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[三石 和貴](https://orcid.org/0000-0002-9361-4057), 中澤 克昭, [清水 雅彦](https://orcid.org/0009-0009-3107-6829)

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© 2025 公益社団法人 日本顕微鏡学会[In Copyright](http://rightsstatements.org/vocab/InC/1.0/)

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[電子線タイコグラフィー入門](https://mdr.nims.go.jp/datasets/75f90ea5-4c6f-47ca-b188-1de5e92b8c92)

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顕微鏡 Vol. 60, No. 2 （2025）68顕微鏡 Vol. 60, No. 2 （2025）1.　はじめに4D-STEM 1）は走査透過電子顕微鏡法（STEM）において画素に対応する 2 次元のスキャン点全てで 2 次元の回折図形を取得し，トータル 4 次元のデータセットを取得する手法である．タイコグラフィー 2）は得られた 4D-STEM データから試料の位相などの情報を得る手法である．通常の STEM 観察で用いる 256 × 256 ピクセルや 512 × 512 ピクセルの場合，従来の CCD や CMOS カメラではデータの取得に数十分掛かっていたが，近年の検出器の高速化によって数十秒から数秒で取得できるようになり実用的になった 3,4）．また，近年の PC の計算能力の向上により数 GB に及ぶデータを処理できるようになってきたことの寄与も大きい．特に後に述べるタイコグラフィーの位相回復法の一つである反復法ではGPU の普及によって FFT を繰り返し使う計算が桁違いに高速化したことで複雑なモデルを仮定しての位相再生が可能となった．もちろん通常の環状暗視野法（ADF）などによる観察に比べれば現状ではまだデータ処理の点でもデータのサイズの点でも不便な点はあるが，将来的には 4D-STEM がデータ取得の標準になると思われる．一方でタイコグラフィーは回折図形から計算によって位相を得る手法であり，直感的に理解しにくいためか未だ多くの研究者に広く実施されているとは言い難い．また，タイコグラフィーは従来からの顕微鏡学的，回折結晶学的な側面もありつつも，数理情報学的な要素の重要性が増してきており，それがさらに敷居を上げている感もある．筆者は 2021 年にも解説を執筆させていただいており 5）重複する部分があるが，今回はなるべく式を用いずに原理的なところを説明し，かつ実際にデータを処理する際につまずきそうな点を解説することを心掛けた．また，後半では関連の論文を理解する上で個人的に重要と思う論文を紹介しつつ最新の動向を紹介した．この解説をきっかけとして，少しでも多くの人にタイコグラフィーに興味をもって研究に参入頂ければと思う．2.　タイコグラフィーとは試料を透過した電子線の位相は試料に含まれる原子のみならず電場や磁場などの豊かな情報を含んでいる．回折図形では電子線の強度の情報しか得る事は出来ず，試料を透過した電子線の位相は失われてしまっているが，もしすべての回折点の位相を得る事が出来るならば，強度と位相の情報から逆フーリエ変換を行う事で実空間のポテンシャル分布を得る事ができる．この失われた位相の情報を得る問題は逆問題とよばれ特に X 線の分野で古くから盛んに研究が行われてきた．タイコグラフィーはこの逆問題を解く手法の一つである．4D-STEM データを取得する際に収束角が十分大きいと，透過波が作るディスクと，回折波が作るディスクが重なり互いに干渉するようになり，その重なった領域の強度は透過波と電子線タイコグラフィー入門An Introduction to Electron Ptychography三石　和貴ａ＊，中澤　克昭ｂ，清水　雅彦ｃ，ｄKazutaka Mitsuishi, Katsuaki Nakazawa and Masahiko Shimizuａ物質・材料研究機構　マテリアル基盤センターｂ物質・材料研究機構　若手国際研究センターｃ物質・材料研究機構　エネルギー・環境材料研究センターｄ三菱ケミカル株式会社　Science & Innovation Center要　旨　電子線タイコグラフィーは，4D-STEM データから試料の位相情報を回復する手法であり，近年の検出器の高速化により実用になりつつある．タイコグラフィーは，通常の観察方法では難しい電子線照射損傷に弱い材料の解析にも適している他，試料の深さ情報や入射プローブの収差やモードなど，これまで得る事ができなかった情報を引き出すことができ，今後の材料科学研究において，ますます重要な役割を果たすことが期待される．一方で，解の正当性や定量性といった課題が残されており，今後の研究の進展が求められている．本稿ではタイコグラフィーの原理と直接法および反復法の詳細，および最近の研究動向についてなるべく平易な解説を試みた．キーワード：タイコグラフィー，4D-STEM，位相回復，回折顕微法＊〒 305–0047  茨城県つくば市千現 1–2–1TEL: 029–863–5474E-mail: Mitsuishi.Kazutaka@nims.go.jp2025 年 4 月 18 日受付，2025 年 6 月 2 日受理doi: 10.11410/kenbikyo.60.2_6869解説　電子線タイコグラフィー入門回折波の位相差に応じて変化する．プローブをスキャンするとその初期位相を変える事が出来るため，重なった領域の強度はスキャンにつれて変化する．つまり電子線を計測する際に失われてしまう位相の情報が，ディスクが重なった領域の強度の変化として 4D-STEM データの中に含まれることになる．これを計算によって取り出すのタイコグラフィーである 6）．以下に述べるようにタイコグラフィーによる位相再生方法にはフーリエ変換によって解を求める直接法（direct method）7,8）と，反復計算によって解を求める反復法（iterative method）9）があるが，この二つは計算方法としてはまったく異なっており，再生に用いるデータを取得する際の条件も異なるが，このディスクが重なったところの強度を，複数のプローブ位置で取得したデータから再生する点で共通している．直接法では通常電子線を試料にフォーカスした状態で取得したデータを用いるため別名，Focused probe ptychographyとも呼ばれる．一方，反復法は通常，意図的にプローブをデフォーカスしてデータを取得して再生を行うため，別名defocused probe ptychography と呼ばれる．3.　直接法によるタイコグラフィー直接法による再生方法にはさらに，Single Side Band（SSB）法 8）と Wigner distribution deconvolution（WDD）法 7）が有るがここでは SSB のみ解説する．今，簡単のため物体中で a の間隔で並ぶ原子面が作る回折波 g（g = 1/|a|）だけを考え，その原子面に垂直にスキャンをする状況を考える（図 1）．電子線の入射波をスキャンすることは，逆空間ではディスク内の位相を変化（傾斜）させることに対応する．位相が変化しても観測される強度は変化しないため，図 1 中のディスクが重なっていない領域 A や，領域 C で観察される強度は変化しない．一方で重なっている領域 B では位相変化によって透過波と回折波の位相が変化するためスキャンによって強度が原子面間隔 a の周期で変化する．明るさがスキャンにつれて周期的に変化するということは，スキャンに対してその強度をフーリエ変換すると，その変化の周期，すなわちに a の面間隔に対応するフーリエ成分が強く現れる筈である．そしてフーリエ変換したことでその成分は複素数になり，振幅と位相の情報を持っている．ここでは式を用いての証明は割愛するが弱位相物体近似の元でこのフーリエ成分の位相が，透過波と回折波の位相差に直接対応することが示されている 10）．図 1（b）には（a）に比較して狭い面間隔による回折波 g’の場合を描いた．回折波が遠くなったことに対応し，重なる領域も遠く，狭くなっており，（a）の時とは異なる場所に干渉による強度変化が現れ，試料中に存在する面間隔によって検出器の異なる領域の強度が変化することが判る．したがってフーリエ変換によって任意の面間隔の情報を得るには，回折図形を 2 次元で取得する必要がありピクセル型検出器を用いる必要がある．図 1（c）には，（a）に比較して面間隔が広い（|g| が小さい）場合について，今まで省略していた –g と合わせて描いた．この時，重なっていない A’’ と C’’の領域はこれまで同様強度変化せず，透過ディスクと回折波が重なった B’’ の領域は周期的に変化する．また，新たに透過ディスクと +g と –g が三重に重なった領域 D が現れている．この領域は triple overlap region と呼ばれ，透過波に加えて散乱波同士の干渉が起きる領域であるため，弱位相物体近似の下ではこの領域は除外される．またこれと対比して前出の透過波と回折波が重なった B や B’’ の領域は double overlap region と呼ばれる．収差が無い時，重なった領域はすべて同位相となるため，重なった領域のフーリエ成分の和を取ることで S/N を向上することが期待できる．そのためフーリエ成分毎に double overlap region のエリアにマスクを掛けて抽出し，その強度と位相を得る手法が SSB である 8）．double overlap region の面積は収束角と回折波の関係で変わるため，この領域の面積はそのまま直接法によるタイコグラフィーの伝達特性となっている 11）．すなわち，収束角（ディスクの半径）に対応する逆格子距離で double overlap regionの面積が最大となるためトランスファーが最大となり，収束角の 2 倍でゼロとなる 10）．図 2 は金の微粒子からの 4D-STEM データの例である．実空間のスキャン点は 512 × 512 で，各点から図 1（b）に示したような回折図形を取得している．直接法による位相再構成を行う場合，再生に用いるのは透過ディスクの範囲内だけであるため，通常，透過ディスクが検出器のサイズ一杯に広がるようにカメラ長を調整して取得する．図 1（a）は（b）に四角で示した位置の強度で各スキャン位置をプロットしたものである．これは透過ディスクの中央に小さな絞りを入れて STEM 像を取得した時の状況に対応しており，明視野（BF）STEM 像となっている．回折図形上の何処を選んで像を作るかはもちろん，データ取得後に自由に選択することが出来る．各点から得られた 2 次元の回折図形上の各ピクセルの強度を，スキャンに対して 2 次元フーリエ変換すると，新たな 4次元のデータが得られる．スキャン位置を（x, y），回折図形上（検出器上）の位置を（kx, ky）とすると，4D データは（x, y, kx, ky）で表されるが，これをスキャン点（x, y）ついてフー0 g(a)B CA0 gʼBʼ CʼAʼ(b)0 gʼʼBʼʼ CʼʼAʼʼ(c)-gʼʼDBʼʼCʼʼ図 1　ピクセル検出器上の透過ディスクと回折ディスクの模式図顕微鏡 Vol. 60, No. 2 （2025）70リエ変換すると（Qx, Qy, kx, ky）となる．ここで，スキャン点，（x, y）のフーリエ変換した座標を回折図形の逆空間（kx, ky）と区別して，（Qx, Qy）と書いた．同じ 4 次元データであるが，こちらは全て逆空間のデータとなっている．図 2（c）はフーリエ変換後の各（Qx, Qy）の位置での回折図形のフーリエ成分の全ピクセル強度の和を表したものである．これは丁度，通常の STEM 像のフーリエ成分の強度（Diffractogram）に対応しているが各ピクセルに複素数の回折図形が対応している．（d）は（c）の枠で示したの位置での回折図形のフーリエ成分の強度の様子を示した．（d）では，図 1 で示した double overlap region が見えている．これはスキャンによって（Qx, Qy）の成分に対応する周期で（d）に示された回折波 g による double over lap region が振動したことを示している．4D-STEM データはすべて離散的なデータであり，（Qx, Qy）の刻み幅と範囲は離散フーリエ変換の関係により実空間のスキャンの範囲と刻み幅にそれぞれ依存している．一方で（kx, ky）は検出器のピクセル数とカメラ長によって決まるため，データを処理する際には（Qx, Qy）と（kx, ky）の距離と角度の関係を校正する必要がある．具体的には，（c）で明るく見える点の（Qx, Qy）の座標と，対応する回折図形で観察される回折点の位置（kx, ky）の関係として校正を行う．ここで（c）で選んだ（Qx, Qy）の方向と，（d）の回折ディスクの中心 g の方向が異なっているのは，スキャン方向と回折面での方向が一致していないためである．最近の電子顕微鏡では TEM 像と回折図形の方向は一致するように調整してあるのが一般的だが，STEM のモードでは通常一致していない．また，データ取得の際は中間レンズや投影レンズの値を透過ディスクのサイズ調整等のために調整しなおすことがあるため，取得条件（スキャン範囲，ピクセル数，カメラ長）ごとに校正を行う．また，異なる gを複数用いてキャリブレーションを行う方法や，透過波ディスクの重心像を用いる方法など，スキャンの軸が歪み等により（x, y）が直角でないより一般的な場合についてもキャリブレーションする方法が複数提案されている 12,13）．3.1　事後の収差補正データを取得する際のプローブに収差が在る場合には図 1のBの領域の位相は一様ではなく収差を反映して場所によって異なったものとなる．図 3 にデフォーカスを 20 nm オーバーフォーカスにした条件で取得した金微粒子からの4D-STEM データでのフーリエ変換後の回折図形を示した．デフォーカスはプローブにパラボラ状の初期位相を与える事に対応し，ディスクが重なりあう double overlap region ではその差が場所によって異なるため位相が変化している様子が観察されている．白と黒の縞状に見えているのは，位相が2πを超えて回ってしまっているためである．また，デフォーカス以外の収差は位相の歪みとして表れるため，この double overlap region の位相が平坦になるようにプローブの初期位相を求める事でプローブの収差を計算することが出来る 14）．収差をどの程度精度よく計測できるかは，double overlap region に見られる位相の S/N と，その解像度に依存する．隣り合うピクセルで位相が 2π以上変化してしまうと収差を正しく求めることが出来ないため，回折図形を高精細にとるほど大きな収差まで対応できる．3.2　直接法での観察例図 4 は直接法により再生されたゼオライト（CHA）の［001］からの観察例である 15）．前述の事後の収差補正によってデフォーカスなどの収差を取り除いている．これまで説明してきたように直接法によるタイコグラフィーは透過ディスクの透過波と回折波による干渉効果を用いる phase contrast イメージであるため，HAADF のように結像にインコヒーレントな熱散漫散乱電子を用いる結像と比較して試料を透過した電子を無駄なく利用することができ電子線の利用効率が高い 16）．かつ事後に非点やフォーカスなどの収差を調整することも可能なため，電子線照射損傷に弱い材料のロードーズ観(x, y)( Qx, Qy)FT(a)(c) (d)(b)( kx, ky)( kx, ky)g-g図2　金微粒子からの 4D-STEMデータの例．（a）4D-STEMデータにマスクをかけて得られた明視野像，（b）各点からの回折図形，（c）フーリエ変換後の回折図形の強度のマップ，（d）（c）の白枠の位置のフーリエ変換後の回折図形．透過ディスクと回折ディスクの干渉によるパターンが見えている．(a) (b) (c)図 3　デフォーカスしたプローブで得られた 4D-STEM データでの double overlap region の振幅と位相．（a）フーリエ変換後各点での回折強度のマップ，（b），（c）（a）で白枠で示した位置での回折図形のフーリエ成分の振幅（b）と位相（c）．71解説　電子線タイコグラフィー入門察に非常に向いており 17,18），今後さらに様々な応用が期待される．なお，ここまで説明の都合上，結晶性試料で回折スポットがでる場合を想定して説明したが，キャリブレーションさえできていれば結晶性試料である必要は原理的にはない．ただし，明確な構造が無い場合には再生された位相が上手く再生できているかどうかを判断するのは難しくなると考えられる．一方で厚い試料では定量的な解釈ができなくなるなど 19,20），位相コントラストイメージングならではの問題も存在するため注意が必要である．4.　反復法によるタイコグラフィー上記に述べたように，直接法のタイコグラフィーでは事後処理によるプローブ収差の補正や，高いビーム効率によるロードーズ観察への適用などがしめされた．一方でタイコグラフィーの中でも特に最近注目を集めているのが反復法によるタイコグラフィーである 21）．反復法によるタイコグラフィーでは，以下に述べるようにプローブの収差にとどまらず，さまざまな実験上のエラーや試料の深さ情報などが得られるようになっており，今後もさらなる発展が期待されている．4.1　回折顕微法反復法によるタイコグラフィーの回復原理は回折強度から物体関数の位相を回復する回折顕微法 22）の一種ととらえることが出来る．たとえば，N 点の回折強度が得られている時に，各点での位相を回復することは N 点の強度情報から物体関数の実部と虚部の 2N の解を求める事に対応し一般には不可能であるが，回折強度以外に試料に関する事前知識があると求める事が可能な場合がある．たとえば，回折強度を取得する際に試料の周りに既知の領域を含めて取得すると，再生の際にこの知識をもちいて解を絞り込むことが出来る．この事前知識を拘束条件と呼ぶ．回折顕微法ではこの事前知識には試料のまわりの真空や絞りを用い，そこでの物体関数が1 やゼロであることで解を絞り込む．具体的な手順は以下の通りである．まず，既知の真空領域や絞りなどの要件を満たす 2 次元の物体関数を用意する．この際，位相は不明であるためピクセル毎に乱数を仮定する．これをフーリエ変換することで回折強度を求めると，求まった強度は実験で得られている強度とは異なっている．そこでフーリエ成分の位相はそのままに，振幅だけ実験で得られている強度の平方根に置き換えて解を更新する．これをフーリエプロジェクションと呼ぶ．さらにこれを逆フーリエ変換して実空間に変換すると，振幅を実験に置き換えているため得られる実空間の物体関数は拘束条件を満たさないため，これを満たすように解を更新する．以上の過程を 1サイクルとし，サイクル繰り返すと徐々に拘束条件と実験で得られている回折強度の両方を満たす位相に収束することが期待される．4.2　反復法による回復プロセス回折顕微法の場合入射波は平行入射であるが，タイコグラフィーの反復法においては回折図形の取得を収束プローブがデフォーカスした状態で行う．デフォーカスした状態ではプローブは試料にデフォーカスに応じた広がりをもってあたることになり，得られる図形にはこの照射領域の物体関数の情報が乗ることになる．そしてスキャンステップをこのプローブの広がりよりも十分に小さなステップで行うと，物体関数の同じ領域の情報が複数の回折図形に含まれる冗長度の高いデータを取得することが出来る．タイコグラフィーではこの異なるプローブ位置から得られた重なる領域の物体関数が互いに共通になることを実空間での拘束条件として再生を行う．図 5 に回復プロセスの模式図を示した．前提として，試料下面の波動関数は物体関数とプローブ関数のピクセル毎の積（アダマール積）で表されるとする．手順は以下の通りである．まずスキャンで照射される範囲全体の物体関数を用意する．初期値は通常，すべてのピクセルの振幅が 1 で位相を乱数にする．（真空はプローブと掛け算した時にプローブが変化しないため，振幅 1，位相ゼロに対応する．）次に各プローブ位置毎に更新するエリアを全体の物体関数から切り出し，実験で用いた収束絞り径などの情報から計算したプローブ関数と掛けることで試料下面の波動関数を求める（①）．それをフーリエ変換することで回折面での波動関数を求める2nm図 4　直接法によって得られたゼオライトの位相像の例×プローブ関数Oʼ＝ Ψフーリエ変換φ（K)=|φ|eiθ振幅を回折強度の平方根で置き換え位相はそのままに．Ψ newOʼ newプローブ関数での割り算全体の物体関数逆フーリエ変換P照射範囲の切り抜き更新された物体関数P１φʼ（K)=| Iexp|eiθ試料下面の波動関数更新された試料下面の波動関数②③④①図 5　ピクセル検出器上の透過ディスクと回折ディスクの模式図顕微鏡 Vol. 60, No. 2 （2025）72（②）．位相をそのままに，振幅を実験の強度の平方根に置き換え試料下面での更新された波動関数を求める（③）．更新された波動関数をプローブで割り算することで更新された物体関数を求め，これを全体の物体関数に戻す（④）．全体の波動関数に更新された物体関数を戻す部分をオーバーラップラッピングプロジェクションといい，全く置き換えてしまうのではなく，適当な係数を設定して元の物体関数に混ぜていくのが一般的である．隣り合う照射領域で一致する物体関数の更新は強め合い，異なる更新は平均化されて弱くなるため，反復を繰り返すうちに共通の物体関数に収束していく．この方法を Ptychographical Iterative Engine（PIE）9）と呼ぶ．また，プローブでの割り算の部分は，プローブの強度が小さい所で数値的に不安定になるため，プローブの二乗で割って複素共役を掛けるという操作で演算を行う．平行入射の場合と異なりデフォーカスした収束プローブを用いることで回折図形の中に含まれる実空間の情報の範囲をそれぞれの照射領域に限定することができ，プローブ位置毎に独立にフーリエプロジェクションを行う事が出来ている．かつ物体関数が共通であることを拘束条件とすることで回折顕微法と異なり，回折図形を取得する際に試料の周りに真空や絞りなどのサポートを設ける必要が無く，任意の試料で任意の範囲で行う事ができ観察できる範囲に制限がない．このため当初は低倍で広範囲な位相回復への応用が期待されたが 23），最近ではむしろ高分解能への適用が増えている．また，冗長なデータを用いることで直接法では得る事ができなかった様々な情報を得る事が可能となっている．以下ではその中で重要と思われるものを上げる．4.3　プローブの補正図 5 の④で示したように，フーリエプロジェクションによって更新された波動関数をプローブ関数で割り算することで更新された物体関数を得る事ができるが，ここでこの同じ更新された波動関数を物体関数で割ると更新されたプローブ関数を得る事ができる．これを物体を更新するのと同じように一つ前のプローブ関数にある割合で混ぜていく事でプローブ関数を得る事ができる．これを extended-PIE（ePIE）と呼ぶ 21,24）．4.4　プローブの位置補正データ取得中のプローブやサンプルがドリフトや振動によってずれるとプローブ位置毎で求まった物体関数を全体の物体関数に混ぜる際に重ならないため，像がぼけてしまう．そこでこれを補正する手法が提案された 25）．やり方は非常にシンプルで，図 5 の①のプロセスでプローブ位置を僅かにずらしてプローブ関数を複数作成し，それぞれを物体関数と掛けてフーリエ変換し回折強度を求め，その中で実験の回折強度との差が最も小さいプローブ位置をそのスキャン点での新しいプローブ位置として採用する．シミュレーテッドアニーリングの要領で反復計算の回数に応じてプローブ位置の変位幅を徐々に小さくすることで最適なプローブ位置が求まる．僅かにずらしたプローブ位置は，毎回ランダムに 3 点から 5 点を選んで行う．なお，プローブ位置は物体関数の画素サイズよりも大きい部分に関してはピクセル単位でずらし，サイズよりも小さな変位についてはプローブ関数を一旦フーリエ変換しシフト量に応じた位相を掛けた後に逆変換して求める．そのため，プローブ位置を複数点計算する分計算量は増える．現在では②で求まる現在のモデルでの回折強度と，実験の回折強度の差を損失関数として定義し，それをプローブの位置について微分しその方向にプローブ位置を更新して行く手法が提案されている 26,27）．4.5　プローブのモード非常に驚くべき事だが，プローブが互いにインコヒーレントな複数のモード（状態）から構成されていると仮定し，回折強度はこれら独立なモードによる回折図形が単に足し合わさったものとして再構成を行う事でそれぞれのプローブのモードを独立に求める事ができることが示されている 28）．これも計算方法がまた驚く程シンプルで，図 5 の①②の部分を複数のモードに対応するプローブを用意し，それぞれを物体関数に掛けてそれぞれのモードからの回折強度を求め，③のステップで，これら異なる強度の和が実験の回折強度と一致するようにスケールしなおして，サイクルを回していくだけである．これらのモードは入射電子線に含まれる異なる状態や振動に起因する互いにインコヒーレントな状態と考えられ，物体関数を高い分解能で再構成するには複数のモードを含めて計算を行う事が必須 29～31）とされているが，現状では計算の結果でてくるプローブのモードについて十分な説明なされていない．計算的には一つのコヒーレントな状態だけでは説明できない部分を押し込めるごみ箱のような役割を果たしていると考えられ，これらの意味や正当性は今後の研究で明らかにしていくべき部分である．また，同様の方法で物体側が複数の異なるモードから成る場合も別なモードとして回復できることが示されている 32）．4.6　マルチスライスタイコグラフィー現在，タイコグラフィーが注目されている最大の理由がこれだろう．ここまでの反復法では，反復計算はすべて回折強度とモデルとのあいだで行われてきたが，モデルを複数枚に分けてそれぞれの層を次の層との間で更新していく事で 3 次元的なスライスを再生できることが Maiden らにより示された 33）．モデルを仮定して散乱強度を HREM 像の計算で電子顕微鏡分野ではなじみの深い multislice 法と同様に計算していく計算を先ず行い，試料の一番下流のスライスを回折強度に置き換える事で更新し，その更新された波動関数を満たすように，その手前の層を順次更新して行く．これにより試料を傾けることなく，一つのデータセットからドーパントの深さなどの情報を高い深さ分解能で得る事が可能である事が示されている 29）．もちろん，この時の深さ分解能は収束角による制限を受けるため，より高い深さ分解能を得るにはトモグラフィーと同様に試料を傾斜することが有効である 34）．最近では，最大 4° 程度傾斜して取得した複数の 4D-STEM データセットを共通の物体関数として，（傾斜はスライスの間の73解説　電子線タイコグラフィー入門ずれとして取り込んで）再生することで高い分解能を達成したという報告がなされている 30）．4.7　反復法での観察例図 6 はゼオライト（AEI）の［100］から 4D-STEM データと反復法での再生例である．（a）は（b）の回折図形の中の白い枠の強度を各スキャン点の強度として表示したもので明視野像に対応するもので，（b）は（a）で白枠で示した位置からの回折図形の例である．40 nm 程デフォーカスした状態で取得しており，それに対応して透過ディスク中には試料の照射範囲がシャドーイメージとして見えている．図 6 の実空間のスキャン点は 64 × 64 と直接法用のデータと比べて粗くしているが，一方で回折図形は 264 × 264 と高精細に取得している．図 5 で示したように全体の波動関数から切り出す物体関数のピクセルサイズは，この回折図形とフーリエ変換の関係となるため，回折図形の刻み幅が物体関数の実空間での切り抜きのサイズを規定する．そのため，これがあまり小さいとデフォーカスしたプローブが物体関数の切り抜いた範囲に収まらなくなるため再生ができなくなる．図 7 にこの関係を図示した．照射範囲の重なりはデータの冗長度を決めており，ディスク径の 60％以上が良いとされており，デフォーカスを小さくした場合にはスキャンのステップサイズを小さくする必要がある．また，回折図形に含まれる逆空間の範囲は直接法で再生するためのデータでは検出器一杯に透過ディスクが広がる条件でデータを取得したが，反復法では検出器の 1/3 程度のサイズになるようにカメラ長を調整して取得する．図 6（c）は反復法で回復された像の例である．回復には後に述べる Poisson のノイズモデルを用いた最尤推定法 26）を用い，プローブ関数は 3 つのモードを仮定し，スキャン位置の補正等も行っている．回折面がスキャン方向と一致していないため，全体の物体関数の中でスキャン位置が回転しており，四隅に更新されていないエリアが見えている．周辺部では物体関数の重なりが少なくなるため像質が悪くなっている．4.8　最適化問題としての側面複数スライスから成る物体関数や，多数のプローブのモード，プローブ位置などフィットすべきパラメータの数が増えると当然収束するのは難しくなってくる．また実験の回折強度は再現出来てもそれが正しい解になっているとは限らない．実際の実験ではノイズや外乱の影響があるためなおさらである．Thibault 35） らは最尤推定法を用い，Poisson やGauss などのノイズモデルを取り込んだ損失関数の最小化問題として反復法の定式化を行った．求めたいパラメータによるこの損失関数の微分を用いて最小化することで，勾配法や共役勾配法によって物体関数やプローブ関数，プローブ位置のみならず，スライスの厚さの最適化や 36），多層の伝播を記述する際のプロパゲータに傾斜を導入することで試料が傾斜していても位相を高分解能で再生可能なことなどが報告されている 37）．さらに，フィットすべきパラメータが増えるとオーバーフィッティングのリスクも生じるため，正則化によって解を制限する試みも行われている 35,38～40）．取り出せるデータが増える程，パラメータの数も増え，さらにより少ない電子線量で照射に弱い材料を観察するなどのニーズもあり，より安定して回復できる手法へのニーズは益々高まっており，今後の発展が期待される．5.　プログラム今回例示した再構成例ではコードは独自に開発してきたものを用いているが，オープンソースでの開発も幾つか行われて い る． 代 表 的 な も の と し て は Python ベ ー ス のpy4DSTEM 41），Matlab ベースの PtychoShelves 42）が有名である．また，最近は論文に付随してコードが公開される例も増えてきた 15,26,30）．我々も WDD 法のコードを公開しているので参考にして頂きたい 15）．(a) (b)(c)3nm図 6　ピクセル検出器上の透過ディスクと回折ディスクの模式図Δk = 1/a a回折図形 実空間Δk = 1/a a同じカメラ長でピクセルが荒い時．透過Diskシャドーイメージプローブの照射範囲プローブの照射範囲図 7　ピクセル検出器上の透過ディスクと回折ディスクの模式図顕微鏡 Vol. 60, No. 2 （2025）746.　おわりにかなり駆け足となってしまったが，タイコグラフィーに関する原理から最近の発展までを解説した．私が学部の学生だった遠い昔，高分解能 TEM 像の結像理論や定量性が盛んに議論されていた．2000 年代初頭には収差補正器とともにSTEM が登場し，やはり結像理論や定量性の議論が盛んに行われ，今では誰でも使う標準的な手法となっている．タイコグラフィーは今後の高速ピクセル型 STEM 検出器の普及とともに間違いなく標準的に使われる手法の一つになっていくと思われる．しかしながら，解の正当性や定量性など未だ解決すべき課題が多く，今再び顕微鏡学が求められている．この解説をきっかけに，一人でも多くの人に研究に参入頂ければと思う．謝　　辞本研究の一部は JSPS 科研費（24K15598）の支援を受けて実施されました．文　　　献1） Ophus, C.:  Microsc. 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