー系の磁場 配向が行える。磁 場配向と上記マイ クロパターニング を組み合わせる と、微粒子の配向 パターニングが可 能になる。図3に は、カーボンナノ チュープの配向・ パターニングの結図3 カーボンナノチューブの配 向・パターニング化。ラインのピ ッチは600μm果を示す。モジュレーターの形状、磁場印加の方法を工夫することにより、FED用の電子放出源などへの応用が可能である。セルロースミク ロファイバーはリ オトロピック液晶 を形成することが 知られている。こ の液晶を強磁場下 におくことにより モノドメイン化す ることができた (図4)。さらに、 溶媒を蒸発させて図4 磁場によりモノドメイン化 したセルロースミクロファイバー 液晶フィルム化すると、均一な光学異方性フィルムを作 製することができた。磁場配向では新たな進展があった。特殊な時間変 動磁場を印加することにより、2軸結晶の2軸配向 化が可能であることが理論的に明らかにされ、現在 実証研究が進行中である。結晶微粉末の擬単結晶化 が可能となる。民間、大学との共同研究を積極的に受け入れ、そ れらのいくつかは特許出願をしている。3. 2年半の成果研究トピックス:セラミックス磁性材料、超低温磁 気冷凍装置、水素液化磁気冷凍、磁性蓄冷材料、磁 気分離、磁気アルキメデス浮上、磁場配向、磁気ト ラッピング、、固相/固相変態に及ぼす強磁場の影響 論文数:2003年9報;2004年12報;2005年29報 特許:2003国内(1件);2004国内(2件)、外国 (1件);2005国内(2件)、外国(1件)研究会開催:2003研究会a)1回 シンポジウムa,b)2回2004 研究会a,b)5回 シンポジウムa,b)2回2005研究会a,b)5回 シンポジウムa)1回、ISMS (国際シンポジウム)b)1回高分子討論会 の特定テーマ1回 PACIFICHEM2005中のシ ンポジウム1回a)日本鉄鋼協会、b)文科省特定領域「強磁場新機 能の開発」新聞掲載:2005年1月21日、日経新聞4 .研究分野の動向、展望「磁気科学」という新しい分野をベースに、磁気 プロセッシング分野が大きく展開しようとしてい る。科学的にチャレンジングなテーマが多く、又同 時に応用の裾野も広いので、産業に与えるインパク トも大である。日本発の分野で、各国の強磁場セン ターから日本の動向が注目されている。国内外にお いてNIMSの果たす役割は大きい。今後の一層の発 展が期待される。10 材料基盤情報ステーション材料基盤情報ステーションの活動八木晃一浅田雄司、阿部孝行、荒井良和、飯室茂、衣川純一、稲葉和男、内田亜希、宇都木栄子、遠藤恭子、大場敏夫、緒形俊夫、小野 嘉則、上平一茂、金丸修、木村一弘、木村恵、九島秀昭、久保清、桑島功、小林一夫、近藤正人、嵯峨修治、澤田浩太、篠原正、 柴田浩司、清水精子、下平益夫、進藤雄介、住吉英志、関谷紀子、高野香里、竹内悦男、田中秀雄、田中亘、谷口祥子、田原晃、 田淵正明、徐一斌、寺嶋由香里、長島伸夫、中野恵司、馬場晴雄、早川正夫、蛭川寿、深尾康秀、福澤安光、藤田充苗、藤塚正 和、藤本恵理、古谷佳之、細谷順子、細矢雄司、本郷宏通、前田芳夫、間下健太郎、松尾宗次、松岡三郎、宮崎秀子、宮原健介、 村田正治、山口弘二、山崎政義、山本耕助、横川賢二、吉野正崇、由利哲美、渡部隆、王海涛1.ステーション発足の経緯平成13年4月に機構が発足し、その年の10月に機 構のユニットの一つとして材料基盤情報ステーショ ンが発足した。発足時、ステーションには、ステー ション長と副ステーション長のみが配属され、その 後半年をかけてステーションの研究および業務内容 の検討、組織・体制の整備等がされ、関係職員が張 り付いた組織としてスタートしたのは翌年の平成14 年4月であった。当ステーションは、発足時、7つの研究グループ で構成されたが、平成15年10月に金属基複合材料グ ループが材料研究所複合材料グループに吸収される ことにより、6つの研究グループと目黒業務室で構 成される組織として運営されてきた。図1は材料基 盤情報ステーションの組織を示す。当ステーション は、クリープ、疲労、腐食、極限環境強度などの時 間に依存する材料特性評価を担う研究者および技術 者、また材料情報の研究者などから構成される専門 家集団である。当ステーションは、以下に示すよう な業務を主業務とする組織であるため、研究のみを 業務とする組織と比べて正規職員の割合が高く、流 動性を持った研究員や職員の割合は低い。これは成 果物の信頼性を確保するために、キーとなる業務を 正規職員が担っているためである。なお、本報告は、ステーションが出版した年報 [1～3]を参考にして執筆した。2 .ステーションのミッション当ステーションのミッションは、機構の中期計画 で示されている知的基盤の充実を実施することであ る。具体的には、構造材料データシートの作成、材 料試験法・評価法の国際標準化のための研究、物 質・材料データベースの整備と公開である(図2)。 そして、さらに、材料情報や標準化の国際関係の強 化、また材料情報や標準化に関わる産学独のコーデ ィネート機能を図ることも目標とされている。当ステーションでは、上記のように構造材料デー タシート、国際標準化研究、物質・材料データベー スを主業務の軸として実施するとともに、業務に関 連する課題のプロジェクト研究としての材料リスク 情報プラットフォーム開発研究、ステーション独自 に実施する将来の研究課題探索を目的とした萌芽研 究、外部機関からの委託研究(原子力試験研究、科 学技術振興調整費研究など)を実施した。そして、 これらの業務および研究を実施することにより、材材料基盤情報ステーションクリープ研究グループ疲労研究グループ腐食研究グループ極低温材料グループ高温材料グループ材料データベース研究グループ目黒業務室図1 材料基盤情報ステーションの組織料の適切な活用、最適な材料の選択、新材料の開発 など、社会が材料に関して求める問いに対して、的 確な解を獲得するために役立つ総合的で、信頼性の 高い情報を提供することを目指してきた。・材料データの取得とデータシートの作成⇒構造材料データシート・スタンダード化研究⇒国際標準化研究・材料データベースの整備と公開⇒物質・材料データベース・国際的な材料情報関係や標準化関係の強化・材料情報・標準化に関わる産学独のコーディネート機能図2 材料基盤情報ステーションのミッション3.ステーションの活動と成果3.1構造材料データシート構造材料データシートは、クリープ、疲労、腐食、 宇宙関連材料強度の4つからなり、当ステーション では各種データを自ら取得し、それらのデータをデ ータシートとして発刊している(図3)。クリープおよび疲労データシートは約40年前に開 始したもので、これまでに蓄積されてきた実績があ り、世界的に高く評価されている。腐食および宇宙 関連材料強度データシートの活動は平成14年度から 開始した。腐食データシートは機構における超鉄鋼 研究が契機となって開始されたもので、新しい耐候 性鋼開発の基盤となるFe-X系2元合金等の長時間大 気暴露試験を、筑波、銚子、宮古島の3つのサイト で実施している。宇宙関連材料強度データシートは図3構造材料データシートHⅡ ロケット8号機の打ち上げ失敗を契機に、材料 強度データ整備の強い要望のもとに開始されたもの である。図4は、東京目黒地区のクリープ試験設備 であり、10万時間を含む長時間クリープ試験データ は1966年の開始以来、止ることもなく、目黒地区で 取得され続けている。図5は、筑波地区の大気曝露 試験場を示す。図4クリープ試験設備(目黒地区)図5 大気曝露試験場(つくば)表1は平成14～16年度に出版された各種のデータ シートを示す。この表の中で、クリープの金属組織 写真集は長時間クリープ試験材の微視組織を光学顕 微鏡や透過電子顕微鏡等で観察した写真集で、高経年プラントの余寿命評価などに威力を発揮できると 期待される。図6は、オーステナイト鋼の10万時間 を含む長時間の光学顕微鏡による金属組織写真の例 を示す。構造材料データシートは印刷物として公開 するとともに、平成15年4月から物質・材料データ ベースの一つとしてインターネットを通じても公開 している[4]。なお、クリープの金属組織写真集の インターネット公開は平成18年春からになる予定で ある。表1構造材料データシートの出版データシート出版数平成14年度 平成15年度 平成16年度クリープ 2; No.48, No.49 2; No.36B, No.50 2; No.45A, No.46Aクリープ金属組織写真集 1;No.M-2 1;No.M-3 1;No.M-4疲労 2; No.91, No.92 4; No.93, No.94, No.95, No.96 2; No.97, No.98腐食 2; No.0, No.1 ― 1;No.2宇宙関連材料強度 3; No.0, No.1, No.2 2; No.3, No.4 2; No.5, No.6図6オーステナイト鋼の金属組織写真構造材料データシート作成を実施するに当たっ て、計画の方向性、実施する内容などを審議するた めに、産学独の有識者で構成される構造材料データ シート懇談会、また企業の第一線の研究者・技術者 で構成された検討会(クリープ、基準疲労、溶接継 手疲労、腐食、宇宙関連材料強度、なお、平成16年 度から基準疲労と溶接継手疲労を統合して疲労デー タシート検討会とした)を設け、専門家の意見を聞 いて進めている。また、平成15年度から日本機械学 会に委託し、企業の専門家からなる委員会を組織し、 構造材料データシートに関する国内外のユーザーの 利用状況、要望、NIMS構造材料データシートの果 たすべき役割、地域公設機関との連携などを調査し、 業務に反映している[5,6]。3. 2 ISO9001活動当ステーションは、平成14年5月20日にISO9001 品質管理システムを政府系研究機関の研究部門として始めて取得した(図7)。この取得は、NIMS構造 材料データシートが世界で標準参照データとして活 用されていることから、ISOのシステムを取得して 品質管理システムを確実にしておくべきであるとの 企業から要望に応えたもので、1年以上をかけて指 導を受けながらマニュアル整備やPDCAシステムの 構築などを行って導入した。このシステム認証は、 構造材料データシート、それと密接に関連するクリ ープ受託試験および事故調査を対象としている。図7 ISO9001の取得これにより、これまでに実施してきた信頼性の高 いデータ取得の技術に加え、顧客要求に配慮したデ ータシート作成を進めるシステムを整えることがで きた。表2は平成14年5月に取得以降の主な ISO9001活動を示す。計画・品質管理委員会は1ヶ 月に2回のペースで開催しており、さらにグループ 毎の連絡会は適宜開催されている。表2 ISO9001品質管理活動平成14年度 平成15年度 平成16年度内部品質監査 2回 1回 1回トップマネージメントレビュー 1回 1回 1回計画・品質管理委員会 17回 17回 17回教育プログラム 1回 0回 1回定期審査 0回 1回 1回3. 3国際標準化研究新材料の応用や実用化のために材料試験法や評価 法などの国際標準化が必要である。この研究では VAMAS活動を通じて、試験法や評価法のISOやIEC 化を目指している。VAMAS活動は1982年のベルサ イユ・サミットでの国際研究協力により1987年に開 始したもので、わが国では、当初から15年間、研究 資金が科学技術振興調整費から手当てされたが、平 成14年度からは機構の運営費交付金でまかなわれて いる。VAMAS活動全体では、現在、約20の作業部会 (TWA)が活動しているが、機構が関わっている作 業部会を表3に示す。機構はTWAの議長や要職を担当しており、VAMASを通じて国際標準化活動に 大きく貢献している。また、表3には1987年に VAMAS活動が開始して以降に成立した国際規格の 成果を示している。国際標準化活動では、国際標準 を作るターゲットを明確にし、その活動のために国 際的な組織を作り、共通試験を行い、試験結果を解 析し、規格案を作成し、それを協議しながら手直し し、ISOの委員会に上げて国際的な了解を取ってい く 。地道で、粘り強い、しかもリーダーシップにあ ふれる活動が必要である。この数字は機構、国の更 なる支援が必要であることを訴えている。表3 VAMAS活動成果の規格への反映(1987年のVAMAS発生からの成果)課題と作業グループ NIMSの役割 規格化等の成果X線測定;TWA2 新規表面分析;TWA2 副議長 ISO:14件,ASTM: 2件材料データベース;TWA10 議長金属基複合材料;TWA15 議長 平成15年終了超伝導材料;TWA16 議長 IEC: 8件,JIS: 6件極低温構造材料;TWA17 議長 ISO:1件高温材料;TWA25 国内幹事 BSI: 2件,ASTM:1件ナノマテリアル;TWA29 新規組織工学;TWA30 議長 新規薄膜・コーティング;TWA22 ISO: 3件,CEN:1件VAMAS活動では、国際的な全体計画の討議のた めに1年に1回、運営委員会会議が開催される(表 4)。平成14年(2002年)5月の運営委員会会議 (写真1)では、この会議に併設して国内のVAMAS 研究の成果報告シンポジウムを開催した。このため、 海外の関係者からわが国のVAMAS活動が理解でき たと好評であった。写真1 第27回VAMAS運営委員会会議(日本・つくば、物質・材料研究機構)表4 VAMAS運営委員会会議の開催開催年月日 回 開催地,開催機関2002年5月14-16 日 No.27 日本・つくば;物質・材料研究機構2003年5月12-14 日 No.28 オランダ・ペッテン;JRCエネルギー研究所2004年5月17-18 日 No.29 イタリア・トリエステ;理論物理学国際センターICTP2005年5月 23-24 日 No.30 イギリス・テディントン;NPL表5は平成14年度以降にVAMAS活動を通じて成 立した国際規格の件数を示す[1-3]。表3にも示し たようにVAMAS活動を開始してから国際規格成立 数は多くはないが、表5に示すように最近では1年 に4～5件の国際規格が成立している。これは、こ れまでの長期間にわたる国際的な研究協力、国際共 同試験などの蓄積の効果がでてきたものと考えられ る。表5 VAMAS活動を通じて成立した国際規格平成14年度 平成15年度 平成16年度成立した国際規格の件数 4件 5件 5件先に述べたように、科学技術振興調整費研究が終 了した後、国内のVAMAS活動は個別の機関が対応 するようになり、全体としての情報共有が不十分に なった。また、わが国における国際標準化活動の対 応の遅れも指摘された[7]こともあり、国内の VAMAS活動を取りまとめ、日本からの新たな課題 提案を検討するために平成16年度にVAMAS国内対 応委員会を発足させた。この委員会のメンバーは VAMAS運営委員会日本代表(文部科学省材料開発 推進室長、物質・材料研究機構材料基盤情報ステー ション長、産総研産学官連携コーディネーター)、 経済産業省産業基盤標準化推進室長、各TWAのキ ーパーソンからなっている。また、VAMAS活動についての国内外の認知度、 VAMAS活動に対する期待、要望などを調査し、 VAMAS活動の今後の進め方を検討している[8,9]。 さらに、VAMAS活動を一般の方々に知ってもらう ために、平成16年9月に開催された2004分析展に VAMAS活動を紹介するブースを出展するとともに、 セミナーを実施した。この活動は、平成17年9月の 2005分析展でも行った。3. 4物質・材料データベース基礎から応用までを含む材料に関するデータや情 報をもとに、新材料の開発、最適な材料の選択など に役立つ情報を提供するためにデータベースを開発 し、インターネットを通じて発信している。平成14 年度は、科学技術振興事業団(JST)から移管する 材料データベースの調整、受け入れ体制の整備、シ ステムの構築などを行い、平成15年4月1日に、 JSTから移管したデータベースも含めて11種類のデ ータベースを公開した[4]。図8はNIMS物質・材 料データベースのホームページであり、表6には公 開している11種類のデータベースの概要を示す。現在(平成17年11月)の登録ユーザー数は約2万 人(国内;約1万5千人、海外;約5千人)であり、 ユーザーの約6割から7割が企業の研究者や技術者 である。このことから、「使われるデータベース」 作りを目指している。「使われるデータベース」のためには、専門的な 知識や情報が多数蓄積されたものであることが必要図8 物質・材料データベースのホームページ表6 NIMS物質・材料データベースの概要データベース 主な内容高分子 (PoLyInfo)モノマーからポリマーまでの名称や構造情報およびそれら の各種物性強磁場工学 強磁場研究センターが発信超伝導材料 超伝導特性,その他の関連特性基盤原子力用材料 原子力用材料結晶基礎 金属・無機化合物・金属管化合物におけるミクロな現象 および挙動を解析するための情報計算物性 原子・分子レベルにおける材料挙動を予測・解明するため の情報拡散 金属・合金・金属間化合物および半導体の拡散情報三次元状態図 合金の三次元状態図圧力容器材料 圧力容器用Cr-Mo鋼の強度特性構造材料 クリープ,疲労,腐食,宇宙関連材料強度データシート鉄鋼材料熱履歴 溶接時の熱履歴の予測であるが、材料の特性を決める因子は無数に存在し、 一つのデータベースであらゆる材料および材料特性 をカバーすることは不可能である。このために、世 界のユニークな各種のデータベースとリンクを張 り、ユーザーが最適な情報を得られるようにするこ とが必要である[10]。そこで、世界の主要な材料 データベースがリンクを張っているMaterial Data Networkを管理している英国のグランタ・デザイン 社と研究協力の覚書を交わし、Material Data Networkとのリンクを張り、キーワード検索により ユーザーがNIMS物質・材料データベースを含む世 界の有力なデータベースから情報を得られるように した。表7はMaterial Data Networkにリンクを張っ ている材料データベースから得られる情報量を示 す。このデータネットワークには、総計で約15万件 の材料に関する情報が存在する。NIMS物質・材料表7 Material Data Networkにリンクされているデータベースと材料毎のデータ数データベース Ceramic Composite Form Metal Natural Polymer 合計ASM Handbook 1670 1933 5793 8052 1126 1052 19626ASM Alloy Center 1679 453 4744 7749 240 237 15102ASM Micrograph Center - - 3556 1057 40 None 4653ASM Failure Analysis Center 96 718 1244 1301 484 127 3970MatWeb 3540 916 80 11404 966 37190 54096MIL-HDBK-5H 20 107 3895 322 6 672 5022NIMS Materials Database 16563 None 1968 12043 2 15014 45590NPL MIDS 263 153 152 351 147 1900 2966The PGM Database None None 2 12 1 None 15Steel Spec Ⅱ None 1 16 5 5 1 20TWI Join IT 500 500 500 500 308 449 2767合 計 23390 6312 781 39864 2774 58524 153827(2005年11月8日現在)データベースは、世界の有力な材料データベースに 関する機関との連携を他にも取りつつあるので、近 い将来その成果を公表し、ユーザーにとってより有 効な情報源となるであろう。データをより有効に使うためには、優れたソフト ウエアの開発が必要である。ユーザーの意見を参考 にしつつ、開発を進めているが、高分子データベー スに関連して原子団寄与法による物性推算機能を開 発し、公開するとともに、各種の材料データベース を活用して複合材料の熱特性を予測する複合材料熱 物性予測システムを開発し、インターネットで公開 した。さらに、ユーザーにとっての利便性を向上さ せるために、平成16年度にユーザー登録システムを 統合し、1回の登録で全てのデータベースが利用で きるようにした。NIMS物質・材料ベータベースの事業を進めるに 際して、事業の方向性や計画の内容を審議するための物質・材料データベース懇談会および検討会(高 分子と金属・基礎物性)を設けている。懇談会およ び検討会は大学、企業等の研究者および技術者から なる。特に、高分子データベース検討会は、機構に 高分子研究者がほとんどいないことから、高分子学 会の協力を得て、検討会の委員を委嘱している。NIMS物質・材料データベースについて多くの 方々に知ってもらうこと、また有効に使ってもらう ことなどのために、国内外での講演会やシンポジウ ムの際に展示コーナーを設けて説明している。この ような地道な活動によって登録ユーザーは増えてお り、この種の直接的にユーザーに触れ合う活動は今 後も継続して実施していく。3. 5国際会議等の開催当ステーションでは、ユニットの活動を外部の 方々に知っていただくこと、また海外などの研究表8材料基盤情報ステーションが主催する国際シンポジウム開催年度 総称会議名 開催年月日/開催場所 内容平成15年度 MITS2004 2004年3月15-17 日つくば;物質・材料研究機構・NIMS―RIMAPリスクベース工学ワークショップ・NIMSクリープデータシート国際シンポジウム・高Crフェライト耐クリープ鋼の長時間強度と信頼性に関するNIMS―MPAワークショップ平成16年度 MITS2005 2005年3月15-18 日東京;都市センターホテル・材料データベース国際シンポジウム・疲労データシートシンポジウム・高温用構造材料の寿命予測セミナー・材料データベースの教育への活用シンポジウム平成17年度 MITS2006(計画中)2006年1月18-20 日東京;都市センターホテル・XMLワークショップ・腐食国際会議・材料データベースによる知識発見国際会議表9 MPA Stuttgart, IFW Darmstadtとの国際ワークショップの開催開催年月日 開催場所 テーマ2002年10月10-11日 ドイツ:シュツットガルト大学 材料試験研究所 発電プラント用先進9-12%Cr鋼2004年3月17日 日本:物質・材料研究機構 高Crフェラ仆耐クリープ鋼の長時間強度と信頼性2005年9月6-7日 ドイツ:ダルムシュタット工学大学 材料試験所 先進高効率発電プラント用構造材料の特性と必要条件表10海外機関との研究協力等に関する覚書(MOU)調印年月 相手先機関名 協力等の主な内容2004年10月(1999年3月に調印した旧覚書の改定)ドイツ:シュツットガルト大学 材料試験研究所 材料強度評価等の情報交流2003年10月 イギリス:グランタデザイン社 マテリアル・データ・ネットワークへのNIMS物質・材料データベースへ の接続2004年9月 ドイツ:ダルムシュタット工科大学 材料試験所 材料強度評価等の情報交流2005年3月 アメリカ:オートメーションクリエーションズ社 MatWebデータベースとNIMS物質・材料データベースとの接続者・技術者と活動の連携を図っていくことを目的と して、平成15年度から材料基盤情報ステーションが 主催するシンポジウムを開始した。表8は、平成15 年度から始めたMITSシンポジウムの概要を示す。また、研究協力の覚書(MOU)に基づき、2000 年3月からシュツットガルト大学材料試験研究所と ダルムシュタット工科大学材料試験所との国際ワー クショップを実施している。 このワークショップは ドイツと日本とで交互に開催しており、2005年9月 にダルムシュタットで開催したワークショップから ダルムシュタット工科大学が加わった。表9は2002 年以降のワークショップの概要を示す。これまで開 催されたワークショップの主要なテーマは高Crフェ ライト耐熱鋼などの発電プラント用耐熱鋼の強度特 性評価や材料開発であり、クリープ研究グループと ともに、超鉄鋼研究センターの耐熱グループと協力 して実施した。3. 6外部との連携当ステーションは材料情報や標準化に関する国際 連携の強化、また産学独のコーディネート機能の発 揮もミッションとしている。上記のステーションが 主催する国際会議はそのミッションの実行の一つで あるが、ここではそれ以外の活動について記す。当 ステーションでは国内外との研究交流等を積極的に 進めてきた。表10は当ステーションが海外の研究機関等と締結 した研究協力に関する覚書(MOU)である。シュ ツットガルト大学材料試験研究所およびダルムシュ タット工科大学材料試験所とのMOUは超鉄鋼研究 センターと共同して交わしたものである。表11および表12は研究交流の実績で、表11は国際 会議への出席等による海外との情報・人材交流、表 12は国内における人材および研究交流の年度毎の実表11国際的な人材交流の実績平成14年度 平成15年度 平成16年度国際会議等への出席(延べ人数)18名 29名 30名在外研究員 1名 0名 0名表12国内における人材および研究交流等の実績平成14年度 平成15年度 平成16年度連携大学院制度による学生の指導 1件/3名 1件/2名 1件/2名共同研究 9件 5件 1件受託研究 0件 1件 2件績を示す。4 .研究および業務活動当ステーションでは、ステーションのミッション である構造材料データシート、国際標準化研究、物 質・材料データベースを主要な活動の軸に、それと 関連するプロジェクト研究(材料リスク情報プラッ トフォーム開発に関する研究)、ステーション独自 に実施する将来の課題探索を見据えた萌芽研究、外 部機関からの委託研究(原子力試験研究、科学振興 調整費研究、科学研究費補助金など)、また機構内 研究などを実施してきた。表13は当ステーションが 実施している研究課題の一覧である。これらの研究 を実施することにより得られた成果(研究発表、特 許)を表14に示す。当ステーションが担当している 業務は、クリープや疲労、腐食のように時間に依存 する材料特性データを取得することが必要であり、 そのために試験研究データを得るのに長期間を要す るとともに、大規模でしかも組織的な体制で研究活 動を実施しなければならない。このことから、研究表13研究活動の実施研究課題 平成14年度 平成15年度 平成16年度 平成17年度萌芽研究 ・軽量高比構造用複合材料の開発のための基礎的研究・高強度のギガサイクル疲労特性向上指針の確立・タングステン系高融点合金の高温特性に関する研究・マルチスケール統合解析による損傷評価の調査研究・耐熱材料の高温破壊特性データベースの構築・局部腐食の発生機構に関する基礎研究・原子力用低炭素ステンレス鋼のナノ組織・強度解析原子力試験研究委託費 ・微細組織を考慮した材料特性の計算機シミュレーション・原子力材料用分散型知識ベースの創成に関する研究・高速炉の異材接合部の高温長時間信頼性評価に関する研 究・地層処分環境における金属の腐食寿命評価に関する研究・照射下での材料の損傷・破壊に関するマルチスケールシ ミュレーション・先進原子力用複合材料の構造最適化シュミレーションシス テム開発に関する研究科学技術振興調整費 ・鋼材の動的挙動及び靱性評価法の研究科学研究費補助金 ・ギガサイクル疲労破壊機構に及ぼす水素の影響の解明と 疲労強度信頼性向上方法の確立NEDO産業技術研究助成事業 ・高強度鋼のギガサイクル疲労特性評価法に関する研究JST成果育成プログラム ・ナノインデンテーション用・超微小硬さ基準片の試作共同研究 ・フルマルチスケール損傷・破壊モデルによるナノコーティン グ界面の信頼性解析の開発研究委託研究 ・極低温ガス環境下での材料特性に関する研究・次世代高温原子力プラント溶接構造に対する損傷防止技術 の開発・照射による燃料材料組織変化のモデリング研究・超微小硬さ試験機を用いたSCCき裂先端の強度解析等に 関する研究中期計画推進プログラム ・材料信頼性向上と構造材料DSの高度化・ナノインデンテーションの実用化に関する研究発表のような個人的な成果の出し方になじまない面 もあるが、表14の成果はこのような条件の中で関係 者が精一杯の努力をしてきたことを示している。クリープ受託試験については、昭和42年にクリー プデータシート作成プロジェクトが開始した時点か ら、企業等からの要望を受けて、クリープ試験の依 頼を受けてきた。表15は平成14年度からの年度毎の 受託件数と昭和42年に開始以来の実績を示す。約 8000本の試験片についてクリープ試験を請け負って きており、わが国の高温材料開発および高温材料強 度評価の下支えの役割を果たしてきている。当ステーションでは、国土交通省航空・鉄道事故 調査委員会等から材料に関わる事故解析の依頼を受 けている。表16はその実績である。事故解析依頼は、 当ステーションにおける構造材料データシートの膨 大なデータおよび知識の蓄積とそれに基づく材料強 度評価研究の実績に依存している。今後も、研究活 動の社会への活用として、この種の社会的な貢献は 継続すべきである。表14研究活動の成果平成14年度 平成15年度 平成16年度誌上(論文)発表 62 49 88口頭発表 243 214 186特許出願 6 8 4登録 1 3 0表15クリープ受託試験の実績区分 平成14年度 平成15年度 平成16年度 計(昭和42年以降)クリープ試験受理件数(件) 2 1 1 250温度別試験片数(本)300 ～600℃ 14 3 3 1562601～800℃ 4 0 0 240801～1000℃ 0 0 0 241小計 18 0 3 2043クリープ破断試験受理件数(件) 2 0 0 486温度別試験片数(本)300 ～600℃ 0 0 0 3603601～800℃ 6 0 0 1388801～1000℃ 3 0 0 908小計 9 0 0 5809合計受理件数(件) 4 1 1 736試験片数 27 3 3 7942表16事故解析の実績平成16年度事故解析件数 2件報告書件数 2件5.材料リスク情報プラットフォーム開発研究材料の特性に影響を及ぼす各種の因子の効果につ いて全てが明らかになっているわけではない。この ため、材料の特性は不確かさを持っており、特性値 はばらついているため、材料を製品に使用する場合 には安全のための余裕がとられる。材料は使用中に 特性が変化し、性能が劣化する。この劣化の度合い も材料のさまざまな因子の影響を受ける。しかも、 劣化の予測は容易ではなく、不確かさを含む。すな わち、製品に使われる材料はさまざまな要因により 性能がばらつき、特性の評価を確率論的に扱うこと が必要である。そこで、製品のさまざまな部品につ いて破壊確率が求められるが、同じ破壊確率であっ たとき、設計や運転、保守でどのように優先順位を 与えるべきであろうか(図9)。この判断を行う場 合に、「破壊確率」×「破壊による被害の大きさ」 で評価されるリスクに基づく考え方を導入すること が重要である。そこで、材料の視点から今後のリス ク的考え方に対して何が必要かを検討した結果、製 品のリスク評価のために必要な材料に関わるデータ や情報を収集、整理し、公開するための基礎を構築 することが必要であると考えられた。ここで、製品 としては機構のクリープデータシートおよび高温強 度研究の実績や蓄積が活かせる火力発電プラント用 ボイラを対象とすることとし、材料リスク情報プラ ットフォームの開発を平成13年度からの5年計画と して行うことになった。図7は本研究における主要 な研究課題を示す。本研究は機構を中核として研究 機関、企業、学協会、大学の参加を得て実施した。図11は、完成した材料リスク情報プラットフォー ムのイメージで、 図12に示すデータや情報が提供さ図9材料の経年劣化により、破損の可能性図10材料リスク情報プラットフォーム開発研究の主 要研究れるとともに、指示に従ってリスク評価の手順を進 めることにより図13に示すようなリスクマトリック スを作成することができ、リスク評価がどのような ものかを知ることができる。この材料リスク情報プ ラットフォームは平成18年3月にインターネットを 介してNIMS物質・材料データベースのデータベー スの一つとして公開の予定である。図11材料リスク情報プラットフォームのイメージ図12材料リスク情報プラットフォームが提供する情 報図13リスク評価結果の提示画面表17は、材料リスク情報プラットフォーム開発研 究に関わって発表された研究論文等の実績を示す。 本研究は、データベースの開発という実務であり、 外部機関の研究者・技術者の参加によって実施した こともあり、いわゆる学会活動はあまりなされてい ない。このために、研究発表等の件数は多くはない。 本研究を実施するとともに、社会にリスクの考え方 を普及し、啓蒙するため、リスク研究会を設立し、 定期的な活動を行った。また、日本金属学会の講演 会に関連のセッションを設けて成果報告等を行っ た。さらに、リスクベース工学国際ワークショップ を開催し、国内外の研究者・技術者との情報交流を図り、リスクベース工学の創成のための基盤構築を 図った。表17材料リスク開発研究に係わる研究発表等の実績平成13年度 平成14年度 平成15年度 平成16年度論文 8件 20件 9件 2件プロシーディング 18件 30件 5件 6件解説等 4件 3件 2件 1件特許出願 0件 2件 2件 0件6.組織運営における課題と今後の展望当ステーションの業務である構造材料データシー ト、国際標準化研究、材料データベースは地味な仕 事であり、時間をかけた根気のいる仕事である。こ の業務に、常勤の研究者、エンジニアはもとより、 非常勤の職員も熱心に取り組んでいただき、予定通 りの実績を上げることができたとともに、想定外の 成果も得ることができ、予想を超えた社会への貢献 を果たすことができた。これは、関係者が熱心に進 めたISO9001活動を通じての組織内の情報の共有化 や問題解決のための協力体制の整備、組織として取 り組みの目標や関係者の役割分担を明確にしたこと によると思われる。このように、組織的な業務推進 においては、目的の明確化、役割の明確化を図るこ とが重要であると思う。また、業務活動の目標設定 においてもISO9001の考え方、システムを導入し、 顧客要求と満足度とは何かを常に問い、それらを検 討しつつ進めた。このために、社会のニーズを捉え た業務目標そして活動、またアウトプットすること ができたと考えている。当ステーションの業務を進めていく中で、諸先輩 の努力によりクリープや疲労データシート活動を約 40年間にわたって実施し続けてきたという実績が評 価されて、またそのことから信用されて、社会から の支援・協力を受けた部分が随所にあるように感じ ている。今後、機構は予算獲得が難しくなるであろ うが、当ステーションの進めてきた業務は国民が安 全・安心な生活を確保するために必要な活動であ り、あらゆる手段を尽くしてこの種の業務を継続す べきと考える。参考文献1.(独)物質・材料研究機構 材料基盤情報ステ ーション年報、平成14年度、平成15年6月2.(独)物質・材料研究機構 材料基盤情報ステ ーション年報、平成15年度、平成16年6月3 .(独)物質・材料研究機構 材料基盤情報ステ ーション年報、平成16年度、平成17年6月4 . http://mits.nims.go.jp/5.日本機械学会・技術開発支援センター:NIMS 材料データシート活動に関する調査(NIMS材 料データシートの有効活用促進と高付加価値化 に関する提言)、平成16年3月http://mits.nims.go.jp/6.日本機械学会・技術開発支援センター:NIMS 構造材料データシートの公的機関における利用 状況と今後の連携に関する調査、平成17年3月7.緒形俊夫、玉生良孝:材料の国際標準化からみ た国際戦略の現状と課題、科学技術動向、 No.28、(2003年 7 月号)、19-268.物質・材料研究機構材料基盤情報ステーショ ン:VAMASの普及と展開に関する調査、2004 年3月9 .三菱総合研究所:平成16年物質・材料研究機構 委託、VAMASの普及と展開に関する調査、 2005年2月10.八木晃一:材料データベースの課題と将来展望 ―世界で使われる材料データベースを目指して ―、科学技術動向、No.42、(2004年9月号)、 22-3311・八木晃一:材料を安全に使用するための情報と 指針の整備―材料リスク情報プラットフォーム の開発―、日本金属学会誌、66 (2002)、1264- 1270クリープ研究グループの5年木村一弘、大場敏夫、金丸修、九島秀昭、久保清、澤田浩太、谷口祥子、中野恵司、福澤安光、藤塚正和、宮崎秀子、山本耕助、 横川賢二、吉野正崇1.グループ概要火力・原子力発電所や石油化学プラント等の高温 構造用部材として使用される国産耐熱金属材料につ いて、10年を超える長時間クリープ試験を系統的に 実施している。得られた実験データはクリープデー タシートとして世界中の研究、教育機関及び学協会、 民間企業等に発信するとともに、長期使用に伴う耐 熱材料の材質劣化機構や新材料開発のための材料設 計指針等に関する研究を行っている。また、受託試 験業務として、クリープ試験及びクリープ破断試験 の実施を担当している。クリープ研究グループが 2005年度までの5年間で実施した主な研究テーマは 以下の通りである。1)クリープデータシートの作成(Ⅵ)(知的基盤構 築)2)実機使用環境再現による材料劣化・損傷研究 (材料リスクプラットフォーム開発)3)材料信頼性向上と構造材料データシートの高度 化に関する研究(中期計画推進プログラム)4)タングステン系高融点合金(萌芽研究)2.クリープデータシートの作成21世紀において快適で安全な社会を構築するため に必要とされる耐熱金属材料の長時間クリープ試験 及びクリープひずみデータ取得を継続実施し、クリ ープ破断データを掲載したクリープデータシートを 発行するとともに、長時間クリープ試験材の金属組 織写真集を出版している。2005年度までの5年間 (2005年11月現在)に出版したクリープデータシー トは8冊、金属組織写真集は3冊である。【クリープデータシート】・ボイラ・熱交換器用クロムモリブデン鋼管 STBA23 (1.25Cr-0.5Mo-Si)のクリープデータシ ート、No.2B (2001)・ボイラ及び圧力容器用クロムモリブデン鋼鋼板 SCMV2 NT (1Cr-0.5Mo)のクリープデータシート、 No.35B (2002)・発電ボイラー用合金鋼鋼管ASME SA-213/SA-213M Grade T92 (9Cr-0.5Mo-1.8W-V-Nb)及び発電配管 用合金鋼鋼管ASME SA-335/SA-335M Grade P92 (9Cr-0.5Mo-1.8W-V-Nb)のクリープデータシート、 No.48 (2002)・ガスタービン用ニッケル基耐熱合金Nickel base 16Cr-8.5Co-3.5Al-3.5Ti-2.6W-1.8Mo-0.9Nbのクリー プデータシート、No.49 (2003)・圧力容器用焼入れ焼戻しクロムモリブデン鋼鋼板 ASTM A542 (2.25Cr-1Mo)のクリープデータシート、No.36B (2003)・クリープデータシート最終版発行後に取得した長 時間クリープ破断データ、No.50 (2004)・熱間圧延ステンレス鋼板SUS 316-HP (18Cr-12Ni- Mo- middle N-low C)母材、溶接金属及び溶接継手 のクリープデータシート、No.45A (2005)・発電ボイラー用合金鋼鋼管 火STBA27 (9Cr-2Mo) のクリープデータシート、No.46A (2005)【金属組織写真集】・ボイラ・熱交換器用ステンレス鋼管SUS 316H TB (18Cr-12Ni-Mo)クリープ試験材の微細組織、 No.M-2 (2003)・ボイラ・熱交換器用ステンレス鋼管SUS321HTB (18Cr-10Ni-Ti)クリープ試験材の微細組織、 No.M-3 (2004)・ボイラ・熱交換器用合金鋼管JISSTBA24 (2.25Cr- 1Mo)、ボイラ及び圧力容器用クロムモリブデン 鋼鋼板JIS SCMV 4NT (2.25Cr-1Mo)及び圧力容器 用焼入焼戻しクロムモリブデン鋼鋼板ASTM A542 (2.25Cr-1Mo)クリープ試験材の微細組織、 No.M-4 (2005)さらに、2005年度中に以下のクリープデータシー ト2冊と金属組織写真集1冊の出版を予定(2006年 3月出版予定)している。【クリープデータシート】・発電用ステンレス鋼板 火SUS410J3 (11Cr-2W- 0.4Mo-1Cu-Nb-V)、発電配管用ステンレス鋼管火 SUS410J3TP (11Cr-2W-0.4Mo-1Cu-Nb-V)及び発電 ボイラ用ステンレス鋼管 火SUS410J3TB (11Cr- 2W-0.4Mo-1Cu-Nb-V)のクリープデータシート・発電ボイラ用ステンレス鋼管 火SUS410J3DTB (12Cr-2W-0.4Mo-1Cu-Nb-V)のクリープデータシ ート【金属組織写真集】・ボイラ・熱交換器用ステンレス鋼管SUS 347H TB (18Cr-12Ni-Nb)クリープ試験材の微細組織 クリープデータシートとして出版した長時間クリープ試験データの例を、図1に示す。図1 9Cr-0.5Mo-1.8W-V-Nb鋼の クリープ破断データ (クリープデータシート、No.48 (2002))3.研究トピックス3.130万時間クリープ変形データの取得高温構造物の安全性・信頼性を向上させるために は、クリープ破断強度に基づくクリープ強度評価だ けではなく、超長時間のクリープ変形特性に基づく 非弾性構造解析が適用される。その際、最も重要な ことが、超長時間のクリープ変形挙動に関する材料 特性データの信頼性である。クリープデータシート プロジェクトではクリープ破断データを取得するだ けでなく、超長時間のクリープ変形特性データも併 せて取得している。1969年に開始したボイラ及び圧力容器用炭素鋼鋼 鈑(JIS SB480)から採取した0.3%炭素鋼のクリー プ試験について、2003年12月に試験時間が試験開始 から30万時間(約34年2ヶ月に相当)に到達した。 クリープ試験条件は試験温度が400℃、応力は 294MPaである。試験機の改造に伴う1回の中断を 除き、事故などによる中断のない連続試験により、 30万時間を超えるクリープ変形データを我が国で初 めて取得した。30万時間を超える連続クリープ試験 データは、世界中でこれまでに数例しか得られてい ない。得られたクリープ曲線(ひずみと時間との関 係)とクリープ速度-時間曲線を図2及び図3に示 す。荷重を負荷したクリープ試験開始時に約1.8% のひずみが生じ、その後、試験時間の増加に伴い図2 ボイラ・圧力容器用炭素鋼(JIS SB480)の30万 時間クリープ曲線(30万時間は34.2年に相当)図3 ボイラ・圧力容器用炭素鋼(JIS SB480)のクリ ープ速度-時間曲線徐々に試験片のひずみが増大し、30万時間を経過し た時点で約19.4%のひずみに到達した。また、試験 時間の増加に伴いクリープ速度が減少する遷移クリ ープ域では、クリープ速度の対数と時間の対数との 間に大変良い直線関係が認められる。しかし、クリ ープ変形挙動を表すために広く用いられている Brackburnの式では、この実験結果を適切に表現で きないことがわかった。今後はこれらの超長時間ク リープ変形データを活用し、クリープ変形特性解析 精度の向上に役立てる計画である。3. 2 フルアニール強化耐熱金属材料の高温強度は析出・分散強化や加工 硬化、固溶強化等、種々の強化因子の効果により向 上させることができる。しかし、クリープ変形が問 題となる高温では金属組織が変化するため、組織変 化に起因した強度低下が生じ、高温での超長時間使 用後には組織形態に依存した強化因子の効果は消滅 し、母相強度のみに対応した基底クリープ強度が強 度特性を支配する。そのような超長時間クリープ強 度に及ぼす初期組織の影響を調べた結果、マルテン サイトやベイナイト組織よりも、フルアニール(完 全焼なまし)熱処理によるフェライト・パーライト 組織が最も優れたクリープ強度を有することを明ら かにした(図4)。図4 マルテンサイト、焼戻しマルテンサイト、ベイ ナイト及びフルアニール熱処理によりフェライト・パ ーライト組織を有する0.5Cr-0.5Mo鋼の575℃における 応力-破断時間曲線析出強化や加工硬化等、通常の強化機構は塑性変 形速度を支配する転位の易動度を低下させるのに対 して、転位の易動度の違いが消滅する超長時間域で は、塑性変形を担う可動転位密度がフルアニール熱 処理により減少するためであると考えられる。低合 金Cr-Mo鋼の溶接継手に溶接後熱処理(PWHT)と してフルアニール熱処理を施し、長時間クリープ強 度に及ぼすPWHT条件の影響を調べた結果を図5に 示す。青いシンボルで示したフルアニールPWHT試 験材は未破断であり、試験継続中であるが、5万時 間(約6年)を超えても、変態温度(ACl)以下の 通常の条件でのPWHT試験材よりも小さなクリープ図5 2.25Cr-1Mo鋼溶接継手の母材、溶接金属及び2 種類の溶接後熱処理(PWHT)を施した溶接継手の 550℃ - 69MPaにおけるクリープ速度-時間曲線速度を示す。一般に溶接継手は母材よりもクリープ 強度が低下するが、フルアニール熱処理の施されて いない母材よりもクリープ速度が小さく、クリープ 寿命延長の効果が予想される。実機高温プラントで は、基底クリープ強度がクリープ寿命を支配する温 度・応力条件で長期間使用される耐熱金属材料が多 いことから、高温構造部材の長寿命化を図るために 有効な強化手法である。3. 3クリープ強度の領域分割解析法1980年頃に米国で開発された改良9Cr1Mo鋼はク リープ強度特性に優れているため、各種高温機器に 広く使用されている。火力発電プラントでは管寄せ や主蒸気管等の大型高温構造部材に改良9Cr-1Mo鋼 を採用することにより、蒸気温度を従来の566℃程 度から約600℃に上昇させることが可能となり、エ ネルギー効率の大幅な向上に貢献した。その後、さ らにクリープ強度を高めた高強度フェライト耐熱鋼 が多数研究・開発され、すでに実用化されている。 しかし、図6に示すように、従来の手法で高強度フ ェライト耐熱鋼のクリープ強度を解析・評価する と、長時間クリープ強度を過大評価してしまう危険 性が認められた。その原因は、高応力・短時間域と 低応力・長時間域では強度低下を引き起こす組織変 化の様相が異なるためであり、低応力・長時間域で は図7に示すように、結晶粒界近傍で組織の回復・ 軟化が優先的かつ不均一に生じるためであることを 明らかにした。強度低下を引き起こす材質劣化機構の違いに基づ いて、高応力・短時間域と低応力・長時間域のクリ ープ破断強度を別々に解析・評価する領域分割解析 法(図8)を提唱した。領域分割のための境界条件 としては、簡便な指標として0.2%耐力の1/2を採用 した。0.2%耐力の1/2は、その温度における弾性限 にほぼ相当することから、この条件を境にして材質 劣化機構が変化すると推察される。図9に示すよう に、火SUS410J3系鋼のクリープ強度評価でも領域分図6 改良9Cr-1Mo鋼の応力-破断時間曲線と20,000h 以下の短時間データから予測したクリープ破断寿命図7クリープ破断した改良9Cr-1 Mo鋼の透過電顕組織 (試験温度:600℃、試験応力:100MPa、破断時間: 34,141h)図8 改良9Cr-1Mo鋼の応力-破断時間曲線と従来法及 び領域分割解析法により予測した長時間クリープ破断 寿命割解析法の有効性が確認され、「発電用火力設備の 技術基準の解釈(平成16年度版)」の許容引張応力 改訂に貢献した。図 9 火SUS410J3系鋼(11 Cr-2W-0.4Mo-1 Cu-Nb-V鋼) の応力―破断時間曲線と従来法及び領域分割解析法に より解析したクリープ破断寿命3. 4弾性係数と組織3. 4.1 高温長時間使用に伴う弾性係数変化耐熱鋼を高温長時間使用すると、種々の組織変化 が生じ、材質が劣化し、耐力やクリープ強度が低下 する。プラント設計時に必要とされる許容応力は、 長時間域でのクリープ強度低下を考慮した長時間ク リープ強度に基づいて決定される。ところで、弾性 係数は構造物の設計時に使用される材料定数の一つ であるが、材料を高温長時間使用しても変化しない との前提で使用されている。弾性係数は一般に金属 組織にあまり敏感でない。しかし、材料を高温長時 間使用すると、使用前に比べて顕著な組織変化が起 きるため、これが弾性係数の変化を引き起こす可能 性がある。弾性係数が高温長時間使用に伴ってどの 程度変化するかを実験的に解明することはプラント 部材の設計などに対しても重要な知見を与えると考 えられる。そこで、各種耐熱鋼を長時間時効あるい はクリープ変形させた後の弾性係数を試験前のそれ と比較した。図10に超音波パルス法にて室温で評価 した弾性係数変化を示す。弾性係数が210～220GPa の範囲にあるフェライト系耐熱鋼では、時効あるい はクリープ変形後の弾性係数は、試験前のそれとほ とんど変わらない。長時間クリープ後には、 STBA24ではパーライトが崩壊し、火SUS410J3では 固溶強化元素であるタングステンが析出物に移行 し、固溶量が減少し、SUS403では、動的再結晶が 起きる。しかし、図10のとおり、これらの組織変化 は弾性係数に影響しない。一方、弾性係数が190～ 205GPaの範囲にあるオーステナイト系耐熱鋼では、 クリープ変形後には弾性係数が減少するが(図の白 抜き記号)、時効後には弾性係数が増加する。(図の 黒抜き記号)SUS304およびSUS316では、時効中 にM23C6炭化物、Laves相、σ相が析出する。図11に 示すとおりSUS316の長時間時効後には多量のσ相 が認められる。ナノインデンテーションにより、σ図10長時間時効およびクリープ変形後の弾性係数変 化図11SUS316鋼の700℃、39,331.5時間時効後の組織 (矢印はσ相)相自身の弾性係数は約240GPaと見積もられた。したがって、図10に示す弾性係数の増加は、弾性 係数の高い析出物が多量に析出したことによるもの と考えられる。クリープ試験後に弾性係数が低下し た理由として、クリープボイドが結晶粒界に生成し、 密度が低下したことと、クリープボイドにより音速 が低下したことが考えられる。以上から、フェライト系耐熱鋼を高温プラントで 使用する場合には、高温長時間使用による弾性係数 変化を考慮する必要はないが、オーステナイト系耐 熱鋼を使用する場合には、長時間時効中の組織変化 が弾性係数を増加させる傾向にあることを考慮して おく必要がある。3. 4. 2組織形態を考慮した高温弾性係数評価法高温構造物の設計で必要となる高温弾性係数の評 価法には、超音波パルスなどを使う動的方法と、引 張試験などによる静的方法がある。高温引張試験で 弾性係数を評価する場合、試験中の微小クリープ変 形、粒界すべり、擬弾性などが弾性係数の過小評価 の原因とされる。これに対して、動的方法では、高 温でも比較的精度良く弾性係数が評価できる。しか し、実際の構造物設計では、応力―ひずみ関係を必 要とし、さらにJISZ 2280では、静的方法による高 温弾性係数評価が規定されているため、上記に示す 引張試験による高温弾性係数の過小評価の原因を明 らかにしておくことは重要である。クリープ、粒界 すべり、擬弾性は、金属組織に敏感である。そこで、 様々な組織形態を持つフェライト系耐熱鋼について 高温弾性係数評価法を検討した。図12に各種耐熱鋼の引張試験で評価した弾性係数 と温度の関係を示す。フェライト―パーライト組織 を持つSTBA24の弾性係数は、線で示す超音波パル ス法による文献値と実験温度範囲において変わらな い。一方、マルテンサイト組織を持つASTM A542 では、高温において弾性係数が急激に低下し、超音 波パルス法による文献値から大きくはずれる。 STBA24とASTM A542において、高温で応力を瞬間 負荷すると、マルテンサイト組織を持つASTM A542において瞬間ひずみ発生の直後に擬弾性が認 められた。擬弾性は高温引張試験中の弾性範囲内に おいても起こり得ると考えられ、同鋼の弾性係数が 過小評価されたものと推定される。擬弾性の原因と しては、マルテンサイトラス組織のラス境界の弾性 的湾曲が考えられる。ASTM A542において、高温 で種々の応力を瞬間負荷した場合の擬弾性変形が生 じる前の瞬間ひずみと負荷応力の関係を図13に示 す。両者は直線関係にあり、勾配から弾性係数を評 価した結果、超音波パルス法による評価値とほぼ一 致した。したがって、マルテンサイト組織を持つ耐 熱鋼の高温弾性係数を精度よく評価するためには、図12引張試験により評価した弾性係数の温度依存性 できるだけ高ひずみ速度で引張試験を行い、引張試 験中に生じる擬弾性の影響を排除する必要がある。図13応力瞬間負荷に伴う瞬間ひずみと負荷応力の関 係4.活動の成果クリープ研究グループの5年間(2005年11月現在) の活動の成果および外部活動実績等を整理して以下 に示す。論文: 21件プロシーディングス: 55件解説等: 24件口頭発表: 220件(依頼・招待講演:27件)特許出願: 8件(国内4件、海外4件)特許登録: 5件(国内1件、海外4件)【外部活動】・東京工業大学大学院連携助教授・日本鉄鋼協会育成委員会技術講座WG委員・同上 育成委員会技術育成企画グループ委員、リーダー・同上 安全率・許容応力設定調査委員会委員・同上 耐熱鋼および耐熱合金の組織安定性と寿命 推定フォーラム委員・同上育成委員会ヤングサイエンティストフォー  ラムWG主査・日本圧力容器研究会議高温強度基準値検討委員会 幹事・日本機械学会発電用設備規格委員会火力専門委員 会委員・同上 火力専門委員会材料分科会主査・同上標準事業部会委員・日本高圧力技術協会圧力容器規格委員会圧力容器 材料規格分科会委員・発電設備技術検査協会電気施設技術基準国際化調 査(発電設備)委員会材料分科会委員・同上 高クロム鋼材の長時間クリープ強度低下に関する技術基準適合性調査委員会委員・同上材料強度ワーキンググループ主査・同上 溶接継手強度ワーキンググループ委員・未踏科学技術協会エネルギー動向と耐熱鋼高温化 ニーズに関する調査委員会委員・エンジニアリング振興協会高度金属材料のプラン ト・機器における最適設計指針に関する調査研究委員会委員・日本保全学会 材質劣化診断技術に関する調査研 究分科会委員疲労研究グループの5年山口弘二、阿部孝行、木村恵、小林一夫、下平益夫、竹内悦男、蛭川寿、早川正夫、古谷佳之、長島伸夫、前田芳夫、松岡三郎、 宮原健介1.高強度鋼、およびチタン合金のギガサイクル疲 労ギガサイクル疲労とは、例えば108から1010回とい うような非常に繰返し数の大きい回数で疲労破損す る現象で、NIMSで命名した。これまではせいぜい 107回程度で疲労強度を決めていたが、高強度鋼な ど多くの鋼や金属材料で107回以降に疲労強度が極 端に減少し、対応してその破壊は材料内部の介在物 や小さな組織欠陥を起点とすることが明らかとなっ た。そのため、各種高強度鋼やチタン合金について、 図1に示す超音波疲労試験機(周波数20kHz)を用 いて1010回までの疲労強度を求め、ギガサイクル疲 労データシートとして公開することにした。図2は、ばね鋼の109回程度で疲労破壊した破面 で、アルミナ介在物を起点に内部破壊している。図 3は、チタン合金のギガサイクル疲労強度を示して おり、疲労強度は繰返し数とともに低下し、組織起 点の内部破壊であった。図2 ばね鋼の内部破壊する破面図3 チタン合金のギガサイクル疲労強度2.高温疲労高温疲労では、日本で開発されたフェライト系耐 熱鋼12Cr-2Wや9Cr-2W鋼等についてひずみ制御によ る疲労データを室温から高温まで系統的に取得し た。さらに、1000Hzの高速油圧サーボ型疲労試験機 で取得した109回までの高サイクルデータと合わせ て、広範囲な疲労寿命曲線を示した。図4は、 12Cr-2W鋼の疲労データを引張強度σBで基準化した 応力振幅σa/σBで表わしたもので、室温、400℃の 疲労限はσa/σBの値で0.5程度に対して650℃では介 在物起点で内部破壊し、その値が0.4まで低下して いた。フェライト系耐熱鋼の微細組織や組織変化等に対 して新しい組織観察法で検討し、組織の定量化に成 功した。図5は、12Cr-2W鋼が旧γ粒界、パケット 境界、ブロック境界から成り立っていることを明ら かにしている。図4フェライト系耐熱鋼12Cr-2W鋼の疲労寿命曲線 (図中の/マークは内部破壊と認められたもの)図512Cr-2W鋼のマルチ構造組織3.溶接継手疲労溶接施工すると、溶接部には冷却中に引張の残留 応力が生じる。さらに溶接形状や余盛によって溶接 部が応力集中箇所となって強度、特に疲労強度が著 しく低下する。溶接疲労データシートでは、これまで様々な溶接 施工法で溶接された継手の疲労強度を明らかにして きた。この5年では図5に示すような試験片板厚を 変えたリブ十字継手試験片を用いて、系統的な疲労 試験を実施している。その結果、図6のような結果 が得られ、残留応力と応力集中係数の両方の観点か ら溶接継手疲労強度の低下を定量的に検討できるデ ータが整備されてきている。図5板厚を変えたリブ十字溶接継手試験片(t :板厚)図6応力比R=0の疲労試験の結果(t :板厚、W :板幅)4.ナノ硬さとナノスケール組織解析図7に示すようなナノ硬さ計を開発した。原子間 力顕微鏡AFMとトンネル顕微鏡STMを複合させた ことによって、図8のような押し込み力をカンチレ バーのばね定数としなりから求めることが出来るよ うになった。通常のカンチレバーは、片持ちである が、安定にそして強く押し当てるため、両持ちレバ ーに改良した。図9は焼もどしマルテンサイト組織のSCM440合 金鋼のナノ硬さ計測の結果である。金属組織因子と して、λ :炭化物間隔、Wblock :ブロック境界幅、dγ:旧オーステナイト粒径も同時に図9に示した。 その結果、焼きもどしマルテンサイト組織の硬さは、 炭化物間隔、及びブロック境界幅の1倍から10倍程 度の範囲で増加していると考えられ、焼きもどしマ ルテンサイト組織は、析出物強化とブロック境界強 化が主な強化メカニズムであることが示唆された。図7 AFM/STM複合ナノ硬さ試験装置図8 ナノ硬さ試験で得られる押し込み力-深さ曲線図9 SCM440鋼のナノ硬さと微細組織の関係腐食研究グループの5年篠原正嵯峨修治、高野香里、田原晃、馬場晴雄、細矢雄司1.研究グループの概要腐食研究グループは、2001年に材料基盤情報ステ ーションが設立されると同時に発足した。当研究グ ループでは、「材料の大気腐食特性の評価と情報の 公開」という目標のもと、低合金鋼の大気腐食デー タの取得と腐食データシートの作成、ACM (Atmospheric Corrosion Monitor)型腐食センサによ る環境腐食性評価と腐食速度の推定、さらには酸化 物半導体(TiO2)の光電極反応を利用した防食被覆 等の研究を実施している。2.活動内容2.1 低合金鋼の大気腐食データの取得と腐食デ ータシートの作成プロジェクト研究「材料データシートの整備」に おける「腐食データシートの作成」及びその補完研 究が現在の主な研究テーマとなっている。「腐食デ ータシートの作成」では、2000年より開始された低 合金鋼の国内3箇所(つくば、銚子、宮古島)での 暴露試験を2001年より当研究グループが引き継ぎ、 それらの大気腐食特性を評価し、腐食データシート としてまとめ、データを公開している。大気腐食は文字通り、材料と材料が置かれた大気 環境との間の薄水膜を介した腐食現象であり、材料 因子、環境因子(気象因子と大気汚染物質因子)、 構造因子の3つの因子が複雑に関与した腐食現象で ある。腐食特性に大きく関与する因子として、材料 側の因子が重要であることは言うまでもないが、環 境因子の中の気温、降雨・結露によるぬれ時間、お よび飛来海塩粒子量等の環境汚染因子があげられ る。これら諸因子が複雑に影響し合う関数系の結果 として腐食量あるいは腐食速度という材料の特性値 が決まる。このような多変量の関数系を有する腐食 量から個々の変数の影響を分離・解析し、よりシン プルな関数系へと変換させるため、我々は国内数カ 所で環境因子の測定を行うと同時に暴露試験を実施 し、大気腐食データの取得を行っている。NIMS大気暴露試験施設の概観を写真1に示す。 暴露試験はJIS Z 2381「大気暴露試験方法通則」に 記載されている直接暴露試験(南面45度)と遮へい 暴露試験の二種類を実施している。写真右下の4架 台が直接暴露試験用の架台である。また、遮へい暴 露試験は通常の直接暴露架台を水平に設置し、その 上に屋根を取り付けた構造となっており(写真2参 照)、左の4架台が相当する。遮へい暴露試験は例 えば鋼橋の桁内面の環境或いは構造物の軒下のよう な環境条件を模擬した試験と考えられる。従って、 直接暴露試験は、降雨による試験片表面の洗浄効果、 日照による試験片の温度上昇等の効果があるが、遮 へい暴露試験にはそれらの効果はない。特に、飛来 海塩粒子の多い環境(宮古島)では、降雨による海 塩粒子の洗い流し効果の有無によって金属材料の腐 食速度は大きく異なり、通常、遮へい暴露試験は直 接暴露試験に比べて極めて大きな腐食速度が観測さ れることが知られている。Fe-Ni系合金のつくば及 び宮古島での直接暴露試験、遮へい暴露試験の結果 をまとめ、図1に示した。飛来海塩粒子量がつくば の10倍以上という宮古島では、海浜環境に強いFe- Ni 系合金の場合でも、 その腐食度は直接暴露試験結 果の1.5～2倍という大きな値を示した。一方、つ くばでは、直接暴露試験と遮へい暴露試験結果の間 には明瞭な優劣は観察されなかった。これらの傾向 は他の合金系或いは市販鋼でも同様に観察された。 海浜地域での遮へい暴露試験は、ある意味、「自然 環境下での促進腐食試験」という意味合いをも持っ ていると考えられる。写真1NIMS大気暴露試験場概観 写真2遮へい暴露試験架台(JWTC銚子試験場にて)図1 直接暴露試験と遮へい暴露試験の腐食量の相 違:Fe-Ni系二元系合金の場合宮古島にて直接暴露試験を実施したFe基二元系合 金の腐食度と合金添加量の関係を図2に示す。合金 添加量0%にプロットした○印が電解鉄の結果を示 す。電解鉄は極めて大きな腐食度を示すが、種々の 合金元素の添加により腐食度が大きく低下すること が判った。特に、Cu、Ni及びCrは少量の添加で顕著 な耐食性の向上が観察された。またこれらの合金の 試験片表面に生成するさびは、電解鉄表面に生成す るさびと比べ、極めて細かいものへと変化している ことが外観観察、窒素吸着法を利用した細孔解析等 により明かとなっている。一方、Al及びSiの場合に は、3 %添加で炭素鋼と同程度の腐食度まで向上す るが、外観観察等の結果、表面に生成するさびが非 常に脆く、剥離しやすいため、耐候性鋼で期待され るような保護性を有するさび層の形成はAl或いはSi 単独添加では困難であると予想される。炭素鋼をベ ースにAl或いはSiを添加した材料の場合にはさび構 造の改善が見られる。図1あるいは図2に示したデータは、我々が実施 した暴露試験のデータをまとめたものであるが、腐 食データシートには各鋼材の腐食量が暴露期間とと もに数値データとして掲載されている。例えば、 2003年に発刊した腐食データシートNo.1Aには、Fe- Cr系及びFe-Ni系合金を中心とした上記3カ所におけ る3年間の曝露後の腐食量を、典型的な試験後の試 験片外観写真とともにまとめている。2005年度中に は、3年暴露までのものについてのさびの分析、写 真集などをデータシート資料NO.1にまとめ、発刊予 定である。現在も種々のFe基合金で曝露試験を継続 実施しており、長期の曝露試験結果に対する腐食量図2種々のFe基二元系合金の腐食度をまとめ、腐食データシートとして今後も発刊する 予定である。2. 2 ACM型腐食センサによる環境腐食性評価 と腐食速度の推定当グループでは、図3に示したFe/Ag-対からなる ACM (Atmospheric Corrosion Monitor)型腐食セン サを環境腐食性の異なる各地に設置して、環境因子 の定量化および環境腐食性評価を行っている。同時 に、炭素鋼、溶融亜鉛めっき鋼板の暴露試験を実施 し、材料の寿命予測に寄与する腐食速度等の基礎デ ータを取得している。本ACM型腐食センサは、当グ ループが中心になって、特性評価あるいは環境腐食図3 Ag/Fe-対ACM型腐食センサの構成性の評価法開発を行っているもので、すでに腐食防 食協会腐食センターによって認定され、市販され ている。また、以下に示す実績により、当グループ が作成した「ACMセンサ出力解析ソフト」は、同じ く腐食防食協会 腐食センターによって認定され、 2005年より市販されるようになり、ACMセンサと伴 に橋梁や住宅などの構造物に適用されるようになっ た。ACMセンサ出力の大きさと経時変化は降雨時と結 露時とで異なるため、結露・乾燥および降雨の各期 間を検出し、各々の期間の時間を求めることができ る)。を測定した結果を、これまでの測定結果と併 せて図4に示す。図4各暴露地で結露時間(Tdew) ・乾燥時間(Tdry) および降雨時間(Train)ISOによると、ぬれ時間(TOW)は「気温0℃以 上、湿度80%以上の継続時間」と規定されており、 温度と湿度という気象条件だけでTOWが決まると している。しかし、ACMセンサによる測定から、湿 度の継続時間がぬれ時間(TOW)と等しくなるよ うな臨界の湿度の値(RHc)は、例えば清水で RHc=78%、隼人でRHc=58%、宮古島でRHc=60%で あった。このように、実試験片上でのぬれ時間は、 ISO方式に依る気象因子にのみによって決定される ものではなく、環境汚染因子として定義される付着 海塩量にも大きく依存する。ACM型腐食センサは、ぬれ期間におけるセンサ出 力と相対湿度(RH)、及び予め所定の量の海塩を付 着させて求めておいた両者の関係(較正曲線)から、 センサ表面に付着した海塩量を実時間的に測定する こともできる。通常の屋外暴露条件では、海塩はい ったん雨で洗い流されても数日で回復する。種々の 条件での海塩付着量(Ws)を表1にまとめた。直 接雨がかかる条件下(屋根上)でのWsは、『海塩に よって腐食が加速される海洋性大気環境』である沖 縄県内で0.1～3g/m2、『比較的穏やかな海洋性大気環 境』である清水で0.01～0.1g/m2『田園地域』にあ るつくばで0.003～0.03g/m2、である。清水において も、洗浄作用が生じないよう、内海の海面上50cm の高さに下向き(海面向き)におくと、沖縄での屋 根下に匹敵する10g/m2以上にもなることがある。このように、我々は国内数箇所でACM型腐食セン サを設置して環境の腐食性を評価すると同時に、金 属試験片(テストクーポン)を暴露して腐食量の測 定を定期的に実施している。環境データに裏打ちさ れた比較的短期間の大気腐食データを取得し、これ らのデータから例えば50年後或いは100年後の長期 の腐食量或いは余寿命の推定を行おうとしている。 このようなアプローチをさらに進めることにより、 日本全国での材料の腐食量の推定が可能になると考 えている。2.3TiO2の光電極反応を利用した防食被覆の研 究TiO2はn型半導体としての性質を持ち、光照射時 には非照射時と比較してかなり卑な電極電位を示 す。しかも、その表面でのアノード反応は本多・藤 嶋効果とよばれる水の酸化であって、それ自身の溶 解あるいは劣化を伴わない。したがって、浸漬電位 がそれより貴な金属をカソード防食し、かつこの防 食効果が半永久的に持続する、非犠牲アノードとし て使用できる可能性(非犠牲・光カソード防食、以 下では単に光カソード防食という)がある。こうし たTiO2の化学的安定性(劣化や溶解をしない)を利 用して、水溶液中あるいは大気環境中における金属 材料に対する非犠牲カソード防食の可能性について 調査している。とくに大型構造物へ適用するために、 工業的製造が実用化されているゾル(工業的ゾル) による本防食法の実用化をめざしている。基板金属の上に直接TiO2を被覆しただけでは、基 板とTiO2界面の導電性が悪く、電子が基板に達する 前にホールと再結合してしまい、十分に卑な光電位 が見られない。そこで、良好な導電性を持つ金属酸表1 種々の環境での「海塩」付着量「海塩」付着量の対数、logWs[g/m2]-4 -3 -2 -1 0 1 2静岡県静岡市清水百葉箱屋根上 海面上50cm下向き沖縄県西原町屋根上 南面90° (屋根下)沖縄本島東海岸屋根上沖縄本島西海岸屋根上沖縄県宮古島屋根上鹿児島県隼人町屋根上茨城県つくば市屋根上栃木県野木町 (～1998)屋内屋外(軒下)(1999～)屋内屋外(軒下)海水散布 10-3海水 10-2海水 海水5% NaCl水溶液図5 SnO2-TiO2複合皮膜の光電位と光電流に およぼすSnO2モル比の影響化物としてスズ酸化物に着目した。2002年には、ス ズのシュウ酸塩を熱処理することによりSnO2の微粉 末をあることに成功した。これをTiO2ゾル液に添加 したものをITO (Indium Tin Oxide)被覆ガラス (ITOガラス)に噴霧させてSnO,TiO2複合皮膜を作 成し、TiO2とSnO2のモル比が1:1のときに光電位 が低く、かつ光電流が大きくなって、最適な防食能 を発揮することを見いだした(図5)。2003年から は、本手法のNaCl水溶液中におけるCuの防食への適 用を検討している。CuにSnO2-TiO2複合皮膜を被覆 しただけでは、基板と被覆界面の導電性が不十分で、 光電位が十分に卑化しないため、あらかじめCuにSb ドープSnO2膜を被覆した―Cu/Sb-SnO2/ (SnO2+TiO2) ―。脱気環境であるが、-700mV vs. SCEというかな り卑な光電位を達成できた(図6)。また、一度光 照射によって電位が卑化した後は、光照射停止後も 電位は比較的卑に保たれるという電位貴化遅延効果 を示し、光照射下(昼間)のみならず夜間を含めた 本防食法の可能性が示された。このような挙動は、 皮膜が多孔質であるので、H+やLi+などがその内部 にまで移動でき、図6 Cu/Sb-SnO2/(SnO2+TiO2)系での光電位および暗電位の経時変化 という反応によってSn(Ⅱ)/Sn(Ⅲ)あるいはSn(Ⅲ)/ Sn(Ⅳ)の酸化還元が進むためと考えられる。非脱気環境下では十分に卑な光電位が得られてい ないが、これは、Sb-SnO2上での溶存酸素還元電流 (O2+2H2O+4e-→ 4OH-)が大きいためであり、現在、 導電性が十分で、溶存酸素還元電流が小さく、かつ 電位貴化遅延効果を有する最適な金属酸化物および その作製法の探査を進めている。3.最後に「腐食」という言葉から、世間一般の方々はマイ ナスイメージを連想するが、腐食研究を推進するこ とにより、腐食による損失を未然に防ごうというプ ラス思考をイメージした、我々の考え方や研究成果 を広く知ってもらうため、論文、特許出願、学会発 表等を行うとともに、国内外の研究機関や企業とも 研究交流や共同研究にも力を注いでいる。腐食データシートの発刊後、数多くの研究機関か ら問い合わせがきており、大気腐食だけでなくいろ いろな環境での腐食データをデータシートという形 で公表してもらいたいという要望が寄せられてお り、腐食データの重要性・必要性を再認識している 所である。今後も研究成果を精力的に発信しつつ、 外部との連携をより強化し、日本における腐食研究 の拠点となれるよう努力していきたいと考えてい る。極低温材料グループの5年緒形俊夫、荒井良和、宇都木栄子、小野嘉則、柴田浩司、進藤雄介、住吉英志、星野健太、由利哲美1.極低温材料クループの経緯と目的本グループの起源は、昭和54年に遡り、以来、核 融合炉等の超伝導利用機器に極低温下で使われる構 造材料の開発と特性評価に関する研究を推進し、平 成14年4月に極低温材料グループとして発足した。 本グループでは、宇宙ロケット、水素エネルギーや 超伝導応用機器などに用いられる構造材料の、極低 温から高温までの極限環境における特性及びその信 頼性評価を実施するとともに宇宙関連材料強度特性 データシートを出版している。また評価法の開発と 極低温における材料評価の国内外のリーディング機 関として、国際規格への提案を行うプレスタンダー ド研究を推進している。2.活動経緯本グループの特徴は、液体ヘリウム中(4K)で の長時間疲労試験が実施可能な世界で唯一のヘリウ ム再凝縮型疲労試験機を有し、オーステナイト系ス テンレス鋼、チタン合金や超合金等の各種構造材料 の疲労特性データを取得・蓄積していることと、極 低温における構造材料評価の中核機関として認識さ れ、その役目を果たしていることである。1999年11 月の国産宇宙ロケットH―Ⅱ 8号機の打ち上げ失敗 の事故調査においても、これらのデータが参照され るとともに、原因究明の議論の中で専門家としての 意見が求められた。さらに、国産ロケットに用いら れる材料の強度特性データを緊急に取得するにあた り、極低温長時間疲労試験機を用いて、チタン合金 等のデータ評価に実績のある当機構にデータ整備が 依頼され、得たデータをデータシートとして公表す る方が多くの人に材料が認知され役立つとともに、 材料自体の信頼性が向上することになる、という従 来のデータシートの実績を踏まえて、データの整備 とデータシートの準備が始まった。この依頼を受け ることは、公的機関としての当機構の任務であり、 破面観察や応力解析を伴う事故調査の的確さは、当 機構の実績を裏付けている。3.主な成果3.1データシート宇宙関連材料強度特性データシートの材料試験は 当機構と宇宙航空研究開発機構との連携の下で、当 機構を中心に引張、シャルピー衝撃、破壊靭性、疲 労、疲労き裂進展等の各強度特性データについて実 施している。取得されたデータは、詳細に検討され、 破面写真データとともにデータシートとして公開さ れている。表1に示すように、まずH―Ⅱのコスト と性能を改良したH―Ⅱ Aロケットの液体水素燃料 ターボポンプ(FTP)およびエンジン材料から始ま り、チタン合金、Alloy718、超合金を対象に、毎年2冊以上出版し、2005年度までに10冊出版され、今 後銅合金等のデータシートおよび破面写真集・資料 集の出版を予定している。既に得られたデータは、従来参照されていた類似 の材料と異なることを示すとともに、H―ⅡAロケ ットの第1段エンジンLE-7Aと第2段LE-5Bの設計 評価やエンジンの動作条件の確認に使用され、平成 13年(2001年)8月の1号機の打ち上げ成功以来、 H-ⅡAロケットの打ち上げ成功に大きく寄与してい る。図1Ti-5Al-2.5Sn ELI合金大型鍛造材の疲労特性表1 宇宙関連材料強度特性データシートの出版計画No 材料 発行時期1 Ti-5Al-2.5Sn ELI大型鍛造材 2003/32 Alloy718 EB-溶接材(955℃ ST 材)、 低サイクル疲労2003/33 Ti-5Al-2.5Sn ELI小型鍛造材 2004/34 Alloy718 EB-溶接材(1045℃ ST 材)、 高サイクル疲労2004/35 Alloy 718鍛造材 2005/36 A286鍛造材 2005/37 SUS304L鍛造材 2006/38 Alloy 718溶接材(955℃ ST材)高サイ クル疲労、切欠き2006/39 Alloy 718溶接材(1045℃ ST材)高サ イクル疲労、切欠き2006/310 Alloy 718溶接材き裂進展特性 2006/3Ti材の資料集/破面写真集 2007/7Alloy 718鋳造材 2008/3図 2 H-ⅡA1号機の打ち上げ3.2国際標準化極低温構造材料の実用環境である極低温・強磁場 下における強度特性や破壊特性の評価技術につい て、既存材料試験法の適用範囲の拡大および未確立 の試験法標準化のための国際的共通知的基盤の確立 を図るため、極低温における効率的かつ高度な試験 技術の開発を目指すとともに、国際的標準化試験活 動であるVAMASとの強い連携のもとに国際ラウン ドロビンテスト等を実施し、ISOにおける試験法標 準化の提案を行った。主なプロジェクトの概要は以 下の通り。3. 2.1 極低温・強磁場中の試験法の確立これまでに実施した極低温・強磁場中引張試験の ラウンドロビンテストから得られた成果をとりまと め、V AM ASからISOに提出するTECHNICAL TRENDS ASSESSMENT (TTA)文書を改訂した。3. 2. 2円周切欠付き小型丸棒試験片による極 低温破壊靱性評価法の確立円周切欠付小型丸棒引張試験片による極低温下の 破壊靭性評価法のラウンドロビンテスト結果のとり まとめと解析を行い、ISOへのVAMASからの技術を 移行する国際標準法案のTTA文書を作成した。3. 2. 3複合材料の特性評価法の確立極低温用ガラス繊維強化樹脂のG ―10CRの極低温 下での層間せん断試験法に関し、最適試験片形状に よる国際ラウンドロビンテストの結果を、最大せん 断応力を求める手法で解析した結果をもとにTTA文 書を作成した。3. 2. 4 ISOへ極低温材料試験法提案NIMSの成果から発展したVAMASの活動成果をも とに、ISO/TC164/SClにVAMASとしてISOに提案し た「液体ヘリウム中の引張試験法」は、2004年8月 にIS (International Standards)として出版された。3. 2. 5 液体ヘリウム中での引張試験における ヤング率測定法新しいプロジェクトとして、液体ヘリウム中での 引張試験におけるヤング率測定法が始まり、各参加 機関に合わせた試験片を加工し配布した。図3 極低温ヤング率測定の第1回ラウンドロビンテスト結果3. 3極限環境材料リスク回避技術の開発極低温疲労強度に及ぼす表面加工傷や表面粗さの 影響を評価し、ヒューマンエラーを見積もる研究を 行った。3. 4極低温ガス環境下での材料特性に関する研 究水素貯蔵用の液体水素容器あるいは高圧容器に用 いられるSUS304LやSUS316L等のオーステナイト系 ステンレス鋼は、低温で加工誘起マルテンサイト変 態を生じるとともに、磁気変態点を有することから、 低温から極低温にかけて強度特性が変化することが 知られている。このような材料を実際の水素環境下 で用いるにあたっては、これらの低温での強度の変 化のみならず、靭性や組織中のフェライト量の変化 を十分に把握しておくことは、極めて重要なことで ある。そこで77K以下の極低温領域を主に、4～ 77Kまでの任意の温度に制御したガス中での候補材 の引張特性と塑性変形に伴うフェライト量の変化を 測定し、SUS304LやSUS316Lの各温度において、4K から77Kの間でフェライト量については塑性変形量 とともに増加し温度による変化は見られない、等の 塑性変形量とマルテンサイト変態量の関係を明らか にした。図4 SUS304Lの4Kから77Kにおける塑性歪みとγ、 α、ε相の変化4.今後の動向データシートは産業界・ユーザー(顧客)の意向 を反映して国内外に配布し、国際標準化活動は VAMASと経産省、産総研及び産業界・大学と連携 しての国際協力、国際貢献である。今後、独立行政 法人として、新物質や材料の開発または特性改善/ 評価法開発し発表・報告するにとどまらず、国民・ 産業界が役に立つ、使える形、例えば技術指導・共 同開発・知的基盤等の手段、で提供することが必須 なことから、この分野の重要性の認識を高めること が必要である。高温材料グループの5年田淵正明、本郷宏通、渡部隆、久保清(併任)1.発足の経緯と目的耐熱構造部材の損傷や破壊に関する研究を行うグ ループとして発足した。金属材料技術研究所クリー プ試験部の頃から、耐熱鋼溶接部の高温強度に関す る研究を行ってきたメンバーと、高温破壊力学の研 究を行ってきたメンバーとで発足した。火力発電プ ラントや原子力発電プラントで長期間使用される高 温構造部材における材質劣化や損傷の発生・成長を 予測することは、機器の安全性・信頼性の上から重 要な研究課題である。当グループでは、耐熱鋼溶接 部の損傷・破壊機構の解明と長寿命化、高温破壊の 計算機シミュレーション等の研究、および高温破壊 特性試験法の国際標準化(VAMAS)を他の研究グ ループや国内外の研究機関と共同で推進した。また、 クリープデータシート業務の一部を担当した。当グループで実施した主な研究課題を以下に示 す。〈運営費交付金研究〉・材料評価の国際標準化研究(H14～H17)・ CO2削減火力発電用フェライト系耐熱鋼構造部材 の高性能化に関する研究(H14～H15)〈外部資金研究〉・微細組織を考慮した材料特性の計算機シミュレー ション(H11～H15)・照射下での材料の損傷・破壊に関するマルチスケ ールシミュレーション(H16～)・次世代高温原子力プラント溶接構造に対する損傷 防止技術の開発(H16～)・高速炉の異材接合部の高温長時間信頼性評価に関 する研究(H13～H17)2.主要成果2 .1耐熱鋼溶接部のType Ⅳ損傷に関する研究温室効果ガスの削減や省エネルギーの観点から、 火力発電のボイラ蒸気温度・圧力を向上させる目的 で、高Crフェライト系耐熱鋼の開発と実用化が進め られてきた。しかし、高Crフェライト系耐熱鋼を 600℃以上で使用した火力発電プラントにおいて、 溶接構造部材の熱影響部(HAZ)にType Ⅳと呼ば れるクリープ損傷が見つかる事例が多く、問題とな っている。当グループでは、9%Crおよび12%Crフェライト 系耐熱鋼の溶接継手やHAZ再現材の長時間クリープ 試験を継続的に行い、Type Ⅳ損傷のメカニズムの 研究を行った。HAZ細粒域での粒界炭化物の成長や、 マルテンサイト組織の回復がType Ⅳ損傷の主要因 であることを明らかにした。また、多軸応力下では ボイド発生・成長が加速されるために、溶接施工に よってHAZ幅を狭くしてもType Ⅳ破壊が防止でき ないことを示した。(Materials Science Research International 9 (2003) p.23 ほか)。そこで、ボロンの粒界強化機構を利用して、HAZ 細粒域を強化し高Cr耐熱鋼溶接継手のクリープ寿命 を改善することを検討した。この研究の過程で、ボ ロンを添加し、窒素を低く抑えた材料では、溶接熱 サイクル中にHAZ細粒組織を生じないことを発見し た。既存の高Crフェライト系耐熱鋼では、溶接中に AC3温度付近に加熱・冷却された組織は粒径10μm以 下の細粒組織となる(図1(a))。これに対し、開 発鋼(9Cr-3W-3Co-VNb-90ppmB-20ppmN)では、AC3 温度付近に加熱・冷却しても母材とあまり変わらな い粒径とラスマルテンサイト組織が保持されること を見出した(図1(b))。このメカニズムは現在の ところ明らかではないが、ボロンによる粒界エネル ギーの低下や、残留γによるAustenite memory effect などが、変態のメカニズムを変えた可能性があると 考えている。ボロン添加・低窒素とした開発鋼の溶接継手で は、細粒HAZ組織が生じないこと、炭化物が微細分 散することにより、溶接継手のクリープ強度が大き く改善された(図2)。これまで、Type Ⅳ損傷を防 止することは困難とされていたが、ボロン添加・低 窒素化によりType Ⅳ損傷を抑制できる可能性があ ることを初めて見出した。(Metallurgical and Materials Transactions A, 36A (2005) p.333ほか)図1 ボロン添加による溶接HAZ組織の改良図2 Type Ⅳ損傷抑制による溶接継手の長寿命化2 . 2 高温破壊の計算シミュレーションコードの  開発高温クリープ下でのボイドやき裂の発生・成長の 特性や破壊様式は、多軸応力状態の影響を受ける。 これまでに、大型試験片や溶接継手試験片を用いた クリープき裂成長試験を実施し、破壊特性に及ぼす 多軸応力状態や破壊様式の影響について明らかにし てきた。これらの実験結果をふまえて、多軸応力の 影響を考慮して高温破壊のシミュレーションを行う ための計算コードの開発を行った。開発した計算コードでは、弾塑性クリープ、き裂 進展解析、破壊力学解析、応力勾配下での空孔拡散 解析(図3)、損傷成長解析を3次元で行うことが できる。これにより、空孔が切欠先端に凝集し、損 傷の生成によって破壊が加速される現象をシミュレ ートすることができた。また、溶接部でのType Ⅳ 破壊の問題に応用し、実験と合うき裂発生・成長の 予測可が能となった。(Metallurgical and Materials Transactions A, 35A (2004) p.1757ほか)図3クリープ中のき裂先端における空孔濃度変化2. 3 高温破壊試験法の国際標準化研究高温で長期間使用される機器部材(発電用のボイ ラやタービンなど)においては、クリープき裂の発 生時間や成長速度を予測し、部材の補修や交換を行 うことが、機器の安全性・信頼性の面から重要であ る。クリープき裂成長をモニタリングし、破壊寿命 を予測する方法を標準化するための国際共同研究を V AMAS活動の一つのテーマとして行ってきた。こ れまでに、各種耐熱合金を対象としたラウンドロビ ン試験を行った結果に基づき、ASTME-1457-00規格 「金属材料のクリープき裂成長速度の測定方法標準」 を作成した。延性な耐熱鋼でも、厚肉で複雑な形状をした構造 部材になると、多軸応力の影響により脆性的なクリ ープ破壊を起こす場合がある。そこで、構造部材を 模擬した種々の試験片を用いた高温破壊特性試験法 の国際共同研究(VAMASTWA25 :構造部材におけ るクリープ/疲労き裂成長)を、日英米独でH12年か らH16年まで実施した。当グループでは、東北大学、 石川島播磨重工、Imperial大学とラウンドロビン試 験を行い、環状切欠試験片を用いた高温き裂成長試 験法と、多軸応力下でのき裂成長特性評価法を確立 した(Int. J. of Pressure Vessels & Piping 80 (2003) p.417ほか)。TWA25での活動成果を試験法のTTA 文書 (Code of Practice for Creep/Fatigue Testing of Cracked Components)をとりまとめ、現在ISOでの規 格化を目指している。H17年には、溶接部における損傷の発生・成長の 試験評価法の標準化を目的とした、新たな国際共同 研究VAMAS TWA31(残留応力を含む溶接構造物に おけるき裂成長)を日・英が中心となって立ち上げ た。2. 4 溶接継手のクリープ特性データシート高温構造部材の溶接部に損傷が発生する事例が多 くあり、損傷力学や破壊力学等による寿命評価が、 重要な研究課題となっている。これらの解析の基礎 となる溶接継手やHAZの長時間クリープ特性、き裂 成長特性等のデータベースの充実が求められてい る。当グループでは、2Cr, 9Cr, 12Crフェライト系耐 熱鋼およびオーステナイト系耐熱鋼の溶接部のクリ ープ強度(図4)や破壊に関するデータを構築して きた。更に長時間のデータを充実させ、クリープデ ータシートとして公表する計画である。また、Type Ⅳ破壊による蒸気漏れ事例を受けて 行われた、「高クロム鋼の長時間クリープ強度低下 に関する技術基準適合性調査委員会」において、中 立機関の立場から、9%Crおよび12%Cr鋼溶接継手 のクリープ破断データを収集・解析し、溶接部の10 万時間破断寿命の推定を行った(H16～17年)。図4 P91鋼溶接継手の長時間クリープ特性表1研究成果の発表H13 H14 H15 H16 H17誌上論文 3 2 7 1 0 7材料データベース研究グループの活動山崎政義浅田雄司、飯室茂、衣川純一、上平一茂、桑島功、徐一斌、清水精子、田中秀雄、田中亘、寺島香織、深尾康秀、藤田充苗、細 谷順子、間下健太郎、松尾宗次、村田正治、王海涛1.はじめに材料データベース研究グループは平成13年10月に 目黒地区を拠点として発足した。当グループのミッ ションは当機構の研究室毎に開発してきたデータフ リーウェイ、構造材料データベースおよび超伝導材 料データベースに加え科学技術振興事業団(現独立 行政法人科学技術振興機構、以後JSTと呼ぶ) が 高機能物質データベースとして開発中の材料系デー タベースを移管して開発を継続するとともにこれら の材料データベースを統合して運用・管理を行うこ とである。さらに、外部資金による原子力研究を2テーマ継 続して行った。2.物質・材料に関する知的基盤の構築第2期科学技術基本計画の重点課題の一つである “知的基盤の充実”を目標に“物質・材料に関する 知的基盤の構築”として長期的展望のもと機構から 固定経費として予算が認められた。各データベース の開発経緯と収録データの概要について報告する。2.1データベースの移管当グループ発足と同時にJSTからの高機能物質デ ータベース移管のための打ち合わせを開始し、平成 15年2月までに15回開催した。移管の具体的な検討 は担当者レベルで密接に行われ、6種類のデータベ ースが移管されて平成15年4月1日にNIMS物質・ 材料データベースとして公開された。移管のための 主な合意事項は(1)移管するデータベースは、高分子データベース (PoLyInfo)、拡散データベース、計算物性データベ ース、三次元状態図、基礎物性データベース (Pauling file) 、圧力容器材料データベースの6種類 とし、材料強度データベースはNIMSの構造材料デ ータベースに置き換える。(2) NIMSはデータベースのインターネット公開の ためのインフラおよびサーバ機器を目黒地区に整備 する。データベースシステムの移管はソフトウェア など最新のものとしてJSTが行う。(3)各データベースの著作権などはNIMSに委譲す るがそのための覚え書きを交わす。なお、結晶基礎 データベース(Pauling file)に関してNIMSはJSTか ら利用を許諾する契約となっている。(4)高分子データベースは開発段階のため担当技術 者はシステムの移管前の平成14年4月からNIMSで データ採取作業を行う。平成14年度に目黒地区材料データベース棟204室 および304室を改修し、ネットワークの増設を行い、 12月にサーバ機器を設置した。平成15年1月から3 月にかけて各データベースシステムの移植作業が行 われ、平成15年4月1日にNIMS物質・材料データ ベースとして11種類の材料データベースがインター ネット(http://mits.nims.go.jp)で公開された。 図 1にNIMS物質・材料データベースの表紙ページを 示す。図1NIMS物質・材料データベース(平成17年12月) (http://mits.nims.go.jp)2. 2 高分子データベース(PoLyInfo)JSTの高機能物質データベースの一つとしてH7年 から開発が始まり、プロトタイプがH10年1月に公 開された。PoLyInfoはポリマーの原料となるモノマ ーからポリマーまで名称(IUPAC名、慣用名)、構 造などの基本情報のほか、各種物性、重合情報を網 羅的に収集したデータベースであり、拡張機能とし てNMRスペクトルデータベースおよび物性推算機能 がある。最も利用ユーザの多いデータベースであ る。(1)PoLyInfoの高分子辞書の拡張PoLyInfoのプロジェクトは元々「対象とする範囲 におけるデータの体系性、網羅性」を要件の一つと して発足した。有機低分子の集合体であるポリマー には、その形状だけからみても線状・グラフト・星 型・スピロ型・櫛型・梯子型・網目状などが、最近 ではデンドリマー ・ポリロタキサンなどが高分子の 範疇で議論され、さらには「高分子トポロジー」な どの新しい概念に基づく研究も広がりつつある。ま た主として単一の原料からなるホモポリマーや複数 の原料の組み合わせであるコポリマーが存在し、そ の組み合わせは無限といえる。こうした中で PoLyInfoの「高分子辞書」システムは実際には線状 http://mits.nims.go.jp)%25e3%2581%25a7%25e5%2585%25ac%25e9%2596%258b%25e3%2581%2595%25e3%2582%258c%25e3%2581%259f%25e3%2580%2582http://mits.nims.go.jpの規則性ポリマー(いわゆるホモポリマー)のみを 対象として構築されたため、文献から採取したデー タのうちホモポリ マーのみが登録・公開されてい た。採取した約30,000件のサンプルデータのうち 8,000件程度の未公開データと4,500件の未登録ポリ マーデータを抱えたままPoLyInfoはNIMSに移管され た。NIMS移管後は、当グループに設けた高分子学会 の各研究会から委員をお願いしている高分子データ ベース検討会のご意見を反映して公開樹脂種の拡大 を最優先にして取り組み、主としてデータ構造の見 直し・再編と実装システムを見直し、線状不規則性 (コポリマー)(2002.08)、コンパウンド・コンポジ ット(2003.05)、ブロック・グラフトコポリマー (2005.01)、ポリマーブレンド(2005.06)等の公開 を既存システムに殆ど手を加えることなしに、実現 した。これにより文献単位のデータ公開率(公開文献数 /データ採択文献数)は、移管時の54% (4192/7770) から90% (9400/10500)にまで向上した。(2)インターフェイスデータベースでの高分子構造の表示と記録には、 フレンドリーなユーザーインターフェイス、正確に 構造情報を伝えるための文書(名称)インターフェ イス、コンピュータに分子構造データを蓄積するた めのマシンインターフェイスが必要である。 PoLyInfoではこれらをテキスト構造式(TXS)、 IUPAC規則による命名、「高分子辞書」のPoLyInfo書 式の開発で解決してきた。最近の検討から、複雑に見えるポリマーも成長単 位と境界単位(末端と分岐)、接合単位の組み合わ せと階層化で殆ど表示できることが明らかとなって きた。現在手つかずのイオン、イオン性ポリマーの 表示と記録方式を開発すれば、最初に述べた「体系 性、網羅性」を兼ね備えたデータベースにかなり近 づいたものになる。(3)データの信頼性確保と標準化PoLyInfoが扱っている物性値データは文献から採 取している。公開データはすべて(孫引きでなく) 文献から直接採取し、出典を明示している。また原 データ・採取データのミスを根絶するため、独自の チェックツールを開発し、作成したデータベース用 データの書式・データ範囲・(相関データの)デー タ構造をチェックしている。一方、ポリマーの表示 構造と名称のデータは、NIMSで独自に付与してい る。構造基礎名称は、2002年12月に出されたIUPAC 勧告に基づく書き換えをほぼ完了した。ポリマーデ ータの分類・用語・名称をIUPAC勧告に合致させる とともに、高分子学会命名法委員会に参画し、こう したものの制定にも積極的に貢献している。(4)物性推算システムの概要PoLyInfoの高分子辞書には05年11月現在で約 15,000のポリマーが登録されている。採択している 物性数は約100あるので、全ポリマーの物性値のエ ントリーは150万にもなるが、実際に集められてい るのは約15万データポイントしかないので単純に見 て1/10しか埋まっていない計算になる。実際には 特定のポリマーの特定の物性(例えばポリエチレン のTg)が多数集められているので、空白は9/10よ りも多くなる。CASのようなどんなに大きなデータ ベースでもこれと大同小異で、ポリマーの特徴とし て製造や使用の条件により一つのポリマーが一つの 物性に対して多様な値を示すのと、コポリマーやブ レンドのような2つ以上のポリマーの組み合わせが あるので、採択されるポリマーの数に比べて空白の データエントリーは幾何級数的に増大していく。こ のデータの空白を補う手段の一つが、2005年2月か ら公開している「物性推算」である。PoLyInfoの物性推算システムの特徴は、既登録の ポリマーに関しては、可能な限り文献の実験データ と比較できる形で提供していることである。またパ ラメ ータのある限りにおいて、ユーザーは未知・未 登録のポリマーの物性を探索することができる。現状では5物性10種類の推算が可能であるが、今 後順次他物性にも拡張していく。図2 高分子データベースの検索機能の利用例2. 3 結晶基礎データベース(Pauling File)結晶基礎データベース(Pauling file)はJSTと Materials Phases Data System (MPDS)とのデータベ ース構築・提供の共同プロジェクトとしてH7年度 ～H14年度に開発したものである。結晶構造データ 約27,000件、X線回折データ約27,000件、状態図約 8,000件および物性データ42,000件が収録されてお り、材料の構成元素、結晶構造、物性および相図か ら検索できる。さらに、データマイニング機能とし て構造マップ機能(Pettifor type、QSDtype、QFD type)、統計機能、回折計算機能が利用できる。な お、現在はデータの拡充は行われていない。2. 4 拡散データベース本データベースは、拡散現象は材料における動的 挙動を理解する基本的な事象であり、拡散データはプロセス設計や材料設計・選択・利用において実用 面でも重要な指針を与える情報であるとの認識にも とづき、日本金属学会旧拡散研究会および日本鉄鋼 協会計算機支援材料設計分科会の支援を受けて、 JSTにおいて開発が開始されたものである。また旧 金属材料技術研究所において開発されていた原子力 データフリーウェイの中に藤田充苗により収録され た拡散データを継承している。内容は公刊された科学技術文献情報から選択採取 された拡散定数あるいは拡散係数の数値データと拡 散関連文献書誌データから構成されている。開発の 初期は原子力用材料、鉄鋼材料を中心にデータ収集 がなされ、NIMSへの移設時点で数値データは約 2000件、文献データは約1500件であった。NIMS移設以降、データ収集対象の拡大、提供情 報内容の質量充実、検索システムの使用便宜性向上 を進めて世界的にも独自のデータベースとしての情 報発信と利用者の便宜向上を目指している。創設当時には、主として金属材料を対象としてい たことなどの理由から、多様な物質・材料に関わる 網羅的かつ系統的な拡散データの構造や記述方法に 十分な配慮を欠いていた。一方移設後NIMSの独自 性を示せるように、各種物質・材料を包含するべく、 収録対象を金属間化合物、セラミックス、半導体、 高分子へと展開、それらの構造・相などの状態につ いても結晶体から非晶質そして液体に拡張、また拡 散モードも自己・不純物拡散から、短回路・相互拡 散などのデータも取り入れつつある。そのような背 景から、NIMSへの移管を機に2004年度拡散データ ベース・システムの更新と拡張をおこなった。NIMS拡散データベース①検索データベースにアクセスすると、図3に示す画面 が開き、先ず数値データおよび文献書誌データの検 索ができる。物質や材料の名称や記述には様々な方 法が用いられており、調べようとする物質・材料は 構成元素の組み合わせとしての化学成分、実用材料 としての名称など様々に表現されるので、求めるデ ータの探索の糸口に困難があった。そこで改造シス テムでは、たとえばステンレス鋼について検索する 際には、研究的あるいは実用的な使い方としてbasic (例Fe-Cr)、scientific (例Fe-alloy)、technological(例 ステンレス鋼)など目的別の検索ルートを備えて、 利用者の便宜をはかった。さらに物質・材料の状態、 拡散原子を指定するルートでの検索が可能であるよ うにしている。文献データは著者と所属、論文タイトル、掲載誌 などの一般書誌事項に加え、タイトル中の全文検索 が可能になっており、これによって所求の物質・材 料を探すことも可能としている。図3 拡散データベースのトップページ②検索結果の表示検索項目に合致した拡散数値データは表および下 のようなArrheniusプロット図として表示される。図4 データベースに収録されている純銅中における 自己拡散および不純物拡散の拡散係数温度依存性を示すArrheniusプロット図このグラフ上に、利用者自身の測定データなどを プロットできる機能が備えて、文献データとの対比 が可能としており、新しい形のデータベースの使い 方を目指している。図5ユーザの拡散データ入力画面③その他新機能従来は年度毎にデータの追補がなされていたが、 新システムではオンライン入力により随時データの 増補や内容の更新がおこなえるようになっている。 そのため作業効率も増大し、2005年9月末現在拡散 数値データ4223、文献データ3061件のデータに拡充 できている。2. 5計算材料データベースJSTの高機能物質データベースの一つとして開発 されたものである。第一原理バンド計算プログラム (FLAW、STATE)による計算結果を取り込んだ電 子構造データベースに元素特性、結晶構造および参 考情報データベースが利用できる。電子構造データ はアルカリ金属元素、遷移金属元素(3d、4d)およ びそれらの二元系金属間化合物を対象に計算・蓄積 されており、160件の電子構造データが公開されて いる。なお、現在はデータの拡充は行われていな い。2. 6 三次元状態図JSTの高機能物質データベースの一つとして開発 されたものである。熱力学計算ツール Termo-Calc の計算結果をもとに等温断面の三元系状態図を二次 元および三次元で表示できる。Fe-Cr-C、 Fe-Cr-Mo、 Fe-Cr-Ni、 Fe-Mn-C、 Li-Al-Mgが参照できる。なお、 現在はデータの拡充は行われていない。2. 7 圧力容器材料データベース日本鉄鋼協会の日本圧力容器研究会議がデータ収 集して開発したデータベースをJSTがWeb版として 再構築し公開したものである。Cr-Mo系鋼の引張特 性、衝撃特性、クリープ破断特性およびクリープ特 性が収録されており、熱処理別に226材種および 4,800件のデータポイントが公開されている。現在 はデータの拡充は行われていない。2. 8鉄鋼熱履歴データベース本データベースはJSTの研究情報データベース化 事業の一つとしてJSTと旧金属材料技術研究所との 共同研究として開発されたものである。溶接時の熱 履歴によって溶接部の特性を評価するための溶接用 CCT図データベースと溶接時の熱履歴を予測するシ ミュレータからなっている。現在はデータの拡充は 行っていない。2. 9構造材料データベース旧金属材料技術研究所で1966年に開始した国産材 料のクリープデータシート作成業務およびその後に 開始した疲労データシート、腐食データシートおよ び宇宙材料強度データシートをPDFにしてWebで公 開しているものである。PDFはデータシートが発刊 された直後に公開している。クリープおよび疲労デ ータシートについては数値データベースも構築し公 開している。当データベースはユーザからの構造材 料に関する技術的質問やデータの解釈などにたいし てデータシート作成担当グループと密接に連携し対 応している。2.10基盤原子力材料データベース原子力試験研究予算により旧金属材料技術研究 所、旧原子力研究所、旧核燃料サイクル機構および JSTの共同研究で分散型データベース(データフリ ーウェイ)として開発されたものである。原子力材 料高温特性、中性子照射特性および核変換データが 収録されている。現在、上記の機関の統廃合や組織 の移行などがあり、システムの見直しが検討されて いる2.11 超伝導材料データベース1986年の高温超伝導体の発見を契機に設立された 「マルチコアプロジェクト」の中でシステム設計、 データ収録が行われ、Web公開されたものでプロジ ェクト終了後、現在も引き続きデータの更新が行わ れている。当データベースは超伝導の材料研究に携わる研究 者を支援する目的で、一般に公開されている雑誌か ら関係論文を抽出し、超伝導材料の超伝導特性およ びその関連特性の数値データを収録し、データベー ス化したものである。 H17年度にシステムを更新 した。主な変更点は1)金属・合金系METALLICと酸化物高Tc超伝導体 OXIDEとを合体し、ひとつのデータベース OXIDE&METALLICとした。これにより検索漏れや、 検索の不便を改良した。2)有機物超伝導体ORGANIC、知識データINFO-DB の検索では検索条件順位を入れ、すべてメニュー選 択で検索できるようにした。3)試料番号をクリックすることでその試料の全デ ータが表示される機能を追加した。4)管理者が容易にデータの追加、修正が出来るよ うに改良した。収録データ件数はO&M 25,000件ORGANIC 240件JOURNAL 19,500件FIG 900件図6 超伝導材料データベースの表紙ページ図7 酸化物および金属超伝導材料の検索結果の例2.12 Web版クリープ破断材の金属組織集クリープデータシート作成プロジェクトの一つと して長時間クリープ破断材の金属組織集を発刊して いる。今までに発刊されたオーステナイト系4鋼種、 SUS304-HTB、 SUS316-HTB、 SUS321-HTBおよび SUS347-HTBについて画像データベースを構築し、 当機構内研究者に評価版を公開している。今後イン ターネットによる一般公開の方法を検討する。2.13ユーザ登録システムの統合上述のように各データベースの開発予算、経緯お よび担当者が異なっていたためH15年4月にインタ ーネットで公開した時点では各データベースを利用 するためには別々のユーザIDおよびパスワードが必 要であった。H16年度に各システムのユーザ登録シ ステムを統合するとともに個人情報保護法に対応す るためのシステム改造を行った。すなわち、ユーザ 登録時の通信を暗号化すとともに、一つのIDとパス ワードですべてのシステムが利用できるようにし た。図8～図14に登録ユーザ数の推移とユーザの所属 機関・職種を示す。図8ユーザ登録数の推移(H17年11月末現在)図9 データベースの利用状況(11種類のデータベー ス の総計)図10国内登録ユーザの所属機関図11 外国登録ユーザの所属機関図12国内登録ユーザの職種図13外国登録ユーザの職種図14外国登録ユーザの国別登録人数図8に示すようにH17年11月末時点で74ヶ国、 6,800機関から19,486人(内 外国4,719人)がユーザ 登録している。毎月約400人増加している。登録ユ ーザのうち毎月約1,500人が利用し、5,000～6,000回 ログインしている(図9)。 利用ユーザのリピタ ー率も増加傾向にある。図10に国内および図11に外国の登録ユーザの所属 機関の集計をそれぞれ示す。国内は企業ユーザの割 合が多く、外国は教育機関の割合が多くなっている。 また、図12および図13に登録ユーザの職種を示す。 図14は外国ユーザの地域別の登録人数を示す。米国 が最も多く1,354人で中国550人、英国260人と続く。 最近はアジア諸国からの登録が増加傾向にある。2.14横断検索システムMatNaviの開発当グループではユーザーがNIMS物質・材料デー タベースを使って、材料開発、材料の最適な活用、 最適な材料の選択などに役立つような使えるデータ ベースを構築していきたいと考えている。研究者や 技術者にとっては必要としている材料情報やデータ がどこにあるかの所在情報を最初に調べる必要があ る。このことからNIMS物質・材料データベースの うち高分子DB、結晶基礎DB、拡散DB、構造材料 DB、基盤原子力材料DB、圧力容器材料DB、鉄鋼熱 履歴DBおよび超伝導材料DBについてそれぞれのデ ータベースに収録されているデータのキーワードに よるインデックスファイルを作成し、それを横断検 索してそれぞれのデータベースに収録されているデ ータ数を表示する検索システムMatNaviを開発した。 図15にMatNaviの検索例を示す。検索結果から直接 それぞれのデータベースへリンクすることができ る。図15 MatNaviの検索結果の例2.15国際連携(1)Matdata.netとの連携H15年10月に英国のGranta Design社と材料データ ベースの横断検索システムの共同開発のための MOUを結んだ。そして、H16年5月にシステムが完 成し、NIMS物質・材料データベース内に、Granta Design社が運営する Materials Database Network (Matdata.net)を接続させることに成功し、横断検 索システムが完成した。この横断検索システムは、 材料別のカテゴリー検索とキーワード入力による曖 昧検索が行え、日英米の11種類の材料データベース から必要となる情報を検索することが可能である。NIMS物質・材料データベースがMatdata.netと接 続されたことにより、物質・材料の基礎的な特性か ら実用材料の特性までを横断的に、かつ膨大なデー タ や情報の 中から 一元的に検索できる ことから、 材 料研究者・技術者ばかりではなく、材料を利用する 機器設計・保守管理技術者にとっても利便性が向上 したと考えられる。また、海外の材料データベース と接続した横断検索システムを構築したことで、知 的基盤情報の発信という観点からも、当機構が提供 する物質・材料データベースの社会への波及効果は 大きいものと期待される。図16にMatdata.netの検索 例を示す。図16 Matdata.net (http://matdata.net/index.jsp)の検 索結果の例(2)MatWebとの連携米国のAutomation Creations, Inc. (ACI)は欧米の 素材メーカのカタログをデジタル化して材料カタロ グデータベースMatWebを発信している。MatWebは 実用材料のデータ数および利用アクセス数で世界最 大の材料データベースである。しかし、収録データ はカタログ値であり、データの信頼性を保証してい るものではない。NIMS物質・材料データベースは 学術的なデータを基にしておりACIとNIMSのデータ がリンクすることにより、材料研究者および機器設 計者の利便性が向上する。ACIとNIMSはH17年3月 にMOUを結び相互リンクについて検討を進めてい る。(3) Springer Linkとの連携NIMSの構造材料データベースは実験値が大半で データを評価した値は少ない。一方、ドイツの Springer Verlag GmbH の Landolt-Börnstein は材料系の 各種ハンドブックで材料評価したデータのオンライ ン版を公開している。ユーザの利便性を向上させる ためにSpringer Verlag GmbHとNIMSはH18年1月に MOUを結び、システムの検討を進めている。2.16普及活動とユーザからの意見の反映物質・材料データベースは対象とする分野におい て体系的で網羅性のあるデータを収録しなければな らない。しかし、限られた資金およびマンパワーで はデータ採取の優先順位を決めてデータベースを構 築しなければならない。そのために機構外の材料系 研究者およびデータベース技術研究者との意見交換 を活発に行った。(1)材料データベース懇談会材料基盤情報ステーションに材料データベース懇 談会(座長 東京大学 岩田修一教授)を設け材料 データベース開発の基本方針についてご検討頂いて いる。懇談会の下に高分子データベース検討会(主 査 三菱化学(株) 岡崎慶二)および金属・基礎 物性データベース検討会(主査 東工大 竹山雅夫 助教授)を設けて各データベースのシステム評価お よびデータ採取方針など具体的な提言を頂いてい る。(2)掲示板の設置と問い合わせ窓口実際にデータベースを利用しているユーザがシス テムに対する意見を投稿できる掲示板をトップペー ジに設けている。また、ユーザからのメールによる データベース利用に関するトラブル(パスワード忘 れなど)の問い合わせばかりではなく技術的な質問 も月に2～3件ある。これらについては各データベ ース担当者および運用・管理支援のSEが対応して いる。(3) MITS meeting材料基盤情報ステーション主催のMITS meetingで 材料データベースの技術動向に関する国際シンポジ ウムを開催した。MITS meeting 2005、2005年3月15―17 日Matdata.nethttp://matdata.net/index.jsp)%25e3%2581%25ae%25e6%25a4%259c① International Symposium on Materials Databases② Seminar on Life Prediction for Structural Materials at Elevated Temperature③ Training Cource of CES EduPack New Approaches in Materials Education.④ Symposium on Application of Materials Database for Education.MITS meeting 2006、 2006年1月18―20 日① Workshop of Scientific Markup Languages② Knowledge Discovery from Materials Databases③ Business Model of Material Databasesいずれの会議も約50―60名の参加があり好評であ った。(4)研究および普及活動材料データベースの研究発表の場およびNIMS物 質・材料データベースの普及のための講演・展示の 場としては日本金属学会、日本鉄鋼協会、日本材料 学会、高分子学会、熱物性学会、化学分析学会、情 報知識学会および関連の国際会議がある。これらの学協会および国際会議の講演、ポスター 発表および展示に参加してパンフレット配付および デモンストレーションを3年間で約50回行った。GoogleおよびYahooの検索で材料データベースあ るいはmaterials databaseで検索したときに表示が上 位にランクされるようにWebページを工夫した。こ れらの活動により、NIMS物質・材料データベース を知ったきっかけとしてsearchエンジン、同僚・知 人に聞いておよび他のサイトからのリンクが当初よ り多くなった。3.原子力試験研究委託費の成果当グループは原子力試験研究費で「原子力材料用 分散型知識ベースの創成に関する研究」(H12-H16) および「高速炉の異材接合部の高温長時間信頼性評 価に関する研究」(H13-H17) を行った。3.1 複合材料の熱物性予測システム(CompoTherm)の開発と公開これまでの材料研究と産業活動で蓄積されてきた 大量の材料データおよび経験・理論は、材料科学に おいて貴重な知識であり、研究開発およびエンジニ アリング設計の重要な基盤である。そのためそれら を取り扱う材料知識の管理・提供システムは、材料 の選択・使用や、新材料の設計・開発をサポートす る等、社会生活と科学研究において重要な情報源と なる。最近の数年間で、材料特性などの数値データ を管理・提供する材料データベースの開発は行われ つつあるが、材料理論知識を対象とする知識ベース 開発の報告は殆どされていない。本研究では、知識 の収録・保管・表示機能を備えた複合材料の熱物性 知識ベースを開発し、NIMS物質・材料データベー スと連携した複合材熱物性予測システムの創成と公 開を進めている。本システムは、複合材料熱物性知識ベース、材料 熱物性データベース、熱物性予測システムから構成 されている。複合材料熱物性知識ベースは、複合材 料とその熱物性に関する基本概念、方程式及び概念 間の関連性を収録していて、複合材料熱物性予測の ための基礎知識を提供する(図1)。材料熱物性デ ータベースは、NIMS物質・材料データベースや文 献等から各種材料の熱物性データを抽出することに よって、複合材料の熱物性計算を行うために必要な 材料特性を格納しているデータベースである。熱物 性予測システムは、解析法と数値法(有限要素法) の二つのサブシステムを持ち、解析法は計算速度が 早いことから、複合材料設計での初期段階において、 その物性と材料構造との依存性を調べるのに有効で ある。また、数値法は特定の材料構造での熱伝導に ついて、材料の異方性や温度依存性を考慮して、厳 密に計算するのに有効である(図2)。本システムは、材料基盤情報ステーションのサー バによりH17年4月1日からWebサービスを開始し た。実際の材料研究開発や、材料教育などにおいて 応用されることにより大きな社会貢献を図ることが 期待できる。図17複合材料熱物性知識ベースのコンセプトマット と概念説明画面図18 FEM複合材料熱伝導率予測システムの材料設計 及び計算結果画面3.2高速炉の異材接合部の高温長時間信頼性評 価に関する研究高速炉機器の健全性評価技術の高度化、保守定期 点検の合理化・高度化とともに、ライフサイクル全 体を通して寿命を管理し、その結果をより安全性が 保持される設計体系へ組み込めるようなシステムを  作る必要がある。本研究は主要構造材であるオース テナイト鋼およびフェライト鋼の異材溶接部の高温 荷重下での材質劣化、損傷機構を十分に把握し、定 量化して、それらと寿命との関連を明らかにし、高 速炉維持基準や将来の設計へ反映させるための基盤 を材料面から整備することを目的とする。高速炉構造材料異材溶接部の長時間クリープ強度 特性を調べるためにガスタングステンアーク溶接法 (GTAW)でSUS304とMod.9Cr-1Mo鋼の異材溶接継 手を製作した。図19に製作した異材溶接継手のマク ロ組織を示す。また、図20に異材溶接継手のクリー プ試験片の形状を示す。この試験片を用いて823K、 873Kおよび923Kでクリープ試験を行い、異材溶接 継手の破断位置に着目して破壊形態を調べた。 得 られた結果を図21に示す。すなわち、1)異材溶接継手のクリープ破断強度はいずれの温 度においても、Mod.9Cr-1Mo鋼の母材および同材溶 接継手の間に位置していることがわかった。2)クリープ破断材の破壊形態は温度により違い、823K : Type Ⅵ から Type Ⅶ の破壊873K : TypeⅤ、Type Ⅳ から Type Ⅲ or Ⅳの混合破壊923K : Type Ⅳ の破壊となる。図19製作した異材溶接継手(GTAW)図20クリープ試験片 図21 異材溶接継手の温度・応力による破壊形態の違い4.今後の課題と展望物質・材料のデータは次の2つのカテゴリーに分 類できる。①普遍性が高く高品質な基礎データ(物 理定数、スペクトル情報、核データ、構造鈍感な特 性、結晶構造および状態図など)。 ②基盤的工学 データ(設計や安全評価の基盤となる実用材料の諸 特性)。なお、 高品質な基礎データも工学データ とリンクすることにより有用なものとなる。NIMSの物質・材料データベースのうち基盤原子 力材料データベースに核データが、 また、結晶基 礎データベース(Pauling file)、計算物性データベー スに結晶構造情報および状態図が含まれている。こ のような基礎データ分野のデータ活動については同 様の作業の重複を避けて、国際連携による効率的な データベース構築を行い、世界中で使われる公共財 として整備することが大事である。基盤的工学データおよび情報は材料開発に携わる 研究者・技術者ばかりではなく機器の設計者にとっ ても必要不可欠である。基盤的工学データは材料設 計および各種シミュレーションを行う際のデータと して用いられる。また、機器設計のための材料選択 および材料の最適利用のためにも利用される。基盤 的工学データは素材メーカのカタログを収集し、デ ータベース化して発信しているものと、試験研究機 関で材料試験した測定データあるいは学術文献から 採取したデータを蓄積してデータベースを構築した ものがある。そのため、基盤的工学データは特性値 ばかりではなく材料の製造プロセス、測定機器、試 験試料の形状・寸法、試験条件および試験機関など の情報を含むデータベースを構築しないと産業界で 利用できるものとはならない。しかし、このように系統的で計画的にデータを取得し、データベースを 構築して公開している例は世界的にもなく、当機構 の構造材料データベースのクリープ、疲労、腐食お よび宇宙関連材料強度データだけである。このよう に基盤的工学データベースについては国(機関)の 戦略的開発投資が必要である。産業界における材料調達および製造工場のグロ ー バル化はEUのように、アジアにおいてもさけられ ないと思われる。製品の品質を維持するための材料 に関するデータおよび基盤情報を収集し、蓄積して 発信することはますます重要となる。一方、研究機 関や企業において知的財産を保護するための活動が 活発となってきた。物質・材料データベースの構築 にはデータ収集のために莫大な経費が必要である が、データベースはデータの収集活動を止めてしま うとすぐに陳腐化して価値を失ってしまう。データ の収集のためのコストの低減はデータベースを維 持・管理していくうえで大きな課題である。研究機関や大学・企業の材料研究者や技術者の OBは経験豊富な知的財産といえる。データベース も「温故知新」のために非常に有用である。シニア 研究者や技術者の技術や知識を若手に継承するため にもシニアの方達の協力を得ることは欠かせない。基礎的なデータベースのユーザは比較的大学の学 生・院生および研究機関の研究者の利用が多い。こ のことから有償による公開はできればさけるべきで あろう。一方、基盤的工学データベースは企業の研究者お よび技術者の利用が多い。有償による公開の方法を 検討する必要がある。物質・材料データベースはデータの信頼性(質) が最も大事であるが、データの網羅性(量)も必要 である。さらに、データベースはデータの蓄積ばか りではなく、利用者が必要とするデータや情報をで きるだけ速やかに表示する検索機能をかねそなえて いなければならない。材料の専門家とIT技術者が協 力して快適なシステムを構築しなければならない。参考文献1)八木晃一、材料データベースの課題と将来展望、 科学技術動向、No.42, p22-p33 (2004).2)松尾宗次、拡散データベース、日本金属学会会 報「まてりあ」、Vol.43, No.6,p.542, (2004).3)徐 一斌 ら、Development of Materials Knowledge Base with Structured Data Format、 情報 知識学会誌、Vol.15,No.3, p.3 (2005).4)山崎政義ら、インターネットを活用した材料 情報の提供及び検索システムの構築、情報知識 学会誌、Vol.15, No.3, p.9 (2005).5)飯室 茂、規則性単条有機ポリマーの命名法、 高分子、Vol.54, No.12, P.901(2005).6)山崎政義、NIMS物質・材料データベースの構築 と活用、日本金属学会会報「まてりあ」、Vol.45, No.1,(2006).11分析ステーションREN iIK— AN Mm ™~分析ステーションの4年五十嵐淑郎、石川信博(現超高圧電子顕微鏡ステーション,2004.4移動)、井出邦和、伊藤真二、小川一行、小黒信高、貝瀬正 次、河合潤、木村隆、倉嶋敬次、小須田幸助、小林剛、佐藤晃、佐藤正秀、鈴木昇、鈴木峰晴、竹之内智、田沼繁夫、堤正幸、 永富隆清、中村森彦(2003.3退職)、橋本健紀、橋本哲、長谷川信一、浜野勲、福島整、元山宗之、矢島祥行、山口仁志、山田 圭、和田壽璋1.はじめに物質・材料の分析技術、分析情報は物質・材料の 開発・改良を行うための研究基盤として必要不可欠 なものであり、それらのキャラクタリゼーションを 行う際の中核技術である。こうした状況に対応して、 研究基盤の整備に向けた研究やNIMSのすべての研 究ユニットに対する物理・化学分析支援業務を行う ために、平成14年4月1日、分析ステーションが設 立された。分析ステーションはNIMSのすべての研究所、セ ンター、ステーションと密接に連携して幅広い材料 に対応した分析情報の提供、分析技術に関する指導、 分析機器の維持・管理を行なっている。また、より 信頼性の高い、正確で精密な分析法の開発・整備を 目指し、当ステーションの成果を基に分析技術の国 際標準化へ向けた取り組みを積極的に進めている。2.分析ステーションの活動経緯分析ステーションは材料開発の支援的な役割とそ の評価技術の研究的な要素の2面性を持つために、 組織は支援分析用の組織と研究グループに分かれて いる。ただし大部分のメンバーは支援と研究の両方 の業務を行っており、これが当ステーションの特色 となっている。現場における分析支援と現場で使え る実用的な分析法(技術・理論)の開発を進めてい る。同時に、これらを基礎とした分析技術の標準化 を進めている。カバーする分野は広い意味での「化学分析」全般 を目指している。しかし、実際には装置的・人的な 制約もあり、具体的には、伝統的な湿式化学分析、 無機化学分析(原子吸光法AAS、ICP発光法、ガス 分析等)、表面化学分析(オージェ電子分光法AES、 X線光電子分光法XPS、超軟X線分析法)、微小領域 分析(波長分散型電子線マイクロアナライザWD- EPMA、走査型電子顕微鏡等SEM)、X線回折法 XRDである。さらに、国内の分析に関連したJIS (日本工業規 格)の活動や、ISO (International Organization for Standards)やVAMAS (The Versailles Project on Advanced Materials and Standards) といった分析法 の国際標準化活動についても積極的に参画してい る。3.組織の変遷分析ステーションは平成14年4月1日 以下の組 織で発足した。ステーション長 中村森彦副ステーション長田沼繁夫・無機化学分析グループ(GL :小林剛)・微小領域解析グループ(GL :石川信博)・表面分析グループ(GL :田沼繁夫)・X線回折グループ(GL:田沼繁夫)さらに、平成16年12月1日に、並木地区の分析業 務を統合し、以下の3グループに再編成した。ステーション長田沼繁夫・分析基盤グループ(GL :田沼繁夫)・金属系分析グループ(GL:伊藤真二)・セラミックス分析グループ(GL:和田壽璋)各グループの活動領域は以下である。1)分析基盤グループ材料評価・開発に重要なバルク、表面・界面、微 小領域における化学分析情報を提供するとともに、 その基盤となる分析・計測法の改良・開発および標 準化を行なっている。2)金属系分析グループ金属系材料に関するバルク、表面・界面、微小領 域分析の支援を行なっている。3)セラミックス分析グループ主にセラミックスの分析に対する化学分析および 物理分析の技術支援を行っている。すべてのグループで濃淡はあるが支援分析とその 基礎となる研究の両方を行っている。千現地区の分 析基盤グループと金属系分析グループは支援分析を 効率的に行うために、化学分析系と物理分析系に分 かれて支援分析を行っている。4.支援分析ここでは千現地区の化学分析系および物理分析系 で行った支援分析の概要について述べる。セラミッ クス系が行ったものについてはグループ別のセクシ ョンで述べる。4.1化学分析支援物質・材料研究機構の発足当初は旧金属材料技術 研究所時代からの構造用材料や各種機能材料に関す る製造プロセス等の開発研究が多く、その対応に従 事した。その後、「中期計画」に関連した研究が多 くなるに伴い、製造プロセス開発に関連する分析依 頼は減少傾向にあった。他方、新たな機能性材料や 物質の分析依頼が増加傾向を示した。この様に機構 内の研究の変遷に伴い、化学分析に対する要請もま すます多岐にわたり、より正確な成分分析や迅速性 が要求された。以下に代表的な事例を示す。1)金属元素分析各種の構造用材料や機能性材料及び物質等の構成 成分から微量不純物の分析を行った。これらの元素 分析は主に湿式化学分析法を主体とした誘導結合プ ラズマ(ICP)発光分析法、原子吸光分析法、ICP質 量分析法及び吸光光度法で行った。鉄鋼分析では長 時間組織安定化フェライト系耐熱鋼(9Cr鋼)関連 やマルテンサイト鋼の分析。更に、高純度鉄中の ppmオーダーの微量ほう素について酸可溶性・酸不 溶性の形態別分析を行った。試料を塩酸と硝酸で分 解後し、硫酸及びリン酸を加え、加熱して硫酸の白 煙を発生させる。メタノールを加え、ほう素をほう 酸メチルとして蒸留し、直ちにICP質量分析法で定 量する迅速法で行った。生体材料関係ではチタン合 金やNiフリー高窒素鋼等の分析を行った。チタンは 生体との親和性が良く、歯科や人工関節等への応用 を目的に疑似体液中でのフレッテング試験が行わ れ、その体液中に溶出した金属量を測定した。また、 NiフリーステンレスやNiフリー Co-Cr合金の製造プロ セスに関連した分析を行った。特に、酸難溶性の 各種単結晶やCe-O,Mg-O,Sr-Ti-O基板等の不純物分析 にはテフロン製密閉容器を用いたマイクロウェーブ 加圧酸分解法によって酸溶液で分解し、ICP質量分 析法またはICP発光分析法によって分析した。尚、 本法は難酸溶性のニッケル基耐熱合金、イリジウム 合金(Ir-Nb-Zr, Ir-Nb-Pt-Al, Ir-Nb-Ni-Al)やタングス テン合金(W-Re-HfC)等の酸難溶性試料の分解に も適用した。さらに、微少量分析法ではmgオーダ ーの薄膜試料の高精度分析を行った。試料と少量の 酸溶液を密閉容器に入れマイクロウェーブ加圧酸分 解法で分解、冷却する方法で試料と検量線作成用溶 液の酸濃度を厳密にしてICP発光分析法(又はICP 質量分析法)で行った。また、単結晶分析ではタン グステン、モリブデン単結晶やエネルギー変換誘電 単結晶材料(Ba-Al-B-O, Ba-Ga-B-O)等の分析を行 った。他方、固体試料分析法では酸に超難溶性なYSZ (イットリア安定化ジルコニア)試料中の微量不純 物元素分析において非電導性試料を高純度金属ガリ ウム(Ga)中に埋め込み、グロー放電質量分析法 を適用し、ジルコニウムを主マトリックスとした相 対感度係数(RSF)を用いる補正により数十元素の 不純物元素を分析した。また、薄膜分析ではファン ダメンタル・パラメータ(FP)補正法を用いた新 ソフトウェア/蛍光X線分析法によりニッケル基耐 熱合金基板上にコーティングしたイリジウム合金の 成分分析等を行った。更に、蛍光X線分析法では難 酸溶性イリジウム合金等についてファンダメンタ ル・パラメ ータ補正法を用いて組成分析を行った。2 )ガス形成元素分析(水素、炭素、窒素、酸素及 び硫黄分析)不活性ガス搬送融解法による酸素、窒素分析では 鉄鋼試料を主体に行った。特に、耐候性材料として 高濃度窒素鋼の研究開発が行われ、その製造プロセスや材料評価に関連した分析を行った。この場合、 現行の標準試料の適用外の濃度で検量線の外挿とな る場合があり、その確認に標準化学物質を用いて確 認して分析した。尚、このような事例は酸素鋼にお ける高濃度酸素にも適用した。また、各種金属材料 の溶射工学等の研究進展に伴い、高濃度から極微量 まで分析濃度が拡大した。また、燃焼―赤外線吸収 法による炭素、硫黄分析では鉄鋼材料及びチタン合 金やニッケル基耐熱合金のppmオーダーの微量硫黄 分析を行った。更に、極微量硫黄分析では還元蒸留 メチレンブルー吸光光度法による湿式分析も併用し た。また、Cr-Mo鋼中の水素分析は不活性ガス融解 ―熱伝導度法により行った。このように製造プロセ スや材料評価に関連した分析を行った。3 )分析件数*1ガス形成元素を除く対象元素はすべての元素*2 H,C,N,O,Sが対象。ガス分析計で測定*3平成17年10月まで年度 元素数*1 ガス形成元素*214 3,312 75515 3,460 49916 2,967 49917*3 1,035 1834 . 2物理分析支援物理分析ではSEM, TEM, XRDおよびEPMAによる 支援業務と分析手法の開発・向上に務めてきた。最 近の微細結晶粒を有する構造材料や各種機能性材料 の開発を支援するために、特に表面分析関係の支援 業務の拡大を図ってきた。新たに導入した装置とし て、2000年にはAESを、2004年には多機能XPSと微 細結晶評価のためのEBSBを、2005年には200万倍で の観察が可能なインレンズSEMがあり、機構内の研 究者に高精度な分析技術を提供している。以下に代 表的な事例を示す。1)SEM-EDSSEM-EDSは材料組織観察と組成分析装置として日 常最も多くの研究者に利用されている装置である。 しかし、エネルギー分解能がWDS (波長分散型分光 器)よりも低いため、Ni基超耐熱合金などのように 多くの遷移金属が含まれる材料の組成分析は困難で あると言われてきた。標準試料のスペクトルを詳細 に観察し、分析条件を最適値に設定することで、迅 速な定量分析が可能なことを示し日常分析に取り入 れている。2) EPMA、FE-EPMAEPMA面分析データの解析に散布図分析を応用し た高精度な材料組織評価法を開発し、従来はTEM等 で評価していたステンレス鋼のラーベス相や微量な 粒界偏析などを高分解能で観察することに成功して いる。この手法は、Bi系やMgB2超伝導材料の微細 組織から広域における材料組織の評価に用いられ、 材料開発の重要な指針となっている。3) XRD新材料の開発では開発した材料の物性(硬さ、ヤ ング率、延性、格子常数、融点など)を正確に評価 する必要がある。なかでも延性の評価には試験片の 加工に多大な時間を必要としていた。通常、格子常 数を精密に測定するためのX線回折用粉末に残留す るひずみ量と材料の延性に正の相関があることを見 いだした。この手法を応用することで材料の延性を 迅速に評価することが可能になり、L12型(AlX)3Ti 高温材料の延性評価に応用し新材料開発の迅速化に 貢献した。4) TEMTEMによる電子線回折からマルテンサイト変態の 機構を明らかにし、安価なFe基のマルテンサイト材 料の開発に多大な貢献をしてきた。5)分析件数主な装置の依頼分析および装置使用指導件数を以 下に示す。平成14年度・依頼分析:オージェ電子分光(AES) 44件:電子線マイクロプローブ(EPMA)111件:透過電子顕微鏡(TEM) 79件:走査電子顕微鏡(SEM) 86件・装置使用支援および指導:X線回折 使用時間4,996時間、使用者数1,384人平成15年度・依頼分析:オージェ電子分光(AES) 54件:電子線マイクロプローブ(EPMA)105件:透過電子顕微鏡(TEM) 63件:走査電子顕微鏡(SEM)186件・装置使用支援および指導:X線回折 使用時間9,110時間(2200件)平成16年度・依頼分析:オージェ電子分光(AES) 43件:電子線マイクロプローブ(EPMA) 57件:透過電子顕微鏡(TEM)1件:走査電子顕微鏡(SEM) 9件・装置使用支援および指導:X線回折 使用時間10,931時間(2,185件):オージェ電子分光(AES) 5件:走査電子顕微鏡(SEM) 257件:透過電子顕微鏡(TEM)148件:収束イオンビーム(FIB) 26件平成17年度(10月31日まで)・依頼分析:オージェ電子分光(AES)12件:電子線マイクロプローブ(EPMA) 31件:走査電子顕微鏡(SEM) 7件:X線光電子分光法(XPS) 5件:収束イオンビーム(FIB)18件・装置使用支援および指導:X線回折使用時間3,970時間(1,139件):走査電子顕微鏡(SEM) 247件:収束イオンビーム(FIB)17件5 .研究の概要ステーションで行った研究のテーマ、および実施 した研究項目を以下に示す。5.1研究テーマとその概要5.1.1萌芽研究1)物質・材料の分析・解析技術の高度化に関する 研究(平成14年度)概要:物質・材料の分析技術の高度化を計るため、 機器分析法における各種ノイズの低減化を図り、高 感度な高精度分析・解析技法を確立する。また、化 学分析においては各種の効率的な分離濃縮法の機器 分析法への併用を検討し、スキルフリー化の開発を 行い、既存の材料及び新物質・新材料の元素分析に おける適用範囲の拡大と分析値の正確さの向上を図 る。なお、確立した分析法は他の機器分析法により 評価し、分析法の信頼性の確認をする。研究項目・固体試料直接分析法の高度化・多機能分析法の開発2)異種材料の接合界面の構造解析に関する研究 (平成14年度)概要:電子顕微鏡は微細組織のナノメートルオーダ ーでの構造解析と成分分析が同時にできる数少ない 計測手段であるが、試料作製が困難なためその適用 範囲が著しく限られている。また特に接合材料や複 合材料などの異種材料を組み合わせた材料には解析 のための試料作製が不可能なものが多く存在する。 このため不正確な分析データしか得られていない材 料の微細構造解析手段の確立を目指す、具体的には 透過電子顕微鏡(TEM)においては薄膜界面構造の 3次元解析を可能にする方法として斜め研磨法の TEM試料作製への応用、また走査電子顕微鏡(SEM) においては表面に付着したサブミクロンオーダーの 介在物を分離解析することを目的として斜出射 EPMA法の開発を行った。研究項目:・斜め研磨法を適用した鉛フリーはんだの接合界面 の解析・斜出射EPMA法によるステンレス鋼中の介在物の 分析・高分解能電子顕微鏡によるTi-Ni-Cu形状記憶合金 薄膜の微細析出物の解析3)表面定量分析における物理パラメータの高精度 化に関する研究(平成14年度)概要:表面電子分光法による材料表面の評価は非常 に重要であるが、現状ではSI (国際単位系)にトレ ーサブルな表面分析法は確立されておらず、半定量 的な議論にとどまっている。この主要な原因は表面 定量分析に用いる各種物理パラメータの不備やその 不正確さにある。そこで、定量分析において重要な 電子の非弾性平均自由行程(IMFP)や表面励起に 関する物理量の広いエネルギー範囲にわたるデータ ベース化をはかる。さらに、オージェピーク強度の 絶対測定を行い、SIトレーサブルな表面分析法の可 能性を探る。研究項目・固体中における電子のIMFPの実験的な決定・表面電子分光における表面電子励起効果の実験的 な解明・ FE電子銃を搭載した波長分散型EPMAの開発4 )多機能分析法による物質・材料の高感度分析・ 評価技術の高度化に関する研究(平成15年度～17 年度)概要:物質・材料の分析技術の高度化を計るため、 機器分析法における各種ノイズの低減化を図り、高 感度な高精度分析・解析技法を確立する。また、化 学分析においては各種の効率的な分離濃縮法の機器 分析法への併用を検討し、スキルフリー化の開発を 行い、既存の材料及び新物質・新材料の元素分析に おける適用範囲の拡大と分析値の正確さの向上を図 る。なお、確立した分析法は他の機器分析法により 評価し、分析法の信頼性の確認をする。研究項目:・多機能分析法の高精度化に関する研究・誘導結合プラズマ質量分析法による高純度鉄中の 微量高融点金属元素の定量・ EDTAをマスキング剤とするイオン交換分離法に よる銅中の微量元素定量・ ICP発光分光分析法による鉄鋼中不純物元素定量 のためのマスキング剤を用いたイオン交換分離・固相抽出/誘導結合プラズマ質量分析法による高 純度アルミニウム中の微量元素の定量・化学結合型シリカゲルを固相抽出/剤に用いた固 相抽出/ICP-MSによる高純度鉄、モリブデン中の 微量元素の定量・誘導結合プラズマ質量分析法による基準分析法の 開発に関する研究・金属-1,10-フェナントロリンキレートの弱酸性領 域での均一液液抽出法・固相抽出分離・分離技術の高度化に関する研究5 )固体試料直接分析法の迅速・高精度化に関する 研究(平成15年度～17年度)研究の概要:物質・材料の分析技術の高度化を計る ため、機器分析法における各種ノイズの低減化を図 り、高感度な高精度分析・解析技法を確立する。な お、確立した分析法は他の機器分析法により評価し、 分析法の信頼性の確認をする。6)低エネルギー粒子線を用いた表面定量解析法の 高精度化(平成15年度～17年度)概要:各種材料・物質の機能や性質はその表面の組 成・構造によって大きく左右されることが知られて いる。したがって、固体材料の表面分析は材料開発 に非常に重要であるが、その定量的な解析の正確 さ・精度は依然として不十分である。そこで、低エ ネルギー電子を用いた分光法により、表面近傍の正 確な定量的解析法を開発する。同時に表面近傍の分 析では重要な表面清浄化方法についても検討する。 さらに、SIトレーサブルな分析や標準化等に必要不 可欠な基礎データとなる固体と電子の相互作用を記 述する各種物理定数のデータベースの充実をはか る。研究項目:・ FE-EPMAにおける微細組織評価のための最適分 析条件・急冷リボンCo-Ni-Ga合金薄膜の内部構造の高分解 能電顕による解析・銅合金中のサブミクロン析出物の斜出射EPMA分 析・ AESによるSiO2/Si試料表面の電子線照射損傷の定 量的評価・弾性散乱分光法による13元素固体中の50-5000eV における電子の非弾性平均自由行程の測定・100eVから30keVにおける10種類の固体元素にお ける電子阻止能の計算・電子線マイクロアナライザによる混合微細組織評 価方法の開発・超急冷凝固TiNiCu合金リボンの内部構造の電顕観 察・斜出射EPMA法に於ける分析X線の吸収体のFIB法 による除去5.1.2科学技術振興調整費、NEDOなど1)TiAl金属間化合物の水素環境脆化とミクロ組織 因子の関係の解明(平成14年度)概要:TiAl基金属間化合物は自動車用、航空宇宙用 エンジン部材への適用がなされつつある。本金属間 化合物がこうした苛酷なガス環境に曝されることに よってどの様な影響を受けるか、特に将来の航空宇 宙用推進システムとして水素エンジンが想定される から水素ガス環境中に曝される材料がどの様な損傷 を受けるかを知り、その抑制をはかる必要がある。 これは同時に本化合物の問題点の一つである大気環 境脆化低減に寄与する。そこで本研究では、室温か ら高温までの広い温度範囲で水素ガス環境に曝され るTiAl基金属間化合物において、水素侵入による変 形破壊特性の劣化に及ぼすミクロ組織の効果を明ら かにして、水素環境脆化軽減の指針を示す。2)還元に及ぼす第3分添加効果のナノ機構(平成 14年度)概要:高炉製鉄法は鉱石から鉄を作るもっとも合理 的な手段として広く用いられているが、同時に鉄鉱 石の還元剤として石炭を使用することから大量の炭 酸ガスを発生する。地球温暖化の問題が深刻化する 中でこの炭酸ガス排出を極力抑える方法として、高 炉の小型化、反応の低温化が提案されている。しか し、鉄に至るまでの還元反応はナノスケールでは解 明されていないため直接原子分子オーダーでの反応 をコントロールする手がかりを求めることを目的と して本研究を遂行している。3) L線を用いた定量分析技術開発(平成17年度 ～)概要:10keV以下の低エネルギー領域では低速電子 と固体との相互作用が解明されていないため、定量 分析を行うことができない。本項目では、以下の研 究開発項目により、数多くの物質の光学的エネルギ ー損失関数から求めた阻止能、非弾性散乱断面積の データベース化を行い、これを基にした低速電子線 励起超低エネルギーX線分析シミュレータを開発 し、低ネルギーL線を用いた定量分析法を開発する。5.1.3 プロジェクト関連研究:表面化学分析(VAMAS:材料評価の国際標準化) 概要:電子線照射による試料損傷の標準試料および 正確な評価法の開発を開発する。6.標準化活動分析技術の標準化は当ステーションの最大のミッ ションである。ステーションにおける機構内標準化 の現状およびVAMS、ISO、JIS等の標準化活動の概 要を以下に示す。6 .1 VAMAS国際プロジェクトA7, A9を当ステーションメンバ ーが提案し、共同研究活動を行った。また、参画し た国際共同研究項目は3)に示す。1)プロジェクトA7 :オージェ分析時に生成する 電子ビーム照射試料損傷の評価法の開発概要:近年、半導体薄膜などの高集積化が進むにつ れて、極微小領域の表面組成や構造をいかに把握す るかが重要な課題となっている。これに伴い、分析 領域へのプローブの集中にともなう試料損傷が大き な問題となっている。そこで、電子線やX線の照射 により生じる還元反応や成分元素の脱離反応などの 試料表面の変質現象を定量的に評価する方法の確立 を目指すと同時に、これらの変質現象を回避する方 法を提唱することを試みる。これらの成果は広範囲 の材料評価に適用可能であり、表面分析の国際標準 化に大きく寄与するものである。2)プロジェクトA9: XPSスペクトルの自動ピー ク検出方法の評価概要:ISOTC201(表面化学分析)で提案されてい るピーク自動検出法のアルゴリズムおよび関連した ソフトウェアの有効性の評価を行う。同時に、XPS 分析において日常的に使われているソフトウェアの 有効性についても評価を行う。3)他国提案(共同研究として参画):このほか以下の4件のプロジェクトに参画し、共 同実験を行った。・ Project 13 : Tests of Algorithms for Data Processing in AES - Factor Analysis・ Project 14d : Tests of Algorithms for Angle-Resolved XPS・ Project A6 : Evaluation of Uncertainties in XPS Peak Intensities Associated with Different Techniques and Procedures for Background Subtraction・ Project A8 : New Procedure for the Determination of Lateral Resolution of Instruments for Surface Analysis in the Nanometer Range6. 2 ISO表面化学分析TC201関連の技術委員会の主査、専 門家として活動を行い、13件の国際規格制定に寄与 した。・オージェ電子分光法関連 3件・ X線光電子分光法関連 6件・データ処理 3件・用語 1件6. 3 JIS日本工業規格表面化学分析に関して技術専門員等として活動を行 い、3件のJIS規格制定に寄与した。・ X線光電子分光法関連 1件・深さ方向分析関連 1件・用語 1件6. 4 NIMS内における分析技術の標準化ステーションが保有する化学分析技術を発展・標 準化するために「物質及び材料―化学分析方法 NIMS-MAS標準法」の制定を行った。概要:旧金属材料技術研究所時代から、金属材料を 主体とした物質・材料の研究開発の進展に伴い、分 析・解析技術に対する要求は極限的材質の追求等に より、ますます多岐にわたり、あらゆる意味で厳密 さを増している。それらの物質・材料の製造プロセ スの開発や製造された物質・材料の組成評価には、 より正確な成分分析及び迅速化が要求されている。 新しく開発される物質・材料は所定の試料サイズに とらわれない、あらゆる形状であり、高純度であっ たり、多成分系で複雑に構成されたりする場合があ る。これらの試料の化学分析は従来法の適用が困難 な場合が多い。それらの問題解決のために、あらた な化学分析法の開発や従来法を改良することにより 対応してきた。これら多くの化学分析法を物質・材 料機構内標準法「物質及び材料―化学分析方法 NIMS-MAS」として制定することにより機構内外で 広く活用し、分析技術の学術的基盤の強化に資する 目的で編集した。現在までに以下の合計80方法が制定されている。・原子吸光分析法 MAS-1001～1020・ICP 発光分析法 MAS-2001～2010・ICP質量分析法MAS-3001～3007・吸光光度法 MAS-4001～4007・蛍光X線分析法 MAS-5001～5010・グロー放電質量分析法 MAS-6001～6013・ガス形成元素分析法 MAS-7001～70137.論文数分析ステーション職員が著者となった発表件数の 推移を表1に示す。表1.分析ステーションの発表件数。 平成17年度は10月31日まで14年度 15年度 16年度 17年度論文,プロシー ディングス67 79 49 43解説・総説 5 10 8 2口頭・ポスター 98 97 116 748.共同研究および技術交流分析技術を発展させるために共同研究および講演 会(分析技術交流会)を行った。・共同研究(機構外)6件・分析技術交流会 25回(33件)9.おわりに最初に述べたように、機構内における物質・材料 研究におけるキャラクタリゼーションに必要不可欠 な分析情報を提供するとともに、材料分析法・評価 法の開発や標準化を積極的に行い、機構外(国内外) に対しても分析技術情報を幅広く提供することを分 析ステーションは目的としている。当初は材料のキャラクタリゼーションに必要な分 析情報として、・物質・材料を構成する主成分元素その種類と組 成、およびその3次元的な分布・共存する微量・超微量成分の定性・定量分析、お よびその存在状態と分布・表面・界面における原子や分子の状態(元素分布、 化学状態、電子状態など)を提供することを意図した。FE-EPMA,超軟X線分光 装置やHe-GDMS等の新規装置開発や分析法の開発・ 改良(多機能分析法による物質・材料の高感度分析、 評価技術の高度化に関する研究等)で完全ではない が目的を果たしたと考える。しかし、物質・材料開 発の高度化に伴い、さらなる分析法の高感度化、高 精度化、高速化が必要である。さらに高位標準物質 作製・評価およびその普及に関連して分析値の信頼 性やSIトレーサビリティーがますます重要になると 予想される。その意味では未だ不十分であり、知的 基盤としての化学分析法・計測法に関する継続的な 研究や標準化が必要である。分析基盤グループの活動をふりかえって五十嵐淑郎、井出邦和、小川一行、河合潤、木村隆、佐藤正秀、鈴木昇、鈴木峰晴、田沼繁夫、永富隆清、橋本哲、橋本健紀、 長谷川信一、福島整、元山宗之、山口仁志1.沿革と活動概要分析基盤グループは、それまで分析ステーション の中で化学分析・物理分析・微小領域分析・表面分 析等に細分化されていた組織を再編成し、2005年度 に設置されたグループである。ステーションの二大 ミッションは研究と支援(依頼分析)であるが、業 務において研究の比重の高い常勤職員メンバー 7名 を統合してグループとした。リーダーは、田沼繁夫 ステーション長が兼務している。分析基盤技術の研 究がカバーする領域は幅広く、外部の多くの方々に よる直接・間接的な協力無しに研究業務を遂行する ことは困難である。そのため、特に直接ご協力頂き たい方々9名に客員をお願いし、さら外来研究員2 名を加えた総勢18名の体制で活動を行ってきた。主な研究領域は、表面・微小領域分析を主眼とし た新規装置開発研究と標準化を意識した分析技術の 研究、および湿式化学分析手法を中心とした分析要 素技術の研究の2つに分けられる。前者は、主に大 型設備の開発もしくは利用研究が多い。あわせて、 そのもたらす結果の実用性の基盤をなす様々な物理 パラメータの高度化および標準化、データ処理法の 研究も重要な位置を占めており、実質的に我が国の みならず国際的に指導的な立場にある。後者は、す でに技術者の払底が強く危惧されている湿式化学分 析に対して、特に分析の基礎である試料前処理技術 を中心とした新規技術の研究を進めてきた。あわせ て、金属材料技術研究所時代からの研究成果をも継 承発展させ、もっとも重要な基盤技術である湿式分 析技術の我が国の拠点としての役割を果たしてき た。2.高機能新規汎用分析装置の開発研究2.1FE-WD-EPMAの開発と実用化従来型の波長分散型電子線マイクロアナライザ (WD-EPMA)の空間分解能は数μm以上であり、最 近の新材料開発で要求されるサブミクロン領域の分 析は不可能である。このニーズに応えるには、電子 ビーム径を小さくする、信号の発生領域を浅くする などの技術が必要である。すなわち、ビーム径を絞 ったり加速電圧を下げた場合でもビーム電流密度の 低下が無い電界放射(FE)型電子銃の利用が鍵と なる。しかし、FE銃の確実な動作には超高真空環 境が必要であることなどから、その搭載はそれまで 非現実的であり不可能と言われてきた。これに対し て、FE銃(～10-8Pa)と分析室(10-2Pa～10-4Pa) の 間に中間室による差動排気システムを挿入すること で、FE銃の効果的な動作を保証することに成功し た。さらに、FE銃にショットキータイプを採用す ることで、EPMA分析に必要な電流値と安定度を得 ることができた。こうした様々な工夫と挑戦により、 低加速電圧で十分な輝度をもつ励起ビームを有した EPMAの実用化に世界で初めて成功した。この装置 は、従来の装置に比べて空間分解能が約1/3以下、 分析時間は約1/4以下であり、2002年に発表された この装置の高い汎用能力はすぐに産業界の認めると ころとなった。現在、市販モデルが、広く普及しつ っある。この装置と散布図分析との組み合わせはたいへん 強力な材料解析の手法となっており、定説を覆す分 析結果も得られるまでになった。たとえば、重要な ステンレス材料の一つであるSUS316Lの粒界観察か ら、アニールにより粒界にCrMo炭化物やMoSiが析 出しているばかりでなく、たかだか650℃100時間の アニールでもCrやMoの欠乏した粒界が存在するこ とを初めて明確に示した(図1)。これは、高温下 で強度を保てる材料としてのSUS316Lに対する重要 な知見であり、本装置の威力を示す好例である。2. 2汎用超軟X線分光分析装置の実現分析機器の高度化に伴い、表面あるいは表面近傍 の様々な元素の定性・定量のみならず化学状態の解 析が確実に行えるようになってきた。しかし、Li, Beに代表される超軽元素や、Al, Siの様な基盤とな る重要な元素の化学結合の直接測定に対しては、非 破壊かつ汎用的に用いることができる装置系が存在 しなかった。これらの情報は、軟X線でもきわめて 波長の長い100eV以下の超軟X線領域でしか観測す ることができないため、この領域の高分解能分光が 可能な複合汎用分析装置の開発を行うことになり、 2003年度に着手した。この領域の特性X線の励起は 電子線励起でなければならないが、汎用的に用いる ためには低加速高輝度な電子線が必要である。また、 電子線を用いた装置であるから、空間分解能もでき るだけ高くすることが望ましい。これらの要求を満たすのは電界放射(FE)型電図1650℃- 100hr熱処理材のEPMA分析結果 子銃による電子ビームであるが、すでにFE-WD- EPMAの開発に成功した成果をふまえ、最低加速電 圧を200Vとして連続的に加速電圧を制御できる電 子銃を用いた。これにより、X線の発生深さを調整 することが可能となるため、表面近傍領域の非破壊 3次元分析に途を拓くことも期待できる。また、通 常のX線領域に比べて信号強度がきわめて弱いこと から、分光系と試料の間にマルチキャピラリを集光 系として導入し3桁程度の集光を行った。分光系は、 不等間隔回折格子と分散面に設置した2次元CCD検 出器から構成され、スリットや回折格子の駆動系等 の可動部分は一切無い。これらより、望みうる最大 限の透過効率を有する高分解能分光系を完成するこ とができた。これらの工夫が、汎用装置では分析の 不可能であったLiの特性X線をはじめとして30～ 120eV領域の様々なスペクトルを確実にとらえるこ とができる、世界初の実用分析装置を完成すること につながったと言える。図2に、Li特性X線の例や、金属Al,金属Mgの価 電子帯から直接発生するスペクトルの例を示す。す でにその特異的な性能を応用すべく、様々なSi系物 質の価電子帯解析などの共同研究も展開されつつあ る。また、この装置は走査型オージェ電子分光装置、 あるいはX線光電子分光装置としても用いることが 可能な複合装置であるため、材料解析のみならず分 光分析や原子構造論等の基礎研究にも大きく寄与す ることが期待できる。3 .高感度分析・評価技術の高度化に関する研究物質・材料の分析技術の高度化を計るため、分析 機器を高度化しなければならないことは言うまでも ない。特に定量分析を行う場合、湿式化学分析によ る結果が無ければ装置を用いても定量数値を得るこ とは不可能である。また、特に超微量定量分析を行 う場合、湿式化学分析技術を用いた分離・抽出等の 前処理が不可欠である。さらに、スキルフリー化を も視野に入れることで、既存の材料及び新物質・新 材料に対する定量分析における適用範囲の拡大と分 析値の正確さの向上を図ることができる。これらを ミッションの目標とし、様々な分析技術あるいは前 処理技術を確立してきた。以下に、その代表的な例 を示す。a.モリブデン青吸光光度法による炭酸セリウム中 の形態別ケイ素定量法炭酸セリウムをシリコン基板等の半導体材料の研 磨剤として用いる場合、不純物粒子を含まないこと が重要となってくる。不純物粒子は主としてケイ素 からなり、酸可溶性、二酸化ケイ素及び炭化ケイ素 の状態で存在することから状態別の分離定量法を確 立した。酸可溶性ケイ素は、希硝酸を加えて温浴中 に浸し分解しメンブレンフィルターにて濾過後モリ ブデン青吸光光度法にて定量する。メンブレンフィ ルターで分離された酸不溶性である二酸化ケイ素及 び炭化ケイ素は、フィルターごと白金るつぼに入れ 図2 超軟X線スペクトルの例上:様々なLi化合物のLKα下:金属Alおよび金属MgのL2,3スペクトルて灰化、炭酸ナトリウムで溶融後、硝酸で溶解して モリブデン青吸光光度法にて定量する。また、メン ブレンフィルター捕集時にフッ化水素酸処理を行う ことで炭化ケイ素の分別定量が可能である。添加回 収実験では、いずれも良好な回収率が得られた。b.固相抽出分離/ICP-MSによる高純度タングステン中微量元素の定量タングステンの高純度化に伴い、含まれる微量不 純物元素の分析法の確立が強く望まれている。ICP- MSをこの分析に用いる場合、試料溶液を直接用い た場合、マトリックス干渉等の悪影響が避けられな い。そのため、化学結合型シリカゲルを固相抽出剤 に用いる固相抽出法の適用を検討した。その結果、 固相抽出剤としてベンゼンスルホニルプロピルを官 能基に持つ陽イオン交換型化学結合型シリカゲルを 用い抽出操作を工夫することで、Mg, Al, Cr, Mn, Ni, Cu, Fe, Ga, Cd, In, PbおよびBiに対する、きわめて迅 速かつ簡便な方法を確立した。c.誘導結合プラズマ質量分析法による基準分析法 の開発に関する研究標準物質の組成評価に必要な分析法として、誘導 結合プラズマ質量分析(ICP-MS)法や同位体希釈質 量分析(ID-MS)法がトレーサブルな基準分析法と して用いられるようになってきた。基準となりうる 水準での正確な定量の実現には、試料前処理がもっ とも重要である。グループでは、微量高融点金属元 素の分析に焦点を絞り、鉄マトリックス錯体分離法 を応用・改良し、微量元素定量プロセスを確立した。金属系分析グループの活動を顧みて伊藤真二、粟根徹、太田悟志、小黒信高、貝瀬正次、小林剛、浜野勲、山田圭、活動の概要金属系分析グループでは物質・材料の分析支援の 高度化のために、分析機器の開発・改良並びに各種 分析法の開発・改良を行なっている。化学分析関係 では完全依頼分析を行なうとともに、機器の保守・ 管理を行なっている。また、物理分析関係では装置 使用者へのトレーニングや機器の保守・管理、また 共同実験に参画している。固体試料直接分析法であ るグロー放電質量分析法(GD-MS)では分析信号で あるイオン強度比(IBR)を材料中の元素濃度に変 換するために相対感度係数(RSF)が不可欠である。 このRSFの正確さが定量分析結果に反映されるの で、鉄鋼をはじめとして、ニッケル基合金、チタン 合金、銅合金、ジルコニウム合金など様々なマトリ ックスについて、正確な実験的RSFを求めてきた。 鉄鋼については日本鉄鋼連盟などで製作している認 証物質の入手が容易であるが、チタン合金、ニッケ ル基合金など、新たに開発される合金系では標準試 料の入手が困難である。そこで、ニッケル基合金で は母合金を用いるアルゴンアーク溶解炉で、チタン 合金ではプラズマ電子ビーム溶解炉で、銀合金では 実験室で簡便に作製できる高周波溶解法により、自 家製標準試料を作製し、分析精度の向上に資した。 また、エレクトロニクス分野で利用されているイッ トリウム安定化ジルコニア(YSZ)などの非導電性 試料分析、あるいは同位体濃縮した粉体ホウ素の同 位体比分析などに最適な試料調整法として、高純度 ガリウム埋め込み法を適用し、安定な分析条件を確 立した。更に高効率イオン化法を目指し、放電ガス としてヘリウムが使用できる、マルチガス/グロー 放電質量分析システムを開発した。また、微小領域 の分析法の要素技術としてレーザーアブレーション 法の基礎的検討を行い、誘導結合プラズマ質量分析 法(ICP-MS)への試料導入システムの検討を行なっ た。電気加熱気化導入(ETV)/ICP-MSにより、黒 鉛炉原子吸光法(GF-AAS)の加熱条件の最適化を 確認した。物理分析関係ではバックグラウンド信号 を極力抑えた、高感度な斜出射/走査型電子顕微鏡 を開発し、材料腐食面上のサブミクロンサイズの介 在物・析出物の分析に世界で初めて応用した。これ らの基本性能および分析事例について述べる。①グロー放電質量分析法(GD-MS)表1He/GD-MSおよび化学分析法による分析結果の比較* N=5、**不活性ガス搬送融解/赤外線吸収法元素定量値,w (質量ppm)He/GD-MS* 化学分析値**2.70 ±0.09 2.3, 2.92.73 ±0.22 2.7, 2.4○ 2.77 ±0.12 2.6, 2.62.49 ±0.20 2.5, 2.5平均値: 平均値:2.672 ±0.108 2.56 ±0.18精錬プロセスの進歩により、C,N,Oなどガス形成 元素を含む不純物元素の低減化が進められている が、酸素分析に関して、従来の炭素還元による抽出 を原理とする不活性ガス搬送融解-赤外線吸収法で はシングルppm以下の分析は困難である。また、Ar を放電ガスとするGD-MSでは、C、N、Oなどは第1 イオン化電圧(Ipl)が高いので、他の元素と比較 して励起効率が悪く、定量分析で用いるRSFは、例 えばFeマトリックスでは～数10と報告されている。 そこで、安定なグロー放電を維持できるように放電 ガス導入システムおよび真空排気系を設計・試作し た、新しいHeグロー放電質量分析装置を開発し、ガ ス形成元素の高効率イオン化を検討した。その結果、 5時間程度安定した放電を持続し、かつマトリック スイオン電流値もArグロー放電に匹敵する、7～8× 10-10A (ピーク高さ値)が得られた。表1に微量酸素 分析用鉄試料のHe/GD-MS定量値および化学分析値を示した。GD-MS定量値 は5回繰り返し測定(日 内変動)を、日を替えて 4回(日間変動)行なっ た。日内、日間変動はそ れぞれRSD (%)で表し て、約10%以内と良好な 分析精度であった。また、 それぞれの平均値は認証 値及び化学分析値とよく図1ガリウム埋め込み用 モールドと放電後の試料一致した。また、非導電性試料の試料調整法として、図1に ガリウム埋め込み用PTFEモールドと放電後のYSZ 試料の写真を示した。この方法により作製した3試 料の放電面に存在するYSZおよびGaの面積はそれぞ れ異なる値であるが、マトリックスであるZrに対す るYおよびHfのIBRは相対的な誤差2%で、3個とも 一致した値であり、それぞれの変動もRSDで2%程 度であった。また、微量不純物であるTiやCeなど各 元素の相対誤差およびそれぞれの変動も10%以内で あり、良好な測定条件を確立した。また、銅合金分析における試料調整法とIBRの関図2 FeのIBRに及ぼす試料前処理法と放電時間の関係係の一例としてFeの結果を図2に示した。硝酸によ るエッチングおよび鏡面研磨では放電開始後20分以 内で表面汚染が除去されるが、簡便な調整法である アランダム研磨布による乾式ベルト研磨では60分以 上を必要とすることが分かった。②誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)および 黒鉛炉原子吸光法(GF-AAS)鉄鋼に含有する6種類のトランプエレメント(As、 Bi、Pb、Sb、SnおよびZn)について、試料溶液直 接法の利点を生かし、より高感度な定量法の確立を 図った。感度の向上は目的元素の灰化時の損失や原 子化時に難蒸発性物質を形成し残留する、メモリー 効果の低減および原子化効率の改善により達成でき図3 As, SbおよびSnの信号プロファイルるものと考え、これらの問題解決の一手段として原 子吸光法で使用したものと同型の黒鉛炉を用いた ETV/ICP-MSにより、各分析元素の加熱過程の蒸発 状態を観測した。その結果の一例として、図3にAs、 SbおよびSnの場合を示す。いずれの元素も原子化ス テップのみでの蒸発が観測され、加熱条件の最適性 を確認した。表2トランプ元素の定量結果の比較*検量線試料:JSS微量元素シリーズB、N=10試料 分析方法定量値,w (質量ppm)As Sn Sn本法*TR-B2 平均値 99.7 110.5 104.1ディスク RSD(%) 0.94 1.21 1.10GD-MS 102 112 104TR-B1 チップ ICP-MS 102 107 98レーザーアブレーション法はレーザー光を固体試 料に照射すると、レーザー光のエネルギーを吸収し て試料の一部は融解し、微粒子を飛散する。発生し た微粒子をICPプラズマ中に搬送・導入してイオン 化し、生成したイオンを質量分離し、そのイオン強 度を測定する分析法である。この分析法については 多くの利点や欠点が指摘されており、表面処理法と イオン強度の関係など基礎的条件について検討し た。更に、実用化を目的に市販鉄鋼標準物質の適用を検討した結果、表2に示すように、本法と比較分 析法による分析値とによい一致が見られた。③斜出射/走査型電子顕微鏡斜出射EPMA法は電子線により励起されたX線を 検出する際、0°近傍の非常に小さなX線取り出し 角度にすることで、表面近傍からのみ、放出される X線を検出し、測定する方法である。EDS-SEMに斜 出射EPMA法を簡便に導入することができる「試料 のZ軸上の位置調整によるX線取り出し角度調整法 (特許3673825号)」を考案した。そして斜出射 EPMAを材料腐食面上のサブミクロンサイズの介在 物や析出物の分析に世界で初めて応用した。その結 果、従来のEPMA法では除去が困難であったマトリックスの成分から発生したX線を除去し、介在物、 析出物の成分から発生するX線のみを高いピーク/バ ックグラウンド(P/B)比で検出することに成功した。材料中の介在物や 析出物は材料の特性 に大きな影響を及ぼ すため、その成分分 析は極めて重要であ り、要求は非常に多 い。斜出射EPMA法 によって分析した銅 合金中のサブミクロ ンのニッケルシリサ イド析出物の走査型図4 銅合金腐食面上のニッ ケルシリサイド(長径600nm、 短径400nm)電子顕微鏡像を図4に示す。析出物を囲むマトリッ クスを含む領域中(図中□)で電子線を走査し、X 線を発生させた。図5に斜出射条件で得られたX線 スペクトルを示す。マトリックスの主成分である銅図5斜出射条件下で得られたX線スペクトルから発生したX線(Cu-Kα)をほとんど検出せずに ニッケルシリサイドから発生したX線、Si-KαとNi- Kαを検出できていることが見てとれる。この時、 マトリックス内部から発生する連続X線が検出され ないため、バックグラウンドが低下し、P/B比が向 上した。斜出射EPMA法は普及型EDS-SEMを用いる ことができ、個別の介在物や析出物の成分の分析と 同時に形態観察が可能で今後重要性が増すものと期 待される。セラミックス系分析グループのあゆみ和田壽璋、倉嶋敬次、小須田幸助、佐藤晃、竹之内智、堤正幸、矢島祥行1.組織発足の経緯セラミックス系分析グループのスタッフは、旧無 機材質研究所において事務部門の管理部研究支援室 に所属し、依頼業務、操作指導、装置管理などを通 して技術的に研究活動を支えてきた。平成13年4月 に物質・材料研究機構発足後、平成16年12月に事務 部門では異色業務の元研究支援室スタッフの一部が セラミックス系分析グループとして分析ステーショ ンへ併合された。この間の経緯は次のとおりである。機構発足時に旧無機材質研究所の研究支援室と旧 金属材料技術研究所の研究支援課が統合し、研究活 動の技術的サポート部門として新たに研究業務部技 術支援課が発足。技術支援課の一グループであった 分析技術支援グループは並木地区において物理分 析・化学分析の技術を駆使し、基礎研究及び基盤的 研究開発等の推進に技術的に貢献してきた。組織と しての技術支援課は平成14年4月から平成16年11月 まで研究業務部長が課長を併任する状況となった。 職制については職種と業務の不一致性を改善する観 点から、平成16年4月に目標・成果評価によるエン ジニア職が創設された。主に研究支援的な業務を行 う人材が希望によりエンジニア職へ移行でき、技術 支援課のスタッフの一部を除きエンジニア職に移行 した。以降、個人が技術的研究支援を前提にした業 務目標をたて、業務にあたることになった。平成16 年12月1日の研究業務部の廃止に伴い、研究業務部 技術支援課は解散解体された。この時点で、元分析 技術支援グループは分析ステーションに併合され、 セラミックス系分析グループとして新たに発足し た。グループ名の通りセラミックス系物質・材料の 物理分析・化学分析の新たな技術的なサポートを行 うこととなった。セラミックス系分析グループが保有する機器は、 物理分析機器として透過型電子顕微鏡、走査型電子 顕微鏡、電子線マイクロアナライザー(EPMA)、X 線回折装置の共用機器であり、化学分析機器として 機器分析用機器類がある。支援体制として、国立研 究所時代から定員の増加が出来ず、少数で技術的研 究支援を行ってきた。少数でも良質な研究支援を供 給するために、各機器部門等の担当者は専門性を持 ち、各担当分野の技術に特化する体制で臨んできた。 支援対象は主にセラミックス系の研究が多い並木地 区の研究員からの依頼分析、依頼測定及び担当機器 の機器管理・機器操作指導等をしてきた。2.グループの活動化学分析部門は、物質研究所、エコマテリアル研 究センター、ICYS、生体材料研究センター、ナノマ テリアル研究センター等からの化学分析依頼試料に 対して二人の担当者が化学分析を行った。化学分析 手法は湿式分析と機器分析による定量分析及び定性 分析である。これらの研究ユニットからの依頼試料 の多くは、難分解性物質及び新規化合物で構成され ているため、常に分析技術の改良が求められる。こ れらの困難な分析業務を遂行するには、旧無機材質 研究所時代から現在に到るまでに手掛けた分析によ る多くのノウハウを生かし、化学的手法で主成分分 析、不純物分析を行った。ここで外注に対する機構 内化学分析のメリットを挙げると、外注先にたいし て相談する時間と費用を考慮しながら交渉する様な 手間がかからないことは重要であり、的確な分析結 果を得るまでの時間のロスと研究者が払う対価は最 小で済む。分析担当者に時間的余裕があれば、研究 者とのより綿密な意見交換が可能であり、研究者の 要望に沿った分析方法を適用できる。また、試料ご とに十分な検討実験を行う事も可能で、正確さ、精 度をより高めることが出来ること等が挙げられる。 少人数での実施のために、萌芽的研究のように研究 活動の方向性を決定づける試験研究では重要な役割 を果たすと思われる。これらは他の支援機器部門に も言えることである。物理分析部門については、透過型電子顕微鏡、走 査型電子顕微鏡、電子線マイクロアナライザーにた いして装置毎に担当者が就いており、X線回折装置 は二人の担当者が就いている。透過型電子顕微鏡の 担当者は、研究者からの依頼観察及び操作指導、機 器管理を担当しており、依頼観察において、試料観 察点への的確なポジショニング技術と試料観察手法 において評定がある。ここで、機構内の施設予約に 使用している統合ソフトの一週間表示や一日表示の 時間予約は、自由予約の場合は非常に有用であるが、 透過電子顕微鏡は依頼予約であるために装置のスケ ジュールの公開において使用上の不便があった。そ のため、透過型電子顕微鏡の担当者は、インターネ ットホームページで独自に予約カレンダーを立上 げ、月ごとの予約が一目で分かるようにし、透過型 電子顕微鏡関連の調整・故障情報等も関係者に開示 出来るようにした。電子線マイクロアナライザーの 担当者は、薄膜試料を含めた依頼観察を主にし、以 前に使用していた電子線マイクロアナライザーの標 準試料や80mm角の大きな試料までが搭載できる多 形状搭載試料ホルダーの設計作製を新たに手がけた (末尾の章に多形状搭載試料ホルダーの写真を掲 載)。また、走査型電子顕微鏡の担当であった非常 勤職員及び派遣社員等の指導にあたり、それら担当 者によって走査型電子顕微鏡での研究者からの依頼 観察、操作指導及び操作アドバイスをこなせるよう にした。X線回折装置担当の一人は、単結晶X線回 折装置による依頼測定を始め、粉末X線回折装置を 含めた機器操作指導及び機器管理を行っている。他 の一人は主に粉末X線回折装置の機器操作指導及び 機器管理を行い、粉末X線回折装置の試料保持板関 連の改良にも貢献した。どちらの担当者も、X線回 折装置使用者が登録しておけば、自由に使用できる 共通機器の機器管理において、X線回折装置のトラ ブル時には、研究にできるだけ支障のないように迅 速に対応する体制で臨んできた。3. 5年間のグループの成果(受賞)A.創意工夫功労者賞受賞平成13年 「電界放射型電子顕微鏡の微細領域分析 手法の確立」平成15年 「EPMAによる超軽元素の定量測定の改 善」平成17年 「試料マガジンに関する改良」 文部科学省B.プラズマエレクトロニクス分科会論文賞 プ ラズマエレクトロニクス賞の受賞平成16年 「Highly crystalline 5H-polytype of sp3- bonded boron nitride prepared by plasma-packets- assisted pulsed-laser deposition : An ultraviolet light emitter at 224nm」応用物理学会C.「物質系応用研究部門」技術功労賞受賞 平成17年 「ナノ物質の分析電子顕微鏡観察技術」 日本顕微鏡学会4.グループ内で更新した共通機器平成13年度CCD型単結晶X線回折装置 特徴:X線受光部にCCDを使用し、単結晶からの回 折斑点を一度に取ることができ、解析までの時間が 短縮出来る。平成15年度粉末X線回折装置特徴:試料水平型であり、水平に置かれた試料ホル ダーから粉末試料がこぼれ落ちない。平成15年度 電子線マイクロアナライザー 特徴:電子銃がフィールドエッミションタイプで分 解能が高く、サブミクロンオーダーの試料にたいし て元素の定量分析ができる。平成17年度粉末X線回折装置特徴:検出器アームを二つ備えた試料水平型であ り、自動試料交換機と共に迅速測定検出器により、 多くの粉末試料を迅速に測定できる。5.平成17年度依頼処理件数等(平成17年4月1日～10月31日)試料件数 延べ分析元素数化学分析 314 1824依頼試料数 操作指導数透過型電子顕微鏡 31 20依頼件数 訓練指導件数走査型電子顕微鏡 4 30依頼件数 依頼試料数電子線マイクロ アナライザー22 566.グループの活動成果写真依頼件数 操作指導件数単結晶X線回折装置 25 ―粉末X線回折装置 ― 25図1 新たに作製した試料ホルダーA図2 新たに作製した試料ホルダーB図3 従来のEPMA付属試料ホルダーEPMA付属試料ホルダー(図3)は小さな試料の 保持のみであった。多形状搭載試料ホルダー(図1、 図2)を作製し、測定の試料形状に自由度を持たせ た。12超高圧電子顕微鏡ステーション超高圧電子顕微鏡ステーションの1.9年浅香透、石川信博、大澤朋子、大和田めぐみ、小島直美、木村仁美、木本浩司、熊本麻利子、小林里栄、坂田陽子、下条雅幸、 鷹巣めぐみ、竹口雅樹、田中美代子、田村のり子、溜池あかね、鶴田忠正、豊島聖美、中山佳子、長井拓郎、長谷川明、林香緒里、古屋一夫、松井良夫、三石和貴、G.Xie (現東北大学2005.9退職)、J.C.Rao,Z.Liu,R.Che,W.Jiuba,W.Lu,W.Zhang1.超高圧電子顕微鏡ステーション(HVEMS)設 置の目的超高圧電子顕微鏡ステーションは、「ナノテクノ ロジーと21世紀のための電子顕微鏡」をめざし、一 般の研究機関では導入が難しい各種の透過型電子顕 微鏡の先端的技術開発とそれらを用いた先導的材料 研究、ナノテクノロジー研究者への装置の解放・共 同利用を主なミッションとして研究活動を行ってき た。2. HVEMSの活動経緯平成13年度の機構の創立において、「ナノ物質・ 材料の研究」は中核的研究分野の1つであった。そ の中では、「原子・分子を高精度・高速に観察・分 析する技術」として、透過型電子顕微鏡の重要性は ますます増大していた。特に高分解能観察画像から 得られる原子レベルのデータは、直観的に原子配列 を表すばかりか、同時に測定される分光学的データ を取り入れて総合的に解釈することで、ナノ構造の 状態をも解析できるものである。また、この手法は 本来、電子顕微鏡関係の研究者のみが恩恵を独占す るのではなく、広くナノテクノロジー研究者全体が 利用し、研究の発展に活用すべきものある。以上の 状況を踏まえ、本ステーションは平成16年5月に設 置された。機構の設立から4年目での設置であり、 実質1.9年間の活動である。3. HVEMS全体の活動内容図1にはHVEMS全体の活動内容の項目を示した。超高圧電子顕微鏡ステーションのミッション先端技術開発①種々の環境条件での動的オンライン観察技術開発②収差補正電子レンズによる、分解能と電子ビーム強度の向上③エネルギーフィルター電顕による電子状態の可視化技術④インターネット電子顕微鏡の開発先導的材料研究①収束電子線による1nmオーダーの微細加工②表面帯電を利用したナノ樹木金属構造の作製③酸化物超伝導体や強相関電子系材料の結晶構造の解析④ローレンツ電顕による強磁性体の磁気構造観察共同利用文部科学省「ナノテクノロジー総合支援プロジェクト・超高圧 電子顕微鏡による解析支援」の中で、特徴ある透過型電子 顕微鏡群を外部開放図1 超高圧電子顕微鏡ステーションの役割 全体は先端技術開発、先導的材料研究、電子顕微鏡 の共同利用の3つに分かれる。それぞれについては 以下の通りである。1)先端技術開発①電子線・イオンの照射下、種々の環境条件での 動的オンライン観察技術開発、②電子レンズの収差 (ボケ)を補正することで、より高い分解能と高強 度・高品位電子ビームを得るための技術開発、③エ ネルギーフィルター電顕による電子状態の可視化技 術、④インターネット技術を利用することで電子顕 微鏡を遠隔操作し、多くの研究者や学生が共同実 験・教育活動に有効に利用するためのシステム開発 を行った。特に②の収差補正技術は先端性の高い開発であ る。図2には電子レンズの収差補正装置を取り付け た高性能の電子顕微鏡の写真を示した。電子顕微鏡 で用いられている磁界レンズは凸レンズであるため 球面収差が常に問題となるが、近年、多重極子を用 いこれを補正する技術が実用となりつつある。我々 はこれを照射系に用い、電子ビームを1オングスト ローム以下に収束することで、空間分解能を向上さ せ、かつビーム強度を大幅に増大させることを試み、 成功した。ナノ材料の構造や物性の測定、ビーム励 起による任意形状のナノ構造作製等に活用すること ができ、今後の新ナノデバイス材料の開発に大きく 貢献すると考えている。図2オングストローム透過型電子顕微鏡の外観写真 図3 陽極酸化アルミナ基板の多孔質構造に埋め込ま れたWナノ粒子の2次元配列2)先導的材料研究①収束した高強度の電子ビームを用いた1nmオ ーダーの金属・半導体の任意ナノ構造の微細加工と 特性評価、②表面帯電を利用したナノ樹木金属構造 の作製と表面効果材料への応用、③酸化物超伝導体 や強相関電子系材料の結晶構造や局所欠陥構造の解 析、④ローレンツ電顕による強磁性体の磁気構造観 察を行った。先端技術開発で培ったノウハウを十分 に発揮する研究として主にナノ物質・材料に着目し て研究を行った。図3は②の表面効果材料に関係するものである。 アルミナ基板を陽極酸化し2次元の規則的な多孔質 構造を作製し、そこに表面帯電を利用してWを析出 させたものである。電子ビームで励起領域を制限し、 さらに多孔中の薄膜のみに析出させることができ る。これらは大きな表面活性を持つと予測され、今 後の応用が期待できる。さらに超伝導・機能性材料 の分野でも原子レベル解析の分野で研究を展開し、 成果を上げることができた。発表論文数は49件、特 許は9件である。3)電子顕微鏡の共同利用平成14年度から始まった文部科学省の「ナノテク ノロジー総合支援プロジェクト・超高圧電子顕微鏡 による解析支援」の中で、幹事機関として、2台の 超高圧電子顕微鏡をはじめとする特徴ある透過型電 子顕微鏡群を外部開放し、一般のナノテクノロジー 研究者に利用の機会を提供してきた。図4は「電子 顕微鏡によるナノ支援」の全体のスキームである。 観察に際して必要となる電顕試料の作製、および観 察結果を解析するための画像解析等、実験のそれぞ れの段階において総合的な技術支援を行っている。 採択課題数は年58件、電子顕微鏡共同料日数は約 670延日であり、活発に共同利用が行われている。 今後もユーザ各位、ナノテクノロジー関連研究者各 位より広くご意見をいただきつつ、より多くの研究 者の方々が電子顕微鏡技術を利用して、ナノテクノ ロジー分野で大きな成果を上げられるよう、尽力し ていく所存である。4.電子顕微鏡分野の動向と提言21世紀は、「科学技術が社会と調和をとりつつ」 発展していく世紀であり、電子顕微鏡技術は単にツ ールとして科学技術に貢献するのではなく、成果の 普及や教育の場での活用を通じて、社会全体に広く 貢献できると考えている。HVEMSでは学会活動を その一環と考え、2006年9月に札幌で開催される 「第16回国際顕微鏡学会議」を、事務局として強力 にサポートしている。将来ともに技術開発・材料研 究・共同利用を3本柱として活動を行うつもりであ る。図4 電子顕微鏡によるナノ支援プロジェクトの全体スキーム高分解能解析グループの5年松井良夫、木本浩司、浅香透、アラム・シャー、アンジャナ・アスタナ、于秀珍、内田正哉、大和田めぐみ、田村のり子、鶴田 忠正、長井拓郎、長尾全寛、馬場裕二、平山広美、真家信1.発足の経緯本グループが正式に発足したのは2004年度で、ま だ2年にも満たないが、旧無機材質研究所にて1988 年にスタートした超伝導研究プロジェクト(マルチ コアプロジェクト)の構造解析コア・局所構造ユニ ットがその母体となっている。同プロジェクトで 1989年度に導入された、超高分解能超高圧電子顕微 鏡(分解能1A)を始め、4台の先端的電子顕微鏡 を順次整備して、透過型電子顕微鏡(TEM)の高度 化と、主として酸化物超伝導体に代表される「強相 関電子系」材料のナノレベル構造評価、電子状態評 価、磁気構造評価等を精力的に展開してきた。また 2002度に始まった文部科学省ナノテク総合支援プロ ジェクトに積極的に参画して、超高圧電子顕微鏡に よる外部支援も強力に展開している。2.活動経緯本グループは前身の超伝導研究プロジェクト時代 から一貫して、世界最高性能の原子レベル観察機能 を有する超高分解能電子顕微鏡の開発と、これを酸 化物超伝導体や関連する先端機能材料の構造評価に 適用する試みを行なってきた。1989年度導入の超高 圧電子顕微鏡に続き、1997年度には、冷陰極型電界 放出型電子銃を搭載した、300kV分析電子顕微鏡 (ポストカラム型電子分光装置付き)、及び、極低温 ローレンツ型電子顕微鏡を導入した。これによって、 当グループでは「高分解能法(HRTEM)による原 子配列の直接観察」、「電子エネルギー損失分光法 (EELS)による電子状態解析」、「ローレンツ法によ る磁区構造の観察」という、強相関系先端材料をナ ノレベルで解析するためのシステムが基本的に完成 した。また同時に電子顕微鏡観察をナノレベルの位 置精度をもって行なうために不可欠な「集束イオン ビーム加工装置(FIB)」を導入して、従来のイオン 研磨装置と合わせて、あらゆる試料形態やニーズに 対応しうる体制を整えることが出来た。こうした状 況で、2001年のNIMS発足を迎え、我々は物質研究 所先端結晶解析グループの中のサブグループとし て、新超伝導研究プロジェクトの構造評価サテライ トを中心に研究を継続した。2002年に文部科学省が ナノテクノロジー総合支援プロジェクトを発足させ たが、我々は「超高圧電顕による解析支援」に参画 し、外部研究機関(大学や他の独法期間)や民間企 業の要請に応えて、電子顕微鏡による解析支援を積 極的に展開してきた。このようにNIMS発足後は (1)超伝導研究プロジェクト(2)ナノテク総合支援プロジェクトの2つを両輪として研究業務と支援業務を両立させ てきたが、2004年度に主として後者を組織的に推進 するために新ユニット「超高圧電子顕微鏡ステーシ ョン」が創設され、我々はその中で「高分解能解析 グループ」として新たなスタートを切った。なお超 伝導研究への寄与も重要であるため、主要メンバー は物質研究所先端結晶解析グループに併任してい る。ナノテク総合支援プロジェクト予算では、2002年 度に原子識別性能に優れた、「走査透過型電子顕微 鏡(STEM)」 (図1)を導入して、ナノテク材料評 価のための体制が更に強化された。図1 ナノテク総合支援プロジェクトにて導入された、 200kV走査透過型電子顕微鏡(FE-STEM)3.主な研究成果(1)分解能電顕法による層状酸化物の解析透過型電子顕微鏡を用いた高分解能電子顕微鏡法 により各種強相関電子系酸化物について原子配列の 直接観察を行った。高分解能法と電子回折との併用 により得られた実空間および逆空間情報に基づき、 可能な結晶構造のモデリングを行い、Mac Tempas 等によるイメージシミュレーションにて高分解能像 における各原子の同定および結晶構造の決定を試み た。ここでは(図2参照)、組成式CoSr2 (Y,Ce) sCU2O5+2sで表される一連のコバルト系層状銅酸化物 Co-12s2相(s=1-3)について、超高分解能超高圧電 子顕微鏡H-1500 (加速電圧820kV)を用いて結晶構 造解析を行った例を示す。その結果、本物質系では 二つのCuO2層の間に(Y,Ce) sO2s-2蛍石型ブロックが 挿入されており、sの値の増加に伴ってCoO層間距離 が増大することが明らかとなった。また、三相に共 通して、互いに鏡面対称関係にある二つのCoO4四面 体鎖(L鎖、R鎖)がCoO層内で交互配列しているこ とが確認されたが、CoO層間距離が長くなる1222相 (s=2)および1232相(s=3)では、この層間方向の 配列が不規則化することが明らかになった。このような、四面体鎖や八面体鎖の規則/不規則構造は、 Ru系やGa系等、多くの酸化物超伝導体にて観察さ れており、超伝導特性との関連性が注目される。図2 超高分解能超高圧電顕(H-1500)による、一連 のCo-系層状酸化物の高分解能電顕像(T.Nagai et al., JSSC 176 (2003)213-220)(2)電子エネルギー損失分光法の開発と応用透過電子顕微鏡法における電子エネルギー損失分 光法(TEM-EELS)により、高空間分解能で、元素 および化学結合状態を解析している。図3は半導 体素子等に用いる絶縁膜のAl2O3とSi基板界面の断面 TEM像とEELS分析結果である。独自に開発した位 置分解EELS法を用いて0.28nmステップで解析した。 スペクトルが位置によって変化しており、第一原理 計算などの解析からAlの配位数が変化していること を明らかにした。本手法は人工超格子試料などにも 応用している。図3 非晶質アルミナとシリコン界面の(a) HRTEMと(b) EELSによる分析例 (K.Kimoto et al., APL83 (2003) 4306-4308)(3)低温ローレンツ顕微鏡法による磁区構造解析強相関電子系酸化物の磁区構造をHF-3000L型低温 ローレンツ電子顕微鏡により観察した。その際、電 子回折や明視野・暗視野法、高分解能法などを併用 し、磁区構造と結晶構造との関連を調べた。ローレ ンツ電子顕微鏡観察は5～300 Kの温度範囲におい てナノメーターレベルで、さらに温度変化や磁場下での磁区構造の挙動を動的に観察した。図4はマン ガン酸化物(Nd1/2Sr1/2MnO3)の低温ローレンツ顕微 鏡像の一例で、焦点を意図的に外した像(a)、(c) には白い矢印で示したような線状コントラストが観 察される。これらは磁区間の境界である磁壁に対応 する。また、焦点の合った像(b)の線状コントラ スト(黒矢印)は双晶境界で、それらが磁壁として 作用していることも分かる。図4 Nd1/2Sr1/2MnO3の225Kでのローレンツ電子顕微鏡 像:(a)不足焦点像、(b)正焦点像、(c)過焦点像 (T. Asaka et al., “Frontiers in Magnetic Materials”, Ed.A. Narlikar, Springer (2005) 71-96)4.研究分野の動向と展望透過型電子顕微鏡は、ハードウェアー面では球面 収差補正技術の急速な発展による、分解能の飛躍的 向上が期待される。またモノクロメーターや各種の エネルギーフィルター法の発展による、電子分光装 置としての性能向上も著しい。こうしたハードウェ アーの急速な進展に取り残されることがないよう に、装置の更新を図ることは重要であるが、当然な がら大規模な予算措置が不可欠となる。当グループにて、これまでに導入した4台の先端 的な電子顕微鏡システムにより、2次元的なデータ はほぼ満足すべきレベルで得られるようになった。 今後の重要な方向としては、ナノレベルでの「三次 元観察」(3D-Nano)が挙げられよう。最近のFIB加 工技術の発展により、同一部位を全方位からTEMあ るいは電子回折にて観察しうるようになっている が、我々はこうした三次元ナノ観察を、分析電顕 (EELS)、ローレンツ電顕、STEMにて定常的に行な えるような、技術開発を今後行なって行く予定であ る。また、こうしたハードウェアーの開発整備と並行 して、有用なソフトの開発、あるいは導入を積極的 に進めることも重要である。特に位相情報をソフト 的に抽出する強度輸送方程式法(Transport of Intensity Equation : TIE)は、電子線ホログラフィ ーと等価な、位相分布解析手法として今後の発展が 注目される。その場解析グループの1.9年石川信博、大澤朋子、小島直美、木村仁美、熊本麻利子、小林里栄、坂田陽子、下条雅幸、鷹巣めぐみ、竹口雅樹、田中美代子、 溜池あかね、豊島聖美、中山佳子、長谷川明、林香緒里、古屋一夫、三石和貴、G.Xie,J.C.Rao,Z.Liu,R.Che,W.Jiuba,W.Lu, W.Zhang1.その場解析グループの設置の目的超高圧電子顕微鏡ステーション・その場解析グル ープは、イオン注入その場観察超高圧電子顕微鏡な どの先端的装置の技術開発とナノ物質・材料の創製 と解析の研究を行うために設置された。2.その場解析グループSの活動内容主な研究テーマは、収差補正走査透過電子顕微鏡 の開発、超高圧電子顕微鏡による原子レベル観察・ 分析、超高真空表面観察電子顕微鏡による表面ナノ 構造の観察・分析、電子ビーム誘起蒸着によるナノ 構造作製・評価、電子顕微鏡のインターネットによ る共有技術の開発である。発表論文数32件、特許9 件。電子顕微鏡における分解能は、長く収差によって 制限を受けてきた。近年この収差を補正する技術が 発達し、透過電子顕微鏡(TEM)のみならず走査透 過電子顕微鏡(STEM)でも実用化されつつある。 我々は収差補正装置を超高真空化したSTEM専用機 に搭載したオングストローム透過型電子顕微鏡を開 発した。図1には装置の模式図を示した。収差補正 装置はDual-Hexapoleタイプであり、二つの12極子に よって回転可能な6極場を作り、それらをトランス ファレンズで結像することにより3次の球面収差を 補正するものである。また、トランスファレンズの 間に回転レンズを備え、6極場を直接回転すること なしに上下の6極場の回転角を合わせることが出来図2 収差補正装置を用いた金ナノ粒子の観察結果る構造である。収差補正装置、走査透過電子顕微鏡 ともに超高真空対応となっており、表面再構成など の構造の解析にも威力を発揮するほか、観察中の試 料汚染の影響を最小限に抑えることで、STEM- EELSなどの観察・分析においても、安定で長時間 の測定ができると期待される。図2は収差補正装置を用いて観察した金のナノ粒 子の大角度走査透過暗視野像(HAADF-STEM)で ある。画像はZコントラストを示し、原子番号が大 きいほど明るく表示される。また、原子からの散乱 を直接計測するため、周期性の低いナノ粒子も鮮明 に観察されている。金の{113}面の間隔である図1 収差補正レンズの構成模式図 図3 電子線誘起蒸着によるナノ樹木構造図4ナノ樹木状構造の高分解能観察結果0.123nmが観察されており、収差補正の効果は明ら かである。上記のビームの応用研究として、集束した電子ビ ームによるナノレベルの微細加工の研究を行った。 金属などの材料を含むガスを試料近傍に流し、集束 した電子線でガスを分解することで、ナノ構造を作 製することが出来る。図3は電子誘起蒸着によって 作成されたWナノ樹木である。Wを含むガスを絶縁 体基板上に流すと樹木状構造を得ることができる。 先端部分を拡大して、高分解能観察した結果が図4 であるが、2～3nmの大きさのナノ結晶の集合体 であり、格子間隔からbcc-Wであると考えられた。 この構造は表面積がきわめて大きく、触媒等への応 用が期待できる。また、インターネットを通して遠隔操作が可能な 走査型・透過型電子顕微鏡システムの開発を行っ た。電子顕微鏡を広範に利用し、ナノテクノロジー に活用したり、理科教育の理解増進を進めるために、 インターネットを経由して世界のどの場所からでも 図5インターネット電子顕微鏡の構成図 遠隔操作でき、実験・データ取得が行える電子顕微 鏡と信号伝送技術を開発し、その共同利用を行った。 これまでに走査型電子顕微鏡(SEM)及び透過型電 子顕微鏡(TEM)の遠隔操作システムを開発し、伝 送方式の最適化及び仮想専用回線(VPN)の導入、 多数ユーザの試料/データの個別管理やスケジュー リング機能を持つマルチユーザシステム(MMS) の開発を行った。図5はSEMのインターネットシス テムである。ユーザー側には専用のソフトを入れた PCが必要であるが、マウスとキーボードのみで、 SEMを遠隔操作することができる。顕微鏡の画像は 帯域2Mbpsで3-8fpsの配信が可能なように圧縮レー トを定めてあり、家庭レベルの通信環境でも操作・ 観察に支障がない。一般開放では2001年7月から日本科学未来館で公 開を行っており、これまでに1000人以上の利用者が あり、好評を博している。また2003年10月から文部 科学省指定のスーパーサイエンスハイスクール (SSH)に端末を導入し、登録校は現在7校に達し ている(図7)。各高校は、本システムを科学の授 業やクラブ活動で活用しており、生徒は研究課題に 沿って自らが作製した試料を機構へ送付し、これを 自由に観察している。さらに、各種科学イベントや 国内/国際会議でのデモンストレーションも積極的 にこなすなど年間100日以上の高稼働率で共同利用 を行い、当システムの広範な可能性を内外にアピー ルしている。3.まとめ技術開発と材料研究を両立させる難しい課題に積 極的にチャレンジしたが、 今後はさらにこれらの研 究を深めていく必要があると考えられる。図6インターネット電子顕微鏡システムの運用状況13ナノテクノロジー総合支援プロジェクトセンターナノテクノロジー総合支援プロジェクトセンター1.「ナノテクノロジー総合支援プロジェクト」の 概要第2期科学技術基本計画で、研究開発の重点領域 4分野の一つにあげられた「ナノテクノロジー」は、 ITやライフサイエンスの飛躍的な発展をもたらすと ともに、環境やエネルギーなど21世紀の世界規模の 問題を解決する鍵を握る技術として最も注目されて います。文部科学省では、ナノテクノロジーの研究 開発を戦略的に進めるため、平成14年度から5カ年 の計画(第1期)で、我が国のナノテクノロジーに 関わる産学官すべての研究者を強力に支援する「ナ ノテクノロジー総合支援プロジェクト」を開始しま した。本プロジェクトは、大きくは二つの支援業務から 成り立っています。一つは、ナノテクノロジーの研 究開発で多くの研究者が必要としながら容易に取り 組むことのできない高度な計測技術や極微細加工技 術、合成評価技術を、最先端の大型施設等の「共用 施設」の利用を通して支援する技術支援です。共用 施設には、全国14の研究機関が指定されており、こ れらの研究機関以外の研究者も無料で最先端の大型 施設や特殊施設を利用することができます。本プロジェクトの二つ目の支援業務は、ナノテク ノ ロジーの広い領域の研究に関連する情報を産学官 の研究者にあまねく提供するとともに、ナノテクノ ロジーが分野融合領域としての特徴を有することか ら、関連する研究者への交流機会の提供や新たな人 材育成のための支援を行うことです。これらの業務 は、「ナノテクノロジー総合支援プロジェクトセン ター」において実施されています。2.ナノテクノロジー総合支援プロジェクトへの対 応と総合的推進2002年1月ナノテクノロジー推進室を千現にもう け、文部科学省の新世紀重点研究創製プラン (RR2002)で実施されるナノテクノロジー総合支援 プロジェクトへの対応がされました。プロジェクトでの「ナノテクノロジー総合支援プ ロジェクトセンター(以下「センター」という。)」 の運営を受託し、同プロジェクトの円滑な業務推進 を果たすため、また、その際、全国の利用者の利便 性を考慮して、センターを同年6月に東京都港区虎 ノ門に設置し、同年7月から外部利用者への支援提 供を開始しました。一方、東京大学榊教授を主査とする有識者7名に よる運営委員会を設置し、2002年7月、10月、2003 年2月、2004年2月、2004年6月、2005年3月の計 6回開催してきました。施設共用業務及び情報提供 業務等の運営方針、共用施設の利用状況並びにセン ターの事業内容の検討がおこなわれました。2004年6月および2005年3月運営委員会では「同 プロジェクト」の中間評価についてご議論を頂き、 同プロジェクトの第Ⅱ期についての意見を得まし た。一方、ナノテクノロジー推進のための 新方策の 検討の一環として2004年1月に「人材育成」をテー マに「ナノサロン」を開催し、分野横断スクール及 び若手研究者国際交流等についての指針を得まし た。また、文部科学省の要請を受けて「ナノテクノ ロジー ・材料分野戦略検討チーム」を2004年設置し、 「わが国の中長期的なナノテクノロジー ・材料分野 の研究開発の方向性」に関する指針を得ました。さ文部科学省委託運営委員会委託ナノテクノロジー総合支援 プロジェクトセンター共用施設(14機関)■ Spring-8 ■広島大学ナノデバイス・システム研究センター■立命館大学総合理工学研究機構■東北大学金属材料研究所■物質・材料研究機構■大阪大学産業科学ナノテクノロジーセンター■大阪大学超高圧電子顕微鏡センター ■産業技術総合研究所■九州大学超高圧電子顕微鏡室■早稲田大学ナノテクノロジー研究所■東京工業大学量子ナノエレクトロニクスセンター■自然科学研究機構■分子科学研究所■九州大学大学院工学研究院■京都大学化学研究所,ベンチャービジネスラボラトリー,ナノ工学高等研究院情報支援・情報収集/発信交流支援・研究者交流/人材育成技術支援・最先端の大型施設、 特殊施設の活用ナノテクノロジー総合支援プロジェクト実施体制図らに、2004年度においては、ナノテクノロジーの社 会的影響に関する勉強会を4回開催しました。3.ナノテクノロジー総合支援プロジェクトセンタ ーの取り組み3.1 情報拠点としてのナノネットホームページ 分野融合を特徴とするナノテクノロジー研究で は、広い領域にわたる研究者間の情報交流を欠くこ とができません。センターでは、このようなナノテ クノロジー研究者等の多様なニーズに対応した情報 をインターネットを活用したホームページ(和文・ 英文)、及びメールマガジン(和文・英文)、並びに 冊子を用いて提供しています。ナノテクノ ロジー研究者等の情報ニーズとして は、研究動向、施策や予算、開発動向などに関する 情報があります。それらのニーズに対応する情報拠 点としての「ナノネットホームページ」(URL : http://www.nanonet.go.jp)は、図に示す内容で構成 されています。2002年7月、ホームページを開設し、 2005年1月にリニューアルを実施し、現在に至って います。ナノネットホームページは、このような広いニー ズに応えた情報拠点としての役割を果たすために、 ナノテクノロジーのあらゆる切り口からの情報メニ ューを用意・提供することを目指しています。3 . 2 ナノテクメールマガジン(Japan NanonetBulletin)および冊子(JNNB)「Japan Nanonet Bulletin」では、ナノテク研究で リーダーシップをとっておられる研究者や現在のナ ノテクノロジーを築いて来た方々へのインタビュー 記事、先端研究に取り組む若手研究者、ナノテクノ ロジー分野における政策、国内外のホットな動向等 及び近々開催される国内外の催物開催情報や急速に 拡大しつつあるナノテク特許出願を十分に補足する ための世界のナノテク特許情報をメールマガジンと して配信しています。配信は2003年の1月から開始 し、当初は毎週配信し、2004年5月から隔週の水曜 日に配信し、2005年末現在103号に至っています。 2005年末現在、8500を超える登録者に配信されてい ます。アドレスからみた登録者は、およそ大学関係 の方々30%、公的機関関係の方々20%、企業の方々 40%です。2003年の9月からは英語版のメールマガ ジンも隔週で配信を開始しました。2005年末現在60 号に至り、2000を超える登録者に配信されており、 海外のナノテク関連のホームページに引用されるな ど注目されています。また、過去配信した記事につ いてはホームページのバックナンバー欄に収録する とともに、このメールマガジンは数号を冊子体 (JNNB)にまとめて刊行しております。3. 3研究開発等動向調査及び連携の推進ナノテクノロジー研究推進においては各国施策、 技術動向や研究拠点の動向を把握して、研究を推進 する側や研究者への的確な情報を提供することが重 要です。NNI全体会議(米)、ナノマテリアル国際会議 (独)等に参加し、米欧の研究・施策動向について 調査を行いました。アジアについてもタイ、韓国、 中国、台湾の国際会議等に出席し、アジア・オセア ニアの研究・施策動向の調査を行うとともに、日本 のナノテク政策に関する講演も行い、アジアのナノ テクネットワークに加わりました。またナノテクノ ロジーの社会的影響に関して米欧亜の7つの国際会 議出席、3つの研究機関の訪問により、海外の取り 組みを調査するとともに、米欧亜の安全衛生担当政 府機関、人文社会科学研究機関と日本の関係者のヒ ューマンネットワーク形成を支援しています。一方、ナノテクノロジー分野における技術動向に ついては、ナノテク技術動向調査などのナノテク全 般に亘る動向調査を行うとともに、ナノ ・バイオ技 術動向調査、ナノテクノロジー分野における科学技 術シミュレーション動向調査及びナノ材料の人体・ 環境影響に関する文献調査、外部講師を招いての勉 強会等を行ったほか、最新の公開特許(日本、米国、 欧州、世界特許機構の4カ所の特許機関)からナノ テクノロジー関連特許を抽出し、毎月、全リスト及 び分野別出願動向などの調査結果をホームページで  公開しています。さらに、国内外のナノテクノロジーの政策動向及 び研究拠点の現状を把握するために「世界ナノテク ノロジー研究拠点・施策動向調査」を行い、ナノテ ク研究拠点検索システム(ナノテクマップ)として の第一段階を完成し、ホームページで公開していま す。3. 4研究者交流の場提供としてのシンポジウ ム・ワークショップ開催分野融合を特徴とするナノテクノロジー研究で は、広い領域にわたる研究者の交流を欠くことがで きません。そのため、当センターでは2003年2月、 我が国における中長期的なナノテクノロジー研究開 発の現状を紹介する第1回ナノテクノロジー総合シ ンポジウムを参加者千名規模で開催しました。2004 年3月には、ナノテク・ウィークとして国際ナノテ クノ ロジー総合展(nano tech 2004)とジョイントし、 第2回ナノテクノロジー総合シンポジウムを開催 し、産・学・官で行われている広範で多様な研究開 発の紹介を集中的に行い、効果的な学術・技術交流、 情報交換の場を提供しました。また、第2回では、 ナノテクノロジー主要分野のキーパーソンによるナ ノテクノロジー研究開発の最前線を紹介して頂くと ともに、ナノテクノロジーの将来を担う若手研究者 に最新の研究成果を発表いただき、ナノテクノロジ ーの萌芽的研究から現在主軸の研究開発までを紹介 しました。2005年2月には国際的な研究者交流の場 としての第3回ナノテクノロジー総合シンポジウム を国際会議として開催し、2006年2月には第4回目 http://www.nanonet.go.jp%25ef%25bc%2589%25e3%2581%25af%25e3%2580%2581%25e5%259b%25b3%25e3%2581%25ab%25e7%25a4%25ba%25e3%2581%2599%25e5%2586%2585%25e5%25ae%25b9%25e3%2581%25a7%25e6%25a7%258b%25e6%2588%2590をやはり国際会議として準備を進めています。一方、国内で開催する研究会合を対象として、研 究会合企画の公募を実施し、国内の研究者が自主的 に企画した研究会合について、費用面を中心に開催 支援を実施し、研究・開発の促進及び交流の活性化 を図っています。また、2005年度は海外から講演者 を招聘する事業としての公募を実施し、16件の研究 会合における一部の海外から講演者を招聘し、国際 的な研究交流の活性化を図っています。国際的な研究者の交流としては、全米科学財団 (NSF)を始めとして英国、スウェーデン、フラン スおよびアジアとの間で、図に示すように研究者の 交流も活発に行っています。3. 5 人材育成ナノテク研究分野において、国際的なリーダーシ ップを発揮して持続的な国際協力関係を構築可能な 人材を育成する事が重要です。そのため、若手研究 者を日米、日英及び日スウェーデン科学技術協力協 定に基づき、相手国の先端研究機関に滞在ないしは 訪問する若手研究者国際交流を実施しています。 2003年度は26名、2004年度は21名および2005年度は 23名の博士研究員、助手及び若手助教授クラスの研 究者が派遣(予定)されています。当センターでは、2003年12月に人材育成事業とし て、「分野横断スクール」をスタートしました。第 1回および2005年1月開催第2回のナノバイオスク ールでは、ITの研究者等にバイオや医学等の異なる 分野の知識を深めてもらう事を目的としました。 2005年度も同様なスクールを開催する予定です。また、2005年度の人材育成事業における新たな取 り組みとして、次世代の研究者を育成する「ナノテ クノ ロジーサマースクール」をスタートしました。 2005年度は「量子効果素子の物理」について富士吉 田市で13日間開催し、選ばれた33名の物理・化学系 の大学院の修士および博士課程の学生が参加し、好 評を得ています。3. 6普及啓発ナノテクノロジーについて国民に分かりやすく解 説し、理解を得ることも重要です。そのため、アニ メやコンピューターグラフィックスによる映像ナー ノの冒険「バイオ編」、「IT編」および「環境・エネ ルギー編」を制作し、2003年度からつくばエキスポ センター、科学技術館(東京北の丸)、スバルホー ル(大阪)において常設展示するとともに、全国の 科学館を巡回して展示しております。また、世界最大のナノテクの展示会である国際ナ ノテクノロジー総合展(nano tech)をはじめとした 各種展示会や国内外の講演会等を通じて総合支援プ ロジェクトの紹介を行ってきました。3. 7施設共用業務の支援共用施設の外部利用に関する総合窓口として、利 用者からの問合せ及び適切な利用機関の紹介も行っ ております。また、共用施設の成果事例をはじめと した活動状況や利用方法等をホームページにおいて 常時紹介するとともに、展示会等においてもパネル や映像等を用いて詳細に紹介することにより、共用 施設の外部利用の一層の促進を図ってきておりま す。また、共用施設が行った高度技術者養成スクール 「超高圧電子顕微鏡スクール」及び「極微細加工・ 造形高度技術者育成スクール」について、ホームペ ージ及びメールマガジンにおいて紹介してきており ます。14若手国際研究拠点= $101 Hb [a] Sie Hs BR ee科学技術振興調整費・戦略的研究拠点育成プログラム「若手国際研究拠点」板東義雄、若手国際研究拠点センター長1.はじめにNIMSは国際的に大きく開かれ、世界中から優秀 な若手研究者が集い、新たな融合研究が続々と生み 出される、物質・材料分野において世界トップの Center of Excellenceを目指しており、この為の大胆な 研究運営システムの改革を必要としています。「若手国際研究拠点(International Center for Young Scientists, ICYS)」は、岸輝雄理事長を総括責 任者とした5ヶ年計画のプロジェクトで、文部科学 省科学技術振興調整費の支援の下、その研究運営シ ステムの改革に取り組むべく、平成15年度の戦略的 研究拠点育成プログラム(Super-COE)課題として 採択されました。これを受けて、平成15年6月には 準備室を設置、同9月には正式に若手国際研究拠点 が発足いたしました。ICYSは、世界各国から独創性に富んだ若手研究者 が一堂に会して、国籍や言葉の違いを超えて、自分 の研究アイディアで自立的に研究に没頭できる魅力 的な環境を構築することにより、それらの若手研究 者がその能力を最大限に発揮して、異分野や異文化 の融合による画期的な研究成果を生み出すことを目 的としています。このような研究環境は、世界でも 他に類のない特色のあるものです。ICYSは、その運営によって以下の目標の実現と NIMS本体への波及を目指しています。1.戦略的融合研究分野の推進多国籍・異分野の優秀な若手研究者集団の構築 と自立的な融合研究により、新しい研究の芽を発 掘し、NIMS本体に新研究分野として移植する。2.若手研究者の人材確保と育成優秀な若手外国人研究者を確保する。また、自 立的研究・基礎研究能力の研鑽制度の確立などに より、NIMS及び国内外の若手研究者との交流を 通じて国内研究者の研究能力を国際レベルにまで 育成する。3.国際ネットワークの構築NIMSの国際的な研究協力や情報交換の為、国 際的なネットワークを構築する。4.国際的な研究支援環境の整備外国人研究者に対する英語によるサポート体制」 を確立するとともに、研究・事務全般の英語対応 能力を高めるなど、真の国際研究機関にふさわし い研究支援環境を整備する。ICYSの研究運営は、NIMS本体の活性化・システ ム改革につながるものでなければならず、さらには 日本の公的研究機関の改革モデルとなることを求め られています。若手研究者が個人のアイディアで自 立的に研究を遂行できるような研究制度、英語を公 用語とした運営など、ICYSの研究・事務制度とその 成果を逐一検証しながら、効果的な制度は随時NIMS本体に移植し、NIMSの国際化と人材の充実に 寄与しています。表1ICYSのミッションステートメント中間評価対象課題(3年 目)終了時(5年目)融合研究 ― -NIMS本体において 数研究テーマ立上げ若手人材✓10ヵ国30名の若手確保✓ ICYSからNIMSへの 採用(数名)✓優れた領域アドバイザー の確保(15名)-ICYSからNIMSへの 採用(10名)-外国人ディレクター の登用(数名)国際 ネットワーク✓提携機関の拡大 (8機関)-提携機関の拡大と強 固なネットワーク形成 (15機関)国際的研究支援環境✓ICYSにおいて事務支援 を英語で実施✓ ICYS研究者の評価シス テムの構築-NIMSのバイリンガル 化の推進システム改革 -ICYSで実施したシステムをNIMS本体に移植✓達成済みの項目発足から3年目を迎え、ICYSは平成17年11月に文 部科学省の中間評価を受けました。世界から優秀な 若手研究者を計画通り確保し、彼らをサポートする 研究支援・事務支援体制も整うなど、3年目におけ るミッションステートメントを全て達成し(表1)、 順調な活動を行っていることが評価され、本プロジ ェクトは平成19年度までの継続が決まっています。ICYSで育った若手研究者が、NIMS本体の研究者 として、あるいは国内外の有力研究機関の研究者と して、世界各国で活躍することを願っています。2.ICYSの特色ICYSの特色は以下のように集約されます。“International”世界の優秀な若手研究者の確保と育成英語を公用語としたグローバルな研究運営“Interdisciplinary”異分野の研究者集団による融合研究の促進“Independent”若手研究者の自立的な研究の保障“Innovative”若手研究者の独創的な研究アイディアの育成 NIMS本体の新しい研究分野の立ち上げこの特色の源となっているのが、ICYSが構築する 多国籍若手研究集団です。民族・文化・研究分野の 異なる優秀な若手研究者が、世界各国からICYSとい う1つの空間に密に集うことにより、メンタリティ のぶつかりが生じ、そこから分野を超えた斬新な研 究が生まれることが期待されます。このようなICYSの環境を我々は「melting pot (るつぼ)」と呼び、若 手研究者の育成に非常に重要であると考えています (図1)。世界の優秀な若手研究者が日本に集結するよう な、魅力ある卓越した研究拠点を創出するために、 国際的に通用する新しい研究運営システムを導入 し、NIMS本体、さらには日本の他の研究機関にそ れらを波及させていくことが本プログラムの狙いで す。図1 “melting pot”の概要3.組織と人員構成3.1若手研究者ICYSでは「博士号取得後10年以内の研究者」を若 手研究者としています。世界各国から選考の結果採 用された研究者の他、NIMS本体で新規採用された 若手も1年間ICYSに在籍し、研究活動を行っていま す。以下にそれぞれについて紹介します。1)ICYS研究員(ICYS Research Fellow)ICYS研究員は、NIMS内でも独自の就業規則の 下で、研究予算および個室オフィス、実験スペー スが与えられ、恵まれた研究環境で自らのアイデ ィアにより研究を行っています。ICYS研究員は長期研究員と短期招聘研究員の2 種類に大別されます。長期研究員は、原則として1年以上の研究活動 を行う研究員で、研究実績をもとに1年ごとに契 約が更新されます。平成17年12月までに、21ヵ国 から38名が着任しました。短期招聘研究員は、海外の大学や研究機関に籍 を有する優秀な若手研究者が、最大3ヶ月程度 ICYSに滞在して研究活動を行う制度です。平成17 年12月までに6ヵ国7名の優秀な若手研究者が短 期招聘研究員としてICYSに滞在しました。2) NIMS新規採用若手研究員NIMSで新規採用された若手研究員は原則1年 間ICYSに在籍します。多様な国籍・文化・分野の 研究者が集まる環境下での研究活動を通じて、若 手研究員の国際的視野、自立性、コミュニケーシ ョンスキルの向上を図り、将来の若手研究リーダ ーを育成します。平成16年度には16名、平成17年 度には12月現在までに11名の若手研究員がICYSに 入ってきました。また、すでにICYS在籍を終了し、NIMS本体の 研究グループに配属された12名の研究員は、ICYS での経験を生かし、それぞれの部署で活発に研究 活動を行っています。3. 2運営・支援体制ICYSでは、日本語が使えなくても自立して支障な く研究活動を実施出来るような環境を整備するため に、支援スタッフを配置しています。また、外部有 識者を交えICYSの運営方針について議論する運営委 員会、外国人有識者を交えICYSの運営に関して評価 と助言を行う評価委員会が設置されています。図2および表2に組織の概要を示します。図2若手国際研究拠点の組織概要1)センター長組織運営総括責任者(理事長)の指揮監督の下、 ICYSを運営していく責任者です。2)運営委員会(Steering Board)ICYSの運営や、関連する重要事項を討論する委 員会です。理事長を委員長として、NIMSの幹部 職員(ユニット長等)とNIMS外部の委員計10名 によって構成されています。3)評価委員会(Evaluation Committee)ICYSの運営や研究について評価と助言を行う委 員会で、国内外の著名研究者9名によって構成さ れています。4)エグゼクティブアドバイザー(Executive Advisor)ICYSの運営やNIMS本体との関係等に関する理 事長およびセンター長への助言や、ICYSの若手研 究員への研究上のアドバイスを行う役割を担って います。ノーベル化学賞受賞者のSir Kroto他、国 内外の著名研究者4名をエグゼクティブアドバイ ザーに任命しています。5)領域アドバイザー (Scientific Advisor)若手研究者に対して、研究に関する助言や、装 置の使用など実験上の協力を行う役割を担ってい ます(ホスト研究者・メンター)。平成17年12月 現在、NIMSの研究者27名の他、外部からも3名 の研究者を領域アドバイザーに任命しています。6)支援スタッフ若手研究者の研究面、事務処理面、さらには生活面でのサポートを行う支援スタッフが配置され ています。スタッフは全員英語を話すことができ、 日本語に堪能でない外国人研究員も支障なく研究 活動を行うことができます。・テクニカルサポートスタッフ(TSS)共通実験設備の保守管理や使用方法の指導、装 置の購入支援、実験室の安全管理、特許出願支援 などの研究面でのサポートを行います。・事務スタッフICYS研究員の着任手続きや着任後のオリエンテ ーション、物品購入、提出物・規則等の英文化と いった事務処理の支援、カウンセリングサービス の設置や日本語教室の開講などの生活面でのサポ ートを行います。表2 ICYSの人員構成ICYS Research Fellow 45†*NIMS新規採用研究員 15**エグゼクティブアドバイザー 4客員アドバイザー 16†領域アドバイザー 30運営委員会 10評価委員会 9† ICYS設立から平成17年12月までの総数*短期招聘7名含む、長期11名は他機関へ**平成17年12月現在の在籍数4.研究活動ICYSでは、今後NIMSが重点的に推進していくベ き、下記の3つの融合研究領域を定めており、ICYS 研究員はこの3領域のいずれかの研究を行っていま す。領域1 ナノエレクトロニクス・ナノバイオナノテクノロジーとバイオテクノロジーの融合 領域では、生命科学と材料科学をナノメーターレ ベルで統合することにより、新規生体材料や医療 診断技術、新しい論理回路構成への展開を目指し ています。そのためのナノバイオ構造制御や分子 構造の生成、計測技術、マイクロリアクターなど の基礎研究を推進しています。領域2ナノスケール物質・新計測・計算材料科学これまで知られていない新奇なナノスケール物 質を探求することを目指し、新しいナノワイヤー、 ナノシート、ナノチューブ、ナノ ロッド等の作成 技術や制御技術の研究、およびデバイス用のナノ 構造の作成技術の研究を推進しています。また、 ナノスケールの物質構造や反応に関する理論的な 計算による解析も進めています。領域3 金属・セラミックス・ポリマーおよびそれ らの複合材料各種素材の組み合わせによるシナジー効果の実現を目的として、有機高分子材料と無機材料によ る複合材料や新しい超分子構造や新機能物質の合 成等に関する研究を推進しています。また光によ る改質、超伝導薄膜、メゾポーラス材料、 multiferroic材料、オプトエレクトロニクス材料な ど多彩な新規物質の探索研究を推進しています。 ICYSの若手研究者から、ナノエレクトロニクスや ナノバイオなど新研究領域において、着実に成果が 得られています(表3)。また、独立して研究活動を進められるようにした ことで、NIMS本体や国内外の研究者との共同研究 も期待以上に進んでいます。表3 ICYSの研究成果論文数 平均IF特許出願 件数200426名在籍24 3.8 62005*31名在籍112 3.6 12*平成17年10月31日現在5.プロジェクト運営5.1 優秀な若手研究者の確保ICYSの目標を達成する上で、多くの国々から多数 の若手研究者を確保することが必要不可欠です。そ のために次の二つの方法で採用活動を行い、幅広く 若い才能を確保することに努めました。1)NIMSとの提携機関等を通じた人材確保NIMSの提携機関からの推薦、あるいはそれら の機関の研究者を対象としたリクルート活動によ って、若手研究者の確保に努めました。2)公募による人材確保ICYSの公式ウェブサイトにおいて若手研究者の 公募を行うと同時に、Nature, Science等の有力科 学雑誌へのリクルート広告の掲載を行いました。 このような積極的な採用活動によって、平成17年 12月までに世界61ヵ国から811名の応募がありまし た。応募書類や面接選考は、日本人の応募者も含め て、すべて英語です。応募者には、履歴書や業績リストの他に、ICYSで 行いたい研究計画を提出させます。これらの提出書 類を基に、研究計画の内容、特に創造性やオリジナ リティを重視しながら書類選考を行い、面接対象者 を選びます。面接選考では、選考委員会(センター 長、副センター長、書類選考を依頼したNIMS研究 者2名他で構成される)において、これまでの研究 業績およびICYSでの研究計画についてのプレゼンテ ーション、選考委員による質疑応答が行われます。 合格者には契約書の提示、着任までの手続きの説明 などを行い、合格者とセンター長が合意した時点で 契約書に署名し、採用及び着任の事務手続きが始ま図3応募者・採用者の統計ります。以上は長期研究員の採用手順です。短期招聘研究 員は書類選考が中心となり、必要な場合のみ面接を 行います。これまでの応募者および採用者の統計を図3に示 します。平成17年12月1日現在、短期招聘研究員を 含め、23ヵ国から45名を採用しました(表4)。表4 ICYSにおける採用実績募集 応募者数 採用数2003 1st 282 142nd 134 93rd 112 42004 179 132005 104 5*Total 811 45*平成17年12月1日現在応募書類および採用面接を英語にするというICYS の方式は、平成16年度からNIMS本体にも導入され、 この結果、海外からのNIMSへの応募が大幅に増え ました。また平成17年度には、ICYSからNIMS正職員への採用内定もあり、機構の外国人職員は増加し てきています。5. 2若手研究者の育成ICYSでは、より研究が進展し、研究能力の向上が 図られるよう、下記の仕組みを導入しました。・領域アドバイザーの設置(メンター制度の導入)・センター長との個別面談(Quarterly Meeting)・エグゼクティブアドバイザーとの個別面談・コーヒーブレイク(毎日)・ ICYSセミナーの開催(毎週、図4)・ ICYSワークショップの開催(年1回、図5)図4 ICYSセミナー(毎週開催)図5 第1回ICYSワークショップ (平成17年3月)また平成17年11月から、育成における新しい試み として「NIMS/ICYSスクール」を開講しました。 NIMS全体の若手研究者、ポスドク、連携大学院生 を対象に、内外の一流研究者を講師として招聘し、 基礎から最先端の研究内容までを包括的に学べる機 会を提供します。この講義も英語で行います。なお、平成17年12月15日までに、6名のICYS研究 員が海外のテニュアポジションを得ました。キャリ アディベロップメントも、ICYSの重要な機能のひと つです。なお、彼らICYSの「卒業生」には、NIMS との連携などの国際ネットワークづくりで、今後も 活躍してもらう予定です。5. 3 国際ネットワークの構築ICYS研究員の採用活動や、客員アドバイザーの招 聘など、ICYSの活動はNIMSの国際的ネットワーク の構築においても重要な役割を担っています。国際 室と密接に連携しながら、ICYSはNIMSの国際連携 の推進に努めています。これまで、提携機関からの ICYS研究員招聘や若手研究者対象のサマースクール およびワークショップ等への協力を行ってきていま す。NIMSが姉妹機関等の提携関係を有する海外の有 力研究機関の若手常勤職員をICYS研究員として半年 から1年間招聘し、両機関の協力関係をより強固に する枠組みも構築しました。現在までに中国科学院 物理研究所から2名、同金属研究所から1名の若手 研究員がICYS研究員として滞在し研究を行いまし た。平成17年度には韓国科学技術院、ポーランド科 学アカデミー、ハンガリー科学技術院、台湾中央研 究院の各機関との間で同様の枠組みを構築し、若手 研究者を採用しています。このような、ICYSと国際室の協力や努力により、 平成17年12月現在、NIMSは世界の80以上の有力な 研究機関との間で提携関係を結ぶに至っています。 また、NIMS本体での国際連携大学院、国際連携助 成制度、外国人招聘制度などの枠組み構築にもICYS の成果が活かされています。5. 4国際的な研究環境世界の優秀な若手研究者が、日本で成果を上げ、る ためには、言葉と制度のバリアを除去し、研究活動 に没頭できる環境の構築が欠かせません。1)研究活動に対する支援ICYSには、英語が話せるテクニカルサポートス タッフ(TSS)が配置されており、ICYS研究員の 研究上の様々な要望に対する支援を行っていま す。スタッフの半数はNIMSのOB研究者で、彼ら の持つ研究知識やNIMS内の人脈が、ICYS研究員 の研究遂行には大きな支えとなっています。共通設備の整備、保守・管理、マニュアルの英 文化、英語でのオリエンテーションなどにより利 便性を高めています。あるいは、研究を進める上 で必要な装置を、スタッフの知識・人脈を利用し てNIMSの他のユニットから探し、利用に関する 交渉を行います。また、危険物・毒劇物の管理、 装置・機器・消耗品等の購入の補助も行っていま す。もうひとつ重要なのが特許出願の支援です。企 業における特許出願業務の経験の長い専門スタッ フを配置し、ICYS研究員の特許の相談と、発明届 の作成などの支援を行っています。ICYS研究員は、 特許に関する相談や申請書類の作成依頼を日本語 でも英語でも行うことができます。2)事務手続き等に対する支援英語に堪能な事務スタッフを配置するととも に、提出書類、規則等の英文化、研究活動に必要 な手続き等をまとめたガイドブックの作成など、 外国人研究者が支障なく研究活動が可能な英語を 共通語とする環境作りを進めました。これまでに・ ICYS研究員の着任手続きのマニュアル化・バイリンガルのガイドブック作成・英語でのオリエンテーションの開催・各種提出書類の英文化・各種規則・情報の英文化などを行ってきています。ICYS内部においては、英語で多くのことが処理 できる環境が整備されていますが、NIMS本体や 外部とのやりとりにおいては日本語が必要な状況 があります。住居の問題、公共料金の支払に始ま り、様々なトラブルや疑問への対応など、英語の 堪能なスタッフが手助けを行っています。また、イントラネット上や、回覧文書として流 れてくる各種の情報の内、ICYS研究員に必要な情 報を英訳して日常的に配信しています。こうした 努力によって、外国人研究者が公平な環境で研究 活動が行えるような体制作りを目指しています。ICYSの活動に合わせNIMS本体でも以下のよう な外国人研究者向けの環境作りが始まりました。・ NIMSにおける各種書式のバイリンガル化・構内放送のバイリンガル化・機構内ウェブサイトの全面的バイリンガル化このように、ICYSにおける国際化に対する取組みを、今後も積極的にNIMS本体に波及させてい くことが求められています。3)生活面での支援上述のICYS研究員ガイドブックには、出入国に 関する情報や、銀行口座の開設、電気・ガス等の 利用申し込みなど、生活の立ち上げに関する情報 も掲載されています。その他、日本語や日本文化 を知るための教室も開設しました。国外から初めて日本に着任した研究員は(特に 来日当初は)いろいろな疑問や不安を持つことが あります。そこで、元無機材質研究所長の木村茂 行氏によるカウンセリングサービスを設置し、研 究活動に限らず日本での生活一般も含めた相談を 受け付けています。これまでに約20名のICYS研究 員が利用しています。5. 5広報ICYSではその取組みについて、広報誌やウェブサ イト等で積極的に情報発信を行い、NIMSだけでな く、日本全体の研究機関の国際化に貢献したいと考 えています。1)広報誌の出版ICYSでは年3回、広報誌“melting pot”(日本 語版、英語版)を発行しています(図6)。活動 の成果やトピックスの紹介だけではなく、国際化 と人材育成に関する著名人の意見、国内外の研究 機関の具体的な取組みについても取材・発信して います。(日本語版) (英語版)図 6 “melting pot”2)ウェブサイトの開設ICYSでは準備室発足後の平成15年7月に公式ウ ェブサイトを開設しました。当初は研究員のリク ルートが主目的であり、ICYSの理念や採用条件、 応募方法などが中心でしたが、平成17年3月には ICYSの取組みについての発信を主目的に改訂され ました。今後はICYS研究員の研究成果や、国際化 の取組みの状況など、さらに内容の充実を図って いきます。3)シンポジウム・ワークショップ開催平成16年6月1日に第1回(東京)、平成17年 12月1日に第2回(つくば)の若手国際研究拠点 シンポジウムを開催しました(図7)。いずれも200名近い参加者を集め、日本の国際化と若手人 材育成について興味深い講演が行われ、好評を得 ました。平成17年度は、4月にペンシルバニア大学と、 12月にはノースカロライナ大学とのワークショッ プを共催しました。また、年に1度ICYSの全研究 員が研修施設に泊まり込み、各々の1年間の研究 成果について発表し、討論を行います。第1回の ICYSワークショップは、平成17年3月2日～4日 に静岡県三島市の東レ総合研修センターで開催し ました。第2回は、UCSBの国際研究拠点ICMRと の共催で、さらに規模を拡大して“International Advanced Materials Forum (IAMF) for Young Scientists”と銘打ち、平成18年2月27日～3月1 日に行われます。図7 第2回ICYSシンポジウム (平成17年12月)4)プレス記事への掲載・ Daily Yomiuri On-Line, 2004.4.16“ICYS a shot in the arm for nation's researchers” ICYSにおけるユニークな国際化実験が紹介さ れました。・ Nature, 2004.5.14“A bridge to the rest of the world”ICYS短期リサーチフェロー体験者が、研究の 活性化にとって多国籍研究者集団の構築がい かに有効であるかについて解説してくれまし た(図8)。図8 NatureのICYS紹介記事・朝日新聞、2005.9.6「新科論」スタッフの英語によるサポートをはじめとする国 際的研究環境が、外国人研究者にとっていかに魅 力的であるかが紹介されました。5. 6運営委員会および評価委員会ICYSが国際的に魅力ある研究拠点となるために、 運営について討議する運営委員会、運営状況や研究 活動について評価する評価委員会の存在は非常に重 要です。いずれの委員会も平成16年に第1回、17年 に第2回会合を開催しました。特に評価委員会については、第1回評価委員会 (平成16年9月)の結果に対して、アクション・プ ランをとりまとめ、今後のICYSの運営の指針とする こととしました。また平成17年1月には「ICYSの取 組み」として活動方針をとりまとめました。第2回 評価委員会(平成17年8月)ではこうした取組みが 高く評価され、評価内容は文部科学省の中間評価に 向けて、自己評価報告書としてまとめられました。6.今後の展開ICYSでの活動をNIMS全体のより永続的な活動に 定着させていくため、今後NIMS本体とも密接に連 携しながら、以下のような方針で研究運営を進めて いきます。(1)戦略的融合研究分野の推進ICYSでの萌芽研究の推進を強化すると共に、そ こで得られた新たな研究成果をNIMS本体の研究 テーマとして取り込む組織的施策を行います。(2)優秀な若手研究者の人材確保と育成優秀な若手外国人はNIMS全体ではまだまだ不 足しています。外国人比率をNIMS全体で10%程 度にまで引き上げることが期待されています。こ の点でも、ICYSの機能をNIMS本体に組み込むよ うな組織改革が必要です。(3)国際ネットワークの構築国際提携機関は数の上では大変増えましたが、 これらの提携を効果的に利用し、人的交流あるい は研究交流を深め、優れた成果を出していくこと は今後の運営上の大きな課題です。海外拠点づくりやリエゾンパーソンの配置によ って、国際ネットワークをさらに強化していきま す。そこでは“ICYS Alumni Society”も役立てて いく予定です。(4)国際的な研究支援環境の整備ICYSの経験を生かして、申請書等の事務書類や メールシステム等のネットワーク環境といった部 分もNIMS本体でバイリンガル化が進められてい ます。今後も機構として組織的なバイリンガル化 をさらに推進します。特に、各サイトの業務室を 国際化することが急務ですまた、優秀な外国人研究者をNIMS職員に採用 するために、年俸制の導入の検討が必要になるでしょう。このためNIMSは、ICYSの機能を組み込んだ新し い組織として、国際萌芽研究拠点と国際室を設置し ます。前者は平成18年4月に始動予定で、後者は平 成17年10月から活動しています。国際萌芽研究拠点は、現在のICYSの研究活動に加 えて、NIMS内の物質・材料研究において重要な萌 芽研究を一元的に運営し、NIMSの次代のプロジェ クト研究に繋げてゆく役割を担います。ICYSは、日本はもとより、世界的に見ても従来な かった画期的な研究システムの改革に挑戦していま す。その改革は理事長の強力なリーダーシップのも とスピーディーに進行・達成されており、評価委員 会や文部科学省からも高く評価されています。これ らの改革への取組みは、NIMSだけにとどまらず、 組織の国際化に対する日本のモデルとなるもので、 その成功は我が国にとっても極めて重要であると考 えています。15物質・材料工学専攻物質・材料工学専攻の活動を振り返って平野敏幸、宝野和博、桜井健次、宇治進也(以上金属系先進材料分野)、板東義雄、北島正弘、井上悟、大野隆央、佐々木高義、 Dmitri V.Golberg、石岡邦江(以上無機系先進材料分野)、関口隆史(平成17年度専攻長)、迫田和彰(同学務委員)、岸本直樹 (平成16年度専攻長)、三木一司、中山知信、武田良彦、陳国平(以上ナノ ・生体系先進材料分野)、松本信介、掛札孝子(事務 局)1.物質・材料工学専攻の設立目的物質・材料工学専攻は、「筑波大学大学院数理物 質科学研究科物質・材料工学専攻」として、国立大 学法人筑波大学との連係協力協定の下、平成16年4 月に設立されました。独立行政法人の研究機関であ る機構と筑波大学が協力して新しい形の教育に着手 することは、つくば学園都市の歴史、両機関の歴史 的背景、あるいは連携大学院としての助走期間を経 て実現したものです。「独立連係専攻」と命名される新しい制度として 本格的に取り組むのは、我が国では本専攻が初めて のケースとなります。独立行政法人研究機関の研究 者が学生の教育研究指導にあたるというところにそ の新規性があります。ここで「独立専攻」というの は、両機関が互いに独立に運営するということでは なく、修士課程から独立した専門性の高い、博士後 期課程の大学院であることを意味します。「連係専 攻」というのは、言うまでもなく、独立行政法人の 研究機関と国立大学が研究と教育について連係して 運営を行うことです。この「連係」という言葉は、 従来型の連携大学院とは異なるという意味で、特に 異なる漢字を用いることとなったものです。このよ うに、本制度を考える際、研究のピークを目指すこ と、及び両機関が連係すること、という2つの側面 を併せ持つことが大切です。本専攻設立の目的は、研究活動と教育の高度な連 係・融合を通じて、物質・材料分野における新産業 の創出並びに基礎及び創造性を育んだ研究型専門職 業人を養成することにあります。これは、同研究分 野において機構の有する高度な研究能力と装置群を 教育に有効利用することにより実現されます。これ により、物質・材料分野の研究のピークを目指す人 材の養成とともに、学生自身が世界水準の研究活動 に活発に貢献することを意図しています。また、筑波大学との連係協力をより強固なものと することで、つくば研究学園都市内の融合連係体制 を促進し、つくば地区の発展に寄与することも、重 要な目的の一つです。2.物質・材料工学専攻の概要科学技術の発展により、国際的産業競争力の強化 と経済社会の持続的成長、環境・エネルギー問題へ の対応及び少子高齢化への対応を通した豊かな国民 生活の実現、国民の安全・安心な生活の確保、安全 保障対応を通じた国の健全な発展等が求められてい ます。材料に関する科学と工学は、全ての産業に関 わる基幹分野であり、既存の大学の枠内での教育研 究に加えて、広範な科学技術分野にまたがる研究機 関と一体になって教育・研究を進めることが、社会 の要請に応えるべき人材を養成するために有効で す。このような背景から、図1に示すように、数理 物質科学研究科物質・材料工学専攻では、物質創成 先端科学専攻、電子・物理工学専攻、物性・分子工 学専攻と連係して、より効果的に物質・材料に関す る教育・研究を進めることとしています。本専攻は、筑波大学大学院数理物質科学研究科の 中に、独立専攻として後期3年間博士課程にのみ設 置されています。これは、機構の研究開発に貢献す ることを通じて、高等研究教育を進めることとして いるためです。本専攻は、3つの研究分野、「金属 図1 物質・材料工学専攻の制度の概要系先進材料分野」、「無機系先進材料分野」及び「ナ ノ ・生体系先進材料分野」によって構成され、それ ぞれ4名、7名、7名の計18名の教員(うち、教授 12名、助教授6名)を配しています。学生受入の定員は、博士後期課程では6名、前期 課程では12名としています。一方、本専攻への進学を希望する学生又は修士号 の取得を希望する学生を対象に、同研究科内に博士 前期課程に対応する「物質・材料工学コース」を設 けています。こちらでも機構において研究指導を受 けることができます。3.物質・材料工学専攻の活動の経緯 (1)平成9年度頃～平成14年度筑波大学では、5年一貫制の工学研究科、あるい は数理物質科学研究科において、連携大学院制度を 積極的に進めて来ました。機構からは毎年数人の連 携教員を出して貢献してきました。平成9年頃から、 筑波大教員と連携教員との間で、毎年のように、連 携教員定員の増加など、拡大版の計画案も検討され ました。つくばの地の利を生かして、国立研究所の 研究基盤と大学の若い頭脳が緊密に連携すれば、研 究の中身において我が国、世界のピークを創り出せ るはずであるという考えでした。しかしながら、平 成14年度までは本格化しませんでした。総論は賛成 でも現実的な各論になると障害が多々あるとの認識 があり、慎重な雰囲気が支配的でした。特に、文部 省と科学技術庁の省庁間の壁は、大きな阻害要因で あったと思われます。平成14年度になると連携強化の動きは一層活発化 し、独立連係専攻の立ち上げに関する問題について、 筑波大学の教員と機構研究者の間で、幾度となく現 場レベルの協議が繰り返されました。一方では、両 者間で明確に競合する問題が露わになり、後ろ向き の雰囲気が漂ったこともありました。(2)平成15年度4月独立連携専攻設立準備委員会設置10月独立連携専攻事務室設置2月平成16年度学生募集入試平成15年度にはついに、機構と筑波大学の執行部 の英断により、独立連係専攻の立ち上げが合意され ました。この決断に至った背景には、両機関幹部の 前向きな姿勢は勿論ですが、一つには、既に両機関が 平成13年から同じ文部科学省に属するようになった こと、あるいは、大学が平成16年度には非公務員型独 法人になることの影響が大きかったと思われます。機構は、平成15年4月には独立連携専攻設立準備 委員会(専攻設立時に解散)を立ち上げました。そ の委員は次期専攻教員候補により構成され、専攻の 目的・使命、制度の骨格が本格的に検討されました。 さらに10月に設置された独立連携専攻事務室(平成 16年10月、当該業務が総合戦略室に移管されたため 廃止)によって、事務的な支援体制が整い、筑波大 学との協議、調整が進められ、本制度が今の形を得 ることとなりました。本専攻制度の立ち上げは、筑波大学の平成16年度 概算要求事項に含まれることから、その予算内示は 平成15年12月頃であり、少なくとも内示があってか らしか学生募集を開始することはできません。通常 は前年の8月に入試がありますが、その時期に入試 を行うことは当然不可能であり、2次募集の時期に 合わせて、2月期試験についても、募集要項作成は 12月以前であることから、2月期に試験を行えるか どうかも危ぶまれていました。一時は、平成16年度 4月以降に入試を行い、開講も4月中という離れ業 が俎上に上りました。また大学設置審等のための書 類作成も同時併行に進められていて、教員には大変 な負担を強いられました。幸か不幸か、大学が法人 化されて規制が緩和されたことから、自由度が増し、 設置審の作業は要らなくなり、また、法人の意志で 早めに試験を行うことが可能になったという側面が ありました。結局、年が明けた2月には、機構の研究者のみに よる初の入学試験を実施し、4名の合格者を出し、 次年度の専攻設立を迎える体制が整いました。新しい制度の一つとしては、NIMSジュニア研究 員制度(図2)も発足させて頂きました。本制度は、 学生が、講義等で指導を受けている日以外で一定の 日数について、機構の非常勤職員となり、その労働 の対価として給料を受けることにより、生活の心配 なく研究に打ち込めるようにする制度です。我が国 では教育を受けている学生が賃金を受け取ることに 対して、賛否両論がありましたが、欧米では半ば当 然として実施されており、機構で実現して頂いたこ とにより、単に生活支援ということでなく、研究に 関する業務を行うことにより、学生に自覚を促すと いう効果も出ています。図2 NIMSジュニア研究員制度のパンフレット(3)平成平年度4月 物質・材料工学専攻設立5月学生募集説明会7月平成16年度学生追加募集入試8月平成17年度学生募集入試2月平成17年度学生追加募集入試平成16年度には、筑波大学との協定締結により本 専攻が正式に発足し、学生への教育研究指導がスタ ートしました。8月の通常入試、2月の2次募集の 入試のほか、平成16年度は特に追加募集を行い、年 3回の入試を実施しました。そのほか、8月期入学 のための入試や、社会人コースの入試もあります。 また、国内の学部学生及び修士学生等を対象に、広 く学生を募集するとともに(図3)、専攻独自の学 生募集説明会を実施し、積極的な広報活動に努めま した。図3 学生募集用ポスターの一例図4学生募集説明会の光景図4は学生募集説明会で学生が教員に相談してい る様子です。この学生募集説明会は、物質・材料工 学分野の研究に興味を持つ学生に対して、実際に機 構とその研究室を開放し、教員との直接のインタビ ューを通して、本専攻と各研究室の研究活動の中身 についてより詳しく知ってもらうことを目的とする もので、予想以上に大きな反響を呼びました。今後 とも継続して実施することとしています。これら大量の入試関連事務や広報活動は、筑波大 から派遣された熟練の事務職員1名と、機構側の事 務職員が中心となって円滑に進められました。(4)平成17年度4月 講義科目「ナノ材料工学特論」開講4月筑波大学新入生見学会6月学生募集説明会8月平成18年度学生募集入試2月平成18年度学生追加募集入試平成17年度は、本専攻の正式な発足から1年が過 ぎ、本制度の充実化と拡大に努めた時期となりまし た。特筆すべきこととしては、まず、専攻教員すな わち機構の研究者のみによる講義科目「ナノ材料工 学特論」を筑波大学キャンパスに開講したことが挙 げられます。この講義科目では、機構の先端研究ト ピックスを交えながら、物質・材料工学の基礎につ いてレクチャーが行われています。また、本講義は 前期課程物質・材料工学コースに設置されています が、後期課程を含めて幅広い学生が受講しています。 (図5)図5ナノ材料工学特論授業風景また、4月には筑波大学の学部新入生120名を、 新入生オリエンテーションの一環として機構に招 き、見学会を開催しました。このように、本専攻で は専攻独自の活動のほか、筑波大学との連係協力の 促進についても力を入れています。さらに、本専攻全体として、学生を指導する体制 を強化すべく、定期的に学生研究発表セミナーを行 うこととし、今までに2回開催しました。これは必 須科目のコロキウムに相当するものであり、学生が研究進捗��状況の発表を行う機会を持つという意義 と、教員側が指導方法について再検討するという意 義を併せ持ったものにしようとしています。4.物質・材料工学専攻の活動の総括(1)学生について本専攻は、この2年間で計12名の学生を受け入れ ています。これは定員数の総数に等しく、筑波大学 の他の研究科、専攻と比べても優れた充足率 (100%)を誇っています。特に、本専攻が設立後間 もない新専攻であることを鑑みると、非常に優秀な 数字であるといえます。また、学生の質という点で も、当専攻の学生は、機構とケンブリッジ大学との 間で開催される「ナノテクサマースクール」にて最 優秀プレゼンテーション賞を受賞するなど、その資 質は十分に評価されています。個々の学生を見ると、能力にばらつきがあること は否めず、また、研究業務との両立など指導上悩み を持つ教員もいますが、現在の教員数18人に対して、 6人の学生定員は少なすぎるという意見が大勢で す。また、本専攻に関わる研究者以外でも、本専攻 の教員となって、学生を指導したいという希望者が 多々います。今後、若年層人口の長期的低減傾向の なかで、学生定員を拡大することは困難な状況です が、現状の定員よりは増やしていく方向に進むこと は妥当であると思われます。粗製濫造にならないよ う、志の高い良い学生を多く集めることが望まれ、 そのための環境整備は今後とも必要になります。(2)教育研究指導について機構は、世界的に特徴のある研究設備を多々整備 し、継続的・組織的に研究開発に取り組んでいます が、反面、研究者の高齢化等によって若く自由な発 想が今後ますます不足するという危惧や、研究設備 が充分には活用されていないという批判もありま す。本専攻の教育研究指導においては、それら先端 研究施設を、学生が自由に使うことができ、贅沢と も言える研究環境を提供することができています。 機構にとっても施設の有効活用のために、学生は今 や不可欠の人材となっています。本専攻では、博士論文作成に向けた本来の研究指 導「特別研究」は勿論のこと、博士前期課程の講義 科目「ナノ材料工学特論Ⅰ-Ⅲ」 の開講に加え、博士 後期課程について学生研究発表セミナーを実施して います。また、本専攻の受入学生の約半数が外国籍 の学生であることから、英語による指導も行ってお り、さらに平成18年度には英語による講義科目の実 施を予定しています。このように、従来の研究指導 のほか、学生のプレゼンテーション能力、英語能力 等の向上を目的としたカリキュラムの充実化に努め ています。(3)運営体制について筑波大学と機構との協定「国立大学法人筑波大学 と独立行政法人物質・材料研究機構の連係協力に関 する協定書(平成16年4月1日)」に基づいた本連 係専攻は、研究と教育の高度な融合、創造性豊かな 優れた研究・開発能力を持つ研究者又は高度専門職 業人を養成することなどを目的として進められて来 ましたが、その運営体制、あるいは教員としての研 究者の位置づけについては、必ずしも明確でないま ま発進してしまいました。平成17年秋に、遅ればせ ながら「連係大学院制度の実施に関する運営方針」 が策定され、その中で「機構が、研究職員が専攻の 運営及び学生の研究教育指導を主体的に行うことを 支援すること」及び専攻業務が尊重されることが認 められました。また、併せて、本専攻の業務を円滑 に推進するために、「連係専攻運営支援委員会」を 設置することが決まりました。これにより、教育活 動が、機構の公式業務の一環であることが認知され、 運営体制が整ったことになります。(4)今後の取り組みについて以上のように、本専攻が設立されてから2年間を 経て、制度としてほぼ定着し、また、学生の受け入 れや教育研究指導についても順調に軌道に乗ってき ているところです。研究と教育の融合というのは世 界の研究機関の趨勢であり、今後は、出願者及び学 生数の増加並びに学生の資質の向上を目指します。 学生には良い研究を行い優れた論文を書かせること が基本ですが、それを支える活動として精力的かつ 継続的な広報活動とカリキュラムの充実等を一層推 し進めたいと思います。本専攻の発展のためには、優秀な学生をより多く 確保すること、教育に対する環境整備、あるいは関 連制度の充実が重要な要因となりますが、それらに も増して重要なのは、研究と教育の二足のわらじを はく研究者自身の、教育・研究に対する情熱及び業 務増大を克服する実行力でしょう。本専攻の教員全 員は、時には悩みつつ、今後一層頑張りますので、 引き続き皆様のご理解とご協力をお願い致します。16データ集収入平成13年度 平成14年度平成15年度 平成16年度平成17年度物質・材料工学専攻※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ特許出願※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ特許登録※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ実施許諾※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ実施料収入※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ業務実施契約※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ知的財産室共同研究※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ連携大学院※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ誌上発表※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ口頭発表※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ研究集会参加※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ講師派遣※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ研究者派遣※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータイベント※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ見学※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ相談対応※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータプレス※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータNIMSフォーラム※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ職員事務職※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ研究職※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ研究職任期付職員※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータエンジニア職※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ大学院生受入※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ研究者受入(非常勤職員特別研究員)※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ研究者受入(非常勤職員若手国際研究拠点)※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ研究者受入(非常勤職員NIMSジュニア)※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ研究者受入(非常勤職員客員研究員)※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ研究者受入(外来研究員)※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ資本金※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ共同利用※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ共同研究※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ事故調査※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ受託事業収入※平成17年度は平成17年10月31日現在のデータ17イベント集eeve NOU2001◄独立行政法人物質・材料研究機構 発足式(平成13年4月2日)◄尾身科学技術政策担当大臣ご視察(平成13年12月13日)2002◄野依良治先生御来訪(平成14年7月24日)◄ NIMSフォーラム2002(平成14年12月4日)2003◄秋篠宮同妃両殿下NIMSお成り(平成15年10月14日)◄サイエンスキャンプ2003(平成15年7月29～31日)2004◄ 一般公開(平成16年4月15日)◄特別企画(平成16年4月18日)2005◄科学フェスティバル出展(平成17年10月8～10日)◄大好きいばらき県民まつり出展 (平成17年11月12～13日)NIMS5年の歩み独立行政法人物質・材料研究機構発行日:2006年2月10日〒305-0047茨城県つくば市千現1-2-1 電話:029-859-2000 FAX : 029-859-2017印刷:東日本印刷株式会社© NIMS 2006