BY EF FR Hi if 1966 十年のあゆみ 1966 科学技術庁金属材料技術研究所創立十周年記念 グ ラ ビ ア 金属材料技術研究所 正門 開所五周年 記念式典 三木科学技術庁長官の告辞 建設功労者に感謝状を贈呈 来訪された方々 衆議院科学技術特別委員会一行(昭和37年3月) 近藤鶴代元科学技術庁長官(昭和38年1月) 愛知揆一前科学技術庁長官(昭和39年8月) マックスプランク金属研究所長 ケスター教授(昭和38年9月) 御 挨 拶 所長理博橋 本 宇一 10年1日の如くという言葉がしばしば使われるが,その言葉の様に昭和31年7月本研が発足して 以来,その発展と共に歩んで来た私共にとっては希望,期待,緊張,等の中に10年が誠に早く終っ た感じがする。僅か40人の人と1億円の予算で始められた本研も定員457人となり,遂年の予算も 漸増して相当な額が投入されたことは後記の記録に明らかな処である。又管理部,研究4部で始め られたものが研究12部,試験部となり,漸くにして当初の計画の完成に近づきつつあるといえよう。 この季に当り一言御挨拶を述べることは私にとり誠に感無量である。 国立研究所がどの様な本質をもち,どの様な機構をもって,どの様に運営されて行くべきである かということについては国の経済,科学,技術,等の水準,現状と共に歴史的背景という様なもの も影響のあるものと思う。しかしながら何れにしても国立研究機関は国がその国の現状で実施しな ければならない研究を実施し,国でなければ可能でないことを行なうべきであると思う。この様な 観点に立って研究所は生れ,また育成されるべきであって,本研が僅か10年という短期間に現状迄 発展したことについてはこの様な意味で大過なかったということができると思う。わが国金属研究 の過去から現在までには各方面に相当輝かしい成果があがっており,殊に研究室的成果において著 しいものがある。しかし全く中立的な立場からの原鉱から成品にいたる迄の一貫研究の場,基礎と 応用,発展とが緊密な連繋をとった研究の場ということになると,従来わが国に欠けておりまた世 界的に見ても数少いものと考えられる。この様な研究の在り方,方法論的な考え方は本研としては 当所創立以来貫かれた思想であって,現在においても変りはない。基礎にかたより,応用にかたよ ることなく,また前述の様な思考上,目的のない,やればどうにかなるという様な研究のやり方は 極力排してきた積りである。これは大規模な研究を指しているものでなく,例えばその規模がどの 様なものであり,また,基礎と応用の何れを問わず考慮されなければならない。 この様にして軸受鋼の品質改善に対する研究を例にとると軸受の寿命に及ぼす非金属介在物の影 響を調べ,組成,加工,熱処理,等を最善とした場合,わが国で容易に得られる原材料を用いて, しかも最も優秀な組織成分をもち,不利な組織成分,殊に寿命に対して不利な影響を及ぼす様な介 在物をもたない様にするには如何な製造,加工方法をとったならばよいかということになる。しか もその方法は経済基礎に乗らなければならない。その他高強力鋼,耐熱材料等,材料そのものの進 歩発達に同様なことがいえ,また粉末冶金,溶接,腐蝕その他材料研究の各分野に対しても同様で ある。粉末冶金を例にとってみよう。微粉末を強圧で圧縮し,これを酸化することなしに加熱する か,または強圧を加えつつ加熱する場合には焼結が起る。その焼結条件には粉末の種類,形状,大 きさ,表面状態,圧縮の程度とその分布状態,加熱温度等種々の条件が影響を及ぼしてくる。場合 によっては,粉体表面の結晶格子の歪,活性等の影響があろう。この様なことは,まず,原料粉体 の各種物理的,物理化学的特性を如何して明確に知るかということが必要であり,次にはこの様な 条件を満足させる粉体を如何にしてつくるかということが重要になってくる。唯粉体を型で圧縮成 形し還元ガス中で適当に加熱すれば求める焼結体ができるというのでは研究としては不充分である。 材料と目的により粉体のもつべき各種条件を適確に知り,これを満足する粉末を得る不法が確立さ れれば,粉末冶金研究の重要な第一歩が定ったことになる。このことは微粉末鉄粉磁性金属粉につ いてもいえよう。この様な研究には当然のこととして金属物理的研究の必要があると共に,応用乃 至発展研究に依り,目的を満たす成品が得られる。ここにも研究の一貫性の必要が痛感される。一 方基礎研究の一例として金属物理的な研究としての異方性組織,脆性破壊等の研究を取り上げてみ ると,これらの究明は直接,間接に実用上の問題につながり,または例えば2方向性珪素鋼板に関 係がある。この様に基礎的な研究も唯その研究のみにかぎらず,これを土台として発展する様に導 かれるべきであると思う。このことはまた材料研究の為にはいろいろ異った研究分野の協同,協力 研究が必要だということも意味している。例えば製鉄,製鋼の様な材料の製造方式には今後10年位 の間に相当大きい変革があると考えられるが,これには基礎分野,製錬,鉄鋼,中間工業化等の各部 の協力体制が必要である。このようにして材料研究の場としては単独に弧立して研究を行なうより も,より効果的な研究方法は材料の生れから製品にいたる一貫研究であり,基礎と応用との研究協 力であり,現象を観察し,種々のプロセス等の研究にあたってもいろいろの観点,方向からみるこ とが必要である。本研の研究体勢はこのような考え方で発足し,これによって現在にいたるまで発 展してきたものであるから,現在のような部制にいたっても同様な運営が行なわれているところに 特徴がある。 それであるからといって各個研究は大切であって,これなしに研究者の研究意欲を一層旺盛なら しめ得ないことは当然である。研究者はいくつかの柱またはピラミッド的な研究の一部を行なって 柱またはピラミッドの完成に志しているが,と同時に年間100以上の研究発表の大部分はそれぞれ に明瞭な研究目標をもった各個研究の成果である。本研においては目的さえ確実に立てまたは把握 し,この解明または発見に向っての研究であれば,如何このような材料をとりあげ,如何このよう な方法で行なうとも自由である。 研究費と設備との許す範囲でそれぞれの研究部および室において自由に実施できる。しかし自由 ということは勝手気侭に目標なしに行なうというのではなく,当然研究所としてまたは部,室の秩 序を守って自由に行なえるという意味である。本研の使命としては国家的要請に基づいてのわが国 の材料科学,材料技術の進歩,発達により,わが国の材料,材料生産を改善し発展させるところに ある。この点に対しては例え自由な研究といっても当然考慮をはらわなければならない。また当然 のことながら研究所としてはその実績は研究成果のいかのみによって問はれるべきであって,これ がいかにして評価されるかということが問題なのである。本研としては設立後,いまだ日なお浅く 特に優秀な研究成果があるという訳ではないが,各方面で学会賞,論文賞等を得たあまた優秀な研 究者をもち,この結果からも伸びつつある研究所と自負するものである。 昭和40年4月1日から本研に材料試験部が発足し,原子力開発,航空宇宙開発,電子技術の進歩 等に必要な特定目的の材料研究を行なうかたわら,わが国で生産され,また使用される材料値の国 家保証をする意味での材料試験を行なうようになった。昭和40年からしばらくの間は主として匍匐 試験を行なうが本年度中にはシングル型407台,マルチプル型36台となる予定であり,従って同時 に約740本の匍匐試験を実施できる予定である。当初の計画が1,108台であるから,道未だ遠しの 感はあるが順次達成されるであろう。なお研究部のもつ匍匐試験機はマルチプル20台を含めて約 250台である。将来は当然疲労試験に相当重点がおかれるべきであって,今年からその準備に取り かかる予定である。匍匐と異って必要なことは大形試験片に対するものまたは構造物に対するもの 等である。そして他の一流材料技術国のようにいずれは材料試験所として独立して行くべきものと 考える。 本研の10年の歩みは本研の人員,設備,研究成果,等に相当の発展があり,わが国の産業の発展 のために寄与したと考えるが,これはまた,くるべき10年の歩みに対する第一歩であるともいえる。 金属材料には今後10年の間に技術的に相当大きい変革があると考える。例を普通鋼生産にとったと しても過去約10年間に上欠転炉,排気処理等,相当めざましい進歩があった。今後の10年間にはこ れに勝るとも劣らない大きい進歩があると思われる。合理化によって生産コストを少しでも廉くす るというのみでなく,高炉によらない安価な直接製銑,製鉄法または溶銑を連続的に製鋼する方法, 積層鋼板,線材と粉末冶金とのコンビネーション等,研究成果による材料の進歩,生産コストの引 き下げ等を材料そのものの改善,新材料の創製等とともに考えて行くべきと思う。本研としてもこ れらの点を考慮して研究に対し多角的に各種の措置を行なっている。実験も相当程度実施しはじめ ている。また特に Maraging Steelにおける組織成分Ni-Mo系の時効硬化のメカニズムのよう に極微の析出物の影響を見逃すことはできない。このような現象を材料において新しく発見するこ とにより,新しい材料が見出されることがあると考える。材料そのものの本質からはホイスカー等 についての研究も行なって行くべきであるが,同時に他の物質との複合体の原材料としてのホイス カーの研究を行なうように,将来コンバインドマテリアルについての研究をいろいろの形で行なう べきであると思う。例えば金属と高分子材料のような非金属との複合体等も一例であると考える。 金属材料のもたない性質を非金属材料で補うとともに,金属材料と同じ目的に用いられる非金属材 料についても研究をないがしろにしてはならない。 このようにして,本研の現状と将来について寧ろ客観的に述べたが,研究の基本は何といっても 各現象,各物質の本質を明確に究めることが第一義であって,この意味で基礎と基礎的研究の確実 な裏付なしに研究の本格的発展はない。この意味で応用研究,発展研究の場においても基礎的な概 念,基礎的な裏付,基礎研究が重要であって,単に現象にとらわれるのでは意味が少ない。この意 味で基礎研究に重点が置かれることを記し,これをいかに発展させ,これがいかにして応用研究の 裏付であるかということを意義ずけ,関連ずけるかというところに研究の基本があることを記して 擱筆したい。なお本研の現在の姿はこの侭当地に残り,将来発展する部分および研究に共通な装置, 例えば将来造られるであろう150万ボルト~200万ボルト電子顕微鏡というようなものが,研究学園 都市に設置されることを附記する。 最後に本研の各種業務に日夜を分たず骨身をけずってくださっている研究と事務との所員,現在 にいたるまで本研の育成のため御尽力くださった科学技術庁,大蔵省当局,また常に温い後援をし てくださっている同じく研究にたずさわっている研究機関および業界に厚く御礼を申し述べる 。 歴代科学研究官 工博(故)小 川 芳 樹(初代) 工博 的場 幸 雄(第二代) 工博(故)遠藤勝治郎(第三代) 工博岩村霽郎(現在) 現職各部長 管理部長 戸部健次郎 金属化学研究部長 工博柳原 正 製錬研究部長 工博柳橋哲夫 鉄鋼材料研究部長 工博荒木 透 非鉄金属材料研究部長 工博木村啓造 特殊金属材料研究部長 工博坂田民雄 電気磁気材料研究部長 理博吉田 進 製造冶金研究部長 工博牧口利貞 材料強度研究部長 岩元兼敏 腐食防食研究部長 工博伊藤伍郎 溶接研究部長 工博福本 保 工業化研究部長 田中龍男 材料試験部長 理博河田和美 元第1部長 工博(故)小西芳吉 十年のあゆみ 目次 巻頭目次 クオトグラビア 御 挨 拶 歴代科学研究官 現職各部長 本文目 次 第1章概 況 総 説 1 1.経 過 2 2.機 構 5 3.職員構成 6 4.予 算 7 5.建 設 10 第2章運 営 総 説 15 1.研究推進活動 17 2.受託研究,共同研究 18 3.図書,情報蒐集活動 19 4.特 許 20 5.対外活動 21 第3章研究業務 総 説 23 総合研究 26 金属物理研究部 40 金属化学研究部 50 製錬研究部 58 鉄鋼材料研究部 67 非鉄金属材料研究部 76 特殊金属材料研究部 86 電気磁気材料研究部 93 製造冶金研究部 104 材料強度研究部 111 腐食防食研究部 118 溶接研究部 125 工業化研究部 135 材料試験部 141 第4章技術サービス,設備 総 説 142 主な設備一覧 144 付録参考資料 科学技術庁設置法(抜すい) 科学技術庁受託研究規程 この5年間の記録 おもな組織・人事異動 国際会議出席者一覧 海外視察研究者等一覧 海外留学者一覧 本研究所に滞在した海外研修員 表彰事項 おもな訪問者および会議 研究成果一覧 昭和41年度年次研究計画 第1章概 況 「十年のあゆみ」は,金属材料技術研究所創立十周年を記念して,設立以来10年間に当所が活動 してきた足跡を御紹介する書である。 総 説 わが国の経済は,ここ10年間にとくにいちじるしい展開を示し,産業構造の変貌と重化学工業諸 製品の生産量の拡大をひき起しつつある。当所10年の活動は,わが国のかかる拡大経済とその基礎 をなす科学技術の進展とともに行なわれ,ここにそれを御紹介できることは意義深いことと思う。 歴史的には,人類の金属の発見,近世における鋼の大量生産,現代における科学技術の総合的進 展が,文明の進歩,経済社会の向上そして人類の福祉にいかに貢献しているかは論をまつまでもな い。 第二次大戦を契機として,世界の科学技術は新しい展開をはじめ,わが国においても,戦後,空 白の一時期を経て昭和30年前後には,すでに戦前の経済力をもつまでに復興したが,わが国の工業 製品に関して,当時,一部を除き外国製品に比較して材料の遜色を問題とされることが多かった。 わが国の産業界では,航空機工業の再開,原子力開発等が,その将来の担い手となるに及んで,そ れに即応する材料に関する諸問題を緊急に解決するため,金属材料およびこれに類する材料の総合 的研究機関設立の必要性が各方面で具体的に唱えられるにいたった。 昭和30年7月,内閣総理大臣から航空技術審議会に諮問された「関係行政機関の航空技術に関す る研究のための経費を必要とする計画の連絡調整に必要な措置」に対して,同年11月に提出された 材料に関する答申は,「金属材料技術研究所は,航空機工業に必要な金属材料に関する研究に主眼 をおくこと。金属材料の研究は広範な分野にわたるものであるから,航空機材料においては,その 特殊性のあること等からみて緊急な連絡をとりつつつ計画を進めること。」(一部要約)等の内容を 含むものであった。昭和31年1月には,通産省から要求された国立金属材料技術研究所分担経費と して1億円を経上する予算内定があり,昭和31年度予算成立とともに同年4月,金属材料技術研究 所(国立)経費1億円,人員40名(うち20名は機械試験所より移管)が認められることとなった。 昭和31年5月19日,科学技術庁発足と同時に,工業技術院から金属材料技術研究所設立に関する事 務が科学技術庁に移管され,同年6月4日,科学技術庁庁議において,初代所長に東京都工業奨励 館館長,橋本宇一氏が内定,同年7月1日に科学技術庁内に仮庁舎をおいて金属材料技術研究所が 発足した。この間,斯界代表から意見,要望などが提案され,これを中心として当所のもつ使命, 性格および運営の基本方針がとりまとめられ,関係方面の御承解を得た。昭和31年10月には,かね てからの懸案であった研究所敷地として,旧海軍技術研究所の一部転用が正式に決定し,同年11月, 移転を完了,直ちに庁舎の改修に着工した。しかるに当所は,設立にいたった経過趣旨に沿った当 所運営方針に従い関係方面と緊密な連繋を保ちつつ,国として相当する必要のある金属材料に関す る基本的,総合的研究および試験を実施して,わが国の産業界に使用される金属材料の品質向上に 資することを使命としている。 発足後,金属材料技術研究所は,人員および施設,設備の整備をはかるため,直ちに関係方面と 連絡をとりつつ,建設整備5ヶ年計画を策定した。その大要は,昭和35年後の時点で,一応の完成 を目途とした計画で,総人員485人,研究設備費累積額20億円,建物延坪数8104坪で,昭和35年度 における研究費が220,000千円を含む内容で構成された。この計画を基本として,遂年,人員およ び施設,設備の拡充強化をはかるため,全国各大学,研究機関等から優秀な研究員の任用を進める ことと併行して,研究庁舎の改修,建設と研究設備の整備をすすめ,金属材料技術に関する総合的 研究機関としての研究体制の確立につとめた。 かかるとき,諸搬の情勢から当所建設整備5ヶ年計画を昭和35年に完成することが困難となった。 そこで昭和34年7月,これを人員および施設,設備整備7ヶ年計画として再編成するにいたった。 その大綱は,5ヶ年計画に基本的変更を加えていないが,科学技術の進歩に伴って一部の改変を余 儀なくされた施設設備が加えられた。その後,この7ヶ年計画に沿って,遂年,当所整備を進めた 結果,昭和38年度において,ほぼ第一次の整備段階を終了したといえる。 機構遷移の特微は当初,所長,科学研究官,管理部2課,研究4部の体制下に人員40名で発足し, 当初3ヶ年この体制がとられたが,昭和34年以降に,遂年研究部の増設が行なわれて機構が強化さ れた。数字別表示をとっていた研究部は,昭和37年には,一部に部門の分離増設の必要を残しなが らも第一次建設設備計画の最終年度による研究体制の一応の確立の意義をもって各部の職務を代表 する名称が部名に採用せられた。昭和38年に,地区別国立大学教授4名が当所運営上の重要事項に 参与することになった。また,同年斯界の要望もあってわが国の材料に国家保証を与える観点から, すでに関係政府機関,公立機関ならびに関係業界に対して調査を進めていた結果を勘案し,材料試 験所設立計画の39年度予算要求行為をした。翌年,人員3名と建物建設費56,462千円(4,490m2) をもって材料試験所準備室が発足,昭和40年3月には,当所隣接の防衛庁敷地約5,200m2が当所へ 移管せられ,建屋建設に着工した。同準備室は,昭和40年度に材料試験部と改め,建屋の建設をい そぐかたわら,試験業務に備えるため調査研究活動を進めた。 建設進行について総括すると,昭和31年11月,当所が旧海軍技術研究所の敷地の一部(約40,000 m2)に移転した際,建物6棟分約8,900m2の転用が内定し,当所の建設推進活動がはじめられた。 移転完了と同時に,転用のきまった建物を試験研究棟として必要な改修工事に着工した。改修工事 は,昭和33年度に一応修了し,延約9,000m2の実験庁舎5棟が改修された。一方,建設整備5ヶ年 計画および同修正7ヶ年計画に沿った当所整備の進行に従い,人員,設備の充足により,新研究庁 舎の早期建設がせまられた。まず,昭和33年,24号庁舎(クリープ精密測定実験庁舎)の新設を始 めとして,遂年新庁舎建設が進行した。新庁舎の建設は,転用された建物の改修後に行なわれたの で研究所として完全な建屋配置のレイアウトにはのせられたとはいえぬが,溶解圧延実験庁舎を中 心として,研究活動グループ,作業の流れおよび新庁舎増設含み等の諸点が勘案せられた。昭和41 年度予算において,製錬実験場増設,ラジオアイソトープ実験場増設が実行される計画で,当所の 現敷地内の建屋はほぼ一応の整備の域に達したといえよう。 1.経 過 総説に概説された通りの経緯を経て昭和31年7月1日誕生することになった本研究所は,翌2日 科学技術庁第1会議室において開所式を挙行,科学技術庁の部を仮庁舎として発足し工業技術院機 械試験所並びに都立工業奨励館において研究を行なうこととなった。 ついで同年8月8日に開催された第1回金属材料研究部会においては,初年度業務計画案並びに 昭和32年度予算等要求案が承認され,更に8月30日には本研究所建設整備5ヶ年計画が策定された。 10月12日にいたりかねて折衝中であった旧海軍技術研究所の1部(現在地)の転用が正式に決定, 11月に移転を完了,直に改修工事が着手された。 発足後1年を経た7月20日には開所披露式が行なわれた。 その後本研究所の建設整備は当初樹立された5ヶ年計画に基づいて推進されたのであるが,諸般 機 構 推 移 表 昭 和 31 年 度 昭 和 32 年 度 昭 和 33 年 度 昭 和 34 年 度 昭 和 35 年 度 昭 和 36 年 度 ’昭 和 3 7 年 度 昭 和 3 8 年 度 昭 和 3 9 年 度 昭 和 4 0 年 度 昭 和 4 1 年 度 所 長 所 長 所 長 所 長 所 長 所 長 所 長 所 長 所 長 所 長 所 長 科 学 研 究 官 科 学 研 究 官 科 学 研 究 官 科 学 研 究 官 科 学 研 究 官 科 学 研 究 官 科 学 研 究 官 科 学 研 究 官 科 学 研 究 官 科 学 研 究 官 科 学 研 究 官 管 理 部 管 理 部 管 理 部 管 理 部 管 理 部 管 理 部 管 理 部 管 理 部 管 理 部 管 理 部 管 理 部 庶 務 課 庶 務 課 庶 務 課 庶 務 課 庶 務 課 庶 務 課 庶 務 課 庶 務 課 庶 務 課 庶 務 課 庶 務 課 会 計 課 会 計 課 会 計 課 会 計 課 会 計 課 企 画 課 企 画 課 企 画 課 企 画 課 企 画 課 企 画 課 企 画 課 企 画 課 企 画 課 企 画 課 企 画 課 技 術 課 技 術 課 技 術 課 技 術 課 技 術 課 技 術 課 第 1 部 第 1 部 (3 研 究 室 ) 第 1 部 (5 研 究 室 ) 第 1 部 (6 研 究 室 ) 第 1 部 (4 研 究 室 ) 第 1 部 (5 研 究 室 ) 金 属 物 理 研 究 部 金 属 物 理 研 究 部 金 属 物 理 研 究 部 金 属 物 理 研 究 部 金 属 物 理 研 究 部 (4 研 究 室 ) (5 研 究 室 ) (5 研 究 室 ) (5 研 究 室 ) (5 研 究 室 ) 第 2 部 第 2 部 (3 研 究 室 ) 第 2 咅K (4 研 究 室 ) 第 2 部 (4 研 究 室 ) 第 2 部 (4 研 究 室 ) 第 2 部 (4 研 究 室 ) 金 属 化 学 研 究 部 金 属 化 学 研 究 部 金 属 化 学 研 究 部 金 属 化 学 研 究 部 金 属 化 学 研 究 部 (4 研 究 室 ) (4 研 究 室 ) (4 研 究 室 ) (4 研 究 室 ) (4 研 究 室 ) 第 3 部 第 3 部 (3 研 究 室 ) 第 3 部 (4 研 究 室 ) 第 3 部 (4 研 究 室 ) 第 3 部 (4 研 究 室 ) 第 3 部 (4 研 究 室 ) 製 錬 研 究 部 製 錬 研 究 部 製 錬 研 究 部 製 錬 研 究 部 製 錬 研 究 部 (2 研 究 室 ) (4 研 究 室 ) (5 研 究 室 ) (5 研 究 室 ) (5 研 究 室 ) 第 4 部 第 4 部 (4 研 究 室 ) 第 4 部 (4 研 究 室 ) 第 4 部 (4 研 究 室 ) 第 4 部 (4 研 究 室 ) 第 4 部 (3 研 究 室 ) 鉄 鋼 材 料 研 究 部 鉄 鋼 材 料 研 究 部 鉄 鋼 材 料 研 究 部 鉄 鋼 材 料 研 究 部 鉄 鋼 材 料 研 究 部 (7 研 究 室 ) (4 研 究 室 ) (4 研 究 室 ) (4 研 究 室 ) (4 研 究 室 ) 第 5 部 (3 研 究 室 ) 第 5 部 (4 研 究 室 ) 第 5 部 (4 研 究 室 ) 非 鉄 金 属 材 料 研 究 部 非 鉄 金 属 材 料 研 究 部 非 鉄 金 属 材 料 研 究 部 非 鉄 金 属 材 料 研 究 部 非 鉄 金 属 材 料 研 究 部 (3 研 究 室 ) (5 研 究 室 ) (5 研 究 室 ) (5 研 究 室 ) (5 研 究 室 ) 第 6 部 (2 研 究 室 ) 第 6 部 (3 研 究 室 ) 第 6 部 (3 研 究 室 ) 特 殊 金 属 材 料 研 究 部 特 殊 金 属 材 料 研 究 部 特 殊 金 属 材 料 研 究 部 (4 究 研 室 ) 特 殊 金 属 材 料 研 究 部 特 殊 金 属 材 料 研 究 部 (5 研 究 室 ) (6 研 究 室 ) (4 研 究 室 ) (4 研 究 室 ) 第 7 部 (4 研 究 室 ) 第 7 部 (3 研 究 室 ) 電 気 磁 気 材 料 研 究 部 電 気 磁 気 材 料 研 究 部 電 気 磁 気 材 料 研 究 部 電 気 磁 気 材 料 研 究 部 電 気 磁 気 材 料 研 究 部 (5 研 究 室 ) (5 研 究 室 ) (5 研 究 室 ) (5 研 究 室 ) (5 研 究 室 ) 第 8 部 (2 研 究 室 ) 製 造 冶 金 研 究 部 製 造 冶 金 研 究 部 製 造 冶 金 研 究 部 製 造 冶 金 研 究 部 (4 研 究 室 ) (4 研 究 室 ) (4 研 究 室 ) (4 研 究 室 ) 第 9 部 (4 研 究 室 ) 材 料 強 度 研 究 部 材 料 強 度 研 究 部 材 料 強 度 研 究 部 材 料 強 度 研 究 部 材 料 強 度 研 究 部 (4 研 究 室 ) (5 研 究 室 ) (5 研 究 室 ) (5 研 究 室 ) (5 研 究 室 ) 腐 食 防 食 研 究 部 腐 食 防 食 研 究 部 腐 食 防 食 研 究 部 (4 研 究 室 ) (4 研 究 室 ) (4 研 究 室 ) 溶 接 材 料 研 究 部 溶 接 研 究 部 溶 接 研 究 部 溶 接 研 究 部 溶 接 研 究 部 (3 研 究 室 ) (4 研 究 室 ) (4 研 究 室 ) (4 研 究 室 ) (4 研 究 室 ) 工 業 化 研 究 部 工 業 化 研 究 部 工 業 化 研 究 部 工 業 化 研 究 部 工 業 化 研 究 部 (3 研 究 室 ) ( 3研 究 室 ) (3 研 究 室 ) (3 研 究 室 ) (3 研 究 室 ) 材 料 試 験 所 準 備 室 材 料 試 験 部 材 料 試 験 部 業 務 課 業 務 課 試 験 課 試 験 課 5 部 2 課 5部 2 課 13 室 5部 2 課 17 室 7部 2 課 23 室 8部 2 課 27 室 10 部 3 課 32 室 11 部 4 課 40 室 12 部 4 課 48 室 13 部 4 課 52 室 及 び 1 準 備 室 14 部 6 課 52 室 14 部 6 課 52 室 の状勢から計画達成が困難な状況となった5ヶ年計画は昭和34年8月にいたり新しく 7ヶ年計画に 再編成されることになった。 しかしそれも計画年次どおりに進抄しなかったというだけで,各部門の整備は着々と進み広く各 界の要望にも応え得る見通しも得たので,昭和35年5月には本研究所に対するアンケートをもとめ, 又同年7月には金属材料の代表的メーカーの幹部との懇談会を開催して相互の連絡並びに本研究所 の運営について意見を聴取した。 かくして初年度定員40名,総予算額1億円,管理部の外4研究部の機構をもって発足した本研究 所も5年後には庁舎,実験場等の新増設約5棟,定員248名,年間総予算額7億500万円,管理部 の外7研究部を有する研究所に発展していたのである。昭和36年7月20日には5周年記念式典が行 なわれた。 以後昭和36年度からは当面の目標として7ヶ年計画達成に最善の努力がはらわれることになるの であるが,次に各年度をおって現在までの経過を辿ってみることにしよう。 (昭和36年度) 定員62名増,総予算額8億7800万円が認められた。組織上は管理部に技術課,研究部門に製錬関 係,電磁関係の部が新設された。施設では加工冶金,非鉄製錬,腐食,R I, ベリリウム関係各実 験場が新設された。 (昭和37年度) 定員67名増,総予算額9億3300万円が認められた。組織上は工業化研究部が新設され,施設では 溶解圧延,小型溶解加工の各実験場が増設された外特殊勤務者の宿泊施設が構内に建設された。 (昭和38年度) 定員33名増,総予算額9億3000万円が認められた。組織上は参与並びに製造冶金研究部が新設さ れ,施設では加工冶金実験場,RI実験場,特殊勤務者宿泊施設夫々の増設があった。同年11月19 日橋本宇一所長は日本人として初のドイツ鉄鋼協会外国人名誉会員に推せんされた。 (昭和39年度) 定員18名増,総予算額8億6400万円が認められた。38年度,39年度と共に夫々前年度に比して予 算が減少しているが,これは基本設備の整備が進んで来た為の設備費の減少によるものである。組 織上では腐食防食研究部が新設され,材料試験所準備室が新しく設置された。 ここで材料試験所準備室設置にいたった事情について次に述べることにしたい。中立的立場で金 属材料の試験を行ない,権威あるデータを提供することの必要性は西独,スイス等の国立試験所の 例によっても明らかなことであるが,これより先昭和35年に本研究所が実施した業界に対するアン ケート又は懇談会の結果からしても既に各界の要望が非常に強いことが明瞭になってきていたので ある。 また,一方業界自体ではすでに昭和37年3月にクリープ試験研究技術組合が設立され通産省の補 助金によって研究を進め,翌38年1月にはクリープ・センター設立準備委員会が設置されるなど材 料試験所設立についての要望が益々強いものとなっていた。 こうした状勢のもとに,本研究所は数年にわたって材料試験所設立に関する予算要求を続けてい たもので,昭和39年度にいたり漸くこれが認められて準備室設置のはこびとなったものである。 準備室においては直ちに材料試験所整備5ヶ年計画を策定し,定員210名,庁舎,試験設備並び に特殊施設等総額29億円の整備達成を目標に計画実現を推進することとなった。 なお本年度の施設としては,管理庁舎並びに材料試験庁舎の建設が予算上認められたのであるが, 研究学園都市計画との調整または建設敷地の決定の遅延等の事情により,いづれも工事の施行は翌 年度に延期された。 (昭和40年度) 定員14名増,総予算額10億2500万円が認められた。組織上では特殊金属材料研究部が新設,材料 試験所準備室は材料試験部に組織替になった。施設では前年度より施行が繰越された管理部庁舎並 びに材料試験部庁舎が新設された外,溶解圧延実験場の増設があった。 また日本鉄鋼協会創立50周年記念に際して,橋本宇一所長が製鉄功労賞を贈られた。 (昭和41年度) 定員12名増,総予算額11億1092万円が認められた。組織上は変更がなく,施設では材料試験関係 庁舎,製錬実験場並びにR1実験場それぞれの増設が予定されている。同年5月2日橋本宇一所長 はドイツ金属学会名誉会員に推せんされた。 2.機 構 (昭和41年4月現在) 所 長理博橋本宇一 科学研究官工博岩村��郎 参 与工博幸田成康(東北大教授) 工博麻田 宏(東大教授) 工博五弓勇雄(東大教授) 工博西原清廉(京大教授) 所 付(併)工博 橋口 隆吉(東大教授) 管理部 戸部健次郎 庶務課 剛崎章二 会計課 高城康人 企画課 吉村 浩 技術課 阿部圭三 金属物理研究部(併) 理博橋本宇一 金属物理第1研究室 理博 能勢 宏 金属物理第2研究室 理博 本多 竜吉 金属物理第3研究室 工博 吉田 秀彦 金属物理第4研究室 工博 藤田 広志 物理分析室 山本 巌 主任研究官理博武内朋之 同 吉川明静 同 古林英一 金属化学研究部 理博柳原 正 金属化学第1研究室工博佐伯雄造 金属化学第2研究室 高石 博子 金属化学第3研究室 理博 須藤恵美子 化学分析室 俣野宣久 主任研究室 鈴木 正 同 千葉 実 同 工博川瀬 晃 製錬研究部 理博柳橋哲夫 製鉄原料研究室工博大場 章 製鉄研究室工博田中 稔 製鋼研究室工博郡司好喜 乾式製錬研究室工博黒沢利夫 湿式製錬研究室工博福島清太郎 主任研究官理博和田春枝 鉄鋼材料研究部(併) 工博荒木 透 (東大教授) 鉄鋼研究室工博鈴木正敏 特殊鋼研究室 金尾正雄 耐熱合金研究室工博依田連平 鋼質研究室工博内山 郁 非鉄金属材料研究部 工博木村啓造 非鉄金属第1研究室 工博 渡辺 亮治 非鉄金属第2研究室(併)工博木村 啓造 非鉄金属第3研究室 高橋仙之助 軽金属研究室 松尾 茂 希有金属研究室工博佐々木靖男 主任研究官 辻本得蔵 同 新居和嘉 特殊金属材料研究部 理博坂田民雄 原子炉構造材料研究室工博津谷和男 特殊冶金研究室 工博河村和孝 アイソトープ利用研究室工博前橋陽一 超耐熱用材料研究室工博渡辺 治 主任研究官理博後藤 勝 雲気磁気材料研究部 理博吉田 進 雲気磁気材料第1研究室 工博 森本 一郎 雲気磁気材料第2研究室 工博 山川 和郎 高純度金属研究室工博太刀川恭治 金属間化合物研究室工博増本 剛 金属酸化物研究室 渡辺 亨 主任研究官 大庭幸夫 同 鈴木敏之 同 永田徳雄 製造冶金研究部 工博牧口利貞 鋳造研究室工博菊地政郎 加工冶金研究室 平井春彦 熱処理研究室 渡辺 敏 粉末冶金研究室工博田村皖司 主任研究官 中島宏央 材料強度研究部 岩元兼敏 静的強さ研究室(併)理博 舟久保熙康 (東大助教授) 動的強さ研究室 辻 栄一 非破壊検査研究室 木村 勝美 高温強さ研究室 吉田平太郎 疲労試験室(併) 岩元兼敏 腐食防食研究部 工博伊藤伍郎 湿食研究室 清水義彦 乾食研究室 小林豊治 表面処理研究室 福島敏郎 腐食計測研究室(併)工博伊藤伍郎 溶接研究部 工博福本 保 融接研究室工博稲垣道夫 圧接研究室工博橋本達哉 ろう接研究室理博和田次康 特殊溶接研究室工博蓮井 渟 主任研究室 岡根 功 同 宇田雅広 同 工博中村治方 同 工博松田福久 工業化研究部 田中竜男 総 括 室 村松 晃 工業化第1研究室工博中川竜一 工業化第2研究室 荒木 喬 材料試験部 理博河田和美 業 務 課 柏倉修司 試 験 課 横井 信 主任研究官 佐々木悦男 3.職員構成 3.1.人員構成推移表 俸給表年度部門 指定職 (甲) 行政 (一) 行政 (二) 研究 職 計 昭和31年度 管理部門 20 研究部門 20 計 40 昭和32年度 管理部門 21 8 1 30 研究部門 50 50 計 21 8 51 80 昭和33年度 管理部門 24 8 1 33 研究部門 10 77 87 計 24 18 78 120 昭和34年度 管理部門 33 11 1 45 研究部門 35 119 154 計 33 46 120 199 昭和35年度 管理部門 33 16 1 50 研究部門 41 157 198 計 33 57 158 248 昭和36年度 管理部門 45 36 1 研究部門 36 192 228 計 45 72 193 310 昭和37年度 管理部門 58 47 1 106 研究部門 2 38 231 271 計 60 85 232377 昭和38年度 管理部門 63 48 1 112 研究部門 2 40 256 298 計 65 88 257 410 昭和39年度 管理部門 64 49 2 115 研究部門 3 40 270 313 計 67 89 272 428 昭和40年度 管理部門 1 67 49 1 118 研究部門 6 42 279 327 計 1 73 91 280 445 昭和41年度 管理部門 1 64 49 1 115 研究部門 6 50 283 339 計 1 70 99 284 454 3. 2.研究員専門別(指定職(甲)と研究職3 G以上) (昭和41年4月1日 現在) 専門別 理 学 系 工 学 系 所属 物理 化学 その他 冶金 機械 応用物 理 応用化 学 電気化 学 電気 溶接 その他 計 金属物理研究部 金属化学研究部 製錬研究部 鉄鋼材料研究部 非鉄金属材料研究部 特殊金属材料研究部 電気磁気材料研究部 製造冶金研究部 材料強度研究部 腐食防食研究部 溶接研究部 工業化研究部 材料試験部 所 長 科学研究官 計 16 (4) 1 1 1 3 (2) 5 (1) 1 2 1(1) 31(8) 15 (1) 3 (2) 1 1 1 1 2 (1) 24 (4) 5 (2) 1 6 (2) 1(1) 9 (4) 15 (3) 11(3) 6 (3) 8 (3) 12 (2) 3 5 (1) 5 (1) 8 (1) 2 1(1) 86 (23) 2 1 3 1 6 (1) 3 (2) 2 1 1(1) 20 (4) 1(1) 1(1) 4 2 (1) 1 4 12 (1) 1(1) 1(1) 2 (2) 4 1(1) 1 4 (1) 1 1 12 (2) 2 (2) 2 (2) 1 1 1 3 20 (6) 26 (4) 15 (7) 17 (3) 14 (3) 13 (6) 21(4) 15 (3) 13 (1) 9 (1) 17 (7) 11(1) 5 (1) 1(1) 1(1) 199 (49) 4.予 算 当研究所は,本年7月をもって満10周年を迎えることとなったが,この間に消化された予算は総 額68億円,内一般研究予算は61億円で原子炉用金属材料等の研究に必要な原子力関係の予算は7億 円である。 発足当初策定された整備5ヶ年計画は,総必要経費を約40億円とし,これに基づいて建設整備が すすめられたが,昭和34年度に計画を修正し,7ヶ年計画に再編成した。 この7ヶ年計画に基づく総予算額は,原子力関係予算を含めて54億1,600万円であり,最終年次 の昭和年度までの予算額の累計は40億3, 200万円であって,計画達成率は74%であった。 その後,同計画の未完成部分については,若干その進ちょくに遅れをみたものの昭和38年度以降 遂次整備されて今日にいたっている。ちなみに,7ヶ年計画最終年次の昭和37年度以降の予算の概 略を示すと次のとおりである。 昭和37年度 総額932,998千円,増員67名(内賃金職員定員化19名)が決定した。組織としては,管理部に会 計課,研究部に材料強度研究部の増設が認められた。研究設備は,前年度に引き続き基本設備に重 点をおき,500KV電子顕微鏡,500kgインストロン,広幅溶接継手割れ試験機,キャビテーショ ン腐食試験装置などが計上され,施設関係では,溶解圧延実験場(増築),小型溶解加工実験場, 特殊勤務者宿泊寮等の建設整備予算が計上された。 昭和38年度 総額929,998千円,増員33名。組織は,あらたに製造冶金研究部の増設が認められた。研究設備 関係では引き続き基本設備の整備に力を注ぎ,雰囲気圧延装置,クリープ試験機,質量分析計,ダ イカストマシンなどが計上され,また,原子力関係予算では,動水腐食試験装置,大型溶接継手繰 返定歪高温疲労試験装置など大型設備の整備拡充が認められた。なお,施設関係では,加工冶金実 験庁舎,R I実験場等の増設が認められた。 昭和39年度 総額864,419千円,増員18名。組織は,科学研究官,腐食防食研究部及び当研究所付置機関として 材料試験所準備室の増設が決定した。研究設備整備費は,整備がほぼ充足した段階にかんがみ,若 干前年度より減少したが,未完成部分の設備である大型電磁石,ピストンシリンダー装置,バッチ 型回転炉,低周波炉用減圧装置などが認められ,また,施設関係では念願の管理庁舎,クリープ試 験庁舎(初年度分),RI実験場の増築等が認められた。なお,今年度において特筆すべきは,本 年度以降5ヶ年計画による材料試験所の設が認められたことである。 初年度分として計上された人員は3名,施設関係予算は前記クリープ試験庁舎の第1年度建設分 800m2,56,462千円と僅かではあるが,これは科学技術,各産業に同じような目的で共通に用いら れる国産金属材料の性質を国家保証する場としての重要な機関の誕生を意味し,わが国の科学技術 の発展のうえからも画期的なことである。 昭和40年度 総額1,025,646千円,増員17名(内3名は非金属無機材質基礎研究所準備室の定員)。組織として は,材料試験所準備室が材料試験部の新設となって,研究部は合計13部となった。研究設備関係で は,従来の基本設備は整備が一応終わったため,40年度からは設備の補充更新ならびに近代化をは かる方向に変え,この予算140,000千円が計上され,また,39年度以降5ヶ年計画で整備すること としている材料試験部関係で金属材料の試験実施に必要なクリープ試験機200台が初年度分として 認められた。なお,施設関係では前年度に引き続きクリープ試験庁舎の第2年度分の建設,溶解圧 延実験場及びRI実験場の増設が認められた。 昭和41年度 総額1,110,924千円,増員12名。本年度は,超伝導マグネット材料に関する研究外3件の特別研 究を実施するほか,鉄鋼材料の製造技術の開発に必要な強圧下熱間圧延機を整備することにして, 国庫債務負担行為額144,000千円と,その現金化分43,200千円および金属材料の物理分析用大型電 子顕微鏡等を整備するために必要な経費が計上された。また,材料試験部関係では,クリープ試験 庁舎の全工事の完成とクリープ試験機243台の整備計画が認められた。これによってクリープ試験 設備は計画の約40%が整備され,炭素鋼,低合金鋼,ステンレス鋼など14鋼種のデータの作成が可 能となる。 4.1.土地推移表 区 分 年 月 日 面 積 備 考 坪 m2 本 所 34. 4. 7 12,192 40,304 小計大蔵省より所管換 34.11.30 △ 225 △ 744 宿舎へ用途変更 38. 3. 30 △ 21 △ 69 〃 38.11.16 △ 24 △ 79 〃 40. 3.10 1,568 5,183 東京防衛施設局より所属換 小 計 13,490 44,595 宿 舎 34.11.30 225 744 庁舎より用途変更 38. 3. 30 21 69 〃 38.11.16 24 79 〃 小 計 270 892 合 計 13,760 45,487 事 項 別 予 算 額 推 移 状 況 (単 位 : 千 円 ) 事 項 31 年 度 32 年 度 33 年 度 34 年 度 35 年 度 36 年 度 37 年 度 38 年 度 39 年 度 40 年 度 41 年 度 計 備 考 (組 織 ) 科 学 技 術 庁 (項 ) 金 属 材 料 技 術 研 究 所 10 0, 00 0 21 3, 8 94 41 3, 46 3 58 8, 9 94 65 4, 05 0 77 4, 73 0 81 2, 35 8 82 2, 60 1 78 2, 95 4 98 1, 97 9 1, 07 2, 8 19 7, 21 7, 84 2 本 表 は 国 庫 債 務 額 は 計 上 せ ず 。 1 人 当 経 費 11 ,9 81 26 ,6 36 41 ,4 39 61 ,0 38 85 ,3 14 11 9, 90 4 16 0, 03 0 19 8, 2 79 22 5, 82 4 25 8, 41 8 29 4, 43 0 1, 48 3, 2 93 2 特 別 経 費 88 , 0 19 18 7, 2 58 37 2, 02 4 52 7, 95 6 56 8, 7 36 65 4, 82 6 65 2, 32 8 62 4, 3 22 55 7, 13 0 72 3, 56 1 77 8, 38 9 5, 73 4, 54 9 一 般 管 理 運 営 3, 08 0 1, 51 2 1, 80 1 2, 96 6 2, 71 3 2, 62 0 6, 5 46 3, 5 56 5, 5 42 7, 18 8 5, 0 23 42 , 5 47 各 部 門 運 営 3, 58 6 13 ,6 85 20 , 5 66 44 ,1 17 59 ,1 77 85 ,4 50 10 3, 9 20 12 6, 9 82 13 8, 88 2 15 9, 41 1 17 6, 86 2 93 2, 63 8 受 託 研 究 0 0 0 0 1, 00 0 2, 00 0 2, 00 9 3, 0 00 1, 00 0 1, 00 0 1, 00 0 11 ,0 09 特 定 装 置 実 験 運 営 0 0 0 0 5, 97 0 11 ,9 40 12 ,7 36 13 ,5 93 17 ,3 12 17 , 3 12 17 ,3 12 96 ,1 75 金 属 材 料 技 術 特 別 研 究 0 0 15 , 0 35 24 ,0 85 25 ,1 23 28 ,0 50 41 ,1 50 34 ,4 34 43 ,9 42 44 ,3 00 44 , 3 00 30 0, 41 9 研 究 設 備 整 備 40 , 0 00 13 5, 99 1 26 1, 50 0 28 5, 36 5 31 5, 66 7 34 8, 21 8 40 8, 29 2 37 3, 45 9 20 8, 16 8 14 0, 0 00 58 ,6 47 2, 5 75 , 3 07 営 繕 等 施 設 整 備 41 ,3 53 36 , 0 70 73 ,1 22 17 1, 42 3 15 9, 0 86 17 6, 54 8 77 ,6 75 69 ,2 98 85 ,8 22 40 , 2 18 28 , 2 50 95 8, 86 5 材 料 試 験 0 0 0 0 0 0 0 0 56 ,4 62 31 4, 13 2 44 6, 99 5 81 7, 5 89 計 10 0, 0 00 21 3, 89 4 41 3, 46 3 58 8, 99 4 65 4, 0 50 77 4, 73 0 81 2, 35 8 82 2, 6 01 78 2, 9 54 98 1, 97 9 1, 07 2, 81 9 7, 2 17 ,8 42 合 計 31 3, 89 4 72 7, 3 57 1, 31 6, 35 1 1, 97 0, 40 1 2, 74 5, 13 1 3, 55 7, 48 9 4, 38 0, 09 0 5, 16 3, 04 4 6, 14 5, 02 3 7, 2 17 ,8 42 (項 )国 立 機 関 原 子 力 試 験 研 究 費 0 49 , 9 80 88 ,9 80 60 ,9 73 51 ,2 43 10 3, 44 2 12 0, 64 0 10 7, 3 79 81 ,4 65 43 ,6 67 38 ,1 64 累 計 10 0, 0 00 36 3, 87 4 81 6, 33 7 1, 37 7, 32 4 2, 02 1, 64 4 2, 84 8, 57 3 3, 67 8, 12 9 4, 48 7, 46 9 5, 24 4, 50 9 6, 18 8, 69 0 7, 2 56 , 0 06 5.建 設 5.1.建物推移表(庁舎) 建物 番号 建 物 名 建面積 延面積 年 月 日 備 考 坪 m2 坪 m2 竣工 増築等 10 守衛所 11 36 11 36 34. 4. 7 大蔵省より所管換 11 宿 直 室 13 43 13 43 〃 〃 12 旧 受 付 6 20 6 20 〃 〃 13 ガ ラ ス 工場 32 106 32 106 〃 〃 59A ポ ン プ 小尾 3 10 3 10 〃 〃 62 倉 庫 3 10 3 10 〃 〃 79 D 倉 庫 1 3 1 3 〃 〃 以 上 7 件 △ 69 △ 228 △ 69 △ 228 管理庁舎新築の為用途廃 止 倉 庫 116 383 116 383 40. 3.10 東京防衛施設局より所属 換 〃屑 焼 場 14 46 14 46 〃 以 上 2 件 △130 △ 429△130 △ 429 材料試験棟新築の為用途 廃止 17 R I 貯蔵庫 1 3 1 3 34. 4. 7 { 34. 5.18 34. 6.19 大蔵省より所管換 その後一部模様替 18 R I 貯蔵庫 3 10 3 10 〃 大蔵省より所管換 20 木 工 場 84 278 84 278 〃 40. 2.1 大蔵省より所管換 その後部模様替 21A 非破壊試験場 161 532 161 532 〃 大蔵省より所管換 21B 〃 30 99 30 99 〃 { 34. 5.18 34. 6.19 大蔵省より所管換 その後一部模様替 22 A 熱処理溶解圧延 実験場及びボイラー室 874 2,889 1,025 3, 387 〃 { 34. 4. 26 34. 5.18 34. 6.19 35. 3.15 36. 6.15 37.1.26 40.1.28 大蔵省より所管換 その後一部模様替及び増築 22 B 溶解圧延実験場 338 1,117 356 1,177 36. 6. 26 { 38. 3. 30 39. 3. 25 新築その後増築 22 C ボ ン ベ 室 5 17 5 17 35. 3.15 新 築 23 小型溶解加工実験場 292 965 320 1,058 34. 4. 7 { 34. 6.19 39. 3.31 39. 6. 24 40. 2.1 大蔵省より所管換 その後一部換模様替 及び増築 24 精密測定実験庁舎 469 1,550 1,902 6, 288 34. 9. 25 { 36. 3. 22 38.1.11 39. 3. 25 39. 3.31 40. 2.1 新築その後模様替及び増 築 24A 動 力 室 215 711 215 711 34. 4. 7 34. 9. 25 大蔵省より所管換 その後一部模様替 25 トリウム実験場 70 231 70 231 〃 { 34. 5.18 34. 6.19 38.1.11 〃 26 低温実験場 118 390 118 390 36. 8.21 38.1.11 新築その後模様替 27 医務室食堂 53 175 53 175 34. 4. 7 大蔵省より所管換 27 B 浴 場 5 17 5 17 〃 〃 建物 番号 建 物 名 建面積 延面積 年 月 日 備 考 坪 m2 坪 m2 竣工 増築等 28 ベリリウム実験場 27 89 34 112 38. 3. 30 新 築 30 化学・溶接・粉末 冶金実験庁舎 385 1,273 1,549 5,121 35. 8.16 { 36. 6. 2 38.1.11 39. 3. 25 39. 3.31 40. 2.1 40. 4.1 新築,増築及び模様替 30A 溶接実験場 259 856 259 856 36. 6. 2 新 築 30 B 変 電 室 33 109 33 109 35. 8.16 〃 30 C ポ ン プ 室 7 23 7 23 〃 〃 30 D ポンチ(車寄せ) 4 13 4 13 36. 6. 2 〃 30 E 車 庫 18 60 18 60 38. 3. 30 38.12. 25 新築及び増築 31 材料試験場 369 1,220 519 1,715 34. 4. 7 { 34. 6.19 35. 8.16 36.11.30 37.1.23 37. 3.31 大蔵省より所管換 その後一部模様替 31A 〃 21 69 21 69 〃 35. 2. 8 〃 31B 〃 3 10 3 10 〃 大蔵省より所管換 31C 〃 2 7 2 7 〃 〃 34 機械工作場 226 747 457 1,510 〃 { 34. 4. 20 34. 5.18 34. 6.19 37. 3.31 39. 3.31 大蔵省より所管換 その後一部模様替 35 非鉄実験場 42 139 91 301 38.1.11 39. 3. 25 新築及び模様替 36 R I 実験場 108 357 136 450 38. 3. 30 39. 6.24 新築及び増築 36 R I 実験場 (中性子) 21 69 21 69 40. 5.31 新 築 36 R I 実験場 (空調) 4 13 4 13 〃 〃 37 酸 洗 場 11 36 11 36 34. 6.19 〃 40 渡 廊 下 70 231 70 231 〃 〃 41 ポ ン プ 室 2 7 2 7 38.1.11 〃 79A 倉 庫 3 10 3 10 39. 3.31 変電所倉庫 2 7 2 7 38.1.11 〃 倉 庫 3 10 3 10 40. 3.10 東京防衛施設局より所属 換 焼 却 場 5 17 5 17 40. 9.24 新 築 22 B 溶解圧延実験場 119 659 207 686 増 築 36 R I 実験場 28 93 28 93 〃 材料試験棟 420 1,390 847 2,802 新 築 管 理 庁 舎 178 591 598 s1,978 〃 守衛所宿直室等 49 162 49 162 〃 計 5,217 17,251 9, 331 30,850 5.2.建物推移表(宿舎) 建物 番号 建 物 名 建面積 延面積 年 月 日 備 考 坪 m2 坪 m2 竣工 増築等 住 宅 18 60 18 60 33. 2.10 新 築 〃 13 43 13 43 33. 2.10 〃 〃 13 43 13 43 33. 2.10 〃 靖 立 寮 44 145 80 264 38. 3.10 38.11.20 計新築その後増築 計 88 291 124 410 執筆者所属 庶務課長剛崎章二 会計課長高城康人 企画課長吉村 浩 建 物 配 置 図 材 料 試 験 部 10 … … 守 衛 所 14 … … 管 理 部 16 … … 特 高 変 電 所 20 … … 倉 庫 お よ び 木 工 場 21 … … 非 破 壊 検 査 実 験 室 22 … … 溶 解 圧 延 、 熱 処 理 実 験 室 22 B 〃 23 … … 小 型 溶 解 加 工 実 験 室 24 … … ク リ ー プ 試 験 室 お よ び 物 理 、 鉄 鋼 、 非 鉄 、 電 磁 、 製 造 冶 金 関 係 実 験 室 25 … … ト リ ウ ム 実 験 室 26 … … 低 温 実 験 室 27 … … 食 堂 お よ び 医 務 室 28 … … ベ リ リ ウ ム 実 験 室 30 … … 化 学 、 腐 食 、 粉 末 冶 金 、 溶 接 関 係 実 験 室 31 … … 管 理 部 お よ び 材 料 強 度 関 係 実 験 室 34 … … 機 械 工 作 室 35 … … 製 錬 関 係 実 験 室 36 … … R I実 験 室 37 … … 中 性 子 照 射 実 験 場 注 建 物 に 付 し た 数 字 は 庁 舎 番 号 を 示 す 。 材 技 研 鳥 か ん 図 wR RR DA B i cs 第2章運 営 総 説 工業先進諸国における急迫した科学技術開発とそれに伴なう進歩は著しく,わが国においても研 究に対する熱意,海外技術導入および技術提携等でますますその関心が強い。材料に関する品質の 改善,新技術の開発も,もとより産業発展の基礎をなす要素であり,その重要性をもって材技研が 官界および産業界の強い要請により設立されたことは既述のとおりであるが,当所はその使命を担 って,官界および産業界との緊密な連絡のもとに策定されたつぎの基本方針に沿ってこの10ケ年の 運営がとられてきた。 1.研究計画の策定および研究の実施については,広く官民との連絡協力を基本とする。 2.国として必要な研究・試験を実施するため,一般の研究所とは異なり,大規模かつ近代的な 研究設備を整備する。 3.人員,設備などの整備に当っては,研究所の拡充と研究の実施との調整に考慮を払って,近 代的感覚をとり入れた時代にふさわしい研究所の早期完成をはかる。 4.機構は研究内容の拡大分化に伴ない,将来は15部程度になることを予想している。 金属材料の研究は広はんにわたるもので,内容の深度も最近とみに深く,従って,研究計画の策 定および実施の上では官民との連繋協力が必要である。このため当所設立に至る間に提案された各 界代表の意見,要望を中心に,上記の運営基本方針が定められた。さらに当所発足ののちも科学技 術庁金属材料研究部会をはじめ,同金属材料研究連絡会,鉄鋼,非鉄金属関係の民間企業の技術幹 部との懇談会を開催して相互の連絡ならびに当所の運営について懇談し,その基本方針の有効適切 な実施上の示唆を得てきた。 当所建設整備計画の推進に当っては,わが国で要請せられ,国として必要な研究試験を実施する ため大規模な近代的研究施設設備を整備する方針に沿い,それに伴なう人員の充足,有効な研究実 施組織機構の拡充強化計画のもとに,総合的推進と調整を行なって現況の整備に至った。当初3ケ 年とられた研究4部および管理部において,研究実施の上で最小限必要であったサービス部門とし て,機械工作,試作設計業務を行なった工作室のほか,物理的,電磁気的測定,化学分析等のサー ビス業務が研究室内で研究の傍行なわれていた状況であったが, 昭和34年以降の組織の拡充に当っ て研究部門の拡充強化とともに溶解加工,材料試験等の技術サービス部門の独立強化をすすめて研 究推進の円滑化を図った。 建設整備計画をすすめ研究実施体制の確立に配慮する一方,研究計画の立案,予算実行に当って は,その適性化をとるため,関係官庁,民間企業体との連絡協力をとりながら,総合的調整をとっ た。研究実施の適正合理化をはかるものとして,「研究実施手続規定」を確立し,研究計画の立案 から成果報告まで一貫して研究員に対する正当な方向を指示する新しい手段に意をもちいた。当初 3カ年とくに区別を設けなかった研究計画は,昭和33年度より,わが国においてとくに解決を急ぎ, かつ比較的多額の予算を伴なう重要課題については特別研究費を確保して研究を推進させた。以後, 毎年数テーマに対して特別研究費が計上される一方,昭和36年より複数部に亘る共通の重要研究課 題を総合研究にとりあげると同時に総合研究委員会を設けて,研究組織,予算実行には特に緻密な 配慮をもって研究推進をはかった。また,その動向とともに研究員間の共通の基本的課題は,シン ポジウムを形成し集団討議を行なう場がもたれ研究活動の一環を形成した。 研究所の活動は,その中心をなす研究グループ活動の他に,国として行なうべき民間から委託さ れる研究,産業界,学界,協会およびその他の機関との共同研究に協力しなければならない。しか し,それらの活動は設立後数カ年は建設整備活動のため十分実施できなかったが,昭和36年,法令 施行とともに研究の受託を実施してきた。受託研究テーマは主に生産に直結した課題,新しい加工 品に対する評価研究で,昭和41年3月までに29テーマを数えた。また,当所は,研究組織と研究設 備ならびに施設を投入し共同研究の推進を行なってきたところ,学協会との研究課題は,金属材料 の基本的性質を解明する研究に関するものであり,産業界に対しては新技術開発に係る基本問題の 研究が主なる内容を構成した。受託研究,共同研究等の対外的研究協力に対して積極的姿勢を示し, わが国における新しい金属材料技術の開発に係る研究には人的および物的ポテンシャルの投入を行 なった。 さらに,研究活動の背後にある重要な面として,図書情報蒐集,特許取得および対外活動に関し て総括しよう。科学技術の隆盛はますます多くの情報を生み,文献の蒐集整理ならびにその活用と 研究成果の広報普及は欠くを得ない業務である。図書活動として一次文献の整備とともに二次文献 の作成整備を急ぎ,その機械化をとり入れつつ資料提供のサービス活動の強化をはかっている。ま た,当所の研究成果は,研究報告等出版物によることはもとより,学協会における発表を行ないそ の普及につとめている。当所で得られた研究成果のうち,とくに経済的効果の著しい新規な技術は 特許出願し,国有特許の確保につとめている。高純度金属の製造法,高張力鋼,各種の耐熱合金, 塑性変形の困難な金属の加工法等を含め現在8件の特許が登録されているが,新時代に即応して開 発された技術が出願係属中にあり,今後特許登録の件数も増加する状況にある。また,国際的に必 要とせられ経済的効果のいちじるしい発明については,工業的先進国を対象に外国特許出願を行 なった。すなわち昭和39年6月にニッケル基耐熱合金,昭和40年2月に特殊加工したモリブデン, 昭和41年4月に傾角顕微鏡をそれぞれ出願した。ニッケル基耐熱合金は2ケ国で出願決定の段階に あり,後の二つの発明についても外国特許権の取得が期待される。 海外出張者は,近代的研究所としての運営の合理化をはかるための管理系の海外視察者,視野を 拡げ,新しい技術を創造するにたるすぐれた研究員を育成するための長期留学,また海外での新し い技術の習得を目的とした短期間の留学等を含め,ここ5カ年における海外出張者数年間平均7名 を数え,とくに年令も普遍していることが特徴であった。一方,海外からの当所への留学生も増し, インド,パキスタン,インドネシア,オーストラリアおよびフランス等から加わり,後の二者は交 換留学生であった。国内のみならず海外からの見学者も,政府高官,視察団,著名な学者および民 間の技術幹部等,その数もますます増加する傾向であった。 1.研究推進活動 国立試験研究機関に与えられた共通の使命は,機関の設置目的に沿って試験研究の効果的推進を はかり,成果の普及を促進し,国民経済の向上に資し,もって人類の福祉増進に寄与することとい える。試験研究の推進は,機関の性格,役割等によってその方法手段を異にするものと考えられる が,まず,有機的機能をもつ研究体制の確立が不可欠の条件であり,すぐれた研究員の育成,組織 の充実強化,試験研究施設設備の整備等人的および物的ポテンシャルの蓄積ならびに安定した研究 環境の醸成等が心要とされる背景であることはいうまでもない。 そこで,当所は発足当初から人員の強化をはかるとともに研究員および技術者の養成につとめる と同時に,金属材料技術に関する基礎,応用ならびに開発研究体制をしき,専門および個々の指向 に応じた適正な人員配置をとり,当所の使命に沿って各部門独自の研究活動と各部門間の連繋によ る総合的研究活動を行なう体制を整備してきた。 研究計画 研究計画の策定に当っては,産業界,学界等との連繋強化を図り,わが国における金属材料の改 善,新技術の開発を図るため検討設定された研究基本方針に基づき研究テーマを具体化してきた。 テーマの取り扱いは総合研究,特別研究および一般研究に分けられ,総合研究は複数部にわたる重 要事項とし,特別研究は早急に解決を必要とし比較的多額の経費を必要とするテーマとした。年次 研究計画の設定に当っては,研究内容はもとより予算,研究実施計画等に検討を加え,人員,使用 設備等を配慮した上で研究所としての研究計画を立案し,科学技術庁長官の裁決により決定されて きた。 また,金属材料に関する総合的研究機関としての機能を十分果すため,研究内容の境界領域と統 合化を十分考慮しつつ,基礎研究を重視するとともに,応用研究との統合強化を推進すべく十分配 慮をはらっている。 総合研究および特別研究 近時,科学技術の高度化が専門分野の細分化を促進し,すぐれた研究成果の創成には,各分野 の専門知識の総合化を必要とすることは,一般に述べられるごとく科学技術におけるいちじるしい 特徴である。当所においては,昭和36年,研究所建設の極く基本的整備がすすみ,研究面の充実化 がとられるにいたって,主として新技術の開発に関して研究部間にわたる研究を総合的に推進する 背景が整えられた。総合研究は,複数部に共通した研究内容を包含し予算および研究組織等の上か ら総合的措置をとることに合理性が認められ,昭和36年度に総合研究として2テーマをもってスタ ートし,昭和40年度には10テーマをもつにいたった。 特別研究は,昭和33年より関係業界における技術上の動向に鑑みて,とくに早急な解決が迫られ ているテーマについて予算化し,研究を推進している研究課題で,年次に数テーマを容している。 研究調整 研究計画に沿って研究員が活動する際,研究管理者が研究経過に対して適正な指示助言を与え,目 的達成の方向へ研究を推進することは,研究計画の設定とともに重要な要素をなす。設立以来,企 画課が中心となり研究調整業務には十分配慮をはらってきたが,昭和35年12月,「研究実施手続規定」 を定めて研究調整業務にとくに配慮を加え,一層統一ある研究計画を策定し,研究実施においてた えず研究の進捗状況の把握と研究成果に評価を与え,研究機能を十分に活用して目的遂行を試み た。この規定には,一般研究,特別研究,総合研究,原子力関係研究,共同研究,受託研究および 試験に対して,研究計画,経過報告,中間および終了報告等に関する事務処理技術等が定められて おり,それらに関する決定,報告事項はすべて直属の管理者を経て所長に提出される。調整機構を 通して所長から直属研究管理者および研究員に対するコミュニケーションも行なわれており,それ によって研究推進過程における適正な指示や研究推進上の隘路の解決に対する助言等が与えられる。 調査,図書,情報蒐集活動および研究発表会 また,研究推進に必要な事項として,所内外とのコミュニケーションを円滑に進めることは,最 近の科学技術の急速な進歩に照らして不可欠の事項である。研究成果の量的エスカレーションと質 的深化は,その活動を一層盛んとし,機械化を促進している。そこで,当所では一次文献の蒐集整 理はもとより,海外の文献抄録カード,特許抄録カード,各種の委員会資料所在カード等の作成整 理をすすめ,セレクターを使用し必要に応じて情報提供のサービスを実施している。 所内における研究者間および対管理者への研究成果の流通,周知を徹底させるため,研究発表会 を毎月実施してきた。 2.受託研究,共同研究 当所は関係機関,産業界等との連繋のもとに研究促進をはかるという一つの運営方針のもとに, 国立の研究所として広く民間より研究の委託に応じてきたが,設立当初においては,人員,施設設 備の整備が十分に進んでなかったため研究の委託には応じきれないのが実状であった。その後建設 整備計画の進行とともに研究実施の背景がほぼ整備された昭和36年に,科学技術庁の訓令により, 「科学技術庁受託研究規程」が施行された。当所はこの規定に基づき国立試術研究機関としての責 務の一端を果すため,所外からの委託に応じた研究を「受託研究」として実施した。 関係各分野の専門研究員,基本的および特殊試験研究設備および施設を有する当所には,他の研 究機関においては実施し難い研究に対する背景が整えられていることと考えられる。したがって当 所の研究計画を実施推進してゆく上で,業務に支障のない限り研究の委託に応じてゆくことが必要 とされ,昭和41年3月現在までに実施した受託研究は表に示すようにすでに29件に達している。研 究内容は材料の製造加工の上で必要とされる研究,各種の材料試験研究等が主であり,比較的生産 または製品に直結した研究課題を実施したが,それは,委託された一般的研究課題は当所の研究計 画に還元された結果である。 また,国内外の関連研究機関,学・協会および民間企業体等との連繋協力の上で,研究目的を共 通にする重要課題がある場合には,相手との共同研究を実施する一方,学会等には積極的に協力し ている。 鉄鋼の基礎的研究に関して日本金属学会,日本鉄鋼協会および日本学術振興会第19および第54委 員会が協力して鉄鋼基礎共同委員会を発足させ,研究テーマとして鉄鋼の転位論,純鉄,微量不純 物,非金属介在物および融体の物性などをとり上げたが,このうち既に活動を開始した非金属介在 物部会では,本研究所員が委員会の運営,研究推進の中心的役割を担っており,研究の一部を担当 して積極的に協力している。なお今後活動を開始するその他の各部会においても本研究の活動し得 る場は広いと考えられる。このほか日本鉄鋼協会内の各種委員会,研究会,部会,日本学術振興会の 各種委員会において企画,運営等に積極的に協力している。また非鉄金属関係ではジェットエンジ ン用Ti-Al合金の研究を要請され,現在8Al-4Co合金の研究が進行中であるのをはじめ,銅, チタニウム,新金属関係の各種委員会の委員としても幅広く活動している。この他,以上の鉄鋼, 非鉄金属材料の両面に共通した活動として,日本金属学会,日本鉄鋼協会等をはじめ各種の学会, 委員会にはそれぞれの専門に応じて,金属の基礎的研究から応用的研究まで,広い分野で本研究所 員が参画している。溶接関係では,溶接学会,溶接協会内の各種委員会で実施されている共同研究 の主要な役割をつとめ,その他,溶接関係の各種委員会にも参画して試験,調査の共同活動に多大 の協力をしている。さらには,日本学術振興会の原子力平和利用研究の一環として,原子炉構造用 金属材料の溶接ならびに腐食試験,あるいは材料試験関係の標準試験片に関する共同研究など各方 面で重要な活動をしている。 表受託研究年度別件数(昭35~40年) 番号 研 究 テ ー マ 名 研究年度 委 託 者 1 溶接用CCT図作成に関する研究 昭和35年度 富士製鉄株式会社 2 鋼中の非金属介在物に関する研究 昭和36年度 富士製鉄株式会社 3 溶鉄の加炭機構に関する研究 〃 三菱化成工業株式会社 4 アルミニウム合金溶接用心線の研究中疲労試験研究 〃 社団法人軽金属協会 5 13Cr鋼の長時間クリプ破断試験研究 昭和36〜 38年度 三菱造船株式会社 6 粉末の焼結成型加工に関する研究 昭和37年度 昭和電工株式会社 7 コークスの性質が加炭に及ぼす影響について 昭和37年度 三菱化成工業株式会社 8 低炭素強靭鋼のリラクゼーションに関する研究 〃 大同製鋼株式会社 9 カルシウムカーバイト利用に関する強靭鋳鉄の製造法 〃 電気化学工業株式会社 10 金属材料の高速加工に関する研究 〃 日本塑性加工学会 11 低炭素鋼板の材質改善に関する研究 昭和38年度 日本鋼管株式会社 12 シリンダライナ材のキャビテーション防止に関する研 究 〃 三菱日本重工業株式会社 13 高張力鋼の疲労試験研究 〃 富士製鉄株式会社 14 クロ ーム鉱石のブリケット添加によるステンレス鋼溶 製に関する研究 〃 岡崎鉱産物株式会社 15 リンクチェンの疲労強度に関する研究 〃 株式会社鬼頭製作所 16 原子炉構造用鋼溶接部の非破壊 〃 社団法人溶接協会検査像とその機械的強 度との関連性に関する研究 17 高張力鋼の溶接割れ防止に関する研究 〃 八幡製鉄株式会社 18 超高張力鋼板の疲労性に関する研究 〃 株式会社小松製作所 19 高速流水による腐触の研究 〃 新三菱重工株式会社神戸造船所 20 センジマーミルによる高炭素鋼の圧延性に関する研究 〃 日立金属工業株式会社 21 薄板におけるショット溶接部の疲労強度に関する研究 〃 東急車輌製造株式会社 22 高張力鋼の疲労強度に対する切欠効果の研究 昭和39年度 月島機械株式会社 23 プラズマジェットによる耐摩耗性被膜 〃 株式会社酉島製作所 24 耐熱材料溶接部の疲労破壊 〃 石川島播磨重工業株式会社 25 高張力鋼の疲労試験研究 〃 富士製鉄株式会社 26 統計的手法による加炭機構の解明に関する研究 昭和39年度 三菱化成工業株式会社 27 鋼材の熱間成形性に関する研究 昭和40年度 日本鋼管株式会社 28 熱電素子に関する研究 〃 日本楽器製造株式会社 29 軸受鋼の疲労特性に関する研究 〃 日本鋼管株式会社 3.図書,情報蒐集活動 研究推進をはかる上で,専門研究者の知識経験のコミユニケーションを相互に円滑に進めること は,それを資料として集積整理することと相俟って最近の科学技術の急速な進歩に照らし不可欠の 事項である。当所においては,研究成果の量的エスカレーションと質的深化が,その活動を一層必 要とし,機械化による促進が要請されている。 図書整備に当っては,専門図書館として冶金,化学工業,物理学および化学を中心に,単行図 書,学術雑誌および国内外の交換雑誌の蒐集整理を行ないその数は表に示したとおりである。 一次文献の蒐集整理の外に,海外の文献抄録カード,特許抄録カード,各種の委員会資料所在カ ード等の作成整理もすすめ,セレクターによる情報資料提供のサービスを必要に応じ実施してい る。 情報活動における今後の課題は,資料の提供が従来受動的にサービスされていたところを,構成 表 蔵書状況 1)単行書 年度 区分 31 32 33 34 35 小計 36 37 38 39 40 合計 歴史的資料 0 0 0 4 6 10 4 1 2 0 2 19 総 記 11 31 0 44 18 104 24 42 27 13 20 230 社会科学•法律 8 1 61 41 15 126 2 2 5 9 6 150 言語学 10 10 7 14 2 43 8 4 8 8 1 72 自 然 科 学 { 数 学 1 7 0 69 1 78 2 19 3 9 14 125 物 理 学 9 63 47 217 179 515 84 113 96 114 117 1,039 化 学 15 145 69 223 174 626 71 48 80 69 63 957 応 用 科 学 { 工 業 24 184 52 220 125 605 105 103 167 192 86 1,258 工業技術一般 管理技術 0 0 0 2 2 4 17 13 12 8 4 58 化学工業 32 170 91 275 174 742 129 71 101 100 214 1,357 自然・応用科学共通 0 0 0 19 6 25 1 3 0 4 2 35 そ の 他 0 2 1 16 34 53 3 20 6 11 5 98 計 110 613 328 1,144 736 2,931 450 439 507 537 534 5,398 2)定期刊行物 年度 32 33 34 35 36 区 分 購入 交換 購入 交換 購入 交換 購入 交換 購入 交換 国内雑誌 10 90 12 142 20 130 21 150 21 200 外国雑誌 92(但し合計値) 130(但し合計値) 142 41 157 43 144 45 37 38 39 40 購入 交換 購入 交換 購入 交換 購入 交換 24 240 28 250 32 292 33 322 144 46 144 50 145 51 147 56 人員の充実と機械化の促進をはかり能動的に情報提供のサービスが行ないうる機能を確立すること であろう。 昭和41年3月には,単行書6万冊を収容しうる図書室が竣工し,同年秋に移転が予定されている のでその後の活動は一層期待される。 4.特 許 わが国は国際開放経済を迎えて,先進諸国間との工業製品貿易比率が増加し,国際技術交流の活 発化されている現今,国内外の特許権の果す役割はますます重要となったことは論をまたない。 当所における登録特許および特許出願状況をみると,登録数は表に示すとおり8件,特許出願件 数は年間平均7件を数えた。技術的内容は,金属の抽出,新合金およびその製造方法,金属の塑性 加工,金属製品の製造法,溶接施行技術,試作装置等を含んでいる。 表登録特許 名 称 登 録 番 号 時硬化性チタニウム合金 第270161号 金属クロムの室温脆性を改良する加工法 第285925号 高純度珪素の製造法 第316506号 四ヨウ化珪素の製造法 第308870号 高Mn耐熱合金鋼 第414773号 耐熱Co基合金 第414774号 耐熱Ni基合金 第414775号 高張力鋼 昭和40年12月2日特許査定 5.対外活動 近時,科学の発達はますます加速度化されてきたが科学技術の研究開発が,個人的能力とか単位 機関の努力にのみ依存していた時代から,国内的にはもちろん,国際的にも幅広い連繋,協力が不 可欠の要素とされる時代となってきたことは科学技術を総合化するとともに,そのすぐれた成果の 創成を容易ならざるものとするに至った。その困難な業務の上で,すぐれた研究成果をうるために はより能率的な技術情報の交流を一層円滑化し研究を強力に推し進めることが強く要請され,特に 現代は科学技術の成果が人類の福祉増進にいかに役立っているかを察するとき,その必要性は一層 増大する。 海外との交流 いわゆる国際交流の中には,文献情報交流,技術交流,研究員交流等が含まれているのであるが, 本項では特に研究員の海外派遣を中心に述べる。 本研究所においては,設立以来職員の国際会議への参加,海外の視察研習,留学等には特に積極 的姿勢をもって臨んでおり,一方海外からの研究員又は留学生の受入についても広い協力体制をと っている。 まず本研究所員でわが国の学会等の一員として国際会議に出席した者は,昭和36年4月から昭和 41年3月までに10名である。国際会議における経験が,その後の研究業務の上で各種の示唆を与え るところ多大である。 つぎに海外視察者は,同じく昭和36年4月から昭和41年3月までに11名を数えている。視察の内 容は,一般的研究調査のみでなく,X線マイクロアナライザー技術,電子ビーム溶接技術,質量分 析の技術等研究業務に直接必要な新技術の習得,国立研究所の管理,運営に関する調査など広範な 内容を含んでおり,いずれも当所の使命にもとずき,実状に即した活動,運営を推進してゆく上で, 個々の視察の経験が,多くの重要な役割りを果している。 一方,この5年間に海外に留学した当所研究員は14名を数える。留学生の国別内訳は,アメリカ 合衆国10名,フランス2名,ドイツ1名で,留学期間は1ヶ年が基本となっている。研究員がじか に海外の研究生活を経験することは,研究に対する視野を拡げるばかりでなく,その他の研究員に 対する影響も少なくなく,所内一般の生新かつ進取的な雰囲気を創造するに大きな力となっている。 本研究所のこの5年間の海外派遣者は,以上35名で,年度平均7名ということになる。これらの 海外派遣者は,帰国後帰朝報告が義務づけられているほか,当所内外に対する報告を実施している。 以上は,当所員の海外における活動であるが,当所が研究員の海外派遣のみならず,海外からの 研究員または留学生の受入について,積極的に広い協力体制をもってこれに協力してきたことは前 に述べたとおりであり,昭和38年12月にフランスのInstitute de Recherches de la Sidérurgie Français (IRSID)物理部研究課長のGaston Collete博士を迎えて以来,インドの National Metallurgical LaboratoryからK. P. Mukehrji氏を迎えるなど,4名(昭和41年3月現在)の 方が本研究所で研究生活を送られた。 また,本研究所を訪問される海外の関係者も年を追って増加してきており,特に最近は,世界的 に著名な学者に加えて,若い第一線の研究員が訪問され,その数もしだいに増している。そして, 施設設備の視察見学はもとより,研究課題を中心に,研究者または技術者として各専門分野におけ る討議等が当所研究員との間で行なわれている。昭和36年4月から5年間に当所を訪れた学者,研 究者などは,主な人だけで150名を越えるが,その中から主な訪問者を上げてみると, B. W. R. A. (U. K)副所長 Dr A. A. Wells (S. 36.10. 7),ソ連非鉄製練所調査団(S37.1.12), B. W. R. A. (U. K.)所長 Dr. R. Weck (S. 37. 8.13), C. S. I. R. O. (Australia)長官 Sir. Frederick White (S. 38. 5. 8), Battle Memorial Institute (U. S. A)所長 Dr. Thomas およ び副所長 Mr. Minton (S. 38. 5.10), Max-Planck 金属研究所(西独)所長 prof, Köster(S. 38. 9. 23),ソ連鉄鋼視察団(S. 39. 8. 28),中国アルミニウム代表団(S.39.9.30)などである。 国内関係機関との交流 以上述べた国際的協力を推進する前提として,国内の関係機関との密接な人的,技術的協力があ ってその効果は著しい。当所が,金属材料に関する総合的な研究を推進する国立の機関として国内 各方面からの要望を担って設立された主旨に鑑みても,当所の国内に占める比重,内外に負う責務 は一層重大なものがあり,国内関係各方面との連繋を特に考慮する必要がある。研究所の運営に関 しての外部との連絡については別の節で述べられているが,学会との関係についてみれば,特に最 近,研究を共同で行なおうという傾向が著しく,当所が,その人的,技術的協力を学会に対して積 極的に行なう機会が増加している。こういう機会を通じて当所研究員は,研究計画の立案,研究・ 試験・調査等の実施に関して,それぞれの専門に応じたさまざまの協力をしている。 学会,協会における活動を通じて関係機関,試験研究所および産業界とも連繋を保ち,相互的協 力の立場に立って研究活動を推進するため,別節に述べられた通り受託研究,共同研究を実施し, 当所の担う役割をより効果的に果している。また,日本標準規格の改訂または新しい規格の作成に 際しても日本工業標準調査会の臨時委員として当所職員が各専門に応じて参画している。 刊行物 科学の発展に知識交流,研究の連帯化が不可欠であるという事に加え,当所が国家機関としての 公共性を具備する基本的姿勢から,研究成果を国家利益のために積極的に役立てることが特に要請 される。 このような趣旨に立脚して,本研究所の研究成果,研究内容の紹介は下記の刊行物によって広く 関係各方面に配布されている。この編集にあたっては,経験豊富な研究員による編集委員会を構成 して,掲載論文の査続を行ないその内容の充実化につとめている。 1.金属材料技術研究所研究報告(和文B 5版,平均80頁,発行部数1,700部,年6回隔月発行) 昭和33年9月に創刊され,第5巻以降現行の年6回発行となり,発行の都度,中央・地方関係官 庁,都道府県立図書館,関係試験研究機関,大学,協会,会社等に幅広く配布されている。 2. Transactions of National Research Institute for Metals (欧文,A 4 版,平均60頁, 発行部数600部,年6回隔月発行) 和文研究報告の欧文訳論文を中心に,主として海外向けに編集している。第5巻以降年6回発行 となり,海外の主な大学,研究所,会社等34ヶ国,375ヶ所(昭和41年1月現在)に送付している。 3.材技研ニュース(和文,B5版,4頁,発行部数2700部,毎月発行) 研究設備研究速報,帰朝報告,広報事項等を紹介し,研究報告同様広い範囲に配布している。 4.要覧(和文並びに欧文,B 5版横型,年1回発行) 研究所の組織,予算,各研究部別研究業務の概要,研究成果の一覧などを紹介している。 第3章研究業務 総 説 金属材料技術研究所は,わが国の金属材料技術に関する国立の総合的研究機関として,その責務 に相当する必要のある基本的,総合的研究および開発研究を実施して各方面に使用される金属材料 の品質向上をはかると同時に,新技術の開発を行ない新しい科学技術の展開に対処すべく研究をす すめてきた。そのため,これまで各種の連絡会,委員会および学会等を通じて関係各方面とたえず 連絡を保ち,つぎにかかげるような基本方針にそった研究業務にたずさわってきた。 1.一企業体では実施困難な大規模または共通的な金属材料の生産加工に関する研究 2.金属の「生れ」から成品にいたるまでの一貫した生産過程についての基本的研究 3.わが国の資源事情に対応する金属の生産ならびに加工に関する研究 4.原子力,高速飛しょう体,電子工業技術に利用される金属材料に関する研究 5.純金属の製造研究 6.相当規模の設備を要し,国でなければ実施し得ない高度の材料試験,検査 7.製法,需要量などの関係で民間企業では製造し得ない金属材料の製法,各種の金属標準試料 の製作ならびにそれらの供給 上記基本方針にそって当所の研究計画は策定されてきたが,研究計画立案に際し作用する要素は, 一次的には各専門分野における研究員の知識経験による発想,研究室または研究部において蓄積せ られた経験および醸成された課題,各研究部門において総合化された複合課題等であり,それによ って第一段階の研究テーマおよびそれに必要とされる予算の提起がなされてきた。一次的立案によ る研究計画に対して,その研究内容,伴う予算および進抄計画等について全般的分析が加えられる と同時に総合的知見のもとに管理者のグループで二次的編成が行なわれ,これで得た成案に対す る所長の裁決により研究所としての研究計画を決定し,最終には,それを科学技術庁長官に提出し 国としての年次研究計画が決定されている。一方,研究所として研究計画の策定に当り科学技術庁 関係当局等からの行政事務連絡に従って,国内に提起される金属材料に関する諸問題の解決に必要 となる研究,学協会等の諸団体および民間会社との共同研究および外部から委託された受託研究等 が当然加えられた。 年次研究テーマは,第2章で詳述したごとく当初には特に区別を与えられなかったが,昭和34年 より特別研究テーマが生れ,昭和36年から総合研究テーマが設けられ,現在,テーマの性格,それ にかかる予算および組織の割ふり上から総合研究,特別研究ならびに一般研究に区別されている。 ここで当所で実施されてきた研究テーマを数の推移からみると,次表のようになる。 表 年度別研究テーマ数推移 年度別 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41種別 研究テーマ 9 38 47 48 57 85 82 72 83 65 特別研究 ― 3 6 4 5 6 7 5 5 4 総合研究 ― ― ― ― 4 5 6 10 10 9 数のみの推移では昭和33年度と昭和37年度に急増したが,37年度のエポックは当所建設整備計画 の一応の完遂と研究組織および施設設備の充実による。昭和32年にとりあげられた研究テーマは, 当所設立経緯による航空機用材料の研究が主体を構成したが,翌年度にはわが国の金属諸製品の遜 色の原因をなす材質に対する基本的研究が幾つかとりあげられるとともに,遂年,原子力工業,電 子工業,化学工業,高速飛しょう体等新しい産業分野に利用される材料の研究がとりあげられ,ま た新金属,新合金,新しい金属材料技術,従来の技術に対する技術的経済的改良に係る研究等がと りあげられた。 昭和32年にとりあげられたテーマは,航空機その他高温度の条件下で使用される耐熱鋼,耐熱合 金,耐熱チタン合金およびサーメットの研究,ばね鋼,軸受鋼等の特殊鋼の研究,純金属の研究, 鋼材の非破壊試験その他2件で,これ以降年度毎新規に採りあげられた研究はつぎのごとくであった。 昭和33年に,基本的研究として鋼の脆性,金属材料の高温酸化防止,非金属介在物,製鉄製鋼の 研究があり,新金属として靭性モリブデン,希有金属の利用研究をとりあげ,新技術として電子工 業材料の製造,真空溶接用材料,溶接構造用高張力鋼等の研究の外,珪素鋼板,高導磁率Fe-Al 合金の研究に着手し,また原子力関係の研究として金属トリウムの製造,炉材料溶接部の熱脆化防 止および炉材料の腐食防食の研究を開始した。昭和34年には,前年の新金属の研究の一環にニオブ およびタンタル等の精錬溶解加工の研究を加えたほか,アルミニウム合金,チタン等の工業的製造 法,銅基弾性材料,粉末の製造法と利用,鋳造方式による金属材料の改善,ステンレス鋼溶接棒の 改良,耐熱合金の抵抗溶接,純金属の分析法等の研究をとりあげた。また原子力関係としてジルコ ニウム合金とその真空溶接,アイソトープ利用による分析法等の研究をとりあげ,昭和35年には, 低品位複雑鉱の高度利用をとる高圧抽出製錬法,細粒鋼の溶製,ニッケル基分散強化型合金,高速 加工法とその基礎資料をうる鋼の高速変形破壊,高張力鋼の溶接性試験法等の研究が新たに採用さ れたほか,原子力関係として原子炉用ステンレス鋼およびベリリウム等の原子炉用材料,RI利用 による金属材料の品質向上等の研究があげられ,昭和36年には,非鉄金属の抽出に広く適用せしめ る金属ハロゲン化物の基礎研究,減圧製鋼法,鋼の低温におけるクリープおよび疲労破壊機構,低 炭素合金鋼,工具鋼,加工性マグネシウム合金,タングステンの加工性,遷移金属酸化物,微粉末 磁性合金,金属間化合物半導体,超厚板溶接のエレクトロスラグ溶接を中心とした特殊溶接法,チ タン,タンタル,ジルコニウム等高温活性金属の溶接等の研究のほかに,原子力関係では原子炉用 遷移金属化合物,RI利用による非金属介在物の研究,放射化分析等の研究がとり入れられた。昭 和36年度からは,とくに総合研究を実施したが,それは別節を以って述べることとした。昭和37年 には,前年度に終了した研究テーマ数の増加に伴って新たに着手された基本的研究テーマが多く , この10年間で最もテーマ数の増えた年度であった。まず鉄合金中の析出,金属薄膜の格子欠陥の磁 性,融解塩電解の基礎研究,鉄鋼中の不純金属の含有許容量の研究,非鉄金属のクリープ機構等の 基本的調査研究があげられ,純金属の研究として高純度鉄の製造と利用研究,鉄鋼材料の研究とし て低温用鋼,快削鋼,耐熱耐食性アルミ鋼,強靭鋳鉄の製造等の研究がとりあげられた。また高純 度フェライトの製造,強加工を施したFe-Ni系合金,化合物半導体,電気接点材料等電磁気材料 の研究,希有金属添加による非鉄金属における効果,特殊溶解によるアルミニウムにおける微量不 純物の挙動等の調査,溶接加工関係では耐熱材料,活性材料,特殊材料等の特殊ろう接機の開発, 厚肉溶接継手の高温性能,プラズマジェットによる溶射をはじめとする材料加工,金属材料の高速 加工,新しい焼結技術等の研究があり,材料の腐食防食研究として応力腐食,腐食計測,表面処理 による防食等の研究がとりあげられ,分析関係では高純度物質,希土類元素の発光分光分析法,高 濃度組成合金の分析精度向上等の研究があった。また原子力関係では原子炉材料の電子ビーム溶接, 原子炉用セラミックの研究および希土類元素の分離による原子炉用材料等の精製の研究に着手した。 昭和38年には,かねてより計画されていた500kV.電顕の設置に伴ない金属の格子欠陥を中心とし た観察調査,送電線,核磁気共鳴等の金属物性およびMHD発電等の,用途の考えられる超電導マ グネット材料の開発研究,技術的,経済的に有利な直接還元法の研究調査を進めた直接製鉄法の研 究,超強力鋼の開発等の研究に新たに着手したほか,微量不純物による鉄鋼の内部摩擦と脆性遷 移,時効硬化性窒化鋼,高張力鋼溶接部の硫化水素割れ,同鋼種の自動溶接の改良,クリープ試験 法その他数件の新規テーマがとりあげられた。 昭和39年には,最近,粉率54~5%に増加している鉄鉱石粉鉱のペレット製造技術の研究,開発を 要請されている連続製鋼鋳造技術の研究,加圧下の非鉄金属の乾式精錬,溶融塩を溶媒とするアル ミニウムの製錬,複雑硫化鉱精錬残滓高度利用等の金属抽出に関連する研究がとりあげられたほか, 前年度の超強力鋼,耐熱合金の研究に耐火金属を含めたロケット・ジェット機およびそのエンジン の構成部品材料の研究,超高圧下における鋼の変態機構および不純物,添加元素の挙動等の調査研 究の他2件の新しいテーマがとりあげられた。 昭和40年には,新鋼種の開発に伴って要請される鉄合金の構造,物性,熱力学的性質の解明を目 的とした液体,固体鉄合金の物理化学的研究,最大20,000気圧の高圧下における金属材料の塑性加 工,炭素系超耐熱材料の研究,アルミニウムの水中微量不純物による腐食等の研究が行なわれ,昭 和41年には,材料試験法の研究,原子力関係として,原子炉用ジルコニウム合金等の研究を新たに 実施することになった。 本章の研究成果の解説中,研究テーマおよ び必要の個所等の肩に付されている数字は, 付録・参考資料の中の第161頁研究成果一覧 よりLファレンスされたものである。 総 合 研 究 最近のいちじるしい科学技術の進展は,一般にいわれるごとく,専門領域の細分化をすすめ境界 領域の論議をひきおこしたが,新技術の開発は各々の専門領域における科学技術の総合化によって 創成される機会が多くなった。しかるにその総合化をはかるためには各部門間の有機的結合を強化 し,研究およびサービス活動に対する組織構成が,統一的機能下に作用するものでなければならな い。当所においては,専門領域の多岐性とそれぞれの研究活動の深化に伴ないそれらの接合は,す ぐれた成果を得る上で不可欠の要素となった。発足当初においてはその意味で明確な形態をとらな かった活動方式を,昭和36年,総合研究の形で上述の概念を実施に移した。 総合研究は,研究内容構成が関係産業界で早急に解決を迫られている金属材料に関する基本的事 項,当面する新技術開発事項および科学技術の進展に伴って近い将来に必要とせられる新技術開発 に即応する基礎的,応用的および開発研究等のうち,各部の協力を必要とする研究で,そのため研 究の推進に直接作用する研究者および管理者ならびに研究に必要とされる設備等の背景は重要であ り,また多額の費用を必要とする。当所における総合研究の取り扱いは,研究組織,目的,内容, 効果,進捗計画および予算等に包括的検討を加え全体計画の上にたって立案せられている。テーマ 確立後は,研究の総括的企画調整をはかる総合研究委員会がテーマ毎に設けられ,委員長(担当研 究部長),総合調整者(企画課長),研究担当者(担当研究室長)が参加して委員会を開き研究進捗 途上に提起される諸問題に検討を加えつつ研究の推進をはかってきた。 当所における総合研究テーマの概略と推移を述べるとほぼつぎのとおりである。 昭和36年度 溶接構造用高張力鋼の試作研究 構造用材料として高張力鋼の急激な用途上昇に伴ない,同材料の溶接施行も含めた溶接性の良好 な構造用高張力鋼の創成を行なった研究で,翌37年に終了した。 超耐熱材料の性能向上に関する研究(継続中) ボイラー,蒸気タービン,ガスタービン等熱機関,化学工業関係各種装置および機器用材料,航 空機および高速飛しょう体用材料を対象とし,用途別500℃程度から800℃および1,000℃以上の 高温特性を有する国産材料の開発ならびに品質向上に係る研究を実施したもので,一部が昭和40年 度に耐熱鋼の研究として分離した。 昭和37年度 金属材料の高速加工に関する研究(継続中) 従来加工困難とされていた諸材料およびその機械部品の精密鍛造押出,高速度を利用した金属材 料の加工技術の開発を行なうため研究を進めているものである。 鉄鋼中の不純金属の含有許容量の決定に関する研究(継続中) 溶解製鋼して得る鋼材には使用原料によって必然的に不純物の混入する場合が多く,それが鋼材 の鍛圧性,脆性,深紋り性等に影響する。これら不純物に対する知識の欠除は鋼材の品質向上にお ける一盲点と考えられ,それらの不純物の挙動,許容量に対する試験研究を進めるため,昭和37年, 特別研究として研究に着手,昭和38年より総合研究として組織化した。 クリープのデータシート作成に関する研究(継続中) 金属材料の高温での使用の機会と耐久力の確認はますますその必要を深めているがわが国ではク リープのデータシートに乏しく外国の資料に頼っており,産業界の強い要望等もあり,国産材料に 係るクリープデータシートの作成ならびに研究を含めてその総合研究を推進した。この研究はとく に長時間クリープに重点をおいた試験の特殊性から長時期にわたる研究と考えられる。 昭和38年度 鋼中介在物と砂疵に関する研究(昭和40. 41年に継続) 鋼中の各種介在物の性状,挙動を明らかにして鋼の品質向上に資するとともに,その同定により 製鋼法,鋼の造塊法および加工法の改良の資料をうることを目的に,昭和33年,研究に着手したが, 昭和38年より快削性介在物,アジオアイソトープの利用等の研究課題が採りあげられるにおよび総 合研究として研究をすすめることとした。 超電導マグネット材料に関する研究(継続中) 強磁場発生方法として超電導マグネットが注目されてきているが,実用にのった国産材料が未だ 開発せられていない状況に照らし,本研究は高性能超電導マグネット材料の製造,既知材料の性能 向上,新材料の開発等を含めた国産材料の総合的開発研究として研究が推進されている。 高張力鋼溶接部の硫化水素割れに関する研究(継続中) 高張力鋼製LPGタンク溶接部の硫化水素割れが37年度において早急に解決を要する問題として とり上げられ,特別研究促進調整費により着手されたが,限られた期間により硫化水素割れにおよ ぼす諸因子の詳細な検討と適切な割れ防止法の選定についての基礎資料の不足の感をまぬがれない ため,翌38年総合研究としてさらに検討を進めた。 昭和39年度 ロケットおよびジェットエンジン材料の性能向上に関する研究(継続中) ロケットおよびジェット機等高速飛しょう体に用いる金属材料にはすぐれた性能が要求されてい る。そのため重要な数グループの材料を重点として性能,加工性,生産性などの改善および新種の 開発を目的として各種の技術委員会との連繋をとり研究に着手した。 特殊溶銑炉の操業法の確立に関する研究(継続中) 新しいキュポラの操業技術を確立するため2トン熱風水冷式キュポラを使用し,炉内における化 学反応の調査研究をすすめ,わが国の国情に適した新しい溶解法を確立する目的により研究を実施 した。 昭和40年度 超強力鋼に関する研究(継続中) ロケットジェット機体ならびに一般構造用材料等に適した超強力鋼として対重量強度比の高く, 昇温強度,被加工性,耐食性等をかね備えた材料の開発を目的とした研究で,加工熱処理,最適合 金元素を含む新材料の開発研究として着手した。 執筆者所属 企画課長 吉村 浩(第2章以下本節まで) 溶接構造用高張力鋼の研究392) 科学研究官理博(故)遠藤勝治郎 溶接研究部 理博 工博 鈴木春義*,工博稲垣道夫 工業化研究部田中竜男,金尾正雄 材料強度研究部岩元兼敏 この研究は,C量をごく低くすることによって 溶接性,靭性の改善をはかり,かつ簡単な熱処理 で強度も秀れた溶接構造用高張力鋼を得ようとす るのが目的である。なお本研究は当研内の高張力 鋼研究委員会によって行なわれた。 1.成分および熱処理の影響 C量約0.07%でNi―Cr―Cu―Mo系の低炭素 低合金鋼で,焼準処理したものに対するNbの影 響は,Nb量が増すと初析フェライト量は減少し, 結晶粒を微細にし,強度と衝撃値をともに増加し た。 Nb量約0.15%の同種の鋼を2 tエルー式炉で溶 製し,1t鋼塊から20mm厚の鋼板を試作し,圧 延のままの試料について焼戻し温度と保持時間の 影響を図1に,またこの鋼種に各種の熱処理を施 こしたものの機械的性質を表1に示した。 すなわち圧延,焼準または焼入れたのち約640℃ に焼戻すと耐力,衝撃値が改善され,特に圧延材 は強度に,焼準材は衝撃値について著しかった。 これらの結果から圧延材を焼戻すという簡単な 処理で引張強さ85kg/mm2,耐力65kg/mm2とし、 うWES規格HW63 (HT75)相当のものが得られ ている。 表中のV ノッチシャルピー衝撃値は低いが,生 産設備により試作された鋼板では0℃における衝 撃値19.1kg-m/cm2の値を得ている。 Nbを含む鋼は,20~30mm厚に圧延後の空冷 では,この程度の板厚の冷却速度でも高温で加熱 中に固溶したNbが圧延後なおある程度飽和に固 溶していて焼戻しによりcoherentなNb化合物を 生じて硬化する。 2•溶接性 この鋼種は低炭素Nb入りの非調質型であるこ * 38年3月退職 図1圧延材の機械的性質に及ぼす焼戻し温度,保 持時間の影響 表1各熱処理後の機械的性質 熱処理 耐 力 kg/mm2 引張強さ kg/mm2 伸び % 衝撃値,vE0 kg-m/cm2 圧延のまま 51.5 81.5 23 2.0 圧延後焼戻 65.3 85.9 24 4.6 焼 準 49.9 80.1 23 2.0 焼準後焼戻 60.8 74.2 26 24.1 焼入後焼戻 85.6 87.9 25 24.2 とが特徴であり,低炭素のため溶接部の最高硬さ は低く,ビード曲げ延性も良好で,また母材のル ート割れを防止するためには約100℃の予熱を併 用すればよく,発生したルート割れが溶接熱影響 部中を伝播することに対する感受性についてその 感受性がきわめて低いことが判った。溶接用CC T図特性値および再現熱影響部延性値は市販の優 秀な調質型70キロ高張力鋼に較べればやや劣り, 80キロ高張力鋼よりは良好であった。 なお「高張力鋼」として特許(第466,006号)と して認められている鋼種は次の組成のものであ る。 C 0.03~0.13%, Si 0.10~0. 60%, Mn 0. 80~ 1.80%, Ni 0.10~0. 70%, Cr 0.10~0. 50%, Cu 0.10~0.60%, Mo 0.10-0. 60%, Al<0. 20%, Nb+(Ta) 0.02~0.30% 超耐熱合金の性能向上に関する研究 材料試験部理博 河田和美 鉄鋼材料研究部 工博依田連平,渡辺亨,佐藤有一 材料強度研究部吉田平太郎 金属化学研究部理博島岡五朗*,高石博子, 武井厚 高速度熱機関は高い作動温度に耐える高温特性 のすぐれた材料の実現により一層効率的になる。 当所ではこれまでに900~1000℃で強力なIZ05B なるCo基合金89)やNO.64BなるNi基合金45)を開 発し,特許を得ている。そこでCo基よりも経済的 なこの種のNi基合金をさらに発展させるための 基礎となる物理冶金的な考察や高温酸化機構を検 討し,新材料開発に向って総合的な研究を行なっ た。まずNi基超耐熱合金の基本成分であるNi ―Cr合金系の再結晶温度を求めて,再結晶状態 図を完成した。そして390℃の再結晶温度をもつ 純Niは 10%Crの固溶で610℃まで高まるが,30 %Crにしても675℃まで上昇するに過ぎないこ と,均一γ固溶体範囲ではCrが20%を越えると 材料が脆弱になるので,Cr濃度としては10~20 %が適当であることを知った。 次にAl+Ti=3.5%の一定濃度で20% Cr―Ni 系合金の再結晶におよぼすCo, Mo, Bなどの合 金元素の影響を検討した。この場合は20% Cr― Ni合金の630℃の再結晶温度はAl+Tiの合金 化により885℃まで高まるが,これに20%Coを 合金化すると905℃となり,さらにMoを5 %添 加すると925℃まで上昇した。そして0.2%B添 加は再結晶温度を10℃程度上昇するにすぎない が,再結晶後の結晶粒成長速度が非帯に遅くな り,1100℃でも細かい組織を示すという注目す べき効果を見出した。またAlおよびTi濃度を変 えた場合はAlの方がTiよりも遥かに再結晶温度 の上昇に寄与することを認めた。 また高温強度の向上に重要な析出物相を多元 Ni基合金において知るために,単純な合金から 複雑な合金へと順次合金元素を添加して行き,そ の各々について系統的に求めた。この際析出相を *現在アメリカ合衆国ブラウン大学教授 収率よく電解抽出するのに,γ'相とη相に対して は燐酸水溶液がよく,炭化物と硼化物に対しては 塩酸溶酸がよいことを知り,この方法を用いて, No. 64B合金中には析出相としてγ'の外,時効処 理でη'やCr23C6が析出してくること,またNi2B, Co2B, CrB2, Mo2B, TiB2などの各種硼化物の 存在以外に,長時間加熱中にγ'がさらに安定な M3B2型硼化物に変化することなどを解明した。 高温酸化についての研究では80Ni―20Cr合金 の酸化初期生成物は400℃以下では主として NiO, 500~1000℃ではNiCr2O4 と Cr2O3であり. しかもCr2O3は800℃以上でひげ状あるいは小板 状に成長して耐酸化性を悪くすること,酸化反応 は拠物線速度法則に従って進行し,その速度係数 は900℃で 5 × 10-12mg2/cm4/sec であること, 耐酸化性はAl+Tiの添加で向上するが,多量の CoやMoの添加で低下することなどが知られた。 以上の基礎的研究からNo.64B合金の各種合金 元素が高温度でどのような挙動を示すかが明らか となった。そして基準合金元素として12%Cr, 20 %Co, 5%Mo, 6%Al, 4%Ti, 0.2% B の組 成が好ましいことを知り,析出相の解析から強化 に更に役立つと考えられるCとC + Bの影響が検 討された。その結果は図2のごとくで,Cあるい はC + Bの添加により著しく強力となり,そのピ ークは合金濃度として0.3%前後であることが知 られた。しかもC+B添加は溶湯の流動性を大き く助長して,この材料の精密鋳造品への適用を有 利にしている。そこでこれをNo.64BC合金と名 ずけて特許出願中である。 さらに,特殊な超耐熱材料としてCr基合金4)の 研究を行ない,鍛造可能で最も強力な材料として 5 %Co と1.6%Ti を含む 60% Cr―12%Mo ―Fe 合金を得た。 図2 900℃―23kg/mm2のラプチャー時間にお よぼすCおよびB+C濃度の影響 鋼の諸性質におよぼす不純金属の影響 に関する研究 鉄鋼材料研究部工博荒木透 工業化研究部 工博中川竜一,吉松史朗 製造冶金研究部倉部兵次郎,谷地重男 本研究は鋼の諸性質に及ぼす不純金属の影響に 関して総合的に調査を行うものである。現在まで 報告したものは,ラテライト鉱の鉄資源利用に関 連して鋼の諸特性に及ぼすNi, Crの影響に関す るもの,鋼の被削性に及ぼす快削性元素特にTe, Seの影響に関するもの,鋼の浸炭窒化特性に及 ぼすCu, Moの影響に関するものなどである。 1.不純物としてののNi, Crの影響について 将来ラテライト鉱の開発が進み,鉄資源として 脚光をあびた場合,現在の研究の動向および需要 より考えて普通鋼原料としての用途が最も可能性 がある。この場合Ni, Crが一部最終鋼材に不純 物として残存することが充分考えられる。 この様な観点から普通鋼の諸特性におよぼす1 %未満のNi, Crの影響を系統的に調査してい る。尚本研究の一部は,鉄鋼協会ラテライト委鋼 質分科会との共同研究によるものである。 376), 232)348), 394)382), 383) 1.1.低炭素鋼の諸性質におよぼす影響 完全にフェライト+パーライト組織を有する範 囲では,引張強さはCrの添加で約3~4kg/mm2 /%Cr減少し,また降伏強さはNiの添加で約4kg /mm2/%Ni程度上昇する。延性はNi, Crの添 加によって増大する。パーライト面積率の強度靭 性に対する寄与から考察して,Niの効果は固溶 体効果として理解できるが,Crの効果は窒素と の相互作用を考えなくてはいけないようである。 事実窒素量の異なった場合に,Crの遷移温度を 低下せしめる効果,時効特性を減少せしめる効果 が異なることからも示唆された。また疲労特性は Niにより上昇,Crにより低下するが,l%Cr でも耐久比0. 5以上は保持している。 次に種々の製造履歴を有する一連の構造用鋼に おける被削性を,金相学的見地から検討した結果 Ni, Crの単独,複合添加は構成刃先による旋削 抵抗値を減少せしめ,特にCrの添加による工具 寿命の長期助長については,高温硬さ特性との関 連で興味深い結果を得た。ガス浸炭技術の進歩と 照し合せて,肌焼鋼におけるNi, Crの影響を基 礎的に求めた。その結果両者のCに対する熱力学 的性質は反対の作用を示し,浸炭層の焼入性,機 械的性質,Cの拡散,活量等に異なった効果を示 すことを明らかにした。 1.2.中炭素鋼の諸性質におよぼす影響372,429) 中炭素鋼の焼入性はNi, Crの複合添加で増大 し,パーライトの核生成速度に関連して焼入倍数 に累乗効果が認められる。焼戻特性はNi, Crが 炭化物の凝集過程に影響を与えるため遅滞する。 650℃で1hr焼戻した場合の引張強さは約13kg/ mm2/%Cr, 6kg/mm2/%Niの割合で増加するが 複合添加では相加的でない。衝撃特性には悪影響 は認められず,疲労特性は明らかに改善される。・ 1.3.高炭素鋼の諸性質におよぼす影響 炭素工具鋼の用途にたいしてその熱処理特性お よび耐摩粍性,切削性等を調べている。同一の球 状化処理をおこなうと焼入性はCrの添加でやや 低下する。また焼戻第一段階は地鉄中のC濃度に 及ぼす影響からCrの添加でやや促進されNiの 添加でやや遅滞することが明らかになった。 2.快削性元素とくにTe, Seの影響について 768) 低炭素鋼に複合添加したTe, Se, S, Pb, Bi によって生ずる複雑な快削性介在物の組成,形状 を調べた。これらの介在物の被削性に対する効果 は次の二つの因子を乗ずることで代表される。 1)非金属性〔1 +64 (%S/32+%Se/79+% Te/127)〕 2)金属性〔l + 2(%Pb)+6(%Bi)〕 3.ガス浸炭窒化特性におよぼすCu, Moの 影響384), 404), 405) 肌焼鋼の代表的な不純物であるCuの影響を 1% Cr鋼について調べた結果,Cの活量,拡散 速度,浸炭層の焼入性の面ではNiと同様な作用 を示すことがわかった。また0.2%Mo添加でCの 拡散が遅滞され焼入性を著しく改善する。またガ ス浸炭窒化層における窒素の拡散におよぼす1% Crおよび0.2%Moの影響を調べた結果,両元素 ともγ相中での窒素の拡散を遅くさせ低温程その 効果が著しいことがわかった。 金属材料の高速加工に関する研究 材料試験部 理博河田和美 金属物理研究部理博武内朋之 鉄鋼材料研究部工博鈴木正敏,池田定雄, 田頭扶,隈部智雄* 電気磁気材料研究部理博吉田 進,永田徳雄 材料強度研究部理博舟久保𤋮康,岩尾暢彦 近年高エネルギー高速度を利用して金属材料を 加工する技術が注目を浴び,それに応じた各種加 工方法も開発されつつある。しかしかかる技術に 必要な材料学的基礎知識,特に高速塑性変形の機 構とか,あるいはこの様な条件下で加工された金 属材料の組織や諸性質についての検討は未だしの 感がある。これらの点を明らかにし,この技術の 進歩発展に資するため,上記各部間の総合研究と して協力態勢をとって来た。現在迄の研究内容を 大別して示すと次の如くである。 1.鉄鋼の高速加工に関する研究 高速高エネルギー加工機ダイナパック1220型 (最大エネルギー20t-m,最高速度20m/sec)を 使用して鋼を衝撃的に押し出す場合の基礎データ を求め,またこのような速度(押し出し部の速度 は上記ラム速度に押出比を掛けたものとなる)で 加工された材料の組織や強度の変化を求めるた め,数種の鋼について検討をおこなった。 まず予備的段階として衝撃押出しに関する力学 的考察164)をおこなったのちアルミニウムの冷間 押出し165)によって実験的裏付けを得た。特に慣 性的な力による押出抵抗の増加や材料の引きちぎ れ等の特徴ある挙動が認められた。これらの力学 的考察は後に鋼を用いた実験の進渉に伴い,工具 類の弾性変形なども考慮に入れて拡張改善され た 458)。 鋼については,炭素鋼,13%クロム鋼,18―8 ステンレス鋼に対し,1,150℃から室温にいたる 温度で衝撃押出しをおこない,その押出抵抗を測 定すると同時に,組織や硬度分布,更にX線によ る選択方位の検討などをおこなった175),445), 456), 457)。 更に13%クロム鋼については,準安定オーステ * 39年5月退職,現在名古屋大学工学部 ナイト状態下に於ける押出抵抗をも求めた。 以上で押出しに関する実験を一応終了し,現在 鍛造の際の変形速度を変化させた場合の材料の組 織および強度などについて研究をすすめている。 2.金属材料の高速変形に関する研究 金属材料の高速変形下における挙動を調べるた め,動的な応力―ひずみ―ひずみ速度の関係を求 める試験装置を試作した204)。これは細長い弾性 棒の衝突によって生じた弾性応力波を試片に加え て圧縮変形するもので, 棒の衝突速度は最高約 50m/sec,荷重時間は100~200μsecである。 これを用いて多結晶アルミニウムについてひず み速度が102~104/secの高速変形を行ない,静的 試験の結果と比較した234)。その結果,材料の塑 性特性は明瞭なひずみ速度依存性を示し,変形応 力はある瞬間のひずみ,ひずみ速度だけでなく, ひずみ速度の履歴によっても影響されることが明 らかになった。 さらに単結晶アルミニウムを用い,加工硬化曲 線や辷り模様に及ぼすひずみ速度の影響をしらべ た。それによれば,臨界剪断応力や容易辷りの変 形応力はひずみ速度の上昇とともに増加し,また 容易すべり領域が広くなる。同様の結果は亜鉛や 銅の単結晶についても顕著に認められた。これら の結果から,ひずみ速度がある程度以上になると 静的変形とは異なった別種の障害が転位の運動を 支配するようになることが予想される。現在この 点を究明するために研究が進められている。 3.金属材料の高速における塑性加工性に関す る研究 各種金属薄板を高速度で加工した場合の材料の 塑性加工性を検討する目的で,まず高速深絞り時 の材料の組織異方性が深絞り性に及ぼす影響につ いての実験を行なっている。 定速型高速衝撃試験装置は,火薬爆圧により約 300m/sec迄の高速で飛行する弾体を試験片に衝 突させ,衝撃的に変形させることができ,回転式 衝撃試験装置は回転円盤の周速を5~50m/secの 間で連続的に変化することができ,引張り,シャ ルピー試験等を行なうことができる。これらの装 置により,アルミニウム,亜鉛,鉄等各種純金属 の単結晶,多結晶試片の深絞り性ならびにランク ホード値の測定実験を実施している。 クリープのデータシート作成に関する 研究 材料試験部理博河田和美,横井信,田中千秋 材料強度研究部 岩元兼敏,吉田平太郎 鉄鋼材料研究部 工博 依田連平 工業化研究部 工博中川竜一,阿部義郎 火力発電や石油化学工業等の新しいプラントの 建設や開発,あるいは高温で使用される材料の輸 出などには,わが国で作った材料について求めた 長時間クリープのデータが必要になってきた。そ のため国産材料についての長時間クリープデータ シートの作成が産業界より強く要望され,昭和37 年度よりクリープデータシート作成のための研究 が取り上げられ,表2に示すボイラおよびタービ ンに使用される5鋼種の材料を選んで3万時間目 標のクリープ破断試験に着手した。 現在,3万時間目標の試験を継続中であるが,1 万時間程度のクリープ破断のデータが求められは じめ,種々検討されている。これらのデータから 応力―破断時間曲線を求め,内外のデータと比較 した結果を図3に示す。また,特に18―8Ti,18 図418―8 Ti鋼の電解残渣の重量比とクリープ 破断時間との関係。 ―8Moの両鋼種については,クリープ試験後の 試験片の組織と試験温度および破断時間との関係 について検討され,両鋼種の析出状態の違いや, 図4および図5に 示すように析出物 の重量比が温度と 時間に支配され, 応力の影響は無視 できるなどの知見 を得た。 (実線は本研究のデ ータで,点線は国 内および諸外国の データである)。 図3 応力―破断 時間曲線 図518―8 Mo鋼の電解残渣の重量比とクリープ破 断時間との関係。 表2 実験に使用した材料の化学成分および熱処理条件 鋼 種 化 学 成 分(%) 熱 処 理 条 件 C si Mn Cr Ni Mo Ti Nb V 2. 25Cr―1 Mo 0.11 0. 39 0.47 2.20 0.98 930℃× 1 h→100℃/h 冷却 1 Cr―1 Mo―0.25V 0.32 0.29 0.54 0.94 0.50 1.10 0. 30 955℃× 25h噴霧焼入,670℃×85hF.C. H46 0.16 0.18 0.66 11.90 0.12 0.47 0.260.30 1040℃× 1 hO.Q.,620℃× 2h W.C. 18―8Ti 0.05 0.75 1.45 17.67 12.53 0.60 1100℃× 1hW.Q. 18― 8 Mo 0.09 0.44 1.58 16.18 13.32 2.68 1090℃× 1 hW. Q. 鋼中介在物および砂疵に関する研究 鉄鋼材料研究部 荒木 透 金属化学研究部 柳原 正 製錬研究部郡司好喜,小野清雄 鉄鋼材料研究部 内山郁,角田方衛,斉藤鉄哉 製造冶金研究部平井春彦 特殊金属材料研究部新妻主計 本研究は,鉄鋼の精錬,溶解,造塊,凝固およ び加工の各過程における非金属介在物の挙動を物 理的,化学的および物理化学的に追求して,鋼塊 の砂疵防止の研究に寄与し,鋼塊の製造技術の改 善および鋼の品質向上に資することを目的として いる。 1.酸化物系介在物について 鋼の脱酸生成物としての酸化物系介在物をとり あげ,脱酸機構,生成物の挙動,圧延した際のそ の挙動などについて追求した。すなわち,Alを 溶鉄中に空気に触れることなく添加する方法によ り,その際に生成する酸化物の種類,凝集や浮上 などの諸挙動を実験的に調べた413)。介在物の同 定には,化学的に抽出した残渣をX線回析法で調 べる方法を用いたが,X線マイクロアナライザー による分析についても種々の検討が行なわれ121), 常にその手段が応用されている。現在,上記の Al脱酸のほかに,Si脱酸,Mn脱酸についても 同様な一連の実験が継続されているが,Siによる 脱酸の機構の解明の一助として,SiO2とFeOの 固相反応についても基礎的に研究が行なわれた。 酸化物介在物には上記のほかにスラグの巻込みに もとずくものがあるが,各種2成分系溶滓につい て起電力測定法を用い酸化物の活量を求めること により,種々の基礎資料を得る研究が行なわれ, CaO―SiO2系スラッグ中のCaOの活量はSiO2モ ル分率0. 5以下の組成のスラグの時に急激に増大 するなどの結果を得た。 また,Si, Mn216), Si―Mn, MnとAl, SiとAl 414)などでそれぞれ脱酸した鉄中の介在物の組成 を調べ,その試料を熱間圧延した際の介在物の変 形その他の挙動を系統的に観察した。そして,介 在物の組成,大きさ,圧延温度,圧延比などによ りその変形挙動が異なる結果を得た。このような 介在物と鋼の諸性質との関連については,介在物 の変形状況,介在物周辺の転位状況390)や介在物 の基地鉄への付着状況などに重点をおいて追求, さらにFeO系介在物その他と鋼の疲労について実 験し,微小割れの発生およびその伝播と介在物に の関係を究明しつつある412)。 2.硫化物系介在物について 含硫鋼中に生成する硫化物系介在物の形状にお よぼす添加元素および脱酸条件の影響について, 光学顕微鏡,X線マイクロアナライザーその他で 調べ130), S, CおよびMo含有量とFeSの析出状 況の関係およびクロム鋼における硫化物の形態と 脱酸条件との関係について結果を得た。さらに, 含硫鋼の凝固速度と硫化物の生成の関連を基礎的 に調べるために,小鋼塊の凝固速度を制御する実 験手段で一方向から凝固させ,その際の硫化物の 偏析,組成,形態,分布などを観察403),なお継 続中である。そして,凝固速度が0.8mm/minの 場合にSのマクロ偏析がわづかに認められ,急冷 部にはⅡ型硫化物が多く,Al脱酸の場合にその ミクロ偏析が最も著しいことがわかった。また, Sの偏析については,ラジオアイソトープをトレ ーサーとして追求することが試みられ,定性的だ けでなく定量的考察を行なうための基礎実験を実 施,オートラジオグラフの濃度と放射能の量との 関係を示す実験式を求めた。これについては,実 験鋼塊に応用して検討しつつある。 3.快削性介在物について 含硫鋼と同様被削性の改善を目的とし,含鉛鋼, 含Se鋼および含Te鋼についても,それに存在す る鉛,硫化物,セレナイド,テルライドなどの介 在物が調査された242)。含鉛合金肌焼鋼において は,鉛粒子は極めて高速の転動疲れ試験での寿命 を低下させることがあるが,通常の場合その低下 は見られぬこと,Cr, Cr―Mo, Cr―Ni―Mo鋼 に鉛を分散させると転動疲れ寿命のバラツキを少 なくすることなどを認めた217)。また,セレナイ ドやテルライドの生成時期はかなりおそいこと, X線回析により FeSe,FeSe2, FeTe, MnSe,CrSe, CrTeなどが存在することを指摘した242)。 超電導マグネット材料に関する研究 電気磁気材料研究部理博吉田進 , 工博太刀川恭治,福田佐登志, 田中吉秋,理博岡井敏* 金属物理研究部 理博 田岡忠美**, 理博能勢宏,浅田雄司 材料強度研究部 伊藤秀之 工業化研究部 信木稔 超電導マグネットは現在経済的な強磁場発生装 置として実用化が進められ,それに用いられる超 電導線の開発は電磁気材料の分野で重要な研究課 題となっている。その材料はいわゆる硬超電導体 であって,NbやVを基とする合金や金属間化合 物が多いが,その細線への製造技術の確立,特性 の改善,および新らしい材料の開発を目的として 昭和38年度から研究が始められた。またこの研究 の一部として,薄膜試料を用いて電子構造,格子 欠陥と超電導性の関連を明らかにする基礎研究が 行なわれている。 1.Nb-Zr合金線162) Nb-Zr合金はこの種の材料としてもっとも実用 化の見込のあるものだが,国産化をはかるため, まずその製造技術の研究を行なった。その結果, アーク熔解,電子ビーム熔解を経た鋳塊を高温で 加工したのち常温で溝ロール,スエージおよび線 引きを行なって0.25mmφの長い線に加工するこ とが出来た。また,欠陥のない均一な線をつくる ため線材の探傷法の研究も平行して行なってい る。われわれはこの合金を700℃乃至900℃の温 度範囲で加熱して二相化すると加工性が著しく改 善されることをはじめて見出した。この処理と加 工を組合わせると従来よりもIc が数倍に高めら れ,Tcもまた上昇する。現在,この二相化処理 を行なって特性を改善した長い線を加工してお り,またIc増加の機構を研究してさらに特性改 善をはかっている。 2. Nb-Sn 多層線285) Nb-Sn系金属間化合物はNb-Zr合金に比べ て超電導特性ははるかにすぐれているが,硬く脆 *昭和39年4月退職,現在東京大学物性研究所 **昭和41年4月退職,現在八幡製鉄(株) いため細線への加工が難かしい。そこでNbとSn を各二層づつ同心に重ねた多層体を細線に線引き したのち熱処理して長さの方向に連続した多層の 中間相をもつ新らしい型のNb-Sn超電導線が開 発された。この線についてNbとSnの拡散によ って生ずる中間相をX線マイクロアナライザーを 用いて研究し,Nb4Sn, Nb3Sn2, Nb2Sn3の三種 類の中間相の生成を見出し,それらの生成温度範 囲,生長速度を明らかにした。これらの中間相の うちNb4Sn相が最もよい超電導特性をもつ。上 記のNb-Sn多層線は950℃で熱処理すると内 部に特性のよい多層のNb4Sn相が形成されて極 めて大きいしがえられ,また曲げによる特性の 低下が少ない特長をもつ。今後このNb-Sn線の 長線製造技術について研究する予定である。 3. V-Ga 線 V-Ga系の金属間化合物は最もHcが高く,超 電導マグネットの有望な材料と考えられている が,やはり硬く脆い上Gaの融点が低いので細線 の加工が出来なかった。まず,V-Ga系で生ずる 中間相の組成とその生成温度,生長速度について 研究し,V3Ga, V2Ga, V3Ga2, VGa, VGa2 の五 種類の中間相を見出した。この内V3Ga相が最も 超電導特性がすぐれているが,Gaにとむ中間相 は生長速度が極めて大きいことがわかった。つい でV線の表面からGaを拡散させてV3Ga線を 連続的につくる方法を研究,開発した。約700℃ に加熱したV線を熔融Gaの浴を通過させるとV 線の表面にGaにとむ中間相が形成され,さらに この線を加熱すると表面の中間相がV3Gaに変化 し,その幅も増加する。このV3Ga線も高いTc と大きし、Icをもつことが明らかになった。現在 さらにV3Ga線の製造技術とその特性について研 究中である。 4.硬超電導体薄膜の研究 まず10-10Torr台の超高真空電子ビーム蒸着装 置263)を設置し,最初の試料として硬超電導元素た るNbの薄膜から着手した。膜厚が2500Åから 300Åへと薄くなるにつれて,遷移温度は低下し, 遷移磁場,遷移電流は逆に増大するという異常な 結果を得た。この原因としては蒸着中の真空内残 留ガスの影響,膜表面の吸着と酸化,膜内の格子 欠陥の存在などが考えられている。 高張力鋼溶接部の硫化水素割れに関する 研究529) 腐食研究部工博伊藤伍郎池田清一 溶接研究部工博稲垣道夫工博中村治方 本研究は粗製液化プロパン貯蔵用の高張力鋼球 形タンクの破損事故の対策を求めるためにはじめ たもので,昭和37年度特別研究調整費により実施 され,腐食研究部における各種金属溶接部の腐食 の研究実績と溶接研究部における高張力鋼溶接時 の低温割れに関する水素による遅れ破壊の研究実 績を基礎として,それらの応用問題として総合的 に研究を行ない初期の研究成果をうることができ た。38年度以降においてはさらに高張力鋼化学組 成の影響を調査し耐硫化水素割れ感受性の少ない 高張力鋼を開発する目的と,使用環境における界 面現象を研究して,高圧腐食試験結果と加速腐食 試験結果の相関性を検討する目的で長期にわたる 総合研究を実施し,漸次その研究成果をえている すなわち昭和37年度特別研究促進調整費による 試験では市販の60, 70および80キロ各高張力鋼種 にっき,30×20cm角の小型拘束溶接試片を用い て,加速腐食試験(硫化水素飽和0.5%醋酸水溶 液)および高圧腐食試験(プロパン中に硫化水素 と水を添加したもの)を行った。試験片は溶接の ままのもの,拘束開放のため側面スリット長を変 えて溶接残留応力値を変えたもの,および溶接後 各種表面処理を行ったものである。以上の結果を 要約すると,加速腐食試験での割れには溶接金属 および熱影響部に生じた横割れと,止端部に生じ た止端割れがある。横割れの発生個所は4パス溶 接部の3パス部と熱影響部のボンド附近で,割れ の進行はボンド附近の発生個所から溶接金属と熱 影響部の両方へ進む。また熱影響部に入った横割 れは板巾方向および板厚方向とも母材と熱影響部 の境界でとまり,母材まで進行しないことがわか った。また拘束の影響については,横割率および 止端割れ率は有効拘束巾の小さいほど低くなる。 表面処理の影響については,プラスチックコー テ ングおよびメタ ライ ジング処理したものが有効 で,ピーニング処理したものはある程度効果があ り,局部後熱については特殊な場合を除いてはか えって悪い結果になることが明らかになった。ま た静止状態のLPガス中の浸漬は2ヵ月でも硫化 水素割れは認められなかった。 一方溶接熱サイクル再現試験片による加速腐食 試験結果によると,溶接熱影響部の熱サイクル再 現試験片(SH試片)および溶着金属の熱サイク ル再現試験片(SD試片)の硫化水素割れ発生の 限界引張応力値はその強さのレベルが増す程,ま た熱サイクルの冷却過程がはやくなる程低下し, いずれの試片も母材や溶着金属の降伏強さよりき わめて低い限界引張応力値を示した。試験片の検 鏡結果によると,割れには主として腐食により進 行したと考えられる割れ(腐食割れ)と水素ぜい 化により生じたと考えられる割れ(水素ぜい化割 れ)との2種類があり,SD試片には前者の割れ が,SH試片には後者の割れが多く認められた。 最後に水素添加遅れ破壊試験結果において,SH およびSD試片ともに,水素による遅れ破壊現象 が認められ,60キロ高張力鋼SD試片を除いては 割れ発生の限界引張応力値は鋭い人工切欠きが存 在する場合には母材や溶着金属の降伏強さよりき わめて低い値を示した。SH試片はSD試片にく らべて,一般に腐食環境において生成したピット やミクロ割れなどの自然切欠きにより遅れ破壊を 生じやすい点も明らかになった。 上記の加速腐食試験結果と遅れ破壊試験結果か ら,高張力鋼溶接部の硫化水素割れには,溶接熱 影響部に生じたミクロ割れまたは硫化物腐食孔の 先端が有効な切欠きとなって,水素による遅れ破 壊現象を生じたものであると結論された。 昭和38年度以降は,Cr, MoおよびBを添加した 基本成分に,V, Ti, Zr, NbおよびAlをそれぞ れ単独に添加した試作高張力鋼7種および当所試 作高張力鋼2種について,母材およびSH試片の 低歪法の3点支持による加速腐食および高圧腐食 試験ならびに水素添加遅れ破壊試験を実施した。 以上の結果から各添加合金成分の影響と適正添 加量を明らかにした。今後,すでに金材研におい て溶接構造用として開発されたNb系高張力鋼の 化学組成を基本成分とし,硫化水素割れ感受性の 少ない鋼種の開発を続け,また加速腐食試験によ って生じた亀裂と実際のタンクの亀裂との相関性 を求める予定である。 特殊溶銑炉の操業法の確立に関する研究 製造冶金研究部工博牧口利貞,工博菊地政郎 生井亨,栗原豊 工業化研究部 田中龍男,村松晃,三井達郎, 持田忠明 キュポラは従来鉄原料を再溶解し,所定の化学 組成の鋳鉄を溶製する目的で使用されていた。従 ってその炉内における還元反応は殆んど対象とし て考えられていない。しかし,キュポラもその構 造よりみて炉況を適当に規制することによって還 元反応を期待し得るのではないかと考えられる。 そこで一般のキュポラと多少異なるものを建設し (末章の写真),新しい溶銑炉操業法の開発を目 的とし,実験室的な面と実際的な面との両者から 研究を進めた。その結果は次の通りである。 1.キュポラ内における加炭機構の解明に関す る研究 キュポラ内における加炭の難易は鋳鉄の特性に 大きな影響をおよぼすが,Si, Mnのように炉前 において調整することは困難である。この加炭現 象に対して操業条件,コークス条件等が大きく影 響するものである,これを実験室的研究により解 明してみることにした。ただ本研究においては送 風量,送風温度等の実際操業に関する条件を要因 として取り上げることはできなかったが加炭に影 響するのではないかと考えられる他の要因は一応 取り上げて研究を行なった。その結果単独要因と して影響が比較的大きなものは炭素剤の性質,炭 素剤中の灰分量,スラグの塩基度,溶銑温度,溶 銑組成の5要因であることが明らかとなった55), 65), 319), 352), 353)。 そこでこの要因を採用し加炭 現象におよぼす寄与率を統計的手法により研究し た。その結果加炭に対しては炭素剤の性質が最も 大きな寄与率を示し,溶銑温度,スラグ条件の順 に影響することが明らかとなった452)。 特に加炭 現象に対しては炭素剤中のラヂカルの条件および 黒鉛化の状態が最も大きく影響するものと考えら れる。 2.キュポラ原料としての半還元鉱利用に関す る研究 キュポラ内をなんらかの方法により還元性の条 件にすれば炉内還元を行ないうる筈である。この 条件を或る程度満足し得る可能性のある高温熱風 水冷式ノ ー ・ライニング・キュポラを建設し421), 銑鉄100%から鋼材100%までの種々の溶解研究を 実施した。この結果によると炉頂ガスのηυは23 ~32%で,一般のキュポラに比し多少還元性の強 い雰囲気になってはいるが,大きな差異は認めら れない。しかしSiの歩留りについて検討してみ ると97.7~103. 3%の値を示し,加珪現象が認め られる場合もあり,一般のキュポラのSi歩留り75 ~85%に比較して非常に異っている。これは炉内 において一度酸化し,スラグ化したSiO2の還元 が行なわれたためではないかと考えられる。これ らの現象よりみて今回建設したキュポラによれば 半還元鉱を鉄原料として使用しても,溶銑を製造 し得るのではないかとの考えにもとずいて,表3 に示す半還元鉱を用い,キュポラ内における還元 の問題を実際操業の面から種々研究してみた。そ の結果コークス比及び送風条件が適正であれば, 炉内還元を十分に行なわせ得ることが明らかとな った。すなわち,適正条件のもとにおいては鉄歩 留りも極めて良好であり,100%半還元鉄を使用 しても96~97%の値を示している。また得られた 溶銑の化学組成は表4のようであり,Si及びMnの 有効成分の還元も相当に行なわれている。このよ うに本研究により溶製された銑鉄は低マンガン, 低隣で,さらに十分な脱硫の可能性もあるので, これにFe-Siの添加を行なうだけで,鋳物用溶 銑として直ちに使用し得るだけでなく,フェライ ト地球状黒鉛鋳鉄用溶銑としても使用し得る可能 性がある。そこで現在は脱硫率の向上及び工業化 の基盤確立のための諸研究を実施している。 表3半還元鉄の化学組成 Total Fe Metalic Fe Fe O Fe2O3 SiO2 75.05 28.65 52.84 6.46 3.46 表4 溶銑の化学組成 C Si Mn P S 3.9 ~4.1 0.18 ~ 0.20 0.15 ~ 0.18 0.05 <0.1 耐熱鋼の性能向上に関する研究 材料試験部 理博 河田和美 鉄鋼材料研究部工博依田連平,小池喜三郎 材料強度研究部吉田平太郎 工業化研究部 工博 中川龍一,河部義邦, 乙黒靖男* 現在のところ超臨界圧火力発電設備で最高のも はアメリカのEddystone発電所の圧力351kg/ cm2,温度649/566/566℃のものである。しかし 耐熱材料の高価なことによる経済的な理由で一般 には246kg/cm2, 538℃級が海外で広く採用され ている。もし経済的な耐熱金属材料が開発されれ ば,より高温高圧の発電設備が可能となる。そこ でこの研究では蒸気タービン,ボイラー用材料と して強力でかつ経済的なオーステナイト系耐熱鋼 の開発を行なっている。 1.18Cr-12Ni系耐熱鋼 まずこの系での合金元素の複合添加による相乗 的効果を定量的に検討し,MoとB, MoとNの同 時添加の影響を明らかにした347),375), 395), 396)。 さらにNb, Ti炭化物形成元素の最適濃度を検討 し426~428)その結果A) Crl8%, Nil2%, Mo 3 %, Ti 0.4~0.8%, B0. 05~0.2%, C0. 2%,残り Fe, B) Cr18%,Ni12%, Mo 3 %, Nb0. 5~1.0 %, N 0.15%, B0. 02%,残りFeの2つの組成を 選定した。この合金は同系統の弱析出硬化型合金 19-9DL,Timkenl6-25-6, G18Bなどと比較し強度 は変らないが,Hot Cold Workingを行なわず, Ni, Moのような高価な元素およびN,Bの添加量 が比較的少ないため低価で加工性,溶接性が秀れ 実用性はかなり高いと思われる。特にこの合金の 特色は長時間の組織変化と寿命の低下が少ない。 図6 Esshete 1250とA鋼の700℃における クリープ・ラプチャー強さの比較 *昭和37年4月退職,現在富士製鉄KK 図6はイギリスで開発されたEsshete 1250と 700℃でのクリープ・ラプチャー強さを比較した もので,この様子がよく示されている。 さらに,高温での組織変化におよぼす合金元素 と応力の影響を基礎的に調べるため,Mo, Nb, Ti, N, Bを単独に添加した鋼種について650℃ 1万時間破断応力下でクリープ試験し,その間の 適当時間毎に取り出した試料の析出物の形態変化 をカーボンレプリカ法を中心として検討した。ま たこの組織と強度との関連を調べる研究の一還と し,δフェライト相に重点をおき,実用鋼に出現 するこの相の高温性資,耐食性におよぼす影響を 明らかにした。328),329), 344~346) 2. Cr-Mn-Ni系耐熱鋼 一方当所では700℃で強力な高Mn耐熱鋼を開 発し81),特許を得ているがこの材料はまだ多量の Coを含むので,さらに経済的な材料にすべく Co を全く除いて最適のNi, Mo, W, Cb, C, N濃 度を検討した219)。その結果Cr20%, Ni 6%, Mn10 %, Mo2. 0%, W2. 5%, Cb1.0%, C 0.15~0. 25 %, N0.4~0.9%,残りFeの組成をもつ強力な材 料が得られ,これを10M 6 N合金と呼称して現在 特許出願中である。この合金において安定なオー ステナイ ト組織にするためにはN濃度として0.4 %以上必要である。そして700℃, 26kg/mm2の クリープ・ラプチャー試験では0.1%Nについて 約60hrの破断寿命の向上が見られる。しかしN濃 度があまり高いと長時間側の寿命が低下するので 0. 6 %N程度が望ましい。この寿命を更に向上さ せる目的で少量のB添加の影響を検討したとこ ろ,耐クリープ・ラプチャー性が一層高まり,こ の新鋼種を10M6NB合金と呼ぶことにした。図 7は10M6NB合金とFe基超耐熱合金中で代表的 なN-155合金の650℃における破断強さを比較 したもので,10M6NB合金の強力性が知られる。 図 7 N—155と10M6NB (9.4%Mn, 5.7%Ni, 21.6%Cr, 1.9%Mo, 2.4%W,0.65%Cb, 0.25%C, 0.605%N, 0.01%B)の 650℃ におけるクリープ・ラプチャー強さの比較 ロケットおよびジェットエンジン材料の 性能向上に関する研究 科学研究官工博岩村��郎 鉄鋼材料研究部工博荒木透,工博依田連平 佐藤有一,新井 隆,板垣孟彦 非鉄金属材料研究部工博木村啓造 松尾 茂,辻本得蔵,笹野久興,平田俊也 中野理 工業化研究部 荒木 喬,小森進一 特殊材料研究部 工博渡辺 治,富塚 功 溶接研究部 工博稲垣道夫,工博橋本達哉 理博和田次康 この研究は航宇研で研究試作が進められている V/STOLのリフトエンジンやロケットなどに関 連した材料の問題をとり上げ関連の専問委員会に おける実施の具体的情報などに基づいて航宇研と 連携をとりながら検討を進めているものである。 リフトエンジンは離陸,着陸の時だけ一時的に使 用する小型エンジンなので巡行中では単なる荷物 となるため,先づ装置重量が軽いことが第一番に 必要とされている。このエンジンの性能は推力と 重量の比で示され,燃焼効率を上げて直接推力を 増加するか又は同じ形状で重量を軽減することに より性能を向上することができる。最初の成功を 見たJR100型は耐熱鋼で作られ推力/重力比は10 であったがこの一部をチタン合金およびアルミニ ウム合金で置き換えたJR120型は約14となった。 現在さらに性能のすぐれたJR200型が研究されて いる。 リフトエンジンの重量を軽減するためにはなる べく多くの部品に比重の小さいアルミニウム,マ グネシウム又はチタン合金を使用することが望ま しい。一方推力を増加するためには極めて高い温 度に耐える強力な材料を必要とする。そのため新 しい超耐熱合金や高融点金属あるいはその合金の 開発が望まれている。ロケットのノズルに用いら れる黒鉛などの超耐熱材料の研究にも着手した。 1.耐熱材料の研究 当所で開発したNi基のNo. 64BC合金の高温 特性を検討した。精密鋳造したこの材料の1000° Cの性質は引張り強さは45kg/mm2で370hrのク リープラプチャー強さは10kg/mm2である。この 合金は溶湯の流動性が良いのでタービンブレイド の精鋳が容易である。高温安定性を向上させるた め,結晶粒調整の研究を行ない,微細化処理とし て鋳型内面にCaOやFe2O3+FeO微粉末を塗布 する方法が有効なこと,ならびにC濃度の多いも のは微細化し易いことなどを認めた。 一方,高融点金属としてはMoを耐熱合金で鋳 包み被覆して保護する方法を開発しわが国および 米英各国に特許出願中である。この方法による被 覆Mo材は熱間加工が可能で大気中1000℃のクリ ープラプチャー強さは10kg/mm2 (1000hr)で, 1200℃までの急速加熱冷却にも耐える。さらに この被覆処理をWなどへ応用する研究を進めてい る。 2.軽量化材料の研究 本研で開発された耐熱チタン合金でTi-8Al-4 Co合金はアメリカの特許合金(6Al-4V-Ti)に 比べると400℃以上の高温強度が大であることが 明らかとなった。この材料を実用化するためには さらに設計に際し必要となる各種の詳細なデータ ー(短時間引張り特性,クリープ特性,疲労特 性,熱安定性など)を求めると共に加工性,生産 技術などの最適製造条件をも明らかにすることが 必要である。このため現在300kgの大型鋳塊を作 り研究を進めている。 インゴットの最適取扱い条件の検討に引続き熱 間加工温度ならびに鍛圧加工および熱処理条件と 製品の機械的性質や組織との関係を求めた。板材 については5 mm以下の製造条件に引続き10mm 以上の厚板および鍛造材についての検討を行ない また溶接性について検討中である。 熱処理条件は高温強度を得るためには700℃か ら焼入れした材料が最も良い結果を示し,クリー プラプチャー強さは500℃ ―1000時間で32kg/ mm2で800°~950℃の焼入れ材は室温強度が大と なる。 エンジンの軽量化のためには現在のリベット構 造を溶接構造とすることも必要であるため,チタ ン合金および溶接可能な強カアルミニウム合金と して期待されているZn-Mg-Al合金の耐熱性の 改善をはかっている。 高速変形実験装置 遅れ破壊試験装置 高温表面処理装置 2トンMBCキュポラ 超強力鋼の研究 鉄鋼材料研究部工博荒木透 熱処理研究室 渡辺 敏,川原浩司,宮地博文 加工冶金研究室安中蒿,谷地重男 工業化総括室 信木 稔 超強力鋼は低合金構造用鋼,熱間ダイス鋼,極 低炭素マルテンサイト鋼の三系統に分類される。 我々はこれらの鋼種について比較検討した結 果,信頼性のある超強力鋼を開発するには高合金 鋼の方が有利であると考え,対象を主として後の 二者にしぼり,これを超強力鋼の研究AとBに分 けて研究を開始した。Aグループは5 % Cr-Mo- V鋼およびマルエージ鋼の性能向上に関する分野 を担当し,Bグループは超強力鋼にとって重要な 基本的特性である破壊靭性を主体とする分野を担 当した。 開発目標は一応引張強さ250kg/mm2以上,伸 び8 %以上としたが,5 %Cr-Mo-V鋼は通常の 熱処理の他に加工熱処理を併用することにより特 に高強度の材料の開発を目指したものであり,一 方マルエージ鋼は優れた靭性とともに溶接性や製 造条件の見地から実用性の高い鋼種としてその性 能向上がはかられたものである。 超強力鋼の研究A 5 %Cr-Mo-V鋼(SKD6) について衝撃値および焼戻硬度におよぼす熱処理 条件の影響を検討した。その結果オーステナイト 化温度が高ければ衝撃値は全般的に低下するが, 保持時間を長くすればその改善に相当な効果があ り373),これは主としてオーステナイト化の際の置 換型合金元素の粒内拡散に関係があることを確か めた。つぎに焼戻硬度と衝撃値との関係,ならび に同一硬度レベルにおける焼戻温度の影響をしら べ,二次硬化の最大を示す点において衝撃値が必 ずしも最低値を示すものではないこと,ならびに 同一硬度レベルにおいては低温長時間焼戻しの方 が好結果を得ること408)を示し,それらについて考 察を加えた。さらにオースフォームに直接関連の ある焼処理として階段焼入れに関する研究を行な い,このような焼入れだけでもある程度オースフ ォームと類似した効果を持つこと408)を示した。す なわち階段焼入れによって全般的に焼戻硬度が増 大し,二次ピークが不明瞭になるとともに衝撃値 も約3kg-mから4kg-mに増大した。階段焼入 れを行なうと析出炭化物の形状にかなりの変化が 生じ,特に焼戻しが進行しても炭化物の凝集生長 に対する抵抗性がまし,このために機械的性質が 向上するものと思われる。これらの結果をもとに SKD61のマルフォームならびにCoを添加した鋼 種のオースフォームについて研究を行なってい る。 一方マルエージ鋼については,強靭な極低炭素 マルテンサイト組織中に時効によって析出する析 出相の形態や分布を変化させる目的から,通常鋼 種に対してCrを配合するとともに析出硬化性元 素としてのTiの効果を重視して若干の鋼種を溶 製した。この鋼種に対して焼入れ後の加工や時効 処理にともなう機械的性質ならびに析出相の挙動 をしらべた。その結果,強加工を加えたのち約 500℃で時効させることにより引張強さ180kg/m m2伸び10%,絞り60%の性質が得られた。さ らにこれらの結果をもとに多種の析出相による時 効硬化,耐熱,耐食性の改善に効果のある添加元 素の選択ならびにマルテンサイト自体の性質を究 明する目的をもって,Fe-Ni-Ti, Fe-Ni-Mn-Ti, Fe-Cr-Ni-Ti, Fe-Cr-Ni-Mn-Ti-Al系について 系統的研究を行なっている。 超強力鋼の研究B 20Niマルエージ鋼,JIS SNCM8低合金構造用鋼に対し,合金成分以外の 不純物を出来るだけ少くして靭性の改善をはかる 目的から高真空中で電子ビーム溶解し,主として 破壊靭性におよぼすその影響を検討した406)。いづ れの鋼種も破壊靭性Kc値は電子ビーム溶解によ り10~30%増加する。シャルピー衝撃値について は,20Niマルエージ鋼の場合バラツキが減少す るほかは影響は認められなかった。 ついでFe-Ni-Ti系低炭素マルテンサイト時効 硬化型合金に対し,加工熱処理の適用の可能性を 検討した。その結果加工熱処理により靭性をあま り低下させることなく,時効後の強度を増加させ ることが出来た。強度は加工度の増加に従って増 加する。加工法としてはオースフォームよりマル フォームの方が有効であり,マルフォームの加工 度が20%の場合,0.2%耐力は普通処理のもの (170kg/mm2)にくらべて約5 %の増加を示した。 金属物理研究部 金属物理研究部は,本研の基礎研究部の一つであり,本研の重要研究の基礎をなす物理的分野を 分担すべきである。しかし,本研の広範囲にわたる応用,開発研究のすべてをおおうことは到底不 可能である。一方,金属物理学全体の動きに応じ,新しい研究分野を開拓して,次の応用研究の方 向づけもすべきである。また,所外では,輝かしい永い歴史をもつ東北大,金属材料研究所,新設 の東大,物性研究所に対しても,国立研究所の物理研究部として,特徴も出さなければならない状 勢の下で昭和36年に発足した。 このような条件を考え,部全体の目標を明確にしぼり,組織的に集中して研究を進める方針が採 られ,主題として,「鉄,鉄合金の機械的性質,特に結晶方位依存性」が,研究部全体の討論の結 果,比較的自然に採り上げられた。その背影は,(ⅰ)「鉄鋼の機械的品質の改良」が,本研の重要 研究であったこと,また(ⅱ)機械的性質を支配する格子欠陥の研究の成果が,多くは稠密な面心 立方晶や,六方晶金属に限られ,体心立方晶については,現象の複雑さのためもあって,ほとんど なかったこと,にある。そこで体心立方晶金属の代表である鉄,鉄合金の機械的性質を,単結晶を 用いて,転位論の立場から,総合的,統一的に解決しようとする方向づけができた。 33年に始まっていた鉄合金の異方性組織の研究は,上の研究目標に応じ,任意方位をもつ多量の 大きな単結晶の製作の必要から,他方,一般に異方組織をもつ加工材料の,組織の調整と,その特 性の研究のために採り上げられた。鉄合金の脆性の初期の研究は,3 %珪素鉄単結晶の,脆性破壊 機構,強度が結晶方位に強く依存することを明確に示した。その後,純鉄についても,大きい単結 晶の製作に成功し,鉄および鉄合金が,相互に比較されながら,塑性の基礎過程であるすべり変 形,双晶変形,その結晶方位,温度,引張り速度依存性等について,組織的な基礎知識が蓄積され ている。その知識をもとに,降伏,加工硬化,疲労,脆性破壊の研究が,着実な成果をおさめてい る。単相鉄合金の外に,微小折出物を含む合金の単結晶についての機械的性質も,この線にそって 研究されている。最近,研究範囲を,機械的性質への結晶粒界の役割に拡げ,合金元素,不純物と の関係も考えながら,実用材料の性質を理解するための研究も進めつつある。 基礎研究の測定条件として,温度を広範囲,特に低温までのばす必要から,He液化機の整備と 共に,電磁気材料,特に電気計算機素子,超電導材料の基礎研究を担当する第一研究室が,37年に 発足,研究材料としては超高真空内での蒸着膜にしぼられた。これは,強磁性共鳴を利用出来る点 と,蒸着膜特有の格子欠陥に着目して,塑性研究グループとの協力を容易にするためである。果し て,蒸着膜の電磁気特性の異常性は,微細構造の定量的研究にまたねばならなくなっている。 一方,格子欠陥の研究に,ミクロな直接観察が有力であることから,電子顕微鏡,特に,500 k V電顕の金属研究への応用を目標に,38年に第4研究室が加わった。35年以来計画して来た500k V電顕は,製作,改良に苦労を重ね,40年末使用を開始,金属への応用を考えた特性の検討や,転 位,再結晶,相変態の動的特性の研究に,応用範囲を拡大しつつある。さらに,高透過性を利用し て,比較的厚い試料(鉄等1μ,アルミニウム等3μ)について,バルクの材料での特性との対応 を明らかにしつつある。他方,この研究グループは,塑性グループ,電磁気グループとの共同研究 を具体化する絆となっている。 尚,物理分析室は,所全体の物理分析装置の整備,新しい装置と分析法の開発の役目をもち,金 属組織,電顕,X線,熱測定等の面で,国内外の第一級の装置をそなえ,十分に性能を発揮するよ う努力している。独自の研究としては流体作動計測器の開発,その特性を生かした利用を考えてい る。 金属薄膜に関する研究 理博 能勢 宏,大河内真,浅田雄司 1.昭和37年秋以来,金属薄膜の磁性と格子欠 陥に関する研究を行っている。磁性は主として強 磁性共鳴を手段として,飽和磁化・異方性常数・ g因子・半値巾・残留応力・交換結合係数等の基 本的磁気量を求めて薄膜の磁性一般を明かにし, また電子顕微鏡を用いて薄膜の生成過程や格子欠 陥などとの関連を調べる。 先ずニッケル鉄合金薄膜を10-6 Torr台の真空 蒸着により作成し,その成分変化と膜厚変化に伴 う磁性を調べた。特に膜面に垂直な磁場の時に生 ずる多重共鳴――いわゆるスピン波共鳴の観測に おいて,1000Å以下の膜厚にて交換結合係数が減 小するという異常現象を見出した140)。また磁場 を膜面に垂直から平行までの角度変化を調べ,こ れを半値巾の考察から論じた。 スピン波共鳴の起因に関連しては,先ず傾斜膜 厚を有する試料を作成して調べたところ,完全な 一様モードの共鳴が存在しないことを見出したの で,表面のスピンが殆ど拘束されることによって スピン波共鳴が生ずるとする説の裏付けの一つと なった。しかし更に確証を得るために,人為的に 膜内に一定磁化分布を有する試料を作成して調べ ている。 NaCl,MgO等の単結晶の劈開面上に,10-6 Torr台の真空蒸着によりエピタクシャル成長さ せたニッケル単結晶薄膜においては,バルクの単 結晶に比し2倍も大きな結晶磁気異方性が生ずる 原因として,薄膜特有の大きな面内の残留応力の みによる磁気弾性効果では十分な説明とはならな いことを見出した。強磁性共鳴と電子線回折との 両測定結果を詳細に検討したところ,膜面内のみ ならず膜面に垂直な残留応力をも導入することに より,下地の種類によらない統一的解釈が行えた。 2.薄膜においては蒸着条件がその試料の物性 を支配することはよく知られている。そのうちで 最も重要な条件を考慮して超高真空電子ビーム蒸 着装置を開発した263)(写真)。10-10Torr台の超高 真空中にて,下地温度を-190~+400℃,蒸着 速度を1~1000Å/secの広範囲に制御出来て,自 己加速型電子ビームを用いて高融点材料が蒸着可 能な装置である。これを用いて作成した薄膜が確 かに純粋に近くなることの一例として,ニッケル 薄膜にて普通真空蒸着の場合に比し面内残留応力 が約半分に減小することを見出した。 この装置には更に,真空内劈開装置,極低温下 地保持器を附属せしめて,薄膜の生成機構,成長 過程,磁性,超電導等を包含して,薄膜の物性研 究の一層の拡大を期してある。 3.金属薄膜の超電導に関する研究を昭年38年 以来行っている。先ず軟超電導体の代表として錫 薄膜を10-6 Torr台の真空蒸着により作成し,遷 移温度と膜面残留応力との関連を調べた。次に上 記の超高真空電子ビーム蒸着装置を用いて,硬超 電導体の代表としてニオブ薄膜を作成し,2~15 °Kの温度範囲と300~2500Åの膜厚範囲にわたっ て,遷移温度・遷移磁場・遷移電流等を主に抵抗 法により調べた(綜合研究の項を参照)。 4.その他,所外との協同研究としてフェライ ト薄膜に関する研究を行っている。特殊なフラッ シュ蒸着法を用いて作成した薄膜について,強磁 性共鳴・電子線回折・蒸着中電気抵抗等を対応さ せながら測定し,フェライト薄膜の生成過程と共 に完全な磁性薄膜を得るための条件などを調べて いる。既にニッケル系フェライト薄膜230),スピ ネル型の酸化鉄薄膜264)等について所期の成果を 得た。 鉄の塑性と脆性破壊関する研究 理博本多竜吉,田賀秀武 可成り多くの金属や合金は低温において脆性的 な破壊を起す傾向を持ち,鉄鋼材料も又この様な 性質を免れない。その様な低温脆性の発生機構を 知る事は一方では金属材料の品質向上の為に必要 な事であり,他方物性論的な問題としてもこれは 興味深い問題と考えられた。 この様な事情の下に物理部では数年来鉄及び珪 素鉄の単結晶及び多結晶を使用して鉄鋼材料の低 温脆性破壊の発生機構を調べてきた。これらの材 料は組織的には極めて単純なものであり,従って その結果だけから複雑な組織を持つ商用鉄鋼材料 の脆性破壊の全貌が理解できる訳では勿論ない。 しかし一方単純な組織の材料を実験に使用した結 果,いくつか典型的な脆性破壊発生機構が明らか になった。その他脆性破壊強度や靭性に影響を及 ぼす因子についてもいくつかの重要な知見が得ら れた。これらの結果を以下に略記する。 液体窒素温度において引張り試験を行った場合 珪素鉄単結晶は劈開的に破断を起すが,その破断 は引張軸の結晶方位によって或る場合は変形双晶 によって惹き起され,又別の場合には辷りによっ て惹き起される。此の間の事情は概略既に「五年 のあゆみ」に記してある11)。 その後の実験は主として鉄単結晶及び多結晶を 使用して行われてきた265)。何れの場合も炭素量は 炭化物の析出が見つからない程低い場合である。 先ず鉄単結晶についての結果から述べる。従来鉄 単結晶についての低温引張り試験の結果は数多く 発表されてきたが何れも破壊機構については何等 判然とした結論が出ていなかった。しかし今回の 実験の結果鉄単結晶の低温引張り試験において劈 開破断の始まる場所及び機構が明らかとなった。 はっきりした結果の得られた最大の理由は①可成 りの数の微小定留亀裂が観察できた事及び②破断 の発生箇所を劈開面上の破壊伝播模様からつきと める事ができた事にある。 観察結果から得られた結論を述べると鉄単結晶 中に生じた変形双晶が他の変形双晶にぶつかると 時々亀裂が発生する。亀裂は双晶の境界面上や (100)結晶面上に生じ,これらが伝播を続けると 破断が起る。又注意すべき事として鉄単結晶を作 ると必らず小数の微結晶粒が島の様に残る。変形 双晶がこれらの島結晶粒にぶつかると矢張り時 々 亀裂が発生して破断の原因となる。 次に多結晶の脆性破壊においても変形双晶は重 要な役割を演ずるものかどうかと言う事が当然問 題となる。この事を調べる為に結晶粒の大きさが 色々に異る多結晶鉄を用意してそれらを低温引張 りによって試験した。あるものは低温引張り試験 の前に常温にて少し予歪を与えたが,予歪みを与 えたものは低温試験中殆ど双晶変形が出なかっ た。 予歪みを与えたものと与えなかったものとの低 温のびや破断強度を比較して次の様な事が結論で きた。即ち結晶粒径が大きければ双晶は脆性的な 破壊を惹き起すけれども,こまかい結晶粒のもの では双晶は破壊の原因として重要でない。辷りも やはり脆性的な破壊の原因となり得る。双晶又は 辷りが脆性的な破断を誘発する傾向は結晶粒が大 きくなる程大きいけれども結晶粒の大きさが試料 の大きさに近づき単結晶的なものとなれば辷りが 破断を起す傾向は却って又減少する。 双晶や辷りが破断を誘発する傾向は結晶粒度だ けでは定まらず実は粒界の強さに強く依存する。 例えば低温破断が劈開的で粒界破断が殆どない様 なある純度の鉄の場合,粒径が300μ 位より大き な場合のみ双晶は破壊の原因となった。しかし粒 界が色々の原因で弱ければもっと結晶粒の小さな ものでも双晶は破壊の危険な原因となる。 尚この研究のテーマにおいては破壊と関連して 変形双晶の成長や辷りによる変形応力の結晶粒度 依存性等も調べられてきた事を附記する。 鉄の降伏に関する研究 理博武内朋之,池田省三 軟鋼では,降伏応力の引張り速度依存性が強 <,さらに一定荷重の下で降伏おくれの現象があ る。本研究は,この種の時間に依存する降伏現象 を,純鉄について,系統的に調べることを目的と して,1960年4月に開始された。 まず手始めとして,純鉄の降伏おくれの現象 を,広い温度範囲にわたって測定するために,圧 縮空気で作動する,荷重時間20~30ミリセカンド の,高速荷重装置を試作した。これを用い,広い 温度および応力範囲にわたって,純鉄多結晶試験 片の低温クリープ曲線を観察して,降伏おくれ時 間の温度および応力に対する依存性を測定するこ とができた。この実験事実と,いろいろな温度お よび引張り速度のもとでの降伏応力とを対応させ て考察した結果,(1)鉄が応力―ひずみ曲線の上 で,上降伏点をもっことと,降伏おくれ時間が見 られることは,全く同じ原因から起る現象である こと,そして,(2) 鉄の降伏現象が,強く時間に 依存していることは,運動する転位の性質と深い 関係があることが,結論された253),254)。 次で,上と全く同じ鉄から作った,同一方位を もつ10数本の単結晶試験片を用い,-78℃にお ける,おくれ時間と降伏応力を測定し,この種の 性質のうち,時間に依存する部分は,単結晶で も,多結晶でも,基本的には全く同じであること が,分った251)。 そのご,再電解鉄から,ひずみ焼鈍法で巨大な 単結晶(板厚1~2 mm,巾40~50mm,長さ300 ~400mm)を成長させることに成功した269)。こ の方法は,素材の圧延集合組織および再結晶特性 を,くわしく調べた結果,確立されたものであ り,板面が(100)面で,成長方向が〔011〕方位の 結晶を,極めて容易に成長させることができるの が特徴である。 この板から切り出された単結晶試験片を用い て,まずおこなったことは,結晶表面に転位に対 応する腐食孔を作って,変形の極く初期における 転位分布を直接観察することであった。この目的 のために,次の腐食液が開発された268)。 { FeCl3・6H2O 40g エチルアルコール 40ml 水 40ml CuCl2・2H2O 数mg これを用いて,いろいろな温度および応力条件の 下で,わづかに変形した結晶の表面の,ひずみの 分布に対応する腐食模様を観察した。その結果, 変形の極く初期における,結晶内のひずみの分布 (転位分布)は,肉眼的に見ても極めて不均一で あり,しかも,この種の不均一性は,降伏現象と も深い関係があることに気がついた。そして,ひ ずみ分布の不均一性は,いいかえれば,変形中の 結晶内の応力分布が一様でなく,すべり帯の先端 に大きな応力集中の依存することが予測され た 268)。 鉄を低温度で変形させると,双晶があらわれ る。そのため,低温における鉄の降伏を考える場 合には,双晶の発生も重要な問題である。同じ方 位の多数の単結晶試験片を用いて,低温での応力 伸び曲線およびクリープ曲線を,系統的に観察し た結果,双晶の発生する限界附近の温度および引 張り速度または荷重のときには,双晶発生応力が 引張り速度とともに上昇し,さらに,一定荷重の 下での双晶発生おくれ時間が,応力の低下ととも に長くなることを見出した270)。この種の現象は, 双晶の発生が,それに先行するわづかのすべり変 形のさいにあらわれる,上述の応力集中よって助 けられている,と考えると容易に理解できる。 現在および近い将来の問題として,進行してい るものは,(1)双晶変形と結晶方位の関係,(2)衝撃 応力で変形させたときの,双晶およびすべり変 形,(3)極く微量の添加元素を含む鉄単結晶の降 伏,(4)再に大きな純鉄単結晶の製作などである。 鉄の疲労破壊の研究 吉川明静,岡本昌明 このテーマに関するここ数年の研究は,鉄にな ぜ〃疲労限〃が存在するのか,その原因を明らか にすること,および,鉄を含めて金属一般に共通 する疲労の機構を解明するという2つの面から行 なわれた。 第1の問題については,‶疲労限"があるとい うこととS―N曲線が鋭い折れ曲りを示すことが 同義語であると考えられることから,鉄多結晶で 結晶粒度,C, N原子含量,およびその易動度 (試験温度)を変えてS―N曲線を求め,折れ曲り の鋭さとこれら諸因子との関係を調べた258)。こ の実験によって,C, N固溶原子が動けないよう な低温であっても,結晶粒度が小さい場合にはS ―N曲線は鋭い折れ曲りを示すが,結晶粒度が大 きい場合にはたとえC, N原子量が多くても鋭い 折れ曲りは生じないことが明らかにされた。この 実験事実は,従来,‶疲労限"の原因としてもっ ともらしいとされてきた,疲労中の歪時効による という説を判然と否定するもので,結晶粒度が折 れ曲りの鋭さを決める重要な因子であることを示 している。結晶粒度の‶疲労限"に対する役割に ついては,微量のC, N原子によって強化された 結晶粒界が繰返応力下で塑性変形が結晶粒から結 晶粒へ伝播するのを妨げることにあるという説明 がなされた。 第2の問題については,S―N曲線の現象論的 整理と実験的に微視的立場から追及することが行 なわれた。 現象論的整理としては,金属一般の疲労破壊に 共通する1つのモデルを提出し,いろいろな金属 のS―N曲線を1つの関係式で表現することを試 みた259)。モデルは有効塑性歪の蓄積がある一定 量になれば疲労破壊がおきるという仮定に立って おり,結論的には,応力振幅σsと寿命Nとは次の 式で結びつけられる。 ここで,mは材料の塑性に固有の定数,σoは疲労 限に相当する応力振幅,ωは繰返速さ,Cは材料 と実験条件で定まる定数である。銅や,鋭い折れ 曲りを示さない条件にある鉄,即ち高純度鉄や単 結晶鉄などのS―N曲線はあるmの値に対して上 式でよく整理される。また斯様なmの値は鉄では 銅より小さく,そのため鉄のS―N曲線は銅のS ―N曲線より急に寿命軸に平行になることが示さ れた。 微視的立場にたつ実験としては,鉄単結晶,多 結晶をつかって,疲労に伴う内部摩擦,引張一圧 縮応力下の加工硬化,電気抵抗変化の測定,電顕 直接観察などを行ない,疲労変形と疲労クラック との関連を調べた。 内部摩擦の測定によっては,疲労限以下の応力 振幅でも結晶粒の大きさ程度の辷りがおきるこ と,疲労限以上の応力振幅では,初期を除いて, 寿命の大部分に亘って内部摩擦は殆んど一定で, 疲労変形による加工硬化が初期に飽和し,この状 態での転位の運動によって疲労クラックが発生す ることが明らかになった。加工硬化の初期段階を 詳しく調べるために行なわれた引張圧縮試験で は,鉄では応力振幅が小さい場合単結晶,多結晶 ともに軟化現象が現われること,硬化に転じた後 は数10サイクルの繰返しによって加工硬化が大体 一定になることが知られた。一方,液体窒素温度 で変形した高純度鉄の電気抵抗の回復の実験が変 形によって生じた諸欠陥の移動,消滅の挙動をし るために行なわれた。変形によって生じた諸点欠 陥は-196℃~100℃の間で6段階に移動または 消滅し,0℃以上ではごく微量のC, N原子がそ の移動に大きい影響を与えるという結果がえられ た。この結果は疲労破壊過程の温度依存性を考え るとき,試験温度によってそれぞれ種類の異る点 欠陥の寄与を考慮しなければならないことを示し ている。電顕での直接観察では,疲労中に副粒界 状転位配列がつくられることを見出し,それとク ラックとの関係を調べた。実測された転位配列か ら計算した応力集中はクラックを生じる力として は小さく,クラックの発生源としてよりはその伝 播に一役を演じていると考えられた。 これらの実験結果で,他の金属と共通する現象 の中最も重要とおもわれる点は疲労クラックの発 生が交叉辷りと密接な関係をもつことである。目 下,この点に注目して,交叉辷りを伴なう転位の to and fro運動によって,疲労クラックの発生を 説明しようとする試みを行なっている。 鉄合金の異方性組織に関する研究 理博田岡忠美*,古林英一,竹内伸,八木沢 孝平,斎藤豊**,吉川明静,岡本昌明 理博武内朋之,大河内真, 金属材料の物理的機械的性質の多くは,その結 晶方位に大きく依存して変化するので,材料の結 晶方位を好ましい特性をもった方向にそろえるこ とができれば,きわめて優秀な材料を得ることが できる。そのためには,加工,焼鈍の過程におけ る結晶方位の変化を調べ,そのメカニズムを明ら かにし,任意の方向性を得るための基礎データー が必要である。 こうした観点にもとずいて,最初はまず市販の 珪素鉄多結晶の各種圧延率のものを水素中で焼鈍 し,X線極点図と光学顕微鏡組織,磁気トルクメ ーターを用いて,圧延及び焼鈍による結晶組織の 変化を調べた。トルクカーブの解析から,圧延率 85%の場合,約600℃で1次再結晶(活性化エネ ルギーは約50kcal/mol),約900℃で2次再結晶 と各々呼ばれる現象に対応するトルクの変化が起 ることがわかった。こうした予備実験によって, 単結晶による個々の結晶の性質を調べる必要が認 識された。 1.特定方位珪素鉄単結晶の製作及び圧延再結 晶組織の研究 我々は生産工場で実際に圧延作業に用いられて いる圧延機で容易に圧延するに充分な大きさの単 結晶板を得るため,Dunn-Nonkenの方法に準じ た歪焼鈍法で,厚さ約1mm,幅30mm,長さ30 cm程度の板状単結晶の任意方位のものを作った。 *昭和41年4月退職現在八幡製鉄(株) *昭和40年3月退職 圧延変形による結晶方向の変化を連続的に測定 するため,種々の圧延率において試料を採取し, その方位分布を極点図で調べた。また,圧延変形 にともなう辷り線を観察し,その辷りが,圧延方 向への引張,および圧延面の圧縮応力の分解せん 断応力が最大の系に属することを確かめた。さら に,これらの辷り系が活動したために期待される 結晶方位変化は,極点図から求めた値とほぼ一致 し,圧延変形が主としてこれらの辷り系の活動に よって生じたことを示した。このように圧延組織 が辷り系によって一意的に規定されることから, 辷り系について基礎的研究,特に変形条件,方 位,合金元素等による影響について検討すること になった(2参照)。 一方,再結晶過程は極点図と顕微鏡観察により 観測し,一次再結晶組織,二次再結晶組織の形成 とその圧延率,焼鈍温度との関係を詳細に調べ た。その結果次のことが明らかになった。 ① 再結晶速度は圧延率の増加と共に大きくな るが,同じ圧延率でも結晶方位によって速さは大 幅に異る。 ② 再結晶組織は一般に低圧延率では種々の方 位を含んでいるが,圧延率の増加と共に少数の成 分のみになる。二次再結晶はこのような少数の成 分の(多くの場合単一の)再結晶組織を持つ試料 に生じる。 ③再結晶組織は圧延組織よりやや広い方位の 拡がりを持ち,圧延組織との間にすべての結晶に ほぼ共通な方位関係が認められた。この関係は近 似的に〈541〉軸まわり27度であった。1次再結 晶組織と2次再結晶組織の間にもほぼ同じ関係が 見出された。 このように方位関係がシャープでない原因の一 つを取り除く ため, 1つの再結晶粒とそれが生じ たマトリックスとの10~20μ の局所的方位関係を 調べる必要が生じ,試料面に一様に分布した結晶 学的マイクロピットを作って方位を決定する,傾 角顕微鏡法が開発された274), 694)。この方法によ って,多くの微小結晶の局所的方位測定が容易に なり,方位関係について有用な知見が得られつつ ある。 この傾角顕微鏡法により,典型的な安定結晶方 位{111}〈211〉単結晶の70%圧延材について10μ以 上の再結晶粒の方位を調べた結果,極点図から求 めた再結晶組織と同じ{110}〈001〉方位を持つこと が判明した。{111}〈211〉圧延組織から{110} 〈001〉 再結晶ができる過程は,したがって10μ 以下の段 階であり,目下500kV電顕直接観察および,電顕 内での加熱実験により,再結晶粒形成過程を追跡 している。 2.鉄合金の辷り系139),663) 前述のように,再結晶組織は圧延組織と特定の 方位関係を持ち,さらに圧延組織が圧延の際に結 晶中で活動する辷り系によって規定されることか ら,辷り系と再結晶組織の形成とは密接な関連が ある。先ず我々は3 %珪素鉄について,系統的に 選んだ方位の単結晶の引張試験により,室温にお ける辷り系の考察を行なった。その結果,一般に 辷り帯の生ずる面は,特定の低指数の結晶面にそ っていないで,辷り方向を含む外力による最大せ ん断応力面の関数であった。一方降伏応力と辷り 帯を形成する面との関係から,これら辷り帯は {110}面および{112}面の低指数結晶面の辷りの合 成されたものと考えるのが最も妥当であった。 次に合金元素や合金濃度を変えることによる辷 り系の変化を調べるため,3%Si―Feの外4.5% Si―Fe, 3 % Al―Fe, 2 %V―Fe, 9. 5% V―Fe 及び純鉄について,同様に特定方位の単結晶の引 張試験によって辷り系に関する考察を,室温のみ でなく液体窒素温度までの低温でも行なった。 Si, Al,Vはいずれも鉄とclosed γ field typeの 合金を作る元素であるが,原子半径がかなり異 り,Si, Fe, V, Alの順に大きくなっている。単 結晶は,純鉄及び9.5%V―Feを除き,熱間圧延 板を800~850℃の間で焼鈍した板の両面の細粒 の部を除去した素材から,歪焼鈍法で作製した。 合金鉄では大体任意の方位の単結晶を成長させる ことができた272)。 室温での結果は,どの合金についても{110}辷 りの外{112}面の辷りが生ずることが,辷り帯の 観察および降伏応力の測定結果から確められ,辷 り変形機構に関して,合金の種類によって特に大 きな差異は認められなかった。従ってこれらの合 金に関する圧延組織,さらには一次再結晶組織に ついても,特に大幅の変化が生ずる可能性は考え られない。温度を下げることによる辷り系の変化 で共通している点は,低温になるとどの方位の結 晶も{110}面に限定されてくるという傾向である が,合金によりその遷移温度は非常に異ってい る。なお特異な現象として,{112}面辷りについ て辷りの向きについて極性があること,{110}辷 りについて降伏応力が必ずしもSchmidの法則を 満さないこと(4.5%Si―Feについて顕著である が,外の合金でも低温で観察される)等が発見さ れ,現在その原因が究明されつつある。又辷り系 のほか,これら鉄合金に関する合金硬化について も研究が進められている。 3.方向性再結晶組織の形成条件 再結晶粒の方位を決定している要因は,核形成 機構にあるか,成長機構にあるかを調べるため, 圧延安定方位の{111}〈211〉方位珪素鉄単結晶の40 %圧延材を用い,その再結晶組織と,圧延試料全 面に0. 5mm おきにポンチを打ってランダム方位 の核を導入した場合の再結晶組織を比較した。極 点図で測定した再結晶組織はポンチした影響は全 くなく,単に再結晶温度を100℃下げたにすぎな かった。また,ポンチを打った所から放射状に大 きく発達した再結晶粒は極点図より求めたと同じ 方向性を持つが,あまり大きく発達しない比較的 小さな粒の方位はあまり方向性を持っていないこ とから,成長の段階が非常に選択的で,しかも優 先方位は圧延変形と密接な関係があることが示さ れた。 4.高温顕微鏡による再結晶粒成長の連続観察 再結晶過程を連続的に観察するために,従来の 高温顕微鏡を根本的に改良した新しい型の顕微鏡 を試作した256)。この顕微鏡は,大型の炉を持ち, 作動距離の大きいしかも開口比の大きい対物レン ズを具え,窓の曇りを除くためのターレット式交 換窓等多くの試みが行なわれたが,熱的腐食によ る粒界像がレスポンスの点で問題があった。我々 は2次再結晶以前の1次再結晶したマトリックス の結晶成長過程を連続的に観察した。 5.回復と再結晶にともなう内部エネルギーの 変化214), 260) 圧延した珪素鉄の内部に蓄積されたエネルギー の大きさと,その放出のスペクトラムを定量的に 測定することは,再結晶現象の素過程の解析に非 常に重要である。我々は圧延した試料を円形にパ ンチし積重ねて円筒状にしたものを用い,充分焼 鈍した標準試料との差働方式で,精度の高い測定 を行なった。測定された放出エネルギーは,150° Cに大きな第1ピークを持ち,350℃附近よりゆ るやかな第2ピークが再結晶温度600℃以上まで 連続的に連って観測された。この第1ピークは純 鉄ではでないこと,電気抵抗が大きく上昇するこ と,変形応力,硬度の変化が小さいことなどか ら,圧延によって導入された,過剰の空格子点に 助けられたorderingと解せられ,また第2のピ ークは転位の消滅とサブグレインの形成,成長に 対応していると判断された。 以上のように,過去7年間にわたる鉄合金の異 方性組織に関する研究は,すべの方位を代表する 種々の典型的方位をもった大きい単結晶を用い, 結晶学的,機械的,磁気的又熱的測定方法を用 い,時に新しい測定装置を開拓して行った。その 結果は,圧延組織については辷り系と関連して統 一的な解釈が得られ,再結晶組織についても成長 過程が重要であり,圧延組織との方位関係も明ら かになった。しかし再結晶組織が成長過程で何に 支配され,方向ずけられるかについては未だ明確 になっていない。現在進行中の500kV電子顕微鏡 での連続観察に期待を持っている。 鉄合金における析出に関する研究 工博吉田秀彦,八木沢孝平,山県敏博 工博藤田広志,岡本昌明 合金系における析出現象及びそれの機械的性質 に及ぼす影響を,近年急速に発展した格子欠陥の 知識を使って基礎的立場から解明しようとする試 みは,従来大部分非鉄合金を材料としてなされて きた。鉄基二元合金に関するこの種の研究は,鉄 ―炭素,鉄―窒素系の様な侵入型固溶体について 詳しく調べられていて,置換型固溶体に関して は,系統的な研究は少なく近年漸く注目されるに 至った。この観点から置換型鉄基二元合金におけ る析出機構及びそれと塑性変形との関連を格子欠 陥の立場から究明する為にこの研究を始めた。 材料としてはジョンソン・マッシー純鉄と純モ リブデンを使用し5, 7,10,12・5重量%モリ ブデンを含んだ合金を真空溶解により作製した。 写真1 Fe― 7 wt% Mo合金 800℃―15days anneal した試料中の析出物。その内部に無数のfaultが 見られる。 × 40, 000 写真2写真1中の析出物の制限視野回折図形 このインゴットを圧延により電気抵抗測定用と電 顕観察用の薄板とし,1250℃から水焼入れ後, 種々の温度で,時効処理をして,析出機構を電気 抵抗測定と透過電子顕微鏡の直接観察により調べ た。その結果によるとアルミニウム合金において 観察される様なG.P. zone形成期に対応する電気 抵抗の僅かの増加は,1250℃からの水焼入試料 では観測されなくて,又電顕観察もこれに対応し てG.P. zoneの様なものは見出されなかった。更 に時効を進めると,電気抵抗は減少し始め,電顕 像でも金属間化合物の相が析出し始めるのが観察 される。一般に電気抵抗は各時効温度において時 間と共に単調に減少し,これらの曲線より活性化 エネルギーを求めると, 鉄―7 %モリブデンに対しては 53kcal/mol 鉄―10%モリブデンに対しては 51kcal/mol の値が得られた。これはα鉄中のモリブデンの拡 散に対して得られた活性化エネルギー57kcal/ molに近い値であった。電顕像は電気抵抗変化と よく対応して,時効が進むに従って析出粒子の板 状に成長するのが観測される。過時効の状態で十 分に大きく成長した析出粒子の透過電顕像には微 細構造があらわれ,これは粒子の成長の際に生じ た多くのfaultを示している(写真1)。この時 の析出粒子の電子回析図形は多くのstreakを示 し(写真2),この状態ではその結晶構造を決定す ることは出来ないが,例えば10%モリブデン合金 を900℃で析出させた時にあらわれる大きな粒子 にはこのfaultが少く,faultのない部分の電子 回析像より構造解析をすると,平衡状態図には示 されていないFe2Mo (C14)のhexagonal構造を もったLaves相であることが確認された。この hexagonalの相を電解抽出したものを更に高温の 例えば1050℃で加熱するとrhombohedralの相 (D85)に変換することもX線解析の結果より確 認された。一方12. 5%モリブデンを1000℃で析 出させた粒子 は D85 typeのrhombohedral Strtctureをもつ事が判った。尚上記の様な析出 したLaves相に見られるfaultは,鉄―タング ステン系においても見出された。次に例えば鉄― 10%モリブデン合金を700℃で時効すると,析出 物は転位上に優先的に析出するが,この析出物の coherent歪の為に更に転位は析出物の周囲に発 生し,この転位上に新しい析出物が形成され成長 してゆく過程が繰り返され,析出が進行してゆく という事が電顕観察により確認された。尚これら の各析出状態と機械的性質との関連を究明する為 に,目下研究を継続中である。 超高圧電顕の金属学への応用 工博 藤田広志,梶原節夫,川崎要造 理博田岡忠美,理博金谷光一* 現在金属実物薄膜を電顕で観察する方法は,細 かい部分の場所的な情報とともに結晶構造に関す る情報をも併せ得られるものとして広範に利用さ れて来たが,金属内の現象は試料厚さに非常に敏 感で,従来の加速電圧100kV程度の電顕ではこれ らの現象を動的に観測することは不能または非常 に困難であった。従ってより厚い試料が観察出 来,これらの問題を解決して電顕の利用範囲を飛 *電気試験所々属,材技研兼任 躍的に拡げようとの目的で,1963年に当研究室が 発足。島津製作所との共同研究の形で500kV電顕 を軌道に乗せ,今日に到っている。 では,現在我々が使用している500kV電顕が上 述の目的にどの程度の効用があるかというと,金 属の種類によるが,よく焼鈍したAlだと約3. 5μ 厚 さ,Fe系のものだと1.2μ 程度の厚さの試料が実 用上使用出来る。従来の100kV電顕では前者は高 々1μ 得者は0.5μ以下であるから,Alの場合に は100kVの3倍以上,Fe系だと2. 5倍以上の厚い 試料が使用出来る275)ことになる。また分解能に しても20mm大孔径レンズでも6. 9Å程度の格子 像は楽に撮れ277)るし,暗視野像でも20Å前後の極 めてよい解像度を示し,制限視野も0.1μ以下迄 可能となる他,電顕中での試料汚染も数十分程度 だと全く支障がないなど,大きな利点276)を示し ている。しかも金属試料の場合には可成り厚い試 料を使用する関係上,結晶内での電子線の拡がり が解像度を左右するが,この点特に超高圧電顕は 非常に有利で,同じ厚さの試料については従来に 較べて遥かにシャープな像が得られる。また厚い 試料が使用出来る関係上,試料の作製が大幅に楽 になることも特長の一つとして特筆される。 処で電顕利用の今後の方向は,結晶内の現象を 電顕内で再現して,従来不能であったそれらの動 的観察を行なって現象の機構を明らかにすること にあるが,上述の500kV電顕で使用出来る試料厚 さでこの目的をどの程度果し得るかは最も興味あ ることである。この問題について,我々の所では 再結晶,転位の分布ならびに挙動,マルテンサイ ト変態について検べて見た275)。 まず再結晶については,70~80%冷間圧延した Al及びFe― 3 %Si{111} 〈112〉結晶で検べた結 果,0.4~1μ程度の厚さでは回復とか再結晶と 呼ばれている現象は何とか再現出来るが,bulk の現象とは可成り異なる。ところが厚さが1μ以 上となると章末写真に示した如く再結晶は勿論の こと,以後の結晶の粗大化なども全く bulkの時 と同様に電顕内で再現出来る。Alの場合には強 加工されたこの試料でも2μ 厚さ程度までは500 kVで章末真真の如く十分観察出来るから,この 程度の原子番号の金属の加熱現象には非常に有 効である。次に転位の密度観測については,108 ~109/cm2程度の転位の導入されたAlについて 検べた結果,条件によって少しく異なるが最小 0.4μ, 最高は0.8μ厚さ以上でないとbulkでの状 態を再現しない。これらの厚さは100kV電顕で観 察出来る厚さのほぼ限界であるから,従来の結果 は再吟味の必要がある。また転位の動的挙動につ いても,1.5μ 厚さ以上だと可成り忠実にbulkで の状態を再現出来るらしいので,今後この分野に おける500kV電顕の効用は非常に期待される。こ のことは更にマルテンサイト変態についても同様 で,Cu―Al合金の結果だと100kV程度で観察出 来る厚さの試料では,結晶構造までbulkの状態 と異ることがあるので,この分野での効用も大き い。 以上の如く,金属の現象の動的観察に500kV電 顕は非常に効果があり,Alの如く原子番号の若 い金属では略々完全にbulkでの現象を電顕内で 再現出来る。従って今後この方面の研究は飛躍的 に発展することが期待され,当研でも目下個々に ついて本格的な応用を試みている。 流体的計測器の金属物理測定への応用 に関する研究 山本巌,本間良之 環境条件,耐久性,取扱い易さ等の点で従来の 電子的計測法では不可能か不充分であった分野で の測定を可能にする計測法として,最近流体的計 測法が注目され開発されてきている。本研究室で は流体的計測法のこれらの特徴に注目し,これを 物理測定の諸分野への適用を試みることによっ て,測定領城の拡大をはかろうとするものであ る。 流体計測法のうち空気マイクロメータは従来か ら最も多く用いられているものであり,まずこれ を採りあげたが,従来行なわれている方式は精 度,安定度の点で不充分であり,改良を必要とす る。そこでフィードバックを使用した回路システ ムを採用してみたが,従来の回路方式で得られな かった高確度,高速度応答,低測定力のものが得 られることを確かめることができた717)。この原 理にもとづき実用的な装置を作りあげるため,フ ィードバックを使用した空気回路システムの各種 超高真空電子ビーム蒸着装置 500 kv電子顕微鏡 80%冷間圧延した厚さ1μ以上のAlの再結晶(+印は同じ結晶粒を示す) 2μ厚さのAl膜中で形成されたサブグレイン のものについてその基礎的特性を詳細に研究し, 応用の具体化をはかることにした。 まず単一回路形式の空気増幅回路に直接フィー ドバックを加えたものについて,その特性を理論 的に求め,それを実験的に証明した280)。これの 応用装置として取扱いの容易な低倍率の試料片用 厚み計(感度1mm/μ, 応答速度0.2sec)を試作 した。ついで高倍率で極めて低い測定力での測定 が可能な,軟質材料を対象とした厚み及び微小変 位測定装置を得ることを目的として研究を行なっ ている。 執筆者所属 金属物理学第1研究室長 能勢 宏, 大河内真,浅田雄司 金属物理第2研究室長 本多竜吉 池田省三,岡本昌明,田賀秀武 金属物理第3研究室長 吉田秀彦 竹内伸,八木沢孝平,山県敏博 金属物理第4研究室長 藤田広志 梶原節夫,川崎要造 物理分析室長山本巌 本間良之 金属物理研究部主任研究官武内朋之,吉川明静, 古林英一 金属化学研究部 金属化学研究部は,化学的な立場から基礎的に金属材料の一般に関して研究を行う使命をおって いる。 第一研究室では,化学反応の機構を解明するという立場から,第二研究室では表面化学的な立場 から,第三研究室および分析室においては,金属材料研究のすべての分野の研究目的に対する化学 分析法の確立に努力している。 基礎的研究部としての立場から,研究問題をとりあげる場合の考え方の基準は, 1.現実にとりあげられている本研究所の研究に基礎的な化学的知見を提供し,新しく開発され る技術の進展に寄与する資料を提供する: 2.将来取上げられると予知される研究に1の使命を能率よく適確に達成しうるよう,準備的な 研究を行いその知見を蓄積する: 3.新技術開発の萌芽となるべき性格をもつ研究を行う: という以上の三つとなっている。 以上の観点から各研究室は今日までその研究に従事してきている。これをもうすこし具体的に述 べるならば, 第一研究室においては,高純度のTiをその塩化物からNaによって還元する機構についての研 究を,基礎的な研究から中間工業試験を完了して,各過程における問題の解明を行い,工業化を行 ってもよい段階迄の研究を行った。又多原子価元素には有用金属が数多く含まれている。さし当っ てⅤ族Ⅳ族のNb, Ta, Mo等の元素をとりあげ,そのハロゲン化物の結合状態の変化,不均化反 応の正体および金属元素に還元せられる機構の解明を行い,その成果をあげ,従来不明であった固 体化学的新知見の多くをえている。 又高純度Si製造の基礎的研究を行っていたが,研究者とともにこの研究も製錬研究部に移って 良い成果をあげている。 第二研究室においては,耐熱鋼の耐熱性を基礎的に追求する見地から,不銹鋼の高温酸化機構の 研究を行った。その結果,組成元素中NiとCrが重要な役割をなしている点を確めた。その結果 さらに単純なFe, Ni, Crを主体とする系について,基礎的に高温酸化過程を研究する必要をみと め,目下この系について,酸化の開始の問題,酸化層中の各イオンの拡散の問題,第三元素添加の 影響の問題などについて,電子顕微鏡,電子回折,エレクトロンマイクロプローベアナライザー, 熱天秤��などによる実験を基礎として研究をすすめている。 第三研究室においては,化学分析の基礎的な研究を行っている。 微量不純物定量のため,有機色素を用いる方法を確立した。又金属イオンと有機色素との結合状 態の研究を行い,より鋭敏な有機色素を数々合成した。他の方法による微量不純物定量法の確立の 為,分光分析の基礎条件の追求,固体質量分析計および原子吸光光度計などを用いて研究をほりさ げている。 ガス分析に関しては,中性子照射による放射化分析法,ガス用質量分析計,同位体希釈法などで, N又はOの従来の分析法の采��当性を根本から検討している。 非金属介在物の状態分析法の確立のために,電解分離法,ヨードアルコール法の研究を行った。 又純鉄を精製し,これを用いて既知の窒化物又は酸化物含量のモデルを作成して,その定量法の基 礎研究を進めている。又非金属介在物研究グループの一員として,脱酸機構の研究を行っている。 分析室においては,日常の依頼分析から派生する分析条件の検討,および精度,能率向上のため の研究をとりあげている。ガス分析装置の検討,X線蛍光分析法で高能率高精度の高濃度合金の分 析法の検討,溶滓組成の迅速的確な定量法の確立を急いでいる。 多原子価金属塩化物の還元反応に関す る研究 工博佐伯雄造,鈴木 正,松崎〓子 松島忠久,箭内正孝,八巻信介* 多原子価金属の塩化物の還元反応の機構につい ては学術的に未知の点が多く,これの解明は特殊 な物性をもつ高純度金属の生成や高純度金属皮膜 形成などに寄与するところが大きい。そこで,こ れについて基礎的な立場より系統的に研究を進め ているが,まずニオブ,タンタルおよびモリブデ ンの塩化物の生成と性状について調べ,ついでこ れらの塩化物の還元反応について研究した。 塩化物の生成と性状塩化物の生成に関する研 究では,炭化ニオブ,炭化タンタル293), 746)なら びにモリブデンおよびその化合物300), 306)と塩素 ガスとの反応による塩化物の生成についての詳細 を明らかにしたが,とくに炭素質の存在のもとに おける三酸化モリブデンの塩素化生成物は塩素化 温度,塩素ガス流量および炭素混合比によりいち じるしい影響をうけることを指摘した。 塩化物の性状に関する研究では,オキシ三塩化 ニオブの昇華圧,分解圧,および昇華,分解に対 する⊿G°,⊿H,⊿Sなどの熱化学的諸数値672), 五塩化モリブデンの昇華圧,蒸発圧,分解圧,お よび昇華,蒸発,分解に対する熱化学的諸数値301), オキシ四塩化モリブデンの昇華圧,蒸発圧,およ び蒸発に対する熱化学的諸数値,および二オキシ 二塩化モリブデンの昇華圧,昇華に対する熱化学 的諸数値などを明らかにした。 また,この研究ではじめて存在を見出した非化 学量論的低級塩化モリブデン(MoCl3.3および MoCl2.9)のX線回折データ,化学量論的および 非化学量論的低級塩化モリブデンの不均化反応と 水素ふん囲気中での挙動を解明した。 そのほか,五塩化ニオブおよび五塩化タンタル の酸素分解296),加水分解および加水分解により 生成したニオブ,タンタルの含水五酸化物の構造 297),ニオブ,タンタルの五酸化物の熱転移298), 299)についていくつかの新しい知見を得た。 *昭和40年4月退職 塩化物の還元五塩化ニオブのナトリウムおよ びマグネシウム還元295), 749), 747)五塩化タンタル のナトリウムおよびマグネシウム還元294),747)五塩 化ニオブの水素還元200),710)五塩化モリブデンの 水素還元および八三塩化ニオブの電解還元に関す る研究を行なった。 五塩化ニオブとナトリウムとの反応は約400℃ より開始するが,塩化ナトリウムの融点800℃以 下の温度では生成したニオブ,塩化ナトリウムの 固相が融解ナトリウムの表面をおおい,その後の 五塩化ニオブとナトリウムとの接触を妨げ,反応 に必要な五塩化ニオブ,ナトリウムはこの固相を 拡散してゆかねばならないので反応は見掛け上中 止してしまう。800℃以上の温度では生成したニ オブ,塩化ナトリウムの大部分は沈降し,ナトリ ウムが反応面に現われるために反応は連続的に進 行し完結する。これに対し,五塩化ニオブとマグ ネシウムとの反応は約650℃で起こるが,塩化マ グネシウムの融点712℃以下の温度では生成した ニオブ,塩化マグネシウムの固相が融解マグネシ ウムの表面をおおい,その後の五塩化ニオブとマ グネシウムとの接触を妨げるので反応は見掛け上 中止してしまう。712℃以上の温度では反応は連 続的に進行し完結する。この場合は融解マグネシ ウム面よりもはるかに高いところまで反応管壁に そってはい上った融解マグネシウムと五塩化ニオ ブとの反応がおもなもので,ここでニオブが生成 し,しだいに反応管の中心部に向って反応が進行 し,ついにニオブのブリッジを形成し,塩化マグ ネシウムのみが沈降する。その後の反応はこのニ オブ層を通過して表面に現われるマグネシウムと 五塩化ニオブとの反応によらなければならない。 このことは,還元剤としてのマグネシウムは理論 量よりも過剰の量を用いる必要があることを示し ている。 五塩化タンタルのナトリウムおよびマグネシウ ム還元反応も五塩化ニオブのそれとほぼ同様であ る。 五塩化ニオブと水素との反応は約400℃で開始 し,400~550℃の温度では五塩化ニオブの水素還 元によってまず四塩化ニオブが生成し,この四塩 化ニオブが不均化反応を起こして八三塩化ニオブ と五塩化ニオブとを生成する。また,600℃以上 の温度では上述の八三塩化ニオブが不均化反応を 起こしてニオブ,五塩化ニオブおよび四塩化ニオ ブを生成し,この五塩化ニオブと四塩化ニオブと に水素が作用して八三塩化ニオブを生成し,この 八三塩化ニオブがまた不均化反応を起こしてニオ ブを生成することがわかった。 つぎに,五塩化モリブデンと水素との反応は約 250℃より開始し,まず五塩化モリブデンより四 塩化モリブデンが生成し,この四塩化モリブデン が不均化反応を起こしてMoCl3.3を生成し,この MoCl3.3と水素とが反応してモリブデンまで還元 される。 このように,五塩化モリブデンの水素還元反応 の機構と上述の五塩化ニオブのそれとの間にはい ちじるしい相違があり,この点はきわめて注目さ れる。 他方,八三塩化ニオブの電解還元についての研 究では,五塩化ニオブは融解アルカリ金属塩化物 に常圧のもとでは融解しないが,低級塩化ニオブ のなかで最も安定な八三塩化ニオブは塩化ナトリ ウムあるいは塩化カリウムに融解することを認め た。そこで,Nb3Cl8―NaClおよびNb3Cl8―KCl 系の状態図307), Nb3Cl8―NaCl―LiCl, Nb3Cl8―K Cl―LiCl307)ならびにNb3Cl8―NaCl―KCl―LiCl 系の液相線を求めた。つぎに,前述の三成分およ び四成分系融解塩の導電率を明らかにし,またア ルカリ金属塩化物系融解塩中の八三塩化ニオブは 濃度約4モル%以下,温度約700℃以下の範囲で 熱的に安定であることがわかった。 つぎに,KCl―LiCl(共融混合物),NaCl― KCl(等モル)およびNaCl―KCl―LiCl(モル比 2:2:1)系融解塩中のニオブと低級塩化ニオ ブとの平衡組成は八三塩化ニオブであること,お よびニオブ極の塩素補助電極に対する平衡電位な どを明らかにした308)。 さらに進んで,八三塩化ニオブの電解還元のさ いのニオブ極の分極特性を調べてニオブ生成の電 解電圧を求めた。また,八三塩化ニオブを約600° C以下の温度で電解還元したさいには拡散支配の 還元反応によってまず二塩化ニオブが生成し,こ の二塩化ニオブがさらに還元されてニオブが生成 するが,約600℃より高い温度で還元したさいに は還元過程に生成した二塩化ニオブの還元と不均 化反応によってニオブが生成することなどを明ら かにした。 金属材料の高温酸化機構に関する研究 高石博子,武井厚,池田雄二,新居悦子 理博島岡五朗*,山科俊郎** 近年厳格となりつつある金属の耐酸化への要求 にこたえるために,第二研究室では,高温酸化に 影響する諸因子を種々の観点から追求して来た。 又酸化現象を研究する方法を開発することにもつ とめてきた。 1.E.P.M. A.による高温酸化層の研究 酸化層内における金属元素の分布状況を知るこ とは,金属および合金の酸化機構を解明する重要 な手がかりとなるが,61年頃までに行われていた 測定方法は,破壊的検査であって元素濃度と測定 箇所の対応がつきにくいものであった。そこでE. P. M. A.を用いて測定することを考えたのである が,当時E.P.M. A・測定はまだ開発途上にあっ て種々の問題点を含んでいた。これらの問題を解 決し,この方法の限界を知って正確にこれを利用 し得るように努力した。鉄を各種温度で酸化させ てスケールを分析し,測定の際の問題点と測定精 度を調べた。モリブデンおよびクロムの酸化層に ついても同様の実験を行った。鉄中のシリコンが 酸化層の中でどのような分布を示すかについて実 験を行い,鉄中0.1%のシリコンが金属一酸化物 の界面で1―3%に濃縮されることを認めた。こ れはスケール剥離について一つの示唆を与えるも のである562)。更にスキャニングの応用性を検討 する為に,主としてFe―Cr合金の酸化層につい て試料移動方式スキャニングによる観察を行い, 特に分割撮影を試みてその有用性を確認すると同 時に,クロムの分布に関して種々の新しい知見を 得た560)。これらの実験と平行して,鉄,クロム, ニッケルと酸素の種々の組み合わせに対する補正 曲線を計算し,その後の測定に利用している。 2.鉄―ニッケル合金の酸化 この研究は,ステンレス鋼等における耐酸化性 に対するニッケルの役割を解明する目的で行われ * 39年11月退職.現在ブラウン大学,**38年3月退 職,現在北海道大学 ている。純鉄および純ニッケルを含むFe―Ni合 金を対象として,反応速度測定,スケールの構造 解明,初期酸化生成物の形状観察等の実験を行っ ている。反応速度はすべてのニッケル濃度にわた って2乗ないし3乗則をとり,試料表面の調整法 によっても影響をうけることがわかった。放物線 速度係数の数例を挙げると,900℃l50mmHgの 乾燥空気中において,エメリー研磨を行っただけ の試料に対するもは,30%Niで0.75×10-9, 70 %Niで0. 20×10-9, 90%Niでは0.15×10-9g2cm-4 sec-1であった。酸化物層の構造を決定するには, 前記E. P. M. A.測定と,ジャックハンマによって 採取した試料の電子回折結果を用いているが,通 常スケールは外側から,α-Fe2O3, Fe3O4, (Fe, Ni)3O4, FeO+NiO, FeO+Ni のごと く なって おり,合金のニッケル濃度,酸化条件等によりこ れら酸化物層の割合,含ニッケルスピネル中のニ ッケル比等が変ってくることがわかった。また初 期に生成する表面酸化物の主な形態はニッケル濃 度の低い合金ではoxide whisker,高ニッケル側 ではoxide plateletであって両者の生成区分は酸 化条件により多少変化する。更に,純ニッケルの 場合,酸化前における試料表面上の塑性変形層の 有無がoxide plateletの生成に影響することがわ かった527)。 3.ニッケルークロム合金の酸化 この研究は,耐熱材料の性能向上に関する研究 の一端を担うものとして出発した研究であって, これまで,市販されている種々のニクロム系耐熱 材料の耐酸化機構解明の為の実験を行って来たが (綜合研究の項参照),現在は添加元素の役割を解 明する為の実験を行っている。80Ni―20Cr合金 にベリリウムを少量添加した場合の実験結果を例 にとると,600―1000℃の範囲で5時間の酸化増 量は0.0l%Beの添加により73%, 0.l%Beの添加 により50%に減少することがわかった。1000℃ 以上では0.l%Beの方が0. 01%Beのものより酸 化増量が多いという一見逆の現象を認めたが,こ れはスケールの剥離並びにスケールの再酸化の影 響と考えられ現在詳細な実験をすすめている。 4.不銹鋼に生成する酸化膜の構造 これは,酸化反応を結晶学的立場から解明する 為に行われたものである。18Cr―8Niおよび25 Cr―20Niのオーステナイト系不銹鋼二種につい て,薄膜を300―600℃,~10-4mmHgの空気中 で酸化させたものおよび,両不銹鋼を300―400° Cの溶融塩浴(NaNO3―KNO3)中で酸化させて つくった酸化膜レプリカを用いて,透過電子顕微 鏡並びに電子回折法で観察を行った。酸化生成物 はどちらの不銹鋼においても,低圧空気中では FeCr2O4に近く,溶融塩中ではNiCr2O4に近いス ピネル型構造を有しており,何れの場合にも酸化 物結晶は下地オーステナイト結晶粒に平行に生長 していた。また,薄膜酸化試料の電子顕微鏡写真 は,オーステナイト結晶の(111)面で最も酸化し にくく,〈110〉方向が最も酸化し易いという酸化 に対する異方性のあることを示していた。これら の実験結果は,不銹鋼の耐酸化機構を知る重要な 指針となった520)。 5.溶融合金の酸化 金属や合金の溶融状態における酸化研究は,溶 融状態のものの酸化ということに学問的意義があ り,また実用的には精練又は溶解技術と深い関連 がある。この実験では横型電子回折装置に小型電 気炉を組み込んで,溶融状態の合金表面の電子回 折像を観察した。その結果,(1)Al―Mg系におい ては,Mg含量が0.1%以下の時は酸化時間の長 短によらずMgOとγ―Al2O3 (またはMg2Al4)が 生じ,それ以上の濃度では酸化初期にMgOが時 間の経過とともにγ―Al2O3 (またはMgAl2O4)が ・ MgO共存するようになる。(2) Al―Be系では Be含量が0. 02 %以下のときγ―Al2O3, 0. 05%前 後の時γ―Al2O3とBeO, 0.1%以上ではBeOのみ が生ずる。(3)Cu―Al系では,0.001%Alという 低濃度でもγ―Al2O3を生じ主成分Cuの酸化物は 認められない。 6.銅―ニッケル合金の高温酸化に及ぼす酸化 皮膜の焼なまし効果 酸化膜の状態がその後の酸化反応にどういう影 響を与えるかをしらべた。68―100%のCuを含 むCu―Ni合金を800℃で一定時間酸化させた 後,真空中で焼なましを行ない。再び酸化させる という実験を行った。この結果,真空焼なましを 行うと,その後の酸化速度は初期においては著し く大きくなるが,直ちに減少し,焼なまし前の値 よりも低い値を示す様になることを知った。 この傾向はニッケル濃度の高いもの程顕著であ る。また焼なましにおいてはCuOがCu2Oへ還元 されること,酸化膜中のNiOが焼なまし効果にお いて重要な役割を果していることなどを推論し た。120) 高純度金属の徴量元素の定量法の研究 理博須藤恵美子,工博川瀬晃,高橋務, 大河内春乃,小原祥子,斎藤守正 高純度金属中の微量元素の定量法として考えら れる方法は大きくわけて有機試薬による吸光光度 法と機器による分析法である。前者に於ては定量 に適する有機試薬の開発の研究を行うことが必要 である。又最近の様に電子工業方面の半導体およ び原子炉材料では超微量元素の定量又は金属の精 製過程を知る為に極くわずかの試料で分析を行わ なければならぬ様な場合がある。この場合従来の 湿式法では解決出来ず,種々の分析機器を用いて 分析を行わなければならぬ。 有機試薬による定量法の研究では当研究所で製 造された高純度クロム中の微量不純物の定量を行 う為,リン29)についてはモリブデン青法,鉄10)に ついてはバソフェナントロリン法,銅128)につい てはジエチルジチオカルバミン酸亜鉛―四塩化炭 素,アルミニウム539)についてはオキシネートと して,ニッケル556)については1―(2―チアゾリ ルアゾ)―2―ナフトールによる方法を研究し, そのさいの分離法を種々検討し定量法を確立し た。イオウ53)については溶解酸の検討を行い満足 な結果を得た。更に高純度テルル中の銅534)をバ トクプロインにて,ニッケル197)をPANを用い, その定量法を確立した。 これ等定量法の確立には分離法の研究が重要な 役割をはたす,更に好適な有機試薬をみつける為 に,従来から用いられている分析用有機試薬につ いてその誘導体を各種合成,精製し,これ等試薬 と金属との反応についてその結合の位置,結合状 態等につき種々研究を行った。即ち0― (2―チ アゾリルアゾ)―1―フェノール誘導体537)又は 4― (2―チアゾリルアゾ)―1―ナフトール類 似化合物誘導体553)の研究である。その結果前者は 銅538),ニッケル550),コバルト(Ⅱ )551),コバルト (Ⅲ)552)の定量に後者はパラヂウム554)の定量に用 いられることをみつけた。 機器分折においてはポーラログラフ法により高 純度クロム中のスズの定量,高純度テルル中の鉛 540)の定量,鉄鋼中のマンガンを鉄を分離するこ となしにトリエタノールアミンー水酸化カリウム 支持電解質でポーラログラフ法により0.001%ま で定量可能とし,同様に鉄鋼中のスズの定量536) についてはEDTA―Be(OH)2法による分離のさ いアイソトープを使用し,分離法の検討を行い, 分離後ポーラログラフ法により定量する方法を確 立した。 又炎光分光光度計を用い有機溶剤抽出分離法と 組合せ従来よりも数十倍の感度をたかめ得ること を明らかにした34)35)36)43)44)。 この方法を用いる と従来の発光分光分析法によらなくとも簡単に炎 光分光法で定量可能となるものもある。 又原子吸光光度計を用い多くの微量元素を感度 よく定量出来ることを確め,なかでも鋳鉄中の微 量マグネシウムの定量として0. 01ppmまで定量 可能とした。 又,発光分光器を用いる発光分光分析において は,溶液法の精度および感度を改善するため回転 電極法の精度に及ぼす原因について検討し63),回 転プラットホーム法に銅スパーク法を応用し,感 度の向上をはかった。またアーク法の精度改善の 面から,珪素工業製品の原材料となる金属珪素に ついて,分光分析用緩衝剤の効果の面からX線回 折分析を併用して検討を行い,現場分折としての この方法の応用性について研究した137)。 1963年に当所にカントバックが購入されたのを 機に,鉄鋼の分析について,その電極の消耗現象 から検討をすすめ,特に分析に使用される対電極 材料を検討し,銀電極が従来使用されていたが, 一定方向電流の放電の場合他の金属対電極でも充 分分析が可能であるという結論を得た138)。この 研究で明らかになった電極消耗量の問題をさらに 進め,スパーク放電による電極の消耗現象につい ての研究を行った。この消耗現象が明らかとなる に従って,従来分光分析において問題とされてい た雰囲気効果およびマトリックス効果を明らかに 出来るのではないかという推論によったわけであ る。アルゴン気流中では電極消耗量が電極間で消 費される電気量に比例していることが明らかとな り194),この関係は窒素中,酸素中でもやはり成 立することが明らかとなった229)。この研究で雰 囲気効果といわれているものが或る程度の消耗現 象で説明出来ることもわかった。不活性ガス中で の電極の消耗はVapour jetによるものであり, その量はソ連のLibinの理論で説明出来る。目下 スパーク放電における鉄鋼の消耗量について研究 中である。 さきにものべた様に,ppm からppbオーダー の超微量元素の定量に最も適した精鋭な機器とし て登上したのはスパーク型質量分析器で,これが 本研に設置されるにおよび,本装置による高純度 金属中の微量元素の定量法の研究を行った。先ず 高純度鉄中の微量不純物の定量を行った。しかし この定量法による時は発光分光分析法と比較しマ トリックスの影響がないとされているが,理論ど うりすべての元素が同じ確立でイオン化されるこ とが無いので,NBSの試料をはじめ種々の標準 試料につき基礎的なことを研究している。又測定 法の難点として,固体質量分析器で定量する場合, そのスペクトル線を乾板に記録しこれをマイクロ フォトメーターで測定するので,そのさいのシュ ーマン乳剤の特性について検討を行った777)。こ の結果写真感光機構に真空と云う条件が大きな影 響をあたえることを明らかにした。これ等の研究 は39年,40年,金属学会,日本化学会,日本分析 化学会,スペクトロメトリー討論会に発表した。 以上の基礎実験と共に,高純度金属中の微量不純 物の定量も行った。 金属中のガス成分の研究も重要な研究で,窒素 の定量については蒸溜法と吸光光度法を組み合せ 微量窒素の定量法を検討した。酸素についてはチ タン中の酸素の定量法について研究し,つづいて 非常に問題となっているフェロシリコン中の酸素 の定量について研究した。その結果放射化分析法 と比較的よい一致を示し,従来発表されている真 空溶融法は実際よりずっと低値を示すことを明ら かにし,40年日本分析学会で発表した。更にこの 場合質量分析計を併用し金属溶融のさいのガス抽 出の状態を検討している。 尚一般に真空溶融法における低値を示す原因と なる吸着の問題を検討するため,同位元素(18O 15N)等を用い質量分析計により研究を行ってい る。 又合金の中にある元素を入れることにより金属 の特性を増すことが知られているが,その含有量 が問題となる。蒸発しやすい金属においては特に 添加元素の定量は非常にむづかしく,例へばマグ ネシウムーアルミニウム合金中にベリリウムを添 加したさいのベリリウムの定量法についてイオン 交換樹脂分離アセチルアセトン法により0.001% までのベリリウムの定量238)を可能とした。又最 近銀ロウにLiを入れることにより銀ロウのぬれ がよくなり,その利用価値がみとめられLi入り 銀ロウの製造法の研究が本研究所でなされた。そ の場合のLiの含量が問題となり,その定量法の 研究を行い,電解で主成分を分離し,トリンを用 いての吸光光度法による分析法を確立し,良好な 結果を得,この方面に大いに貢献した。 介在物の状態分析に関する研究 理博須藤恵美子,福田 豊 鋼の諸性質におよぼす介在物の影響は古くから 問題にされている。介在物の判定ならびに定量は 製鋼技術の上からも重要な問題である。最近では 電子顕微鏡,X線プローベマイクロアナライザー 等の発達により介在物の研究は著しく進歩した。 しかし介在物の定量,あるいは介在物を地鉄から 分離してその化学的性質を検討するような目的に は,化学的抽出分離法は依然として重要な研究手 段である。当研究室においてはおもに窒化物に主 眼をおき電解分離法,ヨードアルコール法等によ る窒化物の抽出および定量法の検討をおこなって いる。一般に鋼中の窒化物定量にはブロムエステ ル法が適用されているが,珪素鋼のように珪素含 有量の多い試料では分折操作を繁雑にするので, 電解抽出後塩素化処理法による珪素鋼中の窒化珪 素定量法549)を検討し,満足すべき結果を得た。電 解液の組成を 5 %Na―Citrate+ 1.2% KBr+0. 6 %KIとして電解抽出し,後塩素化温度100~200° C,昇華温度900℃で処理した。処理後の残査中 の窒化珪素は苛性ソーダ溶融蒸溜法を用いて定量 した。その結果ブロムエステル法に比較して分折 値のバラツキも少く良結果を得た。本定量法の場 合,窒化アルミニウムが妨害をすると考へられる が,珪素鋼中に含有されているアルミニウム程度 では妨害しない。電解抽出残査を塩素化処理し, さらに塩酸(6N)で処理したところ,窒化珪素 以外の窒化物はその存在が電子顕微鏡では確認出 来なかった。各種窒化物を系統的に化学的見地か ら検討する場合,地鉄の純度が状態分析の精度に およぼす影響が,すこぶる大であるため,まず市 販電解鉄を原料とした化学的方法による純鉄精製 法の検討をおこなった。精製方法の概略は次のよ うである。 原料電解鉄 塩素化 塩化第2鉄 酸化 酸化第2鉄 水素還元 純鉄 焼結 帯域溶解 精製純鉄の純度は金属不純物数ppm程度になる が,ガス成分のうち酸素,炭素は普通の水素ガス 気流中での還元ではあまり除去出来なかった。し かし帯域溶解することによりこれらを10ppm以 下にすることが出来たので,充分状態分析用とし て使用できる見透しがついた。今後精製純鉄を用 いて各種窒化物の抽出及び定量法の確立をこころ みる。 金属材料の放射化分析法の研究 千葉実 分析に放射化学的な種々の方法が用いられる が,特に放射化分析法はその感度が他の方法に比 して著しくすぐれており,元素によっては非破壊 分析も可能であるので重要であり,研究も多い。 既に高純度金属珪素中の不純物の定量について は原子炉を用いてその定量を行った。この場合照 射条件,冷却時間等から測定に最も好適な元素は 銅であり,64Cuの消滅γ―線を非破壊的に測定し 定量した。 原子炉を利用することは,その高密度中性子線 束,長時間の照射が可能である等多くの利点があ るが,又欠点もある。特に金属中の不純物として 問題の多い酸素は原子炉を用いての放射化分析で は困難である。近年分析装置として開発されてい る高速中性子発生装置を用いれば酸素の放射化分 析が可能である。当研究室では昭和39年度原子力 予算で実験棟およびこの装置を建設設置し,主と して各種金属中の酸素定量法の研究を行い,併せ て他の元素について定量法研究も行っている。 高速中性子発生装置は放射化分析に至便である 様に,試料気送装置,照射時間計,冷却時間計お よび高速中性子束安定装置の特別の付属装置を有 している。高速中性子発生の原理は次の如くであ る。 発生する高速中性子のエネルギーは約14MeV であって原子炉中性子と異り(n,α),(n, p),お よび(n, 2 n)反応が主核反応である(実験棟につ いては別項参照)。 比較的酸素含量の大きいと考えられる試料であ るフェロシリコン中の酸素を真空溶融法と併せて 検討を行った。試料は粉砕し,分光分析用グラフ ァイト粉末と混合し,圧縮成型して分析試料とし た。高速中性子で照射し16Oより次の様な核反応 で生成する16Nを測定し,酸素を定量した。 16Nは短寿命で,特徴あるγ―線を発生するの で非破壊分析が可能である。この結果既に発表さ れている真空溶融法による値は実際よりずっと低 値で,当研究室で検討改良した真空溶融法での値 は放射化分析の値と比較的よく 一致することを確 めた(千葉,井上放射化学討論会昭和40年10 月)。 更にチタン合金,銅合金,ベリリウム等につい ても検討を行った。 高濃度組成合金の分析精度向上に関す る研究 俣野宣久,藤原純,大野勝美,井上義夫, 松島志延 当所ではニッケル基合金,クロム基合金,その 他種々の合金およびステンレス鋼,耐熱鋼のよう な高濃度組成の合金鋼が研究の対象となってお り,また鋼滓の全分析が要求されている。この点 に基づき昭和37年度よりこれ等のものを対象とす る分析方法の検討をはじめた。 先ず最も有力な分析機器として蛍光X線分析装 置を購入し,これに伴なう標準試料の整備および 標準化学分析値を得るに必要な化学分析方法の検 質量分析器 中性子発生装置 バッチ型回転炉 金属化合物ガス還元装置 討を行なうこととした。また金属中のガス分析に おいて酸化物系の分析の必要性からアルゴン送気 溶融抽出法の適用を試みることとした。 化学分析法においてはニッケル基合金における 炭素の非金属発熱体炉燃焼電気伝導度法,チタン のチロン吸光光度法,イオウの硫酸塩還元モリブ デン青吸光光度法,ニッケルの電解定量法につい て検討した。クロム基合金についてはチタンの過 酸化水素吸光光度法および鉄の還元容量法におけ るニオブ,モリブデンの妨害除去法,ニオブ分析 におけるモリブデンの妨害除去法について検討を 行ない分析法を確立し,これ等高合金における標 準分析値の検定に用い得るようにした。 ガス分析法においては,アルゴン送気溶融抽出 法としてアメリカ国レコー社の電気伝導度法によ る酸素分析器を用いる実験をはじめたが,発生二 酸化炭素の吸収液としての水酸化バリウムの使用 は吸収効率が悪いため水酸化ナトリウムの使用に 改ため,更に実験を継続したが,吸収液の温度の 影響が大きく,また多量に使用する必要があるこ と,および記録方式でないため白試験値の補正が 困難なこと等により,ドイツ国ヴェストホフ社の 電気伝導度比較記録方式の炭素分析用のものに切 替え実験を行った。本装置を用いてアルゴンの精 製法,黒鉛坩堝および粉末の材質の選択,白試験 値を下げるための分析回路の改良などを行なっ た。その他種々検討の結果,試料1g採取したと き酸素として50~240ppmの分析が可能で誤差1 %以内となし得た。この時の室温の変化に伴なう 吸収液の温度変化の差は意外に大きく,吸収液の 温度24~34℃の時,1℃の変化で0.4%の誤差を 生じ,本装置のように原吸収液との対比法を用い た装置でも室温の変化に注意する必要があること を認めた。 蛍光X線分析法についてはオランダ国フィリッ プス社の全自動式蛍光X線分光分析装置(PW12 10形)を設置し,先ずNb―Ta―Zr合金について 分析を行なった。この試料は大きな塊状試料が得 られないため内部標準法を用いるブリケッティン グ法を採ることとし,種々な融剤を検討しピロ硫 酸カリウムによった。X線管球はMo, Wは特性 線のコンプトン散乱の重複,Crは特性線が長波 長側にあるため不適当で,金管球を使用した。 Taの内部標準としてHf, WのうちWが良かっ た。試料と加えた内部標準は均一に混合され,特 性X線強度比をとることにより吸収励起効果(Nb によるZr, Taの励起効果,元素相互間の吸収効 果等)は実用上無視出来ることを確かめた。この 結果からITaLa/IWLα1でTaの検量線,IZrKα/INbKα を用いてZr/Nbの検量線を作成し良好な結果を 得た(日本分析化学会第13年会に発表)。また装 置に起因する誤差要因を調べた結果,室温,冷却 水温および検出器の印加電圧が主な誤差要因であ り,これを取り除いた結果装置のドリフト(日間 変動)は0.4%となり,分析方法に対比法を用い ることにより湿式化学分析と同程度の精度で分析 出来ることが分った(日本分析化学会投稿中)。 ついで高合金鋼の分析における励起条件について 耐熱鋼,ステンレス鋼,工具鋼の中から無差別に 抽出してMo, W, Cr, Si, Nb, Ni, Mnについ て調べた。X線管球電圧については対陰極物質の 種類に関係なく 50kVが適当であった。対陰極物 質の異なるX線管球を使用しても濃度―X線勾配 が変るだけでマトリックス効果(回帰線からの誤 差分散)に有意差は認められなかった。励起効果 は,吸収効果に比し小さく無視出来る程度であっ た。これ等の実験結果から補正式を作り分析を行 ない良好な結果が得られた(日本分析化学会投稿 中)。 執筆者所属 金属化学研究部長柳原正 金属化学第1研究室長 佐伯雄造 松崎〓子,松島忠久,箭内正孝 金属化学第2研究室長高石博子 武井厚,池田雄二,新居悦子 金属化学第3研究室長 須藤恵美子 高橋務,福田豊,大河内春乃,小原祥子 斎藤守正 化学分析室長俣野宣久 藤原純,大野勝美,井上義夫,松島志延 金属化学研究部主任研究官川瀬晃,鈴木正, 千葉実 製錬研究部 本研究所の設立の基本は,金属の生れから製品に至るものまでの,一貫した生産過程についての 基礎および応用にわたる,総合的研究の場としての役割を果たすところにある。 製錬研究部は,金属の特性を考慮し,内外の資源にそうて,鉱石から金属を製錬する諸工程を研 究し,新しい理論や現象,およびその応用技術を開発する目的をもって設けられた。 この部は鉄製錬研究部門と,非鉄製錬研究部門の二つから成り立つ。前者は,製銑,製鋼を含め て,5年から10年先をめざした新しい製錬方法の開発,および現在の製錬技術の改良進歩をめざす 研究を行なっている。 製鉄原料研究室では,将来の粉鉱増加に対してその粉体の物理化学的性状およびペレタイジング 法の研究,含クロームニッケル鉄鉱石開発利用に関する研究を実施しつつある。製鉄研究室では, 特殊回転炉を利用して,鉄鉱石およびダストペレットの還元,流動炉による粉鉱石還元及び迅速製 鉄法の基礎研究を行いつつある。製鋼研究室では,新しい形式の酸素製鋼転炉を考案設置し,この 炉の製錬技術の確立をめざし,従来困難とされて来た特殊銑鉄の吹製及び特殊の鋼の製錬を検討し ている。また,上記の転炉反応の基礎として,溶鉄成分の酸化速度の研究を進めている一方,減圧 製鋼法の基礎研究として,減圧下における炭素と酸素との反応の動力学的性状を測定中である。 後者に属する非鉄分野では,従来非鉄金属製錬の方法として取り扱われている粉砕,ばい焼,浸 出,還元,精製などの諸工程を,乾式および湿式製錬の立場から研究し,よりすぐれた金属をうる 事を目的としている。乾式製錬研究室では,従来電子工業の重要な材料である高純度Siの研究と して,精留精製したSiI4 SiHCl3の水素還元法によって高純度Siを得,所期の成果を収める事が出 来た。次に含アルミナ鉱石からの粗アルミ合金の製造と,サブハライド法によるAlの抽出に関す る研究が行われつつある。これは,今までの溶融塩電解法に対し,新しいアルミニウム製錬方法の 確立をめざして行われたものである。 また当研究室では,酸化還元の過程が加圧下(30気圧迄)で酸化鉱石,硫化鉱石で如何なる反応 を示すかを,鉱石の固体から融体の状態にわたって,平衝及び速度論的に検討しつつある。さらに 人工的に種々なる鉱石を製造し,その性質から新たに製錬技術を検討することも考えられている。 湿式製錬研究室では,国産鉄資源である硫酸焼鉱中の脱銅,脱ピの研究と,含有有価金属として の金,銀の回収の研究を行いつつある。特にこれらの金属については含有量が低いので,R Iを利 用した研究を計画中である。 研究室間の横の緊密な連絡研究の実例として,上記の湿式製錬研究室で有害金属を除き,製鉄原 料研究室ではこの硫酸焼鉱の特殊なペレタイズ法の研究を行い,つぎに製鉄研究室の特殊回転炉 で,このペレットの還元研究を実施する計画である。 全般的に見て,非常に基礎的と思われる研究としては溶鉄の水素溶解度の研究,液体や固体鉄合 金の物理化学的研究,溶融塩を利用する製錬反応に関する研究等があげられ,前述した諸研究の土 台になるべき研究と考えられる。 最後に我が国の金属資源は,しだいに低品位鉱を開発せざるをえない状態に追い込まれつつある 一方,外国鉱石の輸入も次第に増加して鉱石の種類も多種になり,従って各々の鉱石に相応した処 理法が鋭意検討されねばならない。 製錬研究部は,これら諸金属の経済的開発のために,その基礎とともに工業化研究になお一層の 拡充が望まれる所である。 ペレットの製造に関する研究 (その1)還元ペレットの製造に関する 研究309) 工博大場章,神谷昻司 還元ぺレットは普通ペレットに比較し,高炉に おける出銳量の増大,コークス比の減少等大きな 利点があるにも拘わらず,その研究は比較的近年 になり行われ,その成果が注目されている現状で ある。我国においてはこの方面の研究発表はいま だ少なく,今後ますます重要な問題となることが 予想される。 まず,固体還元剤としてコークスを選び,イン ド産へマタイト系鉄鉱石粉とでペレットを作り, 次に示すような結果を得た。 (1)コークス添加量として,適性添加量が存在 し,理論量附近で還元率(金属化率)が最高とな り,また焼成後のペレット強度も高いことが知れ た。 (2)還元条件としては1,200℃, 30min保持 で,金属化率85%以上の還元ペレットが得られ る。 (3) 還元雰囲気をN2, A, CO2,空気気流と変化 して焼成した結果,N2 200ml/min程度のもの が,焼成後のペレット強度も高く,金属化率も良 好である。 (4)還元雰囲気をCO2気流で行なうと,脱硫さ れる可能性があることが明らかとなった。 (その2)鉄鉱石の熱間性状に関する研究 工博大場章,石塚隆一,理博柳橋哲夫 ある種の鉄鉱石は熱割れによる粉化現象を起し て,高炉作業を困難にすることが報告されてい る。その原因究明ならびに対策については未だ不 十分であると思われるので,主に針鉄鉱を含む鉱 石を対象として,加熱過程における結晶水および 付加水の推移と結晶構造学的変化にともなう熱割 れとの関連性について,とくに加熱実験,熱分 析,赤外分光分析,核磁気共鳴吸収等により総合 的に検討を行なっている。 回転炉による鉄鉱石,ペレットの還元 に関する研究 工博 田中稔,尾沢正也,下崎雅彦 製鉄原料としての還元鉄の使用は高炉操業にお いて高価な良質コークスの消費量の低下,出銑量 の増大に有効である。また製鋼原料としての還元 鉄の使用は一定品質のものを安定して供給できる 点がスクラップを使用する場合と比較して有利と 考えられる。これらの還元鉄の製造法は多くある が大別して回転炉法,流動炉法,シャフト炉法に 大別される。回転炉法は安価な固体還元剤を使用 して加熱,ガス化,還元反応を同一炉内で行い得 るため有利であるが炉内温度制御,リングの生 成,ソリューション・ロスによる還元剤の損失, など欠点がある。これらの欠点を改良した方法と してR―N法,S ―L法,Electrokemisk法など がある。しかし回転炉還元において還元速度にお よぼす諸要因,すなわち鉱石,ペレットと還元剤 の混合比,装入原料の深さ,炉内雰囲気,還元時 間,還元温度,回転数などの影響について明らか でない点が多い。これらの諸点を明らかにするた め写真に示すバッチ式回転炉を用いて工業炉に近 似した条件で実験を行なった。印度鉱石から製鋼 用原料を製造することを目的として実験した結果 大要次の如くであった。 回転炉における鉱石,コークスの混合度の変化 は,回転軸の近くに鉱石が多くなる傾向が著しく この変化は60回転以内においておこり以後時間の 経過と共に変化しないこと,また1100℃還元に おいて装入物深さは250mm以下になると雰囲気 の影響をうけて還元速度が低下する。また反応速 度定数Kとcoke/oreの間にK∝ (coke/ore)1.2な る関係があること,回転数0.75~3.0r.p.m.にお いては反応速度は変化しないことなどが明らかと なった。また還元鉄を磁選した結果,製鋼原料と して適正なものがえられた。還元鉄の再酸化につ いて検討し低温の酸化速度が高温のそれより大で あるのは低温酸化は界面反応が律速であり,高温 酸化は酸素の拡散が律速であることが明らかとな った。 今後は転炉ダスト,硫酸滓などから製造したペ レットの回転炉還元による高炉用原料の製造につ いて研究して行く方針である。本研究の問題点は 回転炉における適正な還元条件を得ること,回転 炉内における熱ショック,転がり摩耗,衝撃によ る粉化,還元過程における粉化である。また脱硫 の問題も重要である。 これらの問題について検討し対策を考えて行く 方針である。 粉鉄鉱石の還元に関する研究 尾沢正也,下崎雅彦,工博 田中 稔 流動還元法は粉鉱石の還元に適したすぐれた方 法であるが欠点もある。その一つは流動還元中に おこる焼結現象である。また粉鉱石が次第に細か くなると流動性は悪化し固体一気体の接触が悪く なることと同時に供給ガス量が不足して処理能力 が急激に低下するなどの欠点を有している。 焼結現象がおこると操業不可能となるので多く の対策が考えられているが,有効でなかったり, 装置が複雑になるなどの問題があった。ここにお いて我々は撹拌装置を使用することによって,焼 結しやすい硫酸滓の20~250 メッシの粒度分布を 有するものを還元率95%以上まで安全に流動還元 することができた。次に鉱粒とガスとの接触効率 の向上に関しては流動性に密接な関係があり現在 まで重視されなかったので,この流動性と反応速 度との関係について研究している。また微粉鉱の 流動還元における処理能力の低下については輸送 層による還元によって処理量増大をはかるべく研 究中である。 含クローム・ニッケル鉄鉱石の脱クロ ームおよび脱ニッケルの研究 工博郡司好喜,石塚隆一,工博大場章, 日下部慧* 日本の鉄鋼業は,鉄鉱石は勿論石炭までその大 部分を輸入によってまかなっている。従ってその 経済性が原料供給先の事情に左右されることは当 然と言わねばならない。現在は純度の良い赤鉄鉱 *東京理科大学研究生 図8 各種鉱石の還元による粒鉄の脱クローム率 と還元温度の関係 を割合容易に入手しているが,将来もこの状態が 続くとは限らない。一方東南アジア地方には,Fe 40~55%, Ni 0. 5~1.5%, Cr1.5~3. 0%, Al2O3 5~10%の含クローム・ニッケル鉄鉱が多量に埋 蔵され,その利用開発は長年に亘って注目されて 来たものである。この研究は,この鉱石を製鉄原 料とする際の最大の障害であるCrおよびNiを 経済的に除去するために行ったものである。 先ずこの鉱石から粒鉄を造り,製鋼原料として 供給する際のCrの除去について2 , 3の影響因 子を検討した。Fe, Ni, CrおよびAl2O3含有量 の異なる L―I 鉱(Indonesia), L―N鉱(New Caledonia産)および L ― S 鉱(Surigao産)の 15gにコークス6gと造滓剤を加え,黒鉛坩堝中 にて1280~1350℃に約2時間まで還元した。生 成した粒鉄を電磁石により選別し,粒鉄の生成率, Cr除去率および粒鉄の品位などを測定した。 以上の実験によって次のような結果を得た。(1) 粒鉄の生成は塩基度0.3附近が最適であるが,そ の生成率は鉱石によって異なる。その原因は融点 が高くしかも表面張力の大きいAl2O3が多いと鉱 滓の融着が起り難く,又融鉄粒の接触も妨げられ るので粒鉄の生成が困難になることにあると考え られる。Cr酸化物の存在も粒鉄の生成を妨げる ようである。Na2Oのような低融点で表面張力の 小さな酸化物を添加すると粒鉄の生成は非常に促 進される。(2)Crの還元は図8に示すように鉱石 図9 焙焼時間とFeおよびNiの塩化揮発率の関 係(D :乾燥鉱,R :焙焼鉱,Re :部分還元 鉱) によって相当異なるが,その原因の一つはCrの 結合状態にあるようである。還元され易いCr酸 化物は表面積の大きな粒鉄によって非常に速く還 元されるが,還元され難いCr酸化物はほとんど 還元されないで鉱滓中に残る。(3)Siは表面積の大 きな粒鉄によって速やかに還元されるが,表面張 力の小さな鉱滓の場合にはさらに促進される151)。 Cl2ガスとO2ガスの適当な混合ガスで塩化すれ ば,Fe酸化物は塩化されず,Ni酸化物のみが選 択的に塩化揮発するという反応を利用し,この鉱 石のニッケル除去を試みた。前述のL―I鉱,L ―N鉱の他にL―G鉱(国内産)の3 gをボート に入れ,Cl2 40%以下のO2―Cl2混合ガスと1050° Cまでの温度で適当な時間反応せしめた。 図9に示すように,10~15%のCl2を含むO2― Cl2混合ガスにより,1000℃前後の温度でNiの 90%以上を除去することが容易である反面,Feの 5~15%の塩化揮発することが明らかになった。 Niの塩化揮発速度に影響する因子として,(1)鉱 石中のNiの結合状態に基く反応界面へのNi原 子の移動速度の差,(2)反応界面積に関係する鉱石 粒子の大きさと形状,(3)温度およびCl2分圧に関 係したCl2とNiの親和力が考えられる。(1)と(2) は鉱石の種類に大きく支配されるものであり, SiO2を多く含むような鉱石では非常に塩化し難 いことが認められた。又この性質を利用し,鉱石 を適当に予備処理すればの塩化揮発速度を増加す ることが出来る。鉱石中のFeは熱力学的に見て 塩化されないFe2O3が大部分であるにもかかわら ず相当量の塩化揮発が起ったが,これは何らかの 理由によってFe+++がFe++に還元され酸化揮発 するものと推定される。そして適当な予備処理に より,酸化物の形態を変化すれば多少塩化揮発を 少なくすることが出来る190)。 現在,2~4kg/hrの流動焙焼炉を用い上述の 基礎データに従った塩化焙焼試験を実施しつつあ る。 熔鉄の水素の溶解度の研究 工博郡司好喜,工博的場幸雄*,小野清雄, 青木愿樹 鉄鋼の機械的性質に及ぼす水素の効果は,一般 に有害に作用することが知られている。普通,水 素は,鉄鋼の精錬過程において,鉄鋼中に吸収さ れることが多いために,その過程で幾多の水素低 減化処理が試みられている。それ故に,その基礎 資料として熔鉄の水素の溶解度を知ることは非常 に重要なことであるが,これに就いての測定研究 は,測定技術が難しいために極めて少なく,ガス 分析試料直接採取法と熱容積法によって若干の測 定が報告されているにすぎない。本研究室では, 従来の熱容積法の問題点を改良して,熔融純鉄の 水素の溶解度の測定を行なうと共にそれに及ぼす 添加元素の影響に就いて研究した。 熱容積法の測定原理は,水素を吸収させる試料 を反応管内で予め水素還元及び真空処理して不純 物を完全に除いた後に,所定温度において一定量 の水素を金属と平衡させ,その温度での反応管内 の死空間の容積(熱容積)と平衡させた水素量と の差から溶解度を求めるものである。本研究で は,水素と反応性を有しない試料熔解用坩堝の選 定を行うと共に,反応管の形状やその冷却状態の 相異及び熱容積測定用の熔鉄に吸収されない標準 ガスの種類の相異によって測定値が異なることを 明らかにし,測定誤差の少ない反応と管標準ガス *現在,富士製鉄株式会社中央研究所長 を選定し,試料の真空処理時の試料の蒸発損失を 出来るだけ少なくするなどの改良を行い,水素の 溶解度測定法として,次の様な方式を確立した。 即ち,全壁を完全に一定温度に水冷した極端に内 容積を小さくした石英反応管(内容積約56.5cc) 内においたトリア坦堝(内容積約5cc)内で約 30gの試料を熔解し,純化水素を反応管内に導 入し,十分な時間1700℃に保持した後に,試料 の凝固点直下に温度を低下し,生じた水分と残存 水素を40~60分真空引きによって除去する。次に 水素に物理的性質が最も類似しているヘリウムを 標準ガスとして所定温度における熱容積を求めた 後,同一手順で再び純化水素による不純物の還元 除去を行った後に,最終的に一定量の水素を反応 管内に送って所定温度での溶解度を測定した。 その結果1気圧の水素と平衡する熔融純鉄の水 素の溶解度は1550~1650℃の温度領域で, と表されることがわかった。即ち1550°,1600°, 1650℃の値は,次の様になる。 溶解度 1550℃ 1600℃ 1650℃ wt%H 2.36×10—3 2. 50×10-3 2. 64 × 10-3 ccH2/100gFe 26.2 27.8 29.3 又各種鉄合金に就いて同様に水素の溶解度を測 定した結果,熔融純鉄の水素の溶解度を,Cr, V, Niは,増大させ,W, Moは,減少させる作用を 有していることがわかった。またCoは,約20wt %での添加では,殆んど純鉄の溶解度に影響を与 えないがそれ以上の添加では溶解度を減ずること がわかった。また,熔融純鉄中の水素の活量にお よぼす添加元素(M)の相互作用係数 (ƒHM) と添 加元素量の関係は,図10に示される様な結果が得 られた。これより熔融純鉄の水素の熔解度に及ぼ す添加元素の影響を端的に示す相互作用助係数e HM(=∂ logƒHM/∂〔%H〕)は,1550~1650℃の温 度範囲で,e HCr= -0.0022(Cr>7.5%), e HV=- 0. 0074(V >20%), e HW=+ 0. 00096 (W< 10%), e HMo=+0.0029(Mo< 10%), e HNi=-0.0020 (Ni <20%), eHCo=( + )0. 0000なる値がそれぞれ得 られた。即ち,Vの熔融純鉄の水素の溶解度の増 加度は,Cr, Niのそれの約3倍でありMoの溶 図10熔鉄中の水素の活量係数におよぼす添加元 素の影響 1550~1650℃ 解度の減少度は,Wの約1/3であることがわかっ た。 真空溶解の基礎的研究 工博郡司好喜,片瀬嘉郎,青木愿樹, 秋田光政* 最近減圧下における製鋼技術が急速に進歩し, 誘導炉またはアーク炉による高級鋼の製造,鋳造 前の脱ガス処理や真空鋳造法など多くの成果が得 られている。この研究はこれら真空技術の合理化 又は新技術開発のために必要な基礎反応を解明す るために行っているものである。 水素ガスにて充分脱酸した純鉄および各種の鉄 合金約600gをマグネシヤ,アルミナおよびジル コニヤ坩堝中に溶解し,温度1550~1650。C,圧 力1×10-3~5 ×10-4mmHgの下で数時間保持 し,任意の時間に試料を採取して反応過程を解析 した。 化学成分および物理的性状の異なる6種類の坩 堝を用いて行なった純鉄と坩堝材の相互反応から 次のような結果を得ることが出来た。1600℃の 平衡酸素圧がPo2= 3 ×10-7atmにも達するマグ *特殊製鋼株式会社 図11減圧下における溶融鉄合金中 の酸素の増加速度(1600℃,1×10-3mmHg) ネシヤ坩堝中で鉄を溶融すると,MgOの分解に よって溶鉄中のOが急速に増加して行くが,その 増加速度は温度上昇とともに若干高くなる。しか しアルミナ坩堝と溶鉄の反応は多少複雑である。 Al2O3の分解圧はMgOのそれに比し相当低いの で,一般にはAl2O3の分解について注意が払われ ていない。しかし実験の結果から,全く分解しな いということではなくて,坩堝の化学成分, Al2O3の結晶性状および坩堝表面の平滑度によっ ていろいろな挙動を示すことが明らかになった。 図11に示すように,porosityが30%以上のアルミ ナ坩堝で溶融した場合には,非常に長時間にわた る溶解でもOの増加が見られずAl2O3の分解のな いことを明らかにしている。この原因は,空孔に ある気泡によって溶鉄と坩堝の接触が妨害される ということで説明することが出来る。 又溶融 Fe―Co, Fe―Co, Fe―W, Fe―Cr, Fe―Mo合金とマグネシヤおよびアルミナ坩堝の 相互反応を同じように検討した。Co, Mo, Cr, Wは坩堝の分解を抑制する元素である反面,Niは 図11に示すように,アルミナ坩堝であっても溶鉄 中のOを増加させた。これらの合金元素の影響の 図12減圧下における溶鉄成分の 蒸発速度(1600℃,1 × 10-3mmHg) 相違は,溶融合金と坩堝の漏れの増減,坩堝表面 の活性度の変化などによるものと推測される。又 これら高濃度合金の蒸発速度を測定した結果, Feがa(g), Meがb(g)の組成のものがx(g), y (g)蒸発した場合y/b=1-(1-x/a)αになる関係 に従うことが分った。そして1600℃におけるα は Fe―Ni 0. 25, Fe―Co 0. 7, Fe―Cr 5, Fe― Mo0. 78と得られた。 減圧下における溶鉄中のCu, Sn, Mn, Si, S およびPの蒸発速度を測定した結果の1部を図12 に示す。これらの元素の蒸発速度は —1n xmt(%)/ xmo(%) K1t なる関係で表わされ,速度恒数 KiはLangmuirの蒸発式から導かれることが分 った。すなわち高周波撹拌鉄浴からのこれら元素 の蒸発速度は,低圧ガス界面への元素の移動速度 でなく,界面における元素のdesorptionによっ て律速されることが明らかにされた。又溶鉄から のSの蒸発は,その活量を増すCの共存によっ て,SOガスを生成するOの共存によって又Sの 活量を増すばかりでなく SiSやSiS2などを生成 するSiの共存によって促進され,Sの活量を減ず るCrの共存によって抑制されることが分った。 又減圧下におけるCとOの平衡関係についてさ らに検討を続けている。 溶融鉄合金の酸化の動力学 片瀬嘉郎,工博郡司好喜,青木愿樹 製鋼炉内における化学反応は酸化還元の繰返し によって進行するが,各成分の自由エネルギー変 化を考えると酸化反応がその大部分である。酸化 機構は製鋼炉によって異なり,平炉,電気炉では 鉱滓を媒体としたO,転炉等の酸素吹製炉では高 圧のO2が直接溶鉄成分を酸化する。酸化反応の 終点は溶鉄成分の平衡関係から決定できるが,酸 化の反応過程は反応の起る諸条件によって著しく 異なってくる。 そこで我々は溶融合金の酸化の中で特に基本的 なCの酸化を取上げ,まず第一に高周波誘導炉を 用いたA―O2混合ガスによる高炭素合金の脱炭 速度を測定した。その結果,脱炭は溶鉄中炭素濃 度と無関係に一定速度で進行し,気相酸素分圧の 増加に比例し又温度上昇と共にその速度は増加し た。これより高周波誘導炉における高炭素溶融鉄 合金の脱炭は,ガス―溶鉄界面へのCの移動速度 は大きく,界面へのO2の移動速度が反応を律す ると考えられ,この場合反応はガス―溶鉄界面で 起り,その化学反応は であるので,拡散膜説を適用し求めたガス―溶鉄 界面へのO2の拡散速度式から脱炭速度:-dc/dt (gr/sec)は で表わされた。ここでDGはO2の拡散係数(mole/ cm・atm・see), Sは溶鉄の自由表面積(cm2), PO2はガス中の酸素分圧(atm), SGはガス側拡散 膜の厚さ(cm)である。脱炭反応の活性化エネル ギー:6.1kcal/moleはガス拡散のそれとほぼ一 致し(2)式の妥当性を立証した。 なお現在低炭素域の脱炭速度やタンマン炉を用 い脱炭速度におよぼす攪拌の影響を研究してい る。 液体,固体鉄合金の物理化学的研究 理博 和田春枝,工博 郡司好喜,工博和田次康 最近の鉄鋼製錬技術のめざましい進歩,新鋼種 の開発にともないその基礎となる鉄合金の物性, 構造,物理化学的性質の解明が強くのぞまれてい る。我々は鉄鋼製錬の基礎研究として,鉄合金中 の合金元素間の相互作用を系統的に研究しつつあ り,内容は,相互作用母系数の液相とγ相におけ る差,相互作用母系数の温度依存性および2元系 からの推定,相互作用母係数の測定である。 (1) 置換型―侵入型三元系鉄合金Fe―X―Y (Y :侵入型成分)系の溶融状態とγ相における 相互作用母係教の差⊿ε (X) Y を各成分の特性から計 算する計算式を統計熱力学的に導出し,実測値と 比較してよい一致がえられた。 ここでX ι Y,X γ Y は液相,γ相のY成分の濃度であ る。 (2)Fe―X―Y系の相互作用母係数をFe―Y, X―Y各2元系の実測から推定する計算式を導出 し,計算値と元系の実測値を比較検討するととも に,相互作用母係数の温度依存性にみられる規則 性を解明しつつある。 図13溶融Nbの窒素の溶解度(PN2 = 1atm) 図14溶融Moの窒素の溶解度(PN2 = 1atm) ここで , ⊿H Y, ⊿S ex Y は部分モル量である。 (3)相互作用母係数の体系づけ。上式の妥当性 の検討のために,まず高融点活性遷移金属Nb, Moの溶融状態における窒素ガス吸収を浮揚溶解 炉を使用して測定し図13,図14の結果をえた。第 1長周期遷移金属Cr, Mn, Feの測定結果と比較 すると吸収量は原子番号の増加と共に減少する傾 向を示し,温度依存性の逆転が両周期ともにみら れる。 転炉製鋼法の研究 工博郡司好喜,片瀬嘉郎,青木愿樹 田中竜男,村松晃 最近純酸素を用いる製鋼技術の発達は目ざまし いものがあり,LD法,Kaldo法およびRotor法な ど幾つかの酸素転炉が開発され製鋼法の型式がそ の様相を一変しつつある。しかしこれらの新しい 製鋼法にはそれぞれ長所と短所とあり,必ずしも 完全なものでないように見受けられる。この研究 はこれらの製鋼法の長所を取入れて新しい製鋼法 を確立するために行われている。 すなわち,高圧の酸素ジェットを適当な角度で 鋼浴面に吹きつけることにより,酸化反応と同時 に鋼浴と鋼滓に回転運動を与えることを主眼とす るものである。この回転撹拌によって鋼浴と鋼滓 の接触が助長され,脱炭反応のみならず脱燐,脱 硫および脱クロームなど鋼滓の関与する多くの反 応が促進されるものと推定される。 研究は容量300kgの小型試験転炉の操業,転 炉模型によるガスと鋼浴の流体力学的関係の解 明,鋼浴成分の酸化過程の動力学的解明など幾つ かの方法によって進められている。 高純度ケイ素の製造に関する研究 理博柳橋哲夫,工博黒沢利夫,長谷川良祐 石川俊秀*,和田岳夫** 半導体として最も重要な高純度ケイ素をヨウ度 法と塩化物法で製造する際の基礎ならびに製錬上 *現在大阪工業試験所**現在日本無線株式会社 の研究を行なった。 1.ヨウ度法による製造 原料の四ヨウ化ケイ素SiI4は,粗Siとヨウ素蒸 気から400°~1050℃で合成した。生成量はヨウ 素蒸気の流速に依存し,より低温で製造したSiI4 はより高温のものより不純物が少なく,残渣中に 不純物が濃縮された。 つぎに再結晶と精留でSiI4の精製を行なった。 トルエン,n-ヘプタン,ベンゼンによる再結晶で Ti, Al,Cuなどが,また単巻らせん充填の石英 製精留塔による精製でCu, Mg, Mnなどが除去 された。 小型装置の水素還元によると,8000~1200℃ 間ではH2/SiI4モル比が大きく高温ほど収率が増 し90%をこえた。また実験結果と熱力計算とは 800℃ではよい一致を示した。 つぎにより大きな装置と精製SiI4を用いて還元 した。はじめ析出管の表面に微小なSi結晶粒が 点状に生成し,発生と成長を繰返して全面に及 び,塊状,板状,針状に析出した。SiI4の有効使 用のため,未反応SiI4をトラップ後再融解しボイ ラー側へ繰返した。析出Siは引上法で単結晶に しまたこれを帯溶融し其の性質を測った。 断熱式装置でSiI4の分子熱と融解熱を測った。 固体で Cp=19. 59+0. 0209Tcal. mol. deg.融体で Cp=35. 25+0. 00987Tcal/mol. deg.と求められ た。融点120.5℃,融解熱4. 70kcal/mol,融解の エントロピ11.9cal/molが測定された。これと従 来の熱化学数値から含熱量と自由エネルギの温度 関数,エントロピS°298=43. 7cal/mol. deg.が計 算された。 2.トリクロルシラン(SiHCl3)による製造 SiHCl3とアルゴン又は水素の混合ガスを7000 ~1100℃の石英管に送った。熱分解は4SiHCl3 (g) =Si(S) + 3 SiCl4 (g) + 2 H2(g)にしたがう。 H2/SiHCl3モル比60~70ではSiHCl3の反応率は 50%をこえる。Siは 緻密な板状や多面体などに 析出した。またSiHCl3の自由エネルギから熱分 解と還元を計算し実験結果と比較した。 つぎにSiHCl3の精留を石英単巻らせんの理論 段教30,18―8不銹鋼デキソン充填80段塔で行な い主留分を採取した。スペクトルと引上単結晶か ら不純分の除去を確認した。また還元後のガス凝 縮液はSiHCl3が34, SiCl4が66%で他に赤外吸収 で副生物のSiH2Cl2を認めた。 中間試験では精製水素をSiHCl3ガスと共に 1000℃の反応に送った。析出管が太くガス流速 が大になると収率減少の傾向があったが,管数を パラに増して収率の低下を防ぎ,また反応管の一 端からSiの析出成長を写真観察した。析出物を 高純弗酸,硝弗酸,純水で洗浄後100~150℃で 真空乾燥し1~2 %のロスで高純度Siを得た。 Siの多結晶塊状物を引上法で単結晶にし諸性 質をしらべた。未精留SiHCl3 (輸入のまま)をそ のまま還元するとN型で約60Ω-cmの抵抗率のも の,また水素を十分に精製しまた多量に還元を行 なうとN型で100Ω-cm以上のものが得られる。 石英単巻らせん塔のSiHCl3からはP型,100Ω- cm台,不銹鋼デキソン塔からはN型,200Ω-cm のものが得られた。また精留物から得られたSiの 抵抗率分布は全体的に均一であった。未精留から 得られたSiのベースボロン濃度は0. 8ppb,不銹 鋼デキソン塔から得られたSiは0. 4ppbであった。 以上の二方法により太陽電池級から整流器級まで の高純度Siが得られた。 含アルミナ鉱石からの粗Al合金の製造 とサブクロライド法によるAlの抽出に 関する研究 理博柳橋哲夫,工博黒沢利夫,菊地武昭, 落合貞行,武藤忠治 溶融塩電解によらないAl製錬の一つとして直 接製錬をとりあげ,第一段の含アルミナ鉱石から の粗Al合金の製造,第二段の粗合金からのサブ クロライド法による純Alの抽出実験を行なった。 1.膠質土の熱的性状 直接製錬の原料となる膠質土の熱的性状をしら べた。膠質上は15~30%の水分を含み,熱天秤��に よると100~250℃で脱水が著しく約600℃でほ ぼ完了する。赤外吸収,核磁気共鳴からは700℃, 1時間処理でも徴量の自由水とOHがある。800 ~1300cm-1の赤外吸収が高温処理で高波数側へ 移り,Si―O, Si―O―Al結合が強くなり,遊離 シリカとムライト生成の様相を示す。X線と顕微 鏡から950℃でムライトが生成し,1200℃以上 では針状に成長する。 2.ボーキサイトの熱的性状 オーストラリヤ産ボーキサイトの主体はギブサ イトであるがベーマイトも比較的多い。またそれ らは微細に分布し重液分離は困難であった。ギブ サイトの加熱変化はχ・Al2O3化が大部分である。 赤外吸収では450℃,1時間処理でギブサイトの 吸収が消失し,700℃で全く構造的OHは認めら れない。核磁気共鳴によると,350℃,1時間処理 のものに結晶間に抱束されたOHグループ以外に ,移動し易い自由水の存在が認められた。 3.アルミナ,ボーキサイトの炭素還元 Al2O3 と炭素は1700℃ でAl4O4Cを,1900℃ で Al4C3を,2000℃から金属Alを生成する。ボー キサイト,膠質土と炭素もAl2O3―C系と同様 で,中のSiO2はSiO2―C系と同様に反応する。 また70kVAの電弧炉を用い,ボーキサイト,膠質 土,炭素からAl―Fe―Si合金を製造するための 実験を行なった。 4.二酸化ケイ素の炭素還元 SiO2―C系では β-SiCが最も出易く,アルゴン 1400℃中,1時間で其の生成が認められ,CO 中ではより高温にずれまた共に1600~1700℃で 顕著である。SiOが反応に重要な関係をもち,る つぼの下段にSiO2, C混合物,上段にSiC, Cを 置いたところ,CではSiC+2C=SiC+COでSiC になり,またSiCではSiC+SiO= 2Si+COで Siが一部生成していた。更にSiO2, SiC混合物の 反応によってSiが生成した。 5. 2Al(l)+AlCl3(g) = 3AlCl(g)の平衡160) サブクロライド法の基礎である本反応の平衡恒 数を,アルゴン搬送の流動法で求めた。平衡恒教 と標準自由エネルギー変化は1000~1250℃で またこの値と他の熱力学数値から,AlCl(S)の 生成熱,エントロピーが-22250 cal/mol,48. 7 cal/molと求められた。 6.サブクロライド法によるAlの抽出 粗合金中の Alは 2Al(l)+AlCl3(g)⇆ 3 AlCl (g)の反応で抽出される。AlCl3の所定圧力下の 減圧密閉型,ならびにAlCl3を減圧下で流す減圧 流動型の装置を用い,反応の速度を求めた。温度 は900~1100℃で,小型実験では〔AlCl3〕をAlCl3 の送給速度とすると,析出速度は〔AlCl3〕2/3に比 例した。またアレニウス式に適用し活性化エネル ギー12.2kcalが求められた。減圧流動型はアル ゴン搬送および減圧密閉型よりもAlの析出に好 適であった。またAl―Fe合金,Al―Fe―Si合金 (Al,約50%, Fe25%, Si25%)からの析出を小 型実験ばかりでなく,「金属化合物ガス還元装置」 (写真)を用いて実験し,99%upの純Alを得た。 7.溶融Al中のFe, Siの拡散 溶融Al中の諸元素の拡散は実際の溶解作業な どにおいても重要である。拡散係数をキャピラリ リザーバー法で800~1100℃間で測定した。拡散 係数は2 %以下では濃度にほとんど影響されず で活性化エネルギーは,Feで12.4kal/g-atom, Siでは7. 3kcal/g-atomであった。 加圧下の乾式製錬に関する研究 工博柳橋哲夫,工博黒沢利夫,長谷川良祐 製鉄の分野ではすでに加圧操業がとり入れら れ,鉄鉄の生産性向上に著しい効果を上げてい る。したがってこの技術は当然非鉄製錬の分野で も,現行の加圧抽出以外にも導入されるべきであ る。 はじめにGeO2の水素還元を加圧下で行なっ た。炉は50気圧まで使用可能でニクロムで加熱し た。試料は1g,水素11/min,1~30気圧,温 度500℃であった。平衡論的には加圧を行なって も著しい効果は期待できないが,実験結果による と還元反応速度を促進する。 表面反応律速の反応速度式,{1-(1-R)1/3} =kt,(ここでRは還元率)があてはまり,また 圧力と速度常数kは,k=aPH2/l+bPH2の関係で 表わせる。 これは圧力の効果が1~10気圧で著しいことを 示し,kとPH2の関係はLangmuirの吸着平衡式 と同形である。この式はEyringの絶対反応速度 のモデルを適用すると,酸化物面表への水素分子 の吸着が反応支配であることを示す。この外酸化 モリブデンについても加圧水素還元を適用しほぼ 同様の結果を得たがなお詳細な点は今後実験を行 なう予定である。 溶融塩を利用する製錬反応に関する研究 工博福島清太郎,小山田了三 金属製錬においては溶融スラグおよび溶融塩の 性状が極めて密接に関与している。スラグ,溶融 塩の物性研究の第一段階として,一,二価溶融塩 をとりあげた。 典型的なイオン結晶のNaCl,KClおよびそれ らのモル比1対1混合浴などを取りあげ,これに 少量(モル分率0.2以内)の二価塩を混入した場合 の凝固点降下を測定した。この測定値より溶媒 NaCl,KClなどの活量,活量係数,過剰部分モ ル自由エネルギーを純溶媒の凝固点に補正して求 め,更にDarkenのα関数および理想溶液からの 偏倚を電気陰性度と電気分極から考察した。また 成分陽イオンの自由体積の差が理想状態からの偏 倚に影響を及ぼすことを論じた。 以上の観点からBaCl2, SrCl2, CaCl2を混入し た場合には,それらの溶液系はほぼ正則溶液ない し準正則溶液とみられることが分った。したがっ て溶媒成分と溶質成分との相互作用はあまり強く なく,溶媒溶質間の隣り合う存在確率はrandom mixingからあまりずれないと推論された。しか しMgCl2添加浴においては相互作用が強く,理 想状態からの偏倚はかなり大きく random mix- ing からのずれは相当大きいものであった。 またこれらの系において,その固相及び液相に 理想溶液の挙動を仮定し,錯イオンを推定した。 勿論これらの錯イオンはその存在が確率的なもの ではあろうが,相互作用が強いMgCl2添加塩で は,かなり平均的安定性を持つものと考えられ る。 NaCl,KClの混合浴における測定結果は,夫 々の浴における結果のほぼ中間の値を得たことか ら,Kopp-Neumanの法則がかなりよい近似をあ たえる。 以上の結果を液体の細胞模型にならない分配関 数を作り,相互作用のエネルギーを論じた。混合 溶液の凝固温度T1°Kでの分配関数を,液体の細 胞模型にならって次のように仮定する。 k :ボルツマン定数,h :プランク定数,m1, m2 :夫々溶媒溶質正イオンの質量,Vƒ, Vƒ* :夫 々溶媒溶質正イオンの自由体積,-χ,-χ*:夫 々溶媒溶質イオンのポテンシャルエネルギー,N :全正イオン数,n:溶質正イオン数,g(n):イ オンの配置方法の数 理想状態のRault-V'ant Hoff式にしたがう仮 想的溶液の凝固温度T2°kにおける分配関数を上 式同様つくり,上式との差を溶媒濃度で微分して 過剰部分自由エネルギーを求めた。 これに自由体積,g(n),充填効果,分極効果, およびBorn-Harberのサイクルから得られたポ テンシャルエネルギーを導入し,更に実験結果か ら得られたパラメターを入れて過剰部分モル自由 エネルギーを計算した。こうして共有結合性, complex生成の可能性と実験結果を比較検討でき た。 製錬残滓の活用に関する研究 工博福島清太郎,和田憲治* 代表的な製錬残滓として差当り硫酸滓をとりあ げ,その高度活用を目的として研究している。 資源に乏しい我が国にとって硫化鉄鉱は比較的 恵まれた地下資源であるが,それを焙焼して生ず る硫酸滓の価値を向上させることによってイオウ 価格を下げようとする努力がなされている。硫酸 滓は重要な国産鉄資源であり,現にその大部分が 製鉄用に使用されているが,その中に介在する 銅,鉛,亜鉛,ヒ素,イオウ等のため製鉄原料と しては心ずしも観迎されていない。一方存在する 割合は微量であっても硫酸滓の年間発生量からみ *現大北建設株式会社 れば莫大な非鉄有価金属が無駄に,しかも有害な 作用をして消費されていることになる。 最も有望な硫酸滓処理法は塩化カルシウムを塩 化剤とする塩化揮発焼結法である。しかし塩化カ ルシウムのように分解して塩基性酸化物を生ずる ものはヒ素をヒ酸化合物として固定するので脱ピ に関する限り殆んど効果がない。塩化カルシウム に代る適当な塩化剤が要望される。 塩化剤は空気中の酸素で塩素を発生し,また水 で一部加水分解して発生する塩化水素も塩化作用 がある。硫酸滓中のヒ素の形態に対して推定され るのはFeAsO4のような酸化鉄との結合,Cu―As ―O系の化合物,例えばのCu3As2O8ような酸化 銅との結合であるが,このようなヒ素に対して塩 素または塩化水素がどの様に作用するか検討中で ある。それによってヒ素の反応開始温度を決定 し,これに相応した分解温度をもつ塩化剤が求め られねばならない。 塩化揮発法では金,銀も揮発する。硫酸滓処理 の経済性に関して金,銀の回収率は最も重要な因 子の一つであるが,その存在が極く微量であるた め金,銀の挙動はこれまで全く解明されていな い。よってここにラジオアイトトープを適用して 塩化揮発時における金,銀の挙動を追求し,揮 発,回収の最適条件を検討する予定である。 執筆者所属 製錬研究部長柳橋哲夫 製鉄原料研究室長大場章, 神谷昻司,石塚隆一 製鉄研究室長田中稔, 尾沢正也,下崎雅彦 製鋼研究室長郡司好喜, 片瀬嘉郎,小野清雄,青木愿樹 乾式製錬研究室長黒沢利夫, 長谷川良祐,菊地武昭,落合貞行,武藤忠治, 小山田了三 湿式製錬研究室長福島清太郎 製錬研究部主任研究官和田春枝 鉄鋼材料研究部 鉄鋼材料研究部は,鉄鋼に関する材料学上の知見や諸理論を背景として,鉄鋼材料の品質を改良 向上させ,またその経済性を高めるための研究を行うことを目指している。鉄鋼は人類の利用して いる金属の中では最も大量に製造され用いられている材料であり,鉄鋼製造に関連しあるいは使用 者の立場にある産業界は極めて広く大きい。したがって研究対象として取りあげるべき重要テーマ もまた極めて多いと考えられるが,我々は所の方針に従い,国家機関の研究所として民間において は容易に短期の成果を期待し難い性格のものを含め総合的見地より重要度を計ってテーマを撰んで いる。 研究室としては現在4研究室をもって成立っている。「鉄鋼研究室」は鉄鋼の金属組織,加工, 熱処理など比較的基本的な諸性質を取扱っており,「特殊鋼研究室」は,合金鋼を中心とする特殊 鋼における熱処理,金属組織と機械的性質との関連を取扱っている。「耐熱合金研究室」は高合金 の耐熱鋼およびNi, Coなどを基とする特殊超耐熱合金の品質改善の問題を取扱っている。さらに 設けられた「鋼質研究室」は鋼材の品質すなわち不均質性や介在物欠陥の生成機構や挙動,機械的 性質に与える影響などを究明することを任務としている。 現在までに取り組んできた研究については別記のように総合研究における分担および各室の一般 研究テーマを紹介してあるが,ここに総括して,現在までの経過および現況について一応略説する。 まず鉄鋼材料の組織と相平衡などの基礎的な問題については超高圧下における挙動を調査しつつ ある。さらに偏析や微量不純物に関する研究にも関与して鋼中の異種拡散に関する研究を進めつつ あるがこの研究にはフランスから来日の特別研究員が参加している。また鋼中不純金属元素の被削 性など性質に及ぼす影響に関する研究にも一部分担している。鋼中の非金属介在物など欠陥の鋼質 に及ぼす影響の研究については,従来軸受鋼に対する品質向上研究の一環として行い成果を得た経 緯があるが,現在さらに一般的基礎的な立場に立って脱酸生成物の性質や冶金学的挙動,その疲労 強度や破壊の機構に関連した問題点を追究しつつある。さらに鋼の疲労破面に関してはミクロ的手 法を用いて金属組織的研究を平行して行うが,本研究にはオーストラリアよりの交換研究員が参加 している。 鋼の被加工性に関する研究としてはダイナパックを用いる高速加工における挙動を研究し応用へ の途を啓いた。また実用鋼種としては上記軸受鋼,バネ鋼,低温用鋼,鉄基耐熱鋼,ニッケル基超 耐熱合金等の品質の改善,合金元素の代替などによる経済性や性能の向上がつぎつぎに研究成果を 得てきた。これらの応用研究の途次においても単に現象論的な結果を追うのみでなく物理冶金学的 な原理の究明によって新しい予見を得ることにつとめつつある。時効硬化型低合金鋼については析 出硬化の微視的機構の解明という見地に立って研究を進めつつあり総合研究の線にも乗せて協力態 勢をとることとした。介在物と砂疵についての研究も同様に他の研究部との人的物的協力をさらに 密接にとることによって総合的成果を期待したい。また耐熱合金の研究はモリブデン材の鋳ぐるみ による新複合耐熱材料の関発やイットリウム,ランタニドなど新しい元素の効果などに着目して創 意を生かした研究の途を啓いて総合研究の分担の責を果すことを期している。 鉄鋼材料研究部は以上のごと く,鉄鋼の金属材料としての応用面における明確な目的を有した研 究を行ってゆくが,同時にその基底をなす金属科学の進展に対しても何等かの寄与を果すべく努力 し,よって研究遂行上の指針や駆動力を得ることが必要である。基礎学的研究態度を持って実用鋼 に近い領域を扱って行くということが当部の現在の姿勢と云えよう。 軸受鋼の品質向上の研究 工博内山 郁,星野明彦,池田定雄,中島宏興 工博上野学* ベアリングの寿命は機械的精度にも左右される が,軸受鋼の耐久性が決定的な影響を及ぼすとい える。このために耐久性のよい軸受鋼をいかなる 方法で製造するかということが大きな研究課題で ある。そこで,軸受鋼の耐久性に及ぼす原材料, 溶解方法,熱処理法などの影響について研究を行 なった。本研究は昭和35年度をもって一応終了し ているが,微量不純物や非金属介在物の影響など 今後に残された問題は多いと考えられる。おもな 研究結果はつぎのとおりである。 1.海綿鉄を原料とした軸受鋼 溶解原料の影響を検討するために,海綿鉄を原 料として溶製した軸受鋼について各種の金相学的 性質や耐久性を調べた。 海綿鉄の配合割合が増加するにつれて,Cu,Sn などの微量不純元素の量は減少するが,非金属介 在物の量は増加する。スラスト型軸受鋼寿命試験 機による試験の結果では,50%海綿鉄+50%返り 屑の配合材料の寿命がもっとも良好であり,市販 軸受鋼と同じ原料配合割合の50%市場屑+30%社 内屑+20%砂鉄銑の寿命が最低であった。 2.真空溶解した軸受鋼77) 高周波真空誘導溶解法,消耗電極式真空アーク 溶解法および従来の大気溶解法によって溶製した 軸受鋼について,寿命試験を中心にして検討し た。真空溶解によって非金属介在物の量は約半分 に減少し,とくにアルミナ系介在物の減少が著し い。真空アーク溶解鋼の平均寿命は真空誘導溶解 鋼および大気溶解鋼よりも格段にすぐれており, 寿命のバラツキも小さかった(図15)。これは真 空アーク溶解によって酸化物系およびアルミナ系 介在物の減少が著しく,かつまた偏析の少ない健 全な鋼塊ができるためと考えられる。 3.熱間押出した軸受鋼316) 熱間押出による加工方法が,軸受鋼の金相学的 性質および耐久性にいかなる影響を及ぼすかを調 べた。熱間押出加工法は非金属介在物の量および *昭和36年退職,現在富士製鉄(株) 球状炭化物の分布,挙動に著しい影響を及ぼさな い。また,ニードル試験片による寿命試験による と,熱間押出材は従来の鍛造,圧延による軸受鋼 よりも耐久性がかなり向上し,しかもそのバラツ キが少ない。 4.諸外国の軸受鋼の非金属介在物と炭化物12) 英,米,ドイツ,スエーデンおよび国産の軸受 鋼の非金属介在物および炭化物を,光学および電 子顕微鏡によって調べた。諸外国製品では非金属 介在物の量は多く,とくに硫化物系介在物が大部 分を占めていた。そして非常に長く伸ばされてい て鍛造比の大きいことが判明した。なお,炭化物 の大きさが極めて小さくしかも一様に分布してい るものの耐久性が良好であった。 5.軸受鋼の疲労現象 軸受鋼をくり返し疲労させた場合に生ずるフレ ーキングの部分を光学および電子顕微鏡によって 観察した。まず亀裂が発生して,それがフレーキ ング現象を起こすに至るが,亀裂の起因は非金属 介在物のみにあるという現象はあまり認められな かった。また,1つの亀裂がもとになってフレー キ ングを生ずる確率は小さく, 2つあるいはそれ 以上の亀裂が集積した場合にフレーキングを生ず ると考えられる。 図15寿命に至るまでのくり返し数の累績度数 分布図 ばね鋼に関する組織学的研究 星野明彦,工博上野学* 1. ばね鋼の恒温変態図と機械的性質39) 恒温変態図の作成および不完全焼入組織の機械 的性質への影響を調べることを目的とし,この実 験においてはCr―Mn鋼の他に普通炭素鋼とSi― Mu 鋼が供された。特にベイナイト変態挙動はそ れぞれ著しく異なり,それが機械的性質に対して 顕著な影響をおよぼすことが明らかとなった。 すなわち,ベイナイト変態はオーステナイトよ りの過飽和固溶体の析出および炭化物析出という 炭素原子拡散過程であるため,固溶合金元素の存 在により変態挙動は著しく修正される。Crはフ ェライト中での炭素原子の拡散を抑制するためベ イナイトの横方向への成長は普通炭素鋼に比して 少く,また炭化物の凝集速度も低下させる。一方, Si―Mn鋼において生成するベイナイトの横方向 成長も少いが,これはフェライトよりの炭化物生 成が著しく遅滞化するためであることを認めた。 各種ベイナイト組織の強さはフェライトの内部 応力や析出物密度に依存するもので,Si―Mn鋼 やCr―Mn鋼でのそれは高いが,靭性に関しては 析出物の高密度に基いているCr―Mn鋼が有利と なる。 ベイナイトとパーライトとは組織的に不連続で あるために機械的性質の不連続性をもたらすが, これは主として析出物密度に基因し,Crのよう な元素の固溶はこの傾向を顕著とする。 2.鋼の焼戻特性30) 鋼は焼入後靭性回復の目的で焼戻に供される。 マルテンサイトの焼戻過程で生じる炭化物挙動に ついて研究を実施した。焼戻初期の段階では炭化 物はマルテンサイト粒界に現れ,その形状は二次 元的であるが,焼戻温度の上昇に伴って立体的と なり均一に析出する。初期に生成する炭化物の構 造をX線回折によって検討した結果,ε―炭化物 でなく,欠陥のあるセメンタイトであることが明 らかとなった。 焼戻過程における硬度変化を焼戻変数を用いて として300~5500cの温度域での活性化エネルギ 図16 ・17マトリックスの内部応力(16)および各相中の元素濃度(17)におよぼす焼戻温度の影響 *昭和36年退職.現在富土製鉄(株) ー値を計算するとQ≑70, OOOcal/molとなり,こ の値は若干高いけれどもα―Feの自己拡散エネル ギーに相当し,CrやMnの鉄中への固溶は僅かな がら鉄原子の自己拡散エネルギーを高めることが 明らかとなった。 一方焼戻過程においては固溶合金元素の拡散に 伴う組織変化が現れるが,Cr―Mn鋼の焼戻温度 を函数としての合金元素の挙動を図16に,炭素の 挙動に関係する内部応力の変化を図17にそれぞれ 示した。 図16より明らかなように合金元素の炭化物中へ の濃縮は400℃以後に現れ,その初期の段階にお いてはMnの平衝への到達速度はCrのそれよりも 大きく,これは A. Michelにより提唱されたセ メンタイト中での原子結合モデルや振動係数値の 差によって十分に説明することができる。固溶炭 素原子のマトリックスからの析出は内部応力の緩 和として現れ,500℃までは可成り急速であるが 以後は緩漫となる。同時に析出粒の凝集が起り結 果として強さが低下するようになる。機械的性質 の中の降伏点に関しては組織中の析出粒分布密度 と大なる関係がある。 3. 鋼の昇温状態での機械的性質325),152) 鋼の昇温状態における機械的性質は負荷状態に ある場合は歪時効現象により可成り支配されるた め,鋼の昇温機械的性質におよぼす合金元素の効 果を調べた。一般に降伏点は試験温度に従って低 下するけれども引張強さは200~350℃までは低 下せず400℃に到ると急激に降下する。これとは 逆に,歪時効硬化の現れる200~300℃の温度域 においては伸び率での変化は少くても,絞り値に 著しい影響が現れ塑性変形の起り難くなることを 示す。実験に供された鋼種から得た結果では,炭 化物形成元素の存在は歪時効現象を和らげ,Mo はその温度域を高温側に移動させる効果がある。 Siは固溶効果と歪時効により強化側に作用する が,反面脆化にも関係することが明らかである。 低温用鋼の性能向上に関する研究 工博鈴木正敏,藤田充苗 最近の冷凍工業,ガス液化工業,石油精製工業 の急速な発達に伴って,従来は高温の場合にくら 図18 Fe―Ni合金の室温及び-50℃に於ける S―N曲線 べて利用範囲も限られ従って比較的関心も薄かっ た低温用材料の開発がだんだんと盛んになって来 た。本研究の目的は低温用鋼研究の基本的なデー タ を得る ことにあって, 大別して次の様なことを おこなった。 1.低温に於ける機械的性質362) 従来から鉄鋼の低温に於ける機械的性質につい ては数多くの研究報告が見られるが,それらの中 で低温に於ける耐疲労性に関しては余り詳細な検 討は行なわれていないようである。そこで純鉄に 数種類の合金成分を単独添加した試料に対して, 常温以下に於て疲労,引張,衝撃等の機械的試験 を行うと共にそれらの破壊状況を検討した。 試料としては電解鉄を真空溶解したもの,およ び市販の電解鉄そのままのものを基本とし,Cr, Mn,およびSiを夫々1%位迄2~3段階,Ni を9 %位迄8段階単独に配合し,高周波溶解,Al 脱酸したものを圧延して作った。これらに対する 低温疲労試験は-50℃の低温室内に於て,機械 自身に機械的振動部分を有しない電磁共振型両振 り曲げ試験機を使用しておこなった。試片は直径 17mm,長さ600mmで中央部に周囲から深さ2 mm,底部曲率半径1mmのU ノッチを入れた。 共振周波数は約210c. p. s.である。この結果の一 例を図18に示す。Ni添加の影響は衝撃値の場合は 極めて大きいのに対し,疲労限にはそれ程著しく はない。即ち添加量0.5~2 %位までではその影 響は極めて小さく,多少の上昇を示すにすぎない が,2.6%程度以上では明かな上昇が認められる。 この他低温引張試験に於けるマイクロクラック 発生等に関しても興味ある結果が得られた。 2.フェイラト系Ni鋼に於ける残留オーステ ナイト397) 低温用鋼の一つである9 % Ni鋼の特性を十分 発揮させるには極めて厳密な熱処理を必要とされ ているが,これは最終の焼戻しに際して生ずるオ ーステナイトの量およびそれが低温にまで冷却さ れた際の安定性が,その処理温度と時間とによっ て大きく変化し,それがこの鋼の低温靭性に影響 を及ぼすためであるという説が有力であるが,詳 細な機構については明らかでない。そこで0.5~ 12%Ni迄の8種類の鋼について種々の熱処理を おこなって,その残留オーステナイト量をX線積 分強度法によって定量し,機械的性質と対比させ た。 図19はその一例を示すもので,7%Ni程度迄 は残留オーステナイトの安定範囲もせまく,発生 量も少いが,9 %Ni程度以上になるとその安定 範囲もひろがると同時に,焼戻し温度及び時間に よる感受性も極めて大となり,それらが硬度や衝 撃値との間に有する関係もかなり密接なものがあ ることが認められた。 図19オーステナイト量に対する焼戻し時間と温 度との影響(9%Ni鋼) 超高圧力下に於ける鉄鋼の相変態に関 する研究 工博鈴木正敏,藤田充苗 金属のみならず,あらゆる材料を処理する手段 としての圧力は,温度とともに重要な因子である にもかかわらず,その利用開発の面においてきわ めて新しい歴史を有するに過ぎない。しかもこの 僅かの歴史の中でも,とくに金属材料に関しては その研究成果も未だきわめて少なく,世界的に見 てもやっとその糸口をつかんだに過ぎないのが現 状である。 一般に高圧力下において,金属材料の変態,拡 散,再結晶などすべて原子の移動を伴う諸現象, あるいはマルテンサイト変態の如く容積膨脹を伴 う現象は著しくその進行を妨げられ,その平衝条 件も大きく変化すると考えられる。 本研究は鉄鋼材料を対象として,その高圧力下 の挙動を検討しようとするものであるが,その目 的を大別すると次のようになる。 Ⅰ.鋼中の各種元素の高圧力下での挙動追求と それらをもとにした鋼の変態に伴う諸現象の 追求 Ⅱ.圧力と温度との組合せによる鋼の処理法の 開発 これらのうち,Ⅰについてはさしあたり50kb, l,300℃程度迄の圧力温度条件下に於て各種鋼 を処理し,その光学および電子顕微鏡,X線マイ クロアナライザーなどによる観察をもととして鋼 中元素の挙動に対する圧力効果を追求する。この 際,原子の拡散を伴う形式の変態はその進行を著 しく妨げられるので,圧力附与により変態に伴な う合金及び不純物元素の分配率や,炭化物の形成 状態などに差異を生ずるし,マルテンサイト変態 も著しく妨げられてその現われ方も大きく変化す るものと考えられ,これらの点が検討の対象とな る。 次の段階に於て,以上の結果をもととして試料 の大型化をはかり,実用化への道を開く。 これらの目的のために,現在超高圧プレス,試 料加熱温度プログラム制御装置,電気抵抗測定装 置などを用い,昭和40年後半より本格的に予備実 験を開始した。 これらのうち,超高圧プレスは神戸製鋼所製の もので,その性能の概要は次の通りである(写真 参照)。 型式 堅型二筒複動ピストン式 (1,000トン型) ピストン 上部 下部 荷重 360t 640t 直径 185mm 250mm 行程 200mm 200mm 使用油圧 昇圧行程常用 降圧行程 1,300kg/cm2 140kg/cm2 超高圧シリンダー取付寸法 直径 350mm 高さ 最大400mm 最小250mm プレス全高 最高2,860mm これに取り付ける超高圧シリンダーとしては現 在ベルト型,及びガードル型を使用している。 昭和40年度末に於てシリンダー内への試料の組 込法その他の予備実験を終了し,41年度から本実 験にとりかかる。 なほ,昭和41年度からは金属物理研究部,電気 磁気材料研究部と協力して総合研究態勢をとり, 高圧下の拡散,塑性変形などの問題についての研 究も開始される。 時効硬化型構造用鋼の研究374),416),417) 金尾正雄,青木孝夫,工博荒木透,沼田英夫 時効硬化,特に金属間化合物の析出を利用した 構造用鋼の開発は始まったばかりなので,現在は 商用鋼の数も少ないが,秀れた性能を有すること が次第に明らかになり,今後広範囲に用いられる ものと期待される。しかしなお硬化機構や,成 分,熱処理の影響などの基本的な問題にすら未知 の点が多く,開発の障害になっている。この研究 はこの種の鋼の開発に必要な基礎資料を得る目的 で,まずフェライト鋼における時効挙動を,主と して,例えばFe―5 Ni―2 Alのような単純な合 金を用いて追求して来た。 NiとAlの添加により,フェライト中で充分な 時効硬化を生じさせるためには,Ni+Al量が約 4. 5%以上必要であり,その場合Alは0.5%では 不充分である374)。 図20はFe―5 Ni―2 Al合金の,焼入れおよび 焼入れ後時効した試料の熱膨張曲線であるが,前 者は約400℃から収縮を,約600℃以上から膨張 を示した。一方後者は約600℃以上からの膨張の みを示しており,オーステナイトへの変態はいづ れも約900℃で生じている。後述の焼もどし時の 挙動や,粒界反応で生じた大きな析出物が例えば 700℃× 5 min.の再加熱で消失することから も,低温の収縮は析出に,膨張は析出物の再固溶 図20加熱時の熱膨張曲線 (A)時効試料(B)焼入試料 図21 焼もどしおよび時効硬さにおよぼす焼もど し条件の影響 図22基質格子定数におよぼす焼もどし条件の影響 によると考えられる。このことから,これまで問 ピストンシリンダー装置 雰囲気圧延機 ヘリウム焼入炉 題にされていた本鋼種の時効の再現性が理解でき る。またこのようにγ変態点以下で再固溶し,固 溶量も大きいようなので,溶体化処理を兼ねた焼 もどしを行なうことが可能であろう416)。 このことは炭素を含む場合に殊に意味があり, 時効硬化鋼を構造用鋼として考える場合,炭化物 の存在状態を調整するため,時効前に変態点以下 の比較的高い温度で,焼もどしすることが望まし い。そこで広範囲に条件を変えて焼もどしし,常 温の,硬さと基質であるαの格子定数を測定し, そのあと各試料を520℃×10hr時効して同じ測 定を行なった。図21に硬さ,図22に格子定数の測 定結果を示した。 580℃で焼もどした場合は,短時間でかなり硬 化し,その後軟化した。焼もどし時間が2hrまで の試料の基質格子定数は減少し,その後は変化が なかった。軟化した試料はその後の時効で硬化し ないので,この温度では長時間加熱すると析出物 が凝集し軟化するものと考えられる。650℃以上 の焼もどしでは,焼もどし条件の影響は認められ ず,その後の時効でHv硬さで190硬化し,基質格 子定数は約0.1%収縮した。その固溶量はかなり 大きいといえよう416)。 0. 2% Cを含むおよび含まないFe―5 Ni―2 Al 合金の時効硬化曲線をみると,両試料ともほぼ同 じ傾向であり,Cは硬化の主要な因子ではないこ とを示している。ただし,いく分時効速度を遅く する。活性化エネルギーを計算すると,約47,000 cal/molで,Alnico合金,17― 7 PHステンレス 鋼とほぼ等しく,硬化機構に共通点があることが 考えられる417)。 種々の温度で1定時間(10hr)時効したFe― 5 Ni― 2 Al合金の硬さと基質の格子定数の間に は,ほぼ直線関係が認められ,この合金の析出物 が凝集し,軟化する温度範囲が狭くかつ長時間を 要することを示している416)。 Fe―5Ni―2Al合金の析出相を,薄膜試料の 直接観察,X線および電子回折等で調べた。焼入 れ,焼もどし後575℃ ×10hr時効した試料の粒内 に,析出物と思われる電顕像を得たが,それを含む 回折像は規則格子を有するb. c. c.構造を示して いる。基質がorder状態であるという文献はない ので,これは格子定数約2.9ÅのCsCl型のNi・Al がb.c.c.の基質と完全にcoherentに析出している ものと考えられる。この合金で粒界反応型析出が 生ずるのが観察された。この型の析出相も同じく CsCl型のNi・Alであるが,反応は全面的には進 行しないで,時効温度により定まる一定の値に次 第に近づいて行くようである。前述のように,こ のかなり大きい析出物もα中に容易に再固溶す る。そして硬さも時効前の値に戻り,さらに再び 時効すると時効硬さを回復した。すなわち,この ように大きな析出物も時効の再現性に影響を与え ない。この粒界反応は靭性に悪影響を与えること が考えられるが,C, B, Tiなどを添加すると著 しく抑制されることがわかった417)。 執筆者所属 鉄鋼材料研究部長荒木透 鉄鋼研究室長鈴木正敏. 池田定雄.藤田充苗 特殊鋼研究室長金尾正雄, 青木孝夫,沼田英夫 鋼質研究室長内山郁 鉄鋼材料研究部主任研究官星野明彦 非鉄金属材料研究部 材技研における非鉄材料の研究は昭和31年本研の発足当初には第1部の組織の中で非鉄研究室と してまづCommon Metalsの研究から始められた。以来研究体制の強化や陣容の充実に伴なって 研究室の増設や移管を経て昭和35年に非鉄金属材料研究部(当時は第7部と呼ばれ部長は吉田進理 博であった)となり,37年に岩村��郎教授が部長として茨城大学より転任し研究内容の充実をはか り,38年に5研究室となり,40年に木村啓造工博が部長を引継いだ。 非鉄材料は呼び名にも示されているように広く鉄以外の金属を含んでいるために,それらの基本 的性質や冶金学的性質が極めて多種多様にわたっているが,共通した基礎理論を柱とし,新しい加 工方法などを応用して合金の性能向上をはかっている。すなわち合金の強化機構としては析出硬化, 分散強化などの基礎理論を拡散,転位の運動などの原子的プロセスに基づいて探究している。 また非鉄金属の性質はガス不純分によって変化するので水素および酸素について拡散と種々の欠 陥(原子空孔や転位など)との関係や水素化合物の生成の状況と機械的性質との関係を探求しAl中 の水素の挙動,Nb, Ta, Zr合金の水素脆性を研究している。原子炉材料であるジルカロイ合金に ついては含有酸素量と製造の際の加工方法などが品質に及ぼす影響を検討し改良をはかっている。 8Al―4Co―Ti合金(材技研が特許権をもっている)は高温機械的性質がすぐれていることを 確認し,航空宇宙研究所の要望も含んで実用化の場合に必要となる製造条件の検討およびロケット やジェットエンジン材料に実用するため工業規模の300kgの大型溶解を実施,実用規模で作った板 材,棒材および鍛造材の諸性質をしらべている。 各研究室の現状は次のようである。 非鉄第1研究室 昭和31年に発足し,まづCommon Metalsの研究に着手し,室長は足立正雄 工博(現京大教授)より37年に渡辺亮治工博に引継がれ,析出硬化型銅合金の粒界反応の過程を透 過電子顕微鏡により解明し機械的および電気的性質におよぼす影響をしらべている。またV, Zr, Hf, NbおよびTaなどを含む特殊銅合金について新しい製造技術を開発し研究を進めている。 希有金属研究室昭和33年に一般金属に対しLess-Common Metalsの重要性が増し原子力関 係などの要望もあって新設された。白金族金属,ThおよびNbなどを研究して来たが,現在では WおよびZr合金について研究を進めている。またZnフェライトの生成条件が化学的反応性に及 ぼす影響をイオン空孔と関係づけて基礎的に研究した。 非鉄第2研究室 NbおよびTaなどの新金属は高温度の性質や耐食性が優れているために宇宙 開発や原子力工業に重要性が増して来たので37年4月に希有金属研究室より分離して研究体制の強 化をはかった。Nbなど体心立方晶の金属中に含まれる侵入型不純元素の挙動をしらべ,加工性, 脆性および高温強さなどにおよぼす影響を研究している。 非鉄第3研究室SAP型合金やTi合金はCommon Metalsのグループの中で研究を進めて来 たがいづれも最近の新しい技術を応用したものであるため,研究内容の充実に伴い体制を強化し, 36年に研究室として新設された。 SPA型から始まって発展しつつある分散強化型合金として,粉末混合法により微細なアルミナ 粒子をニッケルに分散させる方法を開発し,強化度と分散強化型合金の高温クリープ現象を転位と 空孔の相互作用に基づいて検討,解析している。 Ti合金については8 Al―4Co―Ti合金の開発研究のほか,他のTi合金についても熱処理によ り冷間加工性の向上をはかりTi―Al系にみられるα2相やω相の析出過程を研究している。 軽金属研究室 昭和34年航空審議会の要望もあって航空機材料としては欠くことのできないAl 合金やMg合金の研究に着手した。Al合金の品質や溶接性に大きい影響を与える微量のガス不純 分について検討し,精度の高い分析法を基として水素ガスの拡散と諸欠陥との関係および微視的気 孔や偏折に関して研究している。Mg合金についてはCeなどの希土類元素を含む合金の変形機構 と熱処理をしらべ加工性の向上をはかっている。 析出硬化型銅合金に関する研究 工博渡辺亮治,斉藤一男,貝沼紀夫 最近,高温強度のすぐれた導電用銅合金の開発 が強く要望されている。また,高力銅合金にしば しば認められる粒界反応についても,それによっ て機械的性質が著しく害われることが多いために その析出機構について深い関心が持たれている。 このために,粒界反応型の析出を起こしやすい析 出硬化型銅合金および従来種々の理由から取扱わ れることが少なかった高融点金属をふくむ銅合金 について,その機械的性質,電気的性質をしらべ ると共に,析出過程の薄膜透過電顕観察などを行 なっている。 1.粒界反応型析出の機構198), 696) 粒界反応の機構については未だ定説がなく,種 々の考えが提出されている。本研究では,各種合 金について粒界反応の成長速度,活性化エネルギ ーを測定し,成長速度の実験式を求めた。更にこ れらの結果について検討し,粒界反応の成長速度 は粒界拡散のようなより速かな拡散過程によって 支配されるものとした。 2. Cu― 4 %Ti合金の変形双晶 高力銅合金として知られているCu―4%Ti合 金の時効性をしらべている際に,450℃,1時間 以上時効の試片を室温で引張り変形したところは じけるような音を伴う急激な応力降下が連続的に 起ることが認められた。光学顕微鏡および薄膜透 過電顕観察の結果,その変形機構が変形双晶の発 生によることが分った。従来,面心立方金属は低 写真3 Cu―4w/0Ti合金 450℃, 3時間時効 の変形双晶の透 過電顕像 写真4同左の暗視 野像 温でなければ双晶変形しないと考えられていた が,ごく最近では室温でも積層欠陥エネルギーの 小さいものでは起り得ることが報告されている。 しかし,本合金のように時効初期に変形双晶が発 生する現象はきわめて興味の深い問題であり,時 効初期の析出過程との関連において機構を検討し ている。 3. Cu―Hf合金の研究445) 従来,Hfをふくむ銅合金の研究はきわめて少 なく,したがってその諸性質もほとんど明らかに されていない。< 2w/0Hfをふくむ二元合金に ついて銅側状態図を決定し,その時効硬化性をし らべた。その結果,硬化能は余り大きくはないが, 再結晶温度がいちじるしく高くなる事が分った。 (半軟化温度は0.53w/0Hfで約600℃),焼入れ 後50%加工後450℃で時効せしめたものの引張り 強さは約55kg/mm2,導電率は約70%IACSであ った。 4. Cu―In合金の析出過程 Cu―2~16w/0In合金について時効硬化の測 定および析出過程の薄膜透過電顕観察を行なって いる。本合金の時効硬化に大きく寄与しているの は粒界反応による層状析出物であり,これらの凝 集によって過時効が起こることが分った。このよ うな現象は従来,あまり知られていないことであ り,引き続き測定および観察を行なっている。 ニオブおよびニオブ―水素合金の機械 的性質に関する研究 京大工博佐々木靖男 工博木村啓造 新しい耐食耐熱材料として広い用途を見出しつ つあるニオブおよびニオブ合金の機械的諸性質 は,それらに含有される侵入型不純物元素例えば 水素,酸素,炭素などによって大きく左右され る。 また水分の共存する雰囲気で耐食材料として使 用した場合,その腐食速度よりもむしろ腐食の際 に生じる水素にもとづく靭性の急激な低下が工業 上重要な問題となっている。 したがってニオブに含まれる不純物元素による 機械的性質の変化および添加水素を固溶体または 水素化合物として含有するニオブ―水素合金の脆 性挙動などを明らかにした。これらを検討するた め,まず高純度ニオブや水素を添加したニオブ― 水素合金を作製し,その機械的諸性質について引 張り試験,曲げ試験,歪時効実験などを行なって 比較した。以下に研究成果の概要についてのべる。 1.高純度Nbの作製とその機械的性質 アーク還元法によって製造した粗金属Nb(99. 3 %前後)を電子ビーム溶解法によって,種々の条 件下で溶解しその精製効果を検討した。最上の条 件特に粗金属Nb中のO/Cが3~4の成分比で 数十分の高真空ビーム溶解を行なった場合には硬 度がV. H. N. 60前後で侵入型不純物元素の全量が 100ppm以下の高純度Nbを得ることが出来 た226)。電子ビーム溶解材は焼結材に比べて加工 硬化がゆるやかで,例えば80%の冷間圧延によっ てもその硬度はV. H. N. 80に達するにすぎない。 3%の前歪を与えた試料を50℃~200℃の温 度範囲の種々の温度に加熱し,降伏点の再現を観 察した。この歪時効による降伏再現をひき起すに 必要な加熱時間の解析から,歪時効の活性化エネ ルギー 26, 000±1, 000cal/molを得たが,これは Nb中のOの拡散エネルギーとよい一致を示し高 純度Nbの歪時効現象がO原子の転位への拡散と その固着作用にもとづくものであることを明らか にした。 2. Nb―H合金の機械的性質 Nb板またはNb棒を水素ガス中で加熱してH を固溶または水素化合物として分散析出させた Nb―H合金を作製し,これらの引張り試験,曲 げ試験や歪時効実験などを行なった。Nb―H合 金の脆性は水素化合物が生地中に分散形成されて いる場合にはいちじるしく,伸びは殆んど0とな る。脆性破面は(100)面で水素化合物の析出癖面 とよく一致している。したがって水素化合物を含 むNb―H合金の脆性は水素化合物の存在と直接 関連があると考えた。 写真5は単結晶Nb中に析出形成した水素化合 物を含むNb―H合金の顕微鏡組織で,観察表面 は(100)面に近い指数面で析出癖面は(100)面で ある。水素化合物は〔001〕と〔110〕方向に並び, 前者は(001)癖面に沿う水素化合物で観察面に垂 直であり,後者は(010),(100)癖面上の水素化合 写真5 Nb単結晶中に析出形成した板状水素化 合物 ×200 物で観察面に対して約45°の傾きをもっている。 現在水溶液電解法で水素を添加したNbおよび Nb合金の水素脆化や,応力緩和実験などによる 不純物元素と転位との相互作用についての研究を 進めている。 Ti―Al―Co 3元合金の機械的性質に ついて 辻本得蔵,工博足立正雄* チタンは強度/比重,耐食性が優れており,今 後ますます用途が拡大されると期待されている。 この研究ではアルミニウムとコバルトを含むチタ ン合金を取り上げて,この合金系のもつ特性と問 題点を基礎的に調べることとした。 1.Ti―Al―Co 3元状態図の研究 この合金のもつ特性と熱処理性を十分理解する ためには状態図が必要となる。このためチタンを 40% (重量%)以上含む範囲の3元状態図を作成 写真6 Ti― 8 % Al-1%, Co合金をβ相領域 から徐冷 *京都大学教授,当所所付 した。この際Ti―Al2元系から出発するα2(Ti3 Al)の挙動は特に詳細に調べた。 1例は写真6に示すようで,地のα相には微細 なα2相が,粒界にはα2相とTi2Co (影をともな っている部分)が析出している。 2.熱処理と組織,常温機械的性質の関係38)59) Ti―2~8% Al―2~8% Co合金に対して 焼入,焼戻し処理に伴う組織と常温機械的性質の 変化を調べた。焼入試料の常温機械的性質はα2と Ti2Coによる分散強化とアルミニウムによるα相 の固溶強化,コバルトによるβ相の固溶強化によ って定まる。焼入•焼戻し試料ではβ相の分解過 程に生じるω相が機械的性質に大きい影響を与え た。ω相の生成を抑制するためにはアルミニウム 含有量を増加することが効果的であった。 3.応力によるマルテンサイト生成と加工性に ついて23),83) 高温から焼入れたβ相の安定度はコバルト含有 量によって定まる。コバルトを4%程度含有する β相は常温で応力を加えることによりマルテンサ イトに変態し,この変態に伴って変形を生じる。 950℃以上の温度から焼入れた試料はβ相が不安 定で,応力によりマルテンサイト変態を起すため 図23に示すように耐力は低くなる。この状態の材 料は均一伸びが大きいことを必要とする加工に適 していることが判明した。一方焼入れたβ相が安 定な材料は圧延のように均一伸びが問題とならな い加工に適していることが判明した。 4. Ti― 8 % Al―4% Co 図23 Ti―4% Al―8 % Co合金の焼入温度と 応力―ひずみ曲線 ロケットおよびジェットエンジン材料として Ti―8% Al―4 % Co合金を選び,検討し耐熱 性に関しては優れた結果を得,本研が特許を得 た。チタン合金にはα2やωの析出の問題,Ti2Co などの金属間化合物の形状とその効果など基礎的 に研究すべき問題が数多くあり,これらは全て加 工性,機械的性質,溶接性などの問題に直結して いる。これらの問題を基礎的に研究を進めると共 に更に有用なチタン合金の開発をはかっている。 粒子分散強化型合金の研究 高橋仙之助 分散強化型合金の特徴は,強さに対する温度依 存性が小さいこと,つまり高温になっても強さが あまり低下しないことである。このような性質は いろいろ興味ある問題を提起する。たとえば分散 粒子と母相金属との界面の状態,粒子の大きさ, 粒子間距離などが強さに対してどんなふうに効い てくるか等である。分散粒子が高温で安定に存在 するためには,アルミナやトリアなどのように生 成の自由エネルギが大きいこと,母相との界面エ ネルギが小さいことなどが必要である。かりに分 散粒子が母相とcoherentである場合,小さな界 面エネルギが予想される。 分散粒子が母相とcoherencyをもっためには, 数10Åの大きさの程度でなくてはならないと言わ れているが,分散粒子の種類,合金の製造方法な どが,界面の状態に影響をあたえる。 さて分散強化型合金の製造方法であるが,スイ スのIrmannによってAl―Al2O3合金(SAP)が 発表されて以来,これが刺戟になって,いろいろ な化合物と金属の組合せでさまざまな合金製造法 が提案された。なかでも内部酸化法,酸化還元法, 溶融塩分解法,粉末混合法などは,比較的よく紹 介されている。 内部酸化法は,固溶合金中の溶質元素を予め規 定した酸素分圧のもとで選択的に酸化し,母相に 酸化物粒子を分散させる方法である。この際表面 層と内部では粒子の大きさが違う,深部まで均一 に酸化することが困難であることなどが欠点であ るが,微細な粒子を得易いため,実験室的試験の 範囲では,他の製法の合金と比べて,優れた性能 図24押出加工したCu―Al2O3合金と純銅の 550℃におけるクリープ破断時間と応力の関係 を示す。 酸化還元法は,固溶体の酸化物を選択的に還元 する方法で,その際に生成する水蒸気も考慮しな ければならないので反応は複雑になる。溶融塩分 解法は,硝酸塩を混合して固溶塩としてから分解 し,アルミナ,トリアなどを析出させる方法であ る。粉末混合法は,分散粒子用超微粉と母相金属 用微粉を機械的に混合し,数千kg/cm2の圧力で プレスし,焼結,抽出加工により製造する方法で ある。粉末冶金的な方法を利用する場合は,素材 のボイドなどをなくし,さらに粒子の分散性を良 くする意味で押出加工が必要である。 図24には,粉末混合法によって製造した銅―ア ルミナ分散強化合金の550℃におけるクリープ破 断時間と応力の関係を示した。破断時間と応力 は,両対数グラフでほぼ直線的関係がなりたって いる。またアルミナの含有量が増えるほど強さが 大きくなるとともに,応力依存性が著しくなって いる。純銅の測定点と比較するとき,強さの向上 がいかに著しいか判るであろう。 分散強化型合金の強化機構の検討のため,ニッ ケル―アルミナ合金,ニッケル―コバルト―アル ミナ合金などのクリープの活性化エネルギの測定 をはじめ機械的諸性質,組織等の検討を行なった。 アルミニウム中の水素ガスに関する研究 科学研究官工博岩村��郎,松尾 茂,平田俊也 アルミニウムは工業材料として使用されるよう になって以来かなりの時間を経過しているので, その間脱ガス法の発達もあって実際面ではかなり 進歩している。しかし,含有ガス量が少なく精密 なガス量測定法の発達がおくれ,そのため含有ガ 図25 ガス抽出曲線0.02cc/100g ス量とそのおよぼす影響との量的関係はあまり明 らかではなく,また,水素の固体アルミニウム中 での挙動に関する基礎的研究が充分にはなされて いない。当研究室では,それらの問題を明らかに するための研究に従事した。その第一段階として ガス分析装置を試作して0.02cc/00gAl程度の測 定を可能とし,この装置を使用して従来検知でき なかった種々の合金中の水素含有量の差を明らか にした。また,固相抽出法によって,試料内部よ り放出されるガスの約95%位が水素であること, 切削した新しい表面に付着しているガス量は平均 3. 5×10-4cc/cm2であること,更に,シルミン, ロ ーエックス,ラウタルと銅の含有量が増加する につれて含有水素量の減少する事を認めた。 アルミニウムの水素溶解度は溶融点において大 きく変化するため固体中の水素は強制固溶状態の ものと析出した状態のものに分れて存在している であろう。このような状態をはっきりさせ,夫々 の状態の水素の挙動を明らかにすることにより水 素のおよぼす影響をより正しく把握出来るように なるものと思われる。そのような意図の下におこ なわれた研究により極めて興味ある結果が得られ た。その一例を図25に示す。曲線はいずれもガス 放出の時間的変化を示すものであり,パラジウム 管を通しての拡散により放出されたガスの大部分 が水素であることを確認した。試料はいずれも同 一のチャージより取られたものであるが,曲線1 は銅の金型に鋳造した試料,2および3はステン レス製金型に鋳造したものの隣接部より採取した 試料からの抽出曲線である。また,曲線1および 2は鋳造材のまま,3は引抜加工をおこなった試 料についての結果を示す。図より,曲線1,2共 に単一のガス放出過程よりなっていることがわか る。曲線1および2の試料はもともと同一溶湯か らのものであるが,放出されるガス量に差がある のは凝固速度がこの過程で放出される水素の量を 決定することを意味する。この図より,この過程 は強制固溶されている水素に基因することがわか る。 それに反し,常温加工を与えた試料の場合は曲 線3により示されるような2段階に亘る水素の放 出がおこる。これは従来知られていなかった現象 である。図よりわかるように曲線3の第1段階に おいて放出されるガス量は曲線2の場合と大体同 じ値であり,この過程が原子状水素に基因する過 程であることを示す。別の理由から試料内での水 素化合物の存在は否定的であるため,第2段階は 析出した形の水素(気泡)に基因する過程と思わ れる。この過程の機構は必ずしも明らかにされて いないが,第2段階の終了迄に要する時間が材料 の純度により左右されることから再結晶後の粒界 移動の過程と関係するものであるかもしくは不純 物と気泡との何等かの作用に基ずくものと考へら れる。 その他,これ迄測定値の極めて少ない,しかも 大きな差のあったアルミニウムやその合金中での 水素の拡散に関する測定値を求めた。 希土類元素を含むMg合金の研究 大森梧郎,工博麻田宏* Mg合金の中で加工性が比較的容易な合金とし て知られているのはMg―Zn系,Mg―Mn系など であるが,これに少量のCa, Ceなどを添加する ことにより加工性は更に改善されるといわれてい る。そこでMg合金の加工性に及ぼす希土類元素 添加の影響を究明するため,ZE系合金(Mg―Zn ―RE系合金)についてZn, R.E.が展延性および 機械的性質にどのような影響を及ぼすかを調べ, 更にCeが圧延加工性に及ぼす影響を調べるため, Mg―Ce二元系合金を用いて実験を進めている。 ZE系合金については一定条件で溶解,金型鋳 造して鋳物を作り,これより高さ10mm, 10mm φの円柱状試片を切削加工して380℃で20時間加 *東京大学教授,当所参与 図26鍛造性試験によるREと変形抵抗の関係 熱処理後,鍛造性試験機を用いて,Zn,R.E.が鍛 造性に及ぼす影響を変形抵抗を求めることにより 検討した。その一例を図26に示す。 これよりZn濃度が高くなるにつれて変形抵抗 は大きくなるが,REの影響はZn濃度にかかわら ず約0.1wt%で変形抵抗は最小となり展延性が良 くなることがわかった。 機械的性質として抗張力,伸びおよび硬度を測 定し,検討した。Zn濃度が高くなるにつれて抗 張力,伸びおよび硬度は共に高くなるが,R.E.は 写真7 変形帯を生じた冷間圧延組織(×150) Mg―Ce (0.2wt%)合金加工度46% 機械的性質にはほとんど影響を与えないようであ る。また圧延による方向性が認められたが,これ は純Mgについて結晶方位の観点から説明されて いる現象と同じである。 加工性はCeなどの希土類元素添加により改善 されることがわかった。 Mg―Ce二元系合金の焼 鈍材を1%のてい減率で一方向圧延を繰返し,肉 眼的な割れ発生までを最大加工度として比較して 見ると,純Mgで約18%, Ce0.3wt%添加合金で は約40%と加工性は改善された。圧延方向に対す る側断面の顕微鏡写真を写真7に示す。 これより剪断方向に変形帯を生じているのが認 められるが,純Mgでは数少なく現われるのに対 し,Ce含有合金では多数が細かく分布しており, 加工性に有効な作用をしているものと思われる。 また割れはこの変形帯の内部で発生し,そして変 形帯に沿って伝播して行くことがわかった。 六方晶型金属の加工性に重要な影響をもつ結晶 構造(軸比)を検討した。Ce濃度0.3wt%範囲ま での合金の軸比は,純Mgの1.624のそれと殆ん ど変っていなかった。また,Mg―Ce系合金は析 出硬化型であることがわかった。現在この変形帯 について更に詳細な検討を加え,圧延集合組織か らも比較検討している。 希有金属添加によるAl合金の性能向上 に関する研究 工博木村啓造,中野理 純Alは微量の成分元素の添加によって性質が 大いに変化する。特に活性な希有金属を極く僅か に添加することによって,Al結晶中の原子空孔 や転位の運動に影響をおよぼし,その結果材質の 改善に役立つことが期待されているが,実際の製 造技術上の困難が多いためにまだ殆んど研究され ていない現状である。従ってこの研究の第1段階 として製造上の問題点を解決することを検討し, ついでV, Nb, Ta, Cr, MoおよびWなどの Refractory Metalsを添加したAlおよび合金の 性質を調べ,その添加効果を調べた。 これらのRefractory MetalsとAlとの本質的 な相異はその融点,比重の違いが数倍にも達する ことである。W(m.p. 3400℃) Ta (m. p. 2900° C)の融点ではAlの蒸気圧は極めて大で,蒸発 速度が大きく,然も重いRefractory Metalは底 部に沈み,軽いAlは上面に分離して過熱される ため,直接に合金させることはできなし、。また Refractory Metalsは1000℃以上の高温度では 極めて活性で,僅かの量の空気(酸素,窒素)や 炭素などと激しく反応してその性質が変化するこ とはよく知られている所である。従って工学的な 高温取り扱いに際してもすべて真空またはアルゴ ン雰囲気中で行なうことが必要で,これは普通の Al工業とは大変異なる点である。然し乍ら実用 の立場より考えるときはAl合金をアルゴン雰囲 気中で製造することは経済的に無理であるため, 母合金の組成を検討し,最終段階の多量処理の場 合には大気中で取り扱い得ることを目標とし,溶 解方法の影響をも調べた。 純Alに0.1~1%の Refractory Metalsを加え た合金の性質は次のようである。これらの合金は 純Alと同様に展延性に富み,熱間鍛造を施した のち95%の冷間圧延を行っても耳割れなどを生ず ることはなかった。冷間圧延の際,最初の10%加 工までは比較的急激に硬化し,引続き加工度に対 してほぼ直線的に硬くなる。 50%冷間加工を与えた試料についてアルゴン中 100°~450℃でまでの各温度,6000分までの条件 で恒温焼鈍を行ない,冷却後ただちに硬さを測っ た。焼鈍温度と硬度回復率との関係は,再結晶の 初めおよび終りを除いては直線関係が認められ た。1時間焼鈍で軟化を示す温度は,Al―Nb合 金:330° ~350℃, Al―V, Al―Ta, Al―Mo 合 金:240°~360℃, Al―W 合金:360°~400℃, Al―Cr合金:0.1~0.3 %合金では約350℃であ るが,1% Cr合金では400℃以上であった。焼 鈍軟化の活性化エネルギーはAlとほぼ等しく, 含有量により若干の相違があるが,Al―V合金: 6 ×104, Al―Nb 合金:5 ×104, Al―Ta 合金: 7 ×104, Al―Mo 合金:6 ×104, Al―W 合金: 6 ×104 cal/molの程度の値であるがCr1%合金 では8 ×104cal/molの高い値を示した。 Zn―Mgを含む時効性アルミニウム合金に対す Refactory Metalsる添加の影響は次のようであ る。 常温時効の場合は,Al―Zn―Mg合金および微 量のV, NbまたはTaを含む合金も時間の経過と ともに時間を対数目盛にとれば初期はほとんど直 線的に硬さが増す。しかしその勾配はいずれもほ とんど同程度でV, NbまたはTa添加による変化 は認められなかった。 60°~90℃時効ではAl― Zn―Mn 合金に比べて 0.1%V, 0.15~0. 45%Nb を含む合金は,時効初期の立上り開始時間は早く 約3時間で,かつ硬さもわずかに増しているが, Ta添加の場合は5~6時間で影響はほとんど認 められなかった。また立上り開始時間と温度の関 係は,いずれの合金においても交叉する2つのC 曲線状となる。これらの曲線からG. Pゾーン安 定域上限温度を求めることが出来る。Al―Zn― Mg合金の125℃に比べて0.1%V, 0.45%Nbま たは0. 3~0. 9%Taを含む合金はこの交点が135° ~140℃で約10°~15℃上昇する。 タングステンの加工性向上に関する研究 工博木村啓造,工博佐々木靖男,上原重昭 タングステンは金属中で最も融点が高く従って 高温強度も大で高温使用材料としては極めて有用 であるが,降伏応力やFlow Stressが大であり 加工に際しては変形抵抗も大であるため圧延など の塑性加工はむつかしく,高温度で行なうことが 必要である。純タングステンは酸素,窒素や炭素 などの浸入型不純分の量によって機械的性質に大 きな影響を受けるが,高温で活性であるため空気 酸化により汚染されて性質を損なう危険がある。 空気酸化を防ぐため,2段圧延機のロール部分 および加熱炉を作業スペースと共に密閉容器に収 め一旦高真空度になるまで排気したのち常圧の Ar雰囲気として熱間圧延を行なった。加熱温度 は1100~1200℃で,焼結素材の場合には最初の 圧下率を約1.7%とし順次回数を重ねるに従って 圧下率を大にして最終段階の70%近くでは最大27 %までとすることが出来た。圧延温度が低くなる と割れの発生が認められこの安全限界は加工度に よって異なるが,約50%の加工を与えた材料では 800℃以上が安全である。約500℃以下では縦割 れが出来るが耳割れは認められなかった。 高温度変形抵抗は双撃型の試験機を使用しハン マーの振り上げ角35° (7. 26kg-m)で室温より 850℃までの範囲で求めた。焼結多結晶タングス テンの変形抵抗は常温で200kg/mm2であるが試 験温度の上昇に伴なって減少・475℃で100kg/ mm2, 850℃ で73kg/mm2である。 70%加工した板より圧延方向に直角(横材)な らびに平行(縦材)な衝撃試験片(3 mm角)を 切り出し,研磨仕上げをしたのち放電加工によっ てV型ノッチを与えた。小型アイゾット試験機 (3 ft―1b)を使用して室温より450℃までの各 温度で衝撃試験を行ない,破面検査などの結果と 併せ検討して脆性―靭性遷移温度を求めた。 室温では縦材と横材はともに脆性範囲内である ため衝撃値はともに低い値でほとんど同一である 写真8 室温での破面の電子顕微写真 ×4000 写真9室温での破面の電子顕微鏡写真.横縞模 様は亜結晶部を示す×4000 が,試験温度とエネルギー吸収曲線の関係を求め ると縦材では約200℃より横材では約300℃より 立ち上りを示しこれを脆性―靭性遷移温度とし た。この試験条件でのタングステンの衝撃値は延 性領域で縦材では約4kg-m,横材では1.5kg-m である。縦材と横材との間では結晶粒の形状が異 なり,圧延方向に細長く引き伸ばされているため, これを横切って破壊の進行する縦材の衝撃強さが 高い値を示すことは顕微鏡観察の結果と一致す る。 また破断面を光学および電子顕微鏡により観 察,検討した。室温付近の脆性領域においては破 面はほとんどへき開破断を示しているが,局部的 には粒界破断の跡も観察される。試験温度の上昇 に伴なって粒界破断の部分が増大し,遷移温度以 上の温度範囲では粒界破断面が多くなる。写真8 は室温での破面の電子顕微鏡観察で粒界の1点か ら生じたへき開破面が細長い結晶内を伝播して拡 がっているが,結晶粒界では不連続である様子を 示している。写真9中の細かい横縞模様は亜結晶 粒で割れの伝播にほとんど影響を与えない。 湿式亜鉛製錬におけるZinc―Ferrite の研究 東大工博新居和嘉 湿式亜鉛製錬法の基本的な反応である酸化焙 焼,希硫酸による浸出という反応を完全に進行さ せることは容易であり,したがってこの方法によ り複雑鉱を処理すれば高い収率で亜鉛が回収され るであろうと考えられていた。しかし鉄を多量に 含む鉱石では通常の焙焼過程で希硫酸への溶解速 度が小さいZinc―Ferrite (ZnFe2O4) を生じこ れが浸出残渣として残り,亜鉛の収率を低下させ ることが明らかとなった。しかし複雑鉱ではZinc ―Ferriteを生成しないように焙焼することは殆 んど不可能である。 そこでこの研究では①焙焼条件により溶解しや すいZinc―Ferriteを生成すること,および②浸 出液中にFe2+などの還元剤を添加してZinc― Ferrite の溶解を促進することなどによって,貧 鉱や複雑鉱の有効な利用をはかると同時に,現在 行なわれている湿式法の収率向上に資することを 目的とした。 実験は酸化鉄,酸化亜鉛より生成したZinc― Ferrite を硫酸で浸出を行ない,その速度と表 面積との関係143),666),および浸出速度におよぼす 原料酸化鉄32),生成温度155), 686),冷却速度,Fe2 O3/ZnO比,生成雰囲気の影響を検討した。また 溶液中に鉄粉,硫酸第1鉄のような還元剤の添 加,または陰分極などによる浸出速度の変化を検 討した。 その結果,(1)Zinc―Fenriteの浸出速度は表面 積に比例する,(2)原料酸化鉄の影響は小さい, (3)1100℃以上の高温で生成すると単位面積当り の浸出速度(g・min-1・m-2)は増加する,(4) 冷 却速度の影響は1100℃以上で現われ,冷却速度 の大きいほど浸出速度は大きい,(5)Zinc―Fe- rrite がFe2O3を固溶すると浸出速度は小さくな る,(6)真空中で加熱すると浸出速度は増大する, (7)溶液中に鉄粉,またはFe2+イオンを添加すると 浸出速度は大きくなる,(8)試料を陰分極すること によっても浸出は促進されることが明らかとなっ た。 これらの結果からZinc―FerriteはO2-不足型に なるような条件で生成したもの,または陰分極や 還元剤の添加などにより溶解中に結晶表面がO2- 不足型になるような条件では浸出速度が大きくな ると結論された。すなわち,Zinc―Ferriteの希 硫酸中への溶解は表面にあるO2-空孔が核となっ て開始すると考えられる。 これらの結果から湿式亜鉛製錬における収率向上 のための実際的な指針として次のような点をあげ ることができる。 (a) 希硫酸に溶解しやすいZinc―Ferriteを生 成するための焙焼条件は次のようである。すなわ ち焙焼温度は1100℃以上で,酸素分圧は低いほ ど望ましく,焼鉱は急冷する必要がある。またそ の比表面積を大きくするためできれば焙焼後粉粋 することが望ましい。 (b)また焼鉱を浸出する際にFe2+などの還元剤 を添加することは有効である。しかしFe2+を多量 に添加すると次の浄液,沪過操業で困難を生ずる ので浸出液中に電極を挿入し,Fe3+/Fe2+の比を 常に小さく保つようにするのが有利であろう。 執筆者所属 科学研究官岩村霽郎 非鉄金属材料研究部長木村啓造 非鉄金属第1研究室長 渡辺亮治 斎藤一男,貝沼紀夫 非鉄金属第3研究室長 高橋仙之助 軽金属研究室長松尾茂 大森梧郎,平田俊也 希有金属研究室長 佐々木靖男 上原重昭,中野理 非鉄金属材料研究部主任研究官 辻本得蔵,新居和嘉 特殊金属材料研究部 特殊金属材料研究部は原子炉構造材料研究室,特殊冶金研究室,アイソトープ利用研究室および 超耐熱材料研究室の4研究室で構成されている。 特殊金属材料研究部の各研究室の研究は〝特殊〟という点以外には共通点をもっていない。即ち, 取り扱う材料においてか,あるいは取り扱いの方法においてかが一般金属材料の研究の通念から見 て特殊なのである。換言すれば特殊金属材料研究部は,つねに分裂して新しい部を構成すべき要素 を内包しているということができる。このようにして39年度には特殊金属材料研究部から腐食防食 研究部が誕生し,40年度には超耐熱材料研究室が新設されている。 特殊金属材料研究部は金属材料の研究分野という大きな円の周辺部を代表する立場におかれてい る。したがって所属する各研究室の研究分野は必然的に金属学以外の他の学問技術の分野と最も活 発に接触することによって自からの分野を開拓拡充して行かねばならないという性格をもっている。 このように,特殊金属材料研究部の担う役割は,特殊の材料の開発と特殊の方法の探求を通じて新 しい材料研究分野を開拓して行くべき中核を育成することにある。 原子炉構造材料研究室は,熱中性子炉を対象とするベリリウム,高速炉を対象とする高融点金属 モリブデン,タングステンおよびジルカロイ等,現在の段階ではまだ実用されていないが諸性質か ら判断して将来原子炉構造材料として用いられると予想される材料の加工性と機械的性質の向上に 関する研究,および,将来の核燃料原子炉用セラミックスを予測した酸化物等の格子欠陥の研究を 行なっている。 特殊冶金研究室では,原子燃料としてのトリウムの液-液抽出による精製および融解塩電解によ る金属トリウムの製造から出発した。しかしながら,現在はこれらの個々の過程に関する基礎研究 に立ち返り,抽出効率および電解効率を向上させようと努力している。トリウムを含む希土類鉱石 の処理は必然的に希土類元素の相互分離の問題にまで発展し,現在この研究も行なわれている。し たがって,本来原子力開発の線に沿って出発した研究室であったが現状においては有機溶媒抽出機 構の研究と融解塩の構造の研究がこの研究室の基礎テーマとなっている。 アイソトープ利用研究室は当所におけるラヂオアイソトープの共同利用の場を管理し,現在ラヂ オアイソトープを含む金属材料を取り扱う溶解室,鍛圧室,機械加工室,放射能測定室,オートラ ヂオグラフ室の外に,ラヂオアイソトープ関係の物理実験室と化学実験室が整備されている。アイ ソトープ利用研究室の独自のテーマとしては,当所の研究方針にかんがみ,鋼中非金属介在物の生 成過程をラヂオアイソトープを用いてミクロオートラヂオグラフ法で追跡する研究,鍛圧品におけ る流れの追跡から作業の合理化を目指す研究を取り上げて来た。前者は現在も当所における総合研 究——鋼中非金属介在物に関する研究——の一環として研究が続けられている。後者は一応の成果 を得て40年度で終了した。これに代って41年度からは,超高純度金属材料の製造の必要から,超高 純度金属の精製過程をラヂオアイソトープを用いて追跡するという新しいテーマに着手した。 超耐熱材料研究室は金属と非金属の境界分野をその研究対象として40年度に発足した研究室で, 金属材料と非金属材料の間のギャップを埋めることをその使命としている。これらの材料の中には ロケット・ジェット材料,MHD発電用材料,あるいは真空熱電対材料等すでに利用目標の明確な ものもあるが,まだまだ無限の可能性が残されている。この研究室では先づ目的の明確な材料とし て炭素系超耐熱材料の研究をロケット・ジェット材料を対象として取り上げた。41年度は更に硼化 物,炭化物等の配向性ある結晶の製作条件および無機質繊維の研究を行なっている。 電子ビーム溶解したモリブデンの加工 性の研究 工博津谷和男,有富敬芳 モリブデンなどの一群の高融点金属は液体金属 との両立性がよいために高速中性子炉の構造材料 に用いられる可能性があるが,現在はまだ炉材料 としての特性を検討するまでにはなっていない。 この研究ではモリブデンを構造材として用いるた めに必要な溶解加工法の確立を目標として実験を 行なって来た。 実験の初期においては,まずアーク溶解材と焼 結材について比較試験を行ない,溶解材の方が低 い温度で再結晶すること,再結晶したモリブデン の破壊はおもに粒界から始まること,などを確認 した14)。これに続いて2000A真空アーク炉により モリブデンの消耗電極アーク溶解を行ない,溶解 時の電圧,電流,電極送り速度などの溶解条件を 確立した。 アーク溶解実験の結果この方法は高純度の材料 を作る手段としては限界があることを認めたの で,電子ビーム溶解を試みることとした。当時こ のような装置は国内にはなく資料も少なかったの で,まず7.5kWの出力を有する電子ビーム炉(国 産一号機)の試作を行なった。この炉を使ってジ ルコニウム,ハフニウム,ニオブ,モリブデン, タンタル,などの新金属の電子ビーム溶解法につ いて検討した436)。モリブデンについては10- 5mm Hg程度の真空中で溶解しただけでは延性のある 鋳塊が得られなかったので,炭素添加による脱酸 を試みた。その結果0.07%程度の炭素添加が曲げ 延性を著しく改善することを認めた577), 437)。また この脱酸効果を容易に検出する手段として,いわ ゆるFractographyによる観察を行ない,延性と 粒界組織の間に密接な関係があることを認めた。 以上の実験により加工の可能なモリブデン鋳塊 の溶製条件がわかったので,これによって作った 鋳塊を圧延加工して板を作り,その性質を粉末冶 金法のものと比較した619), 448)。その結果電子ビー ム溶解 したものの方が焼結の もの よ りも遷移温度 が低く低温の延性がすぐれていることが判った。 以上の炭素添加の効果に続いて,ボロンおよびチ タンの添加も機械的性質を改善することを認め 写真10電子ビーム溶解したモリブデン鋳塊 (直径40m m) た。 これらの添加元素の効果の機構は必ずしも同一 とは考えられないので,現在その改善理由につい て検討している。添加元素を加えた単結晶試料の 引張試験および粗大結晶試料の引張試験を行なっ ているが,炭素およびボロンの効果は粒界強さを 増大させることにあるようである。 これらの実験試料の製作はいずれもボタン溶解 およびボート溶解によるものであるが,これに加 えて50kW電子ビーム溶解炉を用いて消耗電極の 滴下溶解を行ない,比較的大型の鋳塊を溶製する ための技術を検討した189)。その結果写真10に示 したような鋳肌の良好な鋳塊を,ほとんど炉内放 電を起すことなく極めて安定した溶解条件で作製 する条件が確立された。 原子炉用ベリリウムの成型加工の研究 工博津谷和男,理博後藤 勝 ベリリウムはガス冷却原子炉の燃料被覆材とし て期待されているが,常温附近の温度で延性の低 いことが最大の問題点になっている。この研究は この延性を支配する因子を検討して問題解決の資 料を得ようとするものである。 ベリリウムはその取扱いを誤ると人体に障害を およぼす恐れがあり,実験室内のベリリウムの空 気中濃度は24g/m3以下にすることが必要である。 それゆえ,この研究の開始に当ってはまず試料の 溶解加工のための専用実験場を建設した。この実 験室では1時間に20回以上の換気が行なわれる。 また実験室にはベリリウムモニター,ヒュームフ ードなどを設置し,38年4月より実験を開始した。 ベリリウムを燃料被覆材に使う場合に最も重要 図27ベリリウムの延性と試験温度の関係 なのはパイプの円周方向の伸率である。このよう な試験用の管材を国内で製作することは技術的に 困難であったので,適当な集合組織を有するベリ リウムの圧延板を試料としてその延性の異方性を 常温から400℃までの温度範囲で検討した447)(使 用した板はフランスペシネ社の市販純度の圧延板 である)。この試験材の集合組織は,板の圧延方 向がほぼパイプの長さ方向のものに等しく,圧延 に直角な方向はパイプの円周方向に該当する。こ のような板材に次の3種類の熱処理を行なった。 (1)900℃× 2hr焼鈍,(2)900℃×2hr 焼鈍→700℃ ×l20hr焼鈍,(3)700℃×l20hr焼鈍。試料はこれ らの処理で再結晶するが,再結晶粒の大きさは(1), (2)で約180μ,(3)で約40μであった。したがって(1), (2)を比べれば700℃における析出処理の効果を, また(1)(2)の比較で微細化の効果を知ることができ る。図27はこれらの処理による延性の変化を示し たもので,熱処理による変化は横方向試料の方が 大きく,また横方向試料では析出処理よりも微細 化の効果の方が延性増大には有効と考えられる。 以上の結果から市販純度のベリリウムの延性改善 には結晶粒微細化が効果があると思われるので, 引続いて加工度と再結晶粒度などの関係を検討中 である。 以上のようなベリリウムの延性の多寡は塑性の 異方性と密接な関係を有するものと考えられてい るので,ベリリウムの硬さの異方性を検討する実 験を最近開始した。この実験ではベリリウムの単 結晶を引上法により製作し,その硬さの方向によ る変化をヌープ圧子を用いて測定した。測定の温 度範囲は前の実験と同じく常温から400℃まで で,この硬さの方向による差違をなるべく少くす ることにより,延性の異方性の小さいベリリウム を発見しようと試みている。 融解塩の基礎的研究 工博河村和孝 トリウム,トリウム合金,ニオブ58),ボロン 314),など原子炉用特殊金属の製造に融解塩電解法 を用いているが,それと併行して基礎的立場から ,融解塩の構造,電解機構,融解塩用耐触材料の 電気化学的性質を対象に研究を進めている。 しかしここ数年来の興味の中心は融解塩の構造 にあって,主として動力学的現象(電気伝導度, 拡散係数,粘性係数,輸率など)の実験的測定値 を知り,それらの動力学的測定値がとられた特殊 条件と非可逆熱力学の現象論的方程式から,動力 学的現象の共通のパラメーターである融解塩構成 イオンの速度恒数(以後これをFriction Coeffi- cient と呼ぶことにする)を求める研究を行なっ ている。 Friction Coefficientは恒温恒圧下N成分系で は次式によって定められるものである。 ここで∇μiは化学ポテンシャル勾配,Ziは考え ているイオンの絶対電荷,∇φは電気ポテンシャ ル勾配,γikはiおよびkイオン間のFriction Coefficient, Xkはkイオンのモル分率,はそ の速度,他は普通の常数である。(1)式からも明ら かなようにFriction Coefficientはiイオンがk イオンに対し単位の速度差を生ぜしめるための macroscopicな力と考えることも出来る。したが ってmicroscopicな立場 からモデルを考えた場 合のイオン間に働らくクーロン力,ファンデアバ ールス力,分極力などとの対応がつけられること になる。 表1はクロノポテンシオメトリー(定電流電解) を用いて求めたAg1+の拡散係数と,文献に記載 されている電気伝導度,輸率を用いて計算した NaNO3―KNO3―AgNO3浴のAg1+濃度が小さ 表5 350℃におけるNaNO3―KNO3―AgNO3浴中の各種Friction Coefficient (Ag1+濃度が小さい場合)313) (Joule sec cm-2 mol-1×10-8) NaNO3 mol% 100 78.11 54.33 28.39 0 γ14 3.53±0.22 3.37±0.34 3.37±0.34 3.37±0.34 3.21±0.34 γ24 3.53±0, 22 3.86±0.10 4.18±0.11 4. 72 ± 0.14 5.37±0.28 γ12 0. 88±0.23 0. 88±0.23 0.77±0.90 0. 42±2.10 γ34 3. 94±0.14 4.26±0.18 4.46±0.12 4.70±0.10 5.12±0.50 γ13 2.19±1.70 1.97±0.82 2.11±0. 30 2.11±0.30 γ22 0. 82±0.21 0.58±0.75 0. 58±1.16 ~0.58 ~0. 58 γ33 ~1.74 ~1.74 1.74±1.16 1.74±0. 77 1.70±0.34 γ23 1.06±0.33 1.06±0.75 1.06±0. 68 1.06±0. 60 1.06±0.56 γ11 2.27±4.1 1.23±5.3 1.94±7.4 1.43±7.5 0.42±4.5 い範囲での各種イオンのFriction Coefficientで ある。表中1はAg1+, 2はNa1+, 3はK1+, 4 はNO1-を表わしている。表からも明らかなよう に cation-anion 間の Friction Coefficient は cation-cation間のそれよりも大きく,強いクー ロ ン力の存在を示している。 又NaNO3中でのγ12 がほとんどγ22と同じ値,γ14もγ24と同じ値を示す ことから,NaNO3中ではイオン間のinteraction という立場に立つとNa1+もAg1+もほとんど区 別出来ない程似ているということがいえそうであ る。 電解機構については,実際の電解の際,理論分 解電圧以上に必要とする電圧――過電圧を陽極過 電圧,陰極過電圧として測定し電極近傍での電気 化学的反応の機作解明を試みており,融解塩用耐 触材料の電気化学的性質の研究としてはガラス状 カーボンの電極としての特性を電気化学的な面か ら検討している。 希土類元素の製造に関する研究 武内丈児,中村恵吉,安藤勉 モナズ石から原子炉用金属トリウムを製造766) 767), 98), 99), 71), 758)する研究に引き続き,その際生 ずる多量の希土類元素を相互に分離回収する実験 を重ねている。主として用いている分離法は有機 溶媒抽出法であり,有機溶媒としてはT. B. P. (Tributyl phosphate),高分子アミン,D2EHP A (D2 ethyl hexyl phoshoric acid) をケ ロシ ンにとかしたもの,対象に選んだ希土類元素は Cel07)とY312)である。 この際希土類元素とT.B.Pは(nLn(NO3)3 + m TBP→(TBP)m{Ln(NO3)}n (Ln はランタナイド) のような溶媒和化合物をつくり,これがTBP ― ケロシン有機相にとけ,希土類元素と高分子アミ ンは で示されるような陰イオン交換し,希土類とD2 EHPAでは のような陽イオン交換を行なって有機相にとけこ むとされている。 われわれは最近,このような有機溶媒と希土類 との反応機構についての構造化学的な面からの探 求に興味を持ち,結合状態,結合の量的関係,存在 するspeciesの決定,抽出の速度などを明らかに することを目的として赤外吸収スペクトル法715) 698)および電子スピン共鳴吸収法を用いた研究を 進めている。 その結果の一例を示せば,希土類―T. B. P間 においては結合は主としてTBPのphosphorylの 酸素と希土類金属イオン間で起ることが明かにな り,このことは赤外吸収スペクトルでphosponyl 伸縮振動の低波数側へのシフトから確認できた。 結合の量的関係,存在するspeciesの決定例と しては,TBP溶媒中では希土類元素は一種類で はなく,少くとも三種類以上存在し,Dy, Y, Er などの重希土類では配位数が比較的低く, La, Ce, Ndなどの軽希土類では比較的高配位の組成 を有することを認めた。 以上の結果をより定量的に得るために希釈剤中 でTBP濃度を一定として希土塩濃度を変化させ て調べた結果,La, Ce, Ndなどでは4配位の他 に5配位を生成する傾向があることが認められ, Sm, Gdは主として4配位,Dy, Y, Erなどでは 4配位の他に3配位を生成することがわかった。 これらの配位の傾向の変化はイオン半径と密接な 関係があり,例えばイオン半径の大きなLaから Ce, Ndと小さくなるにつれて5配位の傾向はじ ょじょに減少するようである。 抽出速度についてはまず有機相と水相の分相性 を,アミンについて調べ分相性におよぼす水相, 有機相それぞれの温度,粘性,表面張力などの物 理的因子と,組成などの化学的因子についての影 響を系統的に明らかにし704),更に進んで現在は有 機相に抽出されるspeciesの生成速度を知るため に電子スピン共鳴吸収を用いた研究を続けてい る。又抽出速度に関連するが抽出行程の際有機相 と水相が完全に分離しないで有機相と水相の間に 中間相(第3相)を形成する場合があり,とくに D 2 EHPAの場合希土類としてDy, Y, Erなどの 重希土を用いた時に著しい。第3相は勿論分相の 立場からは好ましくないので出来る丈なくするこ とが望ましいが,化学組成的には第3相は有機 相,水相ともことなる――いいかえるとある種の 金属イオン,Y,などは選択的に濃縮されること がわかったので,現在金属分離行程として第3相 の利用の可能性を検討している。 塑性加工における組織の流れ検出への RIの利用 工博前橋陽一 本研究は鍛圧品の品質向上の研究の一環として 行なったものである。 塑性加工においては変形機構の究明や新しい加 工法の開発のために,加工時の変形過程を知るこ とが重要な問題となっており,従来よりプラステ ィシン法・格子法あるいは異材嵌入法などが用い られていたが,それぞれ欠点があり加工時の変形 状態を正しく知る上に問題があった。RIを用い て加工材そのものの中にラベル線を入れ,加工時 の変形を追跡することにより,直接的に変形の実 態を把握することが出来ると予測された。 本研究では加工材中へのラベル法の開発,各種 の塑性加工への適用,及びそれらに対する従来の 方法との比較を目的として実験を行なった。 R Iラベル法としては,加工時の変形が二次元 的にのみ行なわれる部分に対してはRIインク書 法を,また,変形が三次元的に行なわれる部分に 対しては鍍金圧接法を用いて初期の目的を達して いる。前者は市販インク中にアイソトープ溶液を 添加したものを用いて測定面に罫書きするもので あり,従来の針による罫書法に比べ,材料の機械 的性質に影響を与えず,また,高温処理にも耐え るものである。鍍金圧接法は試験材をラベル予定 面で切断し,切断面を母材と同一核種のアイソト ープにより鍍金し,その面を圧接により一体化し 試験片とする方法である。 対象とした塑性加工法は,熱・冷間板圧延,熱 間棒圧延,据込加工及び熱間衝撃押出加工である。 熱間板圧延においては,S10C材20×30×120 mmを対象とし,試験材中に縦あるいは横に2乃 至4層のR Iラベル面を入れ,1200℃全圧下率 75%迄の加工について行なった。加工後の各断面 での変形はマクロオートラジオグラフによってい る。本実験の結果,熱間加工においても,本実験 に用いた程度の小型材に対してはプラスティシン による推定に問題のあることが明らかとなっ た237)。 冷間板圧延において,S10C材3 ×30×120mm のものにつき,前記と同様にラベルしたものを用 い,全圧下率75%迄圧下試験を行ない,冷間での 変形状態を測定した。従来,冷間加工における各 方向の断面での変形を知ることの出来る適切な方 法はなく,RI利用により始めて行ない得るもの である237)。 大型圧延機による棒圧延についても前記と同様 の方法で試験を行なっている。 据込加工においては,SI5C材40φ ×50mmの試 験材を対象とし,中に数層のR Iラベル面を入れ, 熱間プレス・熱間及び冷間衝撃圧縮により5~87 %の各種の据込みを行ない,圧縮速度・圧下率・ 表面状態・加工温度の変形に及ぼす効果について, マクロオートラジオグラフにより検討した。高圧 縮時においては油潤滑による高温衝撃圧縮が最も 各部均一の変形をすることが明らかとなった。 高温衝撃押出においてはS15C38φ×60mmを 対象とし,各種押出比・押出圧力下での変形状態 につき検討を加えた。本実験においてはRIラベ ル面を持つ一体化試験片と共に,試験片を縦断し 分割面にRIインクによりラベル線を入れた分割 試験片についても実験を行ない,この種の加工に おいては分割型試験片でも実体と同様の変形が行 なわれることを明らかにした。 これらの実験を通じ,RIを利用する方法が小 型材や冷間加工材,あるいは加工過程において中 心部に引張応力を生ずる加工に対して特に優れて いることが明らかとなったが,これらの他,黄銅 合金の熱間加工などのように加工過程において変 態を伴なう種類の材料の加工時における変形測定 にも適していることが予測されている。 特殊耐熱材料に関する研究 工博渡辺治 近年宇宙科学,超高温―超高圧の分野の研究の 発展にはめざましいものがある。このような高度 な科学技術の進展に伴って高温で使用される材料 の開発が著しく要求されるようになってきた。本 研究室はこの時代の要求に答えるために新しく設 置された研究室で現在本格的な実験に着手するに 至っていない現状にある。したがってここには今 後の研究方向の一端を記し度い。 高温耐熱材料としての金属材料に関してはこれ 迄の所多くの研究が行なわれて来ているが,より 高温での使用条件によっては従来の金属材料に限 らず非金属物質をも含めて考える必要があると思 う。この種の非金属物質としては黒鉛,炭化物, 硼化物,酸化物,硅化物及び硫化物等が一応考え られる。将来これ等非金属物質材料単体あるいは 非金属物質と金属との複合材としての材料の新し い開発が科学技術の進歩を一層速進するものと考 える。それ故本研究室においては上記のような非 金属物質中特に黒鉛,炭化物,硼化物系の物質を取 上げ,これ等の物質を配向性のある結晶状のもの として得,これの高温における諸物性特に熱的, 電気的性質について調べると共に,それ等を用い て耐熱材料として要求される諸条件に適用するよ うな新しい材料の開発研究を進めて行き度い。こ の様な方針の下に気相反応装置によって先づ配向 性のある上記物質を作ることから研究を始めるべ く準備段階である。 又一方近年金属繊維や無機質繊維の研究も盛ん に進められつつあるが,これ等はそのBulkの状 態のものと比較して機械的性質や物理的性質が異 なることが認められることから,その特性を利用 して,これ等の繊維と各種素材とを組合せて高温 材料としての有用性が期待出来る所から,この分 野の基礎的研究も進めて行く予定である。 金属酸化物及びⅣ族半導体の格子欠陥 の研究 工博橋口隆吉*,高橋 聰 1.還元ルチルの格子欠陥の電子スピン共鳴吸 収(ESR)による研究 ルチル(TiO2)を還元すると,酸素の不足した 半導体となるが,その極低温(1~50°K)におけ る電気的性質は極めて興味深く,既にわれわれは ある程度の研究成果を(一部は本研究室において, また一部は東大において)得ることができた1)~3)。 酸素が不足した還元ルチルの中に形成される格子 欠陥が如何なるものであるかについては,今日ま でに幾つかの説がある。その主なものは,①酸素 空孔であるとするもの,②格子間チタン・イオン であるとするものなどである。これらの同定に関 しては,重量(比重),電気伝導度,ホール係数な どの測定,電子スピン共鳴吸収の観察などによる 研究が多くの研究者によって行なわれているが, 今日までのところそれらの結論は必ずしも一致し ていない。筆者らの見解では,多くの研究者の結 論が一致しない理由は,唯一種類の格子欠陥が存 在するのではなく,幾つかの種類の欠陥が共存し ているからではないかと考えているが,事実その ような事態を裏付ける結果をわれわれは得てい る2),3)。 格子欠陥の最終的な同定は,現在のところ極め て困難な状態にあるが,それらの格子欠陥が,格 *東京大学教授,当所所付 子欠陥準位伝導(1~10°K)を起し,電子スピン 共鳴吸収のスペクトルを生ずる(l~20°K)こと は事実である。それ故われわれは,まずそれらの 欠陥の挙動を,還元方法,還元温度,測定温度そ の他の各種条件の関数として追求することに重点 をおいて研究を進めている。 研究手段としては,現在主としてESRを使用 している。(電気的測定は東大において継続し, ESRの成果と関連させている)。現在までに明ら かになったことは,主要なE S Rスペクトルが少 くとも4種類観察されることである。その中の一 つは P.F. Chester および伊達 ら が, 格子間チタン ・イオンであると解釈しているものである。これ らのスペクトルに関して結晶の回転によるg―シ フトが現在詳細に求められつつある4)。 2.ゲルマニウムの格子欠陥の電子スピン共鳴 吸収による研究 電子スピン共鳴(ESR)によるシリコンの格 子欠陥の研究が著しく進歩しているのに,ゲルマ ニウムの場合には殆んど見るべき成果がないの は,いろいろな理由から,ゲルマニウム中の点欠 陥に基づくスペクトルの観察が困難であるからで ある。われわれはいわば間接法ともいうべき方法 と,複合欠陥を観察する方法によって,この困難 を克服することを試みている。間接法とは,不純 物のスペクトルが出るような試料中に,例えば焼 入れによって空孔を導入し,不純物のスペクトル を消失させるという方法であって,ある程度の成 果を得ることができた。複合欠陥の観察は,これ も極めて困難な問題であるが,単純な点欠陥(例 えば空孔)よりは容易であると考えられ,これに ついてもある程度の成果が得られる段階に達し た。 執筆者所属 特殊金属材料研究部長坂田民雄 原子炉構造材料研究室長津谷和男 有富敬芳,高橋聰 特殊冶金研究室長河村和孝 武内丈児,中村恵吉,安藤勉 アイソトープ利用研究室長前橋陽一 超耐熱用材料研究室長渡辺治 特殊金属材料研究部主任研究官後藤勝 電気磁気材料研究部 電気磁気材料研究部はわが国の電気磁気材料の性能の向上と製造法の改善,電子工業用の新材料 の開発に関する研究を担当している。 研究の分野を大別すると (1) 主として金属,合金を用いる計測材料,磁性材料の研究, (2)半導体材料の研究, (3)高純度金属の研究に分かれる。 (1)の分野では,弾性材料,接点材料,軟質磁性材料,永久磁石材料の研究が行なわれ,第1研究 室と第2研究室が担当している。弾性材料の分野では,初期において燐青銅弾性材料の溶解条件の 研究が行なわれたが,その後はステンレス系の非磁性,耐食性弾性材料の研究に重点がおかれ,オ ーステナイト系18―12ステンレス鋼の低温焼鈍効果,添加元素の影響が研究された。接点材料はそ の性能が複雑な条件によって支配されるため,基礎的研究の面で未開拓の材料であるが,この点に かんがみ,まず各種の性能試験機を試作し,性能を確かめつつ材質の改善をはかる方向に研究がす すめられた。現在までにAg系中負荷接点材料として,内部酸化によるAg―CdO―NiO系接点材 料がきわめてすぐれた特性をもつことを明らかにした。 軟質磁性材料としては,最初に加工の困難な材料とされていたFe―Al系合金について,その溶 解加工法を確立し,添加元素による加工性,磁気特性の改善をはかった。この系の合金については, さらに粉末冶金法による製造が検討され,高純度水素雰囲気中の予備焼結を行なうことにより,加 工を容易にし十分な磁気特性がえられることが明らかとなった。粉末圧延法をFe―Ni系合金に応 用する研究も行なわれある程度の成果をえた。特殊な軟質磁性材料として電着による薄膜磁性材料 の製造法の研究を進めている。永久磁石材料としては特に微粉末の成形による材料をとり上げ現在 までのところ水銀陰極電解法によるFe, Fe―Co粉末を用いる永久磁石について,製造法や性能を 検討しほぼ終了した。さらに気相分解,還元などによる粉末の製造の研究に着手しようとしている。 (2)の分野では金属間化合物半導体,酸化物けい化物半導体を材料の面から系統的に研究を進めて きた。前者は金属間化合物研究室が,後者は金属酸化物研究室が担当している。これらの研究対象 はきわめて広いから,研究方針として有望と思われる一定の分野に焦点をしぼり,その範囲内では 徹底的,系統的に研究するやり方をとっている。金属間化合物では,Ⅱ―Ⅴ族およびⅡ―Ⅳ―Ⅴ族 の組合わせとそれらの間の固溶体,酸化物,けい化物では遷移金属を基としたものについて,その 製造法と性質がしらべられた。基礎的な面だけではなく応用的な面としては,けい化物半導体を高 温用の熱電素子として実際面に応用する研究も一部成果をみた。 (3)の高純度金属の研究は,近年電子工業用の材料がきわめて高純度の原料を要求するところから 始まったが,このような研究は一般の金属研究の基礎となるので,長期的な目標で進めている。た だし当部における研究は主として物理的精製法に限られている。低融点金属としてZn, Teの帯精 製効果の研究を終り,最近は高融点金属の帯精製について研究を続けている。また,高融点金属の 一つであるCrについては,特に初期から,電解による製造から始めて,高純度精製と加工による 延性の改善,その基礎的な機構の研究が行なわれ,一応終了している。以上高純度金属に関連した 研究は主として高純度金属研究室,第1研究室が担当している。 その他,総合研究として,超電導マグネット材料に関する研究が高純度金属研究室によって行な われている。 また,第1研究室には昭和39年から特殊溶解班がもうけられ,電子ビーム溶解,帯溶融精製など の高精度の溶解技術を必要とする溶解作業に関して,所内の依頼作業に応じてきている。 銅基弾性材料の性能向上に関する研究 工博故小西芳吉*,工博森本一郎,前田 弘 学術振興会鋳物研究第24委員会の研究課題「燐 青銅の溶解に関する研究」に協力し,筆者らは主 として真空および大気中溶解によるインゴットの 作成並びにその検査を担当した。燐青銅はPB70 を目標として,真空および大気中溶解の別なく同 一組成の溶解を行った。 まずこれら試料について鍛造性試験を行った結 果は図28に示す通りであって,真空溶解試料は大 気中溶解のそれに比較して大きな変形抵抗を示し ている。これは試料の分析値からも明瞭に認めら れたが,脱酸剤としての燐の歩留りに原因してい ることは明らかである。燐青銅に許容される燐の 量は普通0.05~0.25%とされており,これ以上で は特性に悪影響をおよぼすことは事実である。し たがって真空溶解の場合の燐の配合には充分なる 注意を要することが指摘される。また真空溶解で は鋳込時における湯溜りの温度低下が著しいた め,ときとして必要以上に溶湯の温度を上昇せし めたり,あるいは湯溜りの穴径を大きくしたりす る場合が多いが,このような操作は健全なインゴ ットを作成する上に重大なる障害になることは当 然であって,X線探傷およびインゴット縦割り面 *元第1部部長,昭和33年9月死去 の蛍光探傷の結果からも明らかに認められた。し かもこの欠陥の発生状況は真空溶解および大気溶 解の別なく湯溜りの穴数および穴径に大きな影響 をうけることを指摘した。 191)192)659)660) 高導磁率Fe―Al合金の製造に関する研究 工博森本一郎,前田弘 加工のきわめて困難である高導磁率Fe―Al合 金の製造方法を確立し,さらに添加元素による加 工性ならびに磁気特性の改善を目的としている。 Fe―Al合金はAl量の増大に伴って磁気特性は 次第に向上し,約16%付近の組成においてすぐれ た磁気特性を示す。一方加工性はAl量の増加と ともに困難となるが,原料,地金ならびに真空溶 解法を考慮し,1000~1050℃における熱間圧延, 550℃付近の温間圧延を経て冷間圧延を行なえば 特性のすぐれた薄板を比較的容易に作成できる。 磁気特性におよぼす添加元素の影響に関しては 各種元素について検討した結果Fe―Al―Mo系に きわめて興味ある事実を認めた。図29からわかる ように,この合金のすぐれた磁性を示す組成範囲 は二元系に比較して明らかに広く,Mo 3 %, Al 14. 6%付近において特にすぐれた特性を示し, μ0=8000,μm= 124000, He=0. 020Oe が得られ ている。また最適成分が低Al側に移行するため 加工性をも改善する。 図29 Fe―Al, Fe―Al―Mo の磁性 図30 Fe-Al-Mo合金の急冷温度と磁気特性と の関係(各温度より水中急冷) Fe―Al―Mo合金の熱処理は二元系と同様,規 則不規則変態と密接に関係し,急冷温度や冷却速 度に著しく影響される。図30に示すように最適の 磁性を得るためにはほぼFeAl相範囲の550℃付 近より水中急冷することが心要で,油中急冷や空 気中放冷では著しく特性を低下させる。低温側, 高温側での低下はそれぞれFe3Al相の形成および 焼入歪によるものと思われる。 一方Fe―Al合金の特質である硬質にして高い 電気抵抗を有する点に関してはFe―Al―Mo合金 についても全く同様で,耐熱性もすぐれている。 耐食性弾性材料の製造に関する研究153)244) 244)673) 工博森本一郎,鈴木敏之,土方政行 最近ステンレス鋼がバネ材料として,特に電子 機器用の精密バネとして用いられるようになった が,これは電子機器の発達がバネの使用条件に変 化をもたらし,それに伴う要求の高度化を従来の 銅合金系冷間加工低温焼鈍型バネ材料では満し得 なくなった結果である。当研究室では18―12ステ ンレス鋼のオーステナイトが冷間加工に対して極 めて安定であることに注目し,秀れた耐食性とベ リリウム銅に匹敵するバネ特性に加えて,非磁性 を特徴とするバネ材料を開発する目的でその諸性 質と添加元素の影響をしらべた。 本研究は昭和35年度より開始され,最初ステン レス鋼の加工および熱処理条件の検討とその機械 的性質,バネ特性,磁性,耐食性等をしらべ,引 図31低温焼鈍による諸性質の変化 続き機械的性質とバネ特性の改善を目的として Mo, WおよびVを添加してその効果をしらべ た。その結果Moの添加が最も有効であることが わかり,昭和38年度で完了した。研究の概要は次 の通りである。 冷間加工した18―12ステンレス鋼を500℃付近 の温度で焼鈍すると,冷間加工状態に比べ硬さ, 引張り強さおよびバネ限界値は増し,特にバネ限 界値の増加が著しい。また,耐食性は同じ処理を した18―8ステンレス鋼よりも秀れ,透磁率の測 定から,強度の冷間加工をおこなってもその値が 1.01をこえないことから非磁性のバネ材料として 使用できることがわかった。18―12ステンレス鋼 にMo, WおよびVを数%添加すると機械的性質 とバネ特性はいづれも改善される。しかしWとV は強いフェライト生成元素であるため冷間加工に よってマルテンサイトを生じ易くする。したがっ て非磁性という観点からはそれらの添加は望まし くない。図31は冷間加工した18―12―3 Moステ ンレス鋼の焼鈍に伴う諸性質の変化を示したもの である。 電気接点材料に関する研究 工博森本一郎,佐藤充典,土方政行 電気接点材料の性能が機器の精度を高め,安定 した作動を保つ上に重大な影響をおよぼすことは 明らかである,しかしながら接触部においてはそ の機構はもとより接点材料そのものについても接 Ag―12Cd Ag―12Cd―0.3Ni 写真11 Ag―12cdおよびAg―12Cd―0.3Niの内部酸 化組織 触障害を誘発する複雑な諸要因を包含するため, 的確な対策を施し得ないのが現状である。よって 本研究は各種の接点材料について系統的に接触障 害の諸要因を解明し,これらの結果にもとづいて 新しい材料の開発を図っている。 当面の問題として筆者等は中負荷用接点を対象 に,主としてAg―CdO系,Ag―Ni系を中心とし た各種材料について,溶着,消耗,接触抵抗,ア ーク特性等の測定を行い,接点製造上の諸問題と の相互関係を明らかにして特性の向上を図ってい る。 Ag―CdO系内部酸化接点は電気および熱伝導 度が高く,耐溶着性,耐消耗性,接触抵抗の安定 性に富み,すぐれた特性を示す。しかしながら従 来のAg―CdOでは内部酸化速度の増大を図って 高温度において処理すれば著しく結晶粒および CdOを粗大化し,接点特性に多大の支障をきた す。よって筆者等はこれらの欠陥を補うべく各種 添加元素の影響を検討し,Niの微量添加に興味あ る事実を認めた。写真11はAg―12Cd―0. 3Niと 従来のAg―12Cd合金との内部酸化組織である が,Ni添加が均一微細なCdOの分散に著しい効 果を示すことは明らかである。図32はAg―Cd― Ni系合金内部酸化材のCd量と溶着特性との関係 を示す測定結果の一例である。図から明らかなよ うにAg―12Cd―0. 3Niの内部酸化材が最もすぐ れた耐溶着性を示し,この内部酸化処理温度は700 ~750℃が最適であることを認めた。一方Ag― 図 32 Ag― C d― N i系 内 部 酸 化 試 料 の 溶 着 特 性 Ni系焼結接点材料では,Niの成分が5~10%の 範囲では純Agよりもはるかにすぐれた耐溶着性 を示すが,10%以上のNiを含む領域では逆に耐 溶着性は低下する。 電着磁性薄膜に関する研究 工博森本一郎,前田弘,玉岡多賀則 最近磁性薄膜が記憶素子として注目され,電子 計算機の高速化,小形化,低電力化等に多大の期 待がかけられている。しかしながら均一性のある 薄膜を量産することは非常に困難で.現在種々の 方法が試みられている。それらの内で電着法は簡 単な設備で量産に適し,安価な素子を製造するこ とができる点で非常に有望である。 この点に立脚して筆者らはFe―Ni合金電着薄 膜についてその磁化機構,誘導磁気異方性を解明 するとともに均一な特性を有する薄膜素子を製造 し,記憶素子への利用をはかることを目的として いる。磁性薄膜はバルクとは違った薄膜特有の性 質を有し,磁区構造,磁化反転機構,誘導磁気異 方性等あらゆる方面から研究が進められている が,いまだ磁化反転機構や誘導磁気異方性の生因 については多くの末解決の問題が残されている。 これも薄膜の特性が下地の状態(汚れ,凹凸等) や膜の内部応力,結晶構造,結晶粒の大きさ等多 くの要因によって影響されるためである。とくに 電着薄膜の場合にはそれらのほかにその成長過程 が電気化学的要因によって影響され,膜厚方向で 合金組成が変化するという困難な問題を含んでい る。したがって薄膜の特性を解明するためには上 述の諸要因を考慮して,系統的,総合的研究を進 めていくことが心要である。 筆者らはこれらの点を考慮して下地としてはガ ラス(例えばコーニング社製マイクロシート)に 導電性金属(Au, Ag, Cu, Ni等)を蒸着したも のを使用し,硫酸浴にて,pH,電流密度,浴組 成等の電着条件や下地の状態,下地の結晶粒の大 きさを変化させて,種々の結晶構造,結晶粒の大 きさ,内部応力を有する薄膜を作成し,電子回析 ,電子顕微鏡観察をおこない膜の表面や内部構造 を調べるとともにB―Hループトレーサ,磁化反 転速度測定装置,磁気トルクメータ,磁区観察装 置等を用いて測定し,それらの関連性について検 討している。現在までに得られた結果を要約する と次のようである。Ni 83%付近の磁歪常数λ≈ 0のところで最もすぐれた特性が得られ,膜の内 部応力が減少するとともに磁性は良くなる。また 磁場中電着によって磁場方向に容易軸をもつ一軸 異方性を誘起するが,かける磁場方向を電着中に 変えると,それぞれ作用中の磁場方向に容易軸を もつ二重膜の状態を作ることができる。これらの 機構を解明するために上述の諸要因を変えて実験 を続行している。 粉末圧延法による高導磁率磁性材料の 製造に関する研究 (1)高導磁率Fe―Ni系合金に関する 研究127)661) 工博森本一郎,前田弘 最近の真空溶解技術の発達および溶解原料,高 純度化は磁性材料に画期的な特性の改善をもたら している。しかしながら不純物の混入はこれを完 全に排除するに至らず,一層の高純度化を目指し, 種々の方法が積極的に検討されている。粉末圧延 法は製造過程において不純物の混入を防ぎ,高純 度粉末の純度を保ちつつ正確なる配合をなし得る 点にその特質がある。 この点に立脚して筆者らは水平粉末圧延機を用 いて,高純度Fe, Ni, Mo粉末から直接厚さ0.5 mm,巾50mmの圧粉帯を連続作製し,焼結,再 圧延の工程を経て高導磁率Moパーマロイを作成 し,市販品との性能比較をおこなった。表は結果 表6 4 Mo―79Niパーマロイの磁気特性 直流磁気特性 交流磁気特性 μ0 μm Hc(Oe) μ e1KC μ e3KC 本粉末圧材 24000 100000 0. 015 9000 4400 真空溶解材 50000 150000 0. 014 12500 5000 の一例である。表6から明らかなように粉末圧延 材の磁気特性は真空溶解材より劣るが(特にμ0), 焼結後の圧延加工を十分施せば,特性の差は次第 に小さくなる。これらの差異は主として粉末圧延 材の空孔に起因するものと考えられる。したがっ て圧粉帯の作製に当ってロール径の大きなロール を使用し,厚い圧粉帯を経て焼結後の圧延加工率 を大きくとれば,市販品に近い特性をうることが できるものと思われる。本実験における測定結果 から本法は周波数の高い領城で使用する薄板の作 製に有望であると考える。 粉末圧延法による高導磁率磁性材料の225) 製造に関する研究 (2 )高透磁率Fe―Al合金板の研究 工博山川和郎,根岸利明 A12~16 %を含むFe―Al合金は高透磁率合金 として優れた特性をもっているが,Alの含有量 が高くなるにしたがい,硬さが増し,薄板に加工 することが困難となる欠点がある。しかし,粉末 冶金法を適当な条件のもとに利用すると,十分な 特性をもった薄板を比較的容易に製造することが できる。 一般に金属粉末の水素中焼結に当っては加熱の 初期段階において原料粉末に吸着されていた水 分,粒子表面に存在していた表面酸化皮膜の還元 によると考へられる雰囲気露点の急激な上昇が観 察され,Alなど比較的活性な金属を成分にもつ 材料においてはこのような高露点雰囲気による酸 化などにより完全な焼結が進行し難い。したがっ てAl12~16%程度を含む材料は焼結昇温過程の 600~800℃において生成した高露点雰囲気を一 旦排出し,改めて乾燥水素を送入するような操作 が心要である。また本系合金は1280℃にて2時 間程度の焼結では末だ十分な拡散合金化はおこな われず,熔製したものに比較して磁気特性は非常 に劣っている。しかし,このような不十分な焼結 状態のものはかえって鍛造圧延し易く,薄板に加 工する場合,有利である。 このような状態で加工した薄板は所定の厚さま で圧延したのち,最終段階で完全に焼結すること により優れた磁気特性を示す状態となる。この研 究はAl,Cr, Tiなど比較的活性な金属を含む電 磁気材料の粉末冶金的な製造の一環としておこな われている。 微粉末磁石の製造と利用に関する研究 工博山川和郎,上原満,根岸利明, 石川日出夫 鉄,鉄―コバルト合金などの極めて微細な粒子 は単磁区的挙動を示し,これらを適当な状態に圧 縮成型したものは優れた永久磁石特性をもつこと が知られている。またマンガン―ビスマスなどの 強磁性金属間化合物,BaO・6Fe2O3なる組成を もった酸化物なども微粒子状態では極めて大きな 保磁力を示し,あるものはすでに実用されはじめ ているが,大部分のものはまだ製造法が確立され ておらず,したがってその特性,応用分野なども 詳しくは調べられていない。しかし,その大きな 保磁力と,期待される多くの特徴は近代的な永久 磁石としての条件を十分みたすものであって,早 急に実用化が望まれるものである。 先づ,単磁区粒子を実際に圧縮成型して微粉末 磁石を製造する場合,その磁性は多くの因子の影 響をうけるが,粒子の大きさと形状,粒子素材の 化学組成,成型した際の粒子の整列度と充填度な どは顕著な影響をおよぼす。 写真12は硫酸鉄および硫酸コバルト水溶液を水 銀を陰極として電解し,水銀中に析出懸濁させた 鉄コバルト合金微粒子の電子顕微鏡像であるが, 写真12 Fe―Co微粉末の電顕写真 長さ5000A,太さ200A程度の極めて伸長された 棒状微粒子として観察される。また,これらの粒 子はその飽和磁化の強さ,格子常数の挙動より鉄 コバルト合金として構成されている様で,その組 成も陽極として使用する鉄およびコバルトの電極 面積比により制御できることが確かめられた。ま たこのような微粒子は極めて酸化し易く,その取 扱いには特別な注意が心要であるが,極くわずか な表面酸化によっても磁化の強さが顕著に低下す ることがわかった。次に圧縮成型の際,磁界を作 用させると棒状粒子の長軸が磁界方向に整列し, 残留磁束密度が著増するとともに減磁曲線が角形 となって最大エネルギー積が増大する。また成型 圧力により粒子の充填度が変化し,強磁性粒子の 容積が全量の1/2の容積比において最も大きな最大 エネルギー積が得られる。 水銀陰極電解法は寸法比の大きな棒状粒子を比 較的容易に製造できる優れた方法であるが,得ら れた微粒子と水銀を分離することが極めて困難 で,実用上まだ多くの問題を残している。当研究 室においては更に,これにかわるべき二,三の方 法についても検討しているが,所定の粒度,形状 をもった微粒子の製造方法,粉末処理中の酸化変 質の防止,成形方法と異方性の附与が今後の課題 である。 純クロムの製造と利用に関する研究105),435) 571),685),664) 理博吉田 進,大庭幸夫,永田徳雄,関野泰宏 純クロムは耐熱性,耐食性のすぐれた金属であ るが,熱間加工が困難であって,室温で脆いため 写真13適度のPrestrainを加えた試料の引張り破 面の電子顕微鏡写真× 2000 写真14適度のPrestrainを加えた試料の透過電 子顕微鏡写真 析出物ならびに転位組織 × 8000 実用材料として利用されていなかった。当研究室 では純クロムの熱間加工法と室温での脆性を改善 する方法について研究を進めて来たが,ほぼその 目的を達成した。 熱間加工については,クロム酸浴より電解採取 した純クロムをアルゴン雰囲気中でアーク溶解 し,インゴットを軟鋼のシースに封じてから鍛圧 するいわゆるシース加工法の技術を適用して,厚 さ1mm以下の薄板を製造する工程を確立した。 また室温脆性についても再結晶したクロムに400 ℃で約1~3%, 500℃で3~8%の軽度の塑 性変形を与えてやると,試料は室温で著しく展延 性を示すようになり,室温での引張り試験では約 30~40%の伸びを示すことを見出した。 このクロムの脆性に対するPrestrainの効果が どうして生ずるかという問題は非常に興味あると ころで,この点を明らかにするため電子顕微鏡に よる引張り破面の観察ならびに薄膜試料を製作し て,析出物,転位の形状,配置の直接観察を行な った。 その結果再結晶した脆性試料は平滑で河状模様 のみが見られるが,Prestrainを与えた伸びを示 す試料は複雑で写真13のようなdimple状のくぼ みと微小な劈開面から成る。そしてくぼみには析 出物らしい痕跡が認められる。写真14はPrest- rain を加えた試料から製作した薄膜を電子顕微鏡 で直接観察した一例である。この写真で見られる ような円板状または針状の影像は窒化物であると 推定され(100)面に円板状に析出していることが わかる。 以上の観察結果からクロムの脆さはクロムに固 溶している窒素原子および微細な窒化物によって 転位が強く固着されているためであり,Prestra- in の効果は適当な条件の下でPrestrainを加え ると,転位はその固着から解放され,さらに固溶 窒素原子が過時効の状態まで析出して転位に対す る固着作用を弱めるためと考えられる。 物理精製による高純度金属の製造と性質 に関する研究148)206) 工博増本 剛,工博森本一郎,田村良雄, 大庭幸夫 電子工業材料などにおいて要求される各種高純 度金属を物理的精製法,特に帯域精製法,により 製造し,えられた高純度金属の諸性質と製造条件 との関係を確立するために,本研究が遂行されて きた。 最初,元素半導体Si単結晶引上げおよび浮遊 帯域溶融兼用装置の試作に本邦で始めて成功し, ついでえられたSi単結晶の光像現象,化学的腐蝕 により現われる結晶面,成長双晶などを明らかに した。すなわちSi単結晶は加熱アルカリ水溶液の 腐蝕により,3主要結晶面{100}, {110}および {111}に対する鮮明な光像を現わし,その際現出 する結晶面はこのアルカリ腐蝕液の種類,濃度, 温度および腐蝕時間によるが,{111}および{110} 面はいずれの場合も常に現われる。なおSi単結晶 の方位決定には,100℃以上の濃アルカリ水溶液 が腐蝕時間が短い(2~3分)点において最適で ある。また単結晶引上げ中,Si表面に“scum”な どが附着したとき,および温度に急激な変化を与 えたときの2つの場合に双晶が発生し,常に双晶 面は{112}であり,双晶方向は〈111〉であることが 知られた。ついで電子衝撃式浮遊帯域精製装置の 試作にも成功し,Si, Feの他,目下Nb, Mo, Ta, Wなどの高融点材料の精製実験を行なって いる。純Feに対しては,精製条件の磁性におよ ぼす影響をしらべた結果,最大透磁率および抗磁 力がともに帯域精製回数の増加にしたがって向上 することが知られた。現在さらに章末写真に示す 高周波内熱式浮遊帯域精製装置により各種条件で Feを精製し,純度との関係を確立すべく実験を 遂行している。またえられた純Feの結晶粒度が, その降伏応力や流動応力にいかに影響をおよぼす かをしらべている。現在まで,純FeのPetchの関 係におけるkの意味を明らかにした。すなわちkは, Fe中のCおよびN量がそれぞれ約10ppm以上の場 合は,結晶粒界における転位の発生に必要な応力 の尺度であり,CおよびN量がそれぞれ数ppm以 下の場合はCottrell lockingの尺度である。 また最近さかんに利用されつつある金属間化合 物半導体用の原料金属も高純度であることが要求 されており,Zn, Teなどについて横型帯域精製 を行ない,その効果をしらべた。その結果,Znは 5ナインのZnを0. 5mm/minの速度で5回帯域溶 融することにより,Teは4ナインのものを0.3 mm/minで11回帯城溶融することにより,約8 ナインの高純度のものがえられた。 金属間化合物半導体の製造と性質に関 する研究141)163)257)261)282)283)284)761)762) 工博増本剛,磯村滋宏,後藤逾, 上杉伸一 Ge, Siなど元素半導体ではえられない,きわ めて有益な半導性を示す金属間化合物には多くの 種類が期待され,一部はすでに研究され,実用さ れ始めているが,まだ多くの材料の製法,物性, 応用などが調べられていない。よってこれら未開 発分野を探究するとともに,有用な新材料を見出 すべく本研究が遂行されている。 まずⅡ―Ⅴ族金属間化合物半導体の中の1つで あるZnSbについて,その単結晶をブリッジマン 法および回転引上げ法により製造した。特に引上 げ法では,従来発表された複雑な装置や難しい技 術と異なるきわめて簡単な装置を用いて,比較的 容易に大きな単結晶をえた。ZnSb単結晶はいず れもp型伝導を示した。さらにこの斜方晶系ZnSb 単結晶の3主要結晶軸の電子的および光学的諸性 質をしらべ,電子構造を検討した。すなわちキャ リア濃度は1016cm-3の範囲であり,正孔移動度お よび熱起電力に異方性が認められた。また直接, 間接両遷移が観察され,間接遷移は偏光に関係な いことが知られ,電子構造としては,充満帯の頂 きが波数ベクトル0の原点附近にあり,近接した 3つのバンドに分れているのに対し,伝導帯はそ の底が原点以外の位置にあることが見出された。 ついでⅡ―Ⅳ―Ⅴ2族黄銅鉱型化合物半導体 ZnSnAs2, ZnSiAs2, ZnGeP2およびCdGeP2につ いて,結晶の製造およびその物理的,電気的,熱 的,光学的諸性質をしらべた。ZnGeP2および CdGeP2は蒸気圧の高い燐を含むので,高圧用内 熱式特殊電気炉を用いて製造した。えられた各化 合物の融点および格子定数を決定し,ZnGeP2に は952℃に固相変態点があることを見出した。 ZnSnAs2およびZnSiAs2に対しては単結晶がえら れ,ZnGeP2とともにp型であり,これに対し CdGeP2はn型を示した。キャリア濃度はZnSnAs2 に対し1×1018cm-3であり,またZnSiAs2に対して は1014cm-3の範囲で,電気的性質の温度変化から, ZnSiAs2 は高抵抗 GaAs と同様の“semi-insulat- ing” 化合物と見なされる。 ZnSnAs2においても 直接,間接両遷移が観察された。なお閃亜鉛鉱型 ZnSnAs2単結晶は縮退した半導性を示した。え られた化合物はいずれも,室温で0.1~0. 2W/cm ・degの低い熱伝導度および数百μV/deg以上の高 い熱起電力を示し,熱電材料として有望と考えら れるので,今後基礎研究と平行して応用研究を実 施する予定である。 また以上の化合物半導体の研究とともに,種々 興味深い半導性を示す固溶半導体の研究を行って いる。Ⅱ―Ⅴ族化合物に属するCd3As2とZn3As2 の間の固溶半導体について,その系の状態図,各 組成比の物理的,電子的諸性質をしらべた。その 結果,この系は全率可溶固溶体を作り,格子定数 はVegardの法則にしたがうが,硬度,移動度お よび熱伝導度は系の中間組成において,格子歪に よると思われる極大あるいは極小を示している。 このように固溶により熱伝導度が下るので,不純 物添加,熱処理などによる熱電材料への応用研究 を実施中である。この他,Cd3As2―ZnSnAs2系 およびZn3As2―CdSnAs2系合金半導体の研究も 行なっている。 遷移金属酸化物の研究 理博坂田民雄,坂田君子 遷移金属酸化物――特に3 d遷移金属(Sc, Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni)酸化物について系統 的に研究を進めて来た。5), 252,)262), 727) これらの酸化物のうち一番単純なNaCl型構造 をもつものの電気的性質を比較してみると,TiO は金属的,VOはMorinによれば常温附近では 金属的にふるまい,約125°K附近で急激に106程 度の電気伝導の変化をともない,金属から半導体 (絶縁物)に遷移すると云われている。これに対し てCoO, NiO等は代表的な絶縁物で,電気伝導 機構はホッピングモデルで説明されている。われ われは,TiOにVOを固溶させて金属―非金属遷 移機構をしらべること,またTiOにCoO, NiO を固溶させた場合,即ち導体と絶縁体の固溶体が どんな伝導を示すかについて実験を始めた。しか しこれらの場合に,一相として固溶させる条件を 見出すに到らなかった。このような実験を進めて いるうち,VOがMorinの実験と一致しないこ とが確実になった。 1.VOに関する実験 この研究室で準備した化学組成比に近いVOは, Morinの実験のように電気伝導の温度依存性の上 で金属―非金属の遷移を示さず,常温(10-3ohm ・ cm)から液体ヘリウム温度まで僅かに半導体的 (電気抵抗の温度係数が負)な特性を示す。これ は化学組成比からのずれの影響によるのではない かと思い,VO0.8―VO1.5のものをつくり電気的性 質をしらべた(図33)。図にもみられるようにVO1 に近い単相のものには遷移はみられず,二相にな 図33 VOxのlog ρ―1/T 特性 ってV2O3相が入ってくると遷移がおこる。しか しMorinは0.1mmという小さいものであるが 単結晶を用いたと報告している。われわれのとこ ろにはVOの単結晶をつくる設備がないため,一 応この研究はここで中断し,VO単結晶を作成す る計画をたてた。 2. TiO2―VO2固溶体単結晶の物性 VO単結晶は雰囲気調節のできるアークイメ ー ジ炉を用いベルヌイ法で作成できるであろうと考 えられる。そこで先づ酸水素焰によるベルヌイ法 に習熱することから出発した。 TiO2単結晶はベルヌイ法により比較的容易に 作成することができる。化学組成比に近いTiO2 は絶縁体であるが,VO2は67℃に遷移点をもち, 高温では金属的であり,低温では半導体で,その ジャンプは比抵抗で106程度にもおよぶ。TiO2と 写真15 TiO2―VO2固溶体単結晶 図34 TiO2―V02固溶体単結晶のエネルギー ギャップ VO2は多結晶体では全域固溶し,ルチル型であ ると云われている。またVO2が約60%以上の混 合比のものは電気伝導および帯磁率に遷移点をも つ。したがって金属―非金属遷移機構を単結晶を 用いてしらべるのには適当な材料である。TiO2 にVO2を固溶させてベルヌイ法で単結晶をつく り,始めの混合比で70% VO2のものまで現在作 成することができた(写真15)。これらは何れも ルチル型である。光吸収端および電気伝導の温度 依存性から求めたエネルギーギャップを図34に示 す。VO2 (1640℃)は TiO2 (1855℃)よりも融 点が低いため昇華しやすく,始めの混合比より大 分VO2の割合が低くなっていると思う。したがっ て,現在までのものには電気伝導の上には遷移が あらわれていない。この実験は現在も継続中であ る。 3. Mo O2―VO2固熔体の物性 TiO2はVO2の高温相(導体相)と同型の結晶 構造をもつのに対してMoO2はVO2の低温相(半 導体相)と同型の単斜晶系に属し,金属的伝導を 示す。VO2の遷移機構を明らかにする目的で,前 記TiO2―VO2固溶体と並行して,MoO2―VO2固 溶体およびVO2にNb5+およびAl3+をドープし たものについても研究を進めている。 サーモエレメントの実用化 理博坂田民雄,西田勲夫 この仕事は,遷移金属ケイ化物が耐熱性のすぐ れたサーモエレメントとして実用されうる可能性 を持っているという予想に基ずいて,熱電特性の すぐれた耐熱性サーモエレメントを開発し,高温 に耐える実用的なサーモバッテリを試作すること である。その結果,比較的熱電特性のすぐれてい るCrSi2 (p型伝導体)およびCoSi (n型伝導体) が得られた。69),603)これらをpおよびn分枝とす るサーモバッテリもその高温接合部をホットプレ ス法で直接接合できることが明らかになり,この サーモバッテリを15個直列に接続して試作した水 冷式サーモジェネレータモデルで最大2. 2Wの出 力が得られることが明らかになった。しかし,サ ーモバッテリをガスストーブの送風機用電源ある いは,ガス湯沸器,ガス風呂等の安全弁の電源に 使用する場合には,サーモバッテリの形状,冷 却,電極の取付け等の製作法が問題になった。 これらの問題の中,電極の取付けは,サーモバ ッテリの電極取付け部分を弗酸と硝酸を含む溶液 で腐食した後Pb―Sn半田で電極を半田付けする か,あるいは,この方法で半田メッキした電極部 をソケットに差し込むことによりほとんど解決で きた。この方法でサーモバッテリを24個使用した 最大出力3. 2Wの空冷式サーモジェネレータおよ び家庭用ガスストーブにサーモジェネレータを組 込んで熱風を送り出す暖房器を試作した。763) 複雑な形状のサーモエレメントを試作する目的 写真16コクル状のCrSi2 写真17ガス風呂バーナに応用したサーモバッテリ 電子ビーム溶解炉 内熱式高周波加熱浮遊帯域精製装置 500kg低周波誘導電気炉 特殊粉末圧延装置 でスリップ鋳造の基礎的研究を始めた。その結果, サーモエレメントを製作するに必要な諸条件が明 らかになり,その副産物として,ケイ化物を簡単 にコイル状に成形することのできる新しいスリッ プ電解法を発見した。209) この方法を用いて試作したコイル状CrSi2を写真 16に示す。 一方,ガス安全電磁弁を作動させるためにサー モバッテリ を使用して試作したガス風呂のバーナ を写真17に示す。これはパイロット炎を利用して, サーモバッテリに温度差を与え,得られた電力を 電磁弁に供給し,パイロット炎が消えれば電磁弁 が閉じるという機構で実用化した。しかし,CoSi はガス燃焼炎で直熱することができず(この場合 には傍熱型で使用している),サーモバッテリの 性能を向上させるために,ガス炎で直熱すること のできるn型サーモエレメントを開発するという 問題が残されている。 執筆者所属 電気磁気材料研究部長吉田進 電気磁気材料第1研究室長 森本一郎 前田 弘,佐藤充典,土方政行,玉岡多賀則, 田村良雄 電気磁気材料第2研究室長 山川和郎 上原満,根岸利明,石川日出夫 高純度金属研究室関野泰宏 金属間化合物研究室長 増本 剛 磯村滋宏,後藤逾,上杉伸一 金属酸化物研究室坂田君子,西田勲夫 主任研究官鈴木敏之,大庭幸夫,永田徳雄 製造冶金研究部 当研究部は昭和38年に発足したが,担当している研究分野は主として,鋳造,熱処理,加工冶金 及び粉末冶金等の技術に関する基礎的問題の解明及び新しい技術の開発研究である。従って部を構 成する研究室もこれに相当する鋳造研究室,熱処理研究室,加工冶金研究室及び粉末冶金研究室の 4研究室である。その研究対象を材料面からみると鉄鋼材料がその中心をなしているが,鋳造研究 室及び粉末冶金研究室においては非鉄金属材料をもその対象として取り上げている。このように当 研究部は多岐にわたった問題をその対象としているので,関連ある各研究部等と常に緊密なる連絡 をとり,効果的な研究体制をとりつつ研究を進めている。 この方針に従ってその研究対象も「鋼質の改善に関する研究」,「鋳造技術の開発に関する研究」 及び「粉末冶金の製造技術に関する研究」の3本の柱にしぼっている。 「鋼質の改善に関する研究」はその対象が極めて広範囲であるため,当研究部の2研究室のみに て研究を進めるよりも寧ろ関連のある各研究部と強力な協調体制をとって研究を実施するのが合理 的であるとの考えにもとずいて,総合研究として「超強力鋼に関する研究」,「鋼中介在物および砂 疵に関する研究」及び「鉄鋼中の不純金属の含有許容量に関する研究」の3テーマを取り上げ組織 的に研究を行なっている。一方,鋼質の向上に大きく関係する問題ではあるが,研究を段階的に積 み重ねることが合理的である「鋼材の各種熱処理変態曲線に関する研究」は一般研究として長期的 視野から研究を進めている。 「鋳造技術の開発に関する研究」としては鋳造業界の強い要望に答えて溶銑炉用鉄原料の開発並 びにこれにともなう溶解技術の確立の問題をまず取り上げ,総合研究「特殊溶銑炉の操業法の確立 に関する研究」として関連研究部と一体となり研究を進めている。一方この溶銑に化学的または物 理的処理を施したならば溶銑特性をさらに改善し得るのではないかとの考えにもとずき,一般研究 として「溶解雰囲気の調整による強靭鋳鉄の製造に関する研究」を取り上げ,実験室的研究と併せ て中間工業化研究を行なっている。また金型加圧鋳造方式の問題点を解明する目的で一般研究とし て「ダイカスト製品の性能向上に関する研究」を行ない,新しいダイカスト技術の基盤の確立に努 めている。 「粉末冶金の製造技術に関する研究」としては粉末冶金工学において大きな課題となっている粉 末の製造法とこれに伴って生ずる粉末の物理的性質の問題,粉末条件に適した焼結方式の開発及び 粉末の新しい加工法の確立を目的として「金属粉末の製造並びに焼結加工に関する研究」を取り上 げ一般研究ではあるが,総合的視野のもとに研究を実施している。一方,超耐熱材料を粉末冶金法 により製造する目的で金属珪化物を対象として採用し「珪化物系耐熱材料に関する研究」を一般研 究として行っている。 以上のように当研究部は有機的に研究を行っているが,各研究室別に所掌業務及び研究状態を述 べると次のようである。すなわち,鋳造研究室では溶銑製造法,溶銑処理法及びダイカスト等の鋳 造技術に関する開発研究を取り上げ,溶銑用鉄原料としての未利用材の活用に成功するとともに強 靭鋳鉄の製造法をも確立しつつある。熱処理研究室では加工熱処理及び熱処理変態曲線等熱処理技 術に関する問題を研究し,加工熱処理による超強力鋼の研究は目標値に近い結果を得ている。また 熱処理変態曲線を詳細に検討し理論的解明を行うとともに応用研究をも行っている。加工冶金研究 室では溶金の凝固過程における介在物の挙動並びにこれが切削性及び鋼材の特性に及ぼす影響を研 究し,鋼中不純物が破壊靭性並びに渗炭・窒化に対する作用,鋼中介在物が切削性及び凝固現象に 及ぼす影響等を解明している。粉末冶金研究室では粉末製造から加工までの問題を取り上げ,粉末 特性と加工性との関係を明らかにするとともに高融点材料の粉末圧延法をも確立した。一方,金属 珪化物による耐熱材料の開発研究をも行ない,新しい発熱体の製造に成功した。 溶解雰囲気の調整による強靱鋳鉄の製 造に関する研究 早大工博菊地政郎,生井亨 鋳鉄の機械的性質は次第に改善され,球黒鉛鋳 鉄の発明に及んで一つの限界に達したといえる。 これに伴って,銑鉄の遺伝性といわれ未開地的な 存在にあった現象も活発な研究の対象となり,5 元素以外 Cu, Ti, Ni, Cr, Sb, V, As, Sn, Pb, Znおよびガス成分などの微量元素の影響が 重要視されるに至った。このうちガス成分に問題 点が多く,とくに酸素の影響が著しいことはよく 知られているが,その内容に関しては不明の点が 多い。本研究は,真空溶解するなどして溶解雰囲 気を計画的に調整することにより通常のネズミ鋳 鉄およびほぼ3. 0 %Siまでの球黒鉛鋼の組織が著 しく変化する現象に着目し,これを適当に利用し た強靭鋳鉄の新しい製造法を確立すると同時に, 鋳鉄に及ぼすガス成分,とくに酸素の影響を解明 せんとするものである699)。 1.真空溶解した鋳鉄の組織および引張強さ 片黒鉛とパーライト組織の通常のネズミ鋳鉄を 10-2~10-3Torrに真空溶解,鋳造すると,共晶 黒鉛とフェライトの組織に変化し,引張強さは5 kg/mm2程度改善される。この種の鋳鉄は強靭性 と同時に優秀な耐摩耗性を示すのを特徴とする。 また過共析鋼の領域においては,初析セメンタイ トとパーライトの組織で実用性の無いものが凝球 状塊黒鉛とパーライトの組織となり工業材料とし ての可能性が生じ,引張強さは85kg/mm2に達す る。真空溶解した鋳鉄の引張強さは大体30~40 kg/mm2で,黒鉛鋼はほぼ50~85kg/mm2の範囲 にある。 2.鋳鉄の黒鉛組織と酸素との関係 これまでの研究結果より推論すれば,鋳鉄の黒 鉛組織に関係する酸素の形態には酸化物(主とし てSiO2)とO-Clusterの両者が仮定される。こ のうち前者は溶銑より析出する黒鉛の核となって 黒鉛化を促進し,後者はO-Cluster中の炭素原子 が黒鉛として晶出するのを妨げ,黒鉛化を阻害す ると考えられる。真空溶解による組織変化は,こ の両形態の酸素の相互作用によるものであると説 明できるであろう。またこの考え方は同時に,大 気中溶解した鋳鉄に現われる諸現象に対しても矛 盾しない。 3.真空処理による鋳鉄の性状変化 真空溶解により鋳鉄の機械的性質が改善される という現象は,実用の可能性が考えられる。溶銑 の処理が容易である程実際上には有利ということ になるので,大気中(あるいは真空)溶解―真空 中保持―大気中鋳造という真空処理方式により真 空溶解したと同様の効果を溶銑に与えられるなら ば,それは一つの進歩と考えられる。それで真空 処理に関する研究を大体10-1Torrまでの真空度 においておこなった結果,真空処理は真空溶解と 同様の効果があり,かつこの効果は処理後溶銑を 大気中に放置しても20min程度は持続されること が証明された。と同時に黒心可鍛鉄の焼鈍時間を 著しく短縮できる可能性のあることも明らかとな った。すなわち,引張強さ13kg/mm2のネズミ鋳 鉄が真空処理により30kg/mm2に改善され,この 場合には引張強さが140%も増加したことになり, また球黒鉛鋼は60kg/mm2のものがえられた。ま た共晶鋳鉄をえようとする場合には,真空度は少 なくとも10-1~10-Torrとある程度高いことが 必要なのに対して,球黒鉛鋼の場合には,その化 学組成(主としてC, Si%)により変化するが, 真空度は100~300 Torr付近で最も好ましい結果 がえられた。また真空処理白銑を930℃において 黒鉛化焼鈍したところ,大気中溶解したものに比 較して1/4の時間で黒鉛化の完了した場合があっ た。またこの場合にも真空度はおよそ100~300 Torrにおいて最も焼鈍時間が短縮せられた。 4. 500kg雰囲気可変低周波誘導電気炉による 工業化中間研究 基礎研究がこれまで進展したのに従って工業化 中間研究の必要性が認識せられるにいたった。そ れで写真に示すごとき500kg雰囲気可変低周波誘 導電気炉を設置した。この炉の選定にあたっては 雰囲気可変炉としての用途は全く考慮せず,鋳鉄 を大気中溶解するに最も好ましい低周波誘導電気 炉として考えた。この結果イタリー製のタグリア フェリ炉を選定した。その後国内において雰囲気 可変炉に改造し,多目的に使用できるものとした。 現在,研究は工業化中間研究に進展し,実験室研 究によってえられたと同様の組織と引張強さを有 する共晶鋳鉄および黒鉛鋼をうることに成功し た。そこで現在は最適の作業条件の確立および得 られた強靭鋳鉄の諸性質の解明をおこなってい る。この真空処理方式の最大の利点は,鋳鉄の強 靭化に対してなんらの添加剤を必要としないとい うことと,真空処理はまた脱不純物処理といえる わけで,溶銑の清浄化が同時に期待できることで ある。また難点は,将来ある程度は改善される可 能性はあるが,溶解炉である必要はないが真空処 理炉を必要とする点にある。 ダイカスト製品の性能向上に関する研究 有本信也,工博牧口利貞,渡辺幸雄 多量生産方式としてのダイカスト鋳造法は他の 方法に比較して製品の特性,寸法精度,薄肉鋳造 性,加工工数の節減,生産能率等において優れて おり,今後の発展が期待されるものである。この ように利点の非常に多いダイカスト鋳造法にも今 後解決しなければならない多くの問題点が残され ている。ダイカスト製品を熱処理した場合に発生 し易いふくれの問題やMg合金ダイカストの熱間 亀裂の問題等はその一例である。本研究において は今後のダイカストの発展の上に問題となるこれ らの点を解決し,併せて新しいダイカスト技術の 基盤を確立する目的をもって研究を実施してい る。現在までの主な研究結果について述べれば次 の通りである。 1.ダイカストに及ぼす諸因子の解明443) ダイカスト製品の特性に対する単独要因の影響 については従来多くの研究が行なわれている。し かしダイカストのようにその製品の特性に対し種 々の要因が複雑な形でからみ合った状態において 影響を及ぼすようなものにおいては統計的手法に より大局をまず把握した後,その寄与率の大きな 要因に対して詳細な研究を進めることが妥当では ないかと考えられる。そこで,今回はまず実験が 容易なZnADC2を研究対象の合金として取り上 げ,合金中の不純元素,溶解温度,鋳込み温度, ダイス温度,射出圧力の5要因を変化させ,これ らがダイカスト製品の機械的性質,鋳巣発生条件 等の特性に及ぼす影響を統計的手法を用いて研究 してみた。なお本研究において鋳造方案は一定と し,また離型剤は使用せずに実験を行なった。以 上の研究により機械的性質に対しては合金中の不 純元素及びダイス温度条件が大きく寄与する。 一方鋳巣に対しては鋳込み温度と合金条件の交 互作用が影響するが,その寄与率はそれ程大きく なく,寧ろ種々の要因が複雑にからみ合っている と考えた方が妥当なような結果を得た。次に機械 的性質に影響する要因の内,不純物特にNiは0. 02 %以下であることばが望ましいという条件から, この要因は対象として取り上げず,ダイス温度の みを変数にした時に機械的性質が如何に変化する かを調べた結果,155℃程度で最高値を示すが, 安定性の点からみると200~300℃が最適である ことが明らかとなった。 2.ダイカスト用離型剤に関する研究448) 前項の研究において離型剤の塗布を行なった場 合には,ダイカスト製品の特性に離型剤の条件が 影響を及ぼした。そこで,離型剤なしの条件で研 究を進めたが,実際のダイカスト作業においては この条件を無視することはできない。本研究にお いてはこの離型剤の問題を取り上げ,これが機械 的性質及び鋳巣に対して如何なる影響を及ぼすか を前項同標にZnADC 2の合金を用いて研究した。 この場合離型剤としては鋳込み温度程度で熱分解 しないものと,熱分解するものとが一応考えられ る。前者は鋳込みにより高分子化し,ガス発生を 殆んど行なわず鋳巣を発生し難い利点はあるが, 数回のショットにより離型剤が不均一剥離を行な い,研究の実施が困難であったので,本研究にお いては現在使用されている鋳込み温度程度にて熱 分解するものを中心に実験を行なった。その結 果,離型剤としては鋳込み温度よりも或る程度低 温で迅速に熱分解するものか,または鋳込み温度 程度で始めて熱分解するものかの何れかが機械的 性質及び鋳巣に対して良好な結果を示し,その中 間的な温度で熱分解するものは悪い結果を示して いる。これは発生ガスの時期が鋳巣に対して大き く影響することを示しており,今後の離型剤の在 り方について大きな指針を得ることができた。 鋼材の各種熱処理変態曲線に関する研究 中島宏興,工博荒木 透,藤井忠行 鋼の熱処理の基礎資料として重要な恒温変態図 および連続冷却変態図は,普通の焼入焼戻の際に 利用されるのみでなく各種の複雑な熱処理の際に は欠くことのできないものである。そして数多く の変態図が発表されて利用されているが,詳細な 点については不明な点が多く残されている。そこ で実用鋼材について各種の変態曲線の理論的な解 明およびその応用研究を行なっている。 現在までにとり上げたおもな問題は,浸炭鋼に おける変態挙動に及ぼす炭素量の影響,Ms以下 におけるベイナイト変態へのマルテンサイトの影 響などである。今後さらに階段的な熱処理におけ るベイナイト変態の挙動,連続冷却変態と恒温変 態をくみ合わせた場合の変態曲線,変態曲線の適 用範囲の拡大,変態組織と機械的性質との基礎的 な関係などに関して研究を行なう予定である。現 在までのおもな研究結果はつぎのとおりである。 1.Cr-Mo浸炭鋼の恒温変態および連続冷却 変熊340)377) 0.2%CのCr-Mo肌焼鋼およびこれを0.5, 0. 7, 1.0% Cに浸炭した鋼の恒温変態図および連続冷 却変態図を作成し,変態挙動に及ぼす炭素量の影 響を調べた。 化学 成分 C Si Mn P S Cr Mo Cu Ni 0.5 0.22 0.71 0.010 0.006 1.01 0.22 0. 15 0. 13 図35 Cr-Mo浸炭鋼(0.5%C)の恒温変態図 フェライトおよびベナイト変態は炭素量の増加 によって著しく遅滞させられるが,パーライト変 態は共析成分までは比較的その影響が小さく共析 成分以上では逆にかなり促進される。したがって 焼入性は共析成分付近がもっともすぐれている。 また,上部ベイナイト域では針状フェライトの生 成によって未変態オーステナイトの炭素量が高く なるために,後続のパーライト変態の開始は著し く促進される(図35)。さらに恒温変態および連 続冷却変態終了後の硬さに及ぼす変態温度,冷却 速度,炭素量の影響などを求めた。 2. Cr-Mo鋼の浸炭鋼と溶製鋼410) 同一炭素量の鋼を浸炭法と溶製法の両方法によ って作製し,その変態挙動および機械的性質を比 較検討した。 変態挙動に及ぼす浸炭処理のおもな影響は,炭 素量の増加以外には浸炭に伴なう焼なまし効果で ある。焼なまし効果によって合金元素の均質化が 行なわれ,変態の開始および終了曲線の間隔が狭 くなる。浸炭鋼と溶製鋼の恒温変態終了後の硬さ およびベイナイト組織の機械的性質には相異を認 め難い。 3. Cr-Mo鋼のMs付近におけるベイナイト 変態411) 0. 5%CのCr-Mo鋼についてMs付近のベイナイ ト変態のkineticな挙動を調べ,さらにMs以下 の温度でベイナイトと焼戻マルテンサイトの混合 比を変えた場合の機械的性質の変化を求めた。 ベイナイト変態の開始はMs以下では著しく促 進されるが,終了は早くならずMs以上の曲線の ほぼ延長上にある。同一温度における焼戻マルテ ンサイトとベイナイトの混合組織において,ベイ ナイト量が約30%まではその増加とともに硬さお よび引張強さが増大する。これはベイナイトによ るマルテンサイト組織の微細化によると考えられ る。靭性には炭化物の析出形態が大きな役割を果 していると考えられ,絞りはベイナイト量の増加 とともに増加する。 金属粉末の製造並びに焼結加工に関す る研究 工博田村皖司,武田 徹,野田龍彦,鰐川周治 村松祐治 本研究は粉末冶金法で最も重要であり,問題の 多い金属粉末の製造から出発し,焼結体密度を向 上するための焼結技術の開発,および粉末圧延法 による加工条件を確立するものである。その項目 および内容は次のようである。 1.液体噴霧法による金属粉末製造法 金属粉末を製造するにはいろいろな方法がある が,当研究室では噴霧法による金属粉末製造法を とりあげた。昭和34年にアトマイズ装置を設計, 試作し,銅40)および銅合金156)について噴霧時の 諸条件126)(溶湯温度,溶湯流断面積,噴霧時の圧 力等)が生成粉末の粒度分布にあたえる影響につ いて調べ噴霧媒の性状(ガスおよび水)によるア トマイズ条件を明らかにした634)。更に溶湯流が 噴霧媒によって粉化される際の機構についても追 及した。また,金属溶湯の性質(表面張力,粘性 など)および噴霧媒の性状(適用する噴霧媒の粘 性,冷却速度など)が生成粉末の形状438)にあた える影響について研究を進め439),その結果,噴 霧媒にガスを適用したガス噴霧法では冷却速度が 低いので生成粉未は球状化し圧粉性が悪く,粉未 冶金用として望ましくないことが分った。しかる に噴霧媒に水を適用した水噴霧法では冷却速度が 大きいため生成粉未は不規則形状となり酸素量も 低く,このことから水噴霧法は高融点金属を工業 的に製造する場合には有利であることが明らかと なった。次いで水噴霧法によるステンレス鋼粉の 製造研究を行ない208),鋼中の成分元素が生成粉未 の性状(見掛密度,酸素量等)にあたえる影響に ついて詳細に調べた。その結果,成分中のSiは粉 末の酸素量を減少し,見掛密度を低下する。Mn は見掛密度を高くし粉末の酸素量を増加するので 0.5%以下,NiおよびCなどは見掛密度に顕著な 影響をあたえないことが明らか424)となった。現 在,更に圧粉性の良い合金粉を製造するための研 究を進めている。 種々の条件で製造された銅144)および銅合金の 焼結性が,次の重要な問題である。そこで水噴霧 法で製造した銅合金粉687)(青銅,黄銅,ケルメッ トなど)について焼結を行なったが,その結果は 十分実用できることが確められた。たとえば,黄 銅粉450)では潤滑剤としてステアリン酸リチウム を0. 5%添加することにより焼結過程中におこる 脱亜鉛現象を防ぐことができ,機械強度の高い黄 銅焼結部品をつくることができた。また,18―8 ステンレス鋼についてはオーステナイトとδフエ ライトの2相組織での焼結の特徴を明らかにする ために研究を進めている。 2.鉄系焼結体の密度向上 粉末冶金法によって製造される鉄系焼結部品は 溶解材と比較して機械的性質,耐食性共に劣って いる。この性質を改善する一つの方法としては焼 結体密度の向上を計ることであり,そのためには 粉末の基礎的性質および焼結技術を詳細に検討し なければならない。このような観点にたって製造 履歴のことなる数種類のFe粉末を用い,粉末の性 状,すなわち,粉末の表面の活性度,形状,粒度, 比表面積などが焼結密度にあたえる影響および焼 結時の空孔の消滅過程を顕微鏡で詳細に観察し た。更に昭和37年に試作した焼結追尾装置によ り,焼結中におこる圧粉体の収縮,膨張の過程を 追跡した。その結果,焼結体密度は圧粉体密度に 著しく影響され,焼結による密度上昇は予想以上 に低かった。また,変態点直下の温度範囲で最も 高密度化し,γ相領域での焼結では密度上昇は小 さく,この理由としては空孔の削滅に重要な影響 をあたえる結晶粒界が著しく減少するためである ことが明らかとなった。 次いでFe粉末を硝酸ニッケルで処理し,Fe― Ni複合粉を調整し焼結性を調べたが,この複合粉 の焼結特性はFe粉末単味のものと比較して著し くことなることがわかった。すなち,一定焼結温 度における圧粉体の収縮率はFe粉末単味では(時 間)2/5に比例するが,Ni被覆したFe粉では(時 間)1/2であり,Ni被覆量は0.25~2 %の範囲が適 当であることが明らかとなった。このようにNi 被覆により焼結密度が向上する理由としては被覆 されたNi層によってFeの拡散が促進されるため と考えられる。更にこの現象を利用して高密度焼 結合金鋼の研究を進めている。 3.粉末圧延法による高融点材料薄板の製造 粉末圧延法によって高融点材料薄板を製造する 場合の圧延条件を明らかにすることを目的とし て,圧延時の諸条件を正確に制御できる粉末圧延 装置を昭和37年に設計,試作した。概要は章末写 真にみるものであり,ロール直径300mm,面距 離336mmで油圧原動機によって駆動される。し たがって,ポンプの吐出量の調整によりロールス ピードを1~12r.p.mの範囲内で連続的に変化さ せることができる。 まず,高融点材料薄板の製造研究に入る前に本 装置の性能試験をかね予備研究として液体噴霧法 で製造したステンレス鋼粉の圧延条件を調べた76) すなわち,ロール間��,ロールスピードおよび粉 末供給速度などの因子がグリーンシートの性状 (厚さ,密度など)にあたえる影響について詳細 に検討した。その結果,粉末横逃防止装置の考案 により,圧延時におこる粉末の横逃げを防止する ことができ,更に粉末供給速度に対してクリティ カルなロールスピードの存在することが明らかと なった。次いで従来の方法では薄板を製造するこ とがむずかしく加工性の悪いFe―Cr―Al系合金 (電熱材料)およびFe―Al―Si系合金(センダス ト)などの製造研究を行ない,その圧延条件を明 らかにし,焼結後のシートは数多くのすぐれた性 質をもつことがわかった。 高融点材料としてはまず,Moをとりあげた。 この粉末はその製造工程から極めて微細であり , 流動性が悪いのでロール間に粉末を一様に供給す ることがむずかしい。そこで粉末供給方法および ホッパーの機構について詳細に検討し,その圧延 条件を確立するための実験を進めている。また, ロ ール間における粉末圧縮の機構を知るためX線 回析法を応用して解析を行なった。すなわち,Mo 粉末を用い,圧粉体の密度(圧縮圧力)とそのX 線回析線の積分幅との間には一定の関係の成立つ ことを見出し,その関係を利用してロールによる 圧粉過程を推論している。 珪化物系耐熱材料に関する研究 工博田村皖司 本研究は耐酸化性,耐食性がすぐれており,高 温における機械的強度の高い金属珪化物に着目 し,すぐれた超耐熱材料を見出すことを目的とし て昭和31年より昭和35年の4年間に亘って行なっ たものである。とりあげた金属珪化物は遷移金属 の第4, 5, 6族に属するものの中から,超耐熱 材料として要求される性質を満足すると予想され るもののみについて行なった。 まず,真空炉によって金属珪化物を調整する場 合の製造条件を求め,X線回析および化学分析に よってその性状を確めたのち焼結を行なった。焼 結は真空ホットプレス法により,その焼結条件を 求め,最も適当と考えられる温度で焼結した焼結 体について物理的,化学的並びに高温の機械的性 質を調べた580)。表7は本研究でとり扱った金属 珪化物の諸性質645)をまとめたものであり,これ ら金属珪化物の中ではMoSi2が高温強度も高く, 耐酸化性もすぐれている。しかし,これら金属珪 化物は常温で脆く熱衝撃性に劣ることが致命的な 欠陥であり,その性質を改善するために珪化物系 サーメットの研究を進めたが,満足する結果は得 られず,実用の域には達しなかった。 そこでこれら珪化物の耐酸化性並びに熱電気的 性質に着目し,高温用電気材料あるいは半導体材 料としての適用性について研究27)を進めた。その 結果335), MoSi2にAl2O3, SiO2を添加した焼結体 表7金属珪化物の二,三の性質 珪化物の 種 類 耐食性(g/cm2/day) 15%HNO3 10%HCl 10%H2SO4 1200℃にお ける耐酸化性 (g/cm2/day) ビイツカース かたさ 常温 800℃ 800℃におけ る抗折力値 (kg/mm2) 電気抵抗値 (μΩ-cm) MoSi2 0.0035 0.0011 0.0007 0.0000 980 320 30.0 22.7 TiSi2741) 0.0022 0.0009 0.0002 0.0005 680 230 ― ― CrSi239) 0.0006 0.0001 0.0000 0.0011 1020 280 21.3 64.9 WSi284) 0.0047 0.0021 0.0001 0.011 1040 250 19.8 29.4 ZrSi2681) 0.0002 0.0000 0.0000 ― 1030 430 15.1 51.1 は各種ガス中での耐食性がすぐれており,高温で 強度も高く(1600℃で引張り強さ1.0kg/mm2), 1700℃の高温で発熱体として十分実用334)でき ることが確められた。次いで工業化のための基礎 および実用データをあたえるために冷間圧縮焼結 法33)並びにスリップ鋳造法97)による発熱体の製造 研究を行なった。最も適した条件でつくられた発 熱体を用い小型炉を試作し,長時間使用が発熱体 の諸性質にあたえる影響について調べ,更に従来 から市販されている炭化珪素発熱体との比較試験 を行ない,本発熱体の優秀性を立証した。その他 の金属珪化物としてはCrSi2633)の熱起電力の大 きいことに注目し,酸化物研究室との共同研究に よりサーモエレメントの実用化に成功した。 執筆者所属 製造冶金研究部長 牧口利貞 鋳造研究室長菊地政郎, 生井亨,有木信也 粉末冶金研究室長田村皖司 武田 徹,野田竜彦,鰐川周治,村松祐治 製造冶金研究部主任研究官中島宏興 材料強度研究部 材料強度研究部は金属材料の機械的性質と非破壊検査法に関する研究,所内各研究室から依頼され た試験を行なっている。構造物構成材料としての金属材料が具備しなければならない性質の一つは 外力に対して充分な強度を持っていることであり,当所の研究過程でその強度を測ることはしばし ばおこるので,当研究部では必要な各種試験機を整備し所内各研究室の依頼に応じて測定を行なっ ている。一方金属材料の強度は荷重の種類,周囲温度,雰囲気などの使用条件に左右される。従っ て構造用金属材料研究の一部としての強度測定は材料に予想される使用条件を考慮したものでなけ れば無意味である。また金属材料の性能が向上し,使用条件が苛酷になってくると破壊,非破壊両 試験法に亘って従来以上の性能向上,試験条件の拡大が要求される。このような使用目的に適合し た試験法の確立,新しい試験法および機器の開発も当研究部の仕事であると考える。次に金属材料 はこれを格子型,粒度,組織などの特定のことがらに注目していくつかのグループに分類すること ができる。これらのグループにはそれぞれに特有な強度上の特徴があるはずであって,このような 観点から強度を研究することも当研究部の仕事であると考えている。 研究所創立当時は標準型の試験機を利用してできる基本的な研究から出発し研究が進むにしたが って,当方の着想を盛り込んだ試験機または全く新しく作らせた試験機を用いた現在のテーマに発 展した。すなわち疲労強度については繰返し速度の影響および熱疲労の研究から始め現在もこの研 究は続けられているが,これから発展した組織と表面仕上げの影響,疲労きれつの発生進展の問題 に研究が進められている。高温強度については温度・応力変動の影響,熱処理の影響の研究から始 めたが次第に熱処理の影響の研究に重点が置かれ,高温強度を組織と破壊機構との観点から研究す る方向に発展している。非破壊検査法については試験法の定量化,標準試験片の作製など検査基準 を確立することから発展して精度の向上,新技術の開発,新しい利用面の研究に進んでいる。静的 強さに関連したものでは内部摩擦の研究を通じて金属の機械的性質と結晶方位との関連性を求める 研究が続けられている。 当研究部は静的強さ研究室,動的強さ研究室,高温強さ研究室,非破壊検査研究室,疲労試験室 からなっている。静的強さ研究室は静的強さおよび衝撃試験の調査・研究に従事し,純金属単結晶 試料を用いて微小応力範囲での内部摩擦の結晶方位による応力依存性を明らかにしこれから結晶の 辷り系と最大剪断応力方向との相互関係と,内部摩擦・機械的性質との関係を明らかにすると共に, 塑性加工性に関する研究の一環として高速深絞りの研究を始めている。動的強さ研究室は疲労およ び摩耗に関する調査・研究に従事しており,高温工具鋼の性能向上を目標に工具鋼の高温摩耗の研究 を行ない高温の摩耗には酸化性,溶着性,高温硬度が密接に関係していることを明らかにした。ま た当所に設置された各種疲労試験機で求めた結果を比較し,疲労試験機を無批判に使用すれば機種 によっては大きな誤差がまぎれ込む恐れがあることを明らかにした。現在鋼の疲れ強さにおよぼす 熱処理,機械加工,切欠などの影響について研究している。高温強さ研究室は主としてクリープ強 さに関する調査研究に従事し同時に所内のクリープ試験を担当しており,析出硬化型耐熱合金の熱 処理の影響,転位の移動を考慮したクリープの理論,耐熱鋼の開発を行なった。また高炭素18―12 Cr-Ni鋼に二段溶体化処理を行ない粒界を鋸歯状にすることによりクリープ強度を著しく高めるこ とを見出した。現在上記開発研究,二段溶体化処理の研究を続けており更に高温応力下での組織変 化の研究を始めている。非破壊検査研究室は非破壊検査法の調査研究に従事し,試験法の定量化, 円柱面エコーの解明,特殊探触子の開発などの成果を挙げ現在超音波の減衰の研究,渦流探傷法の 研究を行なっている。疲労試験室は各種機械的性質の測定に従事し同時に熱疲労について試験条件 の影響を研究している。 極軟鋼中の不純物による内部摩擦変化 の研究 舟久保熙康,岩尾暢彦,香山昇久*,太田口稔, 笹渕益美 軟鋼,Al等の薄板材の塑性加工を主とした機 械的性質の改良を検討する目的で,粒界,不純物 種類等の影響の少ない単結晶薄板材についての内 部摩擦,ならびにこれに関連した機械的試験につ いてまず実施してきた。 最大剪断応力1.5gr/mm2迄測定できる捩り振 動1サイクル式内部摩擦測定装置,純鉄,純Al, 純Zn等の単結晶薄板製作炉等を試作し,これに よって内部摩擦の結晶方位による応力依存性の実 験を行なった。 この結果,歪振幅10-7附近の小さな応力範囲に おいても結晶方位により内部摩擦の応力依存性は 著しく大きいこと,限界剪断応力値を狭い範囲内 で決定できること等が確かめられた。このような 小さな応力範囲での内部摩擦変化は結晶の辷り系 と最大剪断応力との相関々係に主として支配され ることが認められ結晶方位による内部摩擦の応力 依存性を示す方位分布図を作成することができ る。面心,体心立方晶の単・多結晶金属の深絞り 性の方位依存性が,上記方位分布図と極めて相似 の関係を示すことは,辷り系について考える場合 極めて興味深い事実を提供するもので,今後に残 された課題である。なお不純物の量と種類の違い による比較研究について目下実施中である。 鋳鉄材料の組織と機械的性質,機械的性質間の 相関性等については未だ不明な点が多い。このた め主として減衰能と他の機械的性質の間の関係に ついて材料の種類による系統的な実験を行なって いる。さらにこれと関連して各種金属材料の弾性 率の測定に関する実験も実施中である。 腐食疲れの研究 岩元兼敏,西島敏 この研究は先づ腐食疲れ強さに影響する諸因子 を検討して効果的な試験条件を見出し次にこの試 験条件で材料および耐食処理を比較検討すること を目的としている。影響する因子としてはじめに 繰返し速度の影響をとりあげ,研究の一手段とし て疲れ被害の進行に注目し,その実験結果から繰 返し速度の影響について若干の知見が得られた。 出来得れば繰返し速度に関して一本のマスターカ ーブが引ければよいのであるが,まだそこまで研 究は進んでいない。この研究で今までに分かった ことは淡水のような弱い腐食液中では短時間の試 験では一見疲れ限らしいものがあらわれるが長時 間試験を続けると試験片は破断し短時間側と同様 なS-N線図が画けること,この長時間後破断の 領城では繰返し速度が遅い方が破断までの繰返し 写真18 疲れきれつの進行 状況(120 ×) *昭和40年3月退職 数のみならず破断までの時間も短かくなること, 腐食液中で運転休止することは寿命を著しく短か くすることなどが分った。従って少くも淡水中の 腐食疲れに対しては短時間の試験で腐食疲れ強さ を論ずることは意味がない。しかし試験はなるべ く短時日で終ることが望ましいので一種の加速試 験ができないかということと併せて腐食雰囲気の 影響を検討する目的で現在濃度を変えた食塩水中 の実験を行なっている。この研究の間に疲れきれ つの進行の機構を知ることが必要になり図のよう な特殊小型疲れ試験機を作り研究をすすめてい る。この特殊小型疲れ試験機では疲れ試験中に試 験片の表面の顕微鏡写真を自動撮影できることが 特徴で,このために荷重サイクルの一定位相にお いて発光するストロボ照明装置を備えている。ス トロボが1回発光するごとに1枚の写真が撮影さ れ,発光の間隔は荷重サイクルに対し1~2000回 のあいだを適当に選ぶことができる。写真18は厚 さ0.4mmの薄板試験片に両振り引張圧縮応力を 加えたときの疲れ亀裂の進行状況を撮影したもの で,写真に見られる細い平行線は,試験片表面に 刻んだ約10μ 間隔のケガキ線である。この写真は 35mmフィルム上において120倍程度の倍率で撮 影したもので,このような方法により,疲れきれ つ先端附近のひずみを測定することができる。 熱間加工における鋼の摩滅に関する研究 辻栄一 本研究は熱間加工用工具として用いられる材料 の高温における耐摩滅性について基礎的な研究を 行なうことを目的とした。そのため図36に示すよ うに,加熱された固定試験片と加熱されない回転 図36試作した摩滅摩耗試験機の概略図 試験片を互に摩擦させることができる摩滅摩耗試 験機を試作した212)。この試験機を使って,まず 炭素鋼ならびに炭素工具鋼の高温における摩滅特 性を求め,この結果を各鋼の高温における酸化 性,溶着性,強度の面から検討した。その結果, 炭素鋼または炭素工具鋼においては,高温で酸化 し易い鋼は摩滅し難く,相手材料に対し溶着し易 い鋼は摩滅し易いことが明らかとなった。また酸 化性と溶着性がほぼ等しい鋼材では,高温かたさ の低い方が摩滅し易く,さらに高温における鋼の 軟化は耐摩滅性を低下させる212)223)。 上述の研究結果から,加熱された鋼と加熱され ない鋼を互に摩擦させた場合には,前者は後者の 比較的低温度に保たれた鋼――たとえ後者が焼鈍 されたままの鋼であっても――を摩滅させる能力 をすでに失っていると考えられる。すなわち加熱 され軟化した被加工材は,焼入れ調質されたかた さの高い工具を摩滅させることは困難であると考 えられる。このことから,熱間加工用工具の摩滅 が実際に起こるとすれば,その主な原因は工具の 温度上昇と考えられる432)。 そのために,各種熱間工具鋼SKD 4, SKD 5 およびSKD6の温度に依存した耐摩滅特性を前 述の試験機を使って求め,さらに高温における酸 化性,溶着性,かたさならびに相手試験片材料の 組合せの差異に関連させて研究した。その結果, 熱間工具鋼の場合も,炭素鋼や炭素工具鋼の場合 と同様に,高温の摩滅には主として酸化性,溶着 性,かたさが影響していることが明らかとなっ た。すなわち酸化し難い鋼は酸化皮膜が薄く,し たがって酸化皮膜は破壊され易く,金属接触を起 こし,摩滅し易い。しかしこのように酸化し難い 鋼といえども,相手材料のいかんによっては,溶 着性の影響より,酸化性の方が強く影響し,摩滅 量は減ずる傾向をとる場合もある243)。 本研究結果から,耐摩滅性の観点に立ってみる と,熱間加工用工具材料としては,高温で強固な 酸化皮膜を生じ,被加工材と溶着し難く,かつ高 温で軟化し難い鋼が望ましい。 高温の摩滅と関連し,常温における摩耗の研究 も行なった。その結果,高温における摩滅と常温 における摩耗との両現象の間には密接な関連性が あり,後者の摩耗機構のあるものを,前者の摩滅 機構に適用し得る。しかし鋼が高温に加熱される ことにより,その酸化性と溶着性は変わり,摩滅 量と摩耗量の傾向は異なってくる223)。また常温 摩耗試験で生成した摩耗変質層中のFe量または その分布,若しくは特殊鋼と組合せた場合には, その合金元素の含有量またはその分布を測定し た。この測定結果から,摩耗変質層中のFe量は 地のFe量よりかなり減少していることが判明し たので,二,三の仮定のもとに摩耗変質層中のガ ス含有量の推定を試みた。これら常温摩耗変質層 の研究結果を考察すると,いわゆる酸化摩耗とい われる領域では,摩擦面にガス,主として酸素が 富化され,非常に不安定で酸化し易い状態となっ ていると想像される。したがって,その領域では 摩擦面の微小部分が摩耗の過程で脱落する際,摩 擦熱による酸化が起こり易くなったり,またはそ れが促進されると考えられる。またこの研究か ら,摩耗の過程における溶着現象により生成した 摩耗変質層の様相をも明らかにすることができた 433)。本研究で摩滅とは過酷な条件下における摩 耗の意味で,常温の摩耗と区別するため,特に高 温の実験の場合に用いた。 炭素鋼の疲れ強さに関する研究 辻栄一,西島敏,福原𤋮明 本研究は炭素鋼の疲れ強さにおよぼす組織と機 械加工の影響について研究した。そのため0.76% C炭素鋼に熱処理を施し,粒状パーライトならび に層状パーライト組織とした。それらの熱処理後 の機械的性質を表8に示した。これら鋼材から作 られた疲れ試験片(図37)の表面に,試験片の長 手方向に各種機械加工を施した後,曲げ疲れ試験 を行なった。その結果を図38に示す。同図から粒 図37曲げ疲れ試験片 図38曲げ疲れ試験の結果 状パーライト組織の炭素鋼Gは同一成分の層状パ ーライト組織の炭素鋼Lより引張強さが低いにも かかわらず,疲れ強さは高かった。また鋼Gは機 (シェンク型繰返し曲げ疲れ試験機による) 械加工による疲れ強さの上昇する割合も高かっ た。これは鋼の組織によって,その疲れ強さにお よぼす機械加工の影響の度合が異なることを示 し,ある場合には,表面あらさの影響より機械加 工による表面残留応力または加工硬化の影響の方 が強くなることを示している。 つぎに炭素鋼の疲れ強さにおよぼす炭素含有量 の影響について研究した。その際,炭素含有量以 外の諸条件をなるべくそろえるために,低炭素鋼 表8 粒状・層状パーライト組織における鋼の機械的性質の比較(JIS4号試験片) 記号 組織 耐力 kg/mm2 引張強さkg/mm2 真破断強さkg/mm2 伸び率% 絞り % 測定値 平均 測定値 平均 測定値 平均 測定値 平均 G 粒 状 パーライト 33.8 65 68 105.3 104.7 20 22 35 38 ― 70 103.2 24 40 L 層 状 パーライト 30.4 78 78 88.5 88.5 13 13 14 14 ― 78 88.5 13 14 S10Cに高純度銑,フェロマンガン,フェロシリ コンを添加し,0.3%~0.85%Cの範囲で炭素含 有量を変えて溶製した鋼について,その回転曲げ 疲れ強さにおよぼす炭素含有量,ならびに焼なら しおよび焼なまし処理の影響を研究した。さらに このように実験室的に再溶解して製造した鋼の機 械的強度を検討するために,同程度の炭素含有量 を有する市販鋼について,同一の熱処理を施した ものの機械的強度との比較研究も行なった。 超音波探傷法の定量化に関する研究 木村勝美,松本庄次郎,鈴木敏之 超音波探傷法において,測定法および探傷法の 基礎について定量化を計り,また理論的裏付けを 与えることは,超音波探傷法の検査法としての地 位を確立するための基本的問題であり,我々はこ こに特に重点を置いて研究を進めている。 1.丸棒の超音波探傷 丸棒を円柱面から探傷する際に,底面エコーの 他に特異なエコーが現われる。これらは往々にし て底面エコーあるいは傷エコーと誤認される。我 々はこれについてその成因を明らかにし,また 「円柱面エコー」68)と名づけた。 丸棒の底面エコーについて解析し,その結果, 直径方向の平均的減衰定数の測定方法を決定する ことができた171)。 また,丸棒を円柱面から探傷した際の傷エコー 高さについて,近距離音場および遠距離音場に適 用し得る近似理論を導出し,その適用性を実験的 に確認した782)。 2.板の超音波探傷 近距離において複雑な干渉帯を生じない探触子 について検討し,その試作に成功した179)。 板の多重反射図形において,傷エコーは第3次 乃至第6次の底面エコーの範囲で最高値を示すこ とが多い。この原因について究明し,探傷器の追 込み特性とは関係なく,多重反射によるエコーの 積算効果によることを明らかにした778)。 薄板の連続自動探傷方法として注目されている 共振透過法の探傷効果について究明し,それの単 純透過法と比較して有利な点を理論的に明らかに した779)。 3.減衰および雑音エコー 多結晶金属中における超音波の減衰は,主とし てその内部組織境界における超音波の散乱に起因 していると考えられる。しかし,現状において散 乱減衰理論は未だ確立されておらず,また信頼度 の高い減衰測定法も確立されていない。我々はこ の基本的問題に着目し,先ず減衰測定法を確立す ることが急務であると考えた。特に超音波探傷に 用いられる程度の低い周波数においては拡散損失 の補正に困難な問題が存在する。検討の結果,比 較測定が最も信頼度の高いこと,またその比較測 定の基準として減衰測定用基準片の採用が必要で あることを示した544)。 減衰の比較的多い材料において見られ,欠陥検 出限界に影響を与える雑音エコーの原因について 実験的に検討し,本質的に減衰と同一原因によっ て生ずるものであることを明らかにした780)。 4.感度標準試験片 超音波探傷の実施に当っては,感度を一定の基 準に基づいて表わすことが,探傷結果の評価に際 して重要である。日本学術振興会における「学振 STB―Ⅲ」の制定に当り,我々は素材の選定, 基準エコー高さの計算,検査法および検査規格の 決定などに貢献した781)。また斜角探傷用感度標 準試験片について各種の設計および試作を行なっ た。これらは日本非破壊検査協会において採用さ れた。 電磁誘導による非破壊検査法の研究 伊藤秀之,木村勝美,桑江良教 交流磁場におかれた金属体に誘導される電流 が,検査コイルのインピーダンスを変化させるこ とを利用した電磁誘導による非破壊検査法は,欠 陥,材質変化に対する検査感度が高く,検査速度 がはやいなどの利点をもっており,当研究室では 検査法の適用および検査における基本的諸問題の 解明を目的として研究を進めている。 1.冷間圧延極軟鋼板の焼鈍状態の試験 冷間圧延した鋼板を焼鈍し,焼鈍条件と組織, 硬度,電気磁気的特性および電磁誘導試験結果と の関連についてしらべ,検査指示はおもに導磁率 と関連しており,試験を行なう場合に比較する標 準材として適正に焼鈍された試料を用いれば,検 査結果は硬度とよい対応を示し,焼鈍状態の検査 に応用できることを確めた103)545) 751)。 2.鋼管の探傷検査における諸問題について 鋼管の電磁誘導探傷においては,雑音指示を抑 制して欠陥検出能力を高め,また検査結果と欠陥 の定量的対応を明らかにするためには,材料,検 査コイル,欠陥信号,検出器の特性を把握するこ とが必要である。このため実験装置として,能率 よく強い磁場の得られる電磁石型磁気飽和装置を 試作し577),またコイル特性測定のためのマクス ウェルブリッジおよび欠陥信号処理回路とシンク ロスコープからなる電磁誘導実験装置を設備し た。現在までこれらの装置を用い,直流磁気飽和 の強さと磁性的不均一による雑音指示の抑制効果 および欠陥検出能力について実験を行ない,最適 の磁化条件となる材料中の磁束密度の値を求めた 783)。また検査材に対する検査コイルの捲��き幅, 径の寸法比と欠陥検出能力についてしらべ,探傷 に適したコイルの寸法比を求めた784)。 検査コイ ルの特性は,材料中の交流磁場の強さ分布に関連 して検査法の基礎となるものであり欠陥信号の特 性,信号解析の問題とともに今後とも研究を続行 する。 3.細線の検査への応用 細線検査用のコイルの製作,特性および検査条 件についてしらべたが785),超電導マグネット線 の検査への応用,特に検査指示と欠陥および線の 特性との対応について研究を予定している。 X線透過写真で検出された溶接気泡欠陥 と疲れ強さとの関係に関する研究 横井信 溶接継手に存在する諸欠陥を,X線透過写真で 検出した時,その影響をどのように評価するか は,その溶接構造物を使用する上に重要な問題と なる。そのために,溶接欠陥が機械的強度に及ぼ す影響に関する研究は,昔から数多く行なわれて いる。しかし,使用するX線装置の特性やX線写 真撮影条件の相違のために,また,検出された諸 欠陥を客観的に,かつ定量的に表示する方法がな いなどの種々の困難さのために,これらの関係は いまだ不明の点が多く,したがって,X線透過写 真による欠陥合否の判定は,経験的判断によって 行なわれているのが現状である。 そこでまず,使用するX線装置の線質と線量を 調べ,放射されるX線の実効電圧が管電圧の約 0.8倍の値を示すことなどのX線装置の諸特性を 明確にした92)後,階段型透過度計やドリル孔型透 過度計を用いて,X線の線質と写真コントラスト の関係を求め,X線フィルム上に検出された欠陥 部分のフィルム濃度より,その欠陥の深さを求め る方法を検討した93)。 これらの結果を基にして,溶接継手の欠陥とし てもっとも数多く現われ,かつ,単純な形状を示 す気泡欠陥の大きさを求め,それが継手の疲れ強 さに及ぼす影響を調べるために,軟鋼板を種々の 溶接条件で突合せ溶接して,気泡欠陥を含んだ溶 接継手を作り,余盛を削除し,焼ならし処理をし た後,間歇的にX線透過写真をとりながら,両振 引張圧縮疲れ試験を行なった。その結果,独立し て溶接継手内部に存在する直径約1mmの気泡欠 陥の切欠係数は1.1以下であること,また,余盛 を削除した時,切削面に露出した気泡欠陥の切欠 係数は,貫通ドリル孔の切欠係数と類似してお り,その欠陥の大きさと破断までの繰返し回数 を,それぞれ対数で表わすと負の相関のあること などを明らかにした94)647)。 熱疲労に関する研究 上田輝之 熱機関や化学工業などの機器の発達に伴い,材 料の使用温度も上昇し,材料の高温強度に関する 研究は近年重要視され,クリープ強度に関する試 験,研究は次第に盛んになってきた。しかしボイ ラ,タービン,ジェットエンジンなどの高温で使 用される装置の部材はしばしば温度および応力の 変動下にさらされる。このような場合にはクリー プのみならず, 部材は温度の変動に伴う熱応力の 繰返しによって疲労損傷をこうむることがしばし ばある。このような熱疲労現象に対する試験研究 も最近多く行われるようになってきたが,従来行 われている熱疲労試験は基本的な試験法として標 準化され確立されたものではない。従って試験機 内部摩擦測定装置 精密小型万能疲労試験機 電磁誘導検査実験装置 図39繰返し速度の影響(18―8ステンレス鋼) 図40試験片拘束率を変えた場合の塑性歪 振幅と破損繰返し数との関係(18―8 Tiステンレス鋼) の型式も,試験片の形状寸法も,試験条件の設定 などの試験方法もまちまちで,それらの種々な試 験結果を相互に比較検討するには困難な点もあ る。これら種々異なった試験機,試験法による試 験資料を比較するには,試験機のこわさ(熱歪の 拘束率),試験片の形状寸法,試験片の温度分布, 繰返速度,上下限温度保持時間などの諸条件が試 験結果におよぼす影響を明らかにするとともに, それらの影響を考慮した材料の熱疲労特性の表示 法が求められねばならない。 疲労試験室では,18―8および18―8Tiステン レス鋼について熱疲労試験を行ない,上記諸条件 の影響を求めている188)。図39はその一例で,繰返 速度の影響を示したものであるが,速度範囲がこ の程度ではわずかな差しか認められない。さらに 広範囲にわたってこの影響を求めている。また図 40は試験片の拘束を変えて試験した結果である。 図41有効エネルギーでまとめた熱疲労データ (18―8 Tiステンレス鋼) 熱疲労はその塑性歪振幅によって支配されると して,塑性歪振幅と破損繰返数で試験結果を整理 されることが多い。しかし熱疲労は歪振幅と同時 に応力振幅も加わり,従って両者をともに考慮す ることが望ましい。さらに温度条件の相違によっ て,歪振幅および応力振幅と破損繰返数との関係 は異なる。そこで,これらの点を考慮して温度依 存性を考慮した歪エネルギー値で熱疲労試験結果 を整理することを検討した。図41は図40の結果を この歪エネルギー値で整理したもので,温度条 件,試験片拘束率は異なっても,同一エネルギー 値に対して同一の破損繰返数が対応することを示 している。さらにこれらの関係が他の諸条件によ り,どう異なるかを追求している。 執筆者所属 材料強度研究部長 岩元兼敏 静的強さ研究室長 舟久保熈康 岩尾暢彦,太田口稔,笹渕益美 動的強さ研究室長 辻栄 一 西島敏,福原熈明 非破壊検査研究室長 木村勝美 松本庄次郎,伊藤秀之,桑江良教 疲労試験室 上田輝之 材料試験部試験課長 横井 信 腐食防食研究部 当所の基本方針である,「金属の『生れ』から成品に至る一貫した過程についての研究」,のうち で,成品となった金属材料の使用環境中における腐食現象の機構を理解し,それにより適切な材料 あるいは防食法を選ぶことは最も重要な研究の一つである。当部における研究方針はこの様な観点 に立って,腐食機構にばかり深入りすることなく,工学的に役に立つ様なデータを得ることをめざ しているが,現在までにとりくんで来たテーマのうちで最も大きなものは原子炉用金属材料の腐食 の研究である。 この分野における当所の研究は炉外試験のみを受けもち,比較的近い将来に実用される動力炉と して水冷炉とガス冷却炉とを目的としている。まづ水冷炉用材料としては,ステンレス鋼の高温水 腐食,特に高温流水腐食と高温水中応力腐食割れの2つに重点をおいている。前者は炉外試験のう ちで最も使用環境に近い条件での試験として重要視されるが,高温高圧の大規模な装置を必要とす るため原子力予算によって当所に設置された4台の試験装置の有効な使用を特に心掛けており,こ れによってオートクレーブ試験によるデータの適用限界を検討している。また後者の応力腐食は炉 の安全性に直結する研究として大切であるが,目下は割れ感受性の少い鋼種の開発に研究を指向し ている。そのほかジルコニウム合金については腐食試験結果の再現性の悪い点に注目し,その原因 を知ることからはじめ,漸次耐食性に及ぼす影響因子を明らかにしているが,特に溶接の際のガス 汚染について耐食性の観点から検討を続けている。一方ガス冷却炉用被覆材としては,現用されて いるマグノックスについて,実用上必要な耐食性に関する基本的データを提供した。またガス炉の 使用温度が高くなる傾向のあるのに対応して,高温用材料としてアルミニウム添加鉄基合金の開発 に着手している。 以上の研究はそれぞれ湿食および乾食研究室が担当しているが,他の研究室も夫々の分野でこの 重点研究に参画している。例えばジルコニウム合金の腐食量の測定は重量変化だけでは必しも正確 ではないけれどほかに適当な方法のないのが現状であるが,腐食計測研究室では渦電流法を用いた 厚み計の開発研究を行ってこれに協力している。 一般に腐食量の計測法は未開発の研究分野であり,また腐食試験法に関しても外見的に使用環境 に似せた便宣的方法が使われることが多い,計測も試験もいづれも腐食機構に基いた合理的方法が もっと使われるべきである。この様な考え方でこれらの諸問題をとりあげているのが腐食計測研究 室であるが,これには常に腐食の基礎反応の明確な理解がともなはねばならないのでこの研究室の 仕事の範囲は自然とそこ迄広がってゆくことになる。しかし腐食反応の基本については勿論湿食研 究室の本務でもある。例えばステンレス鋼の塩化物環境での応力腐食割れの機構解明の手段として 割れ伝播に対する組織の影響をしらべている。またアルミニウムの孔食発生に対する水中溶存イオ ンの影響なども検討しているが,これは湿食研究室の問題であると同時に表面処理研究室における 陽極酸化皮膜化成時の局部腐食の研究とも密接に関連がある。 表面処理研究室ではこのほか表面処理の影響について大気曝露および人工加速試験を行っている が,この場合にもまた,他の研究室の研究者との間の討論が役立っている。 以上の様に当部の研究は4つの研究室,そしていくつかの研究題目に分れてはいるが,それらの 間には常に有形無形の関連が保たれていて,常に連繋して行われていることが最大の特長である。 原子炉用金属材料の腐食防食に関する 研究 工博伊藤伍郎,清水義彦,池田清一,石原只雄 1.緒 言 本研究に軽水冷却型原子炉のためのものと炭酸 ガス冷却型原子炉のためのものと2のつに分けら れる。 2.高温水腐食の研究 2.1.ステンレス鋼の高温流水腐食67) 原子炉環境を模した高温水環境で材料の耐食性 を試験するため動水腐食試験装置を建設し,この 試験結果が静水の場合とどこが違うかを検討し た。また各種市販ステンレス鋼について流水腐食 試験を行い,鋼種間の耐食性の比較をした。 動水と静水とのちがいは水を常に純度良く保ち うることと水流速があることの2つである。320° C,140kg/cm2,1~12m/sec の純水中で SUS27 を800時間まで腐食した場合精製系を用いて試験 水の比抵抗を高く保った場合と,精製系を通さず 比抵抗が低下した場合を比較すると水中溶存酸素 の量によって水純度の影響に差の生ずることがわ かった。また腐食量は流速と共に増加する。従っ て静水試験の結果をもって流水腐食を類推するこ とは危険があることがわかった。 市販のオーステナイト質ステンレス鋼数種,お よびフェライト質ステンレス鋼の350℃, 200kg/ cm2,溶存酸素0.15~0. 48ppmの純水中で流速1 ~12m/secで400時間まで試験した結果では,オ ーステナイト鋼種間,あるいは熱処理の影響はな かった。これに対しフェライト質ステンレス鋼は 約5~6倍の腐食を示したが,400時間は全般的 には均一であったがごく 一部に局部腐食を起した ので今後の検討が必要である。 2. 2.ステンレス鋼の応力腐食 オーステナイト質ステンレス鋼の応力腐食割れ は水冷型原子炉の安全性に影響する点で最も重要 な現象の一つであるにかかわらず,その原因およ び防止策についてはまだ明らかにされていない。 本研究は,この現象に影響する因子として何が最 も重要であるかを知り割れ防止策を求めることを 目的とした。まず市販材のSUS27, 28, 32,43オー ステナイ ト質ステンレス鋼の,溶体化処理または 鋭敏化処理したものについて3点支持定歪法によ り応力20, 25kg/mm2を付与し,塩素イオン濃度 100~800 ppmの範囲内で300℃と350℃の高温 高圧水中でオートクレーブにより300時間まで割 れ試験を行なった結果,以下のような結論を得た。 一般に液中の溶存酸素濃度の低い条件(0.09~ 0. 22ppm)では孔食が少なく全面腐食をおこし, 300時間内では4鋼種とも割れは全く認められな かった。一方溶存酸素濃度0.5~0.9ppmでは4鋼 種とも300時間内に割れをおこし,またSUS32の 一部の試片を除き孔食を発生していた。鋼種間で の割れ感受性の差はSUS 32の溶体化材が最も低 <,他はいづれも割れやすい。またSUS27と32は 鋭敏化処理により粒界割れをおこし溶体化材より も割れ感受性は高いが,SUS28, 43では熱処理条 件により大差は認められなかった。塩素イオン濃 度の影響を顕著でなく,100ppmが他の濃度に比 較して幾らか割れにくく,応力は大いほど割れ感 受性は高い傾向を示した。またいずれの場合も孔 食感受性の高い時には割れ感受性も高くなってい る。また割れと食孔とは共存しており,断面の顕 微鏡観察からも食孔から割れている例が認められ ていることから,高温水中では食孔が割れ起点の 一つであることはほぼ明らかである。以上の結果 からみると従来報告されている沸騰塩化マグネシ ウム溶液による割れとは機構的に差があるように 考えられ,高温水中での割れ感受性を上記溶液に よる試験で判定することはできないように考え る。 高温水中での割れ発生は溶存酸素濃度に大きく 左右されるが,溶存酸素は試験時間とともに減少 するので,厳密に割れ発生の限界濃度を求めるた めには試験期間中濃度変化の生じない一定環境で 試験する必要がある。そこで,写真に示すような 装置を設置し合金組成による割れ感受性の比較や 限界酸素濃度について検討している。 2. 3. 含ボロンステンレス鋼236) オーステナイト質ステンレス鋼にボロンを添加 した制御材の高温水中の耐食性を知るため約1. 7 %のボロンを添加したもの,およびチタンを2~ 3 %加えてボロン添加による脆性改善を企てた合 金について高温水中腐食試験を行った。320℃の 純水中で800時間まで腐食させた結果,ボロンの 添加により皮膜の密着性が悪くなり約10~12倍腐 食が増すことがわかった。チタンを添加すると多 少耐食性は回復するがやはりよくない。このよう なボロン添加による腐食の増加はクロムと鉄のボ ライドができるために地の組織中のクロムが減少 するためであり,またチタンの共存はチタンのボ ライドの形成によってクロムの減少を抑制するけ れどもチタンボライト自体の耐食性の悪いことも あって全体として耐食性をやや改善するにすぎな いことがわかった。この鋼の組織は比較的安定な ために溶接が耐食性に及ぼす影響は殆どないが, 溶接棒にボロンを含まないものを用いれば溶着金 属部はボロンが稀釈されるために耐食性はよくな る。 2.4.ジルカロイの高温水腐食の研究18)776) ジルカロイの高温水中の腐食結果の再現性は一 般にあまりよくなく,影響因子の判定がむづかし くて困るので,まづ試験法をなるべく厳密に定 め,次いでその場合のデータのバラッキについて 検討した。 まづASTM規格を参照して試験法を仮に定 め,ジルカロイ―2を用いて320℃で連続法で試 験した結果800時間での腐食増量の標準偏差は1. 7 mg/dm2であつた。これに対し断続法の場合の標 準偏差は0.8mg/dm2となってやや小さい。これ らの値はASTMの規格内には入るが一般の腐食 試験にくらべて相当大きい点でまだ試験法に改善 の余地があるが,これを基として引続き溶存ガス, 接触腐食などの影響を検討している。例えば溶存 酸素量は腐食増量には影響しないが水素吸収は酸 素が多いと少なくなることがわかった。 ジルコニウム合金はガスとの親和力が大きいの で溶接の際に大気からの汚染を受け易く,チッ化 されると耐食性が著しく悪くなる。そこで一般に 溶接にあたっては空気遮断するためアルゴン雰囲 気とするがその純度が耐食性に及ぼす影響を検討 した。 その結果アルゴン中にチッ素が103ppm以上あ ると高温水中での腐食が急増するが,溶接後に表 面を酸洗すればチッ素の多い層が除かれるのでや やよくなる。しかしチッ素が104ppmと多くなる と酸洗しても効果がないので溶接雰囲気中のチッ 素は102ppm以下にすることが必要であることが わかった。溶接材の一部のみを空気を遮断して溶 接できると長大なものの溶接が簡単にできるので 便利であるが,溶着部が完全に冷えないうちに空 気にさらされるおそれがある。そこで大気中で 300~1000℃,1~3000秒の加熱保持がジルカロ イ―2の320℃の高温水中の耐食性に及ぼす影響 をしらべた結果,400℃以下の加熱温度では試験 時間の範囲内では耐食性が悪くならない。そこで 溶接材が400℃以下になってから空気中に露出さ れる様に装置を設計すればよいことがわかった。 2. 5.アルミニウムの腐食182) 原子炉では水の比抵抗を一定に保っているが, 静的オートクレーブでは,試験時間と共に水の比 抵抗が減少する。そこで水質,比液量,流量,圧 力および雰囲気ガスなどが腐食にどう影響するか をしらべた。その結果水質の変化による腐食量の 差は認められず,加圧することによって重量増加 は多少減る。静的の場合には比液量が大なる程重 量増加が少ないが水が流れる場合は多くなる,こ れは生成皮膜の水中への溶出が水の動くことによ り加速されるためであることがわかった。 3.高温炭酸ガス腐食 3.1.マグノックスの腐食の研究19)52)525)707) 炭酸ガス冷却炉用燃料被覆材として現用されて いるマグノックスの酸化に及ぼすガス温度や圧力 および流量の影響などを含めて炉中で使用する場 合に必要となる実用的データーについてしらべ た。その結果,圧力の上昇と共に腐食は増してい くが温度の影響の方がはるかに大きい。しかし実 用上は500℃までならば許容出来る。一般に初期 の腐食速度はきわめて大きいが,ある時間後には 減少して,重量増加(W)と時間との関係はWn =kt (n≑ 2 )によって表わされる。これは形成 されたMgOの皮膜が保護的に作用するためで, 腐食速度の温度依存性の大きい点からみて,反応 種の皮膜中の拡散が腐食の律速段階になっている ものと思われる。また被覆は燃料の重量による応 力や成長による変形をうける。そこで500℃で引 張応力下での酸化をしらべた結果,変形にともな って酸化は増加し酸化曲線の形も多少変って来 る。しかし大勢は変形のない場合と差がなく,ま た荷重のため特別の現象はおこらないことをたし かめた。つぎに,アルゴンに各種不純物ガスを混 合した雰囲気中で溶接したものについて試験をし たが耐食性には影響しないことがわかった。 以上はいづれも静止ガス中の試験であったが, ガスを流した場合には重量増加は多くなる。しか し流量が5 ×103cc/minをこすと逆に重量増加は 少なくなるが,金属の腐食量は大きくなる。これ は低流速では反応生成物であるCOの除去により 腐食が促進され,高流速ではマグネシウムの気化 損失の影響があるためであることがわかった。 3. 2. Fe―Al合金の酸化の研究 ガス冷却炉の使用温度をあげて熱効率を高めよ うとすると,高温で強くて耐酸化性の良い材料が 必要になる。マグノックスは500℃以上では使用 出来ないので,現在はステンレス鋼とベリリウム が考へられている。しかし前者は中性子吸収が大 きく,後者は加工に難点がある。そこで中性子吸 収が小さくて耐酸化性がよく,700~900℃位の 温度まで使える材料として鉄にアルミニウムを添 加した合金をとりあげ,まづアルミニウム10%以 下の2元合金について炭酸ガス中での耐食性をし らべた。その結果500~600℃ではどの合金も時 間の経過と共に比較的速やかに酸化が進行するが 700℃以上では8 %以上アルミニウムを添加した ものは100時間以後ほとんど酸化が進まなくなり, それ以下の温度よりもはるかに耐酸化性が良くな る。800℃ではさらに耐酸化性がよくなり,900° C以上になると再び酸化が極く除々に増しはじめ ることがわかった。この場合酸化皮膜は低温では Fe3O4型酸化物であるが,高温ではα―Fe2O3ま たわα―Al2O3の酸化皮膜が認められ,この差が 酸化速度を支配しているようである。また皮膜は 低温では2層からなり,とくに8%以上アルミニ ウムを添加した合金では内部酸化を起した。今後 さらに高温強さの検討をし,さらにこの合金を改 良するための添加成分を求める予定で研究続行中 である。 4.燃料被覆用マグネシウム合金の冷却池中に おける腐食183) 使用済燃料を冷却のために水中に保存する場合 に被覆材のマグノックスにおこるおそれのある腐 食をしらべた。腐食液は純水,水道水および腐食 をへらすための抑制剤を添加したものなどで,単 独腐食のほか,ジルコニウム,ステンレス鋼およ びアルミニウムなどの接触腐食について発生電流 および分極電位などを測定してくらべた。その結 果水道水中では腐食が激しいが,苛性ソーダによ りpH12以上にすれば70℃までの腐食は抑制され る事がわかった。他金属と接触させた場合マグネ シウムは陽極となるが,pH12以上の場合でアル ミニウムとの接触の場合のみ陰極になり,そして 分極挙動はpH10では陰極支配で,pH12では混合 支配になる。また水中の塩素イオンは多少腐食を 多くするが,弗化ソーダの添加は抑制効果が大で あることがわかった。 オーステナイト質ステンレス鋼の応力 腐食割れに関する研究 工博伊藤伍郎,清水義彦,石原只雄 オーステナイト質ステンレス鋼の塩化物環境で の応力腐食割れはこのすぐれた耐食材料の最大の 欠点として現在でも残されたものの一つである。 その機構はいまだ完全には解明されてはいないが いくつかの考え方はある。例えば伝播の機構とし て,なにらかの不純物が偏析して連続的径路をつ くり割れを導くとする考え方がある。この偏析は 試験温度における拡散によっておこるとすれば, 割れ寿命は加熱だけすることによっても影響され るはずである。そこでこの様な加熱の影響をさら に詳しくしらべるために,市販のオーステナイト ステンレス鋼の中からSUS27,28, 32, 43の4種 類を用い,溶体化処理したものを143~650℃の 温度範囲で0. 5~30時間加熱することによって42 %塩化マグネシウム溶液の沸騰温度での応力腐食 割れ試験結果がどうなるかをしらべて以下のよう な結論を得た。 まず,650℃で1時間加熱の影響についてみる と市販鋼種の4種類では全て加熱により割れやす くなり,この点従来の報告と著しく異っていた。 しかもこの場合の割れはすべて粒内で,割れの原 因は炭化物の粒界偏析とは関係ない点で極めて興 味がある。なお鋼種間での割れ感受性には大差が 認められなかったが,溶体化処理ではSUS27,28, 43, 32の順に割れ感受性は低くなり,鋼中のNi 含有量の高いものほど割れにくい傾向を示してい る。また143~300℃の加熱温度でも割れ感受性 の変化が認められ,全て5~10時間加熱で割れ感 受性は低くなるが他の加熱時間は割れ感受性を増 大する。一方加熱後の試片の弾性係数の変化を測 定した結果,割れ発生率の加熱時間による変化と の間にほぼ並行関係があり,一般に弾性係数が増 大すると割れ感受性も高くなる傾向を示した。こ のような比較的低温における材質的な変化の原因 についてはいまだ結論を得ていないが,加熱によ るチッ素の偏析も考えられる。例えば真空溶解を 行なった12Cr―15Ni, 15Cr―15Niあるいは18Cr ―20Niなどは45時間の試験で割れない。これら は単にNi含有量が高いだけでなく,チッ素含有 量が市販鋼種(Ni約0.03%)にくらべ約0.01% と低いことにも起因しているものと考えられる。 アルミニウムの腐食におよぼす水中微 量不純物の影響 工博伊藤伍郎,清水義彦,後藤健次郎 アルミニウムの腐食は水の種類によりひどく違 う。これは水中に含まれる微量成分が敏感に腐食 に影響するためと考えられるが,どの成分がどの ように影響するかいまだ明らかでない。そこで水 道水をイオン交換樹脂によって精製した純水をも とにし,それに50ppm迄の種々の試薬を添加した 液中での純アルミニウムの腐食挙動を調べた。 アルミニウムは純水中で全面腐食を起こし,腐 食皮膜によって表面は覆われ,これがある厚さに なると腐食はほとんど進行しなくなる。これに対 し水道水や井戸水などの中では一般に全面腐食は 起こさず食孔を発生する点で著しく違っている。 そこで次に純水に対する添加成分の影響を調べて みると,一般に陽イオンが銅または鉄の様な場合 には孔食の原因になるが,それ以外の陽イオンで はどれも腐食に差がない。しかし陰イオンはその 種類によって著しい差があることがわかった。一 般に添加量が0.05ppm以下では,純水の場合と同 様であるが,5 ppm以上になると硫酸塩あるいは フッ化物の様に全面腐食をほとんど起こさなくな るものと,純水とあまり変わらない腐食を起こす もの(塩化物など)とに大別される。アルミニウ ムの耐食性は酸化状態で形成された緻密な表面皮 膜に依存していると推定されているので,上記の イオン効果とこの膜の厚さとの関連を次に求めた 結果純水中および塩素イオンが存在するときには この層の厚さは24時間以内に非常に薄くなるこ と,また硫酸イオンの存在するときには厚さが変 化しないことがわかり,このようなイオン効果の 差が腐食挙動の差を起こしたものであることがわ かった。そして陽分極測定によると硫酸イオンを 含む液中では塩素イオンを含む場合よりもはるか に分極が大きいことからみて前述の皮膜はなんら かの陽極過程により補修形成されるものと考えら れる。 腐食計測法の研究 工博伊藤伍郎,小林豊治,清水義彦 石原只雄,藤井哲雄 本研究は腐食試験法および試験結果評価をでき るだけ合理的かつ迅速に行うための研究であって 最近の成果は次の3項に要約されよう。 (1)渦電流法によるオーステナイト質ステン レス鋼の粒界腐食測定法の研究203) オーステナイト質ステンレス鋼の粒界腐食はこ の材料の欠点の一つであって,適正な熱処理や鋼 種の選択によって粒界腐食の防止を行なう必要上 からも試験法が確立されねばならない。現在,粒 界腐食試験法として国内ではストラウス試験液に 金属銅を添加した迅速試験法がJIS G 4304に規定 されている。しかし,この方法も粒界腐食をおこ す方法については厳密であるが,おこった粒界腐 食の計測法は定性的である。例えばJISでは試片 を180°屈曲して屈曲部の亀裂程度を観察し評価し ている。そこで,定量的かつ非破壊的に粒界腐食 の程度を判定することが要望される。この研究は この要望にこたえるための定量的非破壊試験法と して渦電流法をとりあげ,新しく設計した装置を 用いて板状試験についてこの方法の実用性を実験 室的に検討したものであって,以下のような結論 を得た。 まず,SUS27および32の両鋼種について測定し た結果,両鋼種とも顕微鏡により測定した粒界腐 食深さと本装置による測定値との間には,再現性 のよい相関性が得られ,測定感度は約15μA/0.1 高速変形実験装置 遅れ破壊試験装置 高温表面処理装置 2トンMBCキュポラ mm (粒界腐食深さ)であった。本装置を用いて 粒界腐食の測定を行なうには板厚の寸法公差以内 の被測定材と同一化学組成を有する基準試片があ ればよい。冷間加工による透磁率の変化は測定値 に著しく影響を及ぼすが,一方,酸化皮膜や表面 粗さによる影響は小さく,また0.4mm以内の試 片の曲りによる測定誤差も無視できる。現在では まだ実験室的な測定の段階であり,今後実用化す るに当ってはプローブの形状とか発振周波数など 改良すべき点が残されている。 (2)腐食度の迅速測定法に関する研究 金属の腐食量を求めるには,腐食による重量変 化量を測定する方法が多く採用されている。この 方法は簡単であるが,かなりの試験時間を要する うえに,腐食生成物を除去し難い場合,正確な結 果が得られない欠点を有する。一般に金属の腐食 は金属と環境との界面における不均一系の化学反 応に基づく複雑な現象ではあるが,最近では湿食 はもとより,乾食も基本的には電気化学的反応に 基づいて進行することが明らかとなり,腐食の測 定に種々の電気化学的方法が提案されている。当 所では腐食の迅速測定法を開発する目的から,電 圧(位)一電流曲線を用いた数種の腐食度測定法 について検討を行ない,その意義と適用限界を明 確にするとともに,測定精度の向上のための測定 法の改良などをはかった。 (3)電気防食法に関する研究526)528) 電気防食法は被防食金属体に常時僅かな防食電 法を流入させることによって金属体の腐食を防止 する方法で,近年著しく普及するに至っている。 しかし本法の適用範囲が拡大するにつれ,広範な 腐食環境中における本法の適用性を明確する必要 が生じている。当所においては鉄鋼に対する電気 防食の防食基準を確立する目的から,従来不明確 であった複雑な腐食環境中における防食電位につ いて詳細な研究を行なっている。また本法の実用 上の問題には,未だ技術的開発を要する点が少な くなく,例えば外部電源方式の適用に当っては, 陽極材料として安価な耐久性のある不溶性電極材 料が要求される。当所ではこのための材料として 銀またはアンチモンを含む鉛合金について,不動 態化に及ぼす合金組成と液組成の影響を調べて, 陽極的特性と不動態皮膜組成を明らかにするとと もに,不溶性電極としての許容電流密度を決定し, 鉛合金電極に関する新資料を得た。 高張力鋼の塗装下地処理の研究 工博伊藤伍郎,福島敏郎,村上寛* 長大橋など屋外に曝される構造用鋼に使用する 塗料の性質が防食効果におよぼす影響について は,従来多くの研究が行なわれたが,塗装工程の うちで鋼板の黒鈹の除去,ウォッシュプライマ処 理,リン酸処理などの前処理の最適な処理条件は 未だ不明確である。そこでこのような塗装前処理 の方法を検討する目的で研究を行なった。 60kg/mm2高張力鋼を試験片とし,まず種々の ブラスティングを行ない,その後数種のウォッシ ュプライマ処理を行なったものの他亜鉛またはア ルミニウムの溶射を行なったものなどを試験片と した。塗装は下塗りには金属溶射の場合はエポキ シ系ジンクリッチペイントまたはアミン硬化形二 液性エポキシ塗料を用い,その他の場合は鉛丹合 成樹脂プライマーを用い上塗りには長油性アルキ ッド塗料を吹きつけた。 大気曝露は5年間行なうことを目標とし,当研 究所の24号館屋上(5階)に設置した南向きの架 台上に合計381枚の試験片をとりつけた。曝露場 所の気象条件として,大気中のSO2, SO3, CO2 の量,降雨量,降塵の量および組成分析,風向, 風速,日照時間,紫外線赤外線照射量,気温,湿 度を測定している。大気曝露試験は現在なお続行 中であるが3ヵ月の大気曝露によりショットおよ びカットワイヤをブラスティングした後下塗り塗 装を施した試験片はクロスカットマークに沿って わずかに赤銹を生じているけれども,他の試験片 は異状が認められない。つぎにこれらの大気曝露 試験と相関性のある人工加速腐食試験を開発する 目的のため,従来内外で広く実施きれ原理的に妥 当と考えられている人工加速腐食試験方法につい て吟味した結果,実際操作上および試験機の構造 上未解決の問題がかなりあることに気がついた。 例えば,ウェザーオメ ーターのスプレー水の乾燥 *昭和41年4月退職,現在鈴鹿工業専門学校助教授 が早過ぎるため腐食が促進され難いこと,水中に 鉄分が混合して試験片の表面を汚すこと,自動間 歇腐食試験機および結露腐食試験機における腐食 性雰囲気の不均一など不備を見出し,試験操作手 順および試験機の構造の改良を計画している。 524) アルミニウムの硬質陽極酸化皮膜の研究 工博伊藤伍郎,津田俊二 アルミニウムを低温の硫酸浴中で陽極酸化する と従来の方法では得られなかった様な硬くて厚い 皮膜が化成できることがわかって以来,漸次実用 される様になって来ている。しかしこの方法は低 温での電解を必要とするので,実作業としてはむ づかしい点がある。そこで適当に浴組成を変えて, 浴を冷却しなくてもよい様にしたいとの望みがで てくる。従来の文献を綜合すると望みがありそう に思われるのはシュウ酸,マロン酸およびマレイ ン酸であるので,それらを15%硫酸浴に添加した ものを電解液として5~20℃で純アルミニウム の陽極酸化を行い,膜厚,皮膜生成効率,硬さ, 耐摩耗性などを測定して硫酸単独浴の場合と比較 した。 その結果シュウ酸またはマロン酸を添加すると 硫酸単独浴の場合より10~20℃高い温度でも硬 くて耐摩耗性の良い皮膜ができることがわかった が,特にマロン酸が有効であった。これらの添加 物の効果は,電解中における生成皮膜の溶解を抑 制し,皮膜生成効率,硬さおよび耐摩耗性などが よくなるものであることを確めた。 執筆者所属 腐食防食研究部長伊藤伍郎 湿食研究室長清水義彦, 石原只雄,後藤健次郎 乾食研究室長小林豊治, 池田清一 表面処理研究室長福島敏郎, 津田俊二 腐食計測研究室藤井哲雄 溶接研究部 溶接はほとんどあらゆる現代工業に広く応用され,車両,自動車,船舶,航空機の陸海空各種運輸 機,橋鿄,建築,貯槽などの定置構造物,水や燃料の輸送パイプ,電気,生産,化学,石油の各種機 械装置,家庭用品,さらに原子炉や宇宙開発関係などの溶接構造物があげられる。「溶接技術」は溶 接構造物の製作に関する材料,設計,機器,施工,検査,性能の諸問題を取扱う技術であって,「溶 接工学」を基礎としている。「溶接工学」の分野には溶接に関する材料と力学および溶接諸現象の解 明があり,これらの基礎研究を基盤にして溶接構造物製作のための開発実用化研究が行なわれるべき である。 溶接研究部には融接研究室,圧接研究室,ろう接研究室および特殊溶接研究室の4研究室があり, 溶接工学の2本の柱として溶接冶金学の確立と新溶接法の開発を目指している。溶接冶金学では溶接 特有の急熱急冷による過渡現象を考慮して,物理冶金学と化学冶金学を活用し,母材原質部の性質, 熱影響部の挙動,溶接金属の溶融から凝固の過程を冶金的に追究し,材料の開発,溶接施工法の選定 や継手性能の評価に資している。新溶接法の開発については,材料と機器の両面から溶接の能率化と 品質の向上を計る研究と新熱源利用による特殊な溶接法の開発実用化研究を進めている。とくに原子 炉,航空機,ロケットおよび一般構造物を対象とした溶接技術の研究に尽力している。 融接研究室においては,当研究所の総合研究の一環として「溶接構造用高張力鋼の試作研究」のう ち溶接性試験を分担実施しており,耐硫化物腐食割れについても分担研究を行なっている。構造用鋼 材やステンレス鋼などの溶接割れの問題は長期にわたり研究を進めている。また構造用鋼の溶接性の 基礎研究として溶接用CCT図の作成を多数行なっており,溶接用鋼材の開発と溶接施工法の確立に 寄与している。能率化と品質向上のためのアーク溶接施工法に関する基礎研究としては,各種アーク 溶接における溶接熱サイクルの解析,片面溶接の適正条件の設定などを行ない,実際の溶接構造物へ の適用をはかっている。さらに原子炉関係では原子炉用各種継手の溶接施工法の確立と継手高温性能 試験を実施している。 圧接研究室においては,「活性金属の溶接に関する研究」としてチタン,ジルコニウム,ニオブ, タングステン,モリブデンなどの活性金属を対象に抵抗溶接,可変雰囲気溶接,真空溶接,超音波圧 接,高周波溶接などの各種溶接法の研究を実施している。また異種金属の固相接合法の開発を行なっ ている。原子炉関係ではとくに電子ビーム溶接の開発実用化を進め,最近では低真空電子ビーム溶接 法の検討も行なっている。 ろう接研究室においては,チタン,ステンレス鋼,耐熱合金などの耐熱材料用ろう材として銀ろう 系およびニッケル系ろう材の開発を行なっており,リチウム入りろう材の製造法と真空あるいは雰囲 気中のろう接法などへの適用を検討している。一方,溶接金属のガス吸収の問題を化学冶金的立場か ら基礎研究を進めており,各種の単純な2成分系合金における窒素の溶解度を熱力学的に検討してい る。 特殊溶接研究室においては,とくに新熱源利用による特殊な溶接法の開発研究を行なっており,プ ラズマ法の溶射および溶接への利用,エレクトロスラグ溶接,駆動アーク溶接,摩擦圧接などの開発 実用化を進めている。プラズマ溶射の研究では耐熱あるいは耐摩耗用としてモリブデン,ニクロム, ニッケル基合金などの金属,アルミナ,ジルコニヤなどの酸化物,炭化タングステン,炭化クロムな どの炭化物,硼化チタン,硼化ジルコニウムなどの硼化物の溶射に関する研究を広く実施している。 アーク溶接施工法に関する基礎研究 工博稲垣道夫,岡田明 近年,構造用鋼とくに低合金高張力鋼や低温用 鋼の開発実用化が進められ,これらの鋼材をいか に能率よく溶接しかつその品質を確保しうるか, その方策の究明は刻下重要な課題である。当研究 部においてはこの品質の確保と溶接の能率化のた めの適正な溶接施工法の確立に関する研究を行な っている。品質の確保については,溶接割れ防 止,溶接部の延性の確保,継手引張強度の確保, 継手の切欠じん性の保証などに対する溶接熱サイ クルの制御に関しての研究であり,この基本的な 考え方と応用についてはすでにかなりの成果を収 めた。溶接の能率化については,開先上にアーク 溶接をしたときの溶融,溶着現象の基礎研究に基 づき,片面溶接施工法の基本的な考え方を提案 し,現在さらにこの研究を進めている。以下これ らの研究成果の概要について述べる。 1.アーク溶接部の冷却過程の推定 溶接熱サイクル冷却過程において溶接部の組 織,かたさ,延性,切欠じん性などの機械的性質 に対しては主として溶接部の800から500℃まで の冷却時間によって支配され769),168)また低温割れ に対しては800から300℃までならびに高強度の 鋼材にはさらに低温の100℃付近までの冷却時間 に支配される。このため各種アーク溶接法につい てこれらの冷却時間を推定する実験式193)167)とそ のノモグラフを作成し769)134)157),簡単に溶接施工 条件から冷却時間を推定しまた逆に与えられた適 正な溶接熱サイクルの冷却時間に対して溶接施工 条件を推定し得るようにした。またこれらのノモ グラフをもとにして,溶接部の最高かたさを800 から500℃までの冷却時間で整理するテーパかた さ試験の図示方法を提案した235)。 2.片面溶接の溶接施工法の確立 裏あてを使用しない片面アーク溶接法の基本的 な考え方として,裏波ビードが得られる溶接施工 条件の下限では溶込み不足の現象が生じ,その上 限では溶落ち現象が起り,この二つの現象を検討 することにより適正な溶接施工条件の範囲を求め ることができることを明らかにし248),裏あてを用 いない場合溶融金属がルート面内に流れ込み裏面 まで達しそこで裏波ビードを形成するための条件 として,①ルート間隔を1.5mm以上とる必要が あること,また②溶融金属がルート面内に流れ込 むさいにあらかじめルート面およびルート底部の 温度がほぼ融点近くに達するような入熱を与えて やる必要があることを明らかにした。 鋼材の溶接割れに関する研究 工博稲垣道夫,阪大工博中村治方 昭和32年度から昭和35年度にわたって研究を行 なった,オーステナイト系ステンレス鋼,Al-Mg 合金および高張力鋼の溶接割れの問題のうち,と くに高張力鋼の溶接割れについて昭和36年度以降 も研究を続行した。 1.高張力鋼溶接部のルート割れ49)90)117)177)201) 227)683) 昭和35年度までの研究によって,高張力鋼初層 溶接時に生ずるルート割れは,硬化組織,水素お よび拘束力の3因子に支配されることが明らかに なった。 昭和36年度以降においては,まずルート割れに およぼす拘束力の定量的な影響を求めるために, あらたにTRC試験方法(引張拘束割れ試験方法) を開発した。このTRC試験結果などからルート 割れが水素による遅れ破壊現象としてあらわれ, 割れ発生の限界引張応力値が存在することを示し た。さらにこの限界応力値は溶接部の冷却過程が 緩慢になる程,また拡散性水素量が減少する程, 上昇することを明らかにした。 水素の定量的な影響については,冷却過程中の 水素量変化も考慮して検討を行ない,とくに冷却 過程中に溶接部から逃散する水素量を近似的に推 定する計算方法を示し,その結果から実際のルー ト割れ現象を合理的に説明できることを明らかに した。 以上の多年にわたる研究結果から,高張力鋼初 層溶接時のルート割れの機構を解明するとともに 実用的な割れ防止対策を提案した。 2.高張力鋼多層溶接継手のマクロ割れとミク ロ 割れ506)507) 昭和38年度から試作大型TRC試験機(容量 1000t)を用いて,100キロ高張力鋼について標記 の研究を行ない,この種の割れも水素による遅れ 破壊現象であり,溶接諸条件で定まる割れ発生の 限界引張応力値と具体的な割れ防止対策を示し た。 3.溶接熱サイクル再現試験片の水素による遅れ 破壊試験503)504)505) 前述のような各種の低温割れはいずれも水素に よる遅れ破壊現象であることが明らかとなったの で,昭和37年度以降に標題の試験を実施しこの問 題の解明をはかっている。その結果,各種高張力 鋼の水素劣化特性値を定めうるようになった。 溶接用SH-CCT図の作成とその応用に関 する研究 工博 稲垣道夫,宇田雅広,春日井孝昌,大野悟 溶接性試験には種々の試験方法があるが,本研 究部では基礎的な溶接性試験として溶接用SH-C CT図(再現溶接熱影響部連続冷却変態図)の作 成方法と装置を開発し,各種高張力鋼などの溶接 用SH-CCT図の作成とその応用について行なっ ている。 1.溶接用SH-CCT図の作成 溶接熱影響部の変態挙動,組織およびかたさな どの性質は,溶接用SH-CCT図によって求める ことができる769)。溶接用SH-CCT図作成装置は, 高周波加熱装置と特別な制御装置からなり,冷却 中の変態過程は熱膨張および熱分析記録計で測定 される(写真19参照)。溶接用SH-CCT図作成装 置には,溶接熱サイクル再現高温顕微鏡と熱サイ クル支持制御装置を付属し,再現溶接部の変態の 直接観察や拘束応力状態下の変態の測定ができ 写真19溶接用SH-CCT図作成装置 る。現在まで作成した溶接用SH-CCT図は,市 販または試作高張力鋼および低温用鋼合せて約 100 鋼種におよぶ17),72),470),471),472),473),483),484),486), 511),514)。最近作成されたおもなものは,ロケット チャンバ用超高張力鋼513)516),低温用9%Ni鋼515) がある。 2.溶接用SH-CCT図の応用 溶接熱影響部の溶接性判定には,とくに溶接用 SH-CCT図から求められる臨界冷却時間Cz'とCf' との値が重要である。溶接割れ試験結果から,y 開先拘束割れ試験における割れ防止のために, HT-60では溶接後の冷却時間がCf'よりも遅けれ ばよく,またHT-70やHT-8Oでは,溶接後の冷 却時間がCz'とCf'の間よりも遅ければ良い478)。た だし溶接低温割れは,組織のほかに拘束応力や水 素の因子が重畳するので,この傾向はよく乾燥し た低水素系溶接棒を使用し,降伏点に近い拘束応 力のかかった例である。またCz', Cf'の値と化学 成分との関係は,約60鋼種の市販および試作高張 力鋼の溶接用SH-CCT図を求め,Cz'とCf'に対 応する炭素当量を電子計算機により算出し1965 年IIW大会で発表した682)。溶接熱影響部の切欠 じん性を溶接用SH-CCT図と対応させると,炭 素含量の低い鋼材(0.09~0.14%C)において, 一般にCf'付近を通るような冷却条件では切欠じ ん性の面から最も良好な傾向が得られた168)。 原子炉用継手の溶接と熱ぜい化に関する 研究 工博稲垣道夫,岡根功 原子炉用圧力容器,配管用パイプ,炉心部など の各種同材および異材の溶接施工法と各継手の高 温性能に関し,昭和33年以降引続いて,つぎのよ うに一連の研究を実施している。 1.高温延性に関する研究16)42) 原子炉用ステンレス鋼溶接部の母材割れあるい は溶接金属割れに対するステンレス鋼の材質の影 響を調べるために試験片に溶接熱サイクルを再現 して,この熱サイクル途上における高温延性度を 種々のステンレス鋼について実験した。この結 果,一般に高温延性試験による溶接性の判定はオ ーステナイト系ステンレス鋼については有効であ るが,マルテンサイト系,フェライト系ステンレ ス鋼についてはマルテンサイト変態による低温割 れが生ずるので,高温延性試験による溶接性良否 の判定は困難なようである。 2.溶接継手のクリープ破断に 関する研究100)228)475)509) 板厚38mmのステンレスクラッド鋼,板厚30m mの70キロ高張力鋼および板厚57mmのCr-Mo 鋼溶接継手部クリープ破断特性を検討した。試験 は溶接部より採取した従来の小型丸棒試験片と全 板厚に対して,溶接継手断面をそのまま有する大 型試験片とを用いて実施した。この結果,大型試 験片の破断強さは小型試験片のそれに比してかな り低い値を示した。また,破断状態は両試験片の 間にかなりの相異がみられた。以上のことについ て,種々検討を加えた結果,溶接継手部の設計に クリープ破断を考慮する場合には,大型継手試験 片による結果を基礎資料にすることが望ましいこ とが判明した。 3.溶接部を長時間加熱した場合の材質変化184) 原子炉圧力容器用60キロ高張力鋼溶接部を高温 で長時間加熱した場合,材質が如何に変化するか を検討した。上記鋼材の使用温度は普通約350℃ 以下と考えられるが,長時間加熱による材質変化 を比較的短時間に調べる目的で本実験では加熱温 度を550℃に選定した。以上の結果,加熱前の組 織によって,途中の材質の変化過程は異るが最終 的にはフェライト結晶粒の粗大化および炭化物の 粒界凝集が進行し,材質はぜい弱化することが判 明した。 4. その他 その他原子炉設計に対する基礎資料として,材 料の異常温度上昇に対する特性を求めることも重 要である。現在,この問題に対する適正な試験方 法を検討し,この結果にしたがって各種原子炉材 料の上記特性を求めるべく準備中である。また, 装置および工数の簡便さの点で他の溶接方法より 経済的に有利と考えられるろう接方法を目下検討 中である。 溶接部の化学冶金的研究 理博 和田次康,宇田雅広,工博 稲垣道夫, 大野悟 アーク溶接の場合,溶着金属は極めて短時間に 「溶融―凝固」の過程を通る。この溶融状態では 溶接雰囲気ガス,溶接スラグおよび溶融金属間に 化学反応が進行し,さらに次の急速な凝固によっ て反応は終結する。溶着金属の化学成分を適当に コントロールしたり,ブロ ーホールなどの溶接欠 陥を防止するためには溶融および凝固過程におけ るこれらの化学反応を正確に把握することが必要 である。この研究の目的は溶接部の化学冶金的反 応を明らかにし,溶接継手の性能向上および欠陥 防止に役立てることである。現在までに行なった おもな研究内容は次の通り。 1.アーク溶接における窒素吸収220)493)512) 溶接における「ガス―メタル」間の反応の基礎 知識を得るために,アーク溶解時における溶融純 鉄および鉄合金中への窒素溶解量を測定した。そ の結果製鋼反応における化学平衡論からは推定さ れ得ないほど多量の窒素が溶解(溶解度は約5倍 大きい)し,しかもある一定窒素分圧(合金元素 の種類,その含量によって異なる,純鉄の場合: PN2=0.09atm)まではSievertの法則に従って 溶解をするがそれ以上の窒素分圧では窒素溶解量 は窒素分圧に関係なく一定となる。これらの原因 を熱力学的に解析した結果,アークによって窒素 分子の1部が解離し窒素原子となって活性化する ためであることがわかった。さらに窒素溶解量に およぼす合金元素の影響をみるため一定低窒素分 圧下(PN2=0.03atm)で各種鉄合金をアーク溶 解した。アーク溶解の場合の各種合金の窒素の相 互作用助係数値は溶鉄の温度を考慮に入れるなら ば製鋼反応の測定値から推定し得ることがわかっ た。 2.凝固過程とそれにともなう化学反応につい て 221) 溶接における凝固過程は,たとえば普通の鋳造 の場合のそれに比較すると,凝固速度が著しく速 いという特徴がある。すなわち凝固速度は0.05~ 0.2cm/sec程度と考えられるが,この程度の速度 では凝固面前面に溶質成分の濃度ピークがあらわ れると推定される。このピークにおけるC-O反 応の結果,COブローホールが生ずるとすれば従 来の実験事実が極めてよく説明されることを示し た。さらにこのモデルはウォームホールの生成そ の他にも応用できることを指摘した。 特殊ろう接に関する研究 理博和田次康,雀部謙,田辺誠 この研究の目的は,新しい金属材料に対するろ う材およびろう接方法の開発を行なうとともに, ろう接に共通した課題である「ぬれ」その他につ いての基礎研究を行なうことである。 現在までの主な研究内容は次の通り。 1.ろう接継手のせん断試験方法の検討222) ろう接継手の強度試験方法は,IIW法,AWS 法など多数が提案されているが,継手の強度は試 験片の大きさ,寸法により異なるため,多くの複 雑な問題が生じてくる。これを解決する一つの方 法はAWS法のように重ね代を種々に変えた一連 のせん断試験を行なうことである。しかしAWS 法は試験片の数が多いため材料が多量に必要で, 加工にも手数を要する。この点を考慮して,圧縮 せん断方式を採用したせん断試験方法を新たに考 案した。 2.チタニウム用ろう材の開発 この研究は主として真空ろう付用の銀系ろう材 の開発を行なったもので,イナートガス雰囲気中 ろう付けに対しては後述のLiを含む銀系ろう材 を開発中である。 チタニウムの真空ろう付用銀ろうとしては,純 銀に近いものが従来はよいとされていた。銅はろ うの融点を下げるので好ましい合金元素である が,継手を脆くする性質があるので10%以上を添 加することは危険と考えられていた。この点を種 々検討した結果,Niを同時に添加すれば銅による 脆化がある程度防げることを見出した。この種の ろうにより適当なろう付条件を選べば,KS-50ク ラス純チタンに対し30kg/mm2程度の継手強度 が得られる。 3. Li入り銀ろうの開発 銀ろうに微量のLiを添加すれば,母材に対す るぬれが著しく改善される。この点に注目して Li入り銀ろうの開発を行ないつつある。(別項 「耐熱材料の溶接に関する研究」参照) 4.ろうのぬれに関する研究 Liのように微量の成分がろうのぬれを著しく 変える事実から,ぬれの本質について解明するこ とが必要となってきた。現在,母材の結晶構速と 界面エネルギ,ろう材中の合金成分と界面エネル ギの関係などについて実験を進めている。 耐熱材料の溶接に関する研究 理博和田次康,工博橋本達哉,岡根功 工博稲垣道夫 ジェットエンジン,ロケット,化学工業関係の 耐熱材料として,チタン合金,ステンレス鋼,ニ ッケル基やコバルト基などの耐熱高合金が使用さ れるので,これらの材料の溶接法の確立と溶接性 が重要視されつつある。溶接研究部では,各研究 室で分担して総合的にこの研究を実施している。 1.耐熱材料のろう接 航空宇宙技術研究所で開発中のジェットエンジ ンにチタン合金を使用するために,チタンおよび チタン合金のろう接方法の研究を最初にとりあげ ることとなった。これらの材料のろろ材としては 銀が有用であるので,銀系ろう材の改良,とくに Li入り銀ろうの製造と応用に研究が進められた。 この種のろうは耐熱鋼あるいはチタン,チタン合 金のイナートガス中ろう付けに有効である。また Li入りろうの溶製法として電解溶製法の開発を 行ないつつあり,昭和40年度の特別研究費により ろう材電解溶製装置が購入されたので,現在工業 化研究を続行中である。 2.耐熱材料の溶接性 耐熱高合金は高温割れ感受性が極めて大きいた め溶接割れを生じやすい。したがって溶接施工に は割れ感受性の少ないような溶接棒や施工法の選 定が重要な課題である。この問題について次の2 つの面から検討を進めている。 2.1.溶接部近辺の温度履歴(たとえば加熱速 度,最高加熱温度,加熱時間,冷却速度など)の 検討:熱履歴がわかればその材質の性質の予想が つく場合が多い。現在溶接熱影響部について加熱 過程の実測と理論解析とから最高加熱温度分布が 推定できる実験式を求めつつある。 2. 2. 一方これと並行して高温顕微鏡によって 耐熱高合金(鉄基,ニッケル基,コバルト基)母 材の高温時の割れ破断状況を観察し,拘束条件, 加熱温度などとの関係をしらべている。 このほかチタン合金(当所で開発のAl-Co-合 金その他)の溶接性についても研究を進めつつあ る。 3.耐熱材料の定荷重熱疲れ特性 ジェットエンジン燃焼室などの部材はその使用 条件からみて,繰返し加熱冷却の熱サイクルを受 ける。このため材料の選択には熱疲れ特性を考慮 する必要がある。当研究部では薄板専用の熱疲れ 試験方法として試験片に一定荷重を与え,これに 繰返し熱サイクルを与える方式を考案し,ジェッ トエンジン燃焼室部材として使用されているCo 基20Cr-15Ni-10W合金の試験に応用し良好な結 果をえた。 活性金属の溶接に関する研究8)28)73)74)733) 工博橋本達哉,阪大工博松田福久 活性金属の溶接に関する大気遮蔽の問題につい ては,現在までのところまだ系統的な研究がな < ,ほとんど現場経験によって処理されているの が実状である,本研究はチタン,ジルコニウム, ニオブ,タンタルなどについてこれら金属のイナ ートガスアーク溶接(TIG),真空溶接部の諸性 能を求めて溶接施工の基礎資料を与えることを目 的としたものである。 実験には雰囲気制御溶接装置を用いた。これに 溶接雰囲気ガスが任意に調節できる気密容器内で 溶接作業する装置であるから,純イナートガス中 での溶接はいうまでもなく,空気,酸素,窒素, 水素などの不純ガス量を任意に混入そしての影響 を検べるには非常に好都合である。これら不純ガ ス量と溶着金属のぜい化度や耐食性との関係を求 め,溶接に必要なイナートガスの純度,入熱条件 とシールド温度範囲との関係などを明らかにし, 大気遮蔽方法に指針を与えた。溶接雰囲気(アル ゴン)に混入しうる各種不純ガスの最大許容量は 大体1000ppmが限度といえる。またシールドす べき最低温度限界は材質,板厚,溶接入熱,溶接 速度によって多少変るが,650~700℃と考えら れ,これ以上の温度に加熱される部分はシールド の必要がある。以上のような基礎資料をもとにし て薄板の溶接の場合に必要なガスシールド寸法を 決定し,併せて補助シールドノズル設計の基礎を 与えた。そして溶接雰囲気が適正であれば気密室 外でも大気汚染を受けない良質の溶接が得られる ことを明らかにした。 活性金属の溶接法としてTIG溶接と真空溶接 とを比較してみると,後者には大気汚染防止のほ かにたとえば不純成分の蒸発純化作用のような特 長がある。この蒸発作用は合金成分の蒸発によっ て合金組成の変化を招いたり,あるいは溶接部の 気泡生成を助長しやすいなどの傾向があって,こ れがためにアルゴンアーク溶接では健全な溶接が 得られる場合でも,電子ビーム溶接では溶接欠陥 を生じることがある。したがって材質による溶接 法の適用性が考えられ,厳格な意味では電子ビー ム溶接用材料はTIG溶接用材料にくらべて高純 度のものが望ましいといえる。 シールド法に留意して適正な溶接条件のもとで 作業すれば一般に電子ビーム溶接部と高純度アル ゴン雰囲気中のTIG溶接部には特に差異はみと められず,いずれも良好な結果が得られる。 なお高融点金属薄板の適正溶接入熱条件を比較 すると電子ビーム溶接はTIG溶接の約1/2~1/3 程度となる。 電子ビーム溶接技術に関する研究85)86)91) 102)112)147)158)170)646)675)688)697)701) 工博橋本達哉,阪大工博松田福久 本研究は電子ビーム溶接技術の基礎ならびに応 用に関する実験的研究で,従来の溶接法との優劣 について比較検討するとともに,特に本溶接法の 一大特長である深溶込み特性に注目してその形成 機構を実験的に明らかにし,溶接能率の向上と厚 板溶接への実用化の基礎固めを目的としたもので ある。また最近興味を持たれつつあるnon-Vacu- um Welding processについての予備実験とし て低真空中の溶接実験をもとりあげている。 溶接装置は現在2台(国産,輸入機各1台)が 稼動しており,特に前者は2. 5kW(加速電圧50kV ビーム電流50mA)の小容量機であるが溶接雰囲 気を最高10-4Torrから最低0. 5Torr程度まで変 化できるため従来の装置にくらべて高真空から比 較的低真空まで広い範囲の雰囲気中で溶接実験が できるのが特徴である。一般に電子ビーム溶接で はアーク溶接に比べて幅がせまく,非常に溶込み の深い溶接が得られる。この深溶込めの現象解明 については広範な実験がおこなわれたが,結局そ の原因はアーク溶接の場合とちがって溶融池に深 い穴が掘れ,ビーム流が溶融池の底へと深く照射 されるためであると結論し,これを立証すべき幾 多の実験事実を示した。したがって電子ビーム溶 接の加熱過程はアーク溶接のような表面加熱現象 とみるよりは,溶接部の厚み方向への深さをもっ た熱源による加熱というモデルに近似する方が実 際的である。このような思想をもとにして溶込み 深さや適正溶接条件式を求めたところ,実測値と 比較的よく 一致する基礎式を誘導することができ た。また上式から求めた各種材料の適正溶接入熱 の計算値は,実験値と非常によく一致するので, 本式によって任意の材質,板厚の適正溶接条件を 予測することができる。 また溶接部の冷却過程についてもほぼ2次元的 な冷却現象であることを明らかにし,同時に炭素 鋼の溶接部の硬化度の簡単な推定法を求めた。そ の他各種材料の継手の機械的性質,化学的性質に ついて,現在も引続き検討中である。 つぎに低真空中の電子ビーム溶接については本 法の実用化に必要な基礎資料を求めることに重点 をおき,装置,施工,溶接部性能など全般にわた って検討し,高真空中の溶接法と比較検討してい る。 写真20電子ビーム溶接装置 溶接雰囲気と溶込みの関係の予備実験結果によ ると,溶込みは真空度の低下につれていくらか減 少するようであるが,この実験範囲(10-4~0.5 Torr)内では特に顕著な差異はみとめられなかっ た。これは特記すべき事項というべきもので,将 来真空容器を用いない溶接技術の実用化にとって 明かるい見通しが得られたといえよう。 圧接に関する研究 工博橋本達哉,田沼欣司 本研究には,重ね点溶接および囲相接合につい ての研究が含まれる。 1.点溶接770),210) 点溶接の品質管理上,特に重要な問題である電 源電圧の変動の影響について研究を実施した。こ れは点溶接機の同時通電による電源電圧の変動を 想定したもので,電圧変動の時期やその大きさ, 被溶接材質,溶接条件などと点溶接部の強さとの 関係について吟味した。一般に使用されている点 溶接機は電源電圧変動に対する補償装置を持たな いために,電圧に比例して溶接電流が変動する。 アルミニウム合金の溶接部は軟鋼やステンレス鋼 に比較して電圧変動の影響を受けやすい。また鉄 鋼材料においては通電末期に,アルミニウム合金 において通電初期に発生する電圧変動が溶接結果 にいちじるしく影響することなどが明らかとなっ た。 また電源電圧変動に対する一対策法としての自 動定電流制御装置を用いた点溶接法についても検 討した。本制御法は電圧やその他の因子の変動に 対しても,速やかに追従し溶接電流を一定に保持 するので,軟鋼,ステンレス鋼はもとより,アル ミニウム合金に対しても,かなり有効であり点溶 接部の品質向上に役立つことが明確となった。 このほか点溶接法の活性金属えの適用性につい ての研究として,ジルコニウムおよびジルカロイ ―2合金の空気中における点溶接を実施し,その 適正溶接条件を0. 7~2.1mmの板厚について決定 した。これらの溶接部には圧こん周囲にリング状 の大気汚染部を生ずるほか,内部欠陥などは認め られず,これらの材料の点溶接は比較的容易であ る。また溶接部は320℃,116気圧の高温高圧水 の腐食試験に十分耐えられる結果を得たので,こ れらの活性金属を空気中で点溶接した継手は,化 学工業用にはもちろん原子炉用としても懸念する ことなく使用できることが明確となった。 2.固相接合 材料の性質上,融接法が好ましくないものや異 種金属の接合のように,ぜい弱な化合物などを生 成するものに対しては,比較的低温で接合する固 相接合法が望ましい。実験結果によれば接合開始 温度は,一般にその材料の再結晶温度とほぼ一致 する。従って,高融点材料も適当な低融点の中間 金属を使用することにより,母材の再結晶温度以 下で容易に接合できることも,この結果から類推 できる。現在この着想のもとに中間金属を用いた モリブデン,タングステンの接合技術の検討を行 なっているが,比較的良好な結果を得つつある。 また適当な拡散処理を施すことによって母材に劣 らぬ耐熱性をもつ継手が得られる見通しを得た。 現在引続き圧接機構の解明とともに,この種の新 しい接合技術の開発研究を実施中である。 特殊溶接法の開発に関する研究 工博蓮井淳,福島貞夫,衣川純一, 本研究の主題はエレクトロスラグ溶接法および 摩擦圧接法に関する研究ならびに駆動アーク溶接 法の開発である。 1.エレクトロスラグ溶接法に関する研究 101)113)136)178)465)468) 本法の厚板溶接における高能率と経済性は高く 評価されているが,それの有する欠陥の一つは溶 接部の切欠き靭性が低いということである。そこ で,本法における基礎現象についての研究と併行 して,溶接部の切欠き靭性の向上法の開発を行な ってきた。 1.1.埋立て法 溶接中に埋立て金属をスラグ溶中に添加して, 溶融金属の温度を低下させ,溶接金属の溶込みお よび熱影響部の幅を減少させると同時に溶接金属 の化学成分を制御する方法を考案し,厚さ50mm の軟鋼板の溶接に応用した結果,通常の溶接法に よったものに比して溶接金属ならびに熱影響部の 切欠き靭性を可成り改善することができた。しか し,溶接境界部では,本法の採否による差異が認 められなかった。 1.2.直接焼ならし法 溶接中に,加熱バーナを溶接の進行と同速度 で溶接線に沿って動移させて,Ar1変態点以下に 冷却しつつある溶接部をAc3変態点以上にまで 再加熱後,空冷して,溶接の完了と同時に焼なら し処理が行なわれよるうにする方法である。厚さ 50mmの軟鋼板,A302B鋼板の溶接で,後者の 熱影響部を除くすべての部分において切欠き靭性 が著しく改善された。 1.3.元素添加法 溶接中に,溶融スラグ中へAlの細片,Ti, Zr のフェロアロイ粉末を,それぞれ,連続的に投入 添加することによって溶接金属の切欠き靭性を向 上させることができた。 従来の溶接法におけるワイヤー送給とは別に, Mn混入のフラックス入りワイヤ(試作)をスラ グ溶中へ送給しつつ溶接すれば,溶接金属中の酸 素量を可成り低下せしめ,この部分の切欠き靭性 を著しく向上せしめうることを認めた。 以上の溶接部の切欠き靭性の向上法の開発の傍 ら,慣用の溶接法による溶接部から採取した試験 片(母材:ボイラ用鋼板)について高温引張試験 クリープラプチャー試験などを行ない,継手の高 温性能を調べた。 2.摩擦圧接法に関する研究145)169)211)480)496)775) 本法は各種機械器具の部品製作における有力な 接合法として期待されている新技術で,圧接条件 の確定と共に継手の性質についての解明が,国の 内外において,要望されている。本研究は各種の 同種あるいは異種材料間の圧接機構および継手の 諸性質を究明することを通じて,圧接条件,施工 法の確立を計るものである。 炭素鋼の圧接において,良好な継手が得られる が,継手の引張強さおよび延性はアプセット量と 密接な関係があり,とくに,曲げ試験において満 足な強さおよび延性を得るためにはアプセット量 に下限のあることを認めた。 さらに,継手が良好な性質を有するためにはア プセット圧力の付加時期が回転停止の直前となる ように調整すれば,比較的小さなアプセット量に 材技研式1000 t引張拘束割れ装置 電子ビーム溶接装置 よって十分な強さの継手が得られることを知っ た。 炭素鋼などの圧接において,加熱時圧力をアプ セット圧力にまで増加して圧接する場合,短い圧 接時間によっても満足な継手が得られることを明 らかにした。 以上の知見を基として,圧接諸現象と圧接条件 の関連性およびこれらの継手性能,圧接部の構造 への効果について実験中である。 3.駆動アーク溶接法の開発469) 磁気的にアークを駆動し,これを熱源とする鋼 管などの突合せ溶接法を開発し,その実用化に成 功した。さらに,駆動アークの挙動に関して2, 3 の実験を行なった。 ブラズマジェットの材料加工への 応用に関する研究135)146)159)185)186)202)249)481) 489)494)771)~774)517)692)702)706) 工博蓮井淳,北原繁,福島孟 新しい工業的熱源としてのプラズマジェットの 特色についての検討を開始した。試作装置を用い てトーチのノズル出口におけるジェットの平均温 度,流速,密度など一連の諸量を求めた。測温は 原子スペクトル線の相対強度比および連続スペク トルのエネルギー分布を用いる方法,さらに,ジ ェットの推圧力,力の測定から熱―流体力学の諸 法測を用いて巨視的平均量として求める方法によ った。各方法による結果は殆んど同一で,作動ガ ス(Ar) 20~40l/min,電気入力3~15kWにお いて,ノズル出口の温度2000~5500°K,流速200 ~500m/sec,密度0. 3~1.Og/lが得られた。 次いで,溶射に用いる場合のジェットの特性を 米国プラズマダイン社製装置(SG-1トーチ)に よって求めた。測温法としては熱電対による直接 測定結果に補正を施し,さらにピトー管による圧 力測定からジェットに沿った種々の位置における 流速を求め,かつ,各観測位置での大気のジェッ ト中への混入状態をも調べた。結果の一例は,作 動ガス(Ar) 30l/min,電気入力16. 5kWにおい て,ノズル出口より50mmの位置では,温度約 2500°K,流速120~140m/sec,空気の混入量55~ 65%であった。 上記の研究と併行して,Mo, Al2O3, ZrO2,ニ ッケル基合金なで実用的溶射材のプラズマジェッ ト溶射皮膜の形成機構ならびに諸性質について検 討を行なった。主要な結果を次に述べる。 溶射Moの軟鋼母材への結合は機械的かみつき と融着によるが,母材と皮膜間の結合強さは溶射 層相互間におけるそれより大きい。皮膜の耐摩耗 性は工具鋼のそれより優れている。溶射後の焼結 理によって耐食性が向上する。 Al2O3皮膜の軟鋼母材への結合は機械的かみつ きによるが,曲げ試験によってもはく離しない。 Al2O3にTiO2を2. 5%添加すれば溶射効率,皮 膜の結合強さ,組織,耐摩粍性などが向上され る。さらに,直接粉末送給溶射方式を開発して, Al2O3材にこれを応用し,皮膜の結合強さ,耐摩 粍性などの改善に有効であることを確認した。 ZrO2皮膜の軟鋼母材への結合状態はAl2O3の それと同じであるが,Ni-Cr合金の溶射下地によ って結合強さは向上される。ZrO2の安定剤とし てCaO粉末を混入添加しても,皮膜の性質は改 善されない。 Ni基合金皮膜に焼結処理を施すと,皮膜―母 材間の元素拡散によって結合強さは著しく高めら れ,皮膜が緻密になる。Ni基合金にWC粉末を 混入したものの皮膜では耐摩粍性が顕著に改善さ れる。 以上の他,耐熱性,耐摩粍性,耐食性などの特 性を中心に皮膜の実用性について検討中である。 プラズマジェットおよびプラズマアークにおけ る母材への熱移行特性の中間態として,半移送ア ーク型プラズマジェットを開発した。これを超合 金の肉盛りに応用した結果,母材による稀釈率の 低い肉盛り金属が得られ,曲げ試験においてもは く離せず,高い硬さを有して充分実用し得ること を確認した。 プラズマアーク溶接についても実験を行ない, 軟鋼およびステンレス鋼薄板の溶接を可能にし た。しかし,期待される高速溶接はまだ実現され ないので,溶接用トーチの設計と相まって,この 技術の開発研究を継続しつつある。 執筆者所属 溶接研究部長 福本保 融接研究室長 稲垣道夫 岡田明,春日井孝昌,大野悟 圧接研究室長 橋本達哉 田沼欣司 ろう接研究室長 和田次康 雀部謙,田辺誠 特殊溶接研究室長 蓮井淳 福島貞夫,北原 繁,衣川純一, 福島孟 溶接研究部 主任研究官 岡根 功,中村治方,松田福久, 宇田雅廣 工業化研究部 工業化研究部は,新技術の開発として予想されまたは要望されている重要課題についての工業化 試験研究,あるいは他の部で実施された基礎研究の成果を実用化するための研究の実施を主要な業 務としている。 したがって当部は,他の部との共同研究の立案および実施についての部内調整や,当所発足いら い主として建設を担当してきた溶解,鍛造,圧延,熱処理部門の施設,設備の保守,管理ならびに その運営を業務としている総括室,鉄鋼材料および非鉄金属材料のそれぞれの分野の工業化に関す る研究および試験を担当する工業化第1研究室および工業化第2研究室の3つの室より構成されて いる。 ただし工業化第1研究室は,研究室の創設いらい「溶接構造用高張力鋼の研究」や「連続焼鈍炉 による光輝焼鈍法の研究」などを実施していた第1期と,新たに重要研究課題として「連続製鋼, 連続鋳造法の研究」を採り上げ現在遂行されている第2期の変遷を経てきている。 現在までの研究実績の経過について,その概要を述べると次のとおりである。 (1)将来の新しい生産技術の開発を目的とした重要課題を自主的に採り上げる。 予想される生産技術の革新は,鉄鉱石から鋼材をつくり出すまでの製造工程をおのおのワンライン, ワンパスで行い,原料から製品を連続的にまた自動化してつくり出すことであろう。すなわち溶鉱 炉から流出する溶銑を連続的に精錬して鋼とし,これを連続鋳造しようとするものである。 当部での連続製鋼実験装置は溶銑が樋を流れる過程に酸素吹精して鋼に精錬する方式であって現 在鋭意試験中である。また連続鋳造法の研究では,主として非鉄金属に利用されているヘイゼレッ ト式連続鋳造方式による鉄鋼への応用を計画している。この一連の新しい生産技術の開発は,近く 当所に建設が予定されているプラネタリ・ミルの熱間圧延機設備の設置により総合的に達成されよ うとしている。 (2) 相当の容量の研究設備を使用して実施する研究。 研究目的から最初から相当の容量の設備を使用して実施しないかぎり達成されない研究である。 例えば堅型連続焼鈍炉を使用して,H2―N2系雰囲気中での炭素鋼,ステンレス鋼,珪素鋼のコ イル材の光輝焼鈍条件やコイルブレイクなどについて研究し,かなりの成果を得た。 また,原料事情からキュポラ原料として半還元鉱の利用が注目され,製造冶金研究部と協力して 2屯MB Cキュポラによる操業試験を試み,半還元鉱の還元溶解,脱硫条件などについて二,三の 提案を試みた。 (3) 基礎研究の成果を実用化するための研究 非調質型70キロ級の溶接構造用高張力鋼の試作を目標として共同研究会が設置された。まず300 溶解以上の小鋼塊を溶製し,予備実験の結果から適切な鋼種を選定し,2屯エルー式炉で,さらに 会社の生産設備により試作して確認試験を試み,秀れた成果を得ている。 また非鉄金属材料研究部で開発されたTi―Al―Co合金については,当部でも協力して,生産規 模により溶製された大型試料について,製造上の問題点の解決法や,耐熱材料としての実用的な設 計資料を求めようとしており,また電気磁気材料研究部で開発されたNb―Zr系超電導マグネット 材料については,線引加工法を解決することにより0.25mmの長尺の細線を得ようとしている。 (4)総合研究への参加 当部としても積極的に参加し課題としては「鋼中の不純金属の含有許容量に関する研究」,「耐熱鋼 の性能向上に関する研究」などがある。 連続製鋼・鋳造技術に関する研究 工博中川竜一,上原功 1.連続製鋼技術に関する研究 鉄鉱石から鋼製品にいたるまでの全生産工程を 見ると,近年の連続鋳造技術の発達とともにすべ て連続化の傾向に進んでいる。しかしながら製鋼 工程だけはLD転炉のめざましい発展はあるがす べてバッチ生産である。連続製鋼法の研究は最近 急激に脚光をあびてきており,イギリス,フラン ス,ソ連などでも研究が進められている。 工業化第一研究室ではこの連続製鋼法の基礎実 験を行なっている。すなわち溶銑をマグネシヤで ライニングした傾斜せる樋の中へ連続的に流し, その途中で純酸素を上吹きし,樋の最終部に達す る間に溶鋼にまで製錬しようというものである。 現在写真21に見られるような連続製鋼実験装置 を工業化研究部で試作し,樋の傾斜,酸素ランス の高さ,酸素圧,量などの最適製鋼条件を求めて いる。この試作連続製鋼実験装置は長さ20m,ラ ンス間隔50cm,樋の断面形状は巾20cm,底部は 10cm半径の半円状をなしている。又樋の全長を 写真21「連続製鋼実験装置」 4個の区分にわけ,夫々の区分において酸素の圧, 量を調整され得るようになっている。今までの実 験ではSi, Mn, Cは相当量除去されるが,更に この装置の種々の改良を行ない,粉状造滓剤を吹 き込み脱硫,脱燐反応実験を行なう予定である。 このような連続製鋼法が実用化するには,まだ まだ解決すべき問題が多い。例えば連続測温,各 種成分の連続分析もしくは迅速分析,更にそれか ら得た情報による計算機制御などである。これら の問題については夫々関連分野の協力を得て解決 してゆきたい。 2.連続鋳造技術に関する研究 連続鋳造法は溶融温度の低いZn, Alなどの非 鉄金属にはかなり前から実用化されていたが,鉄 鋼に応用され実用化されたのはごく最近の事であ る。しかもこれら鉄鋼の連続鋳造法は現在数種の 方式が採用されているが,すべてスラブ,ビレッ トの鋳造で一定厚さ以下のものの鋳造は不可能で ある。さらに装置自体も縦型で非常に高く,湾曲 型にしても相当に高いものである。 Zn, Al,Cuの連続鋳造に実用化されているヘ イゼレット型連続鋳造機は横型であり,1/2インチ あるいはそれ以下の薄い板の連続鋳造が可能であ る。この点に着目してこの装置の銑鉄,鉄鋼の薄 い板の連続鋳造への応用を考えた。 まず基礎実験として,下面を強制水冷した1m m厚さの軟鋼板上に種々溶融温度の溶銑を流し, その際の軟鋼板の状態,耐熱塗布剤(例えばコロ イド状炭素の樹脂溶剤など)の効用を調査した。 次に内面を強制水冷した上下一対の回転スチー ルベルトの平行間��部に溶融金属を鋳込むヘイゼ レット型の連続鋳造実験装置を試作し,まず非鉄 金属で,上記の耐熱塗布剤の影響,およびタンデ ィッシュ形状,スチールベルト回転速度などの諸 条件につき実験を行ない,ほぼ銑鉄の板の連続鋳 造は可能であるとの結論を得た。これらの調査を 基礎にしてヘイゼレット連続鋳造機を発註した。 この装置の設置をまって銑鉄,鉄鋼の薄板の連続 鋳造試験を本格的に開始する予定である。 延性鋳鉄に関する研究 田中竜男,三井達郎,持田忠明 延性鋳鉄の製造で最も重要な問題は,キュポラ 溶銑が黒鉛球状化剤の添加により,完全な球状黒 鉛がどの程度に容易に確実に得られるかという溶 銑の信頼性である。すなわち溶銑に含まれる特殊 微量不純物元素が黒鉛の球状化に著しい影響を与 えるため,溶銑の不純物含有量の管理ということ は,キュポラ溶銑の脱硫処理や脱ガス処理以前の 前提条件ともいうべき主要な問題である。 また延性鋳鉄はもっぱら鋳物製品として使用さ れるため,延性鋳鉄の塑性加工性についてはほと んど研究されていない。したがって (1) 銑鉄に含まれるTiや特殊微量元素として 混在する怖れのあるSn, As, SbやPbなどの黒鉛 生成に及ぼす影響 (2) キュポラ溶銑中のこれら有害な特殊微量元 素を低周波振動法による除去,あるいはガス吹精 と溶滓による除去法 (3)延性鋳鉄の塑性加工性に及ぼす組織や熱処 理の影響 などについて現在研究中である。 細粒鋼の研究122) 神谷昻司,田中竜男 鋼のオーステナイト結晶粒度が,鋼の機械的性 質,熱処理性などに大きな影響を及ぼすことは周 知の事実であり,従って所望の結晶粒度を有する 鋼を溶製することは製鋼上非常に重要な課題であ る。特に船体構造用鋼板,肌焼鋼,高温高圧用管 材,そのほか熱処理を必要とする特殊鋼などは, 用途によって細粒または粗粒が規格として要求さ れ始めて来た現状である。 従来,オーステナイト結晶粒度調整法としては 一般に処理剤としてAlが使用され,数多くの研 究がなされている。またAlの他にはTi, Zr, V, Nbなどの単独元素の影響も報告されているが, これら研究はそれぞれ溶製条件,鍛圧条件,熱処 理条件などが異なっているため,これら元素の効 果の比較は必ずしも容易でない。 供試材として,その機械的性質,浸炭性,焼入 性,寸法誤差などに敏感に結晶粒度が影響する肌 焼鋼SCM21を選び,すべて同一条件のもとで溶 製,鍛圧し,処理剤としてAl,Ti, Zr, V, Nb の元素の単独添加,およびこれら元素の組合せ複 合添加を行ない,各元素の細粒化に及ぼす効果に ついて比較し,更に,鋼材中に含有されて来るこ れら元素が肌焼鋼の浸炭組織,機械的性質に及ぼ す影響についても比較検討し,各処理剤の特徴を 明らかにした。 実験の結果は次の通りである。 (1)添加元素の歩留はNb 95%, V 94%, Al 88%, Zr 80%, Ti 44%であった。ただ しTiはAlまたはNbに複合添加した場合は88% である。 (2) オーステナイト結晶粒度の細粒化に及ぼす 効果はAlはその含有量が0. 05%で最高に達し, それ以上の添加では,むしろ粗大化する傾向があ る。NbおよびTiはほぼ0. 08%で最も微細化する。 V, Zrの効果は弱く 0.14%以上の含有量でやや微 細化する程度である。結晶粒度の粗大化温度に及 ぼす影響については,図に示すようにAl単独ま たはAl―Nb添加のものが1,100℃以上で粗大化 するに反し,Tiが0.05%程度入ったものは粗大 化し難いことが明らかとなった。 (3)浸炭組織および引張り強さ,衝撃値などよ り総合的に判定するとNb添加のものは歩留よく 細粒化の能力が秀れ,粗大化温度を上昇させ,そ の鋼材の粘り強さをも向上させる。 (4) Tiは粗大化温度を上昇させる効果は最も 図42オーステナイト結晶粒度におよぼす複合添 加元素の影響 著しいが鋼材の粘り強さを低下させる。また浸炭 組織の境界に異常が認められたが,Tiの一部を Alで置換え,複合添加すれば靭性を回復し,正 常な浸炭組織が得られ粗大化温度も高い。 (5) V, Zrは特に有効な処理剤と認められない が,多量に添加すれば結晶粒の微細化と粗大化温 度上昇がやや認められる。 耐食性Fe―Al系合金の研究129) 尾沢正也 真空溶解法の発達に伴い,延性のFe―Al合金 の製造が容易になって,そのすぐれた耐熱,耐酸 化性,磁性などが再認識されたが,耐食性につい ても,たとえばThermenolが強酸化性溶液や有 機酸溶液に対して耐食性が良好であるなどの報告 があり,注目されつつあった。 また一方,近年ステンレス鋼やTi合金などの 腐食特性の研究にポテンショスタットが有力な手 段として用いられ,その分極特性から耐食性,と くに不動態の安定性を推論することが行なわれ, われわれもすでに低Mnステンレス鋼の研究に一 部これを採用した。本研究においてはFe―Al合 金の分極特性を明らかにすると共に,新しい耐食 合金の開発という立場から第3添加元素の分極特 性におよぼす影響を調べ,この分極特性から耐食 性を推定して選別を試みた。分極測定に使用した ポテンショスタットは最大電流100mAの交流増 巾型であるが,後にこれを交流増巾の安定回路を 併用した直流増巾型に改造して用いた。電解液は 5%硫酸を用い,液温は25°±0.5℃に保持した。 電極電位は高入力インピーダンスの真空管電位差 計で測定した。 試料はすべて高純度の原料を用い,バルツァー ス真空溶解炉でカーボン脱酸 して溶製し, 鍛造, 熱処理後電極および腐食試験片を削り出した。 分極曲線と耐食性との関係についてはGreenら の説に従い,アノード分極曲線とカソード分極曲 線との相対的な位置と不動態の安定性との関係か ら,一次不動態化電位と臨界アノード電流密度, すなわち活性の山を耐食性の目安とした。 Fe―Al合金の分極曲線は-0. 4Vsce付近に大 きな活性の山があり,また-0.15Vsce付近に小 さな山が認められるが,いずれもAl量の増加と 共に小さくなる。18―8ステンレス鋼の分極曲線 と較べると,ステンレス鋼特有の過不動態の山は 認められず,不動態領域がずっと貴な電位まで延 びている。しかし活性の山はステンレス鋼に比し てかなり大きく,不動態保持電流密度も大きい。 浸漬試験では耐食性はあまりよくないがAl量の 増加と共に腐食率が減少することがわかった。 以上の分極試験結果と加工性とを考慮して, 8,13,16%Al―Feを基本成分とし,これにCr, Mo, Ni, Ti, Zr, Cuなどの第3元素を添加し た試料について同様の分極試験を行なった。その 結果8~16%Al―Fe合金に2~10%Crを添加す ると-0.4Vsce付近の山は小さくなってやや卑な 電位に移行し,-0.15Vsce付近の山は殆んど認 められなくなり,更に2 %程度のMoを添加する ことにより活性の山を著しく小さくすることがで きた。この8~16%Al―5~10%Cr― 2~3 % Mo―Fe合金はステンレス鋼に比し不動態保持電 流密度がやや高く,更に改良の余地があるが,耐 食材料として有望であると推論された。 これら試料について硝酸,硫酸などの浸漬試験 を行なったが,分極試験の結果とほぼ対応した結 果が得られ,分極試験法が妥当であることがわか った。 連続焼鈍炉による光輝焼鈍法の研究133) 倉部兵次郎,田中竜男 連続焼鈍炉はバッチ式焼鈍炉に比較すると多く の利点を持っている。すなわちバッチ式焼鈍はコ イル内,外部でかなり熱処理サイクルが異なり,機 械的性質にバラッキを与えるが,連続焼鈍は高能 率であるほか焼鈍材の材質についても機械的性質 の均一性,板の平坦性,結晶粒の微細化等の点で優 れた焼鈍法である。薄鋼板の連続焼鈍炉は目的と する鋼板の種類により低炭素鋼板用とステンレス 鋼や珪素鋼を処理する合金鋼板用に大別される。 低炭素鋼の連続焼鈍炉による光輝焼鈍は割合容 易であるが酸化しやすいSi, Crを含む珪素鋼や ステンレス鋼の光輝焼鈍は小型実験炉では光輝焼 鈍の可能な雰囲気を容易に造られるが工業的規模 の連続炉では多く問題が存在し,かなり困難であ 図43連続焼鈍炉の外形図と測定位置 る。本研究は堅型連続焼鈍炉を用いて低炭素鋼, 珪素鋼およびステンレス鋼の光輝焼鈍の可能性と 焼鈍効果および操業上の問題点を調べた。 実験に使用した連続炉は電熱式堅型連続焼鈍炉 で概略の構造を図43に示す。また本炉の仕様は次 の通りである。 使用温度:常用700~1200℃ ラインスピード:0.4~4. 0m/min 電力容量:100KVA (カンタルA-1を使用す) 処理材:板厚0.1~1. 2mm,最大巾200mm 実験に使用した雰囲気ガスはNH3の分解また は不完全燃焼させたAXまたはS AXガスを用い 発生機の性能を次に示す。 雰囲気ガス SAXガス A Xガス H2 (%) 3~10 75 N2 (%) 残 25 露点(℃) -40 -45 発生量(m3/h) 30 14 実験に際し炉内を完全に乾燥し,不安定酸化物 を還元するため炉温1200℃で9日間SAXガス とAXガスを混合送入してシーズニングを行っ た。その結果水素量10%の炉気露点は約-3℃に なり,その後低下率が減少したため,0.6mm厚 以下の鋼板供試材の光輝焼鈍試験を行なった結果 次のことが明らかとなった。 (1)低炭素鋼の光輝焼鈍は割合容易であるが珪 素鋼,ステンレス鋼はSiO2,Cr2O3のH2による 還元平衡値からみてもかなり困難で加熱室には高 純度耐火材を使用し極力炉気露点を下げるよう配 慮しなければならない。 (2) 焼鈍後の低炭素鋼ストリップに発生した腰 折れ(コイルブレイク)はストリップの板厚と巻 取ロール径の調整により解決できる。 (3) 焼鈍効果に関しては通常の加熱温度で板厚 0. 6mm以下の低炭素では保鋼持時間1分,ステ ンレス鋼では6分程度で充分焼鈍軟化した。また 0. 6mm厚以下の18―8ステンレス鋼の加熱後の 冷却は特に強制冷却を施さなくても支障なかっ た。 Al―Zr合金に関する研究 荒木喬,小森進一 最近銅資源の入手難から送配電線にアルミニウ ムを大巾に利用しようとする傾向は強まってき た。このために我が国でも専門工場をつくり,量 産に備えてプロペルチ法を導入したり,アルミニ ウム線の接続方法を規格化するなどの体制が進め られている。Al―Zr合金は塑性加工によって得 られた強さを500℃に保持しても容易に再結晶軟 化することがないので過負荷送電にも対処できる 耐熱性の導電材料としては唯一のものと考えるこ とができる。このような固有の再結晶特性につい てはすでに17年も前から知られているが,軟化特 性の機構,生産技術については充分に解明されて いるとはいえない。本研究ではAl―Zr合金の再 結晶特性を支配する因子を究明して耐熱導電材料 の合理的な製造方法を確立すると共に,耐熱性の 基礎を明らかにすることによって広く耐熱アルミ ニウム合金開発の指針を得ようとするものであ る。 1.再結晶におよぼす鋳造温度の影響451) Al―Zr合金は包晶系の平衡状態図を示すが, 高い再結晶温度を示すためには液相線以上の温度 から鋳造しなければならない。鋳造温度が液相線 より低くなると,ジルコニウムの歩留は悪く,偏 析して再結晶温度を低くする。図44はジルコニウ ム量に対する鋳造温度と再結晶特性との関係を示 すものである。液相線よりもはるかに高い温度か ら鋳造した鋳塊に限って,500℃の析出熱処理が 軟化特性を改善したことは凝固速度と析出熱処理 によって再結晶特性が左右されることを裏書した 付号の説明 ジルコニウム% 鋳造温度℃ 配合値 分析値 ­ ―○― 0. 35 0. 35 770 ―△― 0. 35 0. 29 700 ―●― 0. 50 0. 35 700 図44再結晶―カタサ曲線 2.再結晶におよぼす質量効果の影響452) 液相線以上の温度から鋳造することが再結晶特 性に対する一つの命題であれば,液相線以下の温 度から鋳造することは液相から析出する一次晶が 再結晶特性を悪くすることになる。このことはた とえ液相線以上の温度から鋳造したとしても鋳塊 の質量が大きくなれば内部では徐冷のために一次 晶の析出を招き,急冷された外側の部分と中心の 徐冷された部分の間に再結晶挙動の差異を生じ, 所謂質量効果をもつことになる。この研究ではジ ルコニウム含有量が0. 23%以上になると質量効果 が認められる。またマクロ組織がすべて柱状晶で ある間はよいが,中心部に粒状晶が出てくると質 量効果を生ずる。質量効果を示す鋳塊の中心部を 顕微鏡で見ると析出物は粗大で数も多い。質量効 果を示す鋳塊を熱処理するとき外周部の再結晶温 度を上げることはできるが,中心部では熱処理の 効果が認められない。質量効果を示さないような ジルコニウム濃度の低い合金はそのままでは再結 晶温度が低いので,冷延後に300℃で適当な時間 析出熱処理することによって再結晶温度を高くす ることができる。 3.連続鋳造によるAl―0. 25%Zr合金の再結 晶におよぼす熱処理の影響453) Al―Zr合金の再結晶温度を上昇させるために 0. 3%以上のジルコニウムを添加する場合はジル コニウムの濃度に応じて鋳造温度を高温にし,鋳 造の際の冷却速度も急速にする必要がある。従っ て工業的に通常行なわれている溶解,鋳造作業に よって均一な性質を持つ大型の鋳塊を得るために はジルコニウムの濃度は0. 3%以下にする必要が ある。この報告では工業的に製造可能と考えられ るAl―0.23% Zr合金を連続鋳造により製造し, 鋳塊が均一な組成,組織を示すことを確認すると 共にこのような低濃度のAl―Zr合金の再結晶温 度を上昇させるために最終圧延の前に適当な熱処 理が有効であることを明らかにした。またこのよ うな熱処理が同時に電気伝導度を上げ,副結晶粒 を高温(500℃)まで安定に存在させていること がわかった。 4. Al―Zr合金の時効硬化 Al―Zr合金の時効現象を明らかにするために 焼なまし軟化の要素を含まない過飽和な急冷鋳塊 試料を作り,時効硬化性(時効温度300~500℃) をしらべた。つぎに冷間加工材について二段時効 処理を行ない,析出相の安定性を検討した。冷間 加工材は再結晶の開始による軟化と時効硬化が同 時に起るために一度軟化して再び硬化する特長が ある。時効による析出物を電顕の制限視野回析像 で見るとZrAl3とZr5Si3であった。 5. Al―Zr合金の析出におよぼすケイ素添加 の影響 ジルコニウムの添加量に応じた鋳造温度を選べ ばケイ素の添加によって圧延材の再結晶温度をそ れほど低下することはない。鋳塊圧延材ともに時 効硬化は350℃が最も著しいが,硬化量は添加す るケイ素の量が多くなる程著しい。ケイ素の最も 低いものでは時効硬化は少なくなるが,軟化特性 を改善する熱処理では350℃,1hrでも有効で ある。ケイ素が多くなると350℃, 24hrsの処理 が必要になる。従ってケイ素の添加はAl―Zr合 金の再結晶特性をほとんど害することなく,時効 によってかたさの高い材料をつくることが でき る。 執筆者所属 工業化研究部長 田中竜男 総括室 持田忠明 工業化第1研究室 中川竜一 三井達郎,上原功 工業化第2研究室 荒木喬 小森進一 材料試験部 材料試験部で行なう主な事業は, (1)国産材料の性能に関する基本的なデータを求 めるための試験。 (2)受託材料試験。 (3)材料試験に関連のある応用研究。 である。 そして対象となる材料試験の項目としてはさし あたりクリープ試験,疲れ試験,大型静的試験お よびこれらに関連する試験である。 これらの事業をするために5ケ年計画をたて, 昭和39年4月着手した。この5ケ年の整備計画は クリープ試験機1,108台,大型疲れ試験機17台お よび大型静的試験機3台を中心として各種の試験 装置ならびに工作,熱処理設備をそなえ,これら を総計約12, 000m2の面積をもつ3棟の建物に設 置するものである。 事業はまずクリープ試験関係から着手された。 すなわち建物のうち第一棟としてクリープ試験棟 を昭和39年から41年度にわたって完成する。これ は面積4,490m2であってその特徴はクリープ試験 に際して放出される多量の熱による試験室の温度 上昇を防ぎ,精度よく試験を行なうための大規模 な空気調和設備と建物の振動に対する配慮であ る。クリープ試験機は昭和41年度末までにはシン グル型387台とマルチプル型36台を設置し,昭和 43年度末までに1,108台を設置する予定である。 さて,ここで行なう業務であるが昭和41年度か らクリープデータシート作成に関する試験が開始 された。 近年わが国の科学技術は飛躍的に進歩発展した けれども重化学工業の一部にはいまだに外国の技 術にたよっているものがある。一例として火力発 電用ボイラ,タービンあるいはガスタービンをみ よう。現在の火力発電所は使用蒸気の圧力および 温度は168気圧566℃の亜臨界圧のものから246気 圧538℃の超臨界圧のプラントに進みつつあり, この傾向はさらに高温高圧化,特に高温化の方向 に進むといわれている。一方ガスタービンにおい ては,たとえば船舶用のものではタービン入口の ガス温度が750℃程度とされている。しかしこ の温度を高めれば熱効率はいちじるしく改善され るものである。同様のことが高温高圧の化学工業 プラントについてもいえる。このような高温高圧 下で動作する機械の設計にあたっては,そこに使 用する材料のクリープ特性を中心とする高温高圧 下の諸特性が十分に明らかでないと有効な設計は できない。したがって国産材料のクリープデータ シートは設計の基礎資料として欠くことのできな いものである。欧米諸国においては材料の使用条 件が苛酷になり,また新しい材料が開発されてゆ くのにともないそれぞれ自国の材料のクリープ特 性を試験し,クリープデータシートを次々と発表 している。しかるにわが国においてはその必要性 にもかかわらずいまだクリープ試験設備も少な く,したがって現在使用している材料についてす ら長時間クリープ試験のデータは極めて乏しく, プラント輸出に際してクリープ値を要求されるよ うな場合は極めて不利な立場に立たされることが ある。 以上のような観点にたってまず現在火力発電プ ラントに使用されている材料のクリープ試験から 着手した。すなわちボイラ用鋼管としては炭素鋼 鋼管(STB42),低合金鋼鋼管3種類(STBA 22, 23, 24),ステンレス鋼管3種類(火SUS27 HTB, 29HTB, 32HTB),ボイラ用鋼板として 炭素鋼(SB49B)および低モリブデン鋼板(S A302― B),タービンロータ材として1Cr―1 Mo―0. 25V鋼,タービンブレード材として12Cr ―Mo―W―V鋼をえらび,これらについて最高 10万時間を目標とした試験に着手した。 疲れ試験についてはわが国はさらに困難な事情 にある。一つはクリープと同様に設計にあたって 材料や熱処理条件の選択に役立つデータシートが ない。この他に疲れ試験の場合は試験試料の大き さや形状が材料の疲れ特性にいちじるしく影響す るので大型の試験機による大型試料あるいは実物 の試験が重要となって来る。そこで昭和41年から この2つの点について予備試験に着手した。 執筆者所属 材料試験部長河田和美 試験課長 横井信 第4章技術サービス、施設設備 総 説 昭和35年度完成を目途に進められた建設整備5ヶ年計画(昭和34年に7ヶ年計画に改変)によっ て,当所建設整備計画は昭和36年度,設立より5ヶ年を経て極く基本面の構成がすすみ,昭和38年 度にいたって7ヶ年計画の8, 9割程度の整備がなされたといえる。人員および施設設備整備推進 のかたわら,当所は総合的な研究体制の確立の一環として,研究活動をより能率的にするために, 施設設備の管理,研究業務に対応する技術的サービスを主体とする技術サービス部門の拡充強化を おしはかった。 設備の整備に当っては,当初より合理的な管理および適正な使用上の便宜等効果的運用を図るこ とから共用設備(基本設備)をとくに区別し,研究所全体の使用に供しうる共通の設備として,溶 解圧延設備外12区分で整備を行なった。整備進抄途上の設備の有効使用をはかるためのシステムが 当初より敷れていたが,試験研究設備整備の進行と多使用設備の性能低下に伴ない,試験研究設備 の円滑な利用および予防保全のために管理運用面で一層の配慮が要請された。すなわち,施設設備 の管理運営における重点は,施設設備が常にその個有の精度,性能および機能を保持し,円滑に研 究者の使用に供せられることにあり,一方,研究に必要とされる設備で特殊な装置は使用目的に相 当な性能および機能を保有するよう試作設計を行なうことが必要で,それらが研究の促進をはかり, 信頼性のある研究資料を得る上で重要な背景となっている。 そこで昭和35年,基本設備グループに総括管理責任者を設け,なお将来の施設設備の増設を考慮 した過度的運用管理体制をしくとともに,施設設備の予防保全および適正使用に対する具体案の検 討を進めた。 すでに,試験研究設備および機器の試作設計およびテストピースの工作等は,昭和32年,第4部 工作室を創設して必要な人員,設備の整備を進めてきた。また,昭和34年,化学分析室を創設し, 従来研究室で行なっていた化学分析の業務を移すとともに,人員と設備の強化をはかり,とくに機 器分析に関しては近代的設備の整備につとめた。昭和36年には管理部門に技術課の設置をみ,その 業務の一部に従来の工作室の業務を吸収するとともに,電子工作,木工,ガラス工作等が活動する にいたった。昭和37年度には物理分析室,クリープ試験室,工業化研究部総括室が設立せられ,従 来,研究室が一部担当していたルーテンワークを分離して技術サービス業務として軌道にのせるに いたった。 昭和37年5月,設備管理委員会準備会の発足とともに,溶解圧延,物理測定,材料試験,化学分 析,機械工作,腐食の6小委員会が設けられ,それぞれにおいて共通設備の管理運営の合理化につ いて検討が進められた。同年6月,設備管理委員会規則が定められ,従来必ずしも十分統一的サー クルに入ってなかった試験研究設備の運用管理方策が具体的に体系化されたといえよう。すなわち, 同規則で,試験研究設備の能率的な管理および運営ならびにこれに必要な事項についての審議立案 を行なうとともに必要に応じ小委員会を設けて検討を進める制度を定めた。 共用設備の管理は,所定の課,室(技術課,物理分析室,化学分析室,疲労試験室,工業化総括 室)が行ない,共用設備の管理に当る課,室には専門的知識と技術をもつ技術者が配置され,その 使用は企画課の調整によって一層の円滑をすすめた。一方,研究テーマに応じた特殊性を有する設 備,各研究室において使用頻度の高い設備は研究設備として各研究室において管理しているが,他 の研究室が当該研究設備を使用することができる。 また,すべての試験研究設備に対して設備カードを作成し,当該設備の履歴,性能等を記録し, 設備の予防保全業務に備えるとともにその所在,管理状況等の適切な総合的運用管理に供している。 とくに昭和41年11月,従来の試作設計業務をはかるため,各部から選任された委員をもって構成さ れた「研究設備試作企画委員会」を設けて,研究設備および機器の試作に所内の協力体制の確立を とり,技術課における試作設計業務の推進をはかることとなった。 当所に整備された設備は,当初からの運営基本方針に沿った大規模かつ近代的な研究設備で,勿 論,その概念は各共通設備全般に貫かれている。ここ5ケ年のその概要は本章に掲げた設備一覧と 「第1章,第4項予算」の項に解説されているが,まず,溶解圧延および熱処理設備は,比較的少 容量実験設備の10kgプラントの整備に対応して,工業化試験研究をすすめてゆく工業化プラント の整備を行なった。このプラントは鋼塊にして100kgから2 ton程度までの処理能力を有し,工業 化の段階にいたった研究は,これにより試験研究することを目的とした。材料試験設備においては, 大型試験片の万能試験,疲れ試験,そのほか特殊な試験を実施できる設備および各種の機械試験検 査を行なう試験装置が試作設置された。また,255台のクリープ試験機の整備を行ない,そのうち 20台のマルチプルクリープ試験機があるので,試験片数では495本の試験が常時行なわれている。化 学および物理分析関係では,最新鋭の装置を備え,新しい研究手法の手段をうるとともに,信頼の できる精密な測定値を提供することにつとめてきた。溶接については,研究および技術の進歩が, 近時とくにいちじるしいため,一般の溶接装置および電子ビーム,プラズマ・ジェット等の特殊溶 接装置のほかに,その進歩から当所で開発を行なった小規模の試験機とその実物大試験片の試験を 目的とした同装置を製作設置した。粉末冶金設備においては粉末の製造から成品の製造までを可能 とする一貫した設備が整備された。鉱石資源,経済的製錬技術,新規な製錬法等に特に配慮して設 置された製錬設備においては,新しい設計による設備が主に整備された。鋳造設備においては,製 錬設備に一貫した特殊な溶鉄炉と溶解炉を中心に,新しい鋳造技術開発に沿った設備に配慮されて きた。この他,機械工作設備等は,当所における試験に必要な機械工作ならびに装置の試作設計に 必要な各種工作機械の整備をすすめた。 原子力関係設備として腐食,ラジオアイソトープ,ベリリウムおよび溶接の一部の設備整備がす すめられ,腐食関係では静的な腐食試験より発して原子炉用材料の腐食実験を炉の実況に即して試 験する目的で大型の腐食試験装置を整備したほか,応力,高速流水,屋外曝露等各種の腐食試験お よび防食表面処理設備の整備が行なわれた。ラジオアイソトープおよびベリリウム関係の設備は, その性質上それぞれの実験場が建設されて独立して溶解,加工等を含め一連の実験が行なえうるよ う整備されている。また放射化分析の研究を進めるため,地下に中性子発生実験場が建設された。 執筆者所属 企画課長吉村 浩 主な設備一覧 溶解圧延・熱処理設備 雰囲気圧延機(昭和38年度) 高温酸化を防ぎアルゴン雰囲気中で熱間加工を行なう ため,標準的な2段,4段切換え圧延機および加熱炉を アルゴンボックスに収納したもの。素材最大幅100mm, 素材最大厚さ軟質材において20mm,最終厚さ軟質材に おいて3/100mm。 高速変形実験装置(昭和36年度) 圧縮窒素ガスの膨張を利用してピストンを高速運動さ せる装置。圧縮ガスの圧力を調節することにより任意の ピストン速度を得ることができる。最高圧力100kg/cm2, 最高ピストン速度約50m/sec,このピストンにより細長 い弾性棒を高速で打ち出して,棒の衝突を利用した衝撃 押出の実験や高速変形の実験を行なうことができる。 19kW電子ビーム溶解炉(昭和36年度) 高電圧により加速した電子流を加熱材料(ベリリウム 等の特殊金属)に衝突させて,その運動エネルギーを熱に 変えて溶解を行なう。電子衝撃溶解とアーク溶解の両方 を行なうことができる。加速電圧19kV,ビーム電流1 A,拡散ポンプ1,200l/sec,回転ポンプ22cbm/h,アー ク 電圧 20V。 内熱式高周波加熱浮遊帯域精製装置(昭和38年度) 半導体材料精製用の外熱式浮遊帯域精製装置に種々の 改良をなし,各種金属材料の精製用として製作された。 高融点金属(Nb, Moなど)の帯溶融が可能。溶融帯の 幅が狭くより直径の太い試料が比較的均一な直径で帯溶 融できる。高真空中および各種ガス雰囲気中で使用でき る。溶融体の機械的振動がなく,より安定である。 マニュプレーター(昭和36年度) 人力によって操作出来ない大型鋼塊の分塊,鍛造の保 持,移動に用いる。ディーゼルエンジンで動かされる車 体と,それに取りつけられたマニュプレーター部分より なり,エンジンの回転を利用した油圧によりマニュプレ ーターのクランプ,回転,上下動,サイドシフト,ティ ルティングを行わせる。 最大荷重1,300kg,揚高500~1,700mm,クランプ 幅470~120mmφ 大型鍛造用重油加熱炉(昭和36年度) 輻射高温計にて実際の機械の温度をにらみ自動制御す る。500kg角型鋼塊2本または2 ton,角型鋼塊1本を加 熱できる。最高1300℃,加熱室(幅1200×奥行2300×高 さ800mm),1200℃,昇温時間4時間30分 多段長時間熱処理炉(昭和40年度) 加熱部は6 kgの試料荷重に耐え,かなり長時間に沿 って熱処理が可能。均熱部(幅100×高さ100×長さ300 mm)を50℃~100℃間それぞれの温度に設定された 10基の炉から成る 温度精度±0.3%以上 20kg高周波溶解炉(昭和36年度) 交番磁界内に電磁誘導によって生じた渦流による抵抗 損により加熱溶解する。溶湯の自動撹拌により組成の極 めて均一な合金溶湯が得られる。電動発電機 出力30 kW10,000c/s,電圧400V 75A (最大)溶解時間 電解鉄20kg1時間 精密6段冷間圧延機(昭和36年度) 厚さ0.4mm以下の板材を1/100 mm程度まで圧延す る。ダンスローラー方式により圧延材料に張力をかけ, ローラーの位置の指令により,平均20%の巻取速度変化 が1秒以下で自動的に追従するので,材料破断の心配な く安全である。ワークロール 径28.5×幅130mm,圧 延圧力(最大)18t,巻取ドラム径210×幅310mm 高速衝撃押出機(ダイナパック)(昭和36年度) 圧縮された窒素ガスの膨張圧力で加速されたラムウェ イトをボルスター上の素材に衝突させ,この時の放出さ れる運動エネルギーを利用して成形を行なう。瞬間的に 大きなエネルギーを放出させうる。エネルギーを正確に 制御できる。超硬金属の加工も比較的容易にできる。衝 撃速度(最大)20m/sec放出エネルギー最大20t/m 作動周期20sec 雰囲気高温熱処理炉(昭和37年度) タングステン等の高融点金属を高真空またはAr雰囲 気中で最高2500℃までの熱処理を行なう。タンタルヒ ーターを用いラディエーション型高温計により温度を測 定する。 フルマッフル型雰囲気炉(昭和37年度) Hyenガス発生機1,100℃中で,プロパン1:空気10の 割合のガスを反応変成させ,この雰囲気に,炉前でプロ パン,アンモニアを添加調整し,渗炭炉において任意の 渗炭,渗炭窒化作業を行なう。 軽合金連続鋳造装置(昭和37年度) 炉の傾動,鋳型の上昇,下降に従来の水圧に変えて油 圧駆動装置を利用。溶湯自動調節装置として浮子,平衡 動作装置,誤差検出回路,補償回路,サーボモーター, フィードバック装置を組合せてある。#330ルツボ重油溶 解炉,#330ルツボ電気保熱炉,鋳造機より成る。 浮遊溶解炉(昭和38年度) 特殊な形状のコイルに交番磁界をつくり,金属塊に浮 揚力を与え金属の汚染を防ぎつつ加熱溶解を行なう。る つぼを使用しないで高融点または活性金属の溶解精製を 行なう。最大出力30kW,温度制御および自動温度制御 ができる。真空または任意のガス中で溶解できる。溶解 量20g (鉄) ヘリウム焼入炉(昭和38年度) 加熱時10-5mmHg,最高加熱温度2400℃の高温高真 空加熱炉であって,試料は直接通電型タンタルヒーター によって傍熱される。分離された冷却室においてヘリウ ムやアルゴンなどの不活性ガスによって急冷が可能で, その冷却曲線はW―WRe熱電対の熱起力変化から容易 に求めうる構造となっている。 調速式熱履歴再現装置(昭和38年度) 本装置は高周波式熱サイクル再現装置を主体として鋼 片の熱サイクル再現加熱冷却および可動コイル式雰囲気 溶解炉を使用して鉄鋼0.3~2 kgを溶解し,0.63~58 mm/minのコイル移行速度に伴って種々の凝固速度で 一方向より鋼塊を凝固させ得る装置である。 雰囲気タンマン炉(昭和39年度) 真空中および各種雰囲気中にて連続的に6個の試料を 溶解し,所要の冷却速度で冷却し得る。高温溶解時に精 密な温度制御,添加物の添加,撹拌,冷却速の調節が可 能。溶解量鉄鋼1kg,最高温度1800℃,真空度溶 解時10-3mmHg プラズマアーク溶解装置(昭和40年度) 水冷銅鋳型非消耗電極を用いてプラズマアークにより 高融点金属のボタンメルトおよびハースメルトを行う。 非消耗電極の周囲には不活性ガス気流によってアークを しぼり,アークを安定且つ高温化する機構を備える。ハ ースメルト用鋳型15mm角×170mmL,ボタンメルト用 鋳型40mmφ×15mm深さ。 超電導線連続製造装置(昭和40年度) 加工困難な超電導マグネット線を製造する装置。真空 (到達真空度2 ×10-5mmHg)または不活性ガス雰囲気 中でベース金属線(NbやV)表面に添加金属(SnやGa) を蒸着および熔融メッキしたのちベース金属内に拡散さ せ,上記金属間化合物を連続的に製造する。 物理測定設備 X線マイクロアナライザー(昭和35年度) 小さく絞った電子線を金属表面の微小部分に投射し, そこから発生する特性X線を検出器に受け,その部分の 化学組成を定性,定量的に決定する。最小1μの大きさ の介在物等の分析が可能。原子番号11(Na)~92 (V) までの元素が分析可能,光学的観察は反射対物レンズ使 用(約400倍) 500kV電子顕微鏡(SMH-5A)(昭和39年度) 金属試料の電顕観察法の利用分野を拡げ,特に諸現象 の動的観察を行うことを主眼とする。加速電圧は100~ 500kVの5段階に可変,倍率は標準の8mmφレンズ使用 の場合には最高80,000倍。分解能は約10Åで,20mmφレ ンズでも6.9Åの格子像の撮影が可能。暗視野像も30Å以 下の解像度を有する。 高温恒温変態曲線作成装置(昭和38年度) 試験片を適当なオーステナイト化温度に加熱後,恒温 塩浴槽に移して恒温変態させ,変態による膨張,あるい は収縮を時間と共に記録し,この温度における変態の開 始および終了の時間を求める。各温度について求めた結 果より恒温変態曲線を作成する。オーステナイト化加熱 最高温度1000℃,試験片寸法3φ× 30mm 磁化反転速度測定装置(昭和39年度) 高速度パルス磁場を試料に駆動して磁化を反転させ , その反転挙動をサンプリングまたはブラウン管オッシロ スコープにて観測し,反転時間を測定する。高速度の磁 化の繰返し現象の測定,写真撮影が可能。パルス発生器 とオッシロスコープから成る。 ピストンシリンダー装置(昭和40年度) 油圧ポンプにより得られる圧力を増圧機で最高1,500 kg/cm2常用1,300kg/cm2まで増圧し高圧塞止弁を介し て2個のピストンを作動する,荷重速度が極めて遅く,固 体圧縮の場合も圧力の精密な調整,長時間保持が可能。 両押型超高圧プレスで上部ピストン360t,下部ピストン 640t。 ストロー ク 200mm 高真空高温デイラトメーター(昭和39年度) 高温におけるチタン,ニオブおよびタングステンなど の活性金属の温度変化に対する伸縮変化を精密に測定す る。変位測定法としてデイラトメーターに始めてモアレ 縞を応用,自動化した。測定精度⊿l/l/ 100℃ =10-7最 高使用温度1450℃,真空度(室温)10-6mmHg,温度 上昇,降下,速度可変500C/hr以下19段階 自動記録作動熱量測定装置(昭和36年度) 標準試料に一定のパワーを加え被検試料とまわりの断 熱容器に温度差を生じないように各々のパワーを自動的 に調整し,被検試料に加えられたパワーと標準試料に加 えられた一定パワーとの差を自動的に記録させる。温度 精度1/40℃,エネルギー測定精度5mcal/sec,雰囲気 真空10-4mmHg 交流自記磁束計(昭和37年度) 本装置は磁性材料の交流磁化特性を自動的に測定記録 するものであって,短時間に測定しうる点を利用し,各 種試料を高精度,高能率で検討するものであり,E.Kittel の測定原理を基本とし更に取扱を容易にするための改良 案を入れ実用化したものである。 万能引張圧縮試験機(トム)(昭和37年度) 材料の引張り,圧縮,曲げ等の精密試験を行なう。直 流サーボ電動機でクロスヘッドを駆動する。荷重はペー パー ストレイ ンゲージを使ったロードセルで検出する, 引張り速度が荷重負荷に影響せず一定。引張速度0.005 ~500mm/min 21段切換荷重最大5 ton 自動記録式X線回折装置(昭和38年度) 本装置は金属の組織,結晶構造等のX線分析に使用す る。X線発生装置60kV, 50mA (連続定格では50kV, 50mA)両波整流方式。管電圧,管電流の設定回路はプ リセット方式である。測定範囲は0°~164.5°測定可能。 ゴニオメーター回転速度は1/32°/min~4°/minまで選 択可能。 超高真空蒸着装置(昭和38年度) 清浄な超高真空中で蒸着材料を電子ビームで加熱し , 真空度,蒸着速度,下地温度等の条件を考慮して金属薄 膜を真空蒸着法により作成する。到達真空度裸B―A ゲージで5 ×10-5 Torr,電子銃(ラレホーカス方式)最 大50kV 20mA,照射面ビーム直径約3 mmφ 差動熱量計(昭和38年度) 試料の熱容量を測定する装置で,室温から800℃附近 まで連続的に加熱昇温させながら測定する。本装置は, 金属および合金の貯蔵エネルギー,変態現象などを検出 するのに有効である。 融点測定用高温計(昭和38年度) 試料を真空炉で融解に至るまで加熱する。この際,高 温試料よりのスペクトルを測定し,試料金属の融解に伴 う不連続変化より融点を求める。 高真空高温変形測定装置(昭和38年度) 高温で顕微鏡観察しながら試験片に荷重を加え,変形 にともなう顕微鏡組織の変化,辷り線,破断の様相など を観察する。最大荷重100kg,対物レンズ×40,真空度 10-5mmHgまたは各種雰囲気中。 強磁性共鳴分光計(昭和38年度) 極めて高感度であり高精度を有す。基本的磁気量とし てg―因子,飽和磁化,異方性常数,磁気緩和時間,交 換結合係数,膜面内残留応力等が同時に観測できる。本 装置は磁性薄膜の研究のため大型電磁石と組合せて設置 された。波長帯として3cm波,8mm波,測定温度は 極低温~500℃まで。 単結晶製造装置(昭和39年度) 高純度鉄単結晶の作成に使用。歪焼鈍により鉄単結晶 を作成する温度傾斜炉と,超高真空中または超高純度水 素気中で鉄単結晶およびその素材を焼鈍ないしは帯溶融 して純度を高める金属純化装置とから成る。 大型電磁石(昭和39年度) 超電導マグネット材料,磁性材料,極超短波における 磁気共鳴,磁気抵抗効果,ホール効果等の研究に使用。 比較的安定均一な強磁場を得,発生するジュール熱を除 く冷却装置を設けている。最大磁場強度32.2KOe,磁場 可変範囲MG制御―100~100% パルス磁場発生装置(昭和39年度) コンデンサーバンク(3.3kV, 5200μF)に蓄えられた 電気エネルギー(28.3KJ)を瞬間的に放電することに より,コイル内の測定空間(24mmφ×55mm)に強磁場 (200KG以上)を発生せしめ超電導臨界磁場の測定な どに使用する装置である。 インストロン万能試験機(昭和40年度) 低温での大型引張り試験片の精密引張り試験,引張強 度の寸法効果の測定,圧縮試験片の標準試験機として使 用する。荷重または伸びの信頼性が高い。 最高荷重10ton,クロスベット速度0.05~50mm/min,荷 重制御およびX―Y記録可能。 高温水素添加変形精密測定装置(昭和40年度) 抵抗加熱式水素炉中に試片を保持し,精密容量型変形 検出装置により,無接触にて炉外より変形量を測定しう る。5~10mm径の丸棒試験片の高温水素添加時の長さ の微小変化を測定するもので,最高加熱温度1000℃, 測定精度1μ ヘリウム液化装置(昭和37年度) 2台の膨張エンジンと1つのジュル・トムソンバルブと を用いてヘリウムを液化し,使用して汚染したガスは再 び精製純化して循還できる。予冷には液体窒素を用いる。 液化能力予冷なし:4l/h,予冷あり:8l/h,圧縮 機520rpm 15kg/cm2 2 台 材料試験設備 内部摩擦測定装置(昭和37年度) 試料を張った細線上に置き,細い針金を通じ試料の個 有振動数で励振増幅を断ち,試料のA~A/C間の自然減 衰の振動数を計測して内部摩擦を測定する。内部摩擦の 他,弾性率,捩��れ弾性率,ポアソン定数も精度よく測定 できる。周波数600~2500C/B,振幅10μ 精密小型万能疲労試験機(昭和38年度) 材料の疲れきれつ挙動を研究する。本装置には,試験 片に加えられる荷重サイクルの一定位相において発光す るストロボにより試験片表面を自動的に撮影できるよう 顕微鏡装置を備えている。薄板試料の引張圧縮,細線の 片振り引張りなどを行なうことができる。最大荷重+ま たは-100kg,繰返速度30~100c.p.m.,顕微鏡倍率20~ 400倍。 光弾性実験装置(昭和37年度) 等質等方性物質に応力を生じさせると一時的に異方性 を示し複屈折を生じる。この効果(光弾性)を利用して 物体の内部に生ずる応力を解析する。三次元光弾性装置, 被膜法装置を有する。 フィールドレンズ D =150mm, 300mm, f=500mm, 800mm。最大荷重150kg 電磁誘導検査実験装置(昭和39年度) 本装置は電磁誘導検査法における技術的,基本的問題 を解決するための検出コイルインピーダンス特性,欠陥 指示信号などの特性を正確に把握・解析することを目的 とする。マックスウェルブリッジ,信号処理回路部,シ ンクロスコープの各部分より成る。 シエンク万能疲労試験機(昭和36年度) 機械的共振を利用した高速の運転と油圧による低速高 荷重の運転ができる。歪振幅,歪エネルギーが特に大き いため大型試験片の曲げ捩��り試験に適し,全自動式のプ ログラム制御ができる。最大容量±10ton高温装置付き。 マルチプルクリープ試験機(昭和37年度) 一定の温度に保持した加熱炉内に3本の試験片を取付 けた4本の引張軸を放射状に捜入し二重テコにより引張 荷重を負荷して同時に12本の試験片についてクリープ破 断試験を行なう。リアクトル温度調節方式。 クリープ試験機0.75t (昭和37年度),1.5t (昭和38 年度),3t (昭和38年度) 一定の温度に保持した加熱炉内のプルロッドに取付け た試験片にテコにより引張り荷重を負荷して引張クリー プ試験を行なう。 燃焼ガス雰囲気クリープ試験機(昭和37年度) ガスバーナで重油を燃焼させた雰囲気中における耐熱 材料のクリープ強さを求める。従来のクリープ試験機に ガス発生装置および燃料装置を取付け,燃焼ガス雰囲気 中でクリープ試験を行なう。最高許容温度850℃,最大 荷重3t,荷重精度±0.5% てこ比1:10 熱疲れ試験機(昭和37年度) 試験片の上下両端を固定し,それに直接電流を通じて 加熱,空気吹付により冷却を繰返し,試験片の熱膨張, 収縮の拘束により生ずる熱応力の繰返しにより,温度変 化に伴う熱疲労試験を行なう。 万能測長器(昭和38年度) 本装置は試験片,測定データ,装置部品等の高精度の 寸法測定を行なうためのもので外側,内測および観察測 定による長さおよび角度の測定ができる。測定精度は1 μmである。 スペリー超音波探傷器(昭和38年度) 0.5~10Mcの超音波パルスに使用し,その反射によっ て試験材内の傷を検出する装置である。垂直探傷のほ か,斜角探傷,表面波探傷に用いることができる。垂直 探傷の場合,表面から10mm位までは探傷困難である。 高速引張試験機(昭和38年度) 高速変形にともなう転位の挙動を追求し,強度と靭性 の関係を究明し,強力材料の開発の基礎的情報を伝える ことを目的とする。最高速度2 cm/sec,最高荷重2 ton, 油圧式。 高温転動疲労試験機(昭和39年度) 高温,高速,高荷重の状態での鋼球のころがり疲れを 調べる。高温用ころがり特性と鋼の組成,組織,高温硬 さ等との関係が求められ,また高温軸受の定格荷重,潤 滑および寸法安定性に関する基礎資料を得ることができ る。 昇温衝撃捩��り試験機(昭和39年度) 靭性が低く,シァルピー試験では靭性の評価が困難な 材料の衝撃破壊靭性の判定に用いるもので,ねじりによ り破壊に先行してある程度の塑性変形を与え得る点に特 徴がある。ねじり応力30kgmまで,回転速度200~1500 r.p.m.,試料加熱,直接通電方式 X線応力測定装置(昭和39年度) ソーラースリットを通して平行ビームとして特性X線 を材料に照射し,回折X線を再びソーラーソリットを通 してガイガ計数管により検出し,自動記録する。材料中 に作用している応力は,回折強度の位置のズレから計算 で求められる。 10t万能試験機(リレー型)(昭和38年度) リーレ型万能試験機に加熱装置を組合せたもので,温 度制御はプロッサー方式を用いた時間比例制御。負荷機 構は油圧式,計測機構は振子動力計を用いる。振子動力 計と油圧計測ラムとの間に挺子機構を用い秤��量切換はそ の支点位置の切換で行なう。 化学分析設備 質量分析計(A E I )(昭和38年度) 全ガスの定量が可能で,かつ微量でも精度よく分析で き,ガス成分の経時変化の測定や同位元素の分析が可 能。分解能M/e2~700,到達真空度10-7mmHg,イオ ン加速電圧500~2000V,電磁石電流20~350mA (400~ 6000ガウス)試料所要量ガス0.1~1cc,固体1~100 μg,電子加速電圧15~85V 螢光X線分析装置(昭和38年度) 原子番号11以上の元素の定性定量分析を行なう。高濃 度組成合金の高精度迅速分析に適する。1試料中の15元 素まで同時に分析できる。X線発生部最高電圧100kV, 最高電流40mA,出力2kW,分光器3種の平板分光結 晶と2種のコリメータを取付け,任意選択ができる。 中性子発生装置(昭和39年度) 金属材料のための放射化分析に用いる。倍電圧整流方 式を高圧直流電源に用い,重水素イオンを高圧電場で加 速して,三重水素ターゲットを照射し,高エネルギー中 性子を発生させる分析装置。真空熔融法,不活性気流中 熔融法の結果の検討ができ,さらに活性金属,高融点金 属中の酸素も定量が可能である。 赤外線分光光電光度計(昭和36年度) 光源より出た光をプリズムとグレーティングで分散し 熱電対で受光する。高分解能を有し再現性が良く迷光が なく透過スケールは正確な値を示す。前置プリズムとグ レーティングが完全に連動しているため全波長領域を連 続走査速度は自動的に調節される。 キャリー自記分光光電光度計(昭和36年度) 外素放電管,タングステンランプより出た光をプリズ ムおよびグレーティングで分散させた単色光を交互に補 償セル,試料セルに送り光電子増倍管で受光する。高分 解能と光度測定精度を有する。測定波長域が広範囲でマ ルチポット使用により,より細かに零線の調整が電気的 にできる。 高感度ポーラログラフ(昭和36年度) 復極剤を含んだ支持電解質溶液を滴下水銀電極と非分 極性電極を組合せて電解し,その電解電流電圧曲線から 復極剤の濃度を定量する。矩形波周波数200c/s,矩形波 電圧0~30mV (8段切換),ゲート増幅器感度1/1~1/ 2000 (11段切換)ゲート切換l/4000sec毎滴下同期 アトミックアブソープションスペクトロフォトメータ ー(原子吸収測定装置)(昭和37年度) 励起状態の原子の自己吸収を測定して分析する。ハロ ーカソードよりの分光元素のスペクトルをアセチレン空 気焔中に噴霧した試料中に通し,自己吸収の度合から存 在量を測定する。オッシログラフ用写真紙に記録もでき る。 発光分光分析器(カントバック)(昭和37年度) 回折格子によって分散されたスペクトルを光電子増存 管により検出する。真空分光器を使用するためc.p.σ.の ような極端紫外部のスペクトルも測定可能。また,アル ゴン気流中の発光方法を採用しており,試料の酸化,変 形がなく発光効率がよい。 自動記録式コンパレータミクロホトメータ(昭和40年 度) コンパレーターとしては標準および厚板は前面のスク リーンに20倍に拡大して観察出来,送りネジの回転によ り1/1000mmまで読みとれその精度は1/100mm以内。 ミクロホトメーターとしては細いfield slit (35μ)でS. V効果を除去しており,測定中のDarknessとBright- nessの安定性がよく,透過率読みの切り換えにより黒 度0~3まで測定ができる。 アークスティクススペクトロフォトメータ(昭和40年 度) 金属の弾性常数,内部摩擦の測定を行なう。試料の一 端から20~40,000サイクルの振動を与え,これを他端か ら取り出して記録する。0~1000℃の範囲内での測定 が可能である。 その他 製錬・鋳造設備 高周波溶解炉(昭和36年度) 35kVA,真空管発振式,周波数1000kc, 2~4Mc, 溶解能力鉄15kg 塩化焙焼流動炉(昭和37年度) 塩素ガスを10%まで混合した空気または酸素ガスによ って鉱石を連続的に焙焼し,含有不純物を塩化物として 揮発除去するものである。焙焼鉱石量1.5~2 kg/h,焙 焼温度800~1000℃ 流動炉内筒径120mmφ,高800mm × 2,通風量200l/ min,塩素流量20l/min 蒸気圧測定装置(昭37和年度) 金属および金属化合物の蒸気圧をクヌーゼン法によっ て測定する。10-2mmHg程度の低い蒸気圧を測定でき る。秤��量0~3g,採取試料0.5g,感量0.001mg (0~ 1mgにおいて),加熱炉最高温度900℃,真空度10-5mm Hg程度 特殊高温還元装置(昭和38年度) 炭素抵抗式電気炉(出力30kVA)で最高温度2400℃, 常用1600℃に加熱できる。雰囲気は真空,Ar, Co, N2 などでこれを用いて,酸化物の炭素還元の基礎研究を行 なっている。 高周波加熱雰囲気可変還元装置(昭和38年度) 高周波加熱により各種雰囲気中で還元反応などを行な うための装置である。 高周波出力:最大6kW,最高到達温度:2300℃,真 空度:10-5mmHg 焼結試験機(昭和39年度) 粉鉱石,コークス粉,石灰石等を混合し装入物表面よ りプロパンガスに着火し,下方吸引にて焼結を行ない焼 結焼を製造する。30kg/回装入量。焼結鍋寸法 上径300 mmφ,下径280mmφ,高さ300mm,排風機 ターボブロ ワー風量 直立型微粉鉱還元装置(昭和40年度) 微粉鉱を完全に分散させ,H2, COガスによって輸送 層中において迅速に還元させ,還元物を適宜採取するこ とができる。微粉鉱の大きな反応面積を利用して迅速に 反応させる。反応時間を変化できる。10μ前後の酸化鉄, 酸化ニッケル,酸化銅などを10sec前後で金属状態まで 還元することができる。 高温高圧透過スペクトル測定装置(昭和40年度) 測光は光源の光を試料室を通した後で行なうので試料 室の温度の影響を避けうる。測光波長範囲:200~2500 mμ(常温),200~800mμ(850℃)分光器はリトロ型。 温度制御± 5 ℃,電子管式自動制御 ビューラー ・ダイカスト・マシン(H-100型)(昭和 38年度) 射出速度が6m/sec以上の高速であるため特殊の研究 にも適する。射出工程は3段階に切換られ最後の加圧を 十分行なえる。型締め機構に油圧方式とトグル方式を併 しており,型締めが行なえる。射出口位置を上,中,下 に変えることができ,鋳造方案の研究等に適する。 500kgタグアフェリ低周波誘導電気炉真空装置(昭和 39年度) メカニカルブースターポンブおよびロータリーポンプ いずれも機械的作用により排気を行なう。10-1~10-2 Torrまで急速に排気する。メカニカルブースターポン プ(5,480m3/h) + メカニカルブースターポンプ(1,032 m3/h) + ロータリーポンプ(6000l/min 2台)の排気系 を有す。 連続鋳造装置(昭和39年度) 上下一組になった回転スチールベルト間に溶融金属を 鋳込み水冷して連続的に鋳造する。溶融金属30kg製品 寸法100mm × 25~9 mm,駆動装置0.75kW 1500r.p.m. 無段変速機付。ベルト速度5m/min~20m/min,冷却 水 0.7~0.8m3/min 小型試験転炉(昭和37年度) 溶解銑鉄にある角度をもった2本のノズルより高圧の 酸素を吹付け,ベッセマーライジングと同時に溶鉄およ び焙滓に回転運動を与えて反応を促進する。転炉,工業 用バーナー,集塵装置より成る。鉄溶解量200~300kg, 酸素圧力5~15atm,酸素流量500~2000Nl/min 金属化合物ガス還元装置(昭和37年度) 真空中,不活性ガス中で加熱し,化合物の熱分解,還 元などを行なう。反応管にレアフラックスを用い,配管 にステンレス鋼を用い腐食を防いでいる。発熱体シリコ ニット。温度1200℃,雰囲気は真空中,不活性その他。 バッチ型回転炉(昭和38年度) 回転炉を利用した還元鉄の還元法としてのR―N法, S―L法,Electrokemisk法,ACAR法などにおいて明ら かでない多くの点を研究するため,連続式工業炉に適し た還元条件において実験し使用目的に適した還元鉄を製 造するための工業炉による鉄鉱石,ペレットの還元の適 正な操業条件をうることを目的としている。 電極反応動特性測定装置(昭和39年度) 電極反応を放電前後に伴う物質移動の過程に影響され ることなく測定できる。電解質溶液中におけるイオンの 形態の判定および電極反応機構の解明をする。電極反応 動特性測定用交流ブリッジ,観測並びに記録装置,試験 用計器より成る。 2トンMBCキュポラ(昭和36年度) 溶解帯は水冷,無ライニングで酸性,塩基性いずれも 自由に操業できる。熱風温度は500℃以上である。除滓 部はサイフォン式。スラッグの塩基度を相当高くするこ とができるので脱硫が容易である。炉内の雰囲気条件か ら相当量の酸化鉄が投入されても還元することができ る。長時間(3ヵ月以上)の連続操業が可能である。 500kg低周波誘導電気炉(昭和37年度) 一次コイルに低周波の高圧電流を送り溶解しようとす る金属内に誘導される二次電流によってその金属を加熱 溶解する。開放溶解チャンネル式であるため冷材よりの 溶解が可能。連続溶解が可能。溶解容量500kg (鉄鋼), 電気容量150kVA,溶解速度160kg/hr 溶接・粉末冶金設備 ろう付研究装置(昭和36年度) 真空中および可変雰囲気中でろう付を行ない,ろうの 流れなどを研究することができる。加熱方式はモリブデ ン発熱体による抵抗加熱。最高温度1800℃。最高真空 度5 ×10-5mmHg,試験片の大きさ 最大150 × 200mm, 真空中で加圧することができる。 超音波溶接装置(昭和36年度) 接合部に超音波振動を与え同時に圧力を加えて接合す る。板材のスポット溶接および板・パイプのシーム溶接 が可能。振動子を2個有する。一次電源3相220V,最 大出力4kW,振動部の共振周波数18kc 可変雰囲気溶射装置(昭和37年度) Ar, N2 などの雰囲気中および減圧中で溶射が行な える。内容積750 ×750 ×1000mm,到達真空度2×10-4 Torr,排気速度 油回転真空ポンプ3000l/min× 2,油 拡散エゼクターポンプ1800l/sec ( 5 ×10-3Torrにて) フラッシュバット溶接機(昭和37年度) 被溶接材間に火花を散らしながら接近させ接合部が十 分加熱された時圧力を加えて接合する。丸棒,板材のフ ラッシュおよびアプセット溶接が可能。溶接後の後熱処 理も可能。最大加圧力7500kg,溶接能力軟鋼16~36mm φ,低合金鋼14~30mmφ,ステンレス鋼11~25mmφ 制御雰囲気圧接装置(昭和38年度) 真空または各種雰囲気内において,活性金属および融 鉄点金属の圧接を研究するのに適する。拡散接合も可能 である。最高加熱温度150℃,最高加圧力10t,真空度 10-4mmHg台(圧接時) ろう接特性測定記録装置(昭和39年度) 可変雰囲気中で高周波ろう接が可能。発振機10kc15 kW 真空管型,コイル内径60mm 水平および垂直型2 種,水素雰囲気の場合は露点-70℃まで可能。記録計 器,高純度水素精製装置より成る。 溶接部熱影響部延性試験装置(昭和40年度) 真空,不活性ガス,水素気中で恒温,溶接熱サイクル 方式により試料を加熱し,その途中で試料に載荷した亀 裂の伝幡状況を観察する。溶接熱サイクル最高加熱温度 1500℃,最高荷重50kg,観察用顕微鏡倍率×100~×400 60t粉末成型プレス(昭和36年度) 金属粉末,金属間化合物等の粉末を所定寸法のダイス に揷入し上方より圧縮成型する。加圧力は油によって伝 達,調節される。 300t粉末成型プレス(昭和36年度) 金属粉末を金型ダイス内に充質した後上部より加圧し 成型する。総圧力300ton,常用圧力200kg/cm2,ストロ ーク600mm,スポース1000mm 連続焼結圧延装置(昭和39年度) グリーンシートを各種雰囲気中(水素,分解アンモニ ア)で連続的に焼結し同時に高温で圧延を行なう。電気 炉,圧延機より成る。連続焼結炉,最高使用温度1500° C,発熱体タングステン,到達真空度4 ×10-3mmHg。 圧延機ロール直径125mm,回転数2~10r.p.m. プラズマジェット(研究)装置(昭和36年度) 特徴として超高温が容易に安定して得られること,温 度調節が簡単であること,ジェット雰囲気が不活性にで きることなどが上げられる。最大ジェット温度16,500° C,アーク電流100~1200A,アーク電圧80,160, 320, 640V 4段切換。プラズマガス,Ar, H2, N2 材技研式1000t引張拘束割れ装置(昭和37年度) 溶接継手の長時間定荷重引張試験を行ない,割れ発生 状況を調べうる(TRC試験)と共に,広幅試験片の低 温ぜい性破壊試験,広幅試験片の引張試験にも利用でき る。荷重,歪の長時間記録が可能。容量1000t,最大試 験片幅1m 遅れ破壊試験装置(昭和38年度) 円周切欠き付き溶接熱サイクル再現試験片に水素を添 加し,定荷重長時間引張によって,水素による遅れ破壊 の限界引張応力値を求め得る。最大引張り荷重3 tonで 割れ発生は試片の電位差変化を自記記録して検出でき る。 再現溶接金属連続冷却変態図(CCT図)作成装置 (昭和38年度) 浮遊溶解の原理の1部を利用し,丸棒試片の先端を溶 融させて,溶融凝固過程を経る溶接金属の熱サイクルを 容易に再現し得る。溶接熱サイクル再現装置と変態点測 定記録装置からなる。前者は任意の溶接熱サイクルはダ イヤル操作で簡単に求められ,後者ではX―Y軸には 「温度―伸び」「時間―温度」「時間―伸び」が記録で きる。 摩擦溶接機(昭和38年度) 断面が円形の材料を突合せ加圧下で回転させ,開先面 に発生する摩擦熱により直接加熱し,回転停止と同時に さらに圧力を加え据込みを行なって溶接を完了させる。 加圧力600~10000kg,回転速度1550~6300r.p.m. 5段階。 最大材料直径45mm (軟鋼)。各種材料の溶接が可能。 可変雰囲気アトマイズ装置(昭和37年度) 溶融した金属を溶解炉の下部の細孔より流下させつつ 液体を作用させて大量の粉末を製造する。特殊タンマン 電気炉最高温度1800℃,溶解量2 kg (Fe換算)圧縮機 最高圧力60kg/cm2,流量300l/min,粉末採集装置1500l 特殊粉末圧延装置(昭和37年度) 水平に設置されたロールの間��に粉末を供給して圧延 成型を行ない,粉末から直接金属グリーンシートを製造 する。ロ ール寸法300mmφ × 360mm(350mmφ, 200mmφ ロ ールに交換可能)圧延圧力測定母ゲージ容量100ton) ロ ール回転数1~10r.p.m.に連続的に可変。 電子ビーム溶接装置(昭和37年度) 大型電子ビーム溶接装置。ジルコニウム,チタン,タ ンタルなどの活性金属の溶接のほか,各種金属に対して 厚板の溶接を実施している。ビームガン2個(500mA 用,250mA用),板およびパイプの溶接万能。10-4mm Hg真空中での溶接が可能。 腐食・表面処理 高温酸化反応解析装置(昭和36年度)(熱天秤��) 光電管式。超高温,自動記録,雰囲気可変。感度0.2 mg,最大荷重3 g,最高温度1700℃,真空度10-5mm Hg,最大変化量1g 多点式腐食率測定装置(昭和37年度) 腐食により金属の電気抵抗が変化することを利用し交 流ブリッジにより抵抗変化値を測定し,種々の環境下に おける金属材料の腐食率を12点同時に記録して求めるも のであり,重量変化で測定できないような試片の腐食率 を求めることができる。測定精度0.1mm,厚試片につ いて約1.27×10-2%。 高温高圧流水腐食試験装置(2号機)(昭和37年度) 試験水は主循環系より減圧流量調整弁で5kg/cm2以 下におとし,イオン交換塔,貯水タンク,溶存酸素計を 経て,高圧給水ポンプにより再び主循環系に送り込む。 この低圧系に種々のイオンあるいは気体を添加しうるの で試験中のこれらの影響因子の挙動を連続的に追求でき る。 溶融金属表面構造解析装置(昭和37年度) 横型の電子回折装置であって特に,試料ホルダーは小 さなるつぼとこれを囲む無誘導の電熱ヒータから成って いる。溶融金属表面に生成する酸化物を直接調べる為の もので,加速電圧は最高50kV,試料の加熱は1200℃位 まで可能である。 硬質アルマイト処理装置(昭和38年度) アルミニウムおよびアルミ合金の化成処理に関係する 研究に使用する。陽極酸化用電源,電解液冷却装置およ びブライン冷却装置,電解槽,電解温度制御装置,高周 波洗滌装置を含む洗滌槽より成る。 光干渉式表面被膜厚さ測定装置(昭和38年度) 薄い皮膜を有する試料に,垂直方向の偏光を当てて, 振幅反射係数比および反射時における位相の進みの差を 求め,これから皮膜の厚さを測定する装置。対象となる 皮膜の厚さは数オングストロングから数百オングストロ ングである。 高速流水腐食試験装置(昭和39年度) 高速流水環境でのキャビティションによる侵食を試験 するため,高速の流水を環流させた環境に試験片をさら すことにより,金属材料の腐食挙動を検討するのが目的 である。流速最高50m/sec,圧力最高20kg/cm2,試験 片は板状5枚,管状4個。 常圧ガス腐食試験装置(昭和39年度) 自動記録式で金属化合物の分解,脱水などの過程なら びに静止および流量をもった場合の金属材料の高温にお ける酸化挙動を観察する。 感度0.2mg,重量20g,記録範囲10mg,測定可能重量 ±0.2g,最高温度1350℃ 高温高圧動水腐食試験装置(3号機)(昭和36年度) 亜飽和水,飽和水,気水混合体,飽和蒸気,過熱蒸気 の環境に板状あるいは管状の試験片を揷入した流水中で 腐食試験を行なう。試験片から溶出するイオンはバイパ ス回路のイオン交換樹脂を通して常に水質を一定にす る。使用純水は比抵抗1×105Ωcm以上,溶存酸素0.07 ppm,全イオン0. 2ppm 以下。 屋外曝露試験機(昭和36年度) 試験片を大気中にさらして各種の気象条件下における 試験片の腐食状況を観察する。曝露場所の気象条件とし て,大気中のSO2, SO3, CO2の量,降雨量,降塵の量 および組成分析,風向,風速,日照時間,紫外線・赤外 線照射量,気温,湿度を測定する。 応力腐食試験装置(昭和38年度) 溶存酸素および塩素イオン濃度を一定にした環境でス テンレス鋼の応力腐食割れ試験を行なう為に,圧縮コイ ルバネにより試片に一定応力を付与し,脱酸素純水によ り試験液を調製して高圧ポンプで常時3 l/hrの試験液を 供給する。常用試験温度350℃,常用試験圧力200kg/ cm2 腐食試験装置(4号機)(昭和40年度) イオンを添加した高温流水中に試験片を揷入して腐食 試験を行なう。試験環境のイオン濃度を一定に保つた め,試験水は高圧ポンプで主循環系に送り,送入量だけ 減圧弁を通して排水する。常用試験温度350℃,同圧力 200kg/cm2,流速2~15m/sec,給水量最高25l/hr。分 析可能な添加ガスおよびイオンは水素,酸素,窒素,塩 素 R I実験室(昭和37年度) 金属材料の構造的研究,加工法の研究へのラジオアイ ソトープ利用の研究のための次のような実験室がある。 溶解室,加工室,給気機械室,貯蔵室,暗室,排気機械 室。床の洗滌,非汚染性,防塵等に細心の注意を払って ある。 ベリリウム実験室(昭和37年度) 化学的な毒性を有する金属ベリウムを安全に取扱いう るように作られた実験室で,室内には各種のフード,換 気装置(換気回数25回/時)があり,おもにベリウムの 溶解加工の実験に使われている。電子ビーム溶解炉,二 段圧延機,真空焼鈍等が設置されている。 付録・参考資料 科学技術庁設置法(抜すい) 科学技術庁受託研究規程 この5年間の記録 研究成果一覧 昭和41年度年次研究計画 科学技術庁設置法(抜すい) 第16条 科学技術庁に付属機関として,次の機関を置く。 航空宇宙技術研究所 金属材料技術研究所 放射線医学総合研究所 国立防災科学技術センター 宇宙開発推進本部 第18条 金属材料技術研究所は,金属材料その他これに類する材料の品質の改善を図るために必要 な研究を行う機関とする。 2.金属材料技術研究所は,東京都に置く。 3.金属材料技術研究所の内部の組織は総理府令で定める。 科学技術庁受託研究規程 (昭和36年6月13日科学技術庁訓令第36号) 改正 昭和38年7月15日科学技術庁訓令第46号 (目的) 第1条 この規程は,科学技術庁に付属する研究所およびセンター(以下「研究所等」という。) が,その所掌事務に属する研究および試験並びにこれらに伴う技術的調査(以下「研究」とい う。)を受託する場合の手続その他必要な事項を規定することを目的とする。 (申請書の提出) 第2条 研究所の長(以下「所長」という。)は,研究所等に研究を委託しようとする者があるとき は,その者に別記様式による研究委託申請書を提出させるものとする。 (受託契約) 第3条 所長は,前条の研究委託申請書の提出があった場合において,受託することを適当と認め るときは,受託しようとする研究につき,委託者と研究の受託に関する契約(以下「受託契約」 という。)を締結するものとする。 2.所長は,受託者と受託契約を締結しようとするときは,あらかじめその旨を契約書の案を添 えて科学技術庁長官(以下「長官」という。)に届け出るものとする。 3.前項の規定は,受託契約を変更する場合に準用する。 (受託研究の終了等の報告) 第4条 所長は,受託研究が終了し,又はこれを打ち切り若しくは延期したときは,その旨を長官 に報告するものとする。 (研究結果の公表) 第5条 所長は,受託研究が終了し,またはこれを打ち切ったときは,遅滞なく,受託研究の結果 を公表するものとする。ただし,所長が委託者の業務上の秘密に属すると認める部分については この限りでない。 付 則(昭和38年7月15日科学技術庁訓令第46号) この訓令は,昭和38年7月1日から施行し,昭和38年4月1日から適用する。 別記様式 研究委託申請書 年 月 日 所長 殿 申請者 住所 氏 名(名称および代表者の氏名)印 左記により研究を委託したいので申請します。 記 1.研究の題目 2.研究の目的および内容 3.研究の実施期間についての希望 4.研究用資材および設備の提供についての希望 5.研究補助者の派遺についての希望 6.その他研究の実施についての希望 7.添付書類の名称 この5年間の記録 おもな組織・人事異動 1)おもな組織・人事異動 2)国際会議出席者一覧 3)海外視察者研修者一覧 4)海外留学者一覧 5)本研究所に滞在した海外研究員 6)表彰事項 7)おもな訪問者および会議 36年 昭和36年度新設 第8部(部長理博橋本宇一(兼))第9部(部長理博橋本宇一(兼))。技術 課(管理部),特殊鋼研究室(第1部),金属物理研究室(第2部),金属間化合物研究室・酸化 金属研究室(以上第9部) 5月1日 第5部長 工博 伊藤伍郎 6月1日 第1部長 理博河田和美(前第2部長) 第2部長理博田岡忠美 第7部長理博橋本宇一(兼) 第9部長 理博吉田 進(前第7部長) 7月1日 第7部長工博 岩村霽郎 10月1日 所付工博五弓勇雄(併)(東大教授) 所付工博西原清廉(併)(文部省大学学術局科学官) 所付工博石橋 正(併)(九大教授) 所付工博三橋鉄太郎 37年 研究部名称を全面的に改める。 昭和37年度新設 工業化研究部,金属物理第3研究室・物理試験室(以上金属物理研究部),表 面処理研究室(特殊金属材料研究部)。 4月25日 金属物理研究部長工博田岡忠美 金属化学研究部長理博遠藤勝治郎 製錬研究部長理博柳橋哲夫 鉄鋼材料研究部長理博河田和美 非鉄金属材料研究部長工博岩村霽郎 特殊金属材料研究部長工博伊藤伍郎 電気磁気材料研究部長理博吉田 進 材料強度研究部長理博柳原 正 溶接材料研究部長理博・工博鈴木春義 工業化研究部長田中竜男 38年 昭和38年度新設製造冶金研究部,金属物理第4研究室(金属物理研究部),製鉄研究室・湿式 製錬研究室(以上製錬研究部),鋼質研究室(鉄鋼材料研究部),活性非鉄金属研究室(非鉄金属 材料研究部),乾食研究室(腐食防食研究部),摩粍研究室(材料強度研究部),ろう接研究室(溶 接研究部)。 4月1日 製造冶金研究部長工博荒木 透 溶接研究部(溶接材料研究部の改称)長 岩元兼敏 8月1日 参与工博西原清廉(前所付) 参与工博石橋 正(前所付) 参与工博幸田成康(併)(東北大教授) 10月1日 参与工博五弓勇雄(前所付) 39年3月28日 参与工博麻田 宏(併)(東大教授) 39年 昭和39年度新設腐食防食研究部,製鉄原料研究室(製錬研究部),超耐熱用材料研究室(特殊 金属材料研究部),腐食計測研究室(腐食防食研究部),材料試験所準備室。 4月1日 腐食防食研究部長工博伊藤伍郎(前特殊金属材料研究部長) 材料試験所準備室長理博河田和美(兼)(鉄鋼材料研究部長) 金属化学研究部長理博柳原 正(前材料強度研究部長) 材料強度研究部長岩元兼敏(前溶接研究部長) 溶接研究部長理博橋本宇一(兼) 40年1月16日 特殊金属材料研究部長工博木村啓造 4月1日 材料試験所準備室を材料試験部に改組。同部に業務課,試験課を新設。 材料試験部長理博河田和美(兼)(鉄鋼材料研究部長―兼任解除7 ・1) 7月1日 科学研究官工博岩村霽郎(前非鉄金属材料研究部長) 鉄鋼材料研究部長工博荒木 透(併)(東大教授)(前製造冶金研究部長) 製造冶金研究部長工博牧口利貞 非鉄金属材料研究部長工博木村啓造(前特殊金属材料研究部長) 特殊金属材料研究部長理博坂田民雄 溶接研究部長工博福本 保 国際会議出席者一覧 氏 名 出張期間 国 際 会 議 名 出張先国名 鈴木春義 S.36. 4. 8~5.22 国際溶接会議(ニューヨーク) U. S . A.,カナダ 伊藤伍郎 36.10. 8~11.17 第2回国際真空会議(ワシントン) U. S. A.,カナダ 橋本宇一 37.10.27~11.19 冶金会議,世界金属展示会(ニューヨーク) U. S . A.,カナダ 岩村霽郎 37.10. 27~12.12 冶金会議,世界金属展示会(ニューヨーク) U. S. A.,カナダ 河田和美 38. 7. 5~8.23 国際溶接会議(ヘルシンキ) フィンランド,西独 牧口利貞 38. 8. 31~10.12 第30回国際鋳物会議(プラハ) スイス,チェコスロバ キア 橋本宇一 38.10.17~11.20 合成樹脂国際会議(シカゴ)(ドイツ鉄鋼協 会年次大会) U. S . A.,カナダ,欧 州各国 橋本宇一 39. 5.17~ 6.17 第6回金属表面処理国際会議(ロンドン) (ドイツ金属学会大会) イギリス,西独,フラ ンス 岩村霽郎 40. 9.10~10. 9 国際鋳物会議(ワルソー) ポーランド 中村治方 40. 6.14~7.15 国際溶接学会1965年年次大会(パリ) フランス 海外 視察 研修 者 等一覧 氏 名 出張期間 渡 航 目 的 出張先国名 津谷一男 S.37. 3.30~5.23 金属関係研究所の実態調査 ドイツ,イギリス,フ ランス,オーストリア 佐伯雄造 37. 5. 3~8. 3 研究調査および電気化学会に於て「チタンの 製造」について講演のため U. S. A. 橋本達哉 37. 6.20~8.13 電子ビーム溶接技術に関する研究および実態 調査 U. S. A.,イギリス, フランス 吉村 浩 38. 5.13~5.26 M.B.C.協会第9回会議(パリ)他 フランス,ベルギー 須藤恵美子 38. 7.25~9.26 質量分析計の技術習得ならびに研究 イギリス 荒木 透 39. 4.26~6. 8 連続鋳造技術の研究状況の視察,その他 U. S. A.,イギリス, ベルギー,ドイツ 戸部健次郎 39. 9.11~10.15 欧米各国に於る国立試験研究機関の管理方式 の調査 U.S.A.,スイス,ド イツ,イギリス 橋本宇一 S . 40. 3.15~4.5 マックス・プランク金属研究所にて講演発表 欧州各国の鉄鋼研究所を視察し,材料研究 と試験の現状の研究調査 ドイツ,イギリス,欧 州各地 橋 本 宇一 40.10.30~11.24 冶金学的研究とその組織に関する講演並びに エルーゼン所長と連続鋳造に関する討論及び 研究打合せ ドイツ,フランス,オ ランダ,ベルギー,デ ンマーク 舟久保𤋮康 41.2. 5~2.19 旧技術留学生代表者会議,他 フランス 岩元兼敏 41.1.6~1.20 OECD工業材料摩耗研究委員会 ドイツ,フランス,ス イス,デンマーク 海外留学者一覧 氏 名 留学期間 留 学 目 的(研究テーマ等) 留 学 先 森本一郎 S.36.9.15 ~37.1.1 ダイナパック(鍛造機械)による高速加工技 術の修得。高速加工研究状況の調査 General Dynamics Corporation(U.S.A.) 本多竜吉 36. 8.26~38.11.30 鉄及び鉄合金の低温脆性の研究 マサッチュセッツ工科 大学(U.S.A.) 山崎道夫 37. 9.10~19.10. 31 金属材料の高温強度に関する研究 マサッチュセッツ工科 大学(U. S. A.) 蓮井 淳 37. 9.10~12.24 特殊溶接の研究活動ならびに溶接技術の実態 の調査研究 レンスラー工業大学 (U.S.A.) 島岡五朗 37. 8. 28~10. 3 金属表面の構造物理化学に関する研究 ブラウン大学(U.S.A.) 吉田秀彦 38. 4.24~5.31 金属の再結晶及び塑性変形に関する研究 アーヘン工科大学(ド イツ) 木村啓造 38. 9.16~12.10 耐熱合金の合金理論並びに応用研究 Battlie Memorial Institute(U.S.A.) 星野明彦 39. 7.11~40. 4.2 鉄鋼の熱処理に関する研究 フランス鉄鋼連盟 鈴木敏之 39. 8. 29~40. 7.31 金属工学特に電気磁気材料の研究 ミネソタ大学(U.S.A.) 依田連平 39.11.10~40. 5.7 超耐熱合金と耐火金属の性能向上に関する基 礎的および応用的研究のため オルバニー冶金研究セ ンター 松田福久 40. 9. 21~41.4.10 特殊溶接および特殊冶金の研究のため レンスラー工業大学 (U.S.A.) 武内丈児 40.11.8 ~41.4.10 希土類・トリウム等の分離・精製に関する研究 ユタ大学(U.S.A.) 川瀬 晃 40. 8.27~41.8. 26 金属キレートを純金属又はその他の金属中の 微量不純物の定量に応用する研究 岩尾暢彦 41.1.2~10. 2 金属の内部摩擦に関する研究 トゥルズ応用物理研究 所(フランス) 本研究所に滞在した海外研究員 氏 名 国 籍 地 位 滞在期間 研究テーマ Dr. Gaston Collete フランス IRSID物理研究部内部摩 擦研究室長(現Toulouse 国立応用科学研究所固 体物理研究部長) S. 38.12~ 39.10 微小応力範囲における純鉄単 結晶薄板の内部摩擦 Mr. K. P. Mukhelji インド N.M.L海洋腐食研究所 officer incharge 40. 4~40.10 腐食計測に関する研究 Dr. Marc Aucoutourier フランス 国立科学技術院 40.11~41.11 鉄鋼中における含有元素の扁 析 高強度鋼の疲労破壊に関する 研究 Mr. K. R. L. Thompson オースト ラリア Defence Standards Lab. Dept. of supply 41.3 ~41.12 表 彰 事 項 37 ・ 4 ・17 科学技術庁長官より創意工夫功労者として表彰 片平和男 「高張力鋼溶接割れ試験方法の確立」 伊野口育雄 「プラズマジェット・ガンのノズル冷却装置の改良」 管 広雄 「溶解技術の改善」 38・4・3 日本金属学会より表彰 木村 啓造 「日本金属学会功績賞」 38 ・11・19 ドイツ鉄鋼協会外国人名誉会員に推薦さる 橋本宇一所長 39 ・ 4 ・ 4 日本金属学会より表彰 荒木 透 「日本金属学会功績賞」 39 ・ 4 ・15 科学技術庁長官より創意工夫功労者として表彰 福島 孟「プラズマジェット・トーチの改良,外」 山本茂「微小流量計の改良」 39・5・26 田村皖司「粉体粉末冶金協会研究功績賞」 40・4・1 科学技術庁長官より創意工夫功労者として表彰 頴娃 一夫 「遅れ破壊割れ検出記録装置の改良,外」 北原 宣泰 「検鏡並びにX線マイクロアナライザー用試料の研磨の改良,外」 渡辺敏昭「連続鋳造装置の考案,外」 40・4・5 依田連平「日本金属学会第23回功績賞」 中川竜一「日本鉄鋼協会渡辺義介記念賞」 4 ・ 6 日本鉄鋼協会50周年記念特別表彰 橋本宇一所長「製鉄功労賞」 41・4・18 科学技術庁長官より創意工夫功労者として表彰 信田 茂雄 「内部摩擦測定装置の改良,外」 大越恒雄 「金相顕微鏡写真製作技術の改善」 本多 均一 「油圧鍛造プレス作業能率の改善向上,外」 斎藤 正 「実験用圧延機圧延トルク計較正装置の考案,外」 41・5・2 ドイツ金属学会名誉会員に推薦さる。橋本宇一所長 おもな訪問者および会議 36・4・12 原子力研究管理専門視察団(原子燃料公社 理事豊島 陞氏他9名) 4 ・15 韓国原子力研究所核燃料担当官Dr. Choi Hyung-Sup 4 ・ 22 科学技術週間所内一般公開 6 ・12 日本伸銅協会技術委員会分析分科会 7 ・ 20 当所創立5周年記念式典発行 8 ・ 3 Mr. Edward Morrice (Bureau of Mines, U. S. A.) 8 ・ 8 ラマ・チャンドラム氏,ジャガ・ナッツ氏(India) 8 ・ 24 鄭華生氏(中華民国清華大学) 9 ・12 日本伸銅協会技術委員会常任委員会(21名) 10 ・ 7 B.W.R.A. (U.K.)副所長 Dr. A. A. Wells, Mr. Nichols (G. E. C., U.K.) 10 ・ 7 日本機械学会 ダイナパック懇談会 10 ・10 インドネシア基幹産業大臣およびラテライト委員会委員 10 ・ 31 日本バネ協会 材料分科会(見学および研究発表会)(40名) 11・ 24 X線マイクロアナライザ研究会文部省総合研究班(研究打合せ会,講演会,見学)(80名) 11・ 27 日本原子力産業会議原子力研究会 冶金グループ,製錬サブグループ 37・1・12 ソ連非鉄金属製錬所調査団(Iosifvich団長他8名) 1・12 フランス国立中央科学研究所,Dr.アンヌ・マリー ・アントニー 3 ・16 衆議院科学技術特別委員会一行 4 ・ 6 日本機械学会,日本金属学会合同見学会(48名) 4 ・ 6 スイス,ノイハウゼン中央研究所長Dr. Bloch 4 ・ 21 科学技術週間所内一般公開 5 ・ 7 日本鋳物協会(45名) 5 ・17 粉末冶金技術協会(100名) 6 ・1 科学技術庁資源基本統計資料作成研究会機械部門(14名) 6 ・15 表面技術協会(50名) 6 ・ 27 Dr. R. S.Paul(原子力関係視察団員,U. S.A.) 6 ・ 28 元北京大学教授陳東達氏 7 ・10 U.S. Steel社(U.S.A.)研修生,Dr. E. Hornbogen, Dr. H. Warlimomt, Dr. G. Elsen. 8 ・11 インドネシア工科大学鉱山冶金部長 Mr. H. Martosulroto. 8 ・13 英国溶接研究所(B.W.R.A.)所長Dr. R. Weck. 8 ・ 30 Electrothermal Engineering社専務取締役 Mr. H. H. Goldstaab. 8 ・ 30 Prof. R. W. Cahn (Birmingam University, U. K.) 8 ・ 31 Prof. D. Lazarus (Illinois University, U. S. A.) 9 ・ 5 格子欠陥国際会議出席者 Dr. H. Conrad (Aerospace社,U. S. A. ), Dr. W. G. Johnston (General Electric社,U.S.A.), Prof. K. Lüke (アーヘン工科大学金属研究所,西独) 9 ・19 Prof. Dr. Schmidt (Wien University, Austria) 9 ・ 22 Dr. G. M. Rassweiter, Dr. R. N. Hollyer (General Motors Research Laboratory) 10 ・1 Mr. Litwiller (National Research Corporation, U. S. A.) 10 ・12 Dr. Saada (I. R. S. I. D., France) 10 ・18 住友一水会(60名) 10 ・ 23 Mr. G. E. Manager, Mr. R. G. Parkhurst 10 ・ 25 第一原子力産業グループ(13名) 11・17 フランス原子力庁サクレー原子力研究所冶金部次長Mr. Jean Pheline. 12 ・18 蔵前工業会(80名) 38・1・17 科学技術庁長官近藤鶴代氏 3 ・16 Mr. B. L. Thomas (Battle Memorial Institute, U. S. A.) 4 ・ 20 科学技術週間所内一般公開 5 ・ 7 I.R. S. I. D (フランス)研究部長 Mr. Crussard 5 ・ 8 オーストラリア連邦科学技術研究庁(C.S.I.R.O.)長官Sir. Frederick White K. B. E. 5 ・10 Battle Memorial Institute (U. S. A.)所長 Dr. Thomas,同所副所長 Mr. Minton. 6 ・ 7 クリープ試験技術研究組合技術委員会 8 ・ 6 オーストラリア連邦科学研究庁(C.S.I.R. O.) Mr. F. G. Nicholls 8 ・ 9 火力発電技術協会(150名) 9 ・ 23 西独,Max-Planck Institut für Metalf 所長 Prof. Köster 10 ・ 4 科学技術庁政務次官鹿島俊雄氏 10 ・ 31 日本機械学会見学会 11・26 西独,Dortmund Höder Hütlenunion 主任研究員 Dr. K. Brotzmann 12 ・ 2 Dr. R. F. Bunshak (University of California, U. S. A.) 39・4・18 科学技術週間所内一般公開 4 ・ 21 Prof. Dr. L. H. Germer (Cornell University, U. S.A.) 4 ・ 24 中国金属学会常務理事 王鉄雲氏 他3名 5 ・ 8 Unitron社(U.S. A.)社長 Dr. Finn 他 2 名 5 ・11 日本鋳物協会(50名) 5 ・13 R.C.A.社研究所(ニュージーランド)副社長Dr. H. W. Leverenz他2名 5 ・ 22 フィリピン国家科学開発委員会上級科学官Mrs. Leticia Brillo Marcelo 6・5 日本鉱業会(40名) 6 ・11 Prof. Dr. Morriss Cohen (Massachusetts Institute of Technology, U. S.A.), Prof. Dr. David K. Felbeck (University of Michigan, U. S. A.), Prof. Dr. William J. Hall (University of Illinois, U. S.A.), Dr. John R. Low, Jr. (General Electric Company U. S. A. ), Dr John E. Srawley (National Aeronautic and Space Administration, U. S. A.) 6 ・ 26 質量分析学会(40名) 7 ・ 6 Mr. Benjamin C. Allen (Battile Memorial Institute, U. S. A.) 7 ・ 25 Bureau of Mines 局長 Mr. Fernando S. Busaego (フィリピン) 7 ・ 28 Dr. D. B. Fishbach (Jet Propulsion Laboratory, U. S. A.) 8 ・ 5 Dr. Hinzner (Max-Planck Institut für Metalf,西独) 8 ・ 6 日本分析化学会X線工業分析法研究懇談会(60名) 8 ・ 7 科学技術庁長官愛知揆一氏 8 ・ 28 ソ連鉄鋼視察団 9 ・ 30 中国アルミニウム代表団団長張戈氏他4名 10 ・11 Mr. J. Mackenzy (U. S. Steel Research Development Department, U. S. A.) 11・11 Dr. K. J. Irvine (U. S. Steel Metallurgical Reseach, Manager)他 2 名 11・16 Mr. Ulman (Krupp社,西独) 11・17 日本ダイカスト工業協同組合(35名) 11・ 26 Mr. McDonald Schetky (Assistant Technical Director Metallurgy, International Copper Reseach Association, U. S. A.) 11・ 27 日本工学会(100名) 12 ・ 3 中国金属加工代表団(6名) 12 ・ 9 ソ連溶接技術代表団(Mr. Paton B. E.,他7名) 12 ・ 24 中国溶接代表団(李字文氏 他5名) 40 ・1・ 7 A. B.ヴィラゾール氏(フィリピン国費留学生,東北大学工学部) 3 ・ 8 パウレック教授(ベルリン工科大学,西独) 4 ・ 5 Max-Planck Institut für Eisenforschung (西独)所長 Prof. Dr. Willy Oelsen. 4 ・12 中国化学機械考察団団長高鵬氏 他2名 4 ・12 東独中央溶接研究所長Prof. Werner Gilde 4 ・12 耐火物技術協会(52名) 4 ・13 東独中央工業大学溶接研究部長ノイマン氏 オーストラリア金属学会会長 ギブキンス氏 イタリア フィンダー鉄鋼研究所長 スコステシィ氏 4 ・14 国際放電加工技術会議(48名) 4 ・15 ソウル機械工業協同組合訪日産業視察団(韓国) 4 ・19 フラシス金属学会会長Prof. P. Lacombe 4 ・30 Illinois工科大学冶金学主任教授Mondolfo氏(U.S.A.) 6 ・ 2 Mr. N.E.Promisel (Chief Moterial Engineer, Depertment of Navy, U. S.A.) 6 ・11 日本電気炉工業会(30名) 6 ・17 リビエール氏(I. R. S. I.D.,フランス) 6 ・18 日本機械工業連合会産業技術委員会 6 ・19 Mr. J. G. Baker (Copper & Brass Information Center Manager, Australia) 6 ・ 29 インドネシア国立研究所相Dr. Soeljone D. Poesponegoro他2名 7 ・16 中国電子顕徴鏡代表団(田巨生氏 他6名) 8 ・ 5 Dr. R. A. Johnson (Brookheaven National Laboratory, U. S. A.) 8 ・ 21 Dr. M. Plinard (フランス鋳物技術センター) 9 ・ 2 中国金属加工視察団(揚近標氏 他5名) 9 ・ 4 中国技術進口公司冶金技術視察団(揚棟氏 他9名) 9 ・ 8 Dr. J. I. Bluhn (Chief. Applied Mechanical,U. S. Army Metallurgical Reseach Laboratory, U.S.A.) 9 ・10 Dr. D. R. Miller (University of Melbourne, Australia), Dr. K. U. Snowden (The Broken Hill Association Smelters Phy. Ltd., Australia) Prof. A. S. Tetelman (Stanford University Brittle Fracture, U. S. A. ) Dr C. J. McMahon (University of Pennsylvania, U. S.A.) 9 ・11 Dr. N. P. Allen (National Physical Laboratory, U. K.) 9 ・16 電熱化学委員会(50名) 9 ・18 材料破壊国際会議出席者Prof. Averbach, Dr. C. T. Hahn他16名 9 ・ 22 Mr. N. E. Frost (National Engineering Laboratory, U. K.) 9 ・ 24 Dr. K. Chick, Dr. E. P. Bullen (Aero Research Laboratoay, Australia), Prof. P. Hassen (University of Göttingen, Germany), Prof. K. Lüke (University of Öadan, Germany), Dr. A. R. Rosenfield (Battle Memorial Institute, U. S.A.), Dr. P. K. Dai (U. S. Air Force U.S.A.) 9 ・ 27 ウクライナ科学アカデミー金属材料研究所(ソ連)長Mr. Nobikov 9 ・ 28 Dr. A. K. Head (オーストラリア連邦科学技術研究庁(C. S. I. R. O.)), メルボルン大学鉱物化 学研究所(オーストラリア)マックターガルト教授 9 ・ 29 西独,無機化学研究所長 シュナイダー教授 10 ・ 7 火力発電技術協会(100名) 11・ 4 釜山大学(韓国)講師 金柱奉(Chu Bong Kim)氏 12 ・10 L'Air Liquide社(フランス)応用研究部長 M. Maicel Michaud 41・ 2 ・17 日本材料学会高温強度部門委員会 2 ・ 26 ATH Ruhurt 技師 Dr. H.Beer (ドイツ) 3 ・ 3 チェコ国家技術委員会代表団(団長A.モーゼク博士 他2名) 3 ・14 中国化学機械代表団(団長蘇又泉氏 他7名) 3 ・16 日本兵器工業会(60名) 4 ・18 ソラック製鉄(フランス)訪日代表団(副社長M. Claude Ink他2名) 4 ・ 23 科学技術週間所内一般公開 5 ・12 BISRA, Head of Metallurgy Division, Mr. W. E. Duckworth (イギリス) 研究成果一覧 Ⅰ金属材料技術研究所研究報告 第4巻(昭和36年)第3号~第9巻(昭和41年)第2号 本報告以外に発表されたものはその掲載誌名,巻,頁を示した。 Ⅱ 当所研究報告以外に発表された研究成果 昭和36年3月~昭和41年3月 当所の「五年のあゆみ」(昭和36年7月20日発行)掲載のものは除いた。 Ⅲ TRANSACTIONS OF NATIONAL RESEARCH INSTITUTE FOR METALS Vol.3 (1961)No. 2~Vol.8 (1966) No. 2 注)1.文献名のうち,略号を使用したものは次の通りである。 バネ論文:日本バネ論文集, JIM : Trans. JIM, Phys. : J. Phys. Soc. Japan. 金属学会:日本金属学会誌, 溶接学会:溶接学会誌, 粉末冶金:粉体および粉末冶金 化学雑誌:日本化学雑誌, 非破壊:非破壊検査, 原子力:日本原子力学会誌 鉱業会:日本鉱業会誌, 工業化学:工業化学雑誌, 塑性加工:塑性と加工 機械学会:日本機械学会論文集,appl. Phys.: Japan. J. appl. Phys. AIME : Trans. AIME 表面技術:金属表面技術, Electrochem. : J. Electrochem Soc. 材料試験:材料試験協会誌, 結晶学会:日本結晶学会誌 JSME: Blletin of JSME E.-M : J. Electron-Microscopy,計測制御:計測自動制御学会論文集 P.C.S. : J. Phys. Chem. Solids, T.I.T. : Bulletin of the Tokyo Institute of Technology L.-C.M. : J. Less-Common Metals, 選研彙報:東北大学選鉱製錬研究所彙報 JISI: J. Iron and Steel Inst. 溶射協会:日本溶射協会誌 2.当所研究報告に掲載の論文は「当所研究報告以外に発表された研究成果」から除いた。 3.論文には通し番号を付し本文中にレファレンスしているので御参考にされたい 。 Ⅰ金属材料技術研究所研究報告 番号 題 名 著 者 頁 誌 名 巻 頁 年 第 4 巻(第 3 号:P.194~P. 279,第 4 号:P. 280~P. 367) 1 Mn-Crバネ鋼の恒温変態による機械的性質 上野,内山,星野 194 鉄と鋼 バネ論文 47 No. 7 817 8 1961 1961 2 マルテンサイト変態前後の塑性変形が410型ステンレス鋼の機械 的性質におよぼす影響 細井,K.E. Pinnow 201 3 18Cr-12 Ni系オーステナイトステンレス鋼の諸性質におよぼす バナジウムの影響 中川,乙黒 210 鉄と鋼 47 828 1961 4 60%Cr-25%Fe-15%Mo系合金の高温特性におよぼす溶製雰囲 囲気の影響について 依田,吉田(平), 向谷 218 5 ルチルの電気的性質 坂田(民),坂田(君) 226 6 ニオブ-炭素系状態図の研究 木村(啓),佐々木 232 J I M 2 98 1961 7 再現熱影響部延性試験による高張力鋼の溶接性の評価 鈴木(春),田村 240 8 ジルコニウムの溶接に関する研究(第4報) 鈴木(春),橋本, 松田 258 9 金属薄膜の高温酸化過程の観察 島岡 268 10 高純度クロム中の鉄の定量 俣野,川瀬 276 分析化学 10 414 1961 11 珪素鉄単結晶における劈開破断 本多 280 Phys. 16 1309 1961 12 諸外国の軸受鋼の非金属介在物および炭化物 内山,上野 292 13 18 Cr-12 Ni系オーステナイトステンレス鋼の諸性質におよぼす アルミニウム,ジルコニウムの影響 中川,乙黒 300 鉄と鋼 47 828 1961 14 再結晶したモリブデンの脆性について 津谷 308 15 高純度シリコンの製造に関する研究(第1報) 黒沢,南谷 314 16 原子炉用オーステナイト系ステンレス鋼の溶接割れに関する研究 (第4報) 鈴木(春),稲垣, 中村(治) 322 17 HT70高張力鋼の溶接用CCT図 稲垣,宇田 330 18 原子炉用ジルコニウムとその合金の腐食の研究(第1報) 伊藤(伍),清水, 橋本,松田,沢柳, 寺尾 344 19 原子炉用マグネシウム合金の炭酸ガスによる腐食の研究 伊藤(伍),池田(清), 三島 356 20 高純度クロム中のカドミウムの定量 俣野,川瀬,小川 362 第 5巻(第1号:P.1~P.89,第2 号:P. 90~P.144,第 3 号:P.145~P. 202,第 4 号:P. 203~P. 283,第5 号:P. 284~ P. 364,第6号:P.365~P.499) 21 18 Chromium-12 Nickel系不銹鋼の諸性質におよぼす窒素, ボロンの影響 中川,乙黒 1 鉄と鋼 47 1169 1961 22 MK系異方性磁石合金の経時変化現象について 山川,河野 8 23 Ti-Al-Co合金における応力によるマルテンサイト生成について 足立,辻本 16 金属学会 25 568 1961 24 銅の焼入時効中に発生する内部摩擦の遷移的増加現象について 舟久保 27 25 軽合金の凝固におよぼす超音波振動の影響 荒木(喬) 37 軽金属No. 49 32 1961 26 二酸化ウランの非化学量論 斎藤 44 27 MoSi2を主体とする電気抵抗発熱体の物理的機械的性質 田村 61 28 工業用純チタンの溶接に関する溶接雰囲気純度の影響 鈴木(春),橋本,松田 70 溶接学会 31 378 1962 29 高純度クロム中のリンの定量 俣野,川瀬,小川 84 分析化学 10 467 1961 30 マンガン,クロムバネ鋼の焼戻特性について 上野,内山,星野 90 鉄と鋼 47 1884 1961 31 304L型ステンレス鋼の焼鈍硬化におよぼす加工温度の影響 細井 100 鉄と鋼 47 721 1961 32 Zinc-Ferriteに関する研究 新居,木村(啓), 107 鉱業会 78 108 1962 久松 33 冷間圧縮焼結法によるMoSi2を主体とする電気抵抗発熱体の製造 田村 115 粉末冶金 8 145 1961 34 オキシン―メチルイソブチルケトン抽出法によるマグネシウムの 炎光定量(有機溶剤抽出法による炎光分光分析法の研究 第1報) 須藤,後藤 122 化学雑誌 8 12 1961 35 オキシン―メチルイソブチルケトン抽出法によるカルシウムの炎 光定量(有機溶剤抽出法による炎光分光分析法の研究 第2報) 須藤,後藤 126 分析化学 10 12 1961 36 オキシン―有機溶剤抽出法による銅およびマンガンの炎光定量 (有機溶剤抽出法による炎光分光分析法の研究 第3報) 須藤,後藤 130 分析化学 10 175 1961 37 超低温実験室の設計と性能 川越,武内(朋��) 137 番号 題 名 著 者 頁 誌 名 巻 頁 年 38 Ti-Al-Co合金の焼入状態における組織と機械的性質について 足立,辻本 145 金属学会 26 21 1962 39 CrSi2の調製および二,三の性質について 田村,武田,村松 152 粉末冶金 9 7 1962 40 噴霧法による銅粉末の製造について 田村,武田,村松 156 粉末冶金 9 16 1962 41 各種高張力鋼の溶接用連続冷却変態図 稲垣,宇田,金沢 164 溶接学会 30 640 1961 42 溶接熱サイクルの最高加熱温度の影響について (原子炉用ステンレス鋼の溶接熱サイクル途上における高温延性 に関する研究第5報) 鈴木(春),稲垣, 馬田 176 43 オキシン―有機溶剤抽出法によるチタン,ガリウムおよびインジ ウムの定量(有機溶剤抽出法による炎光分光分析法の研究 第4報) 須藤,後藤 191 分析化学 10 5 1961 44 オキシン―有機溶剤抽出法によるニッケルおよびコバルトの定量 (有機溶剤抽出法による炎光分光分析法の研究 第5報) 須藤,後藤 198 分析化学 10 5 1961 45 Nimonic100系合金のクリープ・ラプチャー強度について (Ni基耐熱合金に関する研究第2報) 依田,高橋(仙), 佐藤 203 46 ニッケル・アルミナ型分散強化合金の機械的諸性質について 足立,高橋(仙),林 212 金属学会 26 219 1962 47 四ヨウ化ケイ素の製造について(高純度ケイ素の製造に関する研 究第1報) 黒沢.柳橋 219 金属学会 26 1962 48 四ヨウ化ケイ素の再結晶および精留による精製(高純度ケイ素の 製造に関する研究第2報) 黒沢,石川,柳橋 225 49 引張拘束割れ試験(TRC試験)による高張力鋼溶接部のルート 割れにおよぼす拘束外力の影響について(高張力鋼溶接部のルー ト割れに関する研究 第2報) 鈴木(春),稲垣, 中村 230 50 原子炉用高張力鋼溶接継手の高温引張およびクリープ・ラプチャ ー試験 鈴木(春),稲垣, 岡根,馬田 245 溶接学会 31 647 1962 51 ニオブ,タンタル板の電子ビームおよび可変雰囲気中のTIG溶 接に関する研究 鈴木(春),橋本, 松田 256 溶接学会 32 175 1963 52 原子炉用マグネシウム合金の炭酸ガス腐食におよぼす温度および 圧力の影響 伊藤(伍),池田(清), 三島 270 53 高純度クロム中のイオウの定量(高純クロム分析法 第6報) 俣野,川瀬,永井 277 分析化学 10 617 1961 54 超音波ジャックハンマーによる鋼中非金属介在物の研究 内山,野村,上野 284 鉄と鋼 47 519 1961 55 溶鉄中における炭素の挙動に関する研究 牧口,栗原 291 鋳 物33No.9別冊24 1961 56 クロム・ニッケルステンレス鋼の機械的性質におよぼす成分およ び組織の影響 中川,乙黒 298 鉄と鋼 48 776 1962 57 白金およびロジウム-白金合金の加工硬化と再結晶について 木村(啓),伊藤(祥) 305 58 融解塩電解による金属ニオブの製造 河村,武内(丈), 磯野,平山,工藤 312 59 チタン・アルミニウム・コバルト三元合金の時効挙動と機械的性 質について 足立,辻本 318 金属学会 26 224 1962 60 溶鋼中のイオウとH2-H2S混合ガスとの平衡の研究 柳橋 325 61 四ヨウ化ケイ素の水素還元の基礎実験 黒沢,石川,柳橋 334 62 再現溶接金属の連続冷却変態図 鈴木(春),稲垣, 木原,高木,鈴木(和) 下山 338 溶接学会 33 101 1964 63 発光分光分析における回転電極法の検討 高橋(務),酒井, 吉野 355 分光研究 10 36 1961 64 準安定オーステナイト域における塑性加工が13%クロム鋼の二次 硬化におよぼす影響 細井 365 鉄と鋼 48 940 1962 65 コークスの性質が加炭におよぼす影響について 牧口,栗原 375 鋳 物 34別冊4 1962 66 高張力鋼の適正な被覆アーク溶接条件の選定に関する研究 鈴木(春) 383 67 高温高圧水によるステンレス鋼の腐食におよぼすマンガンの影響 伊藤(伍),池田(清), 渡辺 483 68 丸棒の超音波探傷における“円柱面エコー”について 木村(勝) 491 非破壊 11 191 1962 第 6巻(第1号:P.1~P.76,第2 号:P.77~P.159,第 3 号:P.160~P. 234,第 4 号:P. 235~P. 305,第5 号:P.306~ P.391,第6 号:P.392~P.451) 69 ケイ化クロムおよびケイ化コバルトの熱電気特性 坂田(民),徳島 1 70 真空還元法による金属ニオブの製造に関する研究 木村(勝),佐々木 18 71 高純度酸化トリウムの製造 中村(恵) 25 72 2H-Superおよび2H-Ultra鋼の溶接用SH-CCT図 稲垣,宇田 32 溶接学会 31 244 1962 73 高融点材料の電子ビーム溶接条件に関する研究(電子ビーム溶接 鈴木(春),橋本, 45 溶接学会 32 378 1963 番号 題 名 著 者 頁 誌 名 巻 頁 年 に関する研究第1報) 松田 74 電子ビーム溶解時における電子ビーム流の特性に関する研究 (電子ビーム溶接に関する研究第2報) 鈴木(春),橋本, 松田 51 75 銅・ニッケル合金の清浄表面の触媒化学的性質 山科, Farnsworth, H.E. 60 76 17-10Pステンレス鋼の高温強度におよぼす熱処理の影響 山崎 69 77 真空溶解した軸受鋼について 中島,池田,上野 77 鉄と鋼 49 155 1963 78 準安定オーステナイト域における塑性加工が13クロム鋼の耐食性 におよぼす影響について 細井 83 79 クロム・ニッケルステンレス鋼の耐食性におよぼす成分および組 織の影響 中川,乙黒,河部 89 鉄と鋼 48 1052 1962 80 低マンガンステンレス鋼の諸性質の研究 渡辺,尾沢,田中 (竜) 95 鉄と鋼 48 1493 1962 81 N-155合金の高温特性におよぼすマンガンの影響について 依田,吉田(平),佐藤 102 鉄と鋼 49 166 1963 82 アーク還元法による粗金属ニオブの製造に関する研究 木村(啓),佐々木 112 金属学会 26 699 1962 83 チタン・アルミニウム・コバルト三元合金の加工性について 足立,辻本 119 金属学会 26 527 1962 84 WSi2の調整ならびに酸化物添加について 田村 128 85 電子ビーム溶接ビードの形成とその材質的影響(電子ビーム溶接 に関する研究第3報) 鈴木(春),橋本, 松田 134 溶接学会 32 503 1963 86 電子ビーム溶接時における溶接諸元とビード断面形状について (電子ビーム溶接に関する研究 第4報) 鈴木(春),橋本, 松田 146 溶接学会 32 609 1963 87 クロム・ニッケルステンレス鋼の諸性質におよぼす成分および組 織の影響(Mn, Alの影響) 中川,乙黒,河部 160 鉄と鋼 47 1496 1961 88 低炭素鋼の熱処理組織と機械的性質におよぼす各種添加元素の影 響 吉松,中川 167 鉄と鋼 48 1460 1962 89 コバルト基耐熱合金の高温特性におよぼす添加元素の影響 (Co基耐熱合金に関する研究 第3報) 依田,渡辺(享), 川越 177 90 高張力鋼厚板溶接部のルート割れ試験結果 (高張力鋼溶接部のルート割れに関する研究 第3報) 稲垣,中村,鈴木 (春) 188 溶接学会 31 616 1962 91 電子ビーム溶接部の性質に関する二,三の研究 (電子ビーム溶接に関する研究 第5報) 橋本,松田,鈴木 (春) 199 溶接学会 32 618 1963 92 工業用X線装置“ISOVOLT 400”の線質と線量 横井.伊藤(秀) 215 93 X線透過写真における線質と写真コントラスト 横井,伊藤(秀) 221 94 X線透過写真で検出された溶接欠陥が疲れ強さにおよぼす影響 横井 226 95 クロム・ニッケルステンレス鋼の諸性質におよぼす成分および組 織の影響(銅,窒素の影響) 中川,乙黒,河部 235 鉄と鋼 48 939 1962 96 ジルコニウムを含むアルミニウムの再結晶 荒木(喬) 241 97 スリップ鋳造法によるMoSi2発熱体の製造 田村 248 粉末冶金 10 44 1963 98 韓国産モナズ石の硫酸処理について (モナズ石の処理に関する研究 第1報) 河村,武内(丈), 磯野 225 金属学会 78 527 1962 99 Amex法によるトリウムの分離精製について (モナズ石の処理に関する研究 第2報) 河村,武内(丈) 261 原子力 4 774 1962 100 原子炉用HT70鋼大型継手のクリープラプチャに関する研究 第 1報(大型溶接継手試験片と小型溶接継手試験片による実験結果 の比較) 稲垣,岡根,鈴木 (春) 268 101 エレクトロスラグ溶接における一般的現象について (エレクトロスラグ溶接の研究第1報) 蓮井,倉元,鈴木 (春),永尾 276 102 電子ビーム溶接中に働く力とビード形成機構に関する考察 (電子ビーム溶接に関する研究第6報) 橋本,松田,鈴木 (春) 287 溶接学会 32 996 1963 103 極軟鋼冷間圧延鋼板の焼鈍状況の試験 伊藤(秀),木村(勝) 300 104 溶鉄中のマンガンと酸素の平衡 郡司,的場 306 鉄と鋼 49 758 1963 105 Prestrainを加えた純クロムの引張り破面の電子顕微鏡観察 吉田(進),大庭,永田 317 J I M 3 1962 106 炭化タンタルおよび炭化ニオブの塩素化 佐伯,大森 324 107 Amex法による3価希土および4価セリウムの抽出について (モナズ石の処理に関する研究 第3報) 河村,武内(丈), 中村(恵) 329 108 SiHCl3の熱分解および水素還元の基礎実験 (高純度シリコンの製造に関する研究 第2報) 柳橋,黒沢,和田 (岳) 337 鉱業会 79 18 1963 109 SiHCl3の精留および赤外吸収スペクトルによる実験 (高純度シリコンの製造に関する研究 第3報) 柳橋,黒沢,和田 (岳) 347 鉱業会 79 105 1963 110 SiHCl3の水素還元の中間試験 柳橋,黒沢,和田 356 鉱業会 79 157 1963 番号 題 名 著 者 頁 誌 名 巻 頁 年 (高純度シリコンの製造に関する研究 第4報) (岳) 111 SiHCl3の水素還元の諸条件と引上単結晶の関連性 (高純度シリコンの製造に関する研究 第5報) 柳橋,黒沢,和田 (岳) 363 鉱業会 79 397 1963 112 溶接ビードスタート部におけるビード形成機構に関する実験的考 察(電子ビーム溶接に関する研究 第7報) 橋本,松田,鈴木 (春) 370 113 埋立法による溶接部の切欠き靱性の向上について 蓮井,倉元,鈴木 (春),永尾 384 114 クローム・ニッケルステンレス鋼における各相間の合金元素の分 配とδフェライト量と磁性の関係 中川,乙黒,河部 392 鉄と鋼 48 1504 1962 115 鋼中非金属介在物対策研究上の諸問題に関する考察 荒木(透) 400 鉄と鋼 48 1535 1962 116 四ヨウ化ケイ素の水素還元の製造実験とその性状 (ヨウ度法による高純度ケイ素の製造 第4報) 黒沢,柳橋 407 金属学会 27 221 1963 117 高張力鋼溶接部のルート割れにおよぼす水素の影響と割れ試験繰 返数の検討結果(高張力鋼溶接部のルート割れに関する研究 第 4報) 稲垣,中村(治), 鈴木(春) 413 溶接学会 33 191 1964 118 電子ビーム溶接ビードの凝固後における冷却状態とその予測につ いて(電子ビーム溶接に関する研究 第8報) 橋本,松田,鈴木 (春) 427 119 数種のステンレス鋼の高温酸化 山科 439 120 銅・ニッケル合金の高温酸化に及ぼす酸化皮膜の焼なまし効果 山科 444 第 7巻(第1号:P.1~P.57,第2 号:P.58~P.147,第 3 号:P.148~P. 230,第 4 号:P. 231 ~P. 327,第5 号:P.328 ~ P.448,第6号:P.449~P.516) 121 X線マイクロアナライザーによる鋼中非金属介在物の同定 内山 1 鉄と鋼 47 1516 1961 122 細粒鋼の研究 神谷,田中(竜) 10 鉄と鋼 49 1496 1963 123 クロム,ニッケル,マンガンステンレス鋼の組織および機械的性 質に関する研究 中川,河部,乙黒 16 鉄と鋼 49 1087 1963 124 アルミニウム,ジルコニウム合金の再結晶におよぼす鋳造温度の 影響 荒木(喬),小森 23 125 五塩化タンタルのナトリウムおよびマグネシウム還元の機構 佐伯,大森 31 工業化学 66 1283 1963 126 ガス噴霧法による不規則形状銅粉の製造 田村,武田 38 粉末冶金 10 153 1963 127 粉末圧延法による高導磁率磁性材料の諸特性 森本,前田 46 128 高純度クロム中の銅の定量 俣野,川瀬 52 分析化学 11 108 1962 129 耐食性Fe-Al系合金の研究 尾沢 58 130 高炭素フェロマンガン製造用マンガン鉱石について (マンガン鉱石の性状および還元に関する研究 第2報) 柳橋,武田,新谷 一戸,花田 67 鉄と鋼 49 971 1963 131 COガスおよびCO-CO2混合ガスによるマンガン鉱石の還元 (マンガン鉱石の性状および還元に関する研究 第2報) 柳橋,浅田,新谷 一戸,花田 73 鉄と鋼 49 1051 1963 132 五塩化ニオブのナトリウムおよびマグネシウム還元の機構 佐伯,大森,松島 80 133 連続焼鈍炉による光輝焼鈍法の研究 倉部,田中(竜) 86 鉄と鋼 49 1637 1963 134 被覆アーク溶接法およびCO2アークまたはCO2-O2アーク溶接 における冷却過程について(構造用鋼のアーク溶接時における溶 接部の冷却過程 第1報) 稲垣,中村(治),岡田 96 135 プラズマジェットによるMo溶射について (プラズマジェットの材料加工への応用に関する研究 第1報) 蓮井,北原 117 136 直接焼ならし法による溶接部の切欠き靱性の向上について (エレクトロスラグ溶接の研究第3報) 蓮井,倉元,鈴木 (春),永尾 126 137 直流孤光法による金属珪素の分光分析 須藤,高橋(務),井上 135 金属学会 27 475 1963 138 アルゴン気流中における鉄鋼の発光分光分析 高橋(務) 143 分光研究 12 224 1964 139 3 %けい素鉄に於ける辷り系と臨界せん断応力 田岡,竹内,古林 148 140 Ni-Fe合金薄膜のスピン波共鳴 能勢,大河内 157 141 金属間化合物ZnSb単結晶の製作と半導性 増本,小宮 163 金属学会 28 273 1964 142 溶鋼への鉛,その他の金属の溶解と分散について 荒木(透) 177 鉄と鋼 49 421 1963 143 Zinc-Ferriteの酸溶速度と表面積との関係 (Zinc-Feniteに関する研究 第2報) 新居,久松 183 鉱業会 80 95 1964 144 不規則形状噴霧銅粉の焼結並びに二,三の性質 田村,野田 189 145 S45C炭素鋼の摩擦溶接について(摩擦溶接の研究 第1報) 蓮井,福島(貞) 194 146 プラズマジェットによる超合金肉盛り 蓮井 208 147 電子ビーム溶接ビードの溶込み深さに関する熱伝導論的計算とそ の検討について(電子ビーム溶接に関する研究 第9報) 橋本,松田 219 溶接学会 33 726 1964 148 けい素単結晶の成長双晶について 増本,川田 231 番号 題 名 著 者 頁 誌 名 巻 頁 年 149 熔融純鉄の水素の溶解度 郡司,的場,小野 236 金属学会 28 59 1964 150 熔融純鉄の水素の溶解度におよぼす各種元素の影響 郡司,小野,青木 244 金属学会 28 64 1964 151 含クローム・ニッケル鉄鉱石(ラテライト)を用いる粒鉄製造の 基礎研究 郡司,石塚 250 鉄と鋼 49 380 1963 152 Cr-Mnバネ鋼の高温機械的性質におよぼす熱処理および合金元 素の影響 星野 261 鉄と鋼 50 649 1964 153 冷間加工した18-12ステンレス鋼のバネ特性について 森本,鈴木(敏),土方 269 154 MnによるN-155系合金の鍛造性改善について 依田,吉田(平),小池 274 鉄と鋼 50 2198 1964 155 Zinc-Ferriteの酸溶速度におよぼす生成温度の影響 (Zinc-Ferriteに関する研究 第3報) 新居,久松 284 鉱業会 80 362 1964 156 噴霧法による銅系合金粉末の製造 田村,武田 289 粉末冶金 11 192 1964 157 ユニオンアーク溶接およびサブマージアーク溶接における冷却過 程について(構造用鋼のアーク溶接時における溶接部の冷却過程 第2報) 稲垣,中村(治), 岡田 296 158 電子ビーム溶接における厚板の単層溶接に関する適正溶接条件の 検討と考察(電子ビーム溶接に関する研究 第10報) 橋本,松田,鈴木(春) 309 159 プラズマジェットによるAl2O3溶射について(プラズマジェッ トの材料加工への応用に関する研究 第2報) 蓮井,北原,東 319 160 Alのサブライド製錬法における2Al(1)+ AlCl3(g) = 3AlCl(g) の平衡について(アルミニウム製錬に関する研究 第1報) 菊地(武),黒沢, 柳橋 328 金属学会 28 497 1964 161 Ni-Al2O3型分散強化合金の機械的性質に対する組織と加工の影 響 高橋(仙),飯田,足立 336 金属学会 28 334 1964 Trans. Japan. Inst. Metals 6 30 1965 162 超電導マグネット材料としてのNb-Zr合金の研究 太刀川,岡井 344 金属学会 28 16 1964 163 金属間化合物ZnSnAs2単結晶の製作とその半導性 増本,磯村 358 金属学会 28 663 1964 J. Phys. Chem. Solids 26 163 1965 164 衝撃押出しの力学 河田,武内(朋��),隈部 367 塑性加工 4 9 1963 165 アルミニウムの衝撃押出しの2, 3の実験 河田,武内(朋��), 池田(定),隈部 377 塑性加工 5 301 1964 166 押出し速度が一定の衝撃押出しの研究 吉田(進),武内(朋��), 永田 387 金属学会 27 461 1963 167 局部予熱炎とアーク熱源の場合の冷却過程について(多熱源アー ク溶接時における冷却過程 第1報) 稲垣,岡田 394 168 各種高張力鋼のボンド近傍における溶接熱影響部再現組織の切欠 じん性について 稲垣,三谷 408 169 0. 25%C炭素鋼の摩擦溶接条件についての2, 3の実験的考察 (摩擦溶接の研究第2報) 蓮井,福島(貞) 419 170 電子ビーム溶接中のクレータにおける溶融金属の穿穴の維持に関 する考察(電子ビーム溶接に関する研究 第11報) 橋本,松田,鈴木(雅) 432 171 丸棒の超音波減衰定数の底面エコーによる測定法 木村(勝) 440 非破壊 13 312 1964 172 アーク温度の測定 太刀川 449 173 快削性金属介在物を分散する炭素鋼の昇温時の材料特性について 荒木(透),谷地 449 174 Ni-Al2O3型分散強化合金のクリープ 高橋(仙),飯田,足立 457 金属学会 28 559 1964 175 鋼の熱間衝撃押出し 河田,鈴木(正), 武内(朋��),隈部, 池田(定) 468 鉄と鋼 50 1182 1964 176 粉末圧延法によるステンレス鋼薄板の製造 田村,野田 476 粉末冶金 11 236 1964 177 各種高張力鋼溶接部のT R C試験結果と水素の影響について (高張力鋼溶接部のルート割れに関する研究 第5報) 稲垣,中村(治), 鈴木(春) 485 178 元素添加による溶接金属の切欠き靱性の向上につい て(エレクトロスラグ溶接の研究第4報) 蓮井,倉元,鈴木(春) 永尾 498 179 被雑な干渉帯を生じない超音波探傷用探触子の試作 木村(勝),鈴木(敏) 511 非破壊 14 10 1965 第 8巻(第1号:P.1~P.102,第2 号:P.103~P.166,第 3 号:P.167 ~P. 230,第4 号:P. 231~P. 313,第5 号:P.314 ~P.43O,第6 号:P. 431~P. 489) 180 鋼中に生成する硫化物系非金属介在物の挙動について 荒木(透),平井,松下 烏谷 1 鉄と鋼 50 2310 1964 181 クロム・ニッケル・ステンレス鋼の腐食試験に関する二,三の考察 中川,河部,乙黒 18 鉄と鋼 49 573 1963 182 200℃の純水中でのアルミニウムの腐食に及ぼす試験条件の影響 伊藤,池田(清),大橋 清水,富田 25 183 原子燃料被覆用マグネシウム合金の冷却池中における腐食 伊藤,池田(清) 33 原子力 6 694 1964 番号 題 名 著 者 頁 誌 名 巻 頁 年 184 原子炉用60キロ級高張力鋼溶接部の長時間加熱による材質の変化 稲垣,岡根,鈴木(春) 42 溶接学会 33 1010 1964 185 プラズマジェットの性質に関する研究 蓮井,笠原,江森 飯吉 54 J SME 7 590 1964 186 プラズマジェットによるZrO2溶射について (プラズマジェットの材料加工への応用に関する研究 第3報) 蓮井,北原,東 64 187 腐食疲れの被害の進行について 岩元 72 機械学会 30 209 1964 188 熱疲労における試験条件の影響 上田,若原 86 189 50 kW 電子ビーム溶解炉の試験について 吉田(進),津谷,有富 持田,高屋 94 190 含クローム・ニッケル鉄鉱石(ラテライト)の撰択塩化焙焼につ いて 郡司,石塚 103 鉄と鋼 50 1659 1964 191 高導磁率Fe-Al合金の磁性におよぼすCr, Moの添加効果に ついて 森本,前田 111 金属学会 28 457 1964 192 Fe-Al-Mo合金の磁性におよぼす規則-不規則変態の影響 森本,前田 118 金属学会 28 461 1964 193 溶接部の冷却時間の推定に関する実験式の理論的検討(構造用鋼 のアーク溶接時における溶接部の冷却過程に関する研究 第3報) 稲垣,中村(治),岡田 124 194 アルゴン気流中における銅電極の消耗量 (スパーク放電の電極消耗量第1報) 高橋(務),吉野 142 分光研究 13 58 1964 195 1-(2 -チアゾリルアゾ)-2-ナフチルアミンと金属イオンとの反応 川瀬 149 196 トリウム中の微量亜鉛の定量 川瀬 154 197 高純度テルル中のニッケルの定量 須藤,川瀬,小原 160 198 粒界反応型析出の機構に関する研究 渡辺(亮),幸田 167 199 四ヨウ化ケイ素の分子熱容量および融解熱 (高純度ケイ素の製造に関する研究 第5報) 黒沢,長谷川,柳橋 177 金属学会 29 267 1965 200 五塩化ニオブの水素還元の機構 佐伯,鈴木(正) 183 201 ルール割れと高張力鋼容接部組織の関係について (高張力鋼溶接部のルート割れに関する研究 第6報) 稲垣,中村,鈴木(春) 189 202 溶射に用いるプラズマジェットの性質について(プラズマジェッ トの材料加工への応用に関する研究 第4報) 蓮井,北原,福島(孟) 203 203 渦電流法によるオーステナイトステンレス鋼の粒界腐食測定法に ついて 石原,伊藤(伍),清水 安藤,神谷 216 防食技術 14 297 1965 204 棒の衝突を利用した高速変形実験装置について 吉田(進),永田 224 金属学会 29 99 1965 205 各種バネ鋼の恒温変態とその機械的性質 星野 231 鉄と鋼 48 571 1962 206 Te帯域溶融効果について 増本,田村(良) 239 207 溶融塩化ナトリウム浴に対する1,2価金属塩化物の効果 福島(清),小山田, 萩原 250 電気化学 33 430 1965 208 液体噴霧法による13Crステンレス鋼粉の製造 田村,武田,鰐川 256 209 サーモエレメントのスリップ鋳造 西田,坂田(民) 265 210 点溶接中の電源電圧変動が溶接強さにおよぼす影響について 橋本,田沼 285 211 摩擦圧接におけるアプセット時期について (摩擦圧接の研究 第3報) 蓮井,福島(貞) 295 212 高温摩滅摩耗試験機の試作と炭素鋼の高温における摩滅について (熱間加工における鋼の摩滅に関する研究 第1報) 辻 304 機械学会 31 371 1965 213 鉄単結晶のすべり帯の構造 武内(朋��) 314 Phys. 20 942 1965 214 ケイ素鉄と純鉄の回復と再結晶に伴う内部エネルギーの変化 田岡,吉川,岡本 鈴木(克) 326 Acta. Met. 13 1311 1965 215 ニッケル表面の酸化物異状結晶について 高石,新居,島岡 336 金属学会 29 321 1965 216 熱間圧延した際のマンガン,シリコンまたはシリコマンガン各単 独脱酸鋼中の介在物の挙動(圧延の際の鋼中介在物の変形第1報) 内山,角田 345 鉄と鋼 51 1626 1965 217 合金肌焼鋼および同含鉛鋼の転動疲労特性について 荒木(透),平井,大沢 烏谷,大橋 355 鉄と鋼 50 695 1964 218 オーステナイト・ステンレス鋼の粒間腐食性におよぼすδフェラ イトの影響 中川,河部,乙黒 369 219 高Mn耐熱鋼の研究 依田,吉田(平),小池378 鉄と鋼 51 1152 1965 220 アーク溶解時における溶鉄中への窒素溶解量について 稲垣,和田(次),宇田 388 溶接学会 34 322 1965 221 溶接における凝固過程とそれにともなう化学反応 和田(次) 399 222 ろう接継手のせん断試験方法 和田(次),田辺 407 223 高温における炭素鋼の摩滅におよぼす因子,ならびに高温と常温 における鋼の摩滅現象の比較について(熱間加工における鋼の摩 滅に関する研究第2報) 辻 411 機械学会 31 1191 1965 番号 題 名 著 者 頁 誌 名 巻 頁 年 224 クロム-ニッケル•ステンレス鋼の組織と諸性質におよぼすチタ ン,ニオブの影響 中川,河部,乙黒 431 鉄と鋼 50 918 1964 225 焼結Fe-Al高透磁率合金の磁気特性について 山川 440 226 電子ビーム溶解法によるニオブの精製について 木村(啓),佐々木, 上原 446 金属学会 27 1924 1965 227 ルート割れと高張力鋼化学組成の関係について (高張力鋼溶接部のルート割れに関する研究 第7報) 稲垣,中村(治), 鈴木(春) 455 228 2 1/4Cr-1Mo鋼溶接継手のクリープ・ラプチャ強さにおよぼす熱 処理の影響 稲垣,岡根,中島 467 229 電極消耗量に及ぼす雰囲気ガスの影響 (スパーク放電の電極消耗量 第2報) 高橋(務),吉野 482 分光研究 14 113 1965 第 9 巻(第1号:P.1~P. 78,第 2 号 P. 79~P.180) 230 ニッケル系フェライト薄膜とその磁性 能勢,橋本,木村 1 応用物理 33 550 1964 231 溶融塩化カリウムおよび塩化ナトリウム-塩化カリウム(1:1) 浴に対する1,2価塩の効果 小山田,福島(清), 萩原 11 電気化学 33 822 1965 232 鋼のガス浸炭特性におよぼす少量のニッケル,クロームの影響 荒木(透),倉部, 宮地 16 鉄と鋼 50 562 1964 233 高Mn耐熱鋼の高温特性におよぼす窒素の影響 吉田(平),小池, 依田 27 鉄と鋼 50 1979 1964 234 高ひずみ速度における多結晶アルミニウムの変形について 吉田(進),永田 38 金属学会 29 811 1965 235 冷却時間と冷却速度の関係について(構造用鋼のアーク溶接時に おける溶接部の冷却過程に関する研究 第4報) 稲垣,中村,岡田 47 236 ボロンステンレス鋼の高温水中腐食の研究 伊藤(伍),清水, 佐藤,臼杵,沢柳 56 金属学会 29 980 1965 237 ラジオアイソトープの圧延品への適用について(塑性加工におけ るメタルフロー検出へのラジオアイソトープの利用第1報) 前橋,若杉 64 238 マグネシウム―アルミニウム合金中のベリリウムの吸光光度定量 法 須藤,大河内 71 分析化学 13 406 1964 239 鉄の疲労度と寿命 吉川 79 240 酸化鉄蒸着薄膜 田代,能勢 92 応用物理 34 269 1965 241 非金属元素を含む液体金属の電気抵抗 渡辺,田巻 100 242 鋼中のセレン,テルル系介在物に関する2,3の実験 平井,荒木(透), 松隈 105 243 高温における特殊鋼,耐熱性合金の摩滅について(熱間加工にお ける鋼の摩滅に関する研究 第3報) 辻 115 機械学会 31 1646 1965 244 冷間加工した18-12ステンレス鋼の焼鈍硬化とMo, WおよびV 添加の影響 森本,鈴木(敏), 土方 129 金属学会 30 346 1966 245 低温焼鈍したα-黄銅の透過電顕観察 辛島,貝沼 136 J I M 4 119 1963 246 Al-Zr合金の再結晶時におよぼす質量効果 荒木(喬),小森 141 軽金属No. 74 24 1965 247 Nb-Sn超電導マグネット線の研究 太刀川,福田 149 248 平板上にアーク溶接したときの溶落ち現象について(片面溶接に おける適正な溶接施工条件の選定 第1報) 稲垣,岡田 157 249 プラズマジェットによる超合金(Ni基合金)の溶射について(プ ラズマジェットの材料加工への応用に関する研究 第5報) 蓮井,北原,萩原 167 Ⅱ 当所研究報告以外に発表された研究結果 番号 題 名 著 者 誌 名 巻 頁 年 250 物理冶金 Activation Energy of Bordoni Peak and its Relation to Peiers Stress 武内(朋��) Phys. 17 659 1962 251 Yield Point of Single Crystals of Iron and Comparison with Ply- crystal 武内(朋��) 塑性加工 18 1841 1963 252 Thermoelectric Behaviours of Rutile 坂田(君) Phys. 16 1026 1961 253 Yield Points and Transient Creeps in Polycrystalline Iron of Very Low Carbon Content 武内(朋��),池田(省) Phys. 18 488 1963 254 Low Temperature Creeps and Delay Time in the Iron of Very Low 武内(朋��),池田(省) Phys. 18 767 1963 番号 題 名 著 者 誌 名 巻 頁 年 Carbon Content 255 化学研摩法による電子顕微鏡直接観察用薄膜の作製法 寺崎,吉川 金属物理 9 125 1963 256 Improved High-Temperature Microscope and its Metallurgical Application 田岡,大河内 appl. Phys. 2 354 1963 257 金属間化合物ZnSnAs2単結晶の製作とその半導性 増本,磯村 金属学会 28 663 1964 258 Factors Responsible for the Sharp Fatigue Limit in Iron and Steel 吉川,菅野 AIME 233 1314 1965 259 On an Apparent Knee in the S-N Curve of Iron 吉川 Acta Meta. 13 1025 1965 260 Changes in Internal Energy Associated with Recovery and Recry­ stallization in Iron Silicon Alloys and Pure Iron 田岡,鈴木(克), 吉川,岡本 Acta Meta. 13 1311 1965 261 Optical and Electrical Properties and Energy Band Structure of ZnSb 増本,小宮, H.Y. Fan Phys.Pev. 133A1679 1964 262 Electrical Properties of Hot-Pressed Rutile at Room Temperature 坂田(民),石倉 Appl. Rhys. 3 498 1964 263 超高真空電子ビーム蒸着装置 能勢,浅田,田岡 黒田,織田 真 空 9 印刷中 1966 265 Twinning, Slip and Brittle Fracture in Very Low Carbon Iron 本多国際破壊会議(仙台)議事録 Sept. 1965 266 Preferred orientation in recrystallized copper single crystals 吉田(秀),K. Lüke Zeitschrift für Metall Kunde (in press) 267 ニッケル系フェライト薄膜とその磁性 橋本,能勢,木村 応用物理 33 550 1964 268 Gride Band Structures in Iron Single Crystals 武内(朋��) Phys. 20 942 1965 269 The Growth of Large Single Crystals Sheets of the (100) 〔011〕 Orientation from Electrolytic Iron 武内(朋��) J I M 7 1 1966 270 Stress and Delay Time for the Appearance of Twinning Deforma­ tion in Iron Single Crystals 池田(省),武内(朋��)Phys. 20 2152 1965 271 電解鉄を用いた(100)〔011〕方位をもつ大きな単結晶板の成長 武内(朋��) 材料科学 3 39 1966 272 鉄,鉄合金の単結晶作成法 田岡,武内(朋��), 竹内 鉄と鋼 52 187 1966 273 鉄の降伏点 武内(朋��) 金属物理 9 115 1963 274 傾角顕微鏡の金属結晶への応用例 田岡,小笠,古林 竹内 金属学会 30 307 1966 275 Metallurgical Applications of a 500 kV Electron Microscope 藤田,田岡,NRIM E.-M. 500kV EM Group 14 307 1965 276 SMH-5 A 500 kV Electron Microscopes (Ⅰ. Some Characters, Ⅱ. Some Applications for Metallurgical Researh) 田岡,藤田,川崎E.-M. 梶原,岩狭,金谷 NRIM 500 kV EM Groop 14 130 1965 277 500 kV Electron-micrographs of 6.9 Å Lattice Images 藤田,田岡,岩狭 appl. Phys. Letters 金谷,NRIM 500 kV Group (in press) 278 Electron Microscopy of Thin Twins and Stacking Faults 藤田,川崎 appl. Phys, (in press) 1966 279 Stacking Faults in the Martensite of Cu-Al Alloy 西山,柿木,梶原 Phys. 20 1192 1965 280 Shifts of Electron Diffraction Spots of Cu-Al Martensite Transformed in Thim Foils 梶原,藤田 Phys. 21 印刷中 1966 281 フィードバックを使用した空気マイクロメータ 山本 計測制御 2 印刷中 1956 282 ZnSiAs2, ZnGeP2およびCdGeP2各化合物の作製とそれらの半導性 増本,磯村,後藤(逾)金属学会 30 印刷中 1966 283 Cd3As2-Zn3As2系固溶半導体の物理的および電子的性質 増本,磯村,後藤(逾)金属学会 30 投稿中 1966 284 The Preparation and Semiconducting Properties of Single Crystals of ZnSnAs2 Compound B 増本,磯村 P.C.S. 26 163 1965 285 Nb-Sn超電導マグネット線の研究 太刀川,福田(佐) 金属学会 29 1125 1965 286 微小硬さ測定法の改良とその純鉄単結晶板試片の焼入時効への応用 舟久保,岩尾,香山 精機学会 31 836 1965 287 純鉄単結晶の捩��り振動による内部摩擦の測定 舟久保,Gコレット,金属学会 岩尾,郡司 29 1148 1965 製錬•精製 288 純金属の新しい技術(真空還元法) 佐伯 気電化学 30 55 1962 289 四ヨウ化シリコンの製造について 黒沢,柳橋 金属学会 26 122 1962 290 四ヨウ化シリコンの再結晶および精留による精製 黒沢,石川,柳橋 金属学会 26 274 1962 291 四ヨウ化シリコンの水素還元の基礎実験 黒沢,石川,柳橋 金属学会 26 314 1962 292 溶融鉄合金の水素の溶解度 郡司,小野,青木 金属学会 28 59 1964 293 炭化タンタルおよび炭化ニオブの塩素化 佐伯,大森 電気化学 31 410 1963 294 五塩化タンタルのナトリウムおよびマグネシウムによる還元 佐伯,大森 工業化学 66 1233 1963 295 五塩化ニオブのナトリウムおよびマグネシウムによる還元 佐伯,大森,松島 電気化学 31 623 1963 296 五塩化ニオブおよび五塩化タンタルの酸素分解 佐伯,松崎 電気化学 32 667 1964 番号 題 名 著 者 誌 名 巻 頁 年 297 五塩化ニオブおよび五塩化タンタルの加水分解 佐伯,松崎 工業化学 67 874 1964 298 五酸化タンタルの熱転移 佐伯,松崎 工業化学 68 172 1965 299 五酸化ニオブの二,三の性状 佐伯,松崎 電気化学 32 836 1964 300 モリブデンおよびその化合物の塩素化 佐伯,松崎,松島 電気化学 33 151 1965 301 五塩化モリブデンの二,三の熱力学的性質 佐伯,松崎 電気化学 33 151 1965 302 四ヨウ化ケイ素の熱容量および水素還元 黒沢,長谷川,柳橋 金属学会 29 267 1965 303 砂鉄の流動還元に関する研究 田中(稔) 鉄と鋼, Overseas 4 20 1964 304 超高純度金属について 河村 電気化学 33 84 1965 305 Properties of the Titanium prepared by Sodium Reduction Process 舟木,佐伯 T.I.T. No. 64 41 1965 306 三酸モリブデンの塩素化 佐伯,松崎,松島 電気化学 33 659 1965 307 八三塩化ニオブ-アルカリ金属塩化物系について 佐伯,鈴木(正), 八巻 電気化学 33 656 1965 308 Equilibrium between Niobium and Niobium Subchloride in LiCl- KCl Eutectic Melt 佐伯,鈴木(正) L.-C.M 9 362 1965 309 還元ペレットの性状に及ぼす二,三の因子 (還元ペレットの製造に関する研究 第1報) 神谷,大場 鉄と鋼 52 244 1966 310 Recuperación de hierro y otros minerales de lateritas 和田(正),大場 IX Congreso Latinoamericano de Quimica 1965 311 方鉛鉱-キサントゲン酸系の反応 (浮選反応の熱解析的研究 第1報) 和田(正),大場 選研彙報 21 43 1965 312 D2EHPAによる希土類の分離について 河村,武内(丈), 安藤 鉱業会 82 投稿中 1966 313 融解塩クロノポテンシオメトリーとFriction Coefficient 河村 溶解塩 8 641 1965 314 単体ボロンの製造について 明石,河村,湯瀬 久松 溶解塩 6 125 1963 315 V2O3より純金属バナジウムの製造について 竹内,渡辺(治), 渡辺(英) 電気化学 33 713 1965 鉄 鋼 316 熱間押出軸受鋼について 上野,池田(定) 鉄と鋼 46 2377 1960 317 真空溶解した軸受鋼について 上野,池田(定) 鉄と鋼 47 494 1961 318 Mn-Cr鋼の焼戻性について 上野,内山,星野 鉄と鋼 47 453 1961 319 鋼中における炭素の挙動に関する研究 牧口,栗原 320 キュポラ用耐火煉瓦の形状寸法に関する調査取りまとめ結果について 牧口,林 鋳 物 32 364 1960 321 X線マイクロアナライザーによる非金属介在物の同定 内山 鉄と鋼 47 1516 1961 322 超音波ジャックハンマーによる非金属介在物の抽出 内山,野村,上野 鉄と鋼 47 519 1961 324 各種バネ鋼の恒温変態 星野 鉄と鋼 48 571 1962 325 各種バネ鋼の高温における機械的性質 星野 バネ論文 No. 8 1962 326 18Cr-12Ni系オーステナイトステンレス鋼の諸性質におよぼすバナジウ ム,アルミニウム,およびジルコニウムの影響 中川,乙黒 鉄と鋼 47 828 1961 327 18Cr-12Ni系ステンレス鋼の諸性質におよぼす窒素およびボロンの影響 中川,乙黒 鉄と鋼 47 1169 1961 328 Cr-Niステンレス鋼の耐食性におよぼす成分および組織の影響 (ニッケル,モリブデンの影響) 乙黒,中川 鉄と鋼 47 1498 1961 329 Cr-Niステンレス鋼の諸性質におよぼす成分および組織の影響 (銅,窒素の影響) 乙黒,河部,中川 鉄と鋼 48 939 1962 330 マルテンサイト変態前後に塑性変形された410型ステンレス鋼の引張り特 性 細井,K.E. Pinnow Trans. Amer. Soc. Metals. 53 591 1961 331 304型ステンレス鋼の焼鈍硬化におよぼす加工温度の影響 細井 鉄と鋼 47 721 1961 332 Fe-Ni合金のマルテンサイト変態におよぼす塑性および応力の影響 細井,川上 鉄と鋼 48 616 1962 333 マンガンによるN-155系合金の鍛造性改善について 依田,吉田(平), 小池 鉄と鋼 48 498 1962 334 MoSi2発熱体の物理的および機械的材質について 田村 粉末冶金 8 113 1961 335 MoSi2を主体とする電気柢抗発熱体の研究 田村 粉末冶金 8 77 1961 336 TiB2サーメットの研究 田村,武田,八巻 粉末冶金 8 227 1961 337 排気鋳造による鋳巣の減少について 菊地(政) 鋳物33 No. 9別冊18 1961 338 溶解雰囲気の調整による強靱鋳鉄の製造に関する研究 菊地(政),鈴木(康)鋳物34 No. 4別冊 1962 339 バネ鋼の恒温変態について 上野,星野 鉄と鋼, Overseas 2 No. 3 1962 341 Cr-Mo肌焼鋼の恒温変態曲線について 中島,藤井 鉄と鋼 48 1472 1962 番号 題 名 著 者 誌 名 巻 頁 年 341 Si-Mn鋼の焼戻特性 星野 鉄と鋼 48 1447 1962 342 消耗電極式真空アーク炉製弁用耐熱鋼について 荒木(透) 鉄と鋼 48 1411 1962 343 鉛など金属の溶鋼への溶解分散 荒木(透) 鉄と鋼 48 ・ ・ 1962 344 Cr-Ni-Mnステンレス鋼の組織および機械的性質に関する研究 中川,乙黒,河部 鉄と鋼 48 1502 1962 345 Cr-Niステンレス鋼の諸性質におよぼす成分および組織の影響 (Ti, Nbの影響) 中川,乙黒,河部 鉄と鋼 48 1500 1962 346 Cr-Niステンレス鋼の腐食に関する二,三の考察 中川,乙黒,河部 鉄と鋼 49 573 1963 347 18Cr-12Niオーステナイト耐熱鋼のクリープ破断強度におよぼす窒素, ボロン複合添加の影響 河部,中川 鉄と鋼 49 605 1963 348 機械構造用炭素鋼の諸性質におよぼす不純物としてのNi, Crの影響 (焼準材について) 吉松,中川 鉄と鋼 49 529 1963 349 13Cr鋼の衝撃値およびクリープ破断強さにおよぼすオースフォーミング の影響 細井 鉄と鋼 48 1487 1962 350 準安定オーステナイト域における塑性加工が13Cr鋼の二次硬化と耐食性 におよぼす影響 細井 鉄と鋼, Overseas 3 No.l 1963 351 Fe-Ni合金のマルテンサイト変態におよぼす塑性変形および応力の影響 細井,川上 鉄と鋼 48 616 1962 352 原料石炭の性質と加炭現象の関係について 牧口,栗原 鋳物34別冊No. 9 20 1962 353 コークスの構造変化と加炭現象の関係について 牧口,栗原 鋳物34別冊No. 4107 1963 354 溶解雰囲気の調整による強靱鋳鉄の製造に関する研究 菊地(政),鈴木(康) 鋳物34別冊No. 4 1962 355 真空処理した鋳鉄の組織ならびに機械的性質について 菊地(政),生井 鋳物34別冊No. 91 1962 356 真空処理した鋳鉄の性状変化について 菊地(政),生井 鋳物35別冊No. 4 1963 357 放電加工面における異常組織について 六崎,鈴木(正), 河合 金属学会 27 ・ ・ 1963 358 X線マイクロアナライザーとその鉄鋼材料への応用 内山 鉄と鋼 50 794 1964 359 Al脱酸と非金属介在物(鋼中非金属介在物の研究―Ⅴ) 内山 鉄と鋼 49 431 1963 360 Mn脱酸鋼中の介在物の変形(圧延の際の鋼中非金属介在物の変形―Ⅰ) 内山,角田 鉄と鋼 49 1468 1963 361 Cr-Mnバネ鋼の高温機械的性質におよぼす熱処理および添加元素の影響 星野 鉄と鋼 50 649 1964 362 鉄鋼の低温における二,三の機械的性質について 鈴木(正),藤田 鉄と鋼 49 1583 1963 363 鉄鋼材料の放電加工面における変質層 六崎(正),鈴木 (正),河合 金属学会 27 283 1963 364 低炭素鋼の加工硬化,歪時効におよぼす鉛の影響 荒木(透),小柳, 松隈 鉄と鋼 49 1481 1963 365 炭素鋼の捩��り試験特性におよぼす鉛の影響 荒木(透),小柳 鉄と鋼 49 1485 1963 366 含鉛および無鉛低炭素鋼管の冷牽加工度と衝撃遷移温度について 荒木(透),小柳, 大島 鉄と鋼 49 1487 1963 367 快削性非金属介在物を分散する炭素鋼の昇温時の材料強度と異方性につい て 荒木(透),谷地 鉄と鋼 49 1490 1963 368 鋼中に生成する硫化物についての一実験 荒木(透),平井, 谷地 鉄と鋼 49 1461 1963 369 高クロム鋼中に生成する快削性非金属介在物の挙動について 荒木(透),平井, 烏谷,松下 鉄と鋼 49 1463 1963 370 低炭素鋼の衝撃特性におよぼす鉛の影響 荒木(透),小柳 鉄と鋼 50 692 1964 371 冷間または昇温歪をうけた低炭素鋼の2, 3の機械的性質におよぼす鉛の 影響 荒木(透),小柳 鉄と鋼 50 689 1964 372 機械構造用炭素鋼の諸性質におよぼす不純物としてのNi, Crの影響(調 質材について) 吉松,中川 鉄と鋼 50 559 1964 373 5% Cr熱間ダイス鋼のオーステナイト化処理に関する研究 渡辺(敏) 鉄と鋼 50 671 1964 374 Ni-Al時効硬化鋼におよぼすNiおよびAlの影響 金尾,青木 鉄と鋼 50 658 1964 375 18Cr-12Ni系耐熱鋼の高温性質におよぼすB, Mo, Nb, Ti複合添加の 影響 河部,沼田,中川 鉄と鋼 50 729 1964 376 小量のNi, Crを含む構造用低炭素鋼の浸炭性とその性質 荒木(透),倉部, 吉松 鉄と鋼 50 562 1964 377 Cr-Mo肌焼鋼の連続冷却変態図について 中島,荒木(透) 鉄と鋼 49 1498 1963 378 鋳鉄の組織に及ぼす耐火物の材質の影響について 菊池(政),生井 鋳物35別冊No. 9133 1963 379 水ガラスの性質について 牧口 鋳物 3 237 1964 380 減圧下における溶融鉄合金の蒸発速度および坩堝材との反応 郡司,片瀬,青木 鉄と鋼 50 1809 1964 381 Al-O2混合ガスによる高炭素溶融鉄合金の脱炭速度 郡司,片瀬,青木 鉄と鋼 50 1828 1964 382 少量のNi, Crを含む構造用低炭素鋼の被削性について 荒木(透),谷地 鉄と鋼 50 2019 1964 383 少量のNi, Crを含む構造用低炭素鋼の組織の被削性について 荒木(透),谷地, 吉松 鉄と鋼 51 1071 1965 番号 題 名 著 者 誌 名 巻 頁 年 385 低炭素鋼の焼入時効,応力時効,結晶粒度におよぼす鉛の影響 荒木,小柳(透) 鉄と鋼 50 2022 1964 386 低炭素鋼の熱間および冷間加工特性におよぼす鉛の影響 荒木,小柳(透) 鉄と鋼 50 2334 1964 388 含硫鋼の凝固速度と硫化物系介在物の生成についての予備実験 平井,荒木(透), 松隈,小島 鉄と鋼 51 816 1965 389 SiおよびSi-Mn脱酸鋼中の介在物の挙動について 内山,角田 鉄と鋼 50 1870 1964 390 小型介在物周辺の転位の挙動について 内山,角田 鉄と鋼 51 813 1965 392 Nbを含有する低炭素高張力鋼の研究 遠藤,金尾 鉄と鋼 50 2017 1964 394 製造履歴の異なる普通鋼の諸性質におよぼす少量のNi, Crの影響 (鋼の諸性質におよぼす不純金属の影響に関する研究 Ⅲ) 吉松,荒木(透), 中川,三井 鉄と鋼 51 1075 1965 395 含ボロン18Cr-12Niオーステナイト系耐熱鋼のクリープ・ラプチャー強 さにおよぼすTi, Nb, W 量の影響 (オーステナイト耐熱鋼の研究Ⅲ) 河部,中川,沼田 上原 鉄と鋼 51 1003 1965 396 含ボロン18Cr-12Niオーステナイト鋼の析出物および組織について (オーステナイト耐熱鋼の研究Ⅳ) 河部,中川,沼田 上原 鉄と鋼 51 1006 1965 397 フェライト系ニッケル鋼における残留オーステナイトの挙動について 鈴木,藤田 鉄と鋼 50 1957 1964 398 高Mn耐熱鋼の高温特性におよぼすN+Bの影響 依田,吉田(平), 小池 鉄と鋼 51 982 1965 399 減圧下における2,3の元素の蒸発速度 (真空溶解の基礎的研究Ⅲ) 群司,片瀬,青木 鉄と鋼 51 1863 1965 400 液体およびγ鉄合金の相互作用母係数の関係 和田(春),群司, 和田(次) 金属学会 30 投稿中 1966 401 The α/γ equilbrium in the the systems Fe-Mn, Fe-Mo, Fe-Ni, Fe-Sb, and Fe-W M. Hillert, 和田(春),和田(次) JISI 投稿中 1966 402 On the Behavior of Sulphide and Selenide Inclusions Formed in Steel Containing Chromium and Molybdenum 荒木(透),平井, 松下,鳥谷 鉄と鋼 Overseas 5 112 1965 403 含硫鋼の凝固速度と硫化物系介在物の生成についての予備実験 (鋼の凝固速度と鋼塊組織に関する研究Ⅰ ) 平井,荒木,松隈 小島 鉄と鋼 51 816 1965 404 1% Cr鋼の浸炭特性におよぼす微量Mo, Ni, Cuの影響 倉部,荒木(透), 宮地 鉄と鋼 51 1031 1965 405 ガス浸炭窒化層における窒素の拡散におよぼす少量のCr, Moの影響 倉部,荒木(透), 河崎 鉄と鋼 51 2186 1965 406 2,3の超強力鋼の破壊靱性におよぼす電子ビーム溶解の影響 荒木(透),安中, 谷地 鉄と鋼 51 2074 1965 407 低炭素鋼に複合添加した快削性介在物の挙動ならびにその破削性におよぼ す効果ににいて (鋼の被削性と微量元素に関する研究 第3報) 荒木(透),谷地 鉄と鋼 52 投稿中 1966 408 5% Cr熱間ダイス鋼の衝撃値について 渡辺(敏),荒木(透) 鉄と鋼 51 1023 1965 409 5% Cr熱間ダイス鋼の階段焼入れについて 渡辺(敏),荒木(透) 宮地 鉄と鋼 52 投稿中 1966 410 Cr-Mo鋼の浸炭鋼と溶製鋼について 中島,荒木(透) 鉄と鋼 51 1037 1965 411 Cr-Mo鋼のMs付近におけるベイナイト変態について 中島,荒木(透) 鉄と鋼 51 2130 1965 412 FeO系介在物と鋼の疲労 (鋼の疲労性質と介在物に関する基礎的研究Ⅰ ) 角田,内山, 荒木(透) 鉄と鋼 52 651 1966 413 Al脱酸における脱酸生成物の挙動 (鉄鋼中の脱酸生成物の挙動に関する研究Ⅰ ) 内山,斉藤 鉄と鋼 51 1956 1965 414 MnとAlおよびSiとAl各共同脱酸鋼中の介在物の挙動について (圧延の際の鋼中非金属介在物の変形Ⅴ) 内山,角田 鉄と鋼 51 1959 1965 416 Ni-Al時効硬化鋼におよぼす熱処理の影響 金尾,青木 鉄と鋼 51 1097 1965 417 5Ni-2Al系時効硬化鋼の時効挙動 金尾,青木, 荒木(透),沼田 鉄と鋼 52 610 1966 418 ネズミ鋳鉄の溶解条件,特に溶解温度が組織に及ぼす影響 菊地(政),生井 鋳 物 9 715 1965 419 浮遊帯域精製したネズミ鋳鉄の組織観察 菊地(政),生井, 滝沢 鋳 物 9 716 1965 420 可鍛鋳鉄の黒鉛化におよぼす真空処理の影響 生井,菊地(政) 鋳 物 9 788 1965 421 MBCキュポラ用耐火物に関する一考察 牧口,生井 鋳 物 9 738 1965 422 溶銑に対する加炭現象について 栗原,牧口,萩原 鋳 物 9 729 1965 423 Cr-Niステンレス鋼の焼結による収縮特性について 武田,田村 粉末冶金 13 投稿中 1966 424 Liquid Atomizationによる13 Crステンレス鋼粉の製造 田村,武田 粉末冶金 12 25 1965 425 含ボロン18Cr-12Niオーステナイト系耐熱鋼の高温性質,組織におよぼ す熱処理の影響(オーステナイト耐熱鋼の研究 Ⅶ) 河部,中川,向山 鉄と鋼 52 投稿中 1966 番号 題 名 著 者 誌 名 巻 頁 年 426 含ボロン18Cr,2Ni-3Mo系耐熱鋼の高温性質におよぼすC, Ti, Nbの 影響(オーステナイト耐熱鋼の研究 VI) 河部,中川,向山 鉄と鋼 52投稿中 1966 427 含ボロンオーステナイト系耐熱鋼の研究 中川,河部 耐熱金属材料 委研究報告 6 13 1965 428 含窒素18Cr-12Ni系耐熱鋼の高温性質におよぼすMo, Nb, Ti, Bの影響 (オーステナイト耐熱鋼の研究Ⅴ) 河部,中川 鉄と鋼 51 2120 1965 429 高炭素鋼の熱処理特性におよぼす少量のNi, Crの影響について (鋼の諸性質におよぼす不純金属の影響に関する研究Ⅴ) 吉松,荒木(透), 中川 鉄と鋼 52 729 1966 430 SC材の熱入性および不完全焼入組織の機械的性質におよぼす少量のNi, Crの影響 (鋼の諸性質におよぼす不純金属の影響に関する研究Ⅳ) 吉松,荒木(透), 中川 鉄と鋼 51 2008 1965 431 熱間加工における鋼の摩滅に関する研究 (第3報 特殊鋼,耐熱性合金の高温における摩滅について) 辻 機械学会 311646 1965 432 熱間加工用工具材料の耐摩滅性について 辻 塑性加工 7投稿中 1966 433 摩耗変質層に対する一考察(特にX線マイクロアキライザーによる) 辻,山田 機械学会 32投稿中 1966 434 Untersuchung über die Abrasion vom Stahl bei Warmverformung (Teil I Herstellung der Abriebprüfmaschine und die Abrasion der Kohlenstoffstähle bei hoher Temperatur. 辻 JSME 8 572 1965 非鉄金属 435 純クロムの延性に及ぼすPrestrainの効果について 吉田(進),大庭, 永田 金属学会 25 93 1961 436 高融点金属の電子ビーム溶解 津谷,有富 金属学会 25 124 1961 437 電子ビーム溶解したモリブデン鋳塊の靱性について 津谷,有富 金属学会 25 467 1961 438 噴霧法による不規則形状Cu粉末の製造について 田村,武田 粉末冶金 8 220 1961 439 噴霧法によるCu粉末の製造 田村,武田 粉末冶金 9 10 1962 440 白金および白金―ロジウム合金の研究 木村(啓),伊藤(祥) 水曜会誌 14 475 1962 441 酸化ニオブの炭化物還元によるニオブの精錬について 木村(啓),佐々木 金属学会 26 695 1962 442 電子ビーム溶解したモリブデン加工材の靱性について 津谷,有富 金属学会 26 730 1962 443 Ni-Al2O3型分散強化合金の焼鈍とクリープ 高橋(仙),足立 金属学会 30 10 1966 444 亜鉛ダイカストの統計的研究 有本,渡辺(幸), 牧口 鋳 物 4 316 1965 445 銅-ハフニウム合金の研究 渡辺(亮) 金属学会 30 投稿中 1966 446 Short Range Order in Copper-Aluminium Alloys 松尾,L.M. Clarebrough Acta.Met.11 1195 1963 447 金属ベリリウム板の延性ぜい性遷移挙動の異方性 津谷 金属学会 30 372 1966 448 亜鉛ダイカストの性質に及ぼす離型剤の影響 有本,渡辺(幸) 鋳 物 9 887 1965 449 溶融塩電解精製法による不純チタンの高純度化およびその機械的性質につ いて 竹内,渡辺(治) 金属学会 29 263 1965 450 噴霧黄銅粉の焼結 田村,鰐川,武田 粉末冶金 13 投稿中 1966 451 再結晶におよぼす鋳造温度の影響 (Al-Zr合金に関する研究 第1報) 荒木(喬),小森 軽金属 15 348 1965 452 再結晶におよぼす質量効果の影響 (Al-Zr合金に関する研究 第2報) 荒木(喬),小森 軽金属 15 354 1965 453 連続鋳造によるAl-0.23% Zr合金の再結晶におよぼす熱処理の影響 (Al-Zr合金に関する研究 第3報) 荒木(喬),小森 軽金属 16 59 1966 加 工 454 ダイナパックの力学 武内(朋��) 塑性加工 3 255 1962 455 鋼の熱間衝撃押出過程の考察 河田,鈴木(正), 鉄と鋼 49 493 1963 武内(朋��).池田(定),隈部 456 熱間衝撃押出をおこなった鋼の組織と機械的性質 鈴木(正),池田 (定),隈部,河田 鉄と鋼 49 495 1963 457 鋼の衝撃押出し 河田,鈴木(正), 池田(定),隈部 鉄と鋼 50 2048 1964 458 Some Experiments and Dynamical Considerations on Impact Extrusion 河田,鈴木(正), 武内(朋��)池田(定), C.I.R.P. 予稿 1965 番号 題 名 著 者 誌 名 巻 頁 年 隈部,田頭 459 Hot Impact Extrusion of Steel 河田,鈴木(正), 武内(朋��) 池田(定),隈部 鉄と鋼 overseas 5 123 1965 460 金属材料の高速変形 武内(朋��) 金属学会 4 136 1965 溶 接 462 80kg/mm2構造用高張力鋼のT型すみ肉割れ試験による二,三の実験 鈴木(春),中村 (治),須清 溶接学会 30 153 1961 463 純ジルコニウムの可変雰囲気溶接に関する研究 鈴木(春),橋本, 松田,塚本,永吉 溶接学会 30 341 1961 464 ジルコニウムおよびジルカロイ-2合金の点溶接に関する研究 鈴木(春),橋本, 松田,田沼 溶接学会 30 418 1961 465 エレクトロスラグ溶接の研究(その1) 鈴木(春),蓮井, 永尾 溶接学会 30 651 1961 466 ジルカロイ―2合金の可変雰囲気溶接に関する研究 鈴木(春),橋本, 松田 溶接学会 30 551 1961 467 ジルコニウムおよびジルカロイ―2合金の電子ビーム溶接に関する研究 鈴木(春),橋本, 松田 溶接学会 31 44 1962 468 エレクトロスラグ溶接の研究(その2) 鈴木(春),蓮井, 永尾 溶接学会 31 216 1962 469 磁気駆動アークによるパイプ突合せ溶接 鈴木(春),蓮井, 福島(貞) 溶接学会 31 227 1962 470 2H-Ultra, 2H-Super 鋼の溶接用 CCT 図 稲垣,宇田 溶接学会 31 244 1962 471 原子炉用高張力鋼の溶接用CCT図 稲垣,宇田 溶接学会 31 245 1962 472 エレクトロスラグ溶接部のCCT図とその性質について 鈴木(春),稲垣, 宇田,永尾 溶接学会 31 246 1962 473 溶接金属の物理冶金的研究 木原,鈴木(春), 稲垣,高木,下山 溶接学会 31 247 1962 474 工業用純チタニウムの溶接雰囲気が,溶接結果におよぼす影響 鈴木(春),橋本, 松田 溶接学会 31 54 1962 475 原子炉用ステンレスクラッド鋼溶接継手の高温における応力破壊に関する 研究 鈴木(春),稲垣, 馬田,高木 材料試験 10 137 1961 476 Weld Cracking Tests of High Strength Steel and Electrodes 木原,鈴木(春), 中村(治) Weld. J. 41 No.1 36S Res. Suppl 1962 477 Comparison of Reproducibility in Three Types of Hot Cracking Tests-Stainless Steel 鈴木(春),中村 (治) IIW,Doc. Ⅱ-171-611 1961 478 各種高張力鋼の溶接用CCT試験結果とy開先拘束割れ試験結果の対応に ついて 鈴木(春),稲垣, 宇田,中村(治) 溶接学会 31 621 1962 479 点溶接現象に関する研究(第1報) 橋本,田沼 溶接学会 31 711 1962 480 摩擦溶接に関する研究(その1) 鈴木(春),蓮井, 福島(貞) 溶接学会 31 687 1962 481 プラズマジェットの性質(その2) 蓮井,笠原,江森 飯吉 機械学会 別冊 101 1962 482 プラズマジェットによる溶射の研究(その1) 蓮井,島岡,北原 武井 溶接学会 31 698 1962 483 国産HY80鋼溶接用再現熱影響部CCT図 木原,鈴木(春), 稲垣,高木,鈴木 (和),下山 溶接学会 31 620 1962 484 溶接金属の物理冶金的研究(第2報) 木原,鈴木(春), 稲垣,高木,鈴木 (和),下山 溶接学会 31 622 1962 485 原子炉用60キロ級高張力鋼の溶接部の長時間加熱による材質の変化 稲垣,岡根,鈴木 (春) 溶接学会 32 935 1963 486 原子炉用厚板高張力鋼SH-CCT図とその検討 稲垣,宇田 溶接学会 32 287 1963 487 プラズマジェットによる溶射の研究(その2) 蓮井,島岡,北原 武井 溶接学会 32 312 1963 488 プラズマジェット溶接ならびに肉盛の研究(1) 蓮井,北原 溶接学会 32 906 1963 489 プラズマジェットによる肉盛の研究(2) 蓮井,星,長尾 溶接学会 32 907 1963 番号 題 名 著 者 誌 名 巻 頁 年 490 高張力鋼溶接熱サイクル再現試験片の水素による遅れ破壊試験 鈴木(春),稲垣, 中村(治) 溶接学会 32 278 1963 491 局部予熱法による高張力鋼溶接部のルート割れ防止方法について 鈴木(春),稲垣, 中村(治) 溶接学会 32 279 1963 492 各種高張力鋼溶接部のTRC試験結果 稲垣,中村(治), 鈴木(春) 溶接学会 32 874 1963 493 アーク溶解時の窒素溶解量に関する基礎的研究 稲垣,和田,宇田 溶接学会 33 292 1964 494 プラズマジェットによる肉盛の研究(3) 蓮井 溶接学会 33 322 1964 495 プラズマジェットによる溶射の研究(その4) 蓮井,北原,東 溶接学会 33 323 1964 496 摩擦溶接に関する研究(その3) 蓮井,福島(貞) 溶接学会 33 327 1964 497 電子ビーム溶接ビードの冷却過程と構造用鋼の硬化度の予測について 橋本,松田 溶接学会 33 918 1964 598 プラズマジェットによる溶射の研究(その5) 蓮井,北原,東 溶接学会 33 832 1964 499 被覆アーク溶接にらびにサブマージアーク溶接における冷却 過程について(構造用鋼のアーク溶接時における溶接部の冷却過程に関す る研究第1報) 稲垣,中村(治), 岡田 溶接学会 34 1064 1965 500 ルート割れと高張力鋼溶接部組織の関係について 稲垣,中村(治), 鈴木(春) 溶接学会 34 875 1965 501 各種高張力鋼溶接部のTRC試験結果と水素の影響について 稲垣,中村(治), 鈴木(春) 溶接学会 34 801 1965 502 鋼溶接時の低温割れについて 稲垣,中村(治), 高圧力 3 592 1965 503 高張力鋼溶接熱サイクル再現試験片の水素による遅れ破壊試験 鈴木(春),稲垣, 中村(治) 溶接学会 32 278 1963 504 溶接熱サイクル再現試験片の水素による遅れ破壊試験 稲垣,中村(治) 溶接協会UH委 第1分科会報告 1 1964 505 溶接熱サイクル再現試験片の水素による遅れ破壊試験 稲垣,中村(治), 溶接協会9N 委報告 1 1965 506 100キロ高張力鋼多層溶接継手の溶接線方向TRC試験結果 稲垣,中村(治) 中原,三谷 溶接学会 34 152 1965 507 100キロ高張力鋼多層溶接継手の溶接線直角方向TRC試験結果 稲垣,中村(治), 中原,三谷 溶接学会 34 153 1965 508 Effects of Restraining Force on Root Cracking of High Strength Steel Welds 鈴木(春),稲垣, 中村(治) Weld. Res.11 Abroad 61 1965 509 再現熱影響部の高温性能試験による破断様相の解析(原子炉用HT 70鋼 大型溶接継手のクリープラプチャに関する研究 第2報) 岡根 溶接学会 34 903 1965 510 CO基合金の定荷重熱疲れ特性について 稲垣,岡根 機械学会 32 371 1966 511 材技研試作高張力鋼の溶接試験結果 稲垣,中村(治), 宇田 材技研高張力 鋼委資料 1964 512 アーク溶解時における溶融Fe-Cr合金中への窒素溶解量について 稲垣,和田(次), 宇田 溶接冶金 20回 1965 513 超高張力鋼の溶接熱影響部の治金的検討 稲垣,春日井 溶接協会UH委資料 1965 514 材技研開発高張力鋼の溶接用SH-CCT図の作成 稲垣,春日井 材技研高張力鋼委資 料 1965 515 溶接用CCT試片による溶接影響部組織変化の検討 稲垣,春日井, 溶接協会,9N委資料 1965 516 超高張力鋼溶接用SH-CCT図の作成 稲垣,宇田 溶接協会UH委第2 分科会資料 1962 517 プラスマジェトによる溶射の研究 蓮井,北原 溶射協会 1 18 1964 表面処理・腐食 518 金属研摩面の構造(電子回折による研究) 島岡 表面技術 11 361 1960 519 高温における金属とガスとの反応研究のための電子回折試料装置とその応 用 Suppl.B2 1962 Proceedings of International Conference on Magnetism and Crystallography 1961 島岡 Phys. 17 520 ステンレス鋼の個々の結晶粒上に生成した酸化膜の構造 島岡 Electrochem 108 169 C 1961 521 Cu-Ni合金の清浄表面の触媒活性におよぼすアルゴンイオン衝撃および 焼鈍の効果 山科,H.E. Farnsworth 触 媒 4 312 1962 522 Cu-Ni合金の酸化速度におよぼす酸化皮膜の焼鈍の効果 山科,長松谷 電気化学 31 ・ ・ 1963 523 放電硬化法 鈴木(正) 鉄と鋼 48 50 1962 524 硫酸―ジカルボン酸電解液によるAlの硬質陽極酸化 伊藤(伍),津田 表面技術 17 41 1966 525 原子炉用マグネシウム合金の炭酸ガスによる腐食 伊藤(伍),池田, 大橋 軽金属 15 32 1965 番号 題 名 著 者 誌 名 巻 頁 年 526 自動制御方式による配管系の陰極防食 小林(豊),中内, 栂野 防触技術 13 457 1964 527 ニッケル表面の酸化物異常結晶について 島岡,高石,新居 金属学会 29 321 1965 528 淡水中における軟鋼の防食電位(鉄鋼の陰極防食基準に関する研究第1報) 小林,中内,重野 電 化 30 495 1965 529 LPガス貯蔵タンク用材料の硫化物割れに関する冶金学的研究 腐食,防食研究部 溶接研究部 LPG貯蔵タンク保安対策 研究報告書1964 分析・試験 530 オキシン有機溶剤抽出法によるバナジウムの炎光定量(有機溶剤抽出法に よる炎光分光分析法の研究 第6報) 須藤,後藤 分析化学 10 1213 1961 531 高純度クロム中のリンの定量 柳原,俣野,川瀬 小川 分析化学 10 467 1961 532 高純度クロム中の鉄の定量 柳原,俣野,川瀬 分析化学 10 414 1961 533 高純度クロム中の銅の定量 柳原,俣野,川瀬 分析化学 11 108 1962 534 高純度テルル中の銅の定量 俣野,川瀬 分析化学 11 346 1962 535 希土類元素の定量法の研究(第1報) 須藤,高橋(起) 分析化学 13 343 1964 536 高純度クロム中のスズの定量 川瀬,小川 分析化学 11 1155 1962 537 O-(2-チアゾリルアゾ)-フェノ ール誘導体の合成と金属イオンの反応 川瀬 分析化学 11 621 1962 538 O-(2-チアゾリルアゾ)-フェノ ール誘導体による銅の定量 川瀬 分析化学 11 628 1962 539 高純度クロム中のアルミニウムの定量 川瀬 分析化学 11 844 1962 540 高純度テルル中の鉛の定量 川瀬 分析化学 11 1162 1962 543 高温強度におよぼす熱処理の影響(17-10Pステンレス鋼の性質) 山崎 材料試験 12 211 1963 544 超音波減衰定数の絶対値における二,三の問題点 木村(勝),松本 非破壊 11 231 1962 545 ラダックによる冷間圧延鋼板の焼鈍状態の試験 伊藤(秀),木村(勝) 非破壊 11 238 1962 546 ポーラログラフ法による鉄鋼中のスズの定量 須藤,小川 金属学会 28 421 1964 547 アルゴン気流中における鉄鋼の発光分光分析 高橋(務) 分光研究 12 224 1964 548 金属クロム中の窒素クロムの定量 柳原,俣野,福田 金属学会 27 152 1963 549 珪素鋼中の窒化珪素定量法 柳原,福田(豊) 金属学会 27 156 1963 550 O-(2 -チアゾリルアゾ)フェノール誘導体によるニッケルの定量 川瀬 分析化学 12 810 1963 551 O-(2-チアゾリルアゾ)フェノルー誘導体によるコバルト(Ⅱ)の定量 川瀬 分析化学 12 817 1963 552 O-(2 -チアゾリルアゾ)フェノール誘導体によるコバルト(Ⅲ)の定量 川瀬 分析化学 12 904 1963 553 4-(2-チアゾリルアゾ)-1-ナフトール誘導体の合成と金属イオンとの反応 川瀬 分析化学 12 709 1963 554 4-(2-チアゾリルアゾ)-1-ナフトールによるパラジウムの定量 川瀬 分析化学 12 714 1963 555 O-(2-チアゾリルアゾ)フェノール化合物および金属キレート化合物の赤 外吸収スペクトル 川瀬 分析化学 13 609 1964 556 高純度クロム中のニッケルの定量 川瀬 分析化学 13 609 1964 557 電磁石を用いた磁気飽和装置について 伊藤(秀),木村(勝) 非破壊 12 196 1963 558 炭素鋼の淡水中腐食疲れのS-N曲線について 岩元 機械学会 30 212 1964 559 O-(2-チアゾリルアゾ)フェノ ール化合物の金属キレート生成定数 川瀬 分析化学 13 553 1964 560 X線マイクロアナライザーの実際的応用 高石 結晶学会 6 26 1964 561 スパーク放電の電極消耗量(Ⅱ雰囲気ガスの影響) 高橋(務),吉野 分光研究 14 113 1965 562 E.P.M.A.によるX線マイクロアナリシス 鈴木(高石) 日仏工業 技術 8 23 1962 Ⅲ TRANSACTIONS OF NATIONAL RESEARCH INSTITUTE FOR METALS Vol. 3 (No. 2 : p. 81~p. 122) 563. Silicon-Oxygen Equilibrium in Molten Iron S. MATOBA, K. GUNJI, T. KUWANA 81 564. Mechanical Properties of Isothermally Transformed Manganese- Chromium Spring Steel M. UENO, I. UCHIYAMA, A. HOSHINO 99 565. Effect of Molybdenum on Properties of 18 Chromium-12 Nickel Austenitic Stainless Steels R. NAKAGAWA, Y. OTOGURO 99 566. Study on Cobalt-Base Heat-Resisting Alloy (Ⅱ) R. YODA, T. WATANABE, K. KAWAGOE 105 567. The Niobium-Carbon System H. KIMURA, Y. SASAKI 111 Vol. 4 (No. 1 : p. 1~p. 54, No. 2 : p. 55~p. 121, No. 3 : p. 122~p. 158, No. 4 : p. 159~p. 218) 568. Velocity of Slowly Moving Dislocation T. TAKEUCHI 1 569. Cleavage Fracture in Single Crystals of Silicon Iron R. HONDA 4 570. Effects of Tungsten on Properties of 18 Chromium-12 Nickel Austenitic Stainless Steels R. NAKAGAWA, Y. OTOGURO 16 571. The Effect of Prestraning on the Ductility of Pure Chromium S. YOSHIDA, Y. OHBA, N. NAGATA 22 572. The Reduction of SiCl4, with Hydrogen in the Electric Field T. KUROSAWA, J. MINAMIYA 28 573. Studies of the Corrosion of Aluminium and Its Alloys for Nuclear Reactor (Ⅰ) G. ITO, Y. SHIMIZU, F. SAWAYANAGI 36 574. Studies of the Corrosion of Aluminium and Its Alloys for Nuclear Reactor (Ⅱ) G. ITO, Y. SHIMIZU, F. SAWAYANAGI 48 575. The Temperability of the Maganese-Spring Cromium Steel M. UENO, I. UCHIYAMA, A. HOSHINO 55 576. The Effect of Vanadium on Properties of 18 Chromium-12 Nickel Austenitic Stainless Steels R. NAKAGAWA, Y. OTOGURO 64 577. Electron Beam Melting of Molybdenum K. TSUYA, N. ARITOMI 70 578. On the Formation of Stress-Induced Martensite in Titanium- Aluminium-Cobalt Alloys M. ADACHI, T. TSUJIMOTO 78 579. The Effect of Ultrasonic Vibrations during Solidification of Light Metals T. ARAKI 89 580. Sintering of MoSi2 Heating Element and Its Application K. TAMURA 97 581. Approximate Calculation of Flaw Echo Height in Ultrasonic Pulse Echo Method K. KIMURA 104 582. Determination of Trace Amounts of Lead in High Purity Metals N. MATANO, A. KAWASE 111 583. Determination of Trace Amounts of Copper in Thorium N. MATANO. A. KAWASE 117 584. Effects of Aluminium and Zirconium on Properties of 18 Chronium-12 Nickel Austenitic Stainless Steels R. NAKAGAWA, Y. OTOGURO 122 585. On the Mechanical Properties and Structures of Quenched Titanium-Aluminium-Cobalt Alloys M. ADACHI, T. TSUJIMOTO 129 586. Untersuchung von Walzölen und Walzölemulsionen im Kaltwalzversuch E. TSUJI, W. LUEG, P. FUNKE 135 587. Study on the Application of Radiochemical Methods to the Analysis of Metals (Ⅰ) (Activation Analysis of Impurities in the Metallic Silicon of High Purity) M. CHIBA 143 588. Determination of Iron (Ⅱ) with 2-(2-Hydroxy-5-Methoxypheny lazo)-4-Methylthiazole (Studies on 2-(2-Hydroxy-5- Methoxyphenylazo)-4-Methylthiazole as an Analytical Reagent (Ⅴ)) N. MATANO, A. KAWASE 151 589. Electrical Resistivity of Semiconductive Titanium Dioxide between 2°K and 80°K R. R. HASIGUTI, K. MINAMI, H. YONEMITSU 155 590. Activation Energy of Bordoni Peak and Its Relation to Peierls Stress T. TAKEUCHI 159 591. On the Creep-Rupture Strength of Nimonic 100 Type Alloys (Study on Nickel-Base Heat-Resisting Alloy (Ⅱ)) R. YODA, S. TAKAHASHI, Y. SATŌ 165 592. On the Aging Behaviour and Mechanical Properties in Titanium- Aluminium-Cobalt Alloys M. ADACHI, T. TSUJIMOTO 174 593. Weldability of High Strength Steels Evaluated by Synthetic Heat- Affected Zone Ductility Test H. SUZUKI, H. TAMURA 181 594. High Temperature Oxidation of 100-68 Percent Nickel-Copper Alloys T. YAMASHINA, N. SATŌ, H. KOBAYASHI 181 595. On the Effects of Welding on the Corrosion Resistance of Zircaloy in High Temperature Water G. ITO, Y. SHIMIZU, T. HASHIMOTO, F. MATSUDA, F. SAWAYANAGI, T. TERAO 197 596. Effects of Heat Treatment of High Temperature Strength of 17- 10P Stainless Steel M. YAMAZAKI 203 597. Determination of Iron, Copper, Zinc and Cobalt in High Purity Chromium and Thorium Nitrate N. MATANO, A. KAWASE 212 Vol. 5 (No. 1 : p. 1~p. 33, No. 2 : p. 34 ~p. 77, No. 3 : p. 78~p. 128, No. 4 : p. 129~p. 170, No. 5 : p. 171~p. 258, No. 6: p. 259~p. 309) 598. The Extraction of Nonmetallic Inclusions in Steels by Ultrasonic Jack Hammer I. UCHIYAMA, M. NOMURA, M. UENO 1 599. Etude de l'Augmentation Transitoire de Frottement Intérieur Observée sur des Cuivres de Diflérentes Puretés après Recuit et Trempe H. FUNAKUBO, G. COLLETTE 7 600. Catalytic Activity of Copper-Nickel Alloys as a Function of Argon- Iron Bombardment Current and Annealing T. YAMASHINA, H.E. FARNSWORTH 16 601. Statistical Study on Creep-Rupture Test of 18 Cromium―8 Nickel Stainless Steels R. NAKAGAWA, Y. OTOGURO 22 602. Determination of Iron in High Purity Chromium (Chemical Analysis of Chromium (Ⅳ)) N. MATANO, A. KAWASE 27 603. Thermoelectric Properties of Chromium and Cobalt-Silicide T. SAKATA, T. TOKUSHIMA 34 604. Effect of Deformation in the Metastable Austenite Condition on the Corrosion Resistance of 13 Percent Chromium Stainless Steel Y. HOSOI 49 605. Vacuum Melted Bearing Steels H. NAKAJIMA, S. IKEDA, M. UENO 55 606. Preparation of Pure Silicon by the Iodide Process (Ⅰ) (Pre­ paration of Silicon Tetraiodide) T. KUROSAWA, T. YAGIHASHI 61 607. Purification of Silicon Tetraiodide by Recrystallization and Distil­ lation Methods (Preparation of Pure Silicon by the Iodide Process (Ⅱ) T. KUROSAWA, T. ISHIKAWA, T. YAGIHASHI 67 608. Fundamental Experiment of Hydrogen Reduction of Silicon Tetraiodide (Preparation of Pure Silicon by the Iodide Process (Ⅲ)) T. KUROSAWA, T. ISHIKAWA, T. YAGIHASHI 72 609. The Tensile Properties of Type 410 Stainless Steel Deformed be­ fore and after Martensite Transformation Y. HOSOI, K.E. PINNOW 78 610. Effect of Deformation in the Metastable Austenite Condition on the Secondary Hardening of 13 Percent Chromium Stain­ less Steel Y. HOSOI 85 611. Observations on the Dissolution and Dispersion Phenomena of Lead in Molten Steel T. ARAKI 91 612. Evaluation of Notch Toughness of Weld Heat-Affected Zone in High Strength Steels using a Synthetic Apparatus for Weld Thermal Cycles H. SUZUKI, H. TAMURA 96 613. Effects of Restraining Force on Root Cracking of High Strength Steel Welds H. SUZUKI, M. INAGAKI, H. NAKAMURA 107 614. On the Effect of Composition of Zircaloy on its Corrosion Re­ sistance in High Temperature Water G. ITO, R. R. HASHIGUTI, M. HASEGAWA, Y. MISHIMA, F. SAWAYANAGI, Y. SHIMIZU 115 615. Studies on Flame Photometry by Organic Solvent Extraction Method Ⅰ (Determination of Magnesium by Methyl Isobutyl Ketone Extraction of Oxinate) E. SUDO, H. GOTO 120 616. Flame Photometric Determination of Calcium by Extraction with Methyl Isobutyl Ketone (Studies on Flame Photometry by Organic Solvent Extraction Method Ⅱ) E. SUDO, H. GOTO 124 617. The Effects of Nitrogen and Boron on Properties of 18 Chromium- 12 Nickel Stainless Steels R. NAKAGAWA, Y. OTOGURO 129 618. Effect of Manganese on High-Temperature Properties of N-155 Alloy R. YODA, H. YOSHIDA, Y. SATO 135 619. On the Ductility of Electron Beam Melted Molybdenum K. TSUYA, N. ARITOMI 146 620. Determination of Manganese and Copper by Oxine-Organic Solvent Extraction Method (Studies on Flame Photometry by Organic Solvent Extraction Method Ⅲ) E. SUDO, H. GOTO 151 621. Determination of Titanium, Gallium and Indium by Extraction of Their Oxinates with Organic Solvent (Studies on Flame Photometry by Organic Solvent Extraction Method Ⅳ) E. SUDO, H. GOTO 158 622. Determination of Nickel and Cobalt by Extraction of Their Oxinate with Organic Solvent (Studies on Flame Photo­ metry by Organic Solvent Extraction Method Ⅴ) E. SUDO, H. GOTO 166 623. Yield Points and Transient Creeps in Polycrystalline Iron of Very Low Carbon Content T. TAKEUCHI, S. IKEDA 171 624. Improved High-Temperature Microscope and Its Metallurgical Applications T. TAOKA, M. OHKOHCHI 179 625. Study on Dispersed Lead Inclusions in Steel Ingot T. ARAKI 188 626. Effect of Composition and Structures on Mechanical Properties of Chromium-Nickel Stainless Steels (Effect of Ni and Mo) R. NAKAGAWA, Y. OTOGURO 194 627. Effects of Additional Elements on the High-Temperature Pro­ perties of Cobalt-Base Alloys (Study on Cobalt-Resisting Alloys (Ⅲ)) R. YODA, T. WATANABE, K. KAWAGOE 201 628. On the Vacuum Reduction Process for the Production of Niobium Metal H. KIMURA, Y. SASAKI 213 629. The Fundamental Experiments of Thermal Decompositions and Hydrogen Reduction of Trichlorosilane (The Preperation of High Purity Silicon (Ⅱ)) T. YAGIHASHI, T. KUROSAWA, T. WADA 219 630. The Experiments on Fractional Distillation and Infrared Absorp­ tion Spectrum of Trichlorosilane (The Preparation of High Purity Silicon (Ⅲ)) T. YAGIHASHI, T. KUROSAWA, T. WADA 227 631. The Large Scale Experiment on the Preparation of High Purity Silicon by Hydrogen Reduction of Trichlorosilane (The Preparation of High Purity Silicon (Ⅳ)) T. YAGIHASHI, T. KUROSAWA, T. WADA 235 632. Relation between Condition of Hydrogen Reduction of Trichlo­ rosilane and Pulled Single Crystals (The Preparation of High Purity Silicon (Ⅴ)) T. YAGIHASHI, T. KUROSAWA, T. WADA 242 633. Preparation of CrSi2 and Some Properties of the Product K. TAMURA, T. TAKEDA, Y. MURAMATSU 248 634. A Study on Production of Copper Powder by Atomization K. TAMURA, T. TAKEDA 252 635. The Partition of Alloying Elements between Phases and the Re­ lation between the Amount of δ Ferrite and Magnetic Properties Chromium-Nickel Stainless Steels R. NAKAGAWA, Y. OTOGURO, Y. KAWABE 259 636. On the Mechanical Properties of Dispersion Strengthened Ni- Al2O3 Alloys M. ADACHI, S. TAKAHASHI, H. HAYASHI 267 637. On the Arc Reduction Process for the Production of Crude Niobium Metal H. KIMURA, K. SASAKI 274 638. Production Experiment by Hydrogen Reduction of Silicon Tetraiodide and its Behaviours (Preparation of Pure Silicon by the Iodide Process (Ⅳ)) T. KUROSAWA, T. YAGIHASHI 280 639. The Determination of Silicon Nitride (Si3N4) in Silicon Steel by Electrolytic Method T. YANAGIHARA, Y. FUKUDA 286 640. Results of Fatigue Tests using Several Types of Testing Machines S. NISHIJIMA 291 641. Cylindrical Surface Echo in the Ultrasonic flaw Detection of Round Bars K. KIMURA 301 Vol. 6 (No. 1 : p. 1~p. 42, No. 2 ・ p. 43~p. 95, No. 3: p. 96~p. 152, No. 4 : p. 153~p. 201, No. 5 : p. 202~p. 347, No. 6: p. 348~p. 430) 642. Low Temperature Creeps and Delay Times in Iron of Very Low Carbon Content T. TAKEUCHI, S. IKEDA 1 643. Effects of Composition and Structural Conditions on Corrosion Resistance of Cr-Ni Stainless Steels (Effect of Ni and Mo additions) R. NAKAGAWA. Y. OTOGURO, Y. KAWABE 7 644. On the Formability of the Quenched Titanium-Aluminium- Cobalt Alloys T. TSUJIMOTO, M. ADACHI 13 645. On Preparation of WSi2 and Effect of Oxide Additions K. TAMURA, Y. MURAMATSU 20 646. On the Characteristics of Electron-beam Current in Electron­ beam Welding (Studies on Electron-beam Welding (Ⅰ)) T. HASHIMOTO, F. MATSUDA, H. SUZUKI 26 647. The Effect of Radiographically Detected Porosity on the Fatigue Strength of Butt Welded Joints S. YOKOI 34 648. Austenite Loop in Iron-Titanium System T. WADA 43 649. Some Observasions on the Problems for Studying Nommetallic Inclusions Steel T. ARAKI 47 650. Effects of Cu, N, Mn and Al Additions on Structures and Pro­ perties of Cr-Ni Stainless Steels R. NAKAGAWA, Y. OTOGURO, Y. KAWABE 54 651. Improvement in Forgeability of N-155 Type Alloys by Addition of Manganese R. YODA, H. YOSHIDA, K. KOIKE 64 652. Preparation of Titanium from Titanium Tetrachloride by Sodium Reduction Process Y. SAEKI, K. FUNAKI 73 653. Studies on Properties and Reduction of Manganese Ores T. YAGIHASHI, K. ASADA, K. ATARASHIYA, S. ICHINOHE, H. HANADA 80 654. Determination of Copper and Zinc in High Purity Chromium by Square Wave Polarography (Chemical Analysis of High Purity Chromium (Ⅲ)) N. MATANO, A. KAWASE 89 655. Interaction Parameters of Alloying Elements in Molten Iron H. WADA 96 656. Effects of Alloying Elements on the Transformation of Steels T. WADA 113 657. Identification of Nonmetallic Inclusions in Steel with X-ray Microanalyser I. UCHIYAMA 119 658. A Study on Structures and Mechanical Properties of Cr-Ni-Mn Stainless Steels R. NAKAGAWA, Y. OTOGURO, Y. KAWABE 126 659. The Effects of Chromium and Molybdenum Addition on the Magnetic Properties of High Permeability Iron-Alumi- nium Alloys I. MORIMOTO, H. MAEDA 133 660. The Effects of Heat Treatment on the Magnetic Properties of Fe-Al-Mo Alloys I. MORIMOTO, H. MAEDA 138 661. Magnetic Properties of Mo-Permalloy produced by Powder Rolling I. MORIMOTO, H. MAEDA 144 662. Residual Deformation during Transformation of Iron and Iron Alloys T. WADA 153 663. Slip Systems and Their Critical Stresses in 3% Silicon Iron T. TAOKA, S. TAKEUCHI, E. FURUBAYASHI 157 664. Electron Microscope Observation on Tensile Fracture Surface of Prestrained Pure Chromium S. YOSHIDA, Y. OHBA, N. NAGATA 166 665. A study on the Zirconium Alloys for Nuclear Reactor with High Strength at Elevated Temperatures G. ITO, R. HASHIGUCHI, M. HASEGAWA, Y. MISHIMA, F. SAWAYANAGI, Y. SHIMIZU 173 666. The Relation between the Rate of Dissolution and the Surface Area (Study on Zinc-Ferrite (Ⅱ)) K. Nii, Y. HISAMATSU 178 667. Effects of Restraint and Hydrogen on Root Cracking of High Strength Steel Welds (NRIM TRC Test) M. INAGAKI, H. NAKAMURA, H. SUZUKI 183 668. Determination of Phosphorus in High Purity Chromium (Chemi­ cal Analysis of Chromium (Ⅴ)) N. MATANO, A. KAWASE, H. OGAWA 196 669. Solubility of Hydrogen in Liquid Pure Iron K. GUNJI, S. MATOBA, K. ONO 202 670. The Effect of Various Elements on the Solubility of Hydrogen in Liquid Pure Iron K. GUNJI, K. ONO, Y. AOKI 209 671. Equilibrium of the 2Al(l)4-AlCl3(g) = 3AlCl(g) Reaction in the Subhalide Process of Aluminum (Study of Extractive Metallurgy of Aluminium (Ⅰ)) T. KIKUCHI, T. KUROSAWA, T. YAGIHASHI 214 672. Thermochemical Properties of Niobium Oxytrichloride T. SUZUKI, T. MATSUSHIMA, Y. SAEKI 222 673. The Effects of Cold Working and Low Temperature Annealing on the Properties of 18Cr-12Ni Stainless Steel I. MORIMOTO, T. SUZUKI, M. HIJIKATA 226 674. Structures and Effect of Cold Working on the Creep Rupture Properties of Dispersion Strengthened Ni-Al2O3 Alloys S. TAKAHASHI, K, IIDA, M. ADACHI 231 675. Electron-Beam Welders in N.R.I.M. and These Electrical Charac­ teristics (Studies on Electron-Beam Welding (Ⅱ)) T. HASHIMOTO, F. MATSUDA 238 676. A Study of Impact Extrusion at Constant Speeds S. YOSHIDA, T. TAKEUCHI, N. NAGATA 348 677. Dynamics of Impact Extrusion (Studies on Impact Extrusion (Ⅰ)) T. KAWADA, T. TAKEUCHI, T. KUMABE 355 678. Impact Extrusion of Aluminium (Studies on Impact Extrusion (Ⅱ)) T. KAWADA, T. TAKEUCHI, S. IKEDA, T. KUMABE 361 679. Inclusion Behaviours and Elevated Temperature Characteristics of Carbon Steels Dispersed with Free-cutting Metallics, Lead, Silver and Bismuth T. ARAKI, S. YACHI 370 680. Creep of Dispersion Strengthened Ni-Al2O3 Alloys S. TAKAHASHI, K. IIDA, M. ADACHI 376 681. Preparation of ZrSi2 and Some Properties of the Products K. TAMURA, Y. MURAMATSU 381 682. A New Apparatus for Determining SH-CCT Diagram for Weld­ ing and its Application to High Strength Steels M. INAGAKI, M. UTA, T. WADA 386 683. Effects of Microstructure on Root Cracking in High Strength Steels Welds and Behaviour of Hydrogen M. INAGAKI, H. NAKAMURA, H. SUZUKI 402 684. The Effect of Microstructure on Notch Toughness in Weld Heat- Affected Zone Near Bond of High Strength Steels M. INAGAKI, K. NAKAHARA, K. HARADA, Y. MITANI 420 Vol. 7 (No. 1 : p. 1~p. 38, No. 2 : p. 39~p. 74, No. 3 : p. 75~p. 109, No. 4 : p. 110~p. 165, No. 5 : p. 166~p. 210, No. 6 : p. 211~p. 257) 685. Electron Microscopic Observations on Dislocations and Precipitates in Annealed and Deformed Chromium S. YOSHIDA, N. NAGATA, Y. OHBA 1 686. The Effect of Formation Temperature on Dissolution Rate of Zinc-Ferrite (Study on Zinc-Ferrite (Ⅲ)) K. NII, Y. HISAMATSU 9 687. On the Manufacturing of Copper Alloy Powders by Liquid Atomization K. TAMURA, T. TAKEDA 14 688. Unique Feature of Bead Shape and Its Formation Process in Electron-Beam Welding (Studies on Electron-Beam Weld­ ing (Ⅲ)) T. HASHIMOTO, F. MATSUDA 20 689. A New Pneumatic Gauging (Negative Pressure Type Cascade Pneumatic Micrometer Using Negative Feedback (Ⅰ)) I. YAMAMOTO 30 690. The Orientation Relationships and Crystal Habits in the Marten­ site Transformation of a Cu-Al Alloy S. KAJIWARA, Z. NISHIYAMA 39 691. Effect of Molybdenum, Carbon etc. on Sulphide Inclusions in Low Carbon Steel Study on Behaviours of Free-cutting Inclusions Formed in Steel (Ⅰ)) T. ARAKI, H. HIRAI, T. KARASUDANI 46 692. Experimental Study on Some Properties of Plasma Jet A. HASUI, E. KASAHARA, Y. EMORI, A. IIYOSHI 52 693. The Measurement of Ultrasonic Attenuation Using the Bottom Echoes in Round Bars K. KIMURA 59 694. “ Gonio-Microscope ” and its Metallurgical Applications T. TAOKA, E. FURUBAYASHI S. TAKEUCHI 67 695. Der gegenwärtige und zukünftige Stand der Metallforschung in Japan U. HASHIMOTO 75 696. A Kinetic Investigation of Grain Boundary Reaction Type Pre­ cipitation R. WATANABE, S. KODA 87 697. Effect of Welding Variables and Materials upon Bead Shape in Electron-Beam Welding (Studies on electron-beam Weld­ ing (No. 4)) T. HASHIMOTO, F. MATSUDA 96 698. Infrared Spectra of Hydrated Lanthanide Trithiocyanates K. KAWAMURA, K. NAKAMURA 110 699. High Strength Cast Iron by Vacuum-Treatment M. KIKUCHI 114 700. Redissolution of Cadmium in Zinc Sulfate Solution S. FUKUSHIMA, M. ABE 139 701. Some Experiments on Electron-Beam Welds (Studies on Electron­ beam Welding (No. 5)) T. HASHIMOTO, F. MATSUDA, H. SUZUKI 144 702. Surfacing with Super Alloy Powders by Plasma Jet A. HASUI 153 703. Effects of Mono and Divalent Cation Chlorides on Molten Sodium Chloride S. FUKUSHIMA, R. OYAMADA, H. HAGIWARA 166 704. Phase Separation in Solvent Extraction K. KAWAMURA, T. TAKEUCHI, I. SHIBASAKI 172 705. Penetration Mechanism of Weld Bead in Electron-Beam Welding (Studies on Electron-Beam Welding (No. 6)) T. HASHIMOTO, F. MATSUDA 177 706. Some Properties of Plasma Jet for Spraying A. HASUI, S. KITAHARA, T. FUKUSHIMA 186 707. Corrosion of Magnesium Alloy for Nuclear Reactors in Carbon Dioxide G. ITO, S. IKEDA, S. OHASHI 196 708. Glide Band Structures in Iron Single Crystals T. TAKEUCHI 211 709. Molar Heat Capacity and Heat of Fusion of Silicon Tetraiodide (Preparation of Pure Silicon by the Iodide Process (Ⅴ)) T. KUROSAWA, R. HASEGAWA T. YAGIHASHI 222 710. Hydrogen Reduction of Niobium Pentachloride Y. SAEKI, T. SUZUKI 228 711. Behaviour of Inclusions in Steel Deoxidized with Manganese, Silicon or Silicomanganese during Hot Rolling (Deforma­ tion of Nonmetallic Inclusions in Steel during Rolling of Steel (Ⅰ)) I. UCHIYAMA, M. SUMITA 233 712. Alumina Dispersion Strengthened Copper-Nickel Alloys M. YAMAZAKI, N.J. GRANT 242 713. On Progress in Damage by Corrosion Fatigue. K. IWAMOTO 251 Vol. 8 (No. 1 : p. 1~p. 30, No. 2 : p. 31~p. 75) 714. Effect of Annealing on Internal Friction and Young's Modulus of Cold-Rolled Aluminum M. GOTO 1 715. Infrared Studies of Tributyl Phosphate Solutions of Some Lanthanide Salts (Effect of solvation on PO stretching frequencies) K. KAWAMURA, K. NAKAMURA 10 716. On the Electron Beam Refining of Niobium H. KIMURA, Y. SASAKI, S. UEHARA 15 717. Pneumatic Micrometer with Hybrid Pressure Cascade System (A New Pneumatic Gauging (Part Ⅱ) ) I. YAMAMOTO 23 718. Precipitation in Fe-Mo Alloys H. YAGISAWA, M. OKAMOTO, H. YOSHIDA 31 719. Effect of Ti and Nb Additions on Structures and Properties of Cr-Ni Stainless Steels R. NAKAGAWA, Y. KAWABE, Y. OTOGURO 37 720. Study of Manganese Heat Resisting Steels R. YODA, H. YOSHIDA, K. KOIKE 45 721. Effect of Exposure on the Embrittlement of Welded Joints of HT 60 Steel for Nuclear Pressure Vessels M. INAGAKI, I. OKANE, H. SUZUKI 57 722. Spectrochemical Analysis of Steel in Argon Atmosphere T. TAKAHASHI 68 Short Notes Vol. 3 (No. 2~ ) 723. Chlorination of Titanium Compounds Y. SAEKI, K. FUNAKI 120 724. Welding of Pure Zirconium in Controlled Atmosphere H. SUZUKI, T. HASHIMOTO, F. MATSUDA, F. TSUKAMOTO, K. NAGAYOSHI 120 725. Spot Welding of Zirconium and Zircaloy-2 Alloy Sheets H. SUZUKI, T. HASHIMOTO, F. MATSUDA, K. TANUMA 121 726. Welding of Zircaloy-2 in Controlled Atmosphere H. SUZUKI, T. HASHIMOTO, F. MATSUDA, Y. SHIMIZU 121 Vol. 4 727. Thermoelectric Behaviours of Rutile T. SAKATA, K. SAKATA 53 728. On the Heat Treatment and the Microstructure of Anisotropic MK Magnet K. YAMAKAWA 120 729. On the Stability of Anisotropic MK Magnetic K. YAMAKAWA 157 730. The Effect of Preparation Temperature of Ferric Oxide on the Formation and Dissolution of Zinc Ferrite K. NII, H. KIMURA, Y. HISAMATSU 158 731. A Study of Weld Cracking of Austenitic Stainless Steels H. SUZUKI, M. INAGAKI, H. NAKAMURA 217 732. Continuous Cooling Transformation Diagram of HT-60 High Strength Steels for Welding M. INAGAKI, T. BADA, M. UTA 218 733. Electron-Beam Welding for Pure Zirconium and Zircaloy-2 Alloy H. SUZUKI, T. HASHIMOTO, F. MATSUDA 218 Vol. 5 734. A Study on High Temperature Stress Rupture Properties of Large Welded Joint of Stainless Clad Steel for Atomic Reactor H. SUZUKI, M. INAGAKI, T. BABA, O. TAKAGI 31 735. A Study of Weld Cracking of Aluminium and Its Alloys H. SUZUKI, H. NAKAMURA 31 736. Weld Cracking Test of Steel Electrodes with Dynamic Cracking Testers H. SUZUKI, M. INAGAKI, H. NAKAMURA, M. SHIMIZU 32 737. On Apparatuses of High Frequency Type for Plotting the CCT Diagram for Welding Purpose H. SUZUKI, M. INAGAKI 32 738. Electron-Beam Versus TIG Welding of Niobium and Tantalum H. SUZUKI, T. HASHIMOTO, F. MATSUDA 76 739. Effect of Welding Atmosphere on Commercial Pure Titanium Welds H. SUZUKI, T. HASHIMOTO, F. MATSUDA 76 740. A Study on High Temperature Tensile and Creep Rupture Tests of Welded Joints of High Strength Steels for Nuclear Reactor H. SUZUKI, M. INAGAKI, I. OKANE, T. BADA 128 741. On the Preparation on Titanium-Dislicide and Its Some Properties K. TAMURA 257 742. Physical and Mechanical Properties of MoSi2 Base Heat Elements K. TAMURA 257 743. MoSi2 Base Heating Elements Produced by Cold Pressing Process K. TAMURA 258 Vol.6 744. Corrosion of Metallic Materials in Organic Reactor Coolants G. ITO, Y. SHIMIZU, F. SAWAYANAGI 41 745. Corrosion of Magnesium Alloys for Nuclear Reactor in Carbon Dioxide G. ITO, S. IKEDA, Y. MISHIMA, K. TOMITA 41 746. Chlorination of Tantalum Carbide and Niobium Carbide Y. SAEKI, G. OMORI 95 747. Reduction of Tantalum Pentachloride with Sodium and Mag­ nesium Y. SAEKI, G. OMORI 95 748. Yield points of Single Crystals of Iron in Comparison with Polycrystal T. TAKEUCHI, S. IKEDA 151 749. Reduction of Niobium Pentachloride with Sodium and Mag­ nesium Y. SAEKI, G. OMORI, T. MATSUSHIMA 246 750. Spectrochemical Analysis of Metallic Silicon by DC Arc Powder Methods E. SUDO, T. TAKAHASHI, H. INOUE 246 751. Electromagetic Testing of Annealed States of Miled Steel Plate with Various Annealing Condisions H. ITO, K. KIMURA 247 Vol.7 752. Effects of Small Amount of Nickel, Copper and Molybdenum on the Carburizing Characteristics of 1% Cr Steel T. ARAKI, H. KURABE 162 753. Experiments on the Selenide and Telluride Inclusions in Iron and Steel T. ARAKI, H. HIRAI, S. MATSUKUMA 163 754. Manufacture of Irregularly-shaped Copper Powders by Gas Atomization K. TAMURA, T. TAKEDA 163 755. Fabrication of MoSi2 Base Heating Element by Slip Casting Process K. TAMURA 164 756. Transformation Behaviour of Carburized and Melted Cr-Mo Steels H. NAKAJIMA, T. ARAKI 208 757. On the Impact Strength of 5% Cr Hot-Work Die Steel S. WATANABE, T. ARAKI 209 Vol.8 758. Direct Recovery of Thorium and Rare Earths as Sulfate Precipitates from Digestion Mass K. KAWAMURA, T. TAKEUCHI, T. ANDO 30 759. Behaviour of Deoxidation Products in Al Deoxidation (Study on Behaviour of Deoxidation Products in Iron and Steel (Ⅰ)) I. UCHIYAMA, T. SAITO 72 760. On the Manufacture of 13Cr Stainless Steel Powder by Liquid Atomization K. TAMURA, T. TAKEDA 74 追 加 物理・冶金 761 金属間化合物ZnSb単結晶の作製とその半導性 増本,小宮 金属学会 28 273 1964 762 The Preparation and Properties of ZnSiAs2, ZnGeP2, and CdGeP2 Semiconducting Compounds 増本,磯村,後藤 (逾) P.C.S 27 (in press) 1966 763ケイ化物熱電素子 坂田(民),徳島 西田 工業レアメタルNo. 261964 製錬・精製 764バッチ式回転炉による鉄鉱石の還元について 田中,尾沢,下崎鉄と鋼 52 2231966 765流動還元における攪拌による焼結防止について 田中 鉄と鋼 52 2251966 766韓国産モナズ石の硫酸処理について 河村,磯野,武内鉱業会 78 5271962 767 Amex法によるトリウムの分離精製 河村,武内 原子力 4 7741962 鉄 鋼 768低炭素鋼に複合添加した快削性介在物の挙動ならびにその被削性におよ ぼす効果(鋼の被削性と微量元素に関する研究 Ⅲ) 荒木(透),谷地 鉄と鋼 52 7411966 溶 接 769構造用鋼材溶接部の変質について 稲垣 材技研報告 3 241960 770原子炉用ジルコニウムの溶接に関する研究(第2報) 鈴木,橋本 松田 田沼 材技研報告 4 1,37 1961 771 プラズマジェットによる溶射の研究(その3) 蓮井,北原,東 溶接学会 32 908 1963 772プラズマジェットによる溶射の研究(その6) 蓮井, 北原 福島(孟) 溶接学会 34 242 1965 773プラズマジェットによる溶射の研究(その7) 蓮井,北原 溶接学会 34 1004 1965 774プラズマジェットによる溶射の研究(その8) 蓮井,北原 溶接学会 34 1005 1965 775摩擦溶接に関する研究(その2) 蓮井,福島(真) 溶接学会 32 9111963 表面処理・腐食 776軽水冷却型原子炉用ジルコニウム合金の研究 伊藤,橋口,長谷川 三島,沢柳,井形 松浦,木村,清水 藤永,高橋 理研報告 39 81 1963 分析・試験 777 スパーク型二重収束重量分析器における質量スペクトルとIlford Q-2 乾板の特性曲線 須藤,高橋(努) 質量分析 14 45 1966 778 板の欠陥の多重反射図形の解析 安田 木村(勝) 非破壊 NDI資料 2195 1964 779 共振透過法および共振反射法 木村(勝) 非破壊 NDI資料 2198 1964 780 減衰定数と雑音エコーとの関係について 松本,木村(勝)非破壊 13 238 1964 781 学振Ⅲ型超音波探傷用感度標準試験片(STB-Ⅱ)に関する研究報告書 学 振 19委 7305 1963 782 丸棒の傷エコー高さの計算 木村(勝)非破壊 NDI 資料 2180, 2182 1963 783 電磁誘導探傷における直流磁化について 伊藤(秀),桑江 非破壊 13 242 1964 784 電磁透導探傷用コイルの寸法比について 伊藤(秀),桑江 非破壊 14 75 1965 785 金属線の渦電流探傷 伊藤(秀),桑江 非破壊 14 359 1965 昭和41年度年次研究計画 総 合 研 究 電気磁気材料研究部 超電導マグネット材料に関する研究 金属物理研究部 材料強度研究部 材料試験部 金属材料の高速加工に関する研究 電気磁気材料研究部 鉄鋼材料研究部 材料強度研究部 鉄鋼材料研究部 ロケットおよびジェットエンジン材料の性能向上に関する研究 特殊金属材料研究部 電気磁気材料研究部 超高圧による金属材料の性能向上に関する研究 鉄鋼材料研究部 金属物理研究部 鉄鋼材料研究部 鋼中の介在物および砂疵に関する研究 金属化学研究部 製錬研究部 製造冶金研究部 鉄鋼材料研究部 鋼の不純金属の含有許容量に関する研究 製造冶金研究部 工業化研究部 腐食防食研究部 高張力鋼溶接部の硫化水素割れに関する研究 溶接研究部 製造冶金研究部 特殊溶銑炉の操業法の確立に関する研究 工業化研究部 鉄鋼材料研究部 超強力鋼に関する研究 製造冶金研究部 特 別 研 究 1.耐熱材料の溶接に関する研究 一 般 研 究 金属物理研究部 1.金属薄膜格子欠陥と磁性に関する研究 2.鉄および鉄合金の塑性と相変態に関する研究 3.超高圧電顕による格子欠陥に関する研究 4.流体作動計測器の金属物理測定への応用に関する研究 金属化学研究部 1.多原子価金属化合物の還元反応の機構に関する研究 2.金属材料の高温酸化機構に関する研究 3.高純度金属中の徴量元素の定量法に関する研究 4.非金属介在物の状態分析法に関する研究 5.高濃度組成合金の分析精度向上に関する研究 製錬研究部 1.製鉄原料の開発利用に関する研究 2.特殊製鉄法に関する研究 3.特殊製鋼法に関する研究 4.加圧下の乾式製錬に関する研究 5.製錬残滓の活用に関する研究 鉄鋼材料研究部 1.鉄鋼中における含有元素の偏析 非鉄金属材料研究部 1.析出硬化型銅合金に関する研究 2.粒子分散強化型合金に関する研究 3.溶接用アルミニウム合金に関する研究 4.希土類元素を含むMg合金に関する研究 5.ニオブなどの体心立方金属に関する研究 特殊金属材料研究部 1.電子ビーム溶解したモリブデンの加工性に関する研究 2.金属酸化物およびⅣ族半導体の格子欠陥に関する研究 3.融解塩の基礎的研究 4.希土類金属の製造に関する研究 5. R Iによる金属精製に関する研究 6.特殊耐熱材料に関する研究 電気磁気材料研究部 1.電気溶解材料に関する研究 2.電着磁性薄膜に関する研究 3.強磁性微粉末の製造と利用に関する研究 4.物理精製による高純度金属の製造とその性質に関する研究 5.金属間化合物半導体の製造とその性質に関する研究 6.遷移金属酸化物に関する研究 製造冶金研究部 1.ダイカスト製品の性能向上に関する研究 2.溶解雰囲気の調整による強靭鋳鉄の製造に関する研究 3.鋼材の各種熱処理変態曲線に関する研究 4.金属粉末の製造並びに焼結加工に関する研究 材料強度研究部 1.腐食疲れに関する研究 2.微量不純物による鉄鋼の内部摩擦変化に関する研究 3.鋼の機械的強度におよぼす加工と熱処理の影響に関する研究 4.超音波探傷結果と傷・材質および強度との関係に関する研究 5.電磁誘導による非破壊試験結果と傷材質の実態との関連に関する研究 6.熱疲労に関する研究 7.耐熱鋼の高温特性と組織に関する研究 腐食防食研究部 1.アルミニウムの腐食におよぼす水中微量不純物の影響に関する研究 2.アルミニウム材料の陽極酸化過程の高速化に関する研究 3.金属の大気腐食に関する研究 4.電気防食とその計測法に関する研究 溶接研究部 1.アーク溶接施工法の確立に関する研究 2.異種金属の接合に関する研究 3.溶接部の化学冶金に関する研究 4.特殊溶接方法の開発に関する研究 工業化研究部 1.延性鋳鉄に関する研究 2.連続製鋼・鋳造技術に関する研究 3.オーステナイト・ステンレス系耐熱鋼の性能向上に関する研究 材料試験部 1.材料試験法に関する研究 科学技術庁金属材料技術研究所 十 年 の あ ゆ み 10年のあゆみ編集委員会 編集委員長 河田和美 編集委員 九島元治 高橋 清 松村啓輔 (現在科学技術 庁振興局) 吉沢文也 武内朋之 佐伯雄造 内山 郁 渡辺亮治 河村和孝 山川和夫 田村皖司 木村勝美 池田清一 稲垣道夫 荒木 喬 横井 信 以上組織所属順 発行 科学技術庁金属材料技術研究所 東京都目黒区中目黒2―300 発行日 昭和41年7月1日 BEE ANT BI ADB FCAT