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[西野 正理](https://orcid.org/0000-0002-2060-2303), 宮下 精二

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[原子論的スピンモデルによる永久磁石の磁気特性の研究 ―熱揺らぎおよび温度効果の取り扱いと将来展望―](https://mdr.nims.go.jp/datasets/3764822b-f946-4b5a-bc16-cec21296b370)

## Fulltext

原子論的スピンモデルによる永久磁石の磁気特性の研究―熱揺らぎおよび温度効果の取り扱いと将来展望―西 野 正 理 1,＊ 宮 下 精 二 21 国立研究開発法人　物質・材料研究機構2 東京大学大学院理学系研究科J. Japan Inst. Met. Mater. Vol. 87, No. 5 (2023), pp. 158–172Special Issue on Recent Advancements in Science of Coercivity© 2023 The Japan Institute of Metals and MaterialsOverviewAtomistic Model Study on Magnetic Properties of Permanent Magnets―Treatment of Thermal Fluctuation andThermal Effects, and Future Perspective―Masamichi Nishino1,＊ and Seiji Miyashita21 National Institute for Materials Science, Tsukuba 305–00472 Graduate School of Science, The University of Tokyo, Tokyo 113–0033We review atomistic spin model studies, a new approach for theoretical investigations, on magnetic properties of permanent magnets. Inthe atomistic modeling, the microscopic details of magnetic parameters and lattice structures are realistically considered, and the temperatureeffect, including thermal fluctuation, is properly treated based on statistical physics methods: Monte Caro methods and stochastic Landau–Lifshitz–Gilbert equation methods. We introduce how to treat thermal effects for static and dynamical properties using these methods. Focusingespecially on neodymium permanent magnets, we discuss features of magnetization, domain wall, coercivity of a grain, nucleation and pinningfields, and dysprosium substitution effect, which were first elucidated with those methods. ［doi:10.2320/jinstmet.JA202202］(Received November 28, 2022; Accepted February 7, 2023; Published April 25, 2023)Keywords: atomistic spin model, thermal fluctuation, thermal effects, permanent magnets, stochastic Landau–Lifshitz–Gilbert (LLG) equation,Monte Caro method1.　は　じ　め　に永久磁石の保磁力の制御は，高いエネルギー変換効率の実現へ向けて重要な課題である．ネオジム磁石（Nd–Fe–B 磁石）1–9）は，強力な永久磁石として知られ，モーター，発電機，電化製品などに使用されている．電気自動車のモーターへの需要の高まりもあり，今後もその利用が拡大していくと考えられる．ネオジム磁石は，高温での保磁力に課題があり，しばしばジスプロシウム（Dy）などの重希土類を添加することで保磁力強化して使用される．日本は，この希土類資源を海外に依存しているが，価格不安定化の問題もあり，希少元素の使用を減らした高性能永久磁石開発が求められている．そのような背景のもと，2012 年から 10 年間にわたって国立研究開発法人物質・材料研究機構を拠点とした国家プロジェクトである元素戦略磁性材料研究拠点（ESICMM）プロジェクト（2012–2021 年度）が遂行され，保磁力研究は実験，理論において大きく進展した10）．本稿では，特に著者らがESICMMで開発を進めた電子論からの微視的モデル化と有限温度の保磁力の理論研究11–28）を中心に解説する．永久磁石の磁気特性や保磁力の理論的研究は，マイクロマグネティクスの分野で発展してきた29）．マイクロマグネティクス計算の詳細に関しては，同特集の田中智大氏の解説を参照されたい．マイクロマグネティクス計算では，nm オーダーのブロック磁化（磁化の大きさは固定）を最小単位として磁化を空間的に連続化した連続体モデルを考え，交換スティフネス定数（A）および磁気異方性エネルギー（K）を主とした小数のマクロな磁気パラメーターで磁性体を記述する．この方法は，磁性体を構成するグレイン（粒）の集合体のシステムサイズ（µm オーダー）を扱える利点があり，数多くの磁化反転などの磁気特性のシミュレーションが行われてきた．しかし，原子レベルの磁気相互作用により発現する磁気特性のミクロな機構は，粗視化のために取り扱えない．また，以下に述べるように熱揺らぎや温度効果の取り扱いに課題がある．有限温度での保磁力は，熱活性による準安定磁気状態の崩壊を伴う現象である．磁化反転はエネルギーバリアを超える必要があり，熱揺らぎで発生するため，確率過程である．このような効果を定量的に研究するには，温度 Tでのエントロピー効果を統計物理学に従って正しく扱う必要がある．熱平衡状態では，状態 i の実現確率 PeqðiÞ は，カノニカルアンサンブル（正準集合）において状態 iのエネルギー EðiÞを用いて* Corresponding author, E–mail: nishino.masamichi@nims.go.jp日本金属学会誌 第 87 巻 第 5 号 (2023)158–172特集「保磁力の学理における最近の進歩」オーバービューhttps://doi.org/10.2320/jinstmet.JA202202Peq ¼ 1Ze��EðiÞ ð 1 Þと表される．ここで �はボルツマン定数 kB を用いて � ¼ 1kBTで定義される．Zは分配関数と呼ばれる量で，Z ¼Xallie��EðiÞ ð 2 Þで定義され，和は全ての状態についてとる．従って，任意の物理量 Aの熱平衡状態の値 hAiは，カノニカルアンサンブルでの平均で以下のように与えられる．hAi ¼ 1ZXalliAðiÞe��EðiÞ: ð 3 Þマイクロマグネティクスの連続体モデルの粗視化ハミルトニアンを使用する場合，状態の自由度（エントロピー）が不明瞭であり，上記の確率を適用することは困難である．温度効果を適切に扱うためには，カノニカルアンサンブルによる統計物理的手法を使用する必要がある．原子論に立脚した，系の全原子のスピンを考慮したスピンモデルを構築することで，状態および状態数（エントロピー）が定義され，統計物理学の手法を用いて温度効果を正しく取り入れた解析が可能になる．本稿では，特にネオジム磁石に注目して，原子論的スピンモデルについて説明し，有限温度（絶対零度を含む）の磁気物性を計算するための統計物理学手法を紹介する．そして，その方法論を用いて明らかになったさまざまな磁気特性について解説する．2.　原子論的スピンモデルネオジム磁石の母相 Nd2Fe14B のユニットセルを Fig. 1 に示す30）．2 種類の Nd サイト，6 種類の Fe サイトおよび 1 種類の Bサイトがある．ネオジム磁石の微視的モデルとして以下の原子論的ハミルトニアンを採用する13–15,24）．この系は 3次元の強磁性体であるため，スピンを古典的に扱う．H ¼�Xi<j2Jijsi � sj �XFeiDiðszi Þ2þXNdiXl;m�l;iAml;ihrliiÔml;i � hXiSzi : ð 4 ÞJij は i 番目と j 番目の原子間の交換相互作用，Di は i 番目のFe 原子の異方性エネルギーである．第 3 項は，Nd の結晶電場（CEF）エネルギーであり，�l;i，Aml;i，hrlii，および Ôml;i はStevens 係数，結晶場の球面調和関数の係数，動径波動関数での rl の平均，および Stevens 演算子である．第 4 項はZeeman 項で，h は外部磁場を表す．ここでは l ¼ 2; 4; 6 および m ¼ 0（対角項）を考慮する． Ôml;i は Ô02 ¼ 3J2z � J2 などである．Feおよび B 原子の場合，si は i 番目のサイトの磁気モーメントを示すが，Ndの場合，si は原子価電子（5dおよび 6s）のモーメントであり，Fig. 2（a）に示すように Hund 結合により4–f 電子のモーメント J i ¼ gTJi�B と強く結合する．ここでgT は Landé g–factorであり，Ji は軌道角運動量 Lとスピン角運動量 S からなる全角運動量である．J ¼ L � S ¼ 9=2 および gT ¼ 8=11で与えられる．従って，Nd 原子の合計モーメントは Si ¼ si þJ i で与えられる．Fe と B 原子に対しては，Si ¼ si と定義する．尚，Nd 原子の si と Fe 原子の Sið¼ siÞ は反強磁性的に結合しているが，Nd 原子の Si と Fe 原子の Siは強磁性結合していることに注意されたい．磁気モーメントと交換相互作用は， Korringa–Kohn–Rostoker（KKR）31）第一原理計算により見積もった値を用いる．値は文献24）に与えられている．Nd2Fe14Bは電子に遍歴性があるが，遍歴磁性の効果を取り込む方法論は確立していない．ここでは遍歴性のために Jij は距離に対して広く分布していると考える．そして寄与の大きい r ¼ 3:52Åの範囲の Jij を考慮する13）．Fe の異方性は第一原理計算の文献値32）を採用した．Nd 原子に関して，結晶場係数 Aml;i の第一原理計算の見積もりについてはまだ確立していないため，実験で見積もられた値を採用し33），hrlii は Hartree–Fock 計算の値34）を用いる．本稿で扱う系のサイズ（数十 nmスケール以下）では，磁気双極子相互作用はあまり重要ではなく，ここでは考慮していないが，8 章でその取り扱いについて言及する．3.　熱力学量およびダイナミクスの計算手法式（ 4 ）のような原子論的スピンモデルが構成できれば，系の状態や状態数が明確に定義できて，統計物理学の手法を用いて有限温度物性が計算できる．ここでは主に熱平衡状態の計算に用いられるモンテカルロ（Monte Carlo）法と時間依存ダイナミクスの計算に用いられる stochastic Landau–Lifshitz–Gilbert（sLLG）方程式11,35）の方法について述べる．3.1　モンテカルロ法3.1.1　カノニカルアンサンブルのモンテカルロ法熱平衡状態の物理量 hAi を計算するためにモンテカルロa bc(a)(b)(c)12.198.80Fig. 1 (a) Unit cell of Nd2Fe14B. Nd, Fe, and B atoms are denotedby red, blue, and yellow spheres, respectively. The lattice constants forthe a, b, and c axes are da ¼ db ¼ 8:80Å, and dc ¼ 12:19Å,respectively. (b) Side view (from a or b axis). (c) Top view (fromc axis). Reprinted figure with permission from [M. Nishino et al.,Phys. Rev. B 103 (2021) 014418]. Copyright (2021) by the AmericanPhysical Society.原子論的スピンモデルによる永久磁石の磁気特性の研究 ―熱揺らぎおよび温度効果の取り扱いと将来展望―第　5　号 159（Monte Carlo）法がしばしば用いられる．モンテカルロ法では，状態 iに依存した確率でサンプリングし（重み付きサンプリング），サンプリング平均を取ることで式（ 3 ）を実現する．時刻 t でのスピンの状態（S1 � � �Sk � � �SN）を状態 i とすると，t þ�t での状態 i の確率は以下のマスター方程式で与えられる．Pði; t þ�tÞ ¼ Pði; tÞ �Xj≠iWði ! jÞ�tPði; tÞþXj≠iWð j ! iÞ�tPð j; tÞ: ð 5 Þここで，Wði ! jÞ は，状態 i から状態 j への単位時間あたりの遷移確率である．モンテカルロ法では，�t ¼ 1として 1ステップ（1モンテカルロステップ）ごとに状態を更新する．このとき，任意の状態 i から任意の状態 j への遷移確率Wði ! jÞに対して，次のエルゴード性と詳細釣り合いを満たせば，任意の初期状態から始めて，唯一の定常状態に収束することが保証されており，平衡分布（カノニカル分布）が生成される．（I）エルゴード性（conectivity condition）：任意の状態 i， j，に対して遷移確率 Wði ! jÞがゼロでない，または，有限個のゼロでない遷移確率の積で表せる．（II）詳細釣り合い（十分条件であり，詳細釣り合いを満たさない方法もある36））：PðiÞeqWði ! jÞ ¼ Pð jÞeqWð j ! iÞ: ð 6 Þここで，PðiÞeq ¼ e��EðiÞ=Z（平衡分布）とする．この条件を実践するアルゴリズムで良く使用されるメトロポリスアルゴリズムでは， i ! j の状態更新は，HðiÞ � Hð jÞ ならば Wði ! jÞ ¼1，HðiÞ < Hð jÞ，ならば Wði ! jÞ ¼ expð��ðHð jÞ � HðiÞÞÞ の確率で行う．遷移確率は（I），（II）を満たせば任意に選べ，また，モンテカルロステップは実時間とは異なるため，モンテカルロ法は平衡状態の物理量の計算や 3.1.2 項で示す自由エネルギー計算に用い，実時間ダイナミクスの解析には 3.2 節に述べる方法を用いる．3.1.2　拡張アンサンブル法と自由エネルギー計算分配関数は，エネルギーに対する状態密度 �ðEÞを使ってZ ¼XE�ðEÞe��E ð 7 Þと表すこともできる．状態密度がわかれば，分配関数が得られ，自由エネルギー FがF ¼ � 1�lnZ ð 8 Þにより計算できる．マルチカノニカルモンテカルロ法37,38）を用いることで，自由エネルギーの計算が可能になる．先ほどのカノニカルアンサンブルのモンテカルロ法では，Boltzmann 因子 e��E に基づいたサンプリングを行っている．このサンプリングでは，高いエネルギーバリア付近の状態は実現確率 PðEÞð/ e��EÞの低い状態になり，サンプリングされに く い． 従 っ て， エ ネ ル ギ ー ヒ ス ト グ ラ ム HðEÞ /�ðEÞPðEÞ / �ðEÞe��E は，高いバリア付近のエネルギーではゼロに近い．マルチカノニカル法は，高いエネルギー状態もサンプリングするように，非 Boltzmann 因子 e�fðEÞ によるサンプリングを行う．エネルギーヒストグラム HðEÞ がフラット（HðEÞ ¼ C（一定））になるように状態の実現確率 PðEÞ を調整してゆき，最終的にエネルギー空間上のランダムウォークを実現し，PðEÞ ’ C�ðEÞ を得る．�ðEÞ=C が得られれば，式（ 7 ），式（ 8 ）より自由エネルギーが計算できる（Cはコンスタントの寄与）．この方法は，カノニカルアンサンブルのモンテカルロ法より手間がかかるが，マルチカノニカル法の一種であるWang–Landau 法38）などがよく用いられている．マルチカノニカル法や異なる温度間の遷移を考慮するレプリカ交換法39）などは，総じて拡張アンサンブル法と呼ばれる．これらの方法は，1 次転移の計算やポテンシャルエネルギーが多谷構造を持つ系のグローバルミニマムを求める計算のために開発され，スピングラスの緩和やタンパク質の構造計算などさまざまな分野で用いられている．保磁力解析においては，磁化の空間での実現確率を考慮するのが便利である．状態密度はエネルギーおよび磁化 Mz の関数として，分配関数をZ ¼XMzXE�ðE;MzÞe��E �XMzZðMzÞ ð 9 Þと表す．FðMzÞ ¼ � 1�lnZðMzÞ ð10Þにより，磁化空間での自由エネルギー（自由エネルギーランドスケープ）が計算でき，磁化に対するエネルギーバリアが得られる．ここでは，磁化に対するヒストグラム HðMzÞ は，カノニカルアンサンブルでは HðMzÞ / ZðMzÞ であるが，マルチカノニカル法では HðMzÞ / ZðMzÞPðMzÞ として，エネルExNdFe4f5dHundSOIExDyFe4f5dHundSOI(b)(a)s sFig. 2 (a)Magnetic coupling between Nd and Fe atoms. The total moment in an Nd atom and that in an Fe atom are ferromagnetically coupled. Ex andSOI represent the exchange interaction and spin–orbit interaction, respectively. (b) Magnetic coupling between Dy and Fe atoms. The total magneticmoment of a Dy atom and that of an Fe atom are antiferromagnetically coupled. Reprinted figure with permission from [M. Nishino et al., Phys. Rev. B106 (2022) 054422]. Copyright (2022) by the American Physical Society.日 本 金 属 学 会 誌（2023）160 第　87　巻ギーの場合と同様に HðMzÞ ¼ C となるよう磁化の実現確率PðMzÞ を調節する40,41）．最終的に PðMzÞ ¼ C=ZðMzÞ が得られ，式（10）より FðMzÞが得られる．3.2　Stochastic LLG 方程式の方法モンテカルロ法は，ゼロ温度または有限温度の平衡状態の計算には有効な方法であるが，何秒後にどのような状態であるかという実時間ダイナミクスの具体的情報は得られない．実時間ダイナミクスについては，スピンの運動方程式を解く必要がある．LLG 方程式（式（11））は，その標準的な方程式であり，磁化の歳差運動を表すトルクの運動方程式とその緩和項からなる．ddtSi ¼ � �1 þ �2iSi � heffi � �i�ð1 þ �2i ÞSiSi � ½Si � heffi �: ð11Þここで，�は磁気回転比，�i は減衰定数である．heffi ¼ � @H@Sið12Þは，iサイトにかかる有効磁場であり，外部磁場の他，iサイトの周りの交換相互作用やダイポール相互作用，i サイトの磁気異方性エネルギーによる磁場を含む．絶対零度では，熱揺らぎがないためエネルギーバリアを超えるプロセスは存在せず，この方程式を用いて磁化のダイナミクスが計算できる．それに対して，有限温度の場合，熱揺らぎによってエネルギーバリアを超えて準安定状態から安定状態へ緩和する過程が起こり得る．この熱ゆらぎの効果は，ノイズ磁場 �iðtÞを導入することで与えられる11,35）．heffi は次のように修正される．heffi ¼ � @H@Siþ �iðtÞ: ð13Þここで，�iðtÞ ¼ ð�xi ; �yi ; �zi Þは白色ガウシアンノイズであり，次の関係式を満たす．h��i ðtÞi ¼ 0; h��i ðtÞ��j ðsÞi ¼ 2Di�ij����ðt � sÞ: ð14Þこのノイズは以下に示すように温度と関係づけられる．このsLLG 方程式と等価な確率分布関数の時間発展方程式（Fokker–Planck 方程式の Stratonovich 表現）11）は次のように与えられる．@@tPðS1; � � � ;SN; tÞ ¼Xi�1 þ �2i@@Si� �iSiSi � ðSi �Heffi Þ��� �DiSi � Si � @@Si� ��PðS1; � � � ;SN; tÞ�þXi�1 þ �2iðSi �Heffi Þ � @@SiPðS1; � � � ;SN; tÞ:ð15Þここで，次の揺動散逸関係を満たせばDi ¼ �ikBT�Si; ð16Þ分布関数が温度 Tの定常状態（t ! 1）でカノニカル分布PeqðS1; � � � ;SNÞ / expð��HðS1; � � � ;SNÞÞ ð17Þに一致することが証明できる11,35）．すなわち，減衰定数が与えられれば，温度 Tはノイズの大きさ（振幅）を変えることで制御できる．sLLG 方程式は確率微分方程式であり，ノイズが物理量（磁化）にかけ算の形でかかるため，いわゆる mul-tiplicativeな過程となり，積分の仕方に注意が必要である．4.　熱力学的性質4.1　磁化Fig. 3に sLLG 法とモンテカルロ法（メトロポリスアルゴリズム）で計算した平衡状態での Nd2Fe14B 磁石の磁化の温度依存性を示す．Mは磁化の大きさ，Mz は磁化の z 成分（c 軸成分），Mxy は磁化の xy 成分（ab 平面成分）である．sLLG 方程式の計算値とモンテカルロ法での計算値が良い一致を示しており，両方法の計算で平衡状態（カノニカル分布）が実現している．スピン再配列転移は Mz が最大値をとる 150 K 付近で起こることがシミュレーションで確認された4,6–8）．Fig. 4（a）にNd2Fe14B 中の Nd 原子の結晶電場（CEF）エネルギーの温度変化を示す．c 軸からの角度を   としている．絶対零度では  ’ 0:2 または   ’ 0:8 にポテンシャルミニマムがあるが，スピン再配列転移温度以上の温度では   ¼ 0 または   ¼  にミニマムが移っており，スピン再配列転移することが理解できる．キュリー温度 TC は約 870K（Binderプロット42）による無限系の TC の推定値）であり，実験での値約 600K4,5）を過大評価しているが，これは第一原理計算での磁気相互作用の過大評価からきている．しかし，第一原理計算の精度の現状を考慮すると十分信頼性のある値である．従って，以後温度を TCを単位として表す．平衡状態の物理量を得る場合は，経験的にはモンテカルロ法の方が短いシミュレーション時間で済む．4.2　Domain wallDomain wall（磁壁）の性質は，磁化反転過程を研究する上で重要である．ここでは，モンテカルロ法（メトロポリス法）で計算した磁壁形状，磁壁幅の温度による変化を示す．ネオジム磁石には c 軸方向に異方性があるため，Fig. 5（a）に示すように 2 種類の磁壁が可能である．a 軸（あるいは b 軸）方向Magnetization [B / formula unit]M(sLLG)Mz(sLLG)Mxy(sLLG)M(MC)Mz(MC)Mxy(MC)T [K]Fig. 3 Temperature dependences of M, Mz, and Mxy of the atomisticmodel for the Nd2Fe14B magnet with comparison between MonteCarlo and stochastic–LLG methods. 6 × 6 × 6 unit cells with periodicboundary condtions.原子論的スピンモデルによる永久磁石の磁気特性の研究 ―熱揺らぎおよび温度効果の取り扱いと将来展望―第　5　号 161に進む Blochタイプの磁壁と c 軸方向に進む Néelタイプの磁壁である．Blochおよび Néelの磁壁について，それぞれ a 軸方向，c 軸方向の位置 x での磁化 fMzðxÞg をモンテカルロ法で計算し，そのスナップショットを重ねてプロットした図（シンボル）を Fig. 5（b）と Fig. 5（c）に示す14）．横軸は格子定数を単位としている．次に，このプロットから，ドメインウォール幅を求める．ドメインウォール幅は連続体モデルにおいて，以下のように定義される29）．mðTÞ を温度 T での磁化の大きさとすると，ドメインウォールの中心（mzðxÞ ¼ 0）からの位置 xでの磁化の z 成分はmzðxÞ ¼ �mðTÞ tanh x�0� �ð18Þと与えられる．�0 はウォールパラメータと呼ばれ，�0 �ffiffiffiffiffiAK1pで定義される．ここで，A，K1，は連続体モデルのスティフネス定数と第一磁気異方性定数である．磁壁幅は�W ¼ �0 ¼ ffiffiffiffiffiffiAK1rð19Þで与えられる．モンテカルロ法で得られた Mz のスナップショットのデータに，�0 と mðTÞ をフィッティングパラメータとして mzðxÞ（式（18））をフィッティングすることにより �0が得られ，磁壁幅 �Wが評価できる．磁壁幅の温度依存性をFig. 5（d）に示す．高温では磁壁幅が拡がる．室温付近では，6–7 nm ほどである．実験から見積もられた A と K129,43,44）から得られる磁壁幅は 3.6–5.4 nm，電子顕微鏡による観察45–47）では 1–10 nmであり，この計算で実験に近い値が得られている．Bloch 磁壁より Néel 磁壁の方が幅が狭いのは，Nd 面が c軸に垂直である格子構造に起因すると考えられる．隣接するNd 原子と Fe 原子の間の交換相互作用は，隣接する Fe 原子間の相互作用よりも小さい．前者の交換エネルギー j2Jijsisjjは 1.60–7.10meV（r � 3:52Å）であるのに対して，後者は16.22–44.6meVである．Blochおよび Néel 磁壁の温度依存性は，マクロなパラメーターであるスティフネス定数と磁気異方性定数を原子論的モデルから求めることでも評価できる．カノニカルアンサンブルのモンテカルロ法により温度 Tでの磁壁エネルギー EDWðTÞ を求め，磁化の方向を固定した制限付きモンテカルロ法（constrained Monte Carlo）48）を使用することにより，有限温度の磁気異方性エネルギーの   依存性EAðTÞ ¼ K1ðTÞ sin2   þ K2ðTÞ sin4   þ K4ðTÞ sin6   ð20Þを計算することができる．Nd2Fe14B の，K1ðTÞ，K2ðTÞ，K4ðTÞ，が EAðTÞ の係数のフィッティングにより得られている13,17）．スティフネス定数 AðTÞは，EDWðTÞ ¼ 2ffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiAðTÞp Z 0d ffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiEAðTÞpð21Þの関係より求まる．磁気異方性エネルギーとスティフネス定数から磁壁幅の温度依存性 dW ¼ ffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiffiAðTÞEAðTÞ=2�EAðTÞ0qが求まる．このようにして求められた AðTÞ は，実際 a 軸方向よりも c軸方向が小さく，両磁壁幅 dWの温度依存性も Fig. 5（d）に非常に近い17）．(a) (b)0 K0.34TC0.46TC0 K0.34TC0.46TCEnergy [K]Energy [K]0.69TC0.69TCNd DyFig. 4 Crystal electric field energy (a) for a Nd atom and (b) for a Dy atom as a function of   at zero and finite temperatures. Reprinted figure withpermission from [M. Nishino et al., Phys. Rev. B 106 (2022) 054422]. Copyright (2022) by the American Physical Society.Mz Mz(a) (d)(b) (c)T/TcabccabBlochNéelFig. 5 (a) Bloch–type wall and Néel–type wall. (b) Mz along a–axis (Bloch–type) at 0.46TC. The unit of the vertical axis is �B/atom. The functionsmzðxÞ is given by a solid line. Here symbols denote MzðxÞ at different MC steps. (c) Mz along c–axis (Néel–type) at 0.46TC. (d) Temperature variation of�W for Bloch–type (triangles) and Néel–type (circles) walls. Reprinted figure with permission from [M. Nishino et al., Phys. Rev. B 95 (2017) 094429].Copyright (2017) by the American Physical Society.日 本 金 属 学 会 誌（2023）162 第　87　巻5.　ナノグレインの保磁力保磁力は準安定磁化が崩壊する閾値磁場である．絶対零度では自由エネルギー障壁（バリア）が消える磁場になるが，有限温度では熱ゆらぎによってバリアを飛び越える過程が可能になる．逆磁場が強い場合，あるいは温度が高い場合は，Fig. 6（a）のようにバリアがなくなり，磁化は決定論的にスムーズに緩和する．一方，磁場が弱く，低い温度の場合，Fig. 6（b）のようにバリアが存在し，緩和は熱ゆらぎによって引き起こされ，ポアソン過程の一種として確率的に起こり，緩和時間が長くなる．ここではナノグレインの保磁力を調べる方法について説明する．T ¼ 0:46TC（室温付近）の時の 12 � 12 � 9ユニットセルのナノグレインに対して sLLGによる磁化反転ダイナミクスを調べた19）．Fig. 6（c）に逆磁場 h ¼ 4:0 Tで � ¼ 0:1での down spin状態からの磁化反転のスナップショットを示す．この緩和は確率的領域にある．核形成がコーナーから起こり，反転領域は最初に ab 平面で Bloch 型磁壁によって拡大し，その後，Néelタイプの磁壁によって c 軸の方向に成長する．この傾向は �には依存しない．このプロセスは，a 軸と b 軸に沿った交換相互作用が c 軸に沿ったものよりも強いという事実に起因する．単一の核形成が律速の場合，緩和時間の分布が大きいため，平均緩和時間の評価が困難になる．この困難を克服するために，緩和時間を評価するための統計的手法として反転確率 pと緩和時間 �の間の統計的関係を導入する．(a) (b)MZ MZF F(c)Fig. 6 (a) Deterministic process. (b) Stochastic process by barrier–crossing dynamics. (c) Snapshots of the magnetization reversal for the nano grainfrom the all–down spin state under a reversed field (h ¼ 4:0T). Red and blue parts denote down–spin and up–spin states, respectively. Reprinted figure(c) with permission from [M. Nishino et al., Phys. Rev. B 102 (2020) 020413(R)]. Copyright (2020) by the American Physical Society.原子論的スピンモデルによる永久磁石の磁気特性の研究 ―熱揺らぎおよび温度効果の取り扱いと将来展望―第　5　号 163単位時間内に pの確率でイベント（緩和）が発生した場合，そのイベントが期間 ½t; t þ�t� で初めて発生する確率はpe�pt�tであるので，平均緩和時間 h�iは次の式で与えられる．h�i ¼ pZ 10te�ptdt ¼ 1p: ð22Þイベントが期間 ½0; t� で発生する確率は，PðtÞ ¼ 1 � e�pt である．そこで，N 回のシミュレーションを実行すると，反転していない（生き残った）サンプルの数は NsvðtÞ ¼ N � NdoneðtÞ ¼Ne�pt となる．この関係から，p（および �）は lnðNsvðtÞ=NÞ のグラフの傾きから求められる．Fig. 7（a）に，さまざまな � 値での緩和時間の磁場依存性を示す．磁場が 4.2 T を下回ると緩和時間は急速に増加する．0.5 ns の実時間シミュレーションから，統計的関係を用いることでサブ µsの緩和が計算できる．実験では保磁力は 1 sの緩和現象であるため，1 s の緩和を見るためには以下の関数フィッティングを行う．長い緩和時間の場合，アレニウス型の単一の指数関数的減衰が予想される．そこで，緩和時間を式（23）の二重指数フィッティングの形で補正項を含めて外挿する．�ðhÞ ¼ Ae�ah þ Be�bh ¼ Ae�ahð1 þ Ce�dhÞ: ð23Þここで，C ¼ B=A および d ¼ b � a である．Fig. 7（b）に，この式でフィッティングした線を示す．各線と � ¼ 1 sの交点が保磁力を与える．保磁力は約 3 T（Hc ¼ 3 � 3:2 T）と見積もられる．Fig. 7（b）から，現実的なシミュレーション時間（ns）から求めた磁場閾値は，1 sの緩和に相当する磁場閾値に対して20–25％程度大きいことがわかる．以降の章では nsオーダーの緩和から保磁力を見積もっているが，1 sに相当する保磁力より 2 割ほど高くなる．上では磁化反転の緩和時間を直接計測し，NsvðtÞ から緩和時間を求めたが，磁場掃引（磁場 h を時間の関数として HðtÞと表す）に対する生き残り確率 PðHÞ ¼ NsvðHÞ=N からも保磁力を見積もることができる．Arrhenius 緩和の確率は，p ¼1�0e��EBðHÞ によって与えられる．�0 は磁化反転でよく使われる値 �0 ¼ 10�11 s49）を採用する．磁場を時間にリニアな関数HðtÞ ¼ vt として H ¼ �1（down spin 状態）から H まで掃引したときの緩和が起きない（生き残り）確率は，次の式で与えられる28）．PðHÞ ¼ exp � 1v�0Z H�11e�EBðhÞ dh� �: ð24Þここで，永久磁石の磁化反転の研究でしばしば使用される現象論的関係式50,51）EBðHÞ ¼ E0 1 � HH0� �nð25Þを利用する．E0 はゼロ磁場のエネルギーバリアで，H0 はゼロバリアの磁場である．指数 nの値は，多くの磁性体で n ¼1   2として確立している．Stoner–Wohlfarthモデルのようなコヒーレント磁気反転の場合，指数は n ¼ 2 である52）．ネオジム磁石において n ’ 1 であることが実験的に示されており50,53），ここでは n ¼ 1 を採用する．上記の確率は n ¼ 2 でも計算でき，実際 n ¼ 2 よりも n ¼ 1 としたほうが，上記の系で保磁力を見積もった場合により近い値となる28）．式（25）を用いると，lnð� lnPðHÞÞ ¼ �E0H0H þ ln e��E0H0v�0�E0� �ð26Þと表すことができ，左辺を磁場の関数としてプロットしたときに，その傾きと y 切片から E0 と H0 が評価できる．一方，緩和時間 �は � ¼ �0 expð��FÞの関係より，� ¼ 1 sと�0 ¼ 10�11 s のとき，��F ¼ 25:3 であるから，�F ¼ EBðHÞ として，��F ¼ �E0 1 � HcH0� �¼ 25:3 ð27Þの関係より，H0 と �E0 を使って保磁力はHc ¼ H0 1 � 25:3�E0� �ð28Þと表すことができる．式（26）を用いて評価した E0 と H0 を用いて保磁力が計算できる．実際，上記のナノグレインにこの方法を適用すると，保磁力約 3 Tが得られる28）．ナノグレインの保磁力は，3.1.2 項で説明したモンテカルロ法を用いて磁化に対する自由エネルギーを計算することでも求められる．Wang–Landau 法を用いてゼロ磁場 H ¼ 0 の10-1210-1110-1010-910-810-7MC [s]h [T](a)10-1210-1010-810-610-40.01103 4 5 6 7 8 1 2 3 4 5 6 7 8MC [s]h [T]0 1 2 3 4 5 6 7 8(b)Fig. 7 (a)Magnetic field dependence of the relaxation time (magnetization reversal time) with the damping factor (�) dependence. (b) Extrapolation ofthe relaxation time. MC denotes the relaxation time of the Arrhenius law (� ¼ �0e�F) estimated in a Monte Carlo study21). Reprinted figure withpermission from [M. Nishino et al., Phys. Rev. B 102 (2020) 020413(R)]. Copyright (2020) by the American Physical Society.日 本 金 属 学 会 誌（2023）164 第　87　巻FðMz; H ¼ 0Þを求める．磁場 H 下の自由エネルギーはFðMz; HÞ ¼ FðMz; H ¼ 0Þ �HMz ð29Þより得られる．Fig. 8（a）の左図は H ¼ 0を含めいくつかの磁場に対する磁化 Mz（図中では M）と自由エネルギーの関係であり，右図は 3.5 T でのエネルギーバリアを示している．Fig. 8（b）は，いくつかのサイズのグレインの磁場に対するエネルギーバリアを示している．�F ¼ 25:3に相当するエネルギーバリアを熱活性効果で超えることができることから，自由エネルギー曲線が 25.3kBTと交わる点の磁場が保磁力となる．12 � 12 � 9ユニットセルの系では，青い曲線と 25.3kBTの交点は Hc ¼ 3:3 Tとなる21）．これは，上記の実時間ダイナミクスの方法で求めた保磁力に近い値であり，両方法の保磁力評価の妥当性を示している．尚，Fig. 8（b）からわかるようにグレインサイズが 20 nmを超えると保磁力はほぼ飽和する．6.　核生成磁場とピンニング磁場6.1　hard–soft–hard磁石モデル高温でより強い保磁力を実現するためには，グレインやグレインバウンダリーの構造や性質が保磁力に与える影響を調べる必要がある．この目的のために，hard 磁石が中間の soft磁石と接触する hard–soft–hard 磁石モデル（Fig. 9）が研究されてきた54–57）．このモデルは，不均一系における核生成とピン止めの本質を捉えており，GMR センサーを含む磁性材料のさまざまな実験的および理論的研究における現象の解析に使用されている50,58,59）．特に，ゼロ温度での hard–soft–hard 磁石の連続体モデルに対して，スティフネス定数と磁気異方性定数をパラメーターとして 1 次元非線形方程式を解き，核生成とデピンニングの磁場閾値（前者を核生成磁場，後者をピンニング磁場と呼ぶ）をそのパラメーターの比率の関数として表したダイアグラムはよく知られており55,56），実験の解釈にも用いられている．ここでは，熱揺らぎの効果でそのダイアグラムがどのように修正されるかについて見る．そのため，異方性項を持つハイゼンベルグモデルの単純立方格子における hard–soft–hard磁石モデルを考える．まず，パラメーターの定義を行うため，連続体モデルのハミルトニアンH ¼ZdrA2ðrmðrÞÞ2 � KmzðrÞ2 �MH �mðrÞ� �ð30Þを考える．ここで mは位置 rでの磁化方向の単位ベクトル，Aは交換スティフネス定数，Kは異方性定数，Hは磁場，Mは磁化の大きさである．hard（soft）磁石の磁気特性は，スティフネス定数 A1（A2），異方性定数 K1（K2），磁化の大きさM1（M2）によって指定される．規格化された外部磁場h ¼ HHSW; HSW � 2K1M1ð31ÞとパラメーターF ¼ A2M2A1M1; ð32ÞE ¼ A2K2A1K1ð33Þを定義する12,55）．HSW は hard 磁石の Stoner–Wohlfarth 磁場である．系の磁化が正の方向（z 方向）を向いている状態に，逆磁場をかける場合を考える．領域 Iから領域 IIIの各領域の磁化の状態を次のように定義する．• ðþ þ þÞは，領域 I，領域 II，領域 IIIの磁化が正の向きである状態．• ðþ � þÞは，領域 IIで核生成が起き磁化反転が起こった状態で，他の領域の磁化は正のままである状態．• ðþ � �Þは，領域 Iのみ磁化が反転せずに保たれた状態．• ð� � �Þは，全領域が反転した状態．T ¼ 0 で ðþ þ þÞ ! ðþ � þÞ が起こる磁場閾値，すなわち，領域 II（soft 相）で核生成が起こる磁場の閾値は次式で与えられる．hNCIIð0Þ ¼ EF: ð34Þ但し W の無限幅極限での計算値であり，W が有限幅の場合，閾値はこの値よりわずかに大きくなる55）． T ¼ 0 で(a)MzMz, HMtMz(b)Fig. 8 (a) Free energies as a function of Mz of the Nd2Fe14B grain at0:46TC. Lx ¼ Ly ¼ 14:1 nm, Lz ¼ 14:6 nm. Red line is for H ¼ 0 andother lines are for applying H. (b) Free–energy barriers as a function ofthe magnetic field for four system sizes: Lx = 10.6 nm, 14.1 nm,21.1 nm, 24.6 nm (Lx ¼ Ly, Lz ¼ 1:038Lx). Reprinted figure withpermission from [Toga et al., npj Comput. Mater. 6 (2020) 67].Copyright 2020 NPG.L1 L2 L3xyzHard Soft HardRegion I Region II Region IIIFig. 9 Schematic picture of a system consisting of two bulk hardmagnets and a boundary soft magnet. Region I and region III arecharacterized by J1, D1, and S1, while region II is characterized by J2,D2, and S2. Free boundary conditions are adopted for the lattice model.原子論的スピンモデルによる永久磁石の磁気特性の研究 ―熱揺らぎおよび温度効果の取り扱いと将来展望―第　5　号 165ðþ � þÞ ! ð� � �Þ あるいは ðþ � �Þ ! ð� � �Þ が起こる磁場閾値，すなわち，磁壁が領域 II から領域 I および領域 III（hard 相）に伝搬する磁場の閾値は次式で与えられる．hDWPð0Þ ¼ 1 � Eð1 þ ffiffiffiffiFp Þ2 : ð35Þこの磁場をピンニング磁場と呼ぶ．h < hDWPð0Þ の場合，磁壁は hard 磁性相に伝搬しない．hNCIIð0Þ < h < hDWPð0Þ の場合，核生成により反転した磁化は領域 II に閉じ込められðþ � þÞ 状態になる．系全体の磁化反転のためには，磁場閾値（核生成磁場）は hNCIIð0Þと hDWPð0Þの大きいほうの値hNCð0Þ ¼ maxEF;1 � Eð1 þ ffiffiffiffiFp Þ2� �ð36Þで与えられる．Fig. 10（a）の点線（直線）は，F ¼ 0:5 の場合にこの関係を示したものである．以下では，温度効果を調べるため，格子上の異方性ハイゼンベルグモデル（37）を扱う12）．このダイアグラムが温度効果によりどのように変化するのか見る．系は Lx � Ly � Lz ¼60 � 6 � 6 サイトの単純立方格子上の次のスピンモデルである．L1 ¼ L2 ¼ L3 ¼ 20とする．H ¼ �Xhi;jiJi;jsi � sj �XNi¼1DiS2i;z �HXNi¼1Si;z: ð37ÞJi;j > 0は最近接相互作用のみ考慮し，g�B ¼ 1を単位とする．この場合，Aの代わりに J，Kの代わりに Dを用い，パラメーター Fと EはF ¼ J2S2J1S1; ð38ÞE ¼ J2D2J1D1ð39Þと定義される．領域 I，領域 II，領域 IIIで磁化の大きさを等しくし（jSij ¼ S1 ¼ S2 ¼ 1），hard 相の磁気異方性エネルギーを D1 ¼ 0:2J1 とセットする．hard 相のキュリー温度は TC ’1:5J1 である．磁場は式（31）同様，規格化した h ¼ H=HSW を用いる．HSW ¼ 2D1=S1 である．sLLG 方を用いて，ðþ þ þÞの状態に逆磁場をかけて，状態の時間発展をシミュレーションし，それぞれの磁場閾値を調べた結果を示す．Fig. 10（a）に T ¼ 0 での ðþ þ þÞ ! ðþ � þÞの磁場閾値（青線）と ðþ � þÞ ! ð� � �Þ の磁場閾値（赤線）を示す．連続体の解析値（点線）は良い近似になっていることがわかる．Fig. 11（a）に T ¼ 0での ðþ � �Þ ! ð� � �Þの磁場閾値を示す．この場合，Eが小さいところでは連続体の解析値と一致するが，大きいところでは，解析値より上方にずれる．これは，いわゆる narrow domain wallの効果で連続体近(a) (b) (c)E/F(1-E )/(1+ F1/2)2Fig. 10 Threshold fields between ðþ þ þÞ and ðþ � þÞ (blue upward triangles) and between ðþ � þÞ and ð� � �Þ (red downward triangles) forF ¼ 0:5 at (a) T ¼ 0, (b) T ¼ 0:3J1, and (c) T ¼ 0:5J1. The dotted lines denote hNCIIð0Þ in (34) and hDWPð0Þ in (35). Reprinted figure withmodification from [S. Mohakud et al., Phys. Rev. B 94 (2016) 054430]. Copyright (2016) by the American Physical Society.(a) (b) (c)Fig. 11 Threshold fields between ðþ � �Þ and ð� � �Þ (red downward triangles) for F ¼ 0:5 at (a) T ¼ 0, (b) T ¼ 0:3J1, and (c) T ¼ 0:5J1. Bluedashed lines denote threshold fields between ðþ � þÞ and ð� � �Þ in Fig. 10. Reprinted figure with permission from [S. Mohakud et al., Phys. Rev. B 94(2016) 054430]. Copyright (2016) by the American Physical Society.日 本 金 属 学 会 誌（2023）166 第　87　巻似が良くないことからくる12）．Fig. 10（b），Fig. 10（c）に見るように ðþ þ þÞ ! ðþ � þÞおよび ðþ � þÞ ! ð� � �Þの磁場閾値は温度が上昇するにつれ T ¼ 0の磁場閾値から大きく減少し， ðþ � þÞ の領域が拡がる．また，Fig. 11（b），Fig. 11（c）に見るように ðþ � �Þ ! ð� � �Þの磁場閾値も温度効果により減少するが，E 依存性は緩やかになる．特に narrow domainwallの状況では領域 II，領域 IIIの磁化状態が領域 Iに与える影響は少なく，領域 Iでの表面核生成が重要になる12）．6.2　Nd2Fe14Bの核生成磁場とピンニング磁場Nd2Fe14B の原子論的モデル（4）で構成した Hard–soft–hard磁石のモデルの計算により，Bloch 磁壁が生じる場合と Néel磁壁が生じる場合それぞれについて，核生成磁場およびピンニング磁場を評価した20）．Bloch 磁壁の場合，a 軸方向がFig. 9 の x 方向，Néel 磁壁の場合，c 軸方向が x 方向に相当する．soft 相（グレインバウンダリー）は実験条件に依存するアモルファス様な構造を持ち複雑である．第一原理計算による研究60,61）は始まったばかりであり，現時点で確立した微視的パラメーターの使用は難しいため，hard 相と同じ構造を仮定する．パラメーター E，F を前節と同様に定義する．ただし，Nd2Fe14Bではさまざまな種類の交換相互作用や磁気異方性エネルギーがあるが，それらを同じ割合でスケールして定義する．Fig. 12（a）に Bloch 磁壁と Néel 磁壁に対する T ¼ 0Kでの ðþ þ þÞと ðþ � þÞの間および ðþ � þÞと ð� � �Þの間の磁場閾値の E 依存性を示す． F ¼ 0:5 としている． L1 ¼L2 ¼ L3 ¼ 12 ユニットセルで，高さと奥行きは 5 ユニットセルである．ダイアグラムの概形は前節の異方性ハイゼンベルグモデルの場合と似ている．Néel 磁壁の場合のほうが磁場閾値は低いが，これは c 軸方向の交換相互作用が弱いことを反映してる．Fig. 12（b）に T ¼ 0K での ðþ � �Þ と ð� � �Þ の間の磁場閾値を示す．このピンニング磁場は核生成磁場の場合ほど両磁壁の差はない．E が大きいところでは narrow downwallの性質を反映して閾値が増加している．Fig. 13（a）に T ¼ 0:34TC での ðþ þ þÞ と ðþ � þÞ の間および ðþ � þÞ と ð� � �Þ の間の磁 場 閾 値を， Fig. 13（b）にðþ � �Þ と ð� � �Þ の間の磁場閾値を示す．前節の異方性ハイゼンベルグモデルの F ¼ 0:5 に対する T ¼ 0 と T ¼0:5J1ð’ 0:33TCÞの間の磁場閾値の変化と比べると，Nd2Fe14Bの磁場閾値は温度効果による減少率が大きいことがわかる．これは，Nd と Fe の間の交換相互作用が Fe 間に比べて弱いため，温度効果の影響を受けやすいことや，スピン再配列転移の起源である Ndの磁気異方性エネルギーの特性によるものと考えられる．7.　ジスプロシウム置換効果イントロダクションで触れたように，Nd 磁石は高温特性に課題があり，高温での保磁力の減少を抑制するために，し 0 5 10 15 20 25 0.1  0.2  0.3  0.4  0.5h [ T ]ENeel,+++/+-+Neel,+-+/---Bloch,+++/+-+Bloch,+-+/---(a) 0 5 10 15 20 25 0.1  0.2  0.3  0.4  0.5h [ T ]ENeel,+--/---Bloch,+--/---(b)Fig. 12 (a) Threshold fields at 0K between ðþ þ þÞ and ðþ � þÞ (circles) and between ðþ � þÞ and ð� � �Þ (triangles) with the comparisonbetween Bloch and Néel domain walls. (b) Threshold fields at 0K between ðþ � �Þ and ð� � �Þ with the comparison between Bloch and Néel domainwalls. Reprinted figure with permission from [I.E. Uysal et al., Phys. Rev. B 101 (2020) 094421]. Copyright (2020) by the American Physical Society. 0 1 2 3 4 0.1  0.2  0.3  0.4  0.5  0.6  0.7h [T]EBloch,+++/+-+Bloch,+-+/---Neel,+++/+-+Neel,+-+/---(a) 0 1 2 3 4 0.1  0.2  0.3  0.4  0.5  0.6  0.7h [ T ]EBloch, +--/---Neel, +--/---(b)Fig. 13 (a) Threshold fields at 0.34TC between ðþ þ þÞ and ðþ � þÞ (circles) and between ðþ � þÞ and ð� � �Þ (triangles) with the comparisonbetween Bloch and Néel domain walls. (b) Threshold fields at 0.34TC between ðþ � �Þ and ð� � �Þ with the comparison between Bloch and Néeldomain walls. Reprinted figure with permission from [I.E. Uysal et al., Phys. Rev. B 101 (2020) 094421]. Copyright (2020) by the American PhysicalSociety.原子論的スピンモデルによる永久磁石の磁気特性の研究 ―熱揺らぎおよび温度効果の取り扱いと将来展望―第　5　号 167ばしば Dy 置換される．粒界拡散法を用いた実験により，残留磁化を減らさずに保磁力が増強できることが示されている62–66）．Dy リッチなシェルがグレインバウンダリーとコアグレインの間に形成されているのが観察されている66）．このDy 置換による保磁力増強の効果は，Dy 置換相のマクロなパラメーターを用いてマイクロマグネティック計算で研究されている67,68）．また，簡略化した結晶格子のモデルにおいても絶対零度での増強効果が調べられている69）．しかし，温度効果を含めた Dy 置換による保磁力増強効果のミクロな起源は，原子論的モデルの方法によりはじめて理解できる．ここでは，原子論的モデルの方法から Dy 置換による保磁力増強の機構と効果について説明する27）．ハミルトニアン（4）は式（40）の結晶電場のエネルギー項H ¼XNd;DyiXl;m�l;iAml;ihrliiÔml;i ð40Þが Nd 原子と Dy 原子からなる．Dyに関して，結晶電場の係数などは Dy のものを用いる．Dy 原子は J ¼ L þ S ¼ 15=2，gT ¼ 4=3である．Fig. 2（b）に示すように，Dy 原子の si と Fe原子の Sið¼ siÞ は反強磁性的に結合している．この交換相互作用の大きさは，Nd 原子と Fe 原子の交換相互作用とほぼ同じである27）．この場合， Fig. 2（a）と異なり，Dy 原子のSið¼ si þJ iÞと Fe 原子の Sið¼ siÞは反強磁性結合している．Fig. 14 に示すように Nd2Fe14B の母相の(001)表面の Nd 層を n ¼ 1として，内部に向かって n ¼ 2，n ¼ 3 � � � と Nd 層を番号づけする．ここでは，2つの系を考える．Fig. 14（a）に示す表面が真空と接触している系（システム A）と Fig. 14（b）に示す表面がソフト磁性相と接触している系（システム B）である．hard 磁性相は 12 × 12 × 9 ユニットセル，soft 磁性相は12 × 12 × 3ユニットセルで，a，b 軸方向は周期境界条件，c軸方向はシステム A では自由境界，システム B では周期境界条件とする．ここで第 1 層から第 n 層までの全 Nd 原子をDy 原子に置換して，磁化反転の磁場閾値を調べた．前節と同様に soft 相は母相と同じ構造を仮定し，マイクロマグネティック計算で行われているように小さな磁気パラメーター（交換相互作用は 0.5 倍，磁気異方性エネルギーは 0.2 倍）を採用する．sLLG 法の実時間シミュレーションにより，磁化反転の磁場閾値を見積もった．Fig. 15にシステム A（点線）とシステム B（実線）に対する磁場閾値の n 依存性と温度変化を示す．n ¼ 0 は Dy 置換なし（もとの系）を意味する．図中の比率（％）は n ¼ 0の値に対する値である．グレインバウンダリー相では磁化反転が起きやすいため，母相との相境界に磁壁が発生しやすく，母相の表面核生成が起こりやすい．そのため，真空表面の場合と比べ大きく保磁力が減少している．しかし，システム Aよりもシステム Bにおいて nが増えたときの n ¼ 0からの比率が大きく，Dy 置換により，保磁力が大きな割合で増加する．すなわち，システム B において保磁力の増強効果が顕著である．これは，Dy 置換の特徴であり，Dy 置換が母相への磁壁移動を妨げ，強いピンニング効果を持っていることを示唆している．Dy 置換層の数（n）に対する保磁力の増加率（�hC=�n）は有限温度では一定であり，両システムでほぼ等しい．システム A に関して，Dy 置換の代わりに Nd 原子の磁気異方性を 2 倍に強化した場合の n 依存性を調べ22），Dy 置換した場合と比較する．0.34TC，0.46TC，0.69TC の n ¼ 0 に対する n ¼ 5の増加率を比べてみる．Dy 置換した場合，それぞれ，144％，140％，132％であるが，Nd 原子の磁気異方性を2 倍に強化した場合は，123％，121％，111％である22）．このことから，Dy 置換した場合は，高温でも保磁力増強効果が維持されることがわかる．次に，置換 Dy 層を増やしたときの核生成ダイナミクスの変化を見る．Fig. 16にシステム Bの n ¼ 1と n ¼ 5の核生成の様子を示す．磁場は閾値付近の値を用いている．Fig. 16（a）は 1 層のみ Dy 置換した n ¼ 1の場合で，母相の磁化反転前にソフト相がかなりの部分反転しており，母相表面から核生成（デピンニング）が起こっている．それに対して，Fig. 16（b）は Dy 置換層が 5 層あり，母相内部から核生成が起こっている．Dy 置換により表面核生成が抑制され，内部核生成に変わる．この核生成機構の変化は，システム Aでも見られるが，表面核生成から内部核生成に変化する nの境目は，システム Aでは n ’ 2，システム Bでは n ’ 3である．(a) (b)n=1n=2n=3Vacuumn=1n=2n=3Fig. 14 (a) System A. The Nd surface layers were in contact with vacuum. In this example, Nd atoms (red) in the first Nd layer were substituted by Dyatoms (orange). The Nd layers are numbered as n ¼ 1; 2; � � � : (b) System B. The Nd surface layers were in contact with a soft magnet phase. [M. Nishinoet al., Phys. Rev. B 106 (2022) 054422]. Copyright (2022) by the American Physical Society.日 本 金 属 学 会 誌（2023）168 第　87　巻Dy 置換による保磁力増強効果と高温でも効果が維持される微視的起源は 2つあると考えられる．1つ目は，磁気相互作用の相違である．Nd 原子と Fe 原子の相互作用は強磁性であるのに対して，Dyと Feの間は反強磁性である．この反強磁性結合により，逆磁場下で Dyのモーメントは安定化され，反転核生成が起こりにくくなる．2 つ目は，Dy の CEF エネルギーの温度依存性の特徴である．Fig. 4（b）に Nd 磁石中のDy 原子の CEFエネルギーの温度依存性を示す．Fig. 4（a）と比較すると，Dy 原子の CEF エネルギーは，温度によらず  ¼ 0 にミニマムがあり，全温度で相対的にポテンシャルバリアが高い．さらに，0.46TC（室温付近）と 0.69TC のポテンシャルバリアの変化に注目すると，0.46TC では Dyのポテンシャルバリアは Ndのポテンシャルバリアより 27％より高いが，0.69TC では 79％も高くなる．すなわち，Dyのほうが高温でポテンシャルバリアが相対的に高い．このことが，Dy置換が高温で有効な理由であると考えられる．(a)(b)n=1n=5Fig. 16 Snapshots of the spin configuration in nucleation for (a) n ¼ 1 and (b) n ¼ 5 at the threshold fields h ¼ 3:70T and h ¼ 5:05T, respectively,at 0:46TC ’ Troom in system B. The yellow–boxed regions correspond to the soft magnetic phase. Red and blue parts denote up–spin and down–spinones, respectively. Reprinted figure with permission from [M. Nishino et al., Phys. Rev. B 106 (2022) 054422]. Copyright (2022) by the AmericanPhysical Society.h (T)106%121%132%108%129% 141%116%138%158%h (T) 103%122%140%h (T)121%151%178%107%123%144%h (T)105%100% 101%150%173%185%(a) (b)(c) (d)0 K 0.34 TC0.46 TC0.69 TCFig. 15 n dependence of the threshold filed in systems A (dotted lines) and B (solid lines) at (a) 0K, (b) 0.34TC, (c) 0.46TC, and (d) 0.69TC.Reprinted figure with permission from [M. Nishino et al., Phys. Rev. B 106 (2022) 054422]. Copyright (2022) by the American Physical Society.原子論的スピンモデルによる永久磁石の磁気特性の研究 ―熱揺らぎおよび温度効果の取り扱いと将来展望―第　5　号 1698.　磁気双極子相互作用原子論的モデルの方法では全ての原子のスピンを考慮するため，計算可能なスケールは現実的には数十 nmスケール程度までである．磁気双極子相互作用は交換相互作用に比べ非常に小さいため，そのスケールではあまり重要ではない．従って，磁気双極子相互作用14�0Xi≠k1r3ikSi � Sk � 3ðrik � SiÞðrik � SkÞr2ik� �ð41Þを考慮してこなかったが，強磁性体では一様な磁化が現れるため，グレインの集合体のスケール（µm）になると重要になってくる．この相互作用が及ぼす反磁場効果により一様な秩序を壊す効果があり，実験やマイクロマグネティック計算ではグレインサイズに対する保磁力の減少（反磁場効果の増加）が示されている70–73）．この論文で示したナノグレインの保磁力（20 nm ほどで飽和）は，グレイン集合体の熱揺らぎの効果を含めた保磁力の上限値の近似値を与えていると考えられる．交換相互作用は短距離相互作用であり，シミュレーションの計算コストはスピン数 Nに比例するが，磁気双極子相互作用は長距離相互作用であるため，スピン数の 2 乗（N2）とともに増加する．モンテカルロ法では,この困難を克服するために確率的カットオフ（SCO）法などが提案されている74,75）．SCO 法は，モンテカルロ法における状態更新のプロセスで，詳細釣り合い条件を維持しながらも長距離の弱い相互作用の選択率を減らすことで計算を加速し，尚且つシミュレーションの定常状態として正しく平衡状態に至ることを保証する．磁気双極子相互作用の 3 次元システムの場合，1 回のモンテカルロステップを OðN lnNÞ の時間で計算できる．しかし，従来の SCO 法は，Nd 磁石のような複雑なユニットセルを持つ系では手続きが面倒になる困難があったが，ウォーカーのアルゴリズムを用いた修正 SCO 法（MSCO）が開発され，Ndの原子論的モデルの薄膜系で磁気双極子相互作用の効果が調べられている15）．また，シンプルな異方性ハイゼンベルクモデルに対して MSCOを用いて異方性定数，双極子相互作用，システムの厚さをパラメーターとした磁気プロファイルが研究されている26）．9.　まとめと今後に向けて本稿は永久磁石の磁気物性の温度や熱揺らぎの効果を研究するための方法論を紹介し，特にネオジム磁石の性質を中心にその方法論を適用して得られた磁気特性について解説した．ここで紹介した原子論的モデルの方法は，Brownにより始められた熱揺らぎの効果の研究76）を発展させ，協力的相互作用が働くスピンの多体系において，エントロピー効果を正しく扱い，局所的な熱揺らぎを含む温度効果を取り扱う．本稿では，まず，Nd2Fe14Bの原子レベルからの相互作用のモデル化を示した．そして，モンテカルロ法や sLLG 法を用いて磁化過程，磁壁，ナノグレインの保磁力，核生成磁場とピンニング磁場，ジスプロシウム置換効果の特徴について説明した．そこでは，熱ゆらぎによる保磁力の大幅な低下が見られたように，これまでよくわかっていなかった永久磁石の磁気特性における熱揺らぎや温度効果とそのミクロな機構の理解が進んだ．スペースの関係で触れなかったが，核生成磁場，ピンニング磁場の角度依存性やグレインの磁気異方性の配向分布の効果も保磁力研究には重要であり，上記の方法論を用いてそれらの有限温度特性の研究も始められている77）．また，ネオジム磁石の強磁性共鳴の温度依存性における特異な振る舞いが原子論的モデルの方法で明らかにされている18）．個々のグレインの磁化反転が実験的にも観察されるようになってきて，プロセスに対する熱ゆらぎの影響が現実的な問題になっている78）．従って，この原子論的モデルによる熱揺らぎや温度効果の厳密な取り扱いは，今後益々重要になってくると考えられる．実際，ESICMM プロジェクト中にヨーロッパや中国のグループも Nd2Fe14B の原子論的モデルの研究を始めており79–83），この方法論による永久磁石の研究は今後発展していくと予想される．しかし，原子論的モデルを使用する場合，現在の計算機の能力では，数十 nmスケールの計算にどどまる．これは，単一のグレインまたは 2，3 個のグレインを含むことができる範囲である．保磁力はグレインの集合体としての性質として現れる．グレインの集合体を扱うには，マイクロマグネティクスの計算で行われる µmオーダーの計算が必要である．原子論的モデルから出発し，4.2 節で紹介した制限付きモンテカルロ法を用いてマクロな AðTÞ や KðTÞ を求めたとして，これを用いてマイクロマグネティクスの LLG 計算を行っても，熱活性過程は扱えない．熱揺らぎのためのノイズ場を加えると温度効果が二重に加わることになり，不適当である．従って，原子論的モデルから出発して µmオーダーのスケールへ接続する方法論の開発が今後の課題である．そのためには，熱揺らぎの効果を取り込んだ局所スピン変数からなる粗視化モデルを構築する必要がある．例えば次のような方法が考えられる．ある領域のスピン集合に対して，粗視化磁化 M を導入する．この粗視化磁化の大きさは温度効果により可変であり，その磁化分布 PðMÞ は原子論的モデルを用いて Wang–Landau 法で計算できる．この粗視化磁化に対して粗視化ハミルトニアンを構成する．H ¼ �Xi;jJi;jMi �Mj þXiEselfðMiÞ ð42Þここで，EselfðMiÞ は磁気異方性エネルギーなどの寄与である．もとの原子論的なハミルトニアンでの計算で得られた物理量の値を再現するために，この繰り込まれたパラメーター（Ji;j など）の調整を行う．この粗視化ハミルトニアンを大きな系に適用し，磁気双極子相互作用も含めて解析することが考えられる．その詳細は研究中である．ここで紹介した研究は，文部科学省の元素戦略磁性材料研究拠点（課題番号 JPMXP0112101004）の支援を受けて行われた．本稿は，広沢哲，Ismail Enes Uysal，早坂太志，栂裕太，檜原太一，Sasmita Mohakud，Sergio Andraus，松本宗久，土居抄太郎，赤井久純，佐久間昭正，三宅隆の各氏との共同研究の成果をまとめたものである．この場を借りて厚く御礼申日 本 金 属 学 会 誌（2023）170 第　87　巻し上げる．その他の ESICMM メンバーとの有益な議論にも感謝申し上げる．文　　　献1) M. Sagawa and S. Hirosawa: J. Mater. Res. 3 (1988) 45–54.2) S. Hirosawa, Y. Matsuura, H. Yamamoto, S. Fujimura, M. Sagawaand H. Yamauchi: Jpn. J. Appl. Phys. 24 (1985) L803.3) J.F. Herbst: Rev. Mod. Phys. 63 (1991) 819–898.4) S. Hirosawa, Y. Matsuura, H. Yamamoto, S. Fujimura, M. Sagawaand H. Yamauchi: J. Appl. Phys. 59 (1986) 873–879.5) A.V. Andreev, A.V. Deryagin, N.V. Kudrevatykh, N.V. Mushnikov,V.A. Reimer and S.V. Terent’ev: Sov. Phys. JETP 63 (1986) 608–612.6) O. Yamada, Y. Ohtsu, F. Ono, M. Sagawa and S. Hirosawa: J. Magn.Magn. Mater. 70 (1987) 322–324.7) X.C. Kou, R. Grössinger, G. Hilscher, H.R. Kirchmayr and F.R.de Boer: Phys. Rev. B 54 (1996) 6421–6429.8) C. Piqué, R. Burriel and J. Bartolomé: J. Magn. Magn. Mater. 154(1996) 71–82.9) S. Hirosawa, M. Nishino and S. Miyashita: Adv. Nat. Sci.: Nanosci.Nanotechnol. 8 (2017) 013002.10) S. Hirosawa: Magune 17 (2022) 175–180.11) M. Nishino and S. Miyashita: Phys. Rev. B 91 (2015) 134411.12) S. Mohakud, S. Andraus, M. Nishino, A. Sakuma and S. Miyashita:Phys. Rev. B 94 (2016) 054430.13) Y. Toga, M. Matsumoto, S. Miyashita, H. Akai, S. Doi, T. Miyake andA. Sakuma: Phys. Rev. B 94 (2016) 174433.14) M. Nishino, Y. Toga, S. Miyashita, H. Akai, A. Sakuma and S.Hirosawa: Phys. Rev. B. 95 (2017) 094429.15) T. Hinokihara, M. Nishino, Y. Toga and S. Miyashita: Phys. Rev. B.97 (2018) 104427.16) S. Miyashita, M. Nishino, Y. Toga, T. Hinokihara, T. Miyake, S.Hirosawa and A. Sakuma: Scr. Mater. 154 (2018) 259–265.17) Y. Toga, M. Nishino, S. Miyashita, T. Miyake and A. Sakuma: Phys.Rev. B 98 (2018) 054418.18) M. Nishino and S. Miyashita: Phys. Rev. B 100 (2019) 020403(R).19) M. Nishino, I.E. Uysal, T. Hinokihara and S. Miyashita: Phys. Rev. B102 (2020) 020413(R).20) I.E. Uysal, M. Nishino and S. Miyashita: Phys. Rev. B 101 (2020)094421.21) Y. Toga, S. Miyashita, A. Sakuma and T. Miyake: NPJ Comput.Mater. 6 (2020) 67.22) M. Nishino, I.E. Uysal and S. Miyashita: Phys. Rev. B 103 (2021)014418.23) M. Nishino, I.E. Uysal, T. Hinokihara and S. Miyashita: AIP Adv. 11(2021) 025102.24) S. Miyashita, M. Nishino, Y. Toga, T. Hinokihara, I.E. Uysal, T.Miyake, H. Akai, S. Hirosawa and A. Sakuma: Sci. Tech. Adv. Mater.22 (2021) 658–682.25) S. Miyashita, M. Nishino, Y. Toga, T. Hinokihara, I.E. Uysal, T.Miyake, H. Akai, S. Hirosawa and A. Sakuma: J. Jpn. Soc. PowderPowder Metallurgy 69 (2022) S126–S146.26) T. Hinokihara and S. Miyashita: Phys. Rev. B. 103 (2021) 054421.27) M. Nishino, H. Hayasaka and S. Miyashita: Phys. Rev. B. 106 (2022)054422.28) M. Nishino and S. Miyashita: submitted.29) H. Kronmüllar and M. Fähnle: Micromagnetism and the Micro-structure of Ferromagnetic Solids, (Cambridge University Press,Cambridge, 2003).30) J.F. Herbst, J.J. Croat, F.E. Pinkerton and W.B. Yelon: Phys. Rev. B29 (1984) 4176–4178.31) A.I. Liechtenstein, M.I. Katsnelson, V.P. Antropov and V.A.Gubanov: J. Magn. Magn. Mater. 67 (1987) 65–74.32) Y. Miura, H. Tsuchiura and T. Yoshioka: J. Appl. Phys. 115 (2014)17A765.33) M. 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