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[250516_上木_本文のみ.pdf](https://mdr.nims.go.jp/filesets/9df0bc96-1e89-4684-aa5f-380e876a1e4d/download)

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[上木 岳士](https://orcid.org/0000-0001-9317-6280)

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[細胞が液体に接着する？－イオン液体が切り拓く液体界面培養の可能性－](https://mdr.nims.go.jp/datasets/b48b69d0-264b-4293-8ede-0ef21e887c49)

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Microsoft Word - 250516_(_,⁄n�.docx １－１．イオン液体 食塩(NaCl)は、801℃以上に加熱すると溶融し、Na+と Cl-からなる液体になる。これは誰もが高校の化学で習う「融解した塩の姿」である。一般的にイオン間には強い静電相互作用が働くため、NaCl のようなイオン性結晶の融点は高い。しかしイオンの種類や構造を工夫することで、驚くほど低い融点の「塩」を生み出すことが可能である。これがイオン液体(IL)である。IL は分子(イオン)設計の自由度の高さと性質の多様性という点で、従来の分子性液体と質的に異なる化学的世界を持っている。例えば：(1)分子(イオン)設計により親／疎水性、高／低極性、高／低粘度まで自在に調整可能であること、 (2)(高)分子に対して特殊な溶解性をしめすことがあること、(3)蒸気圧が極めて低く、常温でも揮発せず燃えないこと、(4)液体でありながら極性／非極性ドメインが分離したナノスケールの構造を自発形成すること、などである。中でも特筆すべきは(1)構造の多様性とデザイン可能性であろう。IL はプラスイオンとマイナスイオンの組み合わせで構成されるが、それぞれに選べる化学(イオン)構造は無限である。ある試算によれば、現在、工業的に広く用いられている有機溶剤が約 600 種類であるのに対し、実験室レベルで合成可能な IL の組み合わせはゆうに 106種を超えるという 1。構造の多様性という観点でイオン液体と分子性液体を比較したとき、そのスケールの差は歴然であることがわかる。こうしたデザイン性に富んだ構造と特異な物性ゆえに IL は多様な研究分野で急速な広がりを見せている。これまでも電気化学 2、エネルギー変換・貯蔵 3、有機合成 4、分離プロセス 5、グリーンケミストリー6 といった研究分野で重要な役割を果たしてきたが近年になって、その分子(イオン)設計可能な液体、という本質がバイオマテリアルの領域にも波及し始めている。 すべての生命現象は水中で起きる。このためバイオマテリアルはその多くが水との共存を前提に設計されている 7。実際、これまで提案されている IL のバイオマテリアル応用においても IL を水に溶解させて用いる、いわゆる「親水性IL」を基盤とした研究が主流である。これらはタンパク質や核酸などの構造安定化や機能制御に活用され 8、生体適合性を有する ILの設計も精力的に進められてきた 9。一方、IL が有するもう一つの特筆すべき性質に、イオン構造によって水と相分離しうる、というものがある 10。イオンであるが水と相分離するという、一見矛盾するような性質。イオン液体が水と接触することで形成する IL｜水界面は中性分子液体ではなし得ない、まったく新しいバイオインターフェースの舞台になり得る。本稿ではこれまでバイオマテリアルとして見過ごされてきた、「水に溶けない IL」の界面に着目し、その構造設計、タンパク質吸着挙動、細胞応答との関係を多角的に解析することで、分子設計可能な“液体の細胞足場”としての可能性を探る 11(図 1)。                 ①～⑩の見出・サマリー・執筆者情報がデザインされるスペースです。 本文スペースではありません。  （本文：２６字４９行×２段 14,000 字）  １－２．液体界面に接着する細胞 「液体の界面に細胞が接着する。」この一文に違和感を覚える読者も少なくないだろう。我々は通常、細胞は固体基板に接着するものと理解している。実際、接着性細胞が基質との接触を維持しながら生存・増殖・分化といった生命活動を行うためには、焦点接着(Focal Adhesion: FA)と呼ばれる構造を形成し、基質との間で力学的な伝達をやりとりすることが必須である。この FA の形成・成熟・安定化には数分～数時間を要するため、細胞培養には細胞が応力を得続けられるような力学的に安定な固体材料(例えばプラスチックシャーレやハイドロゲル)が用いられる。一方、液体界面では状況が全く異なる。液体では、外部から与えられた応力はすぐさま(ミリ秒単位で)緩和してしまう。このような不安定で柔らかい環境では FA の形成そのものが困難であり、細胞は接着すらできないと考えるのが自然である。―――にもかかわらず、液体界面に細胞が接着するという事実は既に複数の研究者が証明している 12, 13。とりわけ、シリコーンオイルやフッ素系液体などの疎水性液体界面ではヒト間葉系幹細胞(hMSCs)が安定的に接着・伸展し、さらには選択的な神経分化 14や未分化性の維持 15といった現象さえ引き起こす。このような結果は「液体界面＝非接着性環境」という常識とはかけ離れており、我々の直感に反するものといえる。  この、液体に接着する細胞、という現象の背景には界面に形成されるごく薄いタンパク質の膜構造が関与していることが知られている。実はこの発見は意外と古く、今から60 年前に遡る 16。Rosenberg は培地(細胞培養に必須の成分が含まれた水溶液)中に含まれるタンパク質が疎水性液体界面に吸着・集積し、細胞が接着可能な固体様の足場(Protein Nanolayer: PNL)を自発的に形成することを予測した。この仮説は 1980 年代に Keese や Giaever らによって実証され、PNL が細胞接着を支える物理的基盤であることが明らかにされた 17-19。また彼らは PNL の力学的特性が細胞接着にとって重要であることも指摘しており、タンパク質の界面への自発的自己集合により形成された PNL の力学強度では細胞接着を充分に支持できない場合もあると指摘している。この問題を解決するため、PNL の力学特性改善のため様々な方法論が既に報告されている 17。例えばウシ血清アルブミン(BSA)やポリ(L-リジン)といったタンパク質・ポリペプチドを積極的に界面に吸着させ、ペンタフルオロベンゾイルクロライドのような反応性界面活性剤で液体界面に固定化する手法は、液体界面培養において確立された一種の界面エンジニアリングである 12。 まとめると細胞は液体界面で培養できるが界面そのものに「直接、接着しているわけではない。」液体界面に形成されるナノスケールの固体膜構造体が細胞の接着と、その生存を静かに支えているのである。 ２．実験・結果・考察 ２－１．イオン液体界面での細胞培養  IL 界面での細胞培養を試みる上で、まず把握すべきは IL自身の細胞毒性である。疎水性 IL は水とは混ざらず、相分離した形で細胞と共存することから、従来の水溶性 ILとは異なる毒性評価の枠組みが求められる 20。本研究では、医療機器の生物学的安全性評価に用いられる ISO 10993-5 を参考に、hMSCs と IL 液滴を一定期間共存させた上でLive/Dead アッセイにより相対的な細胞生存率を定量評価する試験系を構築した。26 種類の疎水性 IL(図 2(a),(b))を用いた評価の結果、IL 研究でよく用いられるイミダゾリウム系を含む多くの窒素含有カチオン IL では顕著な毒性が観察された一方で、アルキルホスフォニウム系カチオンを含む一部のリン含有カチオン IL は高い生存率を示した(図 2(c),(d))。特に[P2,2,2,5][TFSI]、[P4,4,4,1][TFSI]、[P6,6,6,14][TFSI]の 3 種類は、複数のほ乳類細胞に対しても良好な細胞適合性を示したため 11、以下の評価に用いる 図 1 本稿で提案する疎水性イオン液体(IL)の界面を利用した細胞培養のイメージ図。IL はそのイオン設計によってイオンでありながら水と相分離し、界面を形成する。  図 2 細胞毒性試験に用いた IL の(a)カチオン構造(b)アニオン構造および疎水性 IL を(c)1 時間あるいは(d)24 時間共存させた際の細胞生存率。図中、白抜きがアンモニウム系 IL、赤がホスフォニウム系 IL、黒が IL非共存下における生存率を表す。  モデル IL として選定した。疎水性 IL の細胞毒性の評価方法や結果については紙面の都合上、詳述しないが最近、我々は IL の細胞毒性試験に機械学習を組み込むことで、合成の容易ないくつかのアルキルアンモニウム系疎水性 IL も細胞無毒性を示すことを見出した 21。興味のある方はご参照頂ければ幸甚である。  細 胞 毒 性 試 験 の 結 果 に 基 づ き 3 種 の 疎 水 性IL([P2,2,2,5][TFSI] 、 [P4,4,4,1][TFSI] 、[P6,6,6,14][TFSI])を対象に、界面における hMSCs の挙動を検討した。これらの IL を水と相分離させることで液|液界面を形成し、その表面に細胞を播種した後、接着状態を観察した。図 3(a)-(f)に示すように、各 IL 界面および比較対象として設けたガラス基板上に接着した細胞の明視野像を取得したところ、細胞面積や伸展形態は IL のカチオン構造に依存して明確に異なる傾向を示した。一般に、細胞は高弾性率の足場上では扁平かつ広がった形態を示し、柔らかい環境では球状に近づくとされる。本系においては[P4,4,4,1][TFSI]および[P6,6,6,14][TFSI]界面では細胞はよく伸展し、一方で  [P2,2,2,5][TFSI]界面では比較的丸みを帯びた形態が多く観察された。これらの結果は、細胞が界面を前者では固いと、後者では柔らかいと感受している可能性を示唆している。 この観察結果を裏付けるため、細胞接着に関与するタンパク質であるビンキュリンの局在を蛍光染色によって可視化した(図 3(g))。ビンキュリンは膜貫通タンパク質であるインテグリンと細胞骨格であるアクチンを連結する FA 構造に集積することで知られており、細胞-基質間の力学的カップリングの指標とされている。染色像の解析から[P4,4,4,1][TFSI]および[P6,6,6,14][TFSI]界面では細胞辺縁部におけるビンキュリンとアクチンの共局在が明瞭であり、FA 形成が生じていることが確認された。一方で、[P2,2,2,5][TFSI]においてはビンキュリンの局在が乏しく、FA 形成はほとんど観察されなかった。さらに細胞が界面の力学特性に応答して活性化されるメカノトランスデューサーである YAP(Yes Associated Protein)の細胞内局在を染色によって評価した。YAP は細胞が足場を「固い」と認識すると核内へ移行し、「柔らかい」と判断した場合には細胞質にとどまることが知られている。IL ごとの比較では[P4,4,4,1][TFSI]および[P6,6,6,14][TFSI]において YAPの 明 瞭 な 核 内 局 在 が 確 認 さ れ た の に 対 し 、[P2,2,2,5][TFSI]では YAP は主に細胞質に分布しており、界面を柔らかい環境として認識していることが示唆された(図 3(h))。これら一連の結果は、サブフェーズとして用いる IL の種類が、細胞の接着状態や形態、力学的応答に大きな影響を及ぼすことを示している。特にカチオン構造の異なるホスフォニウム系 IL によって、細胞が界面の力学的性質を異なる感度で捉えていることが明らかとなった。これを踏まえ、次節では IL 界面に形成される PNL の性状を詳細に評価していく。 ２－２. イオン液体界面に形成される PNL  IL界面に形成されるPNLの構造と力学特性を評価するた 図 3 各 IL およびガラス表面上の(a)細胞面積、(b)真円 度 。 (c)[P2,2,2,5][TFSI],(d)[P4,4,4,1][TFSI], (e)[P6,6,6,14][TFSI]および(f)ガラス表面上に接着した hMSCs の顕微鏡画像。(g)各表面における蛍光染色画像。赤: F-アクチン、緑: ビンキュリン、青: 核を示している。(h)Yes Associated Protein (YAP)の蛍光染色画像。  図 4  (a)[P2,2,2,5][TFSI], (b)[P4,4,4,1][TFSI], (c)[P6,6,6,14][TFSI]界面に形成された PNL の AFM 像、およびそれぞれに対応する図中の赤線に沿った断面プロファイル((d)-(f))。  め、まずモデルタンパク質として BSA を 1mg mL-1に溶解した PBS 溶液と 3 種類の疎水性 IL を接触させ、PNL の形成を誘導した。その界面構造を原子間力顕微鏡(AFM)で観察したところ、BSA 吸着前は平坦だった界面に吸着後は粒状の微細構造が現れ、表面が僅かに粗くなる様子が確認された(図4(a)-(c))。PNL の厚みは AFM カンチレバーを用いて形成層を 局 所 的 に 削 る こ と で 評 価 し た 。 結 果 と し て[P2,2,2,5][TFSI]では約 4 nm、[P4,4,4,1][TFSI]で約 2.5 nm、[P6,6,6,14][TFSI]で約 1.5 nm とカチオン構造が変化するにつれて僅かに薄くなる傾向が観察された(図4(d)-(f))。BSA の短軸長(約 3 nm)と比較すると、PNL はおおよそ単分子層として形成されていると推察される。さらにナノインデンテーションによる力学測定を行い、PNL の見かけのヤング率を算出したところ、それぞれ 15.0  kPa([P2,2,2,5]) 、 30.6 kPa([P4,4,4,1]) 、 45.9 kPa([P6,6,6,14])と約 2-3 倍、変化した。この傾向は先に示した hMSCs の伸展度ともよく対応している。  PNLのヤング率変化がILのどのような物性に由来するのかを探る上で、Fischer らによる有機溶媒界面での先行研究が参考になる 22, 23。彼らはオクタンやオクタノールなど水と相分離する有機液体を用いた PNL 形成において、液体のバルク極性が PNL の厚みと力学特性に影響することを報告している。すなわち、極性の低い液体界面ではタンパク質が強く変性して吸着し、結果として薄くて固い PNL が形成され、逆に極性が高い界面では変性が抑えられ、厚くて柔らかい PNL が形成されるというものである。本研究でも同様に、IL 構造の違いによって PNL の見かけのヤング率と厚みに差が生じたことから、BSA の変性挙動に着目した。AF-IR ATR によるスペクトル解析の結果、アミドⅠバンドとⅡバンドの比は[P2,2,2,5]<[P4,4,4,1]<[P6,6,6,14]の順で増加しており、より長いアルキル鎖をもつ IL ほど BSAの変性が進んでいることが示唆された。 そこで IL 界面のバルク極性との関係を検討するため、極性指標として広く用いられている ET(30)値を測定した。各 ILの ET(30)はそれぞれ[P2,2,2,5]で 47.4 kcal mol-1、[P4,4,4,1]で 46.6 kcal mol-1、[P6,6,6,14]で 45.5 kcal mol-1で順当に低下傾向を示した。しかしながら、その差は僅か 2 kcal mol-1に過ぎず、PNL の固さが 2-3 倍も変化する理由を説明するには不十分である。実際、Fischer らが示した n-オクタン(31.1 kcal mol-1)とオクタノール(48.1 kcal mol-1)では約 17 kcal mol-1の開きがあり、極性と PNL特性との相関がより明確であった。以上のことから IL 界面では単純なバルク極性だけでは説明しきれない別の要因がPNL 形成に関与している可能性が高いと考えられた。そこで次に高速AFMを用いたリアルタイム観察によってIL界面における PNL の形成プロセスを直接可視化し、その形成メカニズムの解明に取り組んだ。 ２－３. PNL 形成における BSA の動態と力学特性の関係 PNL の形成過程を可視化するため、高速 AFM を用いて各IL 界面における BSA の吸着挙動を観察した(図 5(a)-(c))。界面に到達した BSA は界面で直ちに静止、吸着するのではなく、一定時間ブラウン運動を続けることが確認され、さらにその拡散挙動は IL の種類、すなわち界面の分子環境によって大きく異なっていた。BSA の拡散係数(D)は、平均二乗 変 位 解 析 か ら 算 出 さ れ 、 [P2,2,2,5][TFSI] で は1.71x10-10 cm2 s-1、[P4,4,4,1][TFSI]では 6.18x10-11 cm2 s-1、[P6,6,6,14][TFSI]では 3.73x10-12 cm2s-1と 2 桁にわたり変化した(図 5(d))。この拡散係数の序列は PNL の見かけのヤング率とは逆相関にあり、初期の吸着挙動が最終的な力学特性を決定づけている可能性が高い。 このような BSA の吸着挙動は、界面における分子レベルの構造によって支配されると推察された。本研究で用いた[P6,6,6,14][TFSI]などはカチオンが長鎖アルキルのみで囲まれており、より疎水的な界面構造が形成されると考えられる。対照的に[P2,2,2,5]や[P4,4,4,1]では短鎖のメチル基、エチル基を含むためより親水性に富んだ界面となり、タンパク質が高次構造を保ったままソフトに吸着しやすい。西らによる最近の研究では[N8,8,8,1][TFSI]と水の界面において、より高極性のメチル基が水側に配向し、界面がメチル基リッチの比較的、高極性の界面が形成されることが報 告 さ れ て い る 24 。 [P2,2,2,5][TFSI] あ る い は[P4,4,4,1][TFSI]界面ではこのような比較的、高極性の界面が形成され、疎水性相互作用を駆動力とする界面拡散に対する抵抗が働きにくかったものと考えられる。このような界面の極性・イオンの状態はバイオマテリアル界面設計の観点からも以前から注目されてきた。例えばポリ(メタクリロイルオキシエチルホスフォリルコリン) 25 やポリスルフォベタイン 26といった双性イオン高分子はイオン間距離や分極性の制御によってタンパク吸着性を低減している。   図 5  (a)[P2,2,2,5][TFSI], (b)[P4,4,4,1][TFSI], (c)[P6,6,6,14][TFSI]界面で PNL が形成される初期過程における BSA の重心変位。(d)平均二乗変位と時間の関係から求められる各IL界面におけるBSAの二次元拡散係数。  IL 界面においても界面のイオン配向はナノスケールの構造秩序性が、タンパク質の吸着挙動やその後の力学特性に強く関与していると考えられる。事実、比較対象として低極性フッ素系液体であるパーフルオロオクタン(PFO)界面でも同様の観察を試みたが、BSA は接触直後、瞬時に変性し膜化するためにブラウン運動は全く観察されなかった。裏を返すと、PNL 形成のような界面における繊細な自己集合プロセスを追跡できたのは IL 界面がもつ高極性かつ秩序化された構造があってこそといえる。また興味深いことに BSA は IL 界面でモノレイヤー構造をとっているようで、既存の PNL 上に積層することはなかった。これはすなわち、サブフェーズとの間に強い疎水性的相互作用を持ちつつ、水相側に露出した親水性残基が、後続の BSA 分子との間で排除体積効果や静電反発などの斥力的相互作用を引き起こし、多層吸着を防いでいると考えられる。このような自己制限的な吸着様式は、機能性タンパク質の高密度配列や、バイオセンシング表面への応用において有望な構造戦略となり得る。IL のような高極性液体界面を利用し、タンパク質の変性を抑えつつ高密度に機能性タンパク質(例えば酵素タンパク質など)を配列させることができればセンサーや反応場としての応用も期待できるかもしれない。 ２－４．イオンゲルを利用した細胞培養  これまでに述べたとおり、細胞の形態や挙動は液体界面に形成される PNL の力学特性に大きく影響される。しかしPNL はあくまでタンパク質の自発的な集合によって形成される極薄構造であり、力学的に脆弱である。冒頭で述べたように従来は界面に吸着したタンパク質を化学的に固定化するなどの界面エンジニアリングによって PNL を補強する方法が用いられてきたが、ここではそのアプローチとは質的に異なる戦略を紹介したい。  鍵となったのは IL が高分子を溶媒・膨潤できるという特性である 27。一般的に液体培養に用いられるフッ素系液体や PDMS は化学的に安定である一方、高分子をほとんど溶解できない。これに対し、ILはポリ(メタ)アクリル酸エステル類や一部のポリ(メタ)アクリルアミド類など多様な高分子に対して高い溶解性を示す。我々はこの特性を活かし、細胞無毒性 IL と重合後も良好な溶解性を示した n-メタクリル酸ブチルを[P2,2,2,5][TFSI]中で重合・架橋することでイオンゲルを作成した。このイオンゲルを足場材料として 用 い 、 hMSCs を 培 養 し た と こ ろ 液 体 状 態 の[P2,2,2,5][TFSI]界面で観察されたものとは異なり、細胞は顕著に伸展し、その形態も大きく変化した(図 6)。つまり PNL そのものを改変することなく、IL を膨潤媒体とした高分子ネットワークとの複合化によって細胞表現型の制御が可能となったのである。この結果は IL の高分子溶解性が従来とは異なる細胞足場設計の道を開くことを示しており、今後は外部刺激に応答して力学特性を変化させるスイッチング型ゲルの設計など、細胞にダイナミックな力学刺激を与える足場材料への展開も期待される。 ３．おわりに 本研究では新たな細胞培養プラットフォームとして IL界面の活用を提案した。IL はイオンのみから構成される液体でありながら、水と相分離する特性を持つ。このため、従来の細胞培養に用いられてきた分子性液体とは質的に異なる分子環境を提供する。特に本研究では IL 界面に形成される PNL の構造と力学特性、さらにその形成プロセスの詳細を解析し、界面特性と細胞の挙動との相関を明らかにした。IL は高い高分子溶解性を有するという点でもユニークである。この性質を活かすことで液体そのものをゲル化(擬固体化)させ、細胞の表現型を制御するという新しいアプローチが可能になった。PNL の界面への化学固定のような従来の界面改質とは異なり、液体と高分子ネットワークの複合化によって力学環境を柔軟に調整する戦略である。 一方、IL のような液体足場はその可変形性や流動性ゆえに、細胞を含む液滴の分散培養やフロー型システムによる操作、さらには濾過を通じた細胞の回収・再利用といった全自動プロセスへの応用が期待される 28。こうした機能は従来の固体足場材料では不可能である。液体足場材料をMEMS 技術と統合することができれば小型・高効率(低コスト)・脱プラスチックを志向した次世代型培養基盤の構築も視野に入る。加えて今回用いた IL は蒸気圧が極めて低く、水にもほとんど溶けないため、環境中への拡散が抑制される。使用後の水洗・乾熱滅菌による再利用も可能なため、使い捨てプラスチックディッシュとは異なる、持続可能な培養材料としても次世代の有望な細胞足場となりうる。基礎科学の観点からも、IL 界面における細胞の動態、さらにはタンパク質の吸着挙動など未解明な現象が多く残されている。特に「水と相分離しながらも高極性」という IL の希有な界面の特徴は、生体分子との相互作用を制御する新しいモデル系として、界面化学の深化に貢献しうる。液体界面で生じるタンパク質吸着や構造変化といった現象は、食品・化粧品・農業といった分野においても広く関与しており、IL はその解明に向けた基盤的な研究対象としても位置づけられるかもしれない。高分子科学や細胞生物学、生物物理、そしてバイオマテリアルのみならず、分光計測、計 図 6  (a)[P2,2,2,5][TFSI] の 液 体 界 面 お よ び[P2,2,2,5][TFSI]で膨潤させたポリ(メタクリル酸ノルマルブチル)イオンゲル界面における(a)細胞面積および(b)真円度。インセットにはイオンゲル界面におけるLife-Act GFP を発現させた hMSCs の伸展の様子を示す。  算科学など多くの研究分野の研究者を巻き込んだ展開が望めるものと期待している。 本稿は科研費基盤 B(20K21229, 20H02804, 23H02030)のご支援のもと進めた研究をまとめたものです。研究遂行にあたって数々のご助言、ご指導を賜りました中西淳グループリーダー(NIMS)、山本翔太研究員(NIMS)、宇都甲一郎主幹研究員(NIMS)に感謝いたします。高速 AFM 測定に関して生体分子計測研究所のご尽力に感謝いたします。 ４．参考文献 (1) Plechkova N. 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