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鷺坂 恵介, 竹内 正之, [中西 和嘉](https://orcid.org/0000-0001-6801-1839)

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©公益社団法人 日本表面真空学会[In Copyright](http://rightsstatements.org/vocab/InC/1.0/)

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[走査型トンネル顕微鏡による配位結合ポリマーの柔軟性と熱運動の分子スケール観察](https://mdr.nims.go.jp/datasets/de735bb9-82b1-43a1-8d52-aaf89a4525df)

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Microsoft Word - MER用―1― 走査型トンネル顕微鏡による配位結合ポリマーの 柔軟性と熱運動の分子スケール観察  鷺坂 恵介*・竹内 正之・中西 和嘉  物質・材料研究機構 〒305 - 0047 茨城県つくば市千現 1-2-1    Molecular-Scale Observation of Flexibility and Thermal Motions in Surface-Coordinated Polymers  Keisuke Sagisaka, Masayuki Takeuchi and Waka Nakanishi  National Institute for Materials Science (NIMS), 1-2-1, Sengen, Tsukuba, Ibaraki 305-0047   We report a molecular-scale study of a one-dimensional coordination polymer formed on a Cu(111) surface. A tailored ligand, 2,7-dicyano-9,9-dimethylfluorene (DCF), was designed to reduce interactions with the surface while enabling directional coordination with Cu adatoms. Scanning tunneling microscopy reveals that the resulting DCF Cu polymer exhibits pronounced flexibility dominated by the CN Cu–CN coordination angle, which constitutes the primary internal degree of freedom governing the overall chain geometry. Temperature-dependent measurements show the onset of thermal motion above ~40 K for linear chain segments, whereas three-coordinated branches remain immobile up to 71 K, functioning as molecular-scale cross-links. These results directly connect polymer physics concepts with single-molecule motions on surfaces.  KEYWORDS: STM, coordination polymer, molecular design, molecular motion  1. はじめに ゴムがなぜ柔らかく、プラスチックはなぜ割れるのかといった素朴な問いは，高分子材料が示す多様な力学的性質の起源を端的に表している。こうした性質は，ポリマー鎖の柔軟性，絡み合い，架橋といった分子運動の自由度を中心概念とする高分子物理の枠組みによって理解されてきた。これらの考え方は，多数の分子が集団として振る舞う際に現れる統計的性質として定式化され，今日の材料科学を支える基盤となっている 1,2)。一方で，「その柔軟性は個々の分子のどの自由度に由来するのか」，「架橋は分子レベルでどのように鎖の運動を止めるのか」といった問いに対して，分子分解能での直接観測に基づき，これらの問いを検証した研究例は必ずしも多くない。 ポリマーの力学的特性や動的応答を理解する上での本質的な困難さは，分子レベルの運動が起こる空間的・時間的スケールと，従来の実験手法が主にアクセスしてきたスケールとの間に隔たりが存在する点にある。ポリマー鎖を構成する結合角や分子骨格の変形は，ナノメートル以下の空間スケールかつ極めて短い時間で進行するのに対し，バルク実験では，それら多数の分子運動が統計的に平均化された結果として現れる粘弾性応答や弾性率などの巨視的物性が主に観測される3.4)。そのため高分子物理では，統計的に有効な自由度を導入することで，集団としての普遍的な物性を記述する理論モデルが発展してきた。 こうしたスケールの隔たりを補う試みとして，固体表面上に形成される一次元分子集合体を「高分子の縮小模型」として用いる研究が進められている 5.6)。固体表面に吸着した分子では，並進運動を含むさまざまな運動自由度が基板との相互作用によって抑制され，分子の重心位置は実質的に固定される。その結果，観測される構造変化は主として結合角やねじれ角といった分子内部自由度として現れ，バルクでは平均化されてしまうナノメートル以下の構造変化を実空間で捉えることが可能となる。このような系において，走査型トンネル顕微鏡(STM)は，単一分子の形状や配置を直接観測できる手法として，高分子物理の概念を分子スケールで検証するための有力な手段である。 本研究では，Cu(111)表面に一次元的な形状を有する有機分子 金属配位結合ポリマーを作製し，STM を用いて，その構造、柔軟性、熱的運動特性を分子スケールで解析した 7)。特に，ポリマー鎖がどの程度曲がり  ―2― やすいか，どのような構造要素が運動を許容し拘束するのかといった点に着目し，配位結合角という分子自由度を中心に調べた。配位結合ポリマーは，共有結合ポリマーよりも柔軟で可逆的な結合自由度をもちつつ，非共有結合集合体よりも構造安定性が高いため，分子レベルの柔軟性と熱運動を直接観測するためには有効である。 2. 配位結合ポリマーの STM 観察 2.1 STM 観察を可能にする分子設計 液体ヘリウム温度近傍の温度において分子の動きを観察するためには、分子 基板相互作用を精密に制御した分子設計が必要である 8,9)。本研究では，金属表面での配位結合ポリマー形成を効率的に誘起しつつ，基板との過剰な相互作用を抑えることを設計指針として ， 新 規 配 位 子 分 子 2,7-dicyano-9,9-dimethyl-9H- fluorene (DCF)を設計・合成した（Fig. 1）。DCF はフルオレン骨格に二つのメチル基を導入した構造を有している。このメチル基は分子の立体的かさ高さを増すことで， 共役骨格と金属表面との直接的な相互作用を弱め，分子の過度な固定化を防ぐ役割を果たす。その結果，極低温条件下においても，運動観察に適した分子ポリマーを実現している。さらに，このメチル基は真空側に突出しているため STM 観察において明瞭な輝点として現れるので 9)，後述する解析において，各配位子分子の配向や連結様式を識別するための有効な構造指標としても機能する。フルオレン骨格の両末端にはそれぞれシアノ基を導入し，表面上の Cu アダトムとの配位結合を介して一次元的な DCF–Cu 錯体ポリマーを形成できるよう分子設計を行った。 2.2 Cu(111)表面における配位結合ポリマーの形成 金属表面で配位結合ポリマーを形成するために，まず DCF 配位子分子を Cu(111)表面に蒸着した。Fig. 2(a)および 2(b)は，基板温度 7 K において DCF 分子を蒸着した直後の STM 像である。DCF 分子はフルオレン骨格の構造非対称性を反映し，STM 像では三角形状に画像化される。これは分子の非対称構造および突出部位のコントラスト寄与を反映したものである。特に，真空側に突き出したメチル基の直上が最も明るい輝点として現れる。蒸着直後の状態では，多くの DCF 分子は単分子として表面に分散しているが，一部はクラスターを形成していることが確認された。クラスター内で隣接する分子の輝点間距離は約 1 nm であり(Fig. 2(b))，この距離は Cu 原子を介した配位結合に対応するものではない。したがって、蒸着直後に見られるクラスターは，Cu 原子との配位ではなく，双極子相互作用などの分子間相互作用によって形成された集合体であると考えられる 10)。また，DCF 分子は 1.0 V 以上の電圧を印加すると STM 探針で走査中に動きやすく，設計通り高い並進運動性を実現している。 次に，DCF 分子を蒸着した Cu(111)基板を 50℃まで昇温し，30 分間保持した。この熱処理により，DCF分子は基板表面の Cu アダトムと CN Cu CN 配位結合を形成し，線形状の錯体ポリマーへと変化した。一般に，シアノ基と配位結合した金属原子自体は STM 像では直接観測されないが 10-14)，隣接する DCF 分子間のメチル基間距離はSTM像から平均で 1.56 nmと求められた (Fig. 2(d))。この値は、DFT 計算により求められ Fig.1. (Color online) Chemical structure of 2,7-dicyano -9,9-dimethyl-9H-fluorene (DCF) ligand.  Fig.2. (Color online) (a, b) STM images of DCF ligand molecules adsorbed on Cu(111). (c, d) STM images of DCF Cu coordination polymer formed on Cu(111), (a, c) Vs = +0.3 V, I = 10 pA, (b, d) Vs = +0.02 V, I = 50 pA. Inset in (d): Atomistic model overlaid on the high-resolution STM image of the DCF Cu coordination polymer. All images were acquired at 4 K. Adapted from ref. 7 under CC BY-NC 3.0.   XXX ―3― たメチル基間の距離(シス配置で 1.46 nm，トランス配置で 1.60 nm)とよく一致しており，観測された線形鎖が DCF と Cu 原子の配位結合によって形成されたものであることを強く支持している。さらに、Cu 原子と配位したことで、4K では STM で走査中に分子が移動することはなくなった。 Cu(111)表面におけるシアノ基と Cu 原子の配位数としては，線形鎖を形成する 2 配位構造が支配的であるが，分岐を伴う 3 配位構造も形成可能である。本研究で観測された配位結合ポリマーのうち，92%が 2 配位，残りの 8%は 3 配位構造を示した。2 配位構造は直線型で幾何学的・エネルギー的に優勢であるため、本条件下では統計的に支配的となる。さらに、一般的に直線状ポリマーがしばしば束状に集合(バンドル化)するのに対し 5,14,15)，DCF Cu ポリマーの場合各ポリマー鎖は互いに一定の距離を保ちながら，分離した状態で表面に存在しているのが特徴的である。Bader 電荷解析の結果，ポリマー鎖中の Cu 原子は+0.5e (e は素電荷)，DCF 配位子は 0.19e の電荷を有しており，ポリマー全体としては正に帯電していることがわかった。このため，隣接するポリマー鎖間にはクーロン反発が働き，バンドル化を抑制しながら表面上に分散した配置をとっていると考えられる。 2.3 配位結合角が生み出すポリマーの柔軟性 Fig. 2(c)に見られる DFC Cu ポリマーは，直線的な部分と大きく湾曲した部分が混在する特徴的な形状を示している。この曲がりくねった形状には，分子同士をつなぐ CN Cu CN 配位結合角の柔軟性が大きく寄与している。 この結合角がどの程度自由に変化できるのかを明らかにするために，Fig. 3(a)に示す STM 像から，ポリマー中の個々の DCF 分子の向きと，すべての CN Cu CN結合角の分布を詳細に解析した。DCF 分子は非対称構造を持つため，STM 像から分子の向きを容易に判別できる。Fig. 3(a)に示した各 DCF 分子脇の三角形は，分子の向き(メチル基サイト)を示している。理想的には，隣接する 2 分子間の CN Cu CN 結合角を直接測定したいところだが，STM 像では配位した Cu 原子は基板電子状態と強く混成しているため、STM コントラストが弱く個別原子として識別困難である 9–13)。一方で，STM 像中の分子内の最も明るく見える点は，真空側に突き出したメチル基に対応しており，その位置は高い精度で決定できる。そこで本研究では，ポリマー鎖中から連続する 3 つの DCF 分子を選び，それらのメチル基がなす角度を評価する手法を採用した。この角度を「有効結合角」と呼ぶことにする。 幾何学的な考察より，この有効結合角の平衡配置からのずれは，各 CN Cu CN 結合角が平衡角(180 )からどの程度変化しているかを直接反映することがわかった（ただし，三量体中の 2 つの結合角は等しいと仮定している）。さらに，分子の向きの組み合わせにより，三量体には，3 個の分子が同じ方向の A 型，連続した2 個の分子だけが同じ方向の B 型，分子の方向が交互に入れ替わる C 型の三種類の構造が存在する(Fig. 3(b))。これらの例は Fig. 3(a)中に楕円で示してある。Fig. 3(c)に示すように，有効結合角の平均値は A，B，C 型でそれぞれ 153 ，177 ，200 となり，いずれも平 Fig.3. (Color online) (a) STM image of DCF Cu coordination polymer chains on Cu(111). White triangles denote the molecular orientation of the methyl group side. Vs = +0.02 V, I = 50 pA. (b) DFT-optimized structures of three representative DCF Cu trimer corresponding to different molecular orientations, with the equilibrium effective bond angle indicated for each model. (c) Distribution of the effective bond angles determined from the relative orientations of three consecutive DCF molecules in the STM image shown in (a). Adapted from ref. 7 under CC BY-NC 3.0.   ―4― 均値を中心に約 20 の幅で分布していた。これは，CN Cu CN 結合角が非常に柔軟であることを明確に示している。 この結果の妥当性を検証するために，DFT 計算による構造最適化を行ったところ，三量体の有効結合角はA，B，C 型でそれぞれ 158 ，183 ，206 となり，実験結果と近い値となった(Fig. 3(b))。さらに，Cu に配位した DCF 二量体モデルを用いて，CN Cu CN 結合角を変化させた際のエネルギー変化を計算した。その結果，最安定な 180°を基準にして，結合角がずれるにつれてエネルギーが二次関数的に増加することが示された(Fig. 4(a))。室温(T=300 K)における熱エネルギーは kBT 0.6 kcal/mol(kBはボルツマン定数)であるため，およそ1～2 kcal/mol以下のエネルギー上昇を伴う角度変形は熱的に十分許容されるので，表面合成後にポリマー鎖の運動が低温で凍結されるまでの間に，CN Cu CN 結合角はおおよそ 20 程度まで自然にばらつくと考えられる。この推定値は，STM によって実際に観測された三量体の有効結合角分布(Fig. 3(c))とよく一致しており，DFC-Cu ポリマーの柔軟性は，ほぼ CN Cu CN 結合角の自由度によって決まることが明らかになった。 さらに、二量体モデルを用いて CN Cu CN 結合角を段階的に変化させながら構造最適化を行ったところ、結合角が 20 を超えると，それまで 180 を保っていた二つのフルオレン骨格間の二面角が急激にずれ始めた(Fig. 4(b))。これは，結合角が大きくなるにつれて，ポリマーが平面内に広がった配置から，三次元的にねじれた立体構造へ移行していくことを意味する。つまり，金属表面においてポリマー鎖全体が吸着構造を維持するためには，CN Cu CN 結合角が概ね 20 程度の範囲に制約されることを示している。 以上の結果から，DCF Cu 配位結合ポリマーの柔軟性は，CN Cu CN 結合角の変化によるエネルギー上昇と，金属表面への吸着を維持するために必要な平面配置という，二つのバランスによって決まっていることがわかった。一般的な共有結合性ポリマーでは，鎖の柔軟性は結合角の変形ではなく，主として単結合まわりのねじれ自由度によって制御される。一方､DCF Cu配位結合ポリマーでは，配位結合角そのものが柔軟性を支配しており，両者は質的に異なる柔軟性を示す材料であるといえる。 2.4 昇温に伴うポリマー形状の変化と運動 DCF Cu 配位ポリマーの屈曲した形状形成および柔軟性の起源が理解できたので，次にポリマーの熱的運動を調べた。4 40 K の温度範囲で DCF Cu 配位ポリマーを観察したところ，この範囲ではポリマーの移動は見られなかった。一方、基板温度が 40 K を超えると，STM 探針がポリマー上を走査するたびに分子が移動してしまい，記録された STM 画像中からポリマー鎖の形状を識別することが困難となった。そこで，本研究ではアプローチを変更し，一度目的温度まで昇温した後に再び 4 K まで冷却し，STM 観察を行う手法を採用した。この方法ではポリマー鎖の運動そのものを直接観察することはできないが，熱によって誘起されるポリマーの運動や構造変化を議論する上では十分に有効である。 Fig. 5 に基板を 71 K まで昇温した際の結果をまとめた。昇温前に 4 K で観察したポリマー鎖の形状を Fig. 5(a)に，昇温後に再び 4 Kで観察した STM像を Fig. 5(b)に示す。Fig. 5(b)では，昇温に伴うポリマー鎖の位置や形状の変化を直接比較できるように，昇温前の STM 像(Fig. 5(a))を重ねて表示している。なお，昇温中は探針を表面から離しているため，Fig. 5(b)に見られる変化は探針効果ではなく，純粋に熱によって誘起されたものである。注目すべき点として，主に 2 配位からなる線形鎖部分の屈曲構造が変化しているのに対し，3 配位 Fig.4. (Color online) (a) Relative energy of the DCF-Cu dimer as a function of the CN-Cu-CN bond angle, referenced to the minimum at 180 . (b) Dihedral angle between the two fluorene planes as a function of the CN-Cu-CN bond angle. Adapted from ref. 7 under CC BY-NC 3.0.   XXX ―5― を有する分岐構造の位置はほとんど変化していない。 DCF Cu 配位ポリマーが 40 K 以上で熱的に運動を開始するという観測結果から，本系における運動の実効的な活性化エネルギーはおよそ 0.2 0.7 kcal/mol 程度であると見積もられる。この値は，Cu(111)表面における孤立 Cu アダトムの拡散障壁(約 0.9 kcal/mol) 16)や，CN Cu CN 結合角が 20 変形する際のエネルギー上昇(約 2 kcal/mol)よりも小さい。観測される屈曲した形状は，DCF 分子両端のシアノ基の配向が 180 からずれているという分子骨格由来の要因と，CN Cu CN 配位結合角の変形とが重なって生じているが，実際の運動過程では，分子骨格の微小な歪みや分子 基板相互作用の寄与が協調的に関与していると考えられる。このような協調運動により，エネルギー障壁が複数の自由度に分散され，結果として実効的な活性化エネルギーが低減されたと解釈できる。一方，3 配位分岐構造では、複数の配位結合角および Cu 基板相互作用が一点に集中して拘束されるため，線形鎖に比べて協調的な変形が著しく制限される。その結果、実効的な活性化障壁が増大し，71 K においても分岐点は分子レベルの架橋点として振る舞い，ポリマー全体の運動が凍結したまま保持されたと考えられる。 変形した線形鎖の中で，特に顕著な構造変化が観測された領域をFig. 5(c)および 5(d)に示す。本系ではDCF分子の配向を STM 像から識別できるため，分子の連結順序を追跡することで，ポリマー鎖中のどの位置で結合あるいは切断が生じたのかを分子レベルで特定することが可能である。Fig. 5(c)の領域 I では、昇温により分子 A と分子 B の間に分子 C が挿入される反応(insertion)が起こったと考えられる。この反応過程をFig. 6(a)に分子モデルで示す。比較的エネルギー的に不安定である自由末端を有する分子Cが熱運動によって隣接する線形鎖に接近し，分子 A B 間に存在する Cu原子と新たな配位結合を形成することで，自由末端数 Fig.5. (Color online) STM images of DCF-Cu polymers observed at 4 K (a) before and (b) after annealing the sample to 71 K. (c, d) Magnified STM images of regions I and II, respectively, as indicated in panel (a). Adapted from ref. 7 under CC BY-NC 3.0.  Fig.6. (Color online) Schematic reaction pathways corresponding the thermally induced transformation observed in Fig. 5: (a) insertion, (b) addition, and (c) addition-elimination processes. Alphabetic labels denote the same DCF units as those identified in Figs. 5(c) and 5(d).   ―6― を低減していると解釈される。新たな分岐構造の形成により局所的な運動は凍結されるが，その結果として線形鎖内部に歪みが残留し，これを緩和するために分子 B は分子 C D 間の Cu 原子と再結合したと考えられる。一方、同様に自由末端を持つ分子 E では，分子 F G間の Cu 原子と配位結合する付加反応(addition) (Fig. 6(b))が進行したと解釈される。さらに，Fig. 5(d)の領域II においても，自由末端を有する分子 H が熱運動によって隣接する線形鎖中の Cu 原子と配位結合し，分子 H I J による中間体が形成される。しかし，分岐点の形成によって運動が局所的に凍結され，屈曲した線形鎖中に蓄積した歪みエネルギーが配位結合形成によるエネルギー利得を上回ると，最終的に脱離(elimination)(Fig. 6(c))が起こったと考えられる。これらの結果は，錯体ポリマーにおける挿入，付加，脱離といった基本的反応様式が，熱的揺らぎと配位数や配位結合角に由来する力学的拘束との競合によって支配されていることを，分子スケールで直接示すものである。 3. まとめ 本研究は，金属表面上に形成された一次元配位結合ポリマーを，分子設計・構造柔軟性・熱運動という多角的視点から解析することで，高分子物理で用いられてきた柔軟性や架橋といった概念を分子レベルで具体的に視覚化したものである。従来の高分子物理では，単一ポリマー鎖レベルでの柔軟性は主として共有結合鎖中の単結合まわりのねじれ自由度に起因し，結合角はほぼ剛直な内部パラメータとして扱われてきた。本研究で示した DCF Cu 配位ポリマーは，配位結合角が実効的な柔軟性の担い手として機能し得ることを実験的に示した。 CN Cu CN 配位結合は，平衡角まわりで角度揺らぎを示し，その揺らぎがポリマー鎖全体の屈曲形状を規定する。この結果，配位結合は単なる結合様式にとどまらず，ポリマー鎖の屈曲性や運動性を支配する構造要素として捉えられる。40 K 以上で観測される熱運動は，単一の結合角変形や金属アダトムの拡散では説明できず，配位結合および分子 基板相互作用に加えて，複数の内部自由度が協調的に関与する低エネルギー緩和過程として解釈される。注目すべき点として，3 配位分岐構造が高分子における架橋点と同様に，鎖全体の運動を強く抑制する様子が分子レベルで直接可視化されたことである。 以上より，本研究は，配位結合を用いた表面ポリマーが，共有結合ポリマーとは異なる分子運動の自由度を持つモデル系として機能することを示した。分子設計を通じて配位結合の柔軟性や局所的な運動を制御できることは，高分子物理で議論されてきた概念を，分子スケールの実在系において直接検討するための基盤を与える。本研究は，平均化されたバルク物性の背後にある分子運動を可視化する一つのアプローチを提示するものであり，今後の分子集合体設計や理論モデルとの比較研究に資することが期待される。  本研究の一部は JSPS 科研費(22K05088, 22K04860)の助成を受けて行われたものです。また，計算は NIMSの材料数値シミュレータを利用して実施されました。 文  献 1) M. Doi: Introduction to Polymer Physics, Oxford University Press (1990). 2) 川勝年洋  : 高分子物理の基礎 , サイエンス社(2001).  3) M. T. Shaw, W. J. MacKnight: Introduction to Polymer Viscoelasticity, 4th Ed. Wiley (2018). 4) H. Watanabe: Prog. Polym. Sci. 24, 1253 (1999). 5) L. Grill, S. Hecht: Nat. Chem. 12, 115 (2020). 6) Q. Shen, H.-Y. Gao, H. Fuchs: Nano Today 13, 77 (2017). 7) W. Nakanishi, M. Takeuchi, K. Sagisaka: Chem. Sci. 16, 9156 (2025). 8) J. Gehrig, M. Penedo, M. Parschau et al.: Nat Commun 8, 14404 (2017). 9) W. Nakanishi, A. Nakata, P. Perez, M. Takeuchi, C. Joachim, K. Sagisaka: J. Phys. Chem. C 125, 9937 (2021). 10) W. Nakanishi, Y. Matsushita, M. Takeuchi, K. Sagisaka. Phys. Chem. Chem. Phys. 25, 13702 (2023). 11) J. Meyer et al.: Chem. Commun. 51, 12621 (2025). 12) D. Heim, D. Ecija, K. Seufert, W. Auwarter, C. Aurisicchio, C. Fabbro, D. Bonifazi, J. V. Barth: J. Am. Chem. Soc. 132, 6783 (2010). 13) W. Wang, X. Shi, S. Wang, J. Liu, M. A. Van Hove, P. N. Liu, R.-Q. Zhang and N. 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