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[雨倉 宏](https://orcid.org/0000-0003-2148-8431)

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[高速重イオン衝突による 固体中に埋め込まれた金属ナノ粒子の楕円化変形（後編）](https://mdr.nims.go.jp/datasets/98582867-88bd-4a8f-b1c7-5c2e2c721382)

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「しょうとつ」第20巻第5号（2023年9月号） 解 説   高速重イオン衝突による 固体中に埋め込まれた金属ナノ粒子の楕円化変形（後編）   雨倉宏   物質・材料研究機構 〒 305-0003 茨城県つくば市桜 3-13 amekura.hiroshi@nims.go.jp 令和 5 年 5 月 30 日原稿受付   前編では，固体中に埋め込まれた金属ナノ粒子が高速重イオン照射により，照射前の球形から楕円形さらにナノロッドに変形する現象について紹介した．ナノ粒子の体積が保存されれば，ある方向（長径方向）にナノ粒子が伸びると，その方向と垂直な（短径）方向には縮むこととなる．短径がこれ以下に縮まらず，楕円化の停止する「最短楕円化短径」の存在が実験から示唆された．そして“変形が起こる／起こらない”の条件が，真空中のナノ粒子モデルや非弾性（電子励起）熱スパイク（i-TS）モデルを用いて，ナノ粒子の融解・気化との関連で議論された．しかし変形の起こる条件は議論されても，変形を誘起する具体的な駆動力については未だ触れていなかった．後編では，これまで紹介した楕円化変形を示した金属ナノ粒子が埋め込まれていた媒質の多くがシリカであったため，まずはナノ粒子を含まないシリカについて高速重イオン照射した場合に誘起される変形現象について紹介する．具体的には，照射誘起密度増加とイオンハンマリング（IH）効果である．金属ナノ粒子の理解の前にシリカの照射挙動について説明する．特に IH効果は一時期，ナノ粒子の楕円化変形の駆動力と考えられたが，我々の分光学的測定から得た楕円化変形のフルエンス依存性とは相容れないため候補から除外される．実験結果はむしろ i-TS 効果と分子動力学（MD）を組み合わせた二温度 MD によるシミュレーション結果と適合する．残された問題であるナノ粒子の変形に伴う原子数非保存，産業応用のために本現象をより低エネルギーのイオン照射で引き起こす取り組みについても言及する．  9．シリカの照射誘起密度化 シリカガラス（非晶質 SiO2，以下シリカと略記）の密度は，作製方法にも多少依存するが，概ね2.20 g/cm3程度である．一方 SiO2 の結晶相の一つである石英の密度は，それより大きく 2.65 g/cm3である．初期の研究では，中性子照射で石英結晶に損傷を堆積させていくと，非晶質化を引き起こし，密度は減少し，最終的には非晶質シリカと同じ密度 2.20 g/cm3 まで減少するだろうと予想されていた．しかし実際にはそれより少し大きい2.26   g/cm3 という値に収束する[1]．反対に，非晶質シリカに照射すると，密度が増加し，先と同じ値の 2.26 g/cm3 に漸近する．つまり結晶，非晶質のどちらから始めても，充分に損傷を蓄積させていくとある一定の密度に近づくようである． これは中性子照射に限らず，非晶質シリカにイオン照射を行っても同様で，密度が上昇して同じ密度 2.26 g/cm3 に漸近する．つまり非晶質シリカでは照射により密度の上昇が起こり，この現象はcompaction，densification，密度増加などと呼ばれている．この現象は高密度電子励起を誘起する高速重イオン照射でも起こり，また核的衝突が支配的な数 10～数 100 keV の重イオン照射や，電子励起が中心でも低密度励起の 1 MeV程度の陽子線等の低い線エネルギー付与（LET）照射でも起こる現象である．さらに核的衝突のみの中性子照射[2]や電子励起主体の～10 keV 程度の電子線[2]，さらにはγ線や深紫外線照射[3]でも誘起される極めて一般的な現象である． 著者は 2 MeV程度の He イオンを用いて，シリカを基板とする試料のラザフォード後方散乱（RBS）を測定したことがある．その時に知ったのであるが，シリカ試料を斜めにして眺めると， Heビームが当たったと思われる径 1 mm程度の領域が原子衝突学会誌しょうとつ 第20巻第5号 (2023) 104 微小に凹んだように見える．これは He イオン照射によるシリカ基板の体積減少（~3% 程度）が起こって，イオン照射領域だけ僅かに凹んでいるようである．シリカの RBS を測定する機会があれば確認していただきたい．変形は小さいので光の斜め反射で見るのがコツである． 高速重イオンを除いた，数 keV～数 MeV域の軽・重イオンによるシリカの密度増加については1980 年代～1990 年代半ばに Devine らによって集中的な研究が行われた．詳細についてはReview 論文[2,4]等を参考いただきたい． ガラスは高温状態から急冷することにより形成されるため，室温の試料でも高温の原子配置が凍結されて残っている．反対に凍結された原子配置から求めた温度はガラスの仮想温度（fictive temperature）と呼ばれ，室温よりだいぶ高い仮想温度で原子配置は凍結されている．イオン照射され密度増加を起こしたシリカの仮想温度を分光学的手法などで評価すると，場合によっては数千度に相当することがある．例えば数 10 keV の重イオン照射でも局所的には数千度の高い温度が一瞬実現され，それが急冷されて高い仮想温度の原子配列が凍結される．このような高い仮想温度が実現できる理由として，イオン照射法は他の手法では達成できないような超高速の急冷が伴う点を強調したい：Toulemonde は国際会議でのチュートリアル講演において，0.1 keV/u程度の低速イオンに対して冷却速度 ~1016 K/s，1 MeV/u程度の高速イオンに対して冷却速度 ~1015 K/s という目安を示している．一方 Nastasi らは ~1012 K/s という目安を示している[5]．冷却速度は材料種や条件に依存すると思われる．Benyagoub らは図 9 に示す計算でシリカに対して冷却速度 3 ´ 1014 K/s かそれ以下という値を用いている[6]．これは Toulemondeの値より低めだが，シリカは熱伝導が低いという事実に符合する．著者も 200 MeV Xe を SiO2 に照射した場合の i-TS計算を行い，Benyagoub と同じ3 ´ 1014  K/s かそれ以下という値を得ている．                           図 9: 分子動力学シミュレーションから得られた非晶質シリカをいくつかの冷却速度で急冷した場合の密度－温度経路．照射前の密度は ρ0 ~ 2.20 g/cm3で，最初の高速重イオン衝突で 5000 K以上まで加熱され，図中の曲線に沿って冷却される．本文中に記述したように冷却は速いことが予想され，密度 ρ1は 2.26 g/cm3に近い値に達する．二回目以降のイオン衝突は ρ1から加熱され，同様に曲線に沿って冷却され ρ1に戻る．そのため，初回のイオン衝突のみ高密度化が起こり，それ以降のイオン衝突では密度は変化しないように見える．（Reproduced with permission from [6]. ©(1998) Elsevier） 原子衝突学会誌しょうとつ 第20巻第5号 (2023) 105 シリカは照射以外にも，高圧と温度を操作することにより密度増加が実現され，例えば文献[7]によればシリカは 25% もの密度増加が可能らしい．一方，照射誘起密度増加は 3% 程度が最大で，フルエンスをさらに増やしてもそれ以上の密度増加は起こらない．これは最初に中性子照射で密度が 2.26 g/cm3 に到達すると飽和すると述べたことと同じである．つまり，圧力・温度で実現される密度化と照射による密度化は必ずしも同じ現象ではないようである． Devine はいろいろなイオン照射条件での結果を検討し，密度増加が核的衝突過程で誘起されている場合は，核的阻止能にフルエンスを乗じた量である付与エネルギー密度が 3 ´ 1023 eV/cm3 程度に達した時に標的の密度増加が飽和することを指摘している[2,4]．1 MeV 程度の軽イオン照射における標的の密度増加は核的過程ではなく電子的過程で起こり，付与エネルギー密度が 2 ´ 1026 eV/cm3 程度に達した場合に標的密度が飽和に至る．つまり電子的過程による標的の密度増加は核的過程に比べ，付与エネルギー密度で 660倍効率が悪くなる．しかしこれは軽イオン照射のような低線エネルギー付与（LET）の場合で，高速重イオン照射のような高 LET の場合は標的の密度増加のプロセスが異なるようである[8]．高速重イオンの場合はイオントラック形成を介して密度増加が起こるようで，トラック内のシリカは 1 個の重イオンの衝突で飽和密度まで達する． なお，核的過程で密度の飽和が起こるエネルギー密度の値は 3 ´ 1023 eV/cm3 であるが，これを1 cm3 に含まれる Si–O 結合の数で割ると，3.4   eV/Si–O という値が得られる．この値は大よそSi–O 間の結合エネルギーに近いため，密度の飽和が起こるまでに SiO2内の結合は一度全て切断され，結合の組み換えが完了し，新しい“相”に変化したと考えることができる． 図 9 は高速重イオン照射を念頭に，Benyagoubらが Vollmayr らの分子動力学の計算結果を基に決定した非晶質シリカを急冷した場合の密度の温度依存性である[6]．通常の方法で作製した非晶質シリカの密度は 2.20 g/cm3程度であり，図中では ρ0 と表記している．イオン衝突により，格子温度が 5000 K を越えるまで一時的に加熱され，極めて大きな冷却速度 3 ́  1014 K/s で急冷されると，図中の曲線に従い，密度 2.26 g/cm3 以上（ρ1）まで密度増加が起こることが分かる．（同じ文献[6]の中では 360 MeV Xe イオン照射によりイオン飛程中心から半径 2 nm の範囲が格子温度 5000 K 以上になることが示されており矛盾しない．） 一度 ρ1 に密度増加した領域がイオン衝突で5000 K以上まで加熱されても，同じ冷却速度で急冷され曲線に従って同じ密度 ρ1 に戻る．つまり一度密度増加した部分に対して，さらにもう一度イオンが衝突しても，急激な加熱は起こるが，冷却条件が同じため，同じ密度 ρ1 に戻り，あたかも密度がそれ以上変化しないように観測される．  10．イオンハンマリング効果 イオンハンマリング（IH）効果は高速重イオン照射によりシリカに誘起されるもう一つの変形現象である．前節で取り上げた照射誘起密度化は，高速重イオン（電子的過程が主体）に限らず，核的過程が主体な低エネルギーイオン照射，イオン以外の中性子線，電子線，γ線照射でも観測される一般性のある現象であり，照射による瞬間的な数千度の高温状態の発生と急冷による高温での原子配置の凍結に起因する． IH 効果は非晶質材で観測され，高速重イオン照射でのみ誘起される現象である．材料に固有の電子的阻止能の値の閾値が存在し，その閾値以下ではほぼ起こらないと考えられている．シリカの場合は，閾値 Se = 2 ± 0.5 keV/nm という値（試料温度 100 K）が報告されている[9]．例外ではあるが，その閾値以下でも IH効果による変形が起こるという報告もある[10]． IH 効果の観測例を図 10 に示す[11]．図は金属ガラス Co75Si15B10 の板状試料への高速重イオン照射前後の光学顕微鏡像である．図 10（上）は未照射試料，（下）は試料の下側半分のみを試料面に垂直に照射したものである．照射部分があたかもハンマーで叩かれたかのようにビームと垂直方向に伸びて広がっている． 簡単のためにビームが試料を突き抜ける条件で説明すると，IH 効果はビームと平行方向（z 方向）の試料の厚さは薄くなり，その分ビームと垂直方向（x，y 方向）に伸びる．そのため，図 10 でDl と原子衝突学会誌しょうとつ 第20巻第5号 (2023) 106 Db が生じている．厚さ方向の変化は図からはわからないが，厚さ方向には薄くなっており，体積保存を満たす．  大雑把に言えば，この現象は非晶質材でのみ起こるとされている．なお，試料温度が低温で行われている理由は， IH 効果による変形は照射時の温度が上がると小さくなることが知られており，金属ガラスではこの影響が顕著になるためである．シリカでは試料温度が 300 K でも IH 効果による明確な変形を示すが，低温の方が変形は大きい． 図 11 に IH 効果の例をもう一つ示す[12]．図中の試料は湿式化学法で作製されたシリカのマイクロ球である．図のスケールバーからシリカ球のサイズは 1 µm程度である．図 11 の左側は未照射のシリカ球であり，整った球形を示す．このシリカ球に 45° 方向からイオン照射を行うと IH 効果が起こり，ビームと平行方向が縮み，垂直方向に伸びる．つまり，図 11 右に示すように，パンケーキ型回転楕円体（主軸 a，b，c が a < b = c の関係を満たす）に変形する． なお，ビームが 45°入射に対して，楕円体と基板面のなす角が 31° とずれている．実は IH 効果ではビームを垂直方向以外で照射すると，ハンマー変形以外に回転変形も誘起する．この詳細は数式を用いて説明されているので文献[13]などを参照いただきたい． 読者の中には，図 11 のシリカ球の変形が前編図 2 や図 7 に示した金属ナノ粒子の変形に似ており，混乱されているかもしれないので，違いを列記しておく：第一に，IH効果を起こすシリカ球は基板の上に置かれているが，基板を除けば周りは真空である．一方，本主題の金属ナノ粒子はシリカなどの媒質中に埋め込まれている．第二に，IH 効果でシリカ球はビームと平行方向に縮み，垂直方  図 10: イオンハンマリング効果の例 1：金属ガラスCo75Si15B10の板状試料の照射前後の光学顕微鏡像．（上）照射前，（下）試料の上半分を挟んで保持し全体をイオン照射した．上半分は挟む機構のためにイオンは当たらず，下半分のみが照射された．照射は試料温度 50 K以下で 360 MeV Xeイオンを 1.7 ´ 1013 ions/cm2まで試料面に垂直（紙面に垂直）に照射したもの．照射部分があたかもハンマーで叩かれたかのように厚さ方向に薄くなり，面内方向に広がっている．（Reproduced with permission from [11]. ©(1990) American Physical Society）  図 11: イオンハンマリング効果の例 2：湿式法で作製したシリカのマイクロ球の走査型電子顕微鏡（SEM）像．左は照射前の球状のマイクロ球．右は試料温度 77 Kにおいて矢印の方向から 16 MeV Auイオンをフルエンス 1.1 ´ 1015 ions/cm2まで照射した場合．（Reproduced with permission from [12]. ©(2001) Elsevier） 原子衝突学会誌しょうとつ 第20巻第5号 (2023) 107 向に伸びて，パンケーキ型（a < b = c）の回転楕円体に近い形に変形する．一方，金属ナノ粒子はビームと平行方向に伸び，葉巻型（a > b = c）の回転楕円体に近い形に変形する．なお，どちらの場合も a がビームと平行方向である．第三に，シリカ球の置かれている基板に対して垂直入射以外では，入射ビームと回転楕円体の主軸方向は少しずれる（roll-off 効果）．一方，金属ナノ粒子は前編図 2の 45° 照射に示されるように，ビームと同じ角度（45° 方向）へ伸びる．第四に，前編図 7 と 8 で示したように金属ナノ粒子の変形は照射前のナノ粒子の直径が 70 nm 以上では起こらない．一方，図11 に示すシリカ球の IH 効果では照射前の粒子の直径が 1 µm の場合でも変形が起こり，両者の違いは大きい． 金属ナノ粒子の楕円化変形に比べて，IH 効果は長い研究の歴史があり，メカニズムもある程度解明されている[14]．シリカ球の変形に関する数式を用いた詳しい議論は[15]を参照いただきたい．IH 効果の変形の基本となるのは，せん断粘度 η という量の温度依存性である．これはガラスに特徴的な挙動ではあるが， flow 温度 T* と呼ばれる特徴的な温度を越えるとせん断粘度が急激に減少するため，応力緩和が迅速になる．つまり誤解を恐れず平たく言うと，温度 T*を越えるとガラスは液体のようになる．真の液体では応力テンソル σij の対角成分 σii（i = x, y, z），つまり圧力のみ存在し，非対角成分 σij （i ¹ j）のせん断応力は存在しなくなる．図 12 を用いて，円筒状の熱スパイク効果で誘起される IH 効果を説明する．イオンの通過による熱スパイク効果により円筒状の領域が加熱される．加熱されれば，熱膨張が起ころうとするが，周りの未照射部分の材料に変形が制限され，熱応力が蓄積される．この場合の最大温度が T*に達しなければ，温度は冷却に転じた後，熱膨張で膨らんだ領域は元に戻り，熱応力は緩和される． しかし T* を越えると，（平たく言えばガラスは液体のようになり，）せん断粘度 η が急減少し，高温のままで急速な応力緩和が起こる．熱膨張部分が高温のまません断歪が緩和する．つまり図 12 の 3はηによる応力緩和が起こる前を示し，照射部分は膨れている．η による応力緩和が起こると図 12の 4 のように変形が緩和され，表面は“平たい”形状になる．その後，高温なのに“平たい”形状（図12 の 4 の状態）から冷却が始まり，熱収縮を起こすため，中央部は照射前より厚さが薄くなる．つまりビーム方向に試料の厚さが薄くなり，これはまさに IH 効果に特徴的な変形である，その分，体積保存からビームと垂直方向に試料が伸びる．  11．イオンハンマリング効果がナノ粒子楕円化変形の起源と考えられた理由 図 13（左）の TEM 像に示すように，Roorda ら[16]は湿式化学的手法で厚さ 72 nm のシリカの殻に包まれた直径 14 nm の Au の核を持つコア・シェルナノ粒子を形成した．30 MeV の Se イオンで照射した結果を図 13（右）に示す[16]．照射前のコア及びシェルの形状が白および黒の点線で示されている．シリカのシェルはビームと平行方向に縮み，垂直方向に伸びており，図 11 のシリカのマイクロ球と似た変形，つまり IH効果によると思われる変形を示した．一方，Au のコアについては，ビ 図 12: 円筒状の熱スパイク効果で誘起されるイオンハンマリング効果の変形を模式的に示した図．（1）イオンの通過により円筒状の領域が加熱される．（2）加熱領域が熱膨張し熱応力を蓄える．最大温度が flow温度 T*以下の場合は，このまま冷却して，熱応力を緩和しで熱膨張領域が元に戻る．（3）flow 温度を越えた場合，せん断粘度 ηが急激に減少し，応力緩和が誘起される．（4）熱膨張領域を緩和させるためにビームと垂直方向に広がる．（5）熱膨張が緩和した状態 4 からさらに温度が下がり熱収縮し，中央付近の厚さが照射前より薄くなる．（Reproduced with permission from [14]. ©(1995) American Physical Society） 原子衝突学会誌しょうとつ 第20巻第5号 (2023) 108 ームと平行方向に伸びてナノロッド化しており，本解説の主題である金属ナノ粒子の楕円化変形とよく似ている． さらに Roorda らは Auコアの直径を 14 nm に固定して，シリカシェルの厚さを 15〜72 nm の範囲で変えたコア・シェルナノ粒子を合成し，同様の照射実験を行った[16]．その結果，シリカの厚さが26 nm 未満の場合 Au コアはほぼ変形しないことが判明し，金属ナノ粒子の変形にシリカシェルが重要な役目を担っていることを示した． そして重要な役目を果たすと考えられるシリカシェルでは IH 効果が起こっており，ビームと垂直方向にシリカシェルが伸びている．この変形は Auコアに面内圧縮応力を印加し，ビームと平行方向に Auコアを伸ばすと考えた．つまり Auコアの周りのシリカシェルの IH 効果による変形で，Auコアが押されて変形する“間接的”なメカニズムを提案した．このメカニズムはシリカシェルをシリカ薄膜またはバルクシリカと読み換えるだけで，本主題である固体中に埋め込まれた金属ナノ粒子の変形にも適用できてしまう．（以下でこのモデルは否定される．） Roorda らはこの IH 駆動の変形機構の問題点も把握していた．IH 効果ではせいぜい数 100 MPa程度の応力しか発生できず，この程度の応力では固体の Au コア（ナノ粒子）に観測されたような明瞭な変形を引き起こすことはできない．そこで彼らは高速重イオン照射によって Au コアが変形しやすくなる効果，すなわち，ソフト化が起こっている可能性も併せて提案した[16]． Klaumuenzer [17]は固体中の金属ナノ粒子に対して既知の変形メカニズムのどれをもってしてもナノ粒子楕円化変形の実験結果は説明できないことを示した．つまり Au コアのソフト化は既知のメカニズムでは説明できないという結論である．そして彼は代わりの可能性として「イオン衝突による金属ナノ粒子の融解とシリカ中に形成されるイオントラック中への Au 原子の移動」という記述を残していた．実はこれが現在一番支持されているモデルだが，著者はこの論文を読んだ際，この重要な記述を理解できずに読み飛ばしていた． 当時は IH 効果を金属ナノ粒子の楕円化変形の起源と考える人が多かった．そのため，固体 Auコアのソフト化が起こらないのであれば，Auコアが融解すれば IH 効果が作る小さな応力でも変形が起こるという説を複数の研究者が提案していた．つまり，「高速重イオン照射によりシリカに IH 効果が誘起され，金属ナノ粒子に面内応力が生じる．この状態でイオンがナノ粒子に衝突し，電子励起熱スパイク効果で金属ナノ粒子を融解させる．融解すれば IH 効果が作る小さな応力でも変形が誘起される」というメカニズムである．（結局，このモデルは以下で否定される．） このモデルは誰が最初に提案したか不明であるが一時期は多数に支持された．Klaumuenzer の論文[17]でナノ粒子の融解の重要性が指摘されていたので，てっきり彼が最初に提案したのだと思い込み，ある論文でそう書いたところ，国際会議で会った際に私の誤解をご指摘いただいた．  12．イオンハンマリング駆動説の否定 仮に金属ナノ粒子の楕円変形のメカニズムがIH 効果による面内応力と電子励起熱スパイク効果によるナノ粒子融解の相乗効果であれば，楕円変形のフルエンス依存性は少なくとも低いフルエンス領域において非線形なものになることが予想される．まずある程度の量のイオンがシリカに照射され，IH 効果により面内応力が蓄積される必要がある．充分な応力蓄積以前に，たまたまイオンがナノ粒子と衝突してしまうと，ナノ粒子の融解は起こるかもしれないが楕円化変形には至らない．つまり，ゼロからフルエンスを増やしても暫くは楕 図 13: 直径 14 nmの Auの核と厚さ 72 nmのシリカの殻からなるコア・シェルナノ粒子の透過電子顕微鏡（TEM）像．（左）は照射前，（右）は30   MeV Seイオンを垂直から 45° の角度でフルエンス 2 ´ 1014 ions/cm2 まで照射した．矢印はイオンビームの方向を表面に投影したもの．右図の白および黒の点線は照射前のコア及びシェルの形状をそれぞれ示す．（Reproduced with permission from [16]. ©(2004) Wiley-VCH Verlag） 原子衝突学会誌しょうとつ 第20巻第5号 (2023) 109 円変形は起こらない．そしてある程度面内応力が蓄積された領域が形成されると，楕円変形が起こり始める．フルエンスが増え，全ての領域で面内応力が蓄積されれば，イオンがナノ粒子に衝突して融解を起こす毎に楕円変形が誘起されることが予想される． このモデルが正しいかどうかの検証は，楕円変形の発生数のフルエンス依存性を低フルエンス域で詳しく測定することである．もちろん通常測定しているよりも極めて低いフルエンスで楕円化変形を評価しなければならず，楕円化変形に敏感な測定法が求められる．我々は直線偏光の光吸収スペクトルの偏光角度依存性（直線二色性分光と呼ばれる）を用いて低フルエンス域の微小な楕円化変形を測定した． 我々以外にも楕円化変形のフルエンス依存性を計測しようという試みはあった．一つは RBSを用いたもので，一層だけのナノ粒子を準備し，照射によるナノ粒子の楕円化変形による伸びをナノ粒子層の厚さ変化として測定した[18]．彼らはあるフルエンス以下では楕円化変形が生じなくなるフルエンスの閾値が存在すると報告し，我々の結果と矛盾するものであった．しかし通常の配置の RBS法の深さ分解能はせいぜい 10 nm程度であり，それ以下の楕円変形が起こっていても測定できないと思われる．TEM でも上手くいかなかったようであるが，TEM は局所構造の観察は得意であるが，大多数の微小な変化を積算することは難しいのかもしれない． 我々が用いた直線二色性分光法について図14 を用いて説明する．図 14（上）は直線偏光を用いて測定したシリカ中に埋め込んだ Zn ナノ粒子の 光吸収スペク トル で あ る[19]． こ の試料 を200    MeV Xe イオンで照射した．楕円化変形したナノ粒子の長軸が偏光面を含む場合を偏光角度0° とした．測定は試料の数mm角の領域に対して行った．この数 mm 角の領域には非常に多数のナノ粒子が含まれており，それら全てのナノ粒子からの信号を積算（平均化）しているため，得られた積算信号は楕円化変形に対して感度が非常に良い． 照射前はどの偏光角度で測っても同じスペクトルが得られた．ナノ粒子が真に球形であれば特別な方向はなく，スペクトルは偏光角度に依存しない．フルエンスを増やしていくと光吸収は偏光角度に依存してくる．これは一部のナノ粒子が同一方向（イオンビーム方向）に楕円変形したためであり，長軸に平行な偏光と垂直な偏光のスペクトルが異なってくるためである．図ではフルエンス1.0 ´ 1012 ions/cm2 以上で角度依存性が観測されたが，拡大すると，1.0 ´ 1011 ions/cm2 でも違いが観測された． 図 14(b)，(c)は未照射及びフルエンス 5.0 ́  1013 ions/cm2 でのナノ粒子の TEM像を示す．特に(c)   図 14: （上）Zn ナノ粒子を埋め込んだシリカの直線偏光吸収スペクトルのフルエンス依存性．200   MeV Xe イオンを照射．偏光面がナノ粒子の長軸方向を含む角度を 0° とし，三つの偏光角度で測定した．未照射ではナノ粒子が球形でランダムなため，スペクトルは偏光角度に依存しないが，照射量が増加して楕円化変形が進行すると偏光角に大きく依存する．反対に光吸収量の角度依存性から楕円化の程度を決定できる．(b)(c)それぞれ未照射とフルエンス 5.0 ´ 1013 ions/cm2でのZnナノ粒子の透過電子顕微鏡像．(c)では楕円変形は観測されるものの明瞭ではないが，対応する(a)の光吸収では感度よく検 出できる．（Reproduced with permission from [19]. ©(2011) American Physical Society） 原子衝突学会誌しょうとつ 第20巻第5号 (2023) 110 では矢印方向からの照射でナノ粒子が楕円化しているようにも見えるが，それほど明瞭ではない．一 方 ，図 14（上 ） の同じフ ル エ ン ス 5.0 ´ 1013   ions/cm2（図 14（上）の一番下のスペクトル）では楕円化変形により明瞭な偏光角に依存する信号が得られている．つまり本手法は TEM より楕円化変形を感度良く検出できることを示している． 楕円化による変化は光子エネルギー 4 eV 付近で一番大きいため，以下では 4 eV における偏光角度 0° と 90° の光吸収量の差をナノ粒子の楕円化変形の程度を表す量とする．なお，適用できる粒子のアスペクト比（長径/短径比）の範囲等の議論は文献[20]を参照いただきたい．このようにして直線二色性で評価したナノ粒子の楕円化変形の度合い，つまり OLD （直線二色性： optical linear dichroism）のフルエンス依存性を図 15（上）に，その低フルエンス域の拡大図を同図（下）に示す．楕円化変形の度合いは図に示した全ての領域でフルエンスに概ね比例して増加した． 図 15（上）では楕円化変形のフルエンス依存性をシリカが起こす他の変形現象である密度増加（9節）や IH 効果（10 節）と比較している[21]．図 15（上）の下段のΔnはシリカの赤外域の 1100 cm-1振動ピークのシフト量を FTIR（Fourier-transform infrared spectroscopy）装置により測定したものである．このピークのシフト量は密度増加の程度に対応することが知られている[7]．フルエンス 0.5 ´ 1013 cm-2 付近でピークシフトは飽和し，シリカの飽和密度に達したと思われる． 図 15（上）中段のΔL/L は密度化と IH 効果の両方を考慮して計算[22]で求めた試料幅の相対的な変位量である．照射直後，ΔL/L は減少し，密度増加が支配的に誘起されることが分かる．しかし，0.5 ´ 1013 cm-2 付近で密度増加が飽和すると，試料幅の相対変位ΔL/L は増加（ビームと垂直方向に伸長）に転じる．まさに IH 効果に特徴的な変形モードであり，IH 効果が支配的になったためである．一方，図 15（上）上段の楕円化変形（図の赤丸と緑色丸）はフルエンスに対して単純に比例して増加した．シリカの主要な変形機構が 0.5 ´ 1013 cm-2 付近で密度増加から IH 効果に切り替わっても，楕円化変形のフルエンス依存性は依然として線形増加で，特にそれ以外の変化は観測されなかった．つまりナノ粒子の楕円化変形はシリカの密度増加や IH 効果の影響をあまり受けてい                                      図 15: シリカ中に埋め込まれた Zn ナノ粒子へ200   MeV Xe イオンを照射した場合のフルエンス依存性：（上）OLD：直線二色性により検出した楕円変形の程度（赤丸：熱処理無し，緑丸：600 ℃で熱処理後）．ΔL/L：密度増加と IH 効果を考慮して計算したビームに垂直方向の試料幅の相対変化．Dn： FTIR法で測定した赤外 1100 cm-1振動ピークのシフト 量で，密度増加量に対応．0.5 ´  1013   cm2より下は密度増加が，上は IHが支配的だが，OLDはどちらの領域でも同一の傾きでフルエンスに比例．（下）低フルエンス域の拡大図．トラック被覆率が 5%，つまり 1 個のイオン衝突でも楕円変形は起こる．（Reproduced with permission from [21]. ©(2017) The authors, and from [19]. ©(2011) American Physical Society） 原子衝突学会誌しょうとつ 第20巻第5号 (2023) 111 ないようであり，変形の起源ではないと考えられる． 図 15（下）は極低フルエンス域の拡大図で，縦軸は図15（上）で OLDと書いたナノ粒子の楕円化変形の度合いを表す量と同じものである．図の下の横軸はフルエンスで，上の横軸はフルエンスをイオントラックの表面被覆率に換算したものである．高速重イオンが固体に照射されると，その飛程を中心に円筒形の損傷領域（イオントラック）が形成されることは既に述べた．試料表面を眺めていると，1 個イオンが照射されると，円形のトラックの断面領域が損傷される．トラック 1個の断面積にフルエンスを乗じたものが表面被覆率である．この値が 1 に比べて小さい場合はトラック同士の重なりが無視できる．フルエンス 1.0 ´ 1011 ions/cm2（トラック被覆率 5%）という低フルエンスまで，楕円化変形の度合いとフルエンスに比例関係が確認された． トラック被覆率 5% ということは，トラックはほぼ重なってはおらず，1 個のイオン衝突でナノ粒子の楕円変形が起こっていることを示している．この実験結果は，ナノ粒子楕円変形のメカニズムを IH効果とナノ粒子融解の複合効果を考えた場合に予想される非線形なフルエンス依存性とは相容れず，モデルの再考を示唆するものである．  以上，IH効果をナノ粒子楕円化の起源と考え場合に矛盾する実験結果である （1） ナノ粒子楕円変形のフルエンス依存性について紹介した．他にも矛盾する二つの実験結果を以下に紹介する．（2）イオンの入射角度依存性：IH 効果の場合，図11 に示すようにイオンビームの入射角と変形した試料の方向がずれること（roll-off 効果）が起こる．これは垂直入射以外では IH 効果は回転を伴う変形を誘起するためである[13]．一方，前編図 2 に示すように，45° 入射した場合（図には示されていないが 30° や 60° でも），ナノ粒子の楕円化変形方向は入射角度と同じになる[23,24] （3） IH 効果は照射時の温度が上がると変形の度合いが小さくなる[9]．最近我々はナノ粒子の楕円化変形効率の照射温度依存性を 300～600 K の範囲で測定したが，変形はあまり温度に依存しなかった[25]．シリカの IH 効果では，650 K での変形効率は 300 Kでの値の 20% 以下まで減少することが報告されている[9]．ナノ粒子の楕円化変形の照射温度依存性は，IH 効果のそれとはだいぶ異なる． 13．楕円変形量のフルエンス依存性 直線偏光二色性分光法を用いることにより，ナノ粒子の楕円化変形の度合いを広いフルエンス域において異なるイオン種・エネルギーで照射した場合でも比較することができる．同じように用意したシリカ中に埋め込んだ Zn ナノ粒子を 7 種類の異なるイオン種・エネルギーで照射した場合の楕円化の度合いのフルエンスΦ依存性を図 16（上）に示す[20]．楕円化の度合いはそれぞれのビームで異なるが，低フルエンス域ではフルエンスΦに比例し，高フルエンス域ではフルエンスの1/2 乗に比例す る 挙 動 が観測 さ れ た ． なお140   MeV Si イオンの結果も含まれるが，このイオンは図 16 のデータのうち唯一 Se のピーク値の高エネルギー側に相当する．そのため，エネルギーは高いが Se は 2.2 keV/nm（シリカ中での値）と低い． 図 16（上）のデータに対して，横軸をフルエンスΦと各イオンでの電子的阻止能 Se（ただしシリカ中での値）の積に変えてプロットし直したのが図 16（下）である．横軸は電子的付与エネルギー密度 Se∙Φとでも呼ぶべき量で，イオンによる電子的過程で単位体積当たりのシリカに付与されるエネルギー量を表す． こ の図は 7 種類の イ オ ン種の う ち ， Se >  3  keV/nm を満たす 5 種類だけをプロットしている．全てのデータがほぼ同じ依存性にあり，リニアの依存性から 1/2乗の依存性に変わるときの Se∙Φの値が同じである．つまりイオンより付与されたエネルギー密度で楕円化の度合いはほぼ決定され，イオンの種類等には，ほぼ依存しないようである． 実は Se < 3 keV/nm のイオン種（140 MeV Si と1.7 MeV Si）は同じ依存性にならず，大きく逸脱するが図 16（下）ではプロットしていない．プロットしたものに興味があれば，文献 [20] をご覧いただきたい．また詳細は同文献 [20]をご参照いただきたいが，Se ~ 3 keV/nm 付近に楕円化変形の閾値のようなものが存在し，それ以下では急激に楕円化効率が減少していく．楕円化変形はその閾値らしき Se（~3 keV/nm）で厳密にはゼロにならないが，~3 keV/nm 以下では概ね Se の 5乗に比例して急激に減少するため[20]，リニアスケールでプロットするとゼロになるように（つまり閾値に）見える．原子衝突学会誌しょうとつ 第20巻第5号 (2023) 112 我々は，楕円化変形の閾値は ~3 keV/nm にあると考える．しかしそれ以下の Seでも同じ変形を起こすためにはたくさんのフルエンスが必要であるが，楕円化変形は起こる．同様の Se閾値以下での低効率な変形はシリカの IH 効果で報告されている．10節で述べた通り，シリカの IH 効果の Se閾値として 2 ± 0.5 keV/nm という値が報告されている[9]が，Se = 0.4 keV/nm でも IH 効果とされる変形が報告されている[10]．       14．二温度分子動力学法 固体への高速重イオン照射効果を記述する簡便かつ広く受け入れられたモデルとして，非弾性（電子励起）熱スパイクモデル（電子温度および格子温度の二温度熱拡散モデル）は既に前編の 5節で紹介した．その際の熱拡散に対する連立方程式を以下に再掲する：  𝐶!(𝑇!)"#!"$= ∇ ∙ (𝐾!(𝑇!)∇𝑇!) − 𝑔(𝑇! − 𝑇%) + 𝐴  (6) 𝐶%(𝑇%)"#""$= ∇ ∙ (𝐾%(𝑇%)∇𝑇%) + 𝑔(𝑇! − 𝑇%)   (7) 繰り返すが，下付き文字 e と L は電子系，格子系を意味し，C，K，T はそれぞれの系の比熱，熱伝導度，温度を意味する．両式の左辺と右辺第 1項はそれぞれの系での熱拡散を記述する．式(6)の右辺第 3項 A は高速重イオンから電子系へのエネルギー付与を示す項である．式(6)，(7)の右辺第 2 項の g は電子格子結合係数と呼ばれる．電子温度と格子温度の差に比例したエネルギーが電子系から格子系に流れ，両者を等しくして熱平衡に近づける効果をもつ． しかしこれらの式から得られるのは各場所での温度変化であり，本解説の対象であるナノ粒子の楕円化変形，つまり原子の移動は少なくとも直接的には算出できない．そこで Nordlund ら Helsinki大学グループは連立方程式のうち，電子系の挙動は電子温度で記述するという方針を継続しつつ，格子の挙動を記述する式(7)を古典的分子動力学（MD）の式(11)で置き換えた[26]．二温度MD と呼ばれる手法である．原子の移動が記述できるため，ナノ粒子の楕円化も記述できる: 𝐶!(𝑇!)"#!"$= ∇ ∙ (𝐾!(𝑇!)∇𝑇!) − 𝑔(𝑇! − 𝑇%) + 𝐴 (10) 𝑚&"'#"$= 𝐹&(𝑡) + 𝜉𝑚&𝑣&  (11) 式(11)は MD における各原子に対する Newton 方程式で，miと viは i番目の原子の質量と速度であ                 図 16: 直線二色性分光法により評価したシリカ中に埋め込まれた Znナノ粒子の楕円化変形のフルエンス依存性．7 種類の異なるイオン種とエネルギーの組み合わせで照射した．なお 140 MeV Siは Seの入射エネルギー依存性のピーク値（Bragg ピーク）を越えているため，エネルギーは高いがSe はシリカ中で2.2 keV/nm と二番目に低い．（上） 横軸をフルエンスでプロットしたもの．低フルエンス域で楕円化の度合いはフルエンスに比例し，高フルエンスでは 1/2 乗に比例するが，この変化の起こるフルエンスは各ビームに依存する．（下） 横軸をフルエンスにシリカ中の Se を乗じた場合．図には Se > 3 keV/nmの 5 種類ビームをプロットしたが，ほぼ同一の依存性にのる．ただし Se < 3   keV/nmのビーム（1.7 MeV Siと 140 MeV Si）は明らかに逸脱する．（Reproduced with permission from [20]. ©(2014) IOP） 原子衝突学会誌しょうとつ 第20巻第5号 (2023) 113 り，Fi(t)は MD の原子間ポテンシャルから計算される i 番目の原子に作用する力である．式(11)の右辺第二項が電子系と格子系の結合を記述する．実際に行っていることは，MD シミュレーションの最初に，電子温度が高い領域にある原子に対して，ランダムな方向に加速を行う．これは電子系の加熱が格子系の加熱より 2，3 桁速いことにより正当化される（instantaneous heating）．イオン照射の MD というと，イオンと格子原子の衝突（高速重イオンなので電子との衝突か？）をイメージするかもしれないが，二温度 MD では高速重イオンが登場しないことに注意が必要である．まず電子温度熱伝導方程式(10)により電子温度の分布を計算し，それから初期の格子温度分布を計算する．あとは初期の格子温度の分布から普通の MD を計算するだけである． シリカ中の Auナノ粒子に対して 164 MeVの Auイオンを照射した場合の二温度 MD シミュレーションを行った結果を図 17 に示す[26]．図 17（上）がシミュレーションセルの断面図である．黄色い部分が Au，茶色の部分がシリカに相当する．図中の 0 から 11 の数字はナノ粒子と衝突したイオンの数である．照射前（数字 0）では完全に球形であったナノ粒子がイオン 1 個（数字 1）との衝突でレモン型に変形した．この結果は 1 個のイオン照射で楕円化変形が起こることを示し，複数のイオン照射を必要とする IH 効果を起源するモデルとは相容れないものである．むしろ図 15（下）に示した孤立したイオン衝突でも楕円変形が起こるとした著者らの実験結果と整合する． しかし，この計算結果にはいくつか問題がある： 1個目のイオン衝突で楕円変形が起こるが，Au ナノ粒子が非晶質化してしまい，計算時間内には再結晶化しない．非晶質のまま 2 個目のイオンを衝突させても更なる変形は起こらない．そこで非晶質化した Au ナノ粒子を強制的に結晶に戻して計算する．すると 2 個目のイオン衝突で更なる楕円変形が起こるが，楕円化したナノ粒子は再び非晶質化してしまう．イオンと衝突して非晶質化する毎にナノ粒子を結晶に戻してやると楕円化変形が継続される． しかし高速重イオン照射によりシリカ中の Au ナノ粒子が非晶質化するという実験結果は聞いたことがない．そもそも貴金属ナノ粒子の非晶質化は非常に困難である[27]．つまり，次のイオン衝突が起こる前に自発的に Au ナノ粒子の再結晶化が起こっていると考えられる．実際，非晶質化した Auナノ粒子の MD を継続したところ，ナノ秒台で結晶化の兆候が確認された．本シミュレーションでは強制的なナノ粒子の結晶化を行っているが，実際には自発的な結晶化がナノ秒以上かけて起こっているのであろう．高速重イオンはイオン流束が低いので，一度イオンが衝突して非晶質化したナノ粒子に再び次のイオンが衝突するまでマイクロ秒以上は確実にかかると思われる．一度非晶質                図 17: 二温度分子動力学法でシミュレーションしたシリカ中に埋め込まれた Au ナノ粒子への164   MeV Au イオン照射で誘起される楕円化変形．（上）計算セルの断面図．黄色の領域がAuで茶色がシリカに対応．図中の数字は照射したイオン数．イオンは常に粒子の中心を同じ方向から貫く．（下）照射前後のナノ粒子の長径と短径のプロット．フルエンスは 2 ´ 1014 ions/cm2．矢印で結ばれた黒塗りのシンボルがシミュレーション結果．白抜 き の シ ン ボルは対応す る実 験 結果 ． （Reproduced with permission from [26]. ©(2014) Taylor & Francis） 原子衝突学会誌しょうとつ 第20巻第5号 (2023) 114 化したナノ粒子が次に再び衝突する前には結晶化が完了していると思われる． 図 17（下）の矢印で繋がれた 4 組の黒塗りのシンボルは，異なる 4 つの初期サイズの球形ナノ粒子への 164 MeV Au イオン照射を二温度 MD でシミュレートした結果である．（重なって表示されている多数の中抜きシンボルは実験結果）．フルエンスは 2 ´ 1014 ions/cm2 に相当し，各ナノ粒子は何度もイオン衝突を受けている．図の横軸はナノ粒子の長径，縦軸は短径を示し，前編の図 3の実験結果に対応するものである．照射前の直径が5.5 nm という小さなナノ粒子においても，照射による長径の伸び（楕円化変形）が観測されている．前編図 3 で紹介した楕円化変形のための最短短径長が存在するという実験結果と矛盾するものである．（図 17（下）には中抜き丸で実験でも最短短径が明瞭でない場合もあるというデータが示されていて悩ましい．） ただし，本シミュレーションでは，イオンは常にナノ粒子の中心を長径方向に突き抜けるという簡略化を行っている．また次節で示すように，高速重イオン照射でナノ粒子から金属イオンが一部溶け出す，再凝縮する等の効果が含まれていない．最小楕円化短径より小さなナノ粒子では金属原子の溶出や再凝固などが頻繁に起こっているはずだが，本シミュレーションにはこういった効果は一切含まれていない．よって早計に本シミュレーション結果を否定するべきではないと思われる． 本シミュレーションによると，楕円変形の重要な形状変化はイオン衝突後 5〜20 ps程度の時間で起こるようである．本シミュレーション結果を物理的に解釈すると，ナノ粒子の楕円変形は，「融解して圧力が高まった金属ナノ粒子中の金属原子が，シリカ中に形成される低密度なトラックコアを通って膨張することにより起きる」と考えられる．  説明しなかったが，高速重イオン照射によりシリカ中には，中心部（コア）が未照射材より低密度で，その周りが未照射材より高密度なシェルを持ったコア・シェル型の円筒形状のイオントラックが形成される．楕円変形に伴う Au 原子移動はこの低密度トラックコアを通して起こるようである．コア・シェル型トラックの形成機構は，高速重イオンにより，シリカのトラックの中心部分は沸点を超え気化し，膨張して低密度になり，その周りの融解領域は圧縮されて高密度になり，それが急冷されて形成するというのが通説である[28]．しかし我々の結果によると，中心部が気化しないような比較的低Seのイオン照射によってもコア・シェル型トラックは形成される[29]ので，形成メカニズムの再考が必要である． 図 17 は 164 MeV Au イオン照射の結果であり，電子励起熱スパイク計算からトラック中央部でのシリカの気化が起こる条件であった．図 18 は60   MeV Ti イオン照射の結果であり，この場合はトラック中央部でシリカの融解は起こるが気化は起こらない[20]．図 18（上）で赤色線はナノ粒子のアスペクト比（長径/短径比）の変化を示す．緑色線と青色線はそれぞれ，イオン飛程に沿った中央の半径 1 nm の円筒領域，その外側の厚さ 1 nm の殻の領域でのシリカ密度を平均したものであり，照射前の値で規格化している．  シリカの密度は中央 1 nm の部分（緑色）もその周り 1 nm の厚さの部分（青色）も照射直後に急激な減少を示す．図 18（下）は（上）のグラフの挙動を模式的に描いている．(a)の行がナノ粒子の無い部分を，(b)の行はナノ粒子のある部分をイオンが通過した場合である．シリカ密度の急激な減少は，イオンによる電子励起が格子温度に変換され，急激な温度上昇を起こし，熱膨張により密度が急減少した結果である．（図は横軸数 10 ps の時間スケールで描かれているので，これらの変化は 0 ps の非常に近くで起こる．）しかし力学的な制限もあり，いつまでも単調に膨張を続けられないので，1 ps 付近で圧力波を動径方向に放出し，トラック内の密度は元に戻ろうとする．そして密度は40 ps 以上でほぼ一定の値に到達する．しかしトラックの中心の半径 1 nm の領域（緑色の線）では規格化密度が 1 以下，つまり照射前の値より低い密度に飽和する．一方，その外側の 1nm 幅の殻の部分では，規格化密度は 1 以上になり，照射前より高密度化している．つまり低密度のコアと高密度のシェルから構成されるシリカのコア・シェル型のイオントラックが二温度 MD法により再現されたのである[29]． 二温度 MD 法によるシリカのコア・シェル型トラックの再現は既に報告されているが[28]，その結原子衝突学会誌しょうとつ 第20巻第5号 (2023) 115 果の解釈に問題があることを本結果は示している．過去の MD の結果から，イオントラック中心部でシリカの気化，その周辺でシリカの融解が起こり，それぞれがトラックのコア，シェルに対応すると考えられてきた．しかし本結果が明らかにした点は，シリカの気化が起こらなくてもコア・シェルトラックは形成されるという事実である．実際，シリカの気化の起こらないような比較的低い Se値での照射でもナノ粒子の楕円化が起こるという実験結果がある[29]．その結果は，シリカのトラックのコア部分を介してナノ粒子の楕円変形が起こるという二温度MD の結果を否定するものではなく，むしろシリカの気化がコア・シェルトラックを形成しているという単純過ぎるモデルの再考を促すものである． 図 18（下）の(b)にナノ粒子を含む場合が模式的に描かれている．金属ナノ粒子はシリカに比べて式(10)の電子格子結合 g が数桁小さいため，シリカに比べると温度上昇が非常にゆっくりで，シリカが示した急速な格子温度の上昇と急激な熱膨張に は追従できな い ．計算は instantaneous heating なので，ここからは空想も入るが，1 ps を過ぎた辺りから温度上昇と熱融解によって，ナノ粒子内で圧力上昇が起こる．一方，その頃までにはシリカは圧力波を放出して収縮に転じてコア・シェ                                   図 18: （上） Znナノ粒子を埋め込んだシリカに 60 MeVの Tｉイオンを照射した場合を二温度分子動力学法でシミュレートした結果．シリカ中に形成されるトラックの中心部と周辺部の原子密度および Znナノ粒子のアスペクト比の時間変化を示す．（下） 上の結果を模式的に説明したコア・シェルトラックの形成とナノ粒子の楕円化変形の時間変化．(a) はイオンがナノ粒子の無い部分を通過した場合，(b) はナノ粒子のある場合を示す．60 MeV Tiイオン照射ではシリカ中に融解領域はできても気化領域は形成されないが，コア・シェルトラックは形成される．（Reproduced with permission from [24]. ©(2020) Elsevier） 原子衝突学会誌しょうとつ 第20巻第5号 (2023) 116 ルトラックを形成しているが，未だ熱くて柔らかい．融解し圧力上昇したナノ粒子から金属原子がシリカの低密度トラックコア部分内に放出されて変形が起こるというのがナノ粒子楕円化変形の基礎過程であろう．  15．楕円化変形でのナノ粒子を構成する原子数の非保存 この現象を記述する英文を直訳すると「ナノ粒子の体積の非保存」である．極めて高フルエンスの照射では，ナノ粒子の楕円変形と同時にナノ粒子の体積も増えるという一見奇妙な現象である．つまり個々のナノ粒子に含まれる金属原子数が増える．それではどこから金属原子が供給されるのであろうか？ 国内学会で「体積非保存」と紹介したところ，分かりにくいと言われた．そこで「原子数非保存」と呼ぶこととする． Rizza 等[30]は湿式化学法で作製したサイズの揃った Au45–Ag55 合金ナノ粒子を用い，液浸時間を 10 分と 30 分と変えてナノ粒子の面密度が 110 および 280 NPs/µm2 の二種類を用意し，Si 上のSiO2 熱酸化膜上に分散させた．その上にシリカを堆積させナノ粒子を埋め込んだ．それぞれの面密度でのナノ粒子の直径は，22.8 ± 3.1，22.9 ± 3.4 nm であり，同じとみなせる．フルエンスを変え，ナノ粒子の形状を TEM観察で評価した． 図 19（上）は短径のフルエンス依存性を示す．2   ×1014 cm-2程度で一定値に達し，それ以上にフルエンスを増やしても短径は一定値を保つ．これは前編の図 3 で取り上げた「最小楕円化短径」であり，図 19 の結果とも符合している．そのため短径が飽和すれば，ナノ粒子の体積は保存されるから，長径もそれ以上伸びなくなると信じられた．ところが図 19（下）は TEM でナノ粒子の長径と短径を計測して求めたナノ粒子の体積変化であり，照射前の体積で規格化している． 短径が飽和するフルエンス 2 ×1014 cm-2程度までは確かにナノ粒子の体積は保存されているようであるが，それを超えると驚くべきことに体積が増加し始める．つまり，短径が飽和しても長径はしばらく伸び続けるのである．この体積の増加はいつまでも続くのではなく，5 ×1014 cm-2程度で飽和するが，増加の度合いはナノ粒子の面密度が高い方が大きい．高フルエンス照射によるナノ粒子の“体積非保存”は Dawi 等により AFM，RBS，TEM を用いた測定からも支持されている[31]．彼らによると，ナノ粒子の面密度が非常に低い場合は体積の増加は起こらないようである． 以上のようにナノ粒子の体積増加が粒子の面密度に依存することから，少なくとも高フルエンス域においてはナノ粒子間で原子のやり取りが行われていることを示していると思われる．つまり一部のナノ粒子はイオン照射により分解し，放出された原子が他のナノ粒子に吸収され体積増加が起こるのであろう．結果として体積増加は粒子面密度が低い場合に無視でき，高い場合に顕著になるであろう．つまり「保存されないのはナノ粒子数」である． 高速重イオン照射にはナノ粒子を変形させるだけではなく，ナノ粒子から一部の原子を放出させる効果もある．特に小さなナノ粒子は完全に分解 図 19: 湿式化学法で作製した粒径サイズの揃った Au45–Ag55合金ナノ粒子をシリカ中に埋め込んだ試料へ 74 MeV Kr イオンを照射した．TEMで観察したナノ粒子の（上）短径および（下）照射前の値で規格化した体積のフルエンス依存性．黒丸および灰菱形は照射前のナノ粒子濃度がそれぞれ 110 および 280 NPs/µm2の場合． （Reproduced with permission from [30]. ©(2011) IOP） 原子衝突学会誌しょうとつ 第20巻第5号 (2023) 117 してしまう可能性もある． Ridgway等はシリカ中の平均径 12 nm の Co ナノ粒子に対して 185 MeV Au イオンを照射し，Co 原子の周りの化学状態をXANES（X 線近吸収端構造分光）により評価した[32]．照射前はほぼ 100% の Co 原子が金属的状態（周りを Co 原子で囲まれて状態），つまり金属ナ ノ 粒 子 を 形成し て い た が ， 照 射量 1 ´ 1013   ions/cm2 付近で酸化物状態（近接に酸素原子がある状態，つまり金属ナノ粒子から放出されてシリカ中に分散された状態）の Co 原子が観測され始め，2 ´ 1014 ions/cm2 でほぼ半分の Co 原子が酸化物状態にあった．ナノ粒子の短軸が飽和を起こすフルエンスで，全Co 原子のうち半分が金属ナノ粒子に含まれず，分散孤立金属イオン状態または酸化物状態にあるという驚くべき結果である． 我々は 200 MeV Xe イオン照射を行ったシリカ中の Zn ナノ粒子に対して，X線小角散乱測定を行った．その際に平均ナノ粒子間距離を評価した[33]．照射前に平均ナノ粒子間距離は 15 nm であったが，2 ´ 1014 ions/cm2 の照射で平均粒子間距離が 26 nm にまで増加した．この結果は一つのナノ粒子に注目して考えると，近傍にあったナノ粒子のいくつかが消滅し，結果として平均粒子間距離が増加したことに対応する．つまり高速重イオン照射により一部のナノ粒子が分解し，他のナノ粒子に吸収されるか，孤立原子として溶解したため，平均粒子間距離が広がったと考えられる． 高速重イオン照射はナノ粒子を楕円化変形させるだけではなく，ナノ粒子からの原子の剥離，場合によっては粒子の分解，原子の移動，再凝縮などを引き起こしているようであり，統一的な理解のために更なる研究が必要である．ただし「ナノ粒子内の原子数非保存」の効果が顕著になるのは高フルエンス域で，中低フルエンス域では「原子数保存」が大よそ成り立つ．  16．クラスターイオンを用いたナノ粒子楕円化変形の低エネルギー化  本解説では高速重イオン照射による金属ナノ粒子の楕円化変形について，その基礎過程・メカニズムについて紹介してきた．金属ナノ粒子の光学的，磁気的，触媒的特性が注目されていることを鑑みると，本現象は同一方向に伸びた金属ナノ粒子を同時に多数作製する手法として応用が期待される．さらにはナノ粒子を固体に埋め込んだ後に，イオン照射して楕円化変形を誘起・調整できるという特性を活かした応用もありうるかもしれない．しかしながら本現象の応用可能性を狭める要因として，本現象は入射イオンのエネルギー10   数  MeV 以上，より効率的な楕円変形には100   MeV 以上の重イオンが必要だと考えられてきた．このような高エネルギー重イオンの発生には大規模な加速器施設が必要であり，その高額な使用コストが応用を狭めてしまう． この点を避けるアイデアと試みを紹介する．それは C60 イオンのようなクラスターイオンを用いる方法である[34]．例えば C60 のクラスターイオンを固体に照射すると，C60 分子のサイズ，直径約0.7 nm の領域に 60 個の炭素原子がほぼ同時に打ち込まれる．その結果，同じ速度の 1個の C イオンの約 60倍の電子的阻止能 Se で近似することがよく行われてきた[35,36]．最近 Kaneko による計算によると数MeV の C60 の Se が 1個の C の約50 倍になることが報告されている[37]．よって，あまり加速エネルギーを上げなくても，高い Seが得られる． 実際，ナノ粒子の楕円化変形のためには高いSe が必要であり，我々は主に 200 MeV Xe イオンを使ってナノ粒子の楕円化変形の研究を行ってきた．非晶質シリカ中での 200 MeV Xe イオンに対す る 非晶質 シ リ カ の 電 子 的阻止能 Se は ，15.0   keV/nm程度である．6 MeV C60 イオンでは単原子 C に対する Se を 60 倍することにより Se = 15.5   keV/nm [34] とほぼ同じ Se の値となる（表 1参照）．200 MeV の Xe イオンを発生できる加速器施設は，国内でも非常に限られた数ヶ所のみである．一方，6 MeV C60イオンの発生は，国内に無数に存在する加速電圧 1 ～2 MV程度のタンデム加表 1:  高速単原子イオンとC60イオンの非晶質シリカ中での電子的阻止能の比較[34]． Energy / Ion Se (keV/nm) 200 MeV Xe14+ 15.0 6 MeV C60＋ 15.5 4 MeV C60＋ 12.7  原子衝突学会誌しょうとつ 第20巻第5号 (2023) 118 速器で可能である．イオン源から価数 −1 の負 C60イオンを入射し，価数 +2 の C602+イオンを取り出せば，3～6 MeV程度の加速は容易であろう．C60負イオンの発生が困難であると思われるかもしれないが，QST 高崎研が大電流 C60負イオン源の開発に最近成功している[38]． 本現象の応用上のもう一つの問題点は，充分な変形を起こすためには，1014 cm-2程度の高いフルエンスが必要な点であったが，上記の C60負イオン源が大電流を発生できる点が好都合である． 図 20 に 4 MeV C60+イオン照射により Au ナノ粒子の楕円化変形に成功した例を示す[34]．図20(a)，(b)に示すように，斜め 45° 方向からイオン照射すると，水平面内に寝ていたナノ粒子が 45°方向に変形した．わずか 4 MeV の C60イオン照射の場合でもナノ粒子の楕円化変形現象を引き起こすことができた．この結果は応用上のインパクトがあると思われる． ただし問題も残されている．楕円化変形を誘起させるためには，ナノ粒子をシリカ中に埋め込むことが必要である．図 20(c)に示すように本実験でも厚さ 100 nm のシリカを Au ナノ粒子の上に堆積させた．しかし図 20(d)に示すように，照射後にナノ粒子の変形は確認されたが，同時にシリカ膜が30 nm まで削られてしまった．他の実験からも C60イオンによるスパッタリングは単原子の高速重イオン照射より顕著であることが分かった．実際，本実験を更なる高フルエンスで行うと，Au ナノ粒子自体がスパッタリングで失われてしまう．Au ナノ粒子の変形を維持させながら，シリカのスパッタリングを下げるアイデアが望まれている．  17．まとめ 前編では高速重イオン照射による金属ナノ粒子の楕円変形現象について紹介し，変形メカニズムを考える上で重要な性質である最小楕円化短 図 20: シリカ中に埋め込まれた Auナノ粒子の断面配置の電子顕微鏡像．(a)–(d) 明視野像．(e)(f) 走査型TEM-電子線励起特性 X線元素マッピング．(a) 照射前の Auナノ粒子の断面像，(b) 4 MeV C60イオンを基板法線方向から 45° でフルエンス 5 ´ 1013 cm-2 で照射後．ビーム方向に楕円化が観測される．(c)(d) ナノ粒子を覆うSiO2層の照射前(c)と照射後(d)の比較．SiO2層の上面が分かるようにPt薄膜を堆積させてある．照射により SiO2 層の厚さが激減している．(e)(f) 対応する元素マッピング像．（Reproduced with permission from [34]. ©(2019) The authors） 原子衝突学会誌しょうとつ 第20巻第5号 (2023) 119 径の存在について解説した．つまりそのサイズより楕円ナノ粒子の短径が小さい場合は照射しても更なる楕円変形は起こらない．そして「真空中のナノ粒子」モデルや「非弾性（電子励起）熱スパイクモデル」から融解や気化といった相転移が起こる条件を考察し，それを元に楕円化変形の起こる条件を議論した．しかし，変形つまり実際の原子の移動が起こる具体的な“駆動力”については議論しなかった． 後編では，変形の駆動力を議論するために，まずは非晶質シリカで起こる二つの照射誘起変形現象，密度増加と IH 効果について紹介し，IH 効果がナノ粒子の楕円化変形の起源であるかどうかを議論した．我々が開発した金属ナノ粒子の楕円化変形を高感度に検出する直線偏光二色性分光法について紹介し，楕円化変形のフルエンス依存性をイオントラックの重なりが無視できる低域まで調べた．その結果，1 個のイオンが衝突するだけでナノ粒子は楕円化変形を起こすことを示した．この結果は IH 効果を含むモデルでは楕円化変形には多数のイオン衝突が必要なことと矛盾する． 次に二温度 MD 法について紹介し，実際にナノ粒子の楕円化変形に応用した結果を紹介した．この結果はわずか 1個のイオン衝突でもナノ粒子が変形するもので，我々の実験結果とも矛盾しないものであった．MD による変形の結果を物理的に解釈すると以下のような描像が得られた．ナノ粒子の楕円変形は，融解して圧力が高まった金属ナノ粒子からの金属原子がシリカ中に形成された低密度なトラックコアを通って移動することにより起きる． 現状では 100 MeV級の高速重イオンを主に用いて研究を行っているが，本現象の応用を考えるためにはもっと低エネルギー，比較的汎用の加速器（例えば加速電圧 1〜2 MV のタンデム加速器）を用いて変形を起こさせる必要がある．さらにこの現象は 1013 ions/cm2 以上の 高フルエンスが必要である．C60 のようなクラスターイオンを用いると，低エネルギーで高い Se を得ることができて有効である．実際， 4 MeV の C60 イオンを 5 ´ 1013 C60/cm2 まで照射することにより Au ナノ粒子の変形に成功した．しかし更なる高フルエンスでの実現のためには，強力なスパッタリングを回避するアイデアが求められる．  謝辞 本研究に関して我々が行った実験の大半は日本原子力研究開発機構 東海タンデム加速器，一部の実験は量子科学技術研究開発機構 高崎イオン照射研究施設を用いて行った．関係者に大変感謝する．本研究の一部は，東京大学工学系研究科原子力専攻・日本原子力研究開発機構・量子科学技術研究開発機構施設利用共同研究のもとで，重点連携研究制度（課題番号 H31-1，R4-2）及び一般共同研究（課題番号 22005，2023202002）によってサポートされた．また科研費26390032，18K04898，22K04990 のサポートも受けている．  参考文献 [1] J. 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