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無機材質研究所創立30周年記念誌編集委員

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[無機材質研究所創立30周年記念誌 : 21世紀を支える先端無機材質の研究](https://mdr.nims.go.jp/datasets/87d44173-c081-4db7-a090-b810743db81d)

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Seer baeies eas= st sere eee aes :ee Se = :setters 2 Sienomeeiceeerrreence ne eos z sovee he es Soe eo z zz URE Bee SuSE Se pice eee eee ecu tee: osbeeoSeseecbetras reeves veven seetvurecaeeernG reccotues thesiseee eee8Sates’ eee 2,eee Biogen ies eeme 2 ee orcas= eae oe epee te zea eerie as SeaeeES oes Bo:Rrereceraitseses ySE feeeaeeeesSee eee Seen Eee= Sooners eerie esearter eeeigerecreeete : z Soae aetsaseacecesete cor cnseeepiemcu stair teeter stererereerseoaes = i cere—_._: ee ee =: : peice eae see eee& setes ueeeeeueeeeeeeeeeesreeere Beesae : : :gees UE Sen Rois == sosee re crise erceceereseeceteeeLes Ssa ee eeeSerer satapaces See eases =Pepe ssmiscbeeee unaeee=feesieissieec!= = oe see= Biceaie a ae eesgepeeateereteepeceeteras eaters:: 2 Setaree_.é ee es = oefiaoe = ace eee eee eee cere pe eeeiSere cesvess=wei:seedaaisiti:ztHHe#iaat_‘aie ;ieHettesistae|ae 4aoiti:oFaS aoe EE Se無機材質研究所創立30周年記念誌21世紀を支える先端無機材質の研究平成8年11月科学技術庁無機材質研究所序平成8年4月,無機材質研究所は創立30周年を迎えました。当所の研究活動と密接 に関係する先端セラミックスは,いまや私達の日々の生活や産業を支える不可欠の材 料となっています。この分野の基礎研究の一層の充実と,当所の設置目的でもある高 純度無機材質などの新材質の創製への期待が年々高まっております。まさに当所の創 設に努力された方々の英知と先見性が証明されたのです。当所を特徴づけているグループ研究を主体とする組織や運営は,創造的研究をよく 支え,基礎研究領域で多くの成果を生み,それが起点となり多数の新材料を世に送り 出して参りました。無機材質の国際的な中核的研究拠点としての機能も高まり,共同 研究のため当所に滞在する外国人研究者も,近年急速に増大しております。この現状 は,これまで当所の創設,運営に関わってこられた皆様方のご努力及び多くの方々の ご支援の賜ものであり,改めて深く感謝いたします。科学技術の重要性が改めて指摘される今,ここに30周年を迎えるに当たり,情熱を もって研鑽を積み,優れた着想に到達し得た者を皆で勇気づけ,科学技術基本法の精 神を大切にして全職員の力を結集し,より大きな貢献を果したく,ここに決意を新た にいたします。平成8年11月無機材質研究所長猪股��三無機材質研究所全景(平成7年撮影)研究本館(昭和46年)管理棟(昭和54年)主な建物―過去10年間に建設―無振動特殊実験棟(昭和63年)超伝導セラミックス実験棟(平成元年)荷電粒子応用特殊実験棟(平成4年)現在建設中の建物・超微細特殊実験棟(平成9年)・共同研究センター(仮称)(平成10年)先端機能性材料研究センター棟(平成6年)研究風景(二重るつぼ法による単結晶 引き上げ実験)(真摯に研究に取り組む)(ダイヤモンド成長過程追跡実験)(外国人研究者とのミーティング)(超高圧電子顕微鏡による観察)目 次序 無機材質研究所長・猪 股 ��三第1部 無機材質研究所の30年と材料の30年(年表) 1第2部 先端無機材質研究の未来予測1新材質1―1 酸化物耐熱構造材料 池上隆康 171―2非酸化物耐熱構造材料 三友 護 191― 3単結晶光学材料 北村健二 211― 4新超伝導材料 室町英治 241― 5強誘電体材料 高橋紘一郎 261―6 磁性材料(その1)磁性半導体 梅原雅捷 29磁性材料(その2)遷移金属硫化物のエピタキシー膜 野崎浩司 311―7 電子材料 羽田 肇 331― 8 生体材料 田中順三 351―9イオン交換材料(その1)無機陽イオン交換体 小松 優 38イオン交換材料(その2)無機陰イオン交換体 小玉博志 401―10超硬質材料(その1)単結晶ダイヤモンド 神田久生 42超硬質材料(その2)多結晶ダイヤモンド 赤石 實 44超硬質材料(その3)ダイヤモンド薄膜 加茂睦和 47超硬質材料(その4)立方晶窒化ホウ素薄膜 松本精一郎 491―11電子放射材料 石澤芳夫 511―12触媒材料 渡辺 遵 531―13イオン伝導材料(その1)酸化物 渡辺昭輝 55イオン伝導材料(その2)銀カルコゲナイド 和田弘昭 571―14粘土鉱物 山田裕久 601―15新構造硫化物 小野田みつ子 622材料創製先端技術2 ―1 超高圧発生技術(その1)静的超高圧 山岡信夫 64超高圧発生技術(その2)動的超高圧 関根利守 66超高圧発生技術(その3)ダイヤモンドアンビルセル 竹村謙一 682―2荷電粒子利用技術 菱田俊一 712 ― 3単結晶合成技術(その1)誘導加熱式フローティングゾーン法 大谷茂樹 74単結晶合成技術(その2)集光式フローティングゾーン法 竹川俊二 76単結晶合成技術(その3)チョクラルスキ法 宮沢靖人 78単結晶合成技術(その4)化学輸送法 佐伯昌宣 802―4ガラス化技術 井上 悟 822―5ソフト化学反応技術 佐々木高義 852―6超高温技術 石垣隆正 882―7熱間静水圧加圧法 渡辺明男 902 ― 8 微小重力 沢田 勉 922―9物理蒸着技術 上村揚一郎 942―10焼結技術(その1)酸化物 池上隆康 96焼結技術(その2)非酸化物 三友 護 983材料解析先端技術3―1超高圧電子顕微鏡 堀内繁雄・松井良夫 1003―2 分析電子顕微鏡 板東義雄 1043―3イオン散乱分光 㔫右田龍太郎 1063―4 二次イオン質量分析 羽田 肇 1083―5 オージェ電子分光 田中順三 1113―6 走査型プローブ顕微鏡 和田健二 1133 ― 7リートベルト解析 泉 富士夫 1163―8変調構造解析 山本昭二 1183―9 放射光 福島 整 1203―10核磁気共鳴 小野田義人 1223―11電子スピン共鳴 内田吉茂 1243―12陽電子消滅 赤羽隆史 1263―13 X線顕微鏡 下村周一 1293―14光学解析(その1)レーザー分光 関田正實 131光学解析(その2)ラマン分光 石井紀彦 133光学解析(その3)時間分解スペクトロスコピー 和田芳樹 1353―15 PRDF 法と XAFS 法 貫井昭彦 1373―16熱物性 三橋武文 1393―17計算材料科学(その1)電子構造計算 新井正男 142計算材料科学(その2)擬ポテンシャルデータベース 小林一昭 144資料編Ⅰ研究活動等1研究業務の推進状況1)研究グループ等及び研究課題の一覧表 1492)プロジェクト研究等研究課題 1512 学・協会への研究発表 1533無機材質研究所研究報告一覧表 1534特許・実用新案 1551)特許・実用新案の出願及び登録件数 1552)企業化実施 155(1)特許等実施料国庫歳入額 155(2)企業化実施状況一覧表 1565共同研究 1571)共同研究の件数 1572)共同研究一覧表 1576 受託研究 1601)受託研究の件数 1602)受託研究一覧表 1607 外国との研究交流 1611)外国からの研究者の受入者数 1612)研究者の外国出張 1618 外部(国内)からの研究者の受入者数 1619 表彰 1621)叙勲,褒章等 1622)学術団体等 162Ⅱ機構等 1681機構 1681)組織 1682)委員会及び諸制度 1692職員 1701)定員の推移 1702)主な人事の推移 1713)顧問 1734)運営委員 1733 予算の推移 1744 施設・設備 1751)主な建物 1752)主な設備 176編集後記第1部無機材質研究所の30年と材料の30年はじめに高純度無機材質の創製をめざして科学技術庁所属の研究所として昭和41年4月に設立されて 以来30年を経過した。当所は、独自のグループ研究組織による学際的研究体制の下で、合成・ 物性・ キャラクタリゼーションの3分野の連携により研究を進めて、無機材質の研究分野にお いて多大な成果をあげることにより広く社会に貢献してきた。ここに創立30周年を記念して、過去を振り返り、無機材質研究所の研究の流れと、この間の 世界の材料研究の流れを年表形式にまとめ対比してみた。右端の材料の30年の項には、当所に おける波及効果の大きい創造的成果も選んで入れた。これは世界の流れの中における無機材質 研究所の位置付けを示し、将来の在り方を探る手段とするためでもある。なお、第2部の未来 予測にも種々の成果が入っているので参照していただければ幸いである。第1部 無機材質研究所の30年と材料の30年発表年度無 機 材 質 研 究 所 の物 性 合 成1966 (S41)1968 (S43) 昇華法によるSiC単結晶合成Mn-O系の相平衡の解明1969 (S44) 15RSiCの熱的安定性の解明 スピネル型Fe3S4の水熱合成法の開発Mo基板上でのβ-SiCウィスカーの気相合成1970 (S45) GaAs結晶中の結合電子分布の測定 AlNのESR測定高純度ベリリウム化合物の合成VLS法によるAlNウイスカーの合成1971 (S46) 高温高圧下での示差熱分析法の開発 高濃度陰・陽イオンペア欠陥ペロブスカイトの合成1972 (S47) 自縄自縛磁気ポーラロンの理論的解明MgO中の粒界での酸素拡散の研究As-S-Se系ガラスの粘度測定Nb2O5の高圧下での相図の作成1973 (S48) 陽電子消滅法によるZrO2関連物質の結合状態の解明SnS2のフォトルミネッセンスの測定ペロブスカイト型化合物の高圧下での構造安定性の解 明高圧装置の相似則成立を実証鉄硫化物の超微粒子および薄膜の合成30 年材 料 の 30 年キャラクタリゼーション無機材質研究所創立ZnO-Bi2O3系バリスタの発明(日本)Fe1-xSx (磁硫鉄鉱)の超構造(変調構造)の発見SiCの多形の解釈Fe1-xOの欠陥構造の解明磁気バブル素子の発明(米)リートベルト法の発明(オランダ)高分解能電子顕微鏡技術の先駆的研究(オーストラリア)カルコゲンガラスのスイッチングとメモリ作用の発見(米) カルコゲナイドガラスの研究盛んになる窒化アルミニウムの希土類酸化物系焼結助剤の発明(日本)部分安定化ジルコニアの発明(豪)β-SiCの加熱による構造変化の解明 窒化ケイ素―希土類酸化物系基本組成発見(日本)アポロ月の石を採取(米)電子回折によるFe3S4の磁気異方性の解明 サイアロンの発見(日本)低損失光ファイバ(20db/km)の製造(米)半導体拡散炉用高純度炭化ケイ素系部材開発半導体レーザーの室温連続発振(米)半導体超格子の提唱(米)VOxの超構造の決定 炭素繊維複合体の商品化シェブレル化合物の発見(仏)透光性PLZTセラミックスの発明(米)薄板状結晶技術(EFG法)によるアルミナ単結晶の連続引き上げの成功(米)アルコキシドを用いるゾルーゲル法の研究開始(米)X線トポグラフとEPMAによる合成水晶の成長模様観察ニオブ酸化物中の点欠陥の直接観察X線回折装置用加熱炉への赤外線集光方式の応用SiCの常圧焼結法の開発(米)半導体製造用高純度SiC製造開始無機材質研究所の筑波研究学園都市移転γ-Al2O3の電子回折による構造解析 SiC-B-C系基本組成開発(米),以後非酸化物セラミックスの 研究盛んレーザ発振用透光性Y2O3 (Nd2O3)高密度焼結体の開発(米)江崎玲於奈氏ノ ーベル物理学賞受賞半導体製造用黒鉛の高純度SiC被覆法の実用化発表年度無 機 材 質 研 究 所 の物 性 合 成1974 (S49) VO2の不定比性と構造・物性の関係の解明チタン酸バリウムの誘電特性の解明ZrO2単結晶の育成カルコゲン化ガラス形成過程の解明AlN薄膜の超高真空下での合成フッ素添加による透明MgO焼結体の合成ZrO2超微粒子の水熱合成と転移現象の解明YFe2O4の発見,AB2O4型結晶とホモロガスシリーズ の発端1975 (S50) As-Seガラスの熱伝導の測定非平衡欠陥を含むLaFeO3の磁性の解明LaB6単結晶熱電子放射陰極の開発強誘電体ゲルマン酸鉛の板状単結晶の合成法の開発FB25型超高圧ベルト装置の開発アナターゼ型TiO2単結晶の合成繊維状チタン酸アルカリの新製造法の開発1976 (S51) 陽電子消滅法によるFe3O4の電子状態の解明ReO3およびLaB6のラマンスペクトル解析リン酸カルシウムの水硬性の発見化学輸送法により育成された結晶の組成予知法の開発Si3N4のガス圧焼結法の開発BNフィラメントの合成アルミニウムの多色電解着色法の開発1977 (S52) LaB6等のホウ化物のフェルミ面の決定四チタン酸カリウムの熱的挙動の解明新規強誘電体複合ビスマス化合物群の発見フラックス法による六方晶BN (hBN)単結晶の育 成集光FZ法によるYIG単結晶育成法の開発1978 (S53) 遷移金属二ホウ化物のフェルミ面構造の決定LaB6の表面構造と表面電子状態の究明新しい触媒法によるcBN製造法の開発熱天秤法によるFe-V-S系の相図の作成1979 (S54) TiO2多形の熱力学的安定性の決定六方晶BN (hBN)の光中心の解明Pb2WO5の高温→低温相移転現象の解明組成制御TiCx単結晶の育成技術の開発30 年材 料 の 30 年キャラクタリゼーション回折X線プロファイルからのコンプトン散乱寄与分の補正法 の開発新規結晶構造のBaWO4高圧相の合成と構造解折Ca―チェルマック輝石の合成と結晶構造の解析結晶変調構造の多次元空間を用いた解析概念の確立結晶の変調構造の多次元モデル(オランダ)アモルファスシリコン半導体の創製(米)YFe2O4の発見(無機材研)水溶液中の高速抽出機構の解明α-Si3N4中の酸素不純物の定量BaS2の構造解析ピロータイト(Fe7S8)中の金属空孔の直接観察水溶液中のFe (Ⅲ)抽出における高速抽出機構の解明SiC連続繊維の合成法(日本)0.38GeV,極端紫外・軟X線用第二世代光源(日本)SiC微粉末の焼結法(米)繊維状チタン酸アルカリの新製造法の開発(無機材研)LaB6単結晶熱電子放射陰極の開発(無機材研)ZrF4-BaFz-NaF系フッ化物ガラスの発明(仏)マイク口波用誘電体発振器の実用化高分解能超高圧電子顕微鏡(1000kV)の開発 窒化ケイ素のガス圧焼結法の開発(無機材研)高分解能超高圧電子顕微鏡(1000kV)の開発(無機材研)自動車排気浄化用酸素センサ(ZrO2)の実用化(独,米,日)γ-Fe2SiO4結晶の電子密度分布解析高分解能超高圧電子顕微鏡による構造解析法の開発形状記憶マイカ結晶化ガラスの発見(英)トリディマイト(SiO2)の多形関係の解明光弾性複屈折による単結晶歪定量法の開発AlN及びBN薄膜の合成と負性抵抗現象の解明波長可変固体レーザー(アレキサンドライト)の発明(米)サイアロン“X-Phase”単結晶の合成と構造決定Ti-Sの超格子の構造解折発表年度無 機 材 質 研 究 所 の物 性 合 成1980 (S55) X線回折によるヨウ素の高圧下での分子解離の解明TiO2 (アナターゼ)のラマンスペクトルの温度依存性 の測定Bi1-xLnxWO6の合成と結晶構造の解明衝撃圧縮法によるフッ化黒鉛からのダイヤモンド合 成耐熱構造用SiCセラミックスの焼結法の開発安定同位体13Cを用いたダイヤモンドの気相成長13Cからなるダイヤモンドの高圧合成1981 (S56) 中性子回折法によるV5S8の磁気構造の解明ReO3の陽電子消滅法による電子状態の解明TiCの表面構造と吸着特性の解明気相法によるダイヤモンド合成Na2O-TiO2系の低温度域の相図の作成rBNの直接変換によるcBNの高圧合成cBN透光性焼結体の開発FB75型大容量超高圧ベルト装置の開発緑色のダイヤモンド単結晶の合成F Z法によるHfC, TaC単結晶の育成ZnO透光性焼結体の合成1982 (S57) 極高真空電界電子放射測定装置の開発遷移金属水素化物の電子構造の究明CoO―Al2O3系状態図の作成新物質LiFeSnO4の合成CVD法による高純度SnO2単結晶の合成アパタイト質セメント硬化物の合成法の開発チタン酸系ウラン捕集材の合成チタン酸ウラン捕集材の合成マイクロ波プラズマ法によるダイヤモンドの合成1983 (S58) 混合原子価化合物(La0.8Ca0.2)MnO3+yの磁気転移点の 圧力変化の解明希ガス固体中の正孔の自己局在状態の解明希土類含有オキシナイトライドガラスの合成と物性の 解明ダイヤモンド類似型結晶構造を持つB2Oの高圧合成リン酸カルシウム/カルボン酸系複合化合物の合成印刷法によるゲルマン酸鉛焦電型赤外線センサーの 開発700℃以下でのSnO2用溶融剤の開発SiC高強度焼結体の合成rBN粉末の合成法の開発透光性サイアロンの合成30 年材 料 の 30 年キャラクタリゼーション積層不整解析法の拡張と硫化物への応用MgO単結晶中の小傾角粒界の観察Al-Si-C系化合物の構造決定量子ホール効果の発見(独)高純度光ファイバ(0.2dB/km)の開発(日本)高シリカゼオライトの合成(米)β-アルミナ系イオン伝導体の電子線照射損傷機構の解明SiC中のBの分析CO3Al2Si3O12ガーネットの構造決定走査型トンネル顕微鏡(STM)の発明(スイス)気相法によるダイヤモンド合成(無機材研) オールセラミックスエンジンの試作(日本)福井謙一氏ノーベル化学賞受賞科学技術振興調整費創設創造科学技術推進制度創設Fe-V-S系固溶体の構造解明超空間群に基づいた変調構造解析法の開発直衝突イオン散乱分光法による表面構造解析手法の開発Photon Factory建設(日本)超空間群に基づいた変調構造解析法の開発(無機材研)直衝突イオン散乱分光法による表面構造解析手法の開発(無 機材研)高熱伝導・電気絶縁性SiC-BeO系セラミックスの発明(日本)マイクロ波プラズマ法によるダイヤモンド合成(無機材研)X線導管光学系および走査型X線分析顕微鏡の開発 結晶質四チタン酸繊維によるイオン交換特性の解明 β型Si3N4の空間群の決定天然ダイヤモンドの微細構造の観察走査型X線導管光学系の開発(無機材研)生体活性バイオセメントの開発(米)発表年度無 機 材 質 研 究 所 の物 性 合 成1984 (S59) 微視的表面フォノンの実験的検証光電子分光によるNiOの電子構造の解明TiCフィールドエミッターの電界放射特性の解明WCのフェルミ面の観測銅(Ⅱ)モンモリロナイト/シクロデキストリン複合体の合成プロトン導電体HZr2P3O12の合成SnO2単結晶,繊維状SnO2, SnO2粉末の製造1985 (S60) アルカリハライドのB1-B 2相転移機構の解明ニオブ酸リチウム単結晶の光誘起複屈折変化の解明ペロブスカイト型チタン酸塩微粉体の製造法の開発 超高圧下でのダイヤモンド単結晶(3.6カラット)の育成 FZ法によるWC単結晶の育成高電気抵抗性ダイヤモンド焼結体の合成高濃度伝導イオン含有β-アルミナの合成3万トンプレスの開発1986 (S61) 拡散による不均一場の物質移動の新解釈の提唱Fe2O3のフォトエミッションサテライトと電子構造の究 明表面処理遷移金属フィールドエミッターの開発α―リン酸ジルコニウム/シクロデキストリン複合型 ホスト化合物の合成TiO2単結晶の粒界除去と偏光子への利用新化合物Kx 〔Ga8+xTi16-xO16〕の合成1987 (S62) 高温超伝導体(La-Sr-Cu系,Y-Ba-Cu系)の光電子 分光法による電子構造の解析400kV分析電子顕微鏡によるSi3N4の粒界構造解析Nd1+xBa2-xCu3Oyの合成と超伝導性の究明熱プラズマを用いるダイヤモンドの高速気相合成 希土類含有の新しいマシナブル結晶化ガラスの合成 ゾルーゲル法による有機・無機複合非晶質体の合成Y-Ba-Cu酸化物の単一相合成新しい酸化ビスマス系イオン伝導体の開発cBNpn接合の作製透明YAGセラミックスの新しい合成法の開発YB66単結晶の有成グラファイト類似BC2N薄膜の合成1988 (S63) 局所照射型レーザフラッシュ法の開発と薄膜の熱拡散 率測定への応用低速イオンと固体表面の相互作用の研究FB30H型超高圧ベルト装置の開発燃焼炎によるダイヤモンドの合成TiC―Al2O3複合セラミックスの常圧焼結法の確立100種以上の六方晶系層状及びスピネル型新化合物 (君塚結晶)の合成ガロチタン酸トンネル化合物の合成Bi系超伝導体の単相化に成功30 年材 料 の 30 年キャラクタリゼーションガラスの均質度の定量評価法の開発六方晶アルミン酸化合物の基本構造と欠陥構造の解明準結晶の発見(イスラエル)微視的表面フォノンの実験的検証(無機材研)高熱伝導性窒化アルミニウムの開発(日本)セラミックスターボチャージャーの実用化(日本)分析電子顕微鏡による組成と構造の複合解析手法の開発ダイヤモンド薄膜のシンクロトン放射光セクショントポグラ フの撮影粉末X線及び中性子回折用解析プログラムRIETANの開発層状チタン酸の固体酸性の解明Car-Parinello法(第一原理分子動力学法)の開発(イタリア)電子線ホログラフィーによるアハロノフーボーム効果の検証 (日本)粉末X線及び中性子回折プログラムRIETANの開発(無機材研)多結晶体のX線回折による評価法―ε&τ走査法―の開発TOF法中性子線回折による高温下の窒化リチウムの構造解析セラミックスの超塑性現象の発見(日本)銅酸化物高温超伝導体(La,Ba)2CuO4の発見(スイス)高温超伝導体(La,Sr)2CuO4の発見(日本)研究交流促進法施行単一相YBa2Cu3O7-δのX線構造解析粉末中性子回折によるYBa2Cu3O7-δの構造解析液体窒素温度における超伝導体YBa2Cu3O7の発見(米)積層圧電アクチュエータの実用化(日本)YBa2Cu3O7-δの結晶構造解析(無機材研)ビスマス系超伝導体の変調構造の発見とその構造解析SIMSによるチタン酸ストロンチウム中の微量不純物の粒界偏 析の解明準結晶(AlMn)の構造解析Bi-Sr-Ca-Cu-O系超伝導体の発見(日本)Tl系の酸化物超伝導体の発見(米)超伝導材料研究マルチコアプロジェクト開始STAフェローシップ制度発足発表年度無 機 材 質 研 究 所 の物 性 合 成1989 (H 1) 高密度磁気ポーラロンの理論的解明弾性体の拡散クリープの新解釈の提唱単原子層グラファイトのフォノン分散測定気相合成ダイヤモンドからの自由励起子発光の観測PTCチタン酸バリウム導電機構の解明焼結助剤を用いないcBN焼結体の高圧合成Bi系超伝導体2212相のF Z法による単結晶育成人工知能を用いたガラスの材料設計支援システムの 開発1990 (H 2) セラミックスの破壊挙動と焼結に関する新概念の提唱透光性YAGの光学的性質の解明超急冷法によるゲルマン酸鉛焦電型赤外線センサー の開発ダイヤモンド合成用非金属触媒の発見1991(H 3) 72GPa以上で現れる高圧相Cs(Ⅵ)の発見Ta-S系化合物の電流磁気効果の解明氷のポリアモルフィズムの確立YBa2Cu3O7.7の高Tc超伝導体の高圧合成バナジウム複酸化物磁性体AV6O11 (A=Na, Sr)の 合成高純度スメクタイトの合成炭酸塩を助剤とした耐熱性ダイヤモンド焼結体の合成二重るつぼ法による単結晶の不定比制御法の開発開放型微細空孔を持つ粘土多孔体の合成結晶性の高いcBN及びwBNを含むレーザー・アシ ステド・プラズマCVD法を用いたBN薄膜の作製法 の開発1992 (H 4) フッ化物ガラスの波長変換の高効率化閃亜鉛鉱型MnTlの光吸収端の磁気的ブルーシフトの 解明一次元イオン導電体 Na1-xTi2+xB5-xO12 (B : Ga3+, Al3+)のNMRペロブスカイト型化合物Pb (Mg1/3Nb2/3) O3の良質焼 結体の合成新しい硝酸ビスマス系無機陰イオン交換体の合成炭窒化ほう素(B-C-N)粉末の合成法の開発溶媒移動FZ法による良質LaB6単結晶の育成粘土鉱物スメクタイトの単結晶の超高圧高温水熱法 による育成格子定数の大きなガーネット結晶の育成希土類含有フッ化物ガラスの合成非金属触媒によるダイヤモンド砥粒の合成1993 (H 5) 複合銀カルコゲン化物の相転移の解明TiC表面における遷移金属不純物の偏析磁場印加による酸化物融液中での対流変化の発見カルシウム欠損アパタイト良質結晶の合成層状化合物InMO3 (ZnO)mの合成圧力制御による水溶液からの新結晶成長法の開発イオン交換法と溶媒抽出法の併用による金属分離法 の開発荷電粒子応用特殊実験装置の開発30 年材 料 の 30 年キャラクタリゼーション熱力学的な準安定領域でのダイヤモンドの核形成,成長機構 における水素,フッ素の必要性の予測走査型プローブ顕微鏡(SPM)の多機能化希土類アルミノケイ酸塩ガラス中のYの周りの局所構造解析三元系硫化物複合結晶の同定と構造解析ダイヤモンド合成用非金属触媒の発見(無機材研)STMによるアトムマニュピレーション(米)インテリジェント材料の研究開始(日本)世界最高分解能1.0Å有する超高圧電子顕微鏡の開発と酸素原 子の直接観察ニオブ酸バリウム・ナトリウム(BNN)単結晶の第2高調波 位相整合による評価カーボンナノチューブの発見(日本)氷のポリアモルフィズムの確立(無機材研)重水素イオン中性化分光法による表面結合状態解析手法の開 発集束X線を用いた走査型X線回折顕微鏡/粉末X線回折計の 開発ニオブ酸リチウムの欠陥構造の解析GaNの発光素子の開発(日本)世界最高分析感度を持つ電界放射型分析電子顕微鏡(加速電 圧300kV)の開発超短波長(約0.2Å) X線回折装置を用いた高分解能結晶内電 子密度分布解析技術の開発ダイヤモンド表面の酸化反応過程の解明磁場印加による酸化物融液中での対流変化の発見(無機材研)Hg系酸化物超伝導体の発見(スイス)COE育成制度発足発表年度無 機 材 質 研 究 所 の物 性 合 成1994 (H 6) 原子レベルでのダイヤモンドの破壊過程の理論予測 インテリジェント性を持つジルコニア・アルミナ複 合膜の開発複合結晶BaTiS3の合成リンを触媒としたダイヤモンドの高圧合成100Kを超えるTcを有する種々の高圧安定超伝導体 の合成1995 (H 7) 酸化物磁性体の圧力変化によるNEPCO効果の発見擬一次元高分子の光励起緩和過程の解明BaTa2S5の超伝導性の発見擬ポテンシャルデーターベース(NCPS95)の構築単結晶ダイヤモンドの水素化表面のHREELSによる振 動スペクトルの観測テルル酸塩ガラスの構造単位と電子構造の解析物理的手法によるB-C-N薄膜の合成C型希土類酸化物構造を持つBi-Ln系酸化物の合成薄片状酸化チタンの合成フラーレンC60結晶の衝撃圧縮によるダイヤモンド微 粒子の合成疑似アルコキシド法焼結体原料合成の技術開発新しい高イオン導電性複合銀硫化物の合成Si3N4 ・ SiC超塑性セラミックスの開発粘土多孔体,粘土/天然有機物複合多孔体の開発YB66軟X線分光素子の実用化30 年材 料 の 30 年キャラクタリゼーションリートベルト解析プログラムRIETAN-94の開発新しい炭酸塩超伝導体の高圧合成と構造解析LuFeO3-ZnO系新ホモロガス相の構造解析B-C-N (BCxN1-x)薄膜の合成とXPSによる構造解析分析電子顕微鏡による立方晶BC2Nの存在確認ホーランダイトのNOx選択還元触媒能の発見アニュラ型固体検出器の走査型X線顕微鏡への利用塩素化ダイヤモンド表面の高い反応性の発見科学技術基本法施行ブリカーサー法によるナノコンポジットセラミックスの合成 法の開発(独)YB66軟X線分光素子の実用化(無機材研)ペロブスカイト型酸化物の持つ巨大磁気抵抗効果の発見(日本)戦略的基礎研究推進制度発足第2部先端無機材質研究の未来予測ayertL ate’ee < arOe eee a” ee Baまえがき無機材質研究所は,高純度無機材質の創製を旗印に,基礎研究を通じて社会に貢献すべく研 究活動をつづけている。無機材質研究所が得意とする領域について,これまでの研究活動を通 じて得られた成果とともに各分野での未来予測を試みた。成果については第1部の年表にも示 しているが,ここでは各研究者より具体的に記述している。展望については,その当否は数年あるいは10年を経た後明らかにされるであろうが,その結 果は当所の評価につながるものにもなろう。正鵠を得た展望であることを強く望むものである。1新材質1―1 酸化物耐熱構造材料第1研究グループ総合研究官池上隆康(1)はじめに地上の資源には限界があるという事が明かになる につれて,社会の今後の発展は,省資源・省エネル ギー技術開発に依存するという認識が一般化される ようになった。その結果,エネルギー効率を高める 研究や材料特性を最大限利用する研究が活発化した。 それらの研究の重要な柱の一つが,優れた構造材料 の創製にあるといっても過言ではない。また,宇宙 船の耐熱性タイルや耐熱窓,深海の耐圧容器などの ように,フロンティアの分野に進出するためにも, 新たな機能を有する構造材料の開発が鍵になる。地球上の生物は大気中の酸素を取り込むことで繁 栄しているが,これは自然な環境では酸素の富んだ 状態にあることを反映した結果といえよう。多くの 鉱物が酸化物の状態で存在するのは以上の理由によ る。このため,耐熱構造材料では,高温強度ばかり でなく,耐酸化性も要求される重要な特性の一つで ある。金属酸化物耐熱構造材料では,既に,十分に 酸化された状態にあり,それ以上酸素と反応しない ので,耐熱構造材料として金属や非酸化物系よりも 本質的に優れている。当所でも,設立の2年目から,金属酸化物耐熱材 料の創製に関する研究開発を積極的に進めてきた。 高純度無機材料の創製とその物性の解明が本研究所 の研究上の大きな柱になっていることから,これま での研究も,高純度金属酸化物原料粉末の製造技術 開発および原料粉末の物性測定と焼結性の解析を行 なってきた。(2)現在の成果これまでに研究した材料は,ベリリア(BeO),マ グネシア(MgO),アルミナ(Al2O3),スピネル(MgAl2 O4),ジルコニア(ZrO2),イットリア(Y2O3)等で ある。一般に,セラミックス材料が,これまで重用され てきた金属類やプラスチックス類の材料と大きく異 なる点は,前者の特性が製造過程,特に焼結に強く 依存するのに対して,後者は殆ど依存せず,材料自 身の物性で決まることにある。このため,前者の場 合,製造企業ばかりでなく,製造年月日などでも特 性が異なることがしばしばあり,セラミックスの材 料としての信頼性を低下させる原因となっている。 これは,材料としては明らかに欠点であるが,優れ た焼結体を再現性よく製造できる技術を開発できれ ば,これまでにない優れた材料創製の可能性があり, 一面では魅力となっている。このような視点から, ベリリアの材料開発では,まずできるだけ有利な条 件で高性能材料を製造するための易焼結性粉末調製 の技術開発を行なった。その結果,ベリリアでは硫 酸塩を仮焼(母塩を焼結温度より低い温度で焼成し て金属酸化物粉末とする)して得た粉末の焼結性が 特に優れているが,逆に水酸化ベリリウムを仮焼し て得た粉末の焼結性は非常に悪いことが分かった。 母塩の種類により焼結性が異なる理由を,湿潤熱, 吸着熱,水蒸気の吸着等温線,脱ガス量と組成など の表面に関するデータを測定したり,透過型電子顕 微鏡(TEM)で易焼結性BeOおよび難焼結性BeO の焼結過程の直接観察を行った。それらにより,易 焼結性BeO粉体は,焼結温度で多量の陰イオン,例 えばSO3CO2等の脱ガスにより粉体が活性化される こと,これに対して難焼結性粉体では,脱ガス量が 少なく焼結温度で表面活性が低下することが分かっ た。また,TEM観察から,前者は粒成長と同時に緻 密化が進行し,これに対して,後者は焼結温度で粒 子間の接触面積を増大させたり(焼結の分野ではこ れをネックという),粒成長(大きい粒子が小さい粒 子を侵食して平均粒径が増大する現象)するのみで, 緻密化は進行しない(多分,物質移動は原子の表面 拡散で進行した),という現象を明らかにした。MgOの焼結に関する研究では,上記の知見を基に, 陰イオン(弗化物イオンや塩化物イオン)の添加効 果を調べた。その結果,900℃以下で仮焼したMgO 粉体に上記の陰イオンを添加して,900℃以下で再加 熱処理を施すと焼結性が改善できることが分かった。 フッ化物イオンは焼結過程でMgOの物質移動性を高 めて焼結を直接促進するが,塩化物イオンは再加熱 処理でMgOの表面拡散による物質移動を促進して形 骸粒子を破壊して粉体の充填を均一にすることで, 間接的に緻密化を促進し,特に,弗化物イオンの添 加効果は顕著であり,1600℃という焼結温度として はかなり低い温度で透明焼結体の製造に成功した。 MgOの結晶構造はNaCl型の比較的単純な立方晶 である。立方晶では光学異方性が無いので,粒界が 存在しても光は粒界を無視して直進(アルミナ等の ように立方晶以外の材料では,光学的異方性のため に,粒界を境として光の屈折率が変化して,光の進 路が曲げられたり,粒界で反射されたりする。この ため,完全に緻密な焼結体でも光学的にはすりガラ ス状になり,透明となる単結晶とは異なる)するの で,多結晶体でも光の直線透過率が大きく,光学用 単結晶材料の代替として使用可能である。塩基性炭酸塩由来MgOの粉体は,焼結性に優れて いると知られていた。その理由を解明するために, 塩基性炭酸塩の調製条件とMgOの焼結性の関係を 検討した。この研究の過程で,塩基性炭酸塩の沈澱 を適切な条件で熟成することで極めて焼結性を改善 できることを発見した。この発見が新たな透明MgO 焼結体の製造へとつながった。これまでの概念では,必ずしも耐熱構造材料を透 明化する必要は無かった。しかしながら,溶鉱炉等 の高温に曝される窓材,大気との摩擦熱に耐える必 要がある宇宙船の窓,さらには高圧Naランプ発光管 など,科学や産業技術の発展に従い,耐熱構造材料 に対しても新たな機能を有する材料が要求されるよ うになった。このような要求を満足するには,透明 になるほど気孔を取り除いた材料の創製が要求され る。この意味で,MgOに関する研究ではそれらの要 求に答えるセラミックス材料創製の基礎的な技術を 開発したと言えよう。Al2O3セラミックスは酸化物構造材料の代表的な 材料である。特に,微量のMgOにより焼結性を促進 して透光化したアルミナ材料は,近年のファインセ ラミックスの発端となった材料の一つである。この ため活発に研究されている。特に,MgOの緻密化促 進効果に関する研究が多い。研究の多さが,現象の 解明に役だっているとは限らない。報告された研究 結果は,矛盾した事が多く,MgOの効果については 未解決であるとされている。これは,MgOの効果を 原子の拡散を活発にするという速度論的な視点から 研究したために生じた混乱であった。当所では,研 究の視点を焼結の均一性から説明(図1)して全て の焼結データを矛盾なく説明できる理論を構築した。(3)今後の展開近年,2000℃以上の高温に耐える超高温耐熱構造 材料への期待が高まりつつある。現在,重用されて図1 焼結体の密度と平均粒径の関係ρとRは焼結体の密度と平均粒径,ρ0とR0は圧粉体の密 度と平均粒径。図中のS-1やS- 2は平均粒径の異なる粉 体,各温度は焼結温度,各ppmはMgOの添加量を表す。 試料の製造履歴やMgOの添加で,上記の点綴による曲 線の傾きは必ず大きくなる。いるMgOやAl2O3は安価であり,現在の産業を支え る耐熱構造材料としては十分な特性を有している。 しかしながら,1800℃以上になると蒸気圧が無視で きなくなると同時に,機械的強度も非常に低下する という欠点があり,新たな材料創製の必要性が指摘 されるようになった。当所でも,次世代の酸化物耐 熱構造材料の有力な候補であるY2O3系セラミックス の材料化研究を進めている。高純度のY2O3の融点は 2300℃と非常に高く,蒸気圧も低いばかりでなく, 温度が高くなっても機械的強度の低下が他の酸化物 に比べて少ないという優れた性質を有している。そ れらの優れた物理的・化学的性質の学理的な解明を 進めることで,次世代の酸化物系構造材料創製に寄 与していきたい。1― 2非酸化物耐熱構造材料第3研究グループ総合研究官三友 護(1)はじめに金属は機械的性質に優れた構造材料であるが,高 温強度が低い。超合金と言われる超耐熱合金でも 1000℃を越えると強度が急激に低下するので,冷却 して使用している。窒化ケイ素(Si3N4)や炭化ケイ 素(SiC)のような非酸化物は焼結が困難な反面,焼 結体の高温強度が高いことが知られている。図1は 曲げ強度(金属は引っ張り強度)の温度変化を示し たもので,非酸化物が金属や酸化物に比べ高温で高 強度であることが示されている。これらの材料をエ ンジン部品をはじめとする高温用構造材料に適用し, 無冷却で作動する機械を実現するための研究が進め られている。一部ではすでに自動車エンジンの部品 として実用化されているが,本格的な応用は今後の 研究成果にかかっている。ここでは窒化ケイ素と炭化ケイ素の液相焼結に関 する最近の成果についてまとめる。(2)現在の成果従来の焼結は,細かく均一な粒子から成る焼結体 を作製する方向に努力が注がれていた。このような 焼結過程は理論との整合性がよく,焼結性に関する パラメーターの設定も容易であったからである。こ れは機械的特性としては高強度をめざすものである。 ところが,このような組織ではセラミックス材料の 欠点である強度の大きなバラツキ(低信頼性)や低 い破壊靱性(壊れ易い)を克服できないことが明か となった。そこで上記の均一な組織の中に柱状の大きな粒子 を導入し,不均一な組織とする方法が検討されてい る。このような材料の破壊した後の面(破面)は図 2のようである。柱状粒子は板2枚を釘で打つけた ときの釘の役割をはたし,板を離そうとすると大き な抵抗を示す。これは柱状粒子による架橋機構と呼 ばれるもので,破壊に大きなエネルギーを必要とし, 結果的に破壊靱性が向上する。焼結研究や部品の製造においては,低温安定型で あるα型を主成分とする原料が用いられている。液 相焼結過程でα型粒子が溶解し,高温安定なβ型粒 子として析出する。冷却後の焼結体では,β型粒子の 間に液相が固化したガラス相が薄く分布している。 相転移にともなって,液相は部分的に過飽和度が高 くなり図2のような柱状粒子が成長する。製造パラ メーターを制御することにより,高靱性・高強度の 材料が得られるようになった。しかし,このような 方法では組織の再現性が乏しく,機械的性質の再現 性も乏しい。信頼性の高い材料を得るには,焼結や 粒成長の理論と直接関連した組織制御技術が必要で ある。そこで,無機材研ではここ10年ほどβ型を原料と する焼結の研究を進め,複合組織の制御法を開発し た。β型粉末は正常粒成長するので,細かく均一な原 料を低温で焼結すると細かい粒子から成るナノセラ ミックスが得られることを明かにした。そして,こ のセラミックスは高温に加熱しても顕著な粒成長を 示さず,安定な組織である。この原料に大きなβ型 粒子を少量添加して焼結すると,その粒子が核とな 図1強度の温度変化 図2 窒化ケイ素の複合組織り大きな柱状粒子が成長する。その結果,図2と同 様な複合組織が得られる。大きな粒子は異常成長粒 子であるが,核の量や大きさ,助剤の種類と量,焼 結温度と時間等の条件を設定することによりその大 きさ,形状,量を制御できる。このように組織発現 過程が粒成長理論との対比で制御できるので,組織 の再現性を高めることができる。我々は最近,炭化 ケイ素の液相焼結においても複合組織の制御に成功 した。組織の制御による機械的性質の制御の研究に欠か すことができないのは,組織の定量的・統計的評価 である。我々は試料を研磨後,CF4ガスによるプラズ マエッチングを行い,走査型電顕で観察した。窒化 ケイ素や炭化ケイ素粒子がエッチングされ,粒界の ガラス相が残るので鮮明な組織観察が行える。窒化 ケイ素粒子はその結晶構造を反映して六角柱状か薄 い六角柱として発達するが,多数の粒子を画像解析 で処理することにより,2次元の観察から3次元の 分布を求める。その結果,粒径分布,平均粒径,平 均アスペクト比(長さ/直径)等組織の定量的パラメ ーターを得る事ができる。そして,窒化ケイ素の複 合組織の発達を粒径分布で定量的に示したのが図3 である。原料焼結体は平均0.3ミクロン程度の細かい図3 画像解析で求めた複合組織の発達過程 粒子の中に,1ミクロン程度の核が存在する。これ を熱処理で粒成長させると,核が優先的に成長し2 重の粒度分布を持つ組織となる。細かい方をマトリ ックス粒子,大きい粒子を柱状粒子と分け,それぞ れの組織パラメーターを定量化できる。これは複合 材料のマトリックスと強化材に相当し,破壊挙動や 高靱性化理論との対比が可能である。これらの情報 を基に,さらに,焼結体の高靱性化・高強度化を図 るにはどのように組織制御すべきか設定することが できる。このような制御法によると,高性能化と高 信頼性を両立させることが原理的には可能となる。(3)今後の展開ここで述べた方法は一部の組織を制御することに より,材料全体の機械的性質を制御できる点で構造 用セラミックスの本質的な問題に関係している。従 来のセラミックス科学は平均組織と焼結理論を結び 付けて発展してきたが,構造材料の問題解決には役 立たない。今後はこれらの過程や物性発現を定量的 に記述するプロセス科学の確立が重要な課題である と考えられる。一方,材料特性としては依然として高温強度の向 上が重要な課題である。特に,セラミックス製ガス タービンの実現性が高まっているので,1400℃程度 まで実用に耐える材料の開発は急務である。成功す れば,ガスタービンをエンジンに利用したり発電機 として使用し,高温排ガスからもエネルギーを回収 することができ,高効率熱機関が実現する。耐熱性の対極として,低温で容易に変形する超塑 性材料がある。これは粒子が微細で均一なナノセラ ミックスであり,塑性加工が可能となる。焼結体は 硬いので加工費が高いのが問題であるが,超塑性材 料は金属と同じような加工が可能となる。無機材研 でも最近超塑性を示す窒化ケイ素および炭化ケイ素 を開発したが,今後は,塑性加工がより低温で容易 に行える材料の開発が必要と考えられる。1―3 単結晶光学材料第13研究グループ総合研究官北村健二(1)はじめに―光学単結晶材料育成における問題―酸化物単結晶には,可視光に対し透明なものが多 く,古くからプリズム,窓材,基板といった光回路 用材料に応用されている。また,光が透過する際に 起る,吸収,発光,波長変換,屈折率変化といった 機能で優れた特性をもつ材料への期待も,オプトエ レクトロニクスを用いた通信・情報処理技術の開発 や,光を利用したプロセス技術の発展にともない, 近年ますます大きくなっている。特に酸化物単結晶 材料の分野では,固体レーザー用母材結晶や,非線 形光学材料の開発が盛んであり,数多い種類の材料 が,優れた特性をもつ光学材料として報告されてき た。しかし,これらの中である程度の市場規模を持 つまで発展してきた単結晶材料は,たかだか5～6 種類である。しかも,単結晶の育成方法はほとんど の場合,融液から成長させる回転引上げ法(CZ法) に頼っている。これは,光機能材料として塊状で利 用される結晶には,いくつかの厳しい条件が求めれ るところに理由がある。利用する光の吸収損が低く, 耐光性に優れている事,バルクとして組成・特性が 均一であること等が要求され,結晶育成において不 純物汚染や結晶中の欠陥,組成不均一などを厳しく 制御しなくてはならない。実用に至るには,さらに 経済効率も重要はファクターとなる。それらを考慮 すると現在の育成技術で,大型かつある程度高品質 な結晶を得るには,融液から育成する引上げ法等に 頼らざるを得ないのが現状である。このように光学用単結晶材料の場合には,材料特 性だけではなく,育成される結晶の品質や経済性と いった,育成技術の問題点ときわめて密接な関係を 持つ課題が存在し,すでに市販されて育成法も確立 されたように見える材料でも,育成や特性において 改善すべき所は数多くある。特に特定の添加成分を 加えたり,多成分系の不定比を示す化合物の単結晶 を融液から育成する際に,従来からの単結晶育成法 には克服すべき次のような問題がある。融液から結晶が成長する場合,結晶に取り込まれ る不純物や添加成分濃度は,融液中のそれらの濃度 とは異なる(偏析)。通常,ある速度で成長している 結晶中に取り込まれる不純物濃度を融液中の当該成 分濃度で割った値を実効偏析係数と呼んでいる。こ の偏析係数が1より小さい場合は,結晶中よりも融 液中に不純物が濃集することになる。CZ法のように, 容器の中で全原料を一旦融解し,一端からゆっくり 固化が進むシステムでは,不純物や添加成分濃度が 結晶の固化率によって変化する。添加成分の偏析係 数が1より小さい場合,固化が進むにしたがいその 成分濃度は大きくなる。例えば,現在もっとも広く 実用化されている固体レーザー発振材料のYAGの場 合,活性イオンとして1～1.5mol%のNd(ネオジム) 成分を添加している。Ndの偏析係数は0.2程度であ るところから,Nd濃度をある範囲内に制御しようと すると,固化率30%程までの結晶しか利用できない。 このことは,経済性から見ると極めて効率が悪い。また不定比組成を示す化合物では,融液組成成が 一致溶融組成からずれていると,固化が進むにつれ 結晶の組成は一致溶融組成から,より離れていく。 一般的に結晶特性は不定比組成に強く依存している ので,このように生じた組成不均一は,特性の信頼 性を損なう。したがって,不定比を示す化合物を融 液から育成する場合には,一致溶融組成から育成す る事が常套となっている。無機材質研究所では,これまでに種々の方法でイ ットリウム鉄ガーネット,酸化チタン,基板結晶な どの光学単結晶材料の開発してきたが,上記した育 成における技術的課題を解決する事が,新しい光学 材料の開発あるいは,既知の材料でも高品質化する ことにより応用への道を開くブレークスルーになる と期待し,二重るつぼを用いた単結晶育成も開発し ている。(2)現在の成果無機材質研究所で開発してきた二重るつぼ単結晶 育成法の原理を図1に示してある。育成炉自身は引 上げ法に用いる装置と共通であるが,るつぼが二重 構造となっており,内側るつぼの底に外側るつぼか ら内側に通づるパスが設けられている。内側るつぼ の融液から結晶が析出した量だけ,外側るつぼに原 料が供給される。二重るつぼのアイディア自身は, 必ずしも新しいものではなく,従来より数多く試み られてきたが普遍的な手法に至らなかった。しかし, 関連技術の開発や新たな必要性から,かつて試みら れた手法を再び挑戦可能とする例は多い。現在の引 き上げ法では,ロードセルを用いて逐次結晶の重量 増をセンサーしながら育成結晶の径をプログラム自 動制御している。また,連続して原料粉末を供給す る事もプログラム制御できる装置が開発されてきた。 両者の技術を連携することにより,原料を供給しな がら結晶を育成するシステムがかなりスムースに行 えるようになった。しかも現在では,原料の供給速 度もロードセルでモニターされて育成している結晶 の重量増から自動的に設定される。この方法は,結 晶を常に一定深さを保った融液から育成でき,均一 な単結晶を育成する上で有利である。また,特定成 分を添加する場合には,内側るつぼの融液を,希望 する添加成分濃度をもつ結晶が析出する組成とする。 外側るつぼには,析出する結晶組成の原料を結晶化 した量だけ供給する。このような組成制御により, 通常の引き上げ法のように固化率によって添加成分 濃度が変動する事を防げる。この二重るつぼ法を用いて,無機材質研究所では 特に不定比化合物の代表的な光学材料である二オブ 酸リチウムの不定比組成制御を試みてきた。不定比 化合物では,偏析の問題から,常に一致溶融組成を 用いた引き上げ法で単結晶を育成してきた。一致溶 融組成は育成には都合がよいが,必ずしも優れた特 性を持っているわけではない。例えば,ニオブ酸リ チウムの場合には,過剰なNb成分が結晶中のLiサ イトを占めるために不定比性を示す。化学量論組成 のLi : Nbが1:1であるのに対して,一致溶融組成 では48.5 : 51.5とNb成分が過剰となっている。通 常の引き上げ法で得られるニオブ酸リチウムはNb成 分過剰とならざるをえないが,過剰のNbが陽イオン図1全自動原料供給システムを備えた二重るつぼ単結 晶育成法の概図図2 二重るつぼ単結晶育成法により育成されたニオブ 酸リチウム単結晶例欠損という欠陥を伴っている。このように,一致溶 融組成は化学量論組成に比べて欠陥濃度が高いとい う例がかなり多い。応用を考慮して,そのような欠 陥を制御したい場合には,化学量論組成の結晶育成 が必要であるが,2重るつぼ法で組成制御が可能で ある。ニオブ酸リチウムの場合,Li成分過剰の融液 から化学量論組成の結晶が得られる。内側るつぼの 融液組成をLi成分過剰とし,外側融液を化学量論組 成にすると,まず内側るつぼの融液から化学量論組 成に近い結晶が析出する。結晶化した量だけ外側る つぼに化学量論組成の原料を供給することにより, 化学量論組成の大型結晶が育成できる(図2参照)。 このような方法で得た結晶をもとに,ニオブ酸リチ ウムの不定比欠陥構造の解析を行い,従来定説とな っている欠陥モデルとは異なるモデルを提唱してき た。また,欠陥構造モデルと光学特性の関連に関し ても新しい知見を得,新しい添加成分の可能性など も示してきた。(3)今後の展開引き上げ法で融液から大型の単結晶が育成され, あたかも製造技術が確立されたように見られる単結 晶材料でも,品質の信頼性,歩留まり等の経済性に 関しては,まだまだ改善すべき点は残されている。 特に,光学材料としての応用を目指した場合,他の 材料以上の完全性が結晶に求められている。融液か ら育成するという古典的な育成技術も,新しい材料 を用いた加熱装置の開発や自動化を行うことによっ て少しづつ改善されてきているし,原料の高純度化 も精製技術や分析技術の向上により,着実に押し進 められている。高特性を持ちながら育成が困難であ った材料,あるいは従来無視してきた不定比組成を 制御することにより特性の向上を示す可能性のある 材料など,育成技術の革新により新たな展開が期待 できるものも決して少なくない。そのようなブレイ クスルーになればと期待している2重るつぼ引上げ 単結晶育成法をここで紹介した。単結晶材料開発で は,育成技術開発,新材料開発の両面において,今 後の動向にはかなり興味深い面があると思える。1―4 新超伝導材料第11研究グループ主任研究官室町英治(1)はじめに(La, Ba)2CuO4の発見を契機とした,酸化物超伝 導材料の開発研究は10年目を迎えた。この間,世界 中の研究機関において,新しい超伝導体の開発競争 が繰り広げられてきた。その結果,数多くの銅酸化 物超伝導体が発見され,超伝導臨界温度(Tc)もHg 系の136Kを最高に,液体窒素温度を越えるものが珍 しくない状況が生まれている。酸化物超伝導体の数は既に数十を数え,それらを 限られたスペースで網羅することは不可能に近い。 ここでは,その愚を避け,無機材質研究所における 新超伝導体開発研究として,最も特徴が出ていると 思われる高圧合成に焦点を絞り解説する。高圧合成 は,常圧下における通常の合成法に代わるものとし て注目を集めている有望な手法であり,100Kを越え るようなTcを持つ新しい超伝導体が続々と発見され ている。(2)現在の成果(a) (Cu, X) -m(m+ 1)(n-1)n 型超伝導体ここに示した記号,(Cu, X)-m(m+ 1)(n-1) nは超伝導体の化学式を簡略化したものであり,Xと してはC, S, P, Geが合成されている。この中で最 も研究が進展しているのは,X=Cの場合,すなわち 炭酸基(CO3)を含む系列である。多くの炭酸塩型超伝導体が既に常圧下で合成され ているが,我々は高圧下ではより多様なしかもTcの 高い物質群が安定に存在することを明らかにした。 表題の簡略化記号をX=Cの場合について正確に書 き下すと(Cu0.5C0.5) Bam+1Can-1CunO2m + 2n+1となり, これは5～6 GPa (5～6万気圧)1200～1250℃ という高温・高圧下で安定なホモロガス超伝導体群 である。現在のところ,m=1のシリーズについてn=3, 4が,m=2のシリーズについてはn= 3, 4, 5が バルクとして合成されている。図1にはこれらの結 晶構造を示してある。m=1の構造はTlやHg系の 超伝導体,Tl(Hg)-2(n-l)nでTl(Hg)原子を 混合原子(Cu, C)で置換したものに相当する。ただ し,(Cu, C)-12(n-1)nで特徴的なことは,(Cu, C)面においてCuとCが規則的に並んでいることである一方,m= 2の場合は3枚のBa面と2枚の(Cu, C)O面が積み重なってブロック層を形成している。 12(n-1)nではCO3基が単独で存在したのに対して, 23 (n -1)nではC2O5というグループができている。(Cu,C)面のCuとCはやはり規則的に配列してい る。表1に示すように(Cu, C) -m(m+1)(n-1)n はいずれも高いTcを示す。特に1234相の117Kは現 在までに知られている炭酸塩型超伝導体の中で最高 の値である。このシリーズはTcばかりでなく,不可 逆磁界,臨界電流密度(Jc)などにおいても非常に 優れた特性を持つことが明らかになっている。X = S, P, Geについても,高圧合成により,新し い超伝導体群が得られている。これらの化学式を書 き下すと(Cu0.5S0.5) Sr2Can-1CunO2n+3 (n= 3 - 7 ), (Cu0.5P0.5)Sr2Can-1CunO2n+3(n= 3 - 6)及び (Cu1-zGez)Sr2Can-1CunO2n+3(n= 3 - 6)となり,現 在のところ,m=1のシリーズのみが確認されている。 またX=Cの場合と異なり,Baの代わりにSrが入 っている。X=P, Sのシリーズは,(Cu, C)-12(n- 1)nと基本的に同型であり,CuとS (又はP)は規 則的に並んでいる。これに対して,X=Geの場合, CuとGeは不規則に配列しており,上の化学式でz は0.3～0.4の値を取る。これらのシリーズも最高Tc として100K前後が観測されている(表1)。(b) M-12(n-1)n (M = B, Al,Ga)系超伝導体 1212相と呼ばれる多くの物質群が常圧下で合成さ れている。例えば MSr2YCu2O7(M-1212,M= Al,Ga, Co, Fe)がそれであり,有名な123系超伝導相YBa2 Cu3O7もCuBa2YCu2O7と書き換えればCu-1212相に 相当する。高圧下においてはCu層の枚数nが大きな表1種々の高圧安定超伝導体の臨界温度n= 2 n = 3 n= 4 n= 5(Cu, C)-12(n-1)n 67K 117K(Cu, C)-23(n-1)n 91K 113K (90K)(Cu, S)-12(n-1)n 60～100K(n= 3～7)(Cu, P)-12(n-1)n 60～110K(n= 3～6)(Cu, Ge)-12(n-1)n* 90K 89KGa-12 (n-1)n 70K 107KAl-12 (n-1)n 78K 110K 83KB-12 (n-1)n 75K 110K 85K02(n-1)n-F 99K 111K*Yを含む(Cu,C)-1223 (Cu,C)-1234 (Cu,C)-2323 (Cu,C)-2334 (Cu,C)-2345図1(Cu, C)-m(m+1)(n-1)n相の結晶構造高次構造を安定化させることができる。つまりもし 常圧下で1212相が存在すれば,高圧下ではM - 12(n- 1)n(n> 2) が存在する可能性がある。こうしたアイデアに基づいて,我々はMとして, 3b金属,B, Al, Gaを含む系の高圧合成を行い,こ れらの3種類の金属すべてについて,MSr2Can-1Cun O2n+3(M-12 (n -1)n)で示される系列を発見した。そ れぞれの相のTcについては表1を参照されたい。B からGaへとイオン半径は大きく増大するにもかかわ らず,TcはほとんどMの種類によらず,いずれの 場合も最高値,約110Kはn= 4の時に得られる。(3)今後の展開つい数年前までは,100Kを越えるような超伝導体 を含む系列としては,Bi-22(n-1)n系,Tl-22(n- 1)n 系,Tl-12(n-1)系,Hg-12(n-1)n 系の 4 系 列が知られていたにすぎない。これらはいずれも常 圧下で安定なシリーズである。最近の高圧合成の進 展は,こうした状況をすっかり変えてしまった。表 1には我々が発見した系列のみを示してあるが,こ れ以外にも,Pb-12(n-1)系,(C, B)-12(n-1)n 系,Sr2Can-1CunO2n+2系(これは O2 (n-1)n 系と呼 ばれている),等が高圧下で安定な超伝導体系列とし て知られている。今後も高圧安定超伝導体の数は増 え続けるであろう。さらに,高圧下では酸素原子の一部をハロゲンで 置換した系列の合成も可能になる。表1には,我々 が最近発見したフッ素を含む超伝導体,Sr2Can-1Cun O2nF2(O2(n- 1)n-F)を示してあるが,この系の 高いTcは注目に値する。Hg系の136Kを凌ぐTcを有する超伝導体が,高 圧合成によって開発される日は近いのではなかろう か。さらに室温超伝導体の発見へと夢は広がる。1―5 強誘電体材料第4研究グループ総合研究官高橋紘一郎(1)はじめに無機材研において,強誘電体材料の研究は多方面 にわたって行われた。材料の形態としては,粉末, 焼結体,厚膜,単結晶,特性付けとして常・高温X 線回折,電顕観察,物性として誘電性,強誘電性, 焦電性が取上げられた。ここで,すべてにわたって 記述する紙幅がないので,本研究所のもっとも特徴 的な研究課題について紹介したい.大きな流れとしては,①構造敏感性および②アモ ルファスと結晶の比較に関する研究である。①の内 訳は,(a)不純物の役割,(b)格子欠陥,(c)組成変動 であり,②としては,(a)アモルファス化範囲の拡大 およびアモルファスの結晶化過程,(b)アモルファス・ セラミックスセンサーへの応用に関する研究である。(2)現在の成果希上類添加型BaTiO3の新しい半導体化機構の提唱1)白崎らによって,希上類添加型BaTiO3の新しい半 導体化機構が提唱された希上類を微量添加すること により,強誘電体BaTiO3は半導体化する。このもの は,正温度係数抵抗体として,セラミック・ヒータ ー,カラーテレビの自動消磁,また,高誘電率を利 用してコンデンサーとして実用化されている。従来, 半導体化機構として原子価制御理論が支配的である が,実験事実との間に多くの矛盾がある。そこで次 のような新しい考え方を提唱した。BaTiO3ペロブスカイトのBa2+サイトにLa3+を添 加すると陽イオン空孔が生成する。その結果,Ti-O の結合強度が低下する。このものを高温で熱処理し た場合に,容易に酸素を熱解離して,ホストに電子 をトラップした酸素空孔を生成する。これが,この 種n型半導体のドナーとなる。この理論を密度,電 気抵抗,また,酸素の自己拡散係数の測定により実 証した。組成変動のないチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の合 成と物性1)掛川らは,湿式-乾式組合せ法により組成変動のな いPZTの合成に成功した。従来,モルフォトロピッ ク相境界(MPB)は,正方晶と斜方晶の混合系と考 えられていた。しかし,本研究によって,それが組 成変動によるものであることが明らかになった。こ のMPB付近において,誘電率を測定した結果,組成 変動がある試料に比して,無い試料はかなり高い誘 電率を示した。陽・陰イオンペア欠陥を有するチタン酸鉛(Pb1-x TiO3-x)の合成とその性質1)ペロブスカイト構造は,多種類のイオンを包含し うる安定な構造である。湿式法により陽・陰イオン ペア欠陥を最大38%も大量に含むチタン酸鉛の合成 に成功した。密度の測定からPbとOのサイトに空 孔が存在していることが判った。その特徴は次の通 りである。① 水溶液から合成され水分を揮発させた時点で (350℃)アモルファスである。② 非平衡的物質であり,高温でTiO2を遊離する。 ③組成変動量を粉末X線回折において,βcosθ ～sinθプロット(β:真の半価幅)より,定量的に求 めることができた。④ 欠陥量xが大きくなると正方歪c/aおよび単位 胞体積は減少する。⑤ 欠陥のないものに比して,欠陥チタン酸鉛の熱 的挙動は,顕著な特徴がある。すなわち,xが増加す るにつれて相転移点(Tc)は低下し,拡散転移的挙 動を示す。これは,組成変動に起因するものといえ る。湿式法によるアモルファス・チタン酸鉛の合成と結 晶化過程2)湿式法により,アモルファス・チタン酸鉛を合成 した。高橋らは,これを熱処理して結晶化を行った が,この過程で興味ある現象を見出した。① 熱処理温度が増大するにつれて,正方歪c/aが増 加する緩和現象が観察された。このc/aは,500℃より600℃まで急激に増大する が,それ以上900℃まで一定となる。②c/aが一定となるT = 600℃以上で温度上昇につ れて,Debye-Waller因子が減少することが判った。(図1)すなわち,アモルファスの結晶化過程においては, アモルファス構造から急激に規則的な結晶構造に移 行するのではなく,乱れが徐々に解消されていくも のと考えられる。印刷法,超急冷法によるゲルマン酸鉛の合成と焦電 型赤外線センサーの開発3)焦電型赤外線センサーは,常温で動作するため装図1 湿式合成PbTiO3の熱処理温度に対するDebye- Waller 因子の変化置が小型化できるので,非接触センサーとしてドア の開閉,トイレの水量制御,また,温度計として広 範な需要がある。ゲルマン酸鉛(Pb5Ge3O11 : PGO) は,キュリー温度が高く(177℃),焦電係数が大き く,また,誘電率が低い(ε = 50)ことから,性能指 数が高いという利点をもっている。高橋らは,ガラ ス再溶融結晶化法,印刷法,超急冷法などを使って 厚膜を作製し,焦電性能を測定し,実用化レベルの 赤外線センサーの開発に成功した。素子作製の際に,素材がバルク(単結晶,焼結体) の場合,切断,研磨の工程を必要とする。これらの 煩鎖な過程を省くために,物質合成の際に直接所望 の厚さに作製する試みが幾つかなされている。例え ば,印刷法,超急冷法などである。PGOの粉末を有 機物(ビークル)と混ぜてスクリーン印刷したのち, 焼成(725℃)するとc軸配向性厚膜(約30μm)が得 られる(図2).この膜の検出感度は,D* = 108 (cm・ Hz1/2/W)であった。他方,融体を超急冷して,ロー ルにより圧延したのち熱処理して,配向性のある厚 膜(50―200μm)を作製し,焦電センサーとしての 利用を試みた例がある。この方法で,KNbO3, (K, Na) NbO3厚膜を作製し,焦電的検出感度D*=3 ×106を 記録した。さらに,PGOの場合,超急冷することに より,アモルファス厚膜を得,これを熱処理して結 晶化するとc軸配向度Fc = 28%に達した。この検出 図2 印刷法によるPb5Ge3O11の配向性厚膜表面のSEMの写真 (720℃熱処理六角板状結晶の分極:c軸は、紙面に垂直)感度D* = 107 (5～50Hz)であり,この値は市販の センサーの性能に相当する。(3)今後の展開強誘電体が工業的に多方面で活用されているのは, 次のような理由による。①外部電圧によって分域を反転できる。また,自発 分極の方向を揃えることができる。②外部電圧によ り伸縮自在である(圧電,電歪)。③熱により電流を 誘起できる(焦電)。④高い誘電率⑤外部電圧により 複屈折,旋光性を制御できる。以上のようなバラエティに富んだ性質は,まだま だ工業的利用への可能性を秘めている。日本におけ る強誘電体材料の研究および工業技術は,名実共に 世界のトップレベルにある。当面このようなすう勢 は続くであろう。現在を含めて近い将来,次のよう な事柄が問題点として浮かび上がってくる。①エレクトロニクス製品のダウンサイジングに伴う 強誘電体材料の小型化および高性能化:これに対処 するためには,合成の面で単結晶,厚膜および薄膜 の高品質化,耐久性の向上などが,ますます重要と なつてくる。②ハイブリッド化の積層化:超伝導体あるいは半導 体と誘電体との結合による全く新しいデバイス,セ ンサーの開発。③マルチメディアへの対応:カー効果,ポッケルス 効果,SHG,ホログラフィ,旋光性などの光学的性 質を使った光通信用素子の開発,ただし,この分野にもアキレス腱ともいうべき問題 点はある。それは,素材がほぼペロブスカイト系に かなりの部分限定されていることである。この意味 で新物質の創製が待たれる。しかし,全体的にみる と強誘電体材料の研究および利用の分野は,ますま す発展していくであろう。(本稿は,著者の他に,白崎信一,月岡正至,山村 博,村松国孝,元客員研究官掛川一幸の各氏の研究 成果を中心にまとめたものである)文献1)白崎信一,高橋紘一郎,掛川一幸,セラミック ス,15(11)(1980)892.2)高橋紘一郎,セラミックス,17(4) (1982)246.3)高橋紘一郎,Fine Ceramics, Ohmsha Ltd (1987)240.1―6 磁性材料(その1)―磁性半導体―未知物質探索センター主任研究官梅原雅捷(1)はじめに磁性材料の果たしている役割は大きい。変圧器の 磁心材料等は古くからの例であるが,我々の周辺で も,コンピュータ,オーディオ関係等磁性材料を使 用した製品を容易に見いだす事が出来る。他の主要 材料として,電子材料,その中でも半導体材料の重 要性も論を待たない。従来,磁性材料と半導体材料 は互いに異なる物質を用いていた。例えば,鉄は優 れた磁性材料ではあるが半導体材料には成らず,シ リコンやゲルマニュウムは優れた半導体材料ではあ るが磁性材料には成らない。しかし,1961年にユーロピウムカルコゲナイドで 総称される磁性半導体,EuX (X = O,S, Se, Te)が, 1964年にスピネルカルコゲナイドで総称される磁性 半導体,CdCr2S4, CdCr2Se4等が発見されると,磁 性材料と半導体材料を同一物質で兼ねる可能性が俄 かに浮上した。そればかりでなく,磁性半導体では, 条件次第で,磁性と半導体の両性質が互いに強く相 互作用することが明らかになり,新たな機能性材料 としての期待が持たれるに至った。最近では,CdTe, ZnSe等のⅡ-Ⅵ族化合物半導体の陽イオンの一部を Mn, Fe, Coなどの2価の磁性イオンで置換した希 薄磁性半導体が脚光を浴びており,結晶成長技術と 相俟って,バルク結晶から人工的な超格子までを含 めた磁性スピンの関与する物性及びその制御技術の 研究が展開されている。周知のように,トランジスターは半導体材料中の 荷電担体の動きを利用している。磁性半導体では, この半導体的性質としての電子や正孔が磁気的性質 を担う磁気スピンと相互作用し,その結果,荷電担 体の輸送現象や母体の磁気的光学的性質が大きく変 化する。この様な磁性半導体特有な物性の発現機構 を明らかにする事は,物質の基礎的理解のみに留ま らず,次世代材料として期待されている磁性半導体 の応用にとっても重要な事であろう。この様な観点 から,磁性半導体中の伝導電子と磁性を担う局在ス ピンとの相互作用により生じる現象の発現機構の統 一的理解と,新たな物性を探索するための理論的研 究を実施した。(2)現在の成果磁性半導体中の伝導電子と局在スピン系の最も簡単なハミルトニアンを次の様に考える。第一項は伝導電子のトランスファーエネルギーで, 伝導電子が磁性原子上をホッピングしながら結晶中 を運動している事を表しており,第二項は伝導電子 と磁性原子の不完全殻電子とのクーロン相互作用の 交換項に由来し,各磁性原子上での伝導電子と局在 スピンとの相互作用を与える。第三項は磁気秩序の 起源である局在スピン間の交換相互作用である。こ のハミルトニアンを基礎にして,磁性半導体中の伝 導電子と磁性スピンとの間に何が起こり,その結果 どの様な現象が実現されうるか調べた。以下,これ までにわかった事の幾つかを簡単に述べる。(ⅰ)自己局在磁気ポーラロン状態伝導電子が上式の第二項を通じて局在スピンを歪 ませ,自分自身も相互作用のエネルギーで得をすべ く,自ら歪ませた局在スピンの歪みに何らかの意味 で局在した状態を磁気ポーラロンと言う。特に相互 作用が強い場合,伝導電子は自ら歪ませた歪みに束 縛されてしまう。この状態を自己局在磁気ポーラロ ンと呼ぶ。では,どの様な条件下で“自己局在磁気 ポーラロン”が実現し,どの様な形態を取るのであ ろうか?筆者は局在スピンを古典スピンとして扱い, 全パラメータ領域での反強磁性半導体中の自己局在 磁気ポーラロンの全体像と安定条件を明らかにした。 その結果,EuXで自己局在磁気ポーラロンが実現す ると,数格子定数に亘るラージポーラロンになり, ポーラロン内部の局在スピンは完全に強磁性的に揃 う事が示された。計算から求めた安定条件から判断 すると,EuTeでは自己局在磁気ポーラロンは存在し 得ない事,これに対し,EuSeでは存在の可能性がか なり高い事が示される。しかし,得られた自己局在 磁気ポーラロンの安定条件は意外の他厳しい上に, 純度の良い結晶が得にくい事等のため,自己局在磁 気ポーラロンの実験的検証は今だ成されていない。 (ⅱ)磁気的不純物状態及び束縛磁気ポーラロン状態結晶中に欠陥等が存在する場合は,伝導電子は欠 陥等に捕獲され,その周りに磁気ポーラロン状態を 形成する。現在観測されている磁気ポーラロンの多 くはこの様な状態であると考えられる。例えば,EuX 中の一部のEuをGdで置換した例や,EuTeのTe をI(ヨー素)で置換した例等が報告されている。こ れ等の系は,+1価の有効電荷に一個の電子が捕獲さ れている描像が成り立ち,活性化型の伝導や磁気ポ ーラロン状態に付随する強磁性的磁化が磁化測定や ファラデー回転により観測されている。他の典型例 は,Eu-rich EuSeやEuTeであるが,これに関して は(ⅲ)で紹介する。以上の例とは少し異なるが,電子を光励起した後の 緩和状態からの発光を観測する事により磁気ポーラ ロン状態を調べる事も出来る。特に,EuXの4f準位 の電子を伝導帯に励起した場合は,4f準位が局在し ているため,生成されたホールが局在した1価の正 電荷として振る舞い,緩和状態は上述した1価の不 純物状態と等価になる。事実,発光エネルギーの温 度変化や磁場変化を解析する事により,4fホールに 束縛された大きな格子緩和を伴った磁気ポーラロン 状態が発光の始状態である事が明らかになっている。 (ⅲ)高密度磁気ポーラロンと非金属―金属転移陰イオン欠陥の存在するEuTeやEuSeでは,伝導 電子が1cm3当たり1018～1019個も存在し,低温で半 導体的であるが高温側で金属的伝導が観測される。 筆者はこの点に注目し,伝導電子濃度の増加に伴う 非金属―金属転移と相関する高密度磁気ポーラロン の問題を理論的に調べた。また,高温での伝導電子 の一様な(金属)状態が低温で高密度磁気ポーラロ ン状態に転移する事も示され,温度による金属―非 金属転移と磁気ポーラロン出現との相関も明らかに なった。この温度変化は,Eu-rich EuTeやEuSeの 実験結果と非常に良い対応を示す。(ⅳ)磁性半導体の磁気整列機構伝導帯に存在する伝導電子数が増加し縮退して来 ると,最早,磁気ポーラロンは安定に存在しえない。 この様な場合でも,伝導電子濃度は金属と比較すれ ばそう濃くはなく,フェルミエネルギーはバンド幅 に比較して充分小さい。磁性金属では局在スピン間 にRKKY相互作用が働き,これが磁気スピン配列を 決定する主要な役割を担っている。磁性半導体では, 伝導電子が存在しなくとも磁気スピン間の相互作用 が存在する事と,前述の様にフェルミエネルギーが バンド幅に比較して充分小さいため,金属の場合と は異なる機構による磁気整列が可能になる。事実,2重交換相互作用の成立範囲と逆のバンド幅の広い 領域に於いても,伝導電子濃度の増加により局在ス ピンのcant,あるいは強磁性整列が可能に成る。(3)今後の展開以上,半導体的性質としての電子や正孔が,磁気 的性質を担う磁気スピンとの相互作用の結果生ずる 新たな物性に関して述べた。次の問題は,これらの 物性から生ずる機能を如何にデバイスとして顕在化 させるかという点にある。1960―1980年代でのデバ イスに対する問題点は,結晶作成が制御可能でなか った事,常温でも磁気スピン秩序があり,しかもキ ャリアーと磁気スピンとの相互作用の強いバルク結 晶を探索出来なかった点にある。最近は結晶成長技 術も進歩し,特に,MBE法などによるヘテロ構造, 超格子構造などの作成はこれらの物性にメゾスコピ ックな側面を持ち込み,単に構造の制御のみならず, 関連する相互作用も人工的に制御出来る様になりつ つある。このためバルク結晶では期待出来ない量子 サイズ効果等の新たな機能発現への期待が持たれて いる。ヘテロ構造,超格子構造の作成は,デバイス 作成の観点からもかなりの前進と言える。現在,希 薄磁性半導体Cd1-xMnxTeの大きなファラデー効果 を利用した980nm光アイソレーターがトーキン(株) からサンプル出荷されている。これは,(希薄)磁性 半導体の磁気光学効果を利用したデバイスの第一号 であるが,同時に,デバイス作成が単なる夢の段階 でなく,既に手に届く所まで来ている事を意味して いる。この他にも,スピントランジスター,希薄磁 性半導体を利用したレーザー発振,磁気ポーラロン 効果の利用等の提案あるいはデモンストレーション もされており,少なくとも現在デバイス開発を視野 に入れた工学レベルの段階まで到達している様に思 える。21世紀には,荷電担体と磁気スピンとの相互 作用を制御したデバイスが我々の周辺に出現するで あろう。そのためには,今後,基礎研究と応用研究 の密接な提携あるいは橋渡しが不可欠に成るであろ う。1―6 磁性材料(その2)―遷移金属硫化物のエピタキシー膜―第2研究グループ主任研究官野崎浩司(1)はじめに遷移金属および希土類金属元素は磁性原子であり, それを成分とする固体はそれら原子の結合状態や結 晶の周期性を反映して,常磁性,強磁性,反強磁性 などの多様な磁性を呈する。換言すれば,磁性を調 べることにより,固体の電子状態や結晶の周期性に ついての知見を得ることができる。磁性の発現は電 子相関の結果であるが,遷移金属硫化物の磁性は電 子相関の強い極限である酸化物の磁性と,比較的弱 い金属の磁性との中間の多様な形態を示す。このこ とは,遷移金属硫化物の化学結合が,イオン結合や 金属結合あるいは共有結合の入り交じった多様な形 態の反映であり,その理論的理解はなかなか難しい 現代的課題である。しかしながら,遷移金属硫化物の電磁気的性質の 多様性には,特にd電子の挙動が強く反映されてお り,これを解明することが中間的な化学結合の状態 により接近するための一つの方法であろう。これま でこのような立場から遷移金属硫化物の電磁気的性 質の研究を行ってきた。物性は試料に大きく依存す るため,良い試料を用いて物性測定を行うことが重 要であり,合成を根幹とする当研究所において,こ のことがある程度実現してきたことは幸いであった。 この点をさらに展開する観点から,分子線エピタキ シー法による新たな遷移金属硫化物の合成を現在進 行させつつある。これの意図は,比較的蒸気圧の高 いFeからCuまでの3d遷移金属硫化物の単結晶膜 を合成し,単結晶膜の物性を通じて電子状態の解明 を目指すことにある。また同時に,硫化物の新超伝導体を探索合成する ことにある。これらに関する現状と将来展望を述べ るのが本稿の趣旨であるが,この点での現在の成果 はまだない。そこで無機材質研究所において最近発 見された新物質の電磁気的性質について何が解明さ れたかを,現在の成果として述べることとする。(2)現在の成果最近発見された硫化物の新物質の中で興味ある性 質を示すものとして,超伝導体であるBaTa2S5と半 金属であるTa3S2がある。以下,それらの性質につ いて概略を述べる。Ba-Ta-S系において多くの層状構造の新物質が佐 伯等により発見されているが,それらの化合物の中 で,BaTa2S5は唯一金属伝導を示し,約3 K以下で 超伝導となることが判明した。その後,同型構造の AM2S5 (A = Ba, Sr および M= Ta, Nb)の多く が超 伝導を示すことが,佐伯等により明らかにされてい る。BaTa2S5の性質を詳しく調べてみると,試料の 熱処理の履歴の相違に対応して,超伝導転移におけ る磁化率と電気抵抗,および常伝導の磁化率,電気 抵抗,磁気抵抗,ホール係数は,それぞれ2種類に 区別される顕著に異なった振る舞いを示した。例え ば,図1に示された磁化率のうち,低温でキュリー ワイス的な常磁性を示す試料# B,#Cの超伝導転移温 度は2.9Kであるが,常磁性的な立ち上がりを示さず に約70K付近で小さなピークを持つ試料# Aのそれは 3.1Kである。これらの試料の電子線回折の結果,転 移温度が低い試料はa√28×a√28×ncの超格子が主 であるのに対して,転移温度が高い試料は,この超 格子と,これがc軸のまわりで21.8度回転してでき る超格子とが,ミクロ的にc軸方向に交互に積層し た構造を持つことが判明した。磁化率から判るよう に,前者の試料は僅かな常磁性Taイオンを含むのに 対して,後者の試料はそのようなことがない。また, 磁気抵抗等から後者の試料の伝導における緩和時間 は前者に比べて顕著に長いことが判る。以上から,構造的にも電子状態の上でも互いに異 なる2種類の化合物がBaTa2S5において存在すると 結論される。図1 BaTa2S5の磁化率(H =10 kOe)表各温度における伝導のパラメータT (K)α(%)n1 (1017cm-3)n2 (1019cm-3)μ1 μ2(103cm2S-1V-1)4.8 16.6 8.91 2.41 2.6 0.4852 11.8 6.17 3.58 2.4 0.3177 14.3 8.58 3.11 1.8 0.30291 1.3 0.34 15.0 2.2 0.04表 各温度における伝導のパラメータは正孔伝導の寄与率 (α =σ1/σ0)、n1、n2は正孔と電子の密度、μ1、μ2はそれぞれ のホール移動度。Ta-S系のTaリッチの側の化合物としてTa6S, Ta2SおよびTa3S2が報告されているが,これらはい ずれも金属伝導を示す。このうちTa3S2は和田によ り発見された新物質である。この物質の磁気抵抗は 磁場の自乗に比例して増大し,室温においても観測 されるほど大きい。また,ホール係数は磁場の自乗 に比例して減少し,低温でその符号が正であるのに 対して約50K以上で負となる。これらの磁気抵抗及 びホール係数の各温度における磁場依存性を解析し て,表に示した伝導に関するパラメータを得た。.正 孔および電子の密度は共に半導体並に小さく,正孔 の移動度が顕著に大きい特徴がある。これらの結果 は,この物質がグラファイトやビスマスと同様に, 半金属であることを示している。次に,遷移金属硫化物等の合成に分子線エピタキ シー法を適用する試みの今後の展望について述べる。(3)今後の展開冒頭で述べたように,今後の展開として二つの方 向がある。一つは,既知の物質であっても従来の合 成法では得難い物質を作製すること,あるいは高純 度化することである。これらは新物質ではないが, 物質探求の新展開を導くものと考える。3d遷移金属 硫化物の単結晶膜の合成は,この方向のものである。例えば,CuSは特異に電気抵抗が小さい金属伝導 を示す物質であるが,単結晶膜を実現することがで きれば,粒界の散乱を抑制することができ,伝導機 構やバンド構造を実験的に解明する可能性が開かれ る。また,NiSの金属絶縁体転移は長らく論争され てきたが,最近光電子分光法による研究が進展した。 単結晶膜を用いればスペクトルの分解能があがり, 金属絶縁体転移の本質がより明確になるであろう。 分子線エピタキシー法は,低い温度で物質を合成で きる利点を持ち,従来の加熱による固体反応では得 難い物質を得ることができる。それらの例として, スピネル型のFe3S4,CO3S4, Ni3S4があるが,これら の単結晶膜を得て,まだよく知られていない物性を 調べることも目標の一つである。今一つの方向は,硫化物の新物質の探索合成であ る。分子線エピタキシー法の特長を生かした新超伝 導体の創製もこの方向のものである。例えば,Sn1-x AgxSeは,NaCl型の超伝導体として知られているが, Sn1-xAgxSは超伝導を示さない。おそらく NaCl型 から結晶構造が歪むためと思われる。そこで基板表 面で強制的にNaCl型のエピタキシー膜を実現するこ とができれば,Sn1-xAgxSも超伝導になるのではな いかと考えている。新物質創製で今一つ魅力ある方 向は,異種化合物の周期的な積層を実現して大工格 子を作製することであるが,これは次の段階の課題 となるであろう。1―7 電子材料第1研究グループ主任研究官羽田 肇(1)はじめに無機材質研究所に最も関係の深い電子材料は,エ レクトロセラミックスと称せられている機能性セラ ミックスの一群である。したがって,ここでの電子 材料の未来というと,エレクトロセラミックスの未 来と必然的に重なっており,ここでの記述もこの分 野が中心となってくる。さて,その将来を語る前に, いったい何をエレクトロセラミックスと言っている のか少し考えてみたい。通産省の統計をもとにした平成7年度の日本セラ ミックス協会の分類では,ソフトフェライト,フェ ライト磁石,圧電セラミックス,サーミスター,バ リスター,セラミックス基板となっている。肝心の コンデンサーやICパッケージが見当たらない。よく 見ると,これらは,ファインセラミックスの方には いりこんでいるのを見つけることができる。では, オプトエレクトロセラミックスはエレクトロセラミ ックスの一部なのか?各種センサー用材料は?厳密 に考えると難しくなるが,ここではこれら全体を含 めた漠然としたものと考えておきたい。これらの材 料ではよく似たような研究手法がとられることが多 <,研究者コミュニティーも共通している。10年前 の統計ではほとんど入っていなかったエレクトロセ ラミックスが,現在では完全にファインセラミック ス中に重複されて記述されている。分類も時代とと もに変化するものなのであり,厳密に定義してもあ まり実りはないだろう。ところでエレクトロセラミックスは現在ファイン セラミックスの80%の生産高をしめており,2000年 にはほぼ倍増すると予測されている。このことから 一頃のファインセラミックスブームでの経済的な牽 引車はエレクトロセラミックスにあったともいえる。 もちろん,この発展は,電化製品,通信機器,ある いはコンピュータのそれに呼応したものであったこ とは間違いない。そしてここしばらくは,脱工業化・ 情報化社会への移行を反映した発展をとげるものと 考えられる。ここでは,このあたりを少し具体的に 見てみたい。(2)現在の成果図1に各種のセラミックスコンデンサーを示した。これらは現在も使われているものであるが,右のも のほど近年に開発されたものとなっている。この発 達はいわゆる軽薄短小の技術トレンドに合致したも のであった。そして,現在はほとんど肉眼では見え ないようなコンデンサーになるまでに至っている。 この発達が新たな技術課題を生む。例えば,素子の マウンティングをどうするかといった問題である。 このコストがバカにならないものになってきている。 これなどは技術の発達が新しい技術に対するニーズ を生む典型である。いずれにしても,エレクトロセラミックスのミニ チュア化は,しばらくつづく傾向だと考えられる。 一方,この発達は,セラミックスプロセス制御の発 展と呼応したものでもあった。例えば,多くのエレ クトロセラミックスは積層化することで性能を格段 に向上させてきた。図2に積層数の進歩のようすを図1 現在用いられている各種セラミックコンデンサー図2 積層セラミックコンデンサーの積層数、電極間隔 の推移(鶴見、内木場、セラミックス誌31 128(1996))示したが,これによると,積層間の距離は益々小さ くなってきている。エレクトロセラミックスの代表 的な材質であるチタン酸バリウムでは,2 μmを切 るような積層部品が開発されつつあるのが現状であ る。ここでは,如何に隔絶された層を印刷し,焼結 していくかが,発展を強いられた基本的なセラミッ クプロセス技術である。プロセス技術の基盤的研究 は無機材研の得意とする分野であり,この間のプロ セスに対する当所の貢献は他の記事に詳しい。さて,2 μm積層といえば通常の単結晶子が一個 乃至数個並ぶ程度の距離である。はたしてこのよう な材料が通常の多結晶体と呼べるか否かはさておく にしても,個々の粒子間の粒界,あるいは個々の粒 子と電極との界面を精密に制御することが必要とな ってきた時代であるといえる。もはや通常の多結晶 体のような多数粒子の存在による統計的な特性の安 定性を頼りにすることができない。個々の結晶の異 方性の理解,界面構造のナノスコピックな制御とい った基礎的な展開があり,それを基盤に材料,デバ イスをデザインしていかざるを得なくなっている。 いわば一粒界デバイスを研究・開発のターゲットと せざるを得ない時代に突入したといえるだろう。こ れは,シリコンテクノロジーの発展と酷似している。 すなわち,将来のエレクトロセラミックスの発展に は,無機材質に関わる基礎から応用までのバランス のとれた科学技術の進歩が必要不可欠な要件となっ てきている。これも,また無機材研の研究分野と重 なることが多い。無機材研では,長年,特性の解明 を格子欠陥との関係より解明していくといった基礎 的な取り組みをしており,粒界構造変化に対する新 しい提案,あるいは,理論的な計算による機能の解 釈といった面で貢献してきている。(3)今後の展開これまで,主にプロセスに関連した面から見てき たが,一方,エレクトロセラミックスを材質面から 見てみると,意外とバラエティーが少ないのが特徴 である。磁性材料のスピネルフェライト,コンデン サー材料のチタン酸バリウムとも第二次大戦前に発 見された材質であり,既に50年以上に渡ってそれら の王者として君臨し続けているのである。これもテ クノロジーに似たところがある。いくつもの新たな 材質がシリコンに挑戦してきたが,プロセスの発達 によって常にそれを退けてきた。しかし,この傾向 は少しずつ変化しつつある。この変化の契機の一つ になっているのが,前述した工業化社会→情報化社 会(あるいは電子→光)の発展である。すなわち, 時代が新しい材質を求めつつあるのが現在の状況で ある。ここで一つの例を示そう。エレクトロセラミック スでは,情報化社会の進展に伴い薄膜材料が大きく クローズアップされてきた。その中で,層状ペロブ スカイト化合物が脚光を浴びつつある。全く新しい 材質であるが,実はこの材質は過去に既に無機研で 取り上げられたテーマの一つであった。過去のテー マに関しては似たような事例が多々あり,このこと は無機材研として誇っていいことだ考えている。と ころで,チタン酸バリウムは,第二次大戦の通信用 コンデンサーの研究過程で,日本,米国,ソヴィエ ト,欧州でほぼ同時に発見された物質である。大戦 後の新しい映像・通信社会の発展の基盤の一つとも なったことは,エレクトロセラミックス研究者の間 ではよく知られた事実である。ここで,各国でほぼ 同一時期に見つかったという事実は見逃せない。す なわちチタン酸バリウムは時代が要求していた材質 なのである。また,この発見にあずかった国々が, その後,この分野の技術発展のリードをしてきたこ とも併せて考えておく必要がある。今日,同じよう に,光通信時代の到来を契機に,エレクトロセラミ ックスや電子材料の発展を促す新材質の発見が予感 される。この材質の発見に無機材研が寄与しうるか 否かに将来の無機材研の立場がかかっていると言っ ても言い過ぎではない。考えてみると,エレクトロセラミックスはひたす ら王者,シリコンにかしずき,その発展を縁の下か ら支えてきた。そして前述したように益々ミニチュ ア化しつつあり,やがてはアクティブデバイスに呑 み込まれていくだろう。中島敦の“名人伝”の弓の 名手は弓を忘れてしまった。エレクトロセラミック スに関る研究者の理想は,「エレクトロセラミックス って何?」と尋ねることなのであろう。それはそれ で素晴らしいことであり,パッシブデバイスの必然 とも思うが,一抹の寂しさも感じる。1― 8 生体材料第10研究グループ総合研究官田中順三(1)はじめに―福祉への貢献―我が国の人口の高齢化は今も進行している。そし て,2010年には65歳以上の高齢者が全人口の25%に 達する。それ以降,高齢者割合はほぼ一定になり「高 齢化社会」から安定した「高齢社会」になる。高齢 化社会から高齢社会に移行するときには,人的・社 会資源の関係から,福祉と医療のあり方が大きく変 わると予測されている。したがって,21世紀には, 福祉医療技術の高度化に対する社会ニーズはますま す高くなる。骨粗しょう症,骨軟化症,骨欠損など が増加するため,人工骨の研究は福祉医療に関係し て一層重要になるであろう。福祉への貢献を目指し た材料研究が必要である。―生物進化と有機無機複合化―生物進化の視点から骨をみると,その原形は5億 年前の無顎類にまでさかのぼる。この魚によく似た 生物は,アスピディンと呼ばれる鱗のような硬組織 をもっていた。それが骨の原形である。さらに進化 が進んで硬骨魚類が現れた時点で,硬組織は身体の 内部に取りこまれて骨になった。それと同時に,骨 の中にそれまでの生物には全く存在しなかった骨髄 組織が誘導された。骨は進化の過程をとおして,自 然にしかも機能的に生体内に取りこまれていったか のようにみえる。結果として得られた我々人類の骨は有機・無機複 合体である(図1)。つまり「コラーゲンというタン パク質を主成分にした有機物」と「に類似した無機 質」との複合体である。その重量比はおよそ3対7 である。タンパク質と無機結晶の大きさはおよそ数 nm～数十nmである。したがって,骨は典型的な「有 機・無機ナノコンポジット」といえる。しかも,こ のナノコンポジットの中ではタンパク質分子と無機 結晶が配向している。このような組成・構造の結果 として,骨は硬くて柔らかいという独特な性質をも つにいたった。有機材料と無機材料の複合化は新しい機能材料に つながる。しかし,両者の関係は水と油である。そ の間に化学結合を形成することは現在の技術をもっ てしてもなかなか難しい。この難しい複合化を自然 は数億年の昔に達成している。それは,たぶん偶然 ではなく,材料自身がもっている独自な性質の結果 として必然的に達成されたと考えられる。(2)現在の成果―有機・無機複合体の開発―有機・無機複合化のモデル研究として,有機単分 研究のアプローチ図1子膜(LB膜)上に結晶を成長させる実験が行われてい る1)。通常,核形成が起こらないリン酸カルシウム水 溶液からでも,有機単分子膜があると不思議とその 上に結晶が成長する。しかも,できた結晶は単分子 膜に配向している。一方,アパタイトとコラーゲン の複合化が共沈法を用いて行われている2.3)。アパタ イトは数ナノメートルの微結晶になり,コラーゲン の周囲に析出する。両者はゆるいエピタキシャル関 係にある。この2つの実験から,アパタイトと有機 物が自己組織化的に配向する現象が明かになってき ている。(2).1.有機官能基と無機結晶の配向図2はアラキジン酸(C19H39COOH)単分子膜上に 析出したリン酸カルシウムの原子間力顕微鏡像であ るアラキジン酸は疎水性ガラス基板上に累積して ある。図のように単分子膜上にはアパタイト微結晶 が成長する。一方,単分子膜がない場合には,ガラ ス基板上に結晶は全く成長しない。このことは,カ ルボキシル基が存在するとアパタイトの核形成が容 易におこり結晶が成長することを示している。図2の微結晶は大きさが100nmであり少し不定形 な形をしている。しかし,その形は概ね六角形で, その各辺は特定の方向を向いている。アラキジン酸 の単分子膜は平面六方晶の分子配列をもっているか ら,単分子膜と無機結晶はゆるいエピタキシャル関 係にあることがわかる。単分子膜の分子配列がその図2 上に成長した無機結晶の形態に影響している。以上のことから,有機官能基があるとアパタイト の結晶核が形成され,引き続いて起こる結晶成長を 自己組織化的に制御していることがわかる。(2).2.自己組織化による複合体創製次に,骨素材であるコラーゲンとアパタイトを生 体外で自己組織化させることができるかどうか,が 問題になる。コラーゲンを溶かしたリン酸水溶液と 水酸化カルシウム水溶液から共沈法によって複合体 を作製した2)。得られた複合体は,アパタイトの微結 晶(5―10nm)とコラーゲン(30nm)からできてい る。その中で,アパタイトの微結晶はc軸方向に配 向した集合体を作っている3)。コラーゲンが共存しな いと,アパタイトの結晶配向は起こらない。タンパク質であるコラーゲンの側鎖にはカルボキ シル基-COOHが存在している。しかも,カルボキシ ル基はコラーゲン繊維の外側を向いている。したが って,有機単分子膜を用いたモデル実験と考えあわ せると,コラーゲンのカルボキシル基がアパタイト の核形成を促進し,その官能基の配列の結果として アパタイト微結晶が配向すると考えられる。以上のように,複合化は原子分子スケールの有機・ 無機相互作用によって自己組織化的に起こる。(3)今後の展開―生体活性な骨材料を目指して―貝は,身体の中で貝殻や真珠をつくる。ヒトは, 身体の中で骨や歯をつくる。このバイオミネラリゼ ーションは主に細胞のはたらきによって実現されて いる。しかし,バイオミネラリゼーションを要素分 解的にみるとまったく人知が及ばない領域でもない。 生体の自己組織化を有機・無機相互作用から見直し, 自然と生体骨に変わるような優れた人工骨材料を開 発する必要があろう。人の骨はいつも生まれかわっている。およそ3ヶ 月を周期にして少しずつ変わっていき,何年かたつ と全く新しい骨に変わる。それゆえ,骨は生きてい る。この生体骨の働きから考えて,アパタイトに有 機栄養素材や薬剤を混合することにより生体活性が さらに高まると予想される。アパタイト系材料の医学応用は,将来,人工骨か ら組織培養容器・人工臓器へと発展すると期待され る。そのような生体活性から生体と融和した材料の 実現は,医用材料研究に関わる人の夢であり,医者・ 患者の切実な願いである。人工骨の研究開発をすす めることにより,骨粗しょう症はもとより,将来の ガン・白血病・肝臓病治療などの医学応用を目標と した研究を積極的に進める必要がある。参考文献1.S.Cho, Y.Suetsugu, J.Tanaka, R.Azumi andM.Matsumoto, Proc. 6th World Cong.Biomater., in print (1996).2. K.Hirota, H.Tanaka and Y.Hasegawa, Proc. 4th World Cong. Biomater., 378(1992).3. K.Fujii, Y.Suetsugu, J.tanaka and K.Hirota, Proc. 12th J.-K. Seminar Ceram., 485(1995).1―9イオン交換材料(その1) ―無機陽イオン交換体―第7研究グループ主任研究員小松 優(1)はじめに混合物から純物質を得る方法には,「ろ過法」,「再 結晶法」,「蒸留法」,「抽出法」,「昇華法」,「吸着法」 等がある。水溶液中の金属イオンの分離法としては, 「吸着法」及び「抽出法」が多く用いられている。 本研究では,「吸着法」に属する「イオン交換法」に より金属イオン分離を試み,分離困難な部分は「抽 出法」に属する「溶媒抽出法」を併用した。対象金 属イオンは,「海水中のウラン」と「高レベル放射性 廃液中で長期間保存が必要なセシウム(半減期30年)・ ストロンチウム(半減期28年)」である。金属イオン の分離に影響を及ぼす主要因子は,「金属イオンの価 数」,「金属イオン濃度」及び「イオン交換能」であ り,これらの因子を中心に検討を行った。無機イオ ン交換体として,層状構造を有するチタン酸ベース の酸化物を用いた。一般的に,チタン酸化物はトン ネル構造を有する。しかし,基本物質であるトンネ ル構造酸化チタンは,アルカリ金属イオンを含有す ることにより層状構造となり,アルカリ含有量がさ らに増えると食塩型構造へと変化する。この中でイ オン交換性を持つのは,アルカリ含量の少ない層状 構造化合物で,K2Ti2O5, Na2Ti3O7, K2Ti4O9等であ る。層状構造チタン酸アルカリ金属は,層間に位置 する金属イオン(カリウム,ナトリウム等)が水素 イオンまたは金属イオンとイオン交換能を有する。 イオン交換体はフラックス法で合成した結晶質四チ タン酸カリウムを酸処理し,水素型(H2Ti4O9水和物) に組成変換したものを用いた。(2)現在の成果海水中には,多種類の元素が溶存している。この 中で,ppbオーダーのウラン採取は困難を極める。本 研究では,ウランと価数の違う元素を分離した後, イオン交換能の違いを利用して他の金属と分離・濃 縮することが出来た。セシウムは「アルカリ金属元 素群中で存在量の少ないフランシウムに次ぐ大きな 元素」であり,この特性を利用して分離に成功した。 アルカリ土類金属イオン中のストロンチウムは,同 族元素群中ではバリウムより小さく,カルシウム等 より大きい。このため一段階での分離は困難である。 今回は代表的なイオン交換体「結晶質四チタン酸繊 維」による金属イオン分離法として,ストロンチウ ム分離とその固定化に関する研究成果について述べ る。結晶質四チタン酸を用いたイオン交換法と抽出剤 (TTA,セノイルトリフロロアセトン)を利用した溶 媒抽出法により,下記の手順で行った。① 結晶質四チタン酸繊維と各々のアルカリ土類 金属イオンとのイオン交換特性。②キレート抽出剤(セノイルトリフロロアセトン) と各々のアルカリ土類金属イオンとの溶媒抽出 特性。③ 溶媒抽出法によるMg-Ca群とSr-Ba群の分 離。④ イオン交換法によるSrとBaの分離。⑤ ストロンチウムの固定化と侵出率の測定。水素型(HTi4O9水和物)に組成変換された結晶 質四チタン酸繊維中の水素イオンは,金属イオンを 含む水溶液と接触することにより,金属イオンと下 記のイオン交換反応を起こす。(添字“aq”は水溶液中の化学種を,“s”は固相中 の化学種を示す。)水溶液中に溶存させたアルカリ土類金属イオン(バ リウム,ストロンチウム,カルシウム及びマグネシ ウム)を種々のpHの水溶液からイオン交換反応を行 った結果,各金属イオンの反応量は同じpHでは原子 番号の大きい金属イオンほど大きい。結晶質四チタン酸繊維中の水素イオンと水溶液中 の金属イオンがイオン交換反応を行う場合,水溶液 中の金属イオンの水和水が離れる力,即ち脱水和反 応が反応量を決定する要因である。従って,大きな 金属イオンがより多くイオン交換反応を行い,分離 係数値はMg-CaおよびSr-Baの組み合わせ共,174 と大きい。即ち不純物を1%以下に抑えることが出 来る。一方,Ca-Sr間の分離係数値は,5.25と小さ く 20%近くの不純物が混入し,この方法だけでの分 離は不十分であると結論出来る。次にキレート型抽出剤・TTA及び協同抽出剤・ TOPOによるアルカリ土類金属イオンの溶媒抽出特 性を調べた。有機相である四塩化炭素溶液に適量の TTA及びTOPOを加え,水相には各アルカリ土類 金属イオンを含む過塩素酸ナトリウム溶液を定イオ ン溶媒として加えた。平衡到達後液―液分離し,水相の水素イオン濃度はpH メーターで測定し,両相の 金属イオン濃度をICP分光光度計で測定した。アル カリ土類金属イオンと抽出剤TTA及び協同抽出剤 TOPOの反応は下式に従って進行する。(弱酸性抽出剤TTAをHAで示し,有機相中の成 分を(o)で示す。)即ち,4種類のアルカリ土類金属イオンは,いず れも2つのTTA及び2つのTOPOと結合し,それ ぞれのTTA中の水素イオン1個を放出して有機相中 に抽出されていることが分かる。この反応における 金属イオンの溶媒抽出能系列は,次の通りである。有機相中に溶存するキレート抽出剤TTA中の水素 イオンと水溶液中の金属イオンが溶媒抽出反応する 場合,有機溶媒の極性を乱す割合が反応量を決定す る要因である。従って,小さな金属イオンがより多 く溶媒抽出反応される。隣接する金属イオン間の分 離係数値は,Mg-Ca間およびSr-Ba間で結晶質四チ タン酸繊維によるイオン交換分離係数値より小さい が,Ca-Sr間の分離係数値52.2は結晶質四チタン酸 繊維による分離係数値より10倍大きく,有効な分離 が可能と考えられる。そこで4種類のアルカリ土類金属イオンの分離を, 「4種類のアルカリ土類金属イオンを含む水溶液か らのMg及びCa抽出によるSr-Ba群との分離」「水 溶液中に残存するSrとBaのイオン交換分離」の2 段階で行った。この結果,Mg-Ca群とSr-Ba群の分 離は「連続逆抽出法」で,SrとBa分離はイオン交 換カラム法で成功した。分離されたSrは,安全に保管可能にする必要があ る。本研究では,構造変換反応を利用したSr-固定化 法を試み,Sr1.04Ti6O13.04・6.74H2O組成の固定化体 を合成出来た。ペロブスカイト型構造を持つこの固 定化体は,イオン交換性が消失し,常温及び水熱条 件下での侵出率が非常に小さい。以上の結果から,次の結論が得られた。(1)4種類のアルカリ土類金属イオンは,結晶質四 チタン酸繊維とイオン交換反応を行う。イオン交換 選択性は,Ba>>Sr>Ca>>Mgの順序である。(2) 4種類のアルカリ土類金属イオンは,溶媒抽出 剤TTA及び協同抽出剤TOPOにより溶媒抽出さ れ,抽出の選択性系列はMg>Ca>>Sr>Baの順で ある。(3)溶媒抽出反応特性から,CaとSrの抽出能に大 きな差があるため,溶媒抽出法によりBa-Sr群とCa -Mg群に分離出来る。(4)結晶質四チタン酸繊維によるイオン交換法にお けるイオン交換分離能の差を利用して,BaとSrを 分離出来る。(5)イオン交換されたチタン酸ストロンチウムは, 熱処理によりトンネル構造のペロブスカイトに構造 変換できる。(6)ペロブスカイト型構造中のストロンチウムは構 造中で安定に存在し,水熱条件下でも侵出率が小さ く安定である。(3)今後の展開従来行われていた金属イオン分離法では,目的金 属と分離材(剤)固有の性質で「分離能」が決定さ れる。本研究では,異なる要因で分離能が決定され る「イオン交換法」と「溶媒抽出法」を併用するこ とにより,高分離値が得られた。今後さらに高い分 離値を得るためには,「有効な分離材(剤)の組み合 わせ」の工夫が必要である。幸い「イオン交換法」 と「溶媒抽出法」を組み合わせることにより,多種 多様な組み合わせが可能である。また実用化へ向け ての「操作手順の短縮」に対する工夫が重要であり, 現在考案中の「3相間分配法」の完成を目指したい。1―9イオン交換材料(その2) ―無機陰イオン交換体―未知物質探索センター 総合研究官小玉博志(1)はじめにイオン交換材料とは種々のイオンに対して交換能 を有する物質を表わし,この特性を利用して物質の 分離,精製,回収などの目的に広く利用されている。 例えば,海水の真水化,各種廃水の処理,原子力発 電の際に生ずる各種放射性元素の処理,食品・医薬 品などの分離・精製,有用元素の回収等,実に様々 な分野で用いられているが,日常生活で我々の目に 直接触れる事は少ない。同じ様な用途に用いられる 物質として活性炭などのイオン吸着材料もあるが, これとは異なる材料である。イオン交換の厳密な定義は「固相と液相の二相間 で可逆的にイオンの交換が起こる現象である」とさ れている。このイオン交換を行う特性を有する物質 をイオン交換体と言う。従って,イオンの交換は通 常,溶液中で行われるが,この反応をイオン交換反 応と言い,化学反応式で表わすことが出来る。イオンには陽イオンと陰イオンの二種類が存在す るので,イオン交換反応も二種類の式で表わされる。 陽イオンA+を交換イオン(交換基)として保持して いるイオン交換体M-A+を,陽イオンB+を含む液体 相に入れたとき,進行するイオン交換反応は次式で 表わされる。固相溶液相固相溶液相又,陰イオンA-を交換イオンとして保持している イオン交換体M+A-を,陰イオンB-を含む液相に入 れたとき,進行するイオン交換反応は次式で表わさ れる。固相溶液相固相溶液相イオン交換体,M-A+やM+A-は無機化合物から有機 化合物まで多数の物質が研究されて,実用化されて いる。イオン交換現象の研究は,最初無機イオン交換体 についての研究を中心として発展した。それはイオ ン交換現象の最初の発見が,ある種の土壌の持つ特 性に関する研究においてなされた事に起因している。 その後,フッ石(ゼオライト),種々の粘土鉱物等, イオン交換特性を示す無機化合物が次々と発見され, 研究されてきた。第二次世界大戦前後から,有機化 学の発展が次第に顕著になり,様々な有機化合物が 合成されるようになった。なかでも,イオン交換樹 脂の発明がイオン交換材料の分野で与えた影響は大 きく,多くの研究と実用化が行われ,現在に至るま で盛んに研究が行われている。無機イオン交換体は 有機イオン交換体の出現によって,一時影が薄くな った感があるが,その後,産業の高度化や複雑化に より,再びその研究が盛んになってきた。何故なら, より特殊なそしてより過酷な環境下で作用するイオ ン交換体が求められる様になってきたからである。 例えば,無機イオン交換体は特定のイオンに対して のみ強く作用する特性(イオン選択性),耐熱性,耐 放射線性など有機イオン交換体の持たない特性を持 つている。(2)現在の成果無機材質研究所においては,無機イオン交換体に 関する研究を行っている。無機イオン交換体は陽イ オンを交換対称とするか,陰イオンを交換対称とす るかで反応式が異なり,物質も異なる。同一のイオ ン交換体が両方のイオンに対して有効に作用する場 合も無い訳ではないが,その数は限られており,通 常はどちらかに対称イオンをしぼって研究を進める。 ここでは陰イオンに有効に作用する無機陰イオン交 換体についての話題に限る。無機陰イオン交換体の利用を必要とする分野は陽 イオンについて述べた分野と大差はない。無機材質 研究所では,原子力発電の際に生づる放射性元素の 処理・処分に有用なイオン交換体の開発研究を行っ ている。原子力発電の際には,各種の放射性元素が 生成するが,その中には各種のヨウ素が含まれてい る。その中で,I-129は半減期が1600万年もあり,こ れを完全に回収して安全に保管することが重要な問 題となっている。現在,この元素をガス化して,こ れを銀ゼオライト化合物を吸着剤として使用したフ ィルターに通して100%回収しているが,このフィル ターは大変高価なものであり,再生することも不可 能である。現在までの所,溶液中に存在するヨウ化物イオン を効率良く除去できる無機イオン交換体はまだ実用 化されていない。研究室段階ではハイドロタルサイ トなどの各種含水酸化物などが盛んに研究されてい るが,耐酸性や耐アルカリ性,耐熱性などに乏しく, 安定性に欠ける。又,ヨウ化物イオンに対する反応 性もさほど良くない。このような現状を打破するために,ハロゲンイオ ン,特にヨウ化物イオンに対して有効に作用する新 しい無機イオン交換体の創製に関する研究を行い, いくつかの新しい高性能無機陰イオン交換体を合成 することに成功しつつあるので,その中で特に優れ ているものについて紹介する。Bi5O7(NO3)この化合物は新化合物である。この化合物の特徴 は陰イオンに対する交換基として(NO3)を持ってい ることである。従来型の無機陰イオン交換体は交換 基として(HO)かH2Oなどを有し,次式で表わされ るような交換反応を行う。これに対して,Bi5O7(NO3)は(NO3)-が交換基であ り,その交換反応は次式に従って進行する。交換基が(0H) -である化合物は耐酸性が特に低い。 Bi5O7(NO3)はこれを含まず,しかも代わりに(NO3) を含むので硝酸溶液に対して特に高い耐酸性を示す。 例えば,溶液pH=1の条件下でも安定に作用する。 又,イオン交換反応によって生成した化合物Bi5O7I は溶解度が低く,耐熱性は高く,放射性ョウ素の長 期保存に適している。使用済み核燃料は濃硝酸溶液 中で溶解するので,硝酸溶液中で安定に作用する無 機イオン交換体は実用化に有望である。この化合物を用いて,溶液中に存在するヨウ化物 イオンの除去を行うと,例えば,中性溶液中で,50℃, 15時間の反応後,99.9%以上のイオンを除去できる。BiPbO2(NO3)この化合物も新化合物である。この化合物も,そ の組成から明らかなように,従来型の交換体とは異 なり,交換基として(NO3)を持っている。この化合 物はBi5O7(NO3)とは異なる構造を持ち,さらに優れ たいくつかの特徴を有する。第一の特徴は,耐酸性 及び耐アルカリ性が非常に高い事である。これまで の特性評価ではpH=1の強酸性溶液中でも全く分解 しない事が判明しており,さらにこれより強い酸性 溶液中でも安定な事が期待できる。又,アルカリ性 溶液中では,pH = 13まで安定である。第二の特徴は, 溶液中におけるヨウ化物イオンとの反応が非常に早 く進行する事である。反応速度は温度が高いほど早 くなり,例えば,50℃で,pH=1の溶液中での反応 では15分以内に,また,pH = 13の溶液中での反応で は30分以内に反応はほぼ終了する。第三の特徴は, 室温付近のような低い温度でも,反応性が非常に高 く,例えば,25℃の溶液中での反応の場合,pH =13 の溶液では99.9%以上の,pH=1の溶液中では98 %以上の除去率を示す。第四の特徴は,イオン交換 後の反応生成物の構造がヨウ化物イオンの安定固化 体になるように設計されているために,ヨウ化物イ オンの除去と固化を同時に行うことが出来ることで ある。このような特徴を持つ化合物は,Bi5O7(NO3) 同様,使用済み核燃料に含まれる放射性ヨウ素の除 去及固化に適しており,その実用化を大いに期待で きる。(3)今後の展望本研究では,従来型の無機陰イオン交換体より優 れた特性を持つ新しい交換体の創製を目指している。 このような研究は社会のニーズと密接に結び付いて おり,産業の高度化や地球環境の汚染などと共に, その必要性はますます増大するであろう。これに対 応するには,ケース・バイ・ケースでの対応が必要 となる。何故ならば,無機イオン交換体の機能は交 換体の持つ構造と密接な関係があり,どのような種 類のイオンをどのような環境から除去するかが重要 なキーポイントとなるからである。この研究で示したように,例えば,従来型の無機 陰イオン交換体の持つ交換基,(OH)の代わりに (NO3)を導入することにより,新しい特性を持った いくつかの新しい無機陰イオン交換体を合成するこ とが出来た。この考えを押し進めて行けば,もっと 多くの化合物を作り出すことが可能であろう。さら に,(OH)や(NO3)以外のものを交換基にすることも 可能であり,それによっても,今後さらに多くの新 しい特性をもった新しい陰イオン交換体の創製が可 能になるであろう。1―10超硬質材料(その1)―単結晶ダイヤモンド―先端機能性材料研究センター 主任研究官神田久生(1)はじめにダイヤモンドは,炭素原子それぞれが4つの隣接 する炭素原子と共有結合した結晶である。炭素原子 という軽い原子が強固に結合していることから,ダ イヤモンドは種々の極限の特徴を示す。ダイヤモン ドが最高の硬度を持つ物質であることは周知のこと であるが,そのほかに,最高の熱伝導率,高い音速, 紫外から可視,赤外の広い波長範囲での高い光透過 性,広いバンドギャップ,高い電気絶縁性,高い屈 折率,高い化学的安定性などの特性を持つ。ダイヤ モンドをうまくカットすると美しい輝きを示し,最 も高い価値を持つ宝石として知られているのも,こ のような物理的特性のためである。これらの特性を 利用して,いろいろな分野で工業用素材として活用 されることが期待される。立方晶窒化ホウ素(cBN)はダイヤモンドと同じ 原子配列をとる結晶であるが,炭素原子のかわりに ホウ素原子と窒素原子が交互に並んだ構造をとって いる。ホウ素,窒素ともに周期律表で炭素の隣に位 置する元素であるためにcBNの特性はダイヤモンド にたいへん近い。硬度はダイヤモンドに少し劣るが 他の物質よりははるかに高く,その他の物理,化学 特性もダイヤモンドに類似している。しかし,ダイ ヤモンドより優れた特性もある。cBNは鉄と反応し ないため,鉄鋼材料向けの工具用素材として利用で きる(ダイヤモンドは鉄に対しては簡単に磨耗して しまう)。そのため,cBNはダイヤモンドより硬度は 低いが工業用価値は高い。また,半導体特性におい ても,ダイヤモンドではn型はまだ合成されていな いが,cBNではp型もn型もすでに得られている。 この点,半導体としての応用を考えたとき,ダイヤ モンドよりcBNの方が先んじている。このような特性を利用して,ダイヤモンド,cBN はすでにいくつかの分野で工業的に応用されている。 ダイヤモンドは,高い硬度を利用して,切削材,研 削材,研磨材などとして古くから用いられている。 高い熱電導率を利用してICの放熱基板,広い波長範 囲での高い光透過率を利用しての科学機器などの窓 材などにも用いられている。cBNも研削材,研磨材 などに大量に用いられている。ダイヤモンド合成の試みは前世紀から行われてい たが,現在認知されている最初の高圧合成の論文は 1955年のゼネラルエレクトリック(GE)社のもので ある。ダイヤモンドの高圧合成のパイオニア的研究 は,その後,19 70年にかけてのGE社の一連の論文 にみられ,この中で,ダイヤモンド高圧合成の基本 的な考え方・技術ができあがったといってよい。つ まり,超高圧発生のためのべルト型高圧装置,「ダイ ヤモンド合成触媒」の発見,大粒結晶を育成する温 度差法,不純物窒素を除去するために窒素ゲッター と呼ばれる元素を添加する方法などである。cBNの合成技術もGE社の同じグループにより開 発された。ダイヤモンド合成用の高圧装置を用いて, ダイヤモンド合成と類似の方法でcBN合成が行われ た。ただ,cBNの場合は原料として黒鉛類似構造の 六方晶窒化ホウ素(hBN)が用いられ,合成触媒と して,窒化リチウム,ホウ窒化マグネシウム等の化 合物が用いられた。これらの技術,考え方は,今日でもダイヤモンド・ cBNの高圧合成の基本となっている。(2)現在の成果GE社により確立されたダイヤモンド合成法も,1980 年代になって以下に示すような高度化が進んだ。単結晶サイズの大型化については,無機材研,住 友電工,デビアスで開発が行われたが,現在ではデ ビアス社で合成された2cm近いサイズ(35カラット) の結晶が世界最大である。ダイヤモンドの高純度化についても進歩が見られ た。GE社では,ダイヤモンドから炭素原子以外の不 純物元素を除去するだけでなく,通常の炭素に含ま れる1.2%の13C同位体の除去も行い,12Cのみからな るダイヤモンドを合成した。この高純度化により熱 電導率が50%向上したといわれている。住友電工で は,転位のほとんどない結晶を合成し,結晶性を完 全に近づけた。この結晶は放射光施設において分光 結晶としての利用が計画されている。無機材研では逆に13C濃度を増加させた炭素を用い てダイヤモンドを合成した。この結晶を用いて,光 学測定やESRの研究が行われ,いくつかの格子欠陥 の構造について新しい知見が得られた。ダイヤモンドの着色は不純物の混入によるが,1980 年以前では,不純物として窒素とホウ素のみが知ら れており,色は黄色と青色のみであった。80年代に なって,ニッケルも不純物としてダイヤモンドに混 入することが明らかになり,緑や茶色の結晶も合成 された。いまでは,ニッケルに関係したカラーセン ターも10種類以上知られている。また,不純物ニッ ケルはダイヤモンド格子の中で,置換位置や格子間 に入っていることも明らかになった。このほか,シ リコン,コバルトも不純物としてダイヤモンド中に 混入しカラーセンターになることが,最近見出され た。ダイヤモンドは「鉄やニッケルなどⅧ族元素を主 体とした金属を合成触媒として成長する」というこ とが定説であったが,1990年,無機材研において非 金属化合物の中からもダイヤモンドは成長すること が実験的に確かめられた。炭酸ナトリウム,硫酸カ ルシウムなどいろいろな化合物の中からダイヤモン ドの成長が見られた。この結果は,天然ダイヤモン ドが非金属化合物である岩石の中からでも成長しう ることを示す重要な知見である。さらに,従来から の定説の,特定の金属の中からのみダイヤモンドが 成長するという「合成触媒」という見方の修正をせ まるものであった。実際,Ⅷ族の金属元素以外のい ろいろな元素からもダイヤモンドが成長することが 見出された,Mg, P, Cu, Zn, Geなどである。従来の合成触媒ではダイヤモンドが成長する最低 温度は触媒金属が溶融する温度できまるとされてい た。しかし,CuやZnなどを用いた場合,これらが 溶融する温度ではダイヤモンドは成長しない。 1500～1600℃という融点より高い温度がダイヤモン ドの成長最低温度である。このようにダイヤモンド の成長温度領域が従来の見方と異なると言うことか ら,ダイヤモンドの成長機構も新たな視点で考える 必要が生じた。cBNはダイヤモンドに比べて,核発生が容易であ るが,大粒結晶の合成は困難であった。しかし,1980 年後半になって,1mmを超える結晶も育成されるよ うになった。ダイヤモンドとの接合も可能で,ダイ ヤモンド種結晶の上にcBNのヘテロエピタキシャル 成長も成功した。cBNではp型,n型半導体ができ ることから,p型cBNを種結晶として,その上にn 型cBNを成長させることによりcBNのp-n接合を もつ単結晶が合成された。この素子を用いて,600℃ という高温で整流特性が確認され,紫外線の発光も 検出されている。(3)今後の展開ダイヤモンド,cBNは最も硬度の高い物質として, 石材などカッター材料,研磨材などに用いられてき たが,CVD法による薄膜ダイヤモンドの合成技術の 確立とも関連して,硬度以外の特性を利用した新し い分野への発展が期待されている。例えば,高い熱 伝導率やワイドギャップ半導体の特性を利用した電 子素子への応用である。高圧合成のダイヤモンド, cBNもこのような応用へ向けての貢献が期待できる。電子材料としてその特性に大きな影響を与えるの は不純物である。この15年の間に,窒素,ホウ素以 外にも不純物が混入することが明らかになり,いく つものカラーセンターも見出された。このことから, さらに,いろいろな元素がダイヤモンドの中に入る ことが期待される。特に,新しい触媒を用いれば, 新しい不純物が添加される可能性も高い。それはn 型ダイヤモンドや,新しい発光センターの発見につ ながるであろう。ダイヤモンドの工具,研磨材などの従来の用途に おいても,生産コストを下げることは重要なポイン トである。合成触媒の選択肢が拡がったことにより, ダイヤモンドが従来より低温,低圧で合成できる可 能性もでてきた。ダイヤモンドの成長機構の研究に 加え,新しい合成触媒の探索も今後の課題である。cBNは上述のようにダイヤモンドも及ばない優れ た特性がある。これらの特性をよりよく発揮させる ためには,さらなる研究が必要である。双晶など欠 陥を含まない,より完全な単結晶の合成はまず第一 の目標である。そして半導体としての特性を改善す るためには不純物の制御の向上が必要である。cBN についても最近,新しい触媒が見出され,従来の枠 にとらわれない新しい見方で新触媒が発見される可 能性も高くなった。新触媒の探索の結果,より優れ た特性を持つcBNの合成も可能になることであろう。1―10超硬質材料(その2)―多結晶ダイヤモンド―超高圧力ステーション 主任研究官赤石 實(1)はじめにダイヤモンド結晶は,硬さ,熱伝導率,耐摩耗性 などたいへん優れた性質を持っているが,その脆さ や入手可能な大きさに制限があるなどの欠点もある。 これらの欠点を補い,かつダイヤモンド結晶が持つ 優れた性質を示す材料として,カーボナード,バラ スなどと呼ばれている,ダイヤモンド多結晶体が天 然に産出する。しかし,これらの多結晶体は,優れ た性質を持っているが,産出量も少なく。形状もま ちまちで加工が難しい。品質や純度などの問題もあ る。ダイヤモンド多結晶体を合成する試みが1960年代 後半から旧ソ連,米国を中心に活発に行われてきた。 現在,大量生産されている市販のダイヤモンド多結 晶体の基本的合成法が,1970年前半に米国G.E.社の 研究者によって確立された。この多結晶体は単結晶 に比べ,比較的靱性に富む高硬度焼結体である。現 在は,自動車用Al-Si合金など,難削材料の切削工 具,石油掘削用ビット,線引きダイスなどに利用さ れている。このダイヤモンド多結晶体は,ダイヤモンド微結 晶の合成と同様に超高圧装置を用いて,ダイヤモン ド安定域の高温高圧条件下で合成される。その合成 方法は,ダイヤモンド微粉末を超硬合金(WC-Co)焼 結体上に積層し,ダイヤモンドの熱力学安定な約5. 5G Pa,1500℃程度の高圧高温条件下でダイヤモン ドと超硬合金を同時に焼結するものである。この条 件下で,ダイヤモンド合成触媒である液相のCoが, ダイヤモンド粒子間��に溶浸する。溶浸したCoに 炭素が溶解して,炭素で過飽和となったCoからダイ ヤモンド粒子表面にダイヤモンドが析出する。析出 したダイヤモンドが,ダイヤモンド粒子間の直接結 合形成に寄与する。このような溶解/析出の繰り返し によって,ダイヤモンド粒子間に直接結合を有する ダイヤモンド多結晶体が合成される。これらの多結晶体はたいへん優れた高硬度材料で あるが,焼結過程でダイヤモンドの焼結助剤として 機能したCoなどの焼結助剤金属が,約10vol%程度 と大量に多結晶体中に残存する。これらの多結晶体 を高温条件で使用すると,ダイヤモンドとCoの熱膨 張率の違いに起因する熱応力による多結晶体の破損, Coによるダイヤモンドの触媒黒鉛化による劣化など が起る。このような観点から,ダイヤモンド多結晶体中に Coなどの金属介在物のない純粋なダイヤモンド多結 晶体が望ましい。しかし,我々の研究結果によれば, コバルトなどの焼結助剤なしに高硬度ダイヤモンド 多結晶体を合成することは,現在の高温高圧条件で はたいへん難しい。また,エネルギーの効率的利用や地球環境の保全 のために,自動車をはじめとする輸送機関の軽量化 のニーズから高Si-Al合金や炭素系複合材料などの 難削材料加工工具への需要が増大している。また, 総労働時間の短縮は時代の要請であり,このためま すます効率的な加工方法,加工条件の高速化が求め られている。しかしながら,現在のダイヤモンド多 結晶体工具材料では,多結晶体の耐熱性が十分でな いため,これらの要請に対応できない。次世代工具材料として,耐熱性に優れたダイヤモ ンド多結晶体の開発は,地球環境保全,ゆとりある 生活の実現などの見地から必要不可欠の研究課題で ある。耐熱性ダイヤモンド多結晶体開発へのアプロ ーチは,現在いくつかの方法が提案されているが, ここでは当所で発見された新しいダイヤモンド合成 触媒,炭酸塩,を焼結助剤とする多結晶体の合成と その性質について紹介し,今後の多結晶体研究動向 を展望する。(2)現在の成果無機材研の我々のグループは,5年以上前に数多 くの無機化合物がダイヤモンド合成触媒として機能 することを発見した。これらの触媒は,アルカリ, アルカリ土類金属の炭酸塩,硫酸塩,水酸化物であ る。これらの非金属触媒が従来の金属系触媒と全く 異なることから,これらの触媒がダイヤモンドの焼 結助剤として機能するかどうか,機能するとすれば, 合成された多結晶ダイヤモンドの物理的・化学的性 質は,従来の多結晶体に比較して優れているのかど うか,学術的にも工業的にもたいへん興味深い研究 テーマである。Li, Na, K, Mg, Ca, Sr の炭酸塩,Mg, Ca の水酸 化物,Na, Mg, Caの硫酸塩の中から焼結助剤を探 索するために,これらの無機化合物粉末上に天然ダ イヤモンド粉末を積層し,7.7GPa, 2200℃の条件で 30分間高圧高温処理した。処理後のダイヤモンド層 の研削加工の結果,アルカリ土類金属の炭酸塩(Mg, Ca & Sr)を用いて合成した多結晶ダイヤモンドの研 削抵抗は高く,ダイヤモンド粒子間に直接結合が形 成されていると考えられる。しかし,他の炭酸塩,硫酸塩,水酸化物から合成 した試料の研削抵抗は低かった。研削抵抗の高低に 拘わらず,ダイヤモンドから黒鉛への変換は全く認 められなかった。数多くの新しいダイヤモンド合成触媒の中で,ア ルカリ土類の炭酸塩,MgCO3, CaCO3, SrCO3が,多 結晶ダイヤモンド合成に有効な助剤として機能する と考えられる。これらの炭酸塩の中から炭酸マグネ シウムを助剤とする多結晶ダイヤモンドの合成とそ の耐熱性などの性質について,以下に一例を簡単に 紹介する。天然MgCO3粉末上に脱珪酸塩処理済みの20―30μm のダイヤモンド粉末を積層し,7.7GPa, 1800―2450℃ の条件で30分間処理した。ダイヤモンド層のX線回 折の結果,1800℃処理試料には全く認められなかっ たMgCO3相が,2000℃処理試料には明瞭に検出され た。ダイヤモンド層中のMgCO3量は,2200℃処理試 料まで 定性的に増加し,この温度よりも高温処理試 料のそれはほとんど変わらなかった。ダイヤモンド層へのMgCO3の溶浸が認められた 2000℃処理試料の研削抵抗は,高かったが,研削後 の試料の光学顕微鏡観察の結果,試料は一部不均質 でしばしば多結晶体にクラックが認められた。さら に高温の2200℃処理試料は,研削抵抗も高く,巨視 的にもクラックの認められない均質な多結晶体であ った。7.7GPa, 2300℃, 30分間の条件で合成した,ダイ ヤモンド多結晶体破面の走査型電子顕微鏡観察の結 果,個々のダイヤモンド粒子の識別はたいへん難し <,その破壊形態はほとんど粒子内を主体とし,多 くの直接結合がダイヤモンド粒子間に形成されてい ることを示唆している。これらの多結晶体のヌープ 硬度は67GPaとダイヤモンド単結晶のそれと同等で あった。炭酸マグネシウムを焼結助剤に用いて合成 したダイヤモンド多結晶体は,高硬度かつ巨視的に も微視的にも均質な組織を有していることが明らか となった。炭酸マグネシウムを助剤とするダイヤモンド多結 晶体の耐熱性を評価するために,900―1400℃の条件 で各30分間真空中加熱処理した。900℃, 30分間処理 後の試料のX線回折の結果,黒鉛は全く認められな かったが,MgCO3の一部は分解して,MgOに変換し ていた。多結晶体表面にクラックは認められず,処 理前後のヌープ硬度にも変化は認められなかった。 比較例として,コバルトを助剤とする市販のダイヤ モンド多結晶体も同一処理条件で処理した。その結 果,無数のクラックが多結晶体表面に観察されると ともに,大半のダイヤモンドは黒鉛に変換して,多 結晶体の硬度を測定することは出来なかった。900℃, 30分間処理後の試料をさらに高温の1100, 1300, 1400℃条件で各30分間真空中加熱処理した。 これらの温度条件で処理した多結晶体には,何れも ダイヤモンドから黒鉛への変換やクラックの導入は 全く認められなかった。しかし,1300℃,1400℃処 理後の多結晶体の硬度は,900℃, 1100℃処理後の試 料に比較し,55GPaと12GPa程低下していた。ダイヤモンドの黒鉛化や多結晶体へのクラックの 導入の有無でもって,多結晶体の耐熱性を評価する のも一つの方法であるが,多結晶体の総合的評価法 として,多結晶体を切削工具に加工し,高Si-Al合 金や超硬合金を被削材に用い,切削テストを行った。 その結果,高Si-Al合金の高速切削や超硬合金の切 削加工性能が,市販の焼結体に比較して,たいへん 優れていることが明らかとなった。(3)今後の展開炭酸塩を焼結助剤に用いたダイヤモンド多結晶体 は,真空中,1400℃の条件で処理しても,黒鉛化も クラックの導入も全く認められなかった。一方,金 属を助剤とする市販のダイヤモンド多結晶体は,同 一真空条件下900℃の温度で処理すると,大半のダイ ヤモンドは黒鉛に変換し,無数のクラックが焼結体 に導入される。炭酸塩を助剤とするダイヤモンド多 結晶体は,耐熱性に極めて優れているのであるが, その合成条件は従来法のそれと比較してたいへん過 酷である。これらの多結晶体の工業生産を行うため には,新たな焼結助剤を探索し,条件の低減化を計 るか,厳しい圧力温度条件でも使用可能な高温高圧 装置の開発が,必要不可欠な今後の課題であると考 えられる。学術的には,炭酸塩を焼結助剤とするダイヤモン ド多結晶体の焼結のメカニズムの解明,多結晶体の 直接結合の割合の定量的評価法の確立,ダイヤモン ド粒子間に直接結合を有する透光性多結晶体の合成 法の確立,天然ダイヤモンド多結晶体,特に粒子が 放射状に配列した組織を持っているバラスの生成の メカニズムの解明など,多くの未解決の研究課題が 山積していると筆者は考えている。炭酸塩を助剤とするダイヤモンド多結晶体合成に 関係する研究分野は,学術的にも工業的にも未解決 の数多くの研究課題が存在している。工業的な種々 の問題点は,この分野に幾つかの企業の研究者が参 入しているので,近い将来解決されるものと確信し ている。炭酸塩を助剤とする耐熱性ダイヤモンド多 結晶体の研究からも明らかなように,研究の発端は 新しいダイヤモンド合成触媒の探索であった。ダイ ヤモンド多結晶体や単結晶などのダイヤモンド合成 研究分野における,残された大きな研究課題の一つ として,天然ダイヤモンドの成因解明が挙げられる。 この課題は基礎的研究分野に位置付けられるが,研 究過程において遭遇するであろう困難や問題点を解 決することによって,新たな材料開発などの応用研 究への展開も可能となるものと確信している。1―10超硬質材料(その3) ―ダイヤモンド薄膜―先端機能性材料研究センター 主任研究官加茂睦和(1)はじめにダイヤモンドの薄膜すなわち気相法によるダイヤ モンドの合成は,歴史的には1950年代より始められ たが,技術的には1980年代に確立された。現在では, すでにダイヤモンド薄膜合成装置が市販されており, 工業的にも1カラット当たりの価格を300～400円台 にする計画が進行している。またそのようにして合 成されたダイヤモンド膜も市販されるようになって きた。そのようになってもしかしながらダイヤモン ド薄膜の実用化については解決されるべき課題は多 <,一層の努力を必要としている。(2)現在の成果ダイヤモンドの気相合成法は,熱フィラメント法, マイクロ波プラズマ法,高周波プラズマ法,直流プ ラズマ法などが開発され,基本的な技術としては確 立され,今ではダイヤモンド薄膜合成装置として市 販されるまでにいたっている。また直径4インチの ダイヤモンド膜も市販されている。合成技術として は,実用化に当たって他の物質との競争ということ を考えれば,コストがもっとも大きな問題となって いる。例えば集積回路でのヒートシンクを考えれば, コンペティターであるアルミナや窒化アルミニウム との価格競争である。軍事用や宇宙開発用といった 価格を問わない用途では,材料の性能だけの競争で, 優れた熱伝導度を示すダイヤモンド薄膜は,多結晶 体といえども現状の技術でも十分であろう。しかし 多量の消費を目指す民生用では価格がもっとも大き なネックとなってくる。そのために大面積化や高速 成長を図り低コスト化することが要求されている。エレクトロニクス材料としてみたとき,やはり単 結晶ダイヤモンドの要求が強いものがある。ヘテロ エピタキシャル成長技術は気相合成ダイヤモンドの 応用に関して鍵となる技術といえる。これまでのと ころ立方晶窒化ホウ素,ニッケル,コバルト,シリ コン,炭化ケイ素,黒鉛,白金,イリジウム等の上 でヘテロエピタキシャル成長が可能であることが報 告されている。しかしこれらの中でダイヤモンドが 基板上に膜として析出しているものは立方晶窒化ホ ウ素,シリコン,炭化ケイ素,白金,イリジウムで ある。これらの基板のうち立方晶窒化ホウ素と白金 以外はヘテロエピタキシャル成長にあたって核形成 の際,電界を印加している。そうすることによって 生成する核が配向しているが,その原因については 全く理解されていない。ヘテロエピタキシャル成長 したダイヤモンド膜についての評価はまだ十分に行 われているとはいえず,これからの研究に待たなけ ればならない。気相合成ダイヤモンドの評価解析については種々 の方法によって行われている。初期の評価ではラマ ンスペクトル,X線回折や電子回折等ダイヤモンド であることを同定する技術が主に使われた。特に気 相合成ダイヤモンドに特有な析出物中の非晶質な炭 素は他の方法で検出されないこともあって,ラマン スペクトルは気相合成ダイヤモンドの評価に欠くこ とが出来ない方法となった。気相合成ダイヤモンドがダイヤモンドとして認知 されるようになって,天然や高圧合成ダイヤモンド と比較され,そして質そのものが評価されるように なった。不純物分析には二次イオン質量分析計 (SIMS),オージェ電子スペクトル,電子顕微鏡など が使われ,気相合成特有の不純物が存在することが 明らかにされている。カソードルミネッセンスやフォトルミネッセンス  による不純物や欠陥の分析も行われ,質的に気相合 成ダイヤモンドは天然ダイヤモンドのⅡ a型に相当 する最も高純度なダイヤモンドに分類されることが 明らかになっている。数百μmの厚みの多結晶ダイヤモンド膜の熱伝導 度測定の結果は膜の構造と関係して大変興味深いも のがある。膜の垂直方向及び横方向いずれも厚みが 増加すると共に粒子径が増大し,粒界が少なくなる と共に熱伝導度は単結晶なみの高い値を示している。 このことはヒートシンクとしては必ずしも単結晶で ある必要はなく,多結晶体でも十分ヒートシンクと して使えることを示しており,ダイヤモンドの特性 を生かした応用が可能である。ダイヤモンドは半導体としても期待されているが, シリコンと同様p型にはホウ素,n型にはリンを,そ れぞれ不純物として添加して合成することが試みら れている。p型についてはホール移動度も天然のⅡ b 型を凌駕する高品質なものが作られている。リンの 添加によるn型化については,850℃程度の温度では 合成されていない。この原因として,一つはリンが 格子中でなく格子間に侵入型として存在しドナーと なっていない。もう一つはダイヤモンド中にリンを 添加すると水素濃度もリンの添加と共に増加することがSIMS分析の結果明らかになっており,リンが 水素と結合していることでやはりドナーとして働い ていないものと予想されている。しかし最近のESR 測定の結果では,これまでダイヤモンド中には置換 型として存在し得ないといわれていたリンが,置換 型として存在していることが明らかにされており, n型合成の可能性を示している。ダイヤモンド薄膜は,数々のダイヤモンドの優れ た特性とコーティングも可能な形状的な特徴から広 い分野での応用が考えられてきた。ダイヤモンドの 機械的特性を生かした切削工具や耐磨耗材はまず始 めに試みられた例である。しかし基板とダイヤモン ド間の接合強度から来る寿命とコストの課題を十分 に解決できず,限られた分野でしか使われていない のが現状である。ヒートシンクについても比較的早くから用途が期 待された分野であったが,他の競争する材料との価 格差を埋めることが出来ず,やはり限られた分野で しか使われていない。しかし優れた熱伝導度を持つ ダイヤモンドはヒートシンクとしては最適な材料で, 集積度が高まるような場合,例えばマルチチップモ ジュール(MCM)では当然 用いられると考えられ る。音響材料すなわちスピーカーの振動板は,ダイヤ モンド薄膜を民生用として用いたはじめての市販商 品であったが,コストの問題もあって超高級品のス ピーカーセットに搭載されたため,数多く出回るに は至っていない。最も期待されている電子デバイスについては,P―n接合によるデバイスはこれまでのところ作られてい ない。p型だけによるデバイス作成の試みがされてい るが,これまでのところ実用には遠いものとなって いる。各種センサーも広く使われる商品として期待され る一つである。現在検討されているものには,加速 器用の放射線センサー,可視光に透明で紫外光のみ に感応する紫外センサー,ピエゾ効果を用いた圧力 センサー,ダイヤモンドの表面反応を利用したガス センサーなどである。その他電子放出材(エミッター)やSAWフィル ターとしての応用が非常に熱心に進められている。(3 )今後の展開ダイヤモンドの気相合成については基礎的な研究 課題から実用化への技術的課題まで,数多くの課題 が残されている。基礎的な課題としてまず核形成の問題があげられ る。現在核形成促進のために使われているスクラッ チ法や電界印加法の本質が理解され制御可能となれ ばヘテロエピタキシャル成長に大きく貢献するもの と予想される。ダイヤモンドの気相合成は熱力学的 に準安定領域での合成のため,表面での反応がダイ ヤモンドか黒鉛構造になるかを決めている。そのた めにも成長の反応過程,特にダイヤモンドの前駆体 の把握が重要となってくる。その前駆体が明らかに なれば欠陥や不純物の制御が可能となり,結果的に 高品質ダイヤモンドの合成が可能となってくる。そ れと共にダイヤモンドの高感度な新しい解析評価技 術の開発が必要となるであろう。核形成と成長過程の解明はヘテロエピタキシャル 成長に大きく貢献し,ヘテロエピタキシャル成長の 大型化に寄与するものと考えられる。半導体ダイヤモンドに関して,リンの添加で,移 動度が小さいとはいえ,n型化が可能であることが, ホール効果の測定によって確認されている。合成条 件をさらに検討することで品質の良いn型ダイヤモ ンドの合成も可能であろう。さらに不純物添加法の 改善やダイヤモンド特有のドーパントの発見によっ て大きく進展する可能性もある。ダイヤモンド薄膜の実用化へ向けても多くの技術 的課題が残されている。例えば大面積化,高速化, 低温化,低コスト化,高品質化などがあげられる。 これらは単独でなく各課題が総合的に解決される必 要があり解決を複雑にしている。高速化や低温化は 反応機構とも絡んでくるが,技術的課題はダイヤモ ンド薄膜の需要が出てくれば自ずと解決されていく のではないだろうか。そうなるものと期待したい。1―10超硬質材料(その4) ―立方晶窒化ホウ素薄膜―先端機能性材料研究センター 主任研究官松本精一郎(1)はじめに窒化ホウ素(BN)は,その構成元素が炭素の両隣 のホウ素と窒素であることからわかるように,炭素 とよく似た性質を持っている。すなわち,黒鉛,ダ イヤモンド,六方晶ダイヤモンドに対応して,六方 晶(hBN),立方晶(閃亜鉛鉱型,cBN),ウルツ鉱 型(wBN)が存在する。cBNはBとNがsp3共有 結合でダイヤモンドのように繫がった構造で,ダイ ヤモンドに次ぐ硬さと熱伝導性を示す。空気中では ダイヤモンドより高温まで安定であり,さらに鉄系 の材料の切削材としてはダイヤモンドより優れてい る。また,ダイヤモンドと同じように共有性結合で ワイドバンドギャプの物質であるが,ダイヤモンド の5.5eVに対し,6.1～6.2eVと推定されるより大き なバンドギャップを持っており,高温半導体や短波 長用のオプトエレクトロニクス材料として期待され ている。現在までダイヤモンドがp型半導体しか作 られていないのに対し,p, n両方の半導体ができる ことが無機材研の高圧グループより確かめられてい る。しかし,ダイヤモンドと異なって,天然には存在 せず,また,高圧法で単結晶も作られているが(無 機材研では数mmのものが作られている),品質・大 きさ,共に不十分で,基本物性も正確には測定され ていないなど,ダイヤモンドに比べその研究は大き く遅れている。高圧合成法の問題点は,反応空間が 限られ,また高精度の合成制御が難しいことである。 従って薄膜を作ったり,高純度のものを得るのには 不向きである。電子材料等に発展させるためには, 高純度で低欠陥のcBNを得ることが必要であるが, このためには低圧気相法の開発が望まれている。(2)現在の成果ダイヤモンドと異なって,cBNは二元系であり, また,ホウ素と酸素は固体の化合物をつくるなどの 理由から,cBNの低圧合成はダイヤモンドよりはる かに困難である。現在までのcBN膜合成は,大きく 化学的気相析出法(Chemical Vapor Deposition, CVD)と物理的気相析出法(Physical Vapor Depo­-sition, PVD) に分けられる。 CVD法では,ジボラ ンや三塩化ホウ素とアンモニアや窒素ガスを原料と して,比較的高いガス圧で,熱フィラメントやプラ ズマを用いてガスの励起を行い析出させる。PVD法 では,ホウ素を電子ビーム蒸着などによって供給し ながら,電場によって加速したArやN+或いはN2+ を基板に衝突させることによって作成する。無機材 研では,CVD法として高周波誘導プラズマを用いる 方法を永年行ってきた。最近は,容量結合型高周波 放電,マイクロ波放電,熱プラズマ等を用いる方法 も開始している。現在までに高周波誘導プラズマを 用いる方法で,特に,レーザー光を同時に基板に照 射することにより,電子線回折及び赤外吸収スペク トル測定でcBNの存在を示す膜が得られているが, 他の構造のBNを含んでおり,また,結晶粒は小さ い。また,酸素や水の影響を受けやすく,容易に酸 化ホウ素などが混入しやすいことが明らかになって きた。従って,現在,酸素の少ない環境でのCVDを 目指すと共に,超高真空下でジボラン,アンモニア から作られるラジカルビームを用いるケミカルビー ムエピタキシー法によ る合成研究等の新しい試み も 始めている。PVD法では,上述のB蒸着,N+(N2+)イオン照射 法で永く合成を試みており,シリコンと匹敵する程 度の硬度を持つBN膜が得られている。しかし,構 造的には乱層構造(tBN)である。これは,装置の性 能が充分でなかったことが大きな原因であり,現在, 無機材研ニュース第154号(1995年11月)で紹介した 新しい装置での実験を始めている。この装置の特徴 は,イオン源からのイオン(N2+, N+, Ar+)を質量分 析して高純度にした後,減速し低エネルギーにイオ ンの速度を揃えて,基板にあてることができること である。ビーム速度は0.1～1keV可変,イオン電流 密度は100eVのN+で約100μA/cm2となっている。ま た,成膜室は超高真空仕様となっている。PVD法と しては他にバイアススパッタリング法を行っている。 スパッタリング法は,イオンビーム法に比べ,装置 が簡単で広い面積の製膜ができる。バイアススパッ タリング法では,対向電極とは独立に基板に高周波 もしくは直流電圧を印加することにより,基板に入 射する粒子の運動エネルギーを変化させることがで きる。この方法では,数十nm程度のcBN膜が得ら れているが,さらに良質の結晶cBN膜を得るため, 発光分光分析,プローブ法,エリプソメーター等を 用いて製膜のプロセス解析を始めている。(3)今後の展開cBNはその優れた特性を発揮させるためには,高 圧法も含めてまず良質のすなわち,低欠陥で高純度 の結晶を作ることである。特に低圧法では数十nmサ イズの結晶しか得られておらず,自形を示すものは 得られていない。まず,ダイヤモンドと同程度の結 晶性の膜を得ることが第一である。それにはPVDで あれCVDであれ,今までの方法より制御された(高 純度の合成,プロセスパラメーターの制御)合成実 験を行うと共に,化学的,物理的両方を含む新しい 合成法の開発が必要である。このハードルを越えさ えすれば,その後の展開に関しては相当のところま で急激に進むと思われる。すなわち,切削工具への 応用,不純物ドーピングによる半導体膜の作成,p-n 接合膜の作成,或いは,ダイヤモンドや炭化珪素と のヘテロ接合膜の作成等によって,高温半導体,放 射線等への対環境素子の作成,深紫外用発光ダイオ ード等のエレクトロニクス材料,オプトエレクトロ ニクス材料への応用研究が大きく進展すると思われ る。特に,エレクトロニクス材料では,n型半導体の 作成の困難なダイヤモンドよりも先行する可能性も 大きいといえよう。1―11電子放射材料第12研究グループ総合研究官石澤芳夫(1)はじめに電界放射型冷陰極は,熱陰極に比較して,輝度が 100倍以上大きく,電子エネルギー幅は約1/5と小さ く ,しかも電子源の大きさが約1/100と小さい,とい う特徴をもつ。このような特徴をもつ電界放射型冷 陰極は,低加速走査型電子顕微鏡,分析電子顕微鏡 などの電子源としての利用が期待されており,装置 によってはその実用化が既になされている。さらに 最近では,チップ密度が106/cm2のエミッターアレイ の研究が急激に進展しており,フラットパネルディ スプレイ,超高速デバイスなどの新しい応用をめざ している。電界放射材料としては,現在,W単結晶 チップが電子顕微鏡に搭載されているが,応用分野 をひろげるには,放射電流の一層の向上が必要であ る。エミッターアレイチップの材料としては,Mo, W, Si等が研究されているが,用途に応じた材料の選択 が重要であり,今後の大きな課題として残されてい る。ここでは,単原子層グラファイトを表面に形成し た高安定炭化物電界放射材料について説明し,最後 に電子放射材料の将来展望を試みる。(2)現在の成果NaCl型構造炭化物には,TiC, ZrC, HfCのIVa 族炭化物,NbC, TaCのVa族炭化物があり,いず れも以下に示すような共通的な電子放射特性をもつ。 ここでは,最も安定な電流特性を示すグラファイト 被覆NbCエミッターに焦点を合わせる。単結晶エミッターでは,チップ軸方位の選択が重 要である。炭化物エミッターは,チップ軸を〈110〉 方位とする〈110〉チップが有用である。なぜなら〈110〉 チップのみがチップ軸方位に電子を放射するからで ある。NbC〈110〉チップの清浄表面からの電子放射 パターンは,チップ先端が清浄表面作製温度の1600℃ 以上の加熱により発達した(100),(111)面で囲まれ た多面体形状をとることで説明できる。チップ先端 には,電界強度の大きい2種類の頂点があり,電子 はこれらの局所部分から放射される。清浄表面から の放射電流の経時変化には,大きな電流減衰とそれ に重畳したステップ状およびスパイク状ノイズが観 測されるが,チップの表面処理により炭化物表面に 単原子層グラファイト膜を生成することにより放射 電流は安定化する。チップの表面処理は,次の二段階操作よりなる。 エチレン等の炭化水素系ガスの雰囲気下でチップを 1000―1100℃で加熱する(前段処理)。次に,電界放 射のできる超高真空に排気後,全電流10―20μAを30 分以上連続放射する(後段処理)。表面処理効果を起 こすには,100L (ラングミュア)以上のガス露出が 必要である。表面処理効果が起きたかどうかは,電 子放射パターンの変化,放射電流の増大(定電圧下) から判定できる。炭化物単結晶基板上への単原子層 グラファイト膜の生成条件を考慮すると,チップの 前段処理により,チップ表面に単原子層グラファイ ト膜ができることがわかる。チップの後段処理は, 強電界印加により表面層の物質移動がおきた結果, チップが先鋭化すると解釈できる。表面処理後の電子放射パターンは,中央部の電子 放射がエンハンスした結果である。前段処理終了直 後では,まだ電子放射パターンは変化していない。 後段処理が終了した段階で印加電圧は急激に減少す る。この急激な印加電圧の変化は,電子放射パター ンの変化にも対応している。これは,チップの先鋭 化が起こったこととも関連している。チップの表面処理の最大利点は,極めて安定な電 流が得られることである。ステップ状およびスパイ ク状ノイズが激減し,電流減衰もほとんどなくなる。 短時間ノイズは0.2%以下,電流減衰は0.1%/h以下 と放射電流は極めて安定である。この高安定電流特 性は,表面処理によりチップ表面が単原子層グラフ ァイトで覆われることと深く関連している。化学的 に極めて不活性な単原子層グラファイトの特性が高 電流安定性を生み出していると考えられる。表面処理NbC 〈110〉エミッターの電流安定性は, 表面処理におけるエチレン露出量に依存する。エチ レン露出量が100Lでの安定電流(電圧印加直後の20 分間に1%以上の電流変動のない最大全電流)は, 1x10-8Paで10μAとなる。25000Lのエチレン露出で は,安定電流は約50μAと大きくなる。この電流安定 性の差異は,(111)面と(100)面への単原子層グラ ファイトの生成の有無と関連している。(111)面上 に単原子層グラファイトを生成するには,100Lのエ チレン露出で充分であるが,この露出では(100)面 上に生成するには不充分である。(100)面上に単原 子層グラファイトを生成するには,少なくとも25000 Lのエチレン露出が必要である。(111)と(100)面 への単原子層グラファイトの生成条件の差異が,NbC 〈110〉チップの電流安定性を左右しているわけであ る。NbCを用いた電界放射特性の実験から,単原子層 グラファイトを表面に形成することによって,放射 電流が飛躍的に安定化することが分かった。グラフ ァイト被覆NbCエミッターの高安定電流特性は, TiC, ZrC, HfCのIVa族炭化物,TaCのVa族炭化 物に共通にみられる性質である。これらの炭化物エ ミッターでは,(111)面や(001)面から電子が放射 されるわけではなく,それらの面で構成される電界 の強い局所部分の角から放射される。清浄表面チッ プで放射電流が不安定になるときには,必ずしも先 端部の電子放射領域に直接ガスが吸着していくわけ ではなく,(111)面や(001)面に吸着したガスが先 端部にマイグレーションして先端部の表面状態を変 えているとみることができる。単原子層グラファイ トでこれらの面を覆うと残留ガスが吸着しなくなる ので先端部に余計な擾乱が加わらず,電流が飛躍的 に安定化するものと考えられる。(3 )今後の展開極めて安定な電界放射電流は,遷移金属炭化物の 表面にグラファイトを形成することにより得られる ことがわかった。このような高安定電流特性を示す 電界放射材料は他にはない。電界放射材料の今後の ひとつの発展方向としては,基板材料として炭化物 以外の材料を使った場合にどうなるかを明らかにす ることである。例としてLaB6をあげることができる。 LaB6は,熱陰極材料として既に実用化されている材 料であるが,電界放射材料としての放射電流は安定 性に欠ける。グラファイト被覆NbCエミッターのよ うに,LaB6の表面をグラファイトで被覆した場合に, 安定な電流が得られる可能性がある。しかしながら, これに関する実験はまだなされていない。LaB6表面 へのグラファイト生成が極めて困難であることが大 きな理由である。何らかの方法でグラファイト生成 ができれば興味深い結果が得られるものと考えられ る。最近,ダイヤモンドからの電子放射実験が注目を 集めている。これはダイヤモンド表面が負の電子親 和力になることを利用して,低電圧動作で安定な電 流を得ようというものである。いままでに報告され たダイヤモンドエミッターに関する研究は,扱う材 料や形態などの相異から大きく分けて5つに分類で きる。これらは,1)ダイヤモンドのpnダイオードカソ ードの界面からの電子放射,2) CVDダイヤモンド 膜からの電子放射,3)ダイヤモンドエミッターア レイからの電子放射,4)ダイヤモンドあるいはダ イヤモンド様グラファイトをコーテイングしたチッ プからの電子放射,5)レーザーアブレーション法 により合成したダイヤモンド膜からの電子放射であ る。ダイヤモンドのpnダイオードの界面からの電子 放射は,1991年に米国のMITのM.W.Geisにより 発表されて,ダイヤモンドエミッター研究の引き金 になった研究である。レーザーアブレーション法に より合成したダイヤモンドエミッターはSIダイヤモ ンドテクノロジー社の主張している方法である。ダ イヤモンドからの電子放射に関する実験はまだ充分 ではないが,このような状況にもかかわらず開発研 究が先行し,米国のSIダイヤモンドテクノ ロジー社 は2～3年後を目途に平面型ダイヤモンドデイスプ レイを実用化したいとしている。SIダイヤモンドテ クノ ロジー社は,グラファイトを含むダイヤモンド の粒界からの電子放射が重要と指摘しているが,電 子放射機構についてはまだこれといった定説はない。 負の電子親和力を積極的に利用した着実な実験のつ みあげによっては,ダイヤモンドは新しい展開が期 待される電子放射材料である。1―12触媒材料第8研究グループ総合研究官渡辺 遵(1)はじめに触媒は速度論を通じて化学の本質と密接に係わり, かつ近代化学工業に不可欠な機能材料として活躍し てきた。有機化学が近代化学工業の中枢的役割を担 うことができたのも各種触媒のおかげと言っても過 言ではない。産業の発展とともに環境汚染が地球的 規模で顕在化するに至り,環境の保全や浄化への応 用が触媒の新たな活躍の場として登場した。排ガス 等による大気汚染,炭酸ガス等による地球温暖化, 合成洗剤等による水環境の汚染あるいは細菌等によ る生活空間の汚染など様々な環境問題がある。大気 汚染の元凶物質である窒素酸化物については早くか ら触媒による浄化法が検討されてきたが,ディーゼ ルエンジンの普及や希薄燃焼ガソリンエンジンへの 移行の始まりとともに新たな対応策が求められてい る。以下ではこの点に関し背景と当所の研究現状を 概説し,材質研究をベースに,環境問題への貢献と いう観点から,我々の目標とすべき触媒材料を展望 したい。(2)現在の成果ボイラーで高温の燃焼反応を行うと,空気中の窒 素や燃料中の窒素化合物と酸素が反応し,窒素酸化 物が発生する。窒素酸化物は光化学スモッグの形成 やオゾン層の破壊に関与すると言われ,発生源での 除去が不可欠である。発生源は工場などの高濃度固 定発生源と自動車などの低濃度移動体発生源に大別 される。前者に対しては,V2O5/TiO2を触媒にし, アンモニアを還元剤とする選択還元法が効果をあげ ている。後者では,理論空燃比近傍で作動する現状 のガソリンエンジンに関してHC, CO, NOxを同時 に浄化できる3元触媒法が実用化している。しかし 近年,環境保全や経済性の観点から消費燃料の抑制 のため,希薄燃焼ガソリンエンジンへの移行が強く 求められている。希薄燃焼状態の排ガスは理論空燃比のそれに比べ 多量の酸素(数%)を含有する。3元触媒は酸化に より失活するため,希薄燃焼エンジンには適用でき ない。高濃度酸素の共存下における窒素酸化物の除 去にはアンモニア選択還元法が適するが,自動車へ の搭載は無理である。このため高濃度酸素下でも活 性を維持し,未燃炭化水素を還元剤にして窒素酸化 物を選択還元できる触媒材料が探索され,各種ゼオ ライト,活性金属担持アルミナやチタニアなどが検 討されきた。しかし,それらは3元触媒と同様に酸 化等による劣化が問題となっており,新たな発想に 基づく新規な触媒材料の開発が求められている。我々はチタン酸塩関連物質に関する触媒能の探索 過程で,従来とは異質な選択還元用触媒材料に遭遇 した。その素材はホーランダイト型一次元トンネル 構造を有する複合酸化物である。一般化学式はAxMy N8-xO16(以下AMNOと略記)で表され,x,y≦ 2 である。通常,Aはアルカリ金属,Mは2価または 3価金属,Nは4価金属である。結晶構造の骨格は(M, N)O6八面体で形成され,そのトンネル状空�� にアルカリイオンが収容される。アルカリイオンは 優れた可動性を呈し,トンネルに沿って非局在化す る。この化合物群について,一酸化窒素(NO), NOと 炭化水素(ここではC3H6), NO + C3H6 + O2の各雰 囲気のもとでNOの転化率を室温から約1000Kの範 囲で測定した。触媒上にNOのみを流通しただけで は,転化は起きないが,プロピレンが共存するとNO の転化率は100%に達する。KGaSnOおよびKGaTiO の組成では高酸素濃度(4%)でも40～60%の転化 率を維持する。すなわち当該触媒の存在により,炭 化水素は酸素が共存してもNOから酸素を奪い,そ れを選択的に還元できる。この活性は極低比表面積 (1m2/g以下)かつ金属等の無担持状態においても 顕著に発現しており,従来型触媒にはない特徴であ る。これらの触媒にNOを吸着させ,昇温脱離特性を 調べた。一部組成では窒素酸化物の吸着量が非常に 大きく,KGaSnO で 35μ mol・m-2, KZnSnO で29 μmol・m-2, KGaTiO で12μmol・m-2 KGoSnO では7μmol・m-2などである。KGaSnOの場合は1nm2当た り約20個のNO分子の吸着に相当する。また,アン モニア昇温脱離特性の解析によると,選択還元活性 領域では有為な固体酸性がない。従来型触媒では固 体酸性が選択還元活性の要因の一つとして考えられ ており,この点でも従来とは異なることが明かとな った。種々のAMNOによる同様の触媒反応はNOとC3 H6の転化速度比αで分類できる。NO + C3H6雰囲気 では高活性触媒はα=3 ,低活性なものは9である。 NO + C3H6 + O2雰囲気で高活性な触媒はSn系とTi 系で異なる挙動を示し,前者でα= 0.8,後者で0.5 である。酸素共存時のαが低いのは炭化水素の燃焼反応が併行し,炭化水素の見かけの消費量が増える ためである。酸素共存下で高活性を示すKGaSnOと KGaTiOのC3H6利用効率は理想反応を規準にして 約18%と11%である。同じαすなわち同型の反応様 式に分類される触媒ではプロピレン利用効率と比吸 着量の間に図1のような線形関係が成立することを 見出した。触媒表面に吸着させたNOの脱離挙動を温度を変 えて,FTIR分光法を用いてその場観察した。吸着量 の多いKGaSnOなどの結果から,昇温に伴う吸収ス ペクトルの変化はNO昇温脱離曲線や転化率の測定 結果とよく対応し,選択還元反応の起こる温度領域 で脱離量の多いものは転化率も大きいことが分かっ た。KGaSnO, K(FeGa)SnO, KFeSnO の赤外吸収 スペクトルの温度変化および転化挙動の比較から, 現状では選択還元に寄与する窒素酸化物の活性吸着 種は硝酸あるいは亜硝酸に近い形態と推定される。従来の触媒は担持金属の影響や大比表面積化に伴 う材料自身の曖昧さなどのため反応機構の解明が難 しかったが,本触媒の活性は素材自身の属性に由来 すると考えられる。吸着量が多いことから,反応機 構解明の基礎となる活性吸着種を各種の測定手法に より様々な角度から解析できる可能性が高いので, これらに基づき反応機構の微視的な素過程を明確に し,上記の線形関係等の本質を明らかにすれば,よ り高性能な触媒材料を設計できるものと考えている。(3)今後の展開当該触媒素材の高比表面積化等により機能の改善 や向上を図ることも一法であるが,材質研究として は機能発現に寄与する因子を解析し,未知の高性能 材料を予測,具体化できるプロセスを構築すること こそ本質的に興味のある戦略である。当該材料につ いては幸い従来にない特徴のおかげで,これまでの データの総合的考察から,選択還元反応のキーポイ ントとも言える吸着,還元の素過程に関して,図2 に示すような微視的モデルを予測できている。それ 故,材質研究としての素朴な目標はこのモデルの真 偽を確かめ,図1の相関曲線の延長上に存在が期待 される高性能の未知触媒を材料設計的に創製するこ とである。図1 ホーランダイト型触媒によるC3H6利用効率と比吸 着量の相関図2 ホーランダイト型触媒による一酸化窒素選択還元 反応の微視的モデル1―13イオン伝導体材料(その1) ―酸化物―未知物質探索センター主任研究官渡辺昭輝(1)はじめに電気伝導をもたらす電荷の担体が電子や正孔では なくてイオンである固体を,イオン導電性固体と称 する。イオン導電性固体は半導体であるため,その 電気導電度は温度の上昇と共に増加する。通常の物 質ではイオンと同時に電子の伝導も生ずるが,イオ ンによる伝導が支配的な物質を固体電解質と呼ぶ。 個々の固体電解質によって温度領域は異なるけれど も,電気伝導度は10-1～10-5S cm-1の高い値を示す。 特に,高イオン伝導性固体電解質を超イオン伝導体 と呼ぶこともある。イオンには正と負の二種類ある が,ここでは後者の負イオン,すなわち陰イオンで ある酸化物イオン(O2-)導電性固体について紹介す る。酸化物イオン伝導体として良く知られている化合図1 蛍石型結晶構造図。化学式CaF2で表される蛍石が この構造の代表である。物は立方晶ジルコニア(c-ZrO2),ハフニア(c-HfO2), セリア(CeO2),トリア(ThO2),さらに高温安定酸 化ビスマス(δ-Bi2O3)等であるが,これらはすべて図 1に示すような蛍石型の結晶構造を有している。こ の構造では酸素が最密充填することなく,��間の多 いのが特徴的であり,換言すれば三次元のチェスボ ード構造である。酸化物イオン伝導体の代表は安定 化ジルコニアであり,自動車の排ガス中のHC, CO, NOxを浄化する三元触媒を効率的にはたらかせるた めの空燃比制御用の酸素センサー,溶鉱炉や溶銅炉 中の溶存酸素量測定のための酸素センサー,また酸 素濃縮や酸素除去に用いる酸素ポンプ等として応用 されている。一方,酸化ビスマスは単斜晶系に属する低温安定 相(α-Bi2O3)は730℃で蛍石構造をもっ高温安定相(δ -Bi2O3,以下ではδ相と記す。)に転移し,825℃で融 解する。δ相は730～825℃で100Scm-1という高い酸 化物イオン伝導を示す。実際,α→ δの固相転移に おける転移熱のほうが,δ相が溶ける融解熱より大き いという異常な現象が観察される。これは,δ相では O2-が液体状態に類似した運動をし,それが良好な酸 化物イオン伝導をもたらすと説明されている。この ように,δ相は理想的な酸化物イオン伝導体であるが, 安定存在温度領域が狭い,還元雰囲気に弱い等の欠 点が見られる。そのため,ジルコニアの場合と同様 に他の酸化物を添加することによってδ相を転移温 度よりもはるかに低い温度領域まで安定化すること が多くの研究者によって試みられた。その結果,希 土類酸化物(Ln2O3)の添加が有効であると結論され, 安定化されたδ相が室温にもたらされた。とりわけ, イットリア(Y2O3)添加の場合について数多くの報告 が見られた。しかしながら,当所における詳細な相平衡の研究 結果は,これらの安定化されたδ相はすべて高温安 定相が急冷凍結された状態であり,転移温度以下で は準安定な状態であることを明らかにした。(2)現在の成果上述のδ相の安定化の可否を論ずるのは,酸化ビ スマスと希土類酸化物との相平衡を検討することで あると言える。したがって,希土類酸化物(Ln2O3, Ln = La, Pr, Nd, Sm～Lu, Y)との二成分系の相平 衡を再検討したところ,次に示すような低温安定相 の存在が確認された。①LnがLa～Er, Yの場合は組成がLn2O3が22.5モ ル%の近傍に層状構造をもつ六方晶系に属する固溶 体が存在し,Lnに依存して670～900℃でδ相に転移図2 Bi2O3―Y2O3系の平衡状態図。Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳで示 される相が低温安定な中間相であり、δで示され た相が蛍石型構造を有する高温安定相である。する。②LnがSm～Dy, Yの場合に,Ln2O3が35モル%付 近にC型希土類酸化物と類似の体心立方晶系に属す る構造を有する低温相が存在し,約900℃でδ相と希 土類酸化物の組成に富む隣接相に分離するが,さら に高温域ではδ相の単一相となる。③LnがDy～Er, YではLn2O3が49モル%付近にδ 相に関連した三斜晶系に属する構造をもつ相が存在 し,約1000℃で分離するが,より高温域ではδ相に なる。④LnがLa～Ho, Yの場合に,Ln2O3が50モル%以 上の組成にLaOF型の固溶体が存在する。⑤LnがTm～Luでも,低温安定相の存在が確認さ れ,組成や構造を現在検討中である。上記の結果に基づいて,これまでに数多くの研究 者によって検討されてきたBi2O3 ― Y2O3系の平衡状 態図を完成させた。図2に示すように4個の低温安 定相が存在するために,δ相は組成と温度に関し,高 温安定相として限られた領域を占めていることがわ かる。それゆえに,δ相は低温領域へ平衡状態で安定 化されることはない。酸化ビスマスと希土類酸化物 との系は固相反応の速度が非常に遅いという特性を もっており,その結果,反応生成物は「オストヴァ ルトの階段則(すなわち,熱力学的に不安定な状態 でも生成し易い相が優先的に出現するということを 述べた法則)」に従って,十数時間の熱処理では広い 温度・組成領域で常にδ相であった。既往の研究は この点に気づかなかったために,実際には低温で準 安定なδ相を安定な相と結論してしまったのである。 現在までのところ,全組成領域での相平衡を検討し たのはBi2O3― Y2O3系のみであるが,上記の実験結 果から他の系でも同様な平衡状態図となることが予 想される。このように,希土類酸化物の添加によっ て得られたδ相は安定化されないことが判明したが, 上記の低温安定相は電気伝導度はδ相には及ばない が,酸化物イオン伝導体であることが明らかになっ た。(3)今後の展開希土類酸化物のみならず他の酸化物を添加しても δ相を安定化させることは困難であることが判明した ので,δ相に匹敵する酸化物イオン伝導特性をもつビ スマス複酸化物を探索することが重要である。最近, フランスのリール大学で見出された化合物Bi2VO5.5 の高温安定相は高い酸化物イオン伝導(600℃で> 10-1S cm-1)を示すが,550℃近傍で低伝導性の低温 相へと転移してしまうという欠点があったが,CuO 等の金属酸化物を添加することにより高温相が安定 化され,350℃で10-2S cm-1程度の酸化物イオン伝導 を示すことが判明した。したがって,この物質に関 しては現在,多数の国で研究がなされている。この ように,δ相にとらわれないで低温作動酸化物イオン 伝導性ビスマス複酸化物を見出すことが今後の問題 であるが,Bi2VO5.5はこの問題解決のためのヒントを 与えてくれるように思われる。低温作動の高酸化物 イオン伝導体が開発されれば燃料電池への応用が期 待され,高効率で低公害の発電所建設が可能となり, さらには小型化した燃料電池を自動車に登載するこ とにより,軽量で低公害(騒音・NOx無し)の電気 自動車が実現できることになり,都市部の大気汚染 は大幅に改善されよう。1―13イオン伝導体(その2) ―銀カルコゲナイド―第2研究グループ主任研究官和田弘昭(1)はじめに銀の化合物には,イオン伝導性を示すものが少な くない。ファラデーが興味を持ち最初に研究を行っ たのはAg2Sである。またハロゲン化銀が非常に高い イオン伝導性をもつ事がわかったのは20世紀初頭で ある。これを契機に多くの銀化合物が調べられ,そ のイオン伝導性が明らかにされてきた。最近では, 液体の電解質と比較しうる程の電気伝導度を示す超 イオン伝導体(10-3ohm-1cm-1以上)が注目され,新 物質の創製や輸送現象の解明に関心が集まっている。 銀系カルコゲナイドについてもすでに多くの報告が あり,そのうちのいくつかは,電気化学デバイスと して二次電池正極材料,電位記憶素子,リソグラフ ィーなど固体アイオニクス材料への応用が期待され ている。しかし,多岐にわたる物質群がすべて研究 されているわけではなくデータも十分ではない。特 に遷移金属元素を含む系についてはまだまだ検討の 必要性が高い。カルコゲナイドの一般組成式を AgαMβXγ で表すと,α + nβ = 2γ, α≧β, γ = 2,3, 6,8の条件を満たす化合物の報告が多い。Ag8GeS6, Ag8SnS6などはその一例で天然鉱物としても存在が知 られる。こうした銀に富むカルコゲナイドの研究は, ヨーロッパを発端に1950年代半ばより始まった。一 般にM元素として 周期律表のⅢb-Ⅴb族元素のみ が入るものと考えられた。CuやCdの化合物も含め て,この種の化合物が立方晶系のAg8GeS6構造と類 似した構造を示すことから,Khueらにより総括的に “アージャイロダイト族相”と命名された。一方,遷移金属側では,我々が研究を開始した1990 年代はじめには,富銀化合物に関する報告はほとん どなかった。遷移金属Ⅲ a―Ⅴ a族のカルコゲナイド への当時の研究の主流は,MS2やMS3の組成式で示 される層状化合物へのAg, Cu,アルカリ金属などの インターカレーション反応についてであった。そこ で,Ⅲ a―Ⅴ a族元素の富銀組成領域におけるデータ の取得を目的として,Y, Ti, Hf, Nb, Taなど一 部の系の元素を選んで,新規カルコゲナイドの創製 とそのイオン導電率の測定の研究を実施することと した。(2)現在の成果石英封管法による乾式合成ののち,得られた生成 物質について,粉末X線や単結晶X線による解析を 行い,以下に記述するように多くの新規化合物を見 いだした。これらは一部を除いていずれも当所の四 軸X線CAD4システムにより世界に先駆けて構造解 析された物質である。それらは結晶構造上の特徴か ら4種類に分類することができる。①一般組成式Ag(12-m)Mm+X6で表される化合物。いわゆる“アージャイロダイト族相”と同じ構造 を持ち,Mには第V族元素,Nb,Ta,第Ⅳ族元素, Tiが,またXには主としてSが入るもの。Se化物 はTa系にのみ出現する。合成された新物質,Ag7 TaS6, Ag7TaSe6, A7NbS6, Ag8TiS6はいずれも立 方晶系に属し,格子定数は,各々10.5139(3) Å,10. 8277(5) Å ,10.5001(6) Å,10.6280(7)Åである。空 間群は室温で硫化物がF43m,セレン化物がP213で ある。これらの粉末X線回折パターンには,図1に 示されるようにCu2θで20°以上で非晶質物質に特有 なバックグラウンドの増大が認められる。これはM やXで構成される骨格格子の間��を液体状のAgイ オンが動き回ることを反映したイオン導電性カルコ ゲナイドの特徴的現象である。F43mの結晶構造を 図1(e)に示す。単位胞に4分子を含み,24ケのカル コゲンは四面体的に密充填し金属原子はその間��を 占める。結晶におけるAgの原子半径は実際には, 1.44ÅとMの半径よりやや大きいが,図では位置的 関係が見易いように占有率に比例した大きさの小球 で表した。硫化物では銀の配置が等方的平均構造で あるのに対して,セレン化物(図1(c))では銀の動 きが多少拘束され対称性がP213とやや下がる。この 結晶構造を図1(f)に示す。また,陰イオンの一部はハロゲンによる置換が可 能でヨウ素の場合は,Ag7-yTaSe6-yIy (0 <y <1)の固 溶体相を形成し,濃度1%前後で構造はF43mの高 対称相へと転移する(図1(d))。また,銀イオンの動 きに関連してこれらの相はいずれも室温前後に転移 点を持ちそれ以下で低対称低温相へと相転移するこ とが分かった。② Ag4M3X8で表される化合物。Mには第Ⅳ族のHfが,XにはSが入る。結晶系は 立方晶で,はP4332,格子定数は10.9015(4) Åであ る。単位胞中に4分子を含む。Ag4Hf3S8の結晶構造 を図2 (a)に示す。S原子は立方密充填し32ケの八面 体を作り,Hf原子はその中心の6配位位置を占める。 Ag原子は4配位位置に入るが,その一部は統計分布 していて忍術の分身の術のように場所が定かでない。③ Ag2MX3で表される化合物。前者と同様,第Ⅳ族Hf,S系でのみ見い出された。 結晶系は斜方晶で,空間群Cmca,格子定数はα=11. 458(2) Å, b = 6.628(1)Å,c = 12.774(2) Åで単位胞 中に8分子を含む。図2 (b)に示すようにHf原子は 6配位位置を占め,これを取り巻く S原子が八面体 を形成,稜共有して二次元的な層を作る。これがc軸 方向に積み重なりその層間にAg原子の入った特徴的 な層状構造となる。④ AgMX2で表される化合物。Mには第3族のSc, Y, XにはSが入る。AgYS2 は正方晶系で空間群はI41md, 格子定数はα= 5.4082(8) Å, c = 11.986(3) Åで NaCI 構造に類似 しAg, Yは6配位位置を占める。以上の結果を概観してアージャイロダイト相の出 現の要因として,結晶学的観点からの一つの重要な 結論が導かれる。構造安定化の必要条件としてM原 子は4配位が要請される。いわゆるサイズ効果であ る。その限界がTi, Nb, Taどまりで,より大きな HfやYでは6配位を取らざるを得ず別の構造が安定 になる。試料のイオン導電率の測定結果を図3に示 す。いずれの試料も高い値を示し温度の上昇と共に その導電率は増大する。例えば,Ag7TaS6の導電率はlogσAg+表示で室温 で―2.0,175℃で―0.8で活性化エネルギーは0.22eV である。いずれも輸率が極めて1に近い混合イオン 伝導体で,その電子伝導の寄与は0.01%以下である。図1Ag7MX6の粉末X線回折図(a～d)と結晶構造(e)Ag7NbS6 (f) Ag7TaSe6図2 銀ハフニウム硫化物の結晶構造,(a) Ag4Hf3S8 (b) Ag2HfS3(3)今後の展開複合遷移金属カルコゲナイドの継続的な研究の展 開により,いまなお未知なる多くの新規化合物が発 見されるはずである。集まったデータの総合的体系 的分析により,カルコゲナイドの本質的な理解がよ り明確になるだろう。材料への応用という面におい ては,固体イオニクス材としての活用が期待されう る。複合銀硫化物を固体電解質,電極材料,キャパ図3 複合銀硫化物のイオン導電特性シター,タイマー,クーロメーターとして利用する 技術が高度化して何らかの機器に用いられる時代が 到来するかも知れない。室温前後での可動イオンに よる相転移現象を利用したセンサー技術が開発され るかも知れない。今後の基礎研究に負うところ大で ある。1―14粘土鉱物第5研究グループ主任研究官山田裕久(1)はじめに粘土は地表の土の主成分であり,我々の身近にあ る。幼少時の泥遊び,粘土細工を思い出す人も多い であろう。粘土と呼ばれる土の特徴として,(A)可塑 性,(B)焼成固結性,(C)微粒子(2マイクロメータ ー以下)があげられる。前者2つの性質を利用して 人間は約1万年以前より,食器をはじめとする土器 を作っている。メソポタミア文明時には,記録用に 粘土板を,建築用にレンガ,タイルを既に作ってい た。現代においては,やきもの,セメントの原料と しては言うまでもなく,現代生活に必要な石油の精 製過程における脱色剤,触媒として,鉄の生産にお ける鋳型用砂型の粘結剤,高炉壁用の耐火レンガと して,さらに洋紙の白色度・光沢を与える塡料,塗 布剤として大量に用いられている。また日用品とし て,化粧品・塗料の原料,医薬,農薬,ゴム・プラ スチックの充填剤などにも用いられている。他方, 土壌改良・ボーリング用泥水への利用,工業排水・ 放射性廃棄物の処理にとっては不可欠である反面, 地滑り等の自然災害の要因ともなっている。以上のように粘土の利用・応用は有史以来,広い 分野にわたっていることが容易に理解できる。その 有効利用のためには,粘土の性質が十分に研究され, 明らかにされねばならない。しかしながら,粘土の 本質は未だ解明されていない。1930年代のX線回折 法による研究の結果,粘土の主成分が層状の結晶構 造をもった珪酸塩鉱物であることがわかり,粘土鉱 物(clay mineral)と呼ばれるようになった。1940 年代の電子顕微鏡法,1950年以降の各種スペクトル 法による研究により,非晶質,低結晶質の鉱物もあ る種の粘土鉱物の主成分として含まれていることが 明らかになった。国際粘土研究連合(AIPEA)の Nomenclature Committee (1996) は,『The term “clay mineral” refers to phyllosilicate minerals and to minerals which impart plasticity to clay and which harden upon drying or firing .』 と言う 定義をした。この定義に従うと,(A)含水層状珪酸塩 として,スメクタイト,カオリン鉱物,バーミキュ ライト等,(B)繊維状含水珪酸塩として,クリソタイ ル,セピオライト,パリゴルスカイト等,そして(C) 非晶質物質としてアロフェン,イモゴライト等が, 粘土鉱物として認識される。(2)現在の成果上記3種の分類に従って,粘土鉱物の無機材料へ の利用・応用について述べる。(A)含水層状珪酸塩この粘土鉱物の一群は,サブナノメーターの厚さ のシリケイト層が積層したものと考えられ,その層 間に異種の原子,イオン,分子などが入り込み,新 たな化合物を形成しやすい。このような反応をイン ターカレーションと呼び,粘土鉱物をホスト,進入 した化学種をゲスト,形成された化合物を層間化合 物と呼んでいる。言葉を変えれば,層間化合物は分 子レベルにまで薄い無機結晶層の層間に異種の物質 を取り込んだ理想的なナノコンポジットといえる。 特にスメクタイトは,無機物・有機物との親和性が 高く,その層間に有機・無機陽イオン,水,アミン などの極性分子を取り込んで様々な層間化合物を形 成する。現在までに報告されている粘土層間化合物 による機能性材料の例としては,以下の材料を上げ ることをできる。有機錯体などの分子性触媒(トリフェニールホス フィンロジウム錯体など)を層間に固定することに より,本来の触媒能に加えてゼオライト様の形状選 択性を与えたのは無機・有機ハイブリッド化の好例 である。また光学機能,電気化学機能をもつ有機分 子や錯体(ロジウムのフェナントロリンまたはビピ リジル錯体など)をインターカレートして得た層間 化合物は,光記録材料,発光材料,電極材料などと して検討されはじめている。さらに,クラウン化合物,シクロデキストリン等 の包接化合物をゲストとする層間化合物は,いわば 複合ホスト材料と呼べるものであり,医薬品等のマ イクロカプセル剤,立体選択性触媒などへの応用が 期待されている。一方,層間に嵩高い多核金属イオン,錯体をピラ ー(柱)として導入することにより得た層間架橋体 (pillared clay),ゼオライトと同様なミクロポーラ スクリスタル(多孔体結晶)であり,触媒もしくは 触媒のサポートとして注目を浴びはじめている。エンジニアリングプラスチックの一つとして広く 用いられているナイロンと粘土鉱物(とくにスメク タイト)との複合体は,細かい板状粒子が有機高分 子中に高分散した新材料であり,層間化合物を形成 することによりその機械的特性も改善されている。 (B)繊維状含水珪酸塩クリソタイルの繊維はアスベスト(石綿)として広 く利用されてきた。柔軟性,耐熱性,耐薬品性ゆえ に,石綿ボード,石綿布,ブレーキライニング,ボ イラー被覆,プラスチック強化剤としての用途が多 い。一方でアスベスト肺のみならず肺がんや中皮腫 (肺の外側を覆う中皮にできる癌)などの原因物質 であることが近年明らかにされた。セピオライト,パリゴルスカイトは,繊維状とい う特徴に加えてゼオライトと同様なミクロポアがそ の構造中にあり,近年注目を集めている粘土鉱物で ある。しかしながらその用途は石油精製,吸着剤, プラスチック強化剤等であり,旧態依然である。繊 維状粘土鉱物の高機能化は今後の大きな課題の一つ である。(C)非晶質物質直径3.5～5ナノメートルの中空球状物質および直 径約2ナノメートルで長さ数百ナノメートルの管状 繊維物質がそれぞれアロフェンおよびイモゴライト と命名されている。最近話題になった中空球状炭素 超微粒子C60(バックミンスターフラーレン)および カーボンナノチューブと相似の構造が考えられてい る。現在は,園芸用の『土』としてのみ使用されて いる。しかしながら,その形態の特異性,吸着能・イオ ン交換能などの特性を考えると,その高機能化は魅 力あるテーマである。(3 )今後の展開先に述べたように,粘土の本質は未だ解明されて いない。『粘土は微粒子であることが本質であって, 単結晶化しない,大きくならないからこそ粘土とし て存在する』と言う一つの科学常識も存在する。粘 る土,粘土の主成分であるスメクタイトは特に,常 に“微粒子,低結晶質”であり,天然物,合成物を 問わず単結晶は存在しておらず,集合体としての平 均的な性質しかわかっておらず,その本質的な性質 の解明のみならず結晶構造,物性に関する基本的デ ータさえも不十分である。先に述べた利用のされ方 もどこかの粘土を含む山を採掘,粉砕したものであ ったり,せいぜい水簸(水に分散して浮遊部を利用 する)した程度のものを利用しているに過ぎず,近 年のニューセラミックスとは全く異なった旧態にあ る。したがって,スメクタイトの単結晶合成はスメク タイトの持つ特異な性質を理解する上で必要不可欠 であり,材料科学分野,自然科学分野からの要求で もある。最近無機材質研究所の我々のグループは,研究の 歴史はもとより数万年以上をかけた天然にも存在し ない『スメクタイトの結晶』をはじめて合成した。単結晶合成は,グループ研究の蓄積の上に合成条 件等を詳細に検討した結果,人工ダイヤモンドの合 成条件に相当する超高圧高温下での水熱処理による 方法を用いてはじめて成功した。本合成の成功によ り,特異な無機化合物である粘土鉱物スメクタイト の近代的研究がようやく始まったといえる。本結晶 の結晶構造の解明,有機物のインターカレーション・ 吸着現象の原子及び分子レベルでの解明等は今後の 重要な課題である。また本結晶をホストとするナノ レベルの無機/有機複合体の創出が可能であり,その 機能利用の新素材研究が始まるであろう。新素材としての利用に加えて地球科学,生命の起 源の研究など異分野,境界領域にも新しい研究素材 を提供するものと期待できる。粘土が生命誕生の鍵 を握っているのではないかという仮説がある。バナ ール(1951)は,オパーリンの唱えた,いわゆる『混 沌たるスープ(primodal soup)』から生命が誕生した のでなく,粘土が有機物を吸着し,濃集することに より生体に必要な高分子の重合に寄与したというの である。さらにすすんでケーンズ・スミス(1982) は粘土は自己複製を行い(結晶遺伝),その意味で最 初の生命体であったと言っている。実際,生命体に とって重要なモノマーやその重合物がスメクタイト 共存下で実験的に作られはじめている。須藤俊男(1986)は粘土鉱物は異種物質の中間の 性質を持つ興味ある物質であると指摘している。さ らに粘土鉱物は有機結晶と無機結晶の合の子である と表現している。この『合の子』は世の中の常識を 大きく変える可能性を秘めている。参考文献Bernal, J. D. : The Physical Basis of Life. Routledge and Kegan Paul, London (1951)Cairns-Smith, A. G. : The Genetic Takeover and the Mineral Origin of the Life. Cambridge University Press, Cambridge (1982).須藤俊男:「土をみつめる」須藤談話会 編, 三共出版,pp197 (1986)1―15新構造硫化物第2研究グループ主任研究官小野田みつ子(1)はじめに金属と硫黄の化合物である硫化物は,よく知られ ているセラミックスほど安定でなく広い利用に困難 はあるものの結晶構造や物性が多様で特殊な現象が 起こる可能性のある物質である。合成(新物質の創 製,相平衡,結晶育成),特性付け(組成と原子配列 の解明),物性(性質測定,その機構解明)のいずれ に関しても特徴的で基礎研究の必要な物質と考えら れる。硫化物には,結晶構造に於いて普通でないことが 起こる物質が多く,新硫化物を合成できても何がで きたかを判断する同定(結晶構造を反映したX線回 折のスペクトルを用いるのが一番効率が良い)も時 には容易ではない。回折結晶学を基本として,近年 利用の進んだ電子計算機による計算プログラムを用 いシミュレーションを行いながら判断することによ って通常のスペクトルを比較する方法より良い結果 が得られるので,その方向での研究が進められてい る。(2)現在の成果遷移金属の一種類のみを含む二元系硫化物の場合 , 不定比性による空位と遷移金属が規則配列するため の超構造をとる傾向がある。電子線回折の併用によ り周期性の情報を得て粉末X線回折データのリート フェルト法を利用すれば個々の超構造を解くことが 可能で相平衡も規則―不規則の関係で理解される。 さらに多形やその超構造,もう一種の金属を含む三 元系硫化物で大きな単位格子をもつ新物質も数多く 見出され同様の手段でその結晶構造も明らかにされ てきた。(例,Ti1.37S2 ―4H, Ti1.33S2―12R, Ti1.33S2―6R, Ti1.25S2 ―2H, Ti6.9S9―18H, Ti8.2S11―33R, (V, Mo)3S4, (Mo,Ti)2+yS3, Ti3Mo3/4S5, Zn2Ti18S32  Ba9Ta4S20, Ba3Ta2S8, Ba16.5Ta9S39, Ba2TaS5, Ba2TiS4, Ba3TiS5, BaCu2S2, Ba2ZrS4, Ba3Zr2S7, Ta3S2, Sr17Ta10S42)硫化物では,層状やカラム状の低次元構造単位か らなるものも多く構造単位の位置の不整が生じやす い。回折が散漫な散乱となるが,行列法を利用した 計算プログラムにより不整を含む試料の逆格子空間図1 層状複合結晶(PbS)1.12VS2の結晶構造.図2カラム状複合結晶Sr1.145TiS3の結晶構造.でのX線散乱強度分布および粉末X線回折プロフィ ルを計算する手順が確立されたので積層不整やカラ ムの位置の不整を含む新物質が合成されたときの同 定と解析が可能となった。(例,Ti1.28S2 ―2H, Ti1.43S2 ―4H, Sr1-pCr2S4-p(p ～0.3))最近に見出されて注目される物質は複合結晶と呼 ばれ,寸法と対称性の異なる複数の部分構造が入れ 子になった物質で,結晶全体には三次元の周期性は 無く四次元以上の高次元対称で記述されるものであ る。一般に非整合相であり部分間相互作用により変 位変調が生じることから超空間群の適用が解析に有 効である。X線回折強度を用いた超空間群に基づく 構造精密化プログラムが単結晶と粉末試料の両方に 対し当研究所内の専門家により作成された。解析に 成功してみると本当にこんな物質が存在するのかと 驚かされる。例として図1に層状複合結晶(PbS) 1.12VS2の結晶構造を図2にカラム状複合結晶Sr1.145 TiS3の結晶構造を示す。(3)今後の展開将来,機能をもつ硫化物が利用されるときには, 規則配列(超構造),乱れた配列(例えば積層不整), 非整合相,またはそれらの間の相転移を利用したも のも現れると予想される。今まで新物質についてこ れらの複雑な構造を記述するのは困難とされていた が,今後は細部までの構造解析に関連づけた特性付 けが通常の方法として行われることが期待される。 物性の変化を微細な構造の変化と対応させて理解す ることは,基礎研究として重要なことであり,新し い機能物質を考えるときのヒントにもなり得る。単結晶を得るのが難しい新物質でも,その結晶構 造パラメーターを粉末試料データを用いて明らかに できるようになってきた。さらに,薄膜試料や傾斜組成を含む試料などでも 回折等の測定方法の進歩や電子計算機シミュレーシ ョン手法の発達が伴えば微細な構造まで明らかにさ れるようになるであろうから,様々な材質の構造研 究は広がって行くと考えられる。新構造硫化物は,複雑な構造が実在することの良 いモデルととらえることもでき,その研究結果の理 解と体系化は他の物質研究にも益する点がありその 観点からの展開も期待される。さらには,非整合の 複合結晶のように今までの化合物や相についての概 念を再考察するきっかけになるような化合物も見出 されてきた。例えば,一連のシリーズ化合物として 理解されていた多種からなる物質群が高次元対称に よる記述では一つの相として表現される例も現れて きている。将来もっと変わった物質が見出されて物 質観ががらりと変わることも有り得なくはないと思 われる。2材料創製先端技術2―1 超高圧発生技術(その1)―静的超高圧―超高圧力ステーション 総合研究官山岡信夫(1)はじめに無機材質研究所では創立以来超高圧を材料研究の 重要な手段と考え,1960年代後半には早くも当時世 界一級の装置であったピストンシリンダー装置(ケ ネディ型・1000トン複動プレス),キュービックアン ビル装置(DIA20型・2500トンプレス),14000トンプ レスが導入された。このうち,前2者は高圧容器付きの装置であった こともありほどなく稼働状態になった。その後の装 置開発も積極的に行われ,現在,キュービックアン ビル装置では多段化することにより小さな空間では あるが25GPaまでの超高圧が発生可能となっており, またピストンシリンダー装置では3 GPa領域の精密 な透磁率測定が行われている。一方,14000トンプレスは超高圧環境を大空間で実 現し実用材料を合成する目的で導入されたが,プレ ス本体のみ導入され肝心の高圧容器は自力で開発す ることとなった。まず,高圧容器の選択が問題とな る。当時既に多くの物質が超高圧下で合成されてい たが,実用材料という観点からはダイヤモンドと立 方晶窒化ホウ素(cBN)の2物質であった(残念な がら,現在でもこの事情は変わらない)。そこで,こ れらの合成に必要とする6 GPaの超高圧が大容量空 間で発生できる装置が対象となり,ベルト型高圧装 置が選択された。ベルト型装置は米国GE社で発明さ れたもので,これにより1954年同社にダイヤモンド 初合成の栄誉をもたらしたものである。ベルト装置は図1に示すようにピストンシリンダ ー装置の変形で,多重リングで構成されたシリンダ ーの中央開口部に試料を充填し,これを上下のピス トン(通常,アンビルと言っている)で加圧する。 装置中心部はWC/Co系超硬合金でできているが, 6 GPaの圧力発生は普通なら耐圧強度をはるかに越 えた応力を容器にもたらし破壊に至らしめる。そこ で,これを防止するため多くの技術課題を解決しな ければならないが,これらノウハウは民間企業にお けるダイヤモンド合成技術と密接に結びついている ためほとんど公表されず,ベルト装置の利用を妨げている原因ともなっている。そこで,我々は装置開 発をするにあたって,得られた成果はすべて公表す ることとした。装置開発にあたりこれらノウハウ,即ち,装置形 状因子の規定とその最適化,構成部材の選択と圧入・ 組立て技術,ガスケットや圧力媒体等試料構成部品 の最適化とその製造方法,温度・圧力の発生と制御 技術,等々の諸問題に取りくんだ。その結果,1976 年に6 GPa領域における材料合成装置としてFB型 ベルト装置を開発し,更に1988年には8 GPa領域の 超高圧装置としてFBH型ベルト装置を開発した。こ れら装置は,ダイヤモンドやcBNの合成研究に利用 され,更に改良が加えられた。以下,ベルト装置の開発について述べる。図1 ベルト型高圧装置、シリンダー(C)中央開口部 に試料が装填され、上下アンビル(A、B)を通 してプレス荷重Fにより圧縮される。図2 ベルト装置中心部(2)現在の成果装置開発のポイントは大容量化と超高圧化,即ち できるだけ大きな加圧空間でより高い圧力を発生さ せることである。ベルト装置は合成装置であるので1000℃以上の高 温発生も同時に行わなければならないが,これは図 2に示すように圧力媒体内に揷入されたヒーター(通 常は黒鉛管)に電流を流すことにより行われる。そ のため,ヒーターサイズが実質的な試料空間を決め る。そこで,装置開発の要件として,内径10mm以 上,長さ16mm以上の黒鉛ヒーターを内蔵でき, 2000℃以上の高温を試料に与えることができること とした。この条件が満たされれば,材料として評価 できる大きさの試料,例えば,単結晶なら2～3 mm 程度,焼結体なら7 mm径程度のダイヤモンドや cBNの試料を合成することができる。開発における第一の課題は装置中心部耐圧部材(ア ンビルとシリンダーのコア部)の破壊の防止である。 耐圧部材に使用する超硬合金の材料強度は,引張り 破断強度で約1～1. 5GPa,圧縮強度で約5 GPa程 度である。圧力発生に伴って耐圧部材に大きな応力 が生じるが,これが超硬合金の材料強度を越えると 破壊する。また,応力が材料強度以下であっても, それに近ければ,わずかの繰り返し使用で破壊する。 そこで,耐圧部材に生じる応力は材料強度の少なく とも8割以下に抑えなければならない。耐圧部材に生じる応力は,形状とそれに作用する 外力が与えられれば,有限要素法を使って計算でき る。また,形状と外力を適当に変えることにより, 耐圧部材の局部に発生する応力の集中を避け,その 最大応力を材料強度以下に抑えながら,試料を所定 の圧力まで上げることが可能となる。このように計算と実験を繰り返して超高圧下でも 破壊しない条件を見いだしている。例えば,耐圧部 材に生じる応力は,同じ発生圧力でも圧力媒体の厚 みLsが増大するほど大きくなることが分かった。部 材内壁面に作用する外力が増大するからで,シリン ダーで特に著しい。一方,Lsを小さくすれば破壊は 免れるが,内蔵ヒーターが小さくなり材料合成装置 としての意味がなくなる。そこで,所定の圧力で最大のLsを確保することが 重要で,この観点から,実際の装置開発は次のよう に行った。まず,使用圧力を6 GPaに設定し,最大 のLsが確保できる上記最適条件を計算と実験から求 める。この条件を有限要素法で再計算することによ り,耐圧部材の実際的な最大許容応力即ち破壊条件 を知る。次に,8 GPa領域まで使用圧力を高める。装置の もつ破壊条件を満足させるためには,Lsを減少させ ざるを得ない。どれだけLsを減少させなければなら ないか,そのときの試料構成は何が一番適当かが圧 力増大に伴う主な課題となる。このような手順でベルト型高圧装置の開発を行っ てきた。現在,我々はシリンダー口径がそれぞれ25 mm, 32mm, 44mm, 60mmのFBH型ベルト装置 (これらを,FB25H, FB30H, FB40H, FB60H と 称している)を開発し使用している。これらの常用 使用圧力は6 GPaもしくは8 GPaである。同時に 高温の発生についても開発研究を行い,2500℃まで の温度発生が可能となっている。(3)今後の展開上述したように,長年にわたる装置開発の結果, ベルト装置で8 GPa, 2500℃の超高圧,高温を安定 に発生させることができるようになり,ダイヤモン ドやcBNをはじめ最近では酸化物超伝導体などの高 圧合成研究に大きく貢献している。今後の課題としては,まず10GPa領域で常用でき る装置を開発することにある。現在,10GPaの圧力 発生に成功しているので,いずれ常用合成装置とし て完成すると思われる。なお,10GPa領域の装置の必要性であるが,例え ばダイヤモンドなどのいわゆる超硬質物質の大半が 高圧低温下で安定な物質であることによる。即ち, ダイヤモンドは6 GPaで1600℃, 8 GPaで2400℃, 10GPaで3200℃以上の温度で黒鉛に転移するとされ る。一方,強固な共有結合をもっ難焼結性物質であ り,8 GPa, 2400℃ではバインダーなしのダイヤモ ンド焼結体は得られていない。高純度の焼結体を得 るには3000℃程度の温度が必要と考えられ,そのた めにはどうしても10GPa領域の圧力が必要となる(勿 論,同時に,3000℃の高温を発生させる技術も開発 しなければならない)。また,ダイヤモンドやcBN以 外の新規超硬質物質の開発,例えば,C3N4, BC2N, BC3等の合成にとっても10GPa以上の超高圧環境が 有利と考えられる。10GPa程度までは,基本的には試料長さLsを減少 させる方式で可能と考えられる。ただ,それ以上の 圧力になると現在の超硬耐圧部材を使っている限り 非常に難しいと思われる。より大きな耐圧強度をも った耐圧部材の開発は不可欠で,また,1段目には ダイヤモンド焼結体を使うといった何らかの多段化 を採用することも考えられる。今後に残された課題 である。2―1 超高圧発生技術(その2) ―動的超高圧―超高圧力ステーション主任研究官関根利守(1)はじめに動的超高圧力の発生には,超高速物体の衝突や爆 薬の燃焼などに由来する衝撃波による衝撃圧縮超高 圧と低速物体の衝突による衝撃波を伴わない高圧に 分けられる。前者の場合には発生圧力の上限は理論 上制限がなく,時間的には瞬間的である。後者の場 合には物質の強度以上の圧力発生は不可能であるが, 時間的には比較的長くなり数ミリ秒程度になる。本 稿では,前者に限って述べる。通常の衝撃波実験では,解析の容易さから平面衝 撃波を発生させるため飛翔��板と呼ばれる金属を高速 衝突させることによっている。飛翔��板の加速法は一 段式火薬銃,二段式軽ガス銃,爆薬利用などで比較 的重い飛翔��板を加速する場合とレールガンなどで比 較的軽量の飛翔��板を加速する場合とで使用目的によ って変える。衝撃圧縮の特徴は,(1)圧縮が熱力学的にエントロピー増加を伴う特殊な 断熱圧縮であること,(2)従って応力だけでなく温度も上昇すること,(3)その応力場,温度場の継続時間がせいぜい1μ秒 程度であること,(4)またその応力場,温度場の立上り,立下りの時間 変化が大きいこと,(5)特に粉体に対して応力場,温度場の不均質性から くる反応の複雑さなどが上げられる。これらの特徴は,静的ないし準静的な応力場と異 なる点でもある。特に,材料の強度を遙かに超えた 圧力が発生でき利用できる点で,また,急速急冷や 急速加熱ができる点で物質合成探索や超高圧力超高 温下での物質挙動を研究する手法としてユニークな 技術の1つである。また,最近では天体や隕石の衝 突による衝撃変成が普遍的な現象として認められ, 地球科学や惑星科学の方面でも衝突や衝撃波を利用 した活発な研究が行われている。無機材研での衝撃実験は1985年に口径30mmの一 段式火薬銃が導入されたことによって本格化した。 この衝撃銃を使用して,約5 GPa～80GPa程度の圧 力範囲で衝撃回収実験が行える。飛翔��体100g程度ま で使用可能であり衝撃時間を0.4～4μ秒程度まで変 えられる。また初期試料温度を1000°C程度まで加熱 した状態で衝撃圧縮することもできる。更に,1994 年に二段式軽ガス銃が導入され,発生圧力も容易に 100GPaを超え地球の中心圧力(約360GPa)位まで に達する。二段式軽ガス銃の導入と同時に,衝撃圧 縮状態のその場観察用の計測器類も設置され,圧縮 状態解析が可能になった。(2)現在の成果一段式火薬銃と二段式軽ガス銃との概略は図1に 示されている。一段式火薬銃では,火薬室内で火薬 を燃焼させ発生する高温高圧ガスで金属製ダイヤフ ラムが破断し飛翔��体の加速を開始する。発射管中で 加速された飛翔��体は,試料室内の発射管出口に置か れた試料標的に超音速で平面衝突することによって 平面衝撃波が衝突面に発生し試料中に伝播する。こ れによって試料は衝撃処理される。この一段式火薬 銃では飛翔��体の重量を軽減しても到達衝突速度は, 加速に供される火薬から発生するガスの分子量が大 きいために秒速2 km程度が限界になる。これ以上 の高速衝突を実現するためには,加速に供するガス の種類を低分子の軽ガス(水素やヘリウムなど)に する必要がある。二段式軽ガス銃はこのために工夫 された。一段目では火薬の燃焼ガスでピストンを圧 縮管中を動かすことによって,最初圧縮管中と中央 ガス溜に導入した軽ガスを中央ガス溜中に断熱圧縮 する。その圧力が一定の圧力を超えた時に発射管と 中央ガス溜とを分離しているダイヤフラムを破断さ せることによって,二段目の加速として飛翔��体が発 射管中で高速に加速され試料室中で衝突を起こす。 軽ガスとして水素を使うことにより秒速7 kmを超 える衝突によって約0.5cm3程度の空間に超高圧力の 発生が可能である。一段式火薬銃は主として衝撃合成用に使われてい る。衝撃波を利用した物質合成では,ダイヤモンド, ウルツ鉱型BN(w-BN),セン亜鉛鉱型BN(c-BN) などの超硬物質の微粉末の合成に応用されている。 これらの合成では通常出発原料の炭素やBN粉末を 金属粉(銅粉や鉄粉などの試料に対して不活性金属) と混合し,金属製保護容器につめて衝撃波を与える。 これらの金属粉の役割は,衝撃圧力を高めかつ衝撃 圧縮後の断熱膨張後の残留温度を急速に低下させる ことによって転移相の収率を増大することにある。黒鉛やBNの低圧結晶相などからの高圧相への転 移機構は無拡散のマルテンサイト転移機構で良く説 明されている。これらの低圧結晶相は層状結晶であ って,層間結合がファンデルワールス力で弱く結合し,面内結合が強力な共有結合のため圧縮を受ける と相対的に層間は大きく縮み新しい結合を作りやす くなる。しかし,非結晶性ないしガラス状炭素など ではマルテンサイト転移は起きにく くなり強い衝撃 波で圧力の効果より寧ろ同時に発生する超高温度に よって融解し液体からの核化や成長機構または拡散 転移によって高圧相が生成すると考えられている。 フラーレンC60結晶のような炭素相の場合には,1つ のC60球面内では強い共有結合であり,球間は弱いフ ァンデルワールス力で結合しているので,圧縮を受 けると隣どうしの球面上の炭素間結合が形成され球 面内結合の一部が切断されsp3共有結合が出来ること によってダイヤモンドが約20GPa以上で生成するこ とが明らかになった。このダイヤモンドはナノメー トルサイズの超微粒子からなっている。また,拡散 転移が主な機構の反応の場合には初期温度を高めて 衝撃圧を与えることもできるがその際には残留温度 もその分高くなることに注意が必要である。二段式軽ガス銃は,主として衝撃圧縮状態の計測 用に使われている。計測実験では飛翔��体の衝突速度, 圧縮下試料中の衝撃波速度,自由表面速度,発光ス ペクトルなどの諸量を記録する。圧縮状態物質の密 度,圧力,温度などの熱力学的な量は流体力学的な 束縛条件つまり衝撃波面の前後で質量,運動量,お よびエネルギーが保存されることに基づいて算出さ れる。この密度―圧力関係から圧縮曲線を決定でき その物質の体積弾性率や,相転移の有無,高圧相の 密度などに関する情報が得られる。更に衝撃圧縮状 態を時間分解して観察するためにはレーザー干渉計 をつかって5 n秒程度の時間分解ができる。(3 )今後の展開衝撃圧縮は固体の弾性限界をはるかに超えたその 強度以上の強い応力を物質に与えることの出来る唯 一の方法であり,極限超高圧下での物質の研究には 不可欠な技術である。また強力応力場としてばかり でなく ,衝撃圧縮に伴う超高温場としても超高温度そ のものだけでなくその時間的変化の急峻な立上がり や急速な急冷速度(～109K/s)などは,物質科学に とって今後更に開拓され利用される技術になり得る。そのためには,強力衝撃波の発生技術から考えて 行く必要がある。そのようなエネルギー源としては, レーザー光や電子ビームなどの利用法が最近技術開 発されつつあり,1～10TPaを超える圧力も発生可 能になりつつある。圧力発生領域はせいぜい直径数 100μm程度の極微小である。計測技術の開発ととも にこの方面の研究は今後活発になるものと考えられ る。その結果,衝撃圧縮下での物質挙動や化学反応 は高時間分解,高空間分解でその場観察され超高圧 力下での状態が手にとるように明らかになることが 期待されよう。また,未知物質探索や高密度相,準 安定相などの物質合成を試行する極限環境を提供し 続けるであろう。一段式火薬銃全体図二段式軽ガス銃全体図2―1 超高圧発生技術(その3)―ダイヤモンドアンビルセル―超高圧力ステーション 主任研究官竹村謙一(1)はじめにダイヤモンドアンビルセル(またはダイヤモンド セル)は,数ある高圧発生装置のなかでも現在最高 の静的圧力を発生できるすぐれた装置である(注1)。圧 力の上限は500GPaに達しており,他の高圧装置の追 従を許さない。「アンビル」とはもともと熱した鉄を 打って鍛えるための「かなとこ」を意味したが,そ の形が似ていることから高圧装置の中の加圧部分を 指す言葉として広く使われている。ダイヤモンドア ンビルセルはアンビルに単結晶ダイヤモンドを使っ た高圧装置のことを言う。図1にダイヤモンドセル の圧力発生原理を示す。原理は単純で,2個のダイ ヤモンド(ふつうは宝石用天然ダイヤモンド)を向 かい合わせ,その間に試料をはさんで力を加える。 ダイヤモンドは,現在知られている中でもっとも硬 い物質なので,これをアンビルとして使うことによ り最高の圧力が発生できるわけである。標準的なダ イヤモンドの大きさは,外径4 mm,高さ2 mm, 先端面の直径0.3-0.8mm程度(約0.25カラット)で ある。ダイヤモンドセルの大きさも外形50mm程度 であり,高圧装置としては一番小さな部類に属する。 このため,圧力発生のために必要な荷重は数100kg程 度で済み,ネジやレバーなどの機械的な機構で十分 まかなえる。ダイヤモンドアンビルの先端部分(ア ンビル面)の面積は底面積にくらべて約1/100なので 少ない荷重で先端面に高い圧力を発生できる。(注1)「ダイヤモンドアンビルセル」のことを「ダイヤモン ドアンビル」と呼ぶ人がいるが,これはまちがいである。ダ イヤモンドアンビルはタングステンカーバイドアンビルなど と同じくアンビル部分を指す名称であって,高圧装置の名前 ではない。(2)現在の成果図2に無機材研で使用しているダイヤモンドセル の概略図を示す。この場合,ダイヤモンドへの荷重 はネジ(グランドナット)によって加えられる。初図1 ダイヤモンドアンビルセルの高圧発生原理 図2 ダイヤモンドアンビルセル期のダイヤモンドセルでは試料を直接ダイヤモンド の間にはさんで加圧したが(図1),これでは試料中 に大きな圧力勾配ができ,定量的な実験がむずかし い。現在ではダイヤモンドの間に金属板(ガスケッ ト)をはさみ,試料をその中央の穴の中に適当な圧 力伝達媒体とともに封じこめるのが一般的である(図 3)。こうすることによって試料には圧力媒体を通し て間接的に圧力が加えられ,均一で等方的な圧力が 得られる。圧力媒体にはやわらかい固体(NaClなど), 液体(アルコールなど),または気体(アルゴン,ヘ リウムなど)が使われる。では圧力はどのようにしてわかるのだろうか?圧 力は単位面積あたりの力だからダイヤモンドアンビ ルに加える力を試料室の面積で割れば求められそう に思えるが,ガスケットが支える力を正確に知るこ とはむずかしい。そこでふつうは圧力の標準となる 物質(圧力下での物性変化がすでに調べられている 物質)を試料室にいれ,その物性値を測って逆に圧 力を決める。たとえば,試料といっしょに塩化ナト リウムを入れ,X線を使って塩化ナトリウムの格子 定数を測れば,今どれくらいの圧力が試料室にかか っているかを知ることができる。同じような圧力標 準物質としてはルビーがある。ルビーはレーザー光 をあてると赤い光(螢光)を出すが,この螢光の波図3 ガスケットの使用 長は圧力とともに直線的に長波長側へ変化する。そ こで試料室に試料とともにルビーのかけらをいれ, レーザーと分光器を使ってその螢光波長を測定すれ ば,試料室の圧力が決定される。ダイヤモンドセルにはその使用目的に応じて様々 なタイプがある。原理が単純で小型だから実験者の 考えで自由なデザインに設計製作でき,しかも安上 がりである。この「安上がり」ということは実験家 にとって非常に大切な点である。失敗を気にしない でどんどん新しい試みができたことがダイヤモンド セルの発展にどれだけ寄与してきたかはかりしれな い。ダイヤモンドセルのもうひとつの利点は透明なダ イヤモンドを通して高圧下の試料が見えることであ る。他の高圧装置では不可能な高圧下での試料の光 学的測定ができる。顕微鏡による試料の形態変化の 観察,光吸収スペクトルの測定による半導体のエネ ルギーギャップの決定,同じく螢光・発光スペクト ルの測定による電子準位の決定,ラマン散乱・ブリ ルアン散乱・赤外吸収スペクトルによる結晶の格子 振動・分子内振動の情報などが得られる。さらに, X線回折実験からは高圧下の結晶構造変化を調べる ことができ,特に100GPa領域での構造研究にはダイ ヤモンドセルが欠かせない。X線回折実験による結晶構造の研究は物性研究の 基本である。物質はある圧力を境に新しい結晶構造 へ変化する。これを圧力誘起構造相転移と呼ぶ。超 高圧力下で結晶構造はどのように変化するのだろう か。そこに何か一般的法則はあるのだろうか。そう した素朴な疑問をもとに,われわれは物質の基本単 位である元素の高圧下での結晶構造を調べている。 その結果今までにわかったことは,元素の化学結合 が圧力とともに様々に変容していくこと,原子の電 子軌道が圧力下でいれかわること(電子転移),超高 圧力下ではイオン間の反発力のために密な構造をと りやすいが,場合によっては結合にあずかる電子の 軌道のいれかわりにより逆にすきまの多い構造をと ることもあること,などである。そして重要な点は, すべての元素の密度が同じ値に近付くことである。 これは超高圧力下では化学結合が共有結合から金属 結合へかわり(すなわち,すべての元素は金属にな る!),さらに金属としても似た電子状態へ移行する ことによる。いいかえれば元素間の差がなくなって しまうのである。このような変化はだいたい100GPa までに起こるが,現在私たちはさらに高い圧力で元 素は一体どうなるかを調べている。(3)今後の展開ダイヤモンドセルの一番の魅力は,その単純な機 構と圧力発生能力の高さにある。100GPaを越える圧 力が実験室で容易に得られることは驚きかもしれな い。このような超高圧力発生が可能になったのはつ い15年ほど前のことだが,しかし,真の意味で超高 圧力物理学と呼ぶにふさわしい研究は残念ながらま だなされていない。低温物理学の発展には超伝導が 大きな役割を果たしたが,これに相当するような超 高圧力固有の物理現象はまだ観測されていない。歴 史的に見れば,高圧研究者を引き付けてきた夢は水 素の金属化である。現在でも世界中の高圧研究者が ダイヤモンドセルを使って高圧下での水素のふるま いを調べており,それはとくにこの数年活発になっ ている。やがては金属水素ができるかもしれない。 しかし,はたしてそれが新しい物理学を生み出すか どうかは誰にもわからない。われわれ高圧物理学者の夢は,高圧下ではじめて あらわれる新しい現象の発見とその物理学的意味の 解明であろう。ダイヤモンドセルはその夢を実現す る可能性を秘めたすばらしい実験装置である。たと えて言うならばダイヤモンドセルは超高圧力の世界 へ飛び立てるほぼ唯一のロケットであり,若い人達 が積極的に乗り込んでその世界を探検してくれるこ とを待ち望んでいるのである。2―2 荷電粒子利用技術第1研究グループ主任研究官菱田俊一(1)はじめに荷電粒子とは電荷を持つ微視的粒子の総称であり, 電子,陽電子,イオン,分子イオン等を含んでおり, これらはそれぞれ材料創製において特徴的な役割を 担うことができる。また,イオンには,溶融塩や電 解質溶液中で陽イオン及び陰イオンとして当量で存 在するものと,真空中で孤立して存在するものの2 種がある。本項で取り上げる荷電粒子利用技術は, イオン,特に原子または原子団(分子を含む)を真 空中で電離することにより生成したものに関するも のであり,その他の粒子の利用については含まない ものであることをあらかじめ断っておく。材料合成という視点からは,イオンは電荷を持っ た原子または原子団ということができる。そのため に,イオンは電場により加速,収束が可能となり, 非常に制御されたエネルギー源及び物質源として利 用することができる。ところで,セラミックス材料の合成は,従来主に 原料酸化物同士の固相反応を利用して行なわれてき た。この手法はこれからも材料合成において重要な 地位を保ち続けるであろう。しかし,近年の科学技 術の急激な進展にともない,材料に対する要求はま すます先鋭化し,これに対応するためには,従来法 による対応のみでは,その要求に十分に対処しきれ ない面も示し始めている。一方,MBE (Molecular Beam Epitaxy), ALE (Atom Layer Epitaxy), CVD (Chemical Vapor Deposition)等の,半導体 工業で用いられているデバイス合成における技術の 発達にはめざましいものがある。これらの手法によ り半導体工業では,材料の構造制御,特性制御を行 い,高純度・高性能の材料の合成を行い,更にジョ セフソン接合素子,量子レーザー等の新しい機能も 造り出し始めている。セラミックス材料の合成において,これらの手法 を取り入れ,高純度・高性能材料の合成,構造・組 成制御による高機能あるいは新規能材料の合成を目 指すために,無機材質研究所では平成2年度から3 年計画で荷電粒子応用特殊実験装置を導入した。以 下にその概要と成果について紹介する。(2)現在の成果前記の半導体工業で開発された技術のセラミック ス合成への適用は,一部の研究機関で既に取り組み 始められていた。しかし,セラミック材料にはセラ ミックス固有の性質に起因する問題のために,十分 な成果は得られなかった。その問題としては,例え ばイオン結合性,自己補償性等がある。セラミック ス材料はイオン結合性の化学結合を示すものが多い。 このため金属結合に比べ,化学結合を形成するため に大きな活性化エネルギーが必要となる。また共有 結合に比べ,結合が方向性を持たないため,反応制 御が難しくなっている。自己補償性とは,導電性制 御のために添加されたキャリアーを,自身のなかで 相対する欠陥を創ることにより相殺(補償する)し て,元の導電形式を保持することである。シリコン は,ボロン(B)あるいはリン(P)等のキャリアー を添加することによりそれぞれn形,p形の半導体へ と導電性を制御することができるが,セラミックス においては,いわゆるn形キャリアー,p形キャリア ーを添加しても,陽イオン欠陥,あるいは陰イオン 欠陥を生成することによりキャリアーを相殺してし まい,導電性を変えることができなくなってしまう。荷電粒子応用特殊実験装置は,超高真空,イオン ビーム,非平衡を基本概念とすることにより,セラ ミックス材料の合成におけるこれらの困難を克服し, 高純度・高性能材料の合成,構造・組成制御による 高機能あるいは新規能材料の合成のための基盤的な 原理・技術を開発することを目的として開発された。 特にイオンビームは3次元空間での組成制御及びエ ネルギー付与の制御が可能であることから,荷電粒 子応用特殊実験装置における新材料創製のキーテク ノロジーとして位置付けられている。荷電粒子応用特殊実験装置の概要及びその1部を 図1に示す。荷電粒子応用特殊実験装置は1台のイ オン加速器(最大加速電圧2 MeV)を中心として, それとビームラインでつながる3つのエンドステー シ ョン(実験槽), 及び付属の処理・分析系からなる。 3つのエンドステーションのうち2つは合成用(固 相合成および気相合成)であり,1つはイオン分光 による分析用である。固相合成エンドステーションでは,高速イオンと 固体試料の衝突により発生する超高温・超高圧の極 限環境を利用した非平衡材料の合成を行う。本装置 で発生されるエネルギー領域(数MeV)のイオンは, 固体に照射された時,固体中にマイクロメーターの 深さまで入り込み,そこで急激にエネルギーを解放 する。そのためそこには超高温・超高圧の反応場が形成され,しかもその反応場は急速に冷却される。 そのため非平衡条件が達成され易くなるのである。気相合成エンドステーションでは,気相でのイオ ン・原子の反応・ミキシングを用いた合成を行う。 イオンは,その元素としての固有の物質であるだけ でなく運動エネルギー,運動量,電荷を持つ。イオ ンと他の原子との間の相互作用はこれらのパラメー ターに対する依存性を持つ ことから, 元素間の反応 の制御が広範囲に独立に行うことが可能となり,ま た電場あるいは電流量によりその反応速度も制御可 能となる。これらの特徴は,材料合成における構造・ 組成の精密制御を可能とするであろう。イオン分光による分析・評価ラインについては別 の機会に譲る。図1荷電粒子応用特殊実験装置の概要 表1荷電子応用特殊実験装置の主な特徴1.イオン加速器(a)昇圧方式 ヴァン・デ・グラーフ方式(b)ターミナル電圧 2 MV(c)加速方式 シングルエンド型(d)イオン源ペニング放電型 :気体元素オーブン型 :低融点物質スパッタ型 :高融点物質(e)イオン電流 200μA : Ar+ 2.固相合成室(a)ビーム走査範囲 φ50mm(b)中性粒子除去(c)試料温度 Liq.N2 <T< 800℃(d)真空度 10-5pa 3 .気相合成室(a)分子ビーム源 K-Cell;3、E-Gun: 2(b)ラジカル源(c)ビーム測定 EA-Qmass(d)真空度 10-8pa4.イオン分光室(a)RBSイオン検出器(b)電子分光器(c)6軸ゴニオステージ(d)真空度 10-8Pa5.真空搬送系(a)表面清浄化機構(b)試料劈開機構(c)試料搬送機構(d)真空度 10-8Pa6 .試料前処理・評価(a)MBE蒸着(b) XPS(c) RHEED荷電粒子応用特殊実験装置の主な特徴を表1に示す。現在までに荷電粒子応用特殊実験装置を用いて得 られた主な成果としては,バルク内にショットキー バリアを持つ酸化物単結晶の創製, イオンビーム誘 起固相ヘテロエピタキシャル成長金属薄膜の作製等 が挙げられるが,詳細については論文を参照された い。(3)今後の展開2 MeVレベルのイオンビームと原子・分子・固体 との相互作用の原点は,2体衝突における核的阻止 能と電子的阻止能である。核的阻止能により付与さ れたエネルギーは,原子の散乱によるミキシング, 格子欠陥の生成等の材料の微視的構造の変化を誘起 することが可能である。電子的阻止能により付与さ れたエネルギーは,原子の電子状態を励起し,材料 の特性変化を誘起することが可能である。しかし, その過程は材料合成の立場からは多体問題としての 取扱いが必要である。これらエネルギー移動の過程 とそれが材料の物理的及び化学的構造に及ぼす効果 を明らかにし,またこれらの寄与を利用した新物質 の創製,新機能の開発を,今後の研究展開の指針と していくことになろう。2―3 単結晶合成技術(その1)―誘導加熱式フローティングゾーン法―第12研究グループ主任研究官大谷茂樹(1)はじめに高周波誘導加熱フローティングゾーン(FZ)法 は,鉛直に保持した円柱状試料の一部を加熱溶融し, 形成した溶融帯を試料の下端から上端に移動するこ とにより単結晶を育成する方法である(図1)。融液 をるつぼなしで保持することから,高融点をもつ単 結晶の育成に最適な手法である。一般に,2千数百 から4000℃近い融点をもつ,直径1cm程度の結晶を 育成している(図2)。しかしながら,この手法によ り得られる結晶は,亜粒界(数度以下の結晶方位の ずれ)などの欠陥を含むので,測定などに用いる場図1結晶育成炉図 2 As-grown LaB6単結晶(マーク1 cm)合には良質部分を選ぶ必要があった。これら欠陥を なくすことは,この分野における最大の課題であっ た。(2)現在の成果従来,高融点結晶の育成では育成の困難さもあり, 過酷な条件下での育成に関する解析が不十分な現状 にあった。ここ数年来,以下に記す良質結晶を育成 する手法が見いだされ結晶性を決める機構が明らか になったことで,高融点単結晶の育成が議論できる 新しい段階へ入ってきている。(イ)固溶体硬化による良質化従来,不純物添加により転位(線状欠陥)が除去 されることは,GaAsなど化合物半導体結晶において 知られていたが,より大きな欠陥である亜粒界(面 状欠陥)をも除去する効果のあることがはじめて明 らかになった。電子顕微鏡などに使用される熱電子放射陰極材で あるLaB6やCeB6結晶はFZ法により育成されるが, 亜粒界を含まない良質部分を選び熱陰極が作製され ている。最近,LaB6-CeB6系固溶体の結晶育成にお いて亜粒界を含まない良質単結晶が得られた。これ は,LaB6にCeB6が固溶することで結晶の機械的強度 が高くなり(固溶体硬化),成長後の結晶性の低下が 抑制されたためである。この現象はTiCなどの高融 点結晶育成においても観測されている。今後,結晶 の使用目的に応じ添加物を選ぶことで,広く用いら れる手法と思われる。(ロ)溶媒移動FZ法による良質化従来,LaB6のように一致溶融する結晶では,その 組成の融液(図3●)より単結晶を育成していた。 亜粒界を含まない良質なLaB6単結晶が,一致溶融す る組成と異なる組成(図3 ○)をもつ融液からの育 成(溶媒移動FZ法)により得られた(図4)。育成 温度が僅か数% (200℃)下がることによる結晶の良 質化は,結晶育成において初めての発見である。そ の後,WB2などの結晶育成にもこの育成手法が適用 され,良質な結晶が得られている。将来,広く試み られる育成手法である。(ハ)高速化による良質化高速での結晶育成は,育成時間が短く魅力ある手 法であるが,様々な障害を引き起こす。特に,融液 が固化し結晶化する際にトラブルをひきおこす。し かしながら,32 2 5℃の融点をもつTiB2の結晶育成で図3 LaB6の相図●―従来法における融帯組成 ○―溶媒移動FZ法にお ける融帯組成は9 cm/hの高速での育成が可能で,亜粒界を含まな い単結晶が得られた。これは,高温なため融液中の 原子の拡散が激しく融液が均一化することで,高速 での育成が可能になったものと思われる。このほか, ZrB2, WB2などの結晶育成でも高速化によって良質図4 LaB6結晶(100)面のエッチングパター化する現象が観察されている。(3)今後の展開このように,良質結晶の育成手法が見いだされた ことで,高融点結晶の結晶性が成長後の冷却過程に おいて決まることが明らかになった。今後,それら 良質化手法の組み合わせによりさらに良質な結晶の 育成が可能になるものと思われる。2―3 単結晶合成技術(その2)―集光式フローティングゾーン法―第13研究グループ主任研究官竹川俊二(1)はじめに本方法は,回転楕円体のミラーを用いて赤外線を 集光し,物質を溶かして,単結晶を育成する方法で ある。図1のように,上シャフトに原料棒を,下シ ャフトに種結晶をセットし,原料棒の下端が回転楕 円面鏡の一方の焦点位置に来るようにする。他の焦 点にはハロゲンランプが設置されているので,ハロ ゲンランプから放射した赤外線は原料棒下端に集光 され,原料棒下端は加熱・溶融される。溶融部を種 結晶に接合し,メルトゾーンを形成する。その後, 上シャフトと下シャフトをゆっくり下に移動すると(0.5～10mm/h),種結晶上に結晶が析出し,単結晶 を育成することが出来る。試料室は透明石英管で外 部と遮��断されているので,結晶育成雰囲気は自由に 設定でき,炭酸ガス・一酸化炭素ガスの混合による 酸素分圧を制御した育成実験などが容易に行えるよ うになっている。光源としては,ハロゲンランプ, キセノンランプが用いられている。ハロゲンランプ は出力安定性が良く,使い易いため,2000℃前後ま図1赤外線集光型フローティングゾーン炉 での融点を持つ化合物の単結晶の育成に利用されて いる。キセノンランプは,融点が3000℃位までの化 合物の単結晶の育成に利用されるが,出力安定性は ハロゲンランプ程良くない。また,アークランプな ので低出力ではアークが不安定になり,出力を制御 することが出来ないので,低融点化合物の単結晶を 育成することは出来ない。図から解るように,この方法ではメルトゾーンは 原料棒と育成した結晶の間に,融体の表面張力によ り保持されているので,容器を必要としない。その ため,容器からの汚染を避けることが出来るので高 純度な単結晶を育成することが出来る。このことは, 育成する物質の融点が高いとき,あるいは融体の反 応性が高いときには大きな利点となる。融体がそれ 自身の表面張力により保持されていることは欠点と もなり,融体の表面張力が小さく比重の大きい物質 や,直径が10mm以上の結晶の育成は困難になると いう欠点がある。この方法では,分解溶融化合物の単結晶を比較的 容易に育成できる。物質が融けるとき,その物質全 体が一度に融けて,その物質の組成と同じ組成の融 体になれば一致溶融するといい,物質が組成の異な る物質と組成の異なる液体とに分離して,さらに高 温で全体が溶融し,出発物質と同じ組成の融体にな れば,分解溶融するという。分解溶融化合物の単結 晶育成は,一般に困難を伴うが,本方法では比較的 容易に単結晶を育成することが出来る。酸化物高温 超伝導体である銅酸化物は殆どが分解溶融化合物で あり,本方法が銅酸化物超伝導体の単結晶育成に絶 大なる威力を発揮したことはみなさんご存じの通り である。この方法ではそれほど多くの試料を必要とせず, 物質の比重にもよるが10g程度の,少量の試薬で単結 晶を育成することが出来る。高純度の試薬はかなり 高価のものが多いので,このこともかなり大きなメ リットである。この方法では加熱源として赤外線を使用している ので,それを吸収しにくい化合物の単結晶の育成は 困難なことが多いが,吸収しやすい化合物の場合に は,約300Wで1000℃ぐらいの融点を持つ化合物の単 結晶を育成することが出来る非常に効率の良い方法 である。(2)現在の成果現在,Bi2Sr2CaCu2O8, La2-xSrxCuO4, Nd2-xCex CuO4等の単結晶を育成している。これらの化合物は 何れも分解溶融する化合物であり,他の方法で均一 な組成の単結晶を育成するのは困難な化合物である。Bi2Sr2CaCu2O8は86Kに超伝導転移温度をもつ, 銅酸化物超伝導体である。この結晶の場合,育成可 能な組成が不明であったので,組成を変えた数種類 の原料棒を作成し,数回の予備実験を行い,得られ た結晶を組成分析し,育成可能な組成を決定してか ら単結晶育成を開始した。分析値はBi2.2Sr1.8CaCu2 O8であり,報告値と多少異なっていた。原料の焼結 条件は育成速度に非常に大きな影響を与えた。この 結晶は,a-b面内の方向では比較的早く成長するが, c軸方向には殆ど成長しない。そのため,c軸方向に 厚みのある結晶を得るためには,結晶の育成速度を 遅くする必要がある。しかし,一般には,育成速度 を遅くすると,メルトゾーンの融体が原料棒側に移 動し,原料棒と反応し,原料棒の融体とのインター フェース部分の直径が大きく なり, 析出量と溶解量 がバランスしなくなり,メルトゾーンの体積と組成 が変化し,結晶育成が困難になることが多い。した がって,最も遅い育成速度は原料棒の焼結条件に影 響される。したがって,単純に育成速度を遅くした としても,単結晶が育成出来るとは限らない。Bi2.2Sr1.8CaCu2O8では,各試薬を必要量混合し, 860℃で完全に反応させてBi2.2Sr1.8CaCu2O8を合成 し,それを成形して,870℃酸素中で12時間焼結して 原料棒にした。上下シャフトとは30rpmで反対方向 に回転して,1mm/hで育成した。育成雰囲気とし て酸素を0.6l/minで流した。育成の初期には(Sr1.5 Ca1.2Bi0.3)Cu5O8が析出し,その後 Bi2.2Br1.8CaCu2O8 が成長していた。インクルージョンとしては(Sr1.5Ca1.2 Bi0.3)Cu5O8と,Bi2(Sr,Ca,Bi)2CuO6があり,前者は 結晶の周辺部に析出し,後者は層間に析出していた。 育成した結晶中のグレインのc軸と育成方向は直交 していた。また,育成した結晶は多くのグレインか ら構成されており,その中から単結晶をピックアッ プして物性測定の試料とした。育成した結晶のサブ セルの格子定数a, b, cはそれぞれ,0.543, 0.543, 3.063nmであった。また,超伝導転移温度は92Kで あり,報告された値(86K)より高かった。このように して得られたブールを図2に,そのブールより取り出した単結晶を図3に示す。(3)今後の展開集光式FZ法を用いた単結晶育成に関する研究の 方向としては,現在の装置の温度分布,原料調整方 法を改良することにより,育成物質の範囲を拡大し ていく従来の方向と,装置に積極的な改造を施し, 従来育成対象にならなかった物質にまで対象範囲を 広げる方向とが考えられる。後者の方向としては, 高圧力タイプのFZ炉の開発が考えられる。例えば, 1000Kg/cm2の圧力で単結晶育成が出来る装置が開 発されたとすると,超伝導体ではBa (Bi, Pb) O3, Y2 Ba4Cu8O12などが育成可能になると共に,高温でイオ ンの価数が減少したり,原子の蒸発のために育成が 困難であった,非常に多くの化合物の単結晶も育成 可能になる。単結晶育成技術は基盤技術であるので, このことは多くの研究分野へ大きな影響を与えるこ とになると思われる。図2育成したままのBi2.2Sr1.8CaCu2O8結晶図3育成結晶から取り出したBi2.2Sr1.8CaCu2O8単結晶2―3 単結晶合成技術(その3)―チョクラルスキ法―第6研究グループ主任研究官宮沢靖人(1)はじめにチョクラルスキ法は,1910年代にチョクラルスキ によって試みられた歴史の古い単結晶育成法である が,1950年代になりこの方法を用いて,ゲルマニウ ムの無転位単結晶が育成されるようになってから, 見直されるようになり,酸化物などでも良質結晶を 得る方法として広く用いられれるようになってきた。 このチョクラルスキ法は「引き上げ法」とも呼ばれ, るつぼ中に育成しようとする結晶と同じ成分,組成 の原料を入れて溶融して十分時間をおき,融液が安 定してから種結晶をこの融液に浸し種を十分馴染ま せてから,種結晶を回転しながらゆっくりと引き上 げていき単結晶を得る方法である。以後,このチョ クラルスキ法のことをCZ法と略す。このCZ法では, 基本的に融液の組成と引き上がる結晶の組成が同じ である(コングルエント組成)のが望ましい。この ような物質をコングルエント溶融する物質という。 コングルエント溶融する物質に対して,CZ法は極め て効果的で歪みの少ない良質の結晶を育成できる可 能性を持つ。筆者は,無機材研に入所以来20数年間このCZ法に よる酸化物単結晶の育成研究にのみ従事してきたの で,以下これについて紹介させていただく。(2)現在の成果長く結晶育成研究に従事してきたわりには得られ た成果というものは,ほとんど無きに等しくお恥ず かしい限りである。一つの結晶に取り組んで2 - 3年 かけてやっとどうにか満足のいく結晶ができるとい うのが典型的なパターンであった。いったん結晶が できてしまうとそれで満足してしまって,結晶は自 分の手を離れて後はどうなったか知らない。という ような状況がよくあった。これでは成果が出るはず がない。今から考えると,もう少しよいやり方があ ったと思うがもう遅きに失したである。前置きはこ のくらいにして,どんな仕事をしてきたか簡単に列 挙しよう。結晶引き上げ装置を導入するにあったって考慮し たことは,当時,光学用途を目的とした酸化物単結 晶探索研究は下火になりつつあり,学会発表も次第 に行われなくなってきた。この時期には,実用性の ある結晶のみが結晶育成メーカーで生産供給される ようになってきていたのである。そこで,後発であ る我々が研究を始めるにあったっては,これら先に 育成技術を確立してしまったところと同じことを後 から追いかけても仕方がないという大前提に立って スタートすることにした。当時は,まだ結晶作りは サイエンスではなくアートであるとよく言われてい た。従って,育成の自動制御などはやっと試みられ 始めたところで,完成した商品などはまだ無い頃だ った。我々は最初から再現性のよい結晶作りと,デ ータの取得をめざしていたので,当時まだとてつも なく高価であったミニコンピュータを導入して,直 径制御の自動化をはかることにした。結局紆余曲折 はあったが,上部にロードセルをとりつけて結晶重 量を測定することによって結晶径を制御する結晶重 量法によるADC (直径自動制御法)システムがある 程度の完成をみた。その後幾多の改造を経て基本的 には同じものを現在も使用している。この装置を用いて今まで何種類かの単結晶を育成 してきたので以下にその名前だけを列挙してみる。 まず,希上類ガーネット系では,YAG,GSAG,GLGG, LLGG, GSGG, NdGG, GGG, SmGG, DyAG な どがある。また希上類ペロブスカイト系では,NdAlO3, YAlO3, TbAlO3, DyAlO3, LaAlO3, LaGaO3, NdGaO3が挙げられる。そのほかにLiNbO3, LiTaO3, Al2O3, Bi2Ge3O9,等があり,更にこれらの単結晶に 各種の不純物を添加した物も育成した。以上がこれ まで育成してきた結晶の概要であるが,これらのほ とんどの酸化物単結晶は,透明でもろい物質で,ク ラックが入りやすい物である。クラックや気泡��が入 らずかつほかの欠陥も少ない高品質の結晶が要求さ れる場合が多いのであるが,こうした要求に答えら れるような育成技術の追求も重要である。CZ法は, 融液成長の一種であるので,融液中の対流は育成結 晶の品質に直接的な影響を及ぼす。そこで融液中の 対流と結晶品質に及ぼす影響などをガーネット系の 物質を対象として調べてきたが,現在も続行中であ る。結晶育成中の雰囲気も融液中の対流に大きな影 響を与えることがわかり,これが結晶の品質に影響 を及ぼす場合があることもわかってきた。一般には, 育成雰囲気を還元性にすると流れは激しくなる。こ の原因は,表面張力の勾配による流れ,いわゆるマ ランゴニ対流が激しくなるものと考えている。この 現象を利用することにより,不純物を添加した酸化 物単結晶の育成で,セル成長を抑えることができる 場合がある。例えば,Al2O3にTiを添加した場合に通常の不活性雰囲気では気泡��が入りやすかったのが, 水素を添加することにより気泡��の混入が抑えられた。 また,還元雰囲気で育成することにより,欠陥がす くなくなったり透明度がよくなる場合もある。例え ばTbAlO3の場合がそうで,還元雰囲気で育成した場 合には無色透明の結晶が得られるが,不活性雰囲気 の場合は茶褐色に着色した結晶が得られた。これは おそらく,不活性雰囲気ではTbが一部4価で結晶中 に入るためであろう。さて,4, 5年前から,新しい試みとして,酸化 物融液に磁場を印加したらどうなるかに興味を抱き, 磁場印加型CZ装置の導入を図った。Siや化合物半 導体では,磁場を印加して結晶育成をおこなうこと は,かなり一般的に使用されている技術であるが, 酸化物では今まで試みられたことはなかった。これ は,半導体のように比抵抗値の低い融液では,磁場 を印加することにより,融液の実効的な粘性が増加 し,対流が抑制されて融液中の温度変動が抑えられ る現象を利用したものである。酸化物では融液中の 抵抗は半導体のそれに比べてはるかに大きいので対 流の抑制効果があるかどうかは疑問であった。通常 Siでは,約1,000ガウスで流れの抑制効果が現れはじ めるので,酸化物でも磁場強度をもっと大きくすれ ばあるいは抑制効果が現れるかもしれないと考えた。 そこで予算が許す限りでできるだけ磁場強度の大き い装置にすることにした。いずれにしても酸化物融 液に磁場を印加して流れが変化するかどうか調べた 報告はないので試す価値はあると判断した。有余曲 折はあったが,一応装置は完成した。最初にこの装 置を用いて酸化物融液中の対流を調べた。LiNbO3の 融液を用いた。理由は比較的ポピュラーで有用な物 質で融点もあまり高くなく実験を行うのに好都合で あったためである。最初に垂直磁場印加の実験を行 った。磁場0から徐々に強くしてゆき流れのパター ンをるつぼの上方においた CCDカメラで観察した。 0のときは,通常の自然対流によるスポークパター ン が観察された。5,000ガウス程度迄は流れに変化は 見られなかった。8,000ガウスあたりから,るつぼ中 央を中心とする渦流に変化しはじめ,20,000ガウス 迄上げていくと,回転速度も徐々に上昇してゆき, 流れの抑制効果はまったく観測されないという予想 外の結果になった。更に磁場の方向を反転させた場 合は渦の回転する方向も逆になることが判明した。 水平磁場を印加した実験では,やや複雑な流れが観 測されたが,8,000ガウスまで印加しても流れは激し くなる一方で抑止効果はまったく観測されなかった。 つぎにTiO2の融液で同様の実験を行った。雰囲気は 窒素100%で,るつぼはイリジウムである。この場合, 磁場を印加せず自然対流だけの場合は,網目状の中 心に流れこむ激しい流れが観測された。最初に垂直 磁場を0から20,000ガウス迄,ゆっくりと増大させ ていった。約200ガウスから,るつぼ中央を中心とす る渦流が発生し,回転速度が磁場につれて増大して ゆき抑制効果はまったく観測されなかった。回転速 度もLiNbO3の場合の数倍に達している。しかもこの ように小さな磁場で流れが変化するとはまったく予 想できなかったことである。水平磁場でも200ガウス 程度で流れに変化が始まり,流速が増大していった。 この現象をCZ法に利用できないかと考えた。TiO2 単結晶は,従来CZ法では育成が困難とされており, 長さ数mmのものしか得られていない。これは,結 晶の固液界面形状が凹状になりやすく,しかも水平 方向の温度勾配が小さいため結晶が横に広がりやす く ,ねじれて成長しやすいため,長さ方向に成長し ないためである。そのため結晶径の制御が困難とな る。もし固液界面形状を凸に保てれば長い結晶を得 ることが可能かもしれない。垂直磁場を印加して渦 流を発生させて,その回転と逆方向に種結晶を回転 させれば固液界面形状を凸に保てる。そのようにし てTiO2の単結晶を育成を試みた。しかし,覗き窓が るつぼのほとんど真上に近いのと耐火物に覆われて いるため結晶が成長しはじめると径の変化をモニタ ーできなくなる。装置に付属のロードセルは感度が 悪いのと温度係数が大きいため結晶径のモニターに 使用できない。結局長い結晶は得られず,約2 cmの 結晶が育成できた。固液界面形状は凸状に保てた。 もし上記の問題が解決でき,直径自動制御(ADC) 法が採用できれば長尺の結晶が育成可能かもしれな い。(3)今後の展開酸化物融液に磁場を印加した効果は,予想外の結 果を招いたのであるが,まだよくわからない部分も 多いので,もっと詳しく調べていく価値があると考 える。またこの攪袢効果は直接融液に触れなくてす むので,ブリッジマン法や,FZ法更にはガラス等の 攪袢にも用いられるかもしれない。またTiO2やSrTiO3 のような直径制御の困難な結晶が育成できるように なれば,CZ法の適用範囲も広がり,新しい展望が開 けるのではないか。2―3 単結晶合成技術(その4) ―化学輸送法―第2研究グループ主任研究官佐伯昌宣(1)はじめに化学輸送法は,物質の分離,精製にも有用である が,簡便な結晶育成手段として用いられてきた。例 えば,二硫化チタンの結晶を育成する場合,出発物 粉末(TiS2)と微量の輸送剤(例えば沃素)を石英 ガラス管に真空封入する。この管を温度差のある横 型炉の中に置くと,出発物は管の他端に輸送され, 結晶として析出する。輸送は出発物と輸送剤の反応 の平衡定数が温度により異なることに起因する。例 えば,TiS2を沃素で輸送する場合,高温側にTiS2粉 末を置くと,(1)式の反応が起こる。高温側で発生する各分子種(I2,TiI4, S2)のガス分 圧は,その温度の平衡定数により決まる。この混合 ガスが低温側へ流れて行くと,平衡定数が異なるの で,各分子種の分圧は変化しなければならない。(1) 式は吸熱反応であるので,TiI4とS2の分圧は高温側 で高く,低温側で低い。一方,I2の分圧は逆である。 そのため,高温側で発生したTiI4とS2は低温側へ移 動して,逆反応を起こして,TiS2(s)とI2(g)を生成 する。このとき,TiS2は結晶として,析出する。こ のように,TiS2はI2により,あたかも高温側から低 温側へ運ばれているように見える。もし,(1)式が発 熱反応であれば,低温側に粉末を置けば高温側に結 晶が析出する。(2)現在の成果この方法による結晶育成の過程では不明な点が多 い。その一つは,得られた結晶の化学組成は,出発 物として用いた粉末の組成と異なる場合が多いこと である。例えば,TiS2相は,TiS1.81-TiS2.00の組成範 囲で存在する不定比化合物である。この化合物を 950℃から850℃へ化学輸送すると,結晶は出発物よ りも常に硫黄過剰組成になる。表1と表2に示すよ うに,(a):同じ組成の出発物を用いても温度差が大 きいと得られた結晶は,より硫黄過剰組成になる。 また,表3に示すように,(b):出発物としてTi5S8 相を用いると結晶はTiS2相になる。このように,極端な場合には出発物とは異なった 化合物が結晶として析出する。得られる結晶の組成は,出発物の組成,温度差に依存し,輸送剤の量に は依存しない。表1出発物組成 TiS1.84(TiS2 相)結晶組成 TiS1.91 (TiS2 相)輸送温度 950℃-850℃表2出発物組成 TiS1.84(TiS2 相)結晶組成 TiS1.95(TiS2 相)輸送温度 950℃-750℃表3出発物組成 TiS1.71(Ti5S8 相)結晶組成 TiS1.84(TiS2 相)輸送温度 950℃-850℃結晶の組成を支配する要因として考えられること は,出発物として用いた硫化物の硫黄活量である。 最初,(1)式の反応により,硫黄が発生する。この硫 黄圧が出発物硫化物の硫黄活量より高ければ,余分 の硫黄は出発物により吸収される。一方,低ければ, 出発物から硫黄が放出される。いずれにしても,管 内の硫黄圧は,出発物硫化物の硫黄活量に等しくな るように調節される。このような状況下で析出する 結晶は,周囲の硫黄圧に等しい硫黄活量を持つ硫化 物の組成となる。出発物が置かれた場所と結晶が析 出する場所は,同じ硫黄圧であるが温度が異なるの で,出発物と結晶の組成も当然異なる。図はTiS2相 の組成と硫黄活量の関係である。この図を用いて結 晶の組成を予知することができる。図に点線で示す ように,TiS1.84を出発物にすれば,950℃では管内の 硫黄圧は133mmHgとなり,850℃で同じ硫黄圧で析硫黄圧と組成の関係 出する結晶の組成は,TiS1.91になる.この方法により, 上記の問題点(a)と(b)も図から説明できる。このよ うにして,出発物の組成,輸送の温度差,硫化物の 硫黄活量などのデータがあれば,TiS2相の結晶の組 成を予知できる。(3)今後の展開化学輸送法は,簡便な結晶育成法である。特に, 空気中で加熱できない化合物,高温で分解する化合 物などにとって有用である。しかし,当然のことな がら欠点もある。例えば,平衡定数の温度依存が小 さければ輸送されない。これらの欠点を補うために, 新しい原理による育成法の考案が待たれる。例えば, 次の方法等が考えられる。TiSe2の結晶を育成する時, TiSe2錠剤と微量の塩素を石英ガラス管に真空封入 し,一様な温度の縦型炉に入れ,TiSe2の焼結体を管 の上部に置くと次の反応が起こり,平衡に達する。この系が重力場に置かれていれば,重いTiCl4とSe2 は沈降し,軽いCl2は上部に浮く.上部ではCl2が平 衡よりも過剰になり,反応は右に進みTiSe2が消費さ れる。一方,下方ではTiCl4とSe2が過剰になり,反 応は左に進みTiSe2が析出する。このような原理に基 ついて,上部に置かれたTiSe2の錠剤は下部に結晶と して析出する。化学輸送法とは異なって,平衡定数 の温度依存性は無関係である。2―4 ガラス化技術第9研究グループ主任研究官井上 悟(1)はじめにフッ化物,塩化物などのハロゲン化物を原料とし て作られる高純度ハロゲン化物ガラスは,紫外光か ら赤外光に至る広範囲の光を透過する優れた光透過 材料であり,かつ,希土類元素を比較的多量に含有 し得る。したがって,超低損失光通信ファイバーの 母材や,希土類イオンの発光を利用した赤外光から 可視光への波長変換材料(アップコンバージョン), レーザー発振材料などへの応用が期待されている。 本研究では,こうした希土類含有ハロゲン化物ガラ スを用いた新機能材料創製にむけての基礎研究とし て,非酸化物ガラスの合成条件(組成,酸素や水な どの不純物の効果)を検討するとともに,得られた ガラスについての光物性の予備調査として,光吸収, 屈折率などの光物性を測定し新規光機能材料に適し たガラス系を得ることを目的として研究を進めてき た。また,これらの合成条件に関する研究結果をも とに高純度希土類含有ハロゲン化物ガラスを作製し その螢光発光特性を評価するとともに,ガラス中で の希土類イオンの配位状態,ガラス中の構造欠陥の 検出ならびに解析を行い,発光特性とガラス組成と の関係を把握してアップコンバージョン波長変換材 料に最適のガラス組成を探索し,新規光機能材料へ の応用性,適合性について検討することを目的とし て研究を進めている。一方,近年機能材料開発に対する期待が日増しに 高まってきており,ガラス材料においても,ガラス の特長を活かした新機能材料創製の研究が進められ つつある。ところで,ガラス材料の大部分は結晶質 材料と同種の機能を持つ場合でも,その機能は結晶 質材料より劣っていることが多い。この一つの理由 は,ガラスが等方的な性質しか発現できないために 効率の良い機能の発現ができないことである。した がって,ガラス材料において新規の優れた機能を発 現する一つの方策として,目的の機能を発現し得る, あるいは,機能を発現し易くするための規則構造を ガラス中に導入する方法が考えられる。こうしたガ ラス材料はいままでに2 , 3の例が見られるものの, 研究が始められたばかりであり,いまだ未開発の領 域が多く次世代のガラス材料として期待される。2 成分系ケイ酸塩あるいは2成分系ホウ酸塩のガラス 系の一部には,液相状態において2液相に分離する (分相)現象を示すものがある。また,分相の進行 度合いに応じて,この液滴の大きさはナノメータオ ーダーからミクロンオーダーまでの広範囲に変化す るため,種々の一様な大きさの液滴が分散した状態 が発生し得ると考えられる。したがって,これら分 相融液を素早く圧縮または引っ張ることにより,こ れら液滴が周囲の相につぶされ偏平に二次元に配向 し,このまま冷却凍結することにより偏平配向粒子 を含有する新ガラスが得られると期待される。こう したガラス材料はいまだ得られておらず,また,配 向粒子を含有していることにより,光波長変換や高 速光スイッチなど光コンピューターや光情報処理の 分野で使用されるであろう2次および3次非線形光 学機能材料が得られると期待される。液相温度以上 で相分離を示すガラス系のうち,ホウ酸塩系分相ガ ラスは,高くても1,200℃程度の温度で合成が可能で あるが,ケイ酸塩系分相ガラスの合成には2,000℃程 度の高温が必要となる。新規の機能を有するバルクガラスの作製技術とし て,ゾルーゲル法や気相合成のみならず,非酸化物 ガラス系の容器溶融,あるいは,高温での容器溶融 技術も必要である。(2)現在の成果非酸化物ガラスの溶融合成には酸素を遮��断するた めグローブボックスを使用している。雰囲気は乾燥 窒素であり,溶融容器には金,白金などの貴金属ル ツボおよび黒鉛ルツボを使用する。効率よく赤外光 から可視光への波長変換材料としてEr,Yb添加高純 度ハロゲン化物ガラスが得られている。図―1に一図―1Er、Yb含有フッ化物ガラスのアップコンバー ジョン螢光発光(半導体レーザー赤外光(800nm)が緑色可視光に波長 変換されている)図―2高温ガラス溶融・急冷装置模式図例として,半導体レーザの近赤外光が緑色可視光に 変換されている様子を示した。図―2にケイ酸塩系融液の分相研究に用いている 高温ガラス溶融・急冷装置の模式図を示した。容器 には,モリブデン金属箔(厚み50μm)より作製した 1.75h×1.5w×1.5d(cm)の大きさの容器を使用して いる。温度の測定には,室温から1,800℃までをタン グステンレニウム熱電対を,そして,1,800℃～2,300℃ (最高)では2色放射温度計を使用している。急冷室で急冷中のモリブデン金属製容器およびタ ングステン金属製の試料台の温度の時間変化を測定 したところ,約4秒の内に試料台,容器共に約400℃ 温度が下降しており,急冷直後の冷却速度が約100℃/ 秒であることがわかった。試料台上での放冷でも数 秒で数百度冷却が見込まれ,シリカが主成分である ことを考え合わせると,数秒内に融液粘度が2桁以 上増加,換言すればStokes-Einsteinの関係式から見 積もって,数秒以内に拡散係数が100分の1以下に低 下すると考えられる。したがって,試料台上での放 冷でも,分相状態の凍結が可能であると判断された。図―3に,作製した分相ガラスの例として,5 SrO -95SiO2(wt %)分相ガラスの実体顕微鏡写真を示し図―3 5SrO ・ 95SiO2 (Wt %)出発組成の分相ガラス の実体顕微鏡写真(透過光モード)た。輪郭のあまりはっきりしない暗い部分が島状に 分布している。これらの部分は,輪郭が明確でない ところから1個の独立した粒子ではなく分相粒が多 数析出集合した部分で,強い弾性散乱により光の透 過が妨げられ暗く見えていると考えられる。また, これらの部分は球状の集合体ではなく,ある特定の 方向に伸びた形をしている。非常にユニークな構造を有するガラスであることがわかる。いまだこうし た構造の分相ガラスは得られておらず,発生メカニ ズムについて現在研究中である。(3)今後の展開分相を利用した新ガラスの合成に関する研究では 2,000℃前後の高温で容器を用いた溶融によりガラス の合成を行う。一般に,この様な高温におけるガラ ス合成にはキセノンランプ集光型のイメージ炉によ る溶融・急冷法が利用される。しかしながら,この 方法では溶融時の温度が確定できないこと,また, 液滴として落下する融液を急冷するため,ガラスは フレーク状のものや,場合によっては細かい鱗片状 になってしまう。本研究で行っているガラス合成で は金属箔容器を利用した容器で原料を溶融すること で,溶融温度の測定が可能であるとともに,2,000℃ の高温から数秒で室温環境に曝すことでかなりの急 冷(約600℃/分)ができ,しかもバルク状の試料が 得られる。このような高温でのガラス合成は,石英 ガラスの合成を除けば,種々の制約からいままでほ とんど行われていない。したがって,現在は分相ガ ラスの合成の手段として使用しているが,将来は ZrO2, Al2O3,希土類酸化物などの高融点成分を多量 に含有するあらたなガラス化組成の探索が期待され る。また,分相は比重の異なる微粒子が一様なマト リックスに析出する現象であるため,その分散組織 は重力の影響を受ける。微小重力環境下では,地上 よりさらに均一かつ球状に近い粒子が析出すると期 待される。現在,本研究は“分相を利用した新規ガ ラス材料の創製”を目指して宇宙環境推進センター の推進するフロンティア共同研究の1テーマとして 研究が進められているが,将来の国際宇宙ステーシ ョンのJEMにおける宇宙無重量環境実験テーマとし ても応募すべく準備を進めている。2―5 ソフト化学反応技術第8研究グループ主任研究官佐々木高義(1)はじめにセラミックスの大部分は原料粉末を混合して1000℃ 前後で焼成するという高温熱平衡論に基づく考え方 で合成されてきた。この方法によりチタン酸バリウ ムなどの誘電体やYBCOなどの超電導物質など多く の有用な材料が世に出されてきたわけであるが,基 本的に熱力学的安定物質しか得られないことや,原 子・分子レベルの制御が困難で物質設計的なセンス に乏しいなどの限界があるのも事実である。そのた め系全体を熱平衡状態まで活性化することなく (非 平衡条件下),物質合成を行おうとする新しい流れが 盛んになりつつある。ソフト化学合成とはそのよう な非平衡合成法の一つであり,無機化合物そのもの の持つ化学反応性を利用して,結晶構造の特定の部 位の組成を変えたり,骨格部分の配置や連結様式を 変化させたりすることにより新規な物質の創製を目 指す方法である。(2)現在の成果ソフト化学合成に利用される化学反応はいわゆる ホスト・ゲスト反応と総称されるものが主であり, そのため出発原料としてはこれらの反応活性のある 物質,具体的には層状構造やトンネル構造を有する 化合物が対象となることが多い。これらの反応はい ずれも出発物質のホスト骨格はそのままでその間�� の組成を変換する技術と見なすことができる。その スキームには(a)ゲストイオンの当量交換(イオン交 換),(b)ホスト骨格の酸化・還元によるゲストの出 入り(インターカレーション,デインターカレーシ ョン),(c)ゲスト有機分子をホスト骨格に共有結合 させることによる誘導体化(グラフティング)など の多様性がある。これらはいずれも主に液媒体中で 室温から高くとも300℃までの低温領域で進行させる ことができる。個々の反応に関して非常に広範な研究が行なわれ ているが,(a)では粘土鉱物などの層状物質の層間に イオン性の有機物を導入してナノレベルの無機/有機 複合体を合成するプロセスが代表例のひとつとして 挙げられるであろう。導入する有機物とホストの組 み合わせによって様々なナノ空間を作り出すことが でき,多様な機能性の賦与が実現している。(b)でも 多くの成果が挙がっている。黒鉛にSbF5をインター カ レーションする と大幅に電気伝導度が向上すると いう例のように,ホストの酸化・還元に伴って物性 の変化が生じることが多く新機能性材料合成の観点 から注目度が高い。またこのプロセスは電気化学的 に駆動させうる点が特徴である。LiCoO2からLiをデ インターカレーションして脱け殼的な高原子価化合 物(CoO2)を合成した例が有名である。この系は可 逆反応でありかつ高い起電力を引き出せることから 二次電池の正極材として実用化されている。(c)では ホスト骨格表面の―OH基などを利用して化学修飾が 行なわれている。ゲストはホスト骨格に強固に固定 されるため,外部環境の変化に対して安定であると いう利点を有する。最近は単純な有機分子だけでな く機能性分子の導入も行なわれ,分子認識性や非線 形光学応答性を示す材料が合成されている。一方ソフト化学合成のさらに発展した形として組 成を変えた後,加熱処理などと組み合わせて結晶構 造を作りかえるプロセスも盛んに研究されている。 図1にチタン酸化物系での例を示す。出発物質はイ オン交換能を有する四チタン酸カリウムK2Ti4O9で あり,合成の第1ステップで層間のKイオンの半分 をHイオンで置換し,第2ステップで加熱処理を行 う。この一連の操作でHイオンがホスト層の酸素を 奪ってH2Oとして脱離することにより,隣り合った 層同士がトポタクティックに縮合しトンネル構造に図1 変換される。水素イオンの導入量を制御することに よってトンネルと層がインターグロースした特異な 構造に導くこともできる。層状物質の層間に多核水酸化物イオンなどをイオ ン交換法により導入した後,加熱して酸化物の柱を 生成させるピラリングも組成―構造変換合成プロセ スの枠組みの中で捉えることができる。ミクロポア ～メソポア多孔体が合成できることから,触媒など への応用が検討されているが,最近はピラーの高さ およびその間隔を制御することによって多孔質度を 精密に設計しようという研究が進んでいる。その他の興味深いソフト化学合成技術として鋳型 結晶化法がある。アルキルアンモニウムや界面活性 剤のミセル集合体の周りで無機物を水熱条件下で結 晶化させるもので,加熱して有機物を取り除くと通 常では得られない細孔構造を持つ物質が得られる。 ZSMゼオライト類やMCM41(ハニカム構造のケイ 酸塩)の合成が有名である。以上の例からわかるようにソフト化学合成は常温・ 常圧またはそれに近い穏和な条件下で合成を行うこ と,逐次的に組成や構造を変換させて目的物を導く という有機化学合成に似た物質設計的な合成手法で あることなどの特徴がある。通常の高温焼成法では 得られない多くの物質(主に準安定相)の合成に成 功しており,その特異な機能性を利用して実用化も しくはそのレベルに近い材料も多い。(3)今後の展開(2 )で述べた反応技術は今後それらを多段的に組 図2み合わせたり,様々な物質系へ適用範囲を拡大する ことにより多様な新物質,新材料が創製されていく と期待される。また構造変換を誘起する手段として 熱活性化以外のパラメータ,例えば圧力,超音波な どの利用が可能となれば新たな展開が見られること となろう。一方ソフト化学による物質合成研究において将来 大きな発展が見込まれる2つの新技術が最近開発さ れた。一つはセルフアセンブリーと名付けられた手 法で固液界面で様々な化合物を原子層,分子層単位 で構築していくものである。例えば金属イオン溶液 とそれに配位しうるリガンド分子の溶液に適当な基 板を交互に浸漬,洗浄する操作を繰り返すと,おの おのの成分がその化学性に基づいて原子層,分子層 単位で自己組織化し人工格子的に化合物が構築され る。この方法を発展させれば異なった化合物を単位 胞レベルで積層させたり,複数の機能性分子を埋め 込んだりして,機能の設計が可能となると期待され る。もう一つは層状結晶などを剝離反応によって分解 しコロイド化する技術である。層状物質が膨潤する ことはよく知られているが,最近嵩高いゲストを反 応させると無限膨潤すなわち剝離する場合があるこ とが報告され注目を集めている。図2は我々が研究 を行っているチタン酸化物についての例である。こ の粉末試料(ミクロン角の板状微結晶の集合体)を テトラブチルアンモニウム水溶液中で振盪すると結 晶構造の最小基本単位である層一枚一枚に剝離して 水中に分散しゾル溶液が得られる。層状物質だけで なくカラム状複合結晶構造を分解することによって 鎖状の微粒子コロイドを合成することもできる。こ のような薄片状もしくは鎖状の形態を有するナノサ イズの微粒子はその内部に周期的に配列した反応活 性点(電荷点など)を含む一種の無機高分子と見な すことができる。さらにこれらは結晶構造の素片で あることから素機能のキャリヤーとも考えられる。 層状ペルブスカイト化合物から得られるペルブスカ イト型構造ユニット一層からなる微粒子が好例であ る。今後これら剝離微粒子のハンドリング法が発達 すれば,分子論的立場から多様な化学修飾や構造の 再構築が可能となると期待される。セルフアセンブ リーや剝離法は発展途上の合成法であるが,ソフト 化学合成の究極の姿といえるナノレベルでの精密な 化合物設計が可能となる豊かな潜在力を感じさせる ものである。以上述べたようにソフト化学合成は非平衡,低温 化学反応プロセスであるというユニークな特徴を有 している。この特徴を活かして原子・分子レベルで のファインな物質合成や機能設計などに威力を発揮 しセラミックスの合成研究分野で確固たる地位を築 いていくと予想される。2―6 超高温技術先端機能性材料研究センター 主任研究官石垣隆正(1)はじめに大気圧付近で発生する熱プラズマは,1万度以上 の超高温を持ち,化学的に活性な化学種を有してい る。また,ガス流がプラズマ発止領域から離れて行 くとき106-7度/秒で急冷される。この2つの大きな特 徴を利用することにより,形態,結晶構造,化学組 成において従来にない材料を合成することで可能で ある。図1に示したのが,高周波で熱プラズマを発生し ている様子である。高周波コイルを通じて,周波数・ 数 MHz,入力・数十kWの高周波を供給すると大気 圧付近でのプラズマ発生が可能である。通常,アル ゴンガスを主体として,トーチ内壁を保護するため に水素,窒素といった二原子気体をシースガスに混 合する。ガス総流量は通常30～50リットル/分といったとこ ろである。高周波熱プラズマの特徴は,①超高温領 域の体積が大きい,②流速が低い,③酸化,還元, 反応性といった各種雰囲気のプラズマが発生できる ところにある。(2)現在の成果セラミックス粉末を高周波熱プラズマ中に注入し てプラズマ処理するために,センターインジェクシ ョン・熱プラズマトーチを開発した(図1)。本プラ ズマトーチの開発では,3重水冷構造を持つ粉末供 給プローブをプラズマの中心部分に設置することと いう構造の改良とともに,プラズマの温度流れの分 布をもとめる数値解析結果(図2)をフィードバッ クすることによって,プラズマ発生条件の最適化を 試みた。この熱プラズマを用いることによって,(1) 熱プラズマを乱すことなく多量の粉末供給ができる こと,(2)プラズマ中を通過する粒子の熱履歴が均一 になること,(3)プロセスの熱損失が低減できること など,熱プラズマの持つ超高温・高化学反応性を効 率的に利用したパウダープロセッシングが可能とな った。熱プラズマ中にセラミックス粉末を供給したとき, プラズマ発生条件,粉体供給条件を変化させると, プラズマから固体粒子への熱移動量,粒子の融解・ 蒸発量,反応雰囲気,冷却速度,気相中の過飽和度 といったプラズマと固体粒子の相互作用の因子が変図1熱プラズマ発生の様子図2 熱プラズマトーチの温度、流れの分布化する。化学的な修飾を粒子の表面近傍に部分的に 行うと,粉末の特性向上が期待できる。プラズマ修飾のモデル実験としてチタンカーバイ ド粉末を対象とした。チタンカーバイドはNaCl型構 造を保ちながら広い不定比組成を持つ(TiCx, 0.5< x< 1)。プラズマ中の加熱の程度に応じて粒子表面 近傍に炭素空孔が生成した。この表面近傍の炭素空 孔が焼結進行に必要な物質移動を促進するため,プ ラズマ修飾粉末の焼結性を向上させることができた。また,チタンカーバイド粒子表面に窒化物あるいは 酸化物相を形成したプラズマ修飾粉末をアルミナマ トリックスに分散したAl2O3-TiC複合セラミックス(高強度,高靱性,高耐磨耗性材料として知られて いる)も常圧焼結で緻密な焼結体が得られた。(3)今後の展開熱プラズマを用いた材料プロセスの反応分野を広 げるためには,その高エンタルピーを適当な温度ま で下げ,化学反応性の利用度を上げる必要がある。パウダープロセッシングでは熱損失が問題になる。 比較的大きな粒子(粒径数十 μm)と異なり,粒径1 μmあるいはそれ以下の粉末を吸うと,表面積が大き く熱移動量も大きいので,蒸発が多くなる。蒸発量 の増加は,蒸発潜熱および金属蒸気からの放射によ る熱損失が大きくなり,プラズマの熱量を粉末修飾 に有効に使うことができない。薄膜合成でも,熱プ ラズマの大きな放射エネルギーが膜生成に次のよう な影響をする。一つは,成膜領域でのプラズマ温度 が薄膜成長中の基板温度(通常1000℃以下)よりか なり高く,成長後の残留ストレスが大きいことであ る。これは,基板と薄膜の密着性に影響する。また, プラズマ放射熱そのものによる堆積中の薄膜の損傷 が大きいこともある。以上の要請の解決法の一つはプラズマ発生圧力の 低減である。パウダーセッシングでは,プラズマ発 生圧力を下げると,扱う粒径範囲が広がり,化学反 応性を利用することが期待される。圧力200Torr以 下まで下げると,プラズマ中の化学種の平均自由行 程が粉末粒径以上になり,プラズマから粒子への熱 移動は連続流体に対する扱いができなくなり減少す る(Knudsen効果)。従って,小粒径粉末にプラズマ から適当な熱移動が起こり,プラズマによる修飾が 可能になる。図3 遷移領域プラズマプラズマ圧力の低下により,化学反応性の上昇も 期待できる。プラズマ圧力を下げていくと原子・イ オンのような重い粒子の温度(Th)と電子温度(Te) が異なった非平衡プラズマへの遷移領域に到達する(図3 )。ここではThもそこそこに高く,化学反応性 の高いラジカル種の濃度は高くなる遷移領域プラズ マとして注目される。熱プラズマの特徴をそのままにプラズマの持つ高 エンタルピーを減少するには,プラズマ発生の時間 制御法も考えられる。低圧プラズマと異なり,熱プ ラズマではパルス等の変調の報告例はICP発光分析 の分野を除けばほとんどない。最近の,高周波誘導 プラズマの時間依存する過度的な現象,安定性を数 値解析した報告によれば,パルス変調熱プラズマの 発生の可能性があり,無機材質の改質・合成にもと められる物理・化学過程の新しい制御法として期待 される。2―7 熱間静水圧加圧法第7研究グループ主任研究官渡辺明男(1)はじめにHIPは,Hot Isostatic Pressの略称で熱間静水圧 加圧法とも呼ばれている。これはセラミックスや金 属粉末の焼結に利用される技術であり,加熱時に圧 力を加えることが大きな特徴である。焼成時に圧力 を加えると物質の流動性が増加するため,同じ材料 でも低温で焼結が進み,通常の方法では得ることの 難しい材料でも緻密に焼結させることができる。HIPでは圧力媒体として化学的に不活性な気体を 使用し,通常2000℃までの高温,2000気圧(196MPa) まで高圧力をかけることができる。また,3000℃ま での高温や10000気圧(～1GPa)の高圧力をかける ことができる装置も開発・製造されている。これは 温度的にはほとんど全ての材料の焼結に十分な温度 である。また,圧力は別項に述べられている超高圧 力に比較してかなり小さいが,焼結を目的とする場 合にはダイアモンドなどの特殊な材料を除けば十分 な圧力である。(2)現在の成果HIP法には,原料粉末を容器(カプセル)中に封 入し高温高ガス圧下で処理するカプセル法と,原料 粉末をあらかじめ仮焼結して容器を用いないで高温 高ガス圧下で処理するカプセルフリー法(ポストHIP 法)がある。HIPでは圧力媒体にガスを使用しているが,ガス による圧力は静水圧なので試料に均一に加圧できる が,試料には��間があってはならない。小さい��間 であってもガスはそこから侵入してしまうので加圧 による効果が得られない。そのため,粉体からの焼 結や接合の実験を行なうには試料を容器に入れ,容 器ごと圧縮しなければならない。容器を使用する欠点は,容器に封入するためには 技術と経験を必要とすることと,容器と試料との反 応や耐熱性などを考慮して材料を選択しなければな らないことがある。容器の材質としては実験室レベ ルではガラス管か白金が使用されることが多い。ガ ラス管の長所は封入加工が容易なことにある。また, 白金は安定な金属であり試料と反応することが少な いので適用範囲が広い。無機材研ではカプセル法によって焼結研究を行なっている材料に酸化ルテニウム,アパタイトなどが ある。また,チタン酸ストロンチウムなどの単結晶につ いてもカプセルを使用した接合研究を行なっている。カプセルフリー法ではカプセル封入のような取り 扱い上の煩雑さはないが,適用できる条件が限定さ れている。ある程度焼結が進行した,内部の空孔や 亀裂が封じ込められていて圧力媒体ガスが侵入しな いことが条件となってくる。内部の空孔が外部から 閉ざされた閉気孔となるには相対密度が93%以上に 焼結されていることが必要となっている。カプセルフリー法で得られるHIPの効果は除去で きなかった数%以下の残留する閉気孔を限りなく 0 %に近づけることであるが,このことによって,材 料の強度や光学的な特性は劇的に上昇する。(図1 HIPによる残留気孔のの変化)工具に使用される超硬材料,磁気ヘッド用のフェ(a)HIP 前(b)HIP 後図1HIPによる残留気孔の変化ライト,透明スピーカー用の透明焼結体などがこの 方法で製造されている。無機材研ではカプセルフリー法によって焼結研究 を行っている材料に酸化亜鉛,ペロブスカイト型の チタン酸塩などがある。また,93%以上に焼結が可能でありながらその先 十分に緻密化しない原因に材料の構成成分の蒸発が ある。焼結は高温で行なわれるために特定の成分が 蒸発することが多いが,このカプセルフリー法では ガスにより加圧しているために成分からの蒸発が抑 えられる効果もある。カプセルフリー法のもう一つの特徴に,圧力媒体 ガスと試料が直接接触することによる反応があげら れる。従来は,こうした反応は材料の特性を劣化さ せるものと考えられてきたが,圧力媒体ガスに酸素 を含有させるとある種の元素は従来の方法では得ら れない酸化状態をとることがある。現在研究が盛ん な銅を主成分とした化合物群では,高い酸素圧力を かけると超伝導性が発現したり,超伝導特性が向上 するものが多い。(3)今後の展開近年の開発研究が進められている材料には加圧焼 結が不可欠なものが多い。例えば,①非酸化物セラミックスや金属間化合物 は難焼結性の物質である。また,②銅を主成分とす るYBa2Cu3O7-δなどの高温超伝導材料は高温で熱 分解する。③酸化ルテニウムや酸化スズは高温で蒸 発する。④アモルファスは高温で結晶化してしまう。 こうした材料の研究に際してはまず加圧焼結によっ て緻密な焼結体を作製することが不可欠である。今 後とも新しい機能を持った材料の研究には適用範囲 が広がっていくものと想定される。また,新物質の探索においても近年の高温超伝導 体の研究では先にも述べたように圧力媒体に酸素を 含有させることによって多くの化合物が見いだされ ている。また,その過程で通常の熱処理では分解し てしまう含炭酸根化合物が見いだされており,物質 探索にも有効な方法であることからその方面での応 用も進められる。HIPは製造装置としてはある面で完成しているが, 難焼結性の材料の焼結のための基礎研究や,新物質 探索のためにHIP過程中での状態の変化,例えば熱 収縮や電気伝導度変化,また,蒸発ガス分析などの 研究が必要となっている。2―8 微小重力第13研究グループ主任研究官沢田 勉(1)はじめに微小重力とは,地上での重力加速度を1Gとした ときに,百分の一G以下の非常に小さな重力の状態 のことである。理想的にはゼロGの状態を作ること を目指して,落下塔,航空機,ロケット,人工衛星, スペースシャトル等をもちいて無重力状態が作られ るが,実際には残留重力があるので,微小重力とい う言葉が使われている。微小重力条件の利点として 様々なものが挙げられるが,我々が期待するのは, 無対流という特長である。我々は,材料合成技術の一分野として,溶液から の結晶成長技術の高度化に取り組んでいる。目指す 方向は,実験条件の単純化である。例えば,溶液を 冷却して過飽和状態にし,結晶を成長させることを 考えてみる。溶液を外部から冷却するときには温度 勾配ができる。また,結晶が成長し出すと,結晶周 辺の溶液の濃度は低下し,遠方の溶液より(多くの 場合)軽くなる。このとき重力があると浮力による 対流が発生し,溶液はかき混ぜられることになる。 この状況を図〈ケース1〉に模式的に示した。ここ で問題となるのは,温度勾配と対流の発生による条 件の複雑化であり,このことによって,これらの問 題がない場合に得られるであろう理想的な結晶から は,大きく歪んだ結晶ができてしまう。さらに,こ のように複雑な現象は理論的にも扱いが困難である。 対流発生の問題は,微小重力条件を用いることで解 決できるだろう(図〈ケース2〉)。他方,(外的要 因による)温度勾配の発生は,冷却によって結晶成 長条件を作る限り避けられない。そもそも熱伝導と いう現象は,我々が問題とする結晶成長現象に比べ て無視できない遅い現象であり,温度変化で実験条 件を制御すること自体に問題がある。そこで我々は, 温度の代わりに圧力を変化させる方法に着目した。原理的には,温度を変える代わりに圧力を変える ことでも過飽和状態をつくれる。液体の圧力は温度 に比べると高速に,かつ,均一に変えることができ るので,上記の温度勾配の問題の解決になるだろう。 圧力により溶液の過飽和度を変える方法を,圧力制 御法と呼ぶことにすれば,圧力制御法と微小重力の 組合せで,新しい結晶成長技術を開発しようと言う図〈ケース1〉 冷却法(地上)図 〈ケース2〉冷却法(微小重力下)図〈ケース3〉圧力制御法(地上)図〈ケース4〉圧力制御法(微小重力下)わけである。図〈ケース4〉に微小重力下で行う圧 力制御結晶成長のイメージを示す。圧力制御法はこれまでほとんど行われたことがな いので,我々は,圧力による結晶成長の制御を実証 し,その特徴を明らかにするための装置開発と基礎 研究から開始した。これまでに,ロケットを用いた 微小重力実験を行い,実際に圧力制御法と微小重力 を組み合わせた実験が可能であることを確かめると 共に,単純化された条件下での溶液結晶成長の基礎 的実験データを取得することに成功している。(2)現在の成果溶液からの結晶成長の研究には,成長している結 晶やその周囲の状況を直接見る(これを“その場観 察する”という)ことが有効である。圧力制御法で も加圧試料を顕微鏡や干渉計を用いてその場観察で きるように,観察用の光学窓をもった圧力セルを設 計・作製した。これにより,2000気圧までの加圧下 において固定された種結晶から単結晶を成長させ, その結晶形態と結晶周囲の溶液濃度分布の時間変化 の様子を顕微鏡下で観察可能になった。これを用い て,圧力制御により溶液の過飽和度を瞬時に変え, 結晶成長速度を高速に制御できることが実証された。 しかし,地上における実験では,既に述べたような 対流が発生し,結晶成長現象が大きく乱されること も確認され(図〈ケース3〉),微小重力環境の必要 性が切実なものとなった。そこで,宇宙開発事業団 との共同研究として,小型ロケットを用いた微小重 力実験がおこなわれた。この実験は,圧力制御法に よる初めての微小重力実験である。実験対象となっ たのは水溶液からの塩化アンモニウム結晶の樹枝状 成長である。これは,温度勾配や対流による擾乱に 対して敏感な,典型的現象のひとつであり,圧力制 御法と微小重力の組合せの利点が発揮される好対象 である。実験は成功裏に終了し,圧力制御法と微小 重力の組み合わせが実際に実施可能であることが確 かめられた。それと同時に,対流を抑えた条件下に おける樹枝状結晶成長の基礎データが取得された。 小型ロケットでは,より利用機会の得易い落下塔や 航空機を用いる場合と比べ,比較的長い微小重力状 態が得られるが,それでも6分間という短時間であ り,この間にすべての実験操作を完了しなければな らない。この点に関しても,高速な操作ができる圧 力制御法の利点が発揮された。同様の実験は,他の 様々な溶液成長現象に対しても行うことができる。(3)今後の展開間もなくやってくる21世紀初頭には,国際宇宙ス テーションが建設され,その運用が始まる。そこに は,日本の実験モジュール(通称JEM)も建設され, 様々な材料実験が計画されている。上述の成果に基 づいて,その中の一テーマに,圧力制御結晶成長の 微小重力実験が予定されている。そこでは,これま での微小重力実験手段に比べて,格段に長時間の実 験が可能になると期待される。たとえば,結晶の誕 生の瞬間から成長に至る,結晶成長の全過程を繰り 返し微小重力下で行い,観察することができるだろ う。我々は,圧力制御法の特徴を生かし,他の方法 では困難な実験に挑戦し,結晶成長過程の基礎的理 解と結晶成長技術の高度化に貢献していきたいと考 えている。2―9 物理蒸着技術第3研究グループ主任研究官上村揚一郎(1)はじめに物理蒸着とは,一般に原料となる物質を真空環境 下において原子単位にまでばらばらにした後,基板 上に堆積させ薄膜を得るものである。初期の物理蒸 着技術は,単体の金属薄膜を作製するために開発さ れ,その後早い時期に光学系に応用するための誘電 体薄膜を作製する手段としても利用されてきた。そ れは高融点金属であるMo,Ta, W等を用いたヒータ ーに原料物質を乗せて直接通電加熱によって所定の 物質を蒸発させ薄膜を作製するものである。この手 法は現在も利用されているが,更にそれの高度化さ れた技術として,高融点物質の蒸着用に電子銃が, また作製された膜の品質を高めたり化合物薄膜の作 製用にクヌードセンセルを用いた分子線蒸着法が開 発された。更にるつぼからの不純物の混入を防いだ り,非平衡物質の薄膜を作製出来る可能性を持つ方 法としてレーザーアブレーション法がある。このような熱的に原子状態を作り出す手法に対し てスパッタリング蒸発法と呼ばれる蒸着技術がある。 これは何らかの方法で作り出されたイオンをターゲ ットとしての原料物質に衝突させてその物質を空間 に取りだし,基板上に薄膜を堆積させる技術である。 この場合のイオン種としては不活性ガスを使うのが 一般的であるが,化合物薄膜を得るため反応性のガ ス,例えば酸素,窒素等を利用することも出来る。 この手法の改良型として,堆積速度を増加させるた めのマグネトロンスパッタリング法が,また絶縁性 物質をターゲットとしたときの高周波スパッタリン グ法等がある。古典的とも言える以上の方法と違って,最近原料 物質そのものをイオン化して基板上に供給し,薄膜 を得ようとする研究が活発化している。これはイオ ン化した物質は質量分離による高純度化が可能であ ること,及びイオンはエネルギー的に高い状態にあ ることから反応性に富み,非平衡状態あるいは通常 の方法では合成困難な物質を作製出来る可能性があ ることに,この技術の魅力が存在するからであろう。ここでは酸化物超伝導体や酸化物誘電体の薄膜作 製に有効とされているパルスレーザーアブレーショ ン(PLA)技術と高純度物質やエピタキシャル膜作 製の可能性が報告されているイオンビームデポジシ ョン(IBD)の技術について述べることとする。(2)現在の成果まずPLA技術であるが,これはターゲットとして 用いた物質と同じ組成の薄膜を基板上に作製するこ とが出来る。エネルギー源としてのレーザーには三 つの特徴がある。第一はエネルギー密度が非常に大 きいこと,第二は光であること,そして第三はパル ス状で使用できることである。レーザーと固体表面 の相互作用の研究が始まってから約30年程になるが, 薄膜作製,特に酸化物超伝導体薄膜の作製に有効で あると最初に報告されたのは10年程前である(文献 1)。その有効性の理由は上に述べた三つのレーザー の特徴に対応している。即ちエネルギー源が光であ るため,ターゲット及び基板近傍の雰囲気に殆ど制 限がない。勿論ターゲットから飛散した物質が基板 に到達出来るだけの生存時間が必要であり,高い圧 力環境は適用できないが,酸化性,還元性いずれの 雰囲気でも利用できる。次にエネルギー密度が大き いことから光学系レンズを使った収束で容易に高温 状態を得ることが出来る。最後にパルスの有効さは, この方法における蒸発機構と直接関係している。す なわち,PLAにおける蒸発機構として次のようなモ デルが現在考えられている。まずレーザー光で照射 された部分が急激に加熱され溶解する。そのとき最 表面付近は一次蒸発により気化熱が奪われて温度が さがる。その次に最表面直下の高温部が蒸発し最表 面の液状部を爆発的に飛散させクラスター状態での 二次蒸発が起こる。このようにして爆発的な蒸着に よりターゲット物質と同じ組成の薄膜を基板上に作 製することができる。一般的な物理蒸着法で酸化物 薄膜を作製しようとしたとき,常に酸素欠損が問題 となる。したがって,現在では定比性が要求される 酸化物の薄膜作製には,このPLA法は最も有効な方 法の一つとされている。次にIBD法について述べる。最近の薄膜作製技術 においてはイオンを利用する技術開発が非常に盛ん である。これはイオン源の開発が進んだことと,イ オンが真空容器内では扱いやすいこと,またそれが 反応性に富むことから通常の環境下では非平衡状態 にある物質を作製できる可能性を有しているからで ある。一般的なIBD装置はイオンを作り出すための プラズマ発生部,そこからイオンを取りだしそのエ ネルギーを制御し,イオン種を選択して薄膜作製容 器内に導く導入部,と薄膜作製容器本体からなって いる。イオン源に関しては現在全ての原子のイオン 化が可能なイオン源の開発が行われている。例えば 蒸気圧の高い元素には一般的な加熱手法による技術 を用い,高融点金属にはスパッタリング技術が適用 されている。ただし何れの場合も蒸発物質の量など の時間的に変化する状態に対応してプラズマを安定 させたり,それらの物質がケージ内に堆積して汚し てしまう等の問題もあり,今後この方面での改良発 展が望まれている。次にイオンを所定のエネルギー にまで加速あるいは減速したり,希望するイオン種 を選び出す導入部における真空の問題がある。作製 される膜の純度を良くするためにはこの導入部の真 空,すなわち,イオンの質量分離が行われた後の環 境が重要である。しかしイオンの質量分離は電場も しくは磁場によって行われ,そのアラインメントは 微妙であるため,この部分に関しては十分なベーキ ングによる良質の真空を得ることは困難である。最 後に薄膜作製を行う本体部分については,最近非常 な技術的進展がみられる。例えば,化合物薄膜の合 成を目的とするときは,この本体に他の蒸着法を整 備するか,あるいは複数のイオン導入部を接続する 等して高度化を図ることが行われている。また,作 製中の薄膜の組成や構造をその場観察できるように, 種々の解析装置を備えた,システムとしての装置開 発も活発である。(3)今後の展開先端的な産業界における無機物質薄膜に対する期 待は大きく,また物理蒸着技術は非平衡状態物質作 製の可能性を有することから科学的,技術的興味も 非常に大きいものがある。無機物質を酸化物と非酸 化物に分けて考える。酸化物薄膜として研究開発の 期待の大きい物質系は高温超伝導に関するものと, 強誘電性または強磁性を有する機能性薄膜である。 これらの物質作製において特徴的なことは真空容器 の残留ガスによる酸化性雰囲気は問題ではなく,む しろ酸素欠損を補うため積極的に酸化雰囲気を作り 出す必要があることである。このような状況で酸化 物薄膜作製の可能な手法は,反応性スパッタリング によるか,PLAによるのが妥当な道であろう。しか しながら,スパッタリング法においては,ターゲッ ト物質の組成をそのまま基板上に転写することは困 難であり,そこでPLAが注目されることになる。た だし前の節で述べたように,蒸着過程は一次蒸発と 二次蒸発で構成され,前者は原子レベルに分解され て飛翔��すると考えられていることから,スパッタリ ング法に似た困難さがある。また二次過程でのクラ スターのでき方が爆発的で,その飛翔��中の組成,エ ネルギー等の制御が困難であり,良質の酸化膜を得 るためには,一層の開発が必要となる。現在行われ ている改良法の一つは基板上に堆積しつつある膜に 別のレーザービームを照射するものである。これは 熱的なアニーリングに加えて光子と電子の相互作用 による励起状態からの緩和に基づくと思われる,一 種の電子アニーリング効果が併用されるものと考え られる。このようにPLA法は酸化物薄膜の作製に適 した手法であり,より良い品質の薄膜を得るための 一層の技術改良が期待される。次に非酸化物すなわち,炭化物,窒化物,硫化物 等の薄膜作製について考える。これらの物質作製に おいて最も注意しなければならないのは,酸素の混 入を含む不純物の問題である。薄膜作製槽内の到達 真空度を良くすることはもちろんであるが,金属物 質を蒸着している際のヒーター近傍からの放出ガス や導入するガスの純度あるいは前の節でのべたよう にイオン導入部からの不純物ガスの混入等細心の注 意を払う必要がある。単体元素からなる物質ではそ の高純度化により予想もされないような物性を示す ものがある。例えば,このIBD法で作製した高純度 鉄は化学的に非常に安定であり,殆ど錆びないとい う結果が報告されている(文献2)。今まで述べてきたレーザービームとイオンビーム を同時に用いた装置など,最近の物理蒸着技術にお ける開発傾向は装置の大型化に向かっている。しか し非酸化物系の化合物において,高純度化の結果と して非常に興味ある物性を持った薄膜作製の期待が あり,この方面での技術開発の必要性も高い。化合 物においては異種元素の混入の他に,構造の欠陥や ストイキオメトリーからのずれなどの問題があり, その高純度化を図ることは,単体元素物質に較べて 格段に困難であるが,それだけにまた期待も大きい ものがある。参考文献(1) D.Dijkkamp etal,Appl.Phys.Lett.,51(1987) 619(2) 三宅潔 他,応用物理,64,(1995),5742―10焼結技術(その1) ―酸化物―第1研究グループ総合研究官池上隆康(1)はじめに狭い意味のセラミックスは,粉体を焼き固めた磁 器や土器などの多結晶焼結体を意味する。人類にと って,土器や磁器は新石器時代からの付き合いであ り,焼結技術は極めて古い技術といえよう。一方, ファイン・セラミックスはハイテク技術の代表的な 一つと認められている。このギャップは,古典的な セラミックスが,自然に産出する鉱物に人工的な処 理を殆ど施す事なく利用するのに対して,ファイン・ セラミックスでは,自然に産する鉱物に化学的処理 を加えて性質が原料鉱物とはまったく異なる粉体を 利用することから生じている。そのため,ファイン・ セラミックスは,古くから蓄積された焼結技術やノ ウハウだけでは不十分であり,どちらかというと, 現代の科学技術の発展を基盤にして開発されたので ある。現在,非金属無機材料を本来は焼物であったセラ ミックスと称することが多い。これは,非金属無機 物質を実際の材料として用いる場合,粉体を成形し たのち焼結する方法が多いためであろう。それらの 物質が焼結という手段で材料化するのは,物質自身 の化学的・物理的性質に由来する。すなわち,非金 属無機物質は,①融点が高くて金属のように適当な 鋳型の製造が難しいこと,②硬いため,金属材料で よく行なわれる切削加工が困難なこと,③脆いため に材料を破壊する事なく変形することが困難で,鍛 造などの技術が応用できないことなどによる。すな わち,実用材料として使用する際に必要とする形状 を付与するのに,金属などのような切削加工,鋳込 みなどよりも,粉体を予め材料として要求される形 状に成形したのち,焼結(この時,原子は粒子と粒 子の接触点から離れて,粒子表面に拡散して空��を 埋める)して,緻密焼結体を製造する方が有利なた めである。古典的なセラミックスが材料としての評価が低か ったのに比べて,ファインセラミックスが材料とし て成功した最大の要因は,原料粉末の高純度化に成 功したことによる。化学的精製の学問や技術は,化 学全般を支える重要な柱の一つであり,物質の高純 度化が精力的に研究されてきた。ファインセラミッ クスの創製に際してそれらの成果を利用する事がで きたことは好運といえる。また,これまで重用して きた金属やプラスチックスのみでは,今後の産業技 術の発展が望めないことから,ファインセラミック スの研究に力をいれるようになったことも見逃せな い。一般に,セラミックスの場合,物質を高純度化す ると高温強度が増したり腐食に強くなるなど,材料 としての特性は向上する。逆に,焼結性が低下する など,材料化には高度の技術を必要とする。この事 が,ハイテクといわれる由縁である。古典的なセラ ミックスが古い技術で焼結できたのは,天然の原料 粉には多くの不純物が存在し,その結果,それほど 高い焼結温度でなくても十分に緻密な焼結体が製造 できたことによる。幸いなことに,最近の材料科学 は,金属酸化物の焼結性が構造敏感性であることを 明らかにした。構造敏感性とは,材料の性質が合成 方法で大幅に変化することをいう。例えば,あるプ ロセスで調製したアルミナ粉体は1400℃でほぼ理論 密度まで焼結するのに対して,他のプロセスを経た 粉体では1700℃でも理論密度の80%しか緻密化しな い場合もある。この現象を効果的に利用すると,高 純度であっても,比較的低い温度で緻密焼結体を製 造できる可能性がある。低い温度で焼結したセラミ ックスは,一般に結晶粒が細かく,機械的強度が大 きいので,実用的に望ましい特性を有することが多 い。一方,光学材料の場合,光の一部は粒界で反射 されるので,粒成長現象を利用して粒界の数を減ら す必要がある。焼結で空��を減少させるには,粉体 の調製を適切に行なう必要があり,それほど容易な ことではない。これに対して,温度を上げると確実 に粒成長するので,緻密焼結体が製造できれば,粒 界の数を減らすことはそれほど難しいことではない。 すなわち,多結晶光学材料の製造においても,まず 緻密焼結体の製造を試みることが多い。(2)現在の成果当所の金属酸化物系セラミックスの創製技術開発 研究では,主に,易焼結性原料粉体の調製プロセス に関する技術開発研究を進めてきた。弗化物添加法, ソーダ灰法,多段湿式法,蓚酸エタノール法,改良 型均一沈澱法,炭酸塩熟成法,擬似アルコキシド法 等が例示される。① 弗化物添加法……Mg(OH)2または微細なMgO 粉体に微量の弗化物を添加して,700℃～900℃で仮 焼することを特徴とする製造方法である。従来の知 見では,弗化物はMgOの緻密化を阻害するとされて いた。それらの研究で弗化物がMgOの緻密化を阻害 したのは,弗化物がMgOの物質移動性をあまりにも 高めたために,焼結体内の局部的な緻密化が急速に 進行して,それが全体的な緻密化に結びつかなかっ たことを明らかにした。弗化物を添加した後に仮焼 することで,場所によらずにほぼ同じ速度で急速に 緻密化することが可能になった。② ソーダ灰法……マグネシウムを含む酸性の溶液 にソーダ灰を加えて非晶質の炭酸マグネシウムを沈 澱させる。これを適当な温度で熟成すると鱗片状の 塩基性炭酸マグネシウム結晶が生成する。熟成中に, 非晶質の炭酸塩は水溶液に溶解して結晶質の塩基性 炭酸塩に変化するが,この際,非晶質中に取り込ま れた不純物が水溶液中に吐き出されるので,最終的 に99.99%以上の純度のMgOの合成にも成功した。①及び②の方法で,透明MgO焼結体の製造(写真1) に成功した。③ 多段湿式法……PZTやPLZTなど,複数の金属 イオンを含む化合物を湿式で調製する場合,一般に それらの金属の水酸化物を同時に共沈させることが 多い。しかしながら,化学的性質の異なる金属イオ ンが共存した水溶液をつくるには,それほど容易な ことではない。そこで,低いPHで沈澱する水酸化 物から順に多段で湿式合成する方法を開発した。一 般に,共沈して得た水酸化物は微細で,それを乾燥 するとマクロ的には硬い塊に,また,ミクロ的には 硬い凝集粒子となる。そのような水酸化物を仮焼す ると,得られた酸化物粉体の焼結性は悪くて好まし くないことが多い。これに対して,多段湿式法では, 性質の異なる水酸化物が多段で沈澱してきて,同種 の沈澱粒子間の結合を妨げるので,凝集の弱い焼結写真1 焼結技術:酸化物セラミックス 性に優れた粉体が合成できる。④シュウ酸エタノ ール法……原理的には,Clabaugh がチタン酸バリウムの合成に際して開発したシュウ 酸塩法を応用したものである。Pb, Zr, Tiなどのシ ュウ酸塩はエタノールに難溶性であるが,シュウ酸 はエタノールに溶けることに着目して,エタノール 溶液中で成分金属シュウ酸塩を効率的に生成させる。 これを熱分解する方法で,種々のセラミックス原料 粉体が製造できる。⑤ 改良型均一沈澱法……YAG (イットリアとアル ミナの反応生成物)の透明焼結体の製造に際して開 発した方法である。従来は,イットリウムイオンと アルミニウムイオンを含む酸性溶液に尿素等の高い 温度で熱分解して塩基性を発現する化合物を加えて 均一沈澱して合成していた。しかしながら,この方 法では,上で指摘したが沈澱物を乾燥すると硬い塊 となり焼結性が悪い。そこで,上記の水溶液に硫酸 イオンを添加して均一沈澱し,嵩高い凝集粒子の沈 澱を生成した。この改良型均一沈澱法では,ろ過性 が改良されると同時に,沈澱物を乾燥しても脆弱な 塊となり,焼結性が大幅に改良できた。⑥ 炭酸塩熟成法……炭酸イットリウム沈澱を適切 な温度で熟成して易焼結性イットリア粉体を合成す る方法である。この粉体を真空焼結すると,1600℃ というきわめて低い焼結温度でも透明焼結体を得る ことができる。⑦ 擬似アルコキシド法……従来の方法で水酸化物 沈澱を生成した後に,沈澱が乾燥する以前にブチル アルコールなどの有機溶媒に分散して乾燥すること を特徴とする易焼結性粉体の合成法。通常のアルコ キシド法は,予め金属とアルコールで金属アルコキ シドを製造して,それに蒸留水を作用させて水酸化 物の沈澱を得ていた。この方法で製造した酸化物粉 体の焼結性は一般によい。ここで紹介した合成法は, 通常の化学的な手法では難焼結性となる粉体を,ア ルコキシド法に匹敵する易焼結性に変えることがで きる。(3)今後の展開これまでの研究で粉体合成について多くの知見を 蓄積した。その結果,単純酸化物,複酸化物をとわ ず,単に易焼結性粉体を合成するという課題に対し ては,短期間に問題を解決できるようになったとい えよう。今後は,新機能・高機能を付与した粉体合 成のために,添加物を均一に添加したり,成分の分 布を厳密に制御した粉体合成技術の開発へと進むで あろう。2―10焼結技術(その2)―非酸化物―第3研究グループ 総合研究官三友 護(1)はじめに非酸化物の大多数は天然には存在せず,人工的に 合成する。これは非酸化物が酸化物に比べ空気中で 不安定であることによる。非酸化物の中でも,炭化 物や窒化物の中に強度,硬度,耐摩耗性等の機械的 性質に優れたものが多い。その化学的特性から非酸 化物は窒素やアルゴンのような不活性ガス中か真空 中のような非酸化性の条件で焼結する必要がある。当研究所で長年にわたり焼結の研究を続けてきた 非酸化物は窒化ケイ素(Si3N4)と炭化ケイ素(SiC) である。これらの粉末を単に高温に加熱しても密度 は向上しない(つまり,焼結性がない)。これはSi- NおよびSi-Cの共有結合性が高く,界面エネルギー が高いか,または拡散速度が低いためと説明されて いる。その両方が原因で焼結が進行しないと推定さ れている。酸化物の焼結では格子欠陥を生成する添 加物で拡散速度を高めたり,粒成長速度を制御する。 これはその添加物が格子欠陥を経由する体拡散速度 を支配するためである。非酸化物では,格子欠陥の 生成エネルギーが大きく,添加物による拡散の促進 が期待できない。ところが,この点が非酸化物が高 温でも使える理由でもある。高密度に焼結してしま えば,高温においても破壊や変形に強い材料となる 可能性が高いからである。そのため反応焼結,常圧焼結,ガス圧焼結,ホッ トプレス,熱間静水圧焼結等の多くの焼結法が開発 され,セラミックス部品の製造に利用されている。 その中で原料粉末を各種の方法で成形後,1気圧の 雰囲気下で加熱する常圧焼結法が複雑形状の部品を 安価に製造できる点で最も一般的である。(2)現在の成果窒化ケイ素の常圧焼結には高温で液相を生成する 酸化物が焼結助剤として用いられる。液相は粒界での拡散を促進し,高密度の焼結体と なる。試料の冷却後,液相はガラス相として窒化ケ イ素粒子間に残る。ガラス相は強度や耐熱性が窒化 ケイ素粒子より劣るので,焼結体の強度は1200℃以 上で急激に低下する。このため実用的な使用温度は 1000℃程度に限定される問題があった。その原因は 焼結温度が1800℃以下と限定され,低融点の助剤の みしか有効ではないためである。非酸化物の特徴は一般に融点を持たず,高温では 熱分解することである。解離圧が1気圧になる温度 をToとし,ある温度(T)における解離圧をプロッ トすると図1になる。窒化ケイ素,炭化ケイ素,窒 化アルミニウムの常圧焼結温度を相対温度(T/To) 上にX印で示してある。窒化ケイ素は相対温度の高 い範囲で焼結するため,気相の影響がきわめて大き い事が解る。無機材研では加圧窒素中では気相の平衡圧が熱力 学的に低下することに着目し,窒化ケイ素のガス圧 焼結法(GPS)を世界に先駆けて発明した。最近で は,高性能窒化ケイ素部品の製造法として,世界中 で広く利用されている。ガス圧焼結法の特徴は常圧焼結法より高温で焼結 できる点にあり,従って1)高密度,高性能(強度,破壊靱性)2)高耐熱性3)高信頼性の材料が製造できる特徴がある。焼結体の曲げ強度 の分布を比較したのが図2である。ガス圧焼結体 (GPS)の方が常圧焼結体(NS)より強度が大きく, 強度の分布も狭く信頼性が高いことが示されている。 材料の脆さの尺度である破壊靱性は従来材料では5 ～6 MPa・m1/2であったが,ガス圧焼結では10～12 MPa・m1/2の値が得られている。これは柱状粒子が 高温焼結中に大きく発達し,強化材の役割を果たす からである。また,強化材粒子は全体の一部であり,図1 固体の解離圧と相対温度の関係 (×印は常圧焼結温度)図2ガス圧焼結体(GPS)と常圧焼結体(NS)の曲げ 強度の比較粒成長理論との対比で分布や大きさが制御可能であ る。最近では強度分布を定量化した信頼性の尺度で あるワイブル係数(m)が50程度と極めて信頼性の高 い材料が得られるようになった。また,耐熱性の点 では1400℃までの実用に耐えられる高耐熱性が達成 されている。(3)今後の展開大きく分けて基礎研究と応用に関連した分野の両 方に,今後の研究で解決すべき問題点が残されてい る。基礎研究の分野では低温および短時間での焼結が 重要であり,プラズマ焼結やマイクロ波焼結が研究 課題となると考える。これらの焼結法は急速加熱で きることが特徴であり,著しい粒成長なしに高密度 まで到達することができる。これは技術開発がねら い通り進めば,10分以内の加熱で十分であり,従来 の焼結が数時間のサイクルであるのに比べ,短時間 で焼結を完成することができる。これは省エネルギ ーに役立つのみでなく,その後の加熱で目的とする 組織を発現させるのに有利である。焼結とは所定の 機械的性質または機能を持つ組織を作るのが目的で あるが,今後はそれを効率よく達成する研究が必要 である。もちろん,これは焼結技術単独で達成でき ることではなく,原料や成形等の他のプロセスの開 発にも大きく依存する。応用に関連したテーマは数多く想定されるが,ニ ア・ネットシェイプと自己複合化が重要と考える。 原料成形体と焼結体の寸法が近い場合にニア・ネッ トシェイプと言う。一般の焼結では15%前後の収縮 がある。従って,精密な機械部品を製造するには研 削や研磨で仕上げる必要がある。セラミックスは硬 くて強いので,ダイヤモンド工具を使用し,必然的 に高価となる。この加工のコストは除去する量に比 例するので,ニア・ネットシェイプ焼結が重要であ る。現在までに各種の方法が提案されているが,十 分な性能を持つ焼結体は得られていない。自己複合化とは窒化ケイ素の焼結で得られた成果 を基に,無機材研が最初に提案した概念である。こ れは,原料中に存在しない強化材を焼結中に発現さ せ,最終的に高性能の焼結体を得るものである。一 例として,高靱性窒化ケイ素がある。原料粉末と焼 結助剤からなる成形体を加熱・焼結し,微細なマト リックス粒子の中に少数の粒子を柱状に成長させる ものである。また,ジルコニア-アルミナ-酸化ラン タンの混合粉末を焼結し,部分安定化ジルコニアマ トリックスと柱状のβ-アルミナ粒子から成る焼結体 を得る方法が提案されている。通常のウィスカー強 化セラミックスは高靱性であるが,強化材であるウ ィスカーを別に製造するため高価であり,しかも焼 結が困難である問題点がある。それに対し,自己複 合化プロセスは基本的に通常の焼結と同じ過程であ り,効果として複合材料と同等な機械的特性を得る ものである。今後,多くの系およびプロセスの研究 が進み,自己複合化の手法が発展することを期待す る。そのためには,組織と亀裂進展の関係等の破壊 挙動に関する基礎データの蓄積も必要である。3材料解析先端技術3―1超高圧電子顕微鏡特別研究官堀内繁雄 第4研究グループ主任研究官松井良夫(1)はじめに無機材質研究所は,1971年に国立研究期間として は最初につくばに移転した。我々は移転直後に,当 研究所,ひいては,筑波研究学園都市における“目 玉”となりうる大型実験装置を目指して,世界で最 初の高分解能型超高圧電子顕微鏡の開発を提案し, 設計・製作に数年をかけた後,1976年に完成させた [1]。加速電圧が高くなると,電子波の波長が短く なり,そのために解像力が向上しうる,という電子 光学的予見の下に,それまでは別の目的(厚い金属 試料膜中の転位を透過観察する)で使用されていた 超高圧電子顕微鏡の高分解能化を図ったものである。当時は高分解能電子顕微鏡の黎明期であり,国内 外で,物質内の原子を“見る”試みがなされていた が,当時の主流であった100kVの電子顕微鏡では分 解能が本質的に不足していた(分解能は3 Å止まり)。 我々は上記の電子光学的予見を具現化することによ り,“電子顕微鏡で原子が本当に見えるのか”という テーマに挑戦した。完成した超高圧電子顕微鏡(加 速電圧1000kV,分解能2.0 Å)により撮影された結晶 格子像では,像コントラストの計算機シミュレーシ ョンにより,個々の黒点位置に原子(あるいは原子 列)が確かに存在すると判断できたので,重い金属 原子についてではあるが,原子を直接読みとること ができる像(結晶構造像)が世界で初めて観察でき るようになった。図1はそのような像の例であり, 試料は9Nb2O5・8WO3結晶である[1]。もう一つ我々にとって幸運だったことは,高分解 能電子顕微鏡の材料科学への新たな参入が始まった 時期と重なったことであった。すなわち,透光性ア ルミナなどの開発に刺激されて,1970年代後半から, いわゆる「ニューセラミックス」が脚光を浴び始め, 開発研究の手段として電子顕微鏡,特に高分解能電 子顕微鏡の用途が急速に拡大された。我々の高分解 能超高圧電顕では個々の原子が直視できるという利 点を活かして,電顕による材料科学の研究の先頭に 立って,多数の金属複酸化物における格子欠陥(点 欠陥,積層不整,Intergrowthなど),結晶粒界など 図1高分解能型超高圧電子顕微鏡で撮影された 9Nb2O5・8WO3結晶の構造像。個々の金属原子が世界で初めて直接観察された。 a=26.3Åの微細構造を原子レベルで解明するのに用いられ, 多大な成果がもたらされた。本電子顕微鏡のハード面での主な改良点は,1)高圧電源及びレンズ電源の安定度を向上させる ために,従来の真空管方式ではなく,トランジスタ 方式とした。このために長時間の安定な稼働が可能 になった。2)対物レンズを強励磁化し,レンズ収差を低減す ると同時に,高倍率(最高50万倍)を可能にした。3)防振機構を電子顕微鏡のみならず顕微鏡を収納 する建物自体にも施した。4) 2軸傾斜機構を持つトップエントリー型試料ホ ルダーを開発した。これらの改良により,加速電圧1000kV,軸上照射 条件下で2.0Åの点分解能を有する電子顕微鏡が出現 した。ソフト面での開発としては,まず,像の意味を精 確に解釈するために,1)像コントラストの計算機シミュレーション法を 開発した。約800行の計算機プログラムを作成し,実 際の像と比較することにより,構造モデルが構築で きることを実例をもって示した。本法は結晶格子像のうちで結晶構造像が発現する条件(フォーカス外 れ量,試料厚みなど)を明示することにおいても貢 献した。2)光回折法の開発。レーザービームを撮影された フィルムにあてて回折像を得る,いわゆる光回折の 装置を改良した。これにより未知相の同定,変調構 造の周期の解析,レンズ収差の読みとりなどが可能 になった。さらに,次のような実験技術を開発した。1)立体観察法(HRTEM tomograph法)の開発。 一つの結晶試料について,少なくとも二つ以上の方 向から結晶構造像を撮影し,結果を組み合わせて解 析することにより,3次元構造モデルを構築するこ とができる。2)高速電子ビームの照射による試料の損傷を原子 レベルで観察し,誘起される相及び構造を解析した。 これにより化学結合状態に関する情報を得ることが できる。3)結晶表面の解析法の開発。くさび形結晶の端部 の模様から結晶表面の構造を解析し,結晶表面にお ける化学反応などを解明した。4)電子回折像による結晶空間群の決定。まず,試 料を傾斜しながら一連の電子回折像を撮影し,回折 点の消滅則を決定する。次に対応表より可能な空間 群を抽出するという方法を開発し,実用化した。透過型電子顕微鏡では,如何に良好な検鏡用薄膜 試料を作成するかが重要な研究テーマの一つである。 焼結体等のバルク試料から鋭利なくさび型試片を得 るために,乳鉢上での粉砕,溶媒での分散,マイク ロメッシュへの固定に関する方法に関していくつか の改良を行った。1986年に高温超伝導酸化物が発見され,酸素原子 が重要な役割を果たしていることが指摘された。我々 は酸素原子を直接見ることができる,さらに高い分 解能の超高圧電子顕微鏡の開発に着手し,1990年に 完成させた(図2)。科学技術庁では高温超伝導の可 能性・将来性を重視して,高温超伝導体の研究のた めのマルチコア研究プロジェクトを発足させ,現在 も継続中であるが,本超高分解能型超高圧電子顕微 鏡はマルチコアプロジェクトに対する大型機器の一 つ として認可 された もの である。 本電子顕微鏡の点 分解能の測定値は加速電圧が1300kVでは1.0Å, 1000kVでは1.25Åおよび800k Vでは1.4 Åである [2]。計算機シミュレーションを用いた詳細な検討結果 として,酸素原子を解像するためには,それまでに ない高い分解能が必要であることが判明した。その図2 超分解能超高圧電子顕微鏡。分解能1.0 Åが世界 で初めて達成され、高温超伝導結晶内の酸素原子 の直接観察が可能になった。ために,開発にあたり,次のような具体的なハード 上の対策がとられた。1)安定度の高い(<10-6)高電圧電源の導入。具体 的には,昇圧部の交流と加速部の直流が電磁気的に 相互作用することを遮��断するためのインタンク方式 を初めて採用した。2)電子レンズの収差を最小限に抑えるために,従 来にない強励磁のレンズを設計した。また,これに 伴う熱発生を最小限に留めるために,高分子薄膜を励磁用コイルの絶縁膜として用いた。3)観察中の試料汚染や電子線照射時の損傷を最小 限に抑えるために,完全オイルフリーの清浄真空排 気系を導入した。4)防振対策として,床基礎,鏡体吊り下げ用フレ ーム,防振用ゴムを新たに設計し,結果として,外 部振動条件の悪い時間帯でも高分解能像が得られる ようになった。5)高輝度LaB6電子銃を装着することにより,TV モニターを通じて原子配列が直接観察できるように なった。本電子顕微鏡によって,まず,ジルコニア(ZrO2) 結晶内の酸素原子を直接観察することに成功した。 これは世界で初めての酸素原子の観察である。次い で,イットリウム(Y)系高温超伝導体内の酸素原子 の直接観察に,これも世界で初めて成功した。酸素 原子は軽いために,電子ビームの散乱能力が低く, 重い金属原子に隠れてこれまでは観察不可能であっ たが,本超高分解能超高圧電子顕微鏡で初めて有意 なコントラストをもって可視化できるようになった。(2)現在の成果(超高圧電子顕微鏡の微細構造解析への応用)実際の結晶では原子配列は完全でなく,なんらか の欠陥(格子欠陥)が必ず含まれる。格子欠陥とし ては,点欠陥(原子空孔,侵入あるいは置換原子), クラスター,転位,積層不整,双晶などが挙げられ る。また,格子欠陥を媒介として,副次的構造(結 晶粒界,変調構造など)が生じることが知られてい る。これらに関連して,本電子顕微鏡によって得ら れた主な構造解析の成果としては,1)ビスマス(Bi)系高温超伝導体における変調構造 の解析:本超伝導体は層状構造を有し,層に平行に 特徴的な変調構造が生じる。結晶構造像から金属原 子および酸素原子の位置を解析した。2)イットリウム(Y)系高温超伝導体における酸素 原子の分布の解析:YBa2Cu3O6.4における酸素原子 は直径数10nmのドメインを形成しながら不均一に分 布する。さらに,ドメイン内に数nmのクラスターが 生じている。3)イットリウム(Y)系高温超伝導体における双晶 境界の構造解析:本境界の構造は電子線照射に極め て敏感であるが,低線量下での長時間露光により, 構造像を撮影し,粒界における原子配列を決定した。 4)ビスマス(Bi)系高温超伝導体における表面構造 の解析:本結晶の破断面を横方向から観察すると, 結晶の表面が波状にうねっている。これは上記1)の 変調構造の影響によるものである。5 )β―アルミナ(β-Al2O3)における電子線照射誘起 構造の解析:本結晶はイオン導電性を有するが,電 子線照射により,導電面が最初にダメージを受けて, 構造が変化する。6 ) ReO3結晶のくさび形試片の端部に非晶質が発生 していることを見つけ,これが材料内での水素の吸 収のよるものであることを示した。7 ) mNb2O5・nWO3複酸化物はm/nの比率により, 微細構造と電気的特性を変える。特にm/n = 3/8の 場合には特異な散漫散乱を与えるが,その原因がク ラスターの生成によることを構造像の観察に基づい て明らかにした。8 )シリコン(Si)結晶中には電子線照射により特徴的 な欠陥が誘起されることを見いだし,その構造の解 析に成功した。(基本構造の解析)結晶の構成元素種が増えると,結晶の単位胞が大 きく,かつ,複雑になる。また,単結晶が得にく く なる。このため,従来のX線回折法等による構造解 析は困難になる。一方,高分解能電子顕微鏡法では, 大きな単位胞ほど結像が容易になり,又,単結晶を 必要としないから,このような場合に特に効果的に, 単位胞内の原子配列を解析できる。この場合原子位 置の精度はそれほど高くないが,周期性・対称性の 観点から,単位胞の形・大きさを指定し,その内部 の各原子の位置を決定できる。この際,前述の電子 回折像による空間群決定法および3次元像解析法が 大変役立つ。高温超伝導体は一般に多数種(4種以上)の構成 元素によるために,単結晶を得ることは通常困難で ある。このため,粉末中性子回折・リートベルト解 析法が近年急速に進歩した。この方法は,一般に基 本構造が分かっていることを前提とし,その精密化 において威力を発揮する。我々は高分解能電子顕微 鏡像による解析法を多くの新規高温超伝導体に適用 し,その構造解析に成功した。特に,炭酸基を含む 一連の新超伝導体(TlBa2Sr2Cu2(CO3)Oz, (Cu0.5 CO0.5) Ba2Ca3Cu4Ozなど)の基本構造の解析はほとん ど全て本電子顕微鏡を用いてなされた。(3)今後の展開上記のように,我々は高分解能電子顕微鏡を用い ての結晶構造および微細構造の解析法を確立した。 本法は今後とも多くの新規先端材料の解析に適用さ れるであろう。特に,超高圧下・超高温下などの特 殊環境下で合成される高温超伝導体及びダイヤモン ドなどの超硬物質について,さらに新たな成果を得 ることが期待される。近年,結晶格子像の観察を通じてその所在が明ら かにされた結晶内の微細構造を利用して,新規結晶 構造を予測することが2, 3の結晶について為され ている。しかし,微細構造の安定性に関する検討が これまでは欠けており,一般的な方法は未開拓であ る。もし,微細構造の安定性の考慮の下に,新規の 構造を予測できるならば,新しい材料の開発におい ても有効な方法になるであろう。これは従来は受動 的な微細構造の観察・解析技術を能動的に利用する ことを意味する。ハード面から見れば,超高圧電子顕微鏡は比較的 大きなレンズ空間を有するので,付属装置を組み込 むことに関して潜在的に大きな可能性を持っている。 現在,技術的に可能と考えられ,興味深いデータを 期待できるものとしては,試料の加熱あるいは冷却 下での高分解能観察装置などが挙げられる。また, SS-CCD(slow scan-charge coupled device)の導 入による動的観察も新規なデータをもたらすであろ う。さらに,電子ビームの照射による試料損傷をで きるだけ低減することは長年の課題であり,Imaging Plateの使用はbreak-throughをもたらす可能性を 秘めている。参考文献[1] S. Horiuchi, K. Muramatsu and Y. Matsui, “The crystal structure of 4Nb2O5 ・ 9WO3 stud­-ied by l MV high-resolution electron micros- copy” Acta Crystallog. A34 (1978) 939.[2] Y. Matsui, S. Horiuchi, Y. Bando, Y. Kitami, M. Yokoyama, S. Suehara, I. Matsui and T. Katsuta, “Ultra - high - resolution - HVEM(H-1500) newly constructed in NIRIM I. Instrumentation” Ultramicrosc. 39(1991)8.3―2 分析電子顕微鏡超微細構造解析ステーション 総合研究官板東義雄(1)はじめに材料の持つ微細な組織や構造を原子のレベルの超 微細な領域において解析し,材料の機能や性質の発 現の原因を明らかにすることは,材料研究の基盤的 評価技術として極めて重要である。電子,イオン,光などのマイクロビームを用いた 分析技法は一般にマイクロビームアナリシスと呼ば れ,材料の局所構造,表面や界面構造の解析に盛ん に利用されている。これらの手法の中で,入射ビー ム を最も細く 絞る ことができるのは電子線であり, 現在原子の大きさ程度のサブナノ メートル径にまで 収束することができる。ここでは,電子ビームを用 いた評価法として分析電子顕微鏡を取り上げ,当所 においてこれまで行ってきた研究成果をレビューし, 今後の分析電子顕微鏡の開発の目標と新しい解析研 究の動向について考えてみたい。(2)現在の成果分析電子顕微鏡とは透過型電子顕微鏡(TEM)の 鏡体に半導体X線検出器やエネルギー分析器などの 付属分析装置を組み込み,TEM像の観察を行いなが ら視野に対応した局所的な領域での構造,組成や結 合状態を測定する装置を言う。特性X線の検出はエ ネルギー分散型X線分光法(EDS)で,非弾性散乱 電子の検出は電子エネルギー損失分光法(EELS)で 行う。分析電子顕微鏡の利点は格子像観察に加えて, EDSやEELS観察,収束電子線回折など多岐の観察 手法を併用して材料の総合的な知見が得られること である。当研究所における分析電子顕微鏡研究は,1984年 に400kVの高分解能分析電子顕微鏡の開発,1993年 に300kV電界放射型分析電子顕微鏡の開発等を進め てきた。400kVの分析電子顕微鏡の開発では,加速 電圧をそれまでの200kVから400kVに高電圧化し, 性能の向上を図った。即ち,加速電圧の増大により, 1)分解能の向上,2) EDSやEELSにおけるピー クとバックグランド比(P/B)の向上,3)空間分解 能の向上等を理論的,実験的に明らかにした。この 事により,従来困難であった高分解能観察と高感度 分析の併用観察手法を確立させた。この手法を用い て,AℓN系の組成多形などの未知物質の組成と構造 解析や窒化ケイ素の3重点粒界の組成分析等を行っ た。しかし,400kV分析電子顕微鏡の電子銃は既存の LaB6のエミッターを用いた熱電子銃であったため, 電子ビームを約1ナノメートル程度にまで細く絞っ たとしても,プローブ電流が約10-11アンペアと小さ く,測定可能な分析信号を検出することができなか った。これを解決するため,1993年に開発した分析 電子顕微鏡には,従来の熱電子銃に比べて約100倍以 上の輝度を有する電界放射型電子銃を搭載した。新 しい装置では電子ビームを最小で約0.4nm径にまで 細く絞ることができ,しかも約1×10-9といった大き なプローブ電流値が得られた。300kV電界放射型分 析電子顕微鏡を用いて,これまで分析が困難であっ た窒化ケイ素の2粒子の粒界層(約1ナノメートル 幅)の組成分析や,AℓN系の組成多形,さらにInFeO3 (ZnO)13のホモロガス新物質の変調構造の解析や立方 晶BC2Nの構造解析を行ってきた。ここでは,研究成果の1例として立方晶BC2Nの 結果を示す。CとBNは構造や性質が非常に似てい ることから,両者の間に固溶体が生成すると考えら れている。低圧相のBC2Nは既に当所の佐々木らに よりその存在報告されているが,高圧相については いくつかの研究はあるものの,その存在が十分に解 明されてはいない。試料は黒鉛状BC2Nをベルト型高圧装置を用いて, 7.7GPaの高圧,2300℃の高温で,約15分間処理した ものである。図1は立方晶B―C―Nの格子像である。 写真中の黒い点の配列はダイヤモンド型構造を現わ し,計算像(写真中に揷入)は実測の格子像とよく 一致している。本装置の特徴は格子像観察をしながら,電子ビー ム径を約1ナノメートル以下にまで絞って,特定の 領域からの分析ができる点にある。図中はこのよう な条件で観測されたスペクトルでB, C, Nの3元素 のKエッジが明瞭に観察されている。スペクトルの 微細な形状はダイヤモンド型構造特有のσ*ピークを 含んでおり,この事実か.らも試料がダイヤモンド構 造を持っていると言える。さらに,スペクトルの定 量分析を行うと,組成はおおよそBC2Nであること が判明した。以上のように,分析電子顕微鏡を用い て初めて,ダイヤモンド構造を持つ立方晶BC2Nが 高圧相として存在することを明らかにすることがで きた。(3)今後の展開1)原子1個の検出と化学状態の画像化分析電子顕微鏡の究極の観察目的は原子1個を検 出し,しかもその原子の種類(元素)だけでなく結 合や価数などの化学状態をも画像として識別するこ とである。EELS法は近年半導体を利用したパラレル検出法 が開発され,従来のシリアル法に比べて,検出効率 が1桁以上向上し,しかも電界放射型電子銃を搭載 した高輝度な電子ビームの利用により,径約1ナノ メートル程度の領域(原子数で数百から数千個)の 分析は困難なくできるようになっている。さて,原子1個の検出が可能か検討してみたい。 今,300kVの電界放射型電子銃(輝度約109A/cm2 str)で酸素原子1個を検出すると仮定する。イオン 化散乱断面積から推定される酸素原子1個からの非 弾性散乱電子の信号強度は約数十(電子/秒)となり, 原理的には原子1個の観測も可能と思われる。しか し,実験的には信号に伴うノイズのデータ処理技術, 電子線照射損傷の軽減化,試料ドリフトの補正技術 など様々な要素技術の開発が求められる。EELSはスペクトルの分解能が良く,元素の同定だ けでなく,スペクトルの微細形状から電子状態,価 数,配位状態などの情報が得られる。近年,エネル ギーフィルタを電子顕微鏡本体に組み込み,元素の マッピングや化学状態のマッピングを高分解能で観 察しようとする試みがある。このような機能を持つ 高性能な原子識別型電子顕微鏡の開発が今後の課題 と思われる。2)原子レベルでの動的観察これまでの電子顕微鏡観察の中心は室温において もっぱら静止している原子を高分解能で観察してい た。セラミックスなどの先端材料は高温で合成され る事から,その生成のプロセス(化学反応)を原子 レベルで動的にその場観察する技術の開発が今後の 課題と考えられる。このためには,高温(約1500度 C)で安定に稼働する高温加熱試料ホルダーの開発, 試料雰囲気のコントロール,試料ドリフト補正技術, 高画質時間分解型記録系,画像処理技術など早い変 化で起こる原子の動きを組成と構造の点から定量的 に解析するための要素技術の開発が不可欠であると 思われる。ダイヤモンド状BC2Nの格子像(計算像とEELSスペクは写真中挿入)。図1300kVの電界放射型分析電子顕微鏡を用いて撮影したダイヤモンド状BC2Nの格子像(図中は 計算像)と約1ナノメートルのプローブ径を用いて測定したEELSスペクトル。格子像観察と EELS測定を併用することにより、立方晶BC2Nの組成と構造を初めて明らかにした。3―イオン散乱分光超微細構造解析ステーション 主任研究官㔫右田龍太郎(1)はじめに低エネルギーイオン散乱スペクトロメトリー(LEIS あるいはISS)が1967年に初めて表面解析に適用され て以来,四半世紀の歳月が過ぎた。この間,表面の 組成分析や構造解析に適用され,多くの成果が挙げ られてきた。なかでも,1982年に青野らにより直衝 突イオン散乱スペクトロメトリー(ICISS)が提案さ れてからの,低エネルギーイオン散乱の表面科学分 野における研究論文数の増加は目覚ましく,低エネ ルギーイオンを用いた表面構造解析手法は,ほぼ完 成したと言える。この場合,イオンの散乱は古典力 学的な粒子,あたかもビリヤードの玉の衝突として 取り扱うことができる。しかし,実際には,イオン は質量を持った単純な剛体球ではなく,内部電子構 造を有する複合粒子であるため,表面電子系と多彩 な相互作用をする。実際,イオンの内部電子状態ま で考慮すると,低エネルギーイオン散乱は量子力学 的な衝突問題として取り扱わなければならない。筆 者らは,イオンと表面電子系との相互作用に関する 一連の研究の過程で,低エネルギー(重)水素イオ ンの中性化と電子励起が固体最表面の電子状態と密 接に関係していることを見いだし,この原理に基づ く新しい表面結合状態解析手法を提案している。本 稿では,このようなイオン散乱を用いた新しい表面 解析へのアプローチについて述べ,表面の組成分析, あるいは構造解析については省略する。(2)現在の成果イオンの中性化はイオン化エネルギーによって著 しく異なった様相を呈する。このうち,希ガスとア ルカリ金属のイオンに関する研究は比較的数多く行 われているが,これ以外の,いわゆる反応性イオン の中性化に関する研究例は極めて少ない。なかでも 水素イオンは最も単純なイオンでありながら,中性 化のメカニズムについてはごく最近我々の研究によ り明らかになるまで未解決の問題として残されてき た。図1に示したように孤立水素原子の1s準位は, 電子相関のためイオン化準位(―13.6eV)と電子親 和準位(―0.75eV)とにわかれている。しかし,イ オンが表面に接近すると(d < 2 ― 3 Å),価電子軌 道との間で分子軌道が形成され,これを媒介として図1(重)水素イオンの共鳴中性化を摸式的に示したも の。孤立した(重)水素はAuger機構によりイオ ン化準位(-13.6eV)への電子の捕獲がおこるが、 表面近傍では(重)水素が表面化電子軌道と分子 軌道を形成して共鳴中性化がおこる。電子の捕獲が起こり得る。実際,水素の場合には, 図1に示したように1s軌道がFermiレベル近傍の 価電子軌道と混成を起こし中性化し得ることが,分 子軌道計算により示される。この場合,イオンの中性化の確率は,衝突の持続 時間(数フェムト秒)の間に1sホールが価電子バン ドの中にいかに効率的に拡散できるかで決まり,ホ ールの寿命はバンド幅の逆数に比例する(バンド効 果)。水素の中性化を特徴づけるもうひとつの重要な 因子は,分子軌道が表面のごく近傍でのみ形成され るという事実である。このため,中性化には標的と なる原子の近傍の局所的な電子状態が主に寄与する。 したがって,標的原子がその配位子と金属結合ある いは共有結合している場合には,ホールが容易に価 電子帯に拡散し,中性化が極めて高い確率で起こる。 一方,標的原子がイオン化しているとホールの拡散 が妨げられ,イオンの中性化が抑えられる。このよ うな研究成果からごく自然に,水素あるいは重水素 イオン散乱を用いる全く新しい表面結合状態解析手 法が導かれる。実際の解析例として,固体表面におけるアルカリ 吸着の問題を取り上げる。アルカリ原子はイオン化 エネルギーが小さいため,特に低被覆率では固体表 面でほぼ完全にイオン化して吸着していると考えら れてきた。ところが最近になって,電子相関が強い 場合には,アルカリのs準位がFermi準位にピン止 めされるため,アルカリ吸着子は中性で分極した共 有結合状態をとりうるという計算結果が示された。 今までに数多くの実験的アプローチが行われている が,多くの場合,結果に著しい食い違いが存在する。 このような混沌は,結合のイオン性あるいは共有結 合性が従来の手法では明確に定義できなかったため に生じたと考えられる。Si (100)清浄表面およびPt (111)清浄表面に0.2 モノレイヤーのCsを吸着した試料で得られたD+イ オンのエネルギースペクトルを図2に実線で示した。 いづれの場合も清浄表面では,D+はほぼ完全に中性 化されてイオンとしては何も観測されなかった。し たがって,図2のD+イオンはCs吸着子の存在によ るものである。このときSi (100)表面ではCs吸着 子からの一回散乱に基づく表面ピークA, B, Cとと もに,低エネルギー領域にブロードな分布を持つバ ックグラウンドが現れている。一方,Pt (111)表面 では表面ピークは現れず,スペクトルはバックグラ ウンドのみから構成される。バックグラウンドに関 する議論はここでは省略し,表面ピークのみに着目 する。図2 Csを同量(0.2モノレイヤー)吸着した(a) Si(100) 表面と(表Pt (111)表面から散乱されたE0=100 eV のD+イオンのエネルギースペクトル。この表面に 酸素を吸着したときのエネルギースペクトルの変 化を破線で示す。図2 (a)のCs表面ピークには,弾性散乱による ピークAと低エネルギー側に二本のエネルギー損失 ピークBとCが現れる。このうちピークBはD+が Csと衝突するとき,配位子であるSiの価電子(sp3) をCsの空準位(6s)に励起したことによる非弾性散 乱(電子―正孔対励起)ピークである。一方,Pt(111) 表面ではこのような生き残りイオンに基づく表面ピ ークは現れず,Csから散乱されたD+はほぼ完全に中 性化されている。この結果は,Si (100)表面上のCs はイオン化して吸着しているのに対し,Pt (111)表 面上のそれは中性の吸着状態にあることを示してい る。このように,アルカリ吸着子の結合状態が下地 表面の電子状態によって顕著に異なることがD+散乱 の実験により初めて明らかとなった。Cs吸着したSi (100)表面に酸素を露出すると, 図2 (a)に破線で示したようにピークBの強度が 減少し,損失ピークの位置が低エネルギー側にシフ トする。これは,酸素吸着によりCs-O結合が形成さ れて,より結合エネルギーの大きいO2P電子が励起 されたためである。Pt (111)表面でCsとOが共吸 着した場合,酸素吸着によりバックグラウンドが若 干増大するものの,Csの表面ピークは現れない。こ の結果は,低被覆率では吸着したアルカリと酸素と のイオン的な結合が弱く,吸着子は下地のPtとより 強く結合していることを示している。(3)今後の展開以上述べたように,イオン-表面電子交換に関する 研究のアプローチから,低エネルギーイオン散乱を 用いた新しい表面原子の結合状態解析手法が見いだ され,固体表面吸着系の解析に適用して成功が収め られた。このようにイオンや散乱粒子の内部電子状 態まで含めた高度解析を行うことにより,さらに新 しい表面解析手法が将来見いだされる可能性が期待 できる。また,本稿でも述べたように,イオンは表 面でごく短時間の吸着状態を経た後に散乱されると 考えられる。このことは,気体の吸着,脱離といっ た化学反応のダイナミクスを研究していることと同 じである。将来このような研究のアプローチから, 多くの場合,いまだにブラックボックスの域をでて いない表面化学反応に関するブレークスルーが見い だされる可能性が大きい。3―4 二次イオン質量分析第1研究グループ主任研究官羽田 肇(1)はじめに近年のキャラクタリゼーション技術の著しい進歩 によって,原子オーダーでありながら実像に近い状 態で材料を眺めることが可能となってきた。この発 展にともない,元素分布に関するキャラクタリゼー ション技術も著しく進歩している。材料の微量構成 元素を像として視ることを可能にした二次イオン質 量分析計(以下,SIMS)の開発もこの潮流の一部で あると考えられる。ここでは元素分布を捉える手段 としてのSIMSに焦点をあて,その特徴と将来につ いて述べていきたい。元素分布を議論する際の題材 としては,SIMSの特徴を最も活かした分野である材 料分野,とりわけセラミックス材料の界面・粒界の 問題に話題を絞って話をすすめるのが適当だろう。(2)現在の成果SIMSはその一次エネルギーあるいは電流値に依存 して,表面組成を対象としたStaticなものとむしろ バルク分析を対象としたDynamicなものに分類する ことができる。一次イオンの電流値を小さくしてい くと,単位検出時間におけるスパッタ深さを小さく していくことができる(Static SIMS)。しかしなが ら,ノッキング効果による表層元素とそれより深い 位置での元素とのミキシングに起因して,一次イオ ン電流値の調整だけでは表面組成のみを分析するこ とにはならない。この効果を少なくするには一次イ オン加速電圧を小さくしていく必要がある。加速電 圧を小さくしても2nm以下の分解能を得ることは難 しい。この限界はSIMSだけに限ったものではなく, イオンビームスパッタを用いた深さ方向の分析に共 通した問題であろう。SIMSのうち深さ方向のみならず二次元方向での顕 微鏡的なイオン像を見ることを可能にしたものも考 案され,イオンマイクロアナライザー (IMA)など と呼称されている。イオン像取得にはいくつかの方 法が提案され,実用化されている。一つには一次イ オンビームを走査させ,それと同期させて二次イオ ン信号をCRT上に表示するもので,いわばSEMの イオン版である(マイクロプローブ)。この方法では, 一次イオン径以上の領域より二次イオンが出現して くるため,像分解能の限界は一次イオンの大きさに 依存したものとなる。現在のイオンビーム技術では 数十nmが限界となっている。また,イオン顕微鏡と しての利用法も考案されている。これはイオンレン ズ系を駆使する事で二次イオン出現の位置関係をそ のまま螢光板に拡大し,像として示す方式である。 図1 酸化亜鉛セラミックス粒界に添って拡散する酸素同位体この場合,TEMと同じように,二次元方向での空間 分解能は一次イオンビームのサイズには直接は依存 せず,イオン光学系の精度によっている。現在のと ころ,この方式では数百nmが限界とされている(マ イクロスコープ)。レンズ系の収差,イオンエネルギ ーの単色化により,将来は一桁ほどの分解能の向上 が実現されよう。イオン像観察の例として図1に酸化亜鉛セラミッ クス中の酸素同位体の粒界拡散の像を示した。良く 知られているように酸化亜鉛セラミックスは,粒界 の特異な性質を利用してバリスターとして利用され ている。この素子の劣化は酸素の酸化・還元と密接 な関係があることが知られており,この機能解明を するためには,粒界拡散を調べることが不可欠なこ とであるとされていた。このような分析は,SIMS分 析の立場かからも,微量濃度あるいは同位体分析が 可能である特徴をいかす好例であると考えられる。 ちなみに,図1は,世界で初めて酸化亜鉛セラミッ クス中の酸素粒界拡散を像としてとらえたものであ る。空間分解能の点だけではマイクロプローブによる 方式の方が優れているように思われるが,サイズの 小さな一次イオンを得るには,電流値をpA以下にし なければならないという欠点がある。マイクロプロ ーブによる方法では,実際上,ミクロン程度の深さ 方向での分析は不可能となる,あるいは二次イオン 電流低下をまねき検出限界を著しく大きくしてしま うなどの短所が,この一次電流の小さい事から派生 してくる。それゆえ,粒界分析のように微小領域の 元素分布を解析対象とした場合,両方式を状況にに 応じて併用していく必要がある。粒界分析のいま一つの例としてアルミナ中のMgの 粒界分布について述べてみたい。Mgの効果は,粒界 に析出したMgイオンに関連があると古くから言わ れていたが,これがなかなか検出できなかった。こ のような極微量成分の場合,SIMSの得意とする分野 ではあるが,空間分解能等の問題から難しい分析で あった。ところが,最近,Mgイオンが粒界に偏析し た像が初めて報告された。偏に分解能向上の結果で ある。同様のことが粒界破断すれば,粒界偏析を深 さ方向に変換して評価することができる。図2は, 粒界破断したアルミナの粒界近傍におけるマグネシ ウムイオン強度変化を見たものであるが,数nmにわ たって偏析していることがうかがえる。この方法で は,はるかに容易に微量粒界偏析の問題に対処する ことができる。このようなセラミックス分析につい ては,将来広く普及すると考えられる。図2 マグネシア添加透明アルミナ粒界面からのMgイ オンの強度変化(3)今後の展開バリスタやPTC素子のような界面の構造・組成に 支配される特性理解のために像観察を中心とした微 視的評価が不可欠である。これの評価では,組成や マクロ構造のみならず点欠陥やマクロな欠陥の消長 をも視野に入れておく必要がある。今後,この面を 中心にSIMSを用いた微視的評価法が進んでいくも のと思われる。SIMSの手法によって微量成分分布の 視覚化が可能になっていたわけだが,さらに微視的 機能そのものの視覚化の著しい発展が期待されよう。 また,SIMSの欠点とされていた大きなマトリックス 効果も,中性イオンのイオン化により著しく改善さ れつつあり,より広範囲な応用が期待される。さら に軽元素分析,とりわけ水素分析はこれまで以上に 注目されよう。この分析に関してはSIMSは独壇場 といってもいい。空間分解能に関してもさらに進歩するものと考え られる。深さ方向の分解能は,大部分,イオンミキ シング効果によって決まってしまう。どんなに加速 電圧を抑えても,温度に換算すれば1eVでも一万度 程度になってしまう。これでは,なかなか一原子層 の分析までには至らないだろう。したがって将来的 には,化学的な反応を利用して,最表面層のみを分 析することが考慮されるようになるのではないだろ うか。すなわち,一層ずつ層を積んでいく MBEの膜 合成の逆をやるわけである。引き剝がされたイオン, 一つ一つの分析には質量分析計を使っている限り可 能である。二次元方向の分解能は一次イオンビーム源にの発 達に依存している。現在,高輝度なビームとしては 液体金属Gaが理想的なものとして考えられているが, 残念ながら二次イオンのイオン化効率に難点があり, 微量不純物の分析には不向きである。あらたに分析 にふさわしいイオンビームが見いだされ,これを高 輝度ビーム化することで,SEMに匹敵する二次元空 間分解能を得ることが夢である。3―5 オージェ電子分光第10研究グループ総合研究官田中順三(1)はじめに―オージェ電子分光からみたセラミックス界面―近年,携帯電話,ハイブリッドIC,ビデオカメ ラなどの小型化が進行している。そのため,電子デ バイスの微細化が強く求められている。特に,キャ パシタ,インダクタンス,バリスタなどの粒界応用 セラミックスでは粒界・界面の特性がデバイスの微 細化に直接関係しており,その制御がますます重要 になってきている。セラミックス粒界の電子状態は添加物によって大 きく変化する。添加成分が微量であっても主成分と の組み合わせによっては,粒界の性質を全く変えて しまう。このような粒界の特徴は単純な剛体球モデ ルや対応粒界理論(RCSL理論)だけでは説明で きない。現在,オージェ電子分光法(AES)の装置は高い 空間分解能,高いエネルギー分解能,高い検出感度 をもっている。それらの性能は粒界研究に適してお り,添加物による組成変化や電子状態変化を解析す るのに有効である。これまでにAESを用いて粒界の いろいろな性質が明らかにされている。例えば,粒 界は添加物によって酸化されたり還元されたりする。 そして,その酸化還元状態は粒界のフロンティア電 子の状態を変え,結果として粒界で起こる化学反応 や電気特性を変化させる。本稿では,AESを用い て明らかにされたセラミックス粒界の諸特徴のうち からZnO1)とNiO2)の酸化還元粒界について述べる。(2)現在の成果―粒界の酸素欠陥と陽イオン欠陥―① 酸化亜鉛の粒界:還元された粒界図1に,酸化亜鉛バリスタの粒界の組成分布を示 す。この試料には第2成分としてBiが添加されてい る。Biは粒界に偏析しており,その濃度は結晶粒内 に向かって徐々に減少し最終的にゼロになる。Bi偏 析層の厚さはおよそ2～5 nmである。主成分であるZnとOの分布はBiを添加すると変 化する。図1から,ZnとOの比は粒内で1対1であ る。奇妙なことに,その比は粒界でも変化せず,や はりほぼ1対1である。粒界にはBiが存在するから, 陽イオンの総量(Zn + Bi)は酸素の量より多くなっている。つまり,粒界では酸素が不足している。一方, Biのない純粋なZnOではZnとOの量は粒内でも粒 界でも変わらない。このことは,Biによって粒界が 還元されることを意味している。非線形な電流電圧特性はBiを添加すると容易に得 られるが,Biがないとなかなか得られない。この電 流電圧特性は粒界の「局所的な特異構造:界面準位」 に関係している。粒界が還元されると,その特異構 造が安定化され,電子状態と電子特性に影響を与え ると結論される。②酸化ニッケルの粒界:酸化された粒界図2はNiOセラミックスの粒界の組成分布である。 この試料には半導体化剤としてLiが添加されている。 Bi同様,Liも粒界に偏析している。しかし,NiOの 成分分布はZnOとは違っている。特に,酸素の量が 粒界近傍で増加している点が異なる。酸素の量はNi とLiを足した総和より大きく,NiO粒界が酸化され図1Biを添加した酸化亜鉛バリスターの粒界の組成分 布(Bi偏析層の厚さはおよそ2.3nm)図2 Liを添加した酸化ニッケルの粒界の組成分布ていることを示している。このように,添加物と粒界の酸化還元状態には相 関関係がある。他の多くの材料についても,組成分 布を調べると粒界の分布は粒内と違っていることが 多い。今後,多くの材料についてデータを集積し, 界面構造の安定化と界面準位の形成メカニズムの関 係を明らかにしていく必要がある。(3)今後の展開―界面研究の方向と夢―①定性から定量へセラミックスの研究ではオージェ電子分光を始め とした多くの分光法が利用されている。分光法は, 材料の格子振動から電子状態についての多くの情報 を与えてくれる。現在,高速コンピュータの汎用化 や計算手法の高度化によって,それら情報の意味す るところが詳細に明らかにされようとしている。分光研究の最終目標は材料設計であろう。現在, 無機材質研究所では,分子軌道計算とオージェ電子・ X線光電子分光を組み合わせて,材料の電子状態や 化学反応について調べている。今後の研究の重要な 方向の一つとして,計算科学に基づいた「定性から 定量へ」を指向した研究が重要であると思われる。 ② スタティックスからダイナミックスへ新しい現象を見出す研究はつねに重要である。例 えば原子層制御した界面で起こる現象は基礎的にも 実用的にも重要である。現在,構造や組成の違う材 料からできたヘテロ界面について研究が進められて いる。その研究でもAES・XPSなどの分光測定が重 要な役割を果たしている。ヘテロ界面に関して,チタン酸ストロンチウム SHTiO3基板上にチタン酸バリウムBaTiO3薄膜を成 長する研究3)が行われている。この系では2つの材料 の格子定数が違うため,薄膜は格子緩和しつつ成長 する。結晶格子は基板面に水平な方向に縮んで,垂 直方向に伸びる。どういう理由か,緩和層ではミス フィット転位を見つけることができない。ヘテロ界面の格子緩和はどのようにして起きるか, そのメカニズムを明らかにすることは粒界の構造緩 和の理解につながるであろう。さらに,そのような 格子歪みが材料の特性にどのように影響するかを理 解することが重要であろう。ヘテロ界面の研究は, 成長のダイナミックスと構造緩和が関係した興味あ るテーマである。今後の研究方向として「スタティックスからダイ ナミックスへ」の視点にたって,格子緩和や自己組 織化といった新しい現象を利用する研究が重要であ ると思われる。その結果として,高い機能性を見出 したり,従来の特性を改善することができる実効的 な設計指針を見いだすことができるであろう。国の 研究機関では「今後の研究の方向」と「夢」が一致 した研究を目指すことが社会ニーズからも求められ ている。参考文献1)S.Tanaka, C.Akita, N.Ohashi, J.Kawai, H. Haneda and J.Tanaka,J.Sol.State Chem. 104(1993)36.2 ) J.Tanaka, H.Haneda, S.Hishita, F.P.Okamura and S.Shirasaki,J.Phys.Col. 50(1990) C1-1055.3)重谷寿士,小林和義,藤本正之,杉村渉,松井 良夫,田中順三,J.Appl. Phys.に投稿中3―6 走査型プローブ顕微鏡第9研究グループ主任研究官和田健二(1)はじめに走査型プローブ顕微鏡(SPM : Scanning Probe Microscope)とは,走査型トンネル顕微鏡(STM) と走査型フォース顕微鏡(SFM)とを総称した装置 名のことである。SPMの起源は1982年にIBMチュ ーリッヒ研究所のG.BinningとH.Rohrerによって 発表されたSTMに始まる。STMでは,金属の探針を導電性試料にlnm程度 まで近ずけて,両者間に微小電圧を印加するとトン ネル効果により電流が流れ,このトンネル電流が一 定になるように探針を上下させながら試料面を走査 すると,表面の凹凸を測定することができる。層状 グラファイトや金等ではすでに原子の配列した格子 像が観察されている。最近ではナノメートルオーダ ーの構造制御にとどまらず,原子単位での操作,例 えば原子の引き抜き等も可能になりつつある。また 溶液中での電気化学反応をその場観察できるため, 金属の腐食過程,電解析出過程,半導体/溶液界面構 造及び貴金属電極表面構造などこれまで未解明の基 礎的分野を研究できることも可能になってきた。し かしSTMは,トンネル電流の流れない絶縁体,有機 物,生体等を観察することができず欠点となってい た。この欠点を克服したのがSFMの中心をなすAFM (原子間力顕微鏡)である。AFM は,1986年に G.Binning, C.F.Quate らによ り論文が発表されて以降急に脚光を浴び,この10年 間で装置のハード面及びソフト面を含め急速な発展 を遂げ,最近では様々なAFMファミリーが開発さ れ多機能化が進んでいる。従って無機材料の創製が 重要な我が研究所にとっては,今後極めて有用な装 置になることが予想される。AFMの観察ではトンネ ル電流の代わりに試料と探針(カンチレバー)間に 働く原子間力(引力または斥力)を検出し,これが 一定になるように試料面を走査して表面の凹凸を測 定することが基本である。しかし今日多機能化によ り,試料面の形状だけでなく物性との併用測定が可 能となり,ますます注目度が増している。(2)現在の成果TEMは,試料の形状から格子像まで観察できるが, 電子線照射による試料の熱的ダメージや真空処理に よるダメージが問題である。また,最近のSEMは数 オングストロームの高分解能で三次元構造を観察で きるが,絶縁体や生体のような試料に対しては,白 金や金等を通常数ナノ メートルの厚さで蒸着するた め,真の表面を観察できない。これに対して,AFM は引力,電気力,電磁気力などの物理現象として複 雑な作用力を持つ原子間力の厳密な定義がまだ明か ではないものの,TEMやSEMの欠点を補うことの できる利点を持つ。つまり,将来はAFMを中心と したTEM, SEMとの併用を図ることで,新たな進 展が期待される。SPMの特長は,①熱的ダメージを受けることなく, しかも蒸着せずにそのまま局所領域の形状と諸物性 との併用測定が可能なこと,②測定環境の自由度が 大きいことである。例えば,大気中,真空中,ガス 中及び溶液中等の多様な環境で動作可能である。 SPMの高度化については,探針の改良に加えて装置 のハード面での改良も進んでおり,現在形状測定モ ードの多様化,測定可能物性の多様化,装置の高精 度化の三点について鋭意改善が加えられている。特 に,形状測定モードでは,試料と探針間に働く引力 または斥力の測定を次の三つのモードで使い分ける などの工夫がなされている。コンタクトモードは, 探針を試料表面に10-8N以下の力で押し付けて探針 と試料間の斥力を検出する方法で,最も一般的な測 定モードである。これは高分解能が得られる反面, 試料や探針に傷や変形などのダメージを与えること があるので,柔らかい試料の測定には適さない。摩 擦力や粘弾性の測定はこのモードで行う。これに対 してノンコンタクトモードは探針を試料表面から僅 かに5～50nm離して測定するもので,この間に働く 微弱な引力を検出する。引力は斥力ほど距離依存性 が大きくないため,横分解能はやや劣る。しかし生 体等のように柔らかい試料に対しては有効である。 このモードでは,この他に磁気力や静電気力を測定 できる。サイクリックコンタクトモードはカンチレ バーを振動させた状態で試料に接近させていく方法 で,カンチレバーは最終的に吸着水分層と試料表面 に間欠的に接触するようになり振幅が急激に減少す る。この変化量を検出して試料面を走査するこのモ ードは,特に表面形状が複雑な試料や有機物,高分 子等の柔らかい試料の測定に適している。SPMは以上のように多機能化が進みつつあるが, まだ形状観察が中心で,それ以外は実用化が始まっ たばかりである。とりわけ得られたデータの定量性 にはまだ問題があり,今後の早急な対応が望まれる。我々は基本的な問題として,シュウ酸溶液中でア ルミニウムを陽極酸化して表面に生成した多孔質の アルミニウム酸化皮膜の表面及び皮膜/Al素地界面 の微細構造をAFMにより観察してSEM像との比較 を行った。この結果およそ直径20nmの細孔が分布す る多孔質表面の構造観察については,AFM像と SEM像とに相違が見られ,この場合にはSEM像の 方が正しい微細構造を示し,AFM像は現在の探針作 製技術ではアスペクト比が1以上の多孔体の観察に は不適当であることが判明した。これに対して,逆 電解剝離法により皮膜/Al素地界面で水素ガスを発 生させ物理的手法でアルミニウム材から剝離させた 皮膜面と,飽和塩化第二水銀溶液中で化学的手法に よりAl素地を溶解除去した皮膜面に約3nmの厚さ で白金蒸着しSEM観察したところ,皮膜面の半球状 セルの配列には全く相違は認められなかった。とこ ろがこれら二種類の試料のAFM像には図1の(1), (2)に示したように明かな相違が認められた。こ の原因は化学溶解法では素地のアルミニウムが完全 に溶解除去されるのにたいし,逆電解剝離法では界 面での激しい水素ガスの発生による強引な剝離によ り半球状のセル/セル接合部のAlが一部残留して AFM像に差が生じたものと推察される。このように AFM像では,SEM像では見いだせない真の微細構 造が観察できることが分かった。(3)今後の展開原子間力は引力,電気力,電磁力等の物理現象と して複雑な作用力を含むため,逆に新しい科学分野 としての発展が期待される。また今後はカンチレバ ー先端の先鋭化と再現性を含む装置面でのさらなる 高度化と物性測定の一層の多機能化が展開されるで あろう。例えば,探針の接触動作から非接触動作へ の進展により,あらゆる試料への適用とデータ解析 の改善化が図れる。非接触のダイナミックモードで のサブフェムトニュートンの微弱な力を検出する試 みも検討されている。磁気力顕微鏡(MFM)はすで にハードディスクを代表とする磁気記録の分野で磁 性試料の評価手法の一つとして確固たる地位を築き つつある。また超音波力顕微鏡(UFM)も金属,セ ラミックス,複合材等硬い材料の弾性の評価手法と して提案されている。その他のAFMファミリもこ れまでと同様に新たな評価手法として検討されるで あろう。磁気共鳴顕微鏡ではスピン密度の三次元分 布を求めることができるが,将来は原子スピン種を 識別し立体的な原子分布が観察できるような原子断 層観察装置が完成するかもしれない。また単分子の ピコ秒レベルの高速緩和過程が解析できるような装 置の完成が待たれる。現在分子間力の測定には表面 力測定装置が用いられているが,この装置は単分子 間の分子間力を直接見ることができ,今後ますます 化学の領域で重要な役割を担うことも期待されてい る。AFMでは水中での分子官能基が分布した試料に 対して,力のマッピングによる化学的性質の分布を 観察し,複雑な相互作用の解明の検討も考えられて いる。技術の分野では特に磁気記録,マイクロマシン及 び超精密加工等の分野で表面の数原子,数分子層の 摩耗が注目されており,こうしたマイクロトライボ ロジーの世界での原子間力が重要な課題となってい る。図1(1)逆電解法により物理的に剝離した皮膜面のAFM像図1(2) Al素地を化学的に溶解除去した皮膜面のAFM像3―7 リートベルト解析第4研究グループ 主任研究官泉富士夫(1)はじめにリートベルト法は粉末X線・中性子回折データを 用いて構造パラメーターと格子定数を直接,精密化 する高度な結晶解析技術である。この十年ほどの間 に,わが国でもリートベルト法は多結晶体の構造を 精密化する強力な手段として,固体物理・化学,材 料科学,鉱物学の分野にすっかり定着した。世界各 国に建設されたSR光源やパルス中性子源は,高分 解能粉末回折データの測定をルーチンワーク化し, リートベルト法の解析能力を一段と高めた。さらに, 超伝導酸化物(La1-xBax)2CuO4の発見に端を発した 高温超伝導フィーバーは,リートベルト法の知名度 を飛躍的に上昇させ,その普及を促進する強烈な追 い風となった。われわれはマルチコア・プロジェク トの一環として,粉末中性子回折―リートベルト解 析の組み合わせによる高温超伝導体の構造解析に全 力を挙げて取り組み,国内外で高く評価されてきた。またとない「ひのき舞台」で遺憾なく実力を発揮 したリートベルト法だが,種々の化合物への応用ば かりでなく解析手法についても,着実に進展しつつ ある。無機材研では,高機能リートベルト解析プロ グラムRIETANを独自に開発し,大小の改良を積み 重ねつつ広く配布してきた。このプログラムをさら に充実させていくこと,特に,回折強度をより精密 に計算することと,安定・確実に正しい解を求める 方法を確立することが今後の課題として残っている。(2)現在の成果散乱ベクトルQの長さQ ( = Q｜Q ｜ =2π/d=4 πsinθ/λ, d :格子面間隔,θ:回折角,λ:波長) を横座標として,一連の回折強度yⅰ(ⅰ=1,2,3,...) を測定したとしよう。リートベルト解析では,仮定 した初期構造モデルに基づいて,回折パターン全体 を対象とした当てはめ(カーブ・フィッティング) を行なう(図1)。すなわち,i番目の回折点Qiに対する計算強度を ƒ(Qⅰ;χ1,χ2,χ3, ...)ƒi(χ),統計的重みをωiとした とき,重みつき残差二乗和を最小とする一組の可変パラメーター χを非線形最 小二乗法により精密化するのである。構造パラメーターの初期値が必要だということは, とりもなおさずリートベルト法だけでは未知構造は 解析できないことを意味する。リートベルト法で構 造を精密化するには,なんらかの手段で構造モデル を組み立てなければならない。測定点ⅰにおける個々のブラッグ反射の寄与を合計 し,バックグラウンド強度B(Qⅰ)を加えると,モデ ル関数Fⅰ(χ)が得られる:図1 高圧下で合成した斜方晶系La2Cu2O5の中性子リートベルト解析結果。 プラス(+ )のシンボルは観測強度、それらに重ねてプロットされた 実線は計算強度、一番下の実線は観測強度と計算強度の差を示してい る。短い縦棒はブラッグ反射の位置を表わす。ただし,Φ(Qⅰ)は入射ビーム強度分布,A (Qⅰ)は吸収 因子,sは装置や測定条件に依存する定数をすべて 吸収させた尺度因子,kは反射の番号,mkはブラッ グ反射の多重度,Fkは構造因子,EkとPkはそれぞれ 消衰効果と選択配向を補正するための関数,L(Qk)は ローレンツ・偏光因子,Qkは反射のピーク位置,G (Qⅰ―Qk)≡G(ΔQ)は回折プロファイル形を近似する ためのプロファイル関数を示す。リートベルト解析の目的は,Fkに含まれる構造パ ラメーター(占有率,原子座標,原子変位パラメー ター) と Qkに間接的に含まれる格子定数を精密化す ることにほかならない。リートベルト解析結果の信頼性は,ƒⅰ(χ)をいかに 厳密に計算できるかという点にかかっている。的を 射た構造モデル[Fk]が必要なのはもちろんのこと, プロファイル[G (ΔQ)]やバックグラウンド[B(Qⅰ) ] の形が実測のパターンによくフィットし,消衰効果 [Ek]や選択配向[Pk]がきちんと補正できること も要求される([]内は関連する関数)。無機材研で開発されたFORTRANプログラム RIETANが日本におけるリートベルト法の普及・定 着に決定的な役割を果たしたことは,誰もが認める ことだろう。RIETANは日本における標準的なリー トベルト解析プログラムとして数多くの研究成果に 貢献し続け,今やほとんど公共的なソフトウェア資 産とみなされるまでに至った。一通りの機能を備えたRIETANが完成したのは 1980年代の半ばである。やや遅れて,高エネルギー 物理学研究所の中性子散乱研究施設KENSに建設 された飛行時間(time-of-flight: TOF)型粉末中性 子回折装置HRP用に最適化したRIETANも登場 した。このTOFバージョンは,高温超伝導体を中心 とする無機・金属化合物の構造解析に威力を発揮し, 注目すべき成果を次々に生み出した。現時点でのRIETANの最新バージョンは RIETAN-94(角度分散型回折法用)とRIETAN-96 T (TOF中性子回折用)である。RIETAN-94は通 常の粉末X線回折装置に加え,日本原子力研究所改 造3号炉の高分解能粉末中性子回折装置HRPDで 測定した強度データの解析に広く利用されている。 RIETAN-96TはHRPの後継機である多目的TOF 粉末中性子回折装置VEGA専用のソフトウェアとし て開発した。これらのプログラムには,少なくとも これから十年間は大きな問題もなく使い得るだけの 充実した機能を盛り込んだと自負している。しかし, 今後も絶えず改良を積み重ね,細部にいっそう磨き をかけていくことにより,粉末X線・中性子回折の 構造解析への応用を積極的に推進・支援していくつ もりである。MS-DOS マシンおよび Macintosh 用 RIETAN- 94は,無機材研のanonymous FTPサーバーから Internetを通じて無償で手に入る。このサイトにはつ ねにRIETANの最新バージョンが格納してあり,い つでも自由にダウンロードできる。ご希望の方は, izumi@nirim.go.jpに電子メールをお送りいただきた い。折り返し,ファイルの転送方法を詳述したメー ルを返送する。(3)今後の展開リートベルト法が開発されてからすでに30年近く が経過した。この間,ƒⅰ(χ)に含まれるさまざまな因 子・関数の計算方法が着実に進歩し,放射光源や強 力中性子源の利用により半値幅,S/N比などが大幅 に改善された結果,リートベルト法の解析能力には ますます磨きがかかってきた。リーベルト解析は化 学組成の結晶構造に及ぼす影響や,高・低温,高圧 および特殊雰囲気における構造変化を調べるのに適 している。単に常温常圧下での構造を精密化するだ けでなく,このような特殊環境下での構造変化を追 求する手段としてさらに広く活用されることが望ま しい。中性子散乱の研究を主目的とする新しい加速器が 10年以内につくば市に建設される可能性が高まって いる。その完成時には世界最強のパルス中性子源と なり,分解能や入射ビーム強度の異なる複数のTOF 粉末中性子回折装置が設置されるのは確実である。 われわれはリートベルト解析プログラムの開発や粉 末回折装置の建設・維持・運転を積極的に支援する とともに,それらを徹底的に活用していくつもりで ある。リートベルト解析の手法は,今後も停滞すること なく進歩していくと予想される。パソコンの記憶容 量と性能向上に伴い,すでに机上のパソコンを使っ て,リートベルト解析を1・2分でやってのけると いう,10年前には夢だったようなことが可能となっ た。ユーザー・インターフェースをより親しみやす いものとし,全自動に近いかたちで解析できるよう にしたソフトウェアも出現した。また,最近,粉末回折パターンだけから未知の構 造を解く非経験的(ab initio)構造解析がめざまし く発展してきた。とくに粉末回折専用の直接法プロ グラムSIRPOWが出現したことの意義は大きい。Ab initio法はリートベルト法の利用価値を一層高めるも のであり,今後しだいに普及していくと予想される。3―8 変調構造解析第11研究グループ 主任研究官山本昭二(1)はじめに変調構造は1927年には既に発見されていた古くか ら知られた構造であるが,これが解析出来るよにな ったのは約15年前からである。固体は通常原子が規 則正しく並んで周期的に繰り返す構造(結晶)であ るが,変調構造ではこれが波状に歪んだ構造である。 さらにこの波の周期は結晶の周期の整数倍にならな い。この様な場合は波の方向の繰り返しがなくなっ て,周期が一部なくなってしまう。図1にBi系高温 酸化物超伝導体の変調構造を示す。四角は波がない ときの単位胞(繰り返しの単位)であるが,原子層 が上下方向に波打っているため,水平方向の周期が 無くなっているのがわかる。変調構造は古くは合金, 鉱物などで知られていた。また最近では,酸化物超 伝導体,誘電体等にも多く見つかっている。結晶構 造の解析法は古くから知られていたが,これは結晶 では原子が3次元周期を持っていることを使ってい る。このため,周期が破れている変調構造の解析に はこの方法が使えない。これが可能になったのは,図1Bi系高温酸化物超伝導体の変調構造。大きな白丸 は酸素原子、小さな白丸は銅原子を、黒丸および 灰色の丸はその他の金属原子を表す。水平方向に 向かう変調波のため結晶の周期(四角)がなくな っている。1974年に変調構造は4次元以上の仮想的な空間の周 期構造を考えると,決定できることが判明したため である。4次元空間の結晶構造を決定するには,こ の結晶の対称性の研究が必要であった。通常の結晶 では,その対称性は3次元空間群で表すことが出来 る。空間群は無限に大きな結晶を考えた時,結晶を 回転と並行移動によって元の原子配列と同じにする 操作の集合をいう。通常の結晶の対称性を表す空間 群(3次元空間群)は230個あることが知られている。 一方4次元の結晶では4次元空間群が必要である。 1977年にこの空間群の理論が発表され,1981年には, 変調構造の対称性を表す空間群の表が計算された。 変調構造の対称性を記述する空間群は超空間群と呼 ばれる。変調構造には2方向あるいは3方向の周期 が破れているものも見付かっている。これらは4次 元空間でなく,5次元あるいは6次元の結晶を考え なければならない。またこれらの対称性は,5次元 あるいは6次元超空間群で表される。n方向で周期性 が破れている構造をn次元変調構造という。従って, n次元変調構造は(3 +n)次元空間の結晶として表す ことができ,その対称性は(3 + n)次元超空間群で表 される。結晶構造はX線回折,中性子回折等の回折実験で 決定される。これはX線,中性子線等を結晶に当て, そこから回折してくるX線,中性子線の強度を測定 するものである。この回折線の強度は原子配列から 計算される構造因子で決定される。4次元結晶に対 する構造因子の理論式は1974年に与えられた。これ はしかし4次元超空間群を考慮したものではなかっ た。当研究所ではどのような変調構造でも解析出来 るコンピュータプログラムを開発するため,空間群 の理論によって構造因子を書き換え,超空間群の対 称操作を含んだn次元変調構造に対する構造因子の 式を導出した。さらに解析に必要な数種のコンピュ ータプログラムを開発し,代表的な1,2, 3次元 変調構造に適用してこれらがいずれも解析出来るこ とを示した。また当初発表された4次元空間群の表 も再検討し,誤りを発見してこれを訂正した。1988 年にBi系酸化物超伝導体で変調構造が発見された が,これはX線構造解析に必要な大きさの単結晶を 得るのが困難であった。このため,粉末法による構 造解析プログラムを開発し,この超伝導体の変調構 造を初めて決定した。(2)現在の成果汎用の変調構造解析プログラムを開発したため, それまで解析が困難であった構造を決定することが 出来るようになった。プログラムと構造解析理論の 有効性を確かめるためAuCu合金の1次元変調構造 を4次元空間群に基づいて,またFe1-xOの3次元変 調構造を6次元空間群で解析し,構造を決定した。 また温度領域により複雑な構造変化を起こす物質と して広く研究されていたチオ尿素SC(NH2)2に見ら れる1次元変調構造,TaS2およびAuCd合金にみら れる2次元変調構造,岩石の構成要素として重要な 鉱物である長石の1次元変調構造等の構造を決定し た。特に長石の変調構造は20年も研究されながら詳 細な構造が不明であった複雑な構造であり,この方 法の有効性を示すものであった。この方法で解析す る際の,難しい点の1つに,n次元超空間群を決定す ることがある。このため全ての4次元超空間群をコ ンピュータで導き,これが775個あることを示し,そ れまでに計算されていた結果の誤りを正した。これ によって,1次元変調構造の決定はかなり容易にな った。1988年にはBi系酸化物超伝導体が発見され, これが超伝導臨界温度の高い重要な超伝導体である ことが分かった。しかしこれは変調構造を持ってい たため1年以上も構造が決定できなかった。また単結 晶を得るのが困難な物質であった。このため粉末法 による構造解析プログラムを開発することによって, 構造を決定することに成功した。現在この超空間群 の表およびこれらの解析に用いたプログラムはイン ターネットで世界中に公開されている。これによっ て現在変調構造の解析例が急増してきている。(3)今後の展開変調構造の解析に用いられた理論は,周期性のな い変調構造を高次元の周期性のある結晶に置き換え て解析するものである。これはこれとは異なった周 期性のない複合結晶や準結晶の解析にも拡張され, 1990年にこの理論に基づいて複合結晶の構造解析が 当所で初めて行われた。また1984年に発見された準 結晶はこれまでの結晶,変調構造,複合結晶と全く 異なった構造を持つことが分かって来た。当所では 1986年からこの解析法の研究に取り組んでおり,最 初に発見されたAlMn準結晶の有力なモデルおよび, その後発見されたこれとは異なった対称性をもつ AlCoNi準結晶のモデルを与えた。この解析には変調 構造あるいは複合結晶の解析プログラムは使用でき ない。そのため準結晶構造解析用のコンピュータプ ログラムを開発している。これが完成すると,現在 知られている周期性のない結晶の解析が全て出来る ようになる。X線が結晶で回折しこれによって構造 を決定出来ることがわかったのは,1912年のことで ある。これを発見したLaueは1914年にノーベル賞を 受賞した。以来通常の結晶はほとんど構造が解明さ れ,20世紀の技術革新に多大な寄与をしてきた。最 後に残った変調構造,複合結晶,準結晶の内,最初 の2つはほぼ解析できるようになった。準結晶はこれ までにない特異な原子配列をしており,物理的な性 質も特異なものがあり,新しい材料に発展する可能 性も残されている。この構造の解析法の完成によっ て,全く新しい準結晶材料が登場することが期待さ れる。3―9 放射光超微細構造解析ステーション 主任研究官福島 整(1)はじめに直進する高エネルギー電子が磁場を横切るとき, 磁場から受けるローレンツ力でその軌道が曲げられ る。この時に,電子が元々もっていたエネルギーに 対応した波長領域を持つ白色光を発生する。この光 をシンクロトロン放射光と呼び,材料解析の分野で は短く詰めて「放射光」と呼ぶことが多い。実際に 放射光関連実験を行うためには,電子(場合によっ ては陽電子)をリング状の軌道にそって走らせる必 要がある。この様な実験施設はシンクロトロンと呼 ばれるが,これが「シンクロトロン放射」の語源で ある。放射光のスペクトルは,放出する電子の持つエネ ルギーでその上限が決まり,その近傍に最大強度の 部分がある。そこから低いエネルギー領域にわたっ て,波長に反比例して強度が減衰していくのがシン クロトロン放射の基本的な特徴である。電子のエネ ルギーが1GeVを越えると,X線領域で強力な白色ス ペクトルを得ることができる。例えば10～20keV近 傍でもっとも強い光を得るには,7～8 GeV程度の 電子のエネルギーが必要となる。また,これらの放 射光は,回転対陰極型の高出力X線発生装置に比べ て,最低でも4～5桁以上輝度が高い。これが,放 射光の二番目の特徴である。放射光の三番目の特長は,その高い指向性である。 電子は,光速に近い速度でストレージリング(シン クロトロン本体)内を走る為,放出される光には相 対論の効果が極めて強く現れる。したがって,放射 光は電子の軌道の接線方向に電子の進行方向へ極め て高度に集中した光として観測される。この光は, ストレージリングを含む面にそった直線偏光光でも ある。(2)現在の成果放射光を用いた実験は,最初は高エネルギー物理 学における粒子衝突実験用加速器(コライダー)の 一部分を利用する形で始まった。この頃の施設は, 第一世代光源とも呼ばれる。研究が進むつれて放射 光利用の重要性の認識も高まり,光源専用加速器が 建設される様になった。その代表的なものが文部省 高エネルギー物理学研究所の放射光実験施設(通称 フォトンファクトリー)であり,軟X線や極端紫外 領域でも多くの施設が建設された。これらは,第二 世代光源として分類される。さらに最近になって, 6～8 GeVと高いエネルギーによる極めて大型の施 設が国内外で建設され,光の供用が開始されはじめ た。これらは,第一,第二世代光源よりもさらに高 度な特徴のために,第三世代光源と呼ばれる。この第三世代光源の特徴は,光の集束度が高い(ロ ーエミッタンス)ことである。ストレージリングの 中を走る電子は,図1の様なベータトロン振動と呼 ばれる螺旋運動を行う。このため,電子の運動にス トレージリングの面に平行な運動成分だけでなく, 面に垂直な成分も現れる。これは,光の集束度を悪 化させるだけでなく偏光度も低下させる事になる。 したがって,電子の軌道を補正する為の磁石を増し てぶれを出来るだけ抑える必要がある。このため, ローエミッタンス光源は第二世代光源に比べて磁石 の数が多くなり,必然的により大型の施設となる。ローエミッタンス光源であることは,もう一つ重 要な利点を提供する。それは,揷入光源と言われる 設備の効果的な利用が可能になる事である。揷入光 源とは,ストレージリングの一部分に直接組み込ま れ,リング単独の時に得られる光よりも2 , 3桁以上 強力で,また場合によっては単色光に近い光を得ら れるようにする設備である。電子が進行方向を曲げ られたとき光を発するのが放射光の原理であること図1ベータートロン振動図2 挿入光源内の電子の軌道 は,最初に触れた。これから,もともとまっすぐ走 ろうとする電子を細かく蛇行させると,蛇行させた 部分からも放射光が発生する事は容易に理解出来よ う。したがって,小さくて強力な磁石を磁場の向き が周期的に変化するように並べてその間を電子を走 らせてやれば,電子は磁場によって蛇行し(図2), 磁場の条件に依存した光を放出する。この時,蛇行 の振幅が大きくなるように設定すると得られる光は 連続光になる。これは,ウィグラー(あるいはマル チポールウィグラー)と呼ばれる。また,蛇行の振 幅がある程度小さくなると,電子の進行方向に放出 される光は干渉しあい,特定の波長だけが強くなる 効果が得られる。この様なものは,アンジュレータ ーと呼ばれる。これら揷入光源を用いることで,第 三世代光源は第二世代光源よりもさらに4 , 5桁強い 光を得ることが出来る。第三世代放射光光源は基本的にX線源としての役 割が大部分であり,今までなされてきた様々なX線 解析技術を,より高感度に,より高精度に,より迅 速に(より高時間分解能で)行える事を可能にする。 無機材料にとって重要なX線解析技術の主なものに ついては,関連の項目を参照されたい。また,今ま で理論的には可能であっても実現が難しかった様々 な解析法,特に10keVを越える高いエネルギーが必 要であった様々な解析法も,第三世代光源の利用で 容易に実現出来るようになる。(3)今後の展開今後,この分野で大きく発展するのは,コヒーレ ント(位相の揃った)なX線の発生とその応用であ ろう。コヒーレントな光は可視光ではレーザーとし て実現されているが,X線領域では利用が容易な程 度のコヒーレント性を持つ光は得られていない。コ ヒーレント光であると,様々な干渉効果を効果的に 利用できる。したがってまず,大変効率よく立体的 な材料解析を可能にしてくれる。例えば,X線領域 でのホログラムの実用化があげられる。また,干渉 効果の敏感さを利用することで,より微細な変化の 観察,より瞬間的な変化の確実な観察へ途が開かれ る。それまで通常の光源用ランプしかなかった可視・ 赤外分光の世界にレーザーが登場したときと同じ様 なインパクトが,コヒーレントX線の登場により期 待できるのである。高度なコヒーレントX線を得るためには第三世代 光源でもまだ力不足であり,すでにその為の第四世 代光源の建設計画が先進諸国に存在し,一部は建設 が始まっている。自由電子レーザーと呼ばれるもの が,それである。これは,長大な線形加速器の末端 に巨大なアンジュレーターを設置して,第三世代光 源よりもさらに3,4桁強力でかつコヒーレントなX 線を得ようとするものである。また,もっと小型(一つのフロアに収まるぐらい)のコヒーレントなX線 を得られる設備の試作計画も存在するなど,光源の 研究開発も着実な進展を見せている。これらの光源を利用した高度な材料解析を行うこ とで,より高機能な無機材質創製が実現出来るよう になるに違いない。3―10核磁気共鳴第7研究グループ主任研究官小野田義人(1)はじめにNMR (Nuclear Magnetic Resonance,核磁気 共鳴)は固体中での原子の電子状態や構造について の情報をもたらす手段として広範囲に使われている が,特にイオン導電体においては伝導イオンの多く がNMRに敏感な核であるという利点があり,伝導 機構の研究に活躍している。イオン伝導の基礎研究の中で,伝導イオン間の相関 が原因と推定されている異常な現象が数多く見いだ され,それら現象を整理し統一的に記述することが 中心課題となっている。1次元系は伝導イオン間の 相関効果や,伝導路中の不純物の影響が顕著に伝導 特性に現れるという特質を持っている。また系が単 純でそれらの効果を理論的に取り扱うためにパラメ ータが少なくてすむという利点がある。そのため1 次元イオン導電体は19 8 0年代より基礎研究の絶 好の目標として脚光を浴びてきた。(2)現在の成果当所で研究した系はAl-プリデライト(KxAlxTi8-x O16 ;略称KATO),ガロチタノガリウム酸アルカリ 塩(AxGa8Ga8+xTi16-xO56 ; A : K+, Rb+, Cs+,略 称:AGGTO),チタノガリウム酸ナトリウム (NTGOX : NTGO10 (NaxTi2-xGa4+xO10), NTGO8, NTGO12など)の3種類である。特に当研 究所で開発されたAGGTOは酸素8員環からなる大 きなトンネルを持ち,現在知られている最も高いイ オン伝導度を示す。また,トンネル壁が緻密でトン ネル間ホッピングが無視できるのみならず,トンネ ル間距離が大きくトンネル間相関をも無視できると いう点で現在知られている最も理想的な1次元イオ ン導電体である。図1にプリデライト(KATO)中の27Al,および RGGTO, CGGTO中の71GaのNMRスピン―格子 緩和時間T1の温度依存性をプロットした。温度が上 がるにつれT1が減少するのはイオンの運動が次第に 激しくなっていくことを示している。イオンの運動 様式が一つしかないときはT1はある温度で極小にな り,それ以上の温度では再び増大する。図の高温側 でT1が再び減少するのは別の運動様式が始まること を示す。図で直線の傾きENMRはホッピングの活性化図1KATO中の27AlおよびRGGTO、CGGTOの中の 71GaのT1の温度依存性の比較エネルギーに比例する。RGGTOの場合ENMRとして 6. 7 mevが得られる。1次元系の特性のために本当 の活性化エネルギーはこのENMR値の2倍になるが, それにしてもE=13.4meV,温度換算にして150Kの 活性化エネルギーは極めて小さい値である。このこ とは150K以上の温度でRb+イオンは格子の周期ポテ ンシャルに捕捉されることなく自由粒子として振る 舞うことを意味する。マイクロ波領域での交流伝導 度が理論限界に近い値を示すことやイオン伝導特性 が自由粒子モデルに従うことと対応する。なお,10K 付近ですでにRb+イオンは動き始めているのがNMR図2 KATOおよびRATOの中の27Alのスピン―格子緩 和時間の周波数依存性で観測される。図2にAl-プリデライトの27Alの低温極限(KATO では45K)でのT1の周波数依存性を示した。古典的 な連続体モデルで導かれているω-3/2則に見事に一致 している。イオン間の相関を考えない独立粒子のホ ッピングモデルでは低温極限でのT1の周波数依存性 はω-2しかなく,ω-3/2依存性はあり得ないとされて きた。プリデライトでこのようなω-3/2依存性が観測 されたことはこの系のイオン間相関が強く,連続体 的な近似が使えることを示している。実際,Frenkel -KontorovaモデルをベースにしたKinkホッピング モデルにより,ホッピング距離と相関距離が一定の 範囲以内にあるときに,この周波数依存性が得られ ることが最近導き出された。1)図3にはNTGO10の23Na, 71GaのT1の温度依存 性を示した。イオンの運動様式はⅠ (20K以下),Ⅱ, Ⅲ, Ⅳの温度領域で分けられるように4つある。Kink ホッピングモデルに基づいたモンテカルロシミュレ ーションによって比熱の計算が最近なされ,伝導イ オンの量xが0.8のとき比熱のピークが3つあること が明らかにされた。Ⅰ, Ⅱ, Ⅲ,領域の運動様式は図3 NTGO10の中の23Naおよび71GaのT1の温度依存性 この比熱のピークに対応すると考えられている。Ⅰ , Ⅱは短距離のイオンの運動,Ⅲは長距離の拡散をも たらす運動様式である。最高温領域Ⅳの運動様式は Na+イオンの3次元的トンネル間ホッピングの始まり と推測される。なお,領域Ⅲおいて伝導イオン23Naで測定した温 度依存性と枠組み中の不動イオン71GaをNMRプロ ーブにして間接的にイオンの運動を観測した場合と で活性化エネルギーの値が大きく異なっている。理 論的には直接測定と間接測定との活性化エネルギー は一致するべきで,AGGTOでは両者は基本的に一 致していた。NTGOXでの不一致はトンネル並びの 異方性と関係しているのではないかと考えられてい る。(3)今後の展開以上,現在までに得られた主要な結果を述べたが, 推測にすぎない部分や,推測さえできない現象とか が多く,目標はまだまだ遠い。今後,よりよい試料 で,直接測定と間接測定の違いなどを手がかりとし てイオン間相関のもたらす多様な現象を理解してい きたい。一方,物性測定手段としての固体NMRは成熟した 手法であり,その能力の劇的な進展は期待しにくい。 しかし,NMR感度は超伝導磁石作製技術の蓄積とと もに着実に向上しており,19テスラ程度の磁場強度 (プロトン共鳴周波数で800MHz)でのNMR測定 が材料研究分野で実現するのもそう先のことではな い。また,MAS (Magic Angle Spinnig)など固体 試料の高速回転技術の進歩は大きく,構造や結合状 態の乱れの研究にNMRが果たす役割がいっそう大 きくなることが期待されている。さらに,2次元NMR やMRI (磁気共鳴イメージ)技術の応用など,材料 研究手段としてのNMRの有用性は今後一層高まる であろう。文献:1)T.Ishii : J.Phys. Soc. Jpn. 60 (1991) 42033―11電子スピン共鳴第11研究グループ主任研究官内田吉茂(1)はじめに無機材質研究所における電子スピン共鳴(ESR) 測定による研究は,主に物質中の不純物の基底電子 状態について行われてきた。ここでは,例としてα 石英単結晶中の隣イオンに局在した不対電子につい ての研究とポーラスシリコン中のダングリングボン ドについての研究結果を述べ,ESR測定により,ど のような知見が得られるかを紹介する。(2)現在の成果石英に隣イオンを固溶する研究は,水熱合成下の 熱水媒体中における電解質のイオン解離平衡状態を 調べるために始められ,隣の固溶量は溶媒中のH2 PO4-イオンの活量に比例することが分かった。隣を 固溶したα石英単結晶の育成は,内熱式圧力容器中 でNaH2PO4水溶液を用いた水熱合成により可能とな り,厚さ1mmのZ板を種結晶として,X軸(2回対図1P4+-SiO2のESRスペクトル図2 P4+-SiO2の不対電子分布 称軸,a軸),Y軸,Z軸(三回らせん軸,c軸)方向 に10×5 ×3.4mmの単結晶が育成された。室温でX 線照射した試料は,120Kにおいて磁場をc軸方向に 印加したとき,図1のような2種類のESR吸収線P (Ⅰ), P(Ⅱ)を示す。P(Ⅰ), P(Ⅱ)は,31P核の磁気 モーメント(I =1/2)との超微細相互作用により低磁 場側と高磁場側の二成分に分離して観測される。磁 場の印加方向を変えたときの吸収線の共鳴磁場の角 度依存性から,α石英(SiO2)中のSiに隣原子が置換 して生じた不対電子は,図2に示すようにPO4四面 体のO-P-O面を2等分する方向を向く 3s+ 3p混成 軌道に局在し,図中のP(Ⅰ), P(Ⅱ)電子状態が図1 のP(Ⅰ), P(Ⅱ)に対応することが分かる。P(Ⅰ)と P (Ⅱ)の強度差は,P (Ⅱ)電子状態がエネルギー的に 高いことを示している。試料温度を120Kより上げて行くと,最初にP(Ⅱ), 次にP( Ⅰ )の線幅が徐々に広くなり,170K以上でP (Ⅱ)の線幅は測定できないほど広くなる。205K以上 で新しい一対の吸収線P(A)が観測され,その線幅は 温度上昇とともに先鋭化する。図1に290Kにおける P(A)を示す。以上のc軸スペクトルの温度変化は, 図2に示した基底状態P( Ⅰ )と励起状態P(Ⅱ)との 間の熱励起による交換速度が,温度上昇とともに徐々 に早くなり,P(Ⅰ), P(Ⅱ)を個々の吸収線として識 別できなくなり,その平均としてP(A)が観測された ことを示している。それぞれの状態にある不対電子 の濃度と交換速度は,ESRスペクトルの解析から求 められ,これらの値の温度依存性から熱的励起によ る局在電子状態間の交換過程を支配するパラメータ (各状態のエネルギー差及び振動状態,活性化エネ ルギー)が求められた。このように単結晶を用いた ESR測定により,スペクトルの角度依存性の解析か ら不純物イオンの占める位置や不対電子の振る舞い について詳細な情報が得られる。ポーラスシリコン(PS)は,単結晶Siをフッ酸水溶 液中で陽極化成することにより作成され,電流方向 に伸びた無数の微細孔と数～数十nmサイズの残留 Siから成る。最近,PSが室温で赤色や青色の可視光 を発光することが報告された。間接遷移型半導体で, バンドギャップが1.1eV(1127nm)のSiから作られた PSが可視域で強い発光を示すことから,発光にはPS 内のナノ構造Siの量子サイズ効果が関与している可 能性が指摘されたことにより,発光機構解明のため の研究が活発になされている。当初,量子サイズ効 果の関与を支持する報告と,類似した光物性を示す Si-H-O化合物,アモルファスSi相などが表面に生 成し発光起源となっているとの主張があり,統一的図3 ポーラスシリコン膜のESRスペクトル見解が得られていなかった。このため,残留Si表面 のダングリングボンドのESR測定を行い,複雑な構 造を持つPS表面の局所構造に関する知見が得られ た。Si (100)ウエハー上に作成したPS層をSi基板から 剝離して得られる厚さ約0.03mmのPS膜(重さ約0.5 mg)のESRスペクトルを,図3に示す。スペクトル は角度依存性を示し,磁場を[100]軸方向に印加し たときの吸収線は,図中の実線で示すように1つの ローレンツ曲線で,[111]軸と[011]軸方向では強 度比がそれぞれ3 :1,1:1の2つのローレンツ 曲線で表される。このような角度依存性は,ESR中 心がC3V対称性を持つことを示している。他の磁場方 向のスペクトルもC3V対称性で決まる強度比と本数か らなるローレンツ曲線の和で記述できる。このよう に分離した吸収線の共鳴磁場の角度依存性から軸対 称性gテンソルの主値(g‖2.0024, g⊥=2.0080)が 求められる。対称軸方向のgシフトが+ 0.0001と小 さいことと,発光効率の低下を伴う表面H原子の脱 離によりESR信号強度が増大する事実から,この E S R中心はC3V対称性を持つ表面Si原子のダング リングボンドに帰属できる。この結果は,PS膜の残 留Siの表面層はシリコンの結晶構造を保持している ことを示し,これは他の物質の付着の可能性を否定 するもので,量子サイズ効果が関与する発光機構を 支持する実験事実と言える。また,線幅の角度依存 性は,表面Si原子位置の対称軸方向の歪み分布で説 明される。(3)今後の展開現在,遷移金属原子を対象とした測定やパルス法 による測定も行いつつある。ESRの測定対象は多く, ダイヤモンド等の半導体化研究においても,シリコ ン中のドナー,アクセプターの研究において示され たように,有力な研究手法である。今後のESR研究 として,光励起状態,特に光触媒の反応素過程の, レーザー技術とパルスESR法を用いた研究は,たい へん魅力的な研究である。欧米における最近の研究報告を紹介し,今後の研 究展開の参考としたい。光伝導度測定を利用したESR 検出法により,ミクロンサイズの一個のアモルファ スSi薄膜トランジスター中の常磁性中心の測定が行 われ,その測定感度は通常のESRに比べ5桁高い。 95GHz (Wバンド)のパルスESRを用いた電子核二 重共鳴(ENDOR)法により,0.5mm程度の単結晶を 用いたAgCl, SiC,蛋白質などの研究が行われてお り,光照射により生じるAgCl中の電子捕獲中心の研 究では,中心のAgイオンから68番目の隣接Agイオ ンの核スピンと捕獲電子スピンの相互作用が測定さ れた。通常のESR測定では1013個程度の電子スピン の集団によるマイクロ波の吸収を測定するが,光学 的検出法により溶媒中に希釈された1個のペンタセ ン分子の光励起三重項状態の磁気共鳴が観測された。このような高感度,高分解能測定技術の進歩とと もに,物質中の不純物イオンなどの点欠陥や光励起 状態などの短寿命化学種の精密解析手法として,材 料開発研究におけるESRの有用性がさらに増すこと が期待される。3―12陽電子消滅第6研究グループ主任研究官赤羽隆史(1)はじめに電子の反粒子である陽電子は,電子と同じ質量を もつ軽い粒子であること,正の電荷をもっているこ と,電子と対消滅してγ線を発生させることなど, 特異な性質を備えており,固体や表面に対するプロ ーブとして非常に高い可能性をもっている。無機材 質研究所においても,この可能性に着目し,陽電子 消滅を用いた材料研究を続けてきた。陽電子の発生 源として,放射性同位元素22Naを使用している。22Na の崩壊から生じた陽電子は,最大エネルギー540 keVの連続スペクトルをもつ。陽電子は,固体中に 打ち込まれると,急速にエネルギーを失い,10-12秒 程の時間内に,熱エネルギー程度になる。この熱化 した陽電子は固体中を拡散し,様々な過程を経て消 滅していくが,この過程を通じて陽電子が打ち込ま れた固体中の情報を我々に与えてくれる。多くの固体の完全結晶中では,陽電子は固体中を 自由に動きまわり,電子の一つと対消滅する。この 時,2本のγ線がほぼ反対方向に放出される。この 状況を第1図に示す。各γ線のエネルギーはほぼmc2 ( = 511keV),運動量の絶対値はほぼmcである。運 動量の保存則から,消滅前に電子・陽電子対が持っ ていた運動量が,2本のγ線の正反対方向からの角 度のずれおよび2本のγ線のエネルギー差に反映さ れる。従って,消滅γ線を同時計測し,一つの消滅 過程からのγ線対であることを確認しながら,2本 のγ線間の角度を測定すれば,電子・陽電子対のも っていた運動量のうち2成分を同時に知ることがで きる。これを二次元角度相関法と呼ぶ。特に,陽電図1陽電子消滅γ線角度相関法の原理電子・陽電子対の持っていた運動量(Px、Py、Pz)はPx = mcθx, Py = mcθy, Pz = (E1 - E2)/c,θx= (x1+x2)/L,θy= (y1+y2)/Lで与えられる。Lは試料・検出器間の距 離。子は熱化しており運動量が電子に比べると小さく, また正の電荷を有しており,固体を構成している正 イオンからは遠ざかろうとする傾向があるため,こ の手法により,固体の結合に関与している電子の情 報を重点的に得ることができる。また,半導体γ線 検出器を用いて,消滅γ線のエネルギー分布を測定 すれば,角度相関法と比較するとはるかに分解能は 悪いが,運動量の一成分についての分布を測定する ことができる。陽電子は正の電荷をもっているために,原子空孔 など正イオンの欠けたところがあると,そこに捕獲 され局在化する。このような状態からの消滅では, 消滅の相手となる電子が,局在化していない場合と は異なるため,角度相関で得られる運動量分布,消 滅γ線のエネルギー分布,消滅するまでの寿命が自 由な状態からの消滅とは異なることになり,これに より,固体内の欠陥に関する知見を得ることができ る。特に,空孔型の欠陥については,陽電子消滅法 は他の方法では得られない高い検出感度を有してい る。また,分子性結晶やイオン結晶などにおいては特定 の電子と水素原子に類似した束縛状態を形成するこ とがある。これをポジトロニウムと呼ぶ。ポジトロ ニウムが形成されると,やはり,寿命やγ線の角度 相関に変化が起こるため,この過程を通じても固体 についての知見を得ることができる。固体表面においては,空間電荷により生じるポテン シャルエネルギーが電子の場合とは逆符号になるた め,陽電子の仕事関数は一般に小さく,物質によっ ては負になるものもある。この性質を利用すると, 陽電子は,表面状態や表面近傍の欠陥などに対する 非常に有効なプローブになる可能性がある。これを 実現するためには,放射性同位元素からの陽電子を そのまま用いるわけにはいかず,エネルギー可変の 陽電子ビームが必要となる。(2)現在の成果無機材質研究所においては,筑波移転の当初から, 陽電子を用いた材料解析を行ってきた。最初は,64Cu を主たる陽電子源とし,一次元角度相関測定,陽電 子寿命測定などを中心に研究をすすめてきたが,64Cu 寿命が短かく不便なため,途中から陽電子源を22Na に切り替えた。特に,1988年に医療用のアンガーカ メラを転用した装置を導入して以来,高効率の二次 元角度相関測定が可能になっている。研究の対象は, 酸化物を中心に,窒化物,シリコンなど広い範囲に わたっており,主として,これらの化合物の結合に図2 Si 〈011〉 方向に射影した二次元角度相関とその異方性。(a)未照射Siの二次元角度相関、(b)その異方性(c) 荷電状態0の複空孔を導入したSiの二次元角度相関、(d)その異方性(e)荷電状態0の複空孔に捕捉された陽電子が与える二次元角度相関関与している電子の状態についての知見を得てきた。 第2図に最近の成果の一例として,電子線照射によ ってシリコン中に導入された複原子空孔についての 二次元角度相関測定の結果を示す。これまで,陽電 子消滅法を用いた電子状態の研究は,バルクの電子 を対象とするものであったが,高効率の二次元角度 相関測定装置の導入により,結晶内に導入された欠 陥の周囲のような特定の場所の電子状態の議論が可 能になったものである。陽電子ビームを用いた実験に関しては,電子技術 総合研究所の電子直線加速器を利用して高強度の低 速陽電子ビームを得ようとするプロジェクトに参画 したことをきっかけに,ビーム利用の研究に着手し, 現在では,放射性同位元素を陽電子源とする低速陽 電子ビーム装置の製作を進めている。第3図に現在 使用している,磁場で低速陽電子を誘導するタイプ のエネルギー可変陽電子ビーム装置を示す。この装 置は,陽電子のエネルギーを変えて,消滅γ線のエ ネルギー分布を測定することなどを目的としたもの で,200eV程度から30keVまでビームのエネルギー を変えることができる。図3 磁場誘導型陽電子ビーム装置概念図(3)今後の展開角度相関測定による電子状態の研究については,測 定すべき対象の数は膨大であり,基本的には,現在 の手法による研究を更に続けることになる。特に, 第2図に例示したような,欠陥近傍の電子状態の研 究は,まだ緒についたばかりであり,今後の発展が 大いに期待できる。エネルギー可変陽電子ビームを用いた研究について は,第3図に示した,磁場で誘導するタイプの簡易 型ビームの他に,静電レンズを用いた陽電子ビーム 装置の製作を進めており,高輝度ビームの生成と, それを利用した,材料表面や表面近傍における欠陥 解析技術の開発を更に進める予定である。3―13 X線顕微鏡第5研究グループ主任研究官下村周一(1)はじめに人間が目で識別できない小さなものを観察する手 段として,17世紀ごろに光学顕微鏡の試作が行われ た。顕微鏡の開発が進むにつれて,光の波長による 限界が明らかになり,より分解能の高い顕微鏡を作 るために,電子顕微鏡やX線顕微鏡が考えられるよ うになった。X線は波長の短い電磁波であり,物質を透過する 能力が高く材料の内部の観察が可能である。またX 線は,原子を励起し蛍光X線を発生させたり,結晶 格子で回折を起こしたりする。このような性質を用 いることにより,材料の形態に加えて,組成や構造 を調べることができる。また大気中での測定が可能 であるので,真空中に入れることが困難な試料に対 しても大変有効である。材料の詳しい性質を理解す るためには,材料全体の性質のみならず,材料を構 成する微細な部分の構造・性質を調べることが重要 である。このような観点からX線顕微鏡が望まれる が,X線を集光するレンズがなかったために,X線 の発見からすぐにはX線顕微鏡を作ることはできな かった。(2)現在の成果最初にX線はコンタクト・マイクロラジオグラフ ィーとして利用された。薄片にした試料を感光乳剤 の上に密着させてX線で露光することにより,試料 内部のX線の吸収の差が感光の差となって現われる。 しかし,この方法では像を拡大することはできない。像を拡大する方法として最初に考えられたのは, X線の点光源の近くに試料を置き,離れたところに 置いたフィルムに露光する方法である。点光源を作 るためには,光源の前にピンホールを置く方法がと られた。X線管球の発達により強度の大きいX線が 得られるようになってから,この方法で成功した。 その後,電子線の集光技術の発展により,微小焦点 のX線源が開発され,実用的な強度のX線の点光源 として利用された。像を直接拡大して観察する方法に対して,試料上 をX線で走査して像を構成する方法も考えられた。 走査には,試料を固定しX線点光源の発生点を走査 する方法と,X線点光源の発生点を固定し試料を走 査する方法が行われた。走査する各点からのX線強 度を記録したり,あるいは同期させて表示すること により,像の表示が可能であり,拡大率やコントラ ストを電気的に制御することも可能である。また, この方法では特性X線を検出することにより,組成 の分析も可能になる。このようにX線顕微鏡は,X線の拡大光学系によ る方式と,走査による方式の2つに分けられる。試 料の内部構造をX線の吸収の差により観察するには, 拡大光学系がより直接的で短時間で観察が可能であ る。一方,走査型はX線の吸収によるコントラスト だけではなく,分析的な情報を持った顕微画像を得 られるという特徴がある。いずれの方式においても, X線顕微鏡の性能向上に重要である大きな問題点は, X線の強度を犠牲にせずに,いかに小さく集光でき るかである。X線を集光するために色々な方法が研究されてい るが,当所ではX線の集光技術としてX線導管の研 究が進められていた。X線導管は,始めは放射光施 設において光源から離れた試料までX線を伝える手 段として研究が進められたが,形状の工夫によって はX線を集光することも可能であるので,微小領域 へX線を照射する光学系として開発が進められた。 X線導管は,細い中空のガラス管で作られているも のである。これは,X線が非常に浅い角度でガラス 表面に入射した場合に全反射を起こすことを利用し てX線を伝えるもので,ガラス管の入り口に入射し たX線は,管の内壁で全反射をしながら出口へ進む ことができる。出口の径を小さくしていくことによ り,X線は収束され微小領域の照射が可能になる。 このときに管の内壁の形状を工夫して,全反射をし たX線が1点に集まるようにすると,より効率良く 強度の大きいX線マイクロビームが得られる。この X線導管の技術を採用して,当所では走査型X線分 析顕微鏡の開発を基礎的な実験から進めた。当所で最初に試作した走査型X線分析顕微鏡は, X線源には市販の微小焦点型を用いた(焦点サイズ 1mm×0.1mm)。ここから発生するX線を試料上に 集めるために,これまで当所で試作し実験に用いて きたX線導管を採用した。X線導管の出口に10μm× 10μmのピンホールを設置し余分なX線を遮��蔽するこ とにより,試料上で約10μm×10μmの範囲にX線を 照射することが可能になる。ここで試作したX線顕 微鏡は,X線を固定し試料を走査する方式なので, 試料はモーターで駆動できるステージ上に固定され る。実際の測定は,試料上のある1点にX線を照射 し,その点から出てくる2次X線をX線検出器によ り検出し,その結果をコンピュータに記録する。次 に試料を微小な量だけ移動させて,すぐ隣の点につ いて同様に測定を行う。この様な測定を試料上の特 定の範囲について行ったあとで,記録されたX線の 強さを,画像として表示させると,試料上の微小な 部分のX線顕微鏡像が得られる。検出するX線とし て,透過してくるX線を選べば,試料の内部の様子 がレントゲン写真の様に調べられる。また蛍光X線 を検出すると,どのような元素が分布しているかを 調べることができる。さらに回折X線を検出すると, どのような結晶が分布しているかを調べることがで きる。この試作した走査型X線分析顕微鏡で,蛍光X線 による測定を試みた例について述べる。希少価値の ある瀬戸物の表面に現われる模様を走査型X線分析 顕微鏡で調べた。試料の表面をX線マイクロビーム により20μm間隔で走査し,試料から出てくる蛍光X 線を調べた。その結果,鉄の蛍光X線による顕微画 像が,表面に現われている微小な模様と一致するこ とがわかり,その模様の中には鉄が含まれているこ とが分かった。このような貴重な試料を分析すると きには,試料を傷めることなく測定が可能なX線顕 微鏡が有効であることが示された。また回折X線による測定の試みは,魚の歯の試料 で行った。歯を構成しているアパタイト結晶からの 回折X線を検出しながら,試料の表面をX線マイク ロビームにより間隔で走査した。その結果,回 折X線による顕微画像には,歯のエナメル質と象牙 質の違いがはっきりと確認できた。それと同時にカ ルシウムの分布の様子も調べられる。以上の様に, この走査型X線分析顕微鏡では,10μm程度の分解能 で,微小な試料の内部の元素や結晶の分布を調べる ことができることが示された。その後,走査型X線分析顕微鏡の性能を向上させ るために,いくつかの改良を行った。より高輝度の X線源を得るために,新しく X線発生装置を開発し た。小さなフィラメントから出る電子線を2段の電 子レンズで収束させてターゲットに当てることによ り,X線が発生する範囲を数μmにすることが可能 になった。これにより従来よりも微小焦点で高輝度 のX線発生装置が得られた。X線を集光するための X線導管は,ガラス管の製造方法を改良して,回転 放物面体や回転楕円体の形状を試みた。これらは円 筒型のガラス管よりもX線を効率良く集光するもの で,3 μm程度のX線マイクロビームが得られる様 になった。試料を走査するステージも,従来のステ ッピングモーターによる駆動から圧電素子による駆 動に変えて,より分解能が高い走査ができるように なった。X線検出器においては,回折X線の検出に 効果のある環状の検出器を試作した。改良された走査型X線分析顕微鏡を用いて,これ まで分析が困難であった合成ダイヤモンドの中に分 布している微小な不純物の分析に成功した。顕微画 像の分解能はおよそ3 μmに到達した。X線顕微鏡あるいはX線を用いた分析のために, 当所で利用しているX線導管の他にも様々なX線集 光方法が研究されている。強力なX線源である放射 光を光源として利用する装置などでは,全反射ミラ ーが用いられている。湾曲させたミラーを組み合わ せてX線を集光する方法で,色々な光学系が研究さ れている。またミラーには,多層膜ミラーなども用 いられる。干渉を利用したゾーンプレートによる集 光技術も盛んに研究されている。効率の面では不利 であるが,非常に分解能の高い像が得られている。利用したいX線の波長領域に応じて,それぞれ適 した集光方法を採用して,X線顕微鏡の研究が進め られている。(3)今後の展開将来のX線顕微鏡の発展に重要な点は,いかにX 線を小さく集光し,十分な強度のX線を得るかとい うことである。そのためには,光学素子の加工精度 を向上させるための技術開発が必要になる。ガラス の形状制御,ミラーの加工方法,多層膜の積層,回 折パターンの加工などは,重要な問題点である。ま たX線の輝度を高くし,X線の検出効率を上げるこ とも重要である。放射光施設の利用も多くなるであ ろう。X線マイクロビームのサイズが小さくなり強度が 大きくなると,短時間で高分解能の分析画像が得ら れるようになる。水分などを含む材料や生物試料な どの真空中に入れることが困難な試料の分析に用い られ,微小な細胞の構造なども調べることが可能に なるであろう。さらに試料の走査方法とデータ解析 により,微小な部分の断面像や,3次元の立体像な どが得られ,通常の顕微鏡とは異なる機能において, 大変有効な装置として発展していくであろう。3―14光学解析(その1) ―レーザー分光―第6研究グループ総合研究官関田正實(1)はじめに物質の三態(固体,液体,気体)のそれぞれにレ ーザー作用が報告されており,また,商用化されて いるものも多いが,本節ではまずレーザー作用につ いて簡単に触れ(詳しくは例えば,A.Yariv,量子エ レクトロニクス入門,丸善,等参照),当所で世界で 初めて合成に成功した浮遊帯域(FZ)法によるNd :Y3Al5O12 (Nd : YAG)固体レーザーを例に,分 光学的手法を用いて誘導遷移断面積(レーザーの利 得)を求める解析技術を概説する。(2)現在の成果レーザーには大別して三準位レーザーと四準位レ ーザーがある。図1で左側は最初にレーザー発振に 成功したルビー・レーザーに代表される三つの準位 からなるレーザーであり,右側は現在最も広く用い られているNd : YAGレーザーに代表される四準位 レーザーの概念図である。レーザー特性を左右する 様々な因子のうち中でも反転分布を起こしやすいこ と及び利得(誘導遷移断面積)が大きいことが重要 である。一般に,物質に入射した光の強度の変化は で表される。ここでtは物質の厚さ,αは吸収係数 といい,図1の三準位レーザーでは また右側の四準位レーザーでは となる。Niはそれぞれの準位の電子の分布数であり, σが誘導遷移断面積である。通常の物質の場合には室 温ではほぼ全ての電子はN0の準位に分布している。 従って(2)式でN0>>N2となるためαは正となって, (1)式で出射光強度Iは入射光強度I0より小さくなり 光は物質によって吸収される。αが大きいときには, 例えばサングラスのように吸収の度合いも大きく物 質からの出射光は弱まり,また小さければ窓ガラス のように吸収は少なくほぼ透明になる。強い光を物 質に当てると逆にN0 << N2となる(反転分布)ため αは負となり,(1)式でI>I0となって光は物質を通過 する間に増幅される。この増幅作用の結果として2 枚のミラー間にレーザー物質を置いて光を往復させ ると,その度に増幅されてあるしきい値を越えると レーザー発振に至る。このレーザー光の特徴として は,指向性の優れたビーム状でエネルギー密度が高 いこと,光波の山と谷が良くそろっていること(コ ヒーレント)等があげられる。三準位レーザーの場 合には上述のようにほぼ全ての電子がN0の準位に分 布するために反転分布を起こしにくいのに対し,四 準位レーザーの場合にはN1の準位の電子分布数は極 めて小さいため容易にN1<<N2となり,反転分布を 起こし易くレーザーとしては優れていることになる。σはレーザー発振実験から求めることができるが, ここでは小さい試料で求めることのできる分光学的 手法により前述のFZ法によるNd : YAGの誘導遷 移断面積を求め方た結果について述べる。図1でR は発光と吸収の両方が観測される準位間の遷移であ り,ℓはレーザー発振線の発光(Nd: YAGの場合に は1.064μm)である。分光学の知見からRとℓの発光 及び吸収の間には次式の関係があることが知られて いる。(求め方は各準位間の遷移確率などをもとにし ているが専門的になるのでここでは結果のみ示す。)図13準位レーザーの模式図ここで,nはRまたはℓでの屈折率,νは波長の逆数 (波数,cm-1),σは誘導遷移断面積である。まず, σRは吸収スペクトル測定からαRが求まるので(2)式で N2 =0として計算される。屈折率nは実際上Rおよび ℓで変化が小さいので(4)式の右辺第1項は1として よい。νは発光及び吸収のピーク波長の逆数として実 験的に求まる。発光強度Iは同じく実験的に求まる が,通常分光測定系は感度に波長依存性があるため に,標準電球を用いた感度補正をする必要がある。 こうしてσιを除く全ての量は実験的に求まるので上 式を用いてレーザー発振の利得である誘導遷移断面 積σιを理論的に求めることができる。上述のように,実験的に発光強度を正確に求める には測定系の分光感度の補正が必要であったように, 正確な誘導遷移断面積を求めるにはその他様々な物 理過程を考慮してその補正を加えなければならない。 第1に,Rは発光と吸収があるために観測される発 光強度IRは発光が物質内を通過した後の量であり, 従って物質による吸収を受けた後の値となる(再吸 収)。表面からtの深さにあるΔtの部分の発光が表 面から出るまでに受ける再吸収を考慮して厚さLの 試料の発光の再吸収補正を行うと正確な発光強度は で近似的に与えられる。ここでIRObsは実験的に測定 される発光強度であり,αRは吸収係数である。次に, 図2の発光スペクトル(横軸は波長ではなくその逆 数の波数でプロットしてある)に示すように,レー ザー発振波長1.064μm (図中で約9400cm-1)の発光 は14 (ℓ2)及び15 (ℓ 1)の2つのピークが関与して いる。これらの発光の始準位(図1でN2の準位)は 異なっており,そのエネルギー差は85cm-1 ( = 10.5 meV = 122K)である。従って,室温では熱平衡によ るボルツマン分布をするために300Kで0.665の分布 をしている。15のピークの1.064μmの波長(14のピ ーク)でのσιの値にこの補正を考慮し,14のピーク のσιの値を加えた値が正確な誘導遷移断面積 となる。実験から得られた値を代入してFZ法による 3つのN d: YAG試料の誘導遷移断面積としての値を得た。この値は従来のチョクラルスキー(CZ) 法によるNd : YAG単結晶の報告値と良く一致している。その他,発光の寿命の一致も 良く,このFZ法によるNd: YAGが従来のCZ法 単結晶と同等の特性を持つことが明らかになった。この他,波長可変レーザーに関しても異なる理論 の基づく解析技術があり,我々はCr : GSGGという Nd : YAGと同じくガーネットに属する波長可変レ ーザー材料の誘導遷移断面積の解析を行い,ドイツ のグループが発振実験から求めた値と非常に良い一 致を得たことを最後に付記する。(3)今後の展開以上,分光学的手法を用いてレーザー特性の一つ である誘導遷移断面積の解析技術について述べた。 この解析法は非破壊的であり且つ小さい試料でも利 得が求められるという特徴があるが,購入したレー ザー・ロッドの特性を評価したいという要望には応 えられる現状にはない。また様々な物理過程を考慮 しないと正確な利得が評価できない点にも問題があ り,今後はより簡単に且つ高度な評価技術を必要と しない,誰にでもできる簡便なレーザー利得の解析 技術を開発する必要がある。図2 Nd : YAGのレーザー遷移に関する発光のスペクトル分解3―14光学解析(その2) ―ラマン分光―第2研究グループ総合研究官石井紀彦(1)はじめに物質に振動数ν0の光を照射したとき,散乱される 光のなかにν0のほかに振動数ν0±νiの光が観測され ることがあり,νiは物質に固有なエネルギー準位に関 する情報を与える。νiが4000～1cm-1程度のエネルギ ー領域にあるものをラマン散乱と呼んでいるが,そ の名称は1928年にC.V.Ramanによりこの現象が発見 されたことに由来している。ラマン散乱を測定し, 物質中のエネルギー準位を求めたり,物質の同定や 定量を行う研究手法はラマン分光法と呼ばれている。 ラマン散乱光の強度は照射励起光のそれと比較して 非常に微弱であり当初は測定も困難であったが,1960 年代から1970年代にかけて,レーザーが励起光源と して用いられるようになってから,ラマン分光法は より一般的な物質の評価手法として様々な研究分野 で利用されるようになった。当所においても筑波に 移転後間もない1973年からラマン分光法による無機 物質の研究が始まり現在に至っている。その間,当 所で合成された数多くの物質の構造研究,同定等に 利用され成果をあげた。ラマン分光法が対象としているエネルギー領域は, 赤外分光法が対象としているエネルギー領域に対応 しており,いずれも分子の振動や回転,固体中の格 子振動や電子遷移等に関する情報を得るものである が,それぞれ選択律を異にし得られる情報は相補的 であることが多い。ラマン分光法は,分光技術とし ては紫外・可視・近赤外領域の分光であるため,高 真空等特定の雰囲気を必要とせず常圧で測定でき, 一般的には特別な試料の加工は不要な非破壊分析手 法である。高・低温下,高圧下等特殊環境下での測 定も比較的容易である。また,励起レーザー光を集 光することにより,1μm程度の空間分解能を有す る微小領域の評価手法としても用いられている。(2 )現在の成果当所においては,これまでに各種の物質について ラマン分光法による研究が行われてきた。ここでは それらの研究成果のいくつかの概要を簡単に記す。a)ダイヤモンド,窒化ホウ素:ダイヤモンド,非 晶質炭素等の炭素化合物ではそれぞれに特有な,比較的強いラマンバンドが観測されるため,ラマン分 光法は炭素材料の微細構造評価手法として有用であ る。特に,ダイヤモンドの研究においては,黒鉛構 造とダイヤモンド構造の同定が可能であること,X 線・電子線回折で検出が困難な非晶質炭素の検出に 有効であること,また,12Cと13C炭素同位体による ラマンバンドのシフトを利用することにより,同じ ダイヤモンドでも起源の異なるものを識別できるこ と等の特徴があり,当所においても,種々の条件下 で合成された気相合成ダイヤモンド等の構造評価に 利用され,良質ダイヤモンド膜等の創製に役だって きた。図1に異なった条件下で合成した気相合成ダ イヤモンドのラマンスペクトルの一例をあげる。ま た,12Cダイヤモンドと13Cダイヤモンドのラマンバ ンドの同位体シフトを利用して,ダイヤモンドの焼 結過程の研究,ダイヤモンド基板上へのダイヤモン図1 異なった条件下で合成された気相合成ダイヤモン ドのラマンスペクトル。(a)から(c)になるにつれて、 黒鉛構造の炭素がなくなり、完全性が良くなって いる。ド膜の成長過程の研究等が行われた。ダイヤモンド とともに,高機能性材料として注目されている窒化 ホウ素については,層状構造の六方晶窒化ホウ素の ラマンスペクトルが詳しく解析され,ラマン活性モ ード振動数の圧力依存性,結合の異方性等の研究が 行われた。また,菱面体晶窒化ホウ素,立方晶窒化 ホウ素についてもラマン分光法による研究が行われ ており,ダイヤモンドの場合と同様に窒化ホウ素の 研究においてもこの手法は有力な構造評価手法であ る。b)金属酸化物:各種の金属酸化物についてもラマ ン分光法による研究が行われた。イオン導電材料に 関連して,一次元イオン導電性を示す各種プリデラ イト及びガロチタノガリウム酸カリウムについてラ マン分光法による研究が行われ,イオン導電機構解 明において基本的な情報のひとつである可動イオン が振動するモード等に関する知見が得られた。金属 酸化物の詳細な格子力学的特性の解析も行われた。 TiO2の多形のひとつであるアナターゼについては, ラマンスペクトルの温度変化及び圧力変化の詳しい 測定,格子力学的計算に基づく解析が行われ,相転 移,格子振動の非調和性等が研究された。また,Mg -Alスピネル固溶体については,ラマン・赤外分光測 定結果に基づき,各イオンの有効イオン電荷等の研 究が行われた。c)金属硫化物:遷移金属を含む硫化物には,イオ ン導電性,電子導電性等各種の機能特性を示すもの が多いが,これらの特性に関連して物質の組成,構 造,相転移,固溶体中での異種原子の分布等につい てラマン分光法による研究が行われた。研究対象と した化合物は,バナジウム,チタン,モリブデン, タンタル,銀,銅等を含む二元系,三元系硫化物等 多岐にわたっている。そのうち,V3S4型構造の固溶 体(Fe,V) 3S4については,金属―金属相互作用の組成 依存性等に関して,層状構造の固溶体(Ta,Mo)1.05S2 については,振動モードの対称性と振動数の組成依 存性の関係等に関して知見が得られた。低温で超伝 導性を示すMxMo6S8(M=Pb,Yb)等のシェブレル相 化合物についてはMo6S8クラスターの構造変化及び M原子とMo6S8クラスター間の相互作用等に関して, Ba-M-S (M = Ti,Zr,Nb,Ta)系の各種新規化合物に ついては構造と化学結合の性質等に関して研究が行 われた。コベリン型構造の固溶体Cu(S,Se)について は,セレン原子と硫黄原子がそれぞれ2種類の陰イ オン位置のうち特定の位置を優先的に占めることが 明らかになった。また,この固溶体は低温で相転移 するが,転移点付近でソフト化するモードが見いだ され,相転移温度の組成依存性等が研究された。銀 による高イオン導電性を示すアージャイロダイト族 化合物Ag7MS6 (M=Ta,Nb)及びAg8TiS6等につい ては,相転移による局所構造の変化等が研究された。d)その他:電子放射材料等として知られている LaB6を含む一連の金属六ホウ化物についてラマン分 光法による研究が行われた。これらの化合物の電気 的性質は,金属イオンが2価のものは半導体,3価 のものは金属である。各化合物のラマン活性モード の解析結果から,半導体と金属における金属―ホウ 素間の相互作用の性質等に関する知見が得られた。 また,結晶のように原子が規則的に配列していない ガラスの局所的な構造研究手法として,ラマン分光 法は有用なもののひとつであるが,当所においても, テルル酸塩ガラスの高温における構造変化の研究等 にこの手法が用いられた。(3 )今後の展開二十数年前,レーザー光を励起光源とするラマン 分光法が物質の評価手法として広く利用され始めた とき,ラマンスペクトル測定の標準的な方法は,ラ マン散乱光をモノクロメーターにより分光し,光電 子増倍管を用いて検出するものであったが,1980年 代になってマルチチャンネル検出器の性能が向上し て使いやすくなり,分光器もそれにあったものを使 用することによって測定に要する時間が大幅に短縮 された。また,分光器としてフーリエ変換分光方式 のものを採用した装置も現れた。一方,ラマン分光 用レーザー光源の進歩も著しく,ここ二十数年の間 に各種のレーザーがラマン分光用光源として使われ るようになった。無機物質の評価研究への利用とい う観点からも,今後,光源用レーザー,光検出器, 測定・制御システム等の性能がさらに向上すること により,一般的測定に加え,高圧・高温・低温下等 極限環境下での測定,微小局所領域のその場観察等 がより容易かつ迅速にできるようになり,解析のた めのデータベースも充実すると考えられる。また, 高時間分解測定技術の発展により,化学反応過程等 の評価手法としてラマン分光法がさらに発展するこ とが期待される。3―14光学解析(その3)一時間分解スペクトロスコピー第7研究グループ主任研究官和田芳樹(1)はじめに近年,光機能性無機材質の研究開発に対する社会 的要請は,光情報伝達,処理や大画面表示等の情報 通信の分野や,太陽エネルギー利用,有害物質の光 分解等の地球環境保全の分野等でのニーズから,飛 躍的な増大の一歩をたどっている。この様な社会的 なニーズに対して現状では既知の技術の改良で対応 せざるを得ないが,いずれエポックメイキングな発 展がなければ対応しきれなくなると予想される。基 礎研究の立場からは,新しい光機能の探索や,望ま れる光機能開発の原理的裏付け行っていくことによ りエポックメイキングな発展のためのシーズを提供 していく必要がある。光機能性材質の機能の評価や 解明のためには定常的な分光法は,汎用性,簡便性 の観点から非常に有効である。しかしながら光現象 は本質的に動的な現象であるので,光機能の発現の メカニズムの原理的な解明には,材質内で光によっ て電子状態,結晶構造に引き起こされた変化を時間 を追って観測して行くことが不可欠である。観測手 段としては,材質の光吸収率の変化を観測する方法 と,発光強度の変化を観測する方法が一般的である。 前者では非常に一般的な情報を得ることができるが 感度が低く,後者は発光を生じる現象にしか適応で きないが高感度であるという利点を有し,互いに相 補的な情報をもたらす。当所では,ピコ(10-12)時 間領域での発光スペクトルの時間変化測定装置とナ ノ (10-9)秒～ミリ(10-3)秒領域で発光,吸収の時 間測定装置を整備している。ピコ秒の発光時間分解測定装置ではモードロック アルゴンイオンレーザーにより同期励起した色素レ ーザー光(パルス幅約2ピコ秒)及びその第2高調 波を励起光源として用い,発光の時間変化をストリ ークカメラ(時間分解能50ピコ秒)または単一光子 計数法(時間分解能50ピコ秒)を用いて測定を行っ ている。ナノ秒の発光吸収時間分解測定装置としては窒素 レーザー及びエキシマーレーザー励起の色素レーザ 一を励起光源として用い,発光,吸収の時間変化測 定をボックスカー積分器ないしはデジタルオシロス コープで観測している。以上の装置を用いて当所では,半導体,ワイドギ ャップ半導体,螢光体,インテリジェント性材質質, 光触媒性材質等の光励起後の素過程のダイナミック スの解明のための研究を行っている。(2)現在の成果当所では以上の装置を用い以下のような成果を上 げている。1)従来発光の単一光子計数法による発光の時間分 解測定では光電子の走行時間の分布が時間分解能の 低下させていた。これを克服するために,マルチチ ャンネルプレートを付加した光電子増倍管を用いた 単一光子計数法による発光時間分解法を開発した。2) hBNの発光効率の良い束縛励起子の螢光寿命を 測定し輻射寿命が1ナノ秒と非常に短いことを明ら かにした。3 )波長選択励起によりⅡ―Ⅵ族半導体の束縛励起 子の変化を観測することにより,束縛励起子の巨大 振動子強度の大きさを明らかにした。4)乱れを有するⅢ―Ⅴ, Ⅱ ―Ⅴ族半導体,半磁性 半導体中における励起子の不均一に広がった準位間 のホッピング緩和のダイナミックスを明らかにした。 5) Ⅱa―Ⅵ族絶縁体の自己束縛励起子の寿命を明 らかにした。6)粘土鉱物層間に,シアニン色素分子によるJ会 合体が形成されていることを明らかにし,更にJ会 合体における励起状態の緩和過程のダイナミックス を明らかにした。7) 一次元無機高分子結晶におけるソリトン,ポー ラロン等の格子緩和過程のダイナミックス及び始状 態依存性を明らかにした。8) 一次元無機高分子結晶の自己束縛励起子の寿命 と消滅過程のダイナミックス,乱れの効果によるホ ッピング緩和などを明らかにした。(3)今後の展開近年のレーザー技術の進歩は著しく,従来レーザ ー研究の専門家のみが扱い得た超短パルスレーザー が,市売品として得られるようになってきた。この ことにより超短パルスを用いた時間分解測定も一部 のレーザー研究の専門家の独占物から材料研究者, 物性研究者の取り扱いうる,有力な実験手段となっ てきた。本研究所でもこの様な状況を鑑み,平成8 年度,9年度にかけて光過渡現象計測評価装置(図 1)を導入する予定である。従来光機能のダイナミ ックス研究では,装置上の制限から時間領域が限定 される,励起レーザーの波長可変性に乏しい,等の図1発光時間分解測定装置問題があった。本装置は,最近のレーザー技術の発 展の成果を取り入れ,これらの問題点を克服すべく 設計がなされている。本装置では,フェムト秒光源 としては,再生増幅Ti :サファイアレーザーと第2, 第3高調波及び光パラメトリック発振,増幅器,ナ ノ秒励起光源としてNd : YAGレーザー励起光パラ メトリック発振,増幅器を用いている。このことに より,時間領域でフェムト領域の超短時間領域から 秒領域まで切れ目なく光励起後の吸収スペクトルや 発光スペクトルの時間変化を計測することがが可能 になっている。更に励起レーザー光も,近赤外から 紫外領域まで準連続的に可変になっている。更に観 測波長領域も紫外領域から近赤外領域にわたってい る。このような設計により近赤外から紫外の領域に バンドギャップを有する材質について,パルス励起 光を照射した後,材質中に起こる状態変化をフェム ト秒領域での初期過程からナノ秒～秒の作用過程ま で逐一観測することが可能になっている。このような強力な装置を利用することにより光機 能性材質の機能発現のメカニズム,阻害要因,促進 要因を明らかにし,よって光機能性材質の発展に寄 与したい。3―15 PRDF 法と XAFS 法第9研究グループ総合研究官貫井昭彦(1)はじめに結晶の構造は校庭によくあるジャングルジムのよ うに三次元的に原子や分子が規則正しく配列(長距 離秩序)している。一方準結晶は三次元空間では規 則性がなく,人間には感知しづらいが高次元で規則 性が現れる。反対に気体は原子・分子が空間に自由 に飛び回っている状態であり,その構造はまったく ランダムとして統計的に扱える。それらに対しガラ ス・アモルファスなどの非晶物質や液体は結晶のよ うな全体に渡る規則性がなく,さりとて気体のよう にまったくランダムでもない。結局,着目する原子 の周り,数十個を含む領域でなんとか規則性(短距 離秩序)を保っている。この様に非晶質物質は甚だ やっかいな構造状態である。結晶構造は単位胞(無 機物質:せいぜい多くて数百個の原子・分子の集合) で全体の構造を代表して表すことができるが,非晶 質構造は全体が一つの巨大分子(原子数:約1020個/ cm3以上)と考えてよく,従って非晶質構造の全体像 をそのまま表すのは難しい。物質構造解析の歴史を 経た現在においても,非晶質構造の全体像を明らか にするための拠り所や考え方に努力が続けられてい る。ここでは従来の解析法,X線動径分布法(RDF) ばかりでなく,将来の非晶質材料の構造解明の新展 開を図る意味においても,より高度で,より正確に 解析し得る可能性があるXAFS(X線吸収微細構造) 法の適用や異常分散を考慮した原子対(部分)動径 分布法(PRDF)について述べる。(2)現在の成果(a)非晶質物質のX線構造解析物質によるX線の散乱能を示す因子,f(s,λ)は一般 的に次のように表される。f°は原子散乱因子であり,異常分散項f'とf"は原子 内電子の固有振動数に近い振動数を持つX線が入射 すると電子との間で生ずる共鳴効果である。ここで 異常分散を無視し,f°のみで解析するのがこれまでの RDF法である。一方超強力連続X線源である軌道放 射光が出現し,非晶質物質に対する新たな構造解析 手段が可能となった。それは異常分散を考慮したも ので二つの異なった方法がある。構成原子の吸収端 波長による散乱に異常分散f'を考慮したのがPRDF 法で,f"に着目し,吸収端近傍の吸収スペクトルの微 細変化を観察するのがXAFS法である。以下各々の 特徴を記すと,a) RDF法は構造における中距離範囲(第二,第三 隣接原子間程度までの構造配置)の情報を含んでい るが,反面多成分系に適用した場合,構成原子種の 原子対が分離できず,得られるのは平均構造情報で ある。b) PRDF法は多成分系においても構成原子種の原 子対毎の構造情報に分離することが可能であり,し かも散乱に基ずく手法であり,最近傍より更に広範 囲な局所構造を反映している。PRDF法は二段階あ り,部分動径分布解析は着目する原子の周囲の局所 構造が得られる。原子対動径分布解析は構成原子種 の原子対毎の構造情報が得られる。c) XAFS法は多成分系においても吸収中心となる 構成原子種毎の周囲の局所構造が得られるが,主に 最近接原子間の情報である。PRDF法やXAFS法は従来のRDF法に比べ多成分 系の非晶質物質の構造情報に関し,一次元から二次 元構造情報へというような質的向上がある。従って 非晶質構造における構造単位としての配位多面体(原 子間距離と配位数情報より成り立つ)やそれらのっ ながり方を含む局所構造に関し,より詳細でしかも 広範囲な局所構造の正確な解明が期待できる。(b)非晶質物質の解析例各々の解析手法の説明は省略し,ここではこれま でのRDF, PRDF及びXAFS法による非晶質物質 の構造解析に関し,何が判ったかを簡単に記す。尚, 本研究におけるPRDF解析結果はほとんどの場合世 界に先駆けて行われたものである。oRDF解析一連のテルル酸塩ガラス(TeO2-RxOy:R=第Ⅰ ～Ⅳ族元素)等多くのガラス系で構造解析を行い, それらのガラスの原子間距離や平均配位数に基づく 基本構造を解明してきた。oPRDF解析二成分系ではGeSe系やGeO2-P2O3系のガラスの 解析を行ってきた。特にGeSe系ガラス構造に関して はRDF解析の結果から二つの異なった構造モデル(3 ―3配位と4 ― 2配位モデル)が各々のGe/Se比に 応じ提唱されていた。本研究における部分及び原子 対動径分布解析の結果は,Ge-Ge,Ge-Se,Se-Se各々 の原子対動径分布関数を得るとともに一連のGex Se100-x (0 ≦x≦40)ガラスに関し,基本的にはGe は4配位で,Seは2配位であり,4 ― 2配位構造モ デルが支配的であることを決定づけた。三成分系のPRDF解析は世界的に見ても未だ例が 少ない。本研究においてはGeAsSe系ガラスや酸化 物ガラスとしてY2O3-Al2O3-SiO2ガラスを取り上げ 解析した。GeAsSe系ガラスに関して,通常のRDF 解析で得られる動径分布関数の第一ピークは6個の 原子対(Ge-Ge,As-As,Se-Se,Ge-As,Ge-Se,As-Se) が寄与している。一方部分動径分布曲線での第一ピ ークはGe,AsやSe原子,各々を中心にした3個の原 子対を含む部分動径分布関数が得られる。例えばGe 原子の周りの局所構造にはGe-Ge,Ge-As,Ge-Seが 寄与しているが,その原子対の動径分布情報と各々 の原子半径等の情報を基に正確な構造が解明された。 Y2O3-Al2O3-SiO2系ガラスに関する通常のRDF解析 結果は三成分系の酸化物ガラスであり,観測される ピークに各々の原子対を単純に対応させられない。 部分動径分布解析からはY原子を中心としたY-Y,Y -Al,Y-Si,Y-Oの各原子対の寄与のみを考慮した解析 を行えばよいことを示した。oXAFSによる解析一連のテルル酸塩ガラス(TeO2-RxOy : R =第Ⅰ ～Ⅳ族元素)やゲルマン酸塩ガラス等で構造解析を 行い,ガラス構造における構造単位である配位多面 体を考察した。特にテルル酸塩ガラスにおいてはTeOx 配位多面体の中で,TeO4が中心で,それと一部の TeO3+1やTeO3などのTeOx<4配位多面体で骨格構 造を形成している。また添加成分に関してはその増 加は添加原子の周りの構造環境よりも,TeOx配位多 面体自身が変化する傾向が強いことを示した。(3)今後の展開これまでの本研究所における非晶質材料研究は25 年前のカルコゲンガラス研究から始まり,アルミノ けい酸塩系ガラス,テルル酸塩ガラス研究を通し, 現在Ⅵ族系酸化物ガラスを対象として研究が続けら れている。それらの研究から得た成果とともに,世 上でも非晶質材料は今日,結晶材料に比べ勝るとも 劣らない特性を持ち,多くの分野で用いられている。 また多くの物性は長距離秩序によらず局所構造に依 存する。従って,将来に渡って正確な局所構造を知 ることは同時に新らしい特性を持つ非晶質物質の探 索や創製に大きな貢献をするものと思われる。その ように非晶質構造は非晶質物質の性質や特性の基礎 であり,非晶質構造の解明は学術的な意義ばかりで なく,今後も優れた非晶質材料を見いだす上でも, 極めて重要である。異常分散効果を考慮した非晶質物質の新しい構造 解析(PRDFとXAFS法)により得られる結果は通 常のRDF解析では得られない,特定原子の周りの局 所構造或は原子対単位の構造情報であり,詳細で正 確な構造解明の可能性を示している。原理的にはほ とんど全ての吸収端波長の使用が可能であるが,実 際には構成原子種の一方の成分の吸収端での測定が 無理な場合が生じる場合もある。それらの解消法が 整備されれば,将来はほとんどの組成で非晶質物質 などの無秩序系の局所構造の正確な解明が期待され る。さらに実際的な適用限界を考慮した上でもこれ までの限定された非晶質物質の構造解析法に対し新 たな有効な手法として定着するに違いない。3―16熱物性第7研究グループ総合研究官三橋武文(1)はじめに熱物性の評価技術では,熱と温度を如何に的確に 評価し制御するかが中心課題となる。具体的には, ①物質が持つ熱エネルギーの存在状態:比熱やその 他熱力学的諸特性,②熱の輸送現象:熱拡散率,熱 伝導率,輻射率,③熱と他の物性が関与する特性: 熱電特性,熱衝撃特性,熱刺激電流特性,④温度制 御しながら測定する熱膨張率や熱重量測定,等非常 に多岐に渡っている。最近の測定対象は,均一なモ ノリシック材料より,薄膜,複合材料,傾斜機能材 料へ,また,マクロからミクロ領域に関心が置かれ るようになって来た。それぞれ独自の評価解析技術 が要求され,多様な専門化と分化が進んでいる。し かしながら,熱現象はマクロ物性の代表的なもので あり,ミクロ的制御が極めて困難であるという宿命 を持っている。この困難を克服するために,また, ミクロとマクロの橋渡をするために,最新の計測技 術を積極的に取り入れた様々な試みがなされて来た。 ここでは,筆者が関わってきた材料特性の中で,最 も基本的な熱物性である比熱と構造敏感性である熱 伝導率(熱拡散率)について今までの研究と今後の 展望について私見を述べたい。(2)現在の成果①セラミックスの比熱低温比熱測定技術では,断熱法がほぼ確立してい る。しかしながら,500―1000K以上では,熱輻射が 大きくなり,断熱法の採用が困難である。高温比熱 の測定には,投下法(エンタルピー法)が良く知ら れているが,高精度測定を行うためには,多量の試 料が必要で,しかも,相転移等の原因で急冷出来な い試料には適用できない。我々は,セラミックスの 粉体あるいは焼結体における測定精度の向上,試料 量の微量化,計測時間の短縮化等の観点からレーザ フラッシュ法やDSC法の測定技法の改善を試み, ZrO2,TiO2の多形,RuO2,それらの固溶体,各種の アルカリチタン酸塩等の高温比熱を測定した。これ までの経験では,代表的なデータ集でも,セラミッ クス,特に急冷出来ない試料では,意外に確度が低 い値が記載されている。例として,1150℃以上で安 定なZrO2の正方晶の比熱は,JANAFでは融点まで 同じ値を記載しているが,高温DSCによる測定値は 明瞭な温度依存性を示した。我々は,高温比熱の絶 対値の評価と同時に,調和成分と非調和成分,高温 比熱異常に興味を持っているが,測定精度の不足か ら十分な解析が出来ないことが多い。最近,断熱型 トリプルセルDSCやダイナミックDCS等の新しい 比熱測定法が注目を集めているが,測定誤差を1% 以下にするためには,新たなブレークスルーが必要 とされている。②セラミックスの熱伝導セラミックスの熱伝導特性は熱伝導率αか熱拡散 率αを用いて記述されることが多い。熱伝導率を直 接測定するためには,試料に与える熱流速(単位時 間,単位面積当たりの熱の流れ)qと試料の温度勾配 Δ Tを定常状態で測定する必要があるが,熱流速の 制御が難しいために,熱を外部から与えた時の温度 履歴曲線(T=T(t))から熱拡散率を求める方法が 広く採用されるようになった(λはαと比熱容量cp 及び密度ρの積に等しい)。熱拡散率の評価には熱源 を交流的に変化させるサーマルウェーブ法とパルス 的な熱源を与えるフラッシュ法が最近良く用いられ る。特に,レーザフラッシュ法はセラミックスの測 定には最も広く普及しており,JISも制定されている (無機材研が中心になり,現在改定中である)。この 原理は,図1に示すように,円板状試料の表面にレ ーザパルスを出来るだけ均一に照射し,試料裏面の 温度変化を測定する方法である。理想的条件では, 次の関係から熱拡散率が求められる(bは試料の厚み, t1/2は最大温度上昇の半値時間)。図1フラッシュ法のブロック図b :試料の厚さ、b':受光膜の厚さ、現行汎用装 置では熱源はレーザ光、温度検出器はInSb図2局所フラッシュ法の原理r1:照射(外)径、r2 :照射内径、r0 :測温径、a :試料径α =0.1388 b2/t1/2しかし,通常,測定に使用されるレーザ光は数百μ秒 程度のパルス幅を持っているので,この標準的な方 法では,bの下限は0.1―1mm程度に制限され,こ れ以下の薄板や薄膜には適用できない。この問題を 解決するために,我々は,図2に示すように,リン グ(a)ないしスポット状(b)にレーザパルスを照 射し,熱拡散率を測定する手法を開発した。この方 法では,膜の面方向の評価することが出来る。膜厚 が一定の場合,数ミリ径以上の,サイズがあれば, 膜の形状に依存せず高温まで熱拡散率が測定できる。 自立膜の場合は,リング状照射が有効である。透明 基板から膜を剝離させることが困難である場合や膜 局部の評価には,スポット照射測定が有効となる。 なお,基板の影響は膜から基板への熱損失を理論的 に考慮することにより,補正することが出来る。こ れまでに,TiO2-RuO2膜, BP薄板,金属薄膜及び金 属多層蒸着膜,BC2N膜,ダイヤモンド薄膜等の熱拡 散率をこれらの方法で測定評価した。(3)今後の展開現在,LSIの集積密度の増大に伴う発熱の問題を解 決するために,サブミクロン以下の厚みないし微少 域の熱伝導の評価技術の開発に強い関心が寄せられ ている。同時に,新たな材料創製技術の発達と共に, 表面近傍や薄膜の厚み方向,更に素材,複合材料, 傾斜機能性材料等の局所の熱伝導評価が要求されて いる。レーザフラッシュ法(パルス法)は今後も最主要 技術の一つであると思われる。この方法を中心に微 少域の熱拡散率測定の可能性に触れたい。局所測定 を行うためには,熱源(図2 (b)のr1)の細線化と 短パルス化が必要になる。瞬間点熱源が与えられた とき,時間tの間に熱が伝わる距離1は,近似的に, 1= √αtで表される。評価したい局所の領域を100nm とすると,10nsから数ps程度の時間で測定を完了す る必要があるので,ピコ秒からヘムト秒オーダーの 短パルス熱源発生が必要となる。また,熱源の細線 化は測定領域の数分の一以下が必要である。現行技 術ではこれらの条件を同時に満たすことはできない。 例えば,レーザ光はヘムト秒オーダーまで短パルス 化が出来るが,多くのセラミックスでは深部まで透 過してしまい,極表面で光から熱への変換を行うこ とが難しい(通常の焼結体では,受光膜を(b'2/α')/ (b2/α)<<1の条件で塗布するが,薄膜ではこの条 件を満たすことは困難)。一方,1-10eV程度の中性 粒子の運動エネルギーは(一部は)極表面で,受光 膜無しに熱エネルギーへの変換が可能である。粒子 線の短パルス化,ビームの絞り込み,粒子密度の制 御が必要となるが,未来技術としては魅力がある。 一方,温度計測技術にはより大きな技術的課題があ る。熱電対等の接触方式では,接触による熱的擾乱 と熱抵抗のため,微少域への適用には大きな制約が ある。汎用技術として普及しているInSb等の非接触 温度計の応答性は0.1-1μs (時定数)程度で,高速熱 現象の観測には不十分である。高速応答性の温度セ ンサーの開発が待たれるが,最近,温度を直接計測 する代わりに,温度変化に対応した物性変化の計測 がしばしば試みられている。試料の反射率や試料近 傍の流体密度等の温度変化をプローブ光やマイクロ フォンで検出する方法は応答速度が優れている。別の温度測定技術として,トンネル顕微鏡と同様 な探針を熱電対で作り,探針の温度変化から表面の 温度分布を評価するプロ ーブ熱顕微鏡が最近,報告 された。この技術では,プローブを熱源と同時に温 度センサーとして利用出来るので,表面極小部の熱 伝導の分布の評価に適用できる可能性がある。現状 では,熱伝導率を直接求めることは出来ないし,時 間,空間分解能にも制約があるが,新しい可能性を 秘めた技術として注目される。ある熱源に対応した温度履歴曲線は,熱拡散方程 式に従うので,解析解が既知の場合は,回帰分析や 理論曲線との比較から熱拡散率を求めることになる。 しかし,特定の境界(測定)条件に対応した解析解 は必ずしも得られない。この場合は,有限要素法等 の数値解法が必要になる。しかし,精度の高い数値 解法を簡単に行うためには現在の計算機の速度は十 分とは言えない。10年後では,パソコンの高速化が 進み,数値解法を用いた回帰分析法も身近になると 思われる。以上,微小域の熱伝導測定を行うための現状の問 題点を指摘した。新しい可能性はこれらの技術的課 題の解決の延長上にある。しかし,10年後には,現 在予想していない全く新しい革新的な評価技術が生 まれるかも知れない。O.lT/zs3―17計算材料科学(その1) ―電子構造計算―未知物質探索センター 主任研究官新井正男(1)はじめに「計算材料科学」という言葉の意味することは幅 広い。材料に対する数値シミュレーションに限定し ても,物質を連続体で近似し有限要素法等を用いて その性質を解明する方法や,原子を古典的粒子とし て扱う分子動力学手法などがある。また,さらに微 視的な理論として物質中の電子を量子力学的に扱う 手法もある。これらはそれぞれ適用範囲が異なり, 考えるべき材料や物理的性質によって必要とされる 手法も異なる。将来,情報通信の発達により新しい 電子素子,光素子の開発,また,これまでの石油に 代替する地球環境にやさしい材料の開発が必要とな ってくるのに対応して,これまでにない優れた性質 や特殊な機能を持った新しい材料の開発が待たれる。 計算材料科学において物質中の電子構造を量子力学 的に取り扱う手法は,今後このような新しい物質探 索,開発においてますます重要となってくる。この ため,ここでは,量子力学に基づいて物質中の電子 構造を非経験的に計算する手法について,現在まで の発展と今後の展望について解説する。(第一原理電 子構造計算,すなわち非経験的な電子構造計算とは, 電子の状態を計算によって求める際に,実験データ に合うような補正を考慮せず,純粋に理論的に計算 する方法である。)物質中の電子構造が計算できるとその物理的性質 に関する知見を得ることができる。例えば各原子配 置に対する全エネルギーを計算することにより安定 な構造が予想でき,物質の凝集エネルギーが求めら れる。あるいは原子を微小に変位した場合の全エネ ルギーの変化から原子に働く力が得られ,物質の弾 性的性質を知ることができる。また,電子系の外場 に対する応答を計算できれば電気抵抗,光吸収等の 性質を求めることが原理的には可能である。計算機 の進歩と理論的手法の発達により,現在では,非周 期的な構造,例えば表面,アモルファス等の原子配 置や電子構造を計算することが可能になりつつある。 ただし,すべての計算機シミュレーションと同様に, 用いる近似手法の精度や計算機の能力の限界により, 扱える物質や精度には限界がある。無機材料の設計 という観点では,現在の電子構造計算の水準は,薬 等の開発に対して計算機が果たすような実用的なレ ベルでの応用には至っていない。今後は理論面での 発展とともに実験データも考慮した経験的手法との 連係が重要になると考えられる。(2)現在の成果物質中では膨大な数の電子が原子核による静電ポ テンシャルの中を運動している。また,各電子間に もクーロン相互作用が働くため物質中の電子構造を 求めるためには,複雑な多体問題を解くことが必要 となる。このような多体系を厳密に扱うことは,古 典力学においても大変困難であり,量子力学にした がって計算する場合には現在のスーパーコンピュー ターでもまったく手に負えない。したがって,物質 中の電子構造を理論的に解析するためには何らかの 近似を導入せざるを得ない。実験データを参照しな い非経験的手法は,そういう意味では大胆な近似で あるということができ,厳密さには難があるものの, 広範囲の物質を統一的に扱うことを可能にする。固体に対する第一原理電子構造計算の多くは,な んらかの近似を用いて多体問題を,実効的な場のな かを自己無憧着に運動する1電子問題に書き換えて, 即ちひとつの電子に注目し,その電子に対する原子 核による静電ポテンシャルや他の電子からの相互作 用を近似的にひとつの場とみなして行なわれる。特 に,1964―1965年頃に,P. Hohenberg, W. Kohn, L. J. Shamらによって構築された密度汎関数理論は固 体の非経験的電子構造計算の基礎となっている。こ の理論により全電子密度を用いて電子系の全エネル ギーを求めることが可能になる。密度汎関数理論自 体は近似を含まない一般的な理論であるが,その汎 関数に含まれる交換相関エネルギー項(量子力学的 効果で現われる項)の厳密な形は知られていないた め,実際の物質に対して適用するためには何等かの 近似を用いる必要がある。最も簡単で,かつ多くの 物質に用いられてきた近似は交換相関エネルギーを 局所電子密度の関数で表現する方法である(局所密度 近似,LDA)。この近似は構造最適化などに関して成 功を収めている。固体内の電子を扱ううえで次に問題になることは, 局所密度近似によって得られる1電子問題をいかに して計算機を用いて解くかということである。物質 中の電子と原子核との間には距離に逆比例するクー ロ ン相互作用が働いており,距離が近付くと相互作 用エネルギーは負の大きな値になる。そのため,電 子の運動エネルギーが増加して波動関数が空間的に 激しく振動することになり,数値的取り扱いを困難 にする。この問題を避けて効率よく計算するための 手法が1970年代頃より盛んに研究されてきた。その 1つは原子核近傍とそれ以外の領域を分けて取り扱 う方法であり,もう1つは原子核のポテンシャルを なめらかな擬ポテンシャルで置き換える方法である。 擬ポテンシャルとは,原子の内殼電子は周りの原子 による影響をほとんど受けず,通常の電子物性を議 論する場合考慮する必要がないことから,価電子の みを考慮したポテンシャルである。特に,擬ポテン シャルを用いて波動関数を平面波に展開すると,様々 な物理量(原子に働く力や誘電関数等)を簡単に計 算することができる。また,1985年にCarとParrinello が平面波展開を用いて第一原理電子構造計算と分子 動力学法を統一する枠組みを構築したことにより, 構造安定性と物質の動的性質に対する研究が飛躍的 に進歩した。(カー・パリネロ法については,「3―17 計算材料科学(その2)」も参照。)計算機の進歩と上述の数値計算手法の発達により, 局所密度近似で扱える対象は広範囲になり,多くの 非周期構造の原子構造や動的性質を非経験的に決定 することが可能になった。しかし,その一方では局 所密度近似の問題点も指摘されている。例えば,半 導体や絶縁体のバンドギャップを実際の半分以下に 評価してしまうことはよく知られている。さらに, 高温超伝導体の母物質などの一部の反強磁性絶縁体 に対してはバンドギャップが消失してしまう。また, 凝集エネルギーを一般に10%程度過大評価してしま い,固体表面での分子の反応などを扱うときに支障 をきたす。これらの問題を解決するために局所密度 近似を越えた様々な試みが考えられている。例えば, 一般化密度勾配近似と呼ばれる,局所的な電子密度 だけでなく密度の変化分を考慮した近似が提案され, 多くの物質に対して適用されている。(3)今後の展開第一原理電子構造計算はより高速でかつ幅広い物 質に適用できる手法の構築を目指して進歩してきた。 今後もその方向性は変わらずに次のような研究が重 要になると思われる。(A)局所密度近似を越える取り扱い局所密度近似の抱える様々な問題点を克服するた めにこれまでに提案されてきた補正理論をさらに改 良して適用範囲を広げる必要がある。また,密度汎 関数法の枠を越えて多体効果を取り込むことができ る手法もいくつか考案されているが,これらの手法 は多量の計算を必要とするため扱える物質に制限が ある。今後,これらの手法を改良し高速化していく 必要がある。(B)数値計算手法の改良による高速化現在の標準的な手法では計算量が原子数の2乗ま たは3乗に比例するため,扱える物質に制限がある。 近年,計算量が原子数に比例して増大するオーダー N法と呼ばれる新しい手法が考案されている。この 手法を用いると,扱える原子数が飛躍的に増加する。 今後,非経験的計算にオーダーN法を取り込んだ手 法を構築する必要がある。また,現在の高速計算機 の主流であるベクトル型スーパーコンピューターと ともに,並列型計算機が今後普及していくと考えら れる。このような計算機の構成の変化に応じて,新 しい計算手法を考える必要がある。例えば,平面波 展開を用いずに実空間格子点上の差分により電子構 造を計算する手法は並列化に適しており,前述のオ ーダー N法を適用することも可能なので,今後の応 用が期待される。以上は現時点での予想であるが,10年後にはここ に説明したこととはまったく違う状況になる可能性 もある。いずれにしろ,第一原理電子構造計算はさ らに適用範囲を広げるために発展していくことが期 待される。3―17計算材料科学(その2)―擬ポテンシャルデータベース―未知物質探索センター 主任研究官小林一昭(1)はじめに物質の電子状態を理論面からシミュレートする計 算材料科学は,1985年カー ・パリネロ法(1)の出現によ って,第一原理電子構造計算の高速化が図られ,更 に系の構造の最適化も従来の方法に比べ非常に容易 に実行することが可能となった。第一原理電子構造 計算(すなわち,非経験的な電子構造計算)とは, 電子状態(構造)の計算において,実験データに合 うような補正を考慮せず,純粋に理論的に計算する 方法である。このことの物質科学の理論的な部分への貢献は非 常に大きい。この方法の出現によって「計算材料科 学」という言葉が具体的な現実味を帯びて実感され るようになったと言っても過言ではないだろう。このカー・パリネロ法を基にした第一原理分子動 力学的手法は,物質の電子状態とその構造の最適化 を行うために極めて有効な手法である。古典的な分 子動力学法が,原子間のポテンシャルを経験的方法 (計算結果が実験データに合うように補正を導入し て計算する方法)で決定したものを用い,原子を動 的に扱う過程でポテンシャルが固定されたまま更新 されないのに対し,第一原理分子動力学法では原子 を動かす毎にポテンシャルが更新され,そのポテン シャルは第一原理電子構造計算(バンド計算)によ って求められる。すなわち,古典的な分子動力学法 においては系の構造を最適化することによって,ポ テンシャルの形が変化するのに対応できないという 問題があるが,この手法では,それを回避すること ができ,より高精度で信頼性の高い計算が可能とな る。ただし,第一原理分子動力学法ではポテンシャル 計算のためにその都度電子構造計算を必要とする。 これによる計算量は莫大なもので,全計算量の99% はこの電子構造計算のために費やされる。カー ・パ リネロ法における電子構造計算は従来使われている 対角化による方法を使用せずに,より高速で省メモ リーな計算を行うが,それでも最新のスーパーコン ピューターをもってしても,せいぜい1000原子程度 の系までしか取り扱えない。しかも,これは最も条 件の良い場合で,通常は数十から数百個のオーダー での計算が主流であるのが現状である。これでは現 実の物質科学の問題に対応できない場合も多く存在 する。例えば不純物や欠陥等の問題を取り扱おうと すると,それらが物質に含まれる割合は,10マイナ ス10何乗のオーダーであるので,先に述べたように 最大1000原子では現実の不純物や欠陥の問題は取り 扱えない。(2)現在の成果これまで第一原理分子動力学法を使って,Si (001) 表面に吸着したアルカリ金属(Li,Na,K)の電子状 態とその安定構造,高圧下でのシリカ(SiO2)の安 定構造,ダイアモンドC (001)表面に吸着した水素の 表面電子状態とその安定構造等の計算を行ってき た(2)(3)(4)。現在は,第一原理分子動力学計算で主に使用され る擬ポテンシャル(5)(6)のデータベースの構築に着手し ている。擬ポテンシャルは,原子の内殼電子は周り の原子による影響をほとんど受けず,通常の電子物 性を議論する場合考慮する必要がないことから,価 電子の部分のみを考慮したポテンシャルである。こ のためポテンシャルの変化が緩やかとなり,基底関 数に平面波を使用することができる。これにより計 算量を軽減することができ,力やストレス(圧力) の計算のための表式が比較的簡単に得られるので, これらの計算も他の計算より容易に遂行することが できる。擬ポテンシャルをもとにした第一原理電子構造計 算では,計算の高速化のための独特の近似(Kleinman -Bylanderによる分離形(7)による近似)を使用するた め,しばしば本当は存在しないゴーストバンドが生 ずるという問題がある。ゴーストバンドが出ないよ うに擬ポテンシャルを作るための原理はいまのとこ ろなく,ある程度の判断基準はあるが,試行錯誤に よってポテンシャルが作られているのが現状である。 このような作成方法では擬ポテンシャルやバンド計 算に対してかなりの知識と経験が必要であり,また 多大の労力を必要とする。この問題を解決する手段の一つとして,擬ポテン シャルに関するデータベースを作成し,これを公開 することが有効である。これにより多くの研究者が その都度擬ポテンシャル作成のために苦労しなくて 済むわけである。(このようなポテンシャルに関する データベースは海外ではいくつか存在する(8)(9)。)当研究所から平成8年度中にこのデータベースを 発表する予定である。内容は水素(H)からヨウ素 (I)までの希ガス原子を除いた49原子分の擬ポテンシャルを用意する予定で,既に40以上の原子に関 しての擬ポテンシャルを作成し,その大部分につい てゴーストバンドは無く,格子定数,体積弾性率, バンド構造等を求めてあり,他の理論計算や実験の 結果と良い精度で一致していることを既に確認して いる。(3 )今後の展開当研究所が,現在使用している第一原理分子動力 学法では,原子間に働く力とユニットセルに働くス トレス(圧力)の計算が可能であり,ユニットセル の形も考慮した構造の最適化が可能である。これは 一定圧力条件下での物質の構造に関する計算や,圧 力による構造相転移をシミュレートすること(完全 ではないが)も可能である。一方,擬ポテンシャル データベース(NCPS95と命名)に水素からヨウ素 までのポテンシャルを用意すれば,多様な構造の多 種の原子から構成される複雑な構造を持った物質も 取り扱うことができるようになる。(当然,計算機資 源,人的資源による制限はあるが・・・)更に,バンド計算は一般的に絶対零度の場合を取 り扱うが,将来零度でない温度における状態をバン ド計算で取り扱えるようにすれば,定温定圧条件で の第一原理分子動力学計算が可能となり,現実の実 験条件に合った電子構造計算ができるようになる。 このため,計算の上で仮想的な実験条件を設定して, 思うがままのシミュレーションを行えるようになる かもしれない。計算材料科学の研究の最終目標は第一原理手法に よって未知物質の探索を行い,社会に対して有用な 新物質を見つけ出すことである。そのためには,上 で述べたデータベース等を応用しながら,計算によ って新たな物質を創造する未知物質探索(Creating New Materials)システムを構築することが必要と なり,当研究所ではこのシステムを構築することを 目指して研究を続けている。参考文献(1) R. Car and M. Parrinello, Phys. Rev. Lett., 55, 2741(1985)(2) K. Kobayashi, Y. Morikawa, K. Terakura and S. Blugel,Phys .Rev. B45, 3469(1992)(3) K. Kobayashi, K. Kokko, K. Terakura and Y. Matsui,in Proceedings of Computer Aided Innova­tion of New Materials Ⅱ 1993 Elsevier Sci­ence Publishers B. V.(4) K. Kobayashi,in Proceedings of Advanced in New Dia­mond Science and Technology, MYU, Tokyo 1994(5) G. B Bachelet, D. R. Hamann and M. Schl­uter,Phys. Rev. B26, 4199(1982)(6) N. Troullier and J. L. Martins, Solid State Commun. 74,13(1990)(7) L. Kleinman and D. M. Bylander, Phys. Rev. Lett.,48,1425(1982)(8) M. P. Teter, M. C. Payne and D. C. Allan, Phys. Rev. B40, 12255(1989)(9) R. Stumpf, X. Gonze and M. Scheffler (un- published),欧米では複数のグループが電子構造 計算プログラムを公開しており,それに付随し て擬ポテンシャルのデータベースも公開されて いる。資料編ioIはじめに第1部,第2部においては,無機材質研究の歴史,世界の動きや展望と当研究所が果してき た役割を年表を交えて記した。本資料編においては,主に過去10年間における無機材質研究所の活動をファクトデータによ ってまとめたものであり,当研究所の歩んだ道を,また別の角度から表そうとするものである。 第1部,第2部と合わせてご覧いただくことにより,当研究所の姿をご理解いただければ幸甚 である。なお,本資料編に記載した以前のデータは,「無機材質研究所十年史」(昭和51年5月発行), 「無機材質研究所二十年史」(昭和61年4月発行)を参照いただければと思う。また,本資料編 のさらに詳しいものは,無機材質研究所年報(毎年度発行),無機材研ニュース(隔月発行)に あるのでそちらを参照いただきたい。Ⅰ研究活動等1 研究業務の推進状況1)研究グループ等及び研究課題の一覧表年度研究グループ等昭和 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63平成 元2 3 4 5 678 910 11 12 13第1研究グループ炭化けい素 (SiC)酸化マグネシウム (MgO)複合マグネシウム酸化物 (MgO-MxOy)酸化亜鉛 (ZnO)複合ジルコニウム酸化物 (ZrO2-MOx)イットリア (Y2O3)第2研究グループ酸化ベリリウム (BeO)複合バナジウム硫化物 (MV2S4)複合チタン硫化物 (MxTiyS2)複合モリブデン硫化物 (MxMoyS8)複合タンタル硫化物 (M-Ta-S)複合銀硫化物 (Ag-M-S)第3研究グループ酸化バナジウム (VO2)窒化けい素 (Si 3N4)複合酸窒化けい素 (MSiON)炭化けい素 (SiC)シリコン基非酸化物 (Si-C-N)窒化けい素 (Si 3N4)第4研究グループ窒化アルミニウム (AlN)酸化アルミニウム (Al2O3)酸化スズ (SnO2)酸化ビスマス (Bi2O3)ビスマス基オキシ弗化物 (Bi-M-O-F)バリウムペロブスカイト (ABO3)第5研究グループ硫化鉄 (FeS)ペロブスカイト型化合物 (Pb 1-xTiO3-x)ニオブタンタル酸カリウム (KTa1-xNbxO3)アモルファス・ペロブスカイト (a-ABO3)銅ペロブスカイト (M-Cu-O)珪酸塩マクロモレキュル (R(Al, Si) On)第6研究グループ鉛ペロブスカイト (PbMO3)窒化ほう素 (BN)窒化リチウム (Li3N)金属典型元素カルコゲナイド (M・S, Se, Te)炭窒化ほう素 (B-C-N)第7研究グループ炭素 (C)酸化チタン (TiO2)チタン酸アルカリ金属 (M2O(TiO2)n)オクトチタン酸塩 (Ax(B, Ti)8-xO16)チタノガリウム酸塩 (Ax(Ti, Ga)yOz)(ルテニウム,チタン)酸塩 (A-(Ru, Ti)-M-O)第8研究グループ酸化ジルコニウム (ZrO2)ダイヤモンド (C)ダイヤモンド (C)ダイヤモンド(C)ダイヤモンド (C)MX2型ホスト化合物誘導体 (RxMX2)第9研究グループ酸化ニオブ (Nb-O)アルミノ珪酸塩ガラス (RO-Al2O3-SiO2 glass)希土類けい酸塩ガラス (Ln2O3-SiO2 glass)希土類アルミノけい酸塩ガラス (Ln2O3-Al2O3-SiO2 glass)テルル酸塩ガラス (TeOx・MOy glass)Ⅵ族系酸化物ガラス (MOx・ROy glass)第10研究グループカルコゲンガラス (As-X glass)複合ビスマス酸化物 (Bi2O3・RmOn)タンタル酸リチウム (LiTaO3)ニオブ酸バリウム・ナトリウム (Ba2NaNb5O15)アパタイト系化合物 (Ca10-yHy(PO4)6(OH)2-y・nH2O)第11研究グループ酸化けい素 (SiO2)ゲルマン酸塩 (MO-GeO2)バナジン酸アルカリ金属 (MxVyO)バナジウムブロンズ (M-V-O)層状ランタン複合酸化物 (La-M-O)第12研究グループ硼��化ランタン (LaB6)炭化ジルコニウム (ZrC)炭化タンタル (TaC)炭化タングステン (WC)希土類多ホウ化物 (REBn)第13研究グループイットリウムガーネット  (Y3X5O12)アルミン酸バリウム (BaAl12O19)アルミン酸希土類 (Ln2O3・nAl2O3)希土類ガーネット (R3M2X3O12)光誘起屈折性結晶 (Bi12 [Ge, Si] O12)第14研究グループ酸化レニウム (ReO3)水素タングステンブロンズ (HxWO3)酸化ニッケル (NiO)イットリウム・鉄複合酸化物  (YFe2O4)酸化コバルト (CoO)第15研究グループ硫酸・燐酸カルシウム (Ca-SO4-PO4-H2O)リン酸ジルコニウム (Zr(HPO4)2・2H2O)モンモリロナイト (Al2Si4O10(OH)2・nH2O)スメクタイト (ExM2～3(Si, Al)4O10(OH)2・nH2O)超高圧力ステーション〈注〉超高温ステーション未知物質探索センター先端機能性材料 研究センター超高温ステーションからの改組特別研究官〈注〉平成2年度から「スメクタイト」を研究していた第15研究グループは,平成5, 6年度においては第5研究グループとして活動。 平成8年3月31日現在2 ) プ ロ ジ ェ ク ト 研 究 等 研 究 課 題研 究 課 題 等年 度昭和 616263平成 元234567【超電導材料研究マルチコアプロジェクト】◇第Ⅰ期:新物質探索コア・単結晶育成コア・結晶構造解析コア◇第Ⅱ期:材料化基礎コア・構造解析コア【インテリジェント材料の研究開発の推進】◇インテリジェント構造材料に関する研究◇ガラスのインテリジェント光材料化に関する研究【微小重力下における材料創製研究の推進】◇圧力制御による結晶成長に関する研究【機能性スーパーダイヤモンド研究】【超微細構造解析技術研究】【無機材質特別研究】◇生体機能性セラミックスに関する研究◇ダイヤモンドの半導体化に関する研究◇超耐摩耗材料の開発研究◇cBNのオプトエレクトロニクス材料化に関する研究◇放射光軟X線用分光材料の高品位化に関する研究◇逆向型ラジカル源を用いた薄膜化技術に関する研究◇地球環境親和型材料としての粘土・有機複合新素材の研究◇チタン酸塩関連セラミックスの触媒機能に関する研究【国立機関原子力試験研究費による研究】◇ RIを利用する無機材質のキャラクタリゼーションに関する研究◇無機材質の放射性廃棄物処理・処分への利用に関する研究◇耐放射線性無機材質材料に関する研究◇新しい無機シンチレーター材質に関する研究◇原子力用高機能固体電解質に関する研究◇原子力用セラミックスの腐食に関する研究◇ビスマス化合物のイオン除去への利用に関する研究◇陽電子の再放出を利用した分析技術の開発◇複合セラミックスのマルチコンポジット化とその多次元的評価◇高効率陽電子減速材の開発に関する研究◇放射光を用いた低温高圧下での構造解析技術年 度昭和 616263平成 元234567研 究 課 題 等【科学技術振興調整費による研究】総合研究◇無重力環境を利用した新材料の創製に関する研究◇ハイブリッド化構造設計技術による新材料創製のための基盤技術に関する研究Ⅱ期◇大出力・波長可変レーザー及びレーザープロセシング技術に関する研究 ◇超高温の発生・計測・利用技術に関する研究Ⅰ期Ⅱ期◇新ビーム技術による高性能機能材料の分析・評価技術に関する研究Ⅰ期Ⅱ期◇化学物質設計等の支援のための知識ベースシステムに関する研究Ⅰ期Ⅱ期◇新材料の試験評価技術に関する国際共同研究Ⅱ期◇レアメタルの高純度化による新機能創製のための基盤技術に関する研究Ⅰ期Ⅱ期◇極高真空の発生・計測・利用技術の開発に関する研究Ⅰ期Ⅱ期◇物質・材料の極微小領域における素機能の計測・評価・制御に関する研究◇超電導材料研究開発のためのデータベース機構に関する研究◇マクロクラスター融液構造と結晶成長への影響に関する研究◇理想表面創製によるマテリアルインターコネクションの基盤的技術に関する研究Ⅰ期Ⅱ期◇新機能性材料創製のためのホスト・ゲスト反応活用技術に関する基盤的研究Ⅰ期Ⅱ期◇特性発現モデルに基づく先端材料の特性解析技術開発に関する研究◇短時間微小重力場を利用した材料生成に関する基盤的技術開発◇材料のエコマテリアル化のための評価・設計技術の確立に関する研究◇極限センシング技術の開発及びその利用のための基盤技術開発◇ナノスペースラボにおける新材料創製に関する研究◇超薄膜材料設計技術の開発に関する研究中核的研究拠点(COE)育成◇超常環境を利用した先端材料研究省際基礎研究◇炭素の高配位数化機構解明に関する研究◇広帯域スペクトルデータの同時利用による固体結合状態の総合解析法の研究◇結晶微細構造を利用した新規物質予知技術の開発【地域先導研究】◇ドロマイトのイオン交換樹脂による溶解・分離とその高度化に関する研究【官民特定共同研究】◇超伝熱性放熱基板としての焼結ダイヤモンドの合成に関する研究◇細束X線を用いた微小領域観測技術の高度化に関する研究【他省庁経費による研究】◇次世代産業基盤技術研究開発制度(ファインセラミックスの研究開発)2 学・協会への研究発表年度 S41～50S51～60S61 S62 S63 H元 H 2 H 3 H4 H 5 H 6 H 7 合計区分論文数 612 1,577 194 259 250 241 243 255 232 249 279 246 4,637(オリジナル) (592) (1,229) (117) (187) (175) (165) (169) (207) (190) (194) (240) (170) (3,635)(レビュー) (20) (348) (77) (72) (75) (76) (74) (48) (42) (55) (39) (76) (1,002)口頭発表 647 1,833 397 371 317 264 315 356 311 321 329 346 5,7173無機材質研究所研究報告一覧表号数 誌 名 発行年第1号 炭化けい素(SiC) 昭和47年第2号 酸化ベリリウム(BeO) 〃第3号 酸化バナジウム(VO2) 〃第4号 窒化アルミニウム(AlN) 昭和48年第5号 硫化鉄(FeS) 〃第6号 鉛ペロブスカイト(PbMO3) 〃第7号 炭素(C) 昭和49年第8号 酸化ジルコニウム(ZrO2) 〃第9号 酸化ニオブ(Nb-O) 昭和50年第10号 カルコゲンガラス(As-X glass) 〃第11号 酸化マグネシウム(MgO) 昭和52年第12号 複合バナジウム硫化物(MV2S4) 〃第13号 窒化けい素(Si3N4) 〃第14号 酸化けい素(SiO2) 〃第15号 酸化アルミニウム(Al2O3) 昭和53年第16号 ペロブスカイト型化合物(Pb1-x-TiO3-x) 〃第17号 硼��化ランタン(LaB6) 〃第18号 イットリウムガーネット(Y3X5O12) 〃第19号 酸化チタン(TiO2) 昭和54年第20号 ダイヤモンド(C) 〃第21号 酸化レニウム(ReO3) 〃第22号 アルミノ珪酸塩ガラス(RO-Al2O3-SiO2 glass) 昭和55年第23号 複合ビスマス酸化物(Bi2O3・RmOn) 〃第24号 硫酸・燐酸カルシウム(Ca-SO4-PO4-H2O) 〃第25号 超高圧力技術(第1報) 〃第26号 電子セラミックス材料 〃第27号 窒化ほう素(BN) 昭和56年第28号 耐熱構造材料の焼結加工法 〃第29号 超高温耐熱セラミックス(第1報) 〃第30号 複合マグネシウム酸化物(MgO-MxOy) 昭和57年第31号 複合チタン硫化物(MxTiyS2) 〃第32号 複合酸窒化けい素(MSiON) 〃第33号 ゲルマン酸塩(MO-GeO2) 昭和57年第34号 チタン酸カリウム繊維の合成 〃第35号 酸化スズ(SnO2) 昭和58年第36号 ニオブタンタル酸カリウム(KTa1-xNbxO3) 〃第37号 アルミン酸バリウム(BaAl12O19) 〃号数 誌 名 発行年第38号 チタン酸アルカリ金属(M2O(TiO2)n) 昭和59年第39号 ダイヤモンド(C) 〃第40号 炭化ジルコニウム(ZrC) 〃第41号 水素タングステンブロンズ(HxWO3) 〃第42号 希土類けい酸塩ガラス(Ln2O3・SiO2 glass) 昭和60年第43号 りん酸ジルコニウム(Zr(HPO4)2・2H2O) 〃第44号 超高圧力技術(第2報) 〃第45号 超高温耐熱セラミックス(第2報) 〃第46号 窒化リチウム(Li3N) 昭和61年第47号 タンタル酸リチウム(LiTaO3) 〃第48号 電子放射材料 〃第49号 オプトエレクトロニクス焼結材料 〃第50号 酸化亜鉛(ZnO) 昭和62年第51号 複合モリブデン硫化物(MxMOyS8) 〃第52号 炭化けい素(SiC) 〃第53号 バナジン酸アルカリ金属(MxVyO) 〃第54号 酸化ビスマス(Bi2O3) 昭和63年第55号 アモルファス・ペロブスカイト(a-ABO3) 〃第56号 アルミン酸希土類(Ln2O3・nAl2O3) 〃第57号 オクトチタン酸塩(Ax(B,Ti)8-xO16) 平成元年第58号 ダイヤモンド(C) 〃第59号 炭化タンタル(TaC) 〃第60号 酸化ニッケル(NiO) 〃第61号 希土類アルミノけい酸塩ガラス(Ln2O3-Al2O3-SiO2 glass) 平成2年第62号 モンモリロナイト(Al2Si4O10(OH)2・nH2O) 〃第63号 超高圧力技術(第3報) 〃第64号 超高温技術(第1報) 〃第65号 生体機能性セラミックス 〃第66号 金属典型元素カルコゲナイド(M・S,Se,Te) 平成3年第67号 ニオブ酸バリウム・ナトリウム(BaNaNb5O15 ; BNN) 〃第68号 超耐摩耗性材料 〃第69号 ダイヤモンドの半導体化 〃第70号 複合タンタル硫化物(M-Ta-S) 平成4年第71号 シリコン基非酸化物(Si-C-N) 〃第72号 バナジウムブロンズ(M-V-O) 〃第73号 複合ジルコニウム酸化物(ZrO2-MOx) 平成5年第74号 ビスマス基オキシ弗化物(Bi-M-O-F) 〃第75号 銅ペロブスカイト(M-Cu-O) 〃第76号 希土類ガーネット(R3M2X3O12) 〃第77号 超高温技術(第2報) 〃第78号 cBNオプトエレクトロニクス材料化 〃第79号 チタノガリウム酸塩(Ax(Ti,Ga)yO2) 平成6年第80号 ダイヤモンド(C) 〃第81号 炭化タングステン(WC) 〃第82号 スメクタイト(ExM2～3(Si,Al)4O10(OH)2・nH2O) 平成7年第83号 テルル酸塩ガラス(TeOx・MOy glass) 〃第84号 超高圧力技術(第4報) 〃第85号 逆向型ラジカル源を用いた薄膜化技術 〃第86号 超伝導マルチコアプロジェクト研究(新物質探索コア) 〃第87号 超伝導マルチコアプロジェクト研究(単結晶育成コア) 〃第88号 超伝導マルチコアプロジェクト研究(結晶構造解析コア) 〃4 特許・実用新案1)特許・実用新案の出願及び登録件数 (単位:件数)年度 S41 ～60S51 ～60S61 S62 S63 H元 H 2 H 3 H 4 H 5 H 6 H 7 合計区分国内特許A出願 58 458 142 134 53 45 36 36 30 30 42 32 1,096登録 2 186 33 32 15 16 39 84 92 88 51 79 717外国特許B出願 4 32 7 6 6 2 2 2 4 3 4 5 77登録 2 18 3 3 3 4 5 6 1 4 3 5 57合計A + B出願 62 490 149 140 59 47 38 38 34 33 46 37 1,173登録 4 204 36 35 18 20 44 90 93 92 54 84 774実用新案出願 3 4 ― ― 1 ― ― ― 1 1 ― ― 10登録 ― 2 ― ― ― 1 - ― ― 1 ― ― 42)企業化実施(1)特許等実施料国庫歳入額 (単位:千円)年度 昭和55 56 57 58 59 60 61 62 63国庫歳入額 3,131 1,825 3,830 5,634 8,668 16,304 22,137 41,487 43,608年度 平成元 2 3 4 5 6 7 合 計国庫歳入額 61,769 60,681 64,550 75,250 67,553 69,485 50,374 596,286注)専用実施権は新技術事業団が有する。(2)企業化実施状況一覧表委託開発 斡旋別実 施 名 実施先 実施期間別斡 旋斡 旋斡 旋斡 旋委託開発斡 旋斡 旋委託開発斡 旋斡 旋斡 旋委託開発斡 旋斡 旋斡 旋斡 旋斡 旋斡 旋斡 旋斡 旋委託開発委託開発委託開発斡 旋委託開発斡 旋委託開発委託開発委託開発委託開発委託開発委託開発斡 旋委託開発委託開発斡 旋斡 旋委託開発委託開発斡 旋斡 旋委託開発委託開発斡 旋委託開発委託開発斡 旋斡 旋斡 旋斡 旋斡 旋繊維状チタン酸アルカリ金属の製造 大塚化学薬品 昭和55年度～平成7年度チタン酸マグネシウム単結晶の製造方法 (株) 信 光 社 昭和55年度～昭和60年度アルミニウム陽極酸化皮膜の多色処理技術 (株)赤土 製作所 昭和55年度立方晶窒化ほう素の製造方法 昭 和 電 工 (株) 昭和55年度～昭和62年度硼化ランタンを用いた熱電子陰極の製造技術 電気化学工業 昭和57年度～平成7年度低融点低膨張ガラス組成物の製造法 柴田ハリオ硝子(株) 昭和57年度～平成6年度ガスバーナー用空気混合器 柴田化学機器工業(株) 昭和57年度～昭和63年度ガーネット型単結晶を用いた磁気共鳴素子の製造技術 富士電気化学工業(株) (株)アドバンテスト昭和58年度～平成7年度炭化けい素焼結体の製造方法 日本ピラー工業 昭和58年度～平成7年度耐熱アルミノ珪酸塩ガラス HOYA株式会社 昭和59年度～平成6年度チタン酸マグネシウム単結晶の製造法 (株) ア ス カ ル 昭和60年度～平成5年度サイアロン焼結体の製造技術 品川白煉瓦(株) 昭和61年度～平成7年度アパタイト質セメント硬貨物の生成法 三 金 工 業(株) 昭和61年度～平成7年度チタン酸繊維の製造法 久保田鉄工(株) 昭和62年度～平成7年度ルチル単結晶の製造技術 秩父小野田セメント(株) 昭和62年度～平成7年度炭化珪焼結体の製造法 日本ファインセラミックス(株) 昭和62年度～平成7年度高圧型加熱装置 三菱重工業(株) 昭和62年度輻射集中加熱装置 (株) ア ル カ ル 昭和62年度～平成元年度焦電性磁気薄膜の製造法 住友金属鉱山(株) 昭和62年度～平成2年度立方焦炭化珪素粉末の焼結法 イーブル工業(株) 昭和62年度～平成6年度ガス圧焼結法による窒化珪素焼結体の製造技術 日本特殊陶業(株) 昭和62年度～平成6年度ダイヤモンド膜の低圧気相合成技術 三菱マテリアル(株) 昭和62年度～平成7年度高純度ダイヤモンド焼結体の製造技術 東芝タンガロイ(株) 昭和63年度～平成6年度溶媒移動式単結晶引き上げ装置 (株) ア ス カ ル 昭和63年度～平成4年度ガーネット型単結晶を用いた磁気共鳴素子の製造技術 (株) ア ス カ ル 昭和63年度～平成5年度高純度立方晶窒化ほう素焼結体の製造法 住友電気工業(株) 平成元年度～平成7年度ガス圧焼結法による窒化珪素結体の製造技術 日 本 発 条(株) 平成元年度～平成7年度ダイヤモンド膜の低圧気相合成技術 セイコー電子工業(株) 平成元年度～平成7年度ダイヤモンド膜の低圧気相合成技術 住友電気工業 平成元年度～平成7年度ダイヤモンド膜の低圧気相合成技術 信越電気工業(株) 平成元年度～平成7年度非酸化物系セラミックス用微粉末の製造技術 日本セメント(株) 平成元年度～平成7年度高分解能電子エネルギー損失分光装置 (株)エイコー・エンジニアリング 平成2年度～平成6年度同軸直衝撃イオン散乱分光顕微鏡 (株)島津製作所 平成2年度～平成7年度ダイヤモンド膜の低圧気相合成技術 大阪ダイヤモンド工業(株) 平成3年度～平成7年度ダイヤモンド膜の低圧気相合成技術 昭 和 電 工 (株) 平成3年度～平成4年度β型炭化珪素の製造方法 住友金属工業(株) 平成4年度リン酸チタン・カリウム単結晶の製造技術 住友金属鉱山(株) 平成4年度～平成5年度ダイヤモンド膜の低圧気相合成技術 不 二 越(株) 平成4年度～平成7年度ダイヤモンド膜の低圧気相合成技術 出光マテリアル(株) 平成4年度～平成6年度炭化珪素焼結体の製造法 住友金属工業(株) 平成4年度ダイヤモンド膜の低圧気相合成技術 東芝タンガロイ(株) 平成5年度～平成7年度ダイヤモンド膜の低圧気相合成技術 住友電気工業(株) 平成5年度～平成7年度ダイヤモンド膜の低圧気相合成技術 不 二 越(株) 平成5年度～平成7年度ニューガラス設計支援装置 富 士 通(株) 平成5年度～平成7年度ダイヤモンド膜の低圧気相合成技術 大阪ダイヤモンド(株) 平成6年度～平成7年度ガス圧焼結法による窒化珪素結体の製造技術 京 セ ラ(株) 平成6年度～平成7年度チタン酸マグネシウム単結晶の製造法 真 空 治 金(株) 平成6年度～平成7年度輻射線集中加熱装置 真 空 治 金(株) 平成6年度β型炭化珪素の製造方法 (株)ブリジストン 平成6年度～平成7年度同軸直衝撃イオン散乱分光顕微鏡 (株)エイコーエンジニアリング 平成7年度モノクロメーター用ホウ化イットリウム単結晶の作製 技術(株)クリスタルシステム 平成7年度注)専用実施権は新技術事業団が有する。5共同研究1)共同研究の件数年 度 S61 S62 S63 H元 H 2 H 3 H 4 H 5 H 6 H 7 計共同研究 6 8 5 2 2 3 9 9 5 8 572 )共同研究一覧表 (昭和61年度～平成7年度)研 究 課 題 相 手 方 期 間モリブデン酸塩(PbMoO4)の単結晶育成 多木化学(株) 61.5.1～62. 3.31線巻超高圧シリンダー及びアンビルの構造 (株)神戸製鋼所 61.6.1～63. 3.31高純度β-SiC粉末の焼結と特性評価 (株)ブリジストン 61.6.1～62. 8.31フッ素置換型合成粘土フィルムの光学素子応用の研究 トピー工業(株) 61.10.10～62. 9.30超電熱性基板としての焼結ダイヤモンドの合成(官民特定 共同研究)電気化学工業(株) 61.11.20～元.3.31ペロブスカイト-ゲルマン酸塩系微粒子/厚膜の合成および 物性住友セメント(株) 62. 3.13～63. 3.12ペロブスカイト型厚電性厚膜の合成及び物性 日立電線(株) 62. 4.10～63. 3.31X線導管(XGT)の利用技術とくに走査型X線顕微鏡への 応用(株)堀場製作所 62. 7.20～63. 9.20新しい乾式法に基づくペロブスカイト粉末の開発 (株)白水化学工業 62. 9. 7～元.3.31高密度ペロブスカイトセラミックスの製造 (株)村田製作所 62. 9.21～元.3.31誘電体機能薄膜 (株)村田製作所 62. 9.21～元.3.31高密度ペロブスカイトセラミックスの製造 日本電装(株) 62. 9.21～元.3.31セラミックスの熱定数測定に関する新手法の開発 理学計測(株) 62.10.1～元.3.31ペロブスカイト型セラミックス材料 日本化学工業(株) 63. 2.1～2. 3.31ペロブスカイトセラミックス材料 住友金属工業(株) 63. 4.25～2. 3.31ニオブ酸バリウムナトリウム(Ba2NaNb5O15)単結晶育成及 びSHG特性多木化学(株) 63. 6.1～2. 4.30多結晶透光性ガーネット蛍光体の開発 神島化学工業(株) 63. 7.1～元.3.31切削工具用ダイヤモンド及びcBN焼結体の評価 三菱金属(株) 63. 7.1～2. 3.31研 究 課 題 相 手 方 期 間ゾルーゲル法による非酸化物ファイバーの合成 (株)コロイドリサーチ 63.11.1～元.10.31X線導管(XGT)のX線回折機器への応用 理学電機(株) 元.5.18～2. 5.17細束X線を用いた微小領域観測技術の高度化(官民特定共 同研究)堀場製作所(株) 元.12.28～6. 3.31セラミックス単結晶等のナトリウム中での耐食性 動力炉・核燃料開発事 業団2. 8.1～3. 5.31cBN単結晶及び関連物質の工具材料への応用 東芝タンガロイ(株) 2. 9.1～4. 3.31油膨潤性粘土鉱物を用いたピラードクレイの作製 日本ペイント(株) 3. 4.1～5. 3.31窒化ケイ素系材料の高信頼性化プロセス 日産自動車(株) 3. 4.1～6. 3.31ゾル・ゲル法によるNa1-xTi2+xAl5-xO12繊維の合成 ユニチカ(株) 4. 2.1～4. 3.31微小重力環境下における気相成長 宇宙事業団 4. 4.1～6. 3.31高輝度放射光による高圧下の構造変化の精密測定 高エネルギー物理学研 究所4. 4.16～6. 3.31ダイヤモンド焼結体切削工具材料の開発 三菱マテリアル(株) 4. 5.1～5. 3.31地球マントル物質の流動解析要素技術の開発 防災科学技術研究所 4. 7.20～6. 3.31ニオブ酸リチウムの光学特性と結晶構造 日立金属(株) 磁性材料研究所4.10.1～5. 3.31Si3C4-SiC複合粉末の成形・焼結および焼結帯の機械的性質 三菱ガス化学(株) 総合研究所4.10.1～5. 9.30酸窒化アルミニウムの生成機構 室蘭工業大学工学部 4.10.1～7. 9.30宇宙フロンティアセラミックス材料 宇宙開発事業団 4.12.15～7. 3.31硝酸ビスマス系の陰イオン交換材による有機系溶液中のハ ロゲンの除去昭和電工(株) 5. 2.1～5.12.28プリデライト系化合物の合成および電導特性の実用的評価 東ソー(株) 筑波研究所5. 6.21～9. 3.31含テルビウム酸化物単結晶の育成と特性評価 三菱重工業(株) 基盤技術研究所5. 7.1～6. 3.31Scを添加したニオブ酸リチウム結晶の光学特性 三井金属鉱業(株) 総合研究所5. 8.1～6. 3.31飛行時間法粉末中性子回折による構造解析 高エネルギー物理学研 究所5.10.1～7. 9.30SrF2-BN系焼結体の作製および特性評価 ニュークリア・デベロ ップメント(株)5.11.1～6. 2.28フロントフラッシュ法による熱拡散率評価法の開発 理学電機(株) 5.11.1～6. 3.31研 究 課 題 相 手 方 期 間超短波長フォトン回折装置の安定化及び単色化効率の向上 理学電機(株) 5.11.1～6. 3.31超硬質切削工具材料の開発 住友電気工業(株) 5.12.1～7. 3.31リン酸カルシウムセメントの硬化特性の高性能化 旭光学工業(株) 5.12.21～6. 3.31高輝度放射光による高圧下の構造変化の精密測定 高エネルギー物理学研 究所6. 4.1～8. 3.31粘土/有機物複合の合成及び機械的強度の実用的評価 (株)JSP 鹿沼研究所6. 6.1～8. 3.31スメクタイト及び類似の無機層状化合物の親有機化とその 応用昭和電工(株)川崎樹脂研究所6. 9.1～8. 3.31光応答性酸化物の創製と評価石油製品の一部代替を目的と するスメクタイト系粘土の利用に関する研究理学電機(株) (株)日本触媒6.12.27～10. 3.31石油製品の一部代替を目的とするスメクタイト系粘土の利 用に関する研究クニミネ工業(株) 研究所7.1.1～8. 3.31複合クラスターの形態操作と構造解析 日本電信電話(株) 境界領域研究所7. 7.1～8. 3.31宇宙環境を利用したセラミックス材料 宇宙開発事業団 7. 5.29～10. 3.31環状シロキ酸重合粘土鉱物の物性と構造解析 (株)資生堂開発研究所 7. 9.1～8. 8.31硫化セリウムの合成とその焼結 室蘭工業大学 7.10.1～9. 3.31TOP粉末中性子回折による高温・高圧下の構造変化 高エネルギー物理学研 究所7.10.1～9. 9.30衝撃圧縮法によるモノマーの重合反応 神奈川大学 7.11.1～9. 3.31X線構造解析および第一原理分子動力学法コードの並列処 理日本原子力研究所 8.1.16～9. 3.31リン酸カルシウムと生体溶解性高分子の複合化 大日本インキ化学工業 (株)8. 2.20～8.10.316受託研究1)受託研究の件数年 度 S61 S62 S63 H元 H 2 H 3 H 4 H 5 H 6 H 7 計共同研究 ― 1 2 2 1 2 1 1 1 1 1 22 )受託研究一覧表 (昭和61年度～平成7年度)研 究 課 題 相 手 方 期 間内装制御棒駆動装置用耐熱材料の調査研究 日本原子力研究所 63. 2. 4～63. 3.25内装制御棒駆動装置用耐熱材料の調査研究(その2) 日本原子力研究所 63.10.22～元.3.25cBN大粒単結晶育成用溶媒に関する緊急研究(振興調整 費)東芝タンガロイ(株) 63.10.25～元.3.20直接転換法による高圧相窒化ほう素の分離精製に関する研 究住友石炭鉱業(株) 2. 3.15～2. 3.30cBN大粒単結晶育成用溶媒に関する緊急研究(振興調整 費)東芝タンガロイ(株) 元.11.16～2. 3.207 GPa超高圧空間における高温発生技術と試料容器の開発 に関する研究三菱金属(株) 2.12.22～3. 3.25増圧板を用いた超高圧力発生技術に関する研究 三菱マテリアル(株) 3. 8.27～3.11.30Cz法によるTi ; Fe : Al2O3単結晶育成に関する緊急研究 (振興調整費)並木精密宝石(株) 4.1.8～4. 3.25超高圧力合成装置におけるガスケット材料の最適化に関す る研究三菱マテリアル(株) 4. 8.21～4.10.31黒鉛B4Cセラミックス中のホウ素の定量化に関する研究 巴工業(株) 5. 7.31～5.10.31ベルト型高圧合成装置の圧力限界と破壊状態に関する研究 三菱マテリアル(株) 6. 9. 3～6.11.30レーザーフラッシュ法によるセラミックスの熱拡散率に関 する研究理学電機(株) 8. 2. 3～8. 3.317 外国との研究交流1)外国からの研究者の受入の者数 (単位:人)年度S61 S62 S63 H元 H 2 H 3 H 4 H 5 H 6 H 7 計制度等S T Aフェロー ― ― ― 5 10 15 11 12 13 21 87C O Eフェロー ― ― ― ― ― ― ― 18 13 19 50J I C A ― ― 1 4 2 5 3 5 2 1 23サマーインスティテュート ウィンターインスティテュート― ― ― ― 1 3 1 2 4 2 13そ の 他 14 12 14 12 11 4 9 21 31 31 159合 計 14 12 15 21 24 27 24 58 63 74 3322)研究者の外国出張 (単位:人)年度S61 S62 S63 H元 H 2 H 3 H 4 H 5 H 6 H 7 計制度等在外研究員制度, 振興調整費 6 13 11 12 15 18 17 33 38 82 245財団等委託・助成制度 14 7 15 21 29 26 26 26 23 24 211私 費 16 13 5 10 4 48合 計 20 20 26 33 44 60 56 64 71 110 5048 外部(国内)からの研究者の受入者数(単位:人)年 度 S61 S62 S63 H元 H 2 H 3 H 4 H 5 H 6 H 7 計制度等科学技術特別研究員 ― ― ― ― ― 2 5 7 7 7 28外来研究員 56 53 54 26 41 31 44 39 38 34 416合 計 56 53 54 26 41 33 49 46 45 41 4449 表 彰1)叙勲,褒章等 (昭和61年度～平成7年度)授章者名 授 章 名 授章年月 日岩田 稔 勲三等瑞宝章 昭和63年11月3日田中廣吉 勲三等旭日中綬章 平成元年8月1日碓井 求 勲四等旭日小綬章 平成5年4月29日後藤 優 勲三等瑞宝章 平成7年11月3日2)学術団体等 (昭和61年度～平成7年度)表彰者 表 彰 名 表 彰 の 内 容 表彰年月日長谷川安利 窯業協会技術賞 耐熱構造材料用非酸化物セラミックスの酸化に関する研究 S61. 5.12内田健治堤 正幸窯業協会優秀賞 第11回セラミックスに関する顕微鏡写真展の出品に対して S61. 5.13長谷川安利 韓国漢陽大学校感謝碑 漢陽大学校における特別講義に対して S61.6. 5山本昭二 日本結晶学会賞 超空間群に基づいた変調構造の解析法及び応用に関する研究 S61.11.26牧島亮男 注目発明 機能性有機・無機複合非晶質材料及びその製造法 S62. 4.18石沢芳夫 研究功績者表彰 科学技術庁長官賞表面処理炭化チタンフィールドエミッターの研究 S62. 4.23白嵜信一 松田 伸一 (山村博)注目発明 湿式法による易焼結性ペロブスカイト及びその固溶体の原料 粉末の製造方法S62. 4.18門間英毅 市村賞貢献賞 多孔質アパタイト成形体の製造に関する研究 S62. 4.28板東  義雄田中  英彦猪股  ��三窯業協会優秀賞 第12回セラミックスに関する顕微鏡写真展の出品について S62. 5.12山本昭二 業績表彰科学技術庁長官表彰超空間論に基づいた系統的な変調構造解析法の開発及び四次 元超空間群を導き多次元結晶学の発展に貢献S62. 5.19瀬高信雄 粉体粉末治金協会研究 進歩賞ダイヤモンドの気相合成 S62. 6.1加茂陸和 〃 〃松本精一郎 〃 〃石沢芳夫 第12回真空技術賞 電界放射型電子銃のための極真空装置の開発 S62.11.12大島忠平 〃 〃大谷茂樹 〃 〃大島忠平 日本I BM科学賞 低速電子エネルギー損失分光法による表面フォノンの研究 S62.12.18表彰者 表 彰 名 表 彰 の 内 容 表彰年月日竹之内智 創意工夫功労者表彰 科学技術庁長官賞プリデライト系セラミックスの分析法の考案 S63. 4.18田中 高穂大谷 茂樹石沢 芳夫注目発明 イットリウム六十六硼��化物(YB66)の結晶体の製造法 S63. 4.18木島 剛 注目発明 モンモリナイトーシクロデキストリン系化合物の結晶質複合 体及びその製造法S63. 4.18泉富士夫 研究功績者表彰 科学技術庁長官賞リートベルト法による無機材料の構造解析に関する研究 S63. 4.18三島 修 田中順三業績表彰科学技術庁長官表彰立方晶窒化ほう素PN接合ダイオードを開発し,高機能電子 素子開発の発展に貢献S63. 5.19門間英毅 日本セラミックス協会 学術賞新しい水和凝結反応の基礎と応用に関する研究 S63. 5.25君塚 昇 国際センター(JCPDS) 粉末X線回折データの収集 S63. 7.30白嵜信一 研究功績者表彰 科学技術庁長官賞機能性セラミックスの制御技術の開発 H元.4.17大島 忠平 業績表彰科学技術庁長官表彰表面フォノンに関する研究 H元.4.17小須田幸助 創意工夫功労者表彰 科学技術庁長官賞超電導体に関する組成分析法の考案 H元. 4.18藤木良規渡辺 遵 佐々木高義注目発明 MxTi16-xGa16+xO56で示される正方晶系のトンネル構造を有す る化合物及びその製造法H元. 4.18塩田 勝 注目発明 高純度酸化チタンの空��を有する繊維構造体の製造法 H元.4.18堀内繁雄 松井良夫業績表彰科学技術庁長官表彰高分解能電子顕微鏡による新たな観察方法を創出し超電導物 質の結晶構造及びその発生機構解明を行い超電導材料開発に 貢献H元.5.19三橋武文 業績表彰科学技術庁長官表彰超電導解析のための理論式を導出しレーザパルスによる薄板 の熱拡散率測定法の開発を行い材料科学の発展に貢献H元. 5.19三友 護 日本ファインセラミッ クス協会技術振興賞窒化ケイ素及びサイアロンについて,その焼結に関し独創的 な技術を開発するとともにその基礎特性を解明され,窒化物 系ファインセラミックスの高性能化への発展の道を拓いた。H元.5.22北見喜三 日本電子顕微鏡学会技 術賞長期にわたり電子顕微鏡に関する卓抜な技術により我が国の 電子顕微鏡の発展に寄与した。H元.5.31三友 護 井上春成賞 ガス圧焼結法による窒化珪素焼結体の製造技術 H元.7.20門間英毅 研究功績者表彰 科学技術庁長官賞アパタイト系生体用セメントの研究 H 2. 4.17北見喜三 横山政人創意工夫功労者表彰 科学技術庁長官賞分析電顕用試料ホルダーの加熱方法の改善 H 2. 4.19表彰者田中 高穂大谷 茂樹石沢 芳夫宮沢靖人佐藤忠夫北見喜三 横山政人君塚 昇三友 護赤石 實佐々木高義田中 順三藤木 良規山岡 信夫三島 修江良 皓田中順三山岡信夫三友 護山本昭二月岡正至和田弘昭守吉佑介板東義雄佐藤洋一郎 加茂睦和 松本精一郎板東 義雄田中 英彦猪股 ��三相沢 俊 㔫右田龍太郎 大谷茂樹 石沢芳夫表 彰 名注目発明表 彰 の 内 容タングステン・カーバイトの結晶体の製造法表彰年月日H 2. 4.19注目発明 「チタン添加ガドリニシム,スカンジウム,アルミニウム, ガーネット結晶およびその製造法」H 2. 4.19業務表彰科学技術庁長官表彰菱面体晶窒化ほう素の合成法を確立し,高品質立方窒化ほう 素の大量合成法の開発に貢献H 2. 5.19日本ファインセラミツ クス協会セラモグラフ イック賞「透明Y A G焼結体の粒界」 H 2. 5.24国際センター(JCPDS) 粉末X線回折データの収集 H 2. 8.18注目発明 窒素含有ガラス質粉末の製造 H 3. 4.19注目発明 立方晶B-C-N結晶の製造法 H 3. 4.19注目発明 立方晶窒化ほう素のp-n接合型発光素子 H 3. 4.19科学技術功労者表彰 科学技術庁長官賞窒化珪素系構造用セラミックスの開発 H 3. 4.16研究功績者表彰 科学技術庁長官賞超空間群に基づいた変調構造の解析及び応用研究 H 3. 4.16業績表彰科学技術庁長官表賞温度制御に優れた多段反射型電気炉を開発し,大型で良質な 光学用単結晶の製造技術を確立して光エレクトロニクス用材 料開発に貢献H 3. 5.19業績表彰科学技術庁長官表賞複合タンタル硫化物の合成に関する研究に従事し新規なタン タル系化合物の合成法を確立して材料研究の進展に貢献H 3. 5.19日本セラミックス協会 セモグラフィック賞技術部門金賞 H 3. 5.23日本セラミックス協会 セモグラフィック賞学術部門銀賞 H 3. 5.23日本セラミックス協会 学術功労賞〃ダイヤモンド薄膜に関する研究 〃 〃H 3.10.18次世代産業基盤技術研 究功績賞ファインセラミックスの研究開発 H 3. 3. 3注目発明 黒鉛薄膜を有する金属炭化物とその製造法 H 4. 4.19表彰者中沢弘基 藤田武敏 山田裕久和田壽璋中沢弘基雪野 健室町英治北村健二板東義雄佐々木高義三友 護守吉佑介 松本精一郎 石垣隆正小松  優藤木良規 佐々木高義宮沢靖人田中英彦井上 悟神田久生赤石  實山岡信夫赤石 實矢島祥行表 彰 名 表 彰 の 内 容 表彰年月日注目発明 開放型微細空孔の粘土多孔体の製造方法 H 4. 4.19創意工夫功労者表彰 科学技術庁長官賞粉末X線回折用試料調整治具の考案 H 4. 4.13研究功績者表彰 科学技術庁長官賞X線導管とそれを用いた走査型X線分析顕微鏡の研究 H 4. 4.15業績表彰科学技術庁長官表彰結晶粒子の方位分布観察及び結晶構造解析の両機能を備えた 走査型X線回折顕微鏡/粉末X線回折計を開発して,材料評 価の信頼性向上に貢献H 4. 5.19業績表彰科学技術庁長官表彰高温超電導酸化物の研究において,新規化合物の組織決定及 び構造モデルの提唱,さらに,構造設計の指針を確立して研 究の基礎構築に貢献H 4. 5.19業績表彰科学技術庁長官表彰原料を連続自動供給する二重るつぼ回転引き上げ法を開発し て,不定比組成を制御した大型単結晶合成技術を確立し,光 学用材料開発の進展に貢献H 4. 5.19日本金属学会論文賞 Al/Alに常温接合体の組織的機械的および電気的特性に及ぼ す接合環境の影響H 4.10. 6日本イオン交換学会 奨励賞チタン酸塩イオン交換体の研究 H 4.10.15日経BP技術賞機械・材料部門 (日経BP社)β型窒化ケイ素セラミックスの高靱性化・高信頼性化技術 H 5. 4. 6注目発明 燃焼炎によるダイヤモンドの合成法 H 5. 4.12注目発明 ナトリウムとカリウムをイオン交換分離する方法 H 5. 4.12注目発明 磁気光学結晶薄膜用ガーネット単結晶及びその製造方法 H 5. 4.12注目発明 高温で安定な立方晶炭化物珪素-金属炭窒化物固溶体とその合 成方法H 5. 4.12注目発明 希上類含有フッ化ガラス H 5. 4.12注目発明 非金属触媒によるダイヤモンド砥粒の製造法 H 5. 4.12研究功績者表彰 科学技術庁長官賞非金属無機塩類を触媒とするダイヤモンド合成の研究 H 5. 4.12創意工夫功労者表彰 科学技術庁長官賞希上類ガリウムガーネット型単結晶の分析方法の考案 H 5. 4.16表彰者佐伯昌宣㔫右田龍太郎宮沢靖人 増田安次守吉佑介堀内繁雄 守吉祐介 藤木良規 泉富士夫松井   良夫室町   英治堀内  繁雄君塚  昇板東義雄 中村真佐樹加茂睦和 佐藤洋一郎板東義雄山田裕久藤木良規田中高穂表 彰 名 表 彰 の 内 容 表彰年月日業績表彰科学技術庁長官表彰硫化物合成に関する研究において,硫黄分圧制御法を用いて 遷移金属の三元系硫化物合成を可能とするなど,基礎的な硫 化研究の進展に貢献H 5. 5.19業績表彰科学技術庁長官表彰低エネルギーイオンを用いた固体表面における電子遷移機構 の解明を行い,表面原子の結合状態を解析する新たな手法を 確立し,表面化学分野の発展に貢献H 5. 5.19業績表彰科学技術庁長官表彰単結晶引上装置に新たな制御手法を導入することにより,高 品質酸化物単結晶の育成法を確立し,材料開発の進展に貢献H 5. 5.19業績表彰科学技術庁長官表彰加圧雰囲気単結晶合成炉に関し優れた改良を行い,高融点物 質・高蒸気圧物質の単結晶の安定育成を可能とし,研究業務 の進展に貢献H 5. 5.19学術賞((社)日本セラミックス 協会)セラミックスの製造プロセスにおける速度論的研究 H 5. 5.21最優秀写真賞(日本電子顕微鏡学会)準結晶の高分解能観察 H 5. 5.27論文賞(石膏石灰学会)MgOの転移における動的挙動に関する研究 H 5. 6.10第18回井上春成賞 溶融法によるチタン酸カリウム繊維の製造技術 H 5. 7. 8日本結晶学会賞 TOP中性子回折による高温超伝導体の構造解析 H 5.11.19論文賞(日本表面学会)変調構造を有するビスマス系複合酸化物の表面構造の高分解 能電顕視察H 5.12.1セラモグラフィック賞 学術部門銀賞((社)日本セラミックス 協会)InFeO3 (ZnO)13型ホモロガス相の変調構造 H 6. 4. 5業績表彰科学技術庁長官表彰ダイヤモンド高機能性材料化研究においてその基礎となる高 品質ダイヤモンドの合成法及び評価法を確立しスーパーダイ ヤモンドの開発に貢献H 6. 5.19業績表彰科学技術庁長官表彰セラミックスの高精度局所分析技術の高度化に関する研究に おいて,電子顕微鏡による超微細領域の元素分析や構造解析 の手法を確立し,先端技術の進展に貢献H 6. 5.19業績表彰科学技術庁長官表彰粘土鉱物スメクタイトの研究において,超高圧高温により世 界で初めて単結晶を創製し,その特性を明らかにするなど, 材料科学の進展に貢献H 6. 5.19学術賞((社)日本セラミックス 協会)一次元トンネル構造材料の高機能化に関する材料設計的研究 H 6. 5.20研究功績者表彰 科学技術庁長官賞六十六ホウ化イットリウム(YB66)を用いた放射光軟X線分 光素子の開発H 6. 5.20表彰者 表 彰 名 表 彰 の 内 容 表彰年月日板東義雄 瀬藤賞((社)日本電子顕微鏡学 会)分析電子顕微鏡法によるセラミックスの微構造解析 H 6. 5.20藤木良規 学術賞(日本イオン交換学会)高機能性無機イオン交換材の合成とその応用に関する研究 H 6.10. 5西村聡之三友 護セモグラフィック賞・技術部門銀賞((社)日本セラミックス 協会)自己複合化窒化けい素セラミックス H 7. 4.1小玉博志 注目発明 新しい無機イオン交換体並びにこれを用いた放射性ヨウ化物 イオンの除去及び固化方法H 7. 4.17赤石 實 神田久生 山岡信夫注目発明 リン触媒によるダイヤモンドの合成法 H 7. 4.17大沢俊一 創意工夫功労者表彰 科学技術庁長官賞超高圧合成装置用粉末成形部品の成形法の考案 H 7. 4.17小玉博志 研究功績者表彰 科学技術庁長官賞ビスマス系無機陰イオン交換体の創製及び反応に関する研究 H 7. 4.20和田健二 業績表彰科学技術庁長官表彰セラミックス膜の複合化に関する研究において超微細構造を 高度に制御することにより密着性に優れ超耐化学性と新たな 機能を有する複合膜の開発に貢献H 7. 5.19沢田 勉竹村謙一業績表彰科学技術庁長官表彰微小重力下における圧力制御結晶成長に関する研究において 微小重力環境と圧力制御の特性を結合した新しい結晶成長成 長手法の基礎を確立し材料科学の進展に貢献H 7. 5.19小野田みつ子 業績表彰科学技術庁長官表彰金属硫化物の構造評価に関する研究において,複雑な結晶構 造解析の手法を確立し,硫化物の基礎的研究の進展に貢献H 7. 5.19梅原雅捷 業績表彰科学技術庁長官表彰磁性半導体の電導電子状態と物性に関する研究において,磁 気ポーラロンの概念を確立し,磁性半導体の諸特性の発現機 構の解明に貢献H 7. 5.19木村茂行 学術賞((社)日本セラミックス 協会)酸化物光学単結晶の融液からの成長に関する研究 H 7. 5.19田中順三 学術賞((社)日本セラミックス 協会)セラミックス粒界の組成・電子状態評価法の確立と界面電子 状態の解明に関する研究H 7. 5.19松井良夫 瀬藤賞((社)日本電子顕微鏡学 会)酸化物高温超伝導体の構造解析 H 7. 5.25北村健二 井伊伸夫 木村茂行論文賞(日本結晶成長学会)LiNbO3不定比欠陥構造制御と二重るつぼ引き上げ法技術の開 発H 7. 8. 8Ⅱ機構等1機 構1)組 織所長顧問会議運営会議総括無機材質研究官管理部庶務課会計課企画課技術課研究支援室第1研究グループ(イットリア,Y2O3) 第2研究グループ(複合銀硫化物,Ag-M-S) 第3研究グループ(窒化ケイ素,Si3N4) 第4研究グループ(バリウムペロブスカイト,ABO3) 第5研究グループ(珪酸塩マクロモレキュル,R(Al, Si) On)第6研究グループ(希土類オルソアルミネート,RAlO3.ただしR:La-Lu,Y及びSc)第7研究グループ(ルテニウム,チタン)酸塩,A-(Ru,Ti)-M-O) 第8研究グループ(MX2型ホスト化合物誘導体,RxMX2) 第9研究グループ(Ⅵ族系酸化物ガラス,MOx-ROy glass)第10研究グループ(リン酸炭酸カルシウム,Ca(PO4)x(CO3)y・nH2O) 第11研究グループ(層状ランタン複合酸化物,La-M-O) 第12研究グループ(希土類多ホウ化物 REBn)第13研究グループ(光誘起屈折性結晶Bi12[Ge,Si]O20) 超高圧力ステーション(超高圧力の発生技術の開発) 超微細構造解析ステーション(超微細構造解析技術の開発) 未知物質探索センター(未知物質の探索・創製) 先端機能性材料研究センター(先端的な機能性材料の開発) 特別研究官 特別研究官(平成8年5月11日現在)2)委員会及び諸制度所員会議研究所に関する規則・所長達等の制定又は改廃,研究グループ・その他重要な施設の設又は 廃止,予算・事業計画,長期計画等に関する審議幹 事 会「無機材質研究所業務運営要領」及び「グループ研究体制の運用方針について」の趣旨を活 かすための補完的かつ各職員・組織間の意志疎通を図り業務の円滑な推進に資する。人事委員会 研究職俸給表の適用者の採用,昇任,昇格及び長期出張等に関する審議運営検討会研究所の運営に係わる中・長期の重要施策及び緊急案件,基幹委員会間の連絡調整,臨時委 員会及び部会の設置・撤廃,調査・検討した結果の所員会議等への報告等に関する審議研究計画委員会研究活動の基本的計画等 に関する審議課題検討分科会グループ再編成における新規課題の検討,ステーショ シ並びにセンターの研究計画の見直し等に関する審議特定研究分科会 特定研究の研究課題に関する審議広報分科会研究報告書,無機材研ニュース,要覧等の刊行及びそ の他広報活動に関する審議設備検討委員会重要設備の整備計画等に 関する審議経常研究設備分科会 経常研究における要求機器の検討等に関する審議特定設備分科会特定研究における要求機器の検討,特定研究の進 捗状況の把握等に関する審議図書分科会 図書管理業務の年間計画等に関する審議装置設置のための各種分科会研究所の重要設備の整備を円滑に遂行するため装 置の設置に係る基本方針・装置の仕様・運営方針等 に関する審議施設整備委員会研究施設の中・長期計画, 効率的利用等に関する審議部屋割分科会研究所構内建物の計画的・効率的利用等に関する 審議施設建設のための各種分科会新たに建設する建屋の施設計画の策定及びその目 的達成に必要な事項に関する審議健康安全委員会 研究所における職員の健康及び安全保持に関する調査・審議職務発明審査会 職務発明に関する審議放射線安全委員会 放射線障害の防止に関する審議契約検討会取得しようとする物品又は役務の予定価格が1,000万円以上ものについて,仕様書等機種,業 者選定,実行予算・予定額,指名業者の適否等の審議物品等調達契約審査会 物品の調達に係る競争入札に関する入札者から提出された制作仕様書等の審査さわやか行政サービス推進委員会 行政サービス及び窓口サービス等の改善に関する事項の審議2 .職 員1)定員の推移定員の推移表 (昭和61年度～平成7年度)区 分年度 昭和6162 63平成 元2 3 4 5 6 7職名等指定職 所 長 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1研究職 総括無機材質研究官 1 1 1行政職 (一)(事務系職員)(技術職員)計31 30 30 30 30 30 30 44 44 4412 12 12 12 12 12 1243 42 42 42 42 42 42 44 44 44行政職 (二)(技能・労務系) 4 4 4 3 3 3 3 3 3 2研究職総合研究官主任研究官研 究 員計17 17 17 17 19 19 19 18 18 1880 81 82 84 83 84 85 84 84 8421 21 19 18 16 15 14 13 14 15118 119 118 119 118 118 118 115 116 117合 計 166 166 165 165 164 164 164 164 164 1652)主な人事の推移年度昭和61年度 昭和62年度 昭和63年度 平成元年度 平成2年度 平成3年度 平成4年度 平成5年度 平成6年度 平成7年度職名所 長 7.29瀬高信雄 11.1藤木良規 11.1猪股��三総括無機材質研究官 4.1猪股��三 11.1木村茂行管理部長 清水真金 4.1内藤哲雄 6.16林光夫 6.14小倉伸一郎 3.15植田秀史 5.20武山謙一 8.1.20増田勝彦課 長庶 務 課 (61.2.15) 嶋野昭 6.1竹内好明 4.1関田正弘 4.1武井恒男 5.10田中孝三会 計 課 (59.4.1) 上遠野省三 5.1船越義一 6.1黒田勉 12.1富田千秋 5.17広瀬博 4.1代田康人企 画 課 (60.6.18) 松本功6.23樋口晃敏 4.1坂元思無邪 8.17田中孝紀 4.1藤沢勝一郎技 術 課 (52.5.2) 一ノ瀬昭雄 4.1今野重久 6.22小見波正隆室長 研究支援室 4.1青柳祥昭主任研究官(管理部企画課併任) 2.1三橋武文 (井上善三郎)2.1北村健二 2.1赤羽隆史 2.1赤石實 2.1室町英治2.1佐藤忠夫 2.1渡辺遵 2.1板東義雄 2.1内田吉茂 2.1山本昭二総 合 研 究 官第1グループ (57.4.1)白嵜信一 4.1池上隆康第2グループ (61.2.1) 石井紀彦第3グループ (57.4.1) 猪股��三 4.1三友護第4グループ 7.1堀内繁雄 4.1高橋紘一郎第5グループ (58.4.1) 岡井敏4.1 11.1(併)瀬高信雄(併)藤木良規 4.1高橋紘一郎 4.1中澤弘基第6グループ 4.1江良皓 4.1佐藤忠夫第7グループ (59.4.1) 藤木良規11.1(併)藤木良規 4.1三橋武文第8グループ 瀬高信雄10.1 佐藤洋一郎 4.1渡辺遵第9グループ 7.29瀬高信雄 10.1牧島亮男 4.1貫井昭彦第10グループ 4.1嶋津正司 4.1(併)瀬高信雄 4.1門間英毅 4.1田中順三第11グループ (55.4.1) 加藤克夫第12グループ (59.4.1) 石沢芳夫第13グループ (58.4.1) 木村茂行 11.1北村健二第14グループ (59.4.1) 君塚昇10.1千葉利信第15グループ (60.4.1) 中澤弘基超高圧力ステーション (52.5.2)福長脩 5.1山岡信夫超高温ステーション (60.4.6) 守吉佑介超微細構造解析ステーション未知物質探索センター 6.8君塚昇 10.1小玉博志先端機能性材料研究センター 4.1守吉佑介4.1佐藤洋一郎特別研究官 4.1江良皓 4.1月岡正至主任研究官(科学技術庁材料室併任) 5.1田中耕三 4.1和田弘昭 5.1池上隆康4.1青柳祥昭 10.1貫井昭彦 12.1渡辺昭輝5.1門間英毅 7.1神田久生 7.1竹川俊二 8.1羽田肇 7.1三島修 7.1井伊伸夫3)顧問氏 名桐 山 良  一田賀井秀夫山 内 俊  吉後 藤      優田中廣吉役 職 備 考大阪大学名誉教授 S 63.10.1～東京工業大学名誉教授 S63.10.1～東京工業大学名誉教授 S63.10.1～日本板硝子(株)筑波研究所顧問 H 5. 5.12～元無機材質研究所長 H 5. 5.12～4)運営委員氏 名岩 村      郎貴 田  勝  造末 野  悌  六田賀井秀夫坪井誠太郎野 口  長  次野 田  稲  吉三 宅  静  雄森 谷  太  郎田 代     仁山 口  悟  郎伊 藤  伍  郎犬 塚  英  夫松 本  秀  夫鈴 木     平山 内  俊  吉桐 山  良  一佐 藤  正  雄内 藤  隆  三山 本  英  雄伊 藤  正  三斉 藤  進  六井上弥治郎梅 沢  邦  臣尾 野  勇  雄田賀井秀夫吉 田      進山口成人奥 田      博濱 野  健  也田 中  廣  吉宮 宗  茂  行後 藤      優小 泉  光  恵定 永  良  一鈴 木  弘  茂中 川  竜  一新 居  和  嘉作 花  済  夫丸 茂  文  幸上垣外修己小見山 亨瀬高信雄竹 内      伸中 村  哲  朗廣 田  榮  一渡 辺  誠  一小 田      功近藤靖彦澤 岡      昭岡田雅年役 職 備 考科学技術庁金属材料技術研究所科学研究官 S41.5.24～S45. 5.31日本碍子(株)専務取締役 S41.5.24～S47. 9.15末野研究所長 S41.5.24～S55.10.12東京工業大学教授 S41.5.24～S46. 9.1日本学士院会員 S41.5.24～S61. 9.22通商産業省工業技術院名古屋工業試験所第5部長 S41.5.24～S47. 9.15三重大学長 S41.5.24～S47. 9.15東京大学教授 S41.5.24～S47. 9.15東京理科大学教授 S41.5.24～S47. 9.15京都大学名誉教授 S42.7.1～H 2. 4.30東京大学教授 S42.7.1～S51. 4.11科学技術庁金属材料技術研究所科学研究官 S44.3.1～S52. 4.30旭ダイヤモンド工業(株)取締役研究所長 S45.7.1～H 2. 4.30通商産業省工業技術院名古屋工業試験所第5部長 S46.2.1～S47. 9.15東京大学名誉教授 S46.7.1～東京工業大学名誉教授 S47.8.1～S63. 6.19大阪大学名誉教授 S47.9.15～S63. 6.19東京工業大学教授 S47.9.15～S49. 6.1通商産業省工業技術院名古屋工業技術試験所長 S47.9.15～S55. 4.30旭硝子(株)顧問 S47.9.15～S51. 5.16日本碍子(株)専務取締役 S48.6.29～S49. 6.1長岡技術科学大学長 S49.9.1～H 6. 5.27通商産業省工業技術院電子技術総合研究所長 S49.9.1～S53. 5.31(財)吉田科学技術財団理事長 S51.5.16～旭硝子(株)顧問 S51.5.16～S53. 5.15東京工業大学名誉教授 S52.4.1～S63. 6.19科学技術庁金属材料技術研究所科学研究官 S52.5.1～S53. 4.1理研計器(株)顧問 S54.7.16～S58.10.27財団法人ファインセラミックスセンター常務理事 S55.5.1～H 4. 5.24東京工業大学工業材料研究所長 S57.5.1～S61. 4.30TDK(株)技術担当常務付顧問 S58.9.12～H 4. 5.24東京工業大学工業材料研究所付属新素材セラミックス実験施設長 S61.5.1～H 2. 4.30新技術開発事業団理事 S62.1.1～H 4. 5.24龍谷大学理工学部教授 S63.6.20～東京大学名誉教授 S63.6.20～東京工業大学名誉教授 S63.6.20～金属材料技術研究所長 S63.6.20～H元.9. 6金属材料技術研究所長 H元.9. 7～H 7.11.30京都大学科学研究所長 H 2.7.1～東京工業大学工学材料研究所長 H 2.7.1～H 4. 5.24(株)豊田中央研究所副所長 H 4.5.25～大阪工業技術試験所長 H 4.5.25～H 6. 5.27昭和電工(株)技術研究本部顧問 H 4.5.25～東京大学物性研究所長 H 4.5.25～東京工業大学工学材料研究所長 H 4.5.25～H 6. 5.27北海道大学工学部教授 H 4.5.25～H 6. 5.27ソニー(株)中央研究所長 H 4.5.25～日本硝子(株)常務取締役研究開発本部長 H 6.5.28～名古屋工業技術研究所長 H 6.5.28～東京工業大学工業材料研究所長 H 6.5.28～金属材料技術研究所長 H 6.5.28～注)「役職」は在任期間中のもの3予算の推移(単位:千円)年  度 昭和61年度 昭和62年度 昭和63年度 平成元年度 平成2年度 平成3年度 平成4年度 平成5年度 平成6年度 平成7年度事  項無機材質研究所に必要な経費(A) 1,637,565債 179,550 1,672,465 1,760,869債 156,560 1,750,651 1,783,142 1,897,948 1,982,458 2,029,933 2,074,792 2,109,8061.人件費 1,033,307 1,052,697 1,080,609 1,123,732 1,195,510 1,305,998 1,385,683 1,429,920 1,449,054 1,452,679(1)既定定員分 1,031,417 1,050,761 1,078,284 1,120,974 1,192,990 1,303,757 1,383,264 1,421,897 1,444,797 1,450,600(2)新規増員分 1,890 1,936 2,325 2,758 2,520 2,241 2,419 8,023 4,257 2,079債 179,550 債 156,5602 .特別経費 604,258 619,768 680,260 626,919 587,632 591,950 596,775 600,013 625,738 657,127(1)経常事務費 321,283 319,022 323,962 332,238 337,929 339,059 342,480 357,078 375,813 401,646(イ)一般管理運営 62,466 59,680 58,403 60,044 61,140 59,363 60,143 63,248 78,089 96,174(ロ)研究部門運営 245,749 246,274 252,491 258,778 263,039 265,946 268,587 280,080 283,974 291,722(ハ)研究文献図書の整備 10,187 10,187 10,187 10,493 10,493 10,493 10,493 10,493 10,493 10,493(ニ) 研究に関する基礎調査 2,881 2,881 2,881 2,923 3,257 3,257 3,257 3,257 3,257 3,257(2)官庁会計データ通信システム 623 3,812 3,812 3,812 4,354 4,342(3)受託研究 2,398 2,398 1,235 1,233 1,233 1,210 1,210 1,210 1,210(4)特定整備運営 70,593 70,593 87,717 98,771 98,771 98,771 98,771 103,311 109,759 115,327(5)研究設備整備 84,142 84,142 78,285 80,634 80,634 80,634 80,634 64,734 64,734 64,734(6)無機材質特別研究 90,250 91,593債179,55068,198 68,441債 156,56068,441 68,441 69,868 69,868 69,868 69,868(7)極限技術大型装置整備 37,990 51,330 119,700 45,600科学技術庁試験研究施設整備に必要 な経費 (B)債 588,111 債 326,000 債 565,686 債1,273,275 債1,652,989181,399 405,714 107,053 238,623 215,181 371,182 268,035 603,886 870,655 686,039重粒子線がん治療装置の研究開発に必要な経費 (C)債 900,000389,414 802,763債 476,890811,950債 166,860817,618 849,198債 211,150722,078 680,181 854,1411.大型材料科学技術研究設備整備 110,960債 166,860119,860 111,160債 211,150118,064 165,214 165,5082 .新超伝導材料共同研究推進 716債 900,000726 761債 476,890761 761 761 761 1,4473 .新超伝導材料共同研究設備整備 388,698 802,037 700,229 595,647 541,870 405,759 257,190 222,8764.インテリジェント材料研究の推進 101,350 177,122 173,395 173,395 140,0525 .微小重力下における材料創製研究の推進 18,285 18,285 18,285 18,2856 .機能性スーパーダイヤモンド研究 5,814 65,336 255,6037 .超微細構造解析研究の総合推進 50,370計 債 558,111 債 179,550 債1,226,000 債 156,560 債1,042,576 債166,860 債1,484,425 債1,652,989(A)+(B)+(C) 1,818,964 2,078,179 2,257,336 2,792,037 2,810,273 3,086,748 3,099,691 3,355,897 3,625,628 3,649,986国立機関原子力試験研究費 (D) 31,024 30,969 28,807 31,958 31,816 31,063 34,846 35,185 58,971 56,281科学技術振興調整費 (E) 241,437 238,923 290,244 370,233 290,175 283,225 258,212 600,330 603,011 665,229科学技術振興費 (F) 23,498 24,222 24,125 28,950 28,991 52,642 60,026 50,633 38,316 51,755通産省次世代産業基盤技術研究開発(J) 11,888 11,066 10,275 10,468 8,971合 計 債 558,111 債 179,550 債1,226,000 債 156,560 債1,042,576 債 166,860 債1,484,425 債1,652,989(A) + (B) + (C)+(D) + (E) + (F) + (J) 2,126,811 2,383,357 2,610,787 3,233,646 3,170,226 3,453,678 3,452,775 4,042,045 4,325,926 4,423,251補正予算 1,359,847 930,288債3,902,983504,226(第一次) (1,359,847) (907,910) (160,000)(債3,902,983)(第二次) (344,226)(第三次) (22,378)4施設・設備1)主な建物 研究所敷地全面積 152,791.91m2建物番号建 物 名 構造建物面積(m2)取得年月日 備 考建面積 延面積2-12 高圧力特殊実験棟 RC-2 969 1,761 S44.12.164-12 研究本館 RC-3 2,287 6,077 S 46.10.126-16 排水処理機械室 RC-1-1 38 64 S 46.10.129-13 厚生施設 S-1 519 519 S47. 2. 310-12 ヘリウム特殊実験棟 S-1 180 180 S47. 2. 413-16 廃棄物質処理機械室 CB-1 15 15 S47.10.2315-16 排水モニター測定室 CB-1 20 20 S47.10.1316-12 高温合成特殊実験棟 RC-2 1,000 1,826 S48. 3. 817-12 陽電子消滅特殊実験棟 RC-1 168 168 S48. 3. 319-15 守衛・車庫棟 RC-1 139 139 S49.11.1820-12 無塵特殊実験棟 RC-2 661 1,465 S50.12. 922-12 超高圧電子顕微鏡特殊実験棟 RC-2 423 799 S51. 3.2325-12 管理棟 RC-2 1,149 1,828 S54. 8.3026-16 高圧開閉所 RC-1 225 233 S56. 3.2427-15 特高受変電所 S-2 152 265 S57. 3.3028-12 極限技術特殊実験棟 RC-1 1,085 1,085 S60. 4.1933-12 無振動特殊実験棟 RC-2 1,096 1,096 S63. 3.2537-12 超伝導セラミックス研究棟 RC-1 452 452 H 1.10.3138-12 荷電粒子応用特殊実験棟 RC-2 934 1,129 H 4. 9.3039-12 先端機能性材料研究センター棟 RC-3 626 1,768 H 6.12.2040-15 資材室 RC-1 132 132 H 6.12.202)主な設備(昭和61年度～平成7年度)装置名称 研 究 目 的 設置年度三次元局所領域解析装置 超高純度材質の合成法,極微量成分の物性に与える効果の研究に用いる。 平成62年度超高分解能超高圧電子顕 微鏡超電導の機構を解明し,超電導特性の高機能化を図るために超電導体の結晶構造, 欠陥構造,粒界構造,照射損傷過程等を1.0という従来にない高い分解能をもって原 子レベル(酸素などの軽元素を含む)で静的及び動的にその場観察し,超電導特性 等の関連性を解明するものである。昭和63年度トップシード単結晶育成 装置高品質単結晶の育成条件を決定するためにはフラックスを含んだ多成分系の相平 衡の研究を迅速かつ精密に遂行する必要があり,そのための微小領域多元素同時分 析を行うものである。平成元年度化学状態制御単結晶育成 システム雰囲気を厳密に制御した結晶育成及び育成した結晶の中のイオン状態を迅速に評 価しながら結晶育成にフィードバックし,より高度な単結晶育成技術の開発を行う ものである。平成2年度ナノ遷移領域解析装置 1原子層のオーダーで機能性セラミックスのナノ遷移領域の組成,微視的化学結 合状態,微細電子構造定数の分布を得ることができる。平成2年度構造材料用リアルタイム 制御合成装置焼結現象をその場計測し結果を合成炉焼成条件にリアルタイムに組み込みながら 優れた自己診断・自己修復機能構造材料の合成を行うものである。平成3年度荷電粒子応用特殊実験装 置MeVの高エネルギーイオンによる材料の改質及び新物質の創製を行うものである。 平成4年度局所欠陥不純物解析装置 300kVの高電圧を有する電界放射型の分析電子顕微鏡で,電子ビームを約0 . 4ナ ノ メートルにまで細く収束し,原子の配列を直視しながら視野に対応した粒界,界 面,欠陥などの超微細な領域の元素分析や構造解析を行うものである。平成4年度雰囲気制御高圧合成装置 高圧・高酸素圧下における物質探索を効率的に行うために必要な圧力範囲,温度 範囲,試料空間を備えたベルト型の高圧合成装置である。平成4年度三次元亀裂素過程解析装 置亀裂進展観察部と力学特性測定部からなる装置。前者の装置は試料に微小な変位 を与え発生する亀裂を三次元的に観察し画像解析により亀裂の進展する様子を明ら かにできる。後者の装置は試料の弾性定数等を測定し,これに基づいて亀裂先端の 応力場を計算させ亀裂進展の素過程を解明するものである。平成4年度光誘起変化時間分解型測 定装置初期非晶質状態(ガラス・アモルフアス状態)をX線回折法で解析しさらに,光 誘起により引き起こされる構造変化の機構をマイクロ秒程度の時間分解能でその場 観察して解析する。同時に光学的性質変化と対応させ,材料のインテリジェント性 発現機構を研究するものである。平成4年度表面形状観察評価装置 高加速電圧,低加速電圧ともに極めて高い分解能(ナノメーター)を有し,膜圧 100nm以下の薄膜断面の正確な情報が得られるとともに,組成分析と合わせて粒界 の詳細な構造を捕らえることも可能である。平成5年度エネルギー分散型構造解 析装置エネルギー分散型の粉末中性子回折により高温超伝導体の構造変化を詳しく調べ , 高温超伝導の機構解明,結晶・欠陥構造と伝導導性との関係及び新超伝導体の探索 に必要なデータを蓄積する。平成5年度歪分布自動解析装置 レーザービームを利用することにより,材料に存在する微小な歪の三次元分布を 高い空間分解能で高感度に測定するものである。これにより材料のもつ微小な歪の 定量的な解析が可能となり,セラミックス,半導体等の先端材料の高機能化が推進 される。平成5年度単原子積層過程解析装置 種々の手法を複合化することにより表面原子層の多角的な解析が可能な実験装置 を開発し,固体表面の局所構造や吸着した原子・分子等の動的挙動を研究する。バ ルクにない表面,界面に特有の性質を利用した表面新物質の設計が可能となる。平成7年度結合状態解析装置(光電子分光解析部)異なった方法,合成条件下で得られたBN膜の組成,結合状態,構造(cBN, hBN) の解析及び成長初期段階で発生する核の結合状態,基板界面の状態を解析し,さら には表面伝導と表面準位との関連を明らかにする。平成7年度編集後記無機材質研究所の創立30周年記念行事の一環として,平成7年7月に記念出版物を出版すること が決定され,創立30周年記念誌編集委員会が発足しました。編集委員会としては本記念誌の編集に 当たり,単に当研究所の30年間の変遷に留まることなく,21世紀を支える先端無機材質研究への展 開と夢を主題にまとめ上げることとしました。編集作業と時を同じくして,科学技術基本法(平成7年11月15日法律第130号)が成立し,それに 基づく科学技術基本計画が閣議決定され,科学技術創造立国を目指した科学技術振興の基本方針と そのための方策が明らかにされました。さらには,科学技術庁研究開発局長の諮問機関である物質・ 材料系重点研究領域懇談会(平成8年1～3月に開催)において,今後10年程度を見通した中・長 期的な物質・材料系科学技術における重点研究領域について報告書がまとめられ,技術革新の根幹 を支える物質・材料系科学技術の分野は,個々の研究者及び研究機関等の各研究主体が有する個性・ 能力 ・専門性等を十分に発揮・深化させながら物質・材料系科学技術の総体に一層の総合性や社会 性を付与することを追求することが重要であるとして,次世紀に向けて戦略的かつ重点的に研究開 発を推進すべき分野であると位置づけられました。このように科学技術の振興に対する広く国民の関心が高まっている時期に記念誌をまとめたこと は,正に時を得たものと自負しつつ,21世紀への発展方向を探索できる内容となるよう努めて参り ました。誌面の都合上十分に意を尽くし得なかったところもあるかと存じますが,今後の研究開発 の推進に一助となれば誠に幸いに存じます。最後に本記念誌発刊にあたって,ご協力を戴きました方々に心から感謝申し上げます。平成8年11月30周年創立記念誌編集委員委員長木村茂行委員石澤芳夫,渡辺遵,板東義雄,田中順三,加茂睦和,和田健二,小野田みつ子 羽田肇,大谷茂樹,増田勝彦,佐藤信夫,藤沢勝一郎,青柳祥昭事務局山下信雄,浅野広子,藤川隆博無機材質研究所創立30周年記念誌平成8年11月編集 無機材質研究所創立30周年記念誌編集委員発行 科学技術庁無機材質研究所〒305茨城県つくば市並木1丁目1番印刷・製本ニッセイエブロ(株)正 誤 表頁 行 誤 正3 2段上から6行目 (オーストラリア) (豪)6 2段下から10行目 チタン酸ウラン捕集材の合成 削除11 1段上から7行目 1.0Å有する 1.0Åを有する138 1段下から10行目 0XAFSによる解析 .XAFSによる解析151 昭和61年下から3線目下から2線目161 上から2行目 研究者の受入の者数 研究者の受入者数164 上から5行目 チタン添加ガドリシム, チタン添加ガドリウム,166 下から17行目 君塚昇 板東義雄〃 下から16行目 板東義雄 君塚昇173 下から14行目 京都大学科学研究所長 京都大学化学研究所長〃 下から13行目 東京工業大学工学材料研究所 東京工業大学工業材料研究所長〃 下から8行目 東京工業大学工学材料研究所 東京工業大学工業材料研究所長176 上から5行目 照射損傷過程等を1.0という 照射損傷過程等を1.0Åという177 上から5行目 開と夢を 望と夢を177 下から5行目 30周年創立記念誌編集委員 創立30周年記念誌編集委員裏表紙 上から3行目 30周年創立記念誌編集委員 創立30周年記念誌編集委員}aaetnaRat:+} if tHeistSeHsaitiHita :neHARGisiiBeHitfitifENEaeHeaaa tiiieeratA ehhi" : ait ifae neHeai caita