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[著者最終稿_応物_雨倉.pdf](https://mdr.nims.go.jp/filesets/44f5573a-cb9f-4986-9479-5e1bfcbe287b/download)

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[雨倉 宏](https://orcid.org/0000-0003-2148-8431)

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© 2025 公益社団法人応用物理学会[In Copyright](http://rightsstatements.org/vocab/InC/1.0/)

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[C60イオン照射によるダイヤモンドへの初のイオントラックの形成](https://mdr.nims.go.jp/datasets/debe2a8e-f298-464a-975f-65fd8716d873)

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コンテンツ名：＜解説＞ C60イオン照射によるダイヤモンドへの初のイオントラックの形成 執筆者の氏名： 雨倉 宏  所属先：国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS) 所属先住所 〒305-0003 茨城県つくば市桜 3-13 電話番号： 029-863-5479 e-mail: 【代表者のアドレス】amekura.hiroshi@nims.go.jp  和文要旨（100～300 字でお書きください） 多くの固体において数十 MeV を超える高エネルギー重イオンが通過すると，その直線的な軌跡に沿って円柱状の損傷領域（イオントラック）が形成される．イオントラックの形成機構として現在最も支持されているのが非弾性熱スパイク機構である．イオンからのエネルギー付与によりその軌跡に沿って固体温度が上昇し，融点を超えて融解した領域が急冷され，イオントラックを形成すると考えられている．一方ダイヤモンドは準安定相であるため，加熱されても融解せず安定相である黒鉛に変わるため，上記モデルは直接適用できない．これまでダイヤモンドではトラックは観測されなかったが，我々は C60 イオンを照射することによりトラックの形成に成功した．熱融解以外で初めて形成されたイオントラックの知見をもとに、イオントラック形成機構の現状の認識を紹介する．  タイトル【英文】The first formation of ion tracks in diamond by MeV C60 ion irradiation 執筆者の氏名【英文】Hiroshi AMEKURA 所属先【英文】National Institute for Materials Science (NIMS) 所属先住所【英文】3-13 Sakura, Tsukuba, Ibaraki 305-0003   英文要旨（120 ワード以内でお書きください） Injecting high-energy heavy ions into solids can create cylindrical damage zones called ion tracks. The most accepted mechanism for the ion track formation is the inelastic thermal spike (i-TS) model, in which molten regions induced by huge energy deposition along the ion trajectories transform to the tracks after quenching. However, diamond is in a meta-stable state, does not melt with heating but transforms to the stable state, i.e., graphite. While no tracks have ever been observed in diamond, we have succeeded in forming the tracks under MeV C60 ion irradiation. Here we report about the tracks formed via a non-melting route.   本文 １． まえがき 「イオンビームを研究している」と言ったら，一般の方から「聞いたことのない言葉ですが，なんの役に立つのですか？」と質問がきた．ここぞとばかりに，「あなたのスマホやパソコンに入っている半導体集積素子を作るのにイオンビームは不可欠の技術なのです」と反撃したつもりだったが，ポカーンとされてしまって話はそれで終わってしまった．イオンビームは半導体集積素子を作るために不可欠な技術であり，エネルギー域にしてサブ keV から数 MeV までの単原子イオンと物質の相互作用は産業上の重要性から既に詳しく調べられてきた．本解説の対象である“イオントラック”は，それよりも高い 10 MeV を超えるようなエネルギー域から形成し始めることが知られていた．しかし最近，C60 のようなクラスターイオンを用いると数 MeV でもイオントラックが形成されることがわかってきた．なぜクラスターイオンが単原子イオンに比べて低エネルギーでも効率的にトラックを形成するのか，その背景の物理について紹介したい． 高電圧で加速されたイオンは比較的高い運動エネルギーを持っているが，物質に入射すると物質との相互作用でイオンのエネルギーが失われ、ある程度物質中を進んでから止まる．このときのエネルギー損失量は，単位飛行距離当たりにイオンが失うエネルギー量（阻止能）で表される。低エネルギーのイオンでは固体を構成する原子との弾性衝突でエネルギーが失われ，核的阻止能 Snと呼ばれる量で記述される．一方，イオンの入射エネルギーが高くなると，イオンは固体を構成する原子と衝突するだけではなく，固体を構成する電子系とも強く相互作用しエネルギーを失う．後者は電子的阻止能 Seと呼ばれる量で記述される．例として Siを標的材料として Xe イオンを照射した場合を考える：2 MeV 付近より低エネルギー側では Sn が Seより大きく、高エネルギー側では Seが Snより大きくなる．さらにイオンのエネルギーを上げていくと，80 MeV 程度ではエネルギー損失過程はもっぱら電子との相互作用となり，Sn は Seよりおおよそ 2 桁程度小さくなる．電子的阻止能 Se が核的阻止能 Sn に比べて非常に大きくなる高エネルギーの重イオンを「高速重イオン」と呼ぶ． 高速重イオンではイオンの軌跡がほぼ直線的で，それに沿って円筒形の損傷領域が形成される場合があり，イオントラックと呼ばれる．トラックは非晶質であることが多いが，損傷した結晶質の場合もある 1)．もちろん照射条件（イオン種，エネルギー，標的物質等）により変わるが，単原子イオンで形成されるトラックのおおよそのサイズは，直径 10 nm 程度かそれ以下で，長さは数m 以上にも及ぶ． 繰り返すが，トラックが形成される高エネルギー域ではイオンと固体との相互作用は専ら電子励起による．トラックは損傷領域であるが，低エネルギーイオン照射で形成される損傷領域とは形成過程が異なる．後者は入射イオンと固体構成原子が弾性衝突を繰り返すことにより形成されるが、前者では最初に固体電子系が励起されたあと，電子格子相互作用によってエネルギーが固体原子系に伝達される．その後，励起された固体原子系が脱励起・緩和する過程において，一部が原子系の乱れとして残留したものである． 1990 年代に半導体や絶縁体にレーザー照射などで電子励起を起こして原子移動を誘起させ，プロセスに使おうという試みが集中的に研究されたが 2)，その機構は高速重イオン照射とはだいぶ異なるかもしれない．トラックの形成機構は（例えば 3)で）議論されているが，なかなか皆が納得するまでには至ってない． もちろん全ての物質でトラックが形成されるわけではない 4)： 金属ではトラックが形成されにくい．Ti 5)などでトラックの観測例があるが，貴金属では報告例は無い．半導体でもトラックの形成には高い Seが必要である．特に，イオン性の弱い半導体 （Si, Ge, GaAs 等）6)ではより高い Se  が発生できるクラスターイオン照射 7-10) が必要な場合もある．それらと比べ，絶縁体ではトラックが形成されやすいことが知られてきた．しかしその例外として，ダイヤモンドではこれまでトラックが形成されたという報告が無かった． これまでダイヤモンドに（単原子イオン照射により）トラックを形成しようとした試みは多数あったが成功しなかった 11)．我々は数 MeV の C60 イオンを用いることにより，ダイヤモンドにイオントラックを形成することに成功した 12)．トラック形成の物理という観点からダイヤモンドは非常に特殊な物質であることが判明し，現在最も支持されているトラック形成機構に変更を強いる可能性を持っている．本解説ではトラック形成の物理の現状，ダイヤモンドでのトラック形成の第一報および意義について紹介する．   ２． イオントラックの形成モデルとダイヤモンドでの意義 ２．１ イオントラックの形成モデル 現在，トラックの形成機構として一番広く受け入れられているモデルは非弾性熱スパイク(i-TS)であろう．このモデルでは標的固体を電子系と格子系に分け，高速イオンによる極めて速い電子系の励起（フェムト秒以下）と緩やかな格子系へのエネルギー伝達（～ピコ秒域）という非平衡系の時間発展と緩和を，電子系と格子系がそれぞれ異なる温度（電子温度 Te と格子温度 TL）を持つとして記述する．式(1)(2)に示すように，電子系と格子系はそれぞれの温度に対する一対の熱拡散方程式で記述されるとする 3)．  𝐶e(𝑇e)𝜕𝑇e𝜕𝑡= ∇ ∙ (𝐾e(𝑇e)∇𝑇e) − 𝑔(𝑇e − 𝑇L) + 𝐴     (1) 𝐶L(𝑇L)𝜕𝑇L𝜕𝑡= ∇ ∙ (𝐾L(𝑇L)∇𝑇L) + 𝑔(𝑇e − 𝑇L)      (2)  下付き文字の e と L はそれぞれ電子系，格子系を意味し，C, K, T はそれぞれの系での比熱，熱伝導度，温度を意味する．両式の右辺第一項がそれぞれの系での熱拡散を記述する．両式の右辺第二項は電子系と格子系のエネルギー交換を表す項で，電子温度 Teと格子温度 TLを等しくするように作用する．g は電子格子結合係数と呼ばる．A は高速重イオンにより電子系だけが励起される効果を記述する Source 項である．  式(1)(2)から電子温度，格子温度の時間発展を計算し，格子温度が標的物質の（大気圧下での）融点または沸点を超えた領域が（急冷の後に）トラックに変わると考える．Toulemonde らは更に大胆な仮定をいくつか採用した上で，熱拡散方程式を数値的に解くことにより多くの実験結果は説明し，現在このモデルが一番受け入れられている．ただし，批判も根強い．例えば，トラック形成の判定条件として，格子温度が物質の融点または沸点を超えることが用いられるが，この際に用いられる融点・沸点は大気圧下のバルク物質の値を用いている．しかしトラックの直径は多くの場合 10 nm 以下であり，融点・沸点がバルクと同じ値である保証がない．さらにトラックは固体中に融解・気化した状態で形成されるが，周りが厚い固体のため体積変化が困難で，容易に圧力が発生し融点・沸点をシフトさせる可能性もあるが全て無視されている． ２．２ ダイヤモンドでのトラック形成の意義 既に述べたように，トラックの形成機構で一番受け入れられているのは i-TS モデルであり，格子温度が標的物質の融点（または沸点）を超えるか否かがトラック形成の有無を決定する．よく知られているように，ダイヤモンドとグラファイトは同素体と呼ばれ，炭素原子だけから形成される二種類の異なる結晶構造を示す．常圧付近を含むあまり圧力の高くない領域ではダイヤモンドは準安定相で，グラファイトが安定相である．そのような事情により，ダイヤモンドは（極端な超高圧下を除けば）加熱しても「融解しない」のである 13)．加熱すると遂にはグラファイトに変わり，さらに加熱すると昇華する 13,14)．このグラファイト化は融解のような転移温度の決まった相転移ではなく，準安定相から安定相への緩和であり，相転移のような特徴的な温度は存在しないはずである．普通の熱処理炉を利用した秒・分オーダーの処理では 2000-2200 K でグラファイト化を起こし，~4200 K 程度で昇華した 13,14)．先ほど説明した i-TS モデルでは，トラックの形成は媒質の融解が関与しており，もしダイヤモンドにトラックが形成された場合，それは明確に熱融解以外のプロセスで形成されたイオントラックとみなすことができ，トラック形成モデルの再検討が必要になる．なお上記の昇華は相図とも一致し相転移によるものであるが，我々の熱計算によれば本件の照射条件では昇華が起こるまでは至ってないと考える． ２．３ C60イオン照射によるダイヤモンドへのトラック形成 これまで（単原子イオン照射により）ダイヤモンドにイオントラックを形成しようとした試みは多数あったが成功しなかった．実際，ダイヤモンドに（単原子イオンを用いて）達成できる最大のエネルギー付与は，もっとも重い U イオンを用いて Bragg ピーク（用語解説参照）に相当する数 GeV で照射した場合であるが，トラックは観測されなかった 11)．さらに pre-damage 効果と呼ばれる性質を利用し，よりトラックの形成されやすい条件を作って照射する試みもあった．pre-damage 効果とは，材料に損傷を加えると熱伝導率が低下し熱が籠り易くなり，また電子格子相互作用が増加し電子系の励起が格子系に効率的に伝達され，損傷がない試料よりもトラックが形成されやすくなる性質である 6)．ダイヤモンドを中性子照射し欠陥を導入した後に高速重イオン照射した報告があるがトラックは形成されなかった 15)．ダイヤモンドのマイクロ粒子ではバルクとは異なる状況，つまり pre-damage 効果に似た状況が期待されたため，高速重イオン照射された 16)．しかしグラファイト化は起こったが，トラックは形成されなかった． 我々は数 MeV の C60 イオンを用いることにより，トラックをダイヤモンドへ形成することに成功した 12)．ご存じのように C60 は 60 個の炭素原子だけからなるサッカーボールによく似た形状を持つ分子（クラスター）である．この大きな分子から電子を 1-2 個増減させイオン化し，加速して固体に衝突させる．すると C60分子の直径 0.7 nm に相当する円形領域に 60 個の炭素原子がほぼ同時に注入され，非常に強力な電子励起を引き起こす．1 個 1 個の炭素原子による電子励起強度はそれほど大きくないが，60 個の C 原子が 0.7 nm 径という極少領域に，ほぼ同時に打ち込まれるため，非常に高い励起“密度”が得られ，数 GeV の U 単原子イオンが引き起こす励起密度を遥かに超える．実際，2－9 MeV の C60 イオン照射によりダイヤモンドにトラックが形成された． ただし，確かに数 MeV の C60 イオンの持つ高い Se 値はダイヤモンドにトラックを形成する重要な因子ではあるが，数 GeV の U イオンでも同程度の Se値を発生することができる．むしろトラック形成の有無は（同じ程度の Se 値を持っていても）GeV 域の U イオンに比べ C60 イオンではエネルギー付与が狭い領域に限られる“速度効果 17)”と呼ばれる効果が重要なようだ． ２．４ イオンの速度効果 17)  固体中を高速重イオンが通過すると，高速重イオンと固体電子の衝突が起こり、電子は高速度で弾き飛ばされる。このようにして発生した高エネルギー電子は δ 電子と呼ばれる．δ 電子がイオン軌跡を中心に（平均として）動径方向に放出され，周りの物質にエネルギーを運ぶ．この際の δ 電子の最大エネルギーWmaxは，  𝑊𝑚𝑎𝑥 =4𝑀𝑖𝑜𝑛𝑚𝑒(𝑀𝑖𝑜𝑛+𝑚𝑒)2 𝐸𝑖𝑜𝑛  ≈ 2𝑚𝑒𝑣𝑖𝑜𝑛2      (3)  で与えられ 18)，高速重イオンの速度 vion の二乗に比例する．つまりは高速度のイオンによる δ 電子ほど（分布はあるが）高いエネルギーを持ち，それ故に長い飛程を持つ．イオンの直線的な軌跡を軸とする円筒形を考え，δ 電子が長い飛程を持つ場合，励起される領域の体積は大きくなる．同じ Se（つまり単位長さ当たりに付与されるエネルギーが同じ）でも，高速のイオンほど励起体積が大きいため，励起密度は下がってしまう．一方，C60イオンのように質量が重いと速度が遅く，δ 線の飛程が短い．そのため局所的に励起密度が高くなる．ダイヤモンドに GeV イオンではトラックが形成されず，C60 イオンでは形成されるのはこのような理由による．  ３． ダイヤモンドへのイオントラックの形成 ３．１ トラックの形成確認と微細構造  本研究で用いたダイヤモンド試料は Element Six 社から購入した CVD 法により作製された高純度の多結晶および単結晶試料である．図 1 は 9 MeV の C602+イオン照射でダイヤモンド中に形成したトラックをいくつかの異なる配置で観測したものである．図 1(a)は試料面に垂直方向から観測したもので，黒色のほぼ円形のドットが観測される．黒いドット状のものが同じ方向に少し楕円形に歪んで見えるが，試料垂直から 7ずらしてイオン照射したためであろう．図 1(b)は同じ試料を 30傾けて観測したものであるが，黒いドットから細い線状の構造がそれぞれ１本ずつ現れる．つまり観測されたドットは球形のものではなく，むしろ円柱に近い形をしており，イオントラックという解釈と矛盾しない．図 1(c)(d)は試料を深さ方向に切り出した配置である．切り出す前にイオン照射した試料面に Pt 膜を蒸着し表面位置の印とした．黒い太い層が Pt 層で，この層からダイヤモンド側に黒い細めの線が多数観測されるが，これらが図 1(a)(b)で観測されたドットに対応していると考えられる．つまりイオン照射で形成された構造はアスペクト比の高い円柱状の形状のイオントラックであると考えられる．  図 1(d)は(c)と同じ配置だが，場所が異なり少し倍率が高い．注目すべき点は，Pt 層のダイヤモンド側ではなく，反対側である．高さ 5 nm 程度の突起が多数観測される．コントラストから判断して観測された構造自体は Pt でできていると思われるが，ダイヤモンド表面に突起ができており，その形状を反映して Pt 層に突起状のものが観測されたと考える．さらにダイヤモンド層で観測されているトラックの延長線上に Pt の突起が観測されており，トラックとダイヤモンド表面が交差する部分にダイヤモンド表面の突起ができていると考えられる．トラックと標的物質表面が交差する部分に表面突起ができる現象はよく知られており，hillock19)と呼ばれる．既に紹介したようにトラックは多くの物質では熱融解転移の結果として生成されると考えられている．融解した際にトラック内部で圧が高まり，表面とトラックの交差する部分から一部融解した物質が出て固化したものが hillock と考えられている 19)．ダイヤモンドでは熱融解ではなくグラファイト化でトラックが形成されると考えるが，ダイヤモンドに比べてグラファイトは低密度なので，トラック形成時のグラファイト化の際に圧力が高まり，一部の物質が表面から押し出されたものかもしれない．  さらに観測された構造が本当に C60 イオン照射で形成されたトラックかを確認するために，ドット構造の面密度を求めた．ドット構造の面密度は C60 エネルギーに依らず，5  1010 dots/cm2 程度であった．この値はC60 イオンの照射量 5  1010 C60/cm2 とよい一致を示す．この一致は，ダイヤモンド表面への 1 個の C60 イオンの衝突でドット構造が 1 個形成されるという描像と符合し，ドット構造が C60 イオン照射で形成されたトラックであることを強く支持するものである． ３．２ トラック半径の電子的阻止能依存性  2 MeV で照射した試料でもトラックは観測されたが，1 MeV で照射した試料ではトラックと思われる構造を確認することができなかった．1 MeV と 2 MeV の間にトラック形成の閾値があるようだ．そこで各エネルギー毎にトラック半径の平均値 R を算出し，その二乗である R2（トラックの断面積に相当）を電子的阻止能Se に対してプロットしたのが図 2 である．データ点は多少バラついているが，おおよそ以下のよく知られた経験則 6)でフィットできる：  𝑅2 = 𝐶(𝑆𝑒 −  𝑆𝑒,𝑡ℎ)  (4)  ただし，C は比例定数，Se,th は電子的阻止能の閾値にあたる．閾値 Se,th として 24 keV/nm という値が得られた． ３．３ トラックの高分解能 TEM 観察  ダイヤモンドに形成されたトラックが非晶質かどうかは大変興味のある点であるが，その判定にはトラック内の格子縞の観察を行えばよい．しかし炭素原子は原子番号が 6 と小さいことからも分かるように原子半径も小さい．小さな原子から構成されるダイヤモンド結晶の格子間隔も狭く，格子縞を観察するためには高い空間分解能が必要であった．収差補正機能のある高分解能 TEM を用いて観測した結果を図 3 に示す．(a)(b)(d)は同じトラックをそれぞれ低・中・高倍率で観測したものである．観測はいわゆる走査型透過電子顕微鏡明視野像(STEM-BF)で，高角度環状暗視野像(HAADF)ではない．正確に記せば，(d)は格子縞を明瞭にするために，(c)に示した高速フーリエ変換像のうち赤丸内のスポットを使って再構築した像である．多くの領域でダイヤモンド格子を反映した格子縞 022 が観測されるが，トラックの中央部ではダイヤモンドの格子縞が途切れ，非晶質化しているようだ．なお，この観察に用いた試料は厚さ 36 nm まで薄くしてある．9 MeVでのトラック長の平均値が 52.1 nm，標準偏差(SD)は 7.3 nm であった．試料厚さ 36 nm は平均トラック長から 2SD 以上に離れているので，ほぼ確実にトラックは試料の反対側まで突き抜けている． ３．４ 二温度分子動力学法による数値シミュレーションとの比較 既にイオントラックの形成を扱うモデルとして 2.1 で非弾性熱スパイク(i-TS)モデルについて紹介した．このモデルでは電子系と格子系を分け，それぞれを電子温度，格子温度で記述した一対の熱拡散方程式（式(1)(2)）を解き，格子温度が大気圧下の融点を超えた領域がトラックになると仮定している．近年，これを超える試みとして二温度分子動力学法（TT-MD）20,21)が提案され適用されている．この手法では電子系は従来通り電子温度で記述するが，格子系は分子動力学(MD)で計算される．電子系と格子系の結合は，電子温度が高い領域にある原子をランダムに加速（加速方向もランダム）するものである．そして充分に時間が経って構造が安定した頃(イオン通過後 100 ピコ秒位)に原子位置を確認してトラックのような損傷領域ができているかを確認するものである．この手法の利点のひとつは，固体の融点のような相転移温度を仮定する必要がない点である．ダイヤモンドは既に説明したように準安定相であり，融解は起こさず安定相であるグラファイトに緩和する．これは相転移ではなく，安定相への緩和であるため，明確な転移温度はない．つまり i-TS モデルの相転移をグラファイト化に拡張しようにも明確な転移温度がないため，拡張できない．TT-MD 法に関しては定評のある Helsinki 大学のグループの協力により実行した． 計算結果を図 4 に示す．(a)は高イオン速度（4.93 MeV/u，単原子イオンに相当），(b)は低イオン速度（0.05 MeV/u，C60 イオンに相当）の場合であり，それぞれ 3 つの Se値の場合について計算した結果であり，イオン照射後 100 ピコ秒後における原子位置を非常に小さな丸で示している．これらの図は[001]及び[010]方向から見ているため，損傷を受けていない領域では最表面の原子だけが見えて，それより下の層の原子は重なってしまい見えない．結果として非損傷領域は図で薄い色を呈す．損傷した領域では原子が格子位置を外れ最表面原子よりずれた位置に変位するため，像が重なって濃い色を呈す． 高速単原子イオン(a)の場合では，20 keV/nm ではトラックが観測されず，40 keV/nm では side から見た図から表面付近にトラックらしきものができているが途切れており，不連続トラックである．60 keV/nm ではトラックが形成されるが，ウラン照射でさえも実現可能な Seは 50 keV/nm であり，単原子イオンでこのような高い Se を実現することは不可能である．高速単原子イオンの計算によるトラック径を(c)に四角印で示した．対応する実験結果も紫色の印で示したが，おおよそ良い一致が得られた．低速 C60 イオン(b)の場合は 20 keV/nm でもトラックが得られ，Seを増やすとトラックの直径が増加する．計算されたトラック径を赤丸，対応する実験結果を緑丸で(c)に示す．20 keV/nm での値を除き実験結果と計算結果は非常に良い一致を示す．両者を合わせるためにパラメータ調整等は一切行っていないことを強調したい． ３．５ 残された問題：トラックの不完全なグラファイト化 走査型 TEM モードを用いた電子エネルギー損失分光(EELS)は nm スケールでの原子結合状態を明らかにできる手法である．トラックの中心から一方向に測った距離 x における炭素 K 吸収端の EELS スペクトルを図 5(a)に示す．測定に用いた電子ビームサイズは 0.5 nm である．図 5(a)の下部にグラファイトとダイヤモンドの標準スペクトル（文献値 22)）IGと IDを青丸と赤丸で示す．グラファイトでは 1s から反結合性 π 軌道 π*の遷移による鋭いピークを 285 eV に示す．一方ダイヤモンドではグラファイトに無い谷構造を 303 eV に示す．照射試料において観測されたスペクトル（色付きの線）はどの位置においても π*ピークと谷構造の両方を示しており，両成分が共存することが分かる．そこで各位置での測定スペクトルを式(5)のように標準スペクトル IGと IDをある比率 y で足し合わせたもの           I (E) = y IG (E) + (1- y) ID (E)   (5)  でフィットした結果が図の黒い細線のスペクトルである．グラファイトの比率 y をトラック中心からの距離x に対してプロットしたのが図 5(b)である．注目すべき点はトラックの中央部においてもグラファイトの比率 y は 30％程度で，ダイヤモンドの比率の方が断然多い．なんらかのミスでトラックの中心でない部分を基準にしてしまったかと思い，2 次元マッピングも試みたが結果はほぼ同じであった．ダイヤモンドのイオントラックはダイヤモンドがグラファイト化することにより形成され，トラック部分は 100%のグラファイトから成るというシンプルな描像は再考が必要なようだ．  ４． まとめ これまで単原子イオンを用いてダイヤモンドにイオントラックを形成しようという試みはあったが成功しなかった．今回 C60 イオンを用いることにより加速エネルギー2―9 MeV の範囲でトラックの形成に成功した．しかしこれは C60 イオンにより単原子イオンでは到達不能な非常に高い Seを用いたわけではない．図 4(c)に示すように，Seが同じ 40 keV/nm でも単原子イオン照射ではトラックは形成されないが，C60 イオン照射ではトラックが形成された．つまり C60 イオンでダイヤモンドにトラックが形成された理由は非常に高い Se 値ではなく，速度効果による． 高分解能走査型 TEM 像からトラックの中央部が非晶質化することが分かったが，その周りを囲む構造が観測された．図は示さないが HAADF 観察から，膜厚の薄い中央領域の周りを膜厚の厚い領域が囲んでいるようである．これが図 1(d)で Pt 層の凹凸として観測された hillock であろう．グラファイトはダイヤモンドよりだいぶ低い密度を持つため，トラック内でグラファイト化が起こるとトラック内の圧力が上昇し，トラック中央部から物質が放出され周りに堆積しているのかもしれない． ダイヤモンドのトラックは融解により形成されたトラックではなく，i-TS 機構によりダイヤモンドが加熱されグラファイト化するために形成されたものだと推定したが，それほど単純ではないのかもしれない．図5 の EELS の結果が示すように，トラック中央部でもグラファイトの比率は 30％程度で，依然としてトラック中央部に 70％の比率のダイヤモンドが残っている．ダイヤモンドのトラック形成機構については更なる検討が必要であろう．  謝 辞 本研究は JSPS 科研費 22K04990, 18K04898 の助成を受けた．また日本原子力研究開発機構(JAEA)・量子科学技術研究開発機構(QST)の施設利用を目的とした，東京大学が運営する一般共同研究，並びに JAEA 及び QSTと連携した連携重点研究の制度の下に実施された．文部科学省「マテリアル先端リサーチインフラ」事業（課題番号 JPMXP1224NM5073 等）の支援も受けた．  用語解説 Bragg ピーク 電子的阻止能のエネルギー依存性および阻止能の試料深さ依存性に現れる物理的に異なる二種類のピークをどちらも Bragg ピークと呼ぶ。本稿では前者の意味で用いた．  文 献 1)  石川法人, 田口富嗣, 大久保成彰: 原子衝突学会誌 18, 43 (2021). 2)  篠塚雄三, 吉田博: 電子励起による非平衡固体ダイナミックス －新物質科学の創出に向けて－ (アグネ技術センター, 1993). 3)  C. 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Muller: https://muller.research.engineering.cornell.edu/spectra/graphite-and-diamond-c-k-edge-spectra/,      雨倉 宏（あめくら ひろし） 1991 年東京大学大学院理学系研究科修士課程修了，同年科学技術庁金属材料技術研究所研究員．1997–98 年ドイツ連邦共和国 Jülich 研究センター客員研究員．2001 年より物質・材料研究機構.(現職：主席研究員)．1991 年より一貫してイオンビームと材料の相互作用の研究に従事．      図 1  9 MeV C602+イオン照射されたダイヤモンドの明視野透過電子顕微鏡像 12)（BF-TEM）．(a)は試料表面に対して垂直方向から，(b)は同じ試料を 30°傾けて観測した．照射量は 5  1010 C60/cm2で，イオンは試料面垂直方向から 7°傾けて照射した． (c, d)は試料断面方向から観測したもので異なる場所を異なる倍率で観察した．図に Pt と示した黒い厚い領域は試料の表面位置が分かるように蒸着した Pt 膜である．(d)で観測されたPt 膜の凹凸はダイヤモンド表面に形成された hillock を反映したものと考える．照射量は 1  1011 C60/cm2．  図 2 各イオンエネルギーでの平均トラック半径の二乗をイオンエネルギーから算出した電子的阻止能 Se に対してプロットした 12)．両者はほぼ直線上に分散することから式(4)の関係が確認された．  図 3 単結晶ダイヤモンドへ 9 MeV C60 イオンを[001]方向から照射して形成したイオントラックの走査型透過電子顕微鏡明視野像 12)．(a)(b)(d)は同じトラックの低・中・高倍率像．(c)高倍率像での高速フーリエ変換像．(d)は格子縞を強調するために(c)に示した円の内部からの信号から再構築した．  図 4 ダイヤモンドでのイオントラック形成における二温度分子動力学法のシミュレーション結果 12)．(a)高速度単原子イオンに相当する速度 4.93 MeV/u，(b)C60 イオンに相当する速度 0.05 MeV/u の場合で，三つの異なる Se 値について示してある．(a)(b)はイオン通過後 100 ps での原子位置を，上の正方形領域は[001]方向，下の長方形領域は[010]方向から見た場合．損傷してない領域では第 2 層以下の原子は第 1 層の原子に隠れてしまい薄い色の領域を作る．原子位置の乱れた領域は濃い色を呈する．(c)はトラック直径の Se依存性を実験と計算結果で比較したもの．緑丸が C60 の実験結果，赤丸がその計算結果，紫のシンボルは単原子イオンの実験結果で，水色四角がその計算結果．特に実験と計算を合わせるためのパラメータ調整は行っていない．  図 5 走査型透過電子顕微鏡を用いた電子エネルギー損失分光（EELS）スペクトルのトラック中央 x = 0 nm からの距離依存性 12)．電子ビーム径は 0.5 nm で，トラック中央から直線的に場所を移動して測定を行った．(a)は各場所での炭素 K 吸収端スペクトルで，下の赤丸と青丸のスペクトルはダイヤモンド ID およびグラファイト IG の文献データ 22)．(a)の上中部の色付きスペクトルは実測値で，黒い細線は式(5)でフィティングを行ったもの．(b)はフィティングから得られたグラファイトの比率 y をトラック中央からの距離 x についてプロットしたもの． 執筆者のプロフィール 図のキャプション（図は PDF ファイルを提出してください） (d) Side viewprotection LayerdiamondhillocksPt(a) Top-view  Tilt = 0(b) Top-view Tilt = 30ion incident angle 720 nm(c) Side-view 20 nm2 nm(b)(a)(d)d022(c)0 2-20 0-40-2-20 2 20-2 20 0 4[1 0 0]5 nm-1(a) 4.93 MeV/u20 keV/nm 40 keV/nm 60 keV/nmtopside(b) 0.05 MeV/utopside20 keV/nm 40 keV/nm 60 keV/nm(c)6 nm(b)(a) Amekura-Fig1.pdf スライド 1 Amekura-Fig2.pdf スライド 1 Amekura-Fig3.pdf スライド 1 Amekura-Fig4.pdf スライド 1 Amekura-Fig5.pdf スライド 1